説明

電気自動車用モータ及び充電装置

【課題】モータに給電用の2次コイルを設けることなく、充電時の受電ロスを減少させた電気自動車用モータを提供する。
【解決手段】電気自動車用のモータ7は、永久磁石19a、19bを備えるロータ15と、ステータ21とを備える。ステータ21は、ロータ15に対向する駆動用ティース27と、充電時に給電トランス53と対向する給電用ティース25とを備えたステータコア23のバックヨークに、コイル29がトロイダル状に巻かれている。充電時には、外部電源61に接続された1次コイル59が巻かれた給電用ティース57がモータ7の給電用ティース25に近接され、給電トランス53の1次コイル59とモータ7のコイル29とが電磁結合して充電用電力を受電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用モータ及びこのモータを搭載した電気自動車に充電する充電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載したバッテリで駆動される電気自動車は、外部電源と電気的または磁気的に結合してバッテリに電力を供給するための充電用トランスを備えている。この充電用トランスのコスト及び重量・容積を削減するため、駆動コイルとは別に、モータのステータコアの外周に複数のスロットを設け、このスロットに1次コイルと2次コイルを巻線して充電用トランスとモータとを共用する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−87712号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においても、充電の際に使用する1次コイルと2次コイルをステータコアに設ける必要があり、コスト・重量・容積が増加するという問題点があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記問題点を解決するために、本発明は、電気自動車用モータに、永久磁石型ロータと、ステータコアの少なくとも一部のバックヨークにトロイダル状に巻かれたコイルと、ステータコアの駆動用ティースとは異なる周部に突出した給電用ティースと、を備え、給電用ティースを介して前記コイルと外部給電側のコイルとを電磁結合させることにより、充電用電力を受電することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、コイルをトロイダル状に巻いて外側給電側のコイルと給電用ティースとが電磁結合することによってコイルに鎖交磁束を発生させて充電するようにしているため、充電時に給電側から供給される磁束はロータを鎖交することなくコイルを鎖交することができる。このため外部電源から受電するための2次コイルをモータのステータに設ける必要がないため、モータのコスト・重量・容積を低減することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】(a)本発明に係る電気自動車用モータの実施例1を搭載した電気自動車の概念図、(b)実施例1のモータの構造を説明する周方向展開図である。
【図2】(a)実施例1のモータにおける給電用ティースが円筒形モータケースの底面から露出している場合の構成図、(b)モータの軸方向から給電トランスを接近させて給電する場合の斜視図である。
【図3】(a)実施例2のモータにおけるモータ極数より少ない給電用ティースから給電する場合の構成図、(b)円筒形モータケースの側面から給電用ティースが露出している場合の斜視図である。
【図4】(a)実施例3のモータにおける充電対象バッテリの電圧によりモータコイルの巻数を切り換える場合の構成図、(b)実施例3の回路接続図である。
【図5】(a)実施例4のモータにおけるモータ駆動時のコイル接続を示す周方向展開図、(b)実施例4のモータにおける給電時のコイル接続を示す周方向展開図である。
【図6】実施例5におけるモータの車両搭載状態を説明する概念図である。
【図7】実施例6におけるモータの車両搭載状態を説明する概念図である。
【図8】ステータ重量の比較により本発明の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0009】
図1(a)は、本発明に係る電気自動車用モータの実施例1を搭載した電気自動車1の概念図である。図1(b)は、電気自動車1に搭載したモータ7の構造を説明する周方向展開図である。電気自動車1は、駆動用バッテリ3と、駆動用バッテリ3から供給される直流電力を3相交流電力に変換するインバータ5と、インバータ5が供給する3相交流電力で駆動されるモータ7とを備えている。モータ7の出力は、ドライブシャフト9を回転させ、ドライブシャフト9は、駆動輪11を回転させることにより、電気自動車1が走行する。電気自動車1を充電する外部電源61は、モータ7と電磁結合して充電電力を供給する給電トランス53を備えている。
