説明

電磁弁

【課題】弁体に取り付けられたOリングによって気密シールを行う電磁弁において、Oリングの耐脱落性、耐離脱性に優れ、しかも、何れの流体流れの使用でも、漏れを生じないようにすること。
【解決手段】弁体23は、円柱形状をしており、先端部近傍の外周に、弁体23と同心の溝底面24Aを有する円環状の周溝24を形成する。弁体23の周溝24よりも先端部側の先端鍔部23Aの外径Dcを、弁体23の周溝24よりも基端部側の部分、即ち、基端部23Bの外径Daより小さくし、周溝24にゴム状弾性体製のOリング25を装着する。弁体23の基端部23Bの外周に、円筒状の外筒部材26を嵌合装着し、外筒部材26の先端側、つまり、下側部分26Aが弁体23の軸線方向に見て周溝24と重なる位置となるようにし、外筒部材26の下側部分26Aによって周溝24に装着されたOリング25の外周囲を取囲む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁弁に関し、特に、弁体に取り付けられたOリングによって気密シールを行う電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁手段によって開閉駆動される弁体により弁ハウジングに形成されている弁ポートを開閉する電磁弁として、弁体に取り付けられたOリングによって気密シールを行う電磁弁が知られている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
Oリングが、弁体に形成された円環状の周溝に、単純に装着されているものであると(例えば、特許文献2)、弁体が配置される弁室側が常に1次側(高圧側)で、弁ポート側が2次側(低圧側)であれば、1次側の圧力がOリングを周溝の底部側に押し付けるように作用するから、Oリングの背面側(Oリングと周溝底部との間)において、漏れの原因になるような間隙が生じることはない。
【0004】
しかし、Oリングが、弁体に形成された円環状の周溝に、単純に装着されているものであると、凍結等によるOリングの弁座部に対する固着や高流速下での使用では、Oリングの脱落、離脱の虞れがある。また、双方向流での使用等で、弁室側が2次側(低圧側)、弁ポート側が1次側(高圧側)になると、1次側の圧力がOリングを拡径する方向に作用することになる。このため、Oリングの背面側(Oリングと周溝底部との間)に、漏れの原因になる間隙が生じ、漏れが生じ易くなる。
【0005】
このことに対して、Oリングの外径側を円柱状の弁体に一体形成された円筒壁で取り囲み、弁体の先端面にねじ止めされた円盤状部材によってOリングの内径側を取り囲んだOリング取付構造のものがある(例えば、特許文献1)。
【0006】
このOリング取付構造の電磁弁では、Oリングの耐脱落性、耐離脱性が向上し、Oリングが脱落、離脱し難くなり、漏れの発生も改善される。
【0007】
しかし、上述のOリング取付構造では、円盤状部材が弁体の先端面にねじ止めされる構造であるため、円盤状部材の取付位置に関して、弁体との同心度が保証されていない。
【0008】
このため、円盤状部材が弁体に対して少しでも偏心した位置に取り付けられていると、弁体を配置される弁室側が1次側(高圧側)で、弁ポート側が2次側(低圧側)である状態で、1次側の圧力がOリングに縮径方向に作用し、Oリングの内径側が円盤状部材の外周面に押し付けられる際に、Oリングも円盤状部材の偏心取付状態に倣って偏心変形するようなことになり、内圧によるOリングの取付初期歪の矯正効果も得られず、微少漏れを生じる虞れがある。
【特許文献1】特公平6−89852号公報
