説明

電源制御装置及び照明装置

【課題】 LEDの電源電圧を各色に応じて切り替える際に、必要な応答速度を確保し、また、エネルギーロスを改善する。
【解決手段】 複数のDC−DCコンバータ71a〜71cを設け、駆動するDC−DCコンバータの数を、負荷に必要な電力変化量に応じて制御する。各色のLED51a〜51d、52a〜52d、53a〜53dに応じて電源電圧を切り替える際に、電源電圧が所定の電圧に近づくまでは、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cをフル駆動させ、電源電圧が所定の電圧まで上昇したら、駆動するDC−DCコンバータの数を減らし、1つのDC−DCコンバータ71aのみを駆動させる。これにより、電源電圧を切り替えるときには応答速度が速くなり、それ以外では、ロスを改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DMD(Digital Micromirror Device)素子を用いたプロジェクタの照明に用いて好適な電源制御装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本願出願人は、先に、LED(Light Emitting Diode)を円周上に配置し、LEDを順次パルス点灯させ、LEDの点灯に合わせて光学系のロッドを回転させ、点灯中のLEDの光を集めて照射するLED照射ユニットを提案している。LEDに流せる電流は直流駆動では限界があるが、パルス駆動を行うと、大電流が流せ、強い発光が得られる。したがって、上述のように、LEDをパルス点灯させ、LEDの点灯に合わせて光学系のロッドを回転させ、点灯中のLEDの光を集めるようにすれば、LEDを連続点灯させたのと等価になり、大きな光量を得ることができる。そして、このようなLED照射ユニットを、DMD(Digital Micromirror Device)のプロジェクタの光源として使うことが検討されている。
【0003】
DMD素子は、表面に無数の微少なミラーを配置し、その角度を画素毎に変えられるようにしたデバイスである。DMD素子のような面順次素子に対する光源では、RGBの各色のLEDが順に点灯される。このとき、各色のLEDに応じて、電源電圧を切り替えることが望ましい。
【0004】
つまり、LEDには、LEDの順方向降下電圧Vfより僅かに高い電圧を印加するのが効率的である。LEDの順方向降下電圧Vfは、各色毎に異なっている。したがって、RGBの各色のLEDが順に点灯させるようにした場合には、各色毎に、電源電圧を切り替えることが望ましい。
【0005】
このように、各色のLEDに応じて電源電圧を切り替えるときに、電源の応答速度が遅く、電圧上昇時に所望の電圧に達しないと、LEDへの電流が不足して暗くなる。DC−DCコンバータの応答速度は、電源のスイッチング速度に略比例する。このため、電源電圧を切り替えるときには、スイッチング速度を上げて、応答速度を上げることが考えられる。
【0006】
ところが、構成が簡単なハードスイッチング方式のDC−DCコンバータでは、スイッチング素子としてのFET(Field Effect Transistor)やコイルの特性上、スイッチング周波数が数100kHzに制限され、スイッチング素子の速度を上げることには限界がある。
【0007】
そこで、特許文献1に示されるように、複数のDC−DCコンバータを並列に接続し、それぞれの位相をずらして駆動させることで、見かけ上のスイッチング周波数を高くして、電源の応答速度を高めるようにすることが考えられる。
【特許文献1】特開2004−15992号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に示されるものでは、常に、2つ或いは3つのDC−DCコンバータを並列にフル駆動させている。このような構成では、エネルギー損失が大きく、LEDの電流を設定する定電流回路の発熱が大きくなるという問題が生じる。
【0009】
本発明は、上述の課題を鑑み、電源電圧を切り替えるときには必要な応答速度を確保し、それ以外では、ロスを改善するようにした電源制御装置及びこのような電源制御装置を使用してLEDを点灯させるようにした照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明は、必要な電力量が異なる複数の負荷に対して順次電力を供給する電源制御装置であって、スイッチングタイミングの位相が異なる複数のDC−DCコンバータからなる電源手段と、負荷の切り替わりによる電力変化量に応じて、複数のDC−DCコンバータのうち駆動するDC−DCコンバータの数を制御する制御手段とを有することを特徴とする。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、電源制御装置が電力を供給する前記負荷に必要な電力変化量が大きいときに、負荷に必要な電力変化量が小さいときに比べて、駆動に用いるDC−DCコンバータの数を多くするようにしたことを特徴とする。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、負荷と電気的に直列接続されると共に、電源手段と電気的グラウンドとの間に配置される定電流回路を更に有することを特徴とする。
【0013】
請求項4の発明は、必要な電力量が異なる複数の負荷に対して順次電力を供給する電源装置と、負荷として複数色の照明光のうちの各色の照明光を順次出射する複数の発光手段を有し、電源装置は、スイッチングタイミングの位相が異なる複数のDC−DCコンバータからなる電源手段と、負荷の切り替わりによる電力変化量に応じて、前記複数のDC−DCコンバータのうち駆動するDC−DCコンバータの数を制御する制御手段とを有し、制御手段は、複数の発光手段が出射する照明光の色が別の色に切り替えられるときに、同色の色に切り替えられるときに比べて、駆動するDC−DCコンバータの数を多くするようにしたことを特徴とする。
【0014】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、発光手段は、赤、緑、青の各色の照明光を出射する発光ダイオードであることを特徴とする。
【0015】
請求項6の発明は、請求項4の発明において、複数の発光手段が出射する照明光の色が同色の際に電源制御装置から出力する電圧値は略一定であることを特徴とする。
【0016】
請求項7の発明は、請求項4の発明において、発光手段は、赤、緑、青の各色の照明光を出射する発光ダイオードであり、発光ダイオードの順方向降下電圧のうち最大値を各色毎に求め、この各色毎の最大値を前記各色における電圧値となるように設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のDC−DCコンバータを設け、駆動するDC−DCコンバータの数を、負荷に必要な電力変化量に応じて制御するようにしている。そして、電源電圧を切り替える際に、電源電圧が所定の電圧に近づくまでは、複数のDC−DCコンバータをフル駆動させ、電源電圧が所定の電圧まで上昇したら、DC−DCコンバータの数を減らすようにしている。これにより、電源電圧を各色のLEDに応じて高速に切り替えることができると共に、エネルギー損失を抑えることができる。
【0018】
また、複数のDC−DCコンバータのうち、1つのDC−DCコンバータのみを継続動作させ、他のDC−DCコンバータを順次動作させているので、DC−DCコンバータの駆動時間が分散され、故障率の低下が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図1〜図4は、本発明が適用できるDMDプロジェクタの概要を示すものである。
【0020】
図1において、1はLED照明ユニットを示し、LED照明ユニット1には、図2に示すように、複数の赤色のLED2rと、緑色のLED2gと、青色のLED2bとが円周上に配置される。これらの円周上に配置されたLED2r、2g、2bの中心に、L字型導光ロッド5が回転可能に配置されている。
【0021】
L字型導光ロッド5は、図3に示すように、平行ロッド11と、形状変換テーパロッド12とがL字状に連結されている。平行ロッド11には、光取込口13が設けられる。形状変換テーパロッド12には、光出射光14が設けられる。平行ロッド11と形状変換テーパロッド12との間には、反射コート16及び高屈折反射プリズム15が設けられる。
【0022】
照明ユニット1に配列されたLED2r、2g、2bは、光源制御回路3により、順次、パルス点灯される。このLED2r、2g、2bの点灯と、L字型導光ロッド5の回転とは同期されており、L字型導光ロッド5が回転されると、その光取込口13の近傍にあるLEDがパルス発光される。
【0023】
LEDのパルス発光は、直流発光(常時発光)より大きな電流を流せ、瞬間的に強い光を放つ。これらにより、L字型導光ロッド5からはLEDのパルス発光の光量が連続的に取り出せる。
【0024】
図1において、LED照明ユニット1からの光は、光束形状変換素子6を通過し、ほぼ平行光となり、そして、照明レンズ4を介して照明ミラー7に照射され、照明ミラー7により反射されて、DMD素子8に照射される。光束形状変換素子6は、図4に示すように、8角形の入射端18と、矩形の出射端19を有し、その内面に反射コート17が設けられている。
【0025】
図1において、DMD素子8の反射光は、投影レンズ9で拡大され、スクリーン10に投影される。このときに、RGB各色の映像信号に対応して反射角が変調されたDMD素子8の表示画面と、照明ユニット1からのRGBの照明光を同期させることで、スクリーン10にカラー映像が表示される。
【0026】
本発明は、上述のように構成されるDMD素子を用いたプロジェクタの電源制御に用いられる。図5は、本発明の実施形態を示すものである。図5において、赤色のLED51a〜51d、緑色のLED52a〜52d、青色のLED53a〜53dは、図2におけるLED2r、2g、2bにそれぞれ対応している。なお、この例では、説明を簡単とするために、各色のLEDの数を4個として説明する。
【0027】
各色のLED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dと直列に、各LEDをパルス点灯させるためのFET54a〜54d、FET55a〜55d、FET56a〜56dがそれぞれ設けられる。
【0028】
FET54a〜54d、55a〜55d、56a〜56dのゲートには、タイミング生成回路58から、パルス信号SR1〜SR4、SG1〜SG4、SB1〜SB4がそれぞれ供給される。これらのパルス信号SR1〜SR4、SG1〜SG4、SB1〜SB4により、FET54a〜54d、FET55a〜55d、FET56a〜56dが順にオンされ、これにより、LED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dが順にパルス点灯される。
【0029】
各色のLED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dに対して、LEDに流れる電流を設定するための定電流回路59a、59b、59cが設けられる。
【0030】
定電流回路59aは、赤色のLED51a〜51dに流れる電流を設定するもので、演算増幅器60aと、FET61aと、抵抗62aとからなる。演算増幅器60aの出力端子はFET61aのゲートに接続される。演算増幅器61aの反転入力端子は、抵抗62aとFET61aのソースとの接続点に接続され、この接続点と接地間に、抵抗62aが接続される。演算増幅器60aの非反転入力端子には、ROM(Read Only Memory)65からD/A(Digital to Analog)コンバータ66を介して、設定値が与えられる。
【0031】
定電流回路59bは、緑色のLED52a〜52dに流れる電流を設定するもので、演算増幅器60bと、FET61bと、抵抗62bとからなる。演算増幅器60bの出力端子はFET61bのゲートに接続される。演算増幅器61bの反転入力端子は、抵抗62bとFET61bのソースとの接続点に接続され、この接続点と接地間に、抵抗62bが接続される。演算増幅器60bの非反転入力端子には、ROM65からD/Aコンバータ66を介して、設定値が与えられる。
【0032】
定電流回路59cは、青色のLED53a〜53dに流れる電流を設定するもので、演算増幅器60cと、FET61cと、抵抗62cとからなる。演算増幅器60cの出力端子はFET61cのゲートに接続される。演算増幅器61cの反転入力端子は、抵抗62cとFET61cのソースとの接続点に接続され、この接続点と接地間に、抵抗62cが接続される。演算増幅器60cの非反転入力端子には、ROM65からD/Aコンバータ66を介して、設定値が与えられる。
【0033】
このような定電流回路59a〜59cでは、ROM65からの設定値に応じて、各LEDの電流値を設定できる。
【0034】
例えば、定電流回路59aにおいては、赤色のLED51a〜51dを流れる電流は、FET61aを介して、抵抗62aを流れる電流により設定される。抵抗62aを介して流れる電流は、抵抗62の両端電圧により検出され、この検出電圧が演算増幅器60aの反転入力端子に供給される。ROM65には、各LEDの最適な電流の設定値が書き込まれている。演算増幅器60aの非反転入力端子には、ROM65からD/Aコンバータ66を介して設定値が与えられている。したがって、抵抗62aからの検出電圧が、ROM65からD/Aコンバータ66を介して与えられる設定値と等しくなるように負帰還がかかり、FET61a及び抵抗62aを介して流れる電流は、ROM65からの設定値に応じて制御される。
【0035】
他の定電流回路59b、59cも、同様に、ROM65からD/Aコンバータ66を介して与えられる設定値に応じて設定される。
【0036】
各色のLED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dに対する電源は、DC−DCコンバータ71a、71b、71cにより与えられる。
【0037】
DC−DCコンバータ71aは、スイッチ素子72aと、フライホイールダイオード73aと、チョークコイル74aとから構成される。DC−DCコンバータ71bは、スイッチ素子72bと、フライホイールダイオード73bと、チョークコイル74bとから構成される。DC−DCコンバータ71cは、スイッチ素子72cと、フライホイールダイオード73cと、チョークコイル74cとから構成される。
【0038】
各DC−DCコンバータ71a〜71cは、ハードスイッチング方式のDC−DCコンバータである。DC−DCコンバータ71a〜71cには、バッテリ75からの直流電源が印加される。また、DC−DCコンバータ71a〜71cの出力は、コンデンサ76により平滑化されて出力される。
【0039】
スイッチング素子72a〜72cには、電源制御回路77から、スイッチングパルスSWP1〜SWP3がそれぞれ供給される。電源制御回路77の電圧設定値は、タイミング生成回路58からの出力により切り替えられる。また、DC−DCコンバータ71a〜71cからの出力電圧は、抵抗78と抵抗79との接続点から検出され、この検出電圧が電源制御回路77に供給される。
【0040】
電源制御回路77は、設定電圧と検出電圧とを比較し、この比較値に基づいて、スイッチングパルスSWP1〜SWP3のパルス幅を制御して、出力電圧が設定値となるようなPWM(Pulse Width Modulation)制御を行っている。また、後に説明するように、電源電圧を切り替えるときに、電源電圧が所定の電圧に近づくまではDC−DCコンバータ71a〜71cをフル駆動させ、電源電圧が所定の電圧まで上昇したら、DC−DCコンバータ71aのみ駆動させるようにしている。
【0041】
L字型導光ロッド81(図2におけるL字型導光ロッド5に対応する)に対しては、フォトディテクタ82が設けられ、フォトディテクタ82からはL字型導光ロッド81の回転検出信号が出力される。この回転検出信号は、タイミング生成回路58に供給されると共に、PLL(Phase Locked Loop)83に供給される。PLL83で、L字型導光ロッド81の回転検出信号から、各LEDの位置に対応する基準クロックが形成される。この基準クロックがタイミング生成回路58に供給される。
【0042】
DMD駆動回路84には、入力端子80から映像信号が供給される。DMD駆動回路84から映像信号の垂直同期信号VDが出力され、この映像信号の垂直同期信号VDがタイミング生成回路58に供給される。
【0043】
タイミング生成回路58で、フォトディテクタ82からの回転検出信号の位相と、DMD駆動回路84からの映像信号の垂直同期信号VDとの位相が比較され、この位相比較出力に基づいて、L字型導光ロッド81を回転させるモータ85の駆動信号が形成される。このモータ85の駆動信号は、ドライバ86を介してモータ85に供給される。また、タイミング生成回路58から回転検出信号がDMD駆動回路に入力され、この信号に同期した出力信号がDMD素子89に供給される。
【0044】
また、タイミング生成回路58で、PLL83からの回転クロックに基づいて、各色のLED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dを順次点灯させるためのパルス信号SR1〜SR4、SG1〜SG4、SB1〜SB4が生成される。これにより、L字型導光ロッド81の回転と、各色のLED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dの点灯タイミングとの同期がとられる。
【0045】
また、各色のLED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dからの光量を検出するフォトセンサ87が設けられる。このフォトセンサ87の検出信号が光量変動補正データ生成回路88に供給される。ROM65には、各LEDの最適な電流の設定値が書き込まれている。この電流設定値は、光量変動補正データ生成回路88からの出力信号により、光量に応じて補正され、各色のLED51a〜51d、LED52a〜52d、LED53a〜53dからの光量が一定に保たれる。
【0046】
このように、本発明の実施形態では、赤色のLED51c〜51d、青色のLED52c〜52d、緑色のLED53a〜53dの電源として、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cが設けられている。そして、設定電圧を切り替えるときに、電源電圧が所定の電圧に近づくまではDC−DCコンバータ71a〜71cをフル駆動させ、電源電圧が所定の電圧まで上昇したら、DC−DCコンバータ71aのみ駆動させるようにしている。これにより、電源電圧を各色のLEDに応じて高速に切り替えることができ、同色のLEDを点灯させているときには、ロスを最小にすることができる。このことについて、以下に詳述する。
【0047】
図6は、FET54a〜54d、FET55a〜55d、FET56a〜56dに供給されるパルス信号SR1〜SR4、SG1〜SG4、SB1〜SB4のタイミングを示すものである。
【0048】
時刻T0〜T1の間に、図6(A)〜図6(D)に示すように、赤色のLED51a〜51dを点灯させるためのパルス信号SR1〜SR4が順にHレベルになる。これにより、FET54a〜54dが順にオンし、赤色のLED51a〜51dが順に点灯する。
【0049】
時刻T1〜T2の間に、図6(E)〜図6(H)に示すように、緑色のLED52a〜52dを点灯させるためのパルス信号SG1〜SG4が順にHレベルになる。これにより、FET55a〜55dが順にオンし、緑色のLED52a〜52dが順に点灯する。
【0050】
時刻T2〜T3の間に、図6(I)〜図6(L)に示すように、青色のLED53a〜53dを点灯させるためのパルス信号SB1〜SB4が順にHレベルになる。これにより、FET56a〜56dが順にオンし、青色のLED53a〜53dが順に点灯する。
【0051】
以下、時刻T3〜T4で赤色のLED51a〜51dを点灯させるためのパルス信号SR1〜SR4が順にHレベルになり、時刻T4〜T5で緑色のLED52a〜52dを点灯させるためのパルス信号SG1〜SG4が順にHレベルになり、時刻T5〜T6で青色のLED53a〜53dを点灯させるためのパルス信号SB1〜SB4が順にHレベルになる。
【0052】
図7は、各時刻での必要電源電圧を示すものである。必要電源電圧は、各色のLEDの順方向降下電圧Vfより僅かに低い電圧である。図7に示すように、時刻T0〜T1では、赤色のLED51a〜51dを点灯させるために、約9Vの電圧が必要電源電圧となる。時刻T1〜T2では、緑色のLED52a〜52dを点灯させるために、約12Vの電圧が必要電源電圧となる。時刻T2〜T3では、青色のLED53a〜53dを点灯させるために、約9Vの電圧が必要電源電圧となる。
【0053】
以下、時刻T3〜T4では、赤色の赤色のLED51a〜51dを点灯させるために、約9Vの電圧が必要電源電圧となり、時刻T4〜T5では、緑色のLED52a〜52dを点灯させるために、約12Vの電圧が必要電源電圧となり、時刻T5〜T6では、青色のLED53a〜53dを点灯させるために、約9Vの電圧が必要電源電圧となる。
【0054】
なお、同色のLEDの発光期間においても、図7に示すように、LEDの個体差により、必要な電源電圧は変化する。
【0055】
図8は、図7に示すような必要電圧に基づいて設定電圧を与えたときのDC−DCコンバータ71a〜71cの各部の動作を示すものである。
【0056】
時刻T0〜T1では、赤色のLED51a〜51dを点灯させるために、約9Vの設定電圧が与えられる(図7参照)。この間では、図8(A)に示すように、スイッチングパルスSWP1のみが与えられ、DC−DCコンバータ71aのみが駆動される。その結果、図8(D)に示すように、電源電圧が約9Vに保持されている。
【0057】
時刻T1〜T2では、緑色のLED52a〜52dを点灯させるために、設定電圧が約12Vに上げられる(図7参照)。電源電圧の設定値が約9Vから約12Vに上げられる直後の期間Taでは、図8(A)〜図8(C)に示すように、スイッチングパルスSWP1〜SWP3が全て与えられ、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cがフル駆動される。
【0058】
3つのDC−DCコンバータ71a〜71cがフル駆動される期間Taでは、図9に示すように、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cには、互いに120度ずつ異なる位相でスイッチングパルスSWP1〜SWP3が供給される。このため、等価的にスイッチングの周波数が3倍に上げられたことになり、図8(D)に示すように、電源電圧は所定の電圧まで素速く上昇される。
【0059】
電源電圧が約12Vまで上昇されたら、図8(A)〜図8(C)に示すように、スイッチングパルスSWP1のみが与えられ、DC−DCコンバータ71b及び71cの動作が止められ、DC−DCコンバータ71aのみが駆動される。DC−DCコンバータ71aからの電源電圧は、スイッチングパルスSWP1のパルス幅を制御することで、図8(D)に示すように、所望の電圧に保たれる。
【0060】
時刻T2〜T3では、青色のLED53a〜53dを点灯させるために、設定電圧が約9Vに下げられる(図7参照)。電源電圧の設定値が約12Vから約9Vに下げられるときには、図8(A)に示すように、DC−DCコンバータ71aのみが動作し、スイッチングパルスのパルス幅を制御することで、図8(D)に示すように、所望の電圧まで下げられる。
【0061】
時刻T3〜T4では、赤色のLED51a〜51dが点灯される。このときの設定電圧は約9Vであり、時刻T2〜T3で青色のLED53a〜53dを点灯させるときと略同じである。このときには、図8(A)に示すように、DC−DCコンバータ71aのみが駆動され、スイッチングパルスのパルス幅を制御することで、図8(D)に示すように、所望の電圧に保持される。
【0062】
