電流/電圧変換回路
【課題】低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路及び集積回路、及びそれらを用いた電子回路基板又は電子機器を得る。
【解決手段】電流入力端子とグランド端子間に入力される入力電流に対し、レンジを複数レンジグループに分けてI/V変換する為に、第1の演算増幅器と各レンジグループ毎のI/V変換部を設け、各I/V変換部毎にI/V変換用演算増幅器を設けてレンジグループ内の自動レンジ切り替えを行なうと同時に、レンジグループ間でも自動レンジ切り替え動作を行なう様にして、全体として低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路を実現する。
【解決手段】電流入力端子とグランド端子間に入力される入力電流に対し、レンジを複数レンジグループに分けてI/V変換する為に、第1の演算増幅器と各レンジグループ毎のI/V変換部を設け、各I/V変換部毎にI/V変換用演算増幅器を設けてレンジグループ内の自動レンジ切り替えを行なうと同時に、レンジグループ間でも自動レンジ切り替え動作を行なう様にして、全体として低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路を実現する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は電子回路の電流測定や、電流出力を有するセンサの電流信号検出等に応用可能な低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路及び集積回路、及びそれらを用いた電子回路基板又は電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最初に本書で使用するの用語の定義を示し、公知回路の概要を示す。
本書では電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、抵抗の単位は[Ω]であるものとし、説明の明快化の為に文脈上単位が明らかな場合はその記載を省く場合が有る。
【0003】
又、入力電流Iの方向により回路各部の電圧、電流は符号(極性)が異なるのみで回路上は正負同様に動作するので、以下の説明における電圧、電流の値は特にことわらない場合は正の値又は絶対値で説明するものとする。
なお、一般的にはこの入力電流Iの流れ込み、流れ出しに対して極性を付けて扱うので、両方向で動作する事を両極性動作、即ちバイポーラ動作すると言う。
【0004】
又、説明を判り易くする為に図中で抵抗をRSn又はRn等で表記している。誤解を招かない範囲で、抵抗を特定する為の呼称と抵抗値を兼ねているものとする。
【0005】
I/V変換はI/V変換抵抗RS[Ω]に流れる電流Iin[A]の両端電圧Viv[V]を得る事により行なう。
この時、
Iin=Viv/RS ・・・(1)
である。
以下本書では、この時の電流と電圧の比率をI/V変換比と呼ぶ。
一例としてI/V変換抵抗が1MΩの場合は、1μAに対して1Vに変換されるのでI/V変換比は1μA/Vである。I/V変換抵抗の逆数とも言えるものである。
【0006】
又、図44は一般的ダイオードの電圧−電流特性例であり、順方向電圧VFが数百mV以下では電流がほぼ0Aのオフ状態になり、順方向電圧VFがそれ以上では電流が急激に大きくなりダイオードがオン状態になる。
換言すると、ダイオードの内部抵抗は順方向電圧VFが数百mV以下では極めて大きく、順方向電圧VFがそれ以上ではダイオードの内部抵抗が極めて小さくなると言える。
その様なダイオード相当の電圧−電流特性を有する素子には図45の様にダイオード接続したトランジスタやダイオード接続したFETが一般的に知られている。
図示していないPNPトランジスタ、PchJFET、PchMOSFETでも同様にダイオード接続が可能である事が公知である。
【0007】
図46はダイオードを双方向並列接続したダイオードイッチの電圧−電流特性例であり、図44のスイッチ特性のVFとIを正負双方向にした特性になる。
本願発明ではこのダイオードの電流スイッチ特性を用いる。
その様なダイオードスイッチ相当の電圧−電流特性は前記のダイオード接続したトランジスタやダイオード接続したFETを双方向並列接続しても得られる。
【0008】
又、図47に示す双方向直列接続したツェナーダイオードや、双方向直列接続バリスタでも同様である。
説明の明快化の為に本書ではそれらも含めて「ダイオードスイッチ」で表記し図面中では図48で表わす。
【0009】
なお、以上の説明からも明らかな様に、「ダイオードスイッチ」はその両端子間電圧の大きさでオン−オフするので外部からのオン/オフ制御信号は不要であるという利点が有る。
本書ではダイオードスイッチがオンになる時の両端子間電圧をオン電圧と呼ぶものとする。
又、ダイオードスイッチのオン電圧を高くする場合は図49の様にダイオードスイッチを必要段数シリーズに接続するものとする。
【0010】
但し、図44、図46からも判る様にダイオードスイッチの特性は非線形であり、シリコンダイオード、ショットキーバリアダイオード、ツェナーダイオード、トランジスタ、FET等デバイス種類、流れる電流の大きさ、温度、周辺回路等の条件でそのオン電圧が変化するので回路特性をリニアな計算式にそのまま適用する事はできず、実際の回路設計では実験やシミュレーション等で回路定数を決定する様な事が必要になって来る。
しかし、本書ではその動作原理を示す為のものであるので、ダイオードスイッチのオン電圧や内部抵抗値は特別にことわらない場合はモデル化した固定値を用いるものとする。
【0011】
又、本願発明では不感帯回路を用いる。
図50は不感帯回路の入出力の関係を示したもので、図51、図52、図53は公知の不感帯回路例である。
以降の説明の為に不感帯設定電圧の絶対値を正負同一値とした場合の不感帯回路を次式で定義する。
Vout=db(Vin、Edb) ・・・(2)
但し、Vinは入力電圧、Edbは不感帯設定電圧、Voutは不感帯回路出力電圧であり、
Vin<−Edbの時 Vout=Vin+Edb
−Edb≦Vin<+Edbの時 Vout=0
+Edb≦Vinの時 Vout=Vin−Edb
とする。
【0012】
又、本願発明ではリミット回路を用いる。
図54は反転型リミット回路の入出力の関係を示したもので、図55は公知の演算増幅器を用いた反転型のリミット回路例である。
その出力をインバータで反転させれば非反転型のリミッタ回路を容易に得る事ができる。
【0013】
又、一般的にリミット回路でリミット値が一定であるものをハードリミット、リミット値が漸増するものをソフトリミットと呼ぶ。図56にその入出力特性を示す。
その様な回路はダイオードやツェナーダイオードでも容易に得られ、さらに演算増幅器と組み合わせて得られる事も知られている。図57、図58、図59、図60に回路例を示す。
本願発明では同様のリミット回路を用いるが、上記で説明したものとして各部での説明は省く。
【0014】
以降の説明の為にリミット設定電圧の絶対値を正負同一値とした場合のリミット回路を次式で定義する。
Vout=lm(Vin、Elm) ・・・(3)
但し、Vinは入力電圧、Elmはリミット設定電圧、Voutはリミット回路出力電圧であり、
Vin<−Elmの場合、 Vout=−Elm
−Elm≦Vin<+Elmの場合、Vout=Vin
+Elm≦Vinの場合、 Vout=+Elm
とする。
【0015】
又、本書の説明中で2点間の電位差を求める場合が有る。
一般的には図61等の差動増幅器が用いられる。
あるいは図62の様に高入力インピーダンスの差動増幅器を1つの集積回路にまとめた計測アンプと呼ばれる素子も一般的になっている。
2点間の電位差を求めるには2点の電圧を各々A/D変換してディジタル回路演算又はマイクロコンピュータのソフトウェア演算で電位差を求める事もできる。
本願発明では上記何れの方法でも良く、方法の限定は不要であるので、あくまでも電位差を求めるという意味合いで代表して図62の表示方法を用いるものとする。
【0016】
又、本書では説明の中で演算増幅器の最大出力電圧を用いる場合が有る。
一般的な演算増幅器ではその出力電圧範囲は電源電圧に対して2〜3V狭い範囲である。
一方近年ではレイル・ツー・レイル出力演算増幅器等と呼ばれる演算増幅器が一般的になって来た。
これはその出力電圧範囲がほぼ電源電圧範囲に等しいものである。
本書では説明を明快にする為に、演算増幅器の出力電圧幅に関連する説明においてはレイル・ツー・レイル出力を前提とし、出力電圧は電源電圧範囲迄可能であるものとする。
【0017】
又、本書ではレンジグループ1,・・・,レンジグループN(Nは2以上の自然数)の各レンジグループに含まれるレンジ数M1,M2,・・・,MN(MNはレンジグループ内レンジ番号とし1以上の自然数)として、本願発明のレンジ切り替えのオン/オフの順番は入力電流の絶対値が0Aから大きくなるに伴い、
レンジ(1、1)、レンジ(1,2)、・・・(中略)、レンジ(1,M1)、レンジ(2,1)、レンジ(2,2)、・・・(中略)、
レンジ(N−1,M(N−1))、レンジ(N,M)の順番で順次オンになるものとして扱う。
即ちレンジグループ及びレンジグループ内レンジ番号が若い程入力電流が小さい値でオンになるものとする。
【0018】
ここで、レンジが「オフ」とは、当該レンジのI/V変換抵抗に直列に設けたダイオードスイッチやアナログスイッチ等のスイッチ要素をオフにしてI/V変換抵抗に電流が流れない状態にする事であり、前記スイッチ要素をオンにしてI/V変換抵抗に電流が流せる状態になる事をレンジが「オン」であるものと定義する。
【0019】
複数レンジの切り替えに於いて、レンジがオンになるレンジ間の相対的順番に関して説明する場合に、入力電流が小さい段階でオンになるレンジを「小レンジ」、「下位レンジ」、入力電流が大きくなるに伴い後からオンになるレンジを「大レンジ」、「上位レンジ」「次レンジ」の様に「大小」「上下」「前後」の概念を込めて呼ぶ。
【0020】
一例としてレンジ(3,1)に対してレンジ(2、M2)は「小レンジ」、「下位レンジ」であり、レンジ(3,2)は「大レンジ」、「上段レンジ」、「次レンジ」である。
さらに、レンジ0は「最小レンジ」あるいは「最下位レンジ」であり、レンジ(N、MN)は「最大レンジ」、「最上位レンジ」である。
レンジグループについても同様とし、レンジグループ1は「最小レンジグループ」、「最下位レンジグループ」であり、レンジグループNは「最大レンジグループ」、「最上位レンジグループ」である。
【0021】
但し、一般的にはレンジ切り替えは小電流レンジが「下位レンジ」であり、大電流レンジになるに従って「上位レンジ」になるが、本願発明の回路動作原理によるとレンジ切り替えの順番とレンジの対応する電流の相対的な大きさは一致させる必要は無い。
換言すると、本願発明においてはレンジ又はレンジグループの「大小」「上下」「前後」はあくまでもレンジオン/オフの相対的順番についての定義であり、対象電流の大小の順番を必ずしも一致させる必要は無い。
【0022】
ここで、当該レンジのI/V変換抵抗に流れる電流が「設定値」に達したら次のレンジをオンにするものとし、その電流「設定値」を「フルスケール電流値」と定義し、前記N、MNを用いて以下の記号で示す。
【0023】
レンジ0に対してIFS0、
レンジ(1,1)に対してIFS(1,1)、
レンジ(1,2)に対してIFS(1,2)、
・・・(中略)
レンジ(1,M1−1)に対してIFS(1,M1−1)、
レンジ(1,M1)に対してIFS(1,M1)、
レンジ(2,1)に対してIFS(2,1)、
レンジ(2,2)に対してIFS(2,2)、
・・・(中略)
レンジ(N,MN−1)に対してIFS(N,MN−1)、
レンジ(N,MN)に対してIFS(N,MN)。
【0024】
なお、当該レンジがフルスケール電流値に達したらそれ以上電流が流れないというのでなく、そのレンジグループのI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧がさらに増大すれば当該I/V変換抵抗に流れる電流も準じて増大する事になる。
【0025】
以下に従来の電流/電圧変換回路に関しての概要を記す。
電流の大きさ、又は電流に関連した電気量や電力量等の様な物理量を測定する場合、電流を電圧に変換する為にI/V変換抵抗を用いる。
又、入力インピーダンスを低くする必要が有る場合は演算増幅器を組み合わせて用いる。
【0026】
I/V変換の精度を高める為には信号対ノイズ比(以下S/N比と称す)を大きくする必要が有り、その手段として対象とする電流の大きさ(レンジ)に応じて抵抗値の異なる複数のI/V変換抵抗を、スイッチ又はリレー又は半導体スイッチ等で切り替えて測定するのが一般的であり、これをレンジ切り替えと呼ぶ。
【0027】
図38はその一例としてのレンジ数3の場合の演算増幅器を用いた基本的な電流/電圧変換回路であり、I/V変換抵抗RS1〜3を並列にして半導体スイッチSW1〜3で何れか1つのI/V変換抵抗を選択してレンジ切り替えを行なう。
あるいはSW1〜SW3を順次オンにし、I/V変換抵抗RS1〜RS3を順次並列させる方法が有り、本願発明は後者である。
この様な演算増幅器を用いたレンジ切り替えによる電流/電圧変換回路に必要な要件は以下の通りである。
【0028】
(A)低ノイズ電流
抵抗やダイオードの熱雑音、回路部品の温度ドリフト、演算増幅器のオープンループゲインの有限性に伴う偏差の様に回路が本来的に持つノイズ以外に、演算増幅器やその他の回路素子のバイアス電流、トランジスタ、FET、フォトカプラ等のスイッチ回路の漏れ電流等、回路構成に伴うノイズ要因が有り、これを可能な限り小さくする必要が有る。
【0029】
図39にそれらのノイズ電流の影響例を示す。
同図に示す様に太線で示した電流入力端子からオン状態のI/V変換抵抗RS1迄の入力電流経路に接続された演算増幅器A1、A2、スイッチ素子SW1、SW2が有るとそのバイアス電流Ib1、Ib2や漏れ電流Il1、Il2が入力電流Iに重畳してI/V変換抵抗RS1に流れ込み、誤差電圧となる。
演算増幅器A1は必須であるのでバイアス電流の小さい素子を用いる事で対策する。
その他のノイズ電流に対する対策は、入力電流経路にはできるだけノイズ電流を発生する素子を使用しない回路構成にするのが効果的である。
【0030】
(B)多レンジ
入力電流値の範囲が広く、電流/電圧変換回路のダイナミックレンジを大きくするにはS/N比を高くする為にレンジ数を大きくするのが効果的である。
【0031】
(C)高速応答
レンジ間をまたがり高速に変化する入力電流に対しては、レンジ切り替えを高速に行なう必要が有る。
【0032】
(D)低回路電源電圧
図40、図41に演算増幅器による電流/電圧変換回路の入力電流経路を示す。
図40で示す様に入力電流が流れ込む方向の場合は負電源から入力電流と同じ値の電流を供給し、図41で示す様に入力電流が流れ出す方向の場合は正電源から入力電流と同じ値の電流を供給する必要が有る。
従って、同回路で低消費電力化を計るには消費電流は入力電流以下にはできないので、回路の電源電圧を低くするのが効果的である事が判る。
【0033】
又、演算増幅器には入力電流と同じ値の電流を駆動する能力が必要であり、演算増幅器の駆動能力が不足する場合は図42に示す様にバッファアンプを設ける必要が有る。
バッファアンプの電力損失を抑えて小形化するには電源電圧を下げるのが効果的である。
即ち、電流/電圧変換回路ではできるだけ回路の電源電圧を低くするべきである。
【0034】
なお、本書の以下の説明では必要に応じてバッファアンプを設ける事を前提とし、図面や文中ではバッファアンプには言及せず演算増幅器のみを示すものとする。
さらに、本書の以下の説明図中では演算増幅器や差動増幅器の電源端子と供給電源は必要時を除いて記載しないものとする。
【0035】
(E)バイポーラ動作
ダイナミックレンジを広くする為にログアンプを使用する方法が有る。
しかし、バイポーラでないので入力電流方向が流れ出し、又は流れ込みの一方にしか対応できない。
一般的には電流測定の様にI/V変換を要する場合は入力電流方向に制限の無いバイポーラ動作を要求される場合が多い。
従って電流/電圧変換回路においてバイポーラ動作する事は重要な要件である。
【0036】
(F)小規模回路
信頼性、精度、コスト、スペース等様々な点で回路はできるだけ部品点数少なく単純で小規模である事が望ましい。
【0037】
一般的には前記の全ての要件を満たす電流/電圧変換回路を得るのは困難であり、その内何れかを満足するものとして特許文献1〜特許文献5で開示されている方法が発明されて来た。
これらは何れも部品点数を増やさずにバイポーラ動作可能である。
【0038】
図32、図33は特許文献1で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は各々の文献によるものとする。
これらは高速応答、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する。
一方、何れの場合も電流/電圧変換対象の入力電流が小さくなるにつれて入力電流バイパス用のスイッチング素子のオフ時の漏れ電流IlやI/V変換抵抗に繋がる回路素子のバイアス電流Ib等が測定精度上無視できなくなるという低ノイズ電流化に欠点が有った。
【0039】
又、上記の漏れ電流Ilを防ぐ為にはダイオードスイッチの直列段数を増やす、ツェナーダイオード電圧やバリスタ電圧を上げる等して、スイッチング素子のオフ電圧を上げる必要が有るが、その場合には最大入力電流に対して電流/電圧変換回路全体の電圧降下、即ち図32に於けるV1、図33に於けるV0が大きくなり、演算増幅器等の電源電圧を高くする必要が有った。
即ち、多レンジ化と低回路電源電圧化は相反する要件になっている。
【0040】
図34は特許文献2、図35は特許文献3で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は各文献によるものとする。
特に図35の方法は高速応答性は良い。
他方、これらの回路ではレンジ数が増えるとバッファアンプ等のバイアス電流が入力電流に加算されるので微小電流を測定する場合には測定誤差要因になるという短所と、回路規模が大きくなるという短所が有った。
即ち、多レンジ化と低ノイズ電流化、低回路電源電圧化、小規模回路化は相反する要件になっている。
【0041】
図36は特許文献4で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は該文献によるものとする。
該電流/電圧変換回路は回路素子のバイアス電流による誤差を無くしたものであるが、自動レンジ切り替えの制御に演算回路を介すので高速応答性が充分でない。
本願発明を概観すると、特許文献4で開示されている電流/電圧変換回路の基本動作を応用してその短所を改良したものと言える。
【0042】
図37は特許文献5で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は該文献によるものとする。
