説明

電気光学装置の製造方法

【課題】高品位な表示を安定して得ることのできる電気光学装置の製造プロセスを実現することが可能な電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】TFTアレイ基板10上において、下地絶縁膜520上にエッチング停止層550を形成し、エッチング停止層550の上方に複数の走査線11aと該複数の走査線11aを相互に短絡する共通配線13とを形成し、下地絶縁膜520上に複数のTFT30を形成し、第1層間絶縁膜521を形成し、第1層間絶縁膜521上に複数のデータ線6aを形成した後に、第1層間絶縁膜521にエッチングにより切断用孔507を形成することによって共通配線13を切断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気光学装置の製造方法に関し、特に基板上に、複数のデータ線と複数の走査線と複数の駆動素子とを備えた電気光学装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、絶縁性の基板上に、複数のデータ線及び複数の走査線と、複数のデータ線及び複数の走査線の各交差に対応して画素毎に形成された複数の駆動素子と、駆動素子毎に対応して設けられた画素電極とを備える電気光学装置として、アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置が知られている。
【0003】
アクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を製造する際、絶縁性の基板上に、半導体層や各種導電膜を、ドライエッチング法やプラズマCVD法により形成することで、画素電極やデータ線、走査線、走査線及びデータ線と電気的に接続された画素スイッチング用の薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor; 以下、TFTと称する。)等が形成される。この際、プラズマCVD法による成膜等により基板表面に蓄積された電荷や、静電気に起因して、走査線等に突発的な過剰電流が発生することがある。このような過剰電流により、走査線の破損や、特に走査線に接続された又は走査線の一部からなるTFTのゲートとソース・ドレインとの間において絶縁破壊が生じる虞がある。
【0004】
そのため、特許第3395598号公報には、過剰な電流の発生を防止するために、複数の走査線のそれぞれに電気的に接続する短絡用配線を形成しておき、短絡用配線を介して、電荷や静電気を基板外周側に拡散させる技術が開示されている。特許第3395598号公報においては、TFT等を形成した後に、短絡用配線を切断し、各走査線を電気的に分離させている。
【0005】
短絡用配線の切断方法は、以下の通りである。TFTと画素電極とを層間絶縁する層間絶縁膜に、画素電極とTFTとを電気的に接続するためのコンタクトホールを形成する際に、層間絶縁膜の表面から短絡用配線に至る、短絡部分切断用孔を同時に形成する。そして、画素電極を形成する導電膜を形成した後に、フォトリソグラフィ法及びエッチング法を用いて、この導電膜をパターニングする際に、同時に切断用孔を介して走査線の短絡部分を切断する。
【特許文献1】特許第3395598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来においては、短絡用配線を切断するための切断用孔を形成した後に導電膜を形成しているため、切断用孔の底部及び側壁部にも導電膜が形成される。また、さらに導電膜をパターニングすることで画素電極を形成するためのレジストが切断用孔内に積層される。このレジストをフォトリソグラフィ法によりパターニングする際、切断用孔のアスペクト比が大きいことから、露光精度を高めても切断用孔内にレジストが残存してしまい、短絡用配線を切断できない虞がある。したがって、短絡用配線を確実に電気的に切断するためには、切断用孔内のレジスト及び導電膜を完全に除去せねばならない。よって、短絡用配線を切断する際には、切断用孔内の導電膜及びレジストを同時に除去するために、過剰なエッチングを施さねばならない。
【0007】
短絡用配線の下層には、層間絶縁膜である下地絶縁膜が形成されており、さらに下層には下側遮光膜が形成されている。切断用孔内に過剰なエッチングを施した場合、切断用孔の下部において、下地絶縁膜が薄くなる、もしくはエッチングが下側遮光膜にまで到達してしまう可能性がある。