説明

電極構造およびその製造方法、ならびに電気加熱型触媒およびその製造方法

【課題】セラミックス基材に対する電極の剥離を抑制可能で、小型化が可能な電極構造などを提供すること。
【解決手段】セラミックス基材12上に設けられる導電層30と、導電層30に固定される電極40とを有する電極構造20において、導電層30は、少なくとも一部が多孔質であって、電極40と接触する表面に微細な凹凸を有し、電極40は、導電層30の凹凸の凹部31に入り込んだアンカー部46を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極構造およびその製造方法、ならびに電気加熱型触媒およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両の排気ガスを浄化するため、通電加熱される電気加熱型触媒が知られている。電気加熱型触媒は、触媒を担持する担体と、担体に電力を供給する電極とを有する。担体が通電加熱されると、触媒が暖められ活性化する。担体はセラミックスで構成され、電極は金属で構成される。担体と電極とは、ロウ付けで接合される。
【0003】
一方で、近年、セラミックスと金属とをロウ付けで接合する方法として、セラミックス上に溶射膜を成膜し、溶射膜と電極との間に挟んだロウ材を溶融、凝固させる方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−83274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、セラミックスと金属とをロウ付けで接合する場合、セラミックスと金属との熱膨張率の差に起因する熱応力が問題となる。この熱応力は、ロウ材などが凝固した後の冷却過程で生じ、更に、使用時の昇温、冷却でも生じる。熱応力が過大になると、セラミックスなどが破損し、セラミックスに対して金属が剥離する。
【0006】
上記の特許文献1に記載の接合方法では、セラミックスと金属との間に設けられる溶射膜がセラミックスより低い弾性率を有するので、上記の熱応力を緩和できるとしている。しかし、溶射膜は、溶融したロウ材と反応して変質するので、効果を十分に発現できないことがある。
【0007】
そこで、別の接合方法として、セラミックス上に成膜された溶射膜に金属を接触させ、溶射膜と金属の両者の上に、固定膜を成膜することが考えられる。しかし、この場合、固定膜が金属からはみ出している分、金属が実質的に大面積化する。また、生産性が低かった。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、セラミックス基材に対する電極の剥離を抑制可能で、小型化が可能な電極構造およびその製造方法などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するため、本発明は、セラミックス基材上に設けられる導電層と、該導電層に固定される電極とを有する電極構造において、
前記導電層は、少なくとも一部が多孔質であって、前記電極と接触する表面に微細な凹凸を有し、
前記電極は、前記導電層の凹凸の凹部に入り込んだアンカー部を有する。
【0010】
また、本発明は、セラミックス基材上に設けられる導電層と、該導電層に固定される電極とを有する電極構造の製造方法において、
セラミックス基材上に、少なくとも一部が多孔質であって、前記電極と接触する表面に微細な凹凸を有する導電層を形成した後、該導電層上で、前記電極となる金属板の少なくとも一部を通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が前記導電層の凹凸の凹部に入り込み、凝固してアンカー部を形成する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、セラミックス基材に対する電極の剥離を抑制可能で、小型化が可能な電極構造およびその製造方法などを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る電気加熱型触媒の構成図である。
【図2】電気加熱型触媒10の要部断面図である。
【図3】電気加熱型触媒10の製造方法の説明図である。
【図4】電極40となる金属板50の平面図である。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る電気加熱型触媒の要部断面図である。
【図6】本発明の第3の実施形態に係る電気加熱型触媒の要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る電気加熱型触媒の構成図である。図1において、黒く塗りつぶした箇所は、電極40と導電層30との結合箇所を示す。図2は、電気加熱型触媒10の要部断面図である。
【0014】
電気加熱型触媒10は、例えば車両の排気ガスの通路に設置され、排気ガスを浄化するものである。電気加熱型触媒10は、触媒を担持する担体12と、担体12に電力を供給する電極構造20とを有する。電極構造20を介して、外部電源から担体12に電力が供給されると、担体12が通電加熱され、触媒が暖められ活性化する。
【0015】