【0010】
尚、インバータ5は、電気自動車1の回生制動時や外部電源61から充電する際に、モータ7から供給される交流電圧を整流して駆動用バッテリ3へ充電する機能を有するものとする。
【0011】
モータ7は、アキシャルギャップタイプでロータ15とステータ21とを備える。ロータ15は、軟磁性体のロータコア17に永久磁石19aと永久磁石19bとが埋め込まれている。永久磁石19aは、ステータ側へN極を向け、永久磁石19bはS極を向けている。図1(b)中の破線は、図中中央の駆動用ティースがS極に磁化された場合の磁束の流を示す。
【0012】
ステータ21は、ステータコア23と、ロータ15に対向する駆動用ティース27と、給電時に給電トランス53と対向する給電用ティース25と、ステータコア23にトロイダル状に巻かれたU,V,W各相のコイル29とを備えている。コイル29は、駆動用のコイルと充電用の2次コイルとを兼ねるコイルである。ステータコア23と給電用ティース25と駆動用ティース27とは、電磁鋼板の積層材や粉末軟磁性材料の焼結材で一体として成型されている。
【0013】
給電トランス53は、トランスコア55と、給電用ティース57と、1次コイル59とを備えている。トランスコア55と給電用ティース57とは、電磁鋼板の積層材や粉末軟磁性材料の焼結材で一体として成型されている。
【0014】
電気自動車1の充電時には、給電トランス53の給電用ティース57は、モータ7の給電用ティース25と対向する位置に配置される。これにより給電トランス53の1次コイル59とモータ7のコイル29とが電磁結合して、外部電源61から3相交流電力がコイル29のU相、V相、W相に伝えられる。コイル29に伝えられた3相交流電力は、インバータ5で整流されて駆動用バッテリ3へ充電される。
【0015】
図2は、実施例1において、モータ7が給電用ティース25を6個備え、全ての給電用ティースから給電する場合を示す図である。図2(a)は、モータケース内部のロータ15とステータ21を示す構成図である。図2(a)に示すように、ステータ21は、給電用ティース25と駆動用ティース27とを同じ機械的な位相位置にそれぞれ6個備えている。各ティース25、27を接続するステータコア23の部分には、時計回りに、U相、V相、W相、U相、V相、W相のコイル29がトロイダル状に巻かれている。
【0016】
図2(b)は、実施例1のモータ7の軸方向から給電トランス53をモータ7の給電用ティース25に接近させて給電する場合の斜視図である。図2(b)に示すように、給電用ティース25の先端部が円筒形のモータ7のモータケース底面7aから露出している。また図2(b)では、給電用ティース25の先端部のみモータケースから露出する場合を示しているが、先端部のみではなく、給電用ティースの全部または一部がモータケース表面から露出する構造でもよい。
【0017】
以上説明した実施例1によれば、コイルがステータコアにトロイダル状に巻かれているため、充電時に給電側から供給される磁束はロータを鎖交することなくコイルを鎖交することができる。このため外部電源から受電するための2次コイルをモータのステータに設けることなく、電磁結合により給電を受ける際の磁気抵抗を下げることが可能になり、充電効率を向上させながらモータのコスト・重量・容積を低減することができるという効果がある。
【0018】
また実施例1によれば、モータケース表面に給電用ティースを露出させることにより、給電トランスの給電用ティースとモータの給電用ティースとの距離を近づけることができるので、給電トランスからの電力をより効率よくステータのコイルに伝送することが可能となるという効果がある。
【実施例2】
【0019】
次に、図3を参照して、本発明に係る電気自動車用モータの実施例2を説明する。実施例2のモータ7は駆動用ティース27の数(6)より少ない数(3)の給電用ティース25を備え、給電用ティース25がモータケースから露出している場合の実施例である。
【0020】
図3(a)は、モータケース内部のロータ15とステータ21を示す構成図である。図3(b)は、モータ7のコイル接続図である。図3(c)は、円筒形のモータ7のモータケース側面7bから給電用ティース25の先端部が露出している様子を示す斜視図である。
【0021】
図3(a)に示すように、ステータ21は、給電用ティース25を3個と、駆動用ティース27を6個備えている。各駆動用ティース27を接続するステータコア23の部分には、時計回りに、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相の合計6個のコイル29がトロイダル巻きで巻かれている。
【0022】