これにより、切断用孔の近傍の下側遮光膜にクラックが発生し、当該箇所からの光漏れによる表示不具合が発生し、液晶装置の製造の歩留りを低下させてしまう虞があった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、高品位な表示を安定して得ることのできる電気光学装置の製造プロセスを実現することが可能な電気光学装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る電気光学装置の製造方法は、基板上に、複数のデータ線と、複数の走査線と、前記複数のデータ線と前記複数の走査線の交差に対応してそれぞれが画素毎に形成された複数の駆動素子と、該駆動素子毎に対応してそれぞれ設けられた複数の画素電極とを備える電気光学装置の製造方法であって、エッチング停止層を形成する工程と、前記エッチング停止層の上方に前記複数の走査線と、前記複数の走査線を相互に短絡する共通配線とを形成する工程と、前記複数のデータ線と前記複数の画素電極を、前記複数の走査線と前記複数の駆動素子に対して層間絶縁する第1層間絶縁膜を形成する工程と、前記第1層間絶縁膜に、前記複数のデータ線と前記複数の画素電極とを、それぞれ前記複数の駆動素子に電気的に接続するためのコンタクトホールを形成する工程と、前記複数のデータ線を形成する工程と、前記第1層間絶縁膜にエッチングにより切断用孔を形成することによって前記共通配線を切断する工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明のこのような構成によれば、複数の駆動素子や複数のデータ線が、静電気等に起因して突発的に発生する過剰電流により破損することを防止するために設けられた複数の走査線を相互に短絡する共通配線を、切断用孔を通してエッチングにより切断する際に、エッチング処理は共通配線の下方に形成されたエッチング停止層によって停止する。このため、例えばエッチング停止層の下方に形成された遮光膜にエッチングの影響が及ぶことがなく、遮光膜にクラックが発生することによる表示不具合が発生しない電気光学装置を製造することができるという効果を有する。
【0011】
また本発明は、前記エッチング停止層を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成する半導体膜を形成する工程と同時に行われることが好ましい。
【0012】
また本発明は、前記エッチング停止層を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成する半導体膜を形成する工程もしくは前記複数の駆動素子を構成するゲート電極を形成する工程と同時に行われることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、エッチング停止層を、工程を増やすことなく形成することが可能となるという効果を有する。
【0014】
また本発明は、前記エッチング停止層を形成する工程は、平面視において前記エッチング停止層を前記切断用孔を包含するように前記切断用孔より広く形成することが好ましい。
【0015】
このような構成によれば、共通配線を切断するためのエッチングは、エッチング停止層が形成された範囲上において行われるため、確実にエッチングをエッチング停止層において停止させることが可能となるという効果を有する。
【0016】
また本発明は、前記共通配線を形成する工程及び前記複数の走査線を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成するゲート電極を形成する工程と同時に行われることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、複数の走査線及び共通配線を、駆動素子を形成する工程の一部と同時に形成することが可能となるため、静電気等に起因して突発的に発生する過剰電流に対する対策を施しながら、製造の工程は複雑化することがないという効果を有する。
【0018】
また本発明は、前記共通配線を形成する工程及び前記複数の走査線を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成するゲート電極を形成する工程の後に行われ、かつ前記共通配線を形成する工程及び前記複数の走査線を形成する工程は同時に行われることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。以下の実施形態は、本発明の電気光学装置を液晶装置に適用したものである。
本発明の電気光学装置に係る実施形態について、図1から図9を参照して説明する。まず、本実施形態の電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここで、図1はTFTアレイ基板を、その上に構成された各構成要素と共に対向基板の側から見た電気光学装置の平面図である。図2は、図1のH−H’断面図である。ここでは、電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0020】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されており、TFTアレイ基板10と対向基板20との間には液晶層50が封入されている。また、シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔を所定値とするためのグラスファイバあるいはガラスビーズ等のギャップ材が散らばって配設されている。
【0021】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。なお、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。また、本実施形態においては、前記の画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域が存在する。言い換えれば、本実施形態においては特に、TFTアレイ基板10の中心から見て、この額縁遮光膜53より以遠が周辺領域として規定されている。
