説明

電磁アクチュエータ及びカメラ用羽根駆動装置

【課題】電磁アクチュエータの回転駆動力及び磁気的保持力を高める。
【解決手段】着磁された外周面412a,412bを画定する円筒着磁部412を含み所定の角度範囲を回動し得るロータ410、励磁用のコイル430、ロータの外周面と所定間隔をおいて対向する第1円弧面421a,421a´及び第2円弧面422a,422a´をそれぞれ画定しコイルへの通電により互いに異なる磁極を発生する第1磁極部421及び第2磁極部422を有するヨーク420を備え、第1磁極部421及び第2磁極部422は、第1円弧面及び第2円弧面にそれぞれ連続して形成されると共にロータの外周面と対向する間隔を連続的に変化させるように形成された第1対向面421b及び第2対向面422bを有する。これによれば、ヨークの形状を変更するだけ、構造の簡素化、小型化等を達成しつつ、所望の駆動トルク、磁気的保持力を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁力により駆動力を発生する電磁アクチュエータに関し、特に、着磁された外周面をもつロータ、ロータの外周面に対向する磁極部を形成するヨーク等を備え、カメラのシャッタ羽根、絞り羽根等の羽根部材を駆動する際に適用される電磁アクチュエータ及びこれを用いたカメラ用羽根駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラのシャッタ装置等に搭載される従来の電磁アクチュエータとしては、露光用の開口部を有する基板に対して回動自在に支持されると共に外周面が周方向に二分されてN極及びS極に着磁された円柱状のロータ、ロータの外周面に対向するように配置される円弧面を画定する磁極部を有する略U字状のヨーク、ヨークの周りに巻回された励磁用のコイル等を備えたものが知られている(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。
【0003】
これらの電磁アクチュエータは、ロータは、円柱状に形成され周方向にN極及びS極に着磁された外周面を画定するように形成され、ヨークの磁極部は、ロータの外周面と径方向において一定の間隔をおいて対向する連続した円弧面、又は、ロータの外周面と所定の角度毎に間隔を変えて対向するように径方向に凹凸に形成された複数の円弧面を画定するように形成されている。
そして、着磁されたロータの外周面がヨークの連続する円弧面(磁極部)又は径方向において凹凸のある不連続な円弧面(磁極部)と磁気的吸引力及び反発力を及ぼし合うようになっている。したがって、ロータの外周面が一定の間隔をなす連続した円弧面と対向する場合において駆動力を高めるあるいは作動速度を速めるには、作動電圧を高める必要がある。また、ロータの外周面が間隔の異なる不連続な円弧面と対向する場合には、ロータに作用する磁気的吸引力及び反発力が急激に変化して、円滑な回転を得ることが困難である。
【0004】
【特許文献1】特開2001−327143号公報
【特許文献2】特開2003−274629号公報
【特許文献3】特開2003−189575号公報
【特許文献4】特開2004−095703号公報
【特許文献5】特開2004−032873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯電話機等に搭載されるデジタルカメラ等の小型化に伴い、搭載される電磁アクチュエータも小型化及び低消費電力化を図る必要があり、又、外部からの衝撃等によりロータが勝手に作動しないようにロータを所定の停止位置に保持する保持力を高める必要もある。
そこで、従来の構成のままで単に小型化を図ると、着磁された円柱状のロータが小さくなり、通電時にロータが発生する駆動トルク、非通電時の磁気的吸引力が十分確保されなくなり、シャッタ羽根等の駆動源として使用された場合に、シャッタ羽根等を安定して駆動し、又、所定の位置に保持することが困難になる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みて成されたものであり、その目的とするところは、小型化、低消費電力化等を図りつつ、所望の駆動トルク、磁気的吸引力(保持力)等を確保でき、カメラのシャッタ羽根、絞り羽根、NDフィルタ羽根、その他のフィルタ羽根等の羽根部材を駆動する駆動源として適用された場合に、安定した駆動力又は保持力を発揮できる電磁アクチュエータ及びこれを用いたカメラ用羽根駆動を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の電磁アクチュエータは、周方向に着磁された外周面を画定する円筒着磁部を含み所定の角度範囲を回動し得るロータと、励磁用のコイルと、ロータの外周面と所定間隔をおいて対向する第1円弧面及び第2円弧面をそれぞれ画定しコイルへの通電により互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークを備えた電磁アクチュエータであって、上記第1磁極部及び第2磁極部は、第1円弧面及び第2円弧面にそれぞれ連続して形成されると共にロータの外周面と対向する間隔を連続的に変化させるように形成された第1対向面及び第2対向面を有する、ことを特徴としている。