該電流/電圧変換回路は回路素子のバイアス電流による誤差を無くしたものであり、回路は比較的シンプルであるが、レンジ毎に絶縁電源を用意する必要が有った。
即ち多レンジ化、小規模回路化に難点が有った。
【0043】
【特許文献1】特願2000−268065
【特許文献2】特願2003−400928
【特許文献3】特願2006−147509
【特許文献4】特願2008−292867
【特許文献5】特願2009−247710
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
解決しようとする課題は低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足させる自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本願発明の電流/電圧変換回路は、電流入力端子とグランド間に入力される入力電流を複数レンジに分けてI/V変換するものであり、レンジグループを
レンジグループ1、レンジグループ2、・・・(中略)、レンジグループN(Nは2以上の自然数)の各レンジグループに含まれるレンジ数をM1、M2、・・・(中略)、MN(MNは1以上の自然数)として、
電流入力端子とグランド端子間に入力される入力電流に対し、
レンジグループ1のレンジ(1,1)〜レンジ(1,M1)のM1個、
レンジグループ2のレンジ(2,1)〜レンジ(2,M2)のM2個、
・・・(中略)、
レンジグループNのレンジ(N,1)〜レンジ(N,MN)のMN個、
の合計M1+M2+・・・(中略)+MN個のレンジを含み、別途常時オンのレンジ0を設ける事も容易である。
各レンジ毎にI/V変換抵抗を設ける。
【0046】
以下では説明を統一的にする為にレンジ0を設けるものとし、レンジ0を設けない場合は、そのI/V変換抵抗値が無限大でそのI/V変換信号は常に0であるものとし、レンジグループ1の電流オン/オフ用ダイオードスイッチを無くし、レンジ(1,1)を常時オンにして第1の演算増幅器の常時オンの負帰還抵抗と見なすものとする。
【0047】
レンジ(1,1)〜レンジ(N、MN)の各レンジについて、入力電流の増加に対応してレンジ(1,1)〜レンジ(N,MN)の各レンジが順次段階的にオンになり、各レンジのI/V変換抵抗が順次並列に接続されて行くものとする。
【0048】
誤差増幅用として第1の演算増幅器を設け、その反転入力端子を電流入力端子に接続し、非反転入力端子をグランドに接続する。
これにより該第1の演算増幅器は以下に説明するI/V変換抵抗による負帰還により入力電流値に応じて出力電圧を変化させて常に反転入力端子がバーチャルショートによりグランド電位(0V)になる様に制御される。
レンジ0用のI/V変換抵抗を該第1の演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続して、出力電圧をレンジ0のI/V変換信号とする。
【0049】
I/V変換部を各レンジグループ毎に設け、各々1個のI/V変換用演算増幅器と電圧調整部を設ける。
各レンジグループのI/V変換抵抗については、当該レンジグループ内で最小レンジのI/V変換抵抗を該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続し、それ以外のI/V変換抵抗にはそのオン/オフができる様に所定のオン電圧を持つダイオードスイッチを組み合わせて、各々該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続する。
【0050】
これにより当該レンジグループのI/V変換用演算増幅器の出力電圧増加に対応して当該レンジグループ内のレンジが順次段階的にオンになり、自動レンジ切り替え動作をする。
この時、各I/V変換抵抗の両端子間の電位差を各レンジのI/V変換信号とする。
【0051】
各レンジグループのI/V変換用演算増幅器については、
当該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子を電流オン/オフ用ダイオードスイッチと電流制限抵抗の何れか一方又は両方を介して前記電流入力端子に接続し、
当該I/V変換用演算増幅器の非反転入力端子を当該レンジグループの前記電圧調整部を介して前記第1の演算増幅器の出力端子に接続し、
前記入力電流の増加に対応して下位レンジグループから上位レンジグループ迄順次段階的にオンになる様にする。
【0052】
但し、レンジ0が不要(レンジ0用I/V変換抵抗が無限大)の場合はレンジグループ1については電流オン/オフ用ダイオードスイッチは無くても良い。
さらに、最大レンジグループについては電流制限抵抗は0Ω(短絡)で良く、即ち、回路に入れなくても良い。
【0053】
各I/V変換抵抗の両端子間電圧が各レンジのI/V変換信号になるので、これをそのI/V変換抵抗値で除算するとそのI/V変換抵抗に流れた電流値になる。
従って、全レンジのI/V変換抵抗に流れる電流値を合計すれば入力電流値が求められる事になる。
【0054】
レンジグループ1についてはレンジ0の電流がフルスケール電流値IFS0に達した時の前記第1の演算増幅器の出力に対してレンジグループ1の電流オン/オフ用ダイオードスイッチがオンになる電圧にレンジグループ1の電圧調整部で調整されて出力される様にしておく。
レンジ0のI/V変換抵抗が無限大の場合はレンジグループ1のレンジ(1,1)は常時オンで良く、電流オン/オフ用ダイオードスイッチは不要でIFS0は0Aとして扱える。
【0055】
レンジグループ2以上のレンジグループについては、直前のレンジグループの最大レンジがフルスケール電流値に達した時の前記第1の演算増幅器の出力に対して当該レンジグループの電流オン/オフ用ダイオードスイッチがオンになる様に当該レンジグループの電圧調整部の出力が調整される様にしておく。
【0056】
各レンジグループの各々の電流制限抵抗により当該レンジグループの上限電流を設定する。
最上位レンジグループについては電流制限抵抗は無くても良く、説明を統一して扱う為に電流制限抵抗を0Ωとして扱う。
【0057】
以上記した電流/電圧変換回路は入力電流に対応した第1の演算増幅器の出力電圧に基づく高速の自動レンジ切り替えが可能であり、低ノイズ電流化、高速応答、バイポーラ動作、小規模回路化の要件を満足させる事を特徴とするものである。
【0058】
又、本願発明の電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に不感帯回路又はリミット回路を用いると、当該レンジグループに対応する前記第1の演算増幅器の出力電圧範囲を狭くでき、より多レンジ化、高速応答化、低回路電源電圧化が計れる。
【0059】
又、本願発明の電流/電圧変換回路のレンジグループの電圧調整部の不感帯回路としてダイオードスイッチの不感帯幅を演算増幅器により増幅又は減衰させて任意の不感帯幅を得る様にする事ができる。
これを少なくとも1つ以上のレンジグループの電圧調整部に用いる事により、レンジ切り替えを行なう前記第1の演算増幅器の出力電圧を任意の電圧に設定でき、より高速応答化、低回路電源電圧化が計れる。
【0060】
さらに、少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に於いて、当該レンジグループの次レンジグループの何れかのレンジのI/V変換信号で当該電圧調整部の出力を抑制させる様にし、その上位レンジがオンになったら下位である当該レンジグループの入力電流を減少させ、その分を上位レンジグループに流して、上位レンジグループに流れる電流を相対的に多くする事で、より一層I/V変換信号のS/N比を高められる。
【0061】
さらに、本願発明の電流/電圧変換回路の一部を内蔵し、その他の回路は外付け可能にする端子を設けた集積回路にする事により容易、且つコンパクトに本願発明の電流/電圧変換回路が製作可能になる。
【0062】
さらに本願発明の電流/電圧変換回路又は集積回路を用いれば、電流/電圧変換回路を要する種々の高機能の電子回路基板又は電子機器が製作可能になる。
【発明の効果】
【0063】
本願発明により低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路及び集積回路、及びそれらを用いた電子回路基板又は電子機器を実現できる効果を得る事ができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下に発明実施の最良形態を実施例で示す。
但し、以下で記述する実施例はあくまでも「例」であり、同等機能を実現する方法にはそれらから組み合わせの変更や応用、派生、類推される種々のバリエーションが容易に考えられるが、発明が示す原理に基づく限りはそれらは全て本願発明の範囲に含まれるものとする。
【0065】
又、I/V変換抵抗やその他の抵抗値を具体的数値で示しているが、あくまでも説明を判り易くする為のものであり、当業者であれば別の値での実施も容易であり、それらは全て本願発明の範囲に含まれるものとする。
【実施例1】
【0066】
図1は本願発明の請求項1の電流/電圧変換回路のレンジ0有り、N=2、M1=2、M2=3、即ちレンジグループ数2、レンジグループ1のレンジ数2、レンジグループ2のレンジ数3、合計レンジ数6の実施例である。
電流/電圧変換回路1は主としてレンジ0I/V変換部2、レンジグループ1I/V変換部3、レンジグループ2I/V変換部4、及び演算部6で構成される。
【0067】
説明の為に、レンジ0のI/V変換抵抗RS0を1MΩ、
レンジ(1,1)のI/V変換抵抗RS11を100KΩ、
レンジ(1,2)のI/V変換抵抗RS12を10KΩ、
レンジ(2,1)のI/V変換抵抗RS21を1KΩ、
レンジ(2,2)のI/V変換抵抗RS22を100Ω、
レンジ(2,3)のI/V変換抵抗RS23を10Ω、とする。
回路接続は請求項1に従ったものである。
【0068】
各レンジのフルスケール電流値について、
レンジ0のIFS0を1μA、
レンジ(1,1)のIFS(1、1)を10μA、
レンジ(1,2)のIFS(1、2)を100μA、
レンジ(2,1)のIFS(2、1)を1mA、
レンジ(2,2)のIFS(2、2)を10mA、
レンジ(2,3)のIFS(2、3)を100mA、
とする。
【0069】
レンジ0I/V変換部2は演算増幅器A01を第1の演算増幅器とし誤差増幅とレンジ0用のI/V変換に用いており、その反転入力端子は入力電流の大きさに無関係にバーチャルショートにより常に0Vになる様に出力V0が制御される。
これに伴い、電流入力端子電圧もバーチャルショートにより常に0Vになる。即ち入力インピーダンスがほぼ0Ωになるという事である。
【0070】
ゲイン−1の演算増幅器A02はレンジ0I/V変換信号Viv0の極性を他レンジのI/V変換信号と揃える為のものである。
RS0に流れる電流I0は
I0=Viv0/RS0 ・・・(4)
で算出できる。
【0071】
レンジグループ1I/V変換部3はI/V変換用演算増幅器A11を有し、その非反転入力端子は電圧調整部1を介して第1の演算増幅器A01の出力端子に接続される。
I/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子は電流制限抵抗R11(1KΩ)と電流オン/オフ用ダイオードスイッチDSW11を介して電流入力端子に接続される。R11とDSW11の位置は入れ替えても良い。
DSW11は例えば2個のシリコンダイオードを双方向並列接続してVF11が0.5Vでオンになるものとする。
DSW12は例えば2個のシリコンダイオードを双方向並列接続したものを2組直列にする等でその両端子間電圧が1V以上になったらオンになる様にしておく。
【0072】
ダイオードスイッチDSW11、DSW12は双方向並列の段数を増やすか、ツェナーダイオードのツェナー電圧を変える等の方法で回路条件に応じて適宜変えれば良いものである。
【0073】
I/V変換抵抗RS11(100KΩ)をI/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子と出力端子間に接続する。
I/V変換抵抗RS12(10KΩ)の一方をI/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子に接続し、もう一方の端子をダイオードスイッチDSW12を介してI/V変換用演算増幅器A11の出力端子に接続する。
【0074】
I/V変換用演算増幅器A11はその反転入力端子電圧V1nと非反転入力端子電圧V1pが常に等しくなる様にその出力電圧Vd11が制御される。
ここで電圧調整部1によりレンジ0のI/V変換抵抗RS0に流れる電流I0がIFS0(1μA)未満のV0に対してはV1pがDSW11のオン電圧0.5Vより小さく、I0がIFS0以上になったらV1pが0.5V以上になる様に電圧調整される様にしておけばDSW11はV0で自動的にオン/オフ制御される事になる。
【0075】
DSW11がオンになるとI11が流れるがこれがIFS(1,1)即ち10μA未満であればV1nとVd11の電位差が1V未満でDSW12はオフでありI12は0Aである。
入力電流が増加してV0が増加するとV1pが増加し、これに伴ってVd11が増加してDSW12の端子間電圧VF12がそのオン電圧を超えるとDSW12がオンになりI12が流れる。
入力電流が減少すると逆の動作でDSW12はオフになる。
【0076】
以上からレンジ(1,1)、レンジ(1,2)は入力電流の大きさに応じて自動レンジ切り替えが行なわれる事が判る。
なお、DSW11オフ時はI11は0AなのでI/V変換用演算増幅器A11の出力電圧もV1n、即ちV1pと等しくなる。
【0077】
レンジグループ2I/V変換部4についてもレンジグループ1I/V変換部3と同様の方針で回路を構成する。
なお、レンジグループ2ではI/V変換用演算増幅器A21には1mA〜100mAの電流駆動能力を得る為にパワーアンプが必要であるが、前述した従来回路と異なり、3レンジ分共通で1個設ければ良く、本願発明は小規模回路化に有利である事が判る。
【0078】
I12が増加してIFS(1,2)である100μAを超えるとレンジグループ2I/V変換部のダイオードスイッチDSW21がオンになり以降レンジグループ1と同様に自動レンジ切り替えが行なわれる。その動作原理はレンジグループ1と同じなので説明は割愛する。
【0079】
ここで差動増幅器DF11でVd11とV1pの電位差Viv11を求めるとDSW11のオン/オフに関わらずRS11の電流I11は次式で求める事ができる。
I11=(V1n−Vd11)/RS11
=(V1p−Vd11)/RS11
=Viv11/RS11 ・・・(5)
【0080】
同様にI12についても次式で求められる。
I12=(V1n−Vd12)/RS12
=(V1p−Vd12)/RS12
=Viv12/RS12 ・・・(6)
【0081】
同様にレンジグループ2の各レンジの電流は次式で求められる。
I21=Viv21/RS21 ・・・(7)
I22=Viv22/RS22 ・・・(8)
I23=Viv23/RS23 ・・・(9)
【0082】
電流制限抵抗R11はレンジ(1,2)のI12の電流がIFS(1,2)を超えたらそれ以上の電流が流れるのを制限する為のものである。
これの値により同じ入力電流でも、レンジ(1,2)と次のレンジ(2,1)に流れる電流の割合が変わる。
【0083】
後述する様にS/N比を大きくするには上位レンジの電流が大きい方が良く、その為に電流制限抵抗R11が有効に働く。
但し、電流制限抵抗R11が大きくなるに伴い電流IFS(1,2)を流す為のV1p、及びその信号源である演算増幅器A01の出力電圧V0が大きくなるので先述した様に高い電源電圧が必要になる、V0の変化幅が大きくなり動作速度が低下する等の不利が生ずる。
最上位レンジグループでは電流制限抵抗R21は不要であるので0Ωとしている。
【0084】
他方電流制限抵抗には以下の様な別の機能も果たす。
回路の諸条件により、レンジ切り替わり点において、
レンジ(2,1)オン→I21増大、I12低下→演算増幅器A01のV0低下→V2p低下→レンジグループ2オフ→I12増大→レンジ(2,1)オン、のサイクルでレンジ切り替えのハンチングが発生する場合が有る。
【0085】
これは入力電流値が一定の状態に於いてレンジ切り替えが行なわれると、等価的な演算増幅器A01の負帰還抵抗が急激に増減する事によるもので、電流制限抵抗によりその増減幅が抑えられ、レンジ切り替えのハンチングを防止できる。
その様な場合は最上位レンジグループの電流制限抵抗も必要になる。
【0086】
この様なレンジ切り替え時のハンチングはレンジグループが増えれば各レンジグループのレンジ切り替わり点で発生し得る。
従って、各レンジグループのI/V変換部の電流制限抵抗は当該レンジグループの最大レンジに流れる電流がそのフルスケール電流値を大きく超えず、且つレンジ切り替えに伴うハンチングが発生しない程度に大きく、演算増幅器A01の出力電圧V0を不必要に大きくしない程度に小さくなる様な適切な値に設定すれば良い。
【0087】
図1の回路の電圧調整部1、電圧調整部2の最も簡単な構成例を図6に示す。
これは入力電圧V0を抵抗R1とR2と分圧して出力するものであり、前記の自動レンジ切り替え動作をさせるには電圧調整部1と電圧調整部2の分圧比を変える、換言すればそれぞれのゲインを変えるものである。
【0088】
一例として電圧調整部1、電圧調整部2のゲインを各々0.5、0.25とした場合の入力電流IとV0、V1p、V2pの関係を図7に示す。
これによると、V0がVFonの2倍(1.0V)になるとV1pがVFon(0.5V)に達してレンジグループ1がオンになる。
さらに、V0がVFonの4倍(2.0V)になるとV2pがVFon(0.5V)に達してレンジグループ2がオンになる。
レンジグループ数が増える毎にそのレンジゲインの電圧調整部のゲインを0.125、0.0625・・・の様に抵抗分圧比を順次小さくすれば良い。
【0089】
上記のレンジグループの自動オン/オフ制御の他に、電圧調整部に必要な要件は、電流入力端子電圧に対する全てのレンジグループのI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子の相対的な電圧大小関係が等しいという事である。
【0090】
一例として図1に於いて、電流オン/オフ用ダイオードスイッチDSW11、DSW21の左側(電流入力端子側)の電位(通常は0V)に対してDSW11の右側端子電位が高く、DSW21の右側端子電位が低い場合が有ると、DSW11の右側端子からDSW21の右側端子に回り込み電流が生ずる。
これは不要な電流でありノイズ電流となる。各レンジグループにバイアス電流やリーク電流が有るとこれも回り込んでレンジグループが互いに影響を及ぼし合う事になる。
【0091】