【0022】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。また、走査線駆動回路104は、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に隣接する2辺に沿い、かつ額縁遮光膜53に覆われるように設けられている。また、TFTアレイ基板10の残る一辺、すなわちデータ線駆動回路101及び外部回路接続端子102が設けられたTFTアレイ基板10の一辺に対向する辺に沿って設けられ、額縁遮光膜53に覆われるように設けられた複数の配線105によって、二つの走査線駆動回路104は互いに接続されている。
【0023】
また、対向基板20の4つのコーナー部には、TFTアレイ基板10との電気的接続を行う上下導通端子として機能する上下導通材106が配置されている。他方、TFTアレイ基板10にはこれらの上下導通材106に対応する領域において上下導通端子が設けられている。上下導通材106と上下導通端子を介して、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な接続が行われる。
【0024】
図2において、TFTアレイ基板10上には、画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が形成された後の画素電極9a上に、配向膜16が形成されている。他方、対向基板20上には、対向電極21の他、格子状又はストライプ状の遮光膜23、更には最上層部分に配向膜22が形成されている。また、液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜16及び22の間で、所定の配向状態をとる。
【0025】
なお、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0026】
次に、図3を参照して、上述した電気光学装置の電気的な構成について説明する。図3は、電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路である。
【0027】
図3に示すように、本実施形態における電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素には、それぞれ、画素電極9aと当該画素電極9aをスイッチング制御するためのTFT30とが形成されており、画像信号が供給されるデータ線6aが当該TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、…、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0028】
また、TFT30のゲートにゲート電極3aが電気的に接続されており、所定のタイミングで、走査線11a及びゲート電極3aにパルス的に走査信号G1、G2、…、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、…、Snが所定のタイミングで選択された走査線11aの画素に書き込まれる。
【0029】
画素に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、…、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射する。
【0030】
ここで保持された画像信号がリークするのを防ぐために、画素電極9aと対向電極との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70を付加する。この蓄積容量70は、走査線11aに並んで設けられ、固定電位側容量電極が、定電位に固定された容量配線400に接続されている。
【0031】
本実施形態においては、例えばプラズマCVD法等による、TFTアレイ基板10の形成過程におけるTFTアレイ基板10への電荷の蓄積を防止するために、各走査線11aは、TFTアレイ基板10上に短絡されて形成され、TFT30等が形成された後に短絡部分が切断される。
【0032】
図4は、走査線11aの短絡部分に係る構成の一例を概略的に示す概略構成図である。TFTアレイ基板10上に、複数の走査線11aは、後述する複数のデータ線6aより下層側に配置されて形成される。そして、TFTアレイ基板10上の周辺領域において、走査線11aと同一層には、走査線11aを短絡させるための共通配線13が、走査線11aを形成する導電膜と同一膜によって形成されている。各走査線11aは、共通配線13に電気的に接続されることにより、互いに短絡されて形成されている。そして、本実施形態においては、各走査線11aを形成した後、短絡部分Cが切断される。なお、各走査線11aの形成や、走査線11aの短絡部分Cの切断についてのより詳細な説明は後述するものとする。
【0033】
