説明

電磁弁

【課題】プランジャの摺動抵抗をなくし得る電磁弁を提供する。
【解決手段】スプール部70には、軸方向に延びるスプール側油路85とこのスプール側油路85に連通されて供給ポート66からの作動油が流入可能な連通孔86とが形成されている。また、プランジャ部24には、そのスプール側端部24aおよび反スプール側端部24bより外径の小さな環状凹部82が外周に形成されるとともに、スプール側油路85に連通するプランジャ側油路83とこのプランジャ側油路83および環状凹部82を連通する連通孔84とが形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイルに供給される電流に応じたプランジャの移動によりスプールを作動させる電磁弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、コイルに供給される電流に応じたプランジャの移動によりスプールを作動させる電磁弁として、下記特許文献1に示す電磁弁が知られている。この電磁弁は、コイルを励磁することにより、ヨークおよびプランジャ等でコイルを周る様に磁束を発生させ、この磁力によりスプールおよびプランジャからなる摺動部材を摺動させている。そして、ヨークとプランジャとの環状隙間に作動油を流動させることにより、ヨークとプランジャとの間の摺動抵抗を低減している。
【特許文献1】特開2003−042328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、電磁弁の作動性のさらなる向上が求められており、そのためには、プランジャの摺動抵抗のさらなる低減が必要となる。
また、プランジャの偏心が大きくなるほど、磁気吸引力に応じてプランジャをヨークに引きつける径方向の力が大きくなり、プランジャの摺動抵抗が増大する。このプランジャの偏心を小さくするためには、プランジャにNiPメッキ等の表面処理を施してその膜厚を厚くする必要があり、製造コストが増大してしまう。また、このように膜厚を厚くしてもプランジャの摺動抵抗の低減には限度があり、さらなるプランジャの摺動抵抗の低減は困難である。
【0004】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、プランジャの摺動抵抗をなくし得る電磁弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、特許請求の範囲に記載の請求項1の電磁弁では、互いに同軸的に配置されたヨーク部(30)およびコア部(40)とそれらの間に設けられた磁気抵抗部(51)とを有するステータコア(23)と、前記ステータコア内に配置されて前記コア部との間に生じる磁気吸引力により軸方向に移動するプランジャ(24,24c)と、前記ステータコアを励磁して前記磁気吸引力を発生させるコイル(22)と、前記ステータコアに取り付けられ前記プランジャと同軸的に弁孔(62)が形成されるとともにこの弁孔に作動油を供給するための供給ポート(66)が形成される弁スリーブ(60)と、前記弁孔に摺動自在に案内支持されるとともに前記プランジャに連結されこのプランジャの移動に応じて前記供給ポートの開口度を制御するスプール(70,70a)と、を備える電磁弁(10)であって、前記スプールには、軸方向に延びる第1油路(85)とこの第1油路に連通されて前記供給ポートからの前記作動油が流入可能な第1連通孔(86)とが形成され、前記プランジャには、そのスプール側端部(24a)および反スプール側端部(24b)より外径の小さな環状凹部(82,82b)が外周に形成されるとともに、当該プランジャと前記スプールとを連結するとき前記第1油路に連通する第2油路(83)とこの第2油路および前記環状凹部を連通する第2連通孔(84)とが形成されることを技術的特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明では、スプールには、軸方向に延びる第1油路とこの第1油路に連通されて供給ポートからの作動油が流入可能な第1連通孔とが形成されている。また、プランジャには、そのスプール側端部および反スプール側端部より外径の小さな環状凹部が外周に形成されるとともに、当該プランジャとスプールとを連結するとき第1油路に連通する第2油路とこの第2油路および環状凹部を連通する第2連通孔とが形成されている。
【0007】
このため、供給ポートからの作動油が、スプールの第1連通孔および第1油路とプランジャの第2油路および第2連通孔とを介して、プランジャの外周に形成される環状凹部内に流入される。これにより、プランジャとステータコアとの間に所定の圧力の作動油が導入され、この作動油の圧力に応じた調心力がプランジャに作用するため、プランジャとステータコアとの摺動をなくすことができる。
したがって、プランジャの摺動抵抗をなくすことができる。
【0008】
