説明

電気的絶縁被覆を含む方向性電磁鋼板

【課題】変圧器に使用した場合に板の個々の層の電気的絶縁を確実なものとする、方向性電磁鋼板の最終アニーリング処理後の電気的絶縁被覆およびその電気的絶縁被覆を用いた方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】Si、O、N、B又はFの少なくとも1種のドープ元素を絶縁被覆中に1〜20原子パーセントの範囲で含む非晶質の炭素−水素ネットワーク製の電気的絶縁被覆を含む方向性電磁鋼板とする。また、前記電気的絶縁被覆とシート基板との間に少なくとも1つの付着改善性中間層を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、変圧器における、方向性電磁鋼板の使用のために、板の個々の層の電気的絶縁を確実にするため、最終のアニーリング処理後に適用される、電気的絶縁被覆を有する新規な方向性電磁鋼板に関する。本発明は、電気的絶縁被覆を有する方向性電磁鋼板の製造方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、変圧器における、さらなる使用のために、ヒステリシス損を低減することが重要である。このことに対してしばしば用いられる一つの手段は、固有の電気抵抗の増加を生じそしてこのようにしてうず電流損の低減を生じるケイ素を合金することにより添加することである。アニーリング処理及び冷間圧延及び化学的組成における変更により、結晶方位{110}<001>が設定されそして増大される。板の厚さの低減により、前記損は、いっそう改善される。さらに、鋼の純度を改善することにより、望ましくないトラップとして磁化の反転の間にブロッホの壁運動を妨げる仕上げされた製品中の析出粒子を回避することができる。
【0003】
特別に高められた方向性を有しそしてこのようにして高い透磁率(permeability)を有する型の電磁鋼板は、二次再結晶粒の大きさの限界、及びそれぞれに対結晶粒表面に対する粒界長さの大きな比率が確保され、そしてこのようにしてブロッホの壁間隔が低減されるように、製造方法が制御されることにおいて、ヒステリシスに関してさらに一層改善されることができる。当業界の技術の状態は、シート基板上で永久的な引張り応力を及ぼす絶縁層の適用により、及びさらに圧延の方向を横断して又はその方向に傾いて局部応力の線を発生させる処理による、ドメイン構造の追加の改善も含んでいる。とりわけ、これらは、局部的な機械的変形(EP0409389A2)、レーザー光線又は電子処理(EP0008385B1;EP0100638B1;EP0571705A2)又はグルーブのエッチングイン(EP0539236B1)であることができる。
【0004】
特別な低い損の特性を有する型の電磁鋼板を製造するこの方法は、絶縁層を形成する手段及びさらなるドメイン精錬のための手段の組合せが高価であるという不都合と関連している。絶縁層は、通常、注意深く互いに他と調和される一連の複雑な処理工程において構成されることにおいていっそうの不都合がある。このことは、経済的でかつ質的な処理の最適化のためになおいっそうのパラメーター変更を行うことに対して極めてわずかな範囲しか与えない。
【0005】
現在まで通常に用いられている張力付与層は、最終厚さまで冷間圧延されたストリップが一次再結晶及び脱炭のためにアニーリング処理に付され、そこで目標とされた方法で、表面が酸化され、次いで非粘着層としての適切な添加剤及びMgOで被覆され、そして乾燥され、続いてコイリングされ、そして二次結晶化及び引き続きの析出形成性元素の鋼の洗浄の目的で再度アニーリング処理されることにおいて提供される。このアニーリング処理工程の間、非粘着層は、ストリップ表面上で酸化物と反応しそして「ガラスフィルム」とも呼ばれるフォルステライト層(MgSiO)を形成する。このフィルムは、基材中に定着するようになり、特性はその付着性を高めるようになる。
【0006】
さらなる処理工程において、例えば、DE2247269C3から公知のように、リン酸マグネシウム又はリン酸アルミニウム又はその2種と種々の添加剤(例えば、クロム化合物およびSi酸化物)との混合物をベースにした溶液が前記フィルムに適用され、そして350℃を越える温度でバーンイン(burned−in)される。仕上げされた絶縁層が基材に移動する引張り応力は、約5MPaまでであることができる。この方法で達成されるヒステリシス損の改善は、約5%の大きさである。さらに、磁気ひずみが低減される。