図3(b)に示すように、給電用ティース25に隣接するU1相、V1相、W1相の各コイルは、中性点33と各相の引出線との間に直接接続されている。給電用ティース25に隣接しないU2相、V2相、W2相の各コイルの一端は中性点33に接続されている。しかし、U2相、V2相、W2相の各コイルの他端は、それぞれスイッチ31a、31b、31cを介して各相の引出線に接続されている。
【0023】
これらのスイッチ31a、31b、31cは、モータ駆動時には閉じられ、U1相とU2相、V1相とV2相、W1相とW2相が並列に駆動される。しかし、給電用ティース25を介して充電用電力を受電する際には、スイッチ31a、31b、31cは開かれて、U2相、V2相、W2相の各コイルを切り離す。これにより、充電用電力の受電に寄与しないU2相、V2相、W2相の各コイルが充電用電力の放電経路となることはない。
【0024】
図3(c)は、実施例2のモータ7の半径方向から給電トランス53をモータ7の給電用ティース25に接近させて給電する場合の斜視図である。図3(c)に示すように、給電用ティース25の先端部が円筒形のモータ7のモータケース側面7bから露出している。また図3(c)では、給電用ティース25の先端部のみモータケースから露出する場合を示しているが、先端部のみではなく、給電用ティースの全部または一部がモータケース表面から露出する構造でもよい。
【0025】
以上説明した実施例2によれば、コイルがステータコアにトロイダル状に巻かれているため、充電時に給電側から供給される磁束はロータを鎖交することなくコイルを鎖交することができる。このため外部電源から受電するための2次コイルをモータのステータに設けることなく、電磁結合により給電を受ける際の磁気抵抗を下げることが可能になり、充電効率を向上させながらモータのコスト・重量・容積を低減することができるという効果がある。
【0026】
また実施例2によれば、モータケース表面に給電用ティースを露出させることにより、給電トランスの給電用ティースとモータの給電用ティースとの距離を近づけることができるので、給電トランスからの電力をより効率よくステータのコイルに伝送することが可能となるという効果がある。
【0027】
さらに実施例2によれば、一部のコア(例えば図3のU1,V1,W1に隣接する外側に突起した給電用ティース)に給電したときに、コイルU1に発生する磁束とコイルU2に発生する磁束にアンバランスが生じ、それによる起電力に差が発生するが、スイッチ31a〜31cを開いてコイルU2,コイルV2,コイルW2を切り離すことにより、起電力の差によるコイルU1−U2間、コイルV1−V2間、コイルW1−W2間のぞれぞれの循環電流を抑止し、充電電力が無駄に消費されることを防止することができるという効果がある。
【実施例3】
【0028】
次に、図4を参照して、本発明に係る電気自動車用モータの実施例3を説明する。実施例3のモータ7は、異なる電圧のバッテリに充電する際に、各コイルの巻数を切り換える巻数切換器を備えた実施例である。
【0029】
図4(a)は、モータケース内部のロータ15とステータ21を示す構成図である。図4(a)に示すように、ステータ21は、給電用ティース25と駆動用ティース27とを同じ機械的な位相位置にそれぞれ6個備えている。各ティース25、27を接続するステータコア23の部分には、時計回りに、U1相、V1相、W1相、U2相、V2相、W2相のコイル29がトロイダル巻きで巻かれている。
【0030】
図4(b)は、実施例3におけるバッテリからモータ7までの概略接続図である。バッテリとしては、電気自動車の駆動用バッテリ3と、補機用バッテリ35とを備えている。駆動用バッテリ3の電圧は、例えば百[kW]程度の車両駆動出力を取り出すために、多数の単電池を直列接続した構成であり、例えば数百[V]である。これに対して、補機用バッテリ35は、一般的な乗用車用補機を駆動するために、例えば、12[V]である。
【0031】
このような電圧が異なるバッテリをインバータ5から充電するために、駆動用バッテリ3とインバータ5との間にスイッチ3a、補機用バッテリ35とインバータ5との間にスイッチ35aを備えている。さらに、モータ7の各コイルは、巻数切換器37a〜37fを備えている。
【0032】
即ち、U1相のコイルは巻数切換器37a、U2相のコイルは巻数切換器37b、V1相のコイルは巻数切換器37c、V2相のコイルは巻数切換器37d、W1相のコイルは巻数切換器37e、W2相のコイルは巻数切換器37f、を介してそれぞれインバータ5の各相に接続されている。巻数切換器37a〜37fは、具体的には、スイッチ、またはカーボンブラシのような可動接触片である。
【0033】
駆動用バッテリ3を充電する場合には、スイッチ3aを閉じて、スイッチ35aを開き、巻数切換器37a〜37fは、それぞれのコイルが駆動用バッテリ3を充電するのに適した大巻数となる位置へ切り換えられる。これにより図示しない給電トランスから供給される交流電力が高電圧でインバータ5へ供給され、インバータ5で整流されて直流高電圧となり、駆動用バッテリ3へ充電される。