【特許文献2】特開2003−269642号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、弁体に取り付けられたOリングによって気密シールを行う電磁弁において、Oリングの耐脱落性、耐離脱性に優れ、しかも、何れの流体流れの使用でも、漏れを生じないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明による電磁弁は、電磁手段によって開閉駆動される弁体により弁ハウジングに形成されている弁ポートを開閉する電磁弁において、前記弁体は、円柱形状をしており、先端部近傍の外周に、当該弁体と同心の溝底面を有する円環状の周溝を形成され、前記周溝より先端部側の外径が前記周溝を隔てた他方の部位の外径より小さくなっており、前記周溝にゴム状弾性体製のOリングが装着されており、前記弁体の前記周溝を隔てた他方の部位の外周に、円筒状の外筒部材が嵌合装着されており、当該外筒部材の先端側が前記弁体の軸線方向に見て前記周溝と重なる位置にあり、当該外筒部材が前記周溝に装着された前記Oリングを外周囲を取り囲んでおり、弁閉時に前記Oリングが前記弁ポートの周りの弁座面に当接することにより、気密シールを行う。
【0011】
この発明による電磁弁は、好ましくは、前記Oリングは、前記弁体の軸線方向と同方向において前記周溝に非変形状態で装着されている。
【0012】
この発明による電磁弁は、好ましくは、前記Oリングと前記周溝の内側壁との間に間隙がある。
【0013】
この発明による電磁弁は、好ましくは、前記Oリングの中心径より前記弁ポートの内径が大きい。
【発明の効果】
【0014】
この発明による電磁弁では、周溝に装着されたOリングの外周囲が外筒部材によって取り囲まれているから、Oリングの耐脱落性、耐離脱性が得られ、凍結等によってOリングが弁座部に固着しても、また、高流速下での使用でも、Oリングが脱落、離脱することがない。
【0015】
また、この発明による電磁弁では、Oリングを装着される円環状の周溝の溝底面は、周溝の加工精度によって弁体との同心性を保証され、周溝に装着されたOリングの外周囲を取り囲む外筒部材は、弁体の外周に嵌合装着されていることにより、弁体との同心性を保証される。
【0016】
これにより、1次側の圧力がOリングに縮径方向に作用してOリングが周溝の溝底面に押し付けられる場合も、これとは反対に、1次側の圧力がOリングに拡径方向に作用してOリングが外筒部材の内周面に押し付けられる場合も、Oリングが偏心変形することがなく、内圧によるOリングの取付初期歪の矯正効果も適正に得られ、何れの流体流れの使用でも、微少漏れを生じることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明による電磁弁の一つの実施形態を、図1を参照して説明する。
【0018】
電磁弁は弁ハウジング11を有する。弁ハウジング11は、弁室12、二つの流体出入ポート13、14、弁ポート15を有する。弁ハウジング11は、弁ポート15の弁室12の側の開口端の外周部に、円環突条状の弁座部16を画定している。
【0019】
弁ハウジング11の上部には、Oリング17を挟んで上部蓋部材18がボルト19によって固定装着されている。上部蓋部材18は、電磁ソレノイド装置20の円筒状のプランジャチューブ21を一体形成されている。なお、弁ハウジング11、上部蓋部材18は、ともに、SUS316等による非磁性金属によって構成されている。
【0020】
プランジャチューブ21内にはSUS430相当品等の磁性金属による円柱状のプランジャ22が軸線方向(上下方向)に摺動可能に設けられている。プランジャ22は、下端部に円柱状の弁体23を一体に有している。弁体23は弁室12内にある。
【0021】
次に、弁体23に装着されるOリング25の取付構造を、図2を参照して説明する。弁体23の先端部近傍の外周には周溝24が形成されている。周溝24は、弁体23の外周加工との同心加工により形成され、その加工精度によって溝底面24Aと弁体23との同心性を保証されている。
【0022】
弁体23の周溝24よりも先端部側の先端鍔部23Aの外径Dcは、弁体23の周溝24よりも基端側の部分、即ち、基端部23Bの外径Daより小さくなっている。周溝24の図にて上側の内側壁24Bは、弁体23の軸線方向に直交する垂直面(水平面)であるが、先端鍔部23Aによって与えられる図にて下側の内側壁24Cは溝底面24Aより外側に向けて下り勾配の傾斜面になっている。
【0023】