この構成によれば、第1磁極部及び第2磁極部がロータの外周面との間隔を連続的に変化させる第1対向面及び第2対向面を有するため、ロータのN極又はS極に着磁された外周面がこの第1対向面又は第2対向面に近づくに連れて磁気的吸引力又は反発力が徐々に大きくなり、又、ロータのN極又はS極に着磁された外周面がこの第1対向面又は第2対向面から離れるに連れて磁気的吸引力又は反発力が徐々に小さくなる。
したがって、ロータは、円滑でかつ迅速に回転して大きな回転駆動力(駆動トルク)を発生させることができ、又、作動範囲の両端位置(停止位置)においては、大きな磁気的保持力によりロータをその停止位置に保持することができる。また、従来の回転駆動力(駆動トルク)でよければ駆動電圧を小さくして消費電力を低減することができる。
このように、特別な部品を設けることなくヨークの形状を変更するだけであるため、構造の簡素化、小型化、低消費電力化等を達成しつつ、所望の駆動トルク、磁気的吸引力(保持力)等を確保することができる。
【0008】
上記構成において、第1対向面及び第2対向面は、ロータの回転軸に対して点対称に形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、コイルへの通電方向を切り替えることにより、ロータに対して点対称的な回転動作を行わせることができる。
【0009】
上記構成において、第1対向面及び第2対向面は、ロータの磁極境界面の作動範囲の中心線に対して垂直な方向に平坦な平坦面として形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、ヨークの形状を簡素化できると同時に製造が容易になり、さらに、ロータの往動及び復動にて、方向性の無い同一の作動特性(回転駆動力、磁気的保持力)を得ることができ、種々の装置の往復動する駆動源として容易に適用することができる。
【0010】
上記構成において、ロータは、その回転軸の方向において第1磁極部及び第2磁極部と対向するように外周面よりも径方向に突出して形成されると共に円筒着磁部と同一の磁極に着磁して形成されたスラスト着磁部を含む、構成を採用することができる。
この構成によれば、ロータの着磁部として、外周面を画定する円筒着磁部の他に、円筒着磁部と一体的に形成されかつその円筒着磁部と同一の磁極に着磁されたスラスト着磁部を設けたことにより、このスラスト着磁部がロータの回転軸の方向においてヨークの第1磁極部又は第2磁極部と対向して、磁気的作用を及ぼす面が増加する。
これにより、コイルへの非通電時には、スラスト着磁部が第1磁極部又は第2磁極部との間で強力な磁気的吸引力を生じて安定した保持力が得られ、コイルへの通電時には、スラスト着磁部が第1磁極部又は第2磁極部の回転軸方向の端面との間で電磁力による強力な反発力及び吸引力を生じて、所望の回転駆動力(駆動トルク)及び保持力を発生する電磁アクチュエータを得ることができる。
【0011】
上記構成において、スラスト着磁部は、円筒着磁部の一端側に一体的に形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、スラスト着磁部が円筒着磁部の一端側に形成されているため、構造の簡略化、薄型化等を図りつつ、必要とされる駆動トルク,磁気的吸引力及び反発力の設定を容易に行うことができる。
【0012】
上記構成において、スラスト着磁部は、円筒着磁部の両端側に一体的に形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、スラスト着磁部が円筒着磁部の両端側に形成されているため、構造の簡略化等を図りつつ、より強力な駆動トルク,磁気的吸引力及び反発力の設定を容易に行うことができる。
【0013】
上記構成において、スラスト着磁部は、円筒着磁部の直径よりも大きい直径をなす円板状に形成されている、構成を採用することができる。