担体12は、炭化ケイ素(SIC)などのセラミックスで構成されるセラミックス基材である。担体12は、ハニカム状に形成され、内壁面に触媒を担持している。触媒は、一般的なものであって良く、例えば、白金(Pt)やロジウム(Ph)、パラジウム(Pd)などの貴金属を含んでいる。複数種類の貴金属を組み合わせて用いて良い。これらの触媒は、担体12内を通過する排気ガス中の窒素酸化物(NO)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)などを浄化する。担体12の外周面は、その形状に制限はないが、例えば円周面状に形成される。
【0016】
電極構造20は、担体12に電力を供給するため、担体12上に2つ設けられ(図1には1つのみ図示)、一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。電極構造20は、担体12上に設けられる導電層30と、導電層30に電力を供給する電極40とを有する。この電極構造20は、担体12の外周面に固定され、担体12の外周面に沿って緩やかに湾曲している。
【0017】
導電層30は、金属材料(例えば、NiCr合金やCoNiCrAl合金)などで構成される。導電層30は、担体12と電極40との熱膨張率の差を緩和するため、担体12を構成するセラミックスの線膨張係数と、電極40を構成する金属の線膨張係数との間の線膨張係数を有する金属材料で構成されている。
【0018】
導電層30は、少なくとも一部が多孔質である(本実施形態では、全体が多孔質である)ので、担体12と電極40との熱膨張率の差を吸収するように、部分的に弾性変形可能である。また、導電層30は、少なくとも一部が多孔質であるので、担体12と電極40とが互いを拘束するのを抑制する。さらに、導電層30は、少なくとも一部が多孔質であるので、緻密質である場合に比べて低いヤング率を有している。従って、導電層30は、温度が変化したときに、担体12と電極40との間に生じる熱応力を低減、緩和でき、担体12に対する電極40の剥離を抑制できる。
【0019】
導電層30は、電極40と接触する表面に微細な凹凸を有している。
【0020】
電極40は、導電性を有する金属(例えば、ステンレス鋼)で構成されている。電極40は、板状に形成され、担体12の外周に沿って僅かに湾曲している。電極40の厚さは、目的に応じて設定されるが、例えば0.05〜0.3mmである。
【0021】
電極40は、例えば図2に示すように、導電層30の凹凸の凹部32に入り込んだアンカー部46を有する。このように、アンカー効果で電極40と導電層30とを結合すると、電極40と導電層30とをロウ付けで結合する場合に比べて、導電層30がほとんど劣化しないので、導電層30の応力緩和層としての効果を十分に発現できる。また、電極40が直接に導電層30と結合するので、電極40と導電層30の両者の上に固定膜を形成する場合に比べて、小型化が可能である。
【0022】
電極40は、互いに離間する複数の位置(図1参照)で、導電層30に局所的に結合する。そうすると、結合面積が小さいので、温度が変化したときに、担体12と電極40との間に生じる熱応力を低減できる。
【0023】
電極40は、担体12に対して占める面積が小さくなるよう、櫛状に形成されている。これによって、担体12と電極40との熱膨張率の差による影響をより削減できる。
【0024】
例えば、電極40は、図1に示すように、帯状部42と、帯状部42から所定方向に延出する複数の櫛歯部44とを有し、各櫛歯部44は、図2に示すように、導電層30の凹凸の凹部32に入り込んだアンカー部46を有する。
【0025】
図3は、電気加熱型触媒10の製造方法の説明図である。図4は、電極40となる金属板50の平面図である。
【0026】
本実施形態では、担体12上に、少なくとも一部が多孔質であって、電極40と接触する表面に微細な凹凸を有する導電層30を形成する。次いで、導電層30上で、電極40となる金属板50の少なくとも一部を通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が導電層30の凹凸の凹部32に入り込み、凝固してアンカー部46(図2参照)を形成する。溶融部分は、導電層30の表層と化学反応して結合する。
【0027】
導電層30は、例えば溶射法で形成される。溶射法としては、例えば粉末式フレーム溶射法、プラズマ溶射法、高速フレーム溶射法などがある。これらの溶射法の中でも、溶射膜の酸化の抑制、および、担体12の衝撃負荷の軽減の観点から、プラズマ溶射法が好ましい。溶射法の代わりに、メッキ法、CVD法、PVD法などで導電層30を形成することも可能である。
【0028】
導電層30は、金属材料(例えば、NiCr合金やCoNiCrAl合金)に添加物を混ぜた混合粒子を、担体12上に溶射して形成される。添加物としては、例えばグラファイト、ポリエチレン(PE)などの合成樹脂が用いられる。これらの添加物は、溶射時に焼失し、または、溶射後に取り除かれる。添加物の添加量で、導電層30の気孔率を調整可能である。
【0029】
電極40は、金属板50の少なくとも一部を通電加熱して溶融させることで形成される。具体的には、例えば図3に示すように、外部電源に接続された給電端子62、64を、金属板50の互いに離間する位置に接触させ、これらの接触位置の間を通電加熱する。外部電源としては、交流電源、直流電源のいずれも使用可能である。外部電源から供給される電力は、金属板50の電気抵抗などに応じて設定される。