これを防止するには、電流入力端子の電位に対する各電流オン/オフ用ダイオードスイッチの右側電位の相対的な大小関係が同じであれば良く、その為にはI/V変換用演算増幅器の反転入力端子と同電位の非反転入力端子の電位も同じ相対的電位関係になる必要が有る。
本願発明の電圧調整部は全てこの要件を満足する様に構成されるものである。
【0092】
図1の回路に於いて差動増幅器DF12とDF22、DF23の反転入力端子のバイアス電流はノイズ電流に成り得るものである。
しかし、上述した様にダイオードスイッチDSW11、DSW21の右側端子電位が電流入力端子に対する相対的大小関係が同じである事により異レンジグループに流れ出す事は防止される。
従って、当該レンジグループ内でバイアス電流が精度に影響しない様にすれば良い。
即ち電流レンジの大きさと差動増幅器のバイアス電流を比較して、無視できない場合は当該レンジグループのレンジ数を1とするか、少ないレンジ数にすれば良い。
【0093】
以上の説明から本願発明によれば、
入力電流経路にバイアス電流や漏れ電流が入る要因が少なく、低ノイズ電流化が計れる。
レンジグループ内の複数レンジ化により多レンジ化が計れる。
演算回路によらずV0の大きさにより直接レンジ切り替えするので高速応答可能。
回路から明らかな様に入力電流方向により制限される回路箇所は無く、バイポーラ動作可能である。
1レンジ当たりの回路が単純、且つ部品点数の多いバッファアンプを要するレンジは1つのレンジグループにまとめる事ができるので小規模回路化が計れる。
等、多くの利点が同時に得られ、これは従来方法には無い大きな特徴である。
【0094】
ここでレンジグループ1のI/V変換部について見ると、I/V変換用演算増幅器A11の出力電圧はそのI/V変換抵抗RS11とRS12に流れる電流I11とI12、即ちその合計I1を駆動できれば良い。
具体的にレンジ(1,2)にI12が流れた場合のI/V変換用演算増幅器A11の出力電圧Vd11は
Vd11=V1n+RS12・I12+VF12 ・・・(10)
である。
【0095】
同様にレンジ(2,3)にI23が流れた場合のI/V変換用演算増幅器A21の出力電圧Vd21は
Vd21=V2n+RS23・I23+VF23 ・・・(11)
である。
【0096】
一方I/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子の電圧V1nは電流オン/オフ用ダイオードスイッチDSW11の両端子間電圧VF11と電流制限抵抗R11と入力電流I1による電圧降下の合計値であれば良い。
同時にV1nは非反転入力端子V1pと等しく、その信号源は第1の演算増幅器A01である。
【0097】
即ち、次式が成り立つ。
V1n=V1p
=VF11+R11・I1 ・・・(12)
レンジグループ2のI/V変換部についても同様であり、次式が成り立つ。
V2n=V2p
=VF21+R21・I2 ・・・(13)
【0098】
これらの式を比較すると第1の演算増幅器A01の所要出力電圧幅と各レンジグループのレンジ数とは無関係であり、レンジグループ1のI/V変換用演算増幅器A11の所要出力電圧幅と、レンジグループ2のI/V変換用演算増幅器A21のと所要出力電圧幅とは無関係である事が判る。
【0099】
換言すれば本願発明の電流/電圧変換回路では、レンジ数が増えてもレンジグループを増やせば第1の演算増幅器の出力電圧幅や各レンジグループのI/V変換用演算増幅器の出力電圧範囲を大きく広げる必要は無い。
即ち、本願発明の電流/電圧変換回路に於いて、低い回路電源電圧でレンジ数を大きくする事ができるのは大きな特徴であり、利点である。
【0100】
なお、図1の回路ではレンジ切り替えの一般的方法に合わせて各I/V変換抵抗RS0〜RS23を1MΩ〜10Ωまで順次10倍宛増やしているが、レンジ切り替え動作の観点からは、原理的に各I/V変換抵抗は任意の大きさで良く、レンジ順番に従って抵抗値を漸減させる必要も無い。
即ち本願発明のレンジ切り替えの動作原理は各I/V変換抵抗値とは無関係である事は特記すべき点である。
【0101】
以上説明したレンジ0、レンジグループ1I/V変換部、レンジグループ2I/V変換部で各レンジ毎のI/V変換信号を得る事ができ、本願発明の目的を達せられる。
得られたI/V変換信号は演算部6で任意に処理すれば良く、どう利用するかは本回路を適用する装置の目的により多様であるが、以下に応用例を示す。
【0102】
図1の演算部6では各レンジ毎に当該レンジとそれより下位レンジのI/V変換信号をそのI/V変換比を鑑みて反転増幅器による加算回路で合算している。
これは入力電流に対して当該レンジに換算したI/V変換信号と言えるものである。
なお、要求精度に応じて合算する信号は少なくしても良い。
例えば、要求精度が1%であればレンジ(3,3)換算I/V変換信号Viv33はレンジ(2,1)からレンジ(2,3)の3レンジ分を合算すれば足りる。
【0103】
各レンジ毎に換算された信号の内、I/V変換信号として有効なのはオンになっているレンジの内で最大レンジの信号及び、オフ状態にあるそれより大きいレンジの信号であるが、S/N比を大きくする為にはオンになっているレンジの内で最大レンジの信号を有効とすべきである。
【0104】
その一方法としてウィンドコンパレータとデコーダを用いて各レンジ換算I/V変換信号から有効レンジ指定信号を生成する方法が有る。
説明を単純化する為にレンジ0、レンジ11、レンジ21だけの電流/電圧変換回路の場合の有効レンジ指定信号作成回路例を図8に示す。
本方法はソフトウェアを介さずハードウェアで処理するので高速性が要求される場合に有効である。
【0105】
別の処理方法として図9の様に各レンジ毎のI/V変換信号をマルチプレクサで選択しながらA/D変換しマイクロコンピュータとソフトウェアを用いて有効レンジを判定する方法が有る。
本方法は処理速度が比較的遅くても良い場合に有効である。
【0106】
さらに別の処理方法として図10の様に各レンジ毎のI/V変換信号を直接A/D変換しマイクロコンピュータとソフトウェアを用いて有効レンジを判定する方法が有る。
本方法は処理速度が比較的速いがA/D変換器を複数要し、コストが高くなる。
【0107】
なお、高速性が必要な場合は、図9、図10のマイクロコンピュータをPLDやFPGAに置き換える方法も有る。
【実施例2】
【0108】
図2は図1のレンジグループ2I/V変換部4を変更した実施例であり、その他の部分は全く図1と同一とする。
図1からの変更点はダイオードスイッチDSW23右側端子をダイオードスイッチDSW22の左側端子に接続してDSW22の不感帯幅を共用した点である。
これによりDSW23の不感帯幅は自身の不感帯幅とDSW22の不感帯幅の合計値になる。
【0109】
これにより各ダイオードスイッチのオン電圧設定がし易くなる、同一のダイオードを用いる等で部品の統一化が計れる等の利点が得られる。
同一レンジグループ内のレンジ数が増えても同様に直前レンジのダイオードスイッチの不感帯を共用する様に接続可能である。
回路の動作は実施例1と全く同じであるので説明は割愛する。
【実施例3】
【0110】
図3は図1のレンジグループ2I/V変換部4を変更した実施例であり、その他の部分は全く図1と同様とする。
図1からの変更点は以下である。
ダイオードスイッチDSW22とI/V変換抵抗RS22の位置を入れ替え、I/V変換信号Viv22の極性がViv21と同じになる様にRS22の両端子を差動増幅器に接続した。
ダイオードスイッチDSW23とI/V変換抵抗RS23の位置を入れ替え、I/V変換信号Viv23の極性がViv21と同じになる様にRS22の両端子を差動増幅器に接続した。
レンジグループ1I/V変換部3についても同様な変更が可能である。
【0111】
変更による大きな利点は特に無いが、実際の回路を製作する上では部品配置、配線容易性で利点が有る場合が有り得る。
但し、差動増幅器を使用する場合は、その同相入力信号電圧がダイオードスイッチの両端子間電圧分大きくなる点は不利である。
回路の動作は実施例1と全く同じなので説明は割愛する。
なお、図3の位置関係でも図2の様にDSW22の不感帯を共用する接続にする事は可能である。
【実施例4】
【0112】
図4は本願発明の請求項1の電流/電圧変換回路のレンジ0無し、N=3、M1=1、M2=1、M3=1、即ちレンジグループ数3、レンジグループ1のレンジ数1、レンジグループ2のレンジ数1、レンジグループ3のレンジ数1、合計レンジ数3の場合の実施例である。
【0113】
主な図1の実施例との相違点は以下である。
レンジ0のRS0が無い。即ち、演算増幅器A01をI/V変換機能を持たない誤差増幅器としている。
レンジグループ1I/V変換部3の電流オン/オフ用ダイオードスイッチを設けない。
これによりレンジ(1,1)を常時オンにし、電流入力端子をオープンにした時に演算増幅器A01の負帰還抵抗が無くなって不安定状態になるのを防ぐ事ができる。
【0114】
レンジグループ1I/V変換部3の電圧調整部1のV0に対するゲインは1で良い。即ちV0を直接I/V変換用演算増幅器A11の非反転入力端子に接続しても良い。
あるいは後述のリミット回路を設けるとさらに良い。
【0115】
レンジグループ2I/V変換部4のダイオードスイッチDSW21と電流制限抵抗R21の位置を入れ替えている。
レンジグループ3I/V変換部5のダイオードスイッチDSW31と電流制限抵抗R31の位置を入れ替えている。
これによりダイオードスイッチと電流制限抵抗の相対的位置関係は回路動作に関わりが無い事を示している。
回路動作は図1の実施例と同様なので割愛する。
【0116】
本実施例は図1の基本回路に対する機能同等で変形可能である事を示すが、レンジグループ毎のI/V変換部を集積回路化する場合に各レンジグループを共通化しや易いという利点が有る。
【実施例5】
【0117】
図5は本願発明の請求項1の電流/電圧変換回路のレンジ0有り、N=2、M1=1、M2=1、即ちレンジグループ数2、レンジグループ1のレンジ数1、レンジグループ2のレンジ数1、合計レンジ数3にさらにレンジ4追加をした場合の実施例である。
【0118】
図5において、RS4(1K)はレンジ(2,1)の次のレンジのI/V変換抵抗とする。
ダイオードスイッチDSW41を介して電流入力端子とI/V変換抵抗RS4を接続し、RS4の他方の端子をグランドに接続する。
【0119】
レンジグループ2I/V変換部4のI/V変換用演算増幅器A21が飽和せず電流I21を駆動している状態では誤差増幅器としてのレンジ0の演算増幅器A01の反転入力端子電圧eはバーチャルショートにより0Vになる様に制御される。
【0120】
入力電流I21がさらに大きくなり、演算増幅器A21の駆動能力を超えるとバーチャルショート状態が壊れて演算増幅器A01の反転入力端子電圧eが上昇する。
これがダイオードスイッチDSW41のオン電圧を超えるとI/V変換抵抗RS4に電流が流れ、I/V変換抵抗RS4のDSW41側端子に電圧が発生する。
これをインピーダンス変換用の演算増幅器A41で取り出せば1mA/VのI/V変換信号Viv4として使用できる。
【0121】
一般的に演算増幅器A01の入力保護回路としてその反転入力端子とグランド間にダイオードスイッチを入れるが、レンジ4I/V変換回路はその保護回路を兼ねる事ができる利点が有る。
【実施例6】
【0122】
先に説明した図6の抵抗分圧の方法の場合はレンジグループ数が1増える毎にそのレンジグループがオンになるV0は4V、8V、16Vの様に倍々で増大するので電源電圧が±15Vの場合で最大レンジグループ数は4程度、±5Vの場合は3程度であり、より多いレンジグループが必要な場合には対応できない。
さらに、後段のレンジでは第1の演算増幅器の出力V0をゲイン0.5、0.25、0.125・・・の様に減衰させて動作させるのでゲインを下げた分V0の応答も遅くなる。
【0123】
これは高速応答を要求される場合には不利な点である。
図11は本願発明の請求項2の電流/電圧変換回路の電圧調整部の実施例であり、上記の問題に対応したものである。
【0124】
図11は電圧調整部をEdbNの不感帯を有する不感帯回路で構成する事を示している。
その実回路例として不感帯をダイオードスイッチDSW1とプルダウン抵抗R1で構成したものを図12に示す。ダイオードスイッチによる不感帯回路の詳細については既に記した通りである。
【0125】
これを図1や図4の電流/電圧変換回路の電圧調整部に適用する場合を、電圧調整部のみを取り出して図13に示す。
図13の場合は各レンジグループの電流オン/オフ用ダイオードスイッチのオン電圧に対応させて電圧調整部のダイオードスイッチDSW1の不感帯設定電圧Edb1、Edb2、Edb3を設定する。
【0126】
図14は前段の不感帯回路出力を次段の不感帯回路入力に接続する事により不感帯設定電圧Edbを共通化できる様にしたものである。
但し何れの場合も、図4の回路においてはレンジグループ1の電圧調整部には不感帯回路は不要である。
【0127】
本回路による入力電流と各部の電圧との関係を図15に示す。
図中Edb1はレンジグループ1電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb1はEdb1に対応してV1pが出力され始める時の入力電流値を示す。
【0128】
同様にEdb2はレンジグループ2電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb2はEdb2に対応してV2pが出力され始める時の入力電流値を示す。
【0129】
本回路によると第1の演算増幅器A01の出力V0を1以下のゲインで減衰させる必要が無いので図6の抵抗分圧の方法に比較してV0の電圧範囲は小さくなり、同じ電源電圧であればレンジグループ数を多くする事ができ、応答速度も高くなる。
【0130】
不感帯回路はレンジグループ毎に適用可能であるので請求項2では少なくとも1つのレンジグループに適用するとしているが、適用レンジグループ数が多い程効果が大きく、全レンジグループに適用するのが最も効果が高い。
因に、1レンジグループ当たりのV0の変化幅を1Vとした場合、電源電圧が±15Vの場合で最大レンジグループ数は15程度、±5Vでは5程度であり、容易に多レンジ化が可能になる。
換言すれば低い電源電圧でも多レンジ化が可能になる。
【0131】
以上の説明から、本願発明によれば、実施例1に記載した低ノイズ電流化、多レンジ化、高速応答、バイポーラ動作、小規模回路化の利点に加えて、低回路電源電圧化が計れる利点が得られ、これは従来方法には無い大きな特徴である。
【実施例7】
【0132】
図16は本願発明の請求項2の電流/電圧変換回路の電圧調整部の別の実施例であり、EdbNの不感帯設定電圧を有する不感帯回路と、ElmNのリミット電圧を有するリミット回路で構成する事を示している。
その実回路例として図17に、不感帯回路をダイオードスイッチDSW1とプルダウン抵抗R1で構成し、ソフトリミッタを抵抗R3とダイオードスイッチDSW2、不感帯回路とリミット回路を分離する為の抵抗R2で構成したものを示す。
ダイオードスイッチによるリミット回路の詳細については既に記した通りである。
【0133】
これを図1や図4の電流/電圧変換回路の電圧調整部に適用する場合の一例を、電圧調整部のみを取り出して図18に示す。
本例では不感帯回路の信号電圧V0X1,V0X2を次レンジグループに渡すのでレンジグループ1の不感帯幅はEdb、レンジグループ2の不感帯幅は2Edb、レンジグループ3の不感帯幅は3Edbになり、回路がシンプルになる利点が有る。
【0134】
本回路による入力電流と各部の電圧との関係を図19に示す。
図中Edb1はレンジグループ1電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb1はEdb1に対応してV1pが出力され始める時の入力電流値を示す。
【0135】
同様にEdb2はレンジグループ2電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb2はEdb2に対応してV2pが出力され始める時の入力電流値を示す。
又、図中Elm1はレンジグループ1電圧調整部のリミット回路のリミット電圧であり、Elm2はレンジグループ2電圧調整部のリミット回路のリミット電圧である。
【0136】
図19から判る様に一旦オンになったレンジグループのI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧V1p、V2pはリミット電圧で制限されるので、当該レンジグループに於いて最大レンジのフルスケール以上の電流入力が抑えられて次レンジグループへの移行がされ易くなる。
換言すると、入力電流が各レンジに分流する中で最大レンジの電流の割合がリミット回路が無い場合に比して高まるのでその分S/N比が高くなる。
これがリミット回路を用いる利点であり、本回路の特徴である。
【実施例8】
【0137】
本願発明の電流/電圧変換回路に於ける入力電流の変化に対するレンジ切り替えの応答特性に関して述べる。
図20に第1の演算増幅器の出力V0と電圧調整部の不感帯幅の関係を示す。
図中実線で示すV0Xはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbXの場合の第1の演算増幅器の出力である。
【0138】
図中実線で示すV1pXはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbXの場合のレンジグループ1のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧であり、IdbXはEdbXに対応してV1pXが出力され始める時の入力電流値である。
【0139】
図中破線で示すV0Yはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbYの場合の第1の演算増幅器の出力である。
図中破線で示すV1pYはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbYの場合のレンジグループ1のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧であり、IdbYはEdbYに対応してV1pYが出力され始める時の入力電流値である。
なお、EdbX<EdbYとしている。
【0140】
図20で判る様に入力電流I1に対して、EdbXの場合にはV0XはV1Xであり、EdbYの場合にはV0YはV1Yであり、V1YはV1Xより大きい。
これは、入力電流が0からI1に変化すると第1の演算増幅器の出力V0は0からV1X又はV1Yに変化する事を示す。
即ち、入力電流が0からI1に変化する時間をΔt[Sec]とすると、
V1X/Δt<V1Y/Δt ・・・(14)
であり、不感帯設定電圧が小さい程第1の演算増幅器の出力V0の立ち上がりが小さくて済む事を示す。
これは演算増幅器の周波数特性、スルーレイトの特性の点で応答性能が高くなり有利である事が判る。
【0141】
即ち、請求項2の不感帯回路を用いる電流/電圧変換回路に於いて、入力電流変化に対する応答性能を高めるには不感帯設定電圧を必要最小限に低くするのが有利である。
