説明

電気光学装置及び電子機器

【課題】液晶装置等の電気光学装置において高品質な表示を行う。
【解決手段】電気光学装置は、基板(10)上に、複数のデータ線(6a)及び複数の走査線(11a)と、複数の画素の各々に形成された画素電極(9a)と、画素電極をスイッチング制御するトランジスタ(30)と、トランジスタ遮光部分を有する遮光部(71)と、トランジスタ遮光部分と重なる第1部分及びトランジスタ遮光部分と重ならない第2部分を有する中継電極(95)とを備える。更に、画素電極と中継電極とは、第1部分に重なるように開孔された第1コンタクトホール(86)を介して電気的に接続され、トランジスタと中継電極とは、第2部分に重なるように開孔された第2コンタクトホール(85)を介して電気的に接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶装置等の電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた、例えば液晶プロジェクタ等の電子機器の技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電気光学装置の一例である液晶装置は、例えば投射型表示装置の光変調手段(ライトバルブ)としても多用されている。特に投射型表示装置の場合、光源からの強い光が液晶ライトバルブに入射されるため、この光によって液晶ライトバルブ内の薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor)がリーク電流の増大や誤動作等を生じないよう、入射光を遮る遮光手段としての遮光膜が液晶ライトバルブに内蔵されている。より具体的には、このような遮光膜は、画素毎に画素電極を駆動するために、例えば表示領域において縦横に交差して配線されたデータ線及び走査線、更には画素毎に走査線及びデータ線に電気的に接続されたTFTを含む各種電子素子等を構成する導電膜の少なくとも一部により形成される。このような基板上における遮光膜が形成された領域、即ち基板上において光を透過させない非開口領域には、画素電極とトランジスタとを電気的に接続させるためのコンタクトホールが開孔される。
【0003】
例えば特許文献1によれば、トランジスタの上層側に、トランジスタと重なる重畳部分を有する遮光部を配置すると共に、画素電極とトランジスタとを、重畳部分に重なるように開孔されたコンタクトホールによって電気的に接続するという技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−26773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した技術においては、画素電極とトランジスタとを電気的に接続するコンタクトホールが、データ線と電気的に接続されないように、ある程度の距離をおいて配置されることが求められる。よって、データ線及びコンタクトホールを適切に配置するため、遮光領域を比較的広くしなければならず、結果的に開口領域が狭められてしまうという技術的問題点がある。
【0006】
本発明は上記問題点等に鑑みてなされたものであり、例えば、アクティブマトリクス方式で駆動される液晶装置等の電気光学装置であって、高い開口率を実現しつつ、トランジスタにおける光リーク電流の発生を低減可能な電気光学装置及び電子機器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電気光学装置は上記課題を解決するために、基板上に、互いに交差する複数のデータ線及び複数の走査線と、前記複数のデータ線及び前記複数の走査線の交差に対応して規定され、且つ前記基板上の表示領域を構成する複数の画素の各々に形成された画素電極と、前記複数の画素の各々の開口領域を互いに隔てる非開口領域に、前記表示領域における一の方向に沿って形成されており、前記画素電極をスイッチング制御するトランジスタと、前記非開口領域を少なくとも部分的に規定するように、前記画素電極より下層側且つ前記トランジスタより上層側に形成されており、前記基板上で平面的に見て前記トランジスタの少なくとも一部と前記一の方向に沿って重なると共に前記トランジスタより前記一の方向に交わる他の方向の幅が広いトランジスタ遮光部分を有する遮光部と、前記画素電極より下層側且つ前記遮光部及び前記複数のデータ線より上層側に形成されており、前記基板上で平面的に見て前記トランジスタ遮光部分と重なる第1部分及び前記トランジスタ遮光部分と重ならない第2部分を有する中継電極とを備え、前記画素電極と前記中継電極とは、前記基板上で平面的に見て、前記第1部分に重なるように開孔された第1コンタクトホールを介して電気的に接続され、前記トランジスタと中継電極とは、前記基板上で平面的に見て、前記第2部分に重なるように開孔された第2コンタクトホールを介して電気的に接続されている。
【0008】
本発明の電気光学装置によれば、例えば、データ線から画素電極への画像信号の供給が制御される、所謂アクティブマトリクス方式による画像表示が可能となる。より具体的には、各画素は、トランジスタのゲート電極に走査線より走査信号が供給されることにより選択状態となり、トランジスタの半導体層の一方のソースドレイン領域がデータ線と互いに電気的に接続され且つ他方のソースドレイン領域が画素電極と互いに電気的に接続されることにより、トランジスタを介して、画素電極にデータ線から画像信号が供給される。
【0009】
ここで、本発明に係る「開口領域」とは、実質的に表示光を出射させる画素内の領域であり、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)等の透明導電材料からなる画素電極が形成され、光が透過する領域であって、透過率の変更に応じて液晶等の電気光学物質を抜けてきた出射光の階調を変化させることが可能となる領域である。言い換えれば、「開口領域」とは、画素に集光される光が光を透過させない、或いは光透過率が透明電極に比べて相対的に小さい配線、遮光膜、及び各種素子等の遮光体で遮られることがない領域を意味する。他方、本発明に係る「非開口領域」とは、表示に寄与する光が透過しない領域を意味し、例えば画素内に非透明な配線或いは電極、若しくは各種素子等の遮光体が配設されている領域を意味する。更に、「開口率」とは、開口領域及び非開口領域を加えた画素のサイズにおける開口領域の割合を意味する。
【0010】
本発明では、画素電極は、データ線及び走査線の交差に対応して、基板上において表示領域となるべき領域にマトリクス状に複数設けられている。また、各画素で、データ線及び走査線、トランジスタ、及びその他、画素を駆動するための各種構成要素は、非開口領域に形成される。
【0011】
本発明では、トランジスタは、表示領域における一の方向に沿って形成される。本発明に係る「一の方向」とは、例えば基板上でマトリクス状に規定された複数の画素の行方向、即ち複数のデータ線が配列される配列方向或いは複数の走査線の各々が延びる方向(即ちX方向)、又は例えば基板上でマトリクス状に規定された複数の画素の列方向、即ち複数の走査線が配列される配列方向或いは複数のデータ線の各々が延びる方向(即ちY方向)を意味する。