【0007】
達成することができる損の改善は、層を形成するために、酸化処理が不可避であり、その処理の間に非強磁性粒子及び不均一性が表面に又は表面ゾーン内に生成し、前記粒子及び不均一性が磁化の反転の間にブロッホの壁の移動性を妨げ、このようにして増大したエネルギー損を引き起こすという事実により制限される。
【0008】
従って、より新しい開発において、ガラスフィルムを有さずそしてできる限り滑らかである表面を持つ電磁鋼板を製造し;そしてその後、基材として表面酸化を必要としない張力付与絶縁層を適用しようとする試みがなされてきた。例えば、EP0555867A2に記載のように、酸化性物質を用いた層に対するゾルゲル法が試みられてきた。この配列において、層の張力は、鋼及び層の熱膨張率の違いを基にして、及び層の形成の間の800℃〜1000℃の高温を基にして生成されてきた。他の公知の方法は、極めて滑らかな表面の電磁鋼板製のシート基板上へのCVD法又はPVD法、例えば、電子ビーム蒸着、マグネトロンスパッタ又は真空アーク蒸着による薄層の付与を含んでおり、ここで金属窒化物又は金属炭化物(例えば、TiN、BN、ZrN、AlN、Ti(CN)、Cr2N、TiC、ZrC、WC)の層又は多重層が、EP0193324B1又はEP0910101A1に記載のように生成される。
【0009】
これらの型の層を用いて、例えば、8MPaの電磁鋼板中の引張り応力を生成することができるが、その不適切な電気的絶縁効果は、EP0215134B1に記載のように、それらの層が追加の絶縁層により覆われなければならないように不都合なものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、特別に静かな低損の変圧器に対するコア材料として適切である高透磁性の方向性電磁鋼板を生成することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、非晶質の炭素−水素ネットワーク製の電気的絶縁被覆を含む、請求項1に記載の方向性電磁鋼板により達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明に係る方向性電磁鋼板は、磁気ドメイン構造を精錬するための追加の手段が不必要になる程度まで、前記引張り応力を板状に及ぼしてヒステリシス損を改善する被覆を含んでいる。本発明に従って非晶質の炭素−水素ネットワークから形成される被覆は、ストリップ表面に安全に付着し、そして高い表面絶縁抵抗を与える。
【0013】
:C−H又はダイヤモンドライクカーボン(DLC)としても知られている非晶質の炭素−水素ネットワークは、極めて硬く、化学的に不活性であり、そして鋼合金に対して良好な付着性を与えることは、例えば、EP0600533B1に記載されているように周知である。現在まで、例えば、DE19834968A1又はWO99/47346A1に記載されているように、これらの特性は、その被覆がその付着効果に関して特定の要件を満たさなければならない、工具の被覆に利用されてきた。同じ適合性は、ピストンリングの被覆を扱う、DE19825860A1から公知の、当業界の状態の中心をなしている。
【0014】
驚くべきことに、本発明に係る方法において、非晶質の炭素−水素ネットワークの特徴を有する層を用いて与えられた電磁鋼板は、磁気特性、例えば、低減されたヒステリシス損及び増大された磁気分極を顕著に改善したことが見出された。おそらく、このことは、ドメイン精錬に対する電磁鋼板の追加の処理を不必要なものにする、磁気ドメイン構造において観察された精錬によるものである。
【0015】
さらに、本発明に係る電磁鋼板は、変圧器コア中で起こることがあるタイプの圧縮ひずみに対する磁気特性の非感受性を獲得する。このことに関連する別の利点は、より静かな変圧器を構成することを可能にする低減された磁気ひずみである。さらに、本発明に係る層系は、通常の層系より薄く、従って変圧器コア中のより高いスタッキングファクターを可能にする。
【0016】
方向性電磁鋼板の電気的絶縁被覆は、元素Si、O、N、B又はFの1種又は数種で、好ましくは、それぞれ1〜20原子パーセントの範囲でドープされていることができる。
