説明

電気光学装置および電子機器

【課題】画素回路内の記憶回路の電源線における電位の変動の影響を低減する。
【解決手段】能動素子層Pには、階調データDを記憶する記憶回路53を含む画素回路12が形成される。画素電極142は、能動素子層Pに重なるように形成されて階調データDに応じた電位が供給される。液晶146は、画素電極142の電位に応じて駆動される。電源線42および電源線44は記憶回路53に電源を供給する。電源線42および電源線44は、能動素子層Pと画素電極142との間に介在する部分を含む。電源線42と電源線44とは容量C1を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶素子などの電気光学素子を利用した電気光学装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
能動素子を構成する能動素子層に複数の配線層と画素電極とを積層した電気光学装置(例えば特許文献1の液晶装置)が従来から提案されている。画素電極は、能動素子層や配線層を覆うように形成されて電気光学層(例えば液晶装置の液晶)に電圧を印加する。また、特許文献2には、記憶回路(ラッチ回路)を具備する画素回路が開示されている。記憶回路は、階調を指定する階調データを記憶する。画素回路は、記憶回路が記憶する階調データに応じた電位を画素電極に供給する。
【特許文献1】特開平8−328034号公報
【特許文献2】特開2005−189274号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献2の画素回路のように記憶回路に電源が供給される構成のもとでは、複数の画素回路の記憶回路に対する階調データの書込時に電流が流れることで電源線の電位が瞬間的に変動するから、正確な階調データを記憶装置に安定的に書込および保持することは困難である。また、特許文献1のように能動素子層と電源線を含む配線層と画素電極とを積層した構成においては、電源線の電位の変動が能動素子層や画素電極の電位に影響するという問題もある。以上の事情に鑑みて、本発明は、画素回路内の記憶回路の電源線における電位の変動の影響を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
以上の課題を解決するために、本発明に係る電気光学装置は、階調データを記憶する記憶回路を含む画素回路が形成された能動素子層と、能動素子層に重なるように形成されて階調データに応じた電位が供給される画素電極と、画素電極の電位に応じて駆動される電気光学層(例えば液晶146)と、記憶回路に電源を供給する第1電源線および第2電源線とを具備し、第1電源線と第2電源線とは、能動素子層と画素電極との間に介在する部分を含み、第1電源線と第2電源線とは容量(例えば図2や図10の容量C1)を形成する。以上の構成においては、画素回路(特に記憶回路)に電源を供給する第1電源線と第2電源線とが容量を形成するから、第1電源線や第2電源線における電位の変動が抑制される。したがって、第1電源線や第2電源線の電位の変動に起因した不具合(例えば画素回路の誤動作や画素電極の電位の変動)が抑制されるという利点がある。
【0005】
ところで、画素回路に階調データを供給する信号線が形成された構成においては、信号線の電位(階調データのレベル)の変動に連動して、当該信号線に近接する要素の電位が変動するという問題が発生し得る。そこで、第1方向に延在する信号線を具備する電気光学装置において信号線の電位の影響を低減するという観点からすると、第1電源線が、信号線と同層から形成されて第1方向に延在する構成が好適である。以上の態様においては、第1電源線が信号線と同層から形成されて第1方向に延在するから、信号線での電位の変動が他の導電体に与える影響が低減されるという利点がある。
画素回路および画素電極の複数組を配列した構成に特に着目すると、第1方向に延在する複数の信号線と、相隣接する各信号線の間隙内にて第1方向に延在するように複数の信号線と同層から形成された複数の第1電源線とを形成した構成が好適である。以上の態様によれば、第1電源線が各信号線間のシールドとして機能するから、信号線間における電位の変動の影響が低減されるという利点がある。
なお、信号線の電位の変動が他の導電体に与える影響を低減するという効果は、信号線と第1電源線とを第1方向に平行に延在させることで実現される。したがって、信号線の電位の変動が他の導電体に与える影響を低減するという観点のみからすると、第1電源線と第2電源線とが容量を形成するという本発明の構成は省略され得る。
