説明

電池モジュールケース

【課題】電池モジュールを単位として複数の電池セルの冷却を均一に行うことができるように電池セルを収容する。
【解決手段】電池セル12の積層方向の両端の枠体13にそれぞれ面板15を備え、電池セル12の盤面の一端側が開口する一端切り欠き部16を一方側の面板15aに設け、電池セル12の盤面の他端側が開口する他端切り欠き部17を他方側の面板15bに設け、一端切り欠き部16の面板15aと他端切り欠き部17の面板15bとが対向する状態で並設された際に、面板15の対向部で一端切り欠き部16と他端切り欠き部17との間で冷却流体の流路が形成され、電池セル12の面板15に対向する盤面が冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の電池セルが収納される電池モジュールケースに関する。
【背景技術】
【0002】
環境へ排出される排ガスを削減するため、電気自動車が注目されてきている。電気自動車は、モータの駆動により動力を得ているため、電源となる電池セルを搭載している。電気自動車では、限られたスペースに多くの電池セルを搭載する必要があるため、複数の電池セルを積層して電池モジュールを形成し、多数の電池モジュールをフロア下等のバッテリケースに収納している。複数の電池セルは電池モジュールケースに積層して収容されている。
【0003】
電池セルは所定の温度範囲に保つことで、寿命を長く維持できると共に高い電池効率を維持することができる。また、電池性能のばらつきをなくすため、多数の電池セルの温度差を抑制して温度を均一に維持することが求められている。このため、従来から複数の電池セルを均一に冷却できる技術が種々提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
特許文献1に開示された技術は、電池モジュールの冷却流体通路の誘導部にガイドを設け、流体通路の全体にわたり冷却流体を流通させて電池モジュールの放熱を均一に行なうようにした技術である。また、特許文献2に開示された技術は、端子を対向させた状態で電池モジュールを配置し、端子を対向させた冷却流体通路から電池モジュールに冷却流体を分流させて複数の電池モジュールを均一に冷却するようにした技術である。
【0005】
従来から開示されている技術では、複数の電池セルが積層された電池モジュールを単位として均一な冷却を行うことができる。しかし、電池モジュールは複数の電池セルが電池モジュールケースに収容されているのが一般的であるため、従来から提案されている技術では、複数の電池モジュールを均一に冷却することはできるが、一つの電池モジュール内では複数の電池セルの冷却にばらつきが生じてしまう。
【0006】
即ち、電池モジュールは枠体の両側に面板を備えたケースに電池セルが収容されることで構成され、面板の間に複数の電池セルが積層されている。そして、複数の電池モジュールが電池ケース内に配置され、例えば、電気自動車の電源とされている。この場合、隣接する電池モジュールは面板同士が対向することになり、隣接する電池モジュールの端部の電池セル同士の間には2枚の面板が配されることになる。このため、電池モジュールの端部の電池セルの間には十分な冷却流体の通路を形成することができず、端部の電池セルは片面にしか冷却流体が供給されず、両面に冷却流体が供給される他の電池セルに比べて冷却が不十分になっていた。
【0007】
従って、電池モジュールを単位として複数の電池セルを均一な状態で高い電池効率を維持することが困難であり、一つの電池セルの劣化が電池モジュールとしての劣化につながっていた。
【0008】
【特許文献1】特開2000−67934号公報
【特許文献2】特開2004−311157号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、電池モジュールを単位として複数の電池セルの冷却を均一に行うことができるように電池セルを収容することができる電池モジュールケースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の電池モジュールケースは、複数の電池セルを積層した状態で保持する枠体と、前記枠体の対向面に備えられる面板と、前記面板の一方側に形成され前記電池セルの盤面の一端側が開口する一端切り欠き部と、前記面板の他方側に形成され前記電池セルの盤面の他端側が開口する他端切り欠き部とからなり、前記一端切り欠き部の前記面板と前記他端切り欠き部の前記面板とが対向する状態で並設された際に、前記面板の対向部で前記一端切り欠き部と前記他端切り欠き部との間で冷却流体が流通する通路が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る本発明では、一端切り欠き部の面板と他端切り欠き部の面板とが対向する状態で並設された際に、面板の対向部で一端切り欠き部と他端切り欠き部との間で冷却流体が流通する通路が形成され、端部に配された電池セルの外側の盤面に冷却流体の通路が形成された状態になり、電池セルの配置位置に拘わらず電池セルの両盤面側に冷却流体が流通する。また、面板の切り欠き部は一方側と他方側とで逆側に備えられているので、ケースとしての強度を保つことができる。