【0034】
補機用バッテリ35を充電する場合には、スイッチ3aを開き、スイッチ35aを閉じて、巻数切換器37a〜37fは、それぞれのコイルが補機用バッテリ35を充電するのに適した小巻数となる位置へ切り換えられる。これにより図示しない給電トランスから供給される交流電力が低電圧でインバータ5へ供給され、インバータ5で整流されて直流低電圧となり、補機用バッテリ35へ充電される。
【0035】
以上説明した実施例3によれば、コイルがステータコアにトロイダル状に巻かれているため、充電時に給電側から供給される磁束はロータを鎖交することなくコイルを鎖交することができる。このため外部電源から受電するための2次コイルをモータのステータに設けることなく、電磁結合により給電を受ける際の磁気抵抗を下げることが可能になり、充電効率を向上させながらモータのコスト・重量・容積を低減することができるという効果がある。
【0036】
また実施例3によれば、モータケース表面に給電用ティースを露出させることにより、給電トランスの給電用ティースとモータの給電用ティースとの距離を近づけることができるので、給電トランスからの電力をより効率よくステータのコイルに伝送することが可能となるという効果がある。
【0037】
更に実施例3によれば、電圧の異なるバッテリへ充電する際に、巻数切換器がモータ7のコイルの巻数を切り換えるので、モータ7からインバータ5へ適切な電圧で充電用電力を供給することができ、トランスやDC−DCコンバータ等の電圧変換器を必要とすることなく、外部電源から電圧の異なる複数のバッテリへ充電することができるという効果がある。
【実施例4】
【0038】
次に図5を参照して、本発明に係る電気自動車用モータの実施例4を説明する。実施例4のモータ7は、給電用ティース25と駆動用ティース27とをステータ21上に互い違いに配置し、給電用ティース25と駆動用ティース27との間にそれぞれコイルを配置した実施例である。そして本実施例では、モータ駆動時には、隣り合う駆動用ティース間の2つのコイルを直列接続し、充電時には、隣り合う給電用ティース間の2つのコイルを直列接続することにより、モータケース外部への磁束の漏れを低減することができるという特徴がある。
【0039】
図5(a)は、実施例4のモータの構造を説明する周方向展開図であり、モータ駆動時の接続を示している。図5(b)は、実施例4のモータの構造を説明する周方向展開図であり、給電時の接続を示している。
【0040】
図5(a),(b)において、ステータコア23には、交互に給電用ティース25と駆動用ティース27が形成され、給電用ティース25と駆動用ティース27との間にそれぞれコイルが設けられている。即ち、ステータコア23には、図中左から順に、給電用ティース25a、駆動用ティース27a、給電用ティース25b、駆動用ティース27b、給電用ティース25c、駆動用ティース27cが設けられている。
【0041】
そして、給電用ティース25aと駆動用ティース27aとの間には、W相のコイルW2が設けられ、駆動用ティース27aと給電用ティース25bとの間には、U相のコイルU1が設けられている。同様に、給電用ティース25bと駆動用ティース27bとの間には、U相のコイルU2が設けられ、駆動用ティース27bと給電用ティース25cとの間には、V相のコイルV1が設けられている。同様に、給電用ティース25cと駆動用ティース27cとの間には、V相のコイルV2が設けられ、駆動用ティース27cと給電用ティース25aとの間には、W相のコイルW1が設けられている。そして、各コイルU1〜W2の巻数は等しくなるように設定されている。
【0042】
これらのコイルの直列接続状態を切り換えるスイッチとして、スイッチ39a〜39fと、スイッチ41a〜41fの2群のスイッチが設けられている。これらのスイッチは、具体的には、たとえば図示しない駆動回路により駆動されるリレーの接点である。
【0043】
次にコイルとスイッチの接続を詳細に説明する。コイルW2の一端は、スイッチ39aを介してコイルW1の他端に接続されている。コイルW2の他端は、スイッチ39bを介して中性線(中性点)33に接続されるとともに、スイッチ41aを介してコイルU1の一端に接続されている。コイルU1の他端は、スイッチ41bを介して中性線33に接続されるとともに、スイッチ39cを介してコイルU2の一端に接続されている。コイルU2の他端は、スイッチ39dを介して中性線33に接続されるとともに、スイッチ41cを介してコイルV1の一端に接続されている。コイルV1の他端は、スイッチ41dを介して中性線33に接続されるとともに、スイッチ39eを介してコイルV2の一端に接続されている。コイルV2の他端は、スイッチ39fを介して中性線33に接続されるとともに、スイッチ41eを介してコイルW1の一端に接続されている。コイルW1の他端は、スイッチ41fを介して中性線33に接続されるとともに、スイッチ39aを介してコイルW2の一端に接続されている。
