説明

電池パック

【課題】電池モジュールを3列以上で配置した場合であっても、バスバーやワイヤハーネスによる接続を適切に行う。
【解決手段】電池パックケース1と、複数の電池セル10を電気接続してなり、電池パックケース1内に配置される複数の電池モジュール2と、各電池モジュール2を直列に電気接続するための複数のバスバー12と、バスバー12を覆うバスバーカバー13とを備える。バスバーカバー13は、電池モジュール2に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池パックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の単電池(電池セル)を電気的に接続してモジュール化した複数の電池モジュールを、ケース内に収容してなる電池パックが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−76936号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の電池パックでは、各電池と制御装置とを結ぶ信号線が2列で並設した電池モジュールの間に配置したバスバーで構成されている。このため、電池モジュールが3列以上で並設された場合には適切に対応することができない。すなわち、電池モジュールを3列以上で配置しようとすれば、バスバーやワイヤハーネス等を利用して最も離れた位置の電池モジュールとも電気接続を図る必要があるが、前記従来の構成では対応することが難しい。
【0005】
また、バスバーは、正極端子と負極端子とにそれぞれ固定されているだけであるので、電池パックが車載用として利用された場合、振動がバスバーに伝達され、バスバーと各端子との固定部が緩んだり、場合によっては外れたりすることがある。
【0006】
そこで、本発明は、バスバーやワイヤハーネスによる接続を適切に行うことができ、設計の自由度が高く、耐振動性に優れた電池パックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、
電池パックを、
電池パックケースと、
複数の電池セルを電気接続してなり、前記電池パックケース内に配置される複数の電池モジュールと、
前記各電池モジュールを電気接続するためのバスバーと、
前記バスバーを固定するバスバーカバーと、
を備えた構成とし、
前記バスバーカバーは、前記電池モジュールに固定したものである。
【0008】
この構成により、遠く離れた電池モジュールであってもバスバーで簡単に電気接続することができる。しかも、バスバーは、バスバーカバーによって覆われるので、バスバーを介して通電する際、他の部品への影響を抑制することができる。また、バスバーはバスバーカバーを介して電池モジュールに固定されているので、耐振動性に優れており、振動等の影響によってバスバーの接続状態が不適切なものとなるといったことがない。
【0009】
前記バスバーカバーは、前記電池モジュールの電極固定部の近傍に固定するのが好ましい。
【0010】
この構成により、バスバーカバー及びこのバスバーカバーによってガイドされたバスバーの装着状態を安定させることができる。
【0011】
前記バスバーカバーは、貫通孔を形成され、
前記バスバーカバーの貫通孔を挿通し、前記電池モジュールの一部に固定される固定部材をさらに備えるのが好ましい。
【0012】
この構成により、固定部材を電池モジュールの一部に固定するだけの構成で、電池モジュールに対してバスバーカバーを簡単に装着することができる。
【0013】
前記いずれかの電池モジュールに接続されるワイヤハーネスを、さらに備え、
前記固定部材は、前記ワイヤハーネスを保持する保持部を有するのが好ましい。
【0014】
この構成により、クリップでバスバーカバーを装着することができるだけでなく、ワイヤハーネスをも保持することができ、組立性を向上することが可能となる。
【0015】
また、前記いずれかの電池モジュールに接続されるワイヤハーネスを、さらに備え、
前記バスバーカバーは、前記ワイヤハーネスを保持する保持部材を備えるようにしてもよい。
【0016】
前記電池モジュールは電池カバーを備え、
前記電池カバー及び前記バスバーカバーは、互いに連通する貫通孔を有し、
前記クリップは、前記両貫通孔に嵌合して取付可能であるのが好ましい。
【0017】
この構成により、電池ケースに対してバスバーカバーを位置決めし、両貫通孔にクリップを挿通して係合するだけで、簡単に電池ケースにバスバーカバーを装着することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バスバーカバーを設け、電池モジュールに固定するようにしているので、バスバーの絶縁性を高めるだけでなく、バスバー及びバスバーカバーの装着状態を安定させることができ、耐振動性の高いものとすることが可能となる。また、バスバーやワイヤハーネスによる接続を適切に行うことができ、設計の自由度に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本実施形態に係る電池パックの斜視図である。
【図2】図1から電池パックカバーを取り外した状態を示す斜視図である。
【図3】図2から電池モジュール、ジャンクションボックス等の内部構成部品を取り外した状態を示す斜視図である。