【0006】
複数の第1電源線が第1方向に延在する電気光学装置においては、第1方向に交差する第2方向に延在する補助配線(例えば図7の補助配線36)に複数の第1電源線を導通させた構成が好適である。以上の態様においては、各第1電源線における電位の変動が有効に抑制されるという利点がある。また、複数の第2電源線を具備する電気光学装置においては、各第2電源線を共通の補助配線に導通させた構成が好適である。
【0007】
本発明の第1の態様(例えば第1実施形態)において、第1電源線と第2電源線とは同層から形成される。以上の態様においては、第1電源線と第2電源線とが別層から形成される場合と比較して電源線の形成の工程が簡素化されるという利点がある。
【0008】
第1の態様の具体例において、第1電源線は、第2電源線側に突出する複数の第1突出部を含み、第2電源線は、複数の第1突出部の間隙内に位置する第2突出部を含む。すなわち、第1電源線および第2電源線の各々は、櫛歯状の形状に形成されて各々の櫛歯が相互に噛合うように配置される。以上の態様においては、例えば第1電源線および第2電源線の各々を単純な直線状とした場合と比較して、第1電源線の側端面と第2電源線の側端面とが対向する面積が増加するから、第1電源線と第2電源線とが形成する容量の容量値を充分に確保することが可能となる。
【0009】
第1の態様の具体例において、画素電極は、第1電源線と第2電源線との間隙の領域に重なるように光反射性の導電体で形成される。以上の態様においては、第1電源線と第2電源線との間隙の領域が画素電極で遮光されるから、能動素子層に対する光照射が有効に防止されるという利点がある。
【0010】
本発明の第2の態様において、第1電源線と第2電源線とは、別層から形成されて絶縁層を挟んで対向する。以上の態様においては、第1電源線と第2電源線とを同層から形成した構成と比較して、第1電源線と第2電源線とが対向する面積が増加する。したがって、第1電源線と第2電源線とが形成する容量の容量値を充分に確保することが可能となる。
【0011】
本発明の好適な態様において、第2電源線は、信号線と画素電極との間に介在する部分を含む。以上の態様においては、第2電源線が信号線と画素電極との間に介在するから、信号線の電位の変動(階調データのレベルの変動)が画素電極に与える影響が低減されるという利点がある。
また、第1電源線が、信号線と能動素子層との間に介在する部分を含む態様によれば、信号線の電位の変動が能動素子層(画素電極)に与える影響が低減されるという利点がある。
【0012】
本発明の好適な態様において、第1電源線および第2電源線や画素電極の寸法や位置は、画素回路内における第1電源線と第2電源線との容量の容量値が、第1電源線および第2電源線と画素電極とが形成する容量を上回るように選定される。例えば、第1の態様に係る電気光学装置において、第1電源線および第2電源線と同層から形成された中間導電体が画素回路と画素電極とを電気的に接続する場合、第1電源線と第2電源線との間隔は、第1電源線および第2電源線の各々と中間導電体(例えば図4の中間導電体62)との間隔よりも小さい寸法に設定される。以上の構成においては、第1電源線と第2電源線との容量が充分に確保されるから、第1電源線や第2電源線の電位の変動を抑制するという効果は格別に顕著となる。
【0013】
本発明に係る電気光学装置は各種の電子機器に利用される。電子機器の典型例は、電気光学装置を表示装置として利用した機器である。本発明に係る電子機器としてはパーソナルコンピュータや携帯電話機が例示される。もっとも、本発明に係る電気光学装置の用途は画像の表示に限定されない。例えば、光線の照射によって感光体ドラムなどの像担持体に潜像を形成するための露光装置(露光ヘッド)としても本発明の電気光学装置が適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
<A:第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。電気光学装置100は、電子機器に搭載されて画像を表示する表示装置として機能する。図1に示すように、電気光学装置100は、画素回路12および液晶素子14の複数組が配列された素子部(表示領域)10と、各画素回路12を駆動する走査線駆動回路22および信号線駆動回路24と、素子部10にて使用される電位(VDD,VSS)を生成する電源回路26とを具備する。
【0015】
