説明

電磁ブレーキ及び電磁クラッチ

【課題】 アーマチュアの吸着及び釈放時における衝突音を軽減した電磁ブレーキ及び電磁クラッチを提供する。
【解決手段】 アーマチュア11と、このアーマチュア11を吸引するマグネットヨーク15と、マグネットヨーク15を磁化する励磁コイル14と、ディスク16、及び、プレート12とを備え、アーマチュア11とディスク16及びプレート12間の摩擦力を利用して、ブレーキ動作を行う電磁ブレーキ10において、アーマチュア11とマグネットヨーク15との衝突時、又は、アーマチュア11とディスク16及びプレート12との衝突時に、マグネットヨーク15、又は、ディスク16及びプレート12を介して、アーマチュア11の運動量が伝達される、所定の重量の可動質量体52と、可動質量体52の運動量を減衰させる減衰材53とを具備した衝撃吸収器50を備えた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁ブレーキ及び電磁クラッチに係り、特に、アーマチュアの吸着及び釈放時における衝突音を軽減した電磁ブレーキ及び電磁クラッチに関する。
【背景技術】
【0002】
アーマチュアとディスクとの摩擦力を利用したブレーキが、特許文献1に開示されている。
なお、アーマチュアとディスクとの摩擦力を利用したクラッチについては、ブレーキ動作の替わりにクラッチ動作が行われ、動作原理は同様なので、その具体的な説明は省略する。
【0003】
従来のブレーキの一例として、無励磁作動形ブレーキについて、図9及び図10を用いて説明する。
図9は、従来の無励磁作動形ブレーキの構成を示す縦断側面図で、コイル励磁時の場合である。
図10は、従来の無励磁作動形ブレーキの構成を示す縦断側面図で、コイル無励磁時の場合である。
【0004】
図9及び図10に示すように、無励磁作動形ブレーキ100の主要構成は、アーマチュア110、プレート120、シャフト130、マグネットヨーク150、励磁コイル152、ディスク160、コイルバネ170である。
また、同図において、180は、プレート120とマグネットヨーク150間のスペーサ、190は、アーマチュア110とマグネットヨーク150の金属同士の衝突音を低減するOリングである。
【0005】
ディスク160は、シャフト130にスプライン140を介して取り付けられており、シャフト130からトルクは受けるが、軸方向への移動は可能である。
一方、アーマチュア110は、図9及び図10の矢印に示すように、軸方向への移動は可能であるが、回転は不能である。
【0006】
無励磁作動形ブレーキ100では、図9に示すように、励磁コイル152に電流を流した状態では、マグネットヨーク150が磁化され、アーマチュア110がコイルバネ170の付勢力に抗して、矢印で示すようにマグネットヨーク150側に吸着され、ディスク160は回転自在になり、ブレーキ動作が解除される。
【0007】
一方、励磁コイル152に電流を流さない状況では、図10に示すように、アーマチュア110はコイルバネ170により、矢印で示すようにプレート120側に付勢され、ディスク160がアーマチュア110及びプレート120の両面側で摩擦しあうことにより、ブレーキ動作を行う。
即ち、励磁コイル152への非通電時にブレーキがかかり、通電時にブレーキが解除される機能を備えている。
なお、トルクを上げるために、ディスク160の両面に、摩擦材が付いていることもある。
【0008】
【特許文献1】実公平7−23622
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、電磁ブレーキを住宅地等の静かな環境で使用する場合は、騒音対策が重要になる。
従来の電磁ブレーキ100では、マグネットヨーク150がアーマチュア110を吸着した際、図9に示すように、アーマチュア110とマグネットヨーク150の金属同士の衝突音を低減するOリング190が取り付けられている。
しかし、一方で、従来の電磁ブレーキ100では、マグネットヨーク150がアーマチュア110を釈放した際、アーマチュア110とディスク160、プレート120との衝突音に対しては、騒音対策は不十分であるという問題を備えていた。
また、アーマチュア110を吸着する際も、Oリング190が取り付けられているとはいえ、一層の騒音対策が重要である。
【0010】
本発明は、上記課題(問題点)を解決し、アーマチュアの吸着及び釈放時における衝突音を軽減した電磁ブレーキ及び電磁クラッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の電磁ブレーキは、請求項1に記載のものでは、アーマチュアと、このアーマチュアを吸引するマグネットヨークと、前記マグネットヨークを磁化する励磁コイルと、ディスク、及び、プレートとを備え、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレート間の摩擦力を利用して、ブレーキ動作を行う電磁ブレーキにおいて、前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突時、又は、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突時に、前記マグネットヨーク、又は、前記ディスク及び前記プレートを介して、前記アーマチュアの運動量が伝達される、所定の重量の可動質量体と、前記可動質量体の運動量を減衰させる減衰材、或いは、ばね要素と減衰材を兼ね合わせたものとを具備した衝撃吸収器を備え、前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突音、及び、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突音を軽減するように構成した。