周溝24にはエチレンプロピレンゴム、水素化ニトリルゴム、シリコンゴム等のゴム状弾性体製のOリング25がはめ込み装着されている。Oリング25は、弁閉時に弁ポート15の周りの弁座部16に当接することにより、気密シールを行う。
【0024】
弁ポート15の内径Dfは、Oリング25の中心径Deより大きく、Oリング25は、(Df−De)/2=外側オフセット量ΔEをもって弁座部16に当接する。この外側オフセット量ΔEは0.15〜0.30mm程度でよい。
【0025】
外側オフセット量ΔEがあることにより、Oリング25は、弁座部16の弁ポート15の側の角縁部16Aに積極的に当接して角縁シールを行うようになり、耐低圧弁漏れ性が向上する。
【0026】
なお、弁座部16の角縁部16Aは、面取り加工あるいはR加工されていることが、Oリング25の耐久性向上のために、好ましい。例えば、面取り加工の場合は、0.05mm〜0.1mm程度でよい。
【0027】
取付前のOリング25の内径Dg(図3参照)は、周溝24の溝底面24Aの外径Dbより小さい。これにより、Oリング25は、径方向には初期変形を与えられた状態で、周溝24に嵌合している。Db−Dgは、0.4〜0.5mm程度でよい。
【0028】
Oリング25と周溝24の内側壁24Cとの間には間隙Δtが設けられている。これにより、Oリング25は、弁体23の軸線方向と同方向において周溝24に非変形状態で装着される。間隙Δtは0〜0.05mm程度であればよい。
【0029】
弁体23の基端部23Bの外周には、円筒状の外筒部材26が嵌合装着されている。外筒部材26の内径Ddは、弁体23の基端部23Bの外径Daにほぼ等しく、この嵌合関係によって、外筒部材26は、弁体23との同心性を保証されている。
【0030】
外筒部材26の先端側、つまり、下側部分26Aは、弁体23の軸線方向(上下方向)に見て周溝24と重なる位置にあり、この位置関係によって外筒部材26の下側部分26Aは、周溝24に装着されているOリング25の外周囲を取り囲んでいる。取付前のOリング25の外径Dh(図3参照)は、外筒部材26の内径Ddにほぼ等しい。
【0031】
Oリング25が外筒部材26の先端と弁体23の先端鍔部23Aとの間になす非拘束幅Aは、Oリング25の線径Doの70%以下であることが好ましい。非拘束幅Aがこれより大きいと、Oリング25が外れ易くなる。
【0032】
弁体23は、降下移動によって弁座部16に近づき、Oリング25をもって弁座部16に着座することにより、弁ポート15を締め切って弁閉状態になり、上昇移動によって弁座部16より離間することにより、弁ポート15を開いて弁開状態になる。
【0033】
図1に戻り、プランジャチューブ21の上端部には、SUS430相当品等の磁性金属による円柱状の吸引子27が、プランジャチューブ21の上端開口を閉じるように固定装着されている。プランジャチューブ21、吸引子27の外周は同一外径になっており、この外周部分に、樹脂モールドタイプの電磁コイル28が、ボルト29によって吸引子27の上端部に固定された外凾30と共に固定装着されている。
【0034】
プランジャ22の上端部と吸引子27の下端部とは、プランジャチューブ21内において上下軸線方向に相対向しており、吸引子27は、通電による電磁コイル28の励磁によって下端部に、プランジャ22を磁気的に吸引する磁気吸引力を生じる。
【0035】
吸引子27の下端部中央には有底の下向き開口の受入孔31が形成されている。受入孔31には、SUS316等による非磁性金属に構成された可動部材32が軸線方向に移動可能に嵌合している。なお、言うまでもなく、受入孔31の内周面と可動部材32の外周面との間には、可動部材32が受入孔31内を軸線方向に円滑にスライドできるように、適切なクリアランスが設けられている。
【0036】
受入孔31の底部33と対向する可動部材32の上端部には、Oリング装着用凹部34が形成されている。Oリング装着用凹部34には、ゴム状弾性材製の緩衝部材として、エチレンプロピレンゴム等によるOリング35が、しまり嵌め状態で、装着されている。
【0037】