素子部10には、X方向に延在する複数の走査線32と、X方向に交差するY方向に延在する複数の信号線34とが形成される。複数の画素回路12は、各走査線32と各信号線34との交差に配置されて行列状に配列する。図2に示すように、画素回路12は、相補型のMOSトランジスタで構成されて液晶素子14を駆動する。液晶素子14は、画素電極142と対向電極144との間に液晶146を介在させた容量であり、画素電極142と対向電極144との間の電圧に応じて液晶146の階調(透過率)が可変に設定される。
【0016】
図1に示すように、素子部10には、各信号線34とともにY方向に延在する複数の電源線42と複数の電源線(接地線)44とが形成される。電源回路26は、電源の高位側の電位VDDを生成して各電源線42に供給し、電源の低位側の電位VSSを生成して各電源線44に供給する。
【0017】
走査線駆動回路22は、1個のフィールド期間を区分した各サブフィールド期間にて複数の走査線32の各々を順次に選択する。図2に示すように、図1の走査線32は、走査線32Aと走査線32Bとで構成される。走査線32Aには、走査線駆動回路22による選択時にハイレベルとなる走査信号GAが供給され、走査線32Bには、走査信号GAの論理レベルを反転した走査信号GBが供給される。
【0018】
図1の信号線駆動回路24は、走査線駆動回路22による走査線32の選択に同期してサブフィールド期間毎に各信号線34に階調データDを出力する。階調データDは、液晶素子14のオン/オフを指定する1ビットのデジタルデータである。液晶素子14の階調は、1個のフィールド期間のうち当該液晶素子14がオン状態に制御されたサブフィールド期間の時間長の総和に応じて可変に制御される。
【0019】
図2に示すように、画素回路12は、スイッチ51とスイッチ52と記憶回路53と制御回路54とを具備する。スイッチ51およびスイッチ52の各々は、Nチャネル型およびPチャネル型のトランジスタを組合せたトランスファゲートである。スイッチ51およびスイッチ52は、走査信号GAおよび走査信号GBに応じて相補的に動作する。
【0020】
記憶回路53は、階調データDを記憶する回路(ラッチ回路)であり、インバータ回路532とインバータ回路534とを巡回的に接続した構成である。インバータ回路532およびインバータ回路534の各々は、電源線42と電源線44との間に介在するPチャネル型およびNチャネル型のトランジスタで構成される。スイッチ51は、信号線34とインバータ回路532の入力端との間に介在し、スイッチ52は、インバータ回路534の出力端とインバータ回路532の入力端との間に介在する。
【0021】
以上の構成においては、走査線駆動回路22による選択で走査信号GAがハイレベルに設定されると、スイッチ51がオン状態に変化することで階調データDが信号線34から記憶回路53に入力される。そして、走査信号GBがハイレベルに遷移すると、スイッチ52がオン状態に変化する(インバータ回路532とインバータ回路534とのループが形成される)ことで、直前に信号線34から供給されていた階調データDが記憶回路53に保持される。
【0022】
制御回路54は、記憶回路53に保持された階調データDに応じた電位(電位V1または電位V2)を液晶素子14の画素電極142に印加する。図2に示すように、制御回路54は、相補的に動作するスイッチ542とスイッチ544とで構成される。スイッチ542およびスイッチ544の各々は、Nチャネル型およびPチャネル型のトランジスタを組合せたトランスファゲートである。信号線34から記憶回路53に供給および保持された階調データDがハイレベルである場合、スイッチ544がオン状態に遷移することで画素電極142には電位V2(例えば液晶素子14をオン状態に制御する電位)が供給される。一方、階調データDがローレベルである場合、スイッチ542がオン状態に遷移することで画素電極142には電位V1(例えば液晶素子14をオフ状態に制御する電位)が供給される。
【0023】
図3は、電気光学装置100の断面図である。図3に示すように、電気光学装置100は、相互に間隔をあけて対向する第1基板91および第2基板92を具備する。液晶146は、第1基板91と第2基板92との間隙に封止される。図4は、第1基板91のうち第2基板92との対向面の要素を図示した平面図である。図4におけるIII−III線の断面図が図3に対応する。
【0024】