この構成によれば、スラスト着磁部が全周に亘る円板状に形成されているため、局部的に設けられている場合に比べて、回転のアンバランス量を解消でき、安定した円滑な回転動作を確保することができる。
【0014】
本発明のカメラ用羽根駆動装置は、露光用の開口部を有する基板と、開口部に臨む位置と退避する位置との間を移動自在に設けられた羽根部材と、羽根部材を駆動する駆動源とを備え、この駆動源は、上述の電磁アクチュエータのいずれか一つの電磁アクチュエータである、ことを特徴としている。
この構成によれば、駆動源として上述の電磁アクチュエータを採用するが故に、装置の小型化を図りつつも、ロータは十分な電磁駆動力及び磁気的保持力を発生し、羽根部材は所望のタイミングで確実に安定して素早く駆動され、又、所定の位置(例えば、開口部に臨む位置あるいは開口部から退避した位置)に確実に保持される。
【発明の効果】
【0015】
上記構成をなす電磁アクチュエータによれば、ヨークに対してロータの外周面との間隔を連続的に変化させる第1対向面及び第2対向面を設けたことにより、電磁駆動力に連続的に変化(強弱の変化)をもたせることができ、素早い起動特性、大きな回転駆動力、停止時の大きな磁気的保持力を得ることができ、又、ロータの着磁部として円筒着磁部の他にスラスト着磁部を設けたことにより、ロータ全体としてヨークに対向する面が増加し、小型化を図りつつも、所望の保持力及び駆動トルクを発生する電磁アクチュエータを提供することができる。
また、上記構成をなすカメラ用羽根駆動装置によれば、駆動源として上述の電磁アクチュエータを採用するが故に、装置の小型化を図りつつも、ロータにより十分な駆動トルクが得られるため、羽根部材(例えば、シャッタ羽根、絞り羽根、NDフィルタ羽根、その他のフィルタ羽根等)を、所望のタイミングで確実に安定して駆動させることができ、又、所望の位置(開口部に臨む位置、又は開口部から退避した位置)に保持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ説明する。
図1ないし図6は、本発明に係る電磁アクチュエータをカメラ用羽根駆動装置に適用した一実施形態を示すものであり、図1は装置の正面図、図2は装置の断面図、図3は電磁アクチュエータの正面図及び断面図、図4は電磁アクチュエータを説明する部分拡大図、図5及び図6は羽根部材が開口部から退避した位置と開口部に臨む位置にある状態を示す平面図である。
【0017】
この装置は、図1ないし図3に示すように、露光用の開口部10aを有する基板としての地板10及び開口部20aを有する裏板20、開口部10a,20aに臨む位置と退避した位置との間を移動自在に地板10に支持された羽根部材30、羽根部材30を駆動する駆動源としての電磁アクチュエータ400等を備えている。
【0018】
地板10は、樹脂材料により形成されており、図1、図2、図5、図6に示すように、円形をなす露光用の開口部10a、後述するロータ410を回動自在に支持する支軸11、略扇状の貫通孔12、後述するヨーク420及び押え板440を位置決めして固定する位置決め突起13、後述する押え板440を位置決めして固定する位置決め突起14、羽根部材30を回動自在に支持する支軸15、裏板20を結合するための2つの突起16、羽根部材30を開放位置に停止させるストッパ17及び閉鎖位置に停止させるストッパ18等を備えている。
裏板20は、樹脂材料又は薄板状の金属板等により形成されており、図2に示すように、円形をなす開口部20a、扇状の貫通孔21、支軸15を通す円孔22、突起16を嵌合させる円孔23、ストッパ17,18を嵌合させる嵌合孔(不図示)等を備えている。そして、裏板20は、地板10の裏側に対して所定の間隔をおいて、突起16の先端を潰して(熱カシメして)連結され、羽根部材30を回動自在に収容する羽根室Wを画定している。
【0019】
羽根部材30は、薄板状の樹脂板等により形成されており、図1、図2、図5、図6に示すように、支軸15が挿入される円孔31、後述する駆動ピン413が挿入される長孔32等を備えている。
そして、駆動ピン413が往復動することにより、羽根部材30は、図5に示すように開口部10a,20aから退避した位置(開放位置)と、図6に示すように開口部10a,20aに臨む位置(閉鎖位置)との間を往復動するようになっている。
尚、羽根部材30としては、遮光性の板材により形成されたシャッタ羽根、露光用の開口部よりも小径の開口部が形成された絞り羽根、通過する光量を減少させるNDフィルタ羽根、あるいは、赤外光をカットするフィルタ羽根等各種の羽根部材が適用される。