【0030】
金属板50は、少なくとも一部が多孔質な導電層30に比べて、電気抵抗が低い。そのため、金属板50に選択的に通電でき、金属板50を選択的に加熱できる。よって、通電時間を短縮でき、金属板30の溶融時間を短縮できるので、導電層30の劣化を抑制できる。よって、導電層30の応力緩和効果が十分に得られる。
【0031】
金属板50の通電時間は、金属板50の電気抵抗などに応じて選択されるが、例えば0.1秒以下であって、0.02秒以下とすることも可能である。このように、通電時間が短いと、導電層30の劣化を抑制できる他、生産性が良い。
【0032】
金属板50を部分的に通電加熱して溶融させることで、電極40が互いに離間する複数の位置で導電層30に局所的に結合する。そうすると、結合面積が小さいので、温度が変化したときに、担体12と電極40との間に生じる熱応力を低減できる。
【0033】
金属板50は、電極40と略同一形状であって、櫛状に形成されている。金属板50は、図4に示すように、帯状部52と、帯状部52から所定方向に延出する複数の櫛歯部54とで構成されている。各櫛歯部54の幅Wは、例えば1〜3mmである。このように、金属板50、ひいては、電極40を櫛状に形成すると、担体12上で電極40が占める面積を小さくでき、電極40と担体12との熱膨張差の影響そのものを小さくできる。
【0034】
各櫛歯部54を部分的に通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が導電層30の凹凸の凹部32に入り込み、凝固してアンカー部46(図2参照)を形成すると、櫛歯部44の一部が導電層30に結合する。各櫛歯部44は、互いに離れた複数の箇所(図1参照)で、導電層30に局所的に結合しており、結合箇所以外では、自由に弾性変形可能である。
【0035】
そのため、電気加熱型触媒10が温度変化するとき、担体12と電極40との熱膨張率の差に起因する応力を、各櫛歯部44の弾性変形によって吸収できる。従って、担体12と電極40との剥離を制限できる。
【0036】
各櫛歯部54を部分的に通電加熱する場合、2つの給電端子62、64の間のギャップG(図3参照)を、各櫛歯部54の幅W以下とすると、溶融部分の凝固時の「ひけ」を抑制でき、溶融部分での断線を抑制できる。
【0037】
このようにして、電気型加熱触媒10を製造する。この電気型加熱触媒10は、電極構造20を介して、外部電源から担体12に電力が供給されると、担体12が通電加熱され、触媒が暖められ活性化する。
【0038】
[第2の実施形態]
上記の第1の実施形態では、担体と電極との間に設けられる導電層が単層構造であって、導電層の全体が多孔質である。
【0039】
これに対し、本実施形態の導電層は、2層構造である。なお、導電層は、3層以上の層で構成されても良い。
【0040】
図5は、本発明の第2の実施形態に係る電気加熱型触媒の要部断面図であって、図2に相当する要部断面図である。図5において、図1〜図4と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0041】
電気加熱型触媒100は、例えば車両の排気ガスの通路に設置され、排気ガスを浄化するものである。電気加熱型触媒100は、触媒を担持する担体12と、担体12に電力を供給する電極構造120とを有する。電極構造120を介して、外部電源から担体12に電力が供給されると、担体12が通電加熱され、触媒が暖められ活性化する。
【0042】
電極構造120は、担体12に電力を供給するため、担体12上に2つ設けられ(図5には1つのみ図示)、一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。電極構造120は、担体12上に設けられる導電層130と、導電層130に電力を供給する電極140とを有する。この電極構造120は、担体12の外周面に固定され、担体12の外周面に沿って緩やかに湾曲している。
【0043】
導電層130は、金属材料(例えば、NiCr合金やCoNiCrAl合金)などで構成される。導電層130は、担体12と電極140との熱膨張率の差を緩和するため、担体12を構成するセラミックスの線膨張係数と、電極140を構成する金属の線膨張係数との間の線膨張係数を有する金属材料で構成されている。
【0044】
導電層130は、少なくとも一部が多孔質であって、例えば図5に示すように、多孔質な第1層134と、第1層134と電極140との間に設けられ、第1層134よりも緻密な第2層136とを有する。
【0045】
第1層134は、図2に示す導電層30と同様に、金属材料に添加物を混ぜた混合粒子を担体12上に溶射して形成される。添加物は、溶射時に焼失し、または、溶射後に取り除かれる。添加物の添加量で、第1層134の気孔率を調整可能である。
【0046】
第1層134は、多孔質であるので、図2に示す導電層30と同様に、温度が変化したときに、担体12と電極140との間に生じる熱応力を低減、緩和できる。
【0047】
第2層136は、金属材料を含む粒子を担体12上に溶射して形成される。第2層136では、第1層134に比べて、溶射粒子への添加物の添加量が少なく、添加量が0であっても良い。第2層136の金属材料は、第1層134の金属材料と同じ材料でも、異なる材料でも良い。