【0012】
本発明では特に、遮光部が、各画素において非開口領域を少なくとも部分的に規定するように、画素電極より下層側且つトランジスタより上層側に形成される。更に、遮光部におけるトランジスタ遮光部分は、基板上で平面的に見てトランジスタの少なくとも一部と一の方向に沿って重なる。加えて、トランジスタ遮光部分は、トランジスタより一の方向に交わる他の方向の幅が広い。即ち、トランジスタ遮光部分は、トランジスタの少なくとも一部を覆うように形成される。よって、トランジスタの少なくとも一部に入射する光を効果的に遮光することができ、トランジスタに入射される光の量を低減することが可能となる。これにより、トランジスタにおける光リーク電流の発生を確実に低減することができる。特に、トランジスタにおける、例えば経験的に光リーク電流が発生し易い箇所に対して、トランジスタ遮光部分を重なるように配置し入射される光を遮光することで、より効果的に光リーク電流の発生を低減することが可能となる。
【0013】
尚、遮光部は、上述したトランジスタ遮光部分以外に、例えば一の方向と交わる他の方向に沿った部分を有するように形成されてもよく、このようなトランジスタ遮光部分以外の部分によって、トランジスタ或いは他の遮光されるべき領域が遮光されるようにすることも可能である。
【0014】
本発明では更に、画素電極より下層側且つ遮光部及び複数のデータ線より上層側に、中継電極が形成されている。中継電極は、基板上で平面的に見て、遮光部におけるトランジスタ遮光部分と重なる第1部分及びトランジスタ遮光部分と重ならない第2部分を有している。即ち、中継電極は、トランジスタ遮光部分に重なる位置から遮光部分に重ならない位置にまで延在している。第2部分は、具体的には、一の方向と交わる他の方向に沿った非開口領域や、一の方向に沿った非開口領域のうちトランジスタ遮光部分と重ならない領域である。
【0015】
ここで画素電極と中継電極とは、基板上で平面的に見て、中継電極の第1部分に重なるように開孔された第1コンタクトホールを介して電気的に接続されている。よって、画素電極と中継電極とは、トランジスタ遮光部分と重なる領域において電気的に接続される。また、トランジスタと中継電極とは、基板上で平面的に見て、中継電極の第2部分に重なるように開孔された第2コンタクトホールを介して電気的に接続されている。よって、トランジスタと中継電極とは、少なくとも部分的にトランジスタ遮光部分と重ならない領域を介して電気的に接続される。このため、中継電極とトランジスタとを、例えば中継電極とトランジスタとの間の層に形成された部位に対して電気的な接続を持たせないように接続する場合に、トランジスタ遮光部分を必要以上に広げずに構成することができる。
【0016】
具体的には、例えば中継電極とトランジスタとの間にデータ線が形成されている場合、仮に上述した中継電極が形成されていないとすると、データ線と中継電極及びトランジスタ間を電気的に接続するコンタクトホールとは、トランジスタ遮光部分に重なる領域に、互いに距離を置くように形成される。これにより、トランジスタ遮光部分は、トランジスタを遮光するという目的のみならず、上述した部材を配置するための領域を確保する目的で広さが決定される。即ち、遮光には必要とされない部分にまでトランジスタ遮光部分が形成されてしまう。
【0017】
しかるに本発明では特に、上述したように、中継電極はトランジスタ遮光部分と重ならない第2部分を有しており、第2部分に重なるように形成された第2コンタクトホールによって、トランジスタと中継電極とが電気的に接続される。即ち、トランジスタと中継電極とは、少なくとも部分的に、トランジスタ遮光部分と重ならない領域において電気的に接続される。従って、トランジスタ遮光部分の面積を必要以上に広くせずに、トランジスタと中継電極とを電気的に接続することができる。尚、典型的には、画素電極と中継電極とは、第1コンタクトホールを介して直接的に電気的に接続されるが、トランジスタと中継電極とは、第2コンタクトホールに加えて、他のコンタクトホールを介して電気的に接続される。
【0018】
以上説明したように、本発明の電気光学装置によれば、各画素で、光リーク電流の発生を低減しつつ開口率を向上させることができ、その結果、高品質な表示が可能となる。
【0019】
本発明の電気光学装置の一態様では、前記複数のデータ線は、前記基板上で平面的に見て、前記トランジスタ遮光部分と少なくとも部分的に重なる重畳部分を有しており、前記第1コンタクトホールは、前記基板上で平面的に見て、前記重畳部分と少なくとも部分的に重なるように開孔されている。
【0020】
この態様によれば、複数のデータ線は、基板上で平面的に見て、トランジスタ遮光部分と少なくとも部分的に重なる重畳部分を有するように形成される。そして、画素電極と中継電極とを電気的に接続する第1コンタクトホールは、基板上で平面的に見て、上述した重畳部分と少なくとも部分的に重なるように開孔されている。よって、画素電極と中継電極とは、非開口領域において、確実に電気的に接続される。
【0021】
また、トランジスタと中継電極とを電気的に接続する第2コンタクトホールは、上述したように、トランジスタ遮光領域とは重ならない領域に形成されている。よって、データ線と第2コンタクトホールとが互いに電気的に接続されてしまう、或いは互いの距離が近接し過ぎてしまうことによって、装置に不具合が生じてしまうことを効果的に防止することができる。
【0022】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記データ線と同層に、且つ前記データ線と電気的に接続されないように形成されると共に、前記トランジスタと電気的に接続された中継層を更に備え、前記第2のコンタクトホールは、前記中継電極と前記中継層とを電気的に接続することで、前記トランジスタと前記中継電極とを電気的に接続している。
【0023】
この態様によれば、データ線と同層(即ち、同一の成膜工程によって形成される層)には、トランジスタと電気的に接続された中継層が備えられている。中継層とトランジスタとは、例えばトランジスタ遮光部分とは重ならない領域に開口されたコンタクトホール等によって電気的に接続されている。また、中継電極と中継層とは、第2コンタクトホールによって互いに電気的に接続されている。これにより、トランジスタと中継電極とが電気的に接続される。
【0024】
ここで中継層は、データ線と電気的に接続されないように形成されている。よって、データ線と、中継電極及びトランジスタ間を接続する部材が電気的に接続されてしまうことを防止できる。よって、装置に不具合が生じてしまうことを効果的に防止することができる。
【0025】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記中継電極は、透明電極である。
【0026】
この態様によれば、中継電極は、例えばITO等の透明な材料によって構成された透明電極である。よって、例えば中継電極が開口領域にまで延在するような場合であっても、開口率は変化しない。このため、中継電極は、他の配線や電極等を避けつつ好適に配置される。従って、装置構成のレイアウトの自由度を高めつつ、高い開口率を実現できる。