次に、本実施形態に係る電気光学装置のTFTアレイ基板10の構造について図5を参照して説明する。図5(a)は、TFTアレイ基板10の画素部のA−A’線に沿った断面図であり、図5(b)は、切断された状態の走査線11aの短絡部分CにおけるB−B’線に沿った断面図である。図5に示すように、TFTアレイ基板10上には、前記の画素電極9aの他、各種の構成要素が積層構造をなして配置されている。なお、図5においては、各層及び各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層及び各構成要素ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0034】
図5(a)及び図5(b)に示すように、例えば、石英基板、ガラス基板、シリコン基板からなるTFTアレイ基板10には、下地絶縁膜520が形成されている。この下地絶縁膜520上には、例えば導電性ポリシリコン膜からなる図示しない複数の走査線11aが形成されると共に、走査線11aと同一膜により形成されるゲート電極3aを含むTFT30が設けられている。また、図5(b)に示すように、走査線11aの短絡部分Cの下地絶縁膜520の下層には、タングステン等の金属膜等からなる下側遮光膜551が形成されている。
【0035】
複数の走査線11aは、図4を参照して説明したように、同一層の共通配線13に電気的に接続されることにより互いに短絡されて形成され、その後、共通配線13は各短絡部分Cにおいて切断されるものである。ここで、走査線11aと共通配線13は、駆動素子であるTFT30を構成するゲート電極3aと同一層である導電層により構成されている。
【0036】
TFT30は、例えばLDD(Lightly Doped Drain)構造を有しており、上述したゲート電極3aと、半導体膜1aと、ゲート電極3aと半導体膜1aとを絶縁するゲート絶縁膜2とを有して構成される。半導体膜1aは、例えばポリシリコンからなり、ゲート電極3aからの電界によりチャネルが形成されるチャネル領域1a’と、低濃度ソース領域1bと、高濃度ソース領域1dと、低濃度ドレイン領域1c及び高濃度ドレイン領域1eにより構成されている。
【0037】
そして、走査線11a及びTFT30の上には、例えばBPSG膜からなる第1層間絶縁膜521が形成されている。第1層間絶縁膜521には、第1層間絶縁膜521の表面から、第1層間絶縁膜521及びゲート絶縁膜2を貫通して、半導体膜1aにおける高濃度ドレイン領域1e及び高濃度ソース領域1dの表面にそれぞれ至るコンタクトホール501及び502が形成されている。そして、コンタクトホール501及び502の底部から側壁及び第1層間絶縁膜521の表面に連続的に、例えばアルミニウムを含む導電性材料からなる導電膜が形成されている。この導電膜の一部を用いて、第1層間絶縁膜521上には、ドレイン電極510とデータ線6aが形成されている。ドレイン電極510は、コンタクトホール501を介してTFT30の高濃度ドレイン領域1eと電気的に接続されている。また、データ線6aは、コンタクトホール502を介してTFT30の高濃度ソース領域1dに接続されている。第1層間絶縁膜521は、TFT30が形成されている層とデータ線6aが形成されている層とを絶縁している。
【0038】
また、図5(b)に示すように、走査線11aの短絡部分Cにおいて、共通配線13は、第1層間絶縁膜521を貫通して形成された切断用孔507によって切断されている。この切断用孔507は、第1層間絶縁膜521を貫通し、さらに共通配線13を切断するように走査線11aを構成する導電層を貫通するように形成されている。そして、この切断用孔507の下方には、エッチング停止層550が形成されている。エッチング停止層550は、平面視、すなわちTFTアレイ基板10表面に直交する方向から見て切断用孔507と同位置において、切断用孔507の外形よりも大きい外形を有して共通配線13の下層に形成されている。エッチング停止層550は、TFT30の半導体膜1aと同層のポリシリコン膜で形成されており、絶縁性を有する。
【0039】
また、第1層間絶縁膜521上には、例えばBPSG膜からなる第2層間絶縁膜522が形成されている。そして、第2層間絶縁膜522には、第2層間絶縁膜522の表面から、第2層間絶縁膜522を貫通してドレイン電極510の表面に至るコンタクトホール505が形成されている。コンタクトホール505の底部から側壁及び第2層間絶縁膜522の表面に連続的に形成された、例えば透明な導電膜であるITO膜によって構成される画素電極9aが形成されている。
【0040】
上述の構造を有する、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法について、図6から図8を参照して、以下に説明する。図6から図8は、製造プロセスの各工程におけるTFTアレイ基板10の構成を、図5(a)及び図5(b)の断面図に関して、順を追って示す工程断面図である。図6から図8においては、左方にTFTアレイ基板10の画素部における構成を示す断面図を示し、右方に走査線11aの短絡部分Cにおける構成を示す断面図を示す。なお、図6から図8においては、各層及び各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層及び各構成要素ごとに縮尺を異ならしめてある。
