説明

電気錠システム

【課題】不正解錠を防止しつつ、特定の施解錠操作を行うことなく容易に錠の施解錠が行える。
【解決手段】リーダ20は、携帯機10から受信した自身を特定する機器ID情報と、リーダから送信した照会信号に付加された送信情報と、無作為に選択したリーダ20の受信ゲートを示す受信ゲート指定情報とを含む携帯機特定信号の機器ID情報が登録済みの携帯機の機器ID情報と一致し、且つ照会信号に付加した送信情報と一致する携帯機特定信号を受信ゲート指定情報に基づく受信ゲートの受信タイミングで受信したときに、2回目の受信のときの携帯機特定信号のAGCレベルと1回目の受信のときのAGCレベルとを比較して所定範囲内のレベルの増加と判定したときに、錠を施解錠するための信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者を特定する認証用の携帯機特定信号を送信する携帯機と、この携帯機から送信される携帯機特定信号を受信するリーダとを備え、携帯機がリーダの所定の通信エリア内に近接した際に起動する誘導磁界を利用して錠の施解錠を行う電気錠システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、セキュリティの向上や操作性の向上を目的に、施解錠用のIDコードを用いた電子制御による扉錠の施解錠装置が提案されている。この種の施解錠装置は、利用者が所有する携帯型のリモコンキーと、リモコンキーが送信するIDを受信する施解錠機構とからなり、無線通信によるID照合結果に基づいて錠の施解錠を行う。なお、このような施解錠装置については、例えば下記特許文献1に記載されたものが公知である。
【0003】
図6は特許文献1に開示される施解錠装置の概略構成を示している。図6に示すように、送信アンテナと受信アンテナとを設けた送受信機と、この送受信機とシリンダ錠とを備えると共に施解錠する者の意志による操作で施解錠することができるタッチスイッチ101を設けた外側錠部102とがドア103の外面に配設されている。また、ドア103の内面には、送信アンテナと受信アンテナとを設けた送受信機と、施解錠機構の電動駆動部を設けたサムタ−ン装置とを備えると共にタッチスイッチ104を設けた内側錠部105とが配設されている。この施解錠装置では、携帯機106からのレスポンスコ−ド信号の受信にしたがってコントロ−ラ107が施解錠の準備モ−ドに移行し、この準備モ−ドにおいてタッチスイッチ101または104を操作することにより、施錠又は解錠が実行される構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−343129号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1に開示される従来の施解錠装置では、施解錠時に利用者が扉に近接した状態で扉に配設されたタッチキーが押下されると、利用者に施解錠意志があるものと認識して錠の施解錠を行っていた。
【0006】
しかしながら、上述した従来の施解錠装置では、利用者の施解錠意志を確認するためにタッチキーの押下を必要不可欠としており、利用者の両手がふさがった状態ではタッチキーの押下が困難であり、特に重い荷物を持っている場合に無理してタッチキーを押下しようとすると、転倒や荷物の落下等の事故につながる虞があった。また、特に上肢が不自由な身障者等のように、手が自由に使えない利用者では、タッチキーが押下できず施解錠を行うことができなかった。さらに、タッチキーの設置場所が成人の標準身長に合せた高さに設置されていることが多いため、利用者が低身長の子供や老人等場合にスムーズに施解錠操作が行えないという問題もあった。
【0007】
また、この種の施解錠装置では、タッチキーが扉に配設されているため、悪戯によってタッチキーが破損したり、機能低下を招く可能性があった。しかも、押下操作しやすいように扉の表面にタッチキーが配設されるため、美観を損ねる要因にもなっていた。
【0008】
ところで、施解錠装置の他の形態として、携帯機がリーダに近づいた際の受信レベルの大きさによって錠を解錠する方式も知られているが、この方式ではリーダに接近検知機能がないため、リーダの近くに携帯機が置かれた状態のまま放置されると、常に錠が解錠状態となってしまい、セキュリティ上問題があった。
【0009】
さらに、近年では、あるノイズに対して逆位相の信号を重ね合わせることでノイズを無効化するノイズキャンセラー技術の進歩によって空間伝送信号のコピーが容易になっている。このため、リーダーと携帯機との間で送受信される信号を傍受され、その信号を用いて不正解錠される虞があり、更なるセキュリティ向上が求められている。
