説明

電池モジュール、薄型電池用端子及びタブリード

【課題】端子とコネクタ間の嵌合力が多大にならずに、コネクタ挿入作業がし易く、更に電気的な接続信頼性も良好である電池モジュールと該電池モジュールに用いる薄型電池用端子及びタブリードを提供する。
【解決手段】発電要素が外装材によって封止された薄板状の電池本体と前記発電要素の電極に接続され前記外装材の端部から外部に導出されたタブとを有する薄型電池に接続されて外部のコネクタと接続するために、前記タブに接続するための公差吸収部144と、該公差吸収部144に連設されていて前記コネクタに接続するためのピン型接点部141とを有し、前記公差吸収部144が、コネクタ嵌合時の前記接点部の変形に追従させるために、括れ部146と撓み部147からなる電圧検知用端子140を薄型電池に装着し、該薄型電池を複数枚積層して電池モジュールを構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール、該電池モジュールに用いる薄型電池用端子及びタブリードに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを駆動源とする電気自動車や、モータとエンジンを駆動源とするハイブリッドカー等には、高出力型電池が搭載されている。このような高出力型電池として、例えば扁平な薄型二次電池が単電池として用いられている。この単電池を複数積層し、各単電池どうしを電気的に直列或いは並列に接続することにより、高容量の電池モジュールを構成している。更に電池モジュールを複数組み合わせて電気的に接続して、一つの組電池として自動車に搭載される。
【0003】
自動車用の薄型単電池は、例えば平板状の正極板と負極板との間にセパレータを介在させた発電要素をラミネートフィルム等の外装材で封止したラミネート電池が用いられる。このようなラミネート電池は、周縁を熱溶着して発電要素と電解液を密封し、正極板及び負極板に接続した電極タブを端部から外部に引出して構成されている。
【0004】
複数のラミネート電池が積層された電池モジュールにおいて、各ラミネート電池は、自動車の走行状態の変化に応じて電圧等が変化する。ラミネート電池毎の電圧を正確に把握して、各ラミネート電池の充放電の状態を常に監視することは、信頼性、安全性を向上させるために重要である。そのため、各ラミネート電池には電圧を測定するための電圧検知用端子が、それぞれ設けられている。
【0005】
電池モジュールには、複数のラミネート電池に設けられた電圧検知用端子と、外部の機器と接続するためのコネクタ端子を用いることが公知である。
【0006】
電池モジュールにおいて、ラミネート電池毎に電圧を検知するためには各ラミネート電池の電極タブに電圧検知用のハーネスを接続する代わりに、各ラミネート電池に予め電圧検知用の端子を設けておき、この電圧検知用端子を備えた単電池を積層した後に、電圧検知用ハーネスが接続されたコネクタを電圧検知用端子に接続して、複数の電圧検知用端子と複数の電圧検知用ハーネスを一括して接続する方法が公知である(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−32224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載されている電圧検知用端子は、図9に示すように、電池モジュールの3個の電圧検知用端子500に対し、同時に接続可能な接続口600A〜600Cを備えた一体型のコネクタ600によって一括して接続されるように構成されている。
【0009】
電圧検知用端子500は、平板状でブレード状の接点部を持っているバスバーからなる。ワイヤーハーネス側のコネクタ600は、上記バスバーのブレード状の接点部を上下方向から挟みこむように形成された対向接点型の端子を有する。更に特許文献1の電圧検知用端子500は、ある程度動くように、可動自在に保持されている。
【0010】
ところで、電池モジュールの電圧検知用端子500は、複数のラミネート電池が厚み方向に沿って積層されているから、各ラミネート電池の厚みのばらつきや、組立精度等により、電圧検知用端子の位置にばらつきが発生することは避けられない。この端子位置のばらつきは、電池モジュールの各部品や組立の精度等に起因するものであり、設計値に対する公差である。そのため電圧検知用のブレード型端子500と、ワイヤーハーネス側コネクタ600の対向接点型端子とを接続する場合、対向接点部で公差を吸収する事になり、嵌合力が高くなってしまう。このようにコネクタを挿入する際の嵌合力が高くなると、コネクタの接続作業がし難くなって、作業性が低下してしまうという問題があった。
【0011】