【0017】
電磁鋼板の特別に良好な磁気特性は、電気的絶縁被覆がシート基板上に少なくとも8MPaの引張り応力を及ぼすことにおいて達成される。
【0018】
シート基板と非晶質の炭素−水素ネットワークとの間の付着性をさらに改善するために、電気的絶縁被覆とシート基板との間に少なくとも1つの付着改善性中間層を配置することが有利である。この付着性改善性中間層は、例えば、Si−C−O−Hネットワーク又はSi−C−Hネットワークからなることができる。
【0019】
さらに、考慮されることができる付着改善性中間層は、チタン又はチタン含有化合物、とりわけ、窒化チタンを含んでおり、それによってシート基板上の引張り応力はさらに増大されることができる。
【0020】
好ましくは、本発明に係る電磁鋼板の層は、少なくとも10Ω*cmの表面絶縁抵抗を有しており、その結果として、必要な絶縁効果が確保される。
【0021】
対応する最適化に関して、本発明に係る方向性電磁鋼板は、板厚さ0.30mmで、ヒステリシス損(周波数50ヘルツ及び分極1.7テスラにおいて)P1.7=0.90W/kg;板厚さ0.27mmで、ヒステリシス損P1.7=0.80W/kg;及び板厚さ0.23mmで、ヒステリシス損P1.7=0.70W/kgを有している。
【0022】
典型的な組成において、シート基板は、2.5重量%〜4.0重量%のケイ素、0.20重量%までのマンガン、0.50重量%までの銅、0.065重量%までのアルミニウム、0.0150重量%までの窒素、及び少なくとも90重量%の鉄を含有している。さらに、追加で、元素Cr、Ni、Mo、P、As、Sn、Sb、Se、Te、B又はBiの1種又は数種が、0.2重量%までの質量含有率で存在することができる。
【0023】
シート基板は、典型的には方向性電磁鋼板製造において用いられる溶鋼から、厚さ20〜300mmのスラブのストリップキャスティング又は連続キャスティングによって製造され、前記溶鋼は、2.5重量%〜4.0重量%のSi、0.100重量%までのC、0.20重量%までのMn、0.50重量%までのCu、0.035重量%までのS、0.065重量%までのAl、0.0150重量%までのNを含有しており、そしてその残部は主体としてのFe及び通常の不純物並びにそれぞれ0.2重量%までの質量含有率である上記の追加の合金元素Cr、Ni、Mo、P、As、Sn、Sb、Se、Te、B又はBiである。これらのスラブは引き続いて熱間ストリップに圧延され、その後、熱間ストリップの必要に応じたアニーリング処理が行われることができる。1回又は数回のパスによる、引き続きの冷間圧延は、0.15〜0.50mmの最終厚さまでの中間アニーリング処理により行われる。これに引き続いて、鋼中の炭素の質量含有率が0.005重量%を越えている限り、脱炭条件で一次再結晶アニーリング処理が行われ、並びに、非粘着層の適用により必要がある場合には,引き続いて二次再結晶及びゴス組織形成のためのアニーリング処理(粗大粒子アニーリング処理)が行われ、非粘着層から任意の残留物を除去する必要があり及び前のアニーリング処理の間に形成された酸化物をストリップ表面から除去する必要がある場合には、再結晶及び組織形成を制御するためにはもはや必要ではない元素の鋼を洗浄するためのアニーリング処理(最終アニーリング処理)が行われる。いっさいのガラスフィルムを含まないシート基板の表面を確保する処理条件は、粗大粒子アニーリング処理後にガラスフィルムの形成及び引き続きの必要な除去を防止するためにとりわけ有利である。
【0024】
連続ストリップ炉中での最大15分間の時間による連続アニーリング処理として実施される、ゴス組織形成を伴う二次再結晶のためのアニーリング処理は、シート基板の製造におけるさらに好ましい変形である。この関係において、好ましくは、鋼の洗浄のためのアニーリング処理は、連続ストリップ炉中で最大15分間の時間による連続アニーリング処理としても実施される。処理の最適化に関して、これらの処理工程は、本発明に係る表面層の形成が連続ストリップ炉中でのアニーリング処理と直接にインラインで実施される場合に最良の結果が達成される。
【0025】
用いられるシート基板は、最初の冷間圧延と二次再結晶の間に窒素化アニーリング処理条件に付されることにおいて好都合に影響を与えられることもできる。このことは、アニーリング処理ガスにNHを添加することによって行われることができる。これの代替として、適切な窒素供給添加剤によってストリップを窒素化して非粘着性層を与えることができる。