【0142】
不感帯回路として図53の公知の演算増幅器による不感帯回路も使用可能であり、不感帯設定電圧は任意に設定可能である。
しかし不感帯設定電圧の生成回路を含め、部品点数が多いので実回路には適用し難い。
前記のダイオードやツェナーダイオードによるダイオードスイッチによる不感帯回路は部品点数が少ない利点が大きいが設定電圧はダイオードで0.5〜0.6V、ツェナーダイオードでは一般的に入手できるのはツェナー電圧が1.8V、2.0V、2.2V・・・と段階的であり、自由に設定する事ができない。
【0143】
特に本願発明の電流/電圧変換回路では不感帯電圧の最適値が1.0V程度となる場合が多い。
これを解決する本願発明の請求項3の基本回路を図21に示す。
同回路はダイオードスイッチDSW1とプルダウン抵抗R1の不感帯設定電圧Edbから任意の不感帯電圧を生成するものである。
【0144】
具体的には、前記不感帯回路の前後にG1、G2の増幅器を設け、G1・G2=1になる様にゲインを設定しておくものとする。
VINにG1を掛けると不感帯回路により後段の増幅器入力VXは
VX=db(VIN・G1,Edb)
になる。
【0145】
VXを後段増幅器に入力するとその出力VOUTは
VOUT=db(VIN・G1,Edb)・G2
=db(VIN・G1・G2,Edb・G2)
=db(VIN,Edb・G2)
になる。
【0146】
これは図21の不感帯回路によるとEdbを元にしてG2倍の任意の不感帯電圧を生成できる事を示す。
具体的回路例として図22に2個の演算増幅器A1、A1とダイオードスイッチDSW1による不感帯設定部による不感帯回路を示す。
又、図23によると図22にリミット電圧Elmのリミット回路を容易に付加する事ができる。
【0147】
又、ゲインG1が1以下の場合は演算増幅器でなく抵抗分圧でも実現でき、入出力の極性を合わせる為に後段のゲインG2を非反転増幅器にした場合の不感帯回路を図24に示す。
あるいは図25の様に演算増幅器1個の反転出力型でリミット電圧Elmのリミッタ付きの不感帯回路を構成する事もできる。
【0148】
さらに又、ゲインG1>1>G2とすれば高い基準不感帯から低い不感帯を生成する事も可能である。
図26は演算増幅器でG1=5とし、R1とR2による分圧でG2=0.2とし、ツェナー電圧3.0Vのツェナーダイオードから不感帯幅0.6Vを生成する回路例である。
【0149】
請求項3は以上の構成による不感帯回路を用いて請求項1又は請求項2における電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に動作上最適な不感帯を持つ様にした電流/電圧変換回路である。
これによると前述した様に、入力電流変化に対する応答性能が高まるという特徴を得られる。
不感帯を持たせる全てのレンジグループの電圧調整部に該不感帯回路を適用すれば全レンジグループに最適な不感帯を設定でき、一層応答性能を高める事ができる。
【0150】
なお、先の説明ではG1・G2=1とし全体のゲインを1とする様に説明したが、必ずしも全体ゲインを1とする必要は無く、1以外になる様にG1、G2を設定しても良い。
例えば全体ゲインを1以上にすればその分第1の演算増幅器の出力V0は小さくて済み、応答は速くなる。
但し、回路全体として見ると発振し易くなるので、無闇にゲインを大きくする事はできないので適用には注意が必要である。
【実施例9】
【0151】
図27は本願発明の請求項4の実施例である。
請求項1〜請求項3による電流/電圧変換回路に於いて、何れかの電圧調整部の入力部に演算増幅器を用いた場合、これを加算回路として応用するものである。
【0152】
図27の例ではレンジグループ2のレンジ(2,1)がオンになるとそのI/V変換信号Viv21でレンジグループ1I/V変換部の電圧調整部1の出力電圧V1pを抑制する。
これにより、レンジ(2,1)がオンになるとレンジグループ1の電圧調整部1の出力V1pが低下し、レンジグループ1のI/V変換回路の電流が減り、その分の電流がレンジグループ2に流れる。
【0153】
レンジグループ2についてもレンジ(3,1)のI/V変換信号Viv31で電圧調整部2の出力V2pを抑制する。
これにより、レンジ(3,1)がオンになるとレンジグループ2の電圧調整部2の出力V2pが低下し、レンジグループ2のI/V変換回路の電流が減り、その分の電流がレンジグループ3に流れる。
なお、次レンジのI/V変換信号で減算した結果V0と逆極性のV1p、V2pが出力されない様に、適切にゲインを下げて減算する必要ある事に注意する必要が有る。
【0154】
これにより後段のレンジの電流が大きくなるのでS/N比が良くなる
即ち、請求項4の発明によりS/N比が良い電流/電圧変換回路を得られる。
【実施例10】
【0155】
図28は本願発明の請求項5の実施例である。
本回路例の集積回路装置では1レンジグループに必要な演算増幅器と差動増幅器を内蔵し、I/V変換抵抗や電流制限抵抗、I/V変換信号加算回路の抵抗類を集積回路装置外部に外付け可能としたものである。
本願発明によると電流/電圧変換回路を小形、容易に製作可能になる。
【実施例11】
【0156】
図29は本願発明の請求項6の実施例であり、図28の集積回路装置の適用例としてレンジ数3の電流/電圧変換回路を図29に示す。
前述した請求項1〜請求項5による電流/電圧変換回路又は集積回路を用いる事により電流/電圧変換を必要とする従来実現できなかった性能を持つ種々の電子回路基板や電子機器が製作可能になる。
【0157】
具体例として回路電流を測定する電流計、クーロンメータ、電圧発生器、電流発生器、バッテリー充放電装置、メッキ装置、IC試験装置や、電流信号を出力とするセンサを用いるフォトダイオードインターフェイス、照度計、光度計、水素炎イオン検出器、電気伝導度測定装置等が有る。
【0158】
以下に本願発明の請求項に掲げていない関連する技術とその効果を付記する。
(a)任意レンジグループのI/V変換部のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子を電圧調整部に無関係にグランドレベルにするスイッチを設ける事により、強制的にI/V変換動作をイネーブル−ディセーブル制御可能とする事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【0159】
これにより、レンジグループをI/V変換動作及びレンジ切り替え動作から除外する事が可能になる。
図30にレンジグループ1にイネーブル−ディセーブル制御用スイッチを設けた回路例を示す。
本例ではスイッチSWをオープンにするとV1pが0VになるのでDSW1が常にオフになって、レンジグループ1のI/V変換動作はディセーブルになる。
リーク電流によるノイズ電流を発生し易いスイッチ又はアナログスイッチを電流経路に入れずに済むのは大きな利点である。
【0160】
(b)任意レンジグループのI/V変換部のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子と差動増幅器の入力端子に位相補正回路を入れて、入力電流に対する差動増幅器の2つの入力信号の位相を合わせてそれらの差分であるI/V変換信号の誤差を少なくする事を特徴とした電流/電圧変換回路。
【0161】
図31にレンジグループ1の差動増幅器DF11に位相補償回路を入れた実施例を示す。
図31において入力電流(図示無し)の変化に対する電圧調整部1の出力信号V1pに応答してI/V変換用演算増幅器A1のVd11が変化する。
その為、差動増幅器の反転入力端子の信号Vd11と電圧調整部1の出力信号V1pでは通常V1pの方が応答が速い。
【0162】
位相補償回路が無い場合はその位相差に伴いその差電圧Viv11には誤差が入る。
位相補償回路としてRX2、CX2による適切な遅延を入れて応答時間を揃える事によりI/V変換信号の精度を高める事が可能になる。
【0163】
(c)(b)と同様に各レンジのI/V変換信号の位相補償回路を入れて(図示無し)、各レンジ毎のI/V変換信号応答時間を揃えれば、それらを加算して求める入力電流値の精度を高める事が可能になる。
【0164】
(d)前記第1の演算増幅器、各レンジグループのI/V変換用演算増幅器の各々について、個別に必要最小限の電源電圧を用いる事により低消費電力化を計る事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【0165】
本願発明の特徴はレンジ数が多くても複数のレンジグループに分けて各々独立に演算増幅器及び誤差増幅器を動作させる事ができる。
これに伴い、各部で必要最小限の電源電圧を用いる事が可能であり、消費電力を削減できる。
特にI/V変換対象電流が大きい回路の電源電圧を下げるとその効果が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本願発明の電流/電圧変換回路によると、低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路及び集積回路、及びそれらを用いた高性能の電子回路基板又は電子機器を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図2】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図3】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図4】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図5】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図6】抵抗分圧による電圧調整部の回路例である。
【図7】抵抗分圧による電圧調整部による入力電流と各部の電圧との関係図である。
【図8】有効レンジ指定信号作成回路例である。
【図9】マルチプレクサとA/D変換器とマイクロコンピュータシステムによる処理例である。
【図10】レンジ毎のA/D変換器とマイクロコンピュータシステムによる処理例である。
【図11】不感帯回路による電圧調整部の一例である。
【図12】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の一例である。
【図13】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の並列接続例である。
【図14】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の直列接続例である。
【図15】不感帯回路による電圧調整部による入力電流と各部の電圧との関係図である。
【図16】不感帯回路とリミット回路による電圧調整部の回路例である。
【図17】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の回路例である。
【図18】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路とリミット回路による電圧調整部の直列接続例である。
【図19】不感帯回路とリミット回路による電圧調整部による入力電流と各部の電圧との関係図である。
【図20】第1の演算増幅器の出力V0と電圧調整部の不感帯幅の関係図である。
【図21】不感帯幅を任意に作成可能な不感帯回路である。
【図22】演算増幅器2個とダイオードスイッチによる不感帯回路の回路例である。
【図23】演算増幅器2個とダイオードスイッチによるリミッタ付き不感帯回路の回路例である。
【図24】演算増幅器1個とダイオードスイッチによる非反転出力型不感帯回路の回路例である。
【図25】演算増幅器1個とダイオードスイッチによるリミッタ付き反転出力型不感帯回路の回路例である。
【図26】演算増幅器1個とツェナーダイオードによる非反転出力型不感帯回路の回路例である。
【図27】次レンジグループのI/V変換信号で電圧調整部の出力を抑制する回路例である。
【図28】集積回路の回路例である。
【図29】集積回路の応用例である。
【図30】レンジグループのイネーブル−ディセーブル制御例である。
【図31】差動増幅器の位相補正回路追加例である。
【図32】特許文献1で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図33】特許文献1で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図34】特許文献2で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図35】特許文献3で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図36】特許文献4で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図37】特許文献5で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図38】公知のレンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路である。
【図39】ノイズ電流の影響例である。
【図40】電流が流れ込む場合の演算増幅器による電流/電圧変換回路の電流経路である。
【図41】電流が流れ出す場合の演算増幅器による電流/電圧変換回路の電流経路である。
【図42】演算増幅器にバッファアンプを付加した電流/電圧変換回路である。
【図43】I/V変換信号用差動増幅器の位相補正回路例である。
【図44】一般的ダイオードの電圧−電流特性の概略図である。
【図45】トランジスタ、FETのダイオード接続例である。
【図46】双方向並列接続したダイオードスイッチの電圧−電流特性例である。
【図47】双方向直列接続したツェナーダイオードによるダイオードスイッチである。
【図48】ダイオードスイッチの表記方法である。
【図49】多段接続したダイオードスイッチである。
【図50】不感帯回路の入出力特性図である。
【図51】ダイオードによる不感帯回路例である。
【図52】ツェナーダイオードによる不感帯回路例である。
【図53】公知の演算増幅器を用いた不感帯回路例である。
【図54】リミット回路の入出力特性図である。
【図55】公知の演算増幅器を用いたリミット回路例である。
【図56】ハードリミット回路とソフトリミット回路の入出力特性図である。
【図57】ダイオード又はツェナーダイオードによるハードリミット回路例である。
【図58】ダイオード又はツェナーダイオードによるソフトリミット回路例である。
【図59】ダイオード又はツェナーダイオードと演算増幅器によるハードリミット回路例である。
【図60】ダイオード又はツェナーダイオードと演算増幅器によるソフトリミット回路例である。
【図61】一般的な差動増幅回路である。
【図62】本書の説明で使用する差動増幅回路の図である。
【符号の説明】
【0168】
1 電流/電圧変換回路
2 レンジ0I/V変換部
3 レンジグループ1I/V変換部
4 レンジグループ2I/V変換部
5 レンジグループ3I/V変換部
6 演算部
8 集積回路
9 装置
10 レンジ4I/V変換部
【技術分野】
【0001】
本願発明は電子回路の電流測定や、電流出力を有するセンサの電流信号検出等に応用可能な低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路及び集積回路、及びそれらを用いた電子回路基板又は電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最初に本書で使用するの用語の定義を示し、公知回路の概要を示す。
本書では電圧の単位は[V]、電流の単位は[A]、抵抗の単位は[Ω]であるものとし、説明の明快化の為に文脈上単位が明らかな場合はその記載を省く場合が有る。
【0003】
又、入力電流Iの方向により回路各部の電圧、電流は符号(極性)が異なるのみで回路上は正負同様に動作するので、以下の説明における電圧、電流の値は特にことわらない場合は正の値又は絶対値で説明するものとする。
なお、一般的にはこの入力電流Iの流れ込み、流れ出しに対して極性を付けて扱うので、両方向で動作する事を両極性動作、即ちバイポーラ動作すると言う。
【0004】
又、説明を判り易くする為に図中で抵抗をRSn又はRn等で表記している。誤解を招かない範囲で、抵抗を特定する為の呼称と抵抗値を兼ねているものとする。
【0005】
I/V変換はI/V変換抵抗RS[Ω]に流れる電流Iin[A]の両端電圧Viv[V]を得る事により行なう。
この時、
Iin=Viv/RS ・・・(1)
である。
以下本書では、この時の電流と電圧の比率をI/V変換比と呼ぶ。
一例としてI/V変換抵抗が1MΩの場合は、1μAに対して1Vに変換されるのでI/V変換比は1μA/Vである。I/V変換抵抗の逆数とも言えるものである。
【0006】
又、図44は一般的ダイオードの電圧−電流特性例であり、順方向電圧VFが数百mV以下では電流がほぼ0Aのオフ状態になり、順方向電圧VFがそれ以上では電流が急激に大きくなりダイオードがオン状態になる。
換言すると、ダイオードの内部抵抗は順方向電圧VFが数百mV以下では極めて大きく、順方向電圧VFがそれ以上ではダイオードの内部抵抗が極めて小さくなると言える。
その様なダイオード相当の電圧−電流特性を有する素子には図45の様にダイオード接続したトランジスタやダイオード接続したFETが一般的に知られている。
図示していないPNPトランジスタ、PchJFET、PchMOSFETでも同様にダイオード接続が可能である事が公知である。
【0007】
図46はダイオードを双方向並列接続したダイオードイッチの電圧−電流特性例であり、図44のスイッチ特性のVFとIを正負双方向にした特性になる。
本願発明ではこのダイオードの電流スイッチ特性を用いる。
その様なダイオードスイッチ相当の電圧−電流特性は前記のダイオード接続したトランジスタやダイオード接続したFETを双方向並列接続しても得られる。
【0008】
又、図47に示す双方向直列接続したツェナーダイオードや、双方向直列接続バリスタでも同様である。
説明の明快化の為に本書ではそれらも含めて「ダイオードスイッチ」で表記し図面中では図48で表わす。
【0009】
なお、以上の説明からも明らかな様に、「ダイオードスイッチ」はその両端子間電圧の大きさでオン−オフするので外部からのオン/オフ制御信号は不要であるという利点が有る。
本書ではダイオードスイッチがオンになる時の両端子間電圧をオン電圧と呼ぶものとする。
又、ダイオードスイッチのオン電圧を高くする場合は図49の様にダイオードスイッチを必要段数シリーズに接続するものとする。
【0010】