【0027】
上述した中継電極が透明電極である態様では、前記中継電極は、前記基板上で平面的に見て、前記開口領域に少なくとも部分的に重なるように形成されており、前記第1コンタクトホールを介して電気的に接続された前記画素電極と蓄積容量を形成しているように構成してもよい。
【0028】
この場合には、透明電極である中継電極は、基板上で平面的に見て開口領域と少なくとも部分的に重なるように形成される。そして、中継電極と画素電極との間には、例えば誘電体膜が設けられ蓄積容量が形成される。
【0029】
中継電極と画素電極とによって蓄積容量を形成することで、表示特性を向上させることが可能となる。また、上述したように形成される蓄積容量は、例えば開口領域全体で形成されることも可能であるため、非開口領域において形成される蓄積容量と比較して、極めて大きな容量を保持可能とすることができる。よって、効果的に画質を向上させることが可能となる。
【0030】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記中継電極は、前記第1コンタクトホールを介して電気的に接続された前記画素電極とは異なる他の画素電極に対して、所定距離の間隔を有するように形成されている。
【0031】
この態様によれば、中継電極と、該中継電極と第1コンタクトホールを介して電気的に接続される画素電極とは異なる他の画素電極とは、所定の間隔を有するように形成されている。即ち、中継電極と電気的に接続されるべきでない画素電極とは、所定距離の間隔を有するように形成される。尚、ここでの「所定距離」とは、容量カップリングを引き起こさない程度の距離を意味している。即ち、中継電極と他の画素電極とが所定距離の間隔を有することで、容量カップリングが発生してしまうことを防止している。容量カップリングを防止することで、装置における不具合を効果的に防止することが可能である。
【0032】
本発明の電気光学装置の他の態様では、前記トランジスタは、チャネル領域と、前記データ線に電気的に接続されたデータ線側ソースドレイン領域と、前記画素電極に電気的に接続された画素電極側ソースドレイン領域と、前記チャネル領域及び前記データ線側ソースドレイン領域間に形成された第1の接合領域と、前記チャネル領域及び前記画素電極側ソースドレイン領域間に形成された第2の接合領域を有する半導体層を有する。
【0033】
この態様によれば、トランジスタの半導体層において、第1の接合領域は、チャネル領域とデータ線側ソースドレイン領域との接合部に形成される領域であり、第2の接合領域は、チャネル領域と画素電極側ソースドレイン領域との接合部に形成される領域である。即ち、第1及び第2の接合領域は、例えば、トランジスタが例えばNPN型或いはPNP型トランジスタ(即ち、Nチャネル型或いはPチャネル型トランジスタ)として形成された場合におけるPN接合領域や、トランジスタがLDD構造を有する場合におけるLDD領域(即ち、例えばイオンプランテーション法等の不純物打ち込みによって半導体層に不純物を打ち込んでなる不純物領域)を意味する。
【0034】
ここで、上述したトランジスタを構成する領域のうち、第1及び第2の接合領域は、光リーク電流が相対的に発生し易い傾向にある。本態様では、遮光部によって、半導体層の第1及び第2の接合領域に入射する光を遮光することが可能である。従って、効果的にトランジスタにおける光リーク電流の発生を低減することが可能となる。
【0035】
上述したトランジスタが第1及び第2の接合領域を有する態様では、前記第1及び第2の接合領域は、LDD領域であるように構成してもよい。
【0036】
この場合には、LDD構造を有するトランジスタについて、トランジスタの非動作時において、データ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域に流れるオフ電流を低減し、且つトランジスタの動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。特に、チャネル領域及び画素電極側ソースドレイン領域間に形成された第2の接合領域は、光リーク電流が発生し易い。よって、第2の接合領域を遮光部によって遮光することで、効果的にオン電流の低下を抑制できる。
【0037】
本発明の電子機器は上記課題を解決するために、上述した本発明の電気光学装置(但し、その各種態様も含む)を具備する。
【0038】
本発明の電子機器によれば、上述した本発明に係る電気光学装置を具備してなるので、高品質な表示を行うことが可能な、投射型表示装置、テレビ、携帯電話、電子手帳、ワードプロセッサ、ビューファインダ型又はモニタ直視型のビデオテープレコーダ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルなどの各種電子機器を実現できる。また、本発明の電子機器として、例えば電子ペーパなどの電気泳動装置等も実現することも可能である。
【0039】
本発明の作用及び他の利得は次に説明する実施するための最良の形態から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図である。
【図2】図1のH−H´線断面図である。
【図3】本実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域を構成する各種素子、配線等の等価回路図である。
【図4】第1実施形態に係る電気光学装置における相隣接する複数の画素部の平面図である。
【図5】図4のA−A’線断面図である。
【図6】第2実施形態に係る電気光学装置における相隣接する複数の画素部の平面図である。
【図7】図6のB−B’線断面図である。
【図8】第2実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す平面図である。
【図9】電気光学装置を適用した電子機器の一例たるプロジェクタの構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下では、本発明の実施形態について図を参照しつつ説明する。
【0042】
<電気光学装置>
本実施形態に係る電気光学装置について、図1から図8を参照して説明する。尚、以下の実施形態では、本発明の電気光学装置の一例である駆動回路内蔵型のTFTアクティブマトリクス駆動方式の液晶装置を例にとる。
【0043】
<第1実施形態>
先ず、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成について、図1及び図2を参照して説明する。ここに図1は、本実施形態に係る電気光学装置の全体構成を示す平面図であり、図2は、図1のH−H´線断面図である。
【0044】