【0012】
このため、電池モジュールを単位として複数の電池セルの冷却を均一に行うことができるように電池セルを収容することができると共に、面板の切り欠き部が枠体の対角に位置するように形成されるため、同一の枠体を用いて冷却効率の良い電池モジュールを提供することができる。
【0013】
そして、請求項2に係る本発明の電池モジュールケースは、請求項1に記載の電池モジュールケースにおいて、前記面板は、前記電池セルが積層される積層方向の両端に位置する面であることを特徴とする。
【0014】
電池セルの積層方向に電池モジュールを並べて配置する際に、枠体同士が接する箇所が放熱的に不利である。
【0015】
請求項2に係る本発明では、電池セルが積層される積層方向の両端に位置する面に切り欠き部を設けることで、不利である箇所の放熱を促進することが出来る。
【0016】
また、請求項3に係る本発明の電池モジュールケースは、請求項1もしくは請求項2に記載の電池モジュールケースにおいて、前記枠体は、複数の前記電池セルの積層方向の側部にそれぞれ配される矩形枠を備え、複数の前記電池セルの積層方向の両端で前記矩形枠同士が前記面板で接続され、前記面板で接続された前記矩形枠の外周部が細板で接続されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る本発明では、細板により矩形枠が接続されて強度が保たれた枠体とされる。
【0018】
また、請求項4に係る本発明の電池モジュールケースは、請求項3に記載の電池モジュールケースにおいて、前記一端切り欠き部及び前記他端切り欠き部における前記矩形枠同士が補強板で接続されていることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る本発明では、切り欠き部に補強板を設けて強度が保たれた枠体とされる。
【0020】
また、請求項5に係る本発明の電池モジュールケースは、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電池モジュールケースにおいて、前記電池セルは、電動機により駆動力を得る車両の動力源とされ、前記電池セルを積層した状態で前記面板同士を対向させた組が車両に複数配置されることを特徴とする。
【0021】
請求項5に係る本発明では、電池セルを積層した状態で面板同士を対向させた組が車両に複数配置され、配置位置に拘わらず電池セルの両面側に冷却流体が流通する状態で多数の電池モジュールを車両に搭載することができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の電池モジュールケースは、電池モジュールを単位として複数の電池セルの冷却を均一に行うことができるように電池セルを収容することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1には本発明の一実施形態例に係る電池モジュールケースに電池セルが収容された電気自動車の外観、図2には電池モジュールケースが格納されるバッテリケースの分解斜視、図3には本発明の一実施形態例に係る電池モジュールケースの外観、図4には本発明の一実施形態例に係る電池モジュールケースの断面、図5には図4中のV−V線矢視、図6には図4中のVI−VI線矢視を示してある。
【0024】
図1に示すように、電気自動車1の下側のフレーム(図示省略)にはバッテリケース2が取り付けられ、バッテリケース2はフロアパネル10に覆われてフロア部材を構成している。フロアパネル10にはシート3が支持され、フロント側のシート3のシートクッション4の下におけるフロアパネル10(バッテリケース2)に多数の電池モジュールが格納されている。電池モジュールに収容された電池セルが接続されることにより走行駆動等の動力源となる高電圧回路が形成される。
【0025】
図2に示すように、バッテリケース2の底板5には仕切板6によりモジュール収納部7が多数形成され、例えば、1つのモジュール収納部7には後述する電池モジュールケースが2個ずつ格納される。尚、1つのモジュール収納部7に1つの電池モジュールケースが格納される部位もある。詳細は後述するが、1つの電池モジュールケースには4個の電池セルが収納されて電池モジュールとされ、2つの電池モジュールには8個の電池セルが収納される。このため、例えば、モジュール収納部7が5列備えられていた場合には、40個の電池セルが収納されることになる。
