説明

電源装置のカバー構造

【課題】サーミスタ等のセンサ部品の電線がバッテリ外側の板金等に干渉することを低コストで作業性良く確実に防止する。
【解決手段】バッテリ2に組み付けるバスバーモジュール4の絶縁性のケース7にセンサ部品6をバッテリに接した状態で装着し、センサ部品の電線10をケースに沿って配索し、ケースに、バスバー5とセンサ部品と電線とを同時に覆う絶縁性のカバー8を装着した。ケース7に設けた一対のリブ31の間に電線10を挿通し、リブの上からカバー8で電線を覆った。カバー8は、板部8bの両側に直交した一対の側壁8cを有する。センサ部品6を弾性アーム6cでケース7に支持した。カバー8をセンサ部品ごとに開閉自在にケース7に配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッドカーを含む電気自動車の電源装置に装着されるバスバーモジュールのカバーでサーミスタ等の部品を覆う電源装置のカバー構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、従来の電源装置のカバー構造の一形態を示すものである(特許文献1参照)。
【0003】
この構造は、ハイブリッドカーを含む電気自動車のバッテリ71の電極72側に絶縁樹脂製のケース73を装着し、ケース73から電極72を露出させ、ケース73に絶縁樹脂製のカバー74を装着して、カバー74で電極72を覆って保護するものである。
【0004】
カバー74は、電極72に対向する横長の第一部分75と、第一部分75を薄肉の水平なヒンジ76で開閉自在に連結した横長の第二部分77と、第二部分77の左右両側に薄肉の垂直なヒンジ78で開閉自在に連結した矩形状の第三部分79とで構成されている。第一部分75と第二部分77は枠片80と突起といった係止手段でケースに係止される。第三部分79はバッテリ71の左右両側の総入力用と総出力用の電極72を覆う。
【0005】
バッテリ71の前端のみならず後端にも同様(類似)のケース(73)とカバー(74)が装着される。バッテリ71は複数の並列な電池81で構成され、各電池81はケース73内の導電金属板状のバスバー(図示せず)に各電極72をねじ締めして直列に接続される。バッテリ71は上下前後の端部においてそれぞれ帯状のガイドバー82で締付保持される(図5ではガイドバー82を簡易的に図示している)。
【0006】
図6(図5の矢視B図)の如く、バッテリ81には所要な電池81の端面に温度検出用のサーミスタ83がそれぞれ装着される。各サーミスタ83の導出電線84はガイドバー82に絶縁樹脂製のバンド85で固定されて、バッテリ外側の箱状の電池パック(図示せず)等の板金と電線84との干渉が防止される。電線84は図示しないECU(電子制御ユニット)に接続されて、電池81の異常温度を検知した際に、サーミスタ83からの信号で充電電流の抑制等を行わせる。図5のバッテリ71とケース73とカバー74とサーミスタ83等とで電源装置85が構成される。
【0007】
上記の電源装置のカバー構造以外の従来技術として、特許文献2(図示せず)には、電池パックの上部にバスバーモジュールが装着された構造や、電池の温度を検出するサーミスタを弾性のアームで電池側の樹脂板に係止させる構造等が記載されている。
【0008】
また、特許文献3(図示せず)には、絶縁樹脂製の蓋体の内側に、湾曲状のばね片を有するサーミスタ温度計を装着し、サーミスタ温度計の導出電線を蓋体の内面側の一対の爪部の間に保持させ、次いで蓋体をバッテリの端部に装着係止させると同時に、サーミスタ温度計をバッテリの電池に接触させることや、バッテリの各電池の電極を金属板で溶接して接続すること等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−332235号公報(図1)
【特許文献2】特開2008−298662号公報(図5,図8)
【特許文献3】特開2006−186045号公報(図1,図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記図5,図6の従来の構造にあっては、各サーミスタ83の電線84を複数のバンド85で固定するために、バンド85の部品コストや組付コストがかかるという問題や、車両の振動等で図6の各バンド85の間で電線84が弛んで板金等に干渉し兼ねないという懸念があった。
【0011】
特に、特許文献2,3等に記載された振動吸収用のアームやばね片を有するサーミスタを適用した場合に、サーミスタがバッテリ71と一体に振動(移動)し、サーミスタの電線84が引張力と圧縮力を受けて伸縮し、バンド85による電線84の固定が緩んだり、バンド85との擦れを生じたりし兼ねないという懸念があった。
【0012】
また、特許文献3の構造にあっては、サーミスタの電線を蓋体の一対の爪部の間に押し込んで保持させる等の手間がかかったり、メンテナンス等でサーミスタやその電線を確認する際に、バッテリから一々大きなカバーをサーミスタやその電線ごと取り外さなければならず、面倒であるという問題があった。
【0013】
これらの問題等は、サーミスタ(温度センサ)83に代えて例えば電池81の表面の電流リークや液漏れ等を検出するセンサ(図示せず)といった部品を用いた場合においても、同様に生じ得るものである。
【0014】
本発明は、上記した点に鑑み、サーミスタ等のセンサ部品の電線がバッテリ外側の板金等に干渉することを低コストで作業性良く、しかも確実に防ぐことができ、それに加えて、センサ部品やその電線の確認作業を容易に行うことのできる電源装置のカバー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る電源装置のカバー構造は、バッテリに組み付けられるバスバーモジュールの絶縁性のケースにセンサ部品が該バッテリに接した状態で装着され、該センサ部品の電線が該ケースに沿って配索され、該ケースに、該バスバーと該センサ部品と該電線とを同時に覆う絶縁性のカバーが装着されたことを特徴とする。
【0016】
上記構成により、バスバーモジュールのケースにセンサ部品を装着し、ケースに沿って電線を配索した状態で、カバーを装着することで、一つのカバーが、バッテリの各電池間を接続するバスバーと、センサ部品とその電線とを同時に覆って外部との干渉等から安全に保護する。カバーはケースと別体でもケースと一体に薄肉ヒンジで連結されたものでもよい。カバーはケースに係止手段で係止される。
【0017】
請求項2に係る電源装置のカバー構造は、請求項1記載の電源装置のカバー構造において、前記ケースに設けられた一対のリブの間に前記電線が挿通され、該リブの上から前記カバーが該電線を覆うことを特徴とする。
【0018】
上記構成により、センサ部品の電線がケースの一対のリブの間に挿通案内され、且つケースと一対のリブとカバーとで電線が四方を囲まれて、電線の飛び出し(はみ出し)が確実に防止される。一対のリブとカバーとは隙間なく接触することが好ましい。
【0019】
請求項3に係る電源装置のカバー構造は、請求項1記載の電源装置のカバー構造において、前記カバーが、板部の両側に直交した一対の側壁を有することを特徴とする。
【0020】
上記構成により、電線がカバーの一対の側壁の間に収容され、側壁から外側への電線の飛び出しが阻止される。ケースとカバーの板部と両側壁とで電線が四方を囲まれる。
【0021】
請求項4に係る電源装置のカバー構造は、請求項3記載の電源装置のカバー構造において、請求項2記載の前記一対のリブの外側に前記一対の側壁が位置することを特徴とする。
【0022】
上記構成により、ケースにカバーを閉止する際に、ケースの一対のリブに沿ってカバーの両側壁が並列に位置して、ケースに対してカバーが正確に位置決めされ、これにより、電線がカバーで位置ずれなく覆われる。また、万一、リブから電線が外側に飛び出した場合に、カバーの側壁の内側に電線が収容されて、側壁から外側への電線の飛び出しが阻止される。
【0023】
請求項5に係る電源装置のカバー構造は、請求項1〜4の何れかに記載の電源装置のカバー構造において、前記センサ部品が弾性アームで前記ケースに支持されたことを特徴とする。
【0024】
上記構成により、車両の振動等で固定側のケースに対して可動側のセンサ部品が弾性アームのストロークの範囲でバッテリと一体に振動(上下移動)して浮き沈みし、それと同時にセンサ部品の電線が長手方向に進退(伸縮)する。この際、電線の長手方向に沿って請求項1のカバーが位置することで、電線の移動に係わらず電線がカバーで確実に覆われて保護される。また、請求項2と請求項4の一対のリブに沿って電線が進退しつつリブとカバーとで確実に覆われて保護される。また、請求項3のカバーの一対の側壁に沿って電線が進退しつつカバーの板部と両側壁とで確実に覆われて保護される。
【0025】