【0012】
請求項2に記載の電磁ブレーキは、前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク外周に取り付けるように構成した。
【0013】
請求項3に記載の電磁ブレーキは、前記衝撃吸収器の前記可動質量体の進行方向は、径方向となるように構成した。
【0014】
請求項4に記載の電磁ブレーキは、前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク内に収容するように構成した。
【0015】
請求項5に記載の電磁ブレーキは、前記衝撃吸収器をシャフト内に収容するように構成した。
【0016】
請求項6に記載の電磁ブレーキは、前記衝撃吸収器の前記可動質量体は、鉄等の金属性材質、又は、硬質プラスチック若しくはセラミック等の材質で形成され、前記減衰材は、ゴム、スポンジ等のダンピング材、又は、粘性のある液体、若しくは、砂等の粒状体である構成とした。
【0017】
本発明の電磁クラッチは、請求項7に記載のものでは、アーマチュアと、このアーマチュアを吸引するマグネットヨークと、前記マグネットヨークを磁化する励磁コイルと、ディスク、及び、プレートとを備え、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレート間の摩擦力を利用して、クラッチ動作を行う電磁クラッチにおいて、前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突時、又は、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突時に、前記マグネットヨーク、又は、前記ディスク及び前記プレートを介して、前記アーマチュアの運動量が伝達される、所定の重量の可動質量体と、前記可動質量体の運動量を減衰させる減衰材、或いは、ばね要素と減衰材を兼ね合わせたものとを具備した衝撃吸収器を備え、前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突音、及び、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突音を軽減するように構成した。
【0018】
請求項8に記載の電磁クラッチは、前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク外周に取り付けるように構成した。
【0019】
請求項9に記載の電磁クラッチは、前記衝撃吸収器の前記可動質量体の進行方向は、径方向となるように構成した。
【0020】
請求項10に記載の電磁クラッチは、前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク内に収容するように構成した。
【0021】
請求項11に記載の電磁クラッチは、前記衝撃吸収器をシャフト内に収容するように構成した。
【0022】
請求項12に記載の電磁クラッチは、前記衝撃吸収器の前記可動質量体は、鉄等の金属性材質、又は、硬質プラスチック若しくはセラミック等の材質で形成され、前記減衰材は、ゴム、スポンジ等のダンピング材、又は、粘性のある液体、若しくは、砂等の粒状体である構成とした。
【発明の効果】
【0023】
本発明の電磁ブレーキは、上記のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項1に記載したように構成すると、マグネットヨークがアーマチュアを吸着又は釈放する際に、衝撃吸収器が、アーマチュアとディスク及びプレートに衝突する衝撃、及び、アーマチュアがマグネットヨークに衝突する衝撃を吸収するので、マグネットヨークがアーマチュアを吸着又は釈放する際の衝突音を大幅に軽減することができ、低騒音の電磁ブレーキとすることができる。
【0024】
(2)請求項2に記載したように構成すると、上記同様の効果の他に、衝撃吸収器の取り付けが容易になる。
【0025】
(3)請求項3に記載したように構成すると、上記同様の効果の他に、肉厚の薄いプレートにも取り付けが可能になる。
【0026】
(4)請求項4及び5に記載したように構成すると、上記同様の効果の他に、電磁ブレーキのコンパクト性を維持できる。
【0027】