【図4】図2の電池モジュールの斜視図である。
【図5】図2の一対の電池モジュールの拡大斜視図である。
【図6】図5のバスバー及びバスバーカバーの分解斜視図である。
【図7】図5のバスバーカバーの固定部分の拡大斜視図である。
【図8】他の実施形態に係るバスバーカバーの固定部分の拡大斜視図である。
【図9】図6の固定クリップの拡大斜視図である。
【図10】他の実施形態に係るバスバーカバーの固定部分の拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る実施形態を添付図面に従って説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「側」、「端」を含む用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。また、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限することを意図するものではない。
【0021】
図1及び図2は、本実施形態に係る電池パックを示す。この電池パックは、電池パックケース1に、複数の電池モジュール2とジャンクションボックス3(Junction Box)とを収容し、電池パックカバー4で閉鎖したものである。
【0022】
電池パックケース1は、図3に示すように、上面が開口する略箱体形状で、内部空間が所定間隔で配置した2枚の仕切壁5a、5bと、仕切部6とで、第1電池収容部7と、第2電池収容部8a、8bとに3分割され、両仕切壁5の間は、ジャンクションボックス3が配置されるJB収容部9となっている。
【0023】
電池モジュール2は、図4に示すように、電池ケース10内に複数の電池セル11を所定間隔で収容し、電池カバー12で覆ったもので、電池セル11は直列に電気接続されている。各電池セル11は、リチウムイオン電池等の非水電解質二次電池であり、図示しないが、例えば、電池容器内に発電要素を収容し、蓋体で封止した構成となっている。
【0024】
電池モジュール2は、側縁の両端部に正極と負極からなる固定電極部2aがそれぞれ露出している。ここでは、電池モジュール2を全て同一構造とし、電池ケース10内に配置する際の方向を異ならせるようにしている。
【0025】
電池モジュール同士はバスバー13によって電気接続される。
バスバー13は、図5に示すように、導電性を有する金属材料(例えば、銅や銅合金)を板状としたものである。バスバー13は、両端部に貫通孔が形成され、各貫通孔に、ある電池モジュール2の正極の固定電極部2aと、他の電池モジュール2の負極の固定電極部2aとをそれぞれ挿通し、ナット2bを螺合することにより、固定電極部同士を互いに電気接続する。そして、電池ケース10内に収容される電池モジュール2は全てバスバー13により直列接続する。
【0026】
バスバー13は、合成樹脂製のバスバーカバー14によって覆われている。
バスバーカバー14は、図6に示すように、上カバー14A及び下カバー14Bからなり、上カバー14Aには、バスバー13が配置される溝部が形成されている。そして、上カバー14Aと下カバー14Bとを熱溶着することによりバスバー13に装着できるようになっている。このようにしてバスバーカバー14を装着されたバスバー13は、図7に示すように、バスバーカバー14に形成した貫通孔にネジ14aを挿通し、このネジ14aを電池カバー12に形成した貫通孔12aに螺合することにより固定される。
【0027】
バスバーカバー14には、ネジ14aにより固定した位置の近傍に保持部材15が一体化されている。保持部材15は、合成樹脂材料からなり、バスバーカバー14から突出する軸部16の上端部に、ワイヤハーネス18を保持するための環状のハーネス保持部17を有する構成である。
【0028】
ワイヤハーネス18は、各電池セル11と、後述するジャンクションボックス3の制御装置とを接続する信号線としての役割を果たす。
【0029】
ジャンクションボックス3は、内部に制御装置等が収容され、前記バスバー13と前記ワイヤハーネス18とが接続されている。制御装置では、バスバー13を介して電池セル11からの電力を、電池パックが搭載される車両側へと供給し、ワイヤハーネス18を介して電池セル11の電力残量を検出し、車両側の制御装置と通信することにより管理する。
【0030】
電池パックカバー4は、電池パックケース1の上方開口部を覆う板状体で、対角位置に吸気部19と排気部20がそれぞれ形成されている。
【0031】
次に、前記構成からなる電池パックの組立方法について説明する。ここでは、主に、本発明の特徴部分である、バスバーカバー14及びワイヤハーネス18の組付作業について説明する。
【0032】
電池ケース10内に複数の電池セル11を収容し、各電池を直列に電気接続した後、電池カバー12で覆うことにより電池モジュール2を形成する。このようにして形成した電池モジュール2は、複数個を電池パックケース1内に整列状態で収容する。このとき、隣接する電池モジュール同士で、隣接する電極部の極性が逆となるようにレイアウトする。これにより、隣接する電池モジュール2の間で、固定電極部2aのプラス極とマイナス極の距離を最小限に抑えることができ、図示しない短尺のバスバーで接続することが可能となる。
【0033】