更に、上記従来の電池モジュールのように、単電池に電圧検知用端子500が厚み方向に可動可能に装着されていると、複数の端子は、それぞればらばらに動いてしまうことになって摺動磨耗が発生する。そうなると、コネクタ600側の対向接点型端子と電圧検知用端子500との間の抵抗が高くなり、電気的な接続信頼性が低下してしまう。その結果、ラミネート電池の正確な電圧を把握するのが困難になるという問題があった。
【0012】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決しようとするものであり、端子とコネクタ間の嵌合力が多大にならずに、コネクタ挿入作業がし易く、更に電気的な接続信頼性も良好である電池モジュール、薄型電池用端子及びタブリードを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明の薄型電池用端子は、発電要素が外装材によって封止された薄板状の電池本体と前記発電要素の電極に接続され前記外装材の端部から外部に導出されたタブとを有する薄型電池に接続されて外部のコネクタと接続するための端子であって、前記タブに接続するためのタブリード部と、該タブリード部に連設されていて前記コネクタに接続するための接点部とを有し、前記タブリード部が、コネクタ嵌合時の前記接点部の変形に追従させるための公差吸収部を有することを要旨とするものである。
【0014】
上記薄型電池用端子は、前記公差吸収部が、幅方向に細く形成されている括れ部を有することや、厚み方向に折り曲げられて形成されている撓み部を有することが好ましい。
【0015】
上記薄型電池用端子は、前記タブリード部と前記接点部とが一体の部品からなることや、前記接点部がピン型接点部であることが好ましい。
【0016】
本発明の電池モジュールは、上記の薄型電池用端子が薄型電池のタブに接続されている端子付き薄型電池が複数枚積層された単電池積層体を有し、前記単電池積層体の端部に前記薄型電池の複数の端子がひと纏めにされたコネクタ嵌合部を有することを要旨とするものである。
【0017】
本発明のタブリードは、発電要素が外装材によって封止された薄板状の電池本体と前記発電要素の電極に接続され前記外装材の端部から外部に導出されたタブとを有する薄型電池に接続され、外部のコネクタに接続される端子と前記薄型電池のタブとの間を接続するためのタブリードであって、コネクタ嵌合時の前記接点部の変形に追従させるための公差吸収部を有することを要旨とするものである。
【0018】
また上記タブリードにおいて前記公差吸収部が、幅方向に細く形成されている括れ部を有することや、厚み方向に折り曲げられて形成されている撓み部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の薄型電池用端子は、タブリード部と接点部を有し、前記タブリード部がコネクタ嵌合時の前記接点部の変形に追従させるための公差吸収部を有することにより、薄型電池用端子をコネクタと接続する際に、端子挿入時に公差により端子に応力が加わった場合、上記公差吸収部が変形することで、コネクタへの端子挿入の応力を緩和して、スムーズな端子とコネクタの嵌合を行うことができる。その結果、本発明の薄型電池用端子は、コネクタとの嵌合がし易く、コネクタ嵌合の作業性を低下させないという効果が得られる。
【0020】
また、本発明の薄型電池用端子は、公差吸収部を有することから、コネクタとの接続に高いアライメント精度が要求される接続構造を採用することが可能である。このような接続構造として、例えば、ピン型接点部と箱型端子の嵌合構造が挙げられる。薄型電池用端子とコネクタの端子との間で上記嵌合構造を採用した場合には、対向接点端子よりも嵌合力が低下する。
【0021】
更にこのように薄型電池用端子は、コネクタとの嵌合時に公差吸収部が変形可能であるから、端子を薄型電池に固定しておいてもコネクタと嵌合させることができ、電池に対してコネクタ端子を可動させるようにする必要がなく、コネクタとの嵌合時に摺動磨耗等が発生する虞はなく、接点の電気的な接続信頼性を維持することができる。
【0022】
本発明の電池モジュールは、上記の薄型電池用端子がタブに接続されている端子付き薄型電池が複数枚積層された単電池積層体を有し、薄型電池の複数の端子がひと纏めにされたコネクタ嵌合部を有することにより、複数の端子をコネクタでひと纏めにして接続することができ、コネクタと端子との嵌合の際に嵌合力が高くならずに、嵌合を容易に行うことができる。
【0023】
本発明のタブリードは、公差吸収部を有することにより、端子と接続した際に端子の変形を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1は本発明の電池モジュールの実施例の外観の一部を示す斜視図である。
【図2】図1の電池モジュールに用いる端子付きラミネート電池の斜視図である。
【図3】図1の電池モジュールの正面図である。
【図4】(a)は電圧検知用端子の一例を示す斜視図であり、(b)は(a)の平面図であり、(c)は(a)の側面図である。