図1及び図2において、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10と対向基板20とが対向配置されている。TFTアレイ基板10は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板や、シリコン基板等である。対向基板20は、例えば石英基板、ガラス基板等の透明基板である。TFTアレイ基板10と対向基板20との間には、液晶層50が封入されている。液晶層50は、例えば一種又は数種類のネマティック液晶を混合した液晶からなり、これら一対の配向膜間で所定の配向状態をとる。TFTアレイ基板10と対向基板20とは、複数の画素電極が設けられた画像表示領域10aの周囲に位置するシール領域に設けられたシール材52により相互に接着されている。
【0045】
シール材52は、両基板を貼り合わせるための、例えば紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいてTFTアレイ基板10上に塗布された後、紫外線照射、加熱等により硬化させられたものである。シール材52中には、TFTアレイ基板10と対向基板20との間隔(即ち、基板間ギャップ)を所定値とするためのグラスファイバ或いはガラスビーズ等のギャップ材が散布されている。尚、ギャップ材を、シール材52に混入されるものに加えて若しくは代えて、画像表示領域10a又は画像表示領域10aの周辺に位置する周辺領域に、配置するようにしてもよい。
【0046】
シール材52が配置されたシール領域の内側に並行して、画像表示領域10aの額縁領域を規定する遮光性の額縁遮光膜53が、対向基板20側に設けられている。尚、このような額縁遮光膜53の一部又は全部は、TFTアレイ基板10側に内蔵遮光膜として設けられてもよい。
【0047】
周辺領域のうち、シール材52が配置されたシール領域の外側に位置する領域には、データ線駆動回路101及び外部回路接続端子102がTFTアレイ基板10の一辺に沿って設けられている。走査線駆動回路104は、この一辺に隣接する2辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして設けられている。更に、このように画像表示領域10aの両側に設けられた二つの走査線駆動回路104間をつなぐため、TFTアレイ基板10の残る一辺に沿い、且つ、額縁遮光膜53に覆われるようにして複数の配線105が設けられている。
【0048】
TFTアレイ基板10上には、対向基板20の4つのコーナー部に対向する領域に、両基板間を上下導通材107で接続するための上下導通端子106が配置されている。これらにより、TFTアレイ基板10と対向基板20との間で電気的な導通をとることができる。
【0049】
図2において、TFTアレイ基板10上には、駆動素子である画素スイッチング用のTFTや走査線、データ線等の配線が作り込まれた積層構造が形成される。この積層構造の詳細な構成については図2では図示を省略してあるが、この積層構造の上に、ITO等の透明材料からなる画素電極9aが、画素毎に所定のパターンで島状に形成されている。
【0050】
画素電極9aは、対向電極21に対向するように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aに形成されている。TFTアレイ基板10における液晶層50の面する側の表面、即ち画素電極9a上には、配向膜16が画素電極9aを覆うように形成されている。
【0051】
対向基板20におけるTFTアレイ基板10との対向面上に、遮光膜23が形成されている。遮光膜23は、例えば対向基板20における対向面上に平面的に見て、格子状に形成されている。対向基板20において、遮光膜23によって非開口領域が規定され、遮光膜23によって区切られた領域が、例えばプロジェクタ用のランプや直視用のバックライトから出射された光を透過させる開口領域となる。尚、遮光膜23をストライプ状に形成し、該遮光膜23と、TFTアレイ基板10側に設けられたデータ線等の各種構成要素とによって、非開口領域を規定するようにしてもよい。
【0052】
遮光膜23上には、ITO等の透明材料からなる対向電極21が複数の画素電極9aと対向するように形成されている。また遮光膜23上には、画像表示領域10aにおいてカラー表示を行うために、開口領域及び非開口領域の一部を含む領域に、図2には図示しないカラーフィルタが形成されるようにしてもよい。対向基板20の対向面上における、対向電極21上には、配向膜22が形成されている。
【0053】
尚、図1及び図2に示したTFTアレイ基板10上には、これらのデータ線駆動回路101、走査線駆動回路104等の駆動回路に加えて、画像信号線上の画像信号をサンプリングしてデータ線に供給するサンプリング回路、複数のデータ線に所定電圧レベルのプリチャージ信号を画像信号に先行して各々供給するプリチャージ回路、製造途中や出荷時の当該電気光学装置の品質、欠陥等を検査するための検査回路等を形成してもよい。
【0054】
次に、本実施形態に係る電気光学装置の画素部の電気的な構成について、図3を参照して説明する。ここに図3は、本実施形態に係る電気光学装置の画像表示領域を構成するマトリクス状に形成された複数の画素における各種素子、配線等の等価回路図である。
【0055】
図3において、画像表示領域10aを構成するマトリクス状に形成された複数の画素の各々には、画素電極9a及び本発明の「トランジスタ」の一例であるTFT30が形成されている。TFT30は、画素電極9aに電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置の動作時に画素電極9aをスイッチング制御する。画像信号が供給されるデータ線6aは、TFT30のソースに電気的に接続されている。データ線6aに書き込む画像信号S1、S2、・・・、Snは、この順に線順次に供給しても構わないし、相隣接する複数のデータ線6a同士に対して、グループ毎に供給するようにしてもよい。
【0056】
TFT30のゲートには、走査線11aが電気的に接続されており、本実施形態に係る電気光学装置は、所定のタイミングで、走査線11aにパルス的に走査信号G1、G2、・・・、Gmを、この順に線順次で印加するように構成されている。画素電極9aは、TFT30のドレインに電気的に接続されており、スイッチング素子であるTFT30を一定期間だけそのスイッチを閉じることにより、データ線6aから供給される画像信号S1、S2、・・・、Snが所定のタイミングで書き込まれる。画素電極9aを介して電気光学物質の一例としての液晶に書き込まれた所定レベルの画像信号S1、S2、・・・、Snは、対向基板に形成された対向電極との間で一定期間保持される。
【0057】
液晶層50(図2参照)を構成する液晶は、印加される電圧レベルにより分子集合の配向や秩序が変化することにより、光を変調し、階調表示を可能とする。ノーマリーホワイトモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が減少し、ノーマリーブラックモードであれば、各画素の単位で印加された電圧に応じて入射光に対する透過率が増加され、全体として電気光学装置からは画像信号に応じたコントラストをもつ光が出射される。
【0058】
