説明

電磁ブレーキ付電動機

【課題】小さな吸引力でかみ合い式ブレーキの解除が確実に行なえ、かつ小型で低消費電力、低騒音化を実現できる電磁ブレーキ付電動機を提供する。
【解決手段】電動機1を起動する際に制御部4はブレーキ解除動作を開始したまま回転子軸6に作用する回転力の向きと反対方向へ第2のブレーキディスク16を所定量回転させてかみ合いブレーキが解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ブレーキ付電動機及びそのブレーキ解除方法に関する。
例えばシャッター、ブラインド、カーテンなどの長尺物が巻き取られた巻取シャフトを回転駆動する電磁ブレーキ付電動機に関する。
【背景技術】
【0002】
シャッター、ブラインド、カーテンなどの長尺物が巻き取られた巻取シャフトを電動機により回転駆動する電動巻取り装置が提案されている。電動巻取り装置の一例について説明すると、筒状の巻取シャフトの一端側に電動機が設けられており、回転子軸(出力軸)に連繋するクラッチ機構を介して巻取シャフトを回転駆動するようになっている。
【0003】
電動シャッター装置の場合、電動機が回転停止するとシャッターもその位置で停止させる必要があることから、電動機には電磁ブレーキが設けられる。電磁ブレーキには摺動式ブレーキが用いられる。例えば、電動機の回転子軸と同心状に設けられたブレーキコイルと可動子鉄板を、当該回転子軸端側に固定された支持板に支持されたブレーキライニングへ常時押し当てるように付勢して摩擦により回転子軸の回転が規制されて電動機にブレーキがかけられる。また、ブレーキコイルに通電することにより可動子鉄板がブレーキコイル側へ吸引され、ブレーキライニングから軸方向に離間する向きへ移動するため、支持板が回転子軸とともに回転可能となって電動機のブレーキが解除される(特許文献1参照)。
【0004】
また、ブレーキ部の他例としてかみ合い式の電磁ブレーキも用いられる。これは電動機の回転子軸の一端に電磁ブレーキが設けられる構成は、摺動式と同様であるが、周方向に所定間隔で第1の歯が設けられた第1のディスクが可動子と一体に設けられ、該第1のディスクの対向面に周方向に所定間隔で第2の歯が設けられた第2のディスクが回転子軸端に固定されている。第1のディスクは第2のディスクに向けて常時付勢されており、第1の歯と第2の歯がかみ合うことで回転子軸の回転が規制されて電動機にブレーキがかけられる。電動機を起動する際には、ブレーキコイルに通電して可動子を吸引すると、第1のディスクが軸方向に第2のディスクより離間してかみ合いが外れることで、ブレーキが解除されるようになっている。
【特許文献1】特開2002−51498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した電動巻取り装置に具備した電磁ブレーキ付電動機において、摺動式ブレーキを用いた場合には、シャッターの巻き上げ位置に応じたアシストばねによる回転トルクの変動(例えばシャッターが上位置では巻き上げられ下位置では停止するように変化する)するなど回転子軸に作用する外力(回転力)が変動するため、シャッターを停止位置で保持するための必要な保持トルクが得られないうえに高価であるという課題があった。
【0006】
また、かみ合いブレーキを用いる場合には、第1の歯と第2の歯がかみ合って周方向側面どうしが接触した状態で回転が規制されているため、これらの第1,第2の歯どうしの接触摩擦力に打ち勝って可動子を吸引する必要がある。
よって、電磁ブレーキのブレーキ状態を解除するためブレーキコイルに通電する通電量を増やして可動子の吸引力を増大させる必要があるため、ブレーキサイズが大型化し、消費電力も増大するおそれがあった。
また、電動機を起動する際の作動音やブレーキを解除する作動音などを静音化して商品価値を高めたいというニーズもある。
【0007】
本発明の目的は、小さな吸引力でかみ合いブレーキの解除が確実に行なえ、かつ小型で低消費電力、低騒音化を実現できる電磁ブレーキ付電動機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