【図5】図2のA−A線に沿ったラミネート電池の断面を模式的に示した断面図である。
【図6】図1の分解斜視図である。
【図7】図1のプレートの外観を示す斜視図である。
【図8】(a)はフード部材の外観を示す斜視図であり、(b)は(a)の背面図である。
【図9】従来の電池モジュールのコネクタ接続部とコネクタを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の電池モジュールの実施例の外観の一部を示す斜視図であり、図2は図1の電池モジュールに用いる端子付きラミネート電池の斜視図である。図1に示すように、本発明の電池モジュール10は、図2に示すラミネート電池200(201〜208)のような扁平型の単電池からなる薄型電池が厚み方向に沿って複数枚積層され、各単電池が電気的に直列又は並列に接続されて、一つのモジュールとして構成されている。
【0026】
図1に示す実施例の電池モジュール10は、単電池として8枚のラミネート電池200(201〜208)が積層されている単電池積層体20と、前記単電池積層体20の前側端部のプレート組立体100と、該プレート組立体100と同様に構成された後側端部のプレート組立体(図示せず)とを有している。
【0027】
図1の電池モジュール10は、鋼板又はアルミニウム板等の金属板から形成されたケース体(図示せず)等の内部に収納され、複数の電池モジュール10が組み合わせられた組電池の状態で、自動車等に搭載される。
【0028】
本実施例では、ラミネート電池200の平面形状は矩形状であり、便宜上、ラミネート電池200の長手方向をラミネート電池の前後方向として説明する。ラミネート電池には、正極タブや負極タブ等の電極タブが外部に導出され(図2では電極タブの記載を省略した)、この電極タブに電圧検知用端子140が接続されている。電圧検知用端子140は、ラミネート電池200の長手方向の前端部或いは後端部のいずれか一方に装着されている。図2では前端部に電圧検知用端子140が装着されているラミネート電池200を示した。電圧検知用端子140は、各ラミネート電池201〜208の電圧を測定するために、外部のコネクタと接続するための端子である。またこの実施例では、ラミネート電池201〜208は、いずれか一方の端部で、上下の各ラミネート電池の電極タブが接続され、各ラミネート電池(201〜208)が直列に接続されて単電池積層体を構成している。
【0029】
図3は図1の正面図である。図3に示すようにプレート組立体100は、単電池積層体20を構成するラミネート電池200の枚数に応じた複数のプレートが積層されて構成されている。図1に示す実施例では、それぞれラミネート電池201〜208の枚数に対応した8枚のプレート101〜108が積層されて、一つのプレート組立体100を構成している。電池モジュール10は、単電池積層体20の前後方向の両端が、前方のプレート組立体100と後方のプレート組立体により固定保持され、複数のラミネート電池201〜208が一体化されている。またプレート組立体100は、電池モジュール10の電圧検知用端子140と外部とを電気的に接続するためのインターフェース部としての機能を持っている。尚、特に図示しないが、プレート組立体100には、単電池積層体20から電気を取り出すための出力端子等が設けられている。
【0030】
図1及び図3に示すように、プレート組立体100の長手方向の略中央の位置にコネクタ嵌合部150が設けられている。図1の電池モジュール10は、4枚のラミネート電池202、204、206、208の電圧検知用端子140が前側に配置されており、残りの4枚のラミネート電池201、203、305、207の電圧検知用端子140が、後側に配置されている。電池モジュール10は、電圧検知用端子140が前方と後方に交互に位置するように、ラミネート電池201〜208が上下に積層されている。
【0031】
コネクタ嵌合部150は、4枚のラミネート電池202、204、206、208の正極タブや負極タブ等の電極タブに接続される4個の電圧検知用端子140を外部のコネクタと接続するために4つのピン型接点部141(図4参照、詳細は後述する)が一纏めにされた端子集合体として形成されている。尚、後側のプレート組立体にも、同様のコネクタ嵌合部が設けられ、4枚のラミネート電池201、203、205、207のタブに接続されている4個の電圧検知用端子を外部のコネクタと接続するために4個のピン型接点部141がひと纏めにされた端子集合体として形成されている。
【0032】
図3に示すようにコネクタ嵌合部150は、ラミネート電池200のタブに接続されている4個の電圧検知用端子140のピン型接点部141が前方に突出するように配置されている。ピン型接点部141は、ラミネート電池200の積層方向に沿って縦一列に配置されている。コネクタ嵌合部150は、ピン型接点部141の周囲がフード部材160(図6参照)により覆われ、ピン型接点部141の周囲が保護されている。