【0044】
図5(a)に示すようにモータ駆動時には、スイッチ39a〜39fがオンとなり、スイッチ41a〜41fがオフとなるように、図示しない制御回路により制御される。これにより、モータ駆動時には、駆動用ティース27aと駆動用ティース27bとの間のコイルU1とコイルU2とが直列接続され、駆動用ティース27bと駆動用ティース27cとの間のコイルV1とコイルV2とが直列接続され、駆動用ティース27cと駆動用ティース27aとの間のコイルW1とコイルW2とが直列接続される。従ってモータ駆動時の磁束は、図5(a)中の破線で示すようになる。ここで、コイルU1とコイルU2、コイルV1とコイルV2、コイルW1とコイルW2とがそれぞれ同じ巻数であるので、給電用ティース25a、25b、25cからそれぞれ外部へ漏れる磁束が打ち消しあって漏れ磁束を低減することができるという効果がある。
【0045】
図5(b)に示すように給電時には、スイッチ39a〜39fがオフとなり、スイッチ41a〜41fがオンとなるように、図示しない制御回路により制御される。これにより、給電時には、給電用ティース25aと給電用ティース25bとの間の2つのコイルW2とコイルU1とが直列接続され、給電用ティース25bと給電用ティース25cとの間の2つのコイルU2とコイルV1とが直列接続され、給電用ティース25cと給電用ティース25aとの間の2つのコイルV2とコイルW1とが直列接続される。
【0046】
従って給電時の磁束は、例えば、給電トランスの給電用ティース57bがN極の場合、図5(b)中に破線で示すように、給電用ティース57bから、給電用ティース25b、ステータコア23、給電用ティース25a、給電用ティース57aに至る経路、及び、給電用ティース57bから、給電用ティース25b、ステータコア23、給電用ティース25c、給電用ティース57cに至る経路をとることができる。ここで、コイルW2とコイルU1、コイルU2とコイルV1、コイルV2とコイルW1とがそれぞれ同じ巻数であるので、駆動用ティース27a、27b、27cからそれぞれロータコア17に漏れる磁束が打ち消しあって漏れ磁束を低減することができるという効果がある。
【0047】
以上説明した実施例4によれば、コイルがステータコアにトロイダル状に巻かれているため、充電時に給電側から供給される磁束はロータを鎖交することなくコイルを鎖交することができる。このため外部電源から受電するための2次コイルをモータのステータに設けることなく、電磁結合により給電を受ける際の磁気抵抗を下げることが可能になり、充電効率を向上させながらモータのコスト・重量・容積を低減することができるという効果がある。
【0048】
また実施例4によれば、モータケース表面に給電用ティースを露出させることにより、給電トランスの給電用ティースとモータの給電用ティースとの距離を近づけることができるので、給電トランスからの電力をより効率よくステータのコイルに伝送することが可能となるという効果がある。
【0049】
また実施例4によれば、モータを駆動する走行時にはモータケースに露出した給電用ティースが磁化されることがなく、砂鉄や金属物が吸引付着することがないため信頼性が向上するという効果がある。
【0050】
更に実施例4によれば、給電時にロータコアへ漏れる磁束がキャンセルされ、充電効率の向上やロータの振動騒音低減が図れるという効果がある。
【実施例5】
【0051】
次に図6を参照して、本発明に係る電気自動車用モータの実施例5として、車両搭載例を説明する。図6は、電気自動車に本発明のモータを搭載した状態を説明する概念図である。電気自動車1は、アキシャルタイプのモータ7を車両底部に備える。このモータ7自体は、図2で説明した実施例1のモータである。モータ7のケース底面7aには、図示しない給電用ティースが露出している。モータ7の上面には、傘歯車を備えたモータ出力軸7cが設けられている。モータ出力軸7cには、プロペラシャフト45の一端部に備えられた傘歯車43aが噛み合っている。プロペラシャフト45の他端部の傘歯車43bは、図示しないドライブシャフトに設けられた傘歯車9aに噛み合っている。従って、モータ出力軸7cの垂直方向の回転軸は、プロペラシャフト45の車両前後方向の回転軸に変換され、更に車両左右方向に回転軸を有する図示しないドライブシャフトの回転に変換されて、駆動輪11を駆動することができるようになっている。
【0052】