【0041】
以下では、図5(a)及び図5(b)に示すTFTアレイ基板10の画素部及び走査線11aの短絡部分Cにおける共通配線13についての製造工程について特に詳しく説明し、図1から図3に示す他の構成要素に係る製造工程の説明に関しては省略するものとする。
【0042】
まず、図6(a)に示す工程では、画素部において、TFTアレイ基板10の下地絶縁膜520上に、駆動素子であるTFT30を形成する。より具体的には、ポリシリコン層を所定の形状にパターニングすることによりTFT30の半導体膜1aを形成した後、ゲート絶縁膜2を形成する。その後、ゲート絶縁膜2上に導電層であるゲート電極3aを形成する。さらにその後、TFT30の半導体膜1aに対し、低濃度及び高濃度の二段階で不純物イオンをドープすることにより、半導体膜1aにおいて、低濃度ソース領域1b及び低濃度ドレイン領域1c、高濃度ソース領域1d及び高濃度ドレイン領域1eを形成する。
【0043】
またこの図6(a)に示す工程では、走査線11aの短絡部分Cにおいて、下地絶縁膜520上に、上述の半導体膜1aを形成するのと同一のプロセスによって、ポリシリコン層からなるエッチング停止層550が形成される。エッチング停止層550は、TFTアレイ基板10表面に直交する方向から見て後に形成する切断用孔507に対応する位置において形成され、かつ切断用孔507の底面の外形よりも大きな範囲において形成される。例えば、エッチング停止層550は、TFTアレイ基板10表面に直交する方向から見て切断用孔507の底面の外形から約250nmの距離を有する線で囲った領域内において形成される。また、エッチング停止層550を構成するポリシリコン層には不純物イオンのドープは行わず、このため、エッチング停止層550は絶縁性を有する。
【0044】
さらに、エッチング停止層550の形成後、駆動素子であるTFT30のゲート電極3aとなる導電層を形成するのと同一のプロセスによって、下地絶縁膜520及びエッチング停止層550上に、ゲート電極3aと同一層の導電層により構成される複数の走査線11a及び共通配線13を形成する。この際、複数の走査線11aを、共通配線13により電気的に接続することにより互いに短絡して形成する。共通配線13は、走査線11aの短絡部分Cにおいて、TFTアレイ基板10表面に直交する方向から見て、後に形成する切断用孔507の略中心を通過する位置において形成され、かつ切断用孔507の底面の外形よりも細い線幅において形成される。
【0045】
次に、図6(b)に示す工程において、例えば常圧CVD法により、BPSG膜からなる第1層間絶縁膜521を形成する。
次に、図6(c)に示す工程において、第1層間絶縁膜521に、TFT30の高濃度ドレイン領域1e及び高濃度ソース領域1dの表面までそれぞれ第1層間絶縁膜521を貫通するコンタクトホール501及び502を形成する。
次に、図6(d)に示す工程において、第1層間絶縁膜521上全面に、スパッタリング法等により、例えばアルミニウムを含む導電性材料からなる導電膜60を形成する。このとき、導電膜60は、コンタクトホール501及び502の底部から側壁及び第1層間絶縁膜521の表面に連続的に形成されている。
次に、図7(e)に示す工程において、導電膜60上にレジスト65を形成する。この際、走査線11aの短絡部分C上には第1層間絶縁膜521が形成され、さらに第1層間絶縁膜521上に導電膜60及びレジスト65が形成された状態となっている。
次に、図7(f)に示す工程において、フォトリソグラフィ法によりレジスト65をパターニングする。この際、画素部においては、データ線6a及びドレイン電極510に対応するパターンで、レジスト65をパターニングする。これにより、走査線11aの短絡部分Cにおいては、導電膜60上のレジスト65が除去された状態となる。
次に、図7(g)に示す工程において、レジスト65を介して、導電膜60に対して、例えばClガスを用いたドライエッチングを施すことで、レジスト65に対応するパターンとして、データ線6a及びドレイン電極510を形成する。この際、走査線11aの短絡部分Cにおいては、第1層間絶縁膜521上の導電膜60が除去された状態となる。エッチングによりデータ線6a及びドレイン電極510を形成した後、レジスト65を剥離する。
【0046】
次に、図7(h)に示す工程において、第1層間絶縁膜521上であって、データ線6a及びドレイン電極510より上層側に、新たにレジスト66を、切断用孔507を規定するパターンとして形成する。
【0047】
次に、図8(i)に示す工程において、このレジスト66を介して、例えばドライエッチング法により、第1層間絶縁膜521に、第1層間絶縁膜521を貫通し、走査線11aの短絡部分Cにおける共通配線13を切断するように、切断用孔507を形成する。より具体的には、共通配線13の表面に達するまでの、第1層間絶縁膜521を除去するためのドライエッチングは、CHF及びCFの混合ガスをエッチャントとして用いて実施される。その後、共通配線13を除去するためのドライエッチングは、HBr等をエッチャントとして用いて実施される。