【0033】
電池モジュール10は、前側のコネクタ嵌合部150の4枚のラミネート電池202、204、206、208の電圧検知用端子140を、一つのコネクタで一括して接続する。後側のコネクタ嵌合部の4枚のラミネート電池201、203、205、207の電圧検知用端子を、もう一つのコネクタで一括して接続する。電池モジュール10は、二つのコネクタを二つのコネクタ嵌合部にそれぞれ嵌合することで、8枚のラミネート電池200の電圧検知用端子140を全てワイヤーハーネスと接続することができる。
【0034】
図4(a)は電圧検知用端子の一例を示す斜視図であり、(b)は(a)の平面図であり、(c)は(a)の側面図である。図4(a)〜(c)に示すように、電圧検知用端子140は、ラミネート電池のタブと接続するための公差吸収部144と、該公差吸収部144の前方に連設されていて、コネクタと接続するためのピン型接点部141とを有している。また公差吸収部144とピン型接点部141の間には、電圧検知用端子140をフード部材等に係止するためのランス部145が設けられている。
【0035】
本発明では、便宜的に、図4(a)及び図6中に座標軸X、Y、Zで示したように、ラミネート電池の電池面方向であり、コネクタとの嵌合方向である端子の長手方向をY方向という。またラミネート電池の電池面のコネクタの嵌合方向と交叉する端子の幅方向をX方向という。また電池の積層方向に沿う方向をZ方向という。
【0036】
電圧検知用端子140は、公差吸収部144に、該端子140とコネクタ300(図6参照)を嵌合した際に、公差による接点位置のずれ等に対し、ピン型接点部を追従させるために、端子形状を変形させ易くする部位として機能する公差吸収部が設けられている。図4(a)〜(c)に示すように、公差吸収部144に設けられている公差吸収部は、公差吸収部144の幅方向(X方向)が細く形成されている括れ部146と、公差吸収部144が厚み方向(Z方向)に折り曲げられて形成されている撓み部147とから構成されている。また公差吸収部144の後端は、ラミネート電池200のタブと接続するための接合部148として形成されている。
【0037】
電圧検知用端子140は、公差吸収部144の全体が薄板から形成され、括れ部146の部分の幅が狭く形成されている。電圧検知用端子140の括れ部146は、他の部分よりも幅が狭く形成されているから、X方向、Z方向に他の部分より変形し易い。電圧検知用端子140をコネクタ300と嵌合させる場合、ピン型接点部141の端子位置がX方向やZ方向にずれていても、括れ部146が変形することで追従するので、コネクタの接続を良好に行うことができる。括れ部146は、X方向とZ方向の公差を吸収できる。
【0038】
括れ部146の形状は、電圧検知用端子の幅に対して、線対称形状が好ましい。非線対称形状では、X方向のずれが括れ形状に相反する方向に作用すると破断する恐れがある。
【0039】
電圧検知用端子140の撓み部147は、公差吸収部144の薄板がZ方向に折り曲げられて撓んだ形状に形成されている。実施例の撓み部は図4(c)に示すようにZ方向に凸状になるように折り曲げられ、折り返されている。本発明では、撓み部147の形状は、図示した形状に限定されず、Z方向に半円状、山形等の凸状になるように折り曲げて形成してもよい。
【0040】
電圧検知用端子140は、撓み部147がZ方向に折り曲げられて撓み易い形状に形成されていることにより、Y方向、Z方向の応力が加わった場合、変形し易く形成されている。電圧検知用端子140をコネクタと嵌合させる場合、ピン型接点部141の位置がY方向、Z方向にずれていても、撓み部147が変形することで追従するのでコネクタの接続を良好に行うことができる。撓み部147はY方向、Z方向の公差を吸収できる。
【0041】
このように、図4(a)〜(c)に示す電圧検知用端子140は、公差吸収部144に公差を吸収するための括れ部146と撓み部147を設けることにより、X方向、Y方向、Z方向の全ての方向に対して変形し易くなっているため、X方向、Y方向、Z方向の全ての方向に対する端子位置の公差を吸収することができ、電圧検知用端子とコネクタを良好に嵌合することができる。
【0042】
電圧検知用端子140は、銅、銅合金、アルミニウム等の金属板の打ち抜き加工、曲げ加工等により形成されている。図4(a)〜(c)の態様の電圧検知用端子140は、公差吸収部144とピン型接点部141とが一体の部品からなるものである。すなわち電圧検知用端子140は、一つの板状の部品を切断(打ち抜き)或いは曲げ等の加工を施すことにより、ピン型接点部141、ランス部145、括れ部146、撓み部147等が形成されているものであり、ピン型接点部とタブリード部を別体の部材として形成して接合して形成したものではない。