また、固定電極部2aの位置が離れた電池モジュール同士は、図2に示す長尺なバスバー13で接続する。バスバー13には、予めバスバーカバー14が装着されている。また、バスバーカバー14には、保持部材15が一体化されている。そして、保持部材15のハーネス保持部17にはワイヤハーネス18を保持させておく。
【0034】
そして、バスバー13の両端部にそれぞれ形成した貫通孔に、一方の電池モジュール2から突出する正極の固定電極部2aと、他方の電池モジュール2から突出する負極の固定電極部2aとを挿通する。そして、各固定電極部2aにナット2bを螺合することによりバスバー13による電気接続を完了する。
【0035】
なお、本発明は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0036】
例えば、前記実施形態では、ワイヤハーネス18を保持部材17によって保持するようにしたが、これ代えて、図8に示す固定部材21を使用することも可能である。この固定部材21は、前記保持部材15と同様に、合成樹脂材料からなるワイヤハーネスを保持可能であると共に、前記ネジ14aの機能を兼ね備えた構成である。すなわち、固定部材21は、図9に示すように、電池カバー12に形成した貫通孔に螺合又は係合可能な軸部22と、軸部22の中間部に設けた円形状の鍔部23と、軸部22の上端部に設けた環状のハーネス保持部24とで構成されている。固定部材21は、ハーネス保持部24にワイヤハーネス18を挿通した状態で、バスバーカバー14の貫通孔に軸部23を挿通し、この軸部23を電池カバー12の貫通孔に係合することにより取り付けられる。これにより、ワイヤハーネス18の保持と、固定部材21及びバスバーカバー14の電池カバー12への固定とを行うことができる。
【0037】
また、前記実施形態では、保持部材15のハーネス保持部18や、固定部材21のハーネス保持部24は、単なる環状としたが、結束バンドのように、ワイヤハーネス18の外径寸法に合わせて巻き付ける内径寸法を変更可能な構成とすることもできる。また、ワイヤハーネス18を保持できるのであれば、略U字形とする等、他の種々の形態を採用することも可能である。
【0038】
また、前記実施形態では、バスバーカバー14に保持部材15あるいは固定部材21を設けるようにしたが、図10に示すように、バスバーカバー14を電池カバー12にネジ止めし、ワイヤハーネス18は、他の場所で保持するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1…電池パックケース
2…電池モジュール
2a…固定電極部
2b…ナット
3…ジャンクションボックス
4…電池パックカバー
5a、5b…仕切壁
6…仕切部
7…第1電池収容部
8…第2電池収容部
9…JB収容部
10…電池ケース
11…電池セル
12…電池カバー
12a…貫通孔
13…バスバー
14…バスバーカバー
14a…ネジ
15…保持部材
16…軸部
17…ハーネス保持部
18…ワイヤハーネス
19…吸気部
20…排気部
21…固定部材
22…軸部
23…鍔部
24…ハーネス保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックケースと、
複数の電池セルを電気接続してなり、前記電池パックケース内に配置される複数の電池モジュールと、
前記各電池モジュールを電気接続するためのバスバーと、
前記バスバーを固定するバスバーカバーと、
を備え、
前記バスバーカバーは、前記電池モジュールに固定したことを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記バスバーカバーは、前記電池モジュールの電極固定部の近傍に固定したことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記バスバーカバーは、貫通孔を形成され、
前記バスバーカバーの貫通孔を挿通し、前記電池モジュールの一部に固定される固定部材をさらに備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記いずれかの電池モジュールに接続されるワイヤハーネスを、さらに備え、
前記固定部材は、前記ワイヤハーネスを保持する保持部を有することを特徴とする請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記いずれかの電池モジュールに接続されるワイヤハーネスを、さらに備え、
前記バスバーカバーは、前記ワイヤハーネスを保持する保持部材を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項6】
前記電池モジュールは電池カバーを備え、
前記電池カバー及び前記バスバーカバーは、互いに連通する貫通孔を有し、
前記固定部材は、前記両貫通孔に嵌合して取付可能であることを特徴とする請求項3又は4に記載の電池パック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−77500(P2013−77500A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217526(P2011−217526)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(508110205)株式会社リチウムエナジージャパン (32)
【Fターム(参考)】