非凝集性コア/シェル型ナノコンポジット粒子
本発明は、ナノコンポジット粒子を含む逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと;マイクロエマルジョンをシランカップリング剤で処理するステップと;ナノコンポジット粒子の懸濁液をpH約6〜7に維持するマイクロエマルジョンに酸/アルコール溶液を添加することによって、マイクロエマルジョンを破壊してナノコンポジット粒子の懸濁液を形成するステップと;ナノコンポジット粒子の懸濁液を、好ましくはナノコンポジット粒子が確実に非凝集となるように改変したサイズ排除HPLCシステムで同時に洗浄し分散させるステップとを含む、非凝集性で高度に分散した安定なコア/シェル型ナノコンポジット粒子を合成する方法を提供する。ナノコンポジット粒子の一次粒子粒径は、約1〜100nm、好ましくは約10〜50nm、より好ましくは約10〜20nm、最も好ましくは約20nmの範囲とすることができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノコンポジット粒子に関する。より詳細には本発明は、広範な用途に使用することができる、様々な粒径の安定で充分に分散した非凝集性コア/シェル型ナノコンポジット粒子を合成する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化学技術分野における最も重要な発展のうちの1つは、ナノ構造化の発展である。ナノ構造材料は、巨視的スケールではユニークな特徴的性質を示すナノ粒径ユニットの集合体(assembly)である。こうしたユニットのサイズ範囲は、コロイドの範囲内にあり、個々の特性は、原子/分子の特性とも、またバルクの特性のどちらとも異なる。したがって、ナノ構造集合体の特性は、構成要素のコロイド的特性、主に粒子の粒径、表面特性、粒子間の相互作用、および粒子間の距離を変えることによって調整され得る。
【0003】
生物医学的用途でのナノ粒子の使用は、今日、多数の研究グループの主要焦点となっている。ナノ粒子は、診断用バイオイメージング、薬物送達、遺伝子治療などの生物医学的用途で役立ついくつかの特性を有する。ナノ粒子はまた、培養中の細胞、組織、または完全な生物を標識するバイオイメージング薬剤として使用することができる。
【0004】
バイオイメージング用途で使用される現在のナノ粒子技術としては、磁性ナノ粒子、強磁性流体、および量子ドット(QD)が挙げられる。最近、コロイド状蛍光性半導体ナノ結晶の、ZnSシェル−CdSeコアナノ粒子など、生物標識に使用されるQD(Q−dots(登録商標)として市販)部類の開発に多くの進歩が見られる(R.P.Haugland、Molecular Probe、6:320〜328頁、1998年)。研究者らは、バイオ結合スキームを開発し、こうしたプローブをバイオアッセイに適用する過程にあり、ナノ結晶は、既存の有機染料と比べた場合、生物学的標識として特に有益なものになり得る。量子ドットは、一連のバイオイメージング用途で広く試験されている。
【0005】
半導体ナノ結晶は、半導体ナノ結晶の溶解性、物理化学的安定性、量子効率など、その使用に関わるいくつかの問題を有する。さらに、QD放射は、著しく断続的であり、凝集によりバイオイメージングツールとしての有効性が制限される恐れがある。QDに関係するその他の問題としては、QDの物理的特性の解釈を著しく困難にする表面の酸化が、QDシェルの分解、有害金属の身体内放出、および不充分な結晶性を引き起こす恐れがあるため、表面の電子欠損および毒性効果が挙げられる。さらに、バイオ標識として蛍光性ナノ粒子を日常的に適用することは、特に、生物医学的診断におけるカドミウムといった、著しく有毒な化合物の使用に関する一般的な環境問題のために議論の的になっている。さらに、ナノメートル粒径の構造を設計し、それらの形状を制御して、新規な電子的、光学的、磁気的、輸送性、光化学的、電気化学的、および機械的な諸特性を有する新しい材料を生みだす方法は、めったに見つからず、潜在的に報われ得る挑戦が行われている。
【0006】
こうしたナノ粒子はまた、薬物送達に関する機構として機能することもでき、それによって、多数の非水溶性で不安定な薬剤を利用することが可能になる。さらに、こうしたナノ粒子は、吸収性シェル(resorbable shell)技術に基づく薬物ターゲティングおよび持続的放出の用途に使用することができる。さらに、これらのナノコンポジットは、遺伝子治療において遺伝的物質の送達に使用することができる。現在のナノ粒子薬剤および遺伝子の「担体」としては、高分子ミセル、リポソーム、低密度リポタンパク質、高分子ナノスフェア、デンドリマー、および親水性の薬剤-ポリマー複合体が挙げられる。
【0007】
過去10年にわたり、エレクトロニクスおよびフォトニクスにおいてナノスケール複合粒子のユニークな特性および潜在的な用途のために、ナノスケール複合粒子の製造の分野で広範な研究が行われてきた。二酸化ケイ素(SiO2)シェルと金属コア構造のナノコ
ンポジット粒子が、Mulvaneyら(Langmuir、12:4329〜4335頁、1996年)およびAdairら(Materials Sci.& Eng.R.23:139〜242頁、1998年)によって最初に合成され、報告された。コアシェル構造を有する、SiO2でコーティングされたナノコンポジット粒子のほとんどは、使
用された合成法に基づき2種のカテゴリーに分類される。Mulvaneyらによって開発された手法は、シリカシェルの形成前にシランカップリング剤の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)による金属クラスター表面の改質を必要とした。APSは、ガラス質との親和性に欠けた(vitreophobic)金属クラスターコアとSiO2との間の接着促進剤として使用される。しかし、懸濁状にあるナノコンポジットの分散
状態は、MulvaneyらまたはAdairらによっても調査されなかった。Adairらは、水相を有するシクロヘキサン/Igepal/水の三成分系におけるテトラエトキシシラン(tetrethoxysilane;TEOS)の単純な加水分解および縮合によって、金属
およびCdSのクラスターをSiO2でコーティングすることに成功した。この系により
、油中に水の小滴が閉じ込められるので、コアとシェル両方の厚みが調整可能であるとともに極めて均一なシリカ−シェルコーティングが可能になる。
【0008】
治療薬送達の用途におけるナノ粒子の使用の主たる制限としては、ナノ粒子懸濁液でのコロイド安定性の欠如、凝集、粒径および形状の多分散性、膨潤、および漏出が挙げられる。その他の問題としては、合成および加工技術の難しさ、担体粒子内部での不適切な充填、および様々な医療薬剤に適用できないことが挙げられる。洗浄されていないナノ懸濁液中に存在する残留前駆体材料はまた、生理的な系への標的送達と毒性作用の両方の有害な影響を及ぼす恐れがある。典型的な化学合成法において、ナノ粒子の分散は、基本的には新たに調製したナノ粒子を洗浄することから始まる。しかしながらナノ粒子を洗浄し分散させることは、隣接するナノ粒子間の強いファンデルワールス力のために難題である。このため、ナノ粒子懸濁液を、通常は界面活性剤の表面コーティングによって安定化させ、それによってこの相互作用の力を、界面活性剤分子により創出される高斥力ポテンシャルと有効に釣り合わせる。しかし、ナノ粒子をベースとした適用およびデバイスに関してより良好な性能を獲得するのに、界面活性剤の分散を最小限にすることが必要である。これは、界面活性剤添加物が後続の加工処理ステップに移され、ナノ粒子から構築されたアレイの均質性に悪い影響を与える恐れがあるからである。さらに、保護用界面活性剤を遠心分離などの従来の洗浄技術で除去した場合、ナノ粒子は凝集する傾向がある。凝集体の存在はまた、粒子の有効歩留りを損なう恐れがある。ナノメーター粒径の一次粒子を所望する場合、一般に大規模または粒径がより大きな凝集体の存在は避けなければならない。例えば、W.Tanらの2003年の米国特許第6,548,264号に記載され、以下により詳しく論じるような濾過法など、ナノコンポジット粒子を製造する従来技術の通例的方法は、凝集のサイズが約250nmの、不可逆に凝集されるナノコンポジット粒子をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ナノ医療における現在の制約を考えると、制御された徐放性、1種(または複数)の治療薬の高充填能力、製造の容易さ、安定性、およびスケールアップ能力を有する広く適用可能なナノ粒子が必要とされる。活性のある医薬剤を送達する、安定した非凝集性コロイドの製剤は、様々なバイオイメージングおよび治療の薬剤に、普遍的な、制御された、標的化された、全身性送達を付与することによって医学分野を変える可能性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、結合するアルキルアミンもしくはアルキルカルボン酸シランカップリング剤などの(それだけに限らないが)シランカップリング剤を有する、安定した非凝集性の充分に分散された活性医薬剤のコア/シェル型ナノコンポジット粒子の製造方法を提供する。グラフト機構の詳細な考察は、他に記載されている(E.P.Plueddemann、「Silane coupling agent」、29〜48頁、Plenum Press、ニューヨーク州、1982年;T.Ungら、Langmuir、14:3740〜3748頁、1998年;C.H.Chiangら、J.Colloid Interface Sci.、74(2):396〜403頁、1980年;C.H.Chiangら、J.Colloid Interface Sci.86(1):26〜34頁、1982年)。こうしたナノコンポジットの分散は、連続した洗浄および分散のステップを含む他の技術の代わりに、好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、ナノコンポジット粒子を同時に洗浄分散させることによって実現される。
【0011】
本発明はまた、生理的な条件下、すなわち等張性の環境下においてin vivoで使用される、安定的な分散ナノコンポジット粒子を、それらの分散状態を維持する、カルボジイミド介在型ポリエチレングリコール(PEG)カップリング剤からシランカップリング剤などの表面改質剤によって製造する方法を提供する。その他の表面改質方法として、デンドリマー、両親媒性剤、および従来技術で知られたクエン酸塩などの帯電吸着物が挙げられる。さらに、本発明では抗体などのバインダーが結合され、それによってナノコンポジット粒子が細胞内薬物送達に対する特定部位を標的とすることが可能になる。
【0012】
これらのナノコンポジット粒子は、シリカ、チタニア、リン酸カルシウム、またはカルシウムホスホシリケートのマトリックス内部にドープ(dope)され、有機蛍光物質や治療薬剤など、様々な医学的有効物質を含むことができる。合成技術を改変して、蛍光物質と治療用薬剤の組合せを含有するナノ粒子を製造することもできる。ナノコンポジット粒子コロイドの所期の生物医学的用途は、コアとシェルのマトリックス材料の選択を必要とする。
【0013】
安定な充分に分散された非凝集性の有効薬剤ナノ粒子は、顔料、蛍光標識、インク、徐放性製剤、バイオイメージング、薬物送達、遺伝子治療、それらの組合せなど、これらだけに限らない、様々な用途に使用され得る。例えば範囲内では、本発明のナノ粒子は、癌、感染症、糖尿病、嚢胞性線維症およびその他の疾患および障害に対する医療診断および医学的治療用のカルシウム沈着輸送体として使用することができる。
【0014】
蛍光性ナノコンポジット粒子は、イメージングおよび色素用途について特に魅力的なものとするいくつかの特性、例えば生体適合性の長所とともに、発光ピークの正確な調整が可能であること、従来の有機蛍光物質に比べて延長された蛍光寿命、ごくわずかな光退色、自己クエンチングなどを有する。さらにこのナノ粒子の蛍光性発光は、断続的ではない。ナノ粒子内では、色素分子と周囲環境との間の直接接触が避けられ、その結果、おそらくはほとんどのエルギーが吸収されるために蛍光物質の光劣化がなくなり、したがって励起光子の損失がなくなる。その結果、図3〜5に示すように、これらのナノコンポジット粒子は、従来の有機蛍光物質または量子ドットに比べて延長された蛍光寿命を示す。
【0015】
図6〜9に示すようにこれらのナノコンポジット粒子は、制御された孔を有する金属酸化物シェル内および/または可溶性外殻シェル/コーティング内に治療薬をカプセル封入することに基づく薬物送達系であって、分解すると罹患範囲の近傍に直に治療薬を放出する薬物送達系として使用され得る。シェルマトリクス材料によってもたらされる治療薬の保護作用により、生理的溶液において高い水不溶性または不安定性を示す薬剤の送達が可能になる。さらに、こうしたシェルマトリクス材料の分解速度を設計して、標的部位に長期間にわたって治療薬の徐放性を提供することができる。