【0010】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、利用者が特定の施解錠操作を行うことなく容易に錠を施解錠することができ、且つリーダーと携帯機との間の信号傍受による不正解錠が防止できるセキュリティる電気錠システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、請求項1に記載された電気錠システムは、利用者を特定する認証用の携帯機特定信号を送信する携帯機と、
該携帯機から送信される前記携帯機特定信号を要求する照会番号を周期的に送信し、該照会信号に対する携帯機特定信号を前記携帯機との間の通信距離に応じたAGCレベルで受信する受信ゲートを複数有するリーダと、を備え、
前記携帯機が前記リーダの所定の通信エリア内に近接した際に起動する誘導磁界を利用して錠の施解錠を行う電気錠システムにおいて、
前記携帯機は、前記リーダの通信エリア内に近接して前記リーダから前記照会信号を所定の受信タイミングで受信したときに、自身を特定する機器ID情報と、無作為に選択した前記リーダの受信ゲートを示す受信ゲート指定情報とを含む前記携帯機特定信号を送信し、
前記リーダは、前記携帯機から受信した前記携帯機特定信号の機器ID情報が登録済みの携帯機の機器ID情報と一致する前記携帯機特定信号を前記選択された受信ゲートの受信タイミングで受信したときに、2回目の受信のときの前記携帯機特定信号のAGCレベルと1回目の受信のときのAGCレベルとを比較して所定範囲内のレベルの増加と判定したときに、前記錠を施解錠するための信号を出力することを特徴とする。
【0012】
請求項2に記載された電気錠システムは、利用者を特定する認証用の携帯機特定信号を送信する携帯機と、
該携帯機から送信される前記携帯機特定信号を要求する照会番号を周期的に送信し、該照会信号に対する携帯機特定信号を前記携帯機との間の通信距離に応じたAGCレベルで受信する受信ゲートを複数有するリーダと、を備え、
前記携帯機が前記リーダの所定の通信エリア内に近接した際に起動する誘導磁界を利用して錠の施解錠を行う電気錠システムにおいて、
前記携帯機は、前記リーダの通信エリア内に近接して前記リーダから所定の送信情報が付加された前記照会信号を所定の受信タイミングで受信したときに、自身を特定する機器ID情報と、前記照会信号に付加された送信情報と、無作為に選択した前記リーダの受信ゲートを示す受信ゲート指定情報とを含む前記携帯機特定信号を送信し、
前記リーダは、前記携帯機から受信した前記携帯機特定信号の機器ID情報が登録済みの携帯機の機器ID情報と一致し、且つ前記照会信号に付加した送信情報と一致する前記携帯機特定信号を前記選択された受信ゲートの受信タイミングで受信したときに、2回目の受信のときの前記携帯機特定信号のAGCレベルと1回目の受信のときのAGCレベルとを比較して所定範囲内のレベルの増加と判定したときに、前記錠を施解錠するための信号を出力することを特徴とする。
【0013】
請求項3に記載された電気錠システムは、請求項1又は2記載の電気錠システムにおいて、前記リーダは、前記携帯機特定信号と前記AGCレベルの情報を記憶する記憶手段を備え、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みで1回目の受信のときに、該受信した携帯機特定信号とAGCレベルの情報を前記記憶手段に記憶し、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みで2回目の受信のときの該携帯機特定信号のAGCレベルの増加が前記所定範囲内のときには、該携帯機特定信号とAGCレベルの情報を、前記錠を施解錠するための信号の出力後に前記記憶手段から消去し、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みで2回目の受信のときの該携帯機特定信号のAGCレベルの増加が前記所定範囲内にないときには、該携帯機特定信号とAGCレベルの情報を前記記憶手段から消去し、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みでないときには、該携帯機特定信号とAGCレベルの情報を破棄することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電気錠システムによれば、錠を施解錠する際に、その都度特別な施解錠操作をすることなく携帯機を携帯して錠に近づくだけで錠の施解錠が行え、利用者の利便性を向上させることができる。