【0020】
電磁アクチュエータ400は、図1ないし図6に示すように、地板10に対して所定の角度範囲(作動角θ)を回動自在に支持されるロータ410、略U字状に形成されて地板10に固定されるヨーク420、励磁用のコイル430、コイル430を巻回すると共にヨーク420を嵌合させる嵌合孔441aを画定するボビン441を一体的に有し地板10に固定される押え板440等により形成されている。
【0021】
ロータ410は、図2ないし図6に示すように、円筒状に形成され、支軸11が通される貫通孔411、磁極境界面BSにより周方向において二分されたN極外周面412a及びS極外周面412bを画定する円筒着磁部412、円筒着磁部412の外周面から径方向に突出すると共に回転軸L方向に伸長して形成された駆動ピン413等を備えている。
ここで、ロータ410は、図2に示すように、円筒着磁部412が磁性材料により形成され、駆動ピン413が樹脂材料により形成されている。
【0022】
円筒着磁部412は、図3(a)、図4ないし図6に示すように、円筒状の外周面を画定するように、すなわち、回転軸Lを通る磁極境界面BSにより周方向に二分されて、N極に着磁されたN極外周面412a、S極に着磁されたS極外周面412bをもつように形成されている。
そして、N極外周面412a及びS極外周面412bは、ヨーク420の後述する第1磁極部421(の第1円弧面421a,421a´及び第1対向面421b)及び第2磁極部422(の第2円弧面422a,422a´及び第2対向面422b)と対向するようになっている。
駆動ピン413は、円筒着磁部412と一体的に成型されて、ロータ410の回転駆動力を外部に伝達するものであり、樹脂材料等により非着磁に形成されている。
【0023】
ヨーク420は、図1ないし図6に示すように、略U字状に屈曲して形成され、その一端側に第1磁極部421、その他端側に第2磁極部422、その屈曲部に地板10の位置決めピン13を通す位置決め孔423等を備えている。
第1磁極部421は、図3(a)及び図4に示すように、ロータ410の円筒磁極部412(N極外周面412a及びS極外周面412b)に対して、一定の間隔をおいて対向する第1円弧面421a,421a´、連続的に間隔を変化させるように対向する第1対向面421bを画定するように形成されている。そして、第1対向面412bは、両側に位置する第1円弧面421a,421a´と連続的に形成されている。
第2磁極部422は、図4に示すように、ロータ410の円筒磁極部412(N極外周面412a及びS極外周面412b)に対して、一定の間隔をおいて対向する第2円弧面422a,422a´、連続的に間隔を変化させるように対向する第2対向面422bを画定するように形成されている。そして、第2対向面422bは、両側に位置する第2円弧面422a,422a´と連続的に形成されている。
【0024】
このように、第1磁極部421及び第2磁極部422に対して、ロータ410の外周面412a,412bとの間隔を連続的に変化させる第1対向面421b及び第2対向面422bを設けたことにより、ロータ410のN極又はS極に着磁された外周面412a,412bが第1対向面421b又は第2対向面422bに近づくに連れて磁気的吸引力又は反発力が徐々に大きくなり、又、ロータ410のN極又はS極に着磁された外周面412a,412bが第1対向面421b又は第2対向面422bから離れるに連れて磁気的吸引力又は反発力が徐々に小さくなる。
したがって、ロータ410は、円滑でかつ迅速に回転して大きな回転駆動力(駆動トルク)を発生させることができ、又、作動範囲の両端位置(停止位置)において大きな磁気的保持力によりロータ410をその停止位置に保持することができる。
また、従来の回転駆動力(駆動トルク)でよければ、駆動電圧を小さくして消費電力を低減することができる。
すなわち、特別な部品を設けることなく、ヨーク420の形状を変更するだけで、構造の簡素化、小型化、低消費電力化等を達成しつつ、所望の駆動トルク、磁気的吸引力(保持力)等を確保することができる。
【0025】
ここで、第1対向面421b及び第2対向面422bは、図4に示すように、ロータ410の回転軸Lに対して点対称に形成され、又、ロータ410の磁極境界面BSの作動範囲(作動角)θの中心線Cに対して垂直な方向に平坦な平坦面として形成されている。
これによれば、コイル430への通電方向を切り替えることにより、ロータ410に対して点対称的な回転動作を行わせることができ、又、ヨーク430の形状を簡素化できると同時に製造が容易になり、さらに、ロータ410の往動及び復動にて、方向性の無い同一の作動特性(回転駆動力、磁気的保持力)を得ることができ、種々の装置の往復動する駆動源として容易に適用することができる。