これにより、受入孔31の底部33と、当該底部33と対向する可動部材32の上端部との間に、緩衝部材であるOリング35が配置される。更に、換言すると、吸引子27の下端部に、ゴム状弾性材製の緩衝部材であるOリング35を挟んで可動部材32が軸線方向に移動可能に設けられていることになる。
【0038】
Oリング装着用凹部34の深さDi(図4(a)参照)は、圧縮されていない状態でのOリング35の線径Dj(図4(a)参照)より所定量ΔP(図4(a)参照)だけ大きい。これにより、Oリング装着用凹部34に装着されたOリング35は、非圧縮状態において、可動部材32の上端面32Aより所定量ΔPだけ上方に(受入孔31の底部33の側に)突き出ており、この所定量ΔPによる突き出し高さによって最大圧縮代を規定されている。
【0039】
プランジャ22の上端部中央には、受入孔31の内径より充分に小さい外径の円環状突出部36が形成されており、円環状突出部36の上端面36Aが可動部材32の下端面32Bに当接する構造になっている。
【0040】
吸引子27の受入孔31の周りに存在する円環状の下端面と、プランジャ22の円環状突出部36の周りに存在する円環状の上端面は、相対向し、それぞれ非接触の磁気吸引面37、38になっている。
【0041】
図1に示されているように、電磁コイル28が励磁されていない非通電状態(消磁状態)で、後述する離間ばね41のばね力によってプランジャ22が最降下位置にある状態、つまり、弁体23がOリング25をもって弁座部16に着座する弁閉状態において、磁気吸引面37と38との軸線方向間隙La(図4(a)参照)は、同状態でのプランジャ22の円環状突出部36の上端面36Aと可動部材32の下端面32Bとの軸線方向間隙Lb(図4(a)参照)より、前記所定量ΔP以上に大きく設定されている。
【0042】
このことにより、電磁コイル28が励磁されてプランジャ22の磁気吸引面38が吸引子27の磁気吸引面37に磁気的に吸引されても、磁気吸引面37と38とは、当接しない非接触状態を保つ(図4(c)参照)。
【0043】
可動部材32が受入孔31の底部33と対向する上端部とは反対の下端部には、凹形状のばね受け座部39が形成されている。ばね受け座部39とプランジャ22の上端部に形成された凹形状のばね受け座部40との間には、プランジャ22を吸引子27の下端部より引き離す方向、つまり、弁閉方向に付勢する離間ばね41が挟まれている。なお、ばね受け座部39、ばね受け座部40は、離間ばね41とすきま嵌めになる内径に設定されている。
【0044】
プランジャ22と可動部材32とに、各々、均圧通路42、43、44が形成されている。
【0045】
つぎに、この実施形態による電磁弁の作動について、図1と図4(a)〜(c)を参照して説明する。
【0046】
図1、図4(a)に示されているように、電磁コイル28が励磁されていない非通電状態(消磁状態)では、離間ばね41のばね力によってプランジャ22が押し下げられ、弁体23がOリング25をもって弁座部16に着座する弁閉状態になる。
【0047】
この弁閉状態では、離間ばね41のばね力によって、Oリング35は、圧縮方向に実質的に弾性変形することなく、可動部材32と受入孔31の底部33との間に軽く挟まれ、磁気吸引面37と38とが軸線方向間隙Laをもって離れ、また、プランジャ22の円環状突出部36の上端面36Aと可動部材32の下端面32Bも軸線方向間隙Lbをもって離れた状態になる。
【0048】
電磁コイル28に通電が行われ、電磁コイル28が励磁すると、磁気吸引面37、38同士の磁気的吸引によってプランジャ22が磁気吸引面38をもって吸引子27の磁気吸引面37に磁気的に吸引され、プランジャ22が離間ばね41のばね力に抗して吸引子27の下端部に近付く方向に軸線方向移動(上昇移動)する。
【0049】
これにより、弁体23のOリング25が弁座部16より離間し、弁ポート15が開かれ、弁開状態になる。このプランジャ22の上昇移動により、図4(b)に示されているように、プランジャ22の円環状突出部36の上端面36Aが可動部材32の下端面32Bに当接する。
【0050】