【0026】
バッテリケース2の内部には図示しない導入口から冷却流体が導入され、導入された冷却流体は電池モジュールケースの内部を流通して電池セルが冷却され、電池セルの温度上昇が抑制される。例えばバッテリケース2の冷却方法として、車両の走行により吸入される空気をバッテリケース2に導入し、走行に応じて供給される冷却流体を電池モジュールケースの内部に流通させることや、冷却装置を用いて冷却流体を強制的に流通させること等が考えられる。
【0027】
図3〜図6に基づいて電池モジュールケースの構成を説明する。図4に示した断面の状況は、1つのモジュール収納部7(図2参照)に格納された2個の電池モジュールの状況である。
【0028】
図に示すように、電池モジュールケース11は、複数(図示例では4個)の電池セル12が所定の隙間を介して積層される枠体13が備えられ、枠体13は、4個の電池セル12の積層方向の側部にそれぞれ配される矩形枠14を備えている。電池セル12の積層方向の両端の矩形枠14は面板15で接続され、面板15は電池セルの盤面の一部を覆う状態とされている。
【0029】
即ち、一方側(図4中左側)の面板15aの面には電池セル12の盤面の一端側(上端側)が開口する一端切り欠き部16が形成された状態とされ、他方側(図4中右側)の面板15bの面には電池セル12の盤面の他端側(下端側)が開口する他端切り欠き部17が形成された状態とされている。
【0030】
図4に示すように、一端切り欠き部16の面板15aと他端切り欠き部17の面板15bとが対向する状態で並設された際に、面板15の対向部で一端切り欠き部16と他端切り欠き部17との間で冷却流体が流通する通路が形成される。そして、矩形枠14の上側及び下側の外周部の適宜箇所は細板18で接続されている。また、一端切り欠き部16及び他端切り欠き部17の矩形枠14の間は補強板19で接続されている。
【0031】
上述した構成の電池モジュールケース11には4個の電池セル12が積層状態で収容されて電池モジュールとされている。そして、図2に示した1つのモジュール収納部7には2個の電池モジュールケース11が格納され、2個の電池モジュールケース11は一方側の電池モジュールケース11(図4中左側)の面板15bと他方側の電池モジュールケース11(図4中右側)の面板15aが対向した状態で配されている。
【0032】
つまり、一方側の電池モジュールケース11(図4中左側)の面板15bの位置が他方側の電池モジュールケース11(図4中右側)の一端切り欠き部16に対応し、他方側の電池モジュールケース11(図4中右側)の面板15aが一方側の電池モジュールケース11(図4中左側)の他端切り欠き部17に対応している。
【0033】
このため、2個の電池モジュールケース11の対向する面では、他端切り欠き部17から一端切り欠き部16に連通する冷却流路が形成され、電池モジュールケース11の端部に配される電池セル12の外側の面(面板15に対向する面)にも冷却流体が送られる。
【0034】
例えば、図4中の下側の右から左方向に冷却流体が導入されると、電池セル12の間の隙間から上側に流通し、上側の左方向に流れていく。電池モジュールケース11の中央に配される電池セル12の盤面には隙間の流路から冷却流体が流れ(図中矢印A)、電池セル12が両面から冷却されて発熱が抑制される。
【0035】
電池モジュールケース11が対向する部位の端部に配されるそれぞれの電池セル12は、一方の盤面には隙間の流路から冷却流体が流れる(図中矢印A)。それぞれの電池セル12の面板15に対向する盤面には、他端切り欠き部17から一端切り欠き部16に冷却流体が流れ(図中矢印B)、それぞれの電池セル12の面板15に対向する盤面に冷却流体が流れる。
【0036】
このため、一端切り欠き部16の面板15aと他端切り欠き部17の面板15bとが対向する状態で並設された際に、面板15の対向部で一端切り欠き部16と他端切り欠き部17との間で冷却流体の通路が形成されて冷却流体が流れる。
【0037】
従って、電池モジュールケース11の中央に配される電池セル12の両盤面、及び、電池モジュールケース11の対向する部位の端部に配されるそれぞれの電池セル12の両盤面に対して冷却流体が流通し、電池セル12の配置位置に拘わらず電池セル12の両面側に冷却流体が流通して均一な冷却が可能になる。このため、上述した電池モジュールケース11は、4個の電池セル12の冷却を均一に行うことができるように、即ち、電池モジュールを単位として電池セル12の冷却を均一に行うことができるように、電池セル12を収容することができる。
【0038】
また、面板15の切り欠き部は一方側と他方側とで逆側に備えられているので、ケースとしての強度を保つことができる。また、細板18及び補強板19により矩形枠14が接続されているので、冷却流路を確保しても強度が十分に保たれた枠体13とすることができる。
