説明

電気基板のバリア構造および電磁誘導加熱調理器

【課題】長期使用に対して部品劣化を最少に抑えることができ、万一の際でも周囲に炎が漏れない電気基板のバリア構造および加熱調理器を得る。
【解決手段】電気基板のバリア構造400は背面側バリア50aと正面側バリア50bとから構成され、正面側バリア30bのバリア側面33bの端部と背面側バリア30aの側面切欠37aとによって縦長のスリット状隙間が形成され、該スリット状隙間を通過させてフラットケーブル9をバリア50の内部に引き込み、バリア天面32bに設置された防水カバー14によって該スリット状隙間が覆われるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気基板のバリア構造および電磁誘導加熱調理器、特に、一般家庭において使用される電気機器に搭載される電気基板のバリア構造、および該電気基板のバリア構造を有する電磁誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電気調理器のランプの充電部に局所的な遮蔽壁を設けた簡素な構成によって、充電部と本体の外側面までの絶縁距離を確保すると共に、気流を形成して内部の温度上昇を抑えた発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、従来、電磁誘導加熱調理器の本体の背面寄りに、制御基板保持部材および電源基板保持部材をそれぞれ設置し、制御基板保持部材に制御基板を取り付けて、その下方に制御基板を冷却するための冷却ファンを配置すると共に、電源基板保持部材に電源基板を設置して、これに対向してその背面側に絶縁部材を設置する発明が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2−195912号公報(第2頁、第1図)
【特許文献2】特開2003−159176号公報(第5頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明では、気流を形成する隙間からランプ内に水が侵入するという問題があった。
また、特許文献2に開示された発明では、蓋を開閉自在に軸支するヒンジ部から水滴が本体内に浸入した際、該水滴が制御基板を濡らすという問題や、背面の開口部から飛来した水滴が電源基板を濡らすという問題があった。
なお、近年では、想定される製品寿命よりも長期に渡ってユーザーが製品を使い続けることが問題になりつつある。例えば、30年以上にわたって製品を使用したため、電気部品が劣化したことが原因による発火等が起こっている。
また、加熱調理器を塵埃の多い部屋や高湿な部屋で長期間使用していると、電気回路や基板に塵埃が侵入し、該塵埃が充電部に堆積して短絡を起こしたり、或いは、長期使用による電気回路素子が劣化して短絡を起こしたりすることが考えられる。このような短絡が短時間に繰り返し起きる(=トラッキング現象)と、基板や回路が発熱し発火することがある。
【0005】
本発明は、かかる問題を解決するものであって、ユーザーが長期にわたって製品を使用し続けた場合でも、部品劣化を最少に抑えることができ、且つ、万一、基板や回路の発火が起きたとしても、周囲の損傷を防ぐことができる電気基板のバリア構造、および該電気基板のバリア構造を有する電磁誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る電気基板のバリア構造は、
コネクタを具備する電気基板と、
該電気基板に沿って配置された絶縁部材と、
前記コネクタに接続されたフラットケーブルと、
前記電気基板および前記絶縁部材を収納し、下面が開口した函状のバリアと、を有し、
前記フラットケーブルが前記バリアの外部において折り曲げられて下端部が形成され、該下端部よりも高い位置において前記フラットケーブルが前記バリアの内部に引き込まれてなると共に、
前記バリアは、背面側バリアと、正面側バリアとを有し、
前記背面側バリアは、背面穴が形成された略矩形状のバリア背面と、該バリア背面の上縁に形成されたバリア天面と、前記バリア背面の両側縁に形成された一対のバリア側面と、を具備し、
前記正面側バリアは、略矩形状のバリア正面と、該バリア正面の上縁に形成されたバリア天面と、前記バリア正面の両側縁に形成された一対のバリア側面と、を具備し、
前記背面側バリアのバリア天面および一対のバリア側面が、それぞれ前記正面側バリアのバリア天面および一対のバリア側面に当接し、
前記背面側バリアの背面穴を閉塞してスリット穴を形成したバリアを有し、
前記フラットケーブルが前記スリット穴を通過してなることを特徴とする。
(2)また、本発明に係る電磁誘導加熱調理器は、
調理される材料を収納するための釜と、
該釜を加熱するための電磁誘導コイルと、
前記釜と前記電磁誘導コイルとを収納し、上方に本体開口部を具備する本体と、
前記本体開口部に設置され、前記釜を開閉自在に閉塞する蓋と、
前記本体に設置された(1)に記載のバリア構造と、を有し、
前記フラットケーブルの一端が、前記蓋内に侵入していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
(i)本発明に係る電気基板のバリア構造は、フラットケーブルがバリアの外部において折り曲げられて下端部が形成され、該下端部よりも高い位置において、フラットケーブルがバリアの内部に引き込まれてなるため、水滴がフラットケーブルを伝わって流れたとしても、かかる水滴はフラットケーブルの下端から落下するから、水滴がバリア内に浸入することがない。すなわち、水滴によって電気基板が濡れることがないから、劣化や損傷が防止される。
(ii)また、函状のバリアは下面が開口し、上面が閉塞しているから、万一、電気基板が発火したとしても、バリアの外に炎が漏れることが防止されると共に、バリア内が酸欠状態になることから消火が促進される。
(iii)また、函状のバリアは下面が開口しているから、通常使用時において電気基板の発熱が排熱され、安定した動作を行うことができると共に、下方に送風手段を配置して、電気基板を強制的に冷却することが可能になる。
(iv)さらに、本発明に係る電磁誘導加熱調理器は前記バリア構造を有するから、電気基板の劣化や損傷が防止され、且つ、万一、電気基板が発火した場合であっても、周囲の損傷を抑えて迅速に消火することができるから、長期間にわたって商品の信頼性を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1に係る電磁誘導式加熱調理器を説明する斜視図。
【図2】本発明の実施の形態1に係る電磁誘導式加熱調理器を説明する断面図。
【図3】本発明の実施の形態1に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する断面図。