【0048】
第2層136は、第1層134よりも緻密であり、第1層134よりも応力緩和層としての効果が弱いので、第1層134よりも薄く形成されて良い。第2層136は、電極140と接触する表面に微細な凹凸を有している。
【0049】
電極140は、例えば図5に示すように、第2層136の凹凸の凹部132に入り込んだアンカー部146を有する。このように、アンカー効果で電極140と導電層130とを結合すると、第1の実施形態と同様に、導電層130の応力緩和層としての効果を十分に発現できる。また、電極140が直接に導電層130と結合するので、電極140と導電層130の両者の上に固定膜を形成する場合に比べて、小型化が可能である。
【0050】
これに加えて、本実施形態では、電極140のアンカー部146が、応力緩和層である第1層134に比べて、緻密で高強度な第2層136の凹凸の凹部132に入り込んでいるので、担体12に対する電極140の剥離強度をさらに向上できる。
【0051】
電極140は、図2に示す電極40と同様に、図4に示す金属板50の少なくとも一部を通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が導電層130の凹凸の凹部132に入り込み、凝固してアンカー部146を形成する。溶融部分は、導電層130の表層と化学反応して結合する。
【0052】
[第3の実施形態]
上記の第2の実施形態では、導電層が溶射で形成されるので、導電層の電極と接触する表面に、微細な凹凸があり、凹凸の凸部の先端がうねっている(湾曲している)。
【0053】
これに対し、本実施形態では、導電層の電極と接触する表面は、平坦面と、平坦面に点在する凹部とで構成されている。
【0054】
図6は、本発明の第3の実施形態に係る電気加熱型触媒の構成図であって、図2や図5に相当する要部断面図である。図6において、図1〜図5と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
【0055】
電気加熱型触媒200は、例えば車両の排気ガスの通路に設置され、排気ガスを浄化するものである。電気加熱型触媒200は、触媒を担持する担体12と、担体12に電力を供給する電極構造220とを有する。電極構造220を介して、外部電源から担体12に電力が供給されると、担体12が通電加熱され、触媒が暖められ活性化する。
【0056】
電極構造220は、担体12に電力を供給するため、担体12上に2つ設けられ(図6には1つのみ図示)、一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。電極構造220は、担体12上に設けられる導電層230と、導電層230に電力を供給する電極240とを有する。
【0057】
導電層230は、金属材料(例えば、NiCr合金やCoNiCrAl合金)などで構成される。導電層230は、担体12と電極240との熱膨張率の差を緩和するため、担体12を構成するセラミックスの線膨張係数と、電極240を構成する金属の線膨張係数との間の線膨張係数を有する金属材料で構成されている。
【0058】
導電層230は、少なくとも一部が多孔質であって、第2の実施形態と同様に、多孔質な第1層234と、第1層234と電極240との間に設けられ、第1層234よりも緻密な第2層236とを有する。第2層236は、電極240と接触する表面に微細な凹凸を有しており、この凹凸の凹部232に、電極240のアンカー部246が入り込んでいる。従って、第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0059】
導電層230(詳細には、第2層236)の電極240と接触する表面は、平坦面238と、平坦面238上に点在する凹部232とで構成されている。これは、第2層236の表面を、平坦な研磨パッドで研磨加工することで実現される。
【0060】
研磨加工では、ポリエステルなどの合成樹脂で構成される研磨パッドと、アルミナやダイヤモンドなどの研磨砥粒(例えば平均体積粒径9μm)とが用いられる。平坦面238には、電極240が面接触している。
【0061】
本実施形態では、導電層230(詳細には、第2層236)の平坦面238に、電極240が接触している。そのため、電極240が、導電層230に密接に接触するので、電極240のアンカー部246が、導電層230に確実に入り込める。よって、担体12に対する電極240の剥離強度を向上できる。
【0062】
電極240は、図2に示す電極40と同様に、図4に示す金属板50の少なくとも一部を通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が導電層230の凹凸の凹部232に入り込み、凝固してアンカー部246を形成する。溶融部分は、導電層230の表層と化学反応して結合する。
【0063】
以上、本発明の第1〜第3の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に種々の変形および置換を加えることができる。
【0064】
例えば、第1〜第3の実施形態において、セラミックス基材は、触媒を担持する担体であるとしたが、その用途に制限はなく、例えば、回路基板であっても良い。