請求項6に係る電源装置のカバー構造は、請求項1〜5の何れかに記載の電源装置のカバー構造において、前記カバーが前記センサ部品ごとに開閉自在に前記ケースに配置されたことを特徴とする。
【0026】
上記構成により、作業者は所要のセンサ部品や所要のバスバーに対応するカバーのみを開閉して所要のセンサ部品や所要のバスバーのメンテナンス等を行うことができる。
【発明の効果】
【0027】
請求項1記載の発明によれば、バスバーモジュールのケースにカバーを装着することで、ケース側のバスバーとセンサ部品とその電線とを同時に覆って、バスバーの絶縁保護と、センサ部品の絶縁保護と、センサ部品の電線とバッテリ外部の例えば電池パックの板金との干渉防止とを同時に行わせることができる。電線を従来のようにバンドでバッテリ側に固定する必要がないから、低コストで電線の保護を行うことができると共に、上記のように三つの部品(バスバーとセンサ部品と電線)を一つのカバーで作業性良く効率的に保護することができ、しかもセンサ部品の細い電線を幅広のカバーで覆って確実に保護することができる。
【0028】
請求項2記載の発明によれば、ケースの一対のリブとカバーとで電線を取り囲んで、電線の飛び出しとそれに伴う外部との干渉等を確実に防ぐことができる。
【0029】
請求項3記載の発明によれば、カバーの基板部と両側壁との間に電線を収容して(ケースとカバーの板部とその両側壁とで電線を取り囲んで)、電線の飛び出しとそれに伴う外部との干渉等を確実に防ぐことができる。
【0030】
請求項4記載の発明によれば、ケースの一対のリブとカバーの両側壁とでカバーの位置決めを行うことで、センサ部品の電線をカバーで位置ずれなく確実に覆って保護することができる。また、万一、リブから外側に電線が飛び出した場合でも、カバーの側壁で電線を覆って保護することができる。
【0031】
請求項5記載の発明によれば、センサ部品が弾性アームの撓みでケースに対して浮き沈みするに伴って、電線が長手方向に進退した場合でも、カバーで電線を確実に覆うことができるから、電線と外部との干渉等を確実に防ぐことができる。
【0032】
請求項6記載の発明によれば、所要のセンサ部品やその電線あるいはバスバーに対応するカバーのみを開閉して、センサ部品やその電線あるいはバスバーのメンテナンス等を作業性良く容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る電源装置のカバー構造の一実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】同じく電源装置のカバー構造の要部を示すケースからカバーを外した状態の平面図である。
【図3】サーミスタの取付構造の一形態を示す図2のA−A断面図である。
【図4】図2のケースにカバーを閉止した状態を示す平面図である。
【図5】従来の電源装置のカバー構造の一形態を示す分解斜視図である。
【図6】従来のサーミスタの取付構造の一例を示す図5の矢視B背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1〜図4は、本発明に係る電源装置のカバー構造の一実施形態を示すものである。
【0035】
図1の如く、この電源装置1は、バッテリ2をなす複数の並列な板状の電池3と、バッテリ2の上部に装着されたバスバーモジュール4とで構成され、図2,図3の如く、バスバーモジュール4は、導電金属製のバスバー5と温度検出用のサーミスタ(センサ部品)6とを装着した絶縁樹脂製の下側のケース7と、ケース7の上側に装着された図4の絶縁樹脂製のカバー8とで構成されている。
【0036】
図1において、各電池3は上端に+極と−極の各電極(図示せず)を有している。各電極は、例えば図5の従来例のように、一つの電池3の前側に+極、後側に−極が配置され、隣接の電池3の前側に−極、後側に+極が配置されて、図2の長方形板状のバスバー5で一つの電池3の前側の+極と隣接の電池3の前側の−極とが直列に接続されている。
【0037】
図1の前側の電極とバスバー5とに対向して前側の略L字状ないし略コの字状の各カバー8が配置され、後側の電極とバスバー(図示せず)とに対向して後側の長方形状の各カバー9が配置されている。本発明は主に前側のカバー8についてのものであるので、後側のカバー9等については説明を省略する。なお、明細書で前後左右の方向性は説明の便宜上のものである。
【0038】
各カバー8は独立して開閉自在であり、一つのカバー8ごとに一つのサーミスタ6とその導出電線10(図2,図3)がケース7に配置されている。本例では概ね四つの電池3に一つの割合でサーミスタ6が配置され、各カバー8は各サーミスタ6(図2)とその電線10と共に、四つの電極とそれに対応する二つのバスバー5(図2)とを同時に覆って保護する。
【0039】
図1において各カバー8は例えば左右各一つの係止部11(図4)でケース7の係合部12(図4)に係止される。図1で符号13は係止部11に対する型抜き孔である。各カバー8は一つずつ分離されていてもよいが、好ましくは、例えば前端の帯状の垂直な壁部(図示せず)に薄肉ヒンジ(図示せず)を介して一体的に連結されていることが、ケース7へのカバー8の組付性を高める上で好ましい。何れの場合でも、各カバー8は独立して開閉自在であるので、所要な(確認したい部位の)サーミスタ6とその電線10のメンテナンス等を作業性良く容易に行うことができる。
【0040】
カバー8の前側には、バスバー5(図2)に接続された電圧検出用の端子13に続く電線を収容する部分14が横長樋状に設けられ、電圧検出用の各電線(図示せず)は温度検出用の各電線10と共にケース7の左右の端部からまとめて外部に導出されている。
【0041】
図2の如く、ケース7は、長方形枠状の複数のバスバー収容部19と、バスバー収容部16の前側に細い可撓性の壁部17で連結された電圧検出用電線収容部14と、バスバー収容部16の後側に一体に続くサーミスタ収容部18と、サーミスタ収容部18の後側に一体に続く横長帯状のサーミスタ電線収容部19とを備えている。
【0042】
各バスバー収容部16は、前後左右の枠状の垂直な周壁(符号16で代用)と、電極挿通孔(図示せず)を有する水平な底壁16aとで構成され、一つのバスバー収容部16の周壁の左端は隣接のバスバー収容部16の周壁の右端に可撓性のヒンジ20で連結されている。バスバー5は周壁内の爪16bで係止され、バスバー5の右半の上面に電圧検出用の端子13が接触して、同様の爪16bで係止されている。係止でなくインサート成形でバスバー5や端子13をバスバー収容部16内に固定することも可能である。
【0043】
右端の電極(図示せず)はバスバー5と端子13との各孔部5a,13aを貫通して上向きにバスバー収容部16内に突出し、ナット締めで相互に接続される。隣接の電極はバスバー5の左半の孔部を5a貫通して同様にナット締めで接続される。
【0044】
例えば、バスバー収容部16の周壁の前側に、カバー8に対する係合部としての突起12が設けられ、図4の如く、カバー8の孔部13の下側に、突起12に係合する係止部としての可撓性の係止片11が設けられている。この突起12と係止片11はあくまでも一例であり、これら係止手段は必要に応じて適宜設定可能である。
【0045】
図2の如く、サーミスタ収容部18は、所定のバスバー収容部16と後側の電線収容部19との間において、幅狭に(サーミスタ6の厚みの二倍程度の前後方向の幅で)、且つサーミスタ6の左右方向の全長よりも少し長い左右方向長さで、バスバー収容部16の底部側と電線収容部19の底部側とを連結して、バスバー収容部16と電線収容部19とよりも低く配設されている。
【0046】
図3に図2のA−A断面を示す如く、本例のサーミスタ6は、矩形立体状のサーミスタ主体部6aと、サーミスタ主体部6aから斜め上向きに角状に突出した左右一対の可撓性(弾性)の操作アーム6bと、各操作アーム6bの長手(高さ)方向中間部から外向きに略V字状に屈曲して突出した左右一対の弾性アーム6cとで構成されている。
【0047】
サーミスタ主体部6aの上端から二本の電線10が並列に導出されている。サーミスタ主体部6aは外側の絶縁樹脂部(符号6aで代用)と内側のサーミスタ素子部(図示せず)とで成り、電線10はサーミスタ素子部に接続されている。各アーム6b,6cは絶縁樹脂部(6a)と一体に絶縁樹脂材で形成されている。弾性アーム6cは斜め下向きの内側部分6c1と斜め上向きの外側部分6c2とで成る。
【0048】
サーミスタ収容部18は、水平な基壁21に設けられた上下に貫通した横長の開口22と、開口22の中央において基壁21から下向きに短く続く垂下部23と、垂下部23の下端側に直交して設けられた環状の周壁24と、周壁24の内側で上下に貫通した矩形状のサーミスタ挿入用の孔部24aと、開口22の左右端から上向きに延設された垂直な壁部25と、壁部25の上端側で内向きに突出し、サーミスタ6の弾性アーム6cを受ける一対の水平な鍔壁26と、周壁24の上方において基壁21から上向きに鍔壁26と同じ高さまで突出した壁部27と、壁部27から上向きに続き、サーミスタ6の二本の電線10を収容案内する垂直な前向きの左右一対のリブ28とを有している。
【0049】
垂直な一対のリブ28は平行に位置し、各リブ28の突出方向は前向き(水平方向)である。鍔壁26は先端上側に、弾性アーム6cに対する斜め下向きのガイド傾斜面26aを有している。
【0050】
一対の垂直なリブ28は後側の電線収容部19の垂直な前壁29に沿って一体に続き、図2の電線収容部19の水平な壁部30に沿って直交して水平な上向きの一対のリブ31となって一体に続いている。水平な一対のリブ31は平行に位置し、各リブ31の突出方向は上向き(垂直方向)である。
【0051】
水平なリブ31は水平な壁部30の幅方向中央で終端し、一方のリブ31は直交方向に湾曲して、電線案内部32となって水平な壁部30の後半の電線保持用の前後一対の爪部33に続いている。電線収容部19の前後端にはバッテリ上部の突起(図示せず)に係合する可撓性の係止枠片(係止手段)34が下向きに垂設されている。
【0052】
図3の如く、サーミスタ収容部18の孔部24aにサーミスタ主体部6aが上から下向きに挿入され、左右の操作アーム6bの基端6b1が環状の周壁24の上端に当接することで、それ以上の下向きの移動が阻止される。通常使用時には操作アーム6bの基端6b1は周壁24に当接せず、周壁24内にサーミスタ主体部6aが上下方向スライド自在に支持される。弾性アーム6cの先端6c3は鍔壁26の下面に弾性的に当接し、サーミスタ主体部6aを下向きに押圧する。サーミスタ主体部6aの下端面6a1は電池3の上端面3aに弾性的に当接(接触)する(図3ではサーミスタ主体部6aの下死点位置を鎖線で示している)。
【0053】
車両の振動で電池3がサーミスタ主体部6aと一体的に矢印の如く上下に移動することで、サーミスタ主体部6aは電線10と共に固定側の不動なケース7に対して浮き沈みする(弾性アーム6cの撓みストロークの範囲で上下に移動する)。弾性アーム6cの撓みに伴って弾性アーム6cの先端6c3は鍔壁26の下面に沿って水平に摺動可能である。操作アーム6bは作業者が先端部6b1を手で摘んで窄めることで、弾性アーム6cを小さな力でスムーズに鍔壁26に乗り越し係合させることができる。
【0054】
サーミスタ6の電線10は垂直な左右のリブ28の間を通って電線収容部19の水平な左右のリブ31の間に案内され、左右のリブ31の終端から湾曲部32に沿って図2で左側に屈曲案内されて、一対の爪部33の間に保持されて、水平な壁部(基壁)30に沿ってケース7の端部まで配索され、図1の如くケース7の端部から他の電圧検出用の電線と共に外部に導出される。
【0055】
その状態で、図4の如く、カバー8がケース7上に装着されて、図2のバスバー5と電圧検出用端子13とサーミスタ6とその電線10とが覆われて外部との干渉等から安全に絶縁保護される。
【0056】
図4のカバー8は、バスバー5を覆う左右方向の長辺側の部分(板部)8aと、サーミスタ6とその電線10を覆う前後方向の短辺側の部分(板部)8bとで略L字状に構成されている。図1の略コの字状のカバー8も同様に左右方向の部分(板部)8aでバスバー5等を覆い、一方(図で右側)の幅広の前後方向の部分(板部)8bでサーミスタ6とその電線10を覆う。
【0057】
図1の如く、カバー8の前後方向の短辺側の部分8bは、水平な板部(符号8bで代用)の左右端に垂直な両側壁8cを有して、縦断面略逆凹字状(逆樋状)に形成されている。板部8bの裏面がケース7の水平な一対のリブ31(図2)の上端に当接して、一対のリブ31と板部8bとで隙間なく電線10を覆う。
【0058】
また、板部8bの両側壁8cが水平な一対のリブ31の外側に係合して(両側壁8cとリブ31との間に少し隙間はあってもよい)、カバー8を位置決めし、且つ水平なリブ31と両側壁8cとの相乗作用でサーミスタ6の電線10の水平部分(図示せず)を外部へのはみ出しなく安定に保持する。板部8bの先端(後端)は垂直な後壁を有さずに後方に開口しており、電線10をスムーズに後方に(電線収容部19に)挿通可能である。
【0059】
車両の振動等でサーミスタ6が電池3(図3)と一体にケース7に対して浮き沈み方向に進退した際に、サーミスタ6の電線10も同様に左右一対のリブ31(図2)の間で電線長手方向に引っ掛かり等なくスムーズに進退する。
【0060】
電線収容部19の保持用の爪部33はサーミスタ6から垂直なリブ28(図3)と水平なリブ31(図2)とを経て遠く離間しており、各リブ28,31の間の空間35,36が電線10の撓み(弛み)空間として作用し、主にサーミスタ6から電線保持用の爪部33までの範囲で電線10が各リブ28,31の間で伸縮する。従って爪部33が電線10に引張等の悪影響を及ぼすことはない。
【0061】
各爪部33は水平な基板部(壁部)30から縦断面略L字状に上向きに突出しており、上方から一対の爪部33の内側の広いスペース37に細い電線10を押し込んで電線長手方向進退自在に挿通させることで、電線10に引張等の力が作用する心配はない。
【0062】
図4の如く、カバー8の閉止状態で、前後方向の板部8bの先端8b1は電線挿通部19の幅(前後)方向中央に位置し、板部8bの左右端8b2すなわち垂直な両側壁8c(図1)は図2の水平な一対のリブ31の外側に大きく張り出して位置する。図2の鎖線で示す部分38がカバー8の板部8bで覆われる範囲を示す。
【0063】
両側壁8cは水平なリブ31の外側でリブ31と平行に位置し、万一リブ31から電線10が飛び出した場合でも、両側壁8cの内側に電線10が収容されて、外部への電線10の飛び出しが二重に防止される。
【0064】
板部8bの前半は横長のサーミスタ6を弾性アーム6cの左右端の一部を除いて全面的に覆う。図3の如く、サーミスタ6はケース7の底部側に深く挿入されているので、たとえカバー8がなくとも十分に外部との干渉等から保護される。カバー8は主にサーミスタ6の電線10の水平部分を覆って外部との干渉等から安全に保護する。
【0065】
なお、上記実施形態においては、ケース7に一対のリブ31を設けて電線10を案内保護したが、例えばリブ31を設けない場合は、カバー8の両側壁8cの間に電線10を収容することで、電線10を確実に保護することができる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る電源装置のカバー構造は、例えばハイブリッドカーを含む電気自動車のバッテリの温度検知用のサーミスタ等の部品の電線を外部との干渉等なく安全に保護するために利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
1 電源装置
2 バッテリ
4 バスバーモジュール
5 バスバー
6 サーミスタ(センサ部品)
6c 弾性アーム
7 ケース
8 カバー
8b 板部
8c 側壁
10 電線
31 リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリに組み付けられるバスバーモジュールの絶縁性のケースにセンサ部品が該バッテリに接した状態で装着され、該センサ部品の電線が該ケースに沿って配索され、該ケースに、該バスバーと該センサ部品と該電線とを同時に覆う絶縁性のカバーが装着されたことを特徴とする電源装置のカバー構造。
【請求項2】
前記ケースに設けられた一対のリブの間に前記電線が挿通され、該リブの上から前記カバーが該電線を覆うことを特徴とする請求項1記載の電源装置のカバー構造。
【請求項3】
前記カバーが、板部の両側に直交した一対の側壁を有することを特徴とする請求項1記載の電源装置のカバー構造。
【請求項4】
請求項2記載の前記一対のリブの外側に前記一対の側壁が位置することを特徴とする請求項3記載の電源装置のカバー構造。
【請求項5】
前記センサ部品が弾性アームで前記ケースに支持されたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の電源装置のカバー構造。
【請求項6】
前記カバーが前記センサ部品ごとに開閉自在に前記ケースに配置されたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の電源装置のカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−60675(P2011−60675A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211215(P2009−211215)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】