【図4】図3に示す電気基板のバリア構造の構成を示す斜視図および断面図。
【図5】図3に示す電気基板のバリア構造の組立手順を示す説明図。
【図6】図3に示す電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図。
【図7】図3に示す電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図。
【図8】図3に示す電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図。
【図9】本発明の実施の形態2に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する斜視図。
【図10】図9に示す電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図。
【図11】図9に示す電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図。
【図12】本発明の実施の形態3に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する斜視図。
【図13】本発明の実施の形態4に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する断面図。
【図14】図13に示す電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図。
【図15】本発明の実施の形態5に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する断面図。
【図16】本発明の実施の形態6に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する正面図。
【図17】本発明の実施の形態7に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する正面図。
【図18】本発明の実施の形態8に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を説明する側面図。
【図19】図18に示す電気基板のバリア構造の別の構成を説明する側面図。
【図20】図18に示す電気基板のバリア構造の別の構成を説明する側面図。
【図21】本発明の実施の形態9に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基盤のバリア構造を説明する斜視図。
【図22】図21に示す電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の図面に基づいて、本発明の実施の形態に係る電気基板のバリア構造を電磁誘導式加熱調理器に設置された例について説明するが、本発明は電磁誘導式加熱調理器に限定されるものではない。また、以下の図において同じ部分または相当する部分には符号を付し、一部の説明を省略する場合がある。
【0010】
[実施の形態1]
図1および図2は本発明の実施の形態1に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、図1は外観を模式的に示す斜視図、図2は側面視の概略断面図であり、図3〜図8は本発明の実施の形態1に係る電磁誘導式加熱調理器が有する電気基板のバリア構造を模式的に説明するものであって、図3は組立手順を説明する概略断面図、図4の(a)は構成を示す斜視図、図4の(b)は構成を示す断面図、図5は組立手順を示す説明図、図6〜図8は作用を説明する側面視の断面図である。
【0011】
(加熱調理器の構成)
図1において、電磁誘導式加熱調理器(以下「加熱調理器」と称す)100の本体1の上には、開閉自在な蓋2が配置され、蓋2には操作ボタン3、表示器4およびマイコン回路等が内蔵され、一部が視認可能なように露出している。また、本体の背面には背面カバー15が設置されている。
図2において、本体1の内部には、被加熱物を入れる加熱容器5(釜に同じ)と、加熱容器5を電磁誘導加熱するための電磁誘導コイル6と、電磁誘導コイル6に電磁誘導用の電力供給の制御をする回路基板7(電気回路に相当する)と、回路基板7に風を吹きつける送風ファン8と、回路基板7とマイコン回路(図示しない)及び表示器4を接続するフラットケーブル9と、フラットケーブル9を回路基板7に接続するためのコネクタ10と、がそれぞれ配置されている。
【0012】
そして、回路基板7の周囲には、回路基板7を囲う絶縁部材11と、絶縁部材11を覆う背面側バリア30aおよび正面側バリア30bおよび円盤状バリア30c(以下、まとめて「バリア30」と称する場合がある)と、が配置されている。バリア30は不燃性材料(金属、ガラス、熱硬化性樹脂、不織布、ゴムなど)で形成されている。
なお、このような回路基板7の周囲の構成を「電気基板のバリア構造」と称呼し、以下に詳細に説明する。
さらに、回路基板7の上方には、蓋2と本体1を回動自在に支持連結するヒンジ軸13と、本体の上部から水滴が落ちて来た際に基板内に水滴が入るのを防止する断面略L字状の防水カバー14と、がそれぞれ配置されている。そして、背面カバー15が、バリア30と、ヒンジ軸13、防水カバー14およびフラットケーブル9と、を外観から覆い隠している。
【0013】
(電気基板のバリア構造その1)
図4および図2において、電気基板のバリア構造200は、背面側バリア30aと、正面側バリア30bと、円盤状バリア30cと、を有している。
背面側バリア30aは、略矩形状のバリア背面31aと、バリア背面31aの上縁に形成されたバリア天面32aと、バリア背面31aの両側縁に形成されたバリア側面33a、34aと、を有している。すなわち、バリア背面31aに対向する正面側と、バリア背面31aの下縁とバリア側面33a、34aの下縁によって形成される矩形状範囲が開口している。また、バリア背面31aには背面穴20が形成されている。
【0014】
正面側バリア30bは、略矩形状のバリア正面31bと、バリア正面31bの上縁に形成されたバリア天面32bと、バリア正面31bの両側縁に形成されたバリア側面33b、34bと、を有している。すなわち、バリア正面31bに対向する正面側と、バリア正面31bの下縁とバリア側面33b、34bの下縁によって形成される矩形状範囲が開口している。
【0015】
円盤状バリア30cは、背面側バリア30aの背面穴20に侵入自在な断面略円形の皿状であって、皿状の底面に相当する円盤面31cと、皿状の周囲に相当する円筒面32cと、円筒面32cの外周に形成された外周フランジ33cとを有している。そして、円盤面31cにはスリット穴21が形成されている。なお、外周フランジ33cは背面穴20を通過不能であるから、円筒面32cが背面穴20に侵入した際、外周フランジ33cは、背面側バリア30aのバリア背面31aに当接する。