ここで保持された画像信号がリークすることを防ぐために、画素電極9aと対向電極21(図2参照)との間に形成される液晶容量と並列に蓄積容量70が付加されている。蓄積容量70は、画像信号の供給に応じて各画素電極9aの電位を一時的に保持する保持容量として機能する容量素子である。蓄積容量70の一方の電極は、画素電極9aと並列してTFT30のドレインに電気的に接続され、他方の電極は、定電位となるように、電位固定の容量線300に電気的に接続されている。蓄積容量70によれば、画素電極9aにおける電位保持特性が向上し、コントラスト向上やフリッカの低減といった表示特性の向上が可能となる。
【0059】
次に、上述の動作を実現する画素部の具体的な構成について、図4及び図5を参照して説明する。ここに図4は、第1実施形態に係る電気光学装置における相隣接する複数の画素部の平面図であり、図5は、図4のA−A’線断面図である。尚、図4及び図5では、各層・各部材を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、該各層・各部材ごとに縮尺を異ならしめてある。この点については、後の図6以降についても同様である。また、図4及び図5では、電気光学装置のTFTアレイ基板10側における画素の主要な構成のみについて示してあり、以下ではこの構成について特に詳細に説明する。図4では、説明の便宜上、画素毎に設けられるトランジスタを1つのみ示し、他のトランジスタを省略すると共に、図3で示したデータ線に交差するように形成される走査線を省略して図示している。
【0060】
図4或いは図3に示すように、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10aは、画素電極9aが夫々設けられた複数の画素によって構成されている。
【0061】
画素電極9aは、TFTアレイ基板10上に、マトリクス状に複数設けられている。画素電極9aの縦横の境界にそれぞれ沿ってデータ線6a及び走査線11aが設けられている。走査線11aは、図3又は図4中X方向に沿って延びており、データ線6aは、走査線11aと交差するように、同図中Y方向に沿って延びている。走査線11a及びデータ線6aが互いに交差する個所の各々には画素スイッチング用のTFT30が設けられている。
【0062】
データ線6a、走査線11a、蓄積容量70、TFT30、中継層90及び中継電極95は、TFTアレイ基板10上で平面的に見て、画素電極9aが配置される各画素の開口領域を規定する非開口領域内に配置されている。
【0063】
図4及び図5において、TFT30は、半導体層1aと、走査線11aと電気的に接続されたゲート電極3aとを備えている。
【0064】
半導体層1aは、例えばポリシリコンからなり、図4中Y方向に沿ったチャネル長を有するチャネル領域1a´、データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1c、並びにデータ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eからなる。即ち、TFT30はLDD構造を有している。尚、データ線側LDD領域1bは、本発明に係る「第1の接合領域」の一例であり、画素電極側LDD領域1cは、本発明に係る「第2の接合領域」の一例である。
【0065】
図4に示すように、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、チャネル領域1a´を基準として、Y方向に沿ってほぼミラー対称に形成されている。データ線側LDD領域1bは、チャネル領域1a´及びデータ線側ソースドレイン領域1d間に形成されている。画素電極側LDD領域1cは、チャネル領域1a´及び画素電極側ソースドレイン領域1e間に形成されている。データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1c、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eは、例えばイオンプランテーション法等の不純物打ち込みによって半導体層1aに不純物を打ち込んでなる不純物領域である。データ線側LDD領域1b及び画素電極側LDD領域1cはそれぞれ、データ線側ソースドレイン領域1d及び画素電極側ソースドレイン領域1eよりも不純物の少ない低濃度な不純物領域として形成される。このような不純物領域によれば、TFT30の非動作時において、ソース領域及びドレイン領域に流れるオフ電流を低減し、且つTFT30の動作時に流れるオン電流の低下を抑制できる。尚、TFT30は、LDD構造を有することが好ましいが、データ線側LDD領域1b、画素電極側LDD領域1cに不純物打ち込みを行わないオフセット構造であってもよいし、ゲート電極をマスクとして不純物を高濃度に打ち込んでデータ線側ソースドレイン領域及び画素電極側ソースドレイン領域を形成する自己整合型であってもよい。
【0066】
図4及び図5において、TFT30のゲート電極3aは、走査線11aの一部として形成されており、例えば導電性ポリシリコンから形成されている。ゲート電極3a及び半導体層1a間は、ゲート絶縁膜2によって電気的に絶縁されている。またゲート電極3aは、図示しないコンタクトホール等によって走査線11aと電気的に接続されている。
【0067】
走査線11aは、TFTアレイ基板10上において、TFT30より下層側に下地絶縁膜12を介して形成されている。走査線11aは、TFTアレイ基板10側から装置内に入射する戻り光からTFT30のチャネル領域1a´及びその周辺を遮光する。即ち、走査線11aは、下側遮光膜としても機能する。走査線11aは、例えば、チタン(Ti)、クロム(Cr)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、パラジウム(Pd)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したもの等からなる。
【0068】
下地絶縁膜12は、走査線11aからTFT30を層間絶縁する機能の他、TFTアレイ基板10の全面に形成されることにより、TFTアレイ基板10の表面の研磨時における荒れや、洗浄後に残る汚れ等で画素スイッチング用TFT30の特性の劣化を防止する機能を有する。
【0069】
図5において、TFTアレイ基板10上のTFT30よりも層間絶縁膜41を介して上層側には、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、TFTアレイ基板10上において下層側から順次積層された下部容量電極71及び上部容量電極300が誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。
【0070】
下部容量電極71は、TFT30の画素電極側ソースドレイン領域1e及び中継層90に電気的に接続された画素電位側容量電極である。より具体的には、下部容量電極71は、コンタクトホール84を介して中継層90に電気的に接続されると共に、画素電極側ソースドレイン領域1eにコンタクトホール83を介して電気的に接続されており、画素電極側ソースドレイン領域1e及び中継層90間の電気的な接続を中継する。
【0071】
下部容量電極71は、例えば金属又は合金を含んでTFT30の上側に設けられた非透明な金属膜である。下部容量電極71は、後述するようにTFT30を遮光する上側遮光膜(或いは、内蔵遮光膜)としても機能する。下部容量電極71は、Al(アルミニウム)、Ag(銀)等の金属を含んで形成されている。
【0072】
尚、下部容量電極71は、例えば、Ti(チタン)、Cr(クロム)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Mo(モリブデン)、Pd(パラジウム)等の高融点金属のうちの少なくとも一つを含む、金属単体、合金、金属シリサイド、ポリシリサイド、これらを積層したものから構成されていてもよい。この場合には、下部容量電極71の上側遮光膜としての機能を一層高めることができる。
【0073】
上部容量電極300は、その構成について詳細な図示を省略するが、TFTアレイ基板10上において、画素電極9aが配置された画像表示領域10a(図1参照)からその周囲に延設されている。上部容量電極300は、定電位源と電気的に接続され、固定電位に維持された固定電位側容量電極である。
【0074】
上部容量電極300も、下部容量電極71と同様に非透明な金属膜である。従って、蓄積容量70は、金属膜−誘電体膜(絶縁膜)−金属膜の3層構造を有する、所謂MIM構造を有している。よって、このような蓄積容量70の構成によれば、一対の上部及び下部容量電極300及び71に供給される各種信号に応じて当該一対の容量電極で消費される消費電力を低減できる。加えて、一対の容量電極のいずれか一方を半導体層により形成する場合と比べて、この一方の電極における導電率を高め、蓄積容量70の保持容量としての機能をより向上させて、高速動作が可能となる。
【0075】
誘電体膜75aは、例えばHTO(High Temperature Oxide)膜、LTO(Low Temperature Oxide)膜等の酸化シリコン膜、或いは窒化シリコン膜等から構成された単層構造、或いは多層構造を有している。
【0076】
本実施形態では、TFTアレイ基板10側の走査線11aやデータ線6a、蓄積容量70、走査線11aの各種構成要素が遮光性を有する導電膜により形成されることにより、図2を参照して説明した対向基板20側の遮光膜23に加えて、これらTFTアレイ基板10側の各種構成要素によって、各画素において非開口領域が規定される。特に、蓄積容量70の上部及び下部容量電極300及び71は夫々、上述したように金属膜により形成されることにより遮光性を有し、これらによって各画素で非開口領域が部分的に規定される。本実施形態では、このように蓄積容量70を本発明に係る「遮光部」の一例として機能させることにより、各画素を構成する各種構成要素の配置に係る構成をより簡略化することができる。
【0077】
また、蓄積容量70の下部容量電極71は、平面的に見て、TFTアレイ基板10上で、TFT30の半導体層1aより上層側で、半導体層1aの少なくとも一部とY方向に沿って重なるように配置される部分を有している。より具体的には、平面的に見て、データ線側ソースドレイン領域1dの一部と、図6中Y方向に沿って、該一部からそれよりも同図中下側に配置された、データ線側LDD領域1b、チャネル領域1a’、画素電極側LDD領域1c、及び画素電極側ソースドレイン領域1eを含む半導体層1aの一部に対して重なるように配置される。よって、本実施形態では、TFTアレイ基板10上において、各画素で、半導体層1aの一部に入射する光を下部容量電極71によって遮光することにより、半導体層1aに入射される光の量を低減することが可能となる。これにより、TFT30の半導体層1aにおいて、光リーク電流の発生を低減することができる。
【0078】
ここで特に、本願発明者の研究によれば、TFT30の動作時に、画素電極側LDD領域1cでは、データ線側LDD領域1bに比べて光リーク電流が相対的に発生しやすい傾向にある。本実施形態に係る電気光学装置では、画素電極側LDD領域1cを、データ線6a及び走査線11aが交差する交差領域に配置すると共に、下部容量電極71によっても遮光を行っている。よって、半導体層1aの画素電極側LDD領域1cに入射しようとする光を効果的に遮光することができる。その結果、より効果的にTFT30における光リーク電流の発生を低減することが可能となる。
【0079】
図4及び図5において、TFTアレイ基板10上の蓄積容量70よりも層間絶縁膜42を介して上層側には、データ線6a及び同一の導電膜からデータ線6aと同時にパターニングされて形成された中継層90が設けられている。
【0080】
データ線6aは、半導体層1aのデータ線側ソースドレイン領域1dに、層間絶縁膜41及び42並びにゲート絶縁膜2を貫通するコンタクトホール81を介して電気的に接続されている。データ線6a及びコンタクトホール81内部は、例えば、Al−Si−Cu、Al−Cu等のAl(アルミニウム)含有材料、又はAl単体、若しくはAl層とTiN層等との多層膜からなる。尚、データ線6aは、TFT30を遮光する機能も有している。
【0081】
TFTアレイ基板10上のデータ線6a及び中継層90よりも層間絶縁膜43を介して上層側には、中継電極95が設けられている。中継電極95は、例えばITO等によって構成されており、トランジスタ30と重なる領域から走査線11aが配置される方向に沿って延在している。中継電極95は、本発明の「第2コンタクトホール」の一例であるコンタクトホール85によって、中継層90と電気的に接続されている。
【0082】
画素電極9aは、中継電極95より層間絶縁膜44を介して上層側に形成されている。画素電極9aは、本発明の「第1コンタクトホール」の一例であるコンタクトホール86によって、中継電極95と電気的に接続されている。これにより、画素電極9aは、中継電極95、中継層90及び下部容量電極71を介して半導体層1aの画素電極側ソースドレイン領域1eに電気的に接続される。即ち、画素電極9a及びTFT30は電気的に接続される。尚、画素電極9aの上側表面には、ラビング処理等の所定の配向処理が施された配向膜(図示せず)が設けられている。
【0083】
コンタクトホール86は、図4に示すように、遮光部としての下部容量電極71の中央部分に重なるように形成されている。よって、画素電極9aと中継電極95とを、TFT30に対する遮光領域(所謂、ピンポイント遮光領域)において電気的に接続することができる。また、上述したように、中継電極95と中継層90とは、TFT30から離れた位置(即ち、ピンポイント遮光領域に重ならない領域)において、コンタクトホール85を介して電気的に接続されている。
【0084】
ここで仮に、中継電極95及び中継層90が設けられていないとすると、画素電極9aは、ピンポイント遮光領域において、下部容量電極71と電気的に接続されることが要求される。よって、例えば画素電極9a及び下部容量電極71間に存在するデータ線6a等と接触しないように、データ線6aがコンタクトホールを避けるようにして配置されることが求められてしまう。これにより、下部容量電極71は、TFT30を遮光するという目的のみならず、上述した部材を配置するための領域を確保する目的で広さが決定される。即ち、遮光には必要とされない部分にまで非開口領域が拡大されてしまう。
【0085】
しかるに本実施形態に係る電気光学装置では、上述したように、画素電極9aは、中継電極95及び中継層90を介して、下部容量電極71に電気的に接続される。よって、下部容量電極71の面積を必要以上に広くせずに、画素電極9aとTFT30とを電気的に接続することができる。従って、下部容量電極71と画素電極9aとが重なってしまう領域が増加して、開口率が低下してしまうことを防止することができる。
【0086】
以上に説明した画素部の構成は、図4に示すように、各画素部に共通である。そして、TFTアレイ基板10上の画像表示領域10a(図1参照)には、かかる画素部が周期的に形成されていることになる。また、本実施形態に係る電気光学装置では、TFTアレイ基板10上の周辺領域に、図1及び図2を参照して説明したように、走査線駆動回路104及びデータ線駆動回路101等の駆動回路が形成されている。
【0087】
以上説明したように、第1実施形態に係る電気光学装置によれば、各画素で、光リーク電流の発生を防止しつつ開口領域のサイズをより大きく確保して開口率を向上させることが可能となり、その結果、高品質な表示を行うことができる。
【0088】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係る電気光学装置について、図6から図8を参照して説明する。ここに図6は、第2実施形態に係る電気光学装置における相隣接する複数の画素部の平面図であり、図7は、図6のB−B’線断面図である。また図8は、第2実施形態に係る電気光学装置の変形例を示す平面図である。尚、第2実施形態は、上述の第1実施形態と比べて、トランジスタの構成が異なり、その他の構成については概ね同様である。このため第2実施形態では、第1実施形態と異なる部分について詳細に説明し、その他の重複する部分については適宜説明を省略する。また、図6から図8では、図4及び図5に示した第1実施形態に係る構成要素と同様の構成要素に同一の参照符合を付している。
【0089】
図6及び図7において、第2実施形態に係る電気光学装置では、TFT30が走査線11aの延びる方向(即ち、図中のX方向)に延在するように設けられている。TFT30におけるゲート電極3aは、半導体層1aの脇に設けられたコンタクトホール82を介して、走査線11aと電気的に接続されている。コンタクトホール82は、半導体層1aに対して斜めに入射しようとする光を遮光するという機能も備えている。
【0090】
TFT30より層間絶縁膜41を介して上層側には、データ線6a及び中継層90が形成されている。データ線6aは、コンタクトホール81を介して、TFT30におけるデータ線側ソースドレイン領域1dと電気的に接続されている。また中継層90は、コンタクトホール83を介して、TFT30における画素電極側ソースドレイン領域1eと電気的に接続されている。
【0091】
データ線6a及び中継層90より層間絶縁膜42を介して上層側には、蓄積容量70が設けられている。蓄積容量70は、上述した第1実施形態と同様に、TFTアレイ基板10上において下層側から順次積層された下部容量電極71及び上部容量電極(容量線)300が誘電体膜75を介して対向配置されることにより形成されている。但し、容量線300は、図6に示すように、図中のY方向で、他の画素における容量線300と電気的に接続されている。これにより、例えば図4で示した第1実施形態に係る電気光学装置のように、コンタクトホール84を避けるために、容量線300が部分的に細く形成されてしまうことを防止することができる。よって、容量線300における抵抗値を十分に低下させることができ、装置の安定した動作を確保することが可能となる。
【0092】
下部容量電極71は、本発明に係る「遮光部」としての機能も有しており、TFT30(特に、画素電極側LDD領域1c)に上層側から入射しようとする光を遮光する。これにより、半導体層1aに入射される光の量は低減され、TFT30の半導体層1aにおいて、光リーク電流の発生を低減することができる。
【0093】
蓄積容量70より層間絶縁膜43を介して上層側には、中継電極95が設けられている。中継電極95は、コンタクトホール85を介して、下部容量電極71と電気的に接続されている。
【0094】
中継電極95より層間絶縁膜44を介して上層側には、画素電極9aが設けられている。画素電極9aは、コンタクトホール86を介して、中継電極95と電気的に接続されている。
【0095】
コンタクトホール86は、図6に示すように、TFT30に対するピンポイント遮光領域に設けられている。また、コンタクトホール85は、TFT30から離れた位置(即ち、ピンポイント遮光領域に重ならない領域)に設けられている。よって、上述した第1実施形態と同様に、下部容量電極71の面積を必要以上に広くせずに、画素電極9aとTFT30とを電気的に接続することができる。従って、下部容量電極71と画素電極9aとが重なってしまう領域が増加して、開口率が低下してしまうことを防止することができる。
【0096】
図8において、中継電極95が、例えばITO等の透明な材料によって透明電極として形成されている場合には、画素電極9aと中継電極95とが、開口領域において互いに重なるように形成されてもよい。例えば、図に示すように、中継電極95を開口領域に迂回させるような形状とすれば、中継電極95と図の右下における画素電極9aとの互いの距離を、図6に示す場合と比べて大きくすることができる。これにより、中継電極95と該中継電極95に電気的に接続されるべきでない画素電極9aとの間に容量カップリングが発生してしまうことを防止することができる。よって、装置の動作をより安定させることが可能である。
【0097】
以上説明したように、第2実施形態に係る電気光学装置によれば、第1実施形態に係る電気光学装置と同様に、各画素で、光リーク電流の発生を防止しつつ開口領域のサイズをより大きく確保して開口率を向上させることが可能となり、その結果、高品質な表示を行うことができる。
【0098】
<電子機器>
次に、上述した電気光学装置である液晶装置を各種の電子機器に適用する場合について説明する。ここに図9は、プロジェクタの構成例を示す平面図である。以下では、この液晶装置をライトバルブとして用いたプロジェクタについて説明する。
【0099】
図9に示されるように、プロジェクタ1100内部には、ハロゲンランプ等の白色光源からなるランプユニット1102が設けられている。このランプユニット1102から射出された投射光は、ライトガイド1104内に配置された4枚のミラー1106及び2枚のダイクロイックミラー1108によってRGBの3原色に分離され、各原色に対応するライトバルブとしての液晶パネル1110R、1110B及び1110Gに入射される。
【0100】
液晶パネル1110R、1110B及び1110Gの構成は、上述した液晶装置と同等であり、画像信号処理回路から供給されるR、G、Bの原色信号でそれぞれ駆動されるものである。そして、これらの液晶パネルによって変調された光は、ダイクロイックプリズム1112に3方向から入射される。このダイクロイックプリズム1112においては、R及びBの光が90度に屈折する一方、Gの光が直進する。従って、各色の画像が合成される結果、投射レンズ1114を介して、スクリーン等にカラー画像が投写されることとなる。
【0101】
ここで、各液晶パネル1110R、1110B及び1110Gによる表示像について着目すると、液晶パネル1110Gによる表示像は、液晶パネル1110R、1110Bによる表示像に対して左右反転することが必要となる。
【0102】
尚、液晶パネル1110R、1110B及び1110Gには、ダイクロイックミラー1108によって、R、G、Bの各原色に対応する光が入射するので、カラーフィルタを設ける必要はない。
【0103】
尚、図9を参照して説明した電子機器の他にも、モバイル型のパーソナルコンピュータや、携帯電話、液晶テレビや、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、ワードプロセッサ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた装置等が挙げられる。そして、これらの各種電子機器に適用可能なのは言うまでもない。
【0104】
また、本発明は上述の各実施形態で説明した液晶装置以外にも反射型液晶装置(LCOS)、プラズマディスプレイ(PDP)、電界放出型ディスプレイ(FED、SED)、有機ELディスプレイ、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、電気泳動装置等にも適用可能である。
【0105】
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う電気光学装置、及び該電気光学装置を備えた電子機器もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0106】
1a…半導体層、1a’…チャネル領域、1b…データ線側LDD領域、1c…画素電極側LDD領域、1d…データ線側ソースドレイン領域、1e…画素電極側ソースドレイン領域、2…ゲート酸化膜、3a…ゲート電極、6a…データ線、9a…画素電極、10…TFTアレイ基板、10a…画像表示領域、11a…走査線、20…対向基板、30…TFT、50…液晶層、70…蓄積容量、71…下部容量電極、75…誘電体膜、101…データ線駆動回路、102…外部回路接続端子、104…走査線駆動回路、300…容量線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に、
互いに交差する複数のデータ線及び複数の走査線と、
前記複数のデータ線及び前記複数の走査線の交差に対応して規定され、且つ前記基板上の表示領域を構成する複数の画素の各々に形成された画素電極と、
前記複数の画素の各々の開口領域を互いに隔てる非開口領域に、前記表示領域における一の方向に沿って形成されており、前記画素電極をスイッチング制御するトランジスタと、
前記非開口領域を少なくとも部分的に規定するように、前記画素電極より下層側且つ前記トランジスタより上層側に形成されており、前記基板上で平面的に見て前記トランジスタの少なくとも一部と前記一の方向に沿って重なると共に前記トランジスタより前記一の方向に交わる他の方向の幅が広いトランジスタ遮光部分を有する遮光部と、
前記画素電極より下層側且つ前記遮光部及び前記複数のデータ線より上層側に形成されており、前記基板上で平面的に見て前記トランジスタ遮光部分と重なる第1部分及び前記トランジスタ遮光部分と重ならない第2部分を有する中継電極と
を備え、
前記画素電極と前記中継電極とは、前記基板上で平面的に見て、前記第1部分に重なるように開孔された第1コンタクトホールを介して電気的に接続され、
前記トランジスタと中継電極とは、前記基板上で平面的に見て、前記第2部分に重なるように開孔された第2コンタクトホールを介して電気的に接続されている
ことを特徴とする電気光学装置。
【請求項2】
前記複数のデータ線は、前記基板上で平面的に見て、前記トランジスタ遮光部分と少なくとも部分的に重なる重畳部分を有しており、
前記第1コンタクトホールは、前記基板上で平面的に見て、前記重畳部分と少なくとも部分的に重なるように開孔されている
ことを特徴とする請求項1に記載の電気光学装置。
【請求項3】
前記データ線と同層に、且つ前記データ線と電気的に接続されないように形成されると共に、前記トランジスタと電気的に接続された中継層を更に備え、
前記第2のコンタクトホールは、前記中継電極と前記中継層とを電気的に接続することで、前記トランジスタと前記中継電極とを電気的に接続している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電気光学装置。
【請求項4】
前記中継電極は、透明電極であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項5】
前記中継電極は、前記基板上で平面的に見て、前記開口領域に少なくとも部分的に重なるように形成されており、前記第1コンタクトホールを介して電気的に接続された前記画素電極と蓄積容量を形成していることを特徴とする請求項4に記載の電気光学装置。
【請求項6】
前記中継電極は、前記第1コンタクトホールを介して電気的に接続された前記画素電極とは異なる他の画素電極に対して、所定距離の間隔を有するように形成されていることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項7】
前記トランジスタは、チャネル領域と、前記データ線に電気的に接続されたデータ線側ソースドレイン領域と、前記画素電極に電気的に接続された画素電極側ソースドレイン領域と、前記チャネル領域及び前記データ線側ソースドレイン領域間に形成された第1の接合領域と、前記チャネル領域及び前記画素電極側ソースドレイン領域間に形成された第2の接合領域を有する半導体層を有する
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の電気光学装置。
【請求項8】
前記第1及び第2の接合領域は、LDD領域であることを特徴とする請求項7に記載の電気光学装置。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載の電気光学装置を具備してなることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−8063(P2013−8063A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216070(P2012−216070)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−95016(P2008−95016)の分割
【原出願日】平成20年4月1日(2008.4.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】