図3および図4に示すように、第1基板91のうち第2基板92との対向面の面上には、複数の画素電極142が行列状に配列する。図4においては画素電極142の外形が便宜的に破線で図示されている。各画素電極142は、矩形状に成形された光反射性の導電膜である。一方、第2基板92のうち第1基板91との対向面には、図3に示すように、光透過性の対向電極144が全面にわたって形成される。第1基板91上の各画素電極142と第2基板92上の対向電極144と両者間の液晶146とで液晶素子14が構成される。
【0025】
以上の構成においては、第2基板92側(観察側)からの入射光は、第2基板92と液晶146とを透過したうえで画素電極142の表面で反射し、液晶146と第2基板92とを透過して観察側に出射する。すなわち、本形態の電気光学装置100は、反射型の液晶装置である。なお、図3や図4においては、配向膜や着色層や遮光層の図示を省略した。
【0026】
第1基板91は、単結晶のシリコンで形成された板材である。図3に示すように、第1基板91のうち第2基板92との対向面には能動素子層Pが形成される。能動素子層Pは、画素回路12の各要素(スイッチ51,スイッチ52,記憶回路53,制御回路54)のトランジスタを第1基板91とともに構成する部分である。図4においては、画素回路12が形成される領域Aが鎖線で図示されている。
【0027】
能動素子層Pを被覆する絶縁層L1の表面には配線層W1が形成される。配線層W1は、例えばポリシリコンなどの導電体で形成されて走査線32Aや走査線32Bを含む。走査線32Aおよび走査線32Bは、絶縁層L1を貫通する導通孔を介して画素回路12(能動素子層P)に接続される。
【0028】
配線層W1を被覆する絶縁層L2の表面には配線層W2が形成される。配線層W2は、遮光性(例えば光反射性)の導電体で形成されて電源線42と電源線44と信号線34と中間導電体62とを含む。すなわち、電源線42と電源線44と信号線34と中間導電体62とは、単一の導電膜を選択的に除去することで共通の工程にて一括的に形成(以下では「同層から形成」という)される。配線層W2の各要素は、絶縁層L2に形成された導通孔を介して画素回路12(能動素子層P)に接続される。
【0029】
図4に示すように、複数の信号線34は、X方向に間隔をあけて並置されてY方向に延在する。複数の電源線42および複数の電源線44は、信号線34とともにY方向に延在する。さらに詳述すると、画素回路12の1列分に対応する電源線42および電源線44は、X方向に相隣接する各信号線34の間隙内に形成されてY方向に延在する。中間導電体62は、電源線42と電源線44との間隙に形成された島状の部分である。図4に示すように、各信号線34の間隙に位置する帯状の領域の殆どの部分は、電源線42および電源線44と中間導電体62とで被覆される。
【0030】
電源線42は、Y方向に延在する直線状の部分から電源線44に向けてX方向に突出する複数の突出部422を含む形状(櫛歯状)に形成される。同様に、電源線44は、Y方向に延在する直線状の部分から電源線42に向けてX方向に延在する複数の突出部442を含む。各突出部442は各突出部422の間隙内に位置する。すなわち、電源線42と電源線44とは、双方の複数の突出部(櫛歯)が噛合うように形成される。以上のように電源線42と電源線44とは近接するから、図2に示すように電源線42と電源線44とは容量C1を形成(容量結合)する。
【0031】
図3に示すように、複数の画素電極142は、配線層W2を被覆する絶縁層L3の表面に相互に間隔をあけて形成される。各画素電極142は、絶縁層L3に形成された導通孔を介して中間導電体62に電気的に接続される。すなわち、画素電極142と画素回路12(能動素子層P)とは、中間導電体62を介して電気的に接続される。図4のように第1基板91の表面に垂直な方向からみると、画素電極142は、画素回路12が形成された領域Aを完全に被覆する(すなわち、画素回路12の全周縁が領域Aの外側に位置する)。したがって、画素電極142は、図4に示すように、配線層W2の各要素の間隙(電源線42と電源線44との間隙,電源線42または電源線44と中間導電体62との間隙,電源線42または電源線44と信号線34との間隙)のうち領域A内の部分を被覆する。
【0032】
電源線42および電源線44や画素電極142および中間導電体62の寸法や位置は、電源線42と電源線44とで画素回路12内に形成される容量C1の容量値が、電源線42および電源線44と画素電極142(中間導電体62)とで形成される容量を上回るように選定される。例えば、図4に示すように、電源線42と電源線44との間隔(最小値)d1は、電源線42または電源線44と中間導電体62との間隔(最小値)d2を下回る。
【0033】