【0026】
非晶質の炭素−水素ネットワークから電気的絶縁被覆を用いて本発明に係る方向性電磁鋼板を製造するための適切な方法は、連続ストリップ法において行われる電気的絶縁被服を用いたストリップ型のシート基板の被覆の形成からなる。好都合には、付着改善性中間層の付与も、好ましくは、非晶質の炭素−水素ネットワークを用いた連続被覆の上流に配置された、連続ストリップ法において行われる。
【0027】
非晶質の炭素−水素ネットワークを用いた被覆及び付着改善性中間層の付与の両方に対して、CVD(化学蒸着)法又はPVD(物理蒸着)法を、被覆法として考えることができる。CVD法の場合、熱活性化又はプラズマ活性化及びとりわけ好ましいホローカソードグロー放電法を含む方法を考えることができる。PVD法の場合、熱蒸着、スパッタリング、又はレーザー、電子ビーム又はアーク蒸着が適切である。プラズマ活性化高速電子ビーム蒸着は、PVD法のとりわけ好ましい態様と考えられる。個々の被覆工程を異なる方法を用いて実施することもできる。
【0028】
好都合には、被覆の前、鋼基板の表面の粗さRaは最大0.5μmであるべきであり、これは、このことが磁気特性における有意な改善に寄与するからである。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を代表的な態様によりさらに詳細に説明する。下記を示す:
図1:通常の被覆系を用いて被覆された板に対して、及び本発明に従って被覆された板に対して、張力付与表面被覆を用いて被覆された板の外部圧力/引張り強さに対してプロットされたヒステリシス損;及び
図2:連続ストリップ法における付着改善性中間層及び引き続きの非晶質の炭素−水素ネットワークからの電気的絶縁被覆を含む方向性電磁鋼板の両面被覆用装置の概略図。
【0030】
表1は、サンプル1〜4について:各被覆状態;片面上に被覆されたサンプルの曲率から計算された各引張り応力(DLCの場合、片面上に被覆され;通常の絶縁の場合、次に片面上に絶縁を含まない);各板厚さ;ヒステリシス損P1.7(周波数50ヘルツ及び分極1.7テスラにおいて測定);及び800A/mの磁界強度における磁気分極を示す。
【0031】
【表1】

【0032】
シート基板は、通常のガラスフィルム及びホスフェート層を用いた高透磁性の方向性電磁鋼ストリップの工場製造から取出された(サンプル1)。ホスフェート層は、60℃において25重量%のNaOHを用いて除去され、一方、その下のガラス層はHCl/HF混合物を用いて除去された。引き続いて、表面は、H/HF混合物中の化学研磨により滑らかにされた。
【0033】
サンプル2の被覆の製造は、以下のようにして実施された:
アルゴン−アセチレン混合物中の、ホローカソード放電法により発生された、強力なグロー放電によって、プラズマを発生させ、そこから電磁鋼板の両面上に、大きな硬さ及び高い残留圧縮応力の非晶質の炭素−水素層を溶着させる。この層を付与する前に、ケイ素、炭素及び水素(Si−C:H)からなる、約0.5μm厚の付着性付与非晶質層を、同じホローカソードをベースとしたグロー放電法により溶着させる。アセチレンに代えて、TMS(テトラメチルシラン)を出発物質として用いてこの層を溶着させる。
【0034】
サンプル2の、DLC層として省略して表1中に示した、この方法で造られた非晶質の炭素−水素層は、厚さ1μmである。片面のみに被覆された対照サンプルの坑折から、3GPaの残留圧縮圧が測定される。従って、厚さ0.25mmの電磁鋼板中に、約12MPaの引張り応力が発生する。フランクリンテスターによって、≧20Ωcmの面抵抗がこの層について測定された。
【0035】
サンプル3及び4の被覆の製造を以下のようにして実施した:
アルゴン−アセチレン混合物中の高周波グロー放電によって、プラズマを発生させ、そこから電磁鋼板の両面上に、大きな硬さ及び高い圧縮応力の非晶質の炭素−水素層を溶着させる。この層を付与する前に、厚さ約0.5μmの付着性付与チタン層をカソードスパッタリングによって溶着させる。チタン層から非晶質の炭素−水素層への移行(transition)は、真空を中断することなしに行われる。
【0036】