(5)請求項6に記載したように構成すると、好適な材質の可動質量体及び減衰体を備えた電磁ブレーキとすることができる。
【0028】
本発明の電磁クラッチは、上記のように構成したために、以下のような優れた効果を有する。
(1)請求項7に記載したように構成すると、マグネットヨークがアーマチュアを吸着又は釈放する際に、衝撃吸収器が、アーマチュアとディスク及びプレートに衝突する衝撃、及び、アーマチュアがマグネットヨークに衝突する衝撃を吸収するので、マグネットヨークがアーマチュアを吸着又は釈放する際の衝突音を大幅に軽減することができ、低騒音の電磁クラッチとすることができる。
【0029】
(2)請求項8に記載したように構成すると、上記同様の効果の他に、衝撃吸収器の取り付けが容易になる。
【0030】
(3)請求項9に記載したように構成すると、上記同様の効果の他に、肉厚の薄いプレートにも取り付けが可能になる。
【0031】
(4)請求項10及び11に記載したように構成すると、上記同様の効果の他に、電磁クラッチのコンパクト性を維持できる。
【0032】
(5)請求項12に記載したように構成すると、好適な材質の可動質量体及び減衰体を備えた電磁クラッチとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の電磁ブレーキの各実施の形態を説明する前に、本発明の基本原理について図1を用いて説明する。
図1は、本発明の電磁ブレーキの基本原理を説明するための概念図である。
【0034】
図1において、物体A、物体B、物体Cは、それぞれ同一の質量を有する剛体球とし、物体Bと物体Cは静止状態で接触しており、物体Aは、物体B及び物体Cに向けて速度vで運動しているものとする。
ここで、物体Aが物体Bに衝突すると、反発係数が1の場合、物体Bは静止状態を維持したままで、物体Bに接触している物体Cが物体Aから運動量を伝達されて、速度vで運動を開始する。
即ち、物体Bに物体Cを接触させておくことで、物体Bは静止したままで運動量は伝達されず、物体Aの運動量を物体Cに伝達することができる。
【0035】
ここで物体Aを電磁ブレーキのアーマチュア、物体Bをディスク及びプレートと考えると、従来の電磁ブレーキでは物体Cに相当する構成が存在しなかったために、物体A、即ち、アーマチュアの運動エネルギーは、物体B、即ち、ディスク及びプレートと衝突した際には、ほぼ、アーマチュア、ディスク及びプレートの衝撃エネルギーに転換され、これが騒音の原因になっていた。
【0036】
そこで、本願では、物体Cに相当し、所定の重量の可動質量体をプレート又はマグネットヨークに接触させておく。
また、可動質量体には、アーマチュアから伝達された運動エネルギーを減衰させる減衰材として、ゴム等のダンピング材、或いは、バネやダンパ等を用意しておき、可動質量体の運動エネルギーを吸収させる。
従って、騒音の原因となっていた、アーマチュアの衝突エネルギーはマグネットヨーク又はプレートを素通りし、可動質量体を介して減衰材に吸収されるので、騒音を大幅に低減した電磁ブレーキとすることができる。
【0037】
以上の説明を踏まえ、以下、本発明の電磁ブレーキの第1乃至第7の各実施の形態について、図2乃至図8を用い、図9及び図10を参照して説明する。
なお、図2乃至図8において、従来の電磁ブレーキと同一の構成については、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0038】
第1の実施の形態
先ず、本発明の電磁ブレーキの第1の実施の形態について、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の第1の実施の形態の電磁ブレーキ10の構成を説明するための縦断側面図である。
【0039】
本実施の形態の電磁ブレーキ10は、図9及び図10に示す従来の無励磁作動形ブレーキ100の主要構成と同様に、アーマチュア11、プレート12、シャフト13、マグネットヨーク15、励磁コイル14、ディスク16、コイルバネ17を備えた構成である。
【0040】
一方、本実施の形態の電磁ブレーキ10の構成上の特徴は、図2に示すように、プレート12の側面に、衝撃吸収器50を取り付けた点にある。
また、この衝撃吸収器50は、支持体51、可動質量体52、ダンピング材53より構成され、これら各構成は、フレーム54に収容されている。
【0041】
可動質量体52は、アーマチュア11とディスク16及びプレート12との衝突時に、ディスク16及びプレート12を介して、アーマチュア11の運動量が伝達され、ダンピング材53は、この可動質量体52の運動エネルギーを減衰させる。
また、図2に示すように、可動質量体52は支持体51を介してプレート12に接触している。
ここで支持体51は、金属、セラミクス、硬化プラスチックのような硬い球面状の接触面でプレート12と点接触し、可動質量体52への衝撃力が、可動質量体52に伝達されやすくしておく。
【0042】
このように構成すると、アーマチュア11とディスク16及びプレート12との衝突時に、衝撃力は可動質量体52を介してダンピング材53に吸収され、ディスク16及びプレート12にはエネルギーは殆ど伝達されないので、アーマチュア11とディスク16及びプレート12との衝突音を大幅に軽減することができる。