【0039】
尚、電池セル12の積層方向の両端に面板15を設け、両端の面板15に一端切り欠き部16及び他端切り欠き部17を形成した例を示してあるが、切り欠き部は隣接する電池モジュールケース11の面に備えることも可能である。即ち、面板15を設ける枠体13の面(部位)は任意であり、隣接する電池モジュールケース11に対向する部位に面板15を備えることも可能である。これにより、電池セル12の積層方向に限らず、隣接する電池モジュールケース11に対向する方向の冷却流体の流通を確保し、隣接する電池モジュールケース11の間での電池セル12の冷却を均一に行うことができる。
【0040】
また、上述した実施形態例では、電池モジュールケース11に4個の電池セル12を収容する例を挙げて説明したが、収容される電池セル12は、2個、3個、5個以上の複数個を収容する構成とすることも可能である。また、上述した実施形態例は、電気自動車に電池セル12を搭載する例を挙げて説明したが、ハイブリッド車や燃料電池車の電池セルの搭載に適用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、複数の電池セルが収納される電池モジュールケースの産業分野で利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施形態例に係る電池モジュールケースに電池セルが収容された電気自動車の外観図である。
【図2】電池モジュールケースが格納されるバッテリケースの分解斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態例に係る電池モジュールケースの外観図である。
【図4】本発明の一実施形態例に係る電池モジュールケースの断面図である。
【図5】図4中のV−V線矢視図である。
【図6】図4中のVI−VI線矢視図である。
【0043】
1 電気自動車
2 バッテリケース
3 シート
4 シートクッション
5 底板
6 仕切板
7 モジュール収容部
10 フロアパネル
11 電池モジュールケース
12 電池セル
13 枠体
14 矩形枠
15 面板
16 一端切り欠き部
17 他端切り欠き部
18 細板
19 補強板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池セルを積層した状態で保持する枠体と、
前記枠体の対向面に備えられる面板と、
前記面板の一方側に形成され前記電池セルの盤面の一端側が開口する一端切り欠き部と、
前記面板の他方側に形成され前記電池セルの盤面の他端側が開口する他端切り欠き部とからなり、
前記一端切り欠き部の前記面板と前記他端切り欠き部の前記面板とが対向する状態で並設された際に、前記面板の対向部で前記一端切り欠き部と前記他端切り欠き部との間で冷却流体が流通する通路が形成されるようにした
ことを特徴とする電池モジュールケース。
【請求項2】
請求項1に記載の電池モジュールケースにおいて、
前記面板は、
前記電池セルが積層される積層方向の両端に位置する面である
ことを特徴とする電池モジュールケース。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の電池モジュールケースにおいて、
前記枠体は、
複数の前記電池セルの積層方向の側部にそれぞれ配される矩形枠を備え、
複数の前記電池セルの積層方向の両端で前記矩形枠同士が前記面板で接続され、
前記面板で接続された前記矩形枠の外周部が細板で接続されている
ことを特徴とする電池モジュールケース。
【請求項4】
請求項3に記載の電池モジュールケースにおいて、
前記一端切り欠き部及び前記他端切り欠き部における前記矩形枠同士が補強板で接続されている
ことを特徴とする電池モジュールケース。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の電池モジュールケースにおいて、
前記電池セルは、電動機により駆動力を得る車両の動力源とされ、
前記電池セルを積層した状態で前記面板同士を対向させた組が車両に複数配置される
ことを特徴とする電池モジュールケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−181896(P2009−181896A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−21615(P2008−21615)
【出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000006286)三菱自動車工業株式会社 (2,892)
【Fターム(参考)】