この当接状態以降も、電磁コイル28の励磁による磁気吸引によってプランジャ22の磁気吸引面38が吸引子27の磁気吸引面37に接近し、これに伴い可動部材32がプランジャ22の円環状突出部36によって上方に押され、可動部材32がOリング35を圧縮方向に弾性変形させながら受入孔31内を上昇移動する。
【0051】
この可動部材32の上昇移動に伴うOリング35の弾性変形は、図4(c)に示されているように、電磁コイル28の励磁による磁気吸引力と、離間ばね41のばね力と、Oリング35の弾性変形による反発力とが釣り合う状態まで行われ、このOリング35の弾性変形によって、プランジャ22と可動部材32との衝突衝撃音の減衰が図られる。
【0052】
電磁コイル28の励磁による磁気吸引力と離間ばね41のばね力とOリング35の弾性変形による反発力との釣り合い状態は、電磁コイル28の励磁による磁気吸引力、離間ばね41のばね力、Oリング35のゴム硬さの選定により、可動部材32の上端面32Aが受入孔31の底部33に当接する手前で得られ、この釣り合い状態で、可動部材32の上端面32Aと受入孔31の底部33との間に微小間隙Gaが確保され、可動部材32の上端面32Aが受入孔31の底部33に衝突することがない。したがって、この部分での衝突音の発生がない。
【0053】
また、この釣り合い状態でも、プランジャ22の磁気吸引面38が吸引子27の磁気吸引面37に衝突することがなく、磁気吸引面37と38とは、間隙Gbをもって非接触状態を維持される。したがって、この部分でも衝突音の発生がない。
【0054】
上述の状態より弁開させる場合は、電磁コイル28に対する通電を停止し、電磁コイル28を消磁させる。これにより、吸引子27の磁気的吸引力が消滅し、離間ばね41のばね力によってプランジャ22が吸引子27の下端部より遠ざかる方向に軸線方向移動(降下移動)する。
【0055】
このとき、ゴム状弾性材製のOリング35が受入孔31の底部33に固着した状態になっても、この固着は、吸引子27と可動部材32との間で生じるから、可動部材32の動きが阻害されたとしても、プランジャ22が吸引子27の下端部より遠ざかる方向に軸線方向移動することが阻害されることがなく、プランジャ22の降下移動により、弁体23がOリング25をもって弁座部16に着座する適正な弁閉状態が、支障なく得られる。
【0056】
これらのことにより、プランジャ22の固着、摺動障害等の他の不具合を生じることなく、正常な開閉弁作動を長期間に亘って保証した上で、作動時に生じる衝撃音が効果的に低減される。
【0057】
周溝24に装着されたOリング25は、外周囲を外筒部材26によって取り囲まれているから、Oリング25の耐脱落性、耐離脱性が得られ、凍結等によってOリング25が弁座部16に固着しても、また、高流速下での使用でも、Oリング25が脱落、離脱することがない。
【0058】
つぎに、弁閉状態でのOリング25による気密シール作用について説明する。弁閉時には、図1に示されているように、Oリング25が弁座部16の弁ポート15の側の角縁部16Aに当接し、Oリング25は、この角縁部16Aと周溝24の上側の内側壁24Bとに挟まれて、これらに気密に密着する。
【0059】
流体出入ポート13が一次側で、流体出入ポート14が二次側で、流体出入ポート13→弁室12→弁ポート15→流体出入ポート14と流体が流れる場合、一次圧がOリング25に縮径方向に作用し、Oリング25が周溝24の溝底面24Aに押し付けられる。これにより、Oリング25の背面側(Oリング25と溝底面24Aとの間)に、漏れの原因になるような間隙が生じることはない。
【0060】
周溝24の溝底面24Aは、周溝24の加工精度によって弁体23と同心性を保証されているから、Oリング25が周溝24の溝底面24Aに押し付けられても、Oリング25は弁体23との同心性を保つ。これにより、Oリング25が偏心変形することがなく、内圧によるOリング25の取付初期歪の矯正効果も適切に得られ、微少漏れを生じることがない。
【0061】