また、携帯機と誘導磁界を利用して通信できる場所であれば配設位置が制約されないので、悪戯による破損や機能低下を防止するように隠して配設することが可能となり、セキュリティ性の向上させることができる。さらに、リーダは、携帯機の機器ID情報、リーダから送信した送信情報、無作為に選択された受信リーダの受信タイミングとが一致し、且つ2回目の受信レベルが1回目の受信レベルよりも所定レベル以上増加した場合にのみ施解錠操作可能となるため、空間伝送信号のコピーによる信号の傍受での不正解錠を困難としてセキュリティ性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る電気錠システムの概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る電気錠システムにおいてリーダからの照合信号に対する受信タイミングを説明するためのタイミングチャート図である。
【図3】本発明に係る電気錠システムにおいて携帯機とリーダとの間の受信レベルと通信距離との関係を示す説明図である。
【図4】本発明に係る電気錠システムの処理動作を説明するためのフローチャート図である。
【図5】本発明に係る電気錠システムの動作タイミングを説明するためのタイミングチャート図である。
【図6】特許文献1に開示される従来の電気錠システムの概略構成を示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではなく、この形態に基づいて当業者等によりなされる実施可能な他の形態、実施例及び運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
【0017】
[電気錠システムの装置構成]
まず、本例の電気錠システムの構成について図1を参照しながら詳細に説明する。図1に示すように、電気錠システム1は、携帯機10とリーダ20とを備えて概略構成され、携帯機10がリーダ20の所定の通信エリア内に近接した際に起動する誘導磁界を利用して携帯機10とリーダ20との間で各種信号の送受信を行い、錠の施解錠制御を行っている。
【0018】
なお、以下では、本例の電気錠システム1を一般住宅の玄関扉に採用した場合を例にとって説明するが、これに限定されるものではない。例えば高齢者や身障者専用の養護施設やオフィスビル等に設けられた荷物運搬用の専用口等様々な場所に採用することができる。
【0019】
<携帯機>
携帯機10は、住人が携帯した状態でリーダ20の通信エリア内に所定距離近接することで起動する誘導磁界を利用して施解錠に必要な各種信号をリーダ20との間で送受信するものであり、図1に示すように、携帯機側受信部11、携帯機側制御部12、携帯機側送信部13、電源部14を備えて構成される。
【0020】
携帯機側受信部11は、受信アンテナ11aと、受信回路11bとを備えて構成される。受信アンテナ11aは、携帯機10がリーダ20の通信エリア内に近接した際に起動される誘導磁界により、後述する送信情報が付加された照会信号Sを取り込んでいる。受信回路11bは、受信アンテナ11aから照会信号S毎にランダムに選択される受信ゲートの受信タイミングで取り込むと、この受信した照会信号Sを所定の電圧レベルに変換した後、照会受信情報として携帯機側制御部12に出力している。
【0021】
ここで、図2は本例の電気錠システム1における送信タイミング、受信タイミング及び受信ゲートの関係を示している。図2に示すように、基本タイミングTは、リーダ20から送信される照会信号Sの送信タイミングと、携帯機10が照会信号Sに対する応答として携帯機特定信号をリーダ20に返す受信タイミングによる。受信タイミングは、基本タイミングT毎に送信される照会信号S(S1,S2,…)に対して、リーダ20の後述する受信回路21bの受信ゲートをオープンしてからクローズするまでの時間であり、受信回路21bの受信タイミングと対応して基本タイミングT毎に複数(図2の例では、受信1〜7の7つ)に分割されている。これにより、照会信号Sに対する複数の携帯機10からリーダ20への送信衝突を防止している。
【0022】
携帯機側制御部12は、例えばCPUやROM、RAM等のマイクロコンピューターで構成され、受信ゲート選択手段12aを備えている。携帯機側制御部12は、携帯機側受信部11からの照会受信情報が対応するリーダ20から出力された照会受信情報であるか否かの判別を行い、その正当性を判別する。そして、携帯機側制御部12は、正当な照会受信情報(すなわち対応したリーダ20から送信された照会受信情報)であると認証された場合にのみ、この照会信号に対する応答信号として自身を特定する機器ID情報と、照会信号に含まれる送信情報と、リーダ20の受信ゲートを無作為に選択した後述する受信ゲート指定情報とを含む信号を携帯機特定信号として携帯機側送信部13に出力している。