時刻T4〜T5では、緑色のLED52a〜52dを点灯させるために、設定電圧が約12Vに上げられる。電源電圧の設定値が約9Vから約12Vに上げられる直後の期間Taでは、図8(A)〜図8(C)に示すように、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cがフル駆動される。
【0063】
電源電圧が約12Vまで上昇されたら、図8(A)〜図8(C)に示すように、DC−DCコンバータ71b及び71cの動作が止められ、DC−DCコンバータ71aのみが駆動される。DC−DCコンバータ71aからの電源電圧は、スイッチングパルスSWP1のパルス幅を制御することで、図8(D)に示すように、所望の電圧に保たれる。
【0064】
時刻T5〜T6では、青色のLED53a〜53dを点灯させるために、設定電圧が約9Vに下げられる。電源電圧の設定値が約12Vから約9Vに下げられるときには、図8(A)に示すように、DC−DCコンバータ71aのみが動作し、スイッチングパルスのパルス幅を制御することで、図8(D)に示すように、所望の電圧まで下げられる。
【0065】
以上説明したように、本発明の実施形態では、負荷の切り替わりによる電力変化量に応じて、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cのうち駆動するDC−DCコンバータの数を制御するようにしている。
【0066】
つまり、赤色のLED51a〜51dの駆動電圧は約9V、緑色のLED52a〜52dの駆動電圧は約12Vなので、赤色のLED51a〜51dの駆動から緑色のLED52a〜52dの駆動に切り替えたことで、負荷の電力が大きくなる。このように、負荷の電力の変化量が大きくなったときには、1つのDC−DCコンバータでは、スイッチング周波数を上げないと、所定の電圧まで上昇させるのに時間がかかる。
【0067】
この実施形態では、負荷の電力の変化量が大きくなったときには、例えば3つのDC−DCコンバータ71a〜71cを並列に用い、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cを互いに120度位相を変えてスイッチングすることで、見かけのスイッチング周波数を上げている。これにより、応答時間を速くすることができる。
【0068】
そして、電源電圧が所定の電圧まで上昇したら、駆動するDC−DCコンバータの数を減らし、例えば1つのDC−DCコンバータ71aのパルス幅を制御して、所定の電圧に保持される。電源電圧が所定の電圧まで上昇したら、1つのDC−DCコンバータ71aのみ動作させているので、ロスが少なく、定電流回路の発熱の問題も回避できる。
【0069】
なお、上述の例では、負荷の電圧を上げる場合について説明したが、本発明は、負荷の電流を上げる場合にも適用できる。すなわち、負荷の電流を上げるとき、1つのDC−DCコンバータでは、スイッチング周波数を上げないと、電流上昇による電圧降下が生じる。そこで、負荷の電流上昇により電力が大きくなったときには、複数のDC−DCコンバータを並列に用い、見かけのスイッチング周波数を上げる。これにより、電流上昇による電圧降下を抑制し、応答時間を速くすることができる。そして、電流が所定値まで上昇したら、1つのDC−DCコンバータを用いることで、ロスを低減することができる。
【0070】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で様々な変形や応用が可能である。例えば、上述の例では、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cを用意し、負荷の切り替わりによる電力変化量が大きいときには、3つのDC−DCコンバータ71a〜71cをフル駆動させ、負荷の電力が安定したら、1つのDC−DCコンバータ71aを用いているが、DC−DCコンバータの数はこれに限定されるものではない。要は、負荷の切り替わりによる電力変化量が大きいときには、多数のDC−DCコンバータをフル駆動させ、負荷の電力が安定して小さくなったら、それより少ない数のDC−DCコンバータを用いるようにすれば良い。
【0071】
また、上述の実施形態では、RGBのLEDを円周上に配置し、L字型導光ロッドを回転に同期して、LEDを順に点灯させるようにしているが、本発明は、このような構成に限定されるものではない。
【0072】
例えば、図10に示すように、ダイクロイックプリズム101の各面に、拡散板107を介して、例えば4つの赤色のLED102と、例えば4つの青色のLED103と、例えば4つの緑色のLED104とを配置し、赤色のLED102、青色のLED103、緑色のLED104を、図11(A)〜図11(C)に示すようなパルスで順に点灯させて、DMD素子105に照射し、投射レンズ106に投影するようにしても良い。本発明は、このような構成で各色のLEDを順に点灯させる際にも、同様に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、特に、DMD素子のような面順次素子の照明としてLEDを用いた場合の電源制御に用いて好適である他、各種の電源制御に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明が適用できるDMD素子を用いてプロジェクタの概要を示すブロック図である。