【0016】
(組立手順)
次に、図3〜図5を参照して組立手順を説明する。
(S1)まず第1に、本体1の背面に正面側バリア30bを取付ける。
(S2)次に、正面側バリア30bに絶縁部材11を取付ける。
(S3)次に、絶縁部材11に挟まれるように回路基板7を取付ける。
(S4)次に、背面側バリア30aを正面側バリア30bに取付ける。
(S5)次に、背面側バリア30aに送風ファン8を取付ける。
(S6)次に、蓋2から出ているフラットケーブル9を、円盤状バリア30cのスリット穴21に通してコネクタ10に接続する。このとき、背面側バリア30aの背面穴20からコネクタ10が良く見える構成になっているため、コネクタ10への接続作業を容易に行うことができる。
【0017】
(S7)次に、円盤状バリア30cを背面側バリア30aの背面穴20に設置する。このとき、フラットケーブル9はスリット穴21を容易に通過するから、フラットケーブル9がコネクタ10側に手繰り寄せられることはない。
(S8)次に、防水カバー14を背面側バリア30aに上から取り付ける。このとき、防水カバー14によって背面穴20は覆われる。また、フラットケーブル9は下端部26(図5において位置「ハ」)において折り返され、折り返し部(図5において範囲「ロ〜ハ」と範囲「ハ〜ニ」)が防水カバー14を挟む様相を呈し、且つ、折り返し部の一方側(図5において範囲「ハ〜ニ」)が防水カバー14と背面側バリア30aとによって挟み込まれることになる。
(S9)次に、フラットケーブル9をヒンジ軸13の下側に配置して、蓋2の軸穴22、本体の軸穴23にヒンジ軸13を通してヒンジを構成する。
(S10)そして、回路基板類を隠すため、本体1に背面カバー15を取付ける。
【0018】
以上の手順によって、図2および図4に示す回路基板の周辺部が組み立てられる。また、図2〜図4において、家庭用電源との接続コンセント端子24は回路基板7の下方で接続する。同様に電磁誘導コイル6の端子も回路基板7の下方で接続する。
【0019】
(動作)
次に動作について説明する。
(T1)図2において、被加熱物すなわち調理物を加熱容器5の中に入れ、操作ボタン3を押すと、マイコン回路及び表示器4のマイコンから加熱の指令の信号が出る。
(T2)かかる信号は、フラットケーブル9を通じて回路基板7に伝達され、回路基板7から電磁誘導コイル6に電力が供給される。そうすると、電磁誘導加熱現象により加熱容器5自身が発熱し、加熱容器5内の調理物(図示せず)が加熱される。
(T3)電磁誘導コイル6に電力を供給する回路基板7の上のIGBTなどの回路素子(図示せず)は電力供給の際に発熱する。そのため、送風ファン8を回転させ、図6の矢印のように送風ファン8から吸気して、バリア30の中に風を送り込み、回路基板7の上の回路素子を空気で冷却し、バリア30の底部の開放部から冷却に使用した空気を排出する。
(T4)調理物の加熱調理が終わると、マイコン回路(図示しない)及び表示器4のマイコン(図示しない)から停止の信号が回路基板7に伝達され、回路基板7から電磁誘導コイル6に電力の供給停止、及び送風ファンの回転停止が、指示される。
(T5)通常の使用時は、以上の「T1〜T4」からなる動作が繰り返し行われる。
【0020】
(防水カバー)
次に、防水カバー14について説明する。調理の際に水を使用することが多く、加熱調理器100に水が掛かる事がある。加熱調理器100の本体1の上部のヒンジ軸13の周辺に水が掛かると、背面カバー15と本体1との合わせ目の隙間などから水が内部に侵入する。図7において、侵入した水滴Wがフラットケーブル9に伝わるとフラットケーブル9に沿って背面側バリア30a側へ流れ落ちる。そして、フラットケーブル9には折り返し部26が設けられているため、水滴Wは折り返し部26(下端部に同じ)から下方へ落下する。
同様に、防水カバー14に落下して来た水滴も、防水カバー14の下端から下方に落下する。
【0021】
(作用)
すなわち、フラットケーブル9は、バリア30の外側に下端部(図7において位置「ハ」)が形成されるように折り曲げられ、該下端部から高い位置(図7において位置「ニ」)においてバリア30の内側に引き込まれている。したがって、本体1の上部から浸入した水滴Wがフラットケーブル9を伝わって流れ落ちて来た場合であっても、前記下端部において下方に落下し、バリア30内に浸入することがない。
また、防水カバー14が背面穴20を覆っているため、水滴Wが背面側バリア30aを伝って背面穴20(正確には、円盤状バリア30cのスリット穴21)に浸入することがない。よって、回路基板7に水滴Wが侵入することが防止されるから、水滴Wの付着による故障を防ぐことができる。
【0022】
(異常時対応)
次に、想定外の長期使用による事故が起きた際の動作について説明する。
図8において、家庭用電源と回路基板7の接続端子部に塵埃等が堆積し、その接続端子間のトラッキングによって発熱したり、回路素子の劣化によって回路素子が発熱したりして、発火に至ると回路基板7を含めた周辺の可燃物が燃焼する。このとき、炎は上方向に向かう性質があるものの、回路基板7は金属やガラスなど不燃性材料のバリア30で覆われているため、特に上面(天井面)は略閉塞されているため、炎がバリア30の外に出ることが防止されている。なお、背面側バリア30aと正面側バリア30bとの重ね合わせ目の隙間は0.5mm以下の僅かなものであり、かかる隙間から炎がバリア30の外に出ることは無い。
【0023】
また、電気基板のバリア構造200は、このようにバリア30の天井面が閉塞されているため、上部からの酸素の出入りが極少に抑えられるから、燃焼に必要な酸素が欠乏し、激しい燃焼を抑制することができる。
したがって、想定外の長期使用や使用環境の悪化等によって、万が一、回路基板7が燃えるようなことが起きたとしても、バリア30の外部に炎が出ることがない。よって、不測の事態においても、電気基板のバリア構造200を搭載する加熱調理器100の本体1や背面カバー15が、炎や熱によって損傷することがないから、加熱調理器100の商品としても信頼性を長期間にわたって維持することができる。
【0024】
なお、以上は正面側バリア30bが背面側バリア30aの内部に侵入する形態、すなわち、正面側バリア30bのバリア天面32b等が正面側バリア30bのバリア天面32bの外側になっているが、本発明はこれに限定するものではない。たとえば、背面側バリア30aが正面側バリア30bの内部に侵入するようにしてもよい。また、円盤状バリア30cや背面穴20の形状も円形に限定するものではなく、楕円形や矩形であってもよい。