【0023】
なお、受信ゲート指定情報は、送信する携帯機特定信号をリーダのどの受信ゲートで受信させるかを選択する受信ゲート選択手段12aによって無作為に選択された情報である。受信ゲート選択手段12aによる受信ゲートの指定方法としては、例えば携帯機20の各受信ゲートに対応した数字がテーブル化され、乱数発生手段で発生した乱数に基づきテーブル内の数字を選択することで受信ゲートを無作為に選択している。そして、携帯機側制御部12は、受信ゲート選択手段12aで指定した受信ゲートを示す受信ゲート指定情報、機器ID情報、送信情報とを付加した携帯機特定信号として携帯機側送信部13に出力している。
【0024】
携帯機側送信部13は、送信アンテナ13aと、送信回路13bとを備えて構成される。送信回路13bは、携帯機側制御部12からの携帯機特定信号により送信アンテナ13aに流れる電流を直接駆動し、送信アンテナ13aから携帯機特定信号を送信している。
【0025】
電源部14は、例えばボタン電池や乾電池等が着脱交換可能に設けられ、各部に必要な駆動電源を供給している。また、電源部14は、電池を装着して電源を供給する構成の他に、リーダ20との間で起動する誘導磁界により自励発電を行う自励発電装置として構成することもできる。
【0026】
<リーダ>
リーダ20は、例えば扉内部や扉近傍の壁内部に携帯機10と通信可能な状態で設けられ、携帯機10との間で施解錠に関する各種信号を送受信する所定の通信エリアを有し、携帯機10が通信エリアに対して所定距離近接することで起動する誘導磁界を利用して施解錠に必要な各種信号を携帯機10との間で送受信している。このリーダ20は、図1に示すように、リーダ側受信部21、リーダ側制御部22、リーダ側送信部23、通信部24、電源部25を備えて構成される。
【0027】
リーダ側受信部21は、受信アンテナ21a、受信回路21b、AGC(Automatic Gain Control:自動利得制御)回路21cを備えて構成される。受信アンテナ21aは、携帯機10が通信エリアに対して所定距離近接することで起動する誘導磁界を利用して携帯機10から送信される携帯機特定信号を取り込んでいる。受信回路21bは、受信アンテナ21bから取り込んだ携帯機特定信号を、リーダ側制御部22からの後述する受信タイミングで受信し、この受信した携帯機特定信号を所定の電圧レベルに変換して復調した後、携帯機特定受信情報(機器ID情報、送信情報、受信ゲート指定情報を含む)としてリーダ側制御部22に出力している。AGC回路21cは、受信アンテナ21aを介して受信回路21bが受信した誘導電磁波の強さに応じて、受信回路21bの利得(感度)が適正値となるように利得を自動的に可変制御している。そして、受信した携帯機特定信号に基づくAGC回路21cのAGCレベルは、AGCレベル情報としてリーダ側制御部22に出力される。
【0028】
ここで、本例の電気錠システム1では、携帯機10とリーダ20との間で誘導磁界を利用して通信を行っており、例えば図3に示すように、携帯機10とリーダ20との間の通信距離が100cmのときの受信レベルが−41.9dB、携帯機10とリーダ20との間の通信距離が120cmのときの受信レベルが−46.7dBといったように、携帯機10とリーダ20との間の通信距離と受信レベルとの関係が物理常数であり、受信レベルが通信距離の3乗に反比例している。そして、本例のシステムによれば、携帯機特定信号毎に受信レベル変化を見ることでリーダ20に対する携帯機10の接近速度が検出でき、受信レベルからリーダ20に対する携帯機10の距離が計測できる。
【0029】
リーダ側制御部22は、例えばCPUやROM、RAM等のマイクロコンピューターで構成される。このリーダ側制御部22は、図1に示すように、記憶手段22a、情報判別手段22b、受信回数判別手段22c、AGCレベル判別手段22dを備えている。リーダ側制御部22は、図2や図5に示すような基本タイミングT毎の周期的な照会信号Sの生成、この照会信号Sの送信に伴う携帯機10からの携帯機特定信号を受信するための受信タイミング(携帯機10からの携帯機特定信号の受信ために基本タイミングT内で受信ゲートをオープンしてからクローズするまでの時間)の生成、携帯機10に送信する照会番号に付加する所定の送信情報(送信毎に変動する任意の情報)を照会信号に付加する処理、受信タイミングの受信ゲート毎に受信回路21bの出力を有効にする制御、リーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報に関する判別処理、リーダ側受信部21からのAGCレベル情報に関する判別処理を行い、これらの判別結果に応じて施解錠に関する各種制御を行う。