【0026】
コイル430は、図1及び図2に示すように、後述する押え板440のボビン441に巻回され、ボビン441の嵌合孔441aに対してヨーク420の第2磁極部422が嵌め込まれることにより、ヨーク420の周りにおいてコイル430が巻回された状態となる。
【0027】
押え板440は、図1及び図2に示すように、樹脂材料等を用いて扁平な板状に形成され、ヨーク420を嵌合させる嵌合孔441aを画定するボビン441、地板10の位置決め突起13,14を通す嵌合孔442,443等を備えている。
【0028】
上記構成をなす電磁アクチュエータ400の組み付けについては、先ず、地板10、ロータ410、ヨーク420、コイル430、押え板440を準備する。
そして、図1に示すように、駆動ピン413を貫通孔12に通すようにしてロータ410を地板10の支軸11に回動自在に嵌め込み、コイル430を巻回したボビン441の嵌合孔441aにヨーク420を嵌め込む。
続いて、位置決め突起13に対して、位置決め孔423及び嵌合孔442を外嵌させると共に、位置決め突起14に対して、嵌合孔443を外嵌させて、位置決め突起13,14の先端をそれぞれ潰して(熱カシメして)、ヨーク420及び押え板440を地板10に装着する。
これにより、ロータ410は地板10に対して所定の角度範囲を回動自在に支持され、ヨーク420及びコイル430は地板10に堅固に固定されることになる。
【0029】
また、カメラ用羽根駆動装置の組み付けについては、上記電磁アクチュエータ400の組み付けが完了した地板10に対して、図1及び図2に示すように、円孔31に支軸15を通しかつ長孔32に駆動ピン413を通すようにして、羽根部材30を地板10に取り付ける。続いて、羽根部材30の外側(裏側)から裏板20を取り付け、2つの突起16を円孔23に通した後、その先端を潰して(熱カシメして)、裏板20を地板10に固定する。
これにより、羽根部材30は、開口部10a,20aを開閉するべく、地板10及び裏板20により画定される羽根室W内において揺動自在に支持されることになる。
【0030】
次に、上記電磁アクチュエータ400の動作及びカメラ用羽根駆動装置の動作について、図5及び図6を参照しつつ説明する。尚、図5及び図6では、押え板440を省略している。
先ず、コイル430への非通電の状態で、図5に示すように、ロータ410が時計回りの回転端に位置するとき、ロータ410の磁極境界面BSが、第1磁極部421の第1対向面421b及び第2磁極部422の第2対向面422bの各々の中間位置からずれた位置で停止しているので、N極外周面412aと第1磁極部421(第1円弧面421a,第1対向面421b)の間、S極外周面412bと第2磁極部422(第2円弧面422a´,第2対向面422b)の間に、それぞれ磁気的吸引力が生じており、ロータ410は時計回りの回転端にて停止して確実に保持されている。
この状態は、カメラ用羽根駆動装置の羽根部材30が、図5に示すように、ストッパ17に当接して開口部10a,20aから退避した位置(開放位置)に位置決めされた状態に対応する。
【0031】
この状態において、コイル430へ所定向きの通電が行われると、第1磁極部421にN極が発生し、第2磁極部422にS極が発生する。
これにより、N極外周面412aと第1磁極部421(第1円弧面421a,第1対向面421b)の間、S極外周面412bと第2磁極部422(第2円弧面422a´,第2対向面422b)の間には、それぞれ電磁力による反発力が生じて、強力な回転トルクが発生し、ロータ410は反時計回りに回転し始める。
そして、ロータ410が反時計回りに回転する際に、N極外周面412aと第2対向面422bの間の間隔は連続的に変化し、又、S極外周面412bと第1対向面421bの間の間隔は連続的に変化するため、ロータ410は円滑にかつ迅速に反時計回りに回転して大きな回転駆動力(駆動トルク)を発生する。
【0032】
そして、図6に示すように、ロータ410が反時計回りの回転端に達すると、N極外周面412aと第2磁極部422(第1円弧面422a,第2対向面422b)の間、S極外周面412bと第1磁極部421(第1円弧面421a´,第1対向面421b)の間には、それぞれ電磁力による吸引力が生じて、ロータ410をさらに反時計回りに回転させるような回転付勢力が発生した状態にある。