但し、図44、図46からも判る様にダイオードスイッチの特性は非線形であり、シリコンダイオード、ショットキーバリアダイオード、ツェナーダイオード、トランジスタ、FET等デバイス種類、流れる電流の大きさ、温度、周辺回路等の条件でそのオン電圧が変化するので回路特性をリニアな計算式にそのまま適用する事はできず、実際の回路設計では実験やシミュレーション等で回路定数を決定する様な事が必要になって来る。
しかし、本書ではその動作原理を示す為のものであるので、ダイオードスイッチのオン電圧や内部抵抗値は特別にことわらない場合はモデル化した固定値を用いるものとする。
【0011】
又、本願発明では不感帯回路を用いる。
図50は不感帯回路の入出力の関係を示したもので、図51、図52、図53は公知の不感帯回路例である。
以降の説明の為に不感帯設定電圧の絶対値を正負同一値とした場合の不感帯回路を次式で定義する。
Vout=db(Vin、Edb) ・・・(2)
但し、Vinは入力電圧、Edbは不感帯設定電圧、Voutは不感帯回路出力電圧であり、
Vin<−Edbの時 Vout=Vin+Edb
−Edb≦Vin<+Edbの時 Vout=0
+Edb≦Vinの時 Vout=Vin−Edb
とする。
【0012】
又、本願発明ではリミット回路を用いる。
図54は反転型リミット回路の入出力の関係を示したもので、図55は公知の演算増幅器を用いた反転型のリミット回路例である。
その出力をインバータで反転させれば非反転型のリミッタ回路を容易に得る事ができる。
【0013】
又、一般的にリミット回路でリミット値が一定であるものをハードリミット、リミット値が漸増するものをソフトリミットと呼ぶ。図56にその入出力特性を示す。
その様な回路はダイオードやツェナーダイオードでも容易に得られ、さらに演算増幅器と組み合わせて得られる事も知られている。図57、図58、図59、図60に回路例を示す。
本願発明では同様のリミット回路を用いるが、上記で説明したものとして各部での説明は省く。
【0014】
以降の説明の為にリミット設定電圧の絶対値を正負同一値とした場合のリミット回路を次式で定義する。
Vout=lm(Vin、Elm) ・・・(3)
但し、Vinは入力電圧、Elmはリミット設定電圧、Voutはリミット回路出力電圧であり、
Vin<−Elmの場合、 Vout=−Elm
−Elm≦Vin<+Elmの場合、Vout=Vin
+Elm≦Vinの場合、 Vout=+Elm
とする。
【0015】
又、本書の説明中で2点間の電位差を求める場合が有る。
一般的には図61等の差動増幅器が用いられる。
あるいは図62の様に高入力インピーダンスの差動増幅器を1つの集積回路にまとめた計測アンプと呼ばれる素子も一般的になっている。
2点間の電位差を求めるには2点の電圧を各々A/D変換してディジタル回路演算又はマイクロコンピュータのソフトウェア演算で電位差を求める事もできる。
本願発明では上記何れの方法でも良く、方法の限定は不要であるので、あくまでも電位差を求めるという意味合いで代表して図62の表示方法を用いるものとする。
【0016】
又、本書では説明の中で演算増幅器の最大出力電圧を用いる場合が有る。
一般的な演算増幅器ではその出力電圧範囲は電源電圧に対して2〜3V狭い範囲である。
一方近年ではレイル・ツー・レイル出力演算増幅器等と呼ばれる演算増幅器が一般的になって来た。
これはその出力電圧範囲がほぼ電源電圧範囲に等しいものである。
本書では説明を明快にする為に、演算増幅器の出力電圧幅に関連する説明においてはレイル・ツー・レイル出力を前提とし、出力電圧は電源電圧範囲迄可能であるものとする。
【0017】
又、本書ではレンジグループ1,・・・,レンジグループN(Nは2以上の自然数)の各レンジグループに含まれるレンジ数M1,M2,・・・,MN(MNはレンジグループ内レンジ番号とし1以上の自然数)として、本願発明のレンジ切り替えのオン/オフの順番は入力電流の絶対値が0Aから大きくなるに伴い、
レンジ(1、1)、レンジ(1,2)、・・・(中略)、レンジ(1,M1)、レンジ(2,1)、レンジ(2,2)、・・・(中略)、
レンジ(N−1,M(N−1))、レンジ(N,M)の順番で順次オンになるものとして扱う。
即ちレンジグループ及びレンジグループ内レンジ番号が若い程入力電流が小さい値でオンになるものとする。
【0018】
ここで、レンジが「オフ」とは、当該レンジのI/V変換抵抗に直列に設けたダイオードスイッチやアナログスイッチ等のスイッチ要素をオフにしてI/V変換抵抗に電流が流れない状態にする事であり、前記スイッチ要素をオンにしてI/V変換抵抗に電流が流せる状態になる事をレンジが「オン」であるものと定義する。
【0019】
複数レンジの切り替えに於いて、レンジがオンになるレンジ間の相対的順番に関して説明する場合に、入力電流が小さい段階でオンになるレンジを「小レンジ」、「下位レンジ」、入力電流が大きくなるに伴い後からオンになるレンジを「大レンジ」、「上位レンジ」「次レンジ」の様に「大小」「上下」「前後」の概念を込めて呼ぶ。
【0020】
一例としてレンジ(3,1)に対してレンジ(2、M2)は「小レンジ」、「下位レンジ」であり、レンジ(3,2)は「大レンジ」、「上段レンジ」、「次レンジ」である。
さらに、レンジ0は「最小レンジ」あるいは「最下位レンジ」であり、レンジ(N、MN)は「最大レンジ」、「最上位レンジ」である。
レンジグループについても同様とし、レンジグループ1は「最小レンジグループ」、「最下位レンジグループ」であり、レンジグループNは「最大レンジグループ」、「最上位レンジグループ」である。
【0021】
但し、一般的にはレンジ切り替えは小電流レンジが「下位レンジ」であり、大電流レンジになるに従って「上位レンジ」になるが、本願発明の回路動作原理によるとレンジ切り替えの順番とレンジの対応する電流の相対的な大きさは一致させる必要は無い。
換言すると、本願発明においてはレンジ又はレンジグループの「大小」「上下」「前後」はあくまでもレンジオン/オフの相対的順番についての定義であり、対象電流の大小の順番を必ずしも一致させる必要は無い。
【0022】
ここで、当該レンジのI/V変換抵抗に流れる電流が「設定値」に達したら次のレンジをオンにするものとし、その電流「設定値」を「フルスケール電流値」と定義し、前記N、MNを用いて以下の記号で示す。
【0023】
レンジ0に対してIFS0、
レンジ(1,1)に対してIFS(1,1)、
レンジ(1,2)に対してIFS(1,2)、
・・・(中略)
レンジ(1,M1−1)に対してIFS(1,M1−1)、
レンジ(1,M1)に対してIFS(1,M1)、
レンジ(2,1)に対してIFS(2,1)、
レンジ(2,2)に対してIFS(2,2)、
・・・(中略)
レンジ(N,MN−1)に対してIFS(N,MN−1)、
レンジ(N,MN)に対してIFS(N,MN)。
【0024】
なお、当該レンジがフルスケール電流値に達したらそれ以上電流が流れないというのでなく、そのレンジグループのI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧がさらに増大すれば当該I/V変換抵抗に流れる電流も準じて増大する事になる。
【0025】
以下に従来の電流/電圧変換回路に関しての概要を記す。
電流の大きさ、又は電流に関連した電気量や電力量等の様な物理量を測定する場合、電流を電圧に変換する為にI/V変換抵抗を用いる。
又、入力インピーダンスを低くする必要が有る場合は演算増幅器を組み合わせて用いる。
【0026】
I/V変換の精度を高める為には信号対ノイズ比(以下S/N比と称す)を大きくする必要が有り、その手段として対象とする電流の大きさ(レンジ)に応じて抵抗値の異なる複数のI/V変換抵抗を、スイッチ又はリレー又は半導体スイッチ等で切り替えて測定するのが一般的であり、これをレンジ切り替えと呼ぶ。
【0027】
図38はその一例としてのレンジ数3の場合の演算増幅器を用いた基本的な電流/電圧変換回路であり、I/V変換抵抗RS1〜3を並列にして半導体スイッチSW1〜3で何れか1つのI/V変換抵抗を選択してレンジ切り替えを行なう。
あるいはSW1〜SW3を順次オンにし、I/V変換抵抗RS1〜RS3を順次並列させる方法が有り、本願発明は後者である。
この様な演算増幅器を用いたレンジ切り替えによる電流/電圧変換回路に必要な要件は以下の通りである。
【0028】
(A)低ノイズ電流
抵抗やダイオードの熱雑音、回路部品の温度ドリフト、演算増幅器のオープンループゲインの有限性に伴う偏差の様に回路が本来的に持つノイズ以外に、演算増幅器やその他の回路素子のバイアス電流、トランジスタ、FET、フォトカプラ等のスイッチ回路の漏れ電流等、回路構成に伴うノイズ要因が有り、これを可能な限り小さくする必要が有る。
【0029】
図39にそれらのノイズ電流の影響例を示す。
同図に示す様に太線で示した電流入力端子からオン状態のI/V変換抵抗RS1迄の入力電流経路に接続された演算増幅器A1、A2、スイッチ素子SW1、SW2が有るとそのバイアス電流Ib1、Ib2や漏れ電流Il1、Il2が入力電流Iに重畳してI/V変換抵抗RS1に流れ込み、誤差電圧となる。
演算増幅器A1は必須であるのでバイアス電流の小さい素子を用いる事で対策する。
その他のノイズ電流に対する対策は、入力電流経路にはできるだけノイズ電流を発生する素子を使用しない回路構成にするのが効果的である。
【0030】
(B)多レンジ
入力電流値の範囲が広く、電流/電圧変換回路のダイナミックレンジを大きくするにはS/N比を高くする為にレンジ数を大きくするのが効果的である。
【0031】
(C)高速応答
レンジ間をまたがり高速に変化する入力電流に対しては、レンジ切り替えを高速に行なう必要が有る。
【0032】
(D)低回路電源電圧
図40、図41に演算増幅器による電流/電圧変換回路の入力電流経路を示す。
図40で示す様に入力電流が流れ込む方向の場合は負電源から入力電流と同じ値の電流を供給し、図41で示す様に入力電流が流れ出す方向の場合は正電源から入力電流と同じ値の電流を供給する必要が有る。
従って、同回路で低消費電力化を計るには消費電流は入力電流以下にはできないので、回路の電源電圧を低くするのが効果的である事が判る。
【0033】
又、演算増幅器には入力電流と同じ値の電流を駆動する能力が必要であり、演算増幅器の駆動能力が不足する場合は図42に示す様にバッファアンプを設ける必要が有る。
バッファアンプの電力損失を抑えて小形化するには電源電圧を下げるのが効果的である。
即ち、電流/電圧変換回路ではできるだけ回路の電源電圧を低くするべきである。
【0034】
なお、本書の以下の説明では必要に応じてバッファアンプを設ける事を前提とし、図面や文中ではバッファアンプには言及せず演算増幅器のみを示すものとする。
さらに、本書の以下の説明図中では演算増幅器や差動増幅器の電源端子と供給電源は必要時を除いて記載しないものとする。
【0035】
(E)バイポーラ動作
ダイナミックレンジを広くする為にログアンプを使用する方法が有る。
しかし、バイポーラでないので入力電流方向が流れ出し、又は流れ込みの一方にしか対応できない。
一般的には電流測定の様にI/V変換を要する場合は入力電流方向に制限の無いバイポーラ動作を要求される場合が多い。
従って電流/電圧変換回路においてバイポーラ動作する事は重要な要件である。
【0036】
(F)小規模回路
信頼性、精度、コスト、スペース等様々な点で回路はできるだけ部品点数少なく単純で小規模である事が望ましい。
【0037】
一般的には前記の全ての要件を満たす電流/電圧変換回路を得るのは困難であり、その内何れかを満足するものとして特許文献1〜特許文献5で開示されている方法が発明されて来た。
これらは何れも部品点数を増やさずにバイポーラ動作可能である。
【0038】
図32、図33は特許文献1で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は各々の文献によるものとする。
これらは高速応答、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する。
一方、何れの場合も電流/電圧変換対象の入力電流が小さくなるにつれて入力電流バイパス用のスイッチング素子のオフ時の漏れ電流IlやI/V変換抵抗に繋がる回路素子のバイアス電流Ib等が測定精度上無視できなくなるという低ノイズ電流化に欠点が有った。
【0039】
又、上記の漏れ電流Ilを防ぐ為にはダイオードスイッチの直列段数を増やす、ツェナーダイオード電圧やバリスタ電圧を上げる等して、スイッチング素子のオフ電圧を上げる必要が有るが、その場合には最大入力電流に対して電流/電圧変換回路全体の電圧降下、即ち図32に於けるV1、図33に於けるV0が大きくなり、演算増幅器等の電源電圧を高くする必要が有った。
即ち、多レンジ化と低回路電源電圧化は相反する要件になっている。
【0040】
図34は特許文献2、図35は特許文献3で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は各文献によるものとする。
特に図35の方法は高速応答性は良い。
他方、これらの回路ではレンジ数が増えるとバッファアンプ等のバイアス電流が入力電流に加算されるので微小電流を測定する場合には測定誤差要因になるという短所と、回路規模が大きくなるという短所が有った。
即ち、多レンジ化と低ノイズ電流化、低回路電源電圧化、小規模回路化は相反する要件になっている。
【0041】
図36は特許文献4で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は該文献によるものとする。
該電流/電圧変換回路は回路素子のバイアス電流による誤差を無くしたものであるが、自動レンジ切り替えの制御に演算回路を介すので高速応答性が充分でない。
本願発明を概観すると、特許文献4で開示されている電流/電圧変換回路の基本動作を応用してその短所を改良したものと言える。
【0042】
図37は特許文献5で開示されている電流/電圧変換回路のレンジ数3の場合の代表的な実施例であり、動作の詳細は該文献によるものとする。
該電流/電圧変換回路は回路素子のバイアス電流による誤差を無くしたものであり、回路は比較的シンプルであるが、レンジ毎に絶縁電源を用意する必要が有った。
即ち多レンジ化、小規模回路化に難点が有った。
【0043】
【特許文献1】特願2000−268065
【特許文献2】特願2003−400928
【特許文献3】特願2006−147509
【特許文献4】特願2008−292867
【特許文献5】特願2009−247710
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0044】
解決しようとする課題は低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足させる自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路を得ようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0045】
本願発明の電流/電圧変換回路は、電流入力端子とグランド間に入力される入力電流を複数レンジに分けてI/V変換するものであり、レンジグループを
レンジグループ1、レンジグループ2、・・・(中略)、レンジグループN(Nは2以上の自然数)の各レンジグループに含まれるレンジ数をM1、M2、・・・(中略)、MN(MNは1以上の自然数)として、
電流入力端子とグランド端子間に入力される入力電流に対し、
レンジグループ1のレンジ(1,1)〜レンジ(1,M1)のM1個、
レンジグループ2のレンジ(2,1)〜レンジ(2,M2)のM2個、
・・・(中略)、
レンジグループNのレンジ(N,1)〜レンジ(N,MN)のMN個、
の合計M1+M2+・・・(中略)+MN個のレンジを含み、別途常時オンのレンジ0を設ける事も容易である。
各レンジ毎にI/V変換抵抗を設ける。
【0046】
以下では説明を統一的にする為にレンジ0を設けるものとし、レンジ0を設けない場合は、そのI/V変換抵抗値が無限大でそのI/V変換信号は常に0であるものとし、レンジグループ1の電流オン/オフ用ダイオードスイッチを無くし、レンジ(1,1)を常時オンにして第1の演算増幅器の常時オンの負帰還抵抗と見なすものとする。
【0047】
レンジ(1,1)〜レンジ(N、MN)の各レンジについて、入力電流の増加に対応してレンジ(1,1)〜レンジ(N,MN)の各レンジが順次段階的にオンになり、各レンジのI/V変換抵抗が順次並列に接続されて行くものとする。
【0048】
誤差増幅用として第1の演算増幅器を設け、その反転入力端子を電流入力端子に接続し、非反転入力端子をグランドに接続する。
これにより該第1の演算増幅器は以下に説明するI/V変換抵抗による負帰還により入力電流値に応じて出力電圧を変化させて常に反転入力端子がバーチャルショートによりグランド電位(0V)になる様に制御される。
レンジ0用のI/V変換抵抗を該第1の演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続して、出力電圧をレンジ0のI/V変換信号とする。
【0049】
I/V変換部を各レンジグループ毎に設け、各々1個のI/V変換用演算増幅器と電圧調整部を設ける。
各レンジグループのI/V変換抵抗については、当該レンジグループ内で最小レンジのI/V変換抵抗を該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続し、それ以外のI/V変換抵抗にはそのオン/オフができる様に所定のオン電圧を持つダイオードスイッチを組み合わせて、各々該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続する。
【0050】
これにより当該レンジグループのI/V変換用演算増幅器の出力電圧増加に対応して当該レンジグループ内のレンジが順次段階的にオンになり、自動レンジ切り替え動作をする。
この時、各I/V変換抵抗の両端子間の電位差を各レンジのI/V変換信号とする。
【0051】
各レンジグループのI/V変換用演算増幅器については、
当該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子を電流オン/オフ用ダイオードスイッチと電流制限抵抗の何れか一方又は両方を介して前記電流入力端子に接続し、
当該I/V変換用演算増幅器の非反転入力端子を当該レンジグループの前記電圧調整部を介して前記第1の演算増幅器の出力端子に接続し、
前記入力電流の増加に対応して下位レンジグループから上位レンジグループ迄順次段階的にオンになる様にする。
【0052】
但し、レンジ0が不要(レンジ0用I/V変換抵抗が無限大)の場合はレンジグループ1については電流オン/オフ用ダイオードスイッチは無くても良い。
さらに、最大レンジグループについては電流制限抵抗は0Ω(短絡)で良く、即ち、回路に入れなくても良い。
【0053】
各I/V変換抵抗の両端子間電圧が各レンジのI/V変換信号になるので、これをそのI/V変換抵抗値で除算するとそのI/V変換抵抗に流れた電流値になる。