【0065】
また、第1〜第3の実施形態において、電極構造は、セラミックス基材に電力を供給するものであるとしたが、その用途に制限はなく、例えば、セラミックス基材上に設けられる回路パターンに電気信号を送るものであっても良い。
【0066】
また、第1の実施形態において、第3の実施形態と同様に、導電層の電極と接触する表面を、平坦面と、平坦面に点在する凹部とで構成しても良い。
【符号の説明】
【0067】
10 電気加熱型触媒
12 担体(セラミックス基材)
20 電極構造
30 導電層
32 凹部
40 電極
42 帯状部
44 櫛歯部
46 アンカー部
134 第1層
136 第2層
238 平坦面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基材上に設けられる導電層と、該導電層に固定される電極とを有する電極構造において、
前記導電層は、少なくとも一部が多孔質であって、前記電極と接触する表面に微細な凹凸を有し、
前記電極は、前記導電層の凹凸の凹部に入り込んだアンカー部を有する電極構造。
【請求項2】
前記導電層は、多孔質な第1層と、該第1層と前記電極との間に設けられ、該第1層よりも緻密な第2層とを有し、該第2層は、前記電極と接触する表面に微細な凹凸を有し、
前記電極は、前記第2層の凹凸の凹部に入り込んだアンカー部を有する請求項1に記載の電極構造。
【請求項3】
前記導電層の前記電極と接触する表面は、平坦面と、該平坦面に点在する複数の凹部とで構成される請求項1または2に記載の電極構造。
【請求項4】
前記電極は、互いに離間する複数の位置で、前記導電層に結合する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電極構造。
【請求項5】
前記電極は、櫛状に形成されており、帯状部と、該帯状部から所定方向に延出する複数の櫛歯部を有し、各櫛歯部は、前記導電層の凹凸の凹部に入り込んだアンカー部を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極構造。
【請求項6】
前記導電層は、溶射で形成される溶射層である請求項1〜5のいずれか1項に記載の電極構造。
【請求項7】
セラミックス基材である、触媒を担持する担体と、該担体に電力を供給する電極構造とを有する電気加熱型触媒において、
前記電極構造は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の電極構造である、電気加熱型触媒。
【請求項8】
セラミックス基材上に設けられる導電層と、該導電層に固定される電極とを有する電極構造の製造方法において、
セラミックス基材上に、少なくとも一部が多孔質であって、前記電極と接触する表面に微細な凹凸を有する導電層を形成した後、該導電層上で、前記電極となる金属板の少なくとも一部を通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が前記導電層の凹凸の凹部に入り込み、凝固してアンカー部を形成する電極構造の製造方法。
【請求項9】
前記導電層は、多孔質な第1層と、該第1層と前記電極との間に設けられ、該第1層よりも緻密な第2層とを有し、該第2層は、前記電極と接触する表面に微細な凹凸を有し、
該第2層上で、前記金属板の少なくとも一部を通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が前記第2層の凹凸の凹部に入り込み、凝固してアンカー部を形成する請求項8に記載の電極構造の製造方法。
【請求項10】
前記導電層の前記電極と接触する表面を、平坦面と該平坦面に点在する複数の凹部とで構成するように、研磨加工した後、前記平坦面上で、前記金属板の少なくとも一部を通電加熱して溶融させる請求項8または9に記載の電極構造の製造方法。
【請求項11】
前記金属板を部分的に通電加熱して溶融させ、前記電極を互いに離間する複数の位置で前記導電層に結合させる請求項8〜10のいずれか1項に記載の電極構造の製造方法。
【請求項12】
前記金属板は、櫛状に形成されており、帯状部と、該帯状部から所定方向に延出する複数の櫛歯部を有し、
前記導電層上で、各櫛歯部を部分的に通電加熱して溶融させることで、溶融部分の一部が前記導電層の凹凸の凹部に入り込み、凝固してアンカー部を形成する請求項8〜11のいずれか1項に記載の電極構造の製造方法。
【請求項13】
前記導電層は、溶射で形成される溶射層である請求項8〜12のいずれか1項に記載の電極構造の製造方法。
【請求項14】
セラミックス基材である、触媒を担持する担体と、該担体に電力を供給する電極構造とを有する電気加熱型触媒の製造方法において、
前記電極構造を、請求項8〜13のいずれか1項に記載の電極構造の製造方法を用いて作製する、電気加熱型触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−149311(P2012−149311A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−9460(P2011−9460)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】