説明

電線束の接続方法

【課題】端子に対する電線束の接続性能を高める。
【解決手段】端子金具30に対する電線束20の接続方法であって、複数本の電線10を集束させた前記電線束20の端末部25を溶接する溶接工程と、前記溶接工程の後に行われ、前記電線束20の前記端末部25の先端を切断して揃える切断工程と、前記切断工程の後に行われ、前記電線束20の前記端末部25を前記端子金具30のバレル部35に挿入する挿入工程と、前記挿入工程の後に行われ、前記端末部25を挿通させたバレル部35を加締めることにより、前記電線束20の前記端末部25を前記バレル部35に圧着させる圧着工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線束の接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、EV車両などの大電流を使用する電気回路では、電線サイズ(線径)が大きくなるため、電線が曲がり難く、占有面積が大きいといった課題がある。このような課題を克服するための方法として、複数本の電線を束状にまとめて使用する案が考えられる。複数本の電線と端子金具との接続方法の1つとして、電線接続部に筒状のバレルを有したいわゆるクローズドバレル端子を用いたカシメ接続がある。これは、先端の被覆を剥いで芯線を露出させた電線を束ねて溶接した後、バレル内に挿入する。その後、バレル外側からダイスを用いて電線径方向に加圧力を加え、端子/電線を塑性変形させることにより、両者を接続させるというものである。しかし、束ねたときに、各電線の前後方向の位置がずれていると、バレル内に差し込まれた芯線の圧縮率が位置によってバラツキ、接続品質が低下する。
【0003】
下記特許文献1には、この種の課題を解決するため、束ねた電線の芯線を治具により揃えるようにすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−369329公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、電線束の芯線を揃えた後に溶接を行うと、揃えた電線束が、溶接時に位置ずれを起こすことも考えられ、更なる改良の余地があった。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、端子金具に対する電線束の接続性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、端子金具に対する電線束の接続方法であって、複数本の電線を集束させた前記電線束の端末部を溶接する溶接工程と、前記溶接工程の後に行われ、前記電線束の前記端末部の先端を切断して揃える切断工程と、前記切断工程の後に行われ、前記電線束の前記端末部を前記端子金具のバレル部に挿入する挿入工程と、前記挿入工程の後に行われ、前記端末部を挿通させたバレル部を加締めることにより、前記電線束の前記端末部を前記バレル部に圧着させる圧着工程とを備える。
【0008】
この方法によると、電線束の端末部を溶接した後に、端末部の先端を切り落として、電線束を構成する各電線の芯線の先端位置を揃えるようにした。以上のことから、各電線の芯線を揃えた状態でバレル部を圧着することが可能となり、バレル部に対して電線束の端末部を確実に接続できる。
【0009】
・この発明の実施態様として、以下の構成とすることが好ましい。
前記切断工程において、前記電線束の前記端末部の先端を、前記電線束の軸線に対して垂直に切断する。このようにすれば、電線束の端末部の先端は垂直面となり、たとえば、バレル部に奥壁が形成されているものであれば、垂直面をバレル部の奥壁に対する当て面に使用できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、端子金具に対する電線束の接続性能を高めることが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る電線束の正面図
【図2】電線束の接続方法を示す工程図(溶接工程を示す)
【図3】同じく電線束の接続方法を示す工程図(溶接工程を示す)
【図4】同じく電線束の接続方法を示す工程図(切断工程を示す)
【図5】同じく電線束の接続方法を示す工程図(挿入工程を示す)
【図6】同じく電線束の接続方法を示す工程図(圧着工程を示す)
【図7】溶接ホーンの形状を示す断面図
【図8】バレル部の断面図(端末部を挿入した状態)
【図9】変形例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
<一実施形態>
本発明の一実施形態を図1ないし図8によって説明する。この実施形態は、端子金具30に対する電線束20の接続方法を説明するものである。
【0013】
まず、接続対象となる電線束20と端子金具30の構造について説明する。電線束20は、図1に示すように、複数本の被覆電線10を束ねたものである。各被覆電線10は、複数本の細い金属線(アルミ線、銅合金線など)を螺旋状に撚り合わせてなる芯線15を樹脂製の絶縁被覆で被覆したものであり、端末は、絶縁被覆が剥き取られて芯線15が露出されている。
【0014】
電線束20は、これら複数本の被覆電線10(以下、単に電線とよぶ)を、露出した芯線15を同じ方向(図中では左方向)に向けて束ねたものである。
【0015】
端子金具30は金属製であって、バッテリー等の電気機器に取り付けられる環状の端子部31と、端子部31の後方に設けられたバレル部35とからなる(図5参照)。バレル部35はいわゆるクローズドバレル型であり閉じた円環状をしている。このバレル部35には、後方から電線束20の端末部(各電線の露出した芯線15を束ねたもの)25が差し込まれる構成となっている。尚、このバレル部35には、奥壁37が形成されていて前後に非貫通な構成となっている。また、奥壁37の壁面は垂直面となっている。
【0016】
そして、上記した電線束20は、次に説明する4つの工程(溶接工程、切断工程、挿入工程、圧着工程)を行うことで、端子金具30に対して接続されるようになっている。
【0017】
1.溶接工程
溶接工程では、電線束20の溶接作業が行われる。すなわち、まず、図2に示すように、アンビル51上に端末部25が水平に載るように、超音波溶接機(図略)に対して電線束20が位置合わせされる。その後、超音波溶接機の作動により、溶接ホーン55が、電線束20の端末部25を上から押さえつつ水平方向に振動する(図3参照)。
【0018】