さらに、本発明はバリア30を構成する各部材の材質を限定するものではない。例えば薄鋼板等の金属板を成型(曲げ加工品または絞り加工品)したものや、樹脂材を射出成型したものであってもよいし、正面側バリア30b、背面側バリア30aあるいは円盤状バリア30cをそれぞれ相違する材質によって形成してもよい。
【0025】
[実施の形態2]
図9〜図11は本発明の実施の形態2に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、図9の(a)はこれが有する電気基板のバリア構造の組立手順を説明する概略斜視図、図9の(b)は電気基板のバリア構造の組み立て後の外観斜視図、図9の(c)は電気基板のバリア構造の組み立て後の側面視の断面図、図10および図11は電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図である。
【0026】
(電気基板のバリア構造その2)
図9の(a)、図9の(b)および図9の(c)において、電気基板のバリア構造300は、背面側に設置される背面側バリア40aと、正面側に配置される正面側バリア40bと、から構成されている(以下、両者が組み合わされたものを「バリア40」と称す場合がある)。
背面側バリア40aは、背面側バリア30a(実施の形態1参照)のバリア天面32aを撤去して、バリア背面31aに正面側に陥没する段差部35aを形成したものである。
なお、段差部35aの上縁の一部には段差部切欠36aが形成されている。
正面側バリア40bは、正面側バリア30b(実施の形態1参照)のバリア天面32aを背面側に延長して、端縁から下方に突出する庇(ひさし)部35bを形成したものである。
【0027】
(組立手順)
次に、組立手順を説明する。
(SS1)まず第1に、本体1の背面に正面側バリア40bを取付ける。
(SS2)次に、正面側バリア40bに絶縁部材11を取付ける。
(SS3)次に、絶縁部材11に挟まれるように回路基板7を取付ける。
(SS4)次に、蓋2から出ているフラットケーブル9をコネクタ10に接続する。
(SS5)次に、背面側バリア40aを取付ける。このとき、背面側バリア40aの段差部切欠36aにおいてフラットケーブル9を受け止め、背面側バリア40aの段差部35aが正面側バリア40bの庇部35bの正面側になるように、差し込む。そうすると、フラットケーブル9の一部(図9において範囲「ハ〜ニ」)は、庇部35bの背面側の面と段差部35aの背面側の面とによって挟み込まれることになる。
(SS6)次に、背面側バリア40aに送風ファン8を取付ける。
(SS7)次に、フラットケーブル9をヒンジ軸13の下側に配置して、蓋2の軸穴22、本体の軸穴23にヒンジ軸13を通してヒンジを構成する。
以上より、実施の形態2においては、円盤状バリア30cや防水カバー14が不要になるから、部品点数が減少すると共に、組み立て作業が簡素になる。よって、製造コストを安価にすることが可能になる。
【0028】
(作用)
図10において、フラットケーブル9は、バリア40の外側に下端部(図9において位置「ハ」)が形成されるように折り曲げられ、該下端部から高い位置においてバリア40の内側に引き込まれている。したがって、本体1の上部から浸入した水滴Wがフラットケーブル9に沿って流れ落ちて来た場合であっても、前記下端部において下方に落下し、水滴Wが庇部35bと段差部35aとの隙間を上昇して、回路基板7に入ることが防止される。
【0029】
(異常時対応)
実施の形態1の記載に準じ、回路素子の発火に至り、回路基板7を含めた周辺の可燃物が燃焼するようなことが起こった場合について、その際の動作について説明する。
図11において、炎は上方向に向かう性質があるが、回路基板7は金属やガラスなど不燃性材料のバリア40によって覆われており、特に、天井面は、ほぼ閉塞しているので、炎がバリア40の外に出ることが防止されている。
なお、背面側バリア40aの段差部35aと正面側バリア40bの庇部35bとの重ね合わせ目は接触、もしくは隙間0.5mm以下の僅かな隙間しかないものであり、特に、かかる隙間は下方向を向いているため、炎がこのような隙間を通過して出ることが全く無い。
【0030】
また、電気基板のバリア構造300はバリア40の天井面が閉塞されているため、上部からの酸素の出入りが極少に抑えられ、燃焼に必要な酸素が欠乏するから、激しい燃焼を抑制することができる。
したがって、想定外の長期使用や使用環境の悪化等によって、万が一、回路基板7が燃えるようなことが起きたとしても、バリア40の外部に炎が出ることがない。よって、不測の事態においても、電気基板のバリア構造300を搭載する加熱調理器の本体1や背面カバー15が、炎や熱によって損傷することがないから、加熱調理器の商品としても信頼性を長期間にわたって維持することができる。
【0031】
[実施の形態3]
図12は本発明の実施の形態3に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、(a)はこれが有する電気基板のバリア構造の組立手順を説明する概略斜視図、(b)は電気基板のバリア構造の組み立て後の斜視図、(c)は電気基板のバリア構造の組み立て後の正面視の内部透視図である。
【0032】
(電気基板のバリア構造その3)
図12の(a)、図12の(b)および図12の(c)において、電気基板のバリア構造400は、背面側に設置される背面側バリア50aと、正面側に配置される正面側バリア50bと、から構成されている(以下、両者が組み合わされたものを「バリア50」と称す場合がある)。
【0033】
正面側バリア50bは、正面側バリア30b(実施の形態1)に同じである。
背面側バリア50aは、背面側バリア30a(実施の形態1)における背面穴20を撤去する代わりに、バリア側面33aの端部に側面切欠37aを形成したものである。
すなわち、正面側バリア30bのバリア側面33bの端部と背面側バリア30aの側面切欠37aとによって縦長のスリット状隙間が形成されるから、該スリット状隙間を通過させてフラットケーブル9をバリア50の内部に引き込み、バリア天面32bに設置された防水カバー14によって該スリット状隙間が覆われるようにしたものである。
このとき、フラットケーブル9は、以下に説明するように、バリア天面32bおよびバリア側面33bと平行になるように折り曲げられ、且つ、下端部を形成している。
【0034】
(組立手順)
次に、組立手順を説明する。
(SSS1)まず第1に、本体1の背面に正面側バリア50bを取付ける。
(SSS2)次に、正面側バリア50bに絶縁部材11を取付ける。
(SSS3)次に、絶縁部材11に挟まれるように回路基板7を取付ける。
(SSS4)次に、蓋2から出ているフラットケーブル9をコネクタ10に接続する。