特に、上述したプランジャの調心作用は、プランジャの偏心率の低減に相当する効果があるため、プランジャの表面に表面処理を施す場合であっても、その膜厚を薄くすることができ、膜厚を形成するための製造コストを低減することができる。
【0009】
請求項2の発明では、環状凹部は、その軸方向中央からスプール側端部および反スプール側端部の双方に向けてそれぞれ外径が大きくなるように形成されている。これにより、環状凹部内に流入する作動油がプランジャとステータコアとの間に円滑に導入されることとなり、上述した調心力をプランジャに好適に作用させることができる。
【0010】
請求項3の発明では、環状凹部は、その軸方向中央における径方向の深さ(以下、中央部深さHともいう)が2.5μm以上7.5μm以下に設定されている。これは、図3に示すように、中央部深さHとプランジャに作用する調心力Fとの関係を解析したところ、中央部深さHが2.5μm未満では中央部深さHの増加に応じて調心力Fが急増し、7.5μmを超えると中央部深さHにかかわらず調心力Fがほぼ一定となる。中央部深さHを大きくするほどプランジャにおける磁路面積が減少することから、調心力Fの安定性とプランジャにおける磁路面積の確保とを両立させるために、中央部深さHが2.5μm以上7.5μm以下に設定される。これにより、プランジャにおける磁路面積を確保しつつ、プランジャに作用する調心力を安定させることができる。
【0011】
請求項4の発明では、スプールおよびプランジャは、第1油路および第2油路が連通するように一体に形成されている。これにより、供給ポートからの作動油を確実に環状凹部内に流入させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る電磁弁10の構成概要を示す断面図である。図2は、プランジャ部24の詳細断面図である。なお、図2においては、説明のために環状凹部82のテーパの角度を誇張して示している。
【0013】
電磁弁10は、例えば、車両用自動変速機のオイルパン内部において出力する作動油を制御して油圧制御を実現するもので、図1に示すように、主に、磁性材料により有底円筒状に形成されるカバー21、コイル22、ステータコア23、プランジャ部24、弁スリーブ60およびスプール部70等を備えている。そして、プランジャ部24とスプール部70とは、連結部81により連結されるように一体に形成されている。
【0014】
ステータコア23は、磁性材料よりなるヨーク部30及びコア部40を備えており、ヨーク部30およびコア部40は、磁気抵抗部(エアギャップ)51により磁気的に分離された状態にて、非磁性材料、例えば、ステンレスにより形成されるリング52を介して互いに同軸的に配置されている。なお、リング52は、ステンレスにより形成されることに限らず、アルミや銅等の非磁性材料で形成されてもよい。
【0015】
ヨーク部30は、環状のフランジ部31とこのフランジ部31の中央から円筒状に突出する円筒部32とを備えている。
【0016】
コア部40は、環状のフランジ部41の中央から吸引部42が突出するように形成されている。吸引部42は、プランジャ部24に対して磁気吸引力を発揮する役割を果たすもので、この吸引部42には、要求される吸引力特性等に応じて所定の勾配を有するようにテーパ部42aが形成されている。コア部40には、同軸であって径の異なる2つの中心穴43,44が形成されている。中心穴43は、その内径がヨーク部30の中心穴の内径に等しくあるいはそれ以上になるように形成されており、その深さがプランジャ部24に必要なストロークより僅かに大きくなるように設定されている。
【0017】
ヨーク部30は、フランジ部31がカバー21の底部に嵌合するようにカバー21に収納されている。また、コア部40は、フランジ部41がカバー21の開口端に嵌合されるようにカバー21に収納されている。フランジ部31とフランジ部41との間であって円筒部32および吸引部42の外周にはボビンに巻回されたコイル22が配置されている。
【0018】
ヨーク部30の円筒部32とコア部40の吸引部42との内周には、磁性材料からなるプランジャ部24が同軸的であって軸方向に移動可能に挿入されており、このプランジャ部24は、吸引部42との間に生じる磁気吸引力により当該吸引部42に近接する軸方向に移動する。
【0019】
図2に示すように、プランジャ部24には、そのスプール側端部24aおよび反スプール側端部24bより外径の小さな環状凹部82が外周に形成されている。この環状凹部82は、その軸方向中央部82aの深さ(以下、中央部深さHともいう)が5μmに設定されており、この軸方向中央部82aからスプール側端部24aおよび反スプール側端部24bの双方に向けてそれぞれ外径が大きくなるようテーパ状に形成されている。
【0020】
また、図1および図2に示すように、プランジャ部24には、その軸中心にて軸方向に延びる穴(以下、プランジャ側油路83ともいう)が形成されるとともに、このプランジャ側油路83と環状凹部82とを連通する2つの連通孔84が形成されている。なお、連通孔84は、2つに限らず、等間隔であって放射状に複数形成されてもよい。