【0043】
第2の実施の形態
次に、本発明の電磁ブレーキの第2の実施の形態について、図3を用いて説明する。
図3は、本発明の第2の実施の形態の電磁ブレーキ20の基本構成を示す縦断側面図である。
【0044】
本実施の形態の電磁ブレーキ20は、図2に示す第1の実施の形態の電磁ブレーキ10の主要構成と同様に、アーマチュア11、プレート12、シャフト13、マグネットヨーク15、励磁コイル14、ディスク16、コイルバネ17を備えた構成である。
【0045】
一方、本実施の形態の電磁ブレーキ20の特徴は、図3に示すように、マグネットヨーク15の側面に、第1の実施の形態で説明した同様の構成の衝撃吸収器50を取り付けた点にある。
【0046】
このように構成すると、第1の実施の形態同様、アーマチュア11とマグネットヨーク15との衝突時に、衝撃力は、衝撃吸収器50の可動質量体52を介してダンピング材53に吸収され、マグネットヨーク15には運動エネルギーは殆ど伝達されないので、アーマチュア11とマグネットヨーク15との衝突音を大幅に軽減することができる。
なお、第1及び第2の実施の形態では、それそれ衝撃吸収器50を別個プレート12側、マグネットヨーク15側に取り付けた例で説明したが、双方の騒音対策が必要な場合は、双方に取り付けるようにしても良い。
【0047】
第3の実施の形態
次に、本発明の電磁ブレーキの第3の実施の形態について、図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第3の実施の形態の電磁ブレーキ30の基本構成を示す縦断側面図である。
【0048】
本実施の形態の電磁ブレーキ30は、図2に示す第1の実施の形態の電磁ブレーキ10の主要構成と同様で、その基本動作も同様であるので、プレート、シャフト、マグネットヨーク、ディスク、励磁コイル、コイルバネについては、一括して、電磁ブレーキ本体32と表示し、衝撃吸収器60の特徴を中心に説明する。
【0049】
本実施の形態では、衝撃吸収器60は、可動質量体は、鉄球61で、減衰材は、ゴム、スポンジ等のダンピング材62で構成され、プレート12側面に取り付けられる。
可動質量体を鉄球61とすることで、上記第1の実施の形態と同様の効果があるほかに、鉄球61そのものがプレートと点接触するので、図2及び3に示す支持体51が不要になり、衝撃吸収器60の構成そのものが簡単になる。
なお、本実施の形態では、可動質量体は、鉄球61の他に、他の金属性材質、又は、硬質プラスチック若しくはセラミック等の材質で、減衰材は、ゴム以外のスポンジ等のダンピング材、又は、粘性のある液体、砂等の粒状体としても良い。
【0050】
第4の実施の形態
次に、本発明の電磁ブレーキの第4の実施の形態について、図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第4の実施の形態の電磁ブレーキ30の基本構成を示す縦断側面図である。
【0051】
本実施の形態の電磁ブレーキ35は、第3の実施の形態の電磁ブレーキ30と同様に、アーマチュア11、プレート、シャフト、マグネットヨーク15、ディスク、励磁コイル、コイルバネの主要構成を電磁ブレーキ本体32で表示し、衝撃吸収器65の特徴を中心に説明する。
【0052】
本実施の形態では、衝撃吸収器65は、可動質量体66はリング状とし、可動質量体66及びダンピング材67をケース68に収容し、マグネットヨーク15の外周に取り付けた点に特徴を備えている。
【0053】
このように構成すると、第2の実施の形態同様、アーマチュア11とマグネットヨーク15との衝突時に、衝撃力は可動質量体66を介して減衰材67に吸収され、マグネットヨーク15にはエネルギーは殆ど伝達しないので、アーマチュア11とマグネットヨーク15との衝突音を大幅に軽減することができる他、マグネットヨーク15に容易に取り付けることができる。
【0054】
第5の実施の形態
次に、本発明の電磁ブレーキの第5の実施の形態について、図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第5の実施の形態の電磁ブレーキ40の基本構成を示す縦断側面図である。
【0055】
本実施の形態の電磁ブレーキ40は、第3、第4の実施の形態の電磁ブレーキ30、35と同様に、アーマチュア11、プレート12、シャフト、ディスク、励磁コイル、コイルバネの主要構成を電磁ブレーキ本体32で表示し、衝撃吸収器70の特徴を中心に説明する。
【0056】
本実施の形態では、衝撃吸収器70は、可動質量体71と減衰体72は、プレート12の外周側に配置し、可動質量体71の進行方向は、図6の矢印で示すように、径方向となるようにした点に特徴を備えている。
【0057】
このように構成すると、第1の実施の形態同様、アーマチュア11とディスク16及びプレート12との衝突音を大幅に軽減することができる他、衝撃吸収器70を肉厚の薄いプレート12の外周に取り付けができるようになる。