従って、全レンジのI/V変換抵抗に流れる電流値を合計すれば入力電流値が求められる事になる。
【0054】
レンジグループ1についてはレンジ0の電流がフルスケール電流値IFS0に達した時の前記第1の演算増幅器の出力に対してレンジグループ1の電流オン/オフ用ダイオードスイッチがオンになる電圧にレンジグループ1の電圧調整部で調整されて出力される様にしておく。
レンジ0のI/V変換抵抗が無限大の場合はレンジグループ1のレンジ(1,1)は常時オンで良く、電流オン/オフ用ダイオードスイッチは不要でIFS0は0Aとして扱える。
【0055】
レンジグループ2以上のレンジグループについては、直前のレンジグループの最大レンジがフルスケール電流値に達した時の前記第1の演算増幅器の出力に対して当該レンジグループの電流オン/オフ用ダイオードスイッチがオンになる様に当該レンジグループの電圧調整部の出力が調整される様にしておく。
【0056】
各レンジグループの各々の電流制限抵抗により当該レンジグループの上限電流を設定する。
最上位レンジグループについては電流制限抵抗は無くても良く、説明を統一して扱う為に電流制限抵抗を0Ωとして扱う。
【0057】
以上記した電流/電圧変換回路は入力電流に対応した第1の演算増幅器の出力電圧に基づく高速の自動レンジ切り替えが可能であり、低ノイズ電流化、高速応答、バイポーラ動作、小規模回路化の要件を満足させる事を特徴とするものである。
【0058】
又、本願発明の電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に不感帯回路又はリミット回路を用いると、当該レンジグループに対応する前記第1の演算増幅器の出力電圧範囲を狭くでき、より多レンジ化、高速応答化、低回路電源電圧化が計れる。
【0059】
又、本願発明の電流/電圧変換回路のレンジグループの電圧調整部の不感帯回路としてダイオードスイッチの不感帯幅を演算増幅器により増幅又は減衰させて任意の不感帯幅を得る様にする事ができる。
これを少なくとも1つ以上のレンジグループの電圧調整部に用いる事により、レンジ切り替えを行なう前記第1の演算増幅器の出力電圧を任意の電圧に設定でき、より高速応答化、低回路電源電圧化が計れる。
【0060】
さらに、少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に於いて、当該レンジグループの次レンジグループの何れかのレンジのI/V変換信号で当該電圧調整部の出力を抑制させる様にし、その上位レンジがオンになったら下位である当該レンジグループの入力電流を減少させ、その分を上位レンジグループに流して、上位レンジグループに流れる電流を相対的に多くする事で、より一層I/V変換信号のS/N比を高められる。
【0061】
さらに、本願発明の電流/電圧変換回路の一部を内蔵し、その他の回路は外付け可能にする端子を設けた集積回路にする事により容易、且つコンパクトに本願発明の電流/電圧変換回路が製作可能になる。
【0062】
さらに本願発明の電流/電圧変換回路又は集積回路を用いれば、電流/電圧変換回路を要する種々の高機能の電子回路基板又は電子機器が製作可能になる。
【発明の効果】
【0063】
本願発明により低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路及び集積回路、及びそれらを用いた電子回路基板又は電子機器を実現できる効果を得る事ができる
【発明を実施するための最良の形態】
【0064】
以下に発明実施の最良形態を実施例で示す。
但し、以下で記述する実施例はあくまでも「例」であり、同等機能を実現する方法にはそれらから組み合わせの変更や応用、派生、類推される種々のバリエーションが容易に考えられるが、発明が示す原理に基づく限りはそれらは全て本願発明の範囲に含まれるものとする。
【0065】
又、I/V変換抵抗やその他の抵抗値を具体的数値で示しているが、あくまでも説明を判り易くする為のものであり、当業者であれば別の値での実施も容易であり、それらは全て本願発明の範囲に含まれるものとする。
【実施例1】
【0066】
図1は本願発明の請求項1の電流/電圧変換回路のレンジ0有り、N=2、M1=2、M2=3、即ちレンジグループ数2、レンジグループ1のレンジ数2、レンジグループ2のレンジ数3、合計レンジ数6の実施例である。
電流/電圧変換回路1は主としてレンジ0I/V変換部2、レンジグループ1I/V変換部3、レンジグループ2I/V変換部4、及び演算部6で構成される。
【0067】
説明の為に、レンジ0のI/V変換抵抗RS0を1MΩ、
レンジ(1,1)のI/V変換抵抗RS11を100KΩ、
レンジ(1,2)のI/V変換抵抗RS12を10KΩ、
レンジ(2,1)のI/V変換抵抗RS21を1KΩ、
レンジ(2,2)のI/V変換抵抗RS22を100Ω、
レンジ(2,3)のI/V変換抵抗RS23を10Ω、とする。
回路接続は請求項1に従ったものである。
【0068】
各レンジのフルスケール電流値について、
レンジ0のIFS0を1μA、
レンジ(1,1)のIFS(1、1)を10μA、
レンジ(1,2)のIFS(1、2)を100μA、
レンジ(2,1)のIFS(2、1)を1mA、
レンジ(2,2)のIFS(2、2)を10mA、
レンジ(2,3)のIFS(2、3)を100mA、
とする。
【0069】
レンジ0I/V変換部2は演算増幅器A01を第1の演算増幅器とし誤差増幅とレンジ0用のI/V変換に用いており、その反転入力端子は入力電流の大きさに無関係にバーチャルショートにより常に0Vになる様に出力V0が制御される。
これに伴い、電流入力端子電圧もバーチャルショートにより常に0Vになる。即ち入力インピーダンスがほぼ0Ωになるという事である。
【0070】
ゲイン−1の演算増幅器A02はレンジ0I/V変換信号Viv0の極性を他レンジのI/V変換信号と揃える為のものである。
RS0に流れる電流I0は
I0=Viv0/RS0 ・・・(4)
で算出できる。
【0071】
レンジグループ1I/V変換部3はI/V変換用演算増幅器A11を有し、その非反転入力端子は電圧調整部1を介して第1の演算増幅器A01の出力端子に接続される。
I/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子は電流制限抵抗R11(1KΩ)と電流オン/オフ用ダイオードスイッチDSW11を介して電流入力端子に接続される。R11とDSW11の位置は入れ替えても良い。
DSW11は例えば2個のシリコンダイオードを双方向並列接続してVF11が0.5Vでオンになるものとする。
DSW12は例えば2個のシリコンダイオードを双方向並列接続したものを2組直列にする等でその両端子間電圧が1V以上になったらオンになる様にしておく。
【0072】
ダイオードスイッチDSW11、DSW12は双方向並列の段数を増やすか、ツェナーダイオードのツェナー電圧を変える等の方法で回路条件に応じて適宜変えれば良いものである。
【0073】
I/V変換抵抗RS11(100KΩ)をI/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子と出力端子間に接続する。
I/V変換抵抗RS12(10KΩ)の一方をI/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子に接続し、もう一方の端子をダイオードスイッチDSW12を介してI/V変換用演算増幅器A11の出力端子に接続する。
【0074】
I/V変換用演算増幅器A11はその反転入力端子電圧V1nと非反転入力端子電圧V1pが常に等しくなる様にその出力電圧Vd11が制御される。
ここで電圧調整部1によりレンジ0のI/V変換抵抗RS0に流れる電流I0がIFS0(1μA)未満のV0に対してはV1pがDSW11のオン電圧0.5Vより小さく、I0がIFS0以上になったらV1pが0.5V以上になる様に電圧調整される様にしておけばDSW11はV0で自動的にオン/オフ制御される事になる。
【0075】
DSW11がオンになるとI11が流れるがこれがIFS(1,1)即ち10μA未満であればV1nとVd11の電位差が1V未満でDSW12はオフでありI12は0Aである。
入力電流が増加してV0が増加するとV1pが増加し、これに伴ってVd11が増加してDSW12の端子間電圧VF12がそのオン電圧を超えるとDSW12がオンになりI12が流れる。
入力電流が減少すると逆の動作でDSW12はオフになる。
【0076】
以上からレンジ(1,1)、レンジ(1,2)は入力電流の大きさに応じて自動レンジ切り替えが行なわれる事が判る。
なお、DSW11オフ時はI11は0AなのでI/V変換用演算増幅器A11の出力電圧もV1n、即ちV1pと等しくなる。
【0077】
レンジグループ2I/V変換部4についてもレンジグループ1I/V変換部3と同様の方針で回路を構成する。
なお、レンジグループ2ではI/V変換用演算増幅器A21には1mA〜100mAの電流駆動能力を得る為にパワーアンプが必要であるが、前述した従来回路と異なり、3レンジ分共通で1個設ければ良く、本願発明は小規模回路化に有利である事が判る。
【0078】
I12が増加してIFS(1,2)である100μAを超えるとレンジグループ2I/V変換部のダイオードスイッチDSW21がオンになり以降レンジグループ1と同様に自動レンジ切り替えが行なわれる。その動作原理はレンジグループ1と同じなので説明は割愛する。
【0079】
ここで差動増幅器DF11でVd11とV1pの電位差Viv11を求めるとDSW11のオン/オフに関わらずRS11の電流I11は次式で求める事ができる。
I11=(V1n−Vd11)/RS11
=(V1p−Vd11)/RS11
=Viv11/RS11 ・・・(5)
【0080】
同様にI12についても次式で求められる。
I12=(V1n−Vd12)/RS12
=(V1p−Vd12)/RS12
=Viv12/RS12 ・・・(6)
【0081】
同様にレンジグループ2の各レンジの電流は次式で求められる。
I21=Viv21/RS21 ・・・(7)
I22=Viv22/RS22 ・・・(8)
I23=Viv23/RS23 ・・・(9)
【0082】
電流制限抵抗R11はレンジ(1,2)のI12の電流がIFS(1,2)を超えたらそれ以上の電流が流れるのを制限する為のものである。
これの値により同じ入力電流でも、レンジ(1,2)と次のレンジ(2,1)に流れる電流の割合が変わる。
【0083】
後述する様にS/N比を大きくするには上位レンジの電流が大きい方が良く、その為に電流制限抵抗R11が有効に働く。
但し、電流制限抵抗R11が大きくなるに伴い電流IFS(1,2)を流す為のV1p、及びその信号源である演算増幅器A01の出力電圧V0が大きくなるので先述した様に高い電源電圧が必要になる、V0の変化幅が大きくなり動作速度が低下する等の不利が生ずる。
最上位レンジグループでは電流制限抵抗R21は不要であるので0Ωとしている。
【0084】
他方電流制限抵抗には以下の様な別の機能も果たす。
回路の諸条件により、レンジ切り替わり点において、
レンジ(2,1)オン→I21増大、I12低下→演算増幅器A01のV0低下→V2p低下→レンジグループ2オフ→I12増大→レンジ(2,1)オン、のサイクルでレンジ切り替えのハンチングが発生する場合が有る。
【0085】
これは入力電流値が一定の状態に於いてレンジ切り替えが行なわれると、等価的な演算増幅器A01の負帰還抵抗が急激に増減する事によるもので、電流制限抵抗によりその増減幅が抑えられ、レンジ切り替えのハンチングを防止できる。
その様な場合は最上位レンジグループの電流制限抵抗も必要になる。
【0086】
この様なレンジ切り替え時のハンチングはレンジグループが増えれば各レンジグループのレンジ切り替わり点で発生し得る。
従って、各レンジグループのI/V変換部の電流制限抵抗は当該レンジグループの最大レンジに流れる電流がそのフルスケール電流値を大きく超えず、且つレンジ切り替えに伴うハンチングが発生しない程度に大きく、演算増幅器A01の出力電圧V0を不必要に大きくしない程度に小さくなる様な適切な値に設定すれば良い。
【0087】
図1の回路の電圧調整部1、電圧調整部2の最も簡単な構成例を図6に示す。
これは入力電圧V0を抵抗R1とR2と分圧して出力するものであり、前記の自動レンジ切り替え動作をさせるには電圧調整部1と電圧調整部2の分圧比を変える、換言すればそれぞれのゲインを変えるものである。
【0088】
一例として電圧調整部1、電圧調整部2のゲインを各々0.5、0.25とした場合の入力電流IとV0、V1p、V2pの関係を図7に示す。
これによると、V0がVFonの2倍(1.0V)になるとV1pがVFon(0.5V)に達してレンジグループ1がオンになる。
さらに、V0がVFonの4倍(2.0V)になるとV2pがVFon(0.5V)に達してレンジグループ2がオンになる。
レンジグループ数が増える毎にそのレンジゲインの電圧調整部のゲインを0.125、0.0625・・・の様に抵抗分圧比を順次小さくすれば良い。
【0089】
上記のレンジグループの自動オン/オフ制御の他に、電圧調整部に必要な要件は、電流入力端子電圧に対する全てのレンジグループのI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子の相対的な電圧大小関係が等しいという事である。
【0090】
一例として図1に於いて、電流オン/オフ用ダイオードスイッチDSW11、DSW21の左側(電流入力端子側)の電位(通常は0V)に対してDSW11の右側端子電位が高く、DSW21の右側端子電位が低い場合が有ると、DSW11の右側端子からDSW21の右側端子に回り込み電流が生ずる。
これは不要な電流でありノイズ電流となる。各レンジグループにバイアス電流やリーク電流が有るとこれも回り込んでレンジグループが互いに影響を及ぼし合う事になる。
【0091】
これを防止するには、電流入力端子の電位に対する各電流オン/オフ用ダイオードスイッチの右側電位の相対的な大小関係が同じであれば良く、その為にはI/V変換用演算増幅器の反転入力端子と同電位の非反転入力端子の電位も同じ相対的電位関係になる必要が有る。
本願発明の電圧調整部は全てこの要件を満足する様に構成されるものである。
【0092】
図1の回路に於いて差動増幅器DF12とDF22、DF23の反転入力端子のバイアス電流はノイズ電流に成り得るものである。
しかし、上述した様にダイオードスイッチDSW11、DSW21の右側端子電位が電流入力端子に対する相対的大小関係が同じである事により異レンジグループに流れ出す事は防止される。
従って、当該レンジグループ内でバイアス電流が精度に影響しない様にすれば良い。
即ち電流レンジの大きさと差動増幅器のバイアス電流を比較して、無視できない場合は当該レンジグループのレンジ数を1とするか、少ないレンジ数にすれば良い。
【0093】
以上の説明から本願発明によれば、
入力電流経路にバイアス電流や漏れ電流が入る要因が少なく、低ノイズ電流化が計れる。
レンジグループ内の複数レンジ化により多レンジ化が計れる。
演算回路によらずV0の大きさにより直接レンジ切り替えするので高速応答可能。
回路から明らかな様に入力電流方向により制限される回路箇所は無く、バイポーラ動作可能である。
1レンジ当たりの回路が単純、且つ部品点数の多いバッファアンプを要するレンジは1つのレンジグループにまとめる事ができるので小規模回路化が計れる。
等、多くの利点が同時に得られ、これは従来方法には無い大きな特徴である。
【0094】
ここでレンジグループ1のI/V変換部について見ると、I/V変換用演算増幅器A11の出力電圧はそのI/V変換抵抗RS11とRS12に流れる電流I11とI12、即ちその合計I1を駆動できれば良い。
具体的にレンジ(1,2)にI12が流れた場合のI/V変換用演算増幅器A11の出力電圧Vd11は
Vd11=V1n+RS12・I12+VF12 ・・・(10)
である。
【0095】
同様にレンジ(2,3)にI23が流れた場合のI/V変換用演算増幅器A21の出力電圧Vd21は
Vd21=V2n+RS23・I23+VF23 ・・・(11)
である。
【0096】
一方I/V変換用演算増幅器A11の反転入力端子の電圧V1nは電流オン/オフ用ダイオードスイッチDSW11の両端子間電圧VF11と電流制限抵抗R11と入力電流I1による電圧降下の合計値であれば良い。
同時にV1nは非反転入力端子V1pと等しく、その信号源は第1の演算増幅器A01である。
【0097】
即ち、次式が成り立つ。
V1n=V1p
=VF11+R11・I1 ・・・(12)
レンジグループ2のI/V変換部についても同様であり、次式が成り立つ。
V2n=V2p
=VF21+R21・I2 ・・・(13)
【0098】
これらの式を比較すると第1の演算増幅器A01の所要出力電圧幅と各レンジグループのレンジ数とは無関係であり、レンジグループ1のI/V変換用演算増幅器A11の所要出力電圧幅と、レンジグループ2のI/V変換用演算増幅器A21のと所要出力電圧幅とは無関係である事が判る。
【0099】
換言すれば本願発明の電流/電圧変換回路では、レンジ数が増えてもレンジグループを増やせば第1の演算増幅器の出力電圧幅や各レンジグループのI/V変換用演算増幅器の出力電圧範囲を大きく広げる必要は無い。
即ち、本願発明の電流/電圧変換回路に於いて、低い回路電源電圧でレンジ数を大きくする事ができるのは大きな特徴であり、利点である。
【0100】
なお、図1の回路ではレンジ切り替えの一般的方法に合わせて各I/V変換抵抗RS0〜RS23を1MΩ〜10Ωまで順次10倍宛増やしているが、レンジ切り替え動作の観点からは、原理的に各I/V変換抵抗は任意の大きさで良く、レンジ順番に従って抵抗値を漸減させる必要も無い。
即ち本願発明のレンジ切り替えの動作原理は各I/V変換抵抗値とは無関係である事は特記すべき点である。
【0101】
以上説明したレンジ0、レンジグループ1I/V変換部、レンジグループ2I/V変換部で各レンジ毎のI/V変換信号を得る事ができ、本願発明の目的を達せられる。
得られたI/V変換信号は演算部6で任意に処理すれば良く、どう利用するかは本回路を適用する装置の目的により多様であるが、以下に応用例を示す。
【0102】
図1の演算部6では各レンジ毎に当該レンジとそれより下位レンジのI/V変換信号をそのI/V変換比を鑑みて反転増幅器による加算回路で合算している。
これは入力電流に対して当該レンジに換算したI/V変換信号と言えるものである。
なお、要求精度に応じて合算する信号は少なくしても良い。
例えば、要求精度が1%であればレンジ(3,3)換算I/V変換信号Viv33はレンジ(2,1)からレンジ(2,3)の3レンジ分を合算すれば足りる。
【0103】
各レンジ毎に換算された信号の内、I/V変換信号として有効なのはオンになっているレンジの内で最大レンジの信号及び、オフ状態にあるそれより大きいレンジの信号であるが、S/N比を大きくする為にはオンになっているレンジの内で最大レンジの信号を有効とすべきである。
【0104】