【図2】本発明が適用できるDMD素子を用いてプロジェクタにおけるLEDの配置の説明図である。
【図3】本発明が適用できるDMD素子を用いてプロジェクタにおけるL字型導光ロッドの説明に用いる平面図及び側面図である。
【図4】本発明が適用できるDMD素子を用いてプロジェクタにおける光束形状変換素子の説明に用いる側面図及び背面図である。
【図5】本発明が適用された電源制御回路の一例のブロック図である。
【図6】本発明が適用された電源制御回路の一例の説明に用いるタイミングチャートである。
【図7】本発明が適用された電源制御回路の一例の説明に用いるタイミングチャートである。
【図8】本発明が適用された電源制御回路の一例の説明に用いる波形図である。
【図9】本発明が適用された電源制御回路の一例の説明に用いる波形図である。
【図10】本発明の他の実施形態の説明に用いる斜視図である。
【図11】本発明の他の実施形態の説明に用いるタイミング図である。
【符号の説明】
【0075】
51a〜51d 赤色のLED
52a〜52d 緑色のLED
53a〜53d 青色のLED
58 タイミング生成回路
59a〜59c 定電流回路
71a〜71c DC−DCコンバータ
72a〜72c スイッチ素子
73a〜73c フライホイールダイオード
74a〜74c チョークコイル
75 バッテリ
76 コンデンサ
77 電源制御回路
81 L字型導光ロッド
82 フォトディテクタ
84 DMD駆動回路
85 モータ
89 DMD素子


【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要な電力量が異なる複数の負荷に対して順次電力を供給する電源制御装置であって、
スイッチングタイミングの位相が異なる複数のDC−DCコンバータからなる電源手段と、
前記負荷の切り替わりによる電力変化量に応じて、前記複数のDC−DCコンバータのうち駆動するDC−DCコンバータの数を制御する制御手段と
を有することを特徴とする電源制御装置。
【請求項2】
電源制御装置が電力を供給する前記負荷に必要な電力変化量が大きいときに、前記負荷に必要な電力変化量が小さいときに比べて、前記駆動に用いるDC−DCコンバータの数を多くするようにしたことを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。
【請求項3】
前記負荷と電気的に直列接続されると共に、前記電源手段と電気的グラウンドとの間に配置される定電流回路を更に有することを特徴とする請求項1記載の電源制御装置。
【請求項4】
必要な電力量が異なる複数の負荷に対して順次電力を供給する電源装置と、
前記負荷として複数色の照明光のうちの各色の照明光を順次出射する複数の発光手段を有し、
前記電源装置は、スイッチングタイミングの位相が異なる複数のDC−DCコンバータからなる電源手段と、
前記負荷の切り替わりによる電力変化量に応じて、前記複数のDC−DCコンバータのうち駆動するDC−DCコンバータの数を制御する制御手段とを有し、
前記制御手段は、前記複数の発光手段が出射する照明光の色が別の色に切り替えられるときに、同色の色に切り替えられるときに比べて、前記駆動するDC−DCコンバータの数を多くするようにしたことを特徴とする照明装置。
【請求項5】
前記発光手段は、赤、緑、青の各色の照明光を出射する発光ダイオードであることを特徴とする請求項4記載の照明装置。
【請求項6】
前記複数の発光手段が出射する照明光の色が同色の際に前記電源制御装置から出力する電圧値は略一定であることを特徴とする請求項4に記載の照明装置。
【請求項7】
前記発光手段は、赤、緑、青の各色の照明光を出射する発光ダイオードであり、
前記発光ダイオードの順方向降下電圧のうち最大値を各色毎に求め、この各色毎の最大値を前記各色における電圧値となるように設定することを特徴とする請求項4に記載の照明装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−174677(P2006−174677A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−367841(P2004−367841)
【出願日】平成16年12月20日(2004.12.20)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】