【0058】
第6の実施の形態
次に、本発明の電磁ブレーキの第6の実施の形態について、図7を用いて説明する。
図7は、本発明の第6の実施の形態の電磁ブレーキ44の基本構成を示す縦断側面図である。
【0059】
本実施の形態の電磁ブレーキ44は、上記各実施の形態の電磁ブレーキと同様であり、アーマチュア11、プレート、シャフト、マグネットヨーク15A、ディスク、励磁コイル、コイルバネについては、電磁ブレーキ本体32Aで表示し、衝撃吸収器75の特徴を中心に説明する。
【0060】
本実施の形態では、衝撃吸収器75は、可動質量体76と減衰体78は、マグネットヨーク15Aと、接触部77で接触すると共に、マグネットヨーク15Aの凹部内に、この衝撃吸収器75が収容されている点に特徴を備えている。
【0061】
このように構成すると、第2及び第4の実施の形態同様、アーマチュア11とマグネットヨーク15Aとの衝突音を大幅に軽減することができる他、衝撃吸収器75をマグネットヨーク15A内に収容することで、電磁ブレーキ本体32Aのコンパクト性を維持することができる。
【0062】
第7の実施の形態
次に、本発明の電磁ブレーキの第7の実施の形態について、図8を用いて説明する。
図8は、本発明の第7の実施の形態の電磁ブレーキ46の基本構成を示す縦断側面図である。
【0063】
本実施の形態の電磁ブレーキ46は、上記各実施の形態の電磁ブレーキと同様に、アーマチュア11、プレート12、シャフト13B、ディスク16、励磁コイル、コイルバネの主要構成を電磁ブレーキ本体32Bで表示して、衝撃吸収器80の特徴を中心に説明する。
【0064】
一方、本実施の形態では、衝撃吸収器80は、可動質量体81と減衰体82は、シャフト13Bの内部に収納されている点に特徴を備えている。
【0065】
このように構成すると、アーマチュア11とディスク16及びプレート12の衝突時に、衝撃力は、スプライン(図9参照)を介してシャフト13B内の衝撃吸収器80の可動質量体81に伝達されて、減衰材82に吸収される。
この結果、上記実施の形態同様、アーマチュア11とディスク16及びプレート12との衝突音を大幅に軽減することができるほか、衝撃吸収器80をシャフト13B内に収容することで、電磁ブレーキ本体32Bのコンパクト性を維持することができる。
【0066】
本発明の電磁ブレーキは、上述した実施の形態に限定されず、種々の変更が可能である。
例えば、上記各実施の形態では、無励磁作動形電磁ブレーキで説明したが、一般的な電磁ブレーキにも適用可能なのは言うまでもない。
また、ブレーキ動作をクラッチ動作に置き換えれば、電磁クラッチにも本願が容易に適用でき、本願発明に含まれるのは当然のことである。
また、各実施の形態で示した可動質量体及び減衰体の形状、材質についても、上記各実施の形態のものには限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の基本原理を説明するための概念図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態の電磁ブレーキの基本構成を説明するための縦断側面図である。
【図3】本発明の第2の実施の形態の電磁ブレーキの基本構成を説明するための縦断側面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態の電磁ブレーキの基本構成を説明するための縦断側面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態の電磁ブレーキの基本構成を説明するための縦断側面図である。
【図6】本発明の第5の実施の形態の電磁ブレーキの基本構成を説明するための縦断側面図である。
【図7】本発明の第6の実施の形態の電磁ブレーキの基本構成を説明するための縦断側面図である。
【図8】本発明の第7の実施の形態の電磁ブレーキの基本構成を説明するための縦断側面図である。
【図9】従来の無励磁作動形ブレーキの構成を示す縦断側面図で、コイル励磁時の場合である。
【図10】従来の無励磁作動形ブレーキの構成を示す縦断側面図で、コイル無励磁時の場合である。
【符号の説明】
【0068】
10,20,30、40、44、46:電磁ブレーキ
11:アーマチュア
12:プレート
13、13B:シャフト
14:励磁コイル
15、15A:マグネットヨーク
16:ディスク
50、60、65、70、75、80:衝撃吸収器
52、61、66、71、76、81:可動質量体
53、62、67、72、77、82:減衰材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アーマチュアと、このアーマチュアを吸引するマグネットヨークと、前記マグネットヨークを磁化する励磁コイルと、ディスク、及び、プレートとを備え、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレート間の摩擦力を利用して、ブレーキ動作を行う電磁ブレーキにおいて、