その一方法としてウィンドコンパレータとデコーダを用いて各レンジ換算I/V変換信号から有効レンジ指定信号を生成する方法が有る。
説明を単純化する為にレンジ0、レンジ11、レンジ21だけの電流/電圧変換回路の場合の有効レンジ指定信号作成回路例を図8に示す。
本方法はソフトウェアを介さずハードウェアで処理するので高速性が要求される場合に有効である。
【0105】
別の処理方法として図9の様に各レンジ毎のI/V変換信号をマルチプレクサで選択しながらA/D変換しマイクロコンピュータとソフトウェアを用いて有効レンジを判定する方法が有る。
本方法は処理速度が比較的遅くても良い場合に有効である。
【0106】
さらに別の処理方法として図10の様に各レンジ毎のI/V変換信号を直接A/D変換しマイクロコンピュータとソフトウェアを用いて有効レンジを判定する方法が有る。
本方法は処理速度が比較的速いがA/D変換器を複数要し、コストが高くなる。
【0107】
なお、高速性が必要な場合は、図9、図10のマイクロコンピュータをPLDやFPGAに置き換える方法も有る。
【実施例2】
【0108】
図2は図1のレンジグループ2I/V変換部4を変更した実施例であり、その他の部分は全く図1と同一とする。
図1からの変更点はダイオードスイッチDSW23右側端子をダイオードスイッチDSW22の左側端子に接続してDSW22の不感帯幅を共用した点である。
これによりDSW23の不感帯幅は自身の不感帯幅とDSW22の不感帯幅の合計値になる。
【0109】
これにより各ダイオードスイッチのオン電圧設定がし易くなる、同一のダイオードを用いる等で部品の統一化が計れる等の利点が得られる。
同一レンジグループ内のレンジ数が増えても同様に直前レンジのダイオードスイッチの不感帯を共用する様に接続可能である。
回路の動作は実施例1と全く同じであるので説明は割愛する。
【実施例3】
【0110】
図3は図1のレンジグループ2I/V変換部4を変更した実施例であり、その他の部分は全く図1と同様とする。
図1からの変更点は以下である。
ダイオードスイッチDSW22とI/V変換抵抗RS22の位置を入れ替え、I/V変換信号Viv22の極性がViv21と同じになる様にRS22の両端子を差動増幅器に接続した。
ダイオードスイッチDSW23とI/V変換抵抗RS23の位置を入れ替え、I/V変換信号Viv23の極性がViv21と同じになる様にRS22の両端子を差動増幅器に接続した。
レンジグループ1I/V変換部3についても同様な変更が可能である。
【0111】
変更による大きな利点は特に無いが、実際の回路を製作する上では部品配置、配線容易性で利点が有る場合が有り得る。
但し、差動増幅器を使用する場合は、その同相入力信号電圧がダイオードスイッチの両端子間電圧分大きくなる点は不利である。
回路の動作は実施例1と全く同じなので説明は割愛する。
なお、図3の位置関係でも図2の様にDSW22の不感帯を共用する接続にする事は可能である。
【実施例4】
【0112】
図4は本願発明の請求項1の電流/電圧変換回路のレンジ0無し、N=3、M1=1、M2=1、M3=1、即ちレンジグループ数3、レンジグループ1のレンジ数1、レンジグループ2のレンジ数1、レンジグループ3のレンジ数1、合計レンジ数3の場合の実施例である。
【0113】
主な図1の実施例との相違点は以下である。
レンジ0のRS0が無い。即ち、演算増幅器A01をI/V変換機能を持たない誤差増幅器としている。
レンジグループ1I/V変換部3の電流オン/オフ用ダイオードスイッチを設けない。
これによりレンジ(1,1)を常時オンにし、電流入力端子をオープンにした時に演算増幅器A01の負帰還抵抗が無くなって不安定状態になるのを防ぐ事ができる。
【0114】
レンジグループ1I/V変換部3の電圧調整部1のV0に対するゲインは1で良い。即ちV0を直接I/V変換用演算増幅器A11の非反転入力端子に接続しても良い。
あるいは後述のリミット回路を設けるとさらに良い。
【0115】
レンジグループ2I/V変換部4のダイオードスイッチDSW21と電流制限抵抗R21の位置を入れ替えている。
レンジグループ3I/V変換部5のダイオードスイッチDSW31と電流制限抵抗R31の位置を入れ替えている。
これによりダイオードスイッチと電流制限抵抗の相対的位置関係は回路動作に関わりが無い事を示している。
回路動作は図1の実施例と同様なので割愛する。
【0116】
本実施例は図1の基本回路に対する機能同等で変形可能である事を示すが、レンジグループ毎のI/V変換部を集積回路化する場合に各レンジグループを共通化しや易いという利点が有る。
【実施例5】
【0117】
図5は本願発明の請求項1の電流/電圧変換回路のレンジ0有り、N=2、M1=1、M2=1、即ちレンジグループ数2、レンジグループ1のレンジ数1、レンジグループ2のレンジ数1、合計レンジ数3にさらにレンジ4追加をした場合の実施例である。
【0118】
図5において、RS4(1K)はレンジ(2,1)の次のレンジのI/V変換抵抗とする。
ダイオードスイッチDSW41を介して電流入力端子とI/V変換抵抗RS4を接続し、RS4の他方の端子をグランドに接続する。
【0119】
レンジグループ2I/V変換部4のI/V変換用演算増幅器A21が飽和せず電流I21を駆動している状態では誤差増幅器としてのレンジ0の演算増幅器A01の反転入力端子電圧eはバーチャルショートにより0Vになる様に制御される。
【0120】
入力電流I21がさらに大きくなり、演算増幅器A21の駆動能力を超えるとバーチャルショート状態が壊れて演算増幅器A01の反転入力端子電圧eが上昇する。
これがダイオードスイッチDSW41のオン電圧を超えるとI/V変換抵抗RS4に電流が流れ、I/V変換抵抗RS4のDSW41側端子に電圧が発生する。
これをインピーダンス変換用の演算増幅器A41で取り出せば1mA/VのI/V変換信号Viv4として使用できる。
【0121】
一般的に演算増幅器A01の入力保護回路としてその反転入力端子とグランド間にダイオードスイッチを入れるが、レンジ4I/V変換回路はその保護回路を兼ねる事ができる利点が有る。
【実施例6】
【0122】
先に説明した図6の抵抗分圧の方法の場合はレンジグループ数が1増える毎にそのレンジグループがオンになるV0は4V、8V、16Vの様に倍々で増大するので電源電圧が±15Vの場合で最大レンジグループ数は4程度、±5Vの場合は3程度であり、より多いレンジグループが必要な場合には対応できない。
さらに、後段のレンジでは第1の演算増幅器の出力V0をゲイン0.5、0.25、0.125・・・の様に減衰させて動作させるのでゲインを下げた分V0の応答も遅くなる。
【0123】
これは高速応答を要求される場合には不利な点である。
図11は本願発明の請求項2の電流/電圧変換回路の電圧調整部の実施例であり、上記の問題に対応したものである。
【0124】
図11は電圧調整部をEdbNの不感帯を有する不感帯回路で構成する事を示している。
その実回路例として不感帯をダイオードスイッチDSW1とプルダウン抵抗R1で構成したものを図12に示す。ダイオードスイッチによる不感帯回路の詳細については既に記した通りである。
【0125】
これを図1や図4の電流/電圧変換回路の電圧調整部に適用する場合を、電圧調整部のみを取り出して図13に示す。
図13の場合は各レンジグループの電流オン/オフ用ダイオードスイッチのオン電圧に対応させて電圧調整部のダイオードスイッチDSW1の不感帯設定電圧Edb1、Edb2、Edb3を設定する。
【0126】
図14は前段の不感帯回路出力を次段の不感帯回路入力に接続する事により不感帯設定電圧Edbを共通化できる様にしたものである。
但し何れの場合も、図4の回路においてはレンジグループ1の電圧調整部には不感帯回路は不要である。
【0127】
本回路による入力電流と各部の電圧との関係を図15に示す。
図中Edb1はレンジグループ1電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb1はEdb1に対応してV1pが出力され始める時の入力電流値を示す。
【0128】
同様にEdb2はレンジグループ2電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb2はEdb2に対応してV2pが出力され始める時の入力電流値を示す。
【0129】
本回路によると第1の演算増幅器A01の出力V0を1以下のゲインで減衰させる必要が無いので図6の抵抗分圧の方法に比較してV0の電圧範囲は小さくなり、同じ電源電圧であればレンジグループ数を多くする事ができ、応答速度も高くなる。
【0130】
不感帯回路はレンジグループ毎に適用可能であるので請求項2では少なくとも1つのレンジグループに適用するとしているが、適用レンジグループ数が多い程効果が大きく、全レンジグループに適用するのが最も効果が高い。
因に、1レンジグループ当たりのV0の変化幅を1Vとした場合、電源電圧が±15Vの場合で最大レンジグループ数は15程度、±5Vでは5程度であり、容易に多レンジ化が可能になる。
換言すれば低い電源電圧でも多レンジ化が可能になる。
【0131】
以上の説明から、本願発明によれば、実施例1に記載した低ノイズ電流化、多レンジ化、高速応答、バイポーラ動作、小規模回路化の利点に加えて、低回路電源電圧化が計れる利点が得られ、これは従来方法には無い大きな特徴である。
【実施例7】
【0132】
図16は本願発明の請求項2の電流/電圧変換回路の電圧調整部の別の実施例であり、EdbNの不感帯設定電圧を有する不感帯回路と、ElmNのリミット電圧を有するリミット回路で構成する事を示している。
その実回路例として図17に、不感帯回路をダイオードスイッチDSW1とプルダウン抵抗R1で構成し、ソフトリミッタを抵抗R3とダイオードスイッチDSW2、不感帯回路とリミット回路を分離する為の抵抗R2で構成したものを示す。
ダイオードスイッチによるリミット回路の詳細については既に記した通りである。
【0133】
これを図1や図4の電流/電圧変換回路の電圧調整部に適用する場合の一例を、電圧調整部のみを取り出して図18に示す。
本例では不感帯回路の信号電圧V0X1,V0X2を次レンジグループに渡すのでレンジグループ1の不感帯幅はEdb、レンジグループ2の不感帯幅は2Edb、レンジグループ3の不感帯幅は3Edbになり、回路がシンプルになる利点が有る。
【0134】
本回路による入力電流と各部の電圧との関係を図19に示す。
図中Edb1はレンジグループ1電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb1はEdb1に対応してV1pが出力され始める時の入力電流値を示す。
【0135】
同様にEdb2はレンジグループ2電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧であり、Idb2はEdb2に対応してV2pが出力され始める時の入力電流値を示す。
又、図中Elm1はレンジグループ1電圧調整部のリミット回路のリミット電圧であり、Elm2はレンジグループ2電圧調整部のリミット回路のリミット電圧である。
【0136】
図19から判る様に一旦オンになったレンジグループのI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧V1p、V2pはリミット電圧で制限されるので、当該レンジグループに於いて最大レンジのフルスケール以上の電流入力が抑えられて次レンジグループへの移行がされ易くなる。
換言すると、入力電流が各レンジに分流する中で最大レンジの電流の割合がリミット回路が無い場合に比して高まるのでその分S/N比が高くなる。
これがリミット回路を用いる利点であり、本回路の特徴である。
【実施例8】
【0137】
本願発明の電流/電圧変換回路に於ける入力電流の変化に対するレンジ切り替えの応答特性に関して述べる。
図20に第1の演算増幅器の出力V0と電圧調整部の不感帯幅の関係を示す。
図中実線で示すV0Xはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbXの場合の第1の演算増幅器の出力である。
【0138】
図中実線で示すV1pXはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbXの場合のレンジグループ1のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧であり、IdbXはEdbXに対応してV1pXが出力され始める時の入力電流値である。
【0139】
図中破線で示すV0Yはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbYの場合の第1の演算増幅器の出力である。
図中破線で示すV1pYはレンジグループ1の電圧調整部の不感帯回路の不感帯設定電圧がEdbYの場合のレンジグループ1のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子電圧であり、IdbYはEdbYに対応してV1pYが出力され始める時の入力電流値である。
なお、EdbX<EdbYとしている。
【0140】
図20で判る様に入力電流I1に対して、EdbXの場合にはV0XはV1Xであり、EdbYの場合にはV0YはV1Yであり、V1YはV1Xより大きい。
これは、入力電流が0からI1に変化すると第1の演算増幅器の出力V0は0からV1X又はV1Yに変化する事を示す。
即ち、入力電流が0からI1に変化する時間をΔt[Sec]とすると、
V1X/Δt<V1Y/Δt ・・・(14)
であり、不感帯設定電圧が小さい程第1の演算増幅器の出力V0の立ち上がりが小さくて済む事を示す。
これは演算増幅器の周波数特性、スルーレイトの特性の点で応答性能が高くなり有利である事が判る。
【0141】
即ち、請求項2の不感帯回路を用いる電流/電圧変換回路に於いて、入力電流変化に対する応答性能を高めるには不感帯設定電圧を必要最小限に低くするのが有利である。
【0142】
不感帯回路として図53の公知の演算増幅器による不感帯回路も使用可能であり、不感帯設定電圧は任意に設定可能である。
しかし不感帯設定電圧の生成回路を含め、部品点数が多いので実回路には適用し難い。
前記のダイオードやツェナーダイオードによるダイオードスイッチによる不感帯回路は部品点数が少ない利点が大きいが設定電圧はダイオードで0.5〜0.6V、ツェナーダイオードでは一般的に入手できるのはツェナー電圧が1.8V、2.0V、2.2V・・・と段階的であり、自由に設定する事ができない。
【0143】
特に本願発明の電流/電圧変換回路では不感帯電圧の最適値が1.0V程度となる場合が多い。
これを解決する本願発明の請求項3の基本回路を図21に示す。
同回路はダイオードスイッチDSW1とプルダウン抵抗R1の不感帯設定電圧Edbから任意の不感帯電圧を生成するものである。
【0144】
具体的には、前記不感帯回路の前後にG1、G2の増幅器を設け、G1・G2=1になる様にゲインを設定しておくものとする。
VINにG1を掛けると不感帯回路により後段の増幅器入力VXは
VX=db(VIN・G1,Edb)
になる。
【0145】
VXを後段増幅器に入力するとその出力VOUTは
VOUT=db(VIN・G1,Edb)・G2
=db(VIN・G1・G2,Edb・G2)
=db(VIN,Edb・G2)
になる。
【0146】
これは図21の不感帯回路によるとEdbを元にしてG2倍の任意の不感帯電圧を生成できる事を示す。
具体的回路例として図22に2個の演算増幅器A1、A1とダイオードスイッチDSW1による不感帯設定部による不感帯回路を示す。
又、図23によると図22にリミット電圧Elmのリミット回路を容易に付加する事ができる。
【0147】
又、ゲインG1が1以下の場合は演算増幅器でなく抵抗分圧でも実現でき、入出力の極性を合わせる為に後段のゲインG2を非反転増幅器にした場合の不感帯回路を図24に示す。
あるいは図25の様に演算増幅器1個の反転出力型でリミット電圧Elmのリミッタ付きの不感帯回路を構成する事もできる。
【0148】
さらに又、ゲインG1>1>G2とすれば高い基準不感帯から低い不感帯を生成する事も可能である。
図26は演算増幅器でG1=5とし、R1とR2による分圧でG2=0.2とし、ツェナー電圧3.0Vのツェナーダイオードから不感帯幅0.6Vを生成する回路例である。
【0149】
請求項3は以上の構成による不感帯回路を用いて請求項1又は請求項2における電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に動作上最適な不感帯を持つ様にした電流/電圧変換回路である。
これによると前述した様に、入力電流変化に対する応答性能が高まるという特徴を得られる。
不感帯を持たせる全てのレンジグループの電圧調整部に該不感帯回路を適用すれば全レンジグループに最適な不感帯を設定でき、一層応答性能を高める事ができる。
【0150】
なお、先の説明ではG1・G2=1とし全体のゲインを1とする様に説明したが、必ずしも全体ゲインを1とする必要は無く、1以外になる様にG1、G2を設定しても良い。
例えば全体ゲインを1以上にすればその分第1の演算増幅器の出力V0は小さくて済み、応答は速くなる。
但し、回路全体として見ると発振し易くなるので、無闇にゲインを大きくする事はできないので適用には注意が必要である。
【実施例9】
【0151】
図27は本願発明の請求項4の実施例である。
請求項1〜請求項3による電流/電圧変換回路に於いて、何れかの電圧調整部の入力部に演算増幅器を用いた場合、これを加算回路として応用するものである。
【0152】
図27の例ではレンジグループ2のレンジ(2,1)がオンになるとそのI/V変換信号Viv21でレンジグループ1I/V変換部の電圧調整部1の出力電圧V1pを抑制する。
これにより、レンジ(2,1)がオンになるとレンジグループ1の電圧調整部1の出力V1pが低下し、レンジグループ1のI/V変換回路の電流が減り、その分の電流がレンジグループ2に流れる。
【0153】
レンジグループ2についてもレンジ(3,1)のI/V変換信号Viv31で電圧調整部2の出力V2pを抑制する。
これにより、レンジ(3,1)がオンになるとレンジグループ2の電圧調整部2の出力V2pが低下し、レンジグループ2のI/V変換回路の電流が減り、その分の電流がレンジグループ3に流れる。
なお、次レンジのI/V変換信号で減算した結果V0と逆極性のV1p、V2pが出力されない様に、適切にゲインを下げて減算する必要ある事に注意する必要が有る。
【0154】
これにより後段のレンジの電流が大きくなるのでS/N比が良くなる
即ち、請求項4の発明によりS/N比が良い電流/電圧変換回路を得られる。
【実施例10】
【0155】
図28は本願発明の請求項5の実施例である。
本回路例の集積回路装置では1レンジグループに必要な演算増幅器と差動増幅器を内蔵し、I/V変換抵抗や電流制限抵抗、I/V変換信号加算回路の抵抗類を集積回路装置外部に外付け可能としたものである。
本願発明によると電流/電圧変換回路を小形、容易に製作可能になる。
【実施例11】