【0043】
電圧検知用端子140は、公差吸収部144の後端の接合部148の片面側が、ラミネート電池200の電極タブに接合されている。電圧検知用端子140と電極タブの接合は、超音波接合、ホットメルト接着剤等による接着等の手段を用いることができる。
【0044】
電圧検知用端子100は、公差吸収部144と接点部141とを別体の部品として形成し、両者を接合して一体化して構成してもよい。この場合のタブリード部が、本発明のタブリードのことである。本発明のタブリードは、上記の公差吸収部144のみから構成することができる。具体的にタブリードは、例えば、括れ部146と撓み部147等の公差吸収部と、タブと接続するための接続部と、端子と接続するための端子接続部とから構成することができる。
【0045】
図5は図2のA−A線に沿った端子付きラミネート電池の断面を模式的に示した断面図である。図5に示すように、電圧検知用端子140は、ラミネート電池200の負極タブ215に接合されている。ラミネート電池200は、扁平な薄型電池であり、例えばリチウムイオン二次電池を用いることができる。ラミネート電池201〜208の内部の構造は、基本的に図5に示す構造を有する。
【0046】
図5に示すように、ラミネート電池200は、電解質を含む発電要素212と、該発電要素212がラミネートフィルム213A及びラミネートフィルム213Bからなる外装材213により封止されている電池本体211と、前記発電要素212から外部に導出された正極タブ214と負極タブ215とを有している。正極タブ214、負極タブ215は、電流を引き出すための出力端子として、あるいは、電圧検知用端子140を取付ける電圧検知用タブとして利用される。
【0047】
図5に示す態様では、負極タブ215に、電圧検知用端子140の公差吸収部144が接続されている。本発明は、上記態様に限らず、電圧検知用端子140は、正極タブ214に接続されていても良いし、正極タブ214又は負極タブ215に別体のタブを接続し、これに電圧検知用端子140を取付けてもよい。
【0048】
図5に示すように、ラミネート電池200は、ラミネートフィルム213Aと213Bの間に発電要素212が封入され、該ラミネートフィルム213Aと213Bの周縁部が溶着されて、フィルム同士が接合された接合部211a、211b等を形成することによって、袋状に形成されている。
【0049】
発電要素212に用いられる電解質としては、電解質塩を非水溶媒に溶解して調製される電解質液体以外に、電解質塩を非水溶媒に溶解した溶液を高分子マトリクス中に保持させたポリマーゲル電解質等を用いることができる。上記電解質塩としては、イオン伝導性を示すリチウム塩が用いられる。このようなリチウム塩としては、例えばLiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiB(C、LiCl、LiBr、CHSOLi、CFSOLi等が挙げられる。これらの電解質塩は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0050】
発電要素212は、例えばバイポーラ電極が電解質層を介して積層されているバイポーラ電池等の積層型構造のものを用いることができる。上記バイポーラ電極は、特に図示しないが、集電体の一方の面に正極活物質層が形成され、他方の面に負極活物質層が形成されている。バイポーラ電池は、これらの正極活物質層、電解質層、及び負極活物質層等によって、一つの単電池層が形成され、この単電池層が複数積層された構造を有する。更に単電池層の外周には、隣接する集電体間を絶縁するための絶縁層が設けられている。
【0051】
発電要素における正極板は、例えば、LiMn等のリチウム−遷移金属複合酸化物からなる正極活物質層を有する。負極板は、例えば、カーボンおよびリチウム−遷移金属複合酸化物からなる負極活物質層を有する。セパレータは、例えば、電解質を浸透し得る通気性を有するポーラス状のポリエチレン等から形成される。
【0052】
図5に示すように、発電要素212の正極側は、最外層の集電体が延設されて、外装材213の外部に導出して薄板状の正極タブ214として形成されている。一方、発電要素212の負極側は、最外層の集電体が延設されて、外装材213の外部に導出して薄板状の負極タブ215として形成されている。正極タブ214及び負極タブ215は、電池本体211の前側端部の接合部211a、及び後側端部の接合部211bから電池本体211の外部に導出されている。
【0053】
なお、発電要素212はバイポーラ電池以外の構造であってもよい。例えば、集電体の両面に正極活物質層を形成した正極電極板と、集電体の両面に負極活物質層を形成した負極電極板とを、セパレータを介して交互に積層した発電要素を外装材内部に封止して電池本体を形成し、正極電極板と電気的に接続された正極タブと、負極電極板と電気的に接続された負極タブとを電池本体から外部に導出して形成された電池でもよい。