図2を参照して説明したように、階調データDの書込は1行分の複数の画素回路12について並列に実行される。階調データDの書込時に記憶回路53(インバータ回路532およびインバータ回路534)には電源線42から電源線44にわたる貫通電流が流れるから、電源線42や電源線44には電位の瞬間的な変動(ノイズ)が発生する場合がある。本形態においては、相近接して形成された電源線42と電源線44との間に容量C1が付随するから、階調データDの書込時に記憶回路53に貫通電流が発生した場合であっても、電源線42や電源線44における電位の変動は抑制(平滑化)される。したがって、各画素回路12に保持された階調データDが電源線42や電源線44のノイズの影響で変化(破損)するといった問題が解消される。すなわち、各画素回路12の記憶回路53に対して階調データDを安定的に書込むことが可能である。また、電源線42や電源線44における電位の変動が画素電極142や能動素子層P(画素回路12の各トランジスタ)位に与える影響が低減されるから、画素回路12や液晶素子14の誤動作が防止されるという利点もある。
【0034】
さらに、本形態においては、各突出部422が各突出部442の間隙内に位置するように電源線42および電源線44が形成されるから、単純な直線状の電源線42および電源線44が相隣接するだけの構成と比較して、電源線42の側端面と電源線44の側端面とが対向する面積(したがって、電源線42と電源線44との間の容量C1)が充分に確保される。したがって、電源線42や電源線44の電位の変動を抑制するという効果は格別に顕著である。
【0035】
なお、液晶146を透過した第2基板92側からの入射光が能動素子層Pに到達すると、能動素子層Pのトランジスタに光電流が発生して画素回路12の誤動作の原因となる。本形態においては、画素回路12が形成された領域Aを被覆するように遮光性の電源線42や電源線44(さらには信号線34や中間導電体62)が形成されるから、能動素子層Pに対する光照射(ひいては画素回路12の誤動作)が有効に防止される。なお、配線層W2の各要素の間隙は第2基板92側からの入射光の経路となり得るが、画素回路12の領域A内においては配線層W2の各要素の間隙の領域が画素電極142で覆われる。したがって、能動素子層Pに対する光照射を有効に遮断できる(ひいては画素回路12の誤動作を防止できる)という利点がある。
【0036】
また、相隣接する各信号線34の間隙内に電源線42や電源線44が形成される。すなわち、各信号線34間は、電源線42および電源線44でシールドされる。したがって、相隣接する2本の信号線34の一方における電位の変動(階調データDの変化)が他方の電位に与える影響は、各信号線34の間隙に導電体が存在しない構成と比較して抑制される。したがって、以上の観点からしても、各画素回路12の記憶回路53に対して階調データDを安定的に書込むという効果は有効に実現される。また、電源線42と電源線44と信号線34とが同層から形成されるので、各々が別層から形成される構成と比較して、電気光学装置100の製造の工程が簡素化されるという利点もある。
【0037】
<B:第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、以下の各形態において作用や機能が第1実施形態と同等である要素については、以上と同じ符号を付して各々の詳細な説明を適宜に省略する。図5は、電気光学装置100の断面図であり、図6は、第1基板91のうち第2基板92との対向面の要素の平面図である。図6におけるV−V線の断面図が図5に相当する。
【0038】
図5に示すように、配線層W1を被覆する絶縁層L2の面上には、配線層W2が遮光性の導電体で形成される。図5および図6に示すように、配線層W2は、画素回路12の列毎に形成された信号線34および電源線42と、画素回路12毎に形成された中間導電体64および中間導電体66とを含む。
【0039】
各電源線42は、相隣接する各信号線34の間隙内にてY方向に延在するように帯状に形成される。図6に示すように、電源線42には開口部O1および開口部O2が各画素回路12の領域A内に形成される。中間導電体64は開口部O1の内側に形成され、中間導電体66は開口部O2の内側に形成される。中間導電体64および中間導電体66の各々は、絶縁層L2および絶縁層L1を貫通する導通孔を介して画素回路12(能動素子層P)に導通する。
【0040】
図5に示すように、配線層W2を覆う絶縁層L3の面上には配線層W3が形成される。なお、図6においては配線層W3の図示が省略されている。配線層W3は、遮光性の導電体で形成されて電源線44と中間導電体68とを含む。すなわち、電源線42と電源線44とを同層から形成した第1実施形態に対し、本形態においては電源線42と電源線44とが別層から形成される。