【0021】
このように構成されることにより、コイル22への通電に応じて、カバー21、ステータコア23およびプランジャ部24とでもって磁気回路が構成されることとなる。
【0022】
カバー21の開口端側に位置するフランジ部41の外側面には、スプール部70を摺動可能に嵌装する弁スリーブ60が配設されている。そして、カバー21の開口側筒状端部21aを、弁スリーブ60に形成されたフランジ部61とフランジ部41とを接合させた状態でかしめることにより、ステータコア23と弁スリーブ60とが同軸的に結合されている。
【0023】
弁スリーブ60には、径の異なる第1弁孔62と第2弁孔63が形成されるとともに、この第2弁孔63に接続するばね収容孔64が形成されている。これら各弁孔62、63およびばね収容孔64は、ステータコア23およびプランジャ部24と同軸上に延びるように形成されている。
【0024】
スプール部70の外周には、第1弁孔62に嵌合する第1ランド部71および第2ランド部72と、第2弁孔63に嵌合する第3ランド部73が設けられている。
【0025】
第1ランド部71および第2ランド部72は軸方向に所定量離間して設けられ、小径部74によって互いに連結されている。第1弁孔62には、小径部74に対応して環状溝62aが形成されており、この環状溝62aには、制御圧としての作動油を出力する出力ポート65が連通されている。
【0026】
弁スリーブ60には、第1ランド部71および第2ランド部72の互いに対向する端面にそれぞれ対応して第1弁孔62に作動油を供給するための供給ポート66および第1弁孔62から作動油を排出するための排出ポート67が形成されている。
【0027】
第2ランド部72と第3ランド部73との間には段差部75が設けられており、この段差部75に連通するフィードバックポート68が弁スリーブ60に形成されている。このフィードバックポート68は、図略の連通路を介して出力ポート65に連通されている。また、弁スリーブ60には、ばね収容孔64に連通するドレンポート69が形成されている。
【0028】
スプール部70には、その軸中心にて軸方向に延びる穴(以下、スプール側油路85ともいう)が形成されている。このスプール側油路85は、連結部81の連通路81aを介してプランジャ部24のプランジャ側油路83に連通している(図1参照)。このスプール側油路85、プランジャ側油路83および連通路81aは、スプール側端面またはプランジャ側端面から貫通しない軸中心穴を加工するとともにこの軸中心穴の開口部を図略の栓部材等で閉塞して形成されている。
【0029】
また、スプール部70には、スプール側油路85と弁スリーブ60の供給ポート66とを連通する2つの連通孔86が形成されている。なお、連通孔86は、2つに限らず、等間隔であって放射状に複数形成されてもよい。
【0030】
ばね収容孔64の開口端はその内周面に形成されたねじ孔に螺合するプラグ90によって閉塞され、このプラグ90とスプール部70の間にばね91が設けられている。このばね91の付勢力によってスプール部70がこのばね91から離間する方向(以下、減圧方向ともいう)に押圧されることにより、このスプール部70と一体に形成されるプランジャ部24が、通常カバー21の底面に当接する初期位置に保持されている。かかるプランジャ部24の初期位置において、プランジャ部24のスプール側端部は、コア部40の吸引部42の端部に軸方向にてほぼ一致するように配置されている(図1参照)。
【0031】
ここで、上述したプランジャ部24の環状凹部82のテーパ形状について図3を用いて詳細に説明する。図3は、環状凹部82の中央部深さHとプランジャ部24に作用する調心力Fとの関係を示すグラフである。
【0032】
上述のように環状凹部82の中央部深さHを5μmに設定しているのは、以下の理由による。
図3に示すように、中央部深さHが大きくなるほど、すなわち、環状凹部82のテーパ角度が大きくなるほど、環状凹部82内に流入する作動油の量が増えて環状凹部82内が高圧になり、プランジャ部24に作用する調心力Fが大きくなる。特に、中央部深さHが2.5μmを超えるまでは調心力Fが急増し、中央部深さHが7.5μmを超えると調心力Fがほぼ一定になることがわかる。なお、本解析においては、流体中の物体に作用する調心力(流体固着力)に関する一般式を用いており、環状凹部82内の作動油の圧力として、例えば、400kPaが設定されている。
【0033】
一方、中央部深さHを大きくするほどプランジャ部24の外径が小さくなることから、プランジャ部24における磁路面積が減少してしまう。
【0034】
そこで、本実施形態における電磁弁10では、調心力Fの安定性とプランジャ部24における磁路面積の確保とを両立させるために、環状凹部82の中央部深さHが5μmになるように設定されている。なお、中央部深さHが2.5μm以上7.5μm以下になるように設定されてもよい。
【0035】