充電用の外部電源61に接続された給電トランス53は、駐車場の地面や床面に設置されている。ユーザーは、規定の駐車位置に駐車することにより、給電トランス53と、モータ7のケース底面7aの露出した図示しない給電用ティースとが電磁結合して、外部電源61から電気自動車1に給電することができる。
【実施例6】
【0053】
次に図7を参照して、本発明に係る電気自動車用モータの実施例6として、異なる車両搭載例を説明する。図7は、電気自動車に本発明のモータを搭載した状態を説明する概念図である。
【0054】
図7に示すように電気自動車1は、アキシャルタイプのモータ7を車両後部に備える。このモータ7自体は、図3で説明した実施例2の円筒形モータの側面に給電用ティースが露出するタイプである。モータ7は、動力伝達ベルト47によりドライブシャフト9へ動力を伝え、これにより駆動輪11が駆動される。
【0055】
また、電気自動車1の車両後部に給電トランス53の差込口51と、この差込口51を覆うハッチ49が設けられている。ユーザーは、充電時に、ハッチ49を開いて、給電トランス53を差込口51へ差し込む。これにより給電トランス53とモータ7の円筒形ケース側面に露出した図示しない給電用ティースとが近接し、充電用電力を外部電源61から電気自動車1に給電することができる。
【0056】
図8は、本発明の各実施例に共通の効果を説明する図である。本発明に係る電気自動車用モータは、給電用と駆動用を兼用したコイルと、給電用ティースとを備える。そしてモータの給電用ティースと、給電トランスの給電用ティースとを電磁結合させて、充電電力を給電するので、給電用2次コイルをモータに備える必要がなくなる。
【0057】
このため図8に示すように、駆動用コイルと給電用2次コイルとを備えた比較例に対して、本発明を適用した実施例では、ステータの重量を約20%削減可能となり、モータの重量・容積及びコストを低減することができるという効果がある。
【符号の説明】
【0058】
7 モータ
15 ロータ
17 ロータコア
19a、19b 永久磁石
21 ステータ
23 ステータコア
25 給電用ティース
27 駆動用ティース
29 コイル
53 給電トランス
55 トランスコア
57 給電用ティース
59 1次コイル
61 外部電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を備えるロータと、
該ロータに対向する駆動用ティースを有するステータコアと、
該ステータコアの前記駆動用ティース間の少なくとも一部のバックヨークにトロイダル状に巻かれたコイルと、
前記ステータコアの前記駆動用ティースとは異なる周部に突出した給電用ティースと、
を備えたモータであって、
前記給電用ティースを介して前記コイルと外部給電側のコイルと電磁結合させることにより、充電用電力を受電することを特徴とする電気自動車用モータ。
【請求項2】
前記給電用ティースの全てまたは一部がモータケース表面に露出していることを特徴とする請求項1に記載の電気自動車用モータ。
【請求項3】
モータケース表面に露出している前記給電用ティースの隣に巻回されているコイル以外のコイルを回路から切り離すスイッチを備え、
前記外部給電側から充電用電力を受電する際に、前記スイッチを開くことを特徴とする請求項2に記載の電気自動車用モータ。
【請求項4】
前記コイルの巻数を切り換える巻数切換手段を備え、駆動用バッテリ充電時と、駆動用バッテリとは電圧が異なる補機用バッテリ充電時とで、前記コイルの巻数を切り換えることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の電気自動車用モータ。
【請求項5】
前記駆動用ティースと、前記給電用ティースとがステータの周方向に互い違いに配置されており、前記駆動用ティースと前記給電用ティースとの間にはそれぞれ等しい巻数のコイルが巻かれており、モータ駆動時には、隣り合う駆動用ティース間の2つのコイルを直列接続し、充電時には、隣り合う給電用ティース間の2つのコイルを直列接続する切換手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の電気自動車用モータ。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の電気自動車用モータを備えた電気自動車に充電する充電装置であって、
前記電気自動車用モータの給電用ティースに電磁結合して充電用交流電力を供給する外部給電側のコイルを備えたことを特徴とする充電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−268570(P2010−268570A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116686(P2009−116686)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】