【0048】
この際、走査線11aの短絡部分Cにおける共通配線13の下層には、エッチング停止層550が形成されているため、図8(i)に示す工程による、共通配線13へのドライエッチングが、エッチング停止層550よりも下層の下地絶縁膜520へ到達することが無い。エッチングにより切断用孔507を形成した後に、レジスト66を剥離する。
【0049】
次に、図8(j)に示す工程において、データ線6a及びドレイン電極510より上層側に第2層間絶縁膜522を、例えば常圧又は減圧CVD法によりBPSG膜として形成する。
次に、図8(k)に示す工程において、第2層間絶縁膜522に、ドレイン電極510の表面まで貫通するコンタクトホール505を形成する。その後、コンタクトホール505の底部から側壁及び第2層間絶縁膜522の表面に連続的に、ITO膜を形成し、このITO膜をフォトリソグラフィ法及びエッチング法によりパターニングすることによって画素電極9aを形成する。
以上の工程により、図5に示す構造を有する本実施形態に係る電気光学装置が製造される。
【0050】
本実施形態においては、複数の走査線11aを互いに短絡させて形成した後に、TFT30の半導体膜1aに対する不純物イオンのドーピングや、データ線6aを構成する導電膜60を形成を実施する。よって、プラズマCVD法等による導電膜60の成膜時や、不純物イオンのドーピング時に、TFTアレイ基板10表面に蓄積される電荷を、複数の走査線11aを電気的に接続して互いに短絡させている共通配線13を介してTFTアレイ基板10の表面外に拡散させることができる。したがって、画素電極9aを駆動するための主要な構成要素であるデータ線6aやTFT30が、TFTアレイ基板10表面における静電気等に起因して突発的に発生する過剰電流により破損することを防止することが可能となる。
【0051】
また、本実施形態によれば、第1層間絶縁膜521におけるコンタクトホール501及び502の形成と、第1層間絶縁膜521における切断用孔507の形成とを別工程において実施している。よって、切断用孔507の内部に導電膜60やレジスト65が形成されることが無い。したがって、走査線11aの短絡部分Cにおける共通配線13の切断時に、切断用孔507内に対して過剰なエッチングを施す必要が無い。さらには、本実施形態によれば、走査線11aの短絡部分Cにおける共通配線13の下層において、エッチング停止層550が、切断用孔507の底面の外形よりも大きな範囲において形成されている。このため、共通配線13を切断するために行われるエッチングによって共通配線13は確実に切断され、かつこのエッチングはエッチング停止層550の層において確実に停止するのである。したがって、本実施形態によれば、走査線11aの短絡部分Cにおいて、共通配線13を切断するためのエッチングによって下地絶縁膜520が薄くなる、もしくはエッチングが下側遮光膜551にまで到達してしまうことがない。このため、走査線11aの短絡部分Cの近傍の下側遮光膜551にクラックが発生し、当該箇所からの光漏れが発生することが無い。
【0052】
よって、本実施形態に係る電気光学装置の製造方法によれば、製造過程におけるTFTアレイ基板10への電荷の蓄積によるTFT30の破損や、走査線11aの短絡部分Cの切断工程により近傍の下側遮光膜551にクラックが発生し当該箇所からの光漏れによる表示不具合が発生することのない、高い表示品位を有する電気光学装置を安定して製造することができる。
【0053】
また、エッチング停止層550は、TFT30の半導体膜1aの形成プロセスと同時に形成される。このため、従来の電気光学装置の製造工程に対して工程を複雑化することなくエッチング停止層550を形成することができる。
【0054】
なお、上述した本実施形態に係る電気光学装置の製造方法においては、走査線11a及び共通配線13をTFT30のゲート電極3aと同時に形成しているが、走査線11a及び共通配線13は、TFT30のゲート電極3aを形成する工程とは別工程において形成されてもよい。例えば、図9に示すように、エッチング停止層550aを、TFT30の半導体膜1a又はゲート電極3aと同時に形成する。ゲート電極3aの形成後、別工程において走査線11a及び共通配線13aを形成する。走査線11a及び共通配線13aの形成後の工程は上述した実施形態と同様である。
【0055】
また、本発明は、本実施形態に係るアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置の他に、電子ペーパなどの電気泳動装置、EL(Electro-Luminescence)表示装置、電子放出回路素子を備えた装置(Field Emission Display及びSurface-Conduction Electron-Emitter Display)等の電気光学装置の技術分野に属するものである。
【0056】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置の製造方法もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H’断面図である。