【0054】
外装材213の2枚のラミネートフィルム213A、213Bは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)をポリプロピレンフィルム等の絶縁体で被覆した高分子−金属複合ラミネートフィルムを用いることが好ましい。ラミネート電池200は、外装材としてラミネートフィルムを用いることにより、軽量、薄型に形成することが可能であり、柔軟性を有し、放熱性も優れている薄型単電池が得られる。
【0055】
図6は図1の分解斜視図である。図6に示すように単電池積層体20の端部から4つの電圧検知用端子140が前方のプレート組立体100側に突出している。各ラミネート電池201〜208は、プレート組立体100の各プレートに接合されている。プレート組立体のコネクタ嵌合部150には、フード部材160が取付けられている。図6に示すように、フード部材160は電圧検知用端子140の周囲を覆うように取り付けられる。コネクタ300はフード部材160に嵌合する。
【0056】
図7は図1のプレートの外観を示す斜視図である。図7に示すようにプレート101には、長手方向の中程にコネクタ嵌合部151が設けられている。コネクタ嵌合部151の後方には、電圧検知用端子140のピン型接点部141が配置された際に、上下のプレートの間に隙間を形成するための薄肉部101aが設けられている。またプレート101の長手方向両端には、金属カラー154、154が埋設されている。尚、プレート102〜108も、プレート101と同一形状に形成されている。プレート101は、金属カラー154の部分を除いて、樹脂、ゴム等の絶縁性を有する材料から形成されている。
【0057】
プレート101〜108にラミネート電池201〜208の端部が接合されている。各ラミネート電池は、電圧検知用端子の無い方の端部が、各プレートに接合されている。ラミネート電池は、プレート端部に熱溶着、ホットメルト接着剤等を用いた接着等により接合している。
【0058】
ラミネート電池が各プレートに接合された状態では、電圧検知用端子140は、プレートの薄肉部101aに位置している。薄肉部101aは、プレートを積層した際に、電圧検知用端子140が自由に動くことが可能な隙間ができるように形成されている。電圧検知用端子140は、プレート間においては、プレートに固定されない状態で薄肉部101aに保持される。電圧検知用端子は、薄肉部では、X方向、Y方向、Z方向に自由に動くことができるようになっている。
【0059】
金属カラー154はプレートが積層された場合に、プレート組立体の積層方向に沿った貫通孔からなるスリーブ171〔図1参照〕として構成される。このスリーブ171の一方からボルトを挿通し、スリーブ171の他方から突出したボルトをナットで締結することで、電池モジュール10のラミネート電池200の積層方向(Z方向)を固定することができる。
【0060】
図8(a)はフード部材160の外観を示す斜視図であり、同図(b)は(a)の背面図である。図8(a)、(b)に示すように、フード部材160は、断面が方形の角筒状に形成されたフード本体165と、後側の壁体163とから構成され、前側が開口した形状に形成されている。壁体163には、4本のピン型接点部141が挿通し係止される係止部164が、電圧検知用端子のピン型接点部141の位置に対応して設けられている。
【0061】
フード部材160には、側面内側にコネクタ300の係合部302(図6参照)と係合する被係合部166が設けられている。
【0062】
フード部材160がコネクタ嵌合部150に取付けられた状態では、電圧検知用端子140は、フード部材160の背面側の壁体163に設けた係止部164からピン型接点部141を挿通した状態となっている。係止部164では、ランス部145まで係止部164に挿通することで、フード部材160の内部にピン型接点部141が位置して外れないように取付けられている。
【0063】
図6に示すように、コネクタ300は、箱型端子が4つ埋設されている。箱型端子には電池モジュールのピン型接点部が挿通されて、電気的に接続する。箱型端子にはワイヤーハーネスが接続されている。コネクタ300の箱型端子は、電池モジュールのコネクタ嵌合部150のピン型接点部141の位置に対応した位置に配設されている。コネクタ300の側面には、フード部材160の被係合部166と係合する係合部302と、フード部材160のガイド用凸部168にガイドされる凹溝305が設けられている。
【0064】
電池モジュール10にコネクタ300を接続するには、電池モジュール10のコネクタ嵌合部150のフード部材160に、コネクタ300を挿入し嵌合させる。コネクタ300はフード部材160のガイド用凸部168に沿ってガイドされながら挿入される。