【0016】
ナノコンポジット懸濁液はまた、セラミド、AZT、およびドブタミンを含む、しかしそれらだけに限らない、薬剤を送達するのに使用され得る。インスリンを、リン酸カルシウムやカルシウムホスホシリケート(calcium phospho-silicate)などの可溶性シェル材料中にカプセル封入することもできる。表面を改質し、それによってナノコンポジット粒子が、胃腸管、血液脳関門、細胞膜などの生理的な膜を通過することを可能にすることができる。ターゲティングされ、時間制御された放出は、コアシェル型ナノ粒子からインスリンなどの治療薬を送達するのに使用され得る。
【0017】
こうしたナノコンポジットはまた、治療用DNAを細胞に送達する遺伝子治療において使用し得る。このナノコンポジット粒子は、カプセル封入によって遺伝物質の安定性を向上させ、標的細胞中への取り込みを改善させることができる。さらに、このナノ粒子は、約200nm未満の微小粒径を維持しながら転写活性型の遺伝子治療薬を送達することができる。
【0018】
微小な粒子サイズは、強化されたナノ粒子の界面化学および分散とともに、ナノコンポジット粒子の有効性に寄与する。微小粒径の実現により、動物モデルまたは人体の細網内皮系(RES)による捕捉を回避することが可能になり、それによってナノ粒子が腸壁や血液脳関門などの膜を通過して生体系で機能することができるようになる。多数の生体バリアは、微小なナノコンポジット粒子によって通過され得て、それによって高濃度の治療薬を標的部位に送達することが可能になる。さらに、こうした分散ナノコンポジット粒子を容易に機能化させて、治療薬を人体中の標的細胞または組織に直接送達させることができる。凝集は、上記の生物医学的用途および非生物医学的用途のすべてに支障を来たす。
【0019】
ナノコンポジット粒子の合成は、水、界面活性剤、およびシクロヘキサンなどの溶媒を含む逆ミセル系を使用して実現される。得られるナノコンポジットの粒径は、水−界面活性剤の比に依存し、水−界面活性剤の比がより高いとより大きなナノコンポジットが生成される。したがって本発明により、生体細胞膜を通過するのに充分に小さい、粒径が約1.0〜100nm、好ましい粒径は約1〜20nmであるナノコンポジット粒子の合成が実現される。しかしながら、以下に定義するように、上記の合成によって得られる一次粒径は、懸濁状態にある粒子の実際の粒径ではない。従来、逆ミセル中で調製されたナノコンポジット粒子は凝集していた。合成後、ナノ粒子の洗浄および回収作業をしている間に凝集が起こる。したがって、一次ナノ粒子の合成だけでは、充分に分散された懸濁液を提供するには不充分である。
【0020】
表1は、SiO2ベースのナノコンポジット粒子の表面改質に使用されるシランカップ
リング剤のリストを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、非凝集性で高分散な安定したコア/シェル型ナノコンポジット粒子の合成方法を初めて提供する。好ましくは、こうしたナノコンポジット粒子は、その上に結合されるアルキルアミンやアルキルカルボン酸のシランカップリング剤などの分散剤を有し、あるいはこの分散剤を、特にカルシウム・ベースのナノ粒子の合成においてクエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、およびホスホン酸塩からなる群より選択することができる。こうしたナノコンポジット粒子の分散は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用して、ナノコンポジット粒子を同時に洗浄し分散させることによって実現される。
【0022】
また、本発明により、カルボジイミド介在型ポリエチレングリコール(PEG)カップ
リング剤などの表面改質剤によって、生理的条件下、すなわち等張性環境下においてin
vivoで使用される、非凝集性で充分に分散した安定ナノコンポジット粒子懸濁液を調製することが実現される。
【0023】
さらに、本発明によりin vivoでシェルを吸収性または生分解性にする、有機および/または無機コア上に、リン酸カルシウムシェルやカルシウムホスホシリケートシェルなどのカルシウムベースのシェルを形成することが実現される。根底となるシェルは、多孔性でも高密度(dense)でもよい。
【0024】
さらに、本発明により抗体、アミンを含めたその他の官能基、カルボン酸塩、合成ポリマーなど、広範な機能性を備えたバインダーが結合され、それによってナノ粒子が細胞内薬物送達のための特定部位といった送達適用において使えることが可能になる。さらに、有機基、金属、酵素、巨大分子、プラスミドなど(これらだけに限らない)、その他の部分を、ナノコンポジット粒子表面に添加することができる。例えば、ナノコンポジット粒子は、癌細胞に結合させる葉酸といったターゲット材料で囲まれた徐放性シェル中にカプセル封入された化学療法剤を含むことができる。このターゲット材料を、細胞および/または細胞の核に入り込むことができ、次いでその中で放出されるタンパク質、酵素、DNA、RNA、およびその他の化合物を送達するのに使用することもできる。
【0025】
充分に分散したナノコンポジット粒子の調製は、界面活性剤、疎水性溶媒、水性ベースのコア前駆体、例えば水性ベースの有効薬剤の前駆体、蛍光性分子、顔料、金属、その他の所望のコア材料などを含む逆ミセル系、ならびに好ましくはサイズ排除HPLCシステムを用いる洗浄および分散の方法を使用する本発明の方法に従って実現される(図1、11、および12)。得られる一次のナノコンポジット粒子の粒径は、水−界面活性剤の比に依存し、水−界面活性剤の比がより高いとより大きなナノコンポジットが生成される。具体的には、一次のナノコンポジット粒子の粒径は、水と界面活性剤のモル比、水とシェル前駆体材料のモル比、ならびにシリカシェル粒子では塩基とシェル前駆体材料のモル比を含めた処理パラメーターの操作によって改変され得る。したがって、本発明により、粒径が約1.0〜100nm、好ましくは約1〜20nm、最も好ましくは約10〜20nmの間にあるナノコンポジットの合成が実現される。例えば、R=[水]/[界面活性剤]=2、H=[水]/[TEOS]=100、およびX=[NH4OH]/[TEOS]
=1を、シクロヘキサン/水/Igepal(登録商標)CO−520系に適用した場合、直径が約10nmの球状SiO2ナノコンポジット粒子が合成され得る。粒径が約20
nm以下のナノコンポジット粒子は、血液脳関門を含めた生体細胞膜を通過するのに充分小さいと考えられる。
【0026】
本明細書では、「ナノ粒径」という用語は、粒子が、約100nmより小さい平均寸法を有し、通常バルク相とは関連しない特性、例えば量子光学効果を示すことを含意する細分化の特別な状態を指す。
【0027】
本明細書では、「ナノコンポジット粒子」、「ナノコンポジット」、および「ナノ粒子」という用語は、交換可能である。
本明細書では、「凝集(agglomeration)」という用語は、懸濁液中で物理的(ファンデルワールス、疎水性)または静電気的な力による凝集物(粒状サブユニットからなる結合体)の形成を指す。得られた構造は、「凝集体」と呼ばれる。
【0028】
本明細書では、「非凝集」という用語は、「凝集」の反意語であり、懸濁液中において凝集物が分散した状態を指す。
本明細書では、「凝集物」という用語は、粒状サブユニットからなる凝集体を指す。
【0029】
本明細書では、「一次粒子」というフレーズは、粒子系における最小の同定可能な細分を指す。一次粒子はまた、凝集物のサブユニットになることもできる。
本発明の方法に従って使用することができる界面活性剤の例としては、限定はしないが、ポリ(オキシエチレン(oxyetheylene))ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)が挙げられ、すなわち、疎水性溶媒と、エタノールが存在するような、低分子量疎水性溶媒を含むこともできる水溶液とを組み合わせた、油中水型の逆ミセルを形成する界面活性剤が、例として考えられる。
【0030】
シェル前駆体の例としては、SiO2、TiO2、ZnO、Fe2O3、ZrO2、NiO
、およびGeO2、Sn、Pb、Ag、およびAu、テトラエトキシシラン(TEOS)
、チタン(IV)イソプロポキシド、CaPOx、CaCO3、または一般式Cax(PO4)y(OH)z(SiO2)aのカルシウムホスホシリケート(式中、x、y、z、およびaは、ゼロからより大きな数値の範囲で変えることができる)が挙げられるが、それだけに限らない。
【0031】
さらに、コア材料は、ドブタミン、AZT、抗生物質およびセラミドを含むがそれらだけに限らない薬剤を含有することができ、したがって、伝染性微生物、癌、またはその他の外因性異物に対して使用され得る。さらにこうしたコア材料は、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなど、それらだけに限らない材料に基づく脱水性ヒドロゲルから構成され得る。さらに、このコア材料は、リン酸カルシウムコーティングを有するシリカで構成してもよい。リン酸カルシウムシェル/シリカコア材料は、生理的pH値(pH6.5〜7.4)でクエン酸塩などの薬剤を使用して充分に分散させることができ、したがって、こうしたナノ粒子は、懸濁状の充分に分散したナノ粒子が歯の象牙質に送達されたときに象牙細管中にカルシウムおよびリン酸塩を放出することにより、歯の知覚過敏に対する治療薬として使用することが可能になる。
【0032】
さらに、こうしたナノコンポジット粒子のシェル前駆体材料は、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、およびメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなる群より選択される細胞毒性剤を含有することができ、したがって、伝染性微生物、癌、またはその他の外因性異物の標的として使用され得る。さらに、このシェル前駆体材料は、クエン酸塩で安定化させたリン酸カルシウムを含むシリカシェルコーティングで構成され得る。したがって、こうしたナノ粒子は、ナノ粒子が歯の象牙質に送達されたときに象牙細管中にカルシウムを放出することにより、歯の知覚過敏に対する治療薬として使用することが可能になる。
【0033】
水性コア前駆体の例としては、Au、Ag、Co、Ni、Cu、Ptなどの金属;CdSなどの半導体;有機顔料;有機染料;フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン123、ローダミンWT、ローダミンBおよびローダミン123などのローダミンB誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、ルシフェリンなどの有機蛍光物質;および/または上記の2つ前のパラグラフに記載のものを含めた治療薬などの有効医薬剤も挙げられるが、それだけに限らない。
【0034】
治療薬の例としては、治療用DNAまたはRNA(あるいは任意の核酸)を細胞に送達させる遺伝子治療で使用することができる遺伝子治療薬剤が挙げられるが、それだけに限らない。本発明のナノコンポジット粒子は、カプセル封入によって遺伝物質の安定性を向上させ、標的細胞内への取り込みを改善させる(図2)。さらに、これらのナノコンポジット粒子は、100nm未満の微小粒径を維持しながら転写活性型の遺伝子治療薬を送達することができる。
【0035】
フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体の例としては、BDCECF、BCECF
−AM、Calcien−AM、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン二酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシエオシン、5,(6)−カルボキシエオシン二酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセイン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセインオクタデシルエステル、5,(6)−カルボキシナフトフルオレセイン二酢酸塩、エオシン−5−イソチオシアネート、エオシン−5−イソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸 N−スクシンイミジルエステル、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセインイソチオシアネート異性体1、フルオレセインイソチオシアネート異性体2、フルオレセインイソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセインオクタデシルエステル、フルオレセインナトリウム塩、ナフトフルオレセイン、ナフトフルオレセイン二酢酸塩、またはN−オクタデシル−N’−(5−フルオレセイニル)チオ尿素(F18)が挙げられるが、それだけに限らない。