電動機と、電動機本体より回転子軸が延設され、該延設された回転子軸の周囲に可動子とブレーキコイルを同心状に配置された電磁ブレーキと、前記可動子の軸端部に設けられ、周方向に所定間隔で第1の歯が形成された第1のブレーキディスクと、前記第1のブレーキディスクに対向させて回転子軸に一体に組み付けられ、周方向に所定間隔で第2の歯が形成された第2のブレーキディスクと、前記電動機が停止状態において、第1のブレーキディスクは、常時第2のブレーキディスクに向けて押し当てられて当該電動機の回転にかみ合いブレーキがかけられており、前記電動機を起動する際に前記かみ合いブレーキを解除してから当該電動機を駆動制御する制御部を具備し、前記制御部は電動機を起動する際にかみ合いブレーキ解除動作と第2のブレーキディスクの所定方向への回転動作を並行することによりかみ合いブレーキが解除されることを特徴とする。
ここで、「並行する」とは、動作開始のタイミングの前後を問わず、2以上の動作がならび行なわれることをいう。具体的には、かみ合いブレーキ解除動作と第2ブレーキディスクの所定方向への回転動作を同時に行なってもよいし、かみ合いブレーキ解除動作を行ないながら第2ブレーキディスクの所定方向への回転動作を行なうようにしてもよいし、或いは第2ブレーキディスクの所定方向への回転動作を行ないながらかみ合いブレーキ解除動作を行なうようにしてもよい。
【0009】
また、前記制御部は電動機を起動する際に、当該電動機を少なくとも時計回り方向(CW)及び反時計回り方向(CCW)、より好ましくはCW−CCW−CW方向若しくはCCW−CW−CCW方向へ所定量回転させることによりかみ合いブレーキが解除されることを特徴とする。
【0010】
また前記電動機にはステッピングモータが用いられ、当該電動機を起動する際に制御部はマイクロステップ駆動方式にて第2のブレーキディスクを所定方向に所定量回転させることを特徴とする。
【0011】
また、他の手段として、電動機と、電動機本体より回転子軸が延設され、該延設された回転子軸の周囲に可動子とブレーキコイルを同心状に配置された電磁ブレーキと、前記可動子の軸端部に設けられ、周方向に所定間隔で第1の歯が形成された第1のブレーキディスクと、前記第1のブレーキディスクに対向させて回転子軸に一体に組み付けられ、周方向に所定間隔で第2の歯が形成された第2のブレーキディスクと、前記回転子軸の回転方向を検出する回転検出部と、前記電動機が停止状態において、第1のブレーキディスクは常時第2のブレーキディスクに押し当てられて当該電動機の回転にかみ合いブレーキがかけられており、前記電動機を起動する際に前記かみ合いブレーキを解除して当該電動機を駆動制御する制御部を具備し、前記電動機を起動する際に、前記制御部はかみ合いブレーキ解除動作と前記回転検出部より停止直前に検出された回転方向と反対方向への第2のブレーキディスクの回転動作を並行することによりかみ合いブレーキが解除されることを特徴とする。
【0012】
また、前記制御部は電動機を起動する際に、回転検出部より停止直前に検出された回転方向と反対方向へ第2のブレーキディスクを所定量回転させながらかみ合いブレーキが解除されることを特徴とする。
【0013】
また、前記電動機にはステッピングモータが用いられ、当該電動機を起動する際に制御部はマイクロステップ駆動方式にて第2のブレーキディスクを所定量回転させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
上述した電磁ブレーキ付電動機を用いれば、電動機が停止状態において第1のブレーキディスクは常時第2のブレーキディスクに向けて押し当てられて第1、第2の歯どうしがかみ合うことにより当該電動機の回転にかみ合いブレーキがかけられるので、回転子軸に作用する外力が変動しても十分な保持トルクを得ることができる。
また、制御部は電動機を起動する際にかみ合いブレーキ解除動作と第2のブレーキディスクの所定方向への回転動作を並行することによりかみ合いブレーキが解除される。これにより、電動機の起動に際して、回転子軸に作用する外力の影響を受けない第1,第2の歯の回転方向側面どうしの接触摩擦力が作用しない位置まで第2のブレーキディスクを回転させてかみ合いブレーキを解除できる。よって、可動子の小さな吸引力でブレーキ解除を行なうことができ、電磁ブレーキを小型で低消費電力化することができる。