【0065】
従来のブレード型端子を接点に使用した場合は、コネクタ側に対向接点端子を用いる必要があった。これに対し、上記したように、電圧検知用端子140の接点としてピン型接点部141を用いた場合、コネクタ300側の端子に箱型端子を用いることができる。電池モジュール10とワイヤーハーネスのコネクタ300を接続する場合、ピン型接点部141が箱型端子と嵌合すれば、コネクタ300とコネクタ嵌合部150(フード部材160)の嵌合がきつくならずに、嵌合力を低く抑制できる。
【0066】
電池モジュール10を組立てる際、各ラミネート電池201〜208を電気的に接続するには、特開2007−172893号公報等に記載されているような公知の手段を用いることができる。
【0067】
以上、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0068】
例えば上記実施例では、電圧検知用端子140は、公差吸収部として、括れ部146と撓み部147との両方を設けているが、どちらか一方のみを設けて公差吸収部を構成してもよい。また上記実施例では、公差吸収部はX方向、Y方向、Z方向の全ての方向の公差を吸収するように形成されているが、上記のいずれかの一方向或いは二方向の公差を吸収するように公差吸収部を形成してもよい。
【0069】
また、ラミネート電池の積層方法は、全て直列接続ではなく、並列結合された電池(201,202)、(203,204)、(205,206)(207,208)が直列接続されていても良い。
【符号の説明】
【0070】
10 電池モジュール
20 単電池積層体
100 プレート組立体
140 電圧検知用端子
141 ピン型接点部
144 公差吸収部
146 括れ部
147 撓み部
150 コネクタ嵌合部
200(201〜208) ラミネート電池
211 電池本体
212 発電要素
213 外装材
214 正極タブ
215 負極タブ
300 コネクタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電要素が外装材によって封止された薄板状の電池本体と前記発電要素の電極に接続され前記外装材の端部から外部に導出されたタブとを有する薄型電池に接続されて外部のコネクタと接続するための端子であって、
前記タブに接続するためのタブリード部と、該タブリード部に連設されていて前記コネクタに接続するための接点部とを有し、
前記タブリード部が、コネクタ嵌合時の前記接点部の変形に追従させるための公差吸収部を有することを特徴とする薄型電池用端子。
【請求項2】
前記公差吸収部が、幅方向に細く形成されている括れ部を有することを特徴とする請求項1記載の薄型電池用端子。
【請求項3】
前記公差吸収部が、厚み方向に折り曲げられて形成されている撓み部を有することを特徴とする請求項1又は2記載の薄型電池用端子。
【請求項4】
前記タブリード部と前記接点部とが一体の部品からなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄型電池用端子。
【請求項5】
前記接点部がピン型接点部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか
1項に記載の薄型電池用端子。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄型電池用端子が薄型電池のタブに接続されている端子付き薄型電池が複数枚積層された単電池積層体を有し、前記単電池積層体の端部に前記薄型電池の複数の端子がひと纏めにされたコネクタ嵌合部を有することを特徴とする電池モジュール。
【請求項7】
発電要素が外装材によって封止された薄板状の電池本体と前記発電要素の電極に接続され前記外装材の端部から外部に導出されたタブとを有する薄型電池に接続され、外部のコネクタに接続される端子と前記薄型電池のタブとの間を接続するためのタブリードであって、
コネクタ嵌合時の前記接点部の変形に追従させるための公差吸収部を有することを特徴とするタブリード。
【請求項8】
前記公差吸収部が、幅方向に細く形成されている括れ部を有することを特徴とする請求項7記載のタブリード。
【請求項9】
前記公差吸収部が、厚み方向に折り曲げられて形成されている撓み部を有することを特徴とする請求項7又は8記載のタブリード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−138261(P2012−138261A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289855(P2010−289855)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】