そして、この状態において、コイル430への通電が断たれると、電磁力による吸引力が強力な磁気的吸引力に変わって、ロータ410は反時計回りの回転端にて停止して確実に保持されることになる。
この状態は、カメラ用羽根駆動装置の羽根部材30が、図6に示すように、ストッパ18に当接して開口部10a,20aに臨む位置(閉鎖位置)に位置決めされた状態に対応する。
【0033】
一方、コイル430に逆向きの通電が行われると、第1磁極部421及び第2磁極部422にそれぞれ逆の磁極が発生し、ロータ410は、円滑にかつ迅速に時計回りに回転して大きな回転駆動力(駆動トルク)を発生する。
このとき、カメラ用羽根駆動装置においては、羽根部材30は、図6に示すようにストッパ18に当接して開口部10a,20aに臨む位置(閉鎖位置)から図5に示すようにストッパ17に当接して開口部10a,20aから退避した位置(開放位置)に移動して位置決めされる。
そして、コイル430への通電が断たれると、ロータ410は強力な磁気的吸引力により、時計回りの回転端にて停止して確実に保持される。
【0034】
このように、ロータ410(の外周面412a,412b)との間隔を連続的に変化させる第1対向面421b及び第2対向面422bをヨーク420に設けたことにより、ロータ410は円滑でかつ迅速に回転して大きな回転駆動力(駆動トルク)を発生させることができ、又、作動範囲の両端位置(停止位置)においては、大きな磁気的保持力によりロータ410をその停止位置に保持することができ、この電磁アクチュエータ400をカメラ用羽根駆動装置の駆動源として用いた場合に、羽根部材30を円滑にかつ安定して駆動することができる。
【0035】
図7は、上記電磁アクチュエータ400を駆動源とするカメラ用羽根駆動装置Mを、携帯電話機500に搭載した状態を示すものである。
携帯電話機500は、種々の操作釦510aが設けられた本体510、本体510に対して回動自在に連結され種々の情報を表示するモニター520aが設けられた蓋体520、蓋体520の外面に形成された撮影窓520bの内側に収容されたカメラ用羽根駆動装置M等を備えている。
このように、上記電磁アクチュエータ400を駆動源とするカメラ用羽根駆動装置Mは、装置の小型化を図りつつも、ロータ410により十分な駆動トルクが得られるため、羽根部材30(例えば、シャッタ羽根、絞り羽根、NDフィルタ羽根、その他のフィルタ羽根等)を、所望のタイミングで確実に安定して駆動させることができ、又、所望の位置(開口部10a,20aに臨む位置、又は開口部10a,20aから退避した位置)に確実に保持することができる。
【0036】
図8及び図9は、本発明の他の実施形態に係る電磁アクチュエータ400´を駆動源とするカメラ用羽根駆動装置を示すものであり、ロータ410´を変更した以外は前述の実施形態と同一であるため、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
この電磁アクチュエータ400´において、ロータ410´は、図8及び図9(a),(b)に示すように、その回転軸Lの方向において、第1磁極部421の端面421´及び第2磁極部422の端面422´と対向するように、外周面412a,412bよりも径方向に突出して形成されると共に円筒着磁部412と同一の磁極に着磁して形成された円板状のスラスト着磁部414を一体的に備えている。
スラスト着磁部414は、磁極境界面BSを境に、N極着磁部414aとS極着磁部414bを備えている。
【0037】
これによれば、ロータ410´の着磁部として、円筒着磁部412の一端側に一体的に形成されたスラスト着磁部414(N極着磁部414a,S極着磁部414b)を設けたことにより、スラスト着磁部414がロータ410´の回転軸Lの方向においてヨーク420の第1磁極部421(の端面421´)又は第2磁極部422(の端面422´)と対向して、磁気的作用を及ぼす面が増加する。
したがって、コイル430への非通電時には、スラスト着磁部414が第1磁極部421又は第2磁極部422との間で強力な磁気的吸引力を生じて安定した保持力が得られ、コイル430への通電時には、スラスト着磁部414が第1磁極部421又は第2磁極部422の回転軸L方向の端面421´,422´との間で電磁力による強力な反発力及び吸引力を生じて、所望の回転駆動力(駆動トルク)及び保持力を発生することができる。
ここでは、スラスト着磁部414が円筒着磁部412の一端側に一体的に形成されているため、構造の簡略化、薄型化等を達成しつつ、必要とされる駆動トルク、磁気的吸引力及び反発力の設定を容易に行うことができる。
【0038】