流体出入ポート14が一次側で、流体出入ポート13が二次側で、流体出入ポート14→弁ポート15→弁室12→流体出入ポート13と流体が流れる場合、一次圧がOリング25に拡径方向に作用し、Oリング25が外筒部材26の内周面26Bに押し付けられる。これにより、Oリング25と外筒部材26の内周面26Bとの間に、漏れの原因になるような間隙が生じることはない。
【0062】
外筒部材26は、弁体23の外周に対する嵌合装着によって弁体23と同心性を保証されているから、Oリング25が外筒部材26の内周面26Bに押し付けられても、Oリング25は弁体23との同心性を保つ。これにより、この場合も、Oリング25が偏心変形することがなく、内圧によるOリング25の取付初期歪の矯正効果も適切に得られ、微少漏れを生じることがない。
【0063】
また、Oリング25は、弁体23の軸線方向と同方向には周溝24に非変形状態で装着されているから、Oリング25が弁座部16と当たる部分が装着時の初期変形によって平面度を損なわれることがなく、この部分の平面度が保たれることにより、Oリング25と弁座部16との均一な密着性が向上する。このことによっても、弁漏れが生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】この発明による電磁弁の一つの実施形態を示す縦断面図である。
【図2】この発明による電磁弁の一つの実施形態の要部を示す拡大縦断面図である。
【図3】この発明による電磁弁の一つの実施形態で使用されるOリングの拡大縦断面図である。
【図4】(a)〜(c)は、実施形態1による電磁弁の作動状態を示す要部の縦断面図である。
【符号の説明】
【0065】
11 弁ハウジング
12 弁室
13、14 流体出入ポート
15 弁ポート
16 弁座部
16A 角縁部
17、25、35 Oリング
18 上部蓋部材
19、29 ボルト
20 電磁ソレノイド装置
21 プランジャチューブ
22 プランジャ
23 弁体
23A 先端鍔部
23B 基端部
24 周溝
24A 溝底面
24B、24C 内側壁
26 外筒部材
26A 下側部分
26B 内周面
27 吸引子
28 電磁コイル
30 外凾
31 受入孔
32 可動部材
32A、36A 上端面
32B 下端面
33 底部
34 Oリング装着用凹部
36 円環状突出部
37、38 磁気吸引面
39 40 ばね受け座部
41 離間ばね
42、43、44 均圧通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁手段によって開閉駆動される弁体により弁ハウジングに形成されている弁ポートを開閉する電磁弁において、
前記弁体は、円柱形状をしており、先端部近傍の外周に、当該弁体と同心の溝底面を有する円環状の周溝を形成され、前記周溝より先端部側の外径が前記周溝を隔てた他方の部位の外径より小さくなっており、
前記周溝にゴム状弾性体製のOリングが装着されており、
前記弁体の前記周溝を隔てた他方の部位の外周に、円筒状の外筒部材が嵌合装着されており、当該外筒部材の先端側が前記弁体の軸線方向に見て前記周溝と重なる位置にあり、当該外筒部材が前記周溝に装着された前記Oリングの外周囲を取り囲んでおり、
弁閉時に前記Oリングが前記弁ポートの周りの弁座面に当接することにより、気密シールを行う電磁弁。
【請求項2】
前記Oリングは、前記弁体の軸線方向と同方向において前記周溝に非変形状態で装着されている請求項1記載の電磁弁。
【請求項3】
前記Oリングと前記周溝の内側壁との間に間隙がある請求項1または2記載の電磁弁。
【請求項4】
前記Oリングの中心径より前記弁ポートの内径が大きい請求項1〜3の何れか1項記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−226352(P2006−226352A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−39049(P2005−39049)
【出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000143949)株式会社鷺宮製作所 (253)
【Fターム(参考)】