サンプル3及び4の非晶質の炭素−水素層は、厚さ2μmである。片面のみに被覆された対照サンプルの坑折から、この層について、3GPaの残留圧縮応力が測定される。従って、厚さ0.25mmの電磁鋼板中に、約25MPaの引張り応力が発生する。フランクリンテスターによって、>20Ωcmの面抵抗がこの層について測定される。
【0037】
非晶質の炭素−水素ネットワークを用いた本発明に係る被覆の前及び後の、サンプルの同じ位置におけるドメイン構造の説明は、厚さ1μmの非晶質の炭素−水素層の軽度にドメイン精錬する効果、及び厚さ2μmの非晶質の炭素−水素層の高度にドメイン精錬する効果を示している。
【0038】
圧縮ひずみに対する非感受性を測定するために、ヒステリシス損を、外部引張り応力(正の値)及び圧縮応力(負の値)に応じて測定した。この結果を図1に示す。被覆されていない板について測定された値を、菱形により示し;ガラスフィルム+ホスフェートの通常の層系を用いた板について測定された値を、三角形により示し;そして本発明に係る板について測定された値を、四角形により示す。
【0039】
図2は、連続ストリップ法における付着改善性中間層及び非晶質の炭素−水素ネットワークからなる引き続き付与された電気的絶縁被覆を用いた方向性電磁鋼板の両面被覆用のプラントの例を示すものである。
【0040】
アンコイリングされそしてロック1によって閉鎖される高真空ゾーンに移された後、電磁鋼板のストリップBは、最初にプラズマ精密精製(fine−purification)用の装置2を通過し、そこで、例えば、Ar雰囲気中の磁場強化されたグロー放電により、精密精製が行われる。
【0041】
付着性改善中間層は、引き続きストリップBが通過する蒸着プラント3中で高速電子ビーム蒸着により付与される。これらの付着性改善層は、例えば、Ti又はTiNからなる。後者の場合、電子ビーム蒸着の反応性変形が適用され、そこで、目標とされた方法により窒素が反応性ガスとして真空受容体に導入されると、有利である。蒸着の間のプラズマ活性化の使用も好都合であることができる。
【0042】
次いで、非晶質の炭素−水素ネットワークからなる電気的絶縁被覆の溶着が、真空が維持され続けながら、中断なしにホローカソードグロー放電装置4において行われる。バンドホローカソードの使用はこの関係においてとりわけ好都合である。
【0043】
その後、被覆されたストリップBは、ロック5によって真空ゾーンから取出され、次いでコイリングされる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】通常の被覆系を用いて被覆された板に対して、及び本発明に従って被覆された板に対して、張力付与表面被覆を用いて被覆された板の外部圧力/引張り強さに対してプロットされたヒステリシス損。
【図2】連続ストリップ法における付着改善性中間層及び引き続きの非晶質の炭素−水素ネットワークからの電気的絶縁被覆を含む方向性電磁鋼板の両面被覆用装置の概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
非晶質の炭素−水素ネットワーク製の電気的絶縁被覆を含む方向性電磁鋼板。
【請求項2】
前記電気的絶縁被覆が元素Si、O、N、B又はFの少なくとも1種を用いてドープされていることを特徴とする、請求項1に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項3】
前記ドープ元素が1〜20原子パーセントの範囲で電気的絶縁被覆中に含まれていることを特徴とする、請求項2に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項4】
前記電気的絶縁被覆が、シート基板上に少なくとも8MPaの引張り応力を及ぼすことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項5】
少なくとも1つの付着改善性中間層が、前記電気的絶縁被覆とシート基板との間に配置されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項6】
前記の少なくとも1つの付着改善性中間層がSi−C−O−Hネットワークからなることを特徴とする、請求項5に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項7】