このように構成される本実施形態に係る電磁弁10の作用について、以下に説明する。コイル22が非励磁状態の場合には、プランジャ部24およびスプール部70は、ばね91の付勢力により減圧方向に押圧され、プランジャ部24はカバー21の底面に当接する初期位置に保持されている。この非励磁状態においては、出力ポート65は、供給ポート66との連通が遮断されているとともに、排出ポート67に連通され、これによって出力ポート65は低圧に保持されている。
【0036】
一方、コイル22に通電して励磁すると、カバー21、ステータコア23およびプランジャ部24でもって磁気回路が構成されて、コア部40の吸引部42とプランジャ部24との間に磁気吸引力が発生する。この磁気吸引力により、プランジャ部24が吸引部42側へ引き寄せられて、スプール部70がばね91の付勢力に抗して加圧方向(反減圧方向)に移動する。この移動により、第2ランド部72が供給ポート66を開口し始めるとともに、第1ランド部71が排出ポート67の開口面積を制限し始めるので、出力ポート65の制御圧は次第に上昇される。
【0037】
また、出力ポート65から出力される制御圧に応じた作動油は、上記連通路を介してフィードバックポート68に供給される。フィードバックポート68に供給された作動油は、段差部75に作用して、第1ランド部71と段差部75の面積差を乗じたフィードバック力をばね91の付勢力と同方向にプランジャ部24に作用させる。
【0038】
このように本実施形態に係る電磁弁10では、コイル22に通電される電流値に応じてコア部40の吸引部42とプランジャ部24との間で発生する磁気吸引力と、ばね91の付勢力と、段差部75に作用するフィードバック力とがバランスする位置にスプール部70が保持され、これによって上記制御圧はコイル22に通電された電流値に応じた圧力に制御される。
【0039】
本実施形態においては、作動油が供給ポート66に供給されるとき、この作動油は、スプール部70の連通孔86およびスプール側油路85と、連結部81の連通路81aと、プランジャ部24のプランジャ側油路83および連通孔84とを介して、環状凹部82内に流入される。これにより、プランジャ部24とステータコア23との間に所定の圧力の作動油が導入され、この作動油の圧力に応じた調心力Fがプランジャ部24に作用するため、プランジャ部24とステータコア23との摺動をなくすことができる。
【0040】
特に、環状凹部82はテーパ状に形成されているので、環状凹部82内に流入する作動油がプランジャ部24とステータコア23との間に円滑に導入される。また、環状凹部82の中央部深さHが5μmに設定されているので、プランジャ部24における磁路面積が確保され、プランジャ部24に作用する調心力Fが安定する。
【0041】
以上説明したように、本実施形態に係る電磁弁10では、スプール部70には、軸方向に延びるスプール側油路85とこのスプール側油路85に連通されて供給ポート66からの作動油が流入可能な連通孔86とが形成されている。また、プランジャ部24には、そのスプール側端部24aおよび反スプール側端部24bより外径の小さな環状凹部82が外周に形成されるとともに、スプール側油路85に連通するプランジャ側油路83とこのプランジャ側油路83および環状凹部82を連通する連通孔84とが形成されている。
【0042】
このため、供給ポート66からの作動油が、スプール部70の連通孔86およびスプール側油路85とプランジャ部24のプランジャ側油路83および連通孔84等とを介して、プランジャ部24の外周に形成される環状凹部82内に流入される。これにより、プランジャ部24とステータコア23との間に所定の圧力の作動油が導入され、この作動油の圧力に応じた調心力Fがプランジャ部24に作用するため、プランジャ部24とステータコア23との摺動をなくすことができる。
したがって、プランジャ部24の摺動抵抗をなくすことができる。
【0043】
また、本実施形態に係る電磁弁10では、環状凹部82は、その軸方向中央部82aからスプール側端部24aおよび反スプール側端部24bの双方に向けてそれぞれ外径が大きくなるようテーパ状に形成されている。これにより、環状凹部82内に供給される作動油がプランジャ部24とステータコア23との間に円滑に導入されることとなり、上述した調心力Fをプランジャ部24に好適に作用させることができる。
【0044】
さらに、本実施形態に係る電磁弁10では、環状凹部82の中央部深さHが5μmに設定されている。これにより、プランジャ部24における磁路面積を確保しつつ、プランジャ部24に作用する調心力Fを安定させることができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る電磁弁10では、スプール部70およびプランジャ部24は、スプール側油路85およびプランジャ側油路83が連通路81aを介して連通するように一体に形成されている。これにより、供給ポート66からの作動油を確実に環状凹部82内に流入させることができる。