【0030】
記憶手段22aは、例えば磁気的、光学的記憶媒体若しくはROM、RAM等の半導体メモリで構成され、携帯機10から取得した携帯機特定信号に基づく携帯機特定受信情報に付加された機器ID情報が登録済みの情報か否かを判別するための認証用機器ID情報(すなわち、登録済みの携帯機の機器ID情報)、携帯機10に送信する送信情報(例えばリーダ固有若しくは所定条件により選択されるビットデータ)、登録済みの携帯機10からの携帯機特定受信情報の受信回数、前回受信した携帯機特定信号のAGCレベル情報、現在受信した携帯機特定信号のAGCレベル情報と前回のAGCレベル情報とを比較して所定範囲内のレベル増加か否かを判別するためのAGCレベル判別用データ等、各部の駆動制御に関する各種データを記憶している。
【0031】
情報判別手段22bは、リーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報における送信情報がリーダ20から送信した送信情報と一致するか否かを判別するとともに、受信ゲート指定情報に指定された受信ゲートで携帯機特定信号を受信したか否かを判別し、送信情報及び受信ゲートが一致した場合にのみ、リーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報における機器ID情報と、記憶手段22aに記憶された認証用機器ID情報とを比較する。そして、リーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報が記憶手段22aに登録済みの携帯機10からの情報と一致すると判別したとき、正常な携帯機特定情報を入力したことを示す正常受信情報を受信回数判別手段22cに出力している。
【0032】
なお、情報判別手段22bは、携帯機特定受信情報における送信情報と受信ゲート指定情報に指定した受信ゲートと一致しないと判別した場合又はリーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報が記憶手段22aに登録された携帯機10から送信されたものでないと判定した場合に、その携帯機特定受信情報と、そのときのAGCレベル情報とを破棄している。
【0033】
受信回数判別手段22cは、情報判別手段22bから正常受信情報を入力すると、その携帯機特定受信情報の受信が1回目か否かを判別している。そして、受信回数判別手段22cは、携帯機特定受信情報の受信が1回目と判定したときに、そのとき取り込んだ携帯機特定受信情報(携帯機特定信号)とAGCレベル情報とを記憶手段22aに記憶している。また、受信回数判別手段22は、受信した携帯機特定受信情報が2回目であった場合は、携帯機特定信号のAGCレベルを判別するためのAGCレベル判別信号をAGCレベル判別手段22dに出力している。
【0034】
AGCレベル判別手段22dは、受信回数判別手段22cからAGCレベル判別信号を入力すると、現在受信した携帯機特定受信情報のAGCレベル情報と記憶手段22aに記憶された前回のAGCレベル情報とを比較し、レベルの増加が記憶手段22aに記憶されたAGCレベル判別用データの所定範囲内にあるか否かを判別している。そして、受信したAGCレベル情報の増加が所定範囲内と判定したときには、通信部24に不図示の電気錠ユニットを駆動させるための駆動信号を出力する。また、AGCレベル判別手段22dは、AGCレベル判別処理後、携帯機10に携帯機特定信号の送信を要求するための照会信号にリーダ側制御部22で生成した送信情報を付加した状態でリーダ側送信部23に出力している。
【0035】
なお、AGC判別手段22dは、受信した携帯機特定受信情報の受信が1回目でなく、そのときのAGCレベル情報と記憶手段22aに記憶された前回のAGCレベル情報との比較により今回のAGCレベル情報の増加が所定範囲内にないと判定したときは、そのときの携帯機特定受信情報(携帯機特定信号)とAGCレベル情報を記憶手段22aから消去している。
【0036】
リーダ側送信部23は、送信アンテナ23aと、送信回路23bとを備えて構成される。送信回路23bは、AGCレベル判別手段22bからの照会信号(送信情報が付加)を、記憶手段22aに記憶された送信タイミング情報に基づく基本タイミングT毎に送信アンテナ23aから周期的に送信している。
【0037】
通信部24は、例えば通信ケーブル等を接続するための通信コネクタ等で構成され、不図示の電気錠ユニットと通信可能に接続し、AGCレベル判別手段22dから出力された駆動信号を出力している。なお、上記電気錠ユニットは、AGCレベル判別手段22dからの駆動信号により電気錠に通電し、電気錠を解錠(又は施錠)するものである。
【0038】
電源部25は、商用電源(AC100V)を外部電源として電源の供給を受け、各部に駆動電源を供給している。なお、電源部25は、扉の所定箇所に着脱交換可能に設けられる扉内電池ユニットで構成することもできる。
【0039】
[電気錠システムの処理動作]
次に、上述した電気錠システム1の処理動作について図4、5を参照しながら説明する。ここでは、送信情報をリーダ固有の8ビットデータとし、受信ゲートを図2に示すように7ゲートとし、本例の電気錠システム1を一般住宅の玄関扉に配設して住人が帰宅した際に携帯機10を用いて玄関扉を解錠する場合を例にとって説明する。
【0040】
図5に示すように、「リーダ送信」として、リーダ20からは基本タイミングT毎に照会信号S(S1,S2,…)を周期的に送信している。そして、住人がリーダ20の通信エリア内に近接していない状態では、リーダ20が携帯機10から携帯機特定信号を受信しない(図5の「リーダ受信」、「R1」の状態)。
【0041】
この状態から、図4の処理手順に沿って説明すると、まず携帯機10を携帯した住人がリーダ20の通信エリア内に近接すると(ST1)、携帯機10とリーダ20との間で誘導磁場が発生し、この誘導磁場を利用してリーダ20から携帯機10に送信情報が付加された照会信号Sを送信する(ST2)。携帯機10は、リーダ20からの照会信号Sを選択された受信タイミングで受信すると、この照会信号Sの正当性を判別する(ST3)。携帯機10は、対応するリーダ20から送信された照会信号Sと認証すると(ST3−Yes)、リーダ20の受信ゲートを無作為に選択し(ST4)、照会信号Sに対する応答として、携帯機10を特定する機器ID情報と、照会信号に含まれる送信情報と、選択した受信ゲートを示す受信ゲート指定情報とを含む携帯機特定信号をリーダ20に送信する(ST5)。
【0042】
そして、リーダ20は、携帯機10から送信された携帯機特定信号を所定の受信タイミング(例えば図5の「リーダ受信」、「R2」の状態)で受信すると(ST6)、受信した携帯機特定信号における携帯機特定受信情報の送信情報がリーダ20から送信した送信情報と一致するか否か及び受信ゲート指定情報で指定された受信ゲートと一致するか否かの判別を行う(ST7)。
【0043】
このとき、携帯機特定受信情報の送信情報がリーダ20から送信した送信情報であり、且つ受信ゲート指定情報で指定された受信ゲートで携帯機特定信号を受信した場合は(ST7−Yes)、次にこの受信した携帯機特定信号の機器ID情報が記憶手段22aに登録済みの携帯機10の機器ID情報と一致するか否かを判別する(ST8)。
一方、携帯機特定受信情報の送信情報及び受信ゲート指定情報で指定した受信ゲートのうち何れか一方でも一致していない場合は(ST7−No)、そのとき受信した携帯機特定受信情報(携帯機特定信号)とAGCレベル情報を破棄する(ST9)
【0044】
ST8において、受信した携帯機特定信号の機器ID情報が登録済みの携帯機10の機器IDと一致しないと判定すると(ST8−No)、そのとき受信した携帯機特定受信情報(携帯機特定信号)とAGCレベル情報を破棄する(ST9)。
これに対し、受信した携帯機特定信号が記憶手段22aに登録済みの携帯機10の機器ID情報と一致すると(ST8−Yes)、受信した携帯機特定信号が1回目の受信であるか否かを判別する(ST10)。
【0045】
そして、受信した携帯機特定信号が1回目の受信であると判定すると(ST10−Yes)、受信した携帯機特定信号による携帯機特定受信情報とAGCレベル情報とを記憶手段22aに記憶し(ST11)、ST6の処理に戻る。
これに対し、受信した携帯機特定信号が1回目の受信でない(2回目の受信)と判定すると(ST10−No)、そのときの携帯機特定信号のAGCレベル情報と前回受信した携帯機特定信号のAGCレベル情報とを比較し、レベルの増加(例えば図5のΔV)が所定範囲内か否かを判別する(ST12)。
【0046】
そして、レベルの増加が所定範囲内であると判定すると(ST12−Yes)、電気錠の解錠を行うための駆動信号を通信部24を介して電気錠ユニットへ出力する(ST13)。続いて、そのときの携帯機特定受信情報(携帯機特定信号)とAGCレベル情報とを記憶手段22aから消去する(ST14)。その後、送信情報を付加した照会信号Sを基本タイミングT毎に送信して携帯機10からの携帯機特定信号の受信待ちに移行する。
【0047】
これに対し、レベルの増加が所定範囲内にないと判定すると(ST12−No)、そのときの携帯機特定受信情報(携帯機特定信号)とAGCレベル情報とを記憶手段22aから消去する(ST14)。その後、送信情報を付加した照会信号Sを基本タイミングT毎に送信して携帯機10からの携帯機特定信号の受信待ちに移行する。
【0048】
以上説明したように、本例の電気錠システム1は、利用者が所有する携帯機10がリーダ20の通信エリア内に近接した際に起動する誘導磁界を利用し、携帯機10がリーダ20の通信エリア内に近接したときに、携帯機10がリーダ20から送信情報を付加した照会信号Sが周期的に送信される。携帯機10は、照会信号Sを所定の受信タイミングで受信し、この受信した照会信号Sが正当であった場合のみ携帯機10からリーダ20に自身を特定する機器ID情報と、照会信号に含まれる送信情報と、リーダ20の受信ゲートを無作為に選択した受信ゲート指定情報とを含む携帯機特定信号を送信する。
【0049】
リーダ20は、携帯機10から送信された携帯機特定信号を所定の受信タイミングで受信し、リーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報における送信情報がリーダ20から送信した送信情報と一致するか否かを判別するとともに、受信ゲート指定情報に指定された受信ゲートで携帯機特定信号を受信したか否かを判別し、送信情報及び受信ゲートが一致した場合にのみ、リーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報における機器ID情報と、記憶手段22aに記憶された認証用機器ID情報とを比較する。そして、リーダ側受信部21からの携帯機特定受信情報が記憶手段22aに登録済みの携帯機10からの情報と一致すると判別したとき、受信した回数を判別し、受信回数が1回目でなと判定したときには、そのときの携帯機特定信号のAGCレベルと前回のAGCレベルとを比較し、レベルの増加が所定範囲内であると判定したときのみ錠を施解錠するための駆動信号を電気錠ユニットに出力している。
【0050】
これにより、照会信号に付加した送信情報と携帯機10自身を特定する機器ID情報を付加した携帯機特定信号を、無作為に選択した受信ゲートの受信タイミングで受信した場合にのみ携帯機特定信号の機器ID情報と送信情報の照合を行い、双方が正常であったときに1回目と2回目の携帯機特定信号のAGCレベルを比較し、レベルが所定範囲内のであると判別したときに錠を施解錠制御するため、ノイズキャンセラー技術を用いた空間伝送信号のコピーによる不正解錠を困難として、セキュリティ性の向上を図ることができる。
【0051】
さらに、錠を施解錠する際に、その都度特別な施解錠操作をすることなく、利用者は携帯機10を携帯してリーダに近づくだけの接近検知により錠の施解錠を行うことができる。その結果、例えば両手が荷物等でふさがっている利用者であっても、解錠後に肘だけで開扉することができる。特に、重い荷物を持っている場合には、利用者転倒や運搬物の落下を防止することができる。また、リーダ設置高さに手が届かない背の小さな子供や老人、上肢の不自由な身障者、車椅子利用者等、幅広く利用することができ、リーダに触れることなく容易に錠の施解錠が行え、利便性の向上を図ることができる。
【0052】
しかも、リーダ20は、携帯機10との間で誘導磁界が起動できる位置に配設されていればよいので、金属以外の物(例えば周囲と同じ壁紙等)でリーダ20を隠して配設することができる。これにより、リーダ20の配設位置の制約が軽減され、美観を損なうこともない。そして、リーダ20を隠して配設すれば、リーダ20と気付かれることもないので、悪戯による破損や機能低下を防止するという効果を奏する。
【0053】
ところで、上述した形態では、リーダ20から送信する照会番号に付加する送信情報としてめ記憶手段22aに記憶されたものを使用する構成で説明したが、これに限定されることはなく、例えば照会信号を送信する度に所定の送信情報を生成して付加したり、一定期間毎に送信情報を新たに生成して付加したりすることで、セキュリティ性を更に向上させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1…電気錠システム
10…携帯機
11…携帯機側受信部(11a…受信アンテナ、11b…受信回路)
12…携帯機側制御部(12a…受信ゲート選択手段)
13…携帯機側送信部(13a…送信アンテナ、13b…送信回路)