前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突時、又は、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突時に、前記マグネットヨーク、又は、前記ディスク及び前記プレートを介して、前記アーマチュアの運動量が伝達される、所定の重量の可動質量体と、前記可動質量体の運動量を減衰させる減衰材、或いは、ばね要素と減衰材を兼ね合わせたものとを具備した衝撃吸収器を備え、前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突音、及び、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突音を軽減するようにしたことを特徴とする電磁ブレーキ。
【請求項2】
前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク外周に取り付けるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電磁ブレーキ。
【請求項3】
前記衝撃吸収器の前記可動質量体の進行方向は、径方向となるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電磁ブレーキ。
【請求項4】
前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク内に収容するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電磁ブレーキ。
【請求項5】
前記衝撃吸収器をシャフト内に収容するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の電磁ブレーキ。
【請求項6】
前記衝撃吸収器の前記可動質量体は、鉄等の金属性材質、又は、硬質プラスチック若しくはセラミック等の材質で形成され、前記減衰材は、ゴム、スポンジ等のダンピング材、又は、粘性のある液体、若しくは、砂等の粒状体であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の電磁ブレーキ。
【請求項7】
アーマチュアと、このアーマチュアを吸引するマグネットヨークと、前記マグネットヨークを磁化する励磁コイルと、ディスク、及び、プレートとを備え、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレート間の摩擦力を利用して、クラッチ動作を行う電磁クラッチにおいて、
前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突時、又は、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突時に、前記マグネットヨーク、又は、前記ディスク及び前記プレートを介して、前記アーマチュアの運動量が伝達される、所定の重量の可動質量体と、前記可動質量体の運動量を減衰させる減衰材、或いは、ばね要素と減衰材を兼ね合わせたものとを具備した衝撃吸収器を備え、前記アーマチュアと前記マグネットヨークとの衝突音、及び、前記アーマチュアと前記ディスク及び前記プレートとの衝突音を軽減するようにしたことを特徴とする電磁クラッチ。
【請求項8】
前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク外周に取り付けるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の電磁クラッチ。
【請求項9】
前記衝撃吸収器の前記可動質量体の進行方向は、径方向となるようにしたことを特徴とする請求項7に記載の電磁クラッチ。
【請求項10】
前記衝撃吸収器を前記マグネットヨーク内に収容するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の電磁クラッチ。
【請求項11】
前記衝撃吸収器をシャフト内に収容するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の電磁クラッチ。
【請求項12】
前記衝撃吸収器の前記可動質量体は、鉄等の金属性材質、又は、硬質プラスチック若しくはセラミック等の材質で形成され、前記減衰材は、ゴム、スポンジ等のダンピング材、又は、粘性のある液体、若しくは、砂等の粒状体であることを特徴とする請求項7乃至11のいずれかに記載の電磁クラッチ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−275103(P2008−275103A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−120942(P2007−120942)
【出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(000002059)神鋼電機株式会社 (1,111)
【Fターム(参考)】