【0015】
特に、制御部は電動機を起動する際に、当該電動機を少なくとも時計回り方向(CW)及び反時計回り方向(CCW)、より好ましくはCW−CCW−CW方向若しくはCCW−CW−CCW方向へ所定量回転させることによりかみ合いブレーキが解除される。この電動機の回転動作により、第1,第2のブレーキディスクの第1,第2の歯がいずれのかみ合い状態にあっても、第1,第2の歯の回転方向側面どうしが非接触となる位置まで第2のブレーキディスクを回転させることができる。
【0016】
また、電動機にはステッピングモータが用いられるので、初期トルクが高く、起動時の低速回転域での制御性が良い。また電動機を起動する際に制御部は通常の1−2相励磁による駆動方式に替えてマイクロステップ駆動にて第2のブレーキディスクを所定方向に所定量回転させるので、通常の1−2相励磁駆動方式に比べて高分解能による高精細な回転制御が行なえ、電動機を起動する際の作動音を抑制することができる。
【0017】
また、回転子軸の回転方向を検出する回転検出部を備え、制御部はかみ合いブレーキ解除動作と前記回転検出部より停止直前に検出された回転方向と反対方向への第2のブレーキディスクの回転動作を並行することにより、かみ合いブレーキが解除される。これにより、電磁ブレーキを解除するための電動機の駆動シーケンスを簡略化することができる。
また、制御部は電動機を起動する際に、回転検出部より停止直前に検出された回転方向と反対方向へ第2のブレーキディスクを所定量回転させながらかみ合いブレーキが解除されることにより、かみ合いブレーキ解除のための通電時間を短縮して省エネルギー化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る電磁ブレーキ付電動機の最良の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。以下では、シャッター用の電動巻取り装置に設けられる電磁ブレーキ付電動機を例示して説明する。電動巻取り装置は一例としてチューブラタイプの装置が用いられる。すなわち、図1において、図示しない巻取シャフトと同軸に設けられるハウジング部内に駆動源としての電動機(例えばステッピングモータ)1の側面に電磁ブレーキ2が一体に組み付けられた電磁ブレーキ付電動機が用いられる。また、電動機1の駆動力はクラッチ機構3を通じて巻取シャフトへ伝達されるようになっている、また、電磁ブレーキ付電動機1は制御部(制御回路塔載部)4によって、電動機1の回転動作や電磁ブレーキ2のブレーキ動作が制御される。電磁ブレーキ付電動機の電磁ブレーキ2を解除して電動機1を起動するとクラッチ機構3を通じて巻取シャフトを回転駆動するようになっている。オプションではあるが、電動機1とクラッチ機構3の間には、回転子軸の回転方向を検出する回転検出部(エンコーダ)21が設けられる。エンコーダ21により電動機1が停止する直前に検出された回転子軸の回転方向を制御部4が記憶するようになっている。
尚、電動機は特に限定されないが、初期トルク(低速回転域のトルク)が高い位置制御モータ(ステッピングモータ、ハイブリッド型ステッピングモータ等)が好ましい。
【0019】
先ず、図2を参照して、電磁ブレーキ付電動機の概略構成について説明する。電動機本体5の軸方向側面(ブラケット側面)5aから回転子軸6が延設され、該延設された回転子軸6と同心状に電磁ブレーキ2が一体に組み付けられている。回転子軸6の周囲には金属磁性体よりなる可動子7が軸方向に移動可能に嵌め込まれ、その周囲に固定子8が同心状に配置されている。
【0020】
図2において、固定子8の構成について説明する。電動機本体5の軸方向側面5aには、バックヨーク9が組み付けられている。バックヨーク9には底部に貫通孔10aが設けられたカップ状のヨーク10が一体に組み付けられている。バックヨーク9には樹脂製のコイルボビン11が回転子軸6と同心状に組み付けられている。コイルボビン11の凹溝部にはブレーキコイル12が巻き付けられている。コイルボビン11はバックヨーク9に一体に組み付けられ、ヨーク10内に収納されている。
【0021】