このとき、フラットケーブル9は捩るように折り曲げて図12に示す範囲「ト〜チ」ではバリア天面32bと平行に、範囲「チ〜ヌ」ではバリア側面33bと平行にし、下端となる位置「ヌ」において略二枚重ねに折り曲げられている。さらに、位置「ル」において捩るように折り曲げられ、範囲「ル〜オ」ではバリア正面31bに平行になっている。
【0035】
(SSS5)次に、背面側バリア50aを取付ける。このとき、背面側バリア50aの側面切欠37aにフラットケーブル9を侵入させる。
(SSS6)次に、防水カバー14を背面側バリア30aに上から取付ける。このとき、防水カバー14によって前記縦長スリット隙間は覆われる。また、フラットケーブル9は下端部(図12において位置「ヌ」)において折り返され、折り返し部(図12において範囲「リ〜ヌ」と範囲「ヌ〜ル」)が防水カバー14を挟む様相を呈し、且つ、折り返し部の一方側(図12において範囲「ヌ〜ル」)が防水カバー14とバリア側面33bとによって挟み込まれることになる。
(SSS7)次に、フラットケーブル9をヒンジ軸13の下側に配置して、蓋2の軸穴22、本体の軸穴23にヒンジ軸13を通してヒンジを構成する。
(SSS8)そして、回路基板類を隠すため、本体1に背面カバー15を取付ける。
【0036】
(作用)
以上のように、電気基板のバリア構造400は、フラットケーブル9をバリア50の外部で折り曲げて、その下端よりも高い位置においてバリア50の内部へ引き込んでいるから、フラットケーブル9を伝わった水滴Wは、下端において落下するから、水滴Wがバリア50の内部に浸入することがない。
また、電気基板のバリア構造400では、回路基板7の中央付近にフラットケーブル9を挿入する穴やスリット等を形成する必要がなくなるから、万が一、バリア50内に水滴Wが浸入したとしても、回路基板7の中央への水滴の侵入をなくすことができる。また、主要な回路は水滴から遠くに位置するため、水による回路基板7の故障を防ぐことができる。
【0037】
(異常時対応)
同様に、ユーザーによる想定外の長期使用がなされた場合にも、バリア50の天井面を閉塞したので上部からの酸素の出入りを極少にでき、燃焼に必要な酸素を欠乏させることができるので、激しい燃焼を抑制することができる。
したがって、万が一、回路基板7が燃えるようなことが起きたとしても、バリア50の外部に炎を出すことがない。よって、電気基板のバリア構造400を搭載する加熱調理器の本体1や背面カバー15が、炎や熱によって損傷することがないから、当該加熱調理器の商品としても信頼性を長期間にわたって維持することができる。
【0038】
[実施の形態4]
図13および図14は本発明の実施の形態4に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、図13はこれが有する電気基板のバリア構造の側面視の概略断面図、図14は電気基板のバリア構造の作用を説明する側面視の断面図である。
【0039】
(電気基板のバリア構造その4)
図13において、電気基板のバリア構造500は、電気基板のバリア構造200(実施の形態1)に底部部材28を設置したものに同じであって、加熱調理器100(実施の形態1)に搭載されている。
【0040】
図13において、電気基板のバリア構造500における底部部材28は、回路基板7の下方に配置されるものであって、想定外の長期使用によって、万一、回路基板7が燃えるようなことが起きた時に、下方向へ落下する燃えカスを受け止めるものである。
なお、本発明は、回路基板7の下端部と底部部材28の上面との距離「H[mm]」を限定するものではないが、「H≧25」とすると、基板材料の燃えカスが落下しても、部材を溶かすことが無い。一方、「H<5」とすると、通常の使用時において、風路抵抗が増し、送風ファン8による回路基板7の冷却能力が著しく低下する。したがって、「5<H<25」の時は、底部部材28を金属やガラスなど不燃材料(含む難燃材料)で構成するようにする。
このように、底部部材28に不燃材料(含む難燃材料)を用いることによって、回路基板7の下端部と底部部材28の上面との距離「H[mm]」を25mm未満としても、落下した基板材料の燃えカスが底部部材28を溶かすことがない。そして、距離「H[mm]」を25mm未満とすることにより、装置全体を小型化することができる。
【0041】
(作用)
図14において、電気基板のバリア構造500は以上のように構成したので、電気基板のバリア構造200(実施の形態1)と同様の作用を奏すると共に、万一、基板の燃えカスが落下するようなことが起こっても、底部部材28が燃えカスを受け止めるから、周囲の部材を溶かしたり焦がしたりすることを防止することができる。
【0042】
以上は、電気基板のバリア構造200(実施の形態1)に底部部材28を設置した形態を説明しているが、本発明はこれに限定するものではなく、電気基板のバリア構造300、400(実施の形態2、3)に底部部材28を設置してもよい。
さらに、電気基板のバリア構造200〜500(実施の形態1〜4)は、加熱調理器100(実施の形態1)に搭載されるだけでなく、回路基板7が略鉛直に設置される各種電気機器(たとえば、除湿機、空気調和機等)に搭載することができるものである。
【0043】
[実施の形態5]
(電気基板のバリア構造その5)
図15は本発明の実施の形態5に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、これが有する電気基板のバリア構造を模式的に説明する側面視の概略断面図である。
図15において、電気基板のバリア構造600は、電気基板のバリア構造200(実施の形態1)に底部部材28を設置したものに同じであって、加熱調理器100(実施の形態1)に搭載されている。なお、図15には、図13に示す電気基板のバリア構造500(実施の形態4)に、送風ファン8からの送風の様子を模式的に追記している。
【0044】
図15において、本体1は加熱容器5及び電磁誘導コイル6を配置する部分と、電気基板のバリア30を配置する部分と、を分ける隔壁1aを有する構造となっている。また、この隔壁1a下方の一部は加熱容器5及び電磁誘導コイル6を配置する部分と電気基板のバリア30を配置する部分とを連通するような連通部1bを有する構造となっている。電気基板のバリア30は、隔壁1aに固定され、送風ファン8は隔壁1aの連通部1bに配置されている。
【0045】
続いて、図15を用いて動作を説明する。送風ファン8から送風される冷却風は、隔壁1aにより電気基板のバリア30側へ送風される冷却風a1と、加熱容器5及び電磁誘導コイル6を配置した部分へ送風される冷却風a2と、に分かれる。冷却風a1は電気基板のバリア30内に収納される回路基板7の素子等を冷却し、冷却風a2は電磁誘導コイル6を冷却する目的で使用される。
【0046】