これにより、端末部25に対して高周波振動が加えられ、電線束20の端末部25は超音波溶接される。尚、この実施形態では、図7にて示すように、溶接ホーン55の形状は、断面コ字型(樋状)をしており、溶接により、端末部25の断面形状はほぼ正方形型になる(図8参照)。かくして、電線束20の端末部25が溶接されると、次に切断工程が行われる。
【0019】
2.切断工程
切断工程では、図4に示すように、上下するカッター刃61を備えたカッターテーブル60上に、電線束20が水平に置かれる。そして、カッター刃61により、電線束20の端末部25の先端が、垂直(電線束20の軸線Lに対して垂直)に切り落とされる。これにて、電線束20の端末部25の先端25Aは垂直面となる。言い換えれば、切断工程を行うことで、電線束20を構成する各電線10の芯線15の先端位置が揃った状態になる。
【0020】
また、端末部25の切断位置は、切断後の端末部25のストレート部の長さ(図4中のF1寸法)が、バレル部35の深さ(図5中のF2寸法)より長くなるように位置を決めるとよい。このようにしておけば、次に行う挿入工程において、端末部25をバレル部35の奥まで差し込むことが可能となる。
【0021】
3.挿入工程
挿入工程では、図5に示すように、端子金具30のバレル部35に対して、後方から電線束20の端末部25を挿入する作業が行われる。この挿入作業により、電線束20の端末部25は、先端25Aからバレル部35の内方へ差し込まれてゆき、先端25Aが奥壁37に突き当たるまで挿入される。このものでは、電線束20の端末部25の先端25Aは垂直面となっているので、挿入完了時には、端末部25の先端25Aが、バレル部35の奥壁37に面当たりする状態となる。そして、バレル部35に対する端末部25の挿入工程が完了すると、次に圧着工程が行われる。
【0022】
4.圧着工程
圧着工程では、端子金具30のバレル部35が、圧着金型(図略)にセットされる。その後、圧着金型の型閉じに伴って、バレル部35が、圧着金型(具体的には、上型と下型)に挟み込まれて強く加締め付けられる。これにより、図6にて示すように、バレル部35の上部と下部が内向きに押し潰されて圧縮変形する。これにより、バレル部35が電線束20の端末部25に圧着され、バレル部35と端末部25が接続される。かくして、端子金具30に対する電線束20の接続作業が完了する。
【0023】
5.効果説明
このものでは、電線束20の端末部25を溶接した後に、端末部25の先端を切り落として、端末部25の先端を揃えるようにした。以上のことから、図6にて示すように、各電線10の芯線15が揃った状態、具体的に言えば、各電線10の芯線15の先端がバレル部35の奥壁37までしっかりと差し込まれた状態で、バレル部35が圧着される。そのため、電線束20を構成する各電線10の芯線15を、バレル部35により均等に挟み付けることが可能となり、各芯線15の圧縮率が等しくなる。よって、バレル部35に対して電線束20の端末部(各電線10の芯線15)25を確実に接続できる。
【0024】
ここで仮に、電線10のうち1つでも差し込みの浅いものがあると、圧着が不十分となり、そのものは外れ易くなる。もし、何らかの拍子で、1本の電線10が外れてしまうと、それにより隙間が出来てしまうことから、残りの電線10も当然外れ易くなる。この点、本構成では、先に説明したように、圧着するとき、各芯線15の前後位置が必ず揃った状態になるので、上記の心配がない。
【0025】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0026】
(1)上記実施形態では、端子金具30として、奥壁37付きのバレル部35を例示したが、奥壁37は必ずしも必要というわけではなく、バレル部35を奥壁37なしの構成(端末部25の挿入方向に貫通する構成)にすることも可能である。
【0027】
(2)上記実施形態では、端末部25の先端を垂直に切り落した例を示したが、例えば、図9に示すように、端末部25の先端を斜めに切り落として、端末部25の先端25Aを斜めに揃えることも可能である。このようにすれば、バレル部35に対して端末部25を挿入し易くなり、作業性がよくなることが期待できる。
【0028】
また、端末部25を斜めに切り落とすと、奥壁37を持つ有底型のバレル部35に対しては、奥壁37に対して斜面の先端だけが当たる状態になり、バレル部35に対して端末部25の全体を奥まで差し込むことができない。したがって、端末部25を斜めに落とす場合には、奥壁37を持たない貫通型のバレル部とセットにするとよい。
【0029】
(3)上記実施形態では、端末部25の溶接方法として超音波溶接を例示したが、溶接方法は超音波溶接以外の方法、たとえば、抵抗溶接とすることが可能である。また、端末部25の切断方法についても、カッターテーブルを使用した方法に限定されず、グラインダなど他の切断具を使用することが可能である。
【0030】
(4)上記実施形態では、断面コ字型溶接ホーンを使用し、端末部の断面形状がほぼ正方形型としたが、円形、楕円形のホーン形状を使用することにより、超音波溶接後の形状は、半円形、半楕円形でも良い。
【符号の説明】
【0031】
10…被覆電線
15…芯線
20…電線束
25…端末部
30…端子金具
31…端子部
35…バレル部
37…奥壁
51…アンビル
55…溶接ホーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具に対する電線束の接続方法であって、
複数本の電線を集束させた前記電線束の端末部を溶接する溶接工程と、
前記溶接工程の後に行われ、前記電線束の前記端末部の先端を切断して揃える切断工程と、
前記切断工程の後に行われ、前記電線束の前記端末部を前記端子金具のバレル部に挿入する挿入工程と、
前記挿入工程の後に行われ、前記端末部を挿通させたバレル部を加締めることにより、前記電線束の前記端末部を前記バレル部に圧着させる圧着工程とを備えることを特徴とする電線束の接続方法。
【請求項2】
前記切断工程において、前記電線束の前記端末部の先端を、前記電線束の軸線に対して垂直に切断することを特徴とする請求項1に記載の電線束の接続方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−192464(P2011−192464A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56086(P2010−56086)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】