図2において、可動子7の軸方向外側端部には第1のブレーキディスク13が設けられている。図3(a)において、第1のブレーキディスク13のブレーキ作用面には、周方向に所定間隔で第1の歯14が放射状に形成されている。本実施例では、歯数N=12枚歯、歯溝幅(歯と歯の隙間)P=20°、歯厚角度A=10°の第1のブレーキディスク13が用いられる。
【0022】
図3(b)(c)において、可動子7は第1のブレーキディスク13とこれに連続する小径円筒状の可動子本体15が設けられている。第1のブレーキディスク13のブレーキ作用面と反対面には、戻しばね20が押し当てられる凹部13aが設けられている。また、可動子本体15の外周面には長手方向に突条15aが設けられている。この突条15aが図2のコイルボビン11の軸孔11aに設けられた凹溝(図示せず)と嵌め合った状態で回り止めがなされている。よって、ブレーキコイル12へ通電しても可動子7は回転子軸6の周囲で回転することなく軸方向のみ移動するように組み付けられている。
【0023】
また、図2において、回転子軸6の軸端部には第2のブレーキディスク16がねじ17により一体に組み付けられている。第2のブレーキディスク16は、第1のブレーキディスク13と対向配置されている。図4(c)において、第2のブレーキディスク16のブレーキ作用面(対向面)には、周方向に所定間隔で第2の歯18が放射状に形成されている。本実施例では、歯数N=12枚歯、歯溝幅P=20°、歯厚角度B=10°の第2のブレーキディスク16が用いられる。
【0024】
図4(c)において、第2のブレーキディスク16の軸孔16aには面取り部16bが形成されている。図2において、回転子軸6の軸端部にも面取り部6aが形成されている。第2ブレーキディスク16の軸孔16aに回転子軸6の面取り部6aを面取り部16bと重ね合わせて嵌め込むことで、第2ブレーキディスク16が回転子軸6に対して回り止めされて組み付けられる(図2参照)。
【0025】
図4(b)において、第2ブレーキディスク16のブレーキ作用面と反対側には小径円筒状の軸固定部19が連続して形成されている。図4(a)において、軸固定部19の外周面の一部には軸孔16aに連通するねじ孔19aが設けられている。また、図2において、回転子軸6の面取り部6aにもねじ孔6bが形成されている。ねじ孔19aにねじ17をはめ込んで回転子軸6のねじ孔6bとねじ嵌合させることで、第2ブレーキディスク16が回転子軸6に対してねじ止め固定される。軸固定部19はヨーク10の貫通孔10aに配置され第2のブレーキディスク16が回転子軸6と一体になって回転可能に組み付けられている。
【0026】
以上のように、第1のブレーキディスク13と第2のブレーキディスク16は回転方向に回り止めされて各々組み付けられるため、第1の歯14と第2の歯18の山部分と谷部がかみ合うように対向配置したまま、第1のブレーキディスク13を可動子7とともに軸方向のみにスライドさせることができる。
【0027】
尚、第2のブレーキディスク16の回転量は、第1の歯14と第2の歯18の歯数Nや歯厚にもよるが、ブレーキ解除方法を円滑に実現するため、一般に以下のように設定される。図10において、第1のブレーキディスク13の歯厚角度をA、第2のブレーキディスク16の歯厚角度をB、第1のブレーキディスク13のピッチ角をC(360/N)、第2のブレーキディスク16の第2の歯18の最大移動量(回転角度)をDとする。
【0028】
第2のブレーキディスク16の起動時の回転角度は、D=C−(A+B)=(C−A)−Bとなるように制御される。即ち、第1のブレーキディスク13の歯溝幅P=(C−A)から第2のブレーキディスク16の歯厚Bを引いた値(P−B)をブレーキ解除回転角の上限値とする。実際の設定値は、エンコーダ21を省略した場合(歯どうしのかみ合い位置が不明な場合)を考慮して、ブレーキ解除回転角の上限値の1/2からブレーキ解除回転角の上限値(P−B)の間で設定される。
【0029】
次に、電磁ブレーキ付電動機のブレーキ解除動作について図5及び図6の状態図並びに図7乃至図9のフローチャートを参照して説明する。
図5において、電動機1が停止状態において、第1のブレーキディスク13は、第2のブレーキディスク16に向けて第1、第2の歯14,18どうしがかみ合うように押し当てられて当該電動機1にかみ合いブレーキがかけられている。
電動機1を起動する際に回転子軸6に連結する第2のブレーキディスク16を所定方向へ回転させて対向する第1、第2のブレーキディスク13,16に形成された第1,第2の歯14,18どうしの周方向側面のかみ合いを解除してからブレーキコイル12へ通電して可動子7が吸引され、当該電動機1のブレーキが解除される。
【0030】
以下、図5の第1,第2のブレーキディスク13,16どうしのかみ合い部を拡大した図6(a)〜(d)に基づいてブレーキ解除動作について詳細に説明する。
図6(a)において、第1のブレーキディスク13と第2のブレーキディスク16は、第1の歯14と第2の歯18が回転方向の側面どうしが非接触でかみ合っていることが望ましい。
【0031】
しかしながら、現実には回転子軸6にはシャッターの重量やアシストばねによる負荷トルクなど回転方向に常時不安定な外力が作用している。よって、第1のブレーキディスク13と第2のブレーキディスク16は相対的に回転停止位置が図6(b)において時計回り方向(CW方向)へ回転し、第1の歯14と第2の歯18の対向する側面14a,18aどうしが接触した状態若しくは図6(c)において反時計回り方向(CCW方向)へ回転し、第1の歯14と第2の歯18の対向する側面14b,18bどうしが接触した状態で停止している。
【0032】
この状態で、ブレーキコイル12へ通電しても、可動子7の吸引力より第1の歯14と第2の歯18の対向する側面14a,18aどうし若しくは側面14b,18bどうしの接触摩擦力が大きいため、可動子7は動かず第1ブレーキディスク13を図6(d)の矢印方向(軸方向)へ移動させてかみ合いブレーキを解除できない。以上のような不具合を解消すべく、以下に述べるブレーキ解除動作が行われる。
【0033】
ブレーキ解除動作について図7乃至図9のフローチャートを参照して説明する。尚、電動機1として、ハイブリッド型ステッピングモータを用いた場合について説明する。ハイブリッド型ステッピングモータは、例えば1−2相励磁駆動方式で基本ステップ角が1.8°(1周200ステップ)、起動時にマイクロステップ駆動(4倍分解能)で解除ステップ数15(回転角;1.8×(1/4)×15=6.75°)として駆動される。
【0034】
先ず、電動機1にエンコーダ21が設けられており、制御部4は電動機1が停止する直前にエンコーダ21で検出された回転子軸6の回転方向を記憶している場合の制御動作について説明する。
図7において、先ず制御部4は電磁ブレーキ2(図2参照)に通電してブレーキ解除動作を開始する(ステップS1)。
【0035】
制御部4は、ハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K1)を入力して当該モータをCW(若しくはCCW)方向(制御部4が記憶した回転方向と反対方向)へ所定量(例えば片側15ステップ)回転させ(ステップS2)、モータ1の駆動状態を一定時間ホールドする(ステップS3)。
【0036】
これにより、たとえ第2の歯18と第1の歯14の回転方向側面どうしが接触していても接触位置から非接触位置まで回転させることができる。よって、第2のブレーキディスク16を通じた第1のブレーキディスク13へ作用する外力の影響がなくなるため可動子7が吸引され、第1のブレーキディスク13は第2のブレーキディスク16より軸方向に離間するように移動してかみ合いブレーキが解除される。ブレーキが解除されると、制御部4(図1参照)は通常の1−2相励磁駆動方式に切り替えて電動機1を所定方向へ回転させて通常のシャッターの巻上げ若しくは引き出し動作を行なう(ステップS4)。
【0037】
尚、制御部4は電動機1が停止する直前にエンコーダ21で検出された回転子軸6の回転方向を記憶している場合、ステップS1において、先ず電動機1を起動する際に、制御部4はエンコーダ21より停止直前に検出された回転方向と反対方向へ第2のブレーキディスク16を所定量回転させながら、ステップS2おいて所定のタイミングでブレーキコイル12へ通電してかみ合いブレーキを解除するようにしてもよい。この場合には、かみ合いブレーキ解除のための通電時間を短縮して省エネルギー化を図ることができる。
【0038】
また、第1のブレーキディスク13が戻しばね20の予圧に代えてブレーキコイル12への通電により常時第2のブレーキディスク16に押し当てられている場合には、ステップS1において、制御部4は電磁ブレーキ2への通電を遮断してブレーキ解除動作を開始する。次いで、ステップS2において、制御部4はハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K1)を入力して当該モータをCW(若しくはCCW)方向(制御部4が記憶した回転方向と反対方向)へ所定量(例えば片側15ステップ)回転させてかみ合いブレーキが解除される(ステップS2)。
【0039】
或いは、ステップS1において、制御部4は電動機1を起動する際に、エンコーダ21より停止直前に検出された回転方向と反対方向へ第2のブレーキディスク16を所定量回転させながら、ステップS2おいて所定のタイミングでブレーキコイル12へ通電(若しくは通電を遮断)してかみ合いブレーキを解除するようにしてもよい。第1のブレーキディスク13がブレーキコイル12への通電により常時第2のブレーキディスク16に押し当てられている場合には、かみ合いブレーキをかけるためのブレーキコイル12への通電時間は長くなるが、災害時等の停電下においても、ブレーキ解除が可能となる。
【0040】
次に、図8において、電動機1にエンコーダ21を具備しない場合(歯どうしのかみ合い位置が不明な場合)のブレーキ解除方法について説明する。制御部4は電磁ブレーキ2(図2参照)に通電してブレーキ解除動作を開始する(ステップS11)。
【0041】
次に、制御部4は、ハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K1)を入力してCW(若しくはCCW)方向に所定量(例えば片側15ステップ)回転させ(ステップS12)、当該モータ1の駆動状態を一定時間ホールドする(ステップS13)。
【0042】
同様にして、制御部4はハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K2)を入力して反対方向即ちCCW(若しくはCW)方向に所定量(例えば片側15ステップ)回転させ(ステップS14)、当該モータ1の駆動状態を一定時間ホールドする(ステップS15)。
【0043】
尚、モータパルス数Kは、K1=K2であってもよいし、パルス数K1≠K2であってもよい。以上のブレーキ解除動作は、電動機1が駆動停止してから制御部4が再度電動機1を起動するたびに行なわれる。また、電動機1を起動する際の回転方向については任意であるが、例えばシャッターを開ける(巻き上げる)際にはCCW⇒CW方向に回転させ、シャッターを閉める(引き出す)際にはCW⇒CCW方向へ回転させるようにするとよい。
【0044】
これにより、たとえ第2の歯18の回転方向側面18a、18bのいずれかが第1の歯14の回転方向側面14a、14bのいずれかと接触していたとしても(図6(b)(c)参照)、非接触位置まで回転させることができる。よって、第2のブレーキディスク16を通じた第1のブレーキディスク13へ作用する外力の影響がなくなるため可動子7が吸引され、第1のブレーキディスク13は第2のブレーキディスク16より軸方向に離間するように移動してかみ合いブレーキが解除される。ブレーキが解除されると、制御部4(図1参照)は通常の1−2相励磁駆動方式に切り替えて電動機1を所定方向へ回転させて通常のシャッターの巻上げ若しくは引き出し動作を行なう(ステップS16)。
【0045】
次に、図9において、電動機1にエンコーダ21を具備しない場合(歯どうしのかみ合い位置が不明な場合)のブレーキ解除方法について説明する。先ず、制御部4は電磁ブレーキ2(図2参照)に通電してブレーキ解除動作を開始する(ステップS21)。
【0046】
次に、制御部4は、ハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K1)を入力してCW方向に所定量(例えば片側15ステップ)回転させ(ステップS22)、当該モータ1の駆動状態を一定時間ホールドする(ステップS23)。
【0047】
同様に、ハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K2)を入力して、反対方向即ちCCW方向に所定量(例えば片側15ステップ)回転させ(ステップS24)、当該モータ1の駆動状態を一定時間ホールドする(ステップS25)。
【0048】
次に、ハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K3)を入力して当該モータ1を再度CW方向に所定量(例えば片側15ステップ)回転させる(ステップS26)。尚、モータパルス数K1=K2=K3であってもよいし、パルス数K1≠K2≠K3であってもよい。
以上のブレーキ解除動作は、電動機1が停止してから制御部4が再度電動機1を起動するたびに行なわれる。
【0049】
これにより、たとえ第2の歯18の回転方向側面18a、18bのいずれかが第1の歯14の回転方向側面14a、14bのいずれかと接触していたとしても、非接触位置まで確実に回転させることができる。したがって、よって、第2のブレーキディスク16を通じた第1のブレーキディスク13へ作用する外力の影響がなくなるため可動子7が吸引され、第1のブレーキディスク13は第2のブレーキディスク16より軸方向に離間するように移動してブレーキが解除される。
【0050】
ブレーキが解除されると、制御部4(図1参照)は通常の1−2相励磁駆動方式に切り替えて電動機1を所定方向へ回転させて通常のシャッターの巻上げ若しくは引き出し動作を行なう(ステップS27)。よって、回転子軸6に作用する外力の変動にかかわらず電動機1のブレーキ解除動作が確実に行なえるので、シャッターの引き出し、巻き上げ動作をスムーズに行なえる。
【0051】
尚、第1のブレーキディスク13が戻しばね20の予圧に代えてブレーキコイル12への通電により常時第2のブレーキディスク16に押し当てられている場合には、ステップS11,ステップS21において、制御部4は電磁ブレーキ2への通電を遮断してブレーキ解除動作を開始する。次いで、ステップS12,ステップS22において、制御部4はハイブリッド型ステッピングモータ1にマイクロステップ駆動により所定パルス数(K1)を入力して当該モータをCW(若しくはCCW)方向(制御部4が記憶した回転方向と反対方向)へ所定量(例えば片側15ステップ)回転させ、ステップS13,ステップS23において当該モータ1の駆動状態を一定時間ホールドする。以上の動作をCCW(若しくはCW)方向へも同様に繰り返すことでかみ合いブレーキが解除される。
或いは、ステップS11,ステップ21において、制御部4は電動機1を起動する際に、第2のブレーキディスク16を所定方向に所定量回転させる(ステップS12〜S15、ステップS22〜S26)回転動作を開始してから所定のタイミングでブレーキコイル12へ通電(若しくは通電を遮断)してかみ合いブレーキを解除するようにしてもよい。
【0052】
上記実施例はシャッター用の電動巻取り装置について説明したが、カーテン、ブラインド、オーニングなどの他の長尺物の巻取り装置に適用しても良い。
また、電動巻取り装置は、チューブラタイプ以外の装置構成であってもよい。即ち、電磁ブレーキ付電動機は、クラッチ機構などとともに巻取シャフトの外部に設けられる駆動ユニット内に収納されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】電動巻取り装置の駆動部のブロック構成図である。
【図2】電磁ブレーキ付電動機の部分断面図である。
【図3】第1のブレーキディスクの左側面図、軸方向部分断面図及び右側面図である。
【図4】第2のブレーキディスクの左側面図、軸方向断面図及び右側面図である。
【図5】第1,第2のブレーキディスクの軸方向部分断面図である。
【図6】第1,第2のブレーキディスクの第1、第2の歯どうしのかみ合い状態を示す模式図である。
【図7】電磁ブレーキの解除動作を示すフローチャートである。
【図8】他例に係る電磁ブレーキの解除動作を示すフローチャートである。
【図9】他例に係る電磁ブレーキの解除動作を示すフローチャートである。
【図10】第2のブレーキディスクの第2の歯の最大移動量(回転角度)を説明する模式図である。
【符号の説明】
【0054】
1 電動機(ステッピングモータ)
2 電磁ブレーキ
3 クラッチ機構
4 制御部
5 電動機本体
5a 軸方向側面
6 回転子軸
6a,16b 面取り部
6b,19a ねじ孔
7 可動子
8 固定子
9 バックヨーク
10 ヨーク
10a 貫通孔
11 コイルボビン
11a,16a 軸孔
12 ブレーキコイル
13 第1のブレーキディスク
13a 凹部
14 第1の歯
15 可動子本体
15a 突条
16 第2のブレーキディスク
17 ねじ
18 第2の歯
19 軸固定部
20 戻しばね
21 回転検出部(エンコーダ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機と、
電動機本体より回転子軸が延設され、該延設された回転子軸の周囲に可動子とブレーキコイルを同心状に配置された電磁ブレーキと、
前記可動子の軸端部に設けられ、周方向に所定間隔で第1の歯が形成された第1のブレーキディスクと、
前記第1のブレーキディスクに対向させて回転子軸に一体に組み付けられ、周方向に所定間隔で第2の歯が形成された第2のブレーキディスクと、
前記電動機が停止状態において、第1のブレーキディスクは、常時第2のブレーキディスクに向けて押し当てられて当該電動機の回転にかみ合いブレーキがかけられており、前記電動機を起動する際に前記かみ合いブレーキを解除してから当該電動機を駆動制御する制御部を具備し、
前記制御部は電動機を起動する際にかみ合いブレーキ解除動作と第2のブレーキディスクの所定方向への回転動作を並行することによりかみ合いブレーキが解除される電磁ブレーキ付電動機。
【請求項2】
前記制御部は電動機を起動する際に、当該電動機を少なくとも時計回り方向(CW)及び反時計回り方向(CCW)、より好ましくはCW−CCW−CW方向若しくはCCW−CW−CCW方向へ所定量回転させることによりかみ合いブレーキが解除される請求項1記載の電磁ブレーキ付電動機。
【請求項3】
前記電動機にはステッピングモータが用いられ、当該電動機を起動する際に制御部はマイクロステップ駆動方式にて第2のブレーキディスクを所定方向に所定量回転させる請求項1又は2記載の電磁ブレーキ付電動機。
【請求項4】
電動機と、
電動機本体より回転子軸が延設され、該延設された回転子軸の周囲に可動子とブレーキコイルを同心状に配置された電磁ブレーキと、
前記可動子の軸端部に設けられ、周方向に所定間隔で第1の歯が形成された第1のブレーキディスクと、
前記第1のブレーキディスクに対向させて回転子軸に一体に組み付けられ、周方向に所定間隔で第2の歯が形成された第2のブレーキディスクと、
前記回転子軸の回転方向を検出する回転検出部と、
前記電動機が停止状態において、第1のブレーキディスクは常時第2のブレーキディスクに押し当てられて当該電動機の回転にかみ合いブレーキがかけられており、前記電動機を起動する際に前記かみ合いブレーキを解除して当該電動機を駆動制御する制御部を具備し、
前記電動機を起動する際に、前記制御部はかみ合いブレーキ解除動作と前記回転検出部より停止直前に検出された回転方向と反対方向への第2のブレーキディスクの回転動作を並行することによりかみ合いブレーキが解除される電磁ブレーキ付電動機。
【請求項5】
前記制御部は電動機を起動する際に、回転検出部より停止直前に検出された回転方向と反対方向へ第2のブレーキディスクを所定量回転させながらかみ合いブレーキが解除される請求項4記載の電磁ブレーキ付電動機。
【請求項6】
前記電動機にはステッピングモータが用いられ、当該電動機を起動する際に制御部はマイクロステップ駆動方式にて第2のブレーキディスクを所定量回転させる請求項4又は請求項5記載の電磁ブレーキ付電動機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2009−177905(P2009−177905A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−12547(P2008−12547)
【出願日】平成20年1月23日(2008.1.23)
【出願人】(000106944)シナノケンシ株式会社 (316)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】