14…電源部
20…リーダ
21…リーダ側受信部(21a…受信アンテナ、21b…受信回路)
22…リーダ側制御部(22a…記憶手段、22b…情報判別手段、22c…受信回数判別手段、22d…AGCレベル判別手段)
23…リーダ側送信部(23a…送信アンテナ、23b…送信回路)
24…通信部
25…電源部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者を特定する認証用の携帯機特定信号を送信する携帯機と、
該携帯機から送信される前記携帯機特定信号を要求する照会番号を周期的に送信し、該照会信号に対する携帯機特定信号を前記携帯機との間の通信距離に応じたAGCレベルで受信する受信ゲートを複数有するリーダと、を備え、
前記携帯機が前記リーダの所定の通信エリア内に近接した際に起動する誘導磁界を利用して錠の施解錠を行う電気錠システムにおいて、
前記携帯機は、前記リーダの通信エリア内に近接して前記リーダから前記照会信号を所定の受信タイミングで受信したときに、自身を特定する機器ID情報と、無作為に選択した前記リーダの受信ゲートを示す受信ゲート指定情報とを含む前記携帯機特定信号を送信し、
前記リーダは、前記携帯機から受信した前記携帯機特定信号の機器ID情報が登録済みの携帯機の機器ID情報と一致する前記携帯機特定信号を前記選択された受信ゲートの受信タイミングで受信したときに、2回目の受信のときの前記携帯機特定信号のAGCレベルと1回目の受信のときのAGCレベルとを比較して所定範囲内のレベルの増加と判定したときに、前記錠を施解錠するための信号を出力することを特徴とする電気錠システム。
【請求項2】
利用者を特定する認証用の携帯機特定信号を送信する携帯機と、
該携帯機から送信される前記携帯機特定信号を要求する照会番号を周期的に送信し、該照会信号に対する携帯機特定信号を前記携帯機との間の通信距離に応じたAGCレベルで受信する受信ゲートを複数有するリーダと、を備え、
前記携帯機が前記リーダの所定の通信エリア内に近接した際に起動する誘導磁界を利用して錠の施解錠を行う電気錠システムにおいて、
前記携帯機は、前記リーダの通信エリア内に近接して前記リーダから所定の送信番号が付加された前記照会信号を所定の受信タイミングで受信したときに、自身を特定する機器ID情報と、前記照会信号に付加された送信番号と、無作為に選択した前記リーダの受信ゲートを示す受信ゲート指定情報とを含む前記携帯機特定信号を送信し、
前記リーダは、前記携帯機から受信した前記携帯機特定信号の機器ID情報が登録済みの携帯機の機器ID情報と一致し、且つ前記照会信号に付加した送信番号と一致する前記携帯機特定信号を前記選択された受信ゲートの受信タイミングで受信したときに、2回目の受信のときの前記携帯機特定信号のAGCレベルと1回目の受信のときのAGCレベルとを比較して所定範囲内のレベルの増加と判定したときに、前記錠を施解錠するための信号を出力することを特徴とする電気錠システム。
【請求項3】
前記リーダは、前記携帯機特定信号と前記AGCレベルの情報を記憶する記憶手段を備え、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みで1回目の受信のときに、該受信した携帯機特定信号とAGCレベルの情報を前記記憶手段に記憶し、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みで2回目の受信のときの該携帯機特定信号のAGCレベルの増加が前記所定範囲内のときには、該携帯機特定信号とAGCレベルの情報を、前記錠を施解錠するための信号の出力後に前記記憶手段から消去し、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みで2回目の受信のときの該携帯機特定信号のAGCレベルの増加が前記所定範囲内にないときには、該携帯機特定信号とAGCレベルの情報を前記記憶手段から消去し、
前記携帯機から受信した携帯機特定信号が登録済みでないときには、該携帯機特定信号とAGCレベルの情報を破棄することを特徴とする請求項1又は2記載の電気錠システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−208388(P2011−208388A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−75399(P2010−75399)
【出願日】平成22年3月29日(2010.3.29)
【出願人】(390037028)美和ロック株式会社 (868)
【Fターム(参考)】