【0036】
ローダミンおよびローダミン誘導体の例としては、5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン、5−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、6−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシ−X−ローダミン、ジヒドロローダミン123、ジヒドロローダミン6G、リサミンローダミン、ローダミン110塩化物、ローダミン123、ローダミンBヒドラジド、ローダミンB、およびローダミンWTが挙げられるが、それだけに限らない。
【0037】
有機顔料および染料の例としては、7,12−ビス(1−ヒドロキシエチル)−3,8,13,17−テトラメチル−21H,23H−ポルフィン−2,18−ジプロパン酸などのヘマトポルフィリン染料;およびインドシアニングリーンなどのシアニン染料およびその誘導体;インドインブルー;R−フィコエリスリン(PE)、PE−Cy5;PE−Cy5.5;PE−テキサスレッド;PE−Cy7;Cy3 NHSエステル;Cy3マレイミドおよびヒドラジド;Cy3B NHSエステル;Cy3.5 NHSエステル;Cy3アミダイト;Cy5 NHSエステル;Cy−5;Cy5アミダイト;Cy5.5;Cy−5.5 NHSエステル;Cy5.5アネキシンV;Cy7;Cy7 NHSエステル;Cy7Q NHSエステル;アロフィコシアニン(APC);APC−Cy7;APC Cy5.5;ヨウ化プロピジウム(PI);クリスタルバイオレットラクトン;パテントブルーVF;ブリリアントブルーG;またはカスケードブルーアセチルアジドが挙げられるが、それだけに限らない。
【0038】
本発明の方法に従ってナノコンポジット粒子に添加することができるシランカップリング剤の例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)(pH域2.0〜9.0;SiO2の表面を改質するのに広く使用される)、3−アミノプロピルシルセス
キオキサン(pH域2.0〜6.5;シリカ粒子とAgナノ粒子の間の接着促進剤)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)(pH域<9.0;SiO2ナノ
粒子を改変するのに使用される)、トリメトキシシリルプロピル−ジエチレントリアミン(DETA)(最適pH6.8;SiO2ナノ粒子の表面コーティングに使用される)、
または3−トリメトキシシリプロピルコハク酸無水物(trimethoxysilypropylsuccinic anhydride)(pH域>8.0;シリカ表面上に負の電荷を付与するのに使用される)が挙げられるが、それだけに限らない。
【0039】
さらに、アミド結合型カルボキシル基(pH域<7.0;末端開口カーボンナノチュー
ブを機能化するのに使用される)など、アルキルカルボン酸シランカップリング剤を、ナノコンポジット粒子に添加することができる。
【0040】
さらに、動物またはヒトにおいてin vivoでこうしたナノコンポジット粒子を使用するために、カルボジイミド介在型ポリエチレングリコール(PEG)カップリング剤などの表面改質剤を、シランカップリング剤に添加することができる。デンドリマー表面改質剤もまた、生理的環境でのこれらのナノコンポジット粒子の使用を促進するのに使用することができる。
【0041】
さらに、抗体などのバインダーを結合させ、それによってこれらのナノコンポジット粒子は、細胞内で薬剤および核酸の送達のために特定部位を標的とすることが可能になる。
ナノ粒子分散の成功度合い、つまり非凝集は、特定のナノコンポジット懸濁液の平均凝集数(AAN)をコンピュータで計算することによって推定され得る(V.A.HackleyおよびChiara F.Ferraris、「The use of nomenclature in dispersion science and technology」、Special Publ.960−3、米国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)、米国商務省、7〜8頁、2001年8月、文書監督指導、米国政府印刷局、私書箱SSOPワシントン(DC)20402−0001)。このAANは、凝集体内に含まれる一次粒子の平均数として定義される。これは、準電気光散乱(QELS)によって決定された粒子体積中央値と、透過型電子顕微鏡(TEM)キャラクタリゼーションによって決定された微視的粒子サイズの体積との比として計算され得る。具体的には、AANは、以下の式のように、例えば、動的光散乱、沈降法、または電界検知技術によって決定される粒子の粒径中央値と、BETガス吸着法から得られる平均等価球体積(VBET)と
の比から計算される。
【0042】
【数1】
【0043】
式中、V50は、粒径中央値から計算された等価球体積であり、D50は、μmであり、SSAは、単位がm2/gの比表面積であり、ρは、単位がg/cm3の粒子密度である。我々の経験に基づくと、AANが10未満では、充分に分散した懸濁液であり、AANが≧10〜30では、適度に分散した懸濁液であり、AANが30より大きいと、分散が不充分な懸濁液である。時には、ナノコンポジット粒子の各々を囲む電気二重層のQELS測定のために、QELSおよびTEMによってもたらされる粒子の粒径に差異が観測される恐れがあるが、本発明者らは、ナノコンポジットコロイド懸濁液のQELSキャラクタリゼーション用の標準プロトコルを開発して、二重層感度に起因する流体力学的半径の影響を最小限にした。図20〜22に示すように、本発明の技術により、AAN<10のナノコンポジット粒子懸濁液の確実な調製が可能になる。
【0044】
本発明の一実施形態では、バイオテクノロジー用途において従来の有機染料が遭遇した様々な機能的制限を回避することができるローダミンB/SiO2およびフルオレセイン
/SiO2のナノコンポジットを、本発明の方法に従って合成する。例えば、それらは、
量子サイズ効果に起因する強いサイズ依存性発光スペクトルを示す(それぞれ図3および4)。さらにこれらのナノ粒子は、吸収の閾値の上ではほぼ連続的な励起スペクトルを有する。その結果、こうしたナノコンポジット粒子を、生体標識技術において格別の発光プローブとして使用するこができる。実際、ローダミンB/SiO2およびフルオレセイン
/SiO2のナノ粒子は、多くの分野において既存の有機発色団よりも優れている。例え
ば、このローダミンB/SiO2およびフルオレセイン/SiO2のナノ粒子は、高い量子収率および光劣化に対する高い耐性を有する(図5)。さらに、これらのナノコンポジット粒子からの光ルミネセンスが、有機染料が遭遇した濃度と同等な濃度で検知され、したがって、従来の蛍光法の使用が可能になり、さらに生体適合性の利益も追加される。したがって、本発明のナノコンポジット粒子は、現在の医療技術の不充分な点を軽減することができる。例えば、本発明の蛍光性ナノ粒子の一適用は、平滑筋細胞(図6A、B)またはニューロン(図6C、D、および7A〜E)など、生体細胞の内部を照らすことである。生きた細胞の有機染料を使用した染色は、広く受け入れられた慣行となっているが、こうした細胞は、大量の染料分子で飽和される必要があり、そうでないとその染色は、結局、光物理的劣化により退色してしまう。ローダミン123/SiO2およびフルオレセイ
ン/SiO2ナノ粒子によりこの問題は解決される。と言うのは、これらが、シリカシェ
ルによって付与される蛍光性コアの保護によって光分解に対して高い耐性を有するからである。理論に束縛されるものではないが、無機シェルは、ナノ粒子蛍光の維持に関与し、それは最高で7カ月およびそれ以降も持続すると考えられる。さらに、本発明の方法に従って合成されるナノコンポジット粒子は、図3に示すように、光退色の抑制および/または極度な低減を示し、ならびに約6カ月を超す寿命を有する。
【0045】
さらに、こうしたナノコンポジット粒子は、化学的アッセイの「曳光弾(tracer
bullet)」として使用され得る。例えば、こうしたナノコンポジット粒子は、リン酸カルシウムを用いてカプセル封入される、乾燥させたヒドロゲルを含有することができ、それは身体全体にわたって循環し、水で膨潤することができる。粒径が約20nmのナノコンポジット粒子は、腎臓のボーマン嚢の糸球体細胞といった細胞膜を通過することができる。したがって、それらは、尿中に排泄され得て、その後、その内容物を分析することができる。
【0046】
本発明のナノコンポジット粒子は、通常血液循環による輸送ができない疎水性治療薬の全身送達に使用され得る(図8)。さらに、粒径が20nm以下のナノコンポジット粒子は血液脳関門を通過することができるため、中枢神経系への薬剤の直接送達が実現され得る。多孔質シリカコーティングまたはリン酸カルシウムで構成されたナノコンポジット粒子は、インスリンなどのホルモンをカプセル封入するのに使用され得る。こうしたナノコンポジット粒子は、小腸管腔の微絨毛を通過することはできるが、尿細管の糸球体細胞を通過しない。したがってこうしたナノコンポジット粒子は、インスリン放出についてフィードバック機序を提供することができ、そこでは、グルコース代謝の結果として産生されるピルビン酸塩が、ナノ粒子のリン酸カルシウムシェルに結合して、このナノ粒子からのインスリン放出を促進する。さらにかかるナノコンポジット粒子を、特異的に膵臓細胞に対して標的化することができ、その後膵臓内でインスリンを放出する。
【0047】
本発明ナノコンポジット粒子の別の用途として、バイオミネラリゼーション(biomineralization)を誘発する薬剤としての、リン酸カルシウム(CP)またはカルシウムホス
ホシリケート(CPS)でコーティングされたシリカ粒子の使用が挙げられる。例えば、CPまたはCPSシェルシリカコア粒子の使用は、露出した象牙細管への取込み用に練り歯磨きで使用され得て、それによりバイオミネラリゼーションが誘発され、細管の閉鎖が促進され、したがって歯の過敏性が緩和される。
【0048】
吸収性シェル型ナノコンポジット粒子を適用するその他の例としては、特定の細胞または組織への全身性または標的送達のための、エイズ治療で使用されるドブタミン、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT);癌に対する化学療法剤、または冠状動脈の平滑筋細胞増殖阻害の化学療法剤として使用されるセラミドなどの薬剤の組込みが挙げられる(図9)。
【0049】
本発明蛍光性ナノ粒子のその他の適用としては、毛細管流を検査する蛍光標識、ニューロン細胞の結合性を規定すること、ギャップ結合による色素転位の研究、および汚水処理(septic disposal)系の追跡への使用、ならびにその他の水輸送の研究が挙げられるが、それだけに限らない。
【0050】
本発明の別の実施形態では、ナノコンポジット粒子を含有する逆ミセルマイクロエマルジョンを調製すること、この逆ミセルマイクロエマルジョンをシランカップリング剤で処理すること、約6〜8の所望のpHに維持されたマイクロエマルジョンに対し、酢酸/エタノールといった、酸/アルコール溶液を添加することによって、マイクロエマルジョンを破壊してナノコンポジット粒子の懸濁液を形成すること、およびこのナノコンポジット粒子の懸濁液を同時に洗浄し分散することからなる、油中水型合成プロトコルを使用する懸濁状ナノコンポジット粒子の調製方法が提供される。
【0051】
この逆ミセルは、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520として市販)などの両親媒性界面活性剤、シクロヘキサンなどの疎水性溶媒、および水ベースの溶液(所望により親水性の有機共溶媒が存在していても存在していなくてもよい)で構成される混合物を形成し、この混合物を安定的な均質な油中水型逆ミセルが生成されるのに充分な時間、25℃で攪拌することによって調製される。通常の攪拌時間は、5分〜24時間の範囲であり、好ましい時間は30分である。所望により、特にシリカおよびチタニアのシェル材料については、NH4OHまたは水酸化テトラ