【0046】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように具体化してもよく、その場合でも、上記実施形態と同等の作用・効果が得られる。
(1)図4は、本実施形態の第1の変形例に係る電磁弁10の構成概要を示す断面図である。
プランジャ部およびスプール部は連結部81により連結されるように一体に形成されることに限らず、プランジャ部とスプール部とを別体として構成し、両部材を組み付けることでプランジャ側油路83とスプール側油路85とを連通するようにしてもよい。例えば、図4に示すように、プランジャ部24cに一体形成される連結部81をスプール部70aのプランジャ側端面に形成される凹部に嵌合させることによりプランジャ側油路83とスプール側油路85とを連通するようにしてもよい。
【0047】
(2)図5は、本実施形態の第2の変形例に係る電磁弁10の要部であるプランジャ部24の詳細断面図である。
プランジャ部24の環状凹部は、テーパ状に形成されることに限らず、スプール側端部24aおよび反スプール側端部24bより外径が小さくなるように環状に形成されてもよい。例えば、図5に示すように、環状凹部82bは、複数の環状段部から形成されてもよい。
【0048】
(3)プランジャ部24の外周には、メッキ等の表面処理を施してもよい。この場合、上述したプランジャ部24の調心作用は、プランジャ部24の偏心率の低減に相当する効果があるため、プランジャ部24の表面に表面処理を施す場合であっても、その膜厚を薄くすることができ、膜厚を形成するための製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本実施形態に係る電磁弁の構成概要を示す断面図である。
【図2】プランジャ部の詳細断面図である。
【図3】環状凹部の中央部深さとプランジャ部に作用する調心力との関係を示すグラフである。
【図4】本実施形態の第1の変形例に係る電磁弁の構成概要を示す断面図である。
【図5】本実施形態の第2の変形例に係る電磁弁の要部であるプランジャ部の詳細断面図である。
【符号の説明】
【0050】
10…電磁弁
23…ステータコア
24,24c…プランジャ部(プランジャ)
24a…スプール側端部
24b…反スプール側端部
60…弁スリーブ
66…供給ポート
70,70a…スプール部(スプール)
82,82b…環状凹部
82a…軸方向中央部
83…プランジャ側油路(第2油路)
84…連通孔(第2連通孔)
85…スプール側油路(第1油路)
86…連通孔(第1連通孔)
F…調心力
H…中央部深さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに同軸的に配置されたヨーク部およびコア部とそれらの間に設けられた磁気抵抗部とを有するステータコアと、
前記ステータコア内に配置されて前記コア部との間に生じる磁気吸引力により軸方向に移動するプランジャと、
前記ステータコアを励磁して前記磁気吸引力を発生させるコイルと、
前記ステータコアに取り付けられ前記プランジャと同軸的に弁孔が形成されるとともにこの弁孔に作動油を供給するための供給ポートが形成される弁スリーブと、
前記弁孔に摺動自在に案内支持されるとともに前記プランジャに連結されこのプランジャの移動に応じて前記供給ポートの開口度を制御するスプールと、
を備える電磁弁であって、
前記スプールには、軸方向に延びる第1油路とこの第1油路に連通されて前記供給ポートからの前記作動油が流入可能な第1連通孔とが形成され、
前記プランジャには、そのスプール側端部および反スプール側端部より外径の小さな環状凹部が外周に形成されるとともに、当該プランジャと前記スプールとを連結するとき前記第1油路に連通する第2油路とこの第2油路および前記環状凹部を連通する第2連通孔とが形成されることを特徴とする電磁弁。
【請求項2】
前記環状凹部は、その軸方向中央から前記スプール側端部および前記反スプール側端部の双方に向けてそれぞれ外径が大きくなるように形成されることを特徴とする請求項1に記載の電磁弁。
【請求項3】
前記環状凹部は、その軸方向中央における径方向の深さが2.5μm以上7.5μm以下に設定されることを特徴とする請求項2に記載の電磁弁。
【請求項4】
前記スプールおよび前記プランジャは、前記第1油路および前記第2油路が連通するように一体に形成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の電磁弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−25217(P2010−25217A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−186799(P2008−186799)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】