【0156】
図29は本願発明の請求項6の実施例であり、図28の集積回路装置の適用例としてレンジ数3の電流/電圧変換回路を図29に示す。
前述した請求項1〜請求項5による電流/電圧変換回路又は集積回路を用いる事により電流/電圧変換を必要とする従来実現できなかった性能を持つ種々の電子回路基板や電子機器が製作可能になる。
【0157】
具体例として回路電流を測定する電流計、クーロンメータ、電圧発生器、電流発生器、バッテリー充放電装置、メッキ装置、IC試験装置や、電流信号を出力とするセンサを用いるフォトダイオードインターフェイス、照度計、光度計、水素炎イオン検出器、電気伝導度測定装置等が有る。
【0158】
以下に本願発明の請求項に掲げていない関連する技術とその効果を付記する。
(a)任意レンジグループのI/V変換部のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子を電圧調整部に無関係にグランドレベルにするスイッチを設ける事により、強制的にI/V変換動作をイネーブル−ディセーブル制御可能とする事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【0159】
これにより、レンジグループをI/V変換動作及びレンジ切り替え動作から除外する事が可能になる。
図30にレンジグループ1にイネーブル−ディセーブル制御用スイッチを設けた回路例を示す。
本例ではスイッチSWをオープンにするとV1pが0VになるのでDSW1が常にオフになって、レンジグループ1のI/V変換動作はディセーブルになる。
リーク電流によるノイズ電流を発生し易いスイッチ又はアナログスイッチを電流経路に入れずに済むのは大きな利点である。
【0160】
(b)任意レンジグループのI/V変換部のI/V変換用演算増幅器の非反転入力端子と差動増幅器の入力端子に位相補正回路を入れて、入力電流に対する差動増幅器の2つの入力信号の位相を合わせてそれらの差分であるI/V変換信号の誤差を少なくする事を特徴とした電流/電圧変換回路。
【0161】
図31にレンジグループ1の差動増幅器DF11に位相補償回路を入れた実施例を示す。
図31において入力電流(図示無し)の変化に対する電圧調整部1の出力信号V1pに応答してI/V変換用演算増幅器A1のVd11が変化する。
その為、差動増幅器の反転入力端子の信号Vd11と電圧調整部1の出力信号V1pでは通常V1pの方が応答が速い。
【0162】
位相補償回路が無い場合はその位相差に伴いその差電圧Viv11には誤差が入る。
位相補償回路としてRX2、CX2による適切な遅延を入れて応答時間を揃える事によりI/V変換信号の精度を高める事が可能になる。
【0163】
(c)(b)と同様に各レンジのI/V変換信号の位相補償回路を入れて(図示無し)、各レンジ毎のI/V変換信号応答時間を揃えれば、それらを加算して求める入力電流値の精度を高める事が可能になる。
【0164】
(d)前記第1の演算増幅器、各レンジグループのI/V変換用演算増幅器の各々について、個別に必要最小限の電源電圧を用いる事により低消費電力化を計る事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【0165】
本願発明の特徴はレンジ数が多くても複数のレンジグループに分けて各々独立に演算増幅器及び誤差増幅器を動作させる事ができる。
これに伴い、各部で必要最小限の電源電圧を用いる事が可能であり、消費電力を削減できる。
特にI/V変換対象電流が大きい回路の電源電圧を下げるとその効果が大きい。
【産業上の利用可能性】
【0166】
本願発明の電流/電圧変換回路によると、低ノイズ電流、多レンジ、高速応答、低回路電源電圧、バイポーラ動作、小規模回路の要件を満足する自動レンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路及び集積回路、及びそれらを用いた高性能の電子回路基板又は電子機器を得る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0167】
【図1】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図2】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図3】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図4】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図5】本願発明の請求項1に関わる電流/電圧変換回路の実施例である。
【図6】抵抗分圧による電圧調整部の回路例である。
【図7】抵抗分圧による電圧調整部による入力電流と各部の電圧との関係図である。
【図8】有効レンジ指定信号作成回路例である。
【図9】マルチプレクサとA/D変換器とマイクロコンピュータシステムによる処理例である。
【図10】レンジ毎のA/D変換器とマイクロコンピュータシステムによる処理例である。
【図11】不感帯回路による電圧調整部の一例である。
【図12】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の一例である。
【図13】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の並列接続例である。
【図14】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の直列接続例である。
【図15】不感帯回路による電圧調整部による入力電流と各部の電圧との関係図である。
【図16】不感帯回路とリミット回路による電圧調整部の回路例である。
【図17】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路による電圧調整部の回路例である。
【図18】ダイオードスイッチを使用した不感帯回路とリミット回路による電圧調整部の直列接続例である。
【図19】不感帯回路とリミット回路による電圧調整部による入力電流と各部の電圧との関係図である。
【図20】第1の演算増幅器の出力V0と電圧調整部の不感帯幅の関係図である。
【図21】不感帯幅を任意に作成可能な不感帯回路である。
【図22】演算増幅器2個とダイオードスイッチによる不感帯回路の回路例である。
【図23】演算増幅器2個とダイオードスイッチによるリミッタ付き不感帯回路の回路例である。
【図24】演算増幅器1個とダイオードスイッチによる非反転出力型不感帯回路の回路例である。
【図25】演算増幅器1個とダイオードスイッチによるリミッタ付き反転出力型不感帯回路の回路例である。
【図26】演算増幅器1個とツェナーダイオードによる非反転出力型不感帯回路の回路例である。
【図27】次レンジグループのI/V変換信号で電圧調整部の出力を抑制する回路例である。
【図28】集積回路の回路例である。
【図29】集積回路の応用例である。
【図30】レンジグループのイネーブル−ディセーブル制御例である。
【図31】差動増幅器の位相補正回路追加例である。
【図32】特許文献1で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図33】特許文献1で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図34】特許文献2で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図35】特許文献3で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図36】特許文献4で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図37】特許文献5で開示済みの電流/電圧変換回路の実施例である。
【図38】公知のレンジ切り替え可能な電流/電圧変換回路である。
【図39】ノイズ電流の影響例である。
【図40】電流が流れ込む場合の演算増幅器による電流/電圧変換回路の電流経路である。
【図41】電流が流れ出す場合の演算増幅器による電流/電圧変換回路の電流経路である。
【図42】演算増幅器にバッファアンプを付加した電流/電圧変換回路である。
【図43】I/V変換信号用差動増幅器の位相補正回路例である。
【図44】一般的ダイオードの電圧−電流特性の概略図である。
【図45】トランジスタ、FETのダイオード接続例である。
【図46】双方向並列接続したダイオードスイッチの電圧−電流特性例である。
【図47】双方向直列接続したツェナーダイオードによるダイオードスイッチである。
【図48】ダイオードスイッチの表記方法である。
【図49】多段接続したダイオードスイッチである。
【図50】不感帯回路の入出力特性図である。
【図51】ダイオードによる不感帯回路例である。
【図52】ツェナーダイオードによる不感帯回路例である。
【図53】公知の演算増幅器を用いた不感帯回路例である。
【図54】リミット回路の入出力特性図である。
【図55】公知の演算増幅器を用いたリミット回路例である。
【図56】ハードリミット回路とソフトリミット回路の入出力特性図である。
【図57】ダイオード又はツェナーダイオードによるハードリミット回路例である。
【図58】ダイオード又はツェナーダイオードによるソフトリミット回路例である。
【図59】ダイオード又はツェナーダイオードと演算増幅器によるハードリミット回路例である。
【図60】ダイオード又はツェナーダイオードと演算増幅器によるソフトリミット回路例である。
【図61】一般的な差動増幅回路である。
【図62】本書の説明で使用する差動増幅回路の図である。
【符号の説明】
【0168】
1 電流/電圧変換回路
2 レンジ0I/V変換部
3 レンジグループ1I/V変換部
4 レンジグループ2I/V変換部
5 レンジグループ3I/V変換部
6 演算部
8 集積回路
9 装置
10 レンジ4I/V変換部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンジグループ1、レンジグループ2、・・・(中略)、レンジグループN(Nは2以上の自然数)の各レンジグループに含まれるレンジ数をM1、M2、・・・(中略)、MN(MNは1以上の自然数)として、
電流入力端子とグランド端子間に入力される入力電流に対し、
レンジグループ1のレンジ(1,1)〜レンジ(1,M1)のM1個、
レンジグループ2のレンジ(2,1)〜レンジ(2,M2)のM2個、
・・・(中略)、
レンジグループNのレンジ(N,1)〜レンジ(N,MN)のMN個、
の合計M1+M2+・・・(中略)+MN個のレンジを含み、
各レンジ毎にI/V変換抵抗を有し、
前記入力電流の増加に対応してレンジ(1,1)〜レンジ(N,M)の各レンジが順次段階的にオンになる様にした電流/電圧変換回路において、
第1の演算増幅器を設け、その非反転入力端子をグランド電位に接続し、その反転入力端子を前記電流入力端子に接続し、
該第1の演算増幅器の反転入力端子と出力端子間にI/V変換抵抗を接続してその出力電圧を該I/V変換抵抗に流れる電流のI/V変換信号とする事も可能であり、
各レンジグループ毎にI/V変換用演算増幅器と電圧調整部を有し、
各レンジグループのI/V変換抵抗については、
当該レンジグループ内で最小レンジのI/V変換抵抗を該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続し、
それ以外のI/V変換抵抗にはそのオン/オフスイッチになる様に所定のオン電圧を持つダイオードスイッチを組み合わせて、各々該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続し、
該I/V変換用演算増幅器の出力電圧増加に対応して当該レンジグループ内のレンジが順次段階的にオンになる様にし、
各I/V変換抵抗の両端子間の電位差を各レンジのI/V変換信号とし、
各レンジグループのI/V変換用演算増幅器については、
当該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子を電流オン/オフ用ダイオードスイッチと電流制限抵抗の何れか一方又は両方を介して前記電流入力端子に接続し、
当該I/V変換用演算増幅器の非反転入力端子を当該レンジグループの前記電圧調整部を介して前記第1の演算増幅器の出力端子に接続し、
前記入力電流の増加に対応して下位レンジグループから上位レンジグループ迄順次段階的にオンになる様にして、
自動レンジ切り替えを行なう事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項2】
請求項1の電流/電圧変換回路に於いて、少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に、
不感帯回路又はリミット回路の何れか一方又は両方を有する事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に於いて、
ダイオードスイッチの不感帯幅を演算増幅器により増幅又は減衰させて任意の不感帯幅を得られる様にした不感帯回路を有する事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項4】
請求項1又は請求項2又は請求項3の電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に於いて、
該レンジグループの次レンジグループの何れかのレンジのI/V変換信号で該電圧調整部の出力を抑制させる様にした事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項5】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4の電流/電圧変換回路の何れかの部分を内蔵し、
その他の部分は外付け可能とする端子を有する事を特徴とする集積回路装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の電流/電圧変換回路又は集積回路装置を含む事を特徴とする電子回路基板又は電子機器。
【請求項1】
レンジグループ1、レンジグループ2、・・・(中略)、レンジグループN(Nは2以上の自然数)の各レンジグループに含まれるレンジ数をM1、M2、・・・(中略)、MN(MNは1以上の自然数)として、
電流入力端子とグランド端子間に入力される入力電流に対し、
レンジグループ1のレンジ(1,1)〜レンジ(1,M1)のM1個、
レンジグループ2のレンジ(2,1)〜レンジ(2,M2)のM2個、
・・・(中略)、
レンジグループNのレンジ(N,1)〜レンジ(N,MN)のMN個、
の合計M1+M2+・・・(中略)+MN個のレンジを含み、
各レンジ毎にI/V変換抵抗を有し、
前記入力電流の増加に対応してレンジ(1,1)〜レンジ(N,M)の各レンジが順次段階的にオンになる様にした電流/電圧変換回路において、
第1の演算増幅器を設け、その非反転入力端子をグランド電位に接続し、その反転入力端子を前記電流入力端子に接続し、
該第1の演算増幅器の反転入力端子と出力端子間にI/V変換抵抗を接続してその出力電圧を該I/V変換抵抗に流れる電流のI/V変換信号とする事も可能であり、
各レンジグループ毎にI/V変換用演算増幅器と電圧調整部を有し、
各レンジグループのI/V変換抵抗については、
当該レンジグループ内で最小レンジのI/V変換抵抗を該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続し、
それ以外のI/V変換抵抗にはそのオン/オフスイッチになる様に所定のオン電圧を持つダイオードスイッチを組み合わせて、各々該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子と出力端子間に接続し、
該I/V変換用演算増幅器の出力電圧増加に対応して当該レンジグループ内のレンジが順次段階的にオンになる様にし、
各I/V変換抵抗の両端子間の電位差を各レンジのI/V変換信号とし、
各レンジグループのI/V変換用演算増幅器については、
当該I/V変換用演算増幅器の反転入力端子を電流オン/オフ用ダイオードスイッチと電流制限抵抗の何れか一方又は両方を介して前記電流入力端子に接続し、
当該I/V変換用演算増幅器の非反転入力端子を当該レンジグループの前記電圧調整部を介して前記第1の演算増幅器の出力端子に接続し、
前記入力電流の増加に対応して下位レンジグループから上位レンジグループ迄順次段階的にオンになる様にして、
自動レンジ切り替えを行なう事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項2】
請求項1の電流/電圧変換回路に於いて、少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に、
不感帯回路又はリミット回路の何れか一方又は両方を有する事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に於いて、
ダイオードスイッチの不感帯幅を演算増幅器により増幅又は減衰させて任意の不感帯幅を得られる様にした不感帯回路を有する事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項4】
請求項1又は請求項2又は請求項3の電流/電圧変換回路の少なくとも1つのレンジグループの電圧調整部に於いて、
該レンジグループの次レンジグループの何れかのレンジのI/V変換信号で該電圧調整部の出力を抑制させる様にした事を特徴とする電流/電圧変換回路。
【請求項5】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4の電流/電圧変換回路の何れかの部分を内蔵し、
その他の部分は外付け可能とする端子を有する事を特徴とする集積回路装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2又は請求項3又は請求項4又は請求項5に記載の電流/電圧変換回路又は集積回路装置を含む事を特徴とする電子回路基板又は電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【公開番号】特開2012−247233(P2012−247233A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117504(P2011−117504)
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(394001526)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【出願人】(394001526)
【Fターム(参考)】
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