前記の少なくとも1つの付着改善性中間層がSi−C−Hネットワークからなることを特徴とする、請求項5又は6に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項8】
前記の少なくとも1つの付着改善性中間層がチタン又はチタン含有化合物からなることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項9】
前記チタン含有化合物が窒化チタンであることを特徴とする、請求項8に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項10】
前記層が少なくとも10Ω*cmの表面絶縁抵抗を有していることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項11】
前記板が、板厚さ0.30mmで、ヒステリシス損(周波数50ヘルツ及び分極1.7テスラにおいて)P1.7≦0.90W/kg;板厚さ0.27mmで、ヒステリシス損P1.7≦0.80W/kg;及び板厚さ0.23mmで、ヒステリシス損P1.7≦0.70W/kgを有していることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項12】
前記シート基板が、2.5重量%〜4.0重量%のケイ素、0.20重量%までのマンガン、0.50重量%までの銅、0.065重量%までのアルミニウム、0.0150重量%までの窒素、及び少なくとも90重量%の鉄を含有していることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項13】
さらに、0.2重量%までの元素Cr、Ni、Mo、P、As、Sn、Sb、Se、Te、B又はBiの少なくとも1種が存在していることを特徴とする、請求項12に記載の方向性電磁鋼板。
【請求項14】
請求項1〜13までのいずれか一項に記載の、非晶質の炭素−水素ネットワーク製の電気的絶縁被覆を有する方向性電磁鋼板の製造方法であって、電気的絶縁被覆を用いたストリップ形のシート基板の被覆が連続ストリップ法において行われることを特徴とする製造方法。
【請求項15】
請求項5〜9に記載の、付着改善性中間層を有するシート基板の被覆が、電気的絶縁被覆の適用前に連続ストリップ法において行われることを特徴とする、請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
前記被覆工程の少なくとも1つがCVD(化学蒸着)法により行われることを特徴とする、請求項14又は15に記載の製造方法。
【請求項17】
前記被覆工程の少なくとも1つがPVD(物理蒸着)法によって行われることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記被覆工程の少なくとも1つがプラズマ活性化PVD法によって行われることを特徴とする、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記被覆工程の少なくとも1つがホローカソードグロー放電法によって行われることを特徴とする、請求項17又は18に記載の製造方法。
【請求項20】
被覆前の鋼基板の表面が最大0.5μmの粗さRaを有していることを特徴とする、請求項14〜19のいずれか一項に記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−18573(P2009−18573A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137395(P2008−137395)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【分割の表示】特願2003−507331(P2003−507331)の分割
【原出願日】平成14年6月21日(2002.6.21)
【出願人】(591010893)ティッセンクルップ エレクトリカル スティール ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (3)
【氏名又は名称原語表記】Thyssenkrupp Electikal Steel GmbH
【Fターム(参考)】