エチルアンモニウムを含めた(それだけに限らないが)塩基を添加し、得られた懸濁液を2分〜24時間のさらなる時間、攪拌する。こうしたナノコンポジット材料に最適な熟成時間は、シェル材料に依存する。シリカおよびチタニアシェルのナノコンポジットでは、24時間が好ましく、リン酸カルシウム、カルシウムホスホシリケート、およびその他のカルシウムベースのものでは、ナノコンポジット粒子の分散方法は、不可逆的な凝集を防ぐために好ましい時間の2分後に開始されなければならない。次いで、APSなどの分散剤を懸濁液に添加して、ナノ粒子の表面電荷を改変させる。
【0052】
マイクロエマルジョンは、逆ミセルを破壊する溶液と一緒に急速に攪拌することによって破壊され、それによって適度に均質な溶液が形成される。好ましい破壊溶液は、酢酸およびエタノールから構成される。水性溶液は、本発明のシクロヘキサン/Igepal(登録商標)CO−520/水系からなるマイクロエマルジョンを効果的に破壊するのに使用することができないことが確認された。
【0053】
本発明の別の実施形態では、チタニアナノコンポジット粒子を合成するのに、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)などの界面活性剤、シクロヘキサンなどの疎水性溶媒、および水性の前駆体で構成される混合物を室温で形成すること、この混合物を好ましい時間である約30分間攪拌すること、塩基を添加して懸濁液を形成すること、この懸濁液を約15分間攪拌すること、ならびにシェル前駆体のチタン(IV)イソプロポキシド(TIPO)を添加することによって逆ミセルマイクロエマルジョンを調製することからなる方法が提供される。該ミセルの充分な熟成は、TIPOを添加した約24時間後に起こる。シランカップリング剤またはクエン酸溶液などの単純な吸着物を懸濁液に添加して、ナノ粒子の表面電荷を改変させた後、酢酸/エタノール溶液でマイクロエマルジョンを破壊する。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態では、別個の2種のマイクロエマルジョンが、Igepal(登録商標)CO−520と、シクロヘキサンと、マイクロエマルジョンの基剤として働く前駆体を含有する水溶液とで調製され、有効薬剤コアおよびCa10(PO4)6(OH)2シェルで構成されるリン酸カルシウムナノコンポジット粒子を合成するための方法が
提供される。塩化カルシウム二水和物およびリン酸二水素ナトリウムは、リン酸カルシウ
ムシェルの前駆体として働く。メタケイ酸ナトリウムを添加して、選択した系における核形成を誘発させる。具体的には、特定量のIgepal(登録商標)CO−520、シクロヘキサン、および水性前駆体溶液を各々含む2種のマイクロエマルジョンを、周囲温度で急速に混合することによって調製する。このマイクロエマルジョンを約5分間混合させる。マイクロエマルジョン#2を、マイクロエマルジョン#1に滴下する。ミセルを約2分間熟成させる。シランカップリング剤またはクエン酸塩の溶液形の分散剤を懸濁液に添加して、ナノ粒子の表面電荷を改変させる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、別個の2種のマイクロエマルジョンが、Igepal(登録商標)CO−520と、シクロヘキサンと、マイクロエマルジョンの基剤として働く前駆体を含有する水溶液とで調製される、有効薬剤コアおよびCa10(PO4)6(OH)2
シェルで構成されるカルシウムホスホシリケート(CPS)ナノコンポジット粒子を合成するための方法が提供される。塩化カルシウム二水和物およびリン酸二水素ナトリウムは、リン酸カルシウムシェルの前駆体として働く。メタケイ酸ナトリウムを添加して、選択した系における核形成を誘発させる。具体的には、特定量のIgepal(登録商標)CO−520、シクロヘキサン、および水性前駆体溶液を各々含む2種のマイクロエマルジョンを、周囲温度で急速に混合することによって調製する。このマイクロエマルジョンを約5分間混合させる。マイクロエマルジョン#2を、マイクロエマルジョン#1に滴下する。ミセルを約5分間熟成させ、その後、NH4OH、次いでTEOSを添加する。次い
で、シランカップリング剤を懸濁液に添加して、表面電荷を改変させる。マイクロエマルジョンを、0.02M酢酸/エタノール溶液50mLとともに急速に攪拌しながら破壊する。マイクロエマルジョンを、酢酸/エタノール溶液とともに急速に攪拌しながら破壊する。
【0056】
本発明の方法にはまた、粒径が約1μm〜約100μm、好ましくは約20μmの球状シリカビーズが充填された約5×50mmのHPLCカラムを有するサイズ排除HPLCシステムを使用することからなるナノコンポジット粒子の同時的な洗浄分散も含まれる。脱水したエタノールを、特定のナノ粒子系に対してpH調整し、それをHPLCにポンプ給送してカラム充填剤を湿らせた後、ナノ粒子懸濁液を導入する。次いで、このナノ粒子懸濁液を、シランカップリング剤で処理したマイクロスフェアから構成され得る固定相を介して、HPLCシステムに約1mL/分〜約100mL/分、好ましくは約1mL/分の流速でポンプで送り込む。HPLC充填カラムのアウトフローを検出器に連結して、UV吸光度または蛍光の変化を測定する。このカラムがナノ粒子で完全に満たされたとき、検出器は、監視し、識別する。次いで、これらの粒子を、水が最高で約250容量%、好ましくは約70容量%のエタノール/蒸留水の溶液を使用して溶出させ、再分散させる。
【0057】
洗浄には、ナノ粒子の分散を維持しながら残留前駆体材料および過剰な有効薬剤を除去することが含まれる。洗浄された粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)や準弾性光散乱(QELS)などの技術の妨げになる残留有機物が存在しないので、より容易にかつ正確に同定される。界面活性剤およびその他の有機物質は有害な毒性効果を有するので、生物学的用途のナノ粒子を洗浄することは、重要なステップである。分散計画(scheme)には、ナノ粒子懸濁液に対する保護/分散理論の適用が必要とされる。ナノコンポジット粒子の分散はさらに、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してこのナノコンポジット粒子を同時に洗浄し分散させることによって向上される。
【0058】
本発明で教示するサイズ排除HPLCシステムおよび方法により、沈降法、遠心分離法、ソックスレー抽出法といったその他の粒子回収技術よりも優れた、非凝集性の安定したナノコンポジット粒子懸濁液が生成される。HPLC洗浄手順は、複合液体(complex liquid) の分離に使用される分析技術の改変形態である。したがって、HPLC洗浄法は、
界面活性剤、残留前駆体材料、カプセルに封入されなかった有効薬剤の自動除去を可能に
する。廃棄物を含有する担体溶液からのナノ粒子の分離は、移動相と固定相の相互作用が異なるために実現される。
【0059】
HPLCの洗浄分散プロセスは、移動相および固定相の表面改質、懸濁液pH、溶出物溶液組成物、流速、およびカラム寸法を含めた可変的要因により影響を受ける。一般には、固体の充填が約10〜20重量%のナノコンポジット粒子懸濁液が、超音波法(Anton Paar、DMA35N、グラーツ、オーストリア)によって測定されるように、HPLC洗浄後に得られる。
【0060】
本発明を以下の実施例でより詳細に説明するが、その多くの改変形態および変更形態は当業者に明白であるので、実施例は例示のみを意図するものである。
【実施例1】
【0061】
4種の従来技術と比較した、HPLCを使用するAg/SiO2ナノコンポジット粒子の
合成および分散
1.材料および方法
・合成
Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の合成に使用する方法は、T.Liらによってす
でに記載されている(Langmuir、15[13]:4328〜4334頁、1999年)。使用するすべての化学薬品は、入手してそのまま使用した。非イオン性界面活性剤のポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(IgepalCO−520)、シクロヘキサン、硝酸銀、テトラエトキシシラン(TEOS)、シランカップリング剤の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、ヒドラジン、およびNH4OH(28
〜30%)すべてを、Aldrich Chemicals Co.(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入した。無水エタノール(200プルーフ、Pharmca Products,Inc.、ブルックフィールド、コネチカット州)および氷酢酸(J.T.Baker Chemicals)をさらに精製することなく使用した。すべてのストック水溶液を、脱イオン水(比導電率=0.4×10-7S/m)で調製した。
【0062】
簡単に述べると、シクロヘキサン(10ml)とIgepalCO−520(4ml)とを混合し、続いてR比に従って激しく攪拌しながらある量の0.01MのAgNO3水
溶液を添加することによって逆ミセルを形成させた。該マイクロエマルジョン中に少量のヒドラジンを添加することによってAg+イオンを金属Agに還元した。H比に基づき適
正量のTEOSを添加して金属クラスターをコーティングし、NH4OH水溶液の一滴を
触媒として導入して、アルカリpH範囲でTEOSの加水分解を確実にした。マイクロエマルジョンを、攪拌下でSiO2コーティングを完成させるために24時間密閉し沈降さ
せた。次いでAg/SiO2ナノコンポジット粒子を含有する逆ミセルマイクロエマルジ
ョンを、APSのエタノール溶液で処理した。Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の表
面は、APSの表面グラフトのために約7.0より低いpHで正に帯電(約30mV)された。マイクロエマルジョンを、激しく攪拌してpH7.0未満を維持しながら0.02M酢酸/エタノールのストック溶液、50mlで破壊した。懸濁液を、HPLC洗浄技術を使用してエタノールでさらに処理した。また、他の4種の従来技術、すなわち遠心分離法、ソックスレー抽出法、沈降法およびろ過法を、ナノコンポジット粒子の分散に関するHPLC技術の有効性を比べるのに使用した。完全なプロセスを図10に示す。界面活性剤IgepalCO−520の残留濃度を、UV−可視スペクトルによって監視した。ランベルト−ベールの法則を使用して、280nmでの吸光度を測定することによって、IgepalCO−520の検量線を濃度の関数として作成した。
・HPLCによる洗浄
Ag/SiO2ナノコンポジット粒子を含有する逆ミセルマイクロエマルジョンを、初
めにAPSのエタノール溶液で処理した(APS15g(1重量%)を、無水エタノール15mL、氷酢酸0.15mLおよびDI水0.75μLと混合させる)。Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の表面は、APSの表面グラフトのために7.0より低いpHで
正に帯電(〜30mV)された。マイクロエマルジョンを、活発に攪拌してpH7.0未満のpHを維持しながら0.02Mの酢酸/エタノールのストック溶液50mlで破壊した。次いで懸濁液をHPLCシステムにポンプ給送した(Waters Delta Preparation 3000 HPLC system、ミルフォード、マサチューセッツ州)。空のHR5/5カラムを、Amersham Pharmacia Biotech(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)から購入した。このカラムに、20μmのAPSで処理された球状シリカビーズ(Stellar Phases,Inc.、ペンシルベニア州)を流速2mL/分で充填した。カラムの末端を、Ag量子ドットコアの表面プラズモンピークの波長である405nmの波長にセットしたUV−可視スペクトル検出器に連結した。無水エタノールを洗浄溶媒としてHPLCシステムにポンプ給送し、ナノコンポジットをエタノールと水の溶液(容量比7:3)で回収した。フラクションコレクターを使用して、洗浄手順全体にわたりHPLCカラムからの溶出液を採取した。HPLCシステムの配置概略図を図11に示す。HPLCシステムの概略を図12Aに示し、それにはAg/SiO2ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)(図12B)お
よび固定相中の球状シリカビーズの走査型電子顕微鏡写真(SEM)(図12C)が含まれている。
・同定
Ag/SiO2ナノコンポジット懸濁液のゼータ電位を、動的光散乱原理に基づきZe
ta PALS Analyzer(Brookhaven Instruments Co.、ニューヨーク州)によって測定した。pHを、0.1MのHNO2および0.1
MのKOH水溶液によって調整した。Ag/SiO2懸濁液の形態および分散性を、初め
にタッピングモード(tapping mode)を備えた原子間力顕微鏡(AFM)(MultiMode、Digital Instruments)で調べた。AFM実験用のサンプルを、新たに切断したマイカ基板上にAg/SiO2懸濁液の液滴を置き、その基板を150
0rpmで30秒間スピンコーティングすることによって作製した。画像解析を、高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)(HF2000、Hitachi、日本;およびJEOL 2010F、東京、日本)で行った。少量の新たに調製した懸濁液を、銅グリッド
上に支持された炭素フィルム上に添加し、真空オーブン中で一晩乾燥させた。最先端技術のMalvern Nanosizer(Malvern Instruments、英国)を使用して、Ag/SiO2懸濁液の分散状態を決定した。入手したままのSiO2マイクロスフェアの形態を、走査型電子顕微鏡(SEM、Hitachi S−3000H、日本)によって得た。SiO2マイクロスフェアの表層構造を、洗浄と分散のサイクル
後にAFMによって調べた。pH測定はすべて、標準バッファー水溶液に対して較正されたSentron pHメーター(Argus IP 65 ISFET probe、Sentron,Inc.、ワシントン州)で行った。
2.結果および考察
・従来の4種の技術を使用したAg/SiO2ナノコンポジット粒子の分散および形態
(a)遠心分離法
遠心分離法で洗浄され再分散されたAg/SiO2ナノコンポジットの分散状態を、図
11A〜Bに示す。R=2、H=100、およびX=1のサンプルでは、TEMによる一次粒径は、30±1.2nmであった(図11A)。動的光散乱によって測定された集団粒径分布は、233nmであった(図11B)。Adairら(Advances in
Ceramics、111、142〜156頁、The American Ceramic Society、オハイオ州、1984年)によって開発された平均凝集数(AAN)概念を使用して、Ag/SiO2懸濁液のAANを、光散乱粒径(DLS)と微視
的粒径(TEM)との体積比を利用することによって計算した。遠心分離法のプロトコルでは、AANは、かなり凝集した懸濁液であることを示す468と推定された。これは、
TEM観察と一致していた。
(b)ソックスレー抽出法
ソックスレー抽出法は、洗浄溶媒の効率性が改善する、材料を連続方式で洗浄し抽出する経路を提供する。Ag/SiO2ナノコンポジットを、ソックスレー抽出器で洗浄し採
取した。洗浄溶媒をその沸点に加熱して溶媒貯留容器から蒸発させ、次いで調製したままのAg/SiO2ナノコンポジットを含む円筒ろ紙の下方まで濃縮させ、最後に貯留容器
中に流し戻した。洗浄サイクルは、約40分間継続する。図4A〜Bは、ソックスレー抽出器で洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジットのTEM画像および粒径分布を示す。
このAANは、約106であると決定され、これはTEM分析によって確認された(図12A)。Ag/SiO2ナノコンポジットの一部が10nm未満の粒径を示したが、これ
は洗浄中にSiO2シェルの分解によって引き起こされた可能性がある(図12B)。
(c)沈降法
Ag/SiO2ナノコンポジットを、APSコーティングの後に沈降法によって洗浄し
た。TEMからの粒径(図13A)と比べると、このAANは、921であることが推定された。このAANは遠心分離のものに比べて高かったが、分散は、ろ過を使用してナノコンポジット凝集物を除去することによってさらに改善される可能性がある。しかし、この洗浄手順は、プロトコルがほとんど機器の使用を必要としないが、通常時間のかかるものである。ナノコンポジット懸濁液は、光散乱分析に従って約25nmの主要モードおよび2μmの副次モードである双峰分布を示した(図13B)。
(d)ろ過法
ろ過洗浄法は、W.Tanら(米国特許第6,548,264号、2003年、名称「Coated Nanoparticles」)およびX.Zhaoら(Adv.Mater.、16:173〜176頁、2004年)によって報告されたプロトコルに従う。マイクロエマルジョンをアセトンで破壊し凝固させ、次いでナノコンポジットをろ過(2μmフィルタ、Millipore、ベッドフォード、マサチューセッツ州)し、アセトンおよびエタノールで3回洗浄した。Tanらのプロトコルは、ナノコンポジット懸濁液のpHレベルをpH7未満、好ましくは約pH6〜7になるように制御しないものである。これは凝集を防ぐのに必要である。したがって図14Aに示すように、Tanらのプロトコルは、ナノコンポジット粒子の不可逆的な凝集をもたらした。動的光散乱の測定で得られた粒子粒径分布は、双峰分布であり(図14B)、この凝集粒径は、約250nmであった。Ag/SiO2ナノコンポジットエタノール懸濁液のAANは、約318であっ
た。凝集は、ナノコンポジット同士を接触させて形成および成長させるアセトンによって誘発された凝固のために起きた可能性が最も高い。
【0063】
図15A〜Bは、従来の4種の洗浄プロトコルを使用した、油中水型逆ミセル合成に由来するAg/SiO2ナノコンポジットの形態を示す。シクロヘキサン/Igepal/
水の逆ミセル系におけるナノコンポジットの生成メカニズムおよび化学反応速度論は、F.J.Arriagadaらによってすでに詳細に説明されている(J.Colloid
Interface Sci.211:210〜220頁、1999年;Colloids and Surfaces A、154:311〜326頁、1999年;J.Colloid Interface Sci.218:68〜76頁、1999年)。合成されたままのナノコンポジット粒子を洗浄し回収するのに使用される従来法では、TEM画像に明らかに示されるように、粒子間のファンデルワールス力によって誘発される凝集を防ぐことができなかった(図15A)。
【0064】
逆ミセル合成で生成されたナノコンポジットの粒径および形は、水と界面活性剤のモル比Rおよび水とTEOSの比Hに依存する。Ag/SiO2ナノコンポジットの成長に関
する一般的な傾向として、銀コアの粒径はRに比例するが、シリカシェルの厚さはHが増加するにつれて減少する。R=2、H=100、およびX=1([NH4OH]対[TE
OS])では、逆ミセル合成によって得られたAg/SiO2ナノコンポジットの粒径は
、約30±1.2nmであり、銀の量子ドットは、約5±0.6nmである(95%信頼区間)。次いで、SiO2層の厚さは、約12nmであった(図15B)。
【0065】
ナノコンポジット合成中の凝集形成ステップは、同定されていない。しかし、逆ミセル中に捕捉されたナノコンポジット粒子は界面活性剤の保護層のために凝集しないことが知られており、したがって、界面活性剤層を洗い流すことにより凝集が誘発されると考えられる。したがって、非凝集性のナノコンポジット粒子を合成するためには、ナノコンポジットを同時に洗浄し分散させることが重要であり必要である。
・HPLCを使用したAg/SiO2ナノコンポジット粒子の分散および形態
サイズ排除HPLCシステムを使用して、ナノコンポジット粒子を同時に洗浄し分散させて、充分に分散したAg/SiO2懸濁液を生成させた。図16は、このHPLCシス
テムの固定相として使用されたシリカマイクロスフェアの形態を示す。このシリカ粒子は、均一な球体であり、平均粒子粒径が20μm、孔サイズが65Å(表面積425m2/
g)であった。シリカマイクロスフェアをHPLCカラムに乾燥充填したとき、ランダム充填密度57%を得た。これにより43%もの高いカラム孔隙率が生成され、HPLC作動中にナノコンポジットが移動する多数のマイクロチャネルを形成することができた。これらのシリカマイクロスフェアをAPSで処理して正の電荷を生じさせ、それによって、正に帯電したAg/SiO2ナノコンポジットが固定相シリカの表面に固着するのを防い
だ。これはHPLCプロトコルの重要なステップである。
【0066】
図17に示すスペクトルは、HPLCカラム内部でのAg/SiO2の洗浄プロセスを
反映している。抽出溶媒(エタノール/水(容量比7:3))を2mL/分でポンプ給送したとき、HPLCカラムからのAg/SiO2の溶出に約3分かかった。スペクトル強
度は、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子が検出器内の通過開始点で著しく増加し、安
定した懸濁液が、HPLC末端で連続的に採取された。HPLCスペクトルは、洗浄サイクルの範囲内に観察される副次的ショルダーを伴ない、高い強度を有する、比較的細いバンドのように現れ(HPLC検出器の設定のために電圧として記録されている)、これは充分に洗浄されたAg/SiO2懸濁液を採取する根拠となった。PEAKFIT(登録
商標)によるスペクトルのデコンボリューション(deconvolution)により、3個の個別の
ピーク(3個のピークの面積比は、1.1:1.8:1であり、ピークの中央位置は、95.1(s)、112.2(s)、および150.7(s)であった)が得られ、それらは個々のAg/SiO2ナノコンポジット粒子およびそれらの凝集物(ダブレット、トリ
プレットなど)に対するHPLCカラムの分解能と一致した。これは、Ag/SiO2ナ
ノコンポジット粒子の濃度がランベルト−ベールの法則にかなり基づいていることを示唆した。
【0067】
洗浄手順全体は、実際の溶出液採取時間の約3分を含めて約45分かかった。これは、遠心分離法や沈降法といった従来の洗浄手順よりはるかに効率的である。スペクトルのプロフィルから、大部分のAg/SiO2ナノコンポジット粒子が、一定速度でHPLCカ
ラムを通って移動し、それによってこのナノコンポジット粒子が間隙チャネル内を連続的に移動する結果、該ナノコンポジットがSiO2マイクロスフェア固定相の表面上で凝集
して堆積する機会を減らすことができたことを示唆した。しかし、より小さな粒子がより大きな粒子に比べて溶出には、より長い時間を要する傾向があるというクロマトグラフィーの原理から述べられるように、スペクトルの非対称なプロフィルは、少数のAg/SiO2ナノコンポジット粒子が粒子粒径変動のためにカラムを通過するのにより長い時間が
必要であったことを示していた。これは、少数のダブレット、トリプレット、さらにはより大きなクラスターが、洗浄工程で個々のAg/SiO2ナノコンポジット粒子とともに
形成されたことを示している。
【0068】
図18A〜Bは、HPLC方法で洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット粒子の形
態を示す。図18Aは、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の2種の懸濁液である。図
18Bは、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の3種のデジタル画像である。200〜
600nmのUV−可視分析によれば、このAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、機
器による検出限界内の界面活性剤を含んでいなかった。と言うのは、IgepalCO−520の特徴的な280nmの吸収帯が確認されなかったからである。ゼータ電位(+30mV)は、HPLC洗浄後でさえAPSでグラフト化された強固な表面を強く示している。このAg/SiO2ナノコンポジット粒子の平均粒径は、HPLC洗浄の前にTEM
によって決定されたのと同じままであり、Agコアは5±0.6nmであり、全体の粒径は約30±1.2nm(R=2、H=100、X=1)であった。R=8、H=300、およびX=1では、HPLC洗浄の後、平均粒径の20.3±1.5nmが観察された。個々のナノコンポジットとともに、2個、3個、または4個の粒子で形成されたナノスケールのクラスターもHRTEMで観察された。幸いにも、連続的な粒子間結合を有する凝集物は見つからなかった。これは、HPLC法により、ナノコンポジットの凝集が、ナノコンポジットが間隙チャネルを通過することができる粒径まで破壊されることを示唆している。
【0069】
新たに切断されたマイカ基板上にスピンコーティングされたAg/SiO2エタノール
/水懸濁液(R=2、H=100、X=1)のAFM画像を、図19に示す。回転速度1500rpmで、ナノコンポジット粒子をマイカの表面上に薄く分散させた。さらなる分析では、平均粒子粒径が約60nmとなり、それによってHRTEMでの主要ユニットとして粒子粒径が30nmであった場合、AANが約2となることが示された。さらに、HPLCで処理されたAg/SiO2懸濁液は、1カ月の期間にわたる沈降試験によって実
験的に確認されたように極めて安定していることが判明した。
【0070】
Ag/SiO2エタノール/水懸濁液の分散状態を、動的光散乱法によって決定した。
Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の流体力学的粒径分布を図20に示す(R=8、H
=300、X=1)。極端に細い単一モード(monomode)分布を示すAg/SiO2ナノコ
ンポジット粒子では、集団平均粒径が18.6±1.5nmであった。光散乱の結果は、TEMによって測定された粒径(20.3±1.5nm)と非常によく一致した。HPLC洗浄されたサンプルのAANは、約1.0であった。光散乱はコロイド懸濁液の分散の全体の状態をより正確に明らかにするために、このことはHPLC洗浄後にエタノール/水の共溶媒中でAg/SiO2ナノコンポジット粒子が充分に分散していることを意味し
ている。動的光散乱データとTEMの粒径分析との一致は流体力学的効果を要約し、それによって調製されたままの懸濁液中でイオン類が所定量で存在していることを示している。
・APSグラフト化
シランカップリング剤は、シリカベースのナノ粒子表面を改質するのにしばしば使用される。表Iは、多くの用途に利用されるいくつかのシランカップリング剤を要約したものである。APSは、最も一般に使用されるシランカップリング剤のうちの1つである。APSによる表面グラフト化の有効性を図21に示す。APSがコーティングされていないAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、そのpHがエタノール/水溶液中でpH2より
高い場合、弱い負電荷を示した。そのpHが7.0より高い場合、ゼータ電位曲線は水平となり、横ばいに達し、ピーク値は約−30mVとなった。しかし、APSでグラフト化されたAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、比較的高い表面電荷を得て、負から正に
転化した。pH7.0より低い酸性領域では、APSでコーティングされたAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、30mVもの高いゼータ電位を示し、目立ったAPS濃度効
果は観察されなかった。対照的に、SiO2マイクロスフェアは、APS濃度が1.5重
量%に達したとき、ゼータ電位の顕著な増加を示した(図22)。これは最も可能性が高いのは、SiO2マイクロスフェアの大きな表面積および多孔性によるものである。グラ
フトメカニズムの詳細な考察は、他に記載されている(E.P.Plueddemann
、「Silane coupling agent」、29〜48頁、Plenum Press、ニューヨーク州、1982年;T.Ungら、Langmuir、14:3740〜3748頁、1998年;C.H.Chiangら、J. Colloid Interface Sci.74(2):396〜403頁、1980年;C.H.Chiangら、J. Colloid Interface Sci.86(1):26〜34頁、1982年)。主な反応は、以下の通りに記載されている。
【0071】
3Si−OH(表面)+NH2C3H6Si(OC2H5)3 → (Si−O)3−SiC3H6NH2+3C2H5OH
この反応は、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の表面上のシラン基がシロキサン基と
置換され、エタノールがSi−O結合形成の結果として放出されたことを示唆している。アミン基の端部が溶媒の方を向き、pH<7.0ではプロトン化するこの構成がもっぱら望ましい。その結果、正の帯電は、主としてAPSからの正に帯電したアミン基に起因して、酸性pHの範囲内で容易になされる。ゼータ電位測定から、処理されたサンプルの表面電荷がpH<7.0で一様に正であることが示されている。pHがpH6よりさらに低くなると、ゼータ電位は急速に増加して約+30mVで横ばいの値となり、これは提案した理論的な解釈を支持している。
【0072】
APSを用いる、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子とSiO2マイクロスフェア両方の表面グラフトの重要性を図15に示し、そこではHPLC洗浄後の非処理SiO2ナノ
コンポジットのAFM画像が示されている。HPLCカラムは、APSでAg/SiO2
表面をグラフト化する前では、洗浄工程で容易にブロックされる。このことは、図23に示される表面の形態を考慮に入れると説明がつく。シリカマイクロスフェアの三次元の姿は、初めは平滑だった表面が、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子との相互作用により
著しく損なわれたことを示した。HPLC洗浄前のシリカマイクロスフェアの形態は、SEM(図16)およびAFM観察によれば、表面粗さが極めて低い均一な球状であった。しかし、この表面はHPLC洗浄中に損なわれ、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の
凝集物が、大きなシリカマイクロスフェアの表面上に付着した。シリカマイクロスフェアに付着した凝集物の1個は、粒径が約0.5μmであり、したがって、一次粒子のサイズが約30nmである場合、それは少なくとも150個の個々のナノコンポジット粒子から構成されていることになる。SiO2マイクロスフェアの表面上へのAg/SiO2ナノコンポジット粒子の凝集についての正確なメカニズムは充分に理解されてはいないが、APSでグラフト化したAg/SiO2ナノコンポジット粒子と負に帯電した球状SiO2マイクロスフェアとの間のクーロン(columbic)相互作用は、凝集の発生に重要な役割を果たしている。HPLC洗浄は弱酸性pH域(pH5.0〜7.0)で行われるため、ナノコンポジットは、APSコーティングのために正の電荷を得て、一方、SiO2マ
イクロスフェアは、このpH域で負に帯電される。2種の反対電荷に帯電したナノコンポジットが互いに接近した場合、凝集の傾向は、静電的引力により増強される。おそらく、これがHPLCカラムがブロックされ、その結果最初の洗浄および採取の試みが失敗する機構である。したがって表面電位を制御し、それによってナノコンポジットの凝集がなくなるように、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子に施したのと同様に、同じ表面グラフ
ト化をSiO2マイクロスフェアに施した。そうしたプロトコルが、サイズ排除クロマト
グラフィーに基づいた、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子のHPLC洗浄において重
要なステップであることが解明された。このプロトコルに正確に従った場合、エタノール/水溶媒でのAg/SiO2ナノコンポジット粒子の安定した懸濁液が、型どおり合成さ
れた。ナノコンポジット粒子を合成する従来の方法(上記のW.Tanらによって使用された方法など)では、重要な特徴、すなわち、シランカップリング剤、エタノール/水溶液でのナノコンポジットの希釈、ならびにサイズ排除HPLCまたは沈降およびろ過システムは、使用されていない。
・洗浄溶媒
移動相と固定相両方にとり分散剤によるナノコンポジット粒子の表面改質とともに、適切な抽出溶媒の選択もまた、HPLC洗浄プロトコルの操作の成功にとって重要である。洗浄溶液の選択が凝集を防ぐのに重要であることが分かった。例えば、DI水、純粋な無水エタノール、イソプロパノール、およびアセトン溶媒を使用した場合、Ag/SiO2
ナノコンポジット粒子は、HPLCカラム上部でクラスター化し続ける。好ましいエタノール/水の共溶媒(エタノール:水=7:3(容量))をポンプで送り入れた場合、このクラスターは、ナノ粒子が充分に分散されるにつれて、下方へ移動しはじめ、最終的にカラムから溶出された。
・懸濁液のpH
充分に分散したナノコンポジット粒子分散物を作製する場合、懸濁液のpHに対する制御は、重要なパラメーターである。図24Aは、動的光散乱による粒径分布を示す。図24Bに示すように、pHが2.8では、Ag/SiO2ナノコンポジット懸濁液は、TE
Mおよび動的光散乱分析に基づくと相当な凝集を含み、AANは、双峰性の粒径分布のために約15となった。実測pHが9.7であるアルカリ性域では、SiO2シェルの分解
により、Ag金属コアの接触ならびに小粒子粒径の形成がもたらされる。ほとんど分散していない懸濁液は、AANがナノコンポジット構造への損傷を示す0.02となった。pHを約pH6.0に調整した場合、AANが約1となり充分に分散したAg/SiO2ナ
ノコンポジット懸濁液が得られた。このサンプルの動的光散乱データは、粒径分布が単一モードであることを示唆し、これはTEM分析と一致している。対応するAANは約1であり、それによってpHが約6.0で懸濁液が充分に分散されることが示された。
・カラムの長さ
HPLC洗浄の効率に影響を及ぼす別のパラメーターは、HPLCカラムのサイズである。大きな寸法のカラムには、より多い洗浄溶媒および時間が必要とされる。異なる特定のサイズ寸法を有する3タイプのHPLCカラムを検討した。カラムHR16(16×500mm)およびHR10/10(10×100mm)は、Ag/SiO2ナノコンポジ
ット粒子の溶出には長すぎたが、短いカラムのHR5/5(5×50mm)は、Ag/SiO2ナノコンポジット分散に適していることが証明された。粒径がR0のナノコンポジットにとり到達し得るポア(pore)容積(V)は、以下の式のように表される。
【0073】
V=π・(Rp−R0)2×(L−R0)
式中、Rpは、孔(pore)の半径であり、Lは、カラムの長さである。Ag/SiO2ナノコンポジット粒子では、条件のL>>R0は満たされ、全容積VはLに比例する。したが
って、より長いカラムの長さLは、洗浄時間を明らかに増加させる。
3.結論
シランカップリング剤のAPSは、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子と効果的に反
応し、それによってAg/SiO2ナノコンポジット粒子の表面電荷が増大され、Ag/
SiO2ナノコンポジット粒子が、HPLC操作中に、正に帯電した球状SiO2固定相マトリクスを通じて分散することが保証される。この原理に基づいたサイズ排除クロマトグラフィーにより、シリカマイクロスフェア上のAg/SiO2ナノコンポジット粒子の凝
集および堆積が除去された。したがって、このHPLC法によって生成された溶出分散物は、優れた均一性および安定性を示し、ゼータ電位は最高+30mVであった。得られたエタノール/水懸濁液は、巨視的デバイスにとり、コロイド化学に基づいた「ボトムアップ型」ナノスケール集合体の理想的な前駆体である。移動相と固定相の両方の表面改質、溶媒、懸濁液のpH、カラムの寸法といった処理パラメーターは、HPLC分散プロトコルに極めて重要なものである。分離プロセスにおいては、この手法は、界面活性剤なしでの分散が主要な問題である多くの類似したナノ微粒子系に拡張される可能性がある。
【実施例2】
【0074】
ローダミンB/SiO2ナノコンポジット粒子、AAN=1
油中水型合成法を使用してナノコンポジット粒子合成を行うのに、ポリオキシエチレン
(5)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサン、テトラエトキシシラン(TEOS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、水酸化アンモニウムおよび酢酸を、Aldrich Chemical Co.(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入した。マイクロエマルジョンの合成プロセスで利用される各化学薬品を、入手したまま使用した。使用するストック水溶液を、脱イオン(DI)水(比導電率=0.4×10-7S/m)で調製した。フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン123、ローダミンB、インドシアニングリーン(Aldrich Chemical Co.、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)、ローダミンWT(Presto Dye Chem Co.、フィラデルフィア、ペンシルベニア州)、カスケードブルーアセチルアジド(Molecular Probes,Inc.、ユージーン、オレゴン州)、Cy3アミダイト、およびCy5アミダイト(Amersham
Biosciences、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を含めた様々な有機蛍光物質染料を、ナノコンポジット粒子にカプセル封入することができる。
【0075】
Igepal(登録商標)CO−520(4mL)、シクロヘキサン(10mL)および10-2MのローダミンB(0.325mL)溶液を、密閉したファルコンカップ(falcon cup)内で室温で一緒にして、逆ミセルマイクロエマルジョンを形成した。次いで、溶液を適度な速度で30分間攪拌した。次に、NH4OH(0.05mL)を添加し、懸濁液
を15分間攪拌した。続いて、TEOS(0.08mL)を添加した。ミセルを約24時間熟成させ、続いてシランカップリング剤APS(0.013mL)を添加した。マイクロエマルジョンを、0.02Mの酢酸/エタノール溶液(50mL)とともに急速に攪拌しながら破壊した。
【0076】
ナノコンポジットローダミンB/SiO2懸濁液の分散状態を、平均凝集数(AAN)
手法を用いて分析した。サンプルのパラメーターは、R=4、H=100、X=1であった。QELS同定から、95%信頼区間で、粒子の粒径D50=32.0nm、および標準偏差=6.9nmがもたらされた。TEMによる同定では、粒子粒径として25nm±5nmが得られた(30個の粒子をカウントした)。ローダミンB/SiO2ナノ懸濁液の
AANは、1であった。したがってこの懸濁液は、充分に分散されたものとして分類することができる。図27A〜Bは、有機コア材料がローダミンBである有機コア/シリカシェル型ナノコンポジット粒子のTEM画像を2種の異なる倍率で示している。
【実施例3】
【0077】
リン酸カルシウムナノコンポジット粒子の合成
リン酸カルシウムシェルナノコンポジット粒子の合成には、2種の別個であるマイクロエマルジョンの調製が含まれる。非イオン性界面活性剤、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520、Aldrich Chemical Co.)、シクロヘキサン(Aldrich Chemical Co.)、および蒸留水が、マイクロエマルジョンの基剤として働く。この界面活性剤は、さらに精製することなく使用した。生じるナノ粒子の粒径を、水と界面活性剤の比(R=[水]/[界面活性剤])を変えることによって制御した。脱水塩化カルシウム(CaCl2、9
9+%、Aldrich Chemical Co.)およびリン酸水素ナトリウム(Na2HPO4、99+%、Aldrich Chemical Co.)は、リン酸カルシウムシェルの前駆体として働く。メタケイ酸ナトリウム(SiO2、44〜47%)、テ
トラエトキシシラン(TEOS、99%)、および水酸化アンモニウム(NH4OH)(
29%)(Fisher Scientificからすべて入手)を、入手したままで使用した。
【0078】
Igepal(2mL)、シクロヘキサン(5mL)とともに治療薬/薬剤/有機蛍光物質材料を含有する脱イオン水、あるいはメタケイ酸ナトリウム含有脱イオン水からなる
合計量が10mLの2種のマイクロエマルジョンそれぞれを、周囲温度で調製した。これらのマイクロエマルジョンを急速に混合した。溶液が外見的に均質になった後、前駆体材料を添加し、約15分間貯蔵した。次いで、マイクロエマルジョンを、分液漏斗を使用してゆっくり連続的に一緒にした。シランカップリング剤またはクエン酸塩の溶液形の分散剤を懸濁液に添加して、粒子表面の電荷を改変した。マイクロエマルジョンを、酸/アルコール溶液を使用して破壊し、HPLCを使用して洗浄し分散させた。リン酸カルシウムシリケートナノコンポジット粒子は、実施例2および3を組み合わせて合成することができる。初めに、実施例2に記載したように、コア−SiO2シェル型ナノコンポジット粒
子を、シェルが厚さ1〜3nmとなるような方法で合成することができる。次いで、これらの粒子を、実施例3で示した前駆体マイクロエマルジョンのうちの一方に組み込み、引き続き、それに従って処理した。
【実施例4】
【0079】
ローダミンWT/Ca10(PO4)6(OH)2ナノコンポジット粒子、AAN=1
実施例2に記載したように、すべての材料を入手し、調製した。
各々がIgepal(登録商標)CO−520、シクロヘキサン、および前駆体水溶液を含む2種の別個のマイクロエマルジョンを、密閉したファルコンカップでこれらの成分を周囲温度で急速に混合することによって調製した。マイクロエマルジョン#1は、Igepal(登録商標)CO−520(4mL)、シクロヘキサン(10mL)、10-2Mの塩化カルシウム溶液(1.2mL)、および10-3MのローダミンWT溶液(1mL)からなっていた。マイクロエマルジョン#2は、Igepal(登録商標)CO−520(4mL)、シクロヘキサン(10mL)、6×10-3Mのリン酸二水素ナトリウム溶液(1.2mL)、および脱イオン水(1mL)中のメタケイ酸ナトリウム(500ppm)からなっていた。どちらのマイクロエマルジョンも5分間混合させた。次いで、マイクロエマルジョン#2を、使い捨てのプラスチックピペットを使用してマイクロエマルジョン#1にゆっくりと滴下した。ミセルを2分間熟成させた。シランカップリング剤のトリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン(DETA)を懸濁液に添加して、ナノ粒子表面の電荷を改変した。次いで、マイクロエマルジョンを、0.02Mの酢酸/エタノール溶液(50mL)とともに急速に攪拌しながら破壊した。
【0080】
ナノコンポジットローダミンWT/Ca10(PO4)6(OH)2懸濁液の分散状態を、
平均凝集数(AAN)手法を使用して分析した。サンプルのパラメーターは、R=11、H=100、X=1であった。QELS同定から、粒子粒径D50=67.0nmがもたらされた。TEMによる同定では、粒子粒径として60nm±10nmが得られた。ローダミンWT/Ca10(PO4)6(OH)2ナノ懸濁液のAANは、1であった。したがって
、この懸濁液は、充分に分散されたものとして分類することができる。
【0081】
上述の実施形態の広範な本発明の概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更を施すことができるであろうことは、当業者なら理解されよう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の思想および範囲内にある改変形態を包含するものであることを理解されたい。
【0082】
本出願は、2004年6月1日出願の米国仮特許出願第60/575,887号および2004年6月14日出願の米国仮特許出願第60/579,214号の優先権を主張し、参照によりその両方を本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の逆ミセルの合成、洗浄および回収法を示す概略図である。
【図2】図2は、ナノコンポジット粒子による有効薬剤の細胞内送達の機序を示す概略図である。
【図3】図3は、フルオレセイン/SiO2ナノ粒子の蛍光発光スキャンを示す図である。
【図4】図4は、1MのローダミンWT/SiO2ナノコンポジット粒子および10-5MのローダミンWTストック溶液について蛍光発光のタイムスキャンを示す図である。
【図5】図5は、ナノコンポジット粒子の光減衰(photodecay)実験の結果を示す図である。
【図6】平滑筋細胞およびラット星状神経節の位相差(phase contrast)および蛍光画像を示す図である。図6A〜Bは、それぞれフルオレセイン/SiO2ナノ粒子を取り込んだ培養血管A7r5平滑筋細胞の位相差および蛍光画像である。図6C〜Dはナノ粒子を心臓に注射した5日後に急性摘出したラットの星状神経節ニューロンそれぞれの位相画像および蛍光画像である。
【図7】ラット星状神経節の位相差および蛍光画像を示す図である。図7A〜Bはin vitroで0.002%の10-2MローダミンB/SiO2ナノ粒子にさらした(15分間)星状神経節(SG)ニューロンそれぞれの位相差および蛍光画像である。図7C〜Dはin vitroで0.002%の10-2Mフルオレセイン/SiO2ナノ粒子にさらした(15分間)SGニューロンそれぞれの位相画像および蛍光画像を示す。図7Eは注射7日後のSGニューロンにおけるフルオレセイン/SiO2含有ニューロンの蛍光画像である。
【図8】図8は、有機蛍光物質および治療用薬剤を含有する機能化されたナノコンポジット粒子を示す概略図である。
【図9】図9は、セラミド/Ca10(PO4)6(OH)2ナノ粒子がヒトの冠状動脈平滑筋細胞の増殖阻害を誘発することを示す棒グラフである。
【図10】図10は、Ag/SiO2ナノコンポジット懸濁液を逆ミセル合成および様々な方法を用いる洗浄から得ることを示す流れ図である。
【図11】図11は、サイズ排除クロマトグラフィーに基づき、Ag/SiO2ナノコンポジットのエタノール/水懸濁液を洗浄かつ分散させるHPLCシステム装置を示す概略構成図であり、UV−可視検出波長はAg/SiO2ナノコンポジット用に405nmに設定され、HPLCカラムのサイズはHR5/5(5×50mm)である。
【図12】ナノ粒子を洗浄し分散させるのに使用されるHPLCシステムを示す概略図であり、図12AはHPLCシステムであり、図12BはAg/SiO2ナノ粒子のTEMであり、図12Cは固定相中の球状シリカビーズのSEMである。
【図13】遠心分離法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図13Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図13Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図14】ソックスレー抽出法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図14Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図14Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図15】沈降法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図15Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図15Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図16】ろ過法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図16Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図16Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図17】従来の方法で洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)の形態を示す図であり、図17Aはコアシェル構造のTEM画像を示し、図17BはTEM画像から得られた粒径分布を示す。
【図18】HPLCシステムの固定相として使用されるSiO2マイクロスフェアのSEM画像を示す図である。SiO2マイクロスフェアをAPSで処理し(SiO2(90g)を、APS(0.336mL)、氷酢酸(1.5mL)、DI水(7.5mL)、およびエタノール(150mL)と混合し、一晩攪拌し、70℃で乾燥)、表面積は425m2/gであり、平均孔サイズは6.5nmである。
【図19】HPLCシステムで洗浄された、Ag/SiO2エタノール/水懸濁液(R=2、H=100、X=1)のHPLCスペクトルを示す図である。スペクトルは、UV−可視検出器によって405nm(Ag量子ドットの表面プラズモン共鳴)で得られる。洗浄溶媒は、エタノール/水溶液(容量比7:3)であり、流速は、2mL/分である。スペクトルは、PEAKFIT(登録商標)によってデコンボリュート(deconvolute)されたものであり、ピークの中央位置は、95.1、112.2、および150.7(s)である。
【図20】HPLCで洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジットエタノール/水(7:3容量比)懸濁液の形態を示す図であり、図20Aはナノコンポジットの2種の懸濁液AおよびBであり、図20Bはデジタル画像:懸濁液A;R=2、H=100、X=1、D50=30nm、SD=1.2nm、懸濁液B;R=8、H=100、X=1、D50=20.3nm、SD=1.5nm(95%信頼区間)を示し、TEM画像は、粒径、コアシェル構造、および懸濁液AおよびBの分散状態を示す。
【図21】HPLC洗浄で得られたAg/SiO2ナノコンポジット(R=2、H=100、X=1)懸濁液のAFM画像を示す図である。画像は、TAPPING MODE(商標)によって得られたものである。サンプルは、Ag/SiO2エタノール/水懸濁液の液滴を新たに切断したマイカ基板上に配置し、1500rpmで30秒間、スピンコートして作製されたものである。3D画像は、凝集粒径が約60nmであることを示している。
【図22】動的光散乱(DLS)およびTEM分析によって測定された、Ag/SiO2ナノコンポジット(R=8、H=300、X=1)の粒径分布を示す図である。DLSでは、D50=18.6nm、SD=1.5nmであり、TEM分析からの粒径は、20.3±1.5nmである(30個の粒子をカウントした)。DLSとTEM分析との間は、ほとんど合致しており、AANはほぼ1に等しく、充分に分散された懸濁液であることを示していることに留意されたい。
【図23】Ag/SiO2ナノコンポジット(R=2、H=100、X=1)エタノール/水懸濁液のゼータ電位を、pHおよびAPS濃度の関数として示す図である。APSを添加した後に、電荷が負から正に転換したことに注意されたい。懸濁液のpHは、標準バッファー水溶液に対して較正したSentron pHメーターを使用して測定した。誤差のバーは、95%信頼区間である。
【図24】SiO2マイクロスフェアのゼータ電位を、pHおよびAPS濃度の関数として示す図である。SiO2の平均粒径は20μmであり、表面積は425m2/gであり、平均孔サイズは6.5nmである。SiO2マイクロスフェアは、エタノール/水(7:3容量比)溶液に分散させたものである。懸濁液のpHは、標準バッファー水溶液に対して較正したSentron pHメーターを使用して測定した。誤差バーは95%信頼区間である。
【図25】SiO2マイクロスフェアの表面上に形成されたAg/SiO2ナノコンポジット(R=2、H=100、X=1)凝集体のAFM画像を示す図である。APSの表面コーティングのみを、Ag/SiO2ナノコンポジットに施し(平均粒径30nm)、SiO2マイクロスフェアを別の処理なしに使用した(平均粒径20μm)。ブロックされたHPLCカラムからのSiO2マイクロスフェアを、新たに切断したマイカ基板上に置いた。
【図26】Ag/SiO2ナノコンポジットエタノール/水懸濁液(R=8、H=100、X=1)について分散状態へのpHの影響を示す図であり、図26Aは、動的光散乱による粒径分布を示し、図26Bは、レース状炭素グリッドに懸濁液の液滴を置き、25℃で乾燥させることによって得られたTEM画像である。SiO2シェルはpH9.7で溶解し、それによって双峰分布を生じることに留意されたい。
【図27】有機コア材料として、(A)低および(B)高密度にローダミンBを含有する有機コア/シリカシェルナノコンポジット粒子の粒径および形態を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM)の画像を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノコンポジット粒子に関する。より詳細には本発明は、広範な用途に使用することができる、様々な粒径の安定で充分に分散した非凝集性コア/シェル型ナノコンポジット粒子を合成する方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
化学技術分野における最も重要な発展のうちの1つは、ナノ構造化の発展である。ナノ構造材料は、巨視的スケールではユニークな特徴的性質を示すナノ粒径ユニットの集合体(assembly)である。こうしたユニットのサイズ範囲は、コロイドの範囲内にあり、個々の特性は、原子/分子の特性とも、またバルクの特性のどちらとも異なる。したがって、ナノ構造集合体の特性は、構成要素のコロイド的特性、主に粒子の粒径、表面特性、粒子間の相互作用、および粒子間の距離を変えることによって調整され得る。
【0003】
生物医学的用途でのナノ粒子の使用は、今日、多数の研究グループの主要焦点となっている。ナノ粒子は、診断用バイオイメージング、薬物送達、遺伝子治療などの生物医学的用途で役立ついくつかの特性を有する。ナノ粒子はまた、培養中の細胞、組織、または完全な生物を標識するバイオイメージング薬剤として使用することができる。
【0004】
バイオイメージング用途で使用される現在のナノ粒子技術としては、磁性ナノ粒子、強磁性流体、および量子ドット(QD)が挙げられる。最近、コロイド状蛍光性半導体ナノ結晶の、ZnSシェル−CdSeコアナノ粒子など、生物標識に使用されるQD(Q−dots(登録商標)として市販)部類の開発に多くの進歩が見られる(R.P.Haugland、Molecular Probe、6:320〜328頁、1998年)。研究者らは、バイオ結合スキームを開発し、こうしたプローブをバイオアッセイに適用する過程にあり、ナノ結晶は、既存の有機染料と比べた場合、生物学的標識として特に有益なものになり得る。量子ドットは、一連のバイオイメージング用途で広く試験されている。
【0005】
半導体ナノ結晶は、半導体ナノ結晶の溶解性、物理化学的安定性、量子効率など、その使用に関わるいくつかの問題を有する。さらに、QD放射は、著しく断続的であり、凝集によりバイオイメージングツールとしての有効性が制限される恐れがある。QDに関係するその他の問題としては、QDの物理的特性の解釈を著しく困難にする表面の酸化が、QDシェルの分解、有害金属の身体内放出、および不充分な結晶性を引き起こす恐れがあるため、表面の電子欠損および毒性効果が挙げられる。さらに、バイオ標識として蛍光性ナノ粒子を日常的に適用することは、特に、生物医学的診断におけるカドミウムといった、著しく有毒な化合物の使用に関する一般的な環境問題のために議論の的になっている。さらに、ナノメートル粒径の構造を設計し、それらの形状を制御して、新規な電子的、光学的、磁気的、輸送性、光化学的、電気化学的、および機械的な諸特性を有する新しい材料を生みだす方法は、めったに見つからず、潜在的に報われ得る挑戦が行われている。
【0006】
こうしたナノ粒子はまた、薬物送達に関する機構として機能することもでき、それによって、多数の非水溶性で不安定な薬剤を利用することが可能になる。さらに、こうしたナノ粒子は、吸収性シェル(resorbable shell)技術に基づく薬物ターゲティングおよび持続的放出の用途に使用することができる。さらに、これらのナノコンポジットは、遺伝子治療において遺伝的物質の送達に使用することができる。現在のナノ粒子薬剤および遺伝子の「担体」としては、高分子ミセル、リポソーム、低密度リポタンパク質、高分子ナノスフェア、デンドリマー、および親水性の薬剤-ポリマー複合体が挙げられる。
【0007】
過去10年にわたり、エレクトロニクスおよびフォトニクスにおいてナノスケール複合粒子のユニークな特性および潜在的な用途のために、ナノスケール複合粒子の製造の分野で広範な研究が行われてきた。二酸化ケイ素(SiO2)シェルと金属コア構造のナノコ
ンポジット粒子が、Mulvaneyら(Langmuir、12:4329〜4335頁、1996年)およびAdairら(Materials Sci.& Eng.R.23:139〜242頁、1998年)によって最初に合成され、報告された。コアシェル構造を有する、SiO2でコーティングされたナノコンポジット粒子のほとんどは、使
用された合成法に基づき2種のカテゴリーに分類される。Mulvaneyらによって開発された手法は、シリカシェルの形成前にシランカップリング剤の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)による金属クラスター表面の改質を必要とした。APSは、ガラス質との親和性に欠けた(vitreophobic)金属クラスターコアとSiO2との間の接着促進剤として使用される。しかし、懸濁状にあるナノコンポジットの分散
状態は、MulvaneyらまたはAdairらによっても調査されなかった。Adairらは、水相を有するシクロヘキサン/Igepal/水の三成分系におけるテトラエトキシシラン(tetrethoxysilane;TEOS)の単純な加水分解および縮合によって、金属
およびCdSのクラスターをSiO2でコーティングすることに成功した。この系により
、油中に水の小滴が閉じ込められるので、コアとシェル両方の厚みが調整可能であるとともに極めて均一なシリカ−シェルコーティングが可能になる。
【0008】
治療薬送達の用途におけるナノ粒子の使用の主たる制限としては、ナノ粒子懸濁液でのコロイド安定性の欠如、凝集、粒径および形状の多分散性、膨潤、および漏出が挙げられる。その他の問題としては、合成および加工技術の難しさ、担体粒子内部での不適切な充填、および様々な医療薬剤に適用できないことが挙げられる。洗浄されていないナノ懸濁液中に存在する残留前駆体材料はまた、生理的な系への標的送達と毒性作用の両方の有害な影響を及ぼす恐れがある。典型的な化学合成法において、ナノ粒子の分散は、基本的には新たに調製したナノ粒子を洗浄することから始まる。しかしながらナノ粒子を洗浄し分散させることは、隣接するナノ粒子間の強いファンデルワールス力のために難題である。このため、ナノ粒子懸濁液を、通常は界面活性剤の表面コーティングによって安定化させ、それによってこの相互作用の力を、界面活性剤分子により創出される高斥力ポテンシャルと有効に釣り合わせる。しかし、ナノ粒子をベースとした適用およびデバイスに関してより良好な性能を獲得するのに、界面活性剤の分散を最小限にすることが必要である。これは、界面活性剤添加物が後続の加工処理ステップに移され、ナノ粒子から構築されたアレイの均質性に悪い影響を与える恐れがあるからである。さらに、保護用界面活性剤を遠心分離などの従来の洗浄技術で除去した場合、ナノ粒子は凝集する傾向がある。凝集体の存在はまた、粒子の有効歩留りを損なう恐れがある。ナノメーター粒径の一次粒子を所望する場合、一般に大規模または粒径がより大きな凝集体の存在は避けなければならない。例えば、W.Tanらの2003年の米国特許第6,548,264号に記載され、以下により詳しく論じるような濾過法など、ナノコンポジット粒子を製造する従来技術の通例的方法は、凝集のサイズが約250nmの、不可逆に凝集されるナノコンポジット粒子をもたらす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ナノ医療における現在の制約を考えると、制御された徐放性、1種(または複数)の治療薬の高充填能力、製造の容易さ、安定性、およびスケールアップ能力を有する広く適用可能なナノ粒子が必要とされる。活性のある医薬剤を送達する、安定した非凝集性コロイドの製剤は、様々なバイオイメージングおよび治療の薬剤に、普遍的な、制御された、標的化された、全身性送達を付与することによって医学分野を変える可能性を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、結合するアルキルアミンもしくはアルキルカルボン酸シランカップリング剤などの(それだけに限らないが)シランカップリング剤を有する、安定した非凝集性の充分に分散された活性医薬剤のコア/シェル型ナノコンポジット粒子の製造方法を提供する。グラフト機構の詳細な考察は、他に記載されている(E.P.Plueddemann、「Silane coupling agent」、29〜48頁、Plenum Press、ニューヨーク州、1982年;T.Ungら、Langmuir、14:3740〜3748頁、1998年;C.H.Chiangら、J.Colloid Interface Sci.、74(2):396〜403頁、1980年;C.H.Chiangら、J.Colloid Interface Sci.86(1):26〜34頁、1982年)。こうしたナノコンポジットの分散は、連続した洗浄および分散のステップを含む他の技術の代わりに、好ましくは、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、ナノコンポジット粒子を同時に洗浄分散させることによって実現される。
【0011】
本発明はまた、生理的な条件下、すなわち等張性の環境下においてin vivoで使用される、安定的な分散ナノコンポジット粒子を、それらの分散状態を維持する、カルボジイミド介在型ポリエチレングリコール(PEG)カップリング剤からシランカップリング剤などの表面改質剤によって製造する方法を提供する。その他の表面改質方法として、デンドリマー、両親媒性剤、および従来技術で知られたクエン酸塩などの帯電吸着物が挙げられる。さらに、本発明では抗体などのバインダーが結合され、それによってナノコンポジット粒子が細胞内薬物送達に対する特定部位を標的とすることが可能になる。
【0012】
これらのナノコンポジット粒子は、シリカ、チタニア、リン酸カルシウム、またはカルシウムホスホシリケートのマトリックス内部にドープ(dope)され、有機蛍光物質や治療薬剤など、様々な医学的有効物質を含むことができる。合成技術を改変して、蛍光物質と治療用薬剤の組合せを含有するナノ粒子を製造することもできる。ナノコンポジット粒子コロイドの所期の生物医学的用途は、コアとシェルