説明

電源装置及び画像形成装置

【課題】圧電トランスを用いて制御性の良い安定した高圧出力を得る。
【解決手段】制御部72から出力される駆動パルスS72により、圧電トランス駆動回路74が動作し、この圧電トランス駆動回路74により圧電トランス75が駆動され、この圧電トランス75からAC高圧が出力される。AC高圧は、整流回路76によりDC高圧に変換される。DC高圧と、DAC53aから出力された目標電圧V53aとは、出力電圧比較手段78により比較され、この比較結果S78が制御部72により矩形波となるように制御される。そのため、低い高圧出力から圧電トランス75の共振周波数に近い高い高圧出力まで、安定した定電圧制御が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電トランスを用いた電源装置と、この電源装置を用いた電子写真等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真式の画像形成装置に用いられる電源装置としては、例えば、下記の特許文献1に記載されているように、圧電振動子の共振現象を利用して低電圧入力で高電圧を発生させることができる圧電トランスを、電圧制御発振器(以下「VCO」という。)の出力信号により制御して高電圧を出力させる構成の装置が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−91757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の電源装置では、次の(a)〜(d)のような課題があった。
(a) VCO等のアナログ回路により構成されているので、部品点数が多くなる。
【0005】
(b) 圧電トランスにおける共振周波数付近の高い出力電圧を利用しようとした場合に、負荷変動によって出力電圧が低下した場合に、共振周波数を越えて低い周波数に制御されてしまうと、制御不能となってしまう。そのため、実質上共振周波数付近の高い高圧出力が利用できない。
【0006】
(c) 制御の時定数は部品定数により選択しなければならず、立ち上がり時間を優先すると、共振周波数付近の制御性が悪化し、逆に、共振周波数付近の制御性を優先すると、立ち上がり時間が長くなってしまうという課題がある。
【0007】
(d) VCOのようなアナログ発振器を使用する回路構成においては、制御目標電圧が低い場合に、スプリアス周波数の影響を受けて制御が困難となる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の電源装置は、クロックを発生する発振器と、前記クロックを分周してパルスを出力する分周手段と、前記パルスに同期して各要素の出現頻度が等しいN個(但し、N;整数)の数列を前記パルスの切り替わり毎に発生する数列発生手段と、前記パルスの分周比を設定する分周比設定手段と、前記パルスにより駆動されるスイッチング素子と、前記スイッチング素子により1次側に断続的に電圧が印加されると2次側から交流の高電圧を出力する圧電トランスとを有している。
【0009】
そして、発生された前記数列と設定された前記分周比とを比較し、M分周(但し、M;正の整数)の前記パルスとM十1分周の前記パルスとを出力し、単位時間当たりの前記M分周のパルスのα個(但し、α;正数)と前記M+1分周のパルスのβ個(但し、β;正数)との分周比平均
(M×α+(M+1)×β)/(α+β)
が、設定された前記分周比と前記数列の発生周期にて完全に等しくなり、且つ、前記数列発生周期より短い期間においても近似した値となることを特徴とする。
【0010】
本発明の画像形成装置は、前記電源装置を有している。
【発明の効果】
【0011】
本発明の電源装置及び画像形成装置によれば、数列発生手段により、パルスに同期して各要素の出現頻度が等しいN個の数列を前記パルスの切り替わり毎に発生するので、低い周波数のクロックの分周でも、低周波分解能の前記パルスが得られ、制御性の良い安定した高圧出力を得ることができる。更に、低い高圧出力から圧電トランスの共振周波数に近い高い高圧出力まで、安定した定電圧制御が可能となる。広い出力範囲を得ることができるので、環境によらず、安定した出力が可能となり、更に濃度段差や横筋のない安定した画像を得ることができる。その上、デジタル回路により実現可能となり、部品点数を大幅に削減できる
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の好ましい実施例の説明を添付図面と照らし合わせて読むと、明らかになるであろう。但し、図面はもっぱら解説のためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【実施例1】
【0013】
(画像形成装置の構成)
図3は、本発明の実施例1における電源装置を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【0014】
この画像形成装置1は、例えば,電子写真式のカラー画像形成装置であり、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、シアン現像器2Cが着脱可能に挿着されている。各現像器2K,2Y,2M,2Cは、各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにそれぞれ接した各色の帯電ローラ36K,36Y,36M,36Cによってそれぞれ一様に帯電される。帯電された各色の感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cは、ブラック発光素子(以下「LED」という。)ヘッド3K、イエローLEDヘッド3Y、マゼンタLEDヘッド3M、シアンLEDヘッド3Cの発光によってそれぞれ潜像を形成される。
【0015】
各現像器2K,2Y,2M,2C内の各色の供給ローラ33K,33Y,33M,33Cが、各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cにトナーを供給し、各色の現像ブレード35K,35Y,35M,35Cにより、各現像ローラ34K,34Y,34M,34C表面に一様にトナー層が形成され、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32C上にトナー像が現像される。各色の現像器2k,2Y,2M,2C内の各クリーニングブレード37K,37Y,37M,37Cは、転写後の残トナーをクリーニングする。
【0016】
ブラックトナーカートリッジ4K、イエロートナーカートリッジ4Y、マゼンタトナーカートリッジ4M、及びシアントナーカートリッジ4Cは、各現像器2K,2Y,2M,2Cに着脱可能に取り付けられ、内部のトナーを各現像器2K,2Y,2M,2Cに供給可能な構造になっている。ブラック転写ローラ5K、イエロー転写ローラ5Y、マゼンタ転写ローラ5M、及びシアン転写ローラ5Cは、転写ベルト8の裏面から転写ニップにバイアスが印加可能に配置されている。転写ベルト駆動ローラ6、及び転写ベルト従動ローラ7は、転写ベルト8を張架しローラの駆動によって用紙15を搬送可能な構造になっている。
【0017】
転写ベルトクリーニングブレード11は、転写ベルト8上のトナーを掻き落とせるようになっていて、掻き落とされたトナーが転写ベルトクリーナ容器12に収容される。用紙カセット13は、画像形成装置1に着脱可能に取り付けられ、転写媒体である用紙15が積載される。ホッピングローラ14は、用紙15を用紙カセット13から搬送する。レジシトローラ16及び17は、用紙15を転写ベルト8に所定のタイミングで搬送する。定着器18は、用紙15のトナー像を熱と加圧によって定着する。用紙ガイド19は、用紙15を排紙トレー20にフェースダウンで排出する。
【0018】
レジストローラ16,17の近傍には、用紙検出センサ40が設けられている。この用紙検出センサ40は、接触又は非接触で用紙15の通過を検出するものであり、このセンサ位置から転写ニップまでの距離と用紙搬送スピードの関係から求まる時間より、転写ローラ5K,5Y,5M,5Cが転写を行う時の電源装置による転写バイアス印加タイミングを決定する。
【0019】
図4は、図3の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
この制御回路は、ホストインタフェース部50を有し、このホストインタフェース部50がコマンド/画像処理部51に対してデータを送受信する。コマンド画像処理部51は、LEDヘッドインタフェース部52に対して画像データを出力する。LEDへツドインタフエース部52は、プリンタエンジン制御部53によってヘッド駆動パルス等が制御され、LEDヘッド3K,3Y,3M,3Cを発光させる。
【0020】
プリンタエンジン制御部53は、用紙検出センサ40からの検出信号等を受信し、高圧制御部60に対して帯電バイアス、現像バイアス、転写バイアス等の制御値を送る。高圧制御部53は、帯電バイアス発生部61と、現像バイアス発生部62と、転写バイアス発生部63とに信号を送る。帯電バイアス発生部61、及び現像バイアス発生部62は、ブラック現像器2K、イエロー現像器2Y、マゼンタ現像器2M、及びシアン現像器2Cの各帯電ローラ36K,36Y,36M,36C及び各現像ローラ34K,34Y,34M,34Cに対してバイアスを印加する。高圧制御部60内の制御部及び転写バイアス発生部63により、本発明の実施例1の電源装置が構成されている。
【0021】
プリンタエンジン制御部53は、ホッピングモータ54、レジストモータ55、ベルトモータ56、定着器ヒータモータ57、及び各色のドラムモータ58K,58Y,58M,58Cを所定のタイミングで駆動する。定着器ヒータ59は、サーミスタ65の検出値に応じてプリンタエンジン制御部53によって温度制御される。
【0022】
(電源装置の構成)
図1は、本発明の実施例1における電源装置の概略を示すブロック図である。
【0023】
この電源装置70は、図4中の高圧制御部60内の制御回路及び転写バイアス発生部63により構成され、各色の転写ローラ5(=5K,5Y,5M,5C)毎に設けられている。各色の電源装置70は、同一の回路構成であるので、以下、1回路のみ説明する。
【0024】
電源装置70は、プリンタエンジン制御部53の出力ポートOUT2から供給されるオン/オフ(以下「ON/OFF」という。)信号と、出力ポートOUT3から供給されるリセット信号RESETとを入力すると共に、プリンタエンジン制御部53内に設けられた第1の目標電圧設定手段である可変電圧出力回路(例えば、10ビット(bit)の分解能を持つデジタル/アナログ変換器(以下「DAC」という。))53aから例えば3.3Vのレンジで出力される第1の目標電圧V53aを入力し、直流(以下「DC」という。)の高圧電圧を生成して転写ローラ5である負荷ZLへ供給する装置である。
【0025】
電源装置70は、一定周波数(例えば、33.33MHz)の基準クロック(以下単に「クロック」という。)CLKを発生する発振器71を有し、この出力側に制御部72が接続されている。制御部72は、例えば、高圧制御部60内に設けられ、発振器71から供給されるクロックCLKに同期して動作し、プリンタエンジン制御部53により制御されて圧電トランス駆動パルス(以下単に「駆動パルス」という。)S72を出力する回路であり、クロックCLKを入力するクロック入力ポートCLK_IN、比較結果S78を入力する入力ポートIN1、プリンタエンジン制御部53の出力ポートOUT2から出力されるON/OFF信号を入力する入力ポートIN2、プリンタエンジン制御部53の出力ポートOUT3から出力されるリセット信号RESETを入力するリセット入力ポートIN3、及び駆動パルスS72を出力する出力ポートOUT1を有している。入力されるON/OFF信号により、出力ポートOUT1からの駆動パルスS72における出力のON/OFFが制御される。入力されるリセット信号RESETにより、出力ポートOUT1に対する出力設定が初期化される。なお、入力ポートIN2において、ON/OFF信号の入力に代えて、オン・リセットという組合せの信号を入力することにより、リセット入力ポートIN3へのリセット信号RESETの入力を省略することも可能である。
【0026】
制御部72は、例えば、特定の用途向けに複数機能の回路を1つにまとめた集積回路であるエーシック(Application Specific Integrated Circuit、以下「ASIC」という。)、中央処理装置(以下「CPU」という。)を内蔵したマイクロプロセッサ、あるいは、ユーザが独自の論理回路を書き込みことができるゲートアレイの一種であるフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(Field Programmable Gate Array、以下「FPGA」という。)等により構成されている。
【0027】
制御部72の出力ポートOUT1と、DC24Vを出力するDC電源73とには、圧電トランス駆動回路74が接続されている。圧電トランス駆動回路74は、スイッチング素子を用いて駆動電圧を出力する回路であり、この出力側に圧電トランス75が接続されている。圧電トランス75は、セラミック等の圧電振動子の共振現象を利用して駆動電圧の昇圧を行い交流(以下「AC」という。)の高圧電圧を出力するトランスであり、この出力側に整流手段(例えば、整流回路)76が接続されている。整流回路76は、圧電トランス75から出力されたACの高圧電圧をDCの高圧電圧に変換して負荷ZLへ供給する回路であり、この出力側に出力電圧変換手段77が接続されている。
【0028】
出力電圧変換手段77は、DCの高圧電圧を低電圧に変換する回路であり、この出力側に、比較手段である出力電圧比較手段78が接続されている。出力電圧比較手段78は、出力電圧変換手段77から出力されたDCの低電圧と、プリンタエンジン制御部内のDAC53aから出力された目標電圧V53aとを比較して、この比較結果S78を制御部72の入力ポートIN1へ入力するものである。
【0029】
なお、図1の電源装置70は、各色の転写ローラ5(=5K,5Y,5M,5C)毎、即ち、チャンネル毎に並置されるが、これらの複数のチャンネルに対して一部を共用する構成にしても良い。例えば、圧電トランス75及び整流回路76等は、複数のチャンネル分必要となるが、発振器71及び制御部72は、1組で共用できる。この場合、制御部72はチャンネル数分の入出力ポートを備えることになる。又、制御部72は、電源装置70内に設けられているが、プリンタエンジン制御部53内の大規模集積回路(以下「LSI」という。)中に設けても良い。
【0030】
図2は、図1の電源装置70における詳細な構成例を示す回路図である。図5は、図2中の圧電トランス75における出力電圧/周波数の特性図である。
発振器71は、電源71aから供給されるDC3.3Vにより動作して発振周波数33.33MHzのクロックCLKを発生する回路であり、DC3.3Vが印加される電源端子VDD、DC3.3Vが印加される出力イネーブル端子OE、クロックCLKを出力するクロック出力端子CLK_OUT、及びグランド端子GNDを有している。クロック出力端子CLK_OUTは、抵抗71bを介して、制御部72のクロック入力ポートCLK_INに接続されている。
【0031】
クロックCLKに同期して動作する制御部72において、駆動パルスS72を出力する出力ポートOUT1には、抵抗72aを介して、圧電トランス駆動回路74が接続され、この圧電トランス駆動回路74にDC電源73が接続されている。DC電源73は、例えば、図示しない低圧電源装置から商用電源であるAC1OOVを変圧整流することにより供給されるDC24Vの電源である。
【0032】
圧電トランス駆動回路74は、スイッチング素子であるパワートランジスタ(例えば、NチャネルパワーMOSFET(以下「NMOS」という。)74aを有し、このNMOS74aのゲート・ソース間に、短絡防止用の抵抗74bが接続されている。NMOS74aのドレインは、インダクタ(コイル)74cを介してDC24VのDC電源73に接続されている。NMOS74aのドレイン・ソース間には、コンデンサ74dが並列に接続され、このコンデンサ74d及びインダクタ74cにより共振回路が構成されている。NMOS74aのゲートに、制御部72からの駆動パルスS72が入力されると、このNMOS74aによりDC24Vがスイッチングされ、これが共振回路により共振されてピークがAC100V程度の正弦波(サイン波)の駆動電圧が出力される。
【0033】
共振回路の出力側には、圧電トランス75の1次側の入力端子75aが接続され、この2次側の出力端子75bから、NMOS74aのスイッチング周波数に応じて0〜数KVのAC高電圧が出力される構成になっている。2次側の出力端子75bの出力電圧特性は、図5に示すように、周波数によって異なり、NMOS74aのスイッチング周波数により昇圧比が決定される。
【0034】
圧電トランス75は、図5に示すように、周波数fxで最大昇圧比を得、周波数fy付近で昇圧比が最小となる。周波数fzは、スプリアス周波数を示す。本実施例1では、スプリアス周波数fzより低い開始周波数fstartから共振周波数fxより高い周波数fendの範囲にて、周波数を制御する構成になっている。
【0035】
2次側の出力端子75bには、AC/DC変換用の整流回路76が接続されている。整流回路76は、圧電トランス75の2次側の出力端子75bから出力されたAC高電圧をDC高電圧に変換して出力する回路であり、ダイオード76a,76b及びコンデンサ76cにより構成されている。整流回路76の出力側には、抵抗76dを介して負荷ZLである転写ローラ5が接続されると共に、出力電圧変換手段77が接続されている。
【0036】
出力電圧変換手段77は、整流回路76のDC高電圧を分圧して低電圧(例えば、DC3.3V以下の低い電圧)に変換する分圧抵抗77a,77bと、その低電圧を保護抵抗77cを介して入力する演算増幅器(以下「オペアンプ」という。)77dからなるボルテージフォロア回路とにより構成されている。例えば、分圧抵抗77aの抵抗値は200MΩ、分圧抵抗77bの抵抗値は100KΩであり、整流回路76から出力されたDC高電圧を1/2001に分圧している。オペアンプ77dには、DC電源73から24Vが印加され、このオペアンプ77dからなるボルテージフォロア回路の出力側に、出力電圧比較手段78が接続されている。
【0037】
出力電圧比較手段78は、DC電源73から24Vが印加される電圧比較器であるコンパレータ78aと、このコンパレータ78aの出力端子をプルアップするDC3.3V電源78b及びプルアップ抵抗78cとにより構成されている。コンパレータ78aは、ボルテージフォロア回路の出力電圧を入力する「−」入力端子と、プリンタエンジン制御部53内のDAC53aから出力された目標電圧V53aを入力する「+」入力端子とを有し、その「−」入力端子の電圧と「+」入力端子の電圧とを比較し、比較結果S78を出力端子から出力して制御部72の入力ポートIN1へ与える回路である。コンパレータ78aの出力端子は、プルアップ抵抗78cを介してDC3.3V電源78bに接続されている。
【0038】
プリンタエンジン制御部53内に設けられた10bitの分解能を持つDAC53aから、例えば、3.3Vのレンジの目標電圧V53aが出力されて、コンパレータ78aの「+」入力端子に入力されると、このコンパレータ78aでは、出力電圧変換手段77の出力電圧と目標電圧V53aとを比較する。
(目標電圧V53a)>(出力電圧変換手段77の出力電圧)
の間は、コンパレータ78aの出力端子が、DC3.3V電源78b及び抵抗77cによりプルアップされてDC3.3V(=高レベル、以下「“H”」という。)となり、この“H”が制御部72の入力ポートIN1に入力される。これに対し、
(目標電圧V53a)<(出力電圧変換手段77の出力電圧)
になると、コンパレータ78aの出力端子が低レベル(以下「“L”」という。)となり、この“L”が制御部72の入力ポートIN1に入力される。
【0039】
(電源装置内の制御部の構成)
図6は、図2中の制御部72を示す構成図である。
【0040】
制御部72は、例えば、ASICにより構成されており、ハードウェア記述言語等により記述されてASIC化されている。これに入力されるクロックCLK及びリセット信号RESETのうち、クロックCLKは同期回路を構成する後述する各回路ブロックに供給され、リセット信号RESETは初期化のために各回路ブロックに供給される。
【0041】
制御部72は、入力ポートIN1に接続されたアップカウンタ81を有している。アップカウンタ81は、コンパレータ78aから出力される比較結果S78の“H”をイネーブル信号enableとして動作を開始し、クロックCLKの立ち上がりパルスによりカウントアップする10bitのカウンタであり、比較結果S78が“L”の間はカウントアップせず、“H”の時のみカウントアップする。アップカウンタ81は、立ち上がりエッジ検出器94の1クロックパルスの立ち上がり入力(RESETe信号)で0にリセットされ、同様に、プリンタエンジン制御部53から与えられるリセット信号RESETの“L”入力によっても0にクリアされ、“L”が保持されている期間はカウントを停止する。このアップカウンタ81の10bit出力信号は、次段のデータラッチ(以下「Dラッチ」という。)82に出力される。
【0042】
Dラッチ82は、立ち上がりエッジ検出器94から出力される1クロックパルスの立ち上がり信号の入力(set)で、アップカウンタ81の10bit出力信号を保持し、この保持した10bit信号値を第1、第2の比較器83−1,83−2に出力し、入力されるリセット信号RESETの“L”により10bit信号値が0にクリアされる。第1の比較器83−1は、クロックCLKの立ち上がりエッジ毎に、Dラッチ82の出力信号と第1の除算器84−1の出力信号とを比較し、
(Dラッチ82の出力信号)<(除算器84−1の出力信号)
の時に、論理積(以下「AND」という。)回路85に“L”を出力し、前記以外の条件で“H”を出力する。第2の比較器83−2は、クロックCLKの立ち上がりエッジ毎に、Dラッチ82の出力信号と第2の除算器84−2の出力信号とを比較し、
(Dラッチ82の出力信号)>(除算器84−2の出力信号)
の時に、AND回路85に“L”を出力し、前記以外の条件で“H”を出力する。
【0043】
第1の除算器84−1は、クロックCLKの立ち上がりエッジ毎に、分周カウンタ88の10bit出力信号を1bit右シフト(除算)して最上位bitに0を入力する。言い換えれば、最下位bitを切り捨てて分周カウンタ88の値を1/2にして第1の比較器83−1に出力する。第2の除算器84−2は、クロックCLKの立ち上がりエッジ毎に、分周カウンタ88の10bit出力信号を2bit右シフト(除算)して最上位から2bitに0を入力する。言い換えれば、最下位2bitを切り捨てて分周カウンタ88の値を1/4にして第2の比較器83−2に出力する。
【0044】
タイマ(分周器)86は、1280Hサイクル(即ち、4736サイクル、142.08μsec)毎に1クロックのパルスを出力する。ここで言う1クロックとは、発振器71から出力されるクロックCLKからの入力クロックである。出力される1クロックの“H”の出力信号は、AND回路85に入力される。
【0045】
AND回路85は、第1、第2の比較器83−1,83−2それぞれの出力信号とタイマ(分周器)86の出力信号とのANDを取って分周比設定手段(例えば、6bitカウンタ)87に出力する。AND回路84において、第2の比較器83−2の出力信号が“H”の場合にはタイマ(分周器)86のパルスとANDが取られて、6bitカウンタ87のカウントアップパルスupが出力され、第1の比較器83−1の出力信号が“H”の場合にはタイマ(分周器)86のパルスとANDが取られて、6bitカウンタ87のカウントダウンパルスdownが出力される。第1の比較器83−1と第2の比較器83−2の出力信号は、前述した論理により常にどちらか片方のみ“H”又は両方“L”となる。
【0046】
6bitカウンタ87は、リセット信号RESETの“L”入力時に0にクリアされる。クロックCLKの立ち上がりに同期してAND回路85から出力される比較器83−2とタイマ(分周器)86のAND出力が“H”の場合に、6bitカウンタ87を+1カウントアップし、AND回路85から出力される比較器83−1とタイマ(分周器)86のAND出力が“H”の場合に、6bitカウンタ87を−1カウントダウンする。6bitカウンタ87のカウント値は、第3の比較器83−3に出力される。更に、カウントアップ時の6bitカウンタ87の値が11111bから00000bになる場合に、分周カウンタ88に対してオーバフロー信号overの“H”を出力し、カウントダウン時の6bitカウンタ87の値が00000bから11111bになる場合に、分周カウンタ88に対してアンダフロー信号underの“H”を出力する。
【0047】
分周カウンタ88は、リセット信号RESETが“L”の時にカウンタ初期値レジスタ95のに設定され、オーバフロー信号overの立ち上がりエッジでカウントアップし、アンダフロー信号underの立ち上がりエッジでカウントダウンする。カウントアップ時は、分周カウンタ88の値とカウンタ上限値レジスタ96の値とを比較して、値が等しくない場合のみカウントアップし、カウントダウン時は、分周カウンタ88の値とカウンタ初期値レジスタ95とを比較して、値が等しくない場合のみカウントダウンを行う。分周カウンタ88の10bit値は、第1の除算器84−1、除算器84−2、分周セレクタ90、及び減算器89に出力される。
【0048】
カウンタ初期値レジスタ95は、10bitのレジスタであり、分周カウンタ88に10bitの信号を出力する。カウンタ上限値レジスタ96は、10bitのレジスタであり、分周カウンタ88に10bitの信号を出力する。この両レジスタ95,96は一定値を保持する。減算器89は、分周カウンタ88の10bit出力信号から−1減算した値を分周セレクタ90に出力する。分周セレクタ90は、第3の比較器83−3から出力される選択信号selectが“L”の時に、分周カウンタ88の10bit値を分周手段(例えば、分周器)91に出力し、選択信号selectが“H”の時に、減算器89の10bitの値を分周器91に出力する。
【0049】
分周器91は、クロックCLKの立ち上がりでカウントアップする10bitカウンタを内部に有し、分周セレクタ90からのl0bit出力値、及び10bit出力値を約30%にした値、正確には10bit出力値の1/4値、1/32値、1/64値の和、即ち分周セレクタ90の10bit出力信号をそれぞれ右シフト2bit、右シフト5bit、右シフト6bitした値との比較を行い、分周セレクタ90の出力信号の30%値と等しくなった時に、この分周器出力を“L”とし、分周セレクタ90の出力信号と等しくなった時に、この分周器出力を“H”にすると同時に、内部のカウンタを0にクリアする。以上の動作によって、分周器91はクロックCLKを分周セレクタ出力値で分周した周波数で、約30%のONデューティのパルスを出力する。
【0050】
本実施例1では、周波数33.33MHzのクロックCLKを圧電トランス駆動周波数である約110〜130KHzに分周し、この分周比は256〜303程度の範囲となるので、正確にはデューティは29.3〜30.0%となる。この範囲のデューティ変動は、本実施例1の回路においては出力電圧変動に殆ど影響を及ぼさない。又、本実施例1においては、1サイクルで演算できる例として、前記シフト値の和で表わしたが、分周パルス周波数は100KHz台と動作周波数33.33MHzに対して十分低いので、正確に30%となる演算を用いることも可能である。
【0051】
出力セレクタ93は、プリンタエンジン制御部53から出力されるON/OFF信号が“H”の時に、分周器91の出力信号を選択し、ON/OFF信号が“L”の時に、グランド電位の“L”を選択し、駆動パルスS72として出力ポートOUT1に出力する。分周器91は、リセット後、カウンタ初期値の分周比で常にパルスを出力するが、外部からのON/OFF信号がOFFの間は駆動パルスを出力しない。
【0052】
数列発生手段(例えば、6bit数列発生器)92は、出力セレクタ93から出力される駆動パルスS72の立ち上がりエッジで数列を第3の比較器83−3に出力する。数列は、64周期で各要素の出現頻度が等しいものである。第3の比較器83−3は、6bit数列発生器92の出力値と6bitカウンタ87の出力値とを比較し、
(6bitカウンタ87の出力値)>(6bit数列発生器92の出力値)
の時に、分周セレクタ90に選択信号selectの“L”を出力し、それ以外の条件で、分周セレクタ90に“H”を出力する。
【0053】
立ち上がりエッジ検出器94は、出力セレクタ93から出力される駆動パルスS72の立ち上がりエッジを検出すると、その立ち上がりエッジに1サイクル遅れて1クロックのパルスを出力する。この出力パルスは、アップカウンタ81のリセット信号reset、Dラッチ82のセット信号setとして出力される。
【0054】
図7は、図6中の6bit数列発生器92を示す構成図である。
6bit数列発生器92は、内部にカウント手段(例えば、6bitカウンタ)92aを有している。6bitカウンタ92aは、クリア端子CLRに入力されるリセット信号RESETにより0にクリアされ、出力セレクタ93から出力される駆動パルスS72をCLK入力端子から入力してカウントし、このカウント値を出力端子QO〜Q6に出力する。6bit数列発生器92は、その各出力端子Q0〜Q6の出力信号におけるビット配列を上位下位の順序を逆にして、即ち上下入れ替えた数列bit5〜bit0を第3の比較器83−3に出力する。
【0055】
なお、図6の制御部72は、ASICにより構成されているが、FPGAやマイクロプロセッサのモジュール等として構成しても良い。
【0056】
(画像形成装置の全体の動作)
図3及び図4において、画像形成装置1は、図示しない外部機器からホストインタフェース部50を介してPDL(Page Description Language、ページ記述言語)等で記述された印刷データが入力されると、この印刷データは、コマンド/画像処理部51によってビットマップデータ(画像データ)に変換され、LEDヘッドインタフェース部52及びプリンタエンジン制御部53へ送られる。プリンタエンジン制御部53により、サーミスタ65の検知値に応じて定着器18内のヒータ59が制御され、定着器18内の熱定着ローラが所定の温度になり、印字動作が開始される。
【0057】
給紙カセット13にセットされた用紙15は、ホッピングローラ14で給紙される。以降説明する画像形成動作に同期したタイミングで、レジストローラ16,17によって用紙15が転写ベルト8上に搬送される。各色の現像器2K,2Y,2M,2Cにおいて、電子写真プロセスにより、各感光体ドラム32K,32Y,32M,32Cにトナー像が形成される。この時、前記ビットマップデータに応じて各LEDヘッド3K,3M、3Y,3Cが点灯される。各色の現像器2K,2Y,2M,2Cによって現像されたトナー像は、電源装置70から各転写ローラ5K,5Y,5M,5Cに印加された高電圧のDCバイアスにより、転写ベルト8上を搬送される用紙15に転写される。用紙15に4色のトナー像が転写された後、定着器18によって定着されて排紙される。
【0058】
(電源装置の動作)
先ず、図1の電源装置70における概略の動作を説明する。
【0059】
カラー画像装置において転写は4出力となるが、4回路とも同じ構成となるので、本実施例1では、1出力の電源装置70について動作を説明する。
【0060】
プリンタエンジン制御部53内に設けられた10bitのDAC53aは、目標電圧V53aを電源装置70内の出力電圧比較手段78に出力し、電源装置70から出力されるDC高電圧を設定する。例えば、DC高電圧が5KVなら目標電圧V53aは2.5Vである。即ち、10bitのDAC53aなので16進数に変換して307Hの値を設定して、DAC53aから2.5Vの目標電圧V53aを出力電圧比較手段78に出力する。この時、プリンタエンジン制御部53は、出力ポートOUT2から制御部72へ出力するON/OFF信号をOFFにすると共に、出力ポートOUT3から制御部72へリセット信号RESETを出力して、制御部72をリセットする。
【0061】
制御部72は、プリンタエンジン制御部53からのON/OFF信号に従って、発振器71から出力されるクロックCLKを分周した駆動パルスS72を圧電トランス駆動回路74に出力する。制御部53は、出力電圧比較手段78から入力される比較結果S78の状態によって分周比を変化させる。圧電トランス駆動回路74は、DC電源73から供給されるDC24Vを、駆動パルスS72によりスイッチングして駆動電圧を生成し、圧電トランス75の1次側に与える。これにより、圧電トランス75の1次側が駆動されて2次側からAC高電圧が出力され、これが整流回路76により整流されてDC高電圧が転写ローラ5である負荷ZLへ供給される。
【0062】
出力電圧変換手段77は、整流回路76から出力されたDC高電圧を例えば1/2001の電圧に変換し、出力電圧比較手段78に与える。出力電圧比較手段78は、DAC53aからの目標電圧V53aと、出力電圧変換手段77の出力電圧とを比較し、この比較結果S78を制御部72に与える。目標電圧V53aより出力電圧変換手段77の出力電圧が低い場合には、制御部53からTTLレベルで“H”のON/OFF信号が出力され、出力電圧変換手段77の出力電圧が目標電圧V53aより高くなると、制御部53から“L”のON/OFF信号が出力される。
【0063】
出力電圧変換手段77の出力電圧がほぼ目標電圧V53aになった場合、出力電圧変換手段77の出力電圧は、圧電トランス75の2次側AC高電圧を整流回路76により整流してもAC成分であるリップルが残り、DAC53aから出力される目標電圧V53aがほぼ安定したDC電圧であるので、圧電トランス駆動回路74に入力される駆動パルスS72とほぼ同期した矩形波が出力電圧比較手段78から出力される。
【0064】
図8は、図2の電源装置70における動作波形図である。
この図8を参照しつつ、図2の電源装置70における詳細な動作を説明する。
【0065】
プリンタエンジン制御部53は、出力ポートOUT3から出力するリセット信号RESETを“L”にして、制御部53における出力ポートOUT1の種々の設定をリセットする。このリセット信号は“L”trueの信号である。このリセット動作により、出力ポートOUT1出力の分周比等の値が初期値となる。
【0066】
プリンタエンジン制御部内のDAC53aは、高圧出力の目標電圧値に対する指示電圧である目標電圧V53aを出力する。例えば、高圧出力が5KVの場合には2.5Vを出力する。この場合、3.3V、10bitのDAC53aであるので、内部の所定のレジスタに307Hを設定する。DAC53aから目標電圧V53aを出力した後、リセット信号RESETを“H”に切り替える。制御部72はリセットが解除されると、初期値にてクロック入力ポートCLK_INから入力されるクロックCLKを初期値の分周比、ONデューティ30%で分周する。但し、プリンタエンジン制御部53の出力ポートOUT2から出力されるON/OFF信号が“L”の間は、出力ポートOUT1からは分周された駆動パルスS72が出力されず、出力ポートOUTlの出力は“L”に保持される。
【0067】
制御部53のクロック入力ポートCLK_INには、抵抗71bを介して発振器71が接続されている。発振器71は、電源71aから電源端子VDDとアウトプットイネーブル端子OEにDC3.3Vが供給され、電源没入直後から発振周波数33.33MHz、周期30nsecのクロックCLKをCLK端子から出力する。
【0068】
出力ポートOUT1が“L”に保持されている間は、圧電トランス駆動回路74内のNMOS74aはOFFしているので、圧電トランス75の1次側入力端子75aには、DC電源73から供給されるDC24Vがそのまま印加される。この状態では、DC24Vの電流値はほぼ0であり、圧電トランス75も振動していないので、圧電トランス75の2次側出力端子75bも0Vであり、出力電圧変換手段77内のオペアンプ77dの出力電圧は“L”である。
【0069】
出力電圧比較手段78内のコンパレータ78aは、前記状態では「+」入力端子に2.5V、「−」入力端子にはオペアンプ77dの“L”が入力されている。そのため、オペアンプ78aの出力端子は、電源78bでプルアップされたDC3.3Vとなっており、制御部72の入力ポートIN1には“H”が入力される。
【0070】
次に、プリンタエンジン制御部53は、所定のタイミングで出力ポートOUT2から出力するON/OFF信号を“H”にし、高電圧出力(以下単に「高圧出力」という。)をON状態にする。制御部72は、ON/OFF信号が入力される入力ポートIN2が“H”になると、初期値にて分周した駆動パルスS72を出力ポートOUT1から出力する。本実施例1では、例えば、初期値は290分周であり、1周期8.7μsec、ONデューティ29%である。出力ポートOUT1から出力された駆動パルスS72により、圧電トランス駆動回路74内のNMOS74aがスイッチングされ、インダクタ74cとコンデンサ74d及び圧電トランス75により、この圧電トランス75の1次側入力端子75aには、図8に示すような数十Vの半波サイン波が印加される。
【0071】
これにより、圧電トランス75が振動して、2次側出力端子75bから昇圧されたAC高電圧が発生する。この場合、290分周、114.94KHzの駆動周波数では数百Vの出力である。2次側出力端子75bのAC高電圧は、整流回路76により整流されてDC電圧になり、これが出力電圧変換手段77内の200MΩの抵抗77a及び100KΩの抵抗77bにより分圧される。そして、オペアンプ77dを通して出力電圧比較手段78内におけるコンパレータ78aの「−」入力端子に入力された電圧は、DAC53aから出力された目標電圧V53aの2.5Vより低い。そのため、コンパレータ78aの比較結果S78は、DC3.3V電源78bによりプルアップされた“H”となる。
【0072】
図9−1〜図9−7は、制御部72の分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。図10は、図2の電源装置70における高圧出力のオーバシュートとコンパレ一タ出力との関係を示す動作波形図である。
【0073】
図9−1〜図9−4に示すように、制御部72の動作により、この出力ポートOUT1からはN分周された駆動パルスS72が64回繰り返し出力される。この時点で、制御部72の入力ポートIN1は“H”入力であるので、制御部72は、タイマ(分周器)86から出力されるパルス毎に、64個の駆動パルスS72のうち1つずつ分周比を増加させる。タイマ(分周器)86の周期は、1280H(即ち、10進数で4736クロック周期の142.08μsec周期)である。分周比を変化させるタイミングは、64個の駆動パルスS72の区切りと同期を取る必要はなく、任意に設定可能である。図9−1〜図9−7に示すように、64個の駆動パルスS72に対して分周比設定値の小数部の値0/64〜63/64に応じてN分周の駆動パルスS72とN+1分周の駆動パルスS72を出力する。コンパレータ78aの比較結果S78が“H”の間は、図示しない分周比の小数部4/64〜11/64のタイムチャートにおいて、順次分周比の小数部を1つずつ増加させ、N+1分周の駆動パルスS72を1/64,2/64,・・・と増加させていく。分周比が64個の駆動パルスS72中の1個ずつ増えることにより、出力ポートOUT1から出力される駆動パルスS72の平均周波数が下がっていく。分周比設定値は、整数部と小数部合せて64個周期の駆動パルスS72が出力されると、設定された周波数と周波数平均値が等しくなるが、例えば、図9−5に示される分周比の小数部37/64の時の平均周波数は64パルスで、
{27×N+37×(N+1)}/64=N+40/64=N+0.578125
となる。又、半分の32パルスでは、
{13×N+19×(N+1)}/32=N+19/32=N+0.59375
となり、更に半分の16パルスでは、
{6×N+10×(N+1)}/16=N+10/16=N+0.625
となり、同じ平均周波数となる。8パルスでは、
{3×N+5×(N+1)}/8=N+3/8=N+0.625
となる。
【0074】
このように、64パルスでどの設定値においても平均周波数となるが、それより短い期間に平均周波数に近似する。圧電トランス75は、周期の異なる駆動電圧を混在させて駆動させると、与えた駆動電圧の平均周波数で振動するが、このように平均周波数が短い時間で平均値に近くなるように駆動させると、リップルの少ない出力電圧が得られる。
【0075】
圧電トランス75の駆動周波数を下げるに従い、整流回路76から出力されるDC高電圧は上昇し、その結果、オペアンプ77dの出力電圧も上がっていく。圧電トランス75から出力されるAC高電圧は、出力ポートOUT1から出力される駆動パルスS72の周波数変化より若干の時間遅れを伴って出力電圧が上昇するので、オペアンプ77dの出力電圧は2.5Vを僅かに越える。その結果、コンパレータ78aの比較結果S78は“L”となる。制御部72は、入力ポートIN1の入力が“L”に保持されると、今度は逆に分周比の小数部を1/64ずつ減じていく。減じた時の動作は、図9−1〜図9−7に示すように、小数部の値に応じて平均周波数を上げる方向に設定値を変化させる。前述したオーバシュートを経てオペアンプ77dの出力実効値は2.5Vとなり、図8に示すように、コンパレータ78aの比較結果S78が矩形波となる。
【0076】
図8の破線で示す出力電圧変換手段77の出力電圧(即ち、オペアンプ77dの出力電圧)は、圧電トランス75のAC出力成分がリップルとして残り、完全にフラットなDC電圧とはならない。これに対し、DAC53aから出力される目標電圧V53aは、図8の実線で示すDC電圧となり、結果としてコンパレータ78aから出力される比較結果S78(即ち、出力電圧比較手段78の出力電圧)は矩形波となる。制御部72は、この矩形波のデューティを出力ポートOUT1パルス周期毎にカウントし、デューティが25%<Duty<50%であれば、目標電圧V53aに到達したとして、分周比を固定し、デューティが50%以上の場合は、高圧出力が上昇するように平均周波数が下がる方向に制御する。更に、デューティが25%以下の場合には、高圧出力が下降するように平均周波数が上がる方向に制御する。図10に示すように、前記オーバシュートは、駆動周波数を連続して変化させたことによって発生するもので、目標電圧V53aに到達すると安定した定電圧制御となる。
【0077】
負荷ZLが変動して電源装置70の高圧出力が変化した場合には、それによってコンパレータ78aから出力される比較結果S78も“H”又は“L”となるので、前記同様、周波数を変化させて目標電圧V53aに追随するように制御される。
【0078】
(電源装置内の制御部の動作)
図9−1〜図9−7を参照しつつ、電源装置70内における図6及び図7に示す制御部72の動作例を説明する。
【0079】
先ず、入力ポートIN3からリセット信号RESETが入力されて各カウンタ等が初期化される。分周カウンタ88には、カウンタ初期値レジスタ95の値が入力され、分周カウンタ88が値290にセットされる。減算器89によって分周セレクタ90には、分周カウンタ88の値290と減算器89の値289が入力され、初期状態では後者の減算器89の値289が分周器91に入力される。分周器91は、0〜289までクロックをカウントする毎にパルスを出力する。これにより、290分周パルスが分周器91から出力セレクタ93に出力される。出力セレクタ93は、入力ポートIN2から入力されるON/OFF信号がONである“H”となった場合に駆動パルスS72を出力し、そうでない場合は出力“L”を保持する。
【0080】
6bitカウンタ87は、小数点以下の分周比を示すカウンタである。分周比は290分周から開始し、291分周となるまでの間、64個のパルスの分周比を1/64,2/64,・・・,63/64と1つずつ変化させていく。初期値000000bは、290分周のパルスが64個あることを示し、111111bは、291分周のパルス63個と290分周のパルスが1個あることを示す。図9−1〜図9−7に、各設定値に対する分周比が示されている。
【0081】
図9−1〜図9−7でN分周となっているのが、この場合、290分周であり、N+1分周となっているのが、この場合291分周である。6bitカウンタ87の値が111111bからカウントアップして000000bとなる場合は、最上位ビットの繰り上がりとしてオーバフローoverを出力し、分周カウンタ88をカウントアップする。又、6bitカウンタ87の値が000000bからカウントダウンして111111bとなる場合は、アンダフローunderを出力し、分周カウンタ88をカウントダウンする。この時、分周カウンタ88がカウンアップする場合、カウンタ上限値レジスタ96のレジスタ値と比較し、上限値と等しい場合はカウントアップしない。これに対してカウントダウンする場合に、カウンタ初期値と等しい場合にはカウントダウンしない。
【0082】
上限値は、本実施例1では301とし、その結果、301分周パルス1個と302分周パルス63個の組合せから、110.38KHzが最低平均駆動周波数となる。上限値と等しい場合、6bitカウンタ87は、111111bから000000bに変化し、分周カウンタ88の値が変化しないので、301分周のパルス64個になり、平均駆動周波数が110.38KHzから110.74KHzに上がる。駆動平均周波数の変化がこの場合、0.36KHzの変化となるが、制御範囲を越えて周波数が変化しようとする場合のみであるので、問題はない。
【0083】
なお、本実施例1では、6bitカウンタ87が111111bから000000bに変化し、且つ、分周カウンタ88の値が固定となっているが、6bitカウンタ87のカウントアップも停止する回路構成としても構わない。
【0084】
本実施例1の負荷ZLである転写ローラ5に供給される転写バイアスは、電圧1〜5KVの範囲を想定しており、開始分周比290分周114.9KHzでは、負荷ZLによらず高圧出力が1KV未満であるので、下限値となって6bitカウンタ87が00000bから11111bに変化し、且つ、分周カウンタ88の値が290のまま変化せず、周波数が290分周32個の114.94KHzから290分周1個+291分周63個の114.55KHzに下がっても問題はない。なお、6bitカウンタ87のカウントダウンを停止する回路構成としても構わない。
【0085】
分周器91は、分周セレクタ90により、分周カウンタ88に設定された値及びその値から−1減算された値の分周比のパルスを交互に出力する。交互に出力する割合は、6bit数列発生器92において、分周器91から出力セレクタ93を経由して出力されるパルスを64個毎にカウントした値のビット配列を、図7に示すように並べ替えて、数列bit5〜bit0を出力し、比較K器83−3により6bitカウンタ87のカウント値と比較して切り替える。切り替えることにより、前記図9−1〜図9−7に示された分周比にて駆動パルスS72が出力される。
【0086】
分周時は、分周カウンタ88の値を下記演算により約30%のカウント値を求め、ONデューティを30%とした駆動パルスS72を出力する。
(分周カウンタ値/4)+(分周カウンタ値/32)+(分周カウンタ値/64)
6bit数列発生器92の値は、比較器83−3に入力され、6bit数列発生器92の値と6bitカウンタ87の値とが比較され、
6bitカウンタ87の値>6bit数列発生器92の値
となった時に、比較器83−3から分周セレクタ90に対して選択信号selectの“L”が出力され、そうでない場合に、分周セレクタ90に対して選択信号selectの“H”が出力される。分周セレクタ90は、比較器83−3からの選択信号selectが“L”の場合は、分周カウンタ88の値を選択して分周器91に出力し、“H”の場合は、減算器89の値を選択して分周器91に出力する。
【0087】
立ち上がりエッジ検出器94は、分周器91から出力セレクタ93を経由して出力される駆動パルスS72の立ち上がりエッジを検出すると、クロックCLKに同期した1クロックのパルスを出力する。言い換えれば、分周器91に同期した同じ周波数でONデューティ1サイクルのパルスを1サイクル遅延して出力する。このパルスは、分周器91から出力されるパルス毎に、アップカウンタ81がカウントを行うためのリセット信号resetとなり、このリセット信号resetによりアップカウンタ81がリセットされ、0にクリアされる時に、直前の値をDラッチ82に保持させるためのセット信号setとなる。
【0088】
タイマ(分周器)86は、クロックCLKのパルスをカウントし、所定のタイミング(例えば、142.08μsec)でONデューティ1サイクルのパルスを出力する。前記142.08μsecは、周波数を変化させる制御周期であり、本実施例1に記載された値に限らない。タイマ(分周器)86から出力されるパルスは、AND回路85に入力され、図2のコンパレータ78aから出力される比較結果S78の信号状態によって、平均周波数を変化させるための6bitカウンタ87のカウントアップ/ダウンを行う信号となる。
【0089】
なお、平均周波数は、64パルス毎に目標電圧V53aの値と完全に等しくなるように設定されているが、64パルス未満でも、近似した周波数となっているので、64パルスの周期より短い周期であっても良いし、64パルスの整数倍ではない64パルス以上の長い周期であっても良い。
【0090】
共振周波数近傍では、駆動周波数変化0.1KHz当たり出力電圧変化が500V程度と大きい図2の圧電トランス75の場合に、平均周波数変化ステップを前記のように細かく設定できるようにする必要があった。又、平均周波数が収束するまでの時間もなるべく短くした方が、DC高圧出力のリップルが少なくなる。
【0091】
アップカウンタ81、Dラッチ82、比較器83−1,83−2、除算器84−1,84−2及びAND回路85により、分周器91から出力されるパルス周期で、図2のコンパレータ78aから出力される比較結果S78のデューティが25〜50%か、50%以上か、あるいは25%以下かの3状態によって、平均周波数を制御するための6bitカウンタ87のカウントアップ信号up/カウントダウン信号downを出力している。AND回路85には32回、3状態の結果が出力されるが、AND回路85はそのうちの1回を立ち上がりエッジ検出器94のクロックに同期して出力する。
【0092】
なお、本実施例1では、142.08μsec周期のうち1パルスの期間のみの結果を使用しているが、前記期間の複数パルスから得た結果の平均から前記3種、カウントアップ、カウントダウン、保持の3信号状態を選択する回路構成にしても構わない。本実施例1では、カウントアップ、カウントダウン、保持の3信号状態であるが、カウントアップ、カウントダウンの2信号状態でも構わない。又、本実施例1では、説明のために小数部6bitの分解能で説明したが、この値に限らない。10bitにして1024パルス周期としても良い。分解能を10bitとした場合に、前記小数部設定周期142.08μsecは出力電圧分解能が細かくなるため、短い周期とできる。
【0093】
アップカウンタ81は、10bitのカウンタであり、クロックCLKのパルスをカウントする。この時、図2のコンパレータ78aから出力される比較結果S78が“H”の時はカウントアップし、その比較結果S78が“L”の場合には値を保持する(カウントアップしない)。このアップカウンタ81は、立ち上がりエッジ検出器94から出力されるパルス(即ち、リセット信号reset)によりリセットされる。
【0094】
Dラッチ82は、立ち上がりエッジ検出器94から出力されるパルスの立ち上がりエッジでアップカウンタ81の値をラッチする。この動作で、出力セレクタ93により分周器91の出力信号が選択されている時は、常に分周器91の1パルス周期間のコンパレ一タ比較結果S78の“H”期間、サイクル数をDラッチ82に保持することとなる。
【0095】
第1の除算器84−1は、分周カウンタ88の10bit値を1bit右シフトした値9bitに対して、最上位bitに0を付加して分周カウンタ88の1/2値を保持する。1/2除算時は、分周カウンタ88の10bit値の最下位bitが切り捨てられる。第2の除算器84−2は、分周カウンタ88の10bit値を2bit右シフトした値8bitに対して、最上位2bitに0を付加して分周カウンタ88の1/4値を保持する。1/4除算時は、分周カウンタ88の10bit値の最下位2bitが切り捨てられる。
【0096】
第1の比較器83−1は、Dラッチ82の値と第1の除算器84−1との値を比較する。比較した結果が、
(Dラッチ82の値)<(除算器84−1の値)
の場合には、“L”をAND回路85に出力し、そうでない場合は、AND回路85に“H”を出力する。言い換えれば、除算器84−1の分周器91から出力されるパルス周期の50%以上、コンパレータ比較結果S78が“H”の場合に、AND回路85に“H”を出力する。AND回路85に、立ち上がりエッジ検出器94から立ち上がりパルスが入力される時に、この信号が“H”となっていると、6bitカウンタ87をカウントダウンする信号downが出力される。コンパレータ比較結果S78は、高圧出力が目標電圧V53aより低い間は“H”となるので、目標電圧V53aに到達するまでは6bitカウンタ87のカウント値を減算し、分周器91から出力されるパルスの平均周波数を下げる方向に制御される。コンパレータ比較結果S78の“H”期間が分周器91の出力パルス幅の50%より短くなると、6bitカウンタ87へのカウントダウン信号downは“L”となってカウントダウンは行われなくなる。
【0097】
第2の比較器83−2は、Dラッチ82の値と第2の除算器84−2の値とを比較する。比較した結果が、
(Dラッチ82の値)>(除算器84−2の値)
の場合には、“L”をAND回路85に出力し、そうでない場合は、AND回路85に“H”を出力する。言い換えれば、除算器84−2の分周器91から出力されるパルス周期の25%以下、コンパレータ比較結果S78が“L”の場合に、AND回路85に“H”を出力する。AND回路85に、立ち上がりエッジ検出器94から立ち上がりパルスが入力される時に、この信号が“H”となっていると、6bitカウンタ87をカウントアップする信号upが出力される。コンパレータ比較結果S78は、高圧出力が目標電圧V53aより高い間は“L”となるので、目標電圧V53aに到達するまでは6bitカウンタ87のカウント値を加算し、分周器91から出力されるパルスの平均周波数を上げる方向に制御される。コンパレータ比較結果S78の“H”期間が分周器91の出力パルス幅の25%より長くなると、6bitカウンタ87へのカウントアップ信号upは“L”となってカウントダウンが行われなくなる。
【0098】
以上、2つの比較器83−1,83−2の出力信号により、6bitカウンタ87のカウント値はアップ/ダウンする。コンパレータ比較結果S78の分周器91のパルスに対する“H”デューティが25〜50%となった場合には、6bitカウンタ87の値を保持して平均周波数が固定される。
【0099】
図8に、コンパレータ比較結果S78が目標電圧V53aになった時の波形が示されている。目標電圧設定手段であるDAC53aから出力される実線の目標電圧V53aと、出力電圧変換手段77から出力される破線の電圧とを、コンパレータ78aで比較した結果、この比較結果S78の矩形波が出力される。このデューティが25〜50%となるまで、平均周波数を上下させて出力電圧を制御する。
【0100】
なお、本実施例1では、比較結果S78を示す矩形波のデューティを25〜50%としたが、この値に限るものではない。回路を簡易なものとして前記の値としたが、コンパレータ比較結果S78が、圧電トランス駆動回路74に入力されるスイッチング手段であるNMOS74aに印加されるパルス周期内で“H”と“L”の期間をそれぞれ有していれば良く、出力電圧変換手段77から出力される電圧の実効値とDAC53aの出力電圧が完全に等しくなる必要はない。本発明の目的は、目標電圧設定手段であるDAC53aから出力される電圧値によって安定した定電圧制御を行うことであり、目標電圧設定手段であるDAC53aの10bit値と高圧出力の関係とは、実験等により算出した式、あるいはテーブル等を用いても良い。
【0101】
図10に、高圧出力と周波数制御の関係の動作波形図が示されている。制御部72の入力ポートIN2に入力されるON/OFF信号を“H”にすると、出力セレクタ93から駆動パルスS72が出力され、高圧出力が立ち上がる。コンパレータ比較結果S78が“H”の間は、平均周波数を約6Hzずつ下げていく。高圧出力が目標電圧V53aに到達すると、コンパレータ比較結果S78が“L”となり、今度は平均周波数を約6Hzずつ上げていく。目標電圧V53aになると、コンパレータ比較結果S78が矩形波となり、周波数が固定されて定電圧が出力される。この状態で図2の負荷変動や圧電トランス75の状態によって高圧出力が上下しても、コンパレータ比較結果S78が変化するので、直ちに所定電圧になるよう平均周波数が制御される。
【0102】
図2のプリンタエンジン制御部53は、所定のタイミングでON/OFF信号を“L”にすることにより、高圧出力をOFFする。次のON/OFF信号を“H”にするまでの間に、リセット信号RESETを“L”にして制御部72内のカウンタ等を再度初期化する。
【0103】
(実施例1の他の変形例)
本実施例1では、前述した変形例の他に、更に、以下の(a)〜(k)のような変形例を採用することも可能である。
【0104】
(a) 本実施例1では、リセット信号RESETとON/OFF信号を設けているが、ON/OFF信号の“L”時をリセット信号RESETとしても良い。
【0105】
(b) 発振器71から供給されるクロックCLKの周波数は33.33MHzとしたが、他の周波数であっても構わない。分周比を変化させるパルスを6bit、即ち64個の組としたが、本実施例1の6bitより大きな値(例えば、7bit,8bit,9bit,10bit等)あるいは小さな値(例えば、5bit,4bit等)でも良い。
【0106】
(c) 平均周波数を変化させる周期を142.08μsec周期としているが、周波数分解能のbit数、クロックCLKの周波数、回路等の条件によって任意の値に設定可能である。
【0107】
(d) 共振周波数約110KHz、駆動周波数範囲110〜130KHzの圧電トランス75を用いたが、それよりサイズの小さい駆動周波数が高い圧電トランスを使用しても良いし、サイズの大きな駆動周波数の低い圧電トランスを用いても良い。
【0108】
(e) 本実施例1では、駆動周波数の上下限を設定するカウンタ値を固定値として制御部72内に持たせているが、プリンタエンジン制御部53から送信して設定するようにしても良い。又、固定値ではなく、個々の圧電トランス75の特性を測定して不揮発性メモリ等にリミット値を記憶させて利用しても良い。
【0109】
(f) 本実施例1では、圧電トランス駆動開始周波数を固定値として制御部72内に持たせているが、目標電圧V53aを設定するDAC設定値に応じて可変とし、プリンタエンジン制御部53から制御部72へ送信させても良い。
【0110】
(g) 圧電トランス75を駆動する制御部72を電源装置70内に設けているが、プリンタエンジン制御部53のLSI等内に組み込むことも可能である。
【0111】
(h) 転写用電源装置1回路として説明したが、同じ回路を並置することにより、複数チャンネルの制御をすることは容易である。カラー画像形成装置では通常4チャンネルの転写高圧チャンネルを有するが、本実施例1の構成においては、高圧出力ON/OFF時のみプリンタエンジン制御部53からの信号を切り替えるのみで,プリンタエンジン制御部53に通常使用されるマイクロプロセッサ又はLSI等に特殊な物を必要としない。更に、転写以外の帯電バイアスや現像バイアスといった高圧出力全てを圧電トランス75による回路で構成した場合でも、各回路の部品定数等をそれぞれに最適なものを選択すれば、容易に10〜20チャンネル程度の構成にすることも可能である。
【0112】
(i) 出力可変の転写用電源装置70を構成するために、目標電圧指示手段としてDAC53aを用いて説明したが、出力可変の必要がない高圧出力に使用する場合には、ツェナーダイオードや、抵抗分圧による定電圧回路等を目標電圧指示手段としてコンパレータ78aに入力する構成にしても良い。
【0113】
(j) 本実施例1では、正バイアスの電源装置70について説明したが、負バイアスの電源装置でも、出力電圧変換手段77においてオペアンプ77dの反転増幅回路等を用いることにより、容易に実現可能である。
【0114】
(k) 図7の6bit数列発生器92を内部の6bitカウンタ92aの上位下位ビットを逆に並べ替えて構成しているが、カウンタ92aの最上位ビットを数列発生器92aの最下位ビットに配置する際に、例えば、カウンタ92aのbit5(最上位)→bit0、bit4→bit1、bit3→bit2、bit2→bit3、bitl→bit4、bit0→bit5としているものを、bit5→bit1、bit4→bit0、bit3→bit2、bit2→bit3、bitl→bit4、bit0→bit5のように、数列の低位のビットを入れ替えても良く、これにより、実施例1とほぼ同様の動作が可能になる。
【0115】
(実施例1の効果)
本実施例1によれば、次の(1)〜(4)のような効果がある。
【0116】
(1) カウンタ92aの出力を反転させた数列発生器92により、周期の異なる駆動パルスS72を平均的に分散させるようにしたので、数十MHzと低い周波数のクロックCLKの分周でも、数Hzの平均周波数分解能の駆動パルスS72が得られ、制御性の良い安定した高圧出力を得ることができる。
【0117】
(2) 圧電トランス75の2次側出力端子75bにおける整流出力の分圧出力と、目標電圧指示手段によるDAC出力をコンパレータ78aに入力し、このコンパレータ出力が矩形波となるように制御している。そのため、低い高圧出力から圧電トランス75の共振周波数に近い高い高圧出力まで、安定した定電圧制御が可能となる。しかも、広い出力範囲を得ることができるので、環境によらず、安定した出力が可能となり、更に濃度段差や横筋のない安定した画像を得ることができる。
【0118】
(3) 駆動パルスS72、及びコンパレータ比較結果S78共にデジタル信号としているので、LSI等の集積化した回路により実現可能となり、部品点数を大幅に削減できる。更に、圧電トランス75の共振周波数以下に駆動周波数が変化しないようにカウンタ初期値レジスタ95及びカウンタ上限値レジスタ96の分周比リミッタを設けたので、瞬間的な負荷変動等によって駆動周波数が、圧電トランス75の共振周波数より低い周波数に制御されることによって、高圧出力が低い電圧に制御されてしまうという問題もなくなる。
【0119】
(4) 駆動パルスS72の発生及び周波数制御を、CPUのプログラムコード等を用いずに実現したので、多チャンネル化しても、安定した定電圧制御が可能となる。更に、分周比の異なる駆動パルスS72を数列発生器92により混合するようにしたので、位相同期回路(PLL)等の逓倍回路を使うよりも、平均周波数分解能を容易に高くすることが可能となる。
【実施例2】
【0120】
本発明の実施例2では、実施例1における図3の画像形成装置1及び図4の制御回路の構成と同様であり、実施例1における図2の電源装置70と構成が異なるので、以下、本実施例2の電源装置について説明する。
【0121】
(電源装置の構成)
図11は、本発明の実施例2における電源装置の概略の構成を示すブロック図であり、実施例1の電源装置を示す図1中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0122】
本実施例2の電源装置70Aは、実施例1と同様に、各色の1回路のみが示されており、実施例1の制御部72及び出力電圧比較手段78とは異なる構成の制御部72A及び比較手段(例えば、出力電圧比較手段)78Aが設けられ、更に、第2の目標電圧設定手段(例えば、電圧変換手段)79が追加されている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0123】
本実施例2の制御部72Aは、発振器71から供給されるクロックCLKに同期して動作し、プリンタエンジン制御部53により制御されて駆動パルスS72Aを出力する回路であり、実施例1と同様のクロック入力ポートCLK_IN、入力ポートIN2、リセット入力ポートIN3、及び駆動パルスS72Aを出力する出力ポートOUT1と、実施例1の1チャンネルの入力ポートIN1とは異なり、2チャンネルの比較結果S78−1,S78−2を入力する入力ポートIN1−1,IN1−2とを有している。この制御部72Aは、実施例1と同様に、ASIC、CPUを内蔵したマイクロプロセッサ、あるいはFPGA等により構成されている。出力電圧比較手段78Aは、2チャンネル構成であり、出力電圧変換手段77の出力電圧と、プリンタエンジン制御部53内の第1の目標電圧設定手段(例えば、DAC)53aから出力された目標電圧V53a及び電圧変換手段79の出力電圧とを比較して、この2チャンネルの比較結果S78−1,S78−2を制御部72Aの入力ポートIN1−1,IN1−2へ入力するものである。
【0124】
図12は、図11の電源装置70Aにおける詳細な構成例を示す回路図であり、実施例1を示す図2中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0125】
出力電圧比較手段78Aは、2チャンネルのコンパレータ78a−1,78a−2と、DC3.3Vの電源78bと、2つのプルアップ抵抗78c−1,78c−2とを有している。一方のコンパレータ78a−1は、出力電圧変換手段77の出力電圧が入力される「−」入力端子と、DAC53aから出力された目標電圧V53aを入力する「+」入力端子とを有し、この出力端子が、プルアップ抵抗78c−1を介してDC3.3Vの電源78bに接続されると共に、制御部72Aの入力ポートIN1−1に接続されている。他方のコンパレータ78a−2は、出力電圧変換手段77の出力電圧が入力される「−」入力端子と、電圧変換手段79の出力電圧を入力する「+」入力端子とを有し、この出力端子が、プルアップ抵抗78c−2を介してDC3.3Vの電源78bに接続されると共に、制御部72Aの入力ポートIN1−2に接続されている。
【0126】
電圧変換手段79は、定電圧回路(例えば、DAC53aから出力された目標電圧V53aを分圧する2つの分圧抵抗79a,79b)により構成されている。2つの分圧抵抗79a,79bは、DAC53aの出力端子とグランドとの間に直列に接続されている。他方の分圧抵抗79bは、一方の分圧抵抗79aの2倍の抵抗値を有している。DAC53aから出力された目標電圧V53aは、2つの分圧抵抗79a,79bにより2/3のレベルの電圧値に分圧され、コンパレータ78a−2の「+」入力端子に入力される構成になっている。
【0127】
その他の構成は、実施例1と同様である。
【0128】
(電源装置内の制御部の構成)
図13は、図12中の制御部72Aを示す構成図であり、実施例1の制御部72を示す図6中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0129】
本実施例2の制御部72Aでは、実施例1の6bitカウンタ87、第3の比較器83−3、及び6bit数列発生器92に代えて、分周比設定手段(例えば、10bitカウンタ)87A、第3の比較器83−3A、及び数列発生手段(例えば、10bit数列発生器)92Aが設けられ、更に、論理和(以下「OR」という。)回路95が追加されている。入力ポートIN1−1は、比較結果S78−1を入力してアップカウンタ81に供給するポートである。入力ポートIN1−2は、比較結果S78−2を入力してOR回路95及びタイマ(分周器)86に供給するポートである。OR回路95は、比較結果S78−2と第2の比較器83−2の比較結果とのいずれかが“H”の場合に“H”をAND回路85に出力する回路である。
【0130】
タイマ(分周器)86は、比較結果S78−2が“H”の間は、1クロック長のパルスを6サイクル、180nsec毎にAND回路85に出力し、比較結果S78−2が“L”の場合は、2400サイクル、72μsec毎にAND回路85に1クロック長のパルスを出力する構成になっている。カウンタ初期値レジスタ95には例えば値256が設定される。上限値を設定するカウンタ上限値レジスタ96は、例えば実施例1と同じ値301が設定される。
【0131】
その他の構成は、実施例1と同様である。
【0132】
(実施例2の動作)
本実施例2では、図3の画像形成装置1及び図4の制御回路の動作が実施例1と同様である。以下、実施例1と異なる部分の動作を説明する。
【0133】
図11中の制御部72Aは、実施例1における図1中の制御部72に対して、入力ポートIN1−2が1個増えている。出力電圧比較手段78Aは、出力電圧変換手段77の出力電圧と、プリンタエンジン制御部53内のDAC53aから出力される目標電圧V53a及びこの目標電圧V53aを電圧変換手段79により2/3に分圧した電圧とを比較し、出力電圧変換手段77の出力電圧と目標電圧V53aとの比較結果S78−1を制御部72Aの入力ポートIN1−1に入力に、出力電圧変換手段77の出力電圧と目標電圧V53aを2/3に分圧した電圧との比較結果S78−2を入力ポートIN1−2に入力する。
【0134】
制御部72Aの入力ポートINl−1に入力された比較結果S78−1は、実施例1と同様に、定電圧制御するための信号として利用される。入力ポートIN1−2に入力された比較結果S78−2は、比較結果S78−1が目標電圧V53aに到達して“L”に切り替わるより前に、目標電圧V53aの2/3の電圧に到達する時に“L”に切り替わる。制御部72Aは、入力された比較結果S78−2が“H”の期間、出力ノードOUTlから出力される駆動パルスS72Aの平均周波数を変化させる周期を短い期間とすることにより、目標電圧V53aに必要な周波数になるまでの時間を実施例1より早くし、これに伴い駆動開始周波数を130.21KHzと高くすることにより、低い高圧出力も可能になっている。
【0135】
プリンタエンジン制御部53は、プレバイアスである600Vに相当するDAC値0.30V、3.3V10bitDAC53aを有し、このDAC53aに05DHを設定する。次に、プリンタエンジン制御部53は、出力ポートOUT3から出力するリセット信号RFSETを“L”にして、制御部72A内のレジスタ等を実施例1と同様に初期化する。
【0136】
プリンタエンジン制御部53は、印字動作に入り、各感光体ドラム32(=32K,32Y,32M,32C)、及び転写ベルト駆動ローラ6の駆動を始めた後、出力ポートOUT2から出力するON/OFF信号を“H”にして転写出力をONにする。転写バイアス5KVに対応する2.5V、3.3V10bitDAC53aであるので、制御部72Aによりプレバイアス600Vが印加された後、用紙15が搬送される所定のタイミングにて、実施例1同様、DAC53aから出力される目標電圧V53aの値を307Hに設定する。制御部72Aは、前記DAC設定値による2.5Vと、コンパレータ78a−1,78a−2の比較結果S78−1,S78−2が入力される入力ポートINl−1,IN1−2の値とに応じて、出力ポートOUTlから出力する駆動パルスS72Aの平均周波数を制御して、転写バイアス5KVを出力する。用紙検出センサ40にて検出された用紙後端となる所定のタイミングでON/OFF信号を“L”にし、制御部72Aから出力される駆動パルスS72Aを停止して高圧バイアス印加を終了する。
【0137】
次に、図13に示す制御部72Aの動作を詳細に説明する。
プレバイアスとしてDAC53aから目標電圧V53aの0.3Vが出力され、図12に示されるコンパレータ78a−1の「+」入力端子には0.3Vが入力され、コンパレータ78a−2の「+」入力端子には分圧された0.2Vが入力される。入力ポートIN3に入力されるリセット信号RESETを予め“L”にすることにより、内部のレジスタは実施例1と同様に初期化され、カウンタ初期値レジスタ95に設定されている値256が分周カウンタ88に設定される。
【0138】
入力ポートIN2に入力されるON/OFF信号が、プリンタエンジン制御部53により所定のタイミングで“H”に切り替えられると、圧電トランス75が駆動される。駆動開始時は、駆動周波数130.21KHzで、高圧出力は100Vに満たないので、コンパレータ78a−1から出力される比較結果S78−1及びコンパレータ78a−2から出力される比較結果S78−2が共に“H”となる。その結果、OR回路95の出力信号は“H”となり、AND回路85に入力されるタイマ(分周器)86へのコンパレータ78a−2の比較結果S78−2が“H”であることも併せて、10bitカウンタ87Aのカウント値が180nsec毎にカウントアップされ、実施例1と同様に、分周器91の出力パルスの平均周波数が下がっていく。
【0139】
駆動平均周波数が下がることにより、高圧出力は上昇する。高圧出力が400Vを越えると、コンパレータ78a−2の比較結果S78−2が“L”になる。タイマ(分周器)86の入力は“L”となり、AND回路85に入力されるパルスの周期が72μsecに切り替わり、第1の比較器83−1と第2の比較器83−2の出力状態に応じて、以降は実施例1と同様に、10bitカウンタ87Aのカウント値が変更され、高圧出力が600Vに定電圧制御される。
【0140】
次に、所定のタイミングで、DAC53aから出力される目標電圧V53aの値が2.5Vに変更され、目標高圧出力が5KVに設定される。その結果、コンパレータ78a−2の比較結果S78−2が再度“H”となり、10bitカウンタ87Aのカウントアップ周期が前記同様に180nsec周期となる。高圧出力が3.334KVとなると、再度、コンパレータ78a−2の比較結果S78−2が“L”となり、前記同様に10bitカウンタ87Aのカウントアップ周期が72μsecに切り替えられ、以降、実施例1と同様に5KVに定電圧制御される。
【0141】
高圧出力は、ON/OFF信号が所定のタイミングで“L”に切り替えられることにより、OFFする。図5には、実施例1と同様に、本実施例2の圧電トランス駆動回路74での高圧出力の周波数特性が模式的に示されている。
【0142】
図5において、共振周波数fxで高圧出力は極大値HV2を取り、周波数fyで極小値となるが、そこから周波数をfzに上げると、高圧出力が1KV以上となってしまう。この周波数fzは、スプリアス周波数と呼ばれる。従来のVCOを使用した回路では、発振開始周波数がこのスプリアス周波数fzより高くなってしまうために、図5に示すスプリアス電圧HVlより低い高圧出力に制御するのが困難であった。例えば、前記スプリアス電圧HVlより低い目標電圧にてプレバイアスを印加した場合に、周波数fzより高い周波数に制御される。そこからスプリアス電圧HVlより高い転写電圧に切り替える際に、周波数fzを越えて低い周波数に制御されると、一旦高圧出力が数百V低下した後、目標電圧V53aに到達する。高圧出力の低下と立ち上がり時間の双方に問題が発生する。これに対し、本実施例2においては、デジタル回路により開始周波数は任意に設定可能となるので、このような問題を回避可能である。
【0143】
(実施例2の変形例)
本実施例2では、実施例1とほぼ同様の変形例の他に、更に、以下の(a)〜(e)のような変形例を採用することも可能である。
【0144】
(a) 2チャンネルのコンパレータ78a−1,78a−2を用いて目標電圧V53aと目標電圧V53a以下の周波数切替電圧を設定しているが、目標電圧V53aと周波数切替電圧の選択をTTL信号等で制御部72Aに入力し、コンパレ一タ出力を1チャンネルとして、DAC53aの出力を周波数切替電圧と目標電圧V53aに切り替えても良い。
【0145】
(b) 立ち上がり時の周波数切替電圧を目標電圧V53aの2/3としているが、回路特性等により最適値は変わり、この値の限りではない。又、周波数切替電圧をDAC等を用いて可変にできるようにしても良い。
【0146】
(c) 立ち上がり時の周波数変更周期をタイマ(分周器)86の設定値によって変更することによって構成しているが、周波数変更ステップ、例えば高圧出力立ち上がり時のみ10bitの複数ステップに変更しても良いし、立ち上がり時のみ周波数分解能を10bitより少ないビット数とするのでも良い。又、本実施例2では10bitという値を用いているが、この値に限らない。
【0147】
(d) 定電圧制御に入る前の立ち上がり時の周波数切り替えをコンパレータ78a−1,78a−2の比較結果S78−1,S78−2によって行っているが、定電圧制御の目標電圧値の設定をコンパレータ出力により制御し、高圧出力の立ち上がり時は出力電圧変換手段77の出力電圧をプリンタエンジン制御部53のADC53a等に入力し、プリンタエンジン制御部53からそのADC53aの入力値に応じて制御部72Aに信号を出力して制御しても良い。
【0148】
(e) 本実施例2では、制御部72Aとプリンタエンジン制御部53のCPUを使う構成としているが、両者を1チップ化することも可能であるし、制御部72AではなくFPGA等によっても実現可能である。
【0149】
(実施例2の効果)
本実施例2によれば、定電圧制御用の信号と高圧出力立ち上がり監視用の信号を用いることにより、高圧出力立ち上がり時と定電圧制御時の時定数を異なるものとして立ち上がり時間が早く、且つ、共振周波数付近でも安定した定電圧制御が可能となる。更に、高圧出力開始時のスタート周波数をスプリアス周波数fzより低い周波数としているので、スプリアス周波数fzでの出力電圧より低い高圧出力から共振周波数fx付近の高い高圧出力まで、リニアな出力を得ることができる。
【実施例3】
【0150】
本発明の実施例3では、実施例1における図3の画像形成装置1、図4の制御回路、図1及び図2の電源装置70の各構成と同様であり、実施例1の電源装置70内における図6の制御部72と構成が異なるので、以下、本実施例3の制御部について説明する。
【0151】
(制御部の構成)
図14は、本発明の実施例3における電源装置70内の制御部72Bを示す構成図であり、実施例1の制御部72を示す図6中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0152】
本実施例3の制御部72Bでは、実施例1の制御部72における6bitカウンタ87及び6bit数列発生器92に代えて、これらとは構成の異なる分周比設定手段(例えば、6bitカウンタ)87b及び数列発生手段(例えば、6bit疑似乱数発生器)92Bが設けられている。
【0153】
6bitカウンタ87Bは、AND回路85の出力に応じてカウントアップ、カウントダウンするカウンタであるが、実施例1では0〜63までをカウントするのに対して、1〜63までをカウントする構成になっている。例えば、63からカウントアップするとオーバフローoverを出力し、カウンタ87Bを1にセットする。又、1からカウントダウンした場合にアンダフローunderを出力し、63をセットする。それ以外の場合には1ずつカウントアップ/ダウンを行う。6bit擬似乱数発生器92Bは、出力セレクタ93から出力されるパルス毎に1〜63の疑似乱数値を変えて出力する回路である。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0154】
図15は、図14中の6bit疑似乱数発生器92Bを示す構成図である。
この6bit疑似乱数発生器92Bは、例えば、リニアフィードバックシフトレジスタ(以下「LFSR」という。)により構成され、リセット信号RESETを反転するノット(以下「NOT」という。)ゲート101と、このNOTゲート101の出力信号とクロックCLKとのANDを求める2入力ANDゲート102と、このANDゲート102の出力信号とパルスφとのORを求める2入力ORゲート103と、NOTゲート101の出力側の接続された2入力のORゲート104と、このORゲート104の入力側に接続された2入力の排他的論理和(以下「XOR」という。)ゲート105と、ORゲート103,104,の出力側とXORゲート105の入力側との間に縦続接続された6段の遅延型フリップフロップ(以下「DFF」という。)106〜111とにより構成されている。
【0155】
(制御部の動作)
図16−1〜図16−4は、図14の制御部72Bの分周動作における駆動パルスS72の状態(整数部N、小数部36/63〜39/63)を示すタイミングチャートであり、実施例1の図9−1〜図9−7における一部図示しないパルスの状態(整数部N、小数部36/63〜39/63)を示すタイミングチャートに対応している。
【0156】
以下、図16−1〜図16−4を参照しつつ、本実施例3における制御部72Bの動作を、実施例1とは異なる部分のみ説明する。
【0157】
本実施例3の制御部72B内の6bit疑似乱数発生器92Bにおいて、リセット信号RESETが“L”になってリセットされた時に、NOTゲート101から出力される“H”の信号によりANDゲート102及びORゲート103が開いて、33.33MHzのクロックCLKが各DFF106〜111のCLK入力端子に入力される。クロックCLKが入力されている間、ORゲート104を介してDFF106のD入力端子に“H”が入力されるので、入力されたリセット信号RESETを所定時間、保持することにより、DFF106〜111の各Q出力端子が“H”となり、初期値が設定される。
【0158】
以降、リセット信号RESETが“H”となってからは、パルスφが入力される毎に各DFF106〜111の値がシフトして、以下のような1〜63の擬似乱数列bit0〜bit5が出力される。
【0159】
63、62、46、38、34、32、1、16、8、4、2、33、17、24、12、6、35、48、9、20、10、37、19、57、29、30、47、54、42、36、3、49、25、28、14、39、50、40、5、18、41、21、26、45、23、59、60、15、55、58、44、7、51、56、13、22、43、52、11、53、27、61、31
【0160】
本実施例3では、実施例1に対して数列とカウンタの周期が1異なり、63周期であることを除いて動作は同様となる。
【0161】
図16−1〜図16−4には、実施例1の図9−1〜図9−7におけるパルスの状態(整数部N、小数部36/63〜39/63)に相当するものが示されている。例えば、図16−2で示される小数部37/63の時の平均周波数は63パルスで、
{27×N+36×(N+1)}/63=N+40/64=N+0.57143
となる。又、半分の32パルスでは、
{11×N+21×(N+1)}/32=N+19/32=N+0.65625
となり、更に半分の16パルスでは、
{4×N+12×(N十1)}/16=N+10/16=N+0.75
同じ平均周波数となる。8パルスでは、
{4×N+4×(N+1)}/8=N+3/8=N+0.5
となる。
【0162】
なお、本実施例3では、LFSRを用いた6bit擬似乱数発生器92Bで説明したが、これに限るものではない。
【0163】
(実施例3の効果)
本実施例3によれば、LFSR等により構成される6bit疑似乱数発生器92Bを用いたので、回路構成を単純化して実施例1と同様な効果を得ることができる。
【実施例4】
【0164】
本発明の実施例4では、実施例2における図3の画像形成装置1、図4の制御回路、図1及び図2の電源装置70の各構成と同様であり、実施例2の電源装置70A内における図13の制御部72Aと構成が異なるので、以下、本実施例4の制御部について説明する。
【0165】
(制御部の構成)
図17は、本発明の実施例4における電源装置70A内の制御部72Cを示す構成図であり、実施例2の制御部72Aを示す図13中の要素と共通の要素には共通の符号が付されている。
【0166】
本実施例4の制御部72Cでは、実施例2の制御部72Aにおけるタイマ(分周器)86及び10bit数列発生器92Aに代えて、これらとは構成等が異なるタイマ(分周器)86C及び数列発生手段(例えば、10bit疑似乱数列発生器)92Cが設けられ、更に、タイマ(分周器)86Cの出力信号に対してクロックCLKとのANDを取る2入力ANDゲート96が追加されている。
【0167】
本実施例4のタイマ(分周器)86Cは、実施例2のタイマ(分周器)86に比べて動作が異なる。実施例2では、コンパレータ78a−2の比較結果78a−2によって周期を変更していたが、本実施例4では、デューティを変更している。周期は実施例2と同様に、72μsecであるが、コンパレータ78a−2の比較結果78a−2が“H”の場合には400クロック、1.2μsecの“H”期間となる。コンパレータ78a−2の比較結果S78−2が“L”の場合には実施例2と同じ1パルスの“H”期間である。これにより、AND回路85に入力される第1、第2の比較器83−1,83−2の比較結果に応じて、コンパレ一タ78a−2の比較結果S78−2が“H”の場合には、10bitカウンタ87Aが一度に400カウント変更される。ANDゲート96は、タイマ(分周器)86CとクロックCLKとのANDを取ってAND回路85に出力する。
【0168】
10bitカウンタ87Aは、16〜1023までカウントされるカウンタであり、1023で1カウントアップされた場合にはオーバフローoverを出力し、16にセットされる。又、16で1カウントダウンされた場合にはアンダフローunderを出力し、1023にセットされる。
【0169】
10bit疑似乱数列発生器92Cは、実施例3と同様の6bit疑似乱数発生器92Bと、4bitカウンタ120とにより構成されている。4bitカウンタ120は、出力セレクタ93から出力される駆動パルスS72Aをカウントし、上位下位ビットを入れ替えて、実施例1の6bit数列発生器92と同様に、カウント値が0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15と変化するのに応じて0、8、4、12、2、10、6、14、1、9、5、13、3、11、7、15を出力し、6bit擬似乱数発生器92Bの出力と併せて16〜1023の数列を発生する構成になっている。
【0170】
(制御部の動作)
本実施例4における制御部72Cの動作を、実施例2とは異なる部分のみ説明する。
【0171】
制御部72Cにおいて、タイマ(分周器)86Cは、コンパレータ78a−2の比較結果S78−2が“H”の間は400CLKのONデューティとなるので、ANDゲート96でクロックCLKとのANDが取られ、AND回路85に400パルスを72μsec毎に入力する。これにより、10bitカウンタ87Aは−度に400カウントアップされる。コンパレータ78a−2の比較結果S78−2が“L”になると、タイマ(分周器)86Cは1CLKのONデューティとなるので、実施例2と同様に、10bitカウンタ87Aを1カウントずつアップ/ダウンする。
【0172】
(実施例4の効果)
本実施例4によれば、10bit疑似乱数列発生器92Cを有するので、擬似乱数の周期を6bitと短くして平均周波数に収束する時間を短くした上で周波数分解能を10bitと細かくすることができ、且つ、回路規模も小さくすることが可能となる。
【0173】
(変形例)
本発明は、上記実施例や変形例に限定されず、更に、次のような他の変形例も適用可能である。
【0174】
実施例では、カラータンデム方式の画像形成装置1について説明したが、本発明は、カラーに限らずモノクロ等の画像形成装置や、複合機等の他の画像形成装置にも適用可能である。又、転写用の電源装置70,70Aは、帯電等の他の高圧電源にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0175】
【図1】本発明の実施例1における電源装置の概略を示すブロック図である。
【図2】図1の電源装置70における詳細な構成例を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例1における電源装置を用いた画像形成装置を示す構成図である。
【図4】図3の画像形成装置1における制御回路の構成を示すブロック図である。
【図5】図2中の圧電トランス75における出力電圧/周波数の特性図である。
【図6】図2中の制御部72を示す構成図である。
【図7】図6中の6bit数列発生器92を示す構成図である。
【図8】図2の電源装置70における動作波形図である。
【図9−1】制御部72の分周動作における前記パルスの状態を示すタイミングチャートである。
【図9−2】制御部72の分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図9−3】制御部72の分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図9−4】制御部72の分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図9−5】制御部72の分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図9−6】制御部72の分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図9−7】制御部72の分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図10】図2の電源装置70における動作波形図である。
【図11】本発明の実施例2における電源装置の概略の構成を示すブロック図である。
【図12】図11の電源装置70Aにおける詳細な構成例を示す回路図である。
【図13】図12中の制御部72Aを示す構成図である。
【図14】本発明の実施例3における電源装置70内の制御部72Bを示す構成図である。
【図15】図14中の6bit疑似乱数発生器92Bを示す構成図である。
【図16−1】図14の制御部72Bの分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図16−2】図14の制御部72Bの分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図16−3】図14の制御部72Bの分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図16−4】図14の制御部72Bの分周動作における駆動パルスS72の状態を示すタイミングチャートである。
【図17】本発明の実施例4における電源装置70A内の制御部72Cを示す構成図である。
【符号の説明】
【0176】
1 画像形成装置
53 プリンタエンジン制御部
60 高圧制御部
61 帯電バイアス発生部
62 現像バイアス発生器
63 転写バイアス発生部
70、70A, 電源装置
72,72A,72B,72C 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロックを発生する発振器と、
前記クロックを分周してパルスを出力する分周手段と、
前記パルスに同期して各要素の出現頻度が等しいN個(但し、N;整数)の数列を前記パルスの切り替わり毎に発生する数列発生手段と、
前記パルスの分周比を設定する分周比設定手段と、
前記パルスにより駆動されるスイッチング素子と、
前記スイッチング素子により1次側に断続的に電圧が印加されると2次側から交流の高電圧を出力する圧電トランスと、
を有する電源装置であって、
発生された前記数列と設定された前記分周比とを比較し、M分周(但し、M;正の整数)の前記パルスとM十1分周の前記パルスとを出力し、単位時間当たりの前記M分周のパルスのα個(但し、α;正数)と前記M+1分周のパルスのβ個(但し、β;正数)との分周比平均
(M×α+(M+1)×β)/(α+β)
が、設定された前記分周比と前記数列の発生周期にて完全に等しくなり、且つ、前記数列発生周期より短い期間においても近似した値となることを特徴とする電源装置。
【請求項2】
請求項1記載の電源装置は、更に、
前記交流の高電圧を直流の高電圧に変換する整流手段と、
前記直流の高電圧を直流の低電圧に変換する出力電圧変換手段と、
第1の目標電圧を設定する第1の目標電圧設定手段と、
前記直流の低電圧と設定された前記第1の目標電圧とを比較して比較結果を出力する比較手段とを有し、
設定された前記分周比を前記比較結果により変化させ、前記比較結果の信号波形が前記パルスの出力周期にて矩形波となるように定電圧制御することを特徴とする電源装置。
【請求項3】
設定された前記分周比を変化させる周期は、前記数列発生手段の前記数列発生周期より短くしたことを特徴とする請求項2記載の電源装置。
【請求項4】
請求項2記載の電源装置は、更に、
前記第1の目標電圧より低い第2の目標電圧を設定する第2の目標電圧設定手段を有し、
設定された前記第2の目標電圧までは、設定された前記分周比を変化させる周期を前記定電圧制御時より短くしたことを特徴とする電源装置。
【請求項5】
請求項2記載の電源装置は、更に、
前記第1の目標電圧より低い第2の目標電圧を設定する第2の目標電圧設定手段を有し、
設定された前記第2の目標電圧までは、設定された前記分周比を変化させる変化率を前記定電圧制御時より大きくしたことを特徴とする電源装置。
【請求項6】
請求項2記載の電源装置は、更に、
前記第1の目標電圧より低い第2の目標電圧を設定する第2の目標電圧設定手段を有し、
設定された前記第2の目標電圧までは、設定された前記分周比を変化させる変化率と前記分周比を変化させる周期とを前記定電圧制御時より大きくしたことを特徴とする電源装置。
【請求項7】
前記第1の目標電圧設定手段は、可変電圧出力回路により構成されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記第2の目標電圧設定手段は、定電圧回路により構成されていることを特徴とする請求項2〜6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項9】
前記数列発生手段は、分周された前記パルスをカウントして複数ビットの出力信号を出力するカウント手段を有し、前記出力信号のビット配列を入れ替えて前記数列を発生することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項10】
前記数列発生手段は、分周された前記パルスをカウントして複数ビットの出力信号bit0,bit1,・・・,bitN−1,bitNを出力するカウント手段を有し、前記出力信号bit0,bit1,・・・,bitNのビット配列を上下入れ替えた前記数列bitN,bitN−1,・・・,bit1,bit0を発生することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項11】
前記数列発生手段は、任意の前記数列を発生する擬似乱数発生器により構成されていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項12】
前記数列発生手段は、任意の前記数列を発生する疑似乱数発生器と、分周された前記パルスをカウントして複数ビットの出力信号を出力するカウンタとを有し、任意の前記数列と前記出力信号とを混合して前記数列を発生することを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の電源装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9−1】
image rotate

【図9−2】
image rotate

【図9−3】
image rotate

【図9−4】
image rotate

【図9−5】
image rotate

【図9−6】
image rotate

【図9−7】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16−1】
image rotate

【図16−2】
image rotate

【図16−3】
image rotate

【図16−4】
image rotate

【図17】
image rotate


【公開番号】特開2010−148321(P2010−148321A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325636(P2008−325636)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(591044164)株式会社沖データ (2,444)
【Fターム(参考)】