図10及び図11は、本発明のさらに他の実施形態に係る電磁アクチュエータ400´´を駆動源とするカメラ用羽根駆動装置を示すものであり、ロータ410´´を変更した以外は前述の実施形態と同一であるため、前述の実施形態と同一の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
この電磁アクチュエータ400´´において、ロータ410´´は、図10及び図11(a),(b)に示すように、その回転軸Lの方向において、第1磁極部421の両端面421´,421´´及び第2磁極部422の両端面422´,422´´と対向するように、外周面412a,412bよりも径方向に突出して形成されると共に円筒着磁部412と同一の磁極に着磁して形成された円板状の2つのスラスト着磁部414,415を一体的に備えている。
スラスト着磁部414,415は、磁極境界面BSを境に、それぞれN極着磁部414a,415aとS極着磁部414b,415bを備えている。
【0039】
これによれば、ロータ410´´の着磁部として、円筒着磁部412の両端側に一体的に形成された2つのスラスト着磁部414(N極着磁部414a,S極着磁部414b)及びスラスト着磁部415(N極着磁部415a,S極着磁部415b)を設けたことにより、スラスト着磁部414,415がロータ410´´の回転軸Lの方向においてヨーク420の第1磁極部421(の両端面421´,421´´)又は第2磁極部422(の両端面422´,422´´)と対向して、磁気的作用を及ぼす面が増加する。
したがって、コイル430への非通電時には、スラスト着磁部414,415が第1磁極部421又は第2磁極部422との間で強力な磁気的吸引力を生じて安定した保持力が得られ、コイル430への通電時には、スラスト着磁部414,415が第1磁極部421又は第2磁極部422の回転軸L方向の端面421´,421´´,422´,422´´との間で電磁力による強力な反発力及び吸引力を生じて、所望の回転駆動力(駆動トルク)及び保持力を発生することができる。
ここでは、スラスト着磁部414,415が円筒着磁部412の両端側に一体的に形成されているため、構造の簡略化、薄型化等を達成しつつ、必要とされる駆動トルク、磁気的吸引力及び反発力の設定を容易に行うことができる。
【0040】
上記実施形態においては、1枚の羽根部材30を駆動する駆動源として本発明に係る電磁アクチュエータ400,400´,400´´を採用したカメラ用羽根駆動装置を示したが、これに限定されるものではなく、2枚以上の羽根からなる羽根部材を駆動する駆動源として本発明に係る電磁アクチュエータを採用してもよい。
上記実施形態においては、ロータ410,410´,410´の駆動ピン413を着磁部と別の部材で形成した場合を示したが、これに限定されるものではなく、着磁部と同一の材料で一体成形し、着磁部と同一磁極に着磁してもよい。
上記実施形態においては、ヨーク420に設けた第1対向面421b及び第2対向面422bとして、磁極境界面BSの作動範囲の中心線Cに対して垂直な方向に平坦な平坦面を採用したが、これに限定されるものではなく、ロータの外周面412a,412bとの間隔を連続的に変化させるように形成するものであれば、その他の位置に形成されたものを採用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
以上述べたように、本発明の電磁アクチュエータは、小型化を達成しつつも、所望の保持力及び駆動トルクを発生することができるため、カメラ用羽根駆動装置の駆動源として適用できるのは勿論のこと、被動部材を往復動させる必要のあるその他の光学機器あるいは電子機器等の駆動源としても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明に係る電磁アクチュエータを搭載したカメラ用羽根駆動装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】図1に示すカメラ用羽根駆動装置の展開断面図である。
【図3】図1に示す装置に搭載された電磁アクチュエータの一部を示すものであり、(a)は平面図、(b)は部分断面図である。
【図4】図1に示す装置に搭載された電磁アクチュエータの一部を拡大した拡大図である。
【図5】図1に示すカメラ用羽根駆動装置の動作を説明するためのものであり、羽根部材が開口部から退避した位置にある状態を示す平面図である。
【図6】図1に示すカメラ用羽根駆動装置の動作を説明するためのものであり、羽根部材が開口部に臨む位置にある状態を示す平面図である。
【図7】本発明に係るカメラ用羽根駆動装置を搭載した携帯電話機を示す斜視図である。
【図8】本発明の他の実施形態に係る電磁アクチュエータを搭載したカメラ用羽根駆動装置を示す展開断面図である。
【図9】図8に示す装置に搭載された電磁アクチュエータの一部を示すものであり、(a)はその平面図、(b)は部分断面図である。
【図10】本発明のさらに他の実施形態に係る電磁アクチュエータを搭載したカメラ用羽根駆動装置を示す展開断面図である。
【図11】図10に示す装置に搭載された電磁アクチュエータの一部を示すものであり、(a)はその平面図、(b)は部分断面図である。
【符号の説明】
【0043】
10 地板(基板)
20 裏板(基板)
10a,20a 露光用の開口部
11,15 支軸
12 貫通孔
13,14 位置決め突起
16 突起
17,18 ストッパ
30 羽根部材
400,400´,400´´ 電磁アクチュエータ(駆動源)
410,410´,410´´ ロータ
L 回転軸
BS 磁極境界面
411 貫通孔
412 円筒着磁部
412a N極外周面
412b S極外周面
413 駆動ピン
414,415 スラスト着磁部
414a,415a N極着磁部
414b,415b S極着磁部
420 ヨーク
421 第1磁極部
421a,421a´ 第1円弧面
421b 第1対向面
422 第2磁極部
422a,422a´ 第2円弧面
422b 第2対向面
423 位置決め孔
430 励磁用のコイル
440 押え板
441 ボビン
441a,442,443 嵌合孔
500 携帯電話機
510 本体
520 蓋体
520b 撮影窓
M カメラ用羽根駆動装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に着磁された外周面を画定する円筒着磁部を含み所定の角度範囲を回動し得るロータと、励磁用のコイルと、前記ロータの外周面と所定間隔をおいて対向する第1円弧面及び第2円弧面をそれぞれ画定し前記コイルへの通電により互いに異なる磁極を発生する第1磁極部及び第2磁極部を有するヨークを備えた電磁アクチュエータであって、
前記第1磁極部及び第2磁極部は、前記第1円弧面及び第2円弧面にそれぞれ連続して形成されると共に前記ロータの外周面と対向する間隔を連続的に変化させるように形成された第1対向面及び第2対向面を有する、
ことを特徴とする電磁アクチュエータ。
【請求項2】
前記第1対向面及び第2対向面は、前記ロータの回転軸に対して点対称に形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載の電磁アクチュエータ。
【請求項3】
前記第1対向面及び第2対向面は、前記ロータの磁極境界面の作動範囲の中心線に対して垂直な方向に平坦な平坦面に形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項4】
前記ロータは、その回転軸の方向において前記第1磁極部及び第2磁極部と対向するように前記外周面よりも径方向に突出して形成されると共に前記円筒着磁部と同一の磁極に着磁して形成されたスラスト着磁部を含む、
ことを特徴とする1ないし3いずれかに記載の電磁アクチュエータ。
【請求項5】
前記スラスト着磁部は、前記円筒着磁部の一端側に一体的に形成されている、
ことを特徴とする請求項4記載の電磁アクチュエータ。
【請求項6】
前記スラスト着磁部は、前記円筒着磁部の両端側に一体的に形成されている、
ことを特徴とする請求項4記載の電磁アクチュエータ。
【請求項7】
前記スラスト着磁部は、前記円筒着磁部の直径よりも大きい直径をなす円板状に形成されている、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の電磁アクチュエータ。
【請求項8】
露光用の開口部を有する基板と、前記開口部に臨む位置と退避する位置との間を移動自在に設けられた羽根部材と、前記羽根部材を駆動する駆動源とを備え、
前記駆動源は、請求項1ないし7いずれか一つに記載の電磁アクチュエータである、
ことを特徴とするカメラ用羽根駆動装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−295771(P2007−295771A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−123260(P2006−123260)
【出願日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】