【図3】電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【図4】走査線の短絡部分に係る構成を示す概略構成図である。
【図5】図5(a)は、TFTアレイ基板の画素部のA−A’線に沿った断面図であり、図5(b)は、切断された状態の走査線の短絡部分CにおけるB−B’線に沿った断面図である。
【図6】製造プロセスの各工程におけるTFTアレイ基板の構成を、順を追って示す工程断面図(その1)である。
【図7】製造プロセスの各工程におけるTFTアレイ基板の構成を、順を追って示す工程断面図(その2)である。
【図8】製造プロセスの各工程におけるTFTアレイ基板の構成を、順を追って示す工程断面図(その3)である。
【図9】図9(a)は、TFTアレイ基板の画素部のA−A’線に沿った断面図であり、図9(b)は、切断された状態の走査線の短絡部分CにおけるB−B’線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1a 半導体膜、 3a ゲート電極、 6a データ線、 9a 画素電極、 13 共通配線、 30 TFT、 501 コンタクトホール、 502 コンタクトホール、 505 コンタクトホール、 507 切断用孔、 510 ドレイン電極、 520 下地絶縁膜、 521 第1層間絶縁膜、 522 第2層間絶縁膜、 550 エッチング停止層、 551 下側遮光膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、複数のデータ線と、複数の走査線と、前記複数のデータ線と前記複数の走査線の交差に対応してそれぞれが画素毎に形成された複数の駆動素子と、該駆動素子毎に対応してそれぞれ設けられた複数の画素電極とを備える電気光学装置の製造方法であって、
エッチング停止層を形成する工程と、
前記エッチング停止層の上方に前記複数の走査線と、前記複数の走査線を相互に短絡する共通配線とを形成する工程と、
前記複数のデータ線と前記複数の画素電極を、前記複数の走査線と前記複数の駆動素子に対して層間絶縁する第1層間絶縁膜を形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜に、前記複数のデータ線と前記複数の画素電極とを、それぞれ前記複数の駆動素子に電気的に接続するためのコンタクトホールを形成する工程と、
前記複数のデータ線を形成する工程と、
前記第1層間絶縁膜にエッチングにより切断用孔を形成することによって前記共通配線を切断する工程とを含むことを特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項2】
前記エッチング停止層を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成する半導体膜を形成する工程と同時に行われることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項3】
前記エッチング停止層を形成する工程は、平面視において前記エッチング停止層を前記切断用孔を包含するように前記切断用孔より広く形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項4】
前記共通配線を形成する工程及び前記複数の走査線を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成するゲート電極を形成する工程と同時に行われることを特徴とする請求項1、2又は3に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項5】
前記エッチング停止層を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成する半導体膜を形成する工程もしくは前記複数の駆動素子を構成するゲート電極を形成する工程と同時に行われることを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項6】
前記エッチング停止層を形成する工程は、平面視において前記エッチング停止層を前記切断用孔を包含するように前記切断用孔より広く形成することを特徴とする請求項5に記載の電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
前記共通配線を形成する工程及び前記複数の走査線を形成する工程は、前記複数の駆動素子を構成するゲート電極を形成する工程の後に行われ、かつ前記共通配線を形成する工程及び前記複数の走査線を形成する工程とは同時に行われることを特徴とする請求項5又は6に記載の電気光学装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−41432(P2007−41432A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−227571(P2005−227571)
【出願日】平成17年8月5日(2005.8.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】