以上のように隔壁1aを跨ぐように送風ファン8を配置し、冷却風を分けて送風可能にしたため、実施の形態5で説明した効果に加え、装置本体の小形化が可能になる。すなわち、電気基板のバリア30内の回路基板7と電磁誘導コイル6との冷却に複数の送風ファン(冷却手段)を設ける必要がなくなり、1つの送風ファンで冷却することが可能になり省スペースでの配置が可能になる。また、冷却風の吹出し直後に冷却風を分ける構成としているため、回路基板7、電磁誘導コイル6を個別に冷却可能であるから、冷却効率が向上するという効果を奏する。
【0047】
[実施の形態6]
(電気基板のバリア構造その6)
図16は本発明の実施の形態6に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、(a)はこれが有する電気基板のバリア構造を模式的に示す正面図、(b)は電気基板のバリア構造を模式的に示す側面図である。
図16において、電気基板のバリア構造700は、電気基板のバリア30内に回路基板7を配置し、電気基板のバリア30に向けて冷却風を送る送風ファン8を配置したものであって、電気基板のバリア構造600(実施の形態5)で説明した構成に加え、回路基板7の冷却性能を向上する構成にしたものである。
回路基板7には、電磁誘導コイル6を駆動するための回路素子7aが放熱フィン60に装着された状態で搭載されている。
また、送風ファン8と放熱フィン60とは、送風ファン8からの冷却風を放熱フィン60へ導風可能なようにガイド61が設置されている。また、ガイド61は回路基板7よりも隔壁1a側、即ち、電磁誘導コイル6側への冷却風の一部を回路基板7a側へ振り分けるように、ガイド61の一部を回路基板7側へ傾斜部61aを備えた構造となっている。
また、傾斜部61aは放熱フィン60側の終端位置を回路基板7の回路素子7aの実装面と略同一になるように構成されている。
【0048】
続いて、図16を用いて動作を説明する。冷却手段8から送り出させる冷却風は、実施の形態6で説明したように隔壁1aを境に冷却風a1、a2に分けられる。回路基板7側への冷却風a1はガイド61により、放熱フィン60に向かって導風される。さらに、ガイド61には傾斜部61aの作用により、送風ファン8からの冷却風はより多く放熱フィン60側へ振り分けられる。また、傾斜部61aの放熱フィン60側の終端を回路素子7aの実装面と略同一となるようにしているので、送風ファン8からの冷却風は放熱フィン60と回路基板7との間にも入り込むようになる。
【0049】
以上説明したように、送風ファン8からの冷却風が電気基板のバリア30内の放熱フィン60に導風されるようにガイド61を設けたため、冷却風が放熱フィン60以外に漏れることが少なくなる。したがって、効率よく放熱フィン60に当てる事が可能になり、回路素子7aの冷却効果を高めることが可能になる。また、放熱フィン60と回路基板7との間にも冷却風が流れる構成にしているため、より一層回路素子7aの放熱効果を高めることが可能になる。更に、放熱効果が高まるため、送風ファンの回転数を低く抑えることが出来るため、本体1の動作中の騒音を低減する効果がある。
【0050】
[実施の形態7]
(電気基板のバリア構造その7)
図17は本発明の実施の形態7に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、(a)はこれが有する電気基板のバリア構造を模式的に示す正面図、(b)は電気基板のバリア構造を模式的に示す側面図である。
図17において、電気基板のバリア構造800は、電気基板のバリア構造700(実施の形態6)の構成に加え、さらに冷却効果を高めるようにしたものである。
すなわち、電気基板のバリア構造800には、ガイド61(図16参照)に、送風ファン8から冷却フィン60へ送られる冷却風が漏れないように、放熱フィン60のフィン上面側にカバー61bを配置して、送風ファン8からのダクトが形成されている。
【0051】
続いて冷却風の流れを説明する。基本的な冷却風の流れは、電気基板のバリア構造600及び700(実施の形態5及び6)において説明したものと同様であり、電気基板のバリア構造800では、ガイド61にカバー61bが配置されている。したがって、カバー61bにより、送風ファン8から放熱フィン60側へ送られる冷却風は、放熱フィン60以外に漏れることなく、その略全量が放熱フィン60及び放熱フィン60と回路基板7の空間を通過し、回路素子7aの冷却に作用する。
【0052】
以上説明したように、カバー61bにより放熱フィン60への冷却風の導風を確実にすることが出来るため、電気基板のバリア構造700(実施の形態6)の構成よりも、更に、放熱効果を高めることができる。また、放熱効果が高める事が出来るため、送風ファン8からの送風量も抑えることが出来るため、一層低騒音化が可能になるという効果を奏する。
【0053】
なお、電気基板のバリア構造800では、ガイド61とカバー61bとによって送風ファン8からダクトを形成する形としたが、放熱フィン60へ送風される冷却風が漏れないように構成すれば、どのような形態でもよい。例えば、放熱フィン60のフィン高さを放熱フィンの対向する電気基板のバリア30の天面部まで延長し、ダクト同様の構成としても良いし、ガイド61をカバー61bと一体で構成してもよい。
【0054】
[実施の形態8]
(電気基板のバリア構造その8)
図18〜20は本発明の実施の形態8に係る電磁誘導式加熱調理器を説明するものであって、これが有する電気基板のバリア構造を模式的に説明する一部を拡大して示す側面図である。
図18において、電気基板のバリア構造900は、電気基板のバリア30を、本体1の隔壁1aに配置したものであって、送風ファン8に取り入れる吸気を効率よく行なう構成にしている(なお、実施の形態5〜7では、放熱フィン60への冷却風の導風を効率よく行なうための構成にしている)。
【0055】
すなわち、ガイド61とカバー61b及び送風ファン8を有した電気基板のバリア30が、隔壁1aに取り付けられている。送風ファン8の吸気部8bには、送風ファン8の吸気部8bと略同じ大きさの吸気ダクト62を備えている。吸気ダクト62は本体1と送風ファン8の間に配置され、筒状の形状であり送風ファン8の吸気部に通じている。
一方、吸気ダクトが位置する本体1側には底部部材28が配置されている。吸気ダクト62が位置する本体1は、本体1の外部より冷却風を吸気するための吸気口63を有し、更に、本体1に配置されている底部部材28は、吸気口63が対向する部分に孔(図示せず)を有する構造となっている。
【0056】
次に、図18を用いて送風ファン8の吸気について説明する。送風ファン8が回路基板7の冷却のために動作を行うと、送風ファン8は本体1に設けた吸気口63から吸気を行なう。吸気された冷却風は吸気ダクト62を通過し、前述のようにガイド61により放熱フィン60に導風されることになる。吸気ダクト62の配置により、送風ファン8は吸気口63からの本体1の外部のみからの吸気を行い、本体1の内部からの吸気は行なわない動作となる。