【0041】
電源線44は、素子部10内の複数の画素回路12(好適には総ての画素回路12)にわたって連続する導電膜である。図5に示すように、電源線42と電源線44とは絶縁層L3を挟んで対向する。したがって、電源線42と電源線44とは、絶縁層L3を誘電体として図2の容量C1を形成(容量結合)する。
【0042】
電源線44は、絶縁層L3に形成された導通孔を介して配線層W2の中間導電体64(図6)に導通する。したがって、電源線44は、中間導電体64を介して画素回路12(能動素子層P)に電気的に接続される。また、図5に示すように、電源線44には、電源線42の開口部O2に重なるように開口部O3が形成される。中間導電体68は開口部O3の内側に形成される。図5および図6に示すように、中間導電体68は、絶縁層L3に形成された導通孔を介して中間導電体66に導通する。
【0043】
配線層W3を被覆する絶縁層L4の面上に複数の画素電極142が形成される。図5に示すように、画素電極142は、絶縁層L4を貫通する導通孔を介して中間導電体68に導通する。すなわち、画素電極142は、配線層W3の中間導電体68と配線層W2の中間導電体66とを介して画素回路12(能動素子層P)に導通する。図5に示すように、各画素電極142と信号線34との間には電源線44が介在する。したがって、信号線34における電位の変動が画素電極142の電位に与える影響を低減する(すなわち電源線44をシールドとして機能させる)ことが可能である。
【0044】
電源線42および電源線44や画素電極142や各中間導電体(64,66,68)の寸法や位置は、電源線42と電源線44とで画素回路12内に形成される容量C1の容量値が、電源線42や電源線44と画素電極142(中間導電体66)とで形成される容量を上回るように選定される。例えば、図6に示すように、電源線42と中間導電体64との間隔d3は、電源線42と中間導電体66との間隔d4や電源線44と中間導電体68との間隔d4を下回る。また、図5に示すように、電源線42と電源線44との間隔t1は、電源線44と画素電極142との間隔t2を下回る。
【0045】
以上の形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。例えば、電源線42と電源線44との間に容量C1が形成されるから、第1実施形態と同様に、記憶回路53に対して安定的に階調データDが書込および保持され、電源線42や電源線44の電位に連動した画素電極142および能動素子層Pの電位の変動が抑制される。さらに、各信号線34の間隙内に電源線42が形成されるから、各信号線34の電位の変化が他の信号線34に与える影響が低減される。また、遮光性の電源線44が能動素子層Pを被覆するから、能動素子層Pに対する光照射(ひいては画素回路12の誤動作)が有効に防止される。本形態においては特に電源線44が基板の全面にわたって連続するから、能動素子層Pに対する光照射を低減するという効果は、第1実施形態と比較して格別に顕著である。
【0046】
<C:第3実施形態>
図7は、本発明の第3実施形態に係る電気光学装置100の平面図(図4に対応する平面図)である。本形態の電気光学装置100は、画素回路12の行毎に形成された複数の補助配線36を第1実施形態に追加した構成である。図7に示すように、各補助配線36は、例えば走査線32(走査線32A,走査線32B)と同層から形成されてX方向に延在する。すなわち、第1基板91の表面に垂直な方向からみると、各補助配線36は、Y方向に延在する電源線42や電源線44に交差する。各電源線42は、絶縁層L2を貫通する導通孔を介して補助配線36に電気的に接続される。すなわち、複数の電源線42は、補助配線36を介して相互に導通する。
【0047】
以上の形態においては、複数の電源線42が素子部10内で補助配線36を介して相互に導通するから、各電源線42が導通しない構成と比較して、各電源線42における電位の変動が抑制されるという利点がある。なお、図7においては各電源線42を補助配線36で導通させた構成を例示したが、この構成に代えて、またはこの構成とともに、複数の電源線44を補助配線36に導通させた構成も採用される。また、第2実施形態の複数の電源線42を補助配線36に導通させた構成も好適である。
【0048】
<D:変形例>
以上の各形態は様々に変形される。各形態に対する変形の具体的な態様を以下に例示する。なお、以下の例示から2以上の態様を任意に選択して組合わせてもよい。
【0049】
(1)変形例1
以上の各形態においては信号線34と電源線42とを同層から形成したが、信号線34と電源線42とを別層から形成した構成も好適である。例えば、図8に示すように、絶縁層L2の表面に電源線42を形成し、電源線42を覆う絶縁層LAの表面に信号線34を形成した構成も好適である。図8の構成においては、各信号線34と画素回路12(能動素子層P)との間に電源線42が介在するから、信号線34における電位の変動が能動素子層Pの電位に与える影響(例えば画素回路12の誤動作)を防止することが可能である。また、図9に示すように、信号線34と能動素子層Pとの間に電源線42が介在する図8の構成と、信号線34と画素電極142との間に電源線44が介在する第2実施形態(図6)の構成とを組合わせれば、画素電極142および能動素子層Pの双方に対する信号線34の電位の変動の影響が低減されるという利点がある。
【0050】
(2)変形例2
画素回路12の構成は適宜に変更される。例えば、図10の画素回路12は、図2の画素回路12の制御回路54を省略した構成である。すなわち、記憶回路53におけるインバータ回路532の出力端に液晶素子14の画素電極142が接続される。もっとも、以上の各形態においては、電源線42および電源線44の電位の変動が抑制されるから、電源線42および電源線44から電源の供給を受けて動作する回路(典型的には図2や図10の記憶回路53)を含む画素回路12が配列された電気光学装置100に本発明は格別に好適である。
【0051】
(3)変形例3
電源線42および電源線44に供給される電位の高低は変更される。例えば、電源線42に低位側の電位VSSが供給されるとともに電源線44に高位側の電位VDDが供給される構成も好適である。
【0052】
(4)変形例4
本発明の電気光学層は液晶146に限定されない。例えば、正負の一方に帯電した黒色粒子と正負の他方に帯電した白色粒子とを分散媒とともに封止した複数のマイクロカプセル(電気泳動素子)を電気光学層として利用した電気泳動装置にも本発明は適用される。マイクロカプセルの駆動には図2や図10の画素回路12が利用される。液晶素子14やマイクロカプセル(電気泳動素子)のように、画素電極142の電位に応じて光学的な特性(階調や輝度)が変化する要素が、本発明の電気光学層として好適に利用される。
【0053】
<E:応用例>
次に、以上の各形態に係る電気光学装置100を利用した電子機器について説明する。図11は、電気光学装置100を利用した投射型表示装置(プロジェクタ)の構成を示す模式図である。図11に示すように、投射型表示装置80は、3個の電気光学装置100(100R,100G,100B)を具備する。電気光学装置100Rは赤色光rの変調に利用され、電気光学装置100Gは緑色光gの変調に利用され、電気光学装置100Bは青色光bの変調に利用される。
【0054】
ミラー82で反射された光源81からの出射光(白色光)は、ダイクロイックミラー83およびダイクロイックミラー84で赤色光rと緑色光gと青色光bとに分離される。赤色光rは、ミラー86にて反射したうえで偏光ビームスプリッタ85Rから電気光学装置100Rに入射する。緑色光gは偏光ビームスプリッタ85Gから電気光学装置100Gに入射し、青色光bは偏光ビームスプリッタ85Bから電気光学装置100Bに入射する。各電気光学装置100(100R,100G,100B)からの出射光(画素電極142での反射光)は、ダイクロイックプリズム87による合成後に投射レンズ88を通過してスクリーン89に投射される。したがって、スクリーン89にはカラー画像が表示される。
【0055】
なお、本発明の電気光学装置が適用される電子機器としては、図11に例示した投射型表示装置のほか、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA:Personal Digital Assistants)、デジタルスチルカメラ、テレビ、ビデオカメラ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電子ペーパー、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、プリンタ、スキャナ、複写機、ビデオプレーヤ、タッチパネルを備えた機器等などが挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電気光学装置のブロック図である。
【図2】画素回路の回路図である。
【図3】電気光学装置の断面図である。
【図4】第1基板の面上の要素の平面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係る電気光学装置の断面図である。
【図6】第1基板の面上の要素の平面図である。
【図7】第3実施形態に係る電気光学装置における第1基板の面上の要素の平面図である。
【図8】変形例における電源線と信号線との関係を示す断面図である。
【図9】変形例における電源線と信号線との関係を示す断面図である。
【図10】変形例に係る画素回路の回路図である。
【図11】電子機器(投射型表示装置)の模式図である。
【符号の説明】
【0057】
100……電気光学装置、10……素子部、12……画素回路、14……液晶素子、22……走査線駆動回路、24……信号線駆動回路、26……電源回路、32,32A,32B……走査線、34……信号線、42,44……電源線、53……記憶回路、54……制御回路、62,64,66,68……中間導電体、P……能動素子層、L1,L2,L3……絶縁層、W1,W2,W3,W4……配線層、142……画素電極、144……対向電極、146……液晶。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
階調データを記憶する記憶回路を含む画素回路が形成された能動素子層と、
前記能動素子層に重なるように形成されて前記階調データに応じた電位が供給される画素電極と、
前記画素電極の電位に応じて駆動される電気光学層と、
前記記憶回路に電源を供給する第1電源線および第2電源線とを具備し、
前記第1電源線と前記第2電源線とは、前記能動素子層と前記画素電極との間に介在する部分を含み、前記第1電源線と前記第2電源線とは容量を形成する
電気光学装置。
【請求項2】
第1方向に延在して前記画素回路に前記階調データを供給する信号線を具備し、
前記第1電源線は、前記信号線と同層から形成されて前記第1方向に延在する
請求項1の電気光学装置。
【請求項3】
前記画素回路および前記画素電極の複数組と、
第1方向に延在して前記各画素回路に前記階調データを供給する複数の信号線と、
相隣接する各信号線の間隙内にて前記第1方向に延在するように前記複数の信号線と同層から形成された複数の前記第1電源線と
を具備する請求項1の電気光学装置。
【請求項4】
前記第1方向に交差する第2方向に延在する補助配線を具備し、
前記複数の第1電源線は、前記補助配線に導通する
請求項3の電気光学装置。
【請求項5】
前記第1電源線と前記第2電源線とは、同層から形成される
請求項1から請求項4の何れかの電気光学装置。
【請求項6】
前記第1電源線は、前記第2電源線側に突出する複数の第1突出部を含み、
前記第2電源線は、前記複数の第1突出部の間隙内に位置する第2突出部を含む
請求項5の電気光学装置。
【請求項7】
前記画素電極は、前記第1電源線と前記第2電源線との間隙の領域に重なるように光反射性の導電体で形成される
請求項5または請求項6の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1電源線および前記第2電源線と同層から形成されて前記画素回路と前記画素電極とを電気的に接続する中間導電体を具備し、
前記第1電源線と前記第2電源線との間隔は、前記第1電源線および前記第2電源線の各々と前記中間導電体との間隔よりも小さい
請求項5から請求項7の何れかの電気光学装置。
【請求項9】
前記第1電源線と前記第2電源線とは、別層から形成されて絶縁層を挟んで対向する
請求項1から請求項4の何れかの電気光学装置。
【請求項10】
前記第2電源線は、前記信号線と前記画素電極との間に介在する部分を含む
請求項2から請求項4の何れかの電気光学装置。
【請求項11】
前記第1電源線は、前記信号線と前記能動素子層との間に介在する部分を含む
請求項2から請求項4の何れかの電気光学装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11の何れかの電気光学装置を具備する電子機器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−54857(P2010−54857A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220406(P2008−220406)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】