【0057】
以上説明したように、送風ファン8の吸気には本体1の外部と連通する吸気ダクト62が設けられているため、送風ファン8の吸気は外部からのみとすることができる。したがって、本体1の内部の電磁誘導コイル6などを冷却した後の温まった空気を吸気することが無いため、回路基板の冷却を効率よく行なう事が出来る。
【0058】
(その他の電気基板のバリア構造)
また、図19に示すように電気基板のバリア構造900bでは、吸気ダクト62を本体1の一部として本体1と一体に構成している。具体的には、本体1の変形などを防止する目的で配されるリブの一部を吸気ダクト形状にしても、同様の効果を得ることが出来る。
更に吸気ダクト62を本体1と一体化できるため、構成部材の点数削減及び簡素化が可能になり、製造コストも抑えることが可能になる。
【0059】
また、吸気ダクト62を構成する別の形態として、図20に示すように電気基板のバリア構造900cは、ガイド61及びカバー61bを用いて、本体1の吸気口63まで延長し、冷却ダクト64として一体構成とし、前述のように回路基板7の冷却効果を高めている。更に、吸気から放熱フィン60までの隙間の無い連通する冷却ダクト64とすることができるため、吸気及び送風の漏れが無くなり一層冷却効果を高める効果が得られる。
【0060】
[実施の形態9]
(電気基板のバリア構造その9)
図21の(a)、図21の(b)および図21の(c)において、電気基板のバリア構造1000は、背面側に設置される背面側バリア110aと、正面側に配置される正面側バリア110bと、から構成されている(以下、両者が組み合わされたものを「バリア1000」と称す場合がある)。
背面側バリア110aは、背面側バリア30a(実施の形態1参照)のバリア天面32aの端部に斜め上方向に伸びる傾斜面35aを形成したものである。
正面側バリア110bは、正面側バリア30b(実施の形態1参照)のバリア天面32aを背面側に短縮して、端縁から斜め下方向に伸びる傾斜部35bを形成したものである。
また、傾斜面35aおよび傾斜部35bの端部は、それぞれ図示するように端部のエッジを無くすために折り返し部35aア、35bアを設けている。バリア側面33aに勘合穴36aを設けている。バリア側面33bに勘合爪36bを設け、端部近傍に内側に向く突起を設けている。
【0061】
(組立手順)
次に、組立手順を説明する。
(SS1)まず第1に、本体1の背面に正面側バリア110bを取付ける。
(SS2)次に、正面側バリア110bに絶縁部材11を取付ける。
(SS3)次に、絶縁部材11の上に回路基板7を取付ける。
(SS4)次に、蓋2から出ているフラットケーブル9をコネクタ10に接続する。
(SS5)次に、背面側バリア110aに送風ファン8を取付ける。
(SS6)次に、背面側バリア110aを取付ける。この時穴36aに、爪36bの突起が勘合する。さらにこのとき、背面側バリア110aの傾斜部35aにおいてフラットケーブル9を受け止め、背面側バリア110aの傾斜部35aが正面側バリア110bの傾斜部35bの下面側になるように、差し込む。そうすると、フラットケーブル9の一部(図21において範囲「ハ〜ニ」)は、傾斜部35bの背面側の面と傾斜部35aの背面側の面とによって挟み込まれることになる。
(SS7)次に、フラットケーブル9をヒンジ軸13の下側に配置して、蓋2の軸穴22、本体の軸穴23にヒンジ軸13を通してヒンジを構成する。
以上より、実施の形態9においては、円盤状バリア30cや防水カバー14が不要になるから、部品点数が減少すると共に、組み立て作業が簡素になる。よって、製造コストを安価にすることが可能になる。さらに、傾斜部は必要最低限の長さであり、背面側バリア取り付け時には傾斜面に沿って斜め上方に設置すれば良く、組立作業性が良くなる。また、勘合穴36aと勘合爪36bが勘合することで、110a、bのバリア同士の密着性が向上し、固定が安定する。
【0062】
(作用)
図22において、フラットケーブル9は、バリア1000の外側に下端部(図21において位置「ハ」)が形成されるように折り曲げられ、該下端部から傾斜に沿って高い位置に向かってバリア110の内側に引き込まれている。したがって、本体1の上部から浸入した水滴Wがフラットケーブル9に沿って流れ落ちて来た場合であっても、水滴Wは傾斜部35bと傾斜部35aの傾斜を遡って隙間を上昇して、回路基板7に入ることが防止される。
【0063】
(異常時対応)
実施の形態1の記載に準じ、回路素子の発火に至り、回路基板7を含めた周辺の可燃物が燃焼するようなことが起こった場合について、その際の動作について説明する。
図11において、炎は上方向に向かう性質があるが、回路基板7は金属やガラスなど不燃性材料のバリア110によって覆われており、特に、天井面は、ほぼ閉塞しているので、炎がバリア110の外に出ることが防止されている。
なお、背面側バリア110aの段差部35aと正面側バリア110bの傾斜部35bとの重ね合わせ目は接触、もしくは隙間0.5〜1.0mm以下の僅かな隙間しかないものであり、特に、かかる隙間は下方向を向いているため、炎がこのような隙間を通過して出ることが全く無い。
【0064】
また、電気基板のバリア構造1000はバリア110の天井面が閉塞されているため、上部からの酸素の出入りが極少に抑えられ、燃焼に必要な酸素が欠乏するから、激しい燃焼を抑制することができる。
したがって、想定外の長期使用や使用環境の悪化等によって、万が一、回路基板7が燃えるようなことが起きたとしても、バリア110の外部に炎が出ることがない。よって、不測の事態においても、電気基板のバリア構造1000を搭載する加熱調理器の本体1や背面カバー15が、炎や熱によって損傷することがないから、加熱調理器の商品としても信頼性を長期間にわたって維持することができる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る電気基板のバリア構造は以上のように、電気基板への水滴の浸入が防止されて劣化や損傷が抑えられ、万一、電気基板が発火するようなことが起こったとしても、炎が外部に漏れないから、長期にわたって高い信頼性を維持することができる。よって、信頼性の高い電気基板のバリア構造として、一般家庭用および事業用の各種電気機器に搭載することが可能である。
【符号の説明】
【0066】
1:本体、1a:隔壁、1b:連通部、2:蓋、3:操作ボタン、4:表示器、5:加熱容器、6:電磁誘導コイル、7:回路基板、7a:回路素子、8:送風ファン、9:フラットケーブル、10:コネクタ、11:絶縁部材、13:ヒンジ軸、14:防水カバー、15:背面カバー、20:背面穴、21:スリット穴、22:軸穴、23:軸穴、24:接続コンセント端子、26:折り返し部(下端部)、28:底部部材、30:バリア(実施の形態2)、30a:背面側バリア、30b:正面側バリア、30c:円盤状バリア、31a:バリア背面、31b:バリア正面、31c:円盤面、32a:バリア天面、32b:バリア天面、32c:円筒面、33a:バリア側面、33b:バリア側面、33c:外周フランジ、35a:段差部、35b:庇部、36a:段差部切欠、37a:側面切欠、40:バリア(実施の形態3)、40a:背面側バリア、40b:正面側バリア、50:バリア(実施の形態4)、50a:背面側バリア、50b:正面側バリア、60:放熱フィン、61:ガイド、61a:傾斜部、61b:カバー、62:吸気ダクト、63:吸気口、64:冷却ダクト、100:加熱調理器(実施の形態1)、200:バリア構造(実施の形態1)、300:バリア構造(実施の形態2)、400:バリア構造(実施の形態3)、500:バリア構造(実施の形態4)、600:バリア構造(実施の形態5)、700:バリア構造(実施の形態6)、800:バリア構造(実施の形態7)、900:バリア構造(実施の形態8)、1000:バリア構造(実施の形態9)、W:水滴、a1:冷却風、a2:冷却風。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
コネクタを具備する電気基板と、
該電気基板に沿って配置された絶縁部材と、
前記コネクタに接続されたフラットケーブルと、
前記電気基板および前記絶縁部材を収納し、下面が開口した函状のバリアと、を有し、
前記フラットケーブルが前記バリアの外部において折り曲げられて下端部が形成され、該下端部よりも高い位置において前記フラットケーブルが前記バリアの内部に引き込まれてなると共に、
前記バリアは、背面側バリアと、正面側バリアとを有し、
前記背面側バリアは、背面穴が形成された略矩形状のバリア背面と、該バリア背面の上縁に形成されたバリア天面と、前記バリア背面の両側縁に形成された一対のバリア側面と、を具備し、
前記正面側バリアは、略矩形状のバリア正面と、該バリア正面の上縁に形成されたバリア天面と、前記バリア正面の両側縁に形成された一対のバリア側面と、を具備し、
前記背面側バリアのバリア天面および一対のバリア側面が、それぞれ前記正面側バリアのバリア天面および一対のバリア側面に当接し、
前記背面側バリアの背面穴を閉塞してスリット穴を形成したバリアを有し、
前記フラットケーブルが前記スリット穴を通過してなることを特徴とする電気基板のバリア構造。
【請求項2】
前記背面側バリアは、背面穴を形成し、前記背面穴を閉塞するバリアを具備し、該バリアにスリット穴を形成することを特徴とする請求項1記載の電気基板のバリア構造。
【請求項3】
前記背面側バリアのバリア天面または前記正面側バリアのバリア天面の一方または両方に、断面L字状の防水カバーが設置され、
該防止カバーが前記スリット穴を覆うと共に、前記フラットケーブルが、前記防水カバーの一部を抱え込むように折り曲げられてなることを特徴とする請求項1または2記載の電気基板のバリア構造。
【請求項4】
前記バリアの下方に、前記バリアの開口する下面の面積よりも広い面積の底部部材が配置されてなることを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の電気基板のバリア構造。
【請求項5】
前記底部部材と前記電気基板の下端との距離が、25mm以上であることを特徴とする請求項4記載の電気基板のバリア構造。
【請求項6】
前記底部部材が不燃材または難燃材によって形成され、前記底部部材と前記電気基板の下端との距離が、25mm未満であることを特徴とする請求項4記載の電気基板のバリア構造。
【請求項7】
前記バリアの下方に、前記バリアの内部に空気を送り込むための送風手段が配置されてなることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の電気基板のバリア構造。
【請求項8】
前記送風手段は、送風手段から送り出される冷却風が前記バリア内の電気基板へ送風されるとともに、冷却風の一部が前記電気基板バリア空間外への冷却風として送風可能な位置に配置されることを特徴とする請求項7記載の電気基板のバリア構造。
【請求項9】
前記バリア内へ配置された電気基板へ送風される冷却風は、電気基板に搭載された放熱フィン部へ導風されるようにガイドを設けたことを特徴とする請求項7記載の電気基板のバリア構造。
【請求項10】
前記ガイドは、電気基板へ送風される冷却風が、電気基板に搭載された放熱フィン及び、放熱フィンと電気基板の隙間に導風されるように送風手段から放熱フィン部へ配置したことを特徴とする請求項9記載の電気基板のバリア構造。
【請求項11】
前記ガイドは前記送風手段から前記放熱フィンへ導風される冷却風が、略全量が放熱フィンと、放熱フィンと電気基板の隙間を通過後、バリア内の他電気部品を冷却するように送風手段から放熱フィンにかけてダクト形状としたことを特徴とする請求項7記載の電気基板のバリア構造。
【請求項12】
前記送風手段は、前記電気基板のバリア構造の下方、且つ電気基板のバリア構造が収納される筐体底部との間に配置され、前記筐体底部のうち前記送風手段の吸気部が対向する部分に吸気口を設けるとともに、前記吸気口から送風手段の吸気部までの吸気風路を送風手段の吸気部と略同じ大きさの吸気ダクトを備えることを特徴とする請求項7乃至11の何れかに記載の電気基板のバリア構造。
【請求項13】
前記吸気ダクトは前記筐体底部の一部で構成したことを特徴とする請求項12記載の電気基板のバリア構造。
【請求項14】
前記吸気風路は、前記ガイド部と一体で構成したことを特徴とする請求項7乃至12の何れかに記載の電気基板のバリア構造。
【請求項15】
調理される材料を収納するための釜と、
該釜を加熱するための電磁誘導コイルと、
前記釜と前記電磁誘導コイルとを収納し、上方に本体開口部を具備する本体と、
前記本体開口部に設置され、前記釜を開閉自在に閉塞する蓋と、
前記本体に設置された請求項1乃至14の何れかに記載のバリア構造と、
を有し、
前記フラットケーブルの一端が、前記蓋内に侵入していることを特徴とする電磁誘導加熱調理器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2010−179151(P2010−179151A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106146(P2010−106146)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2009−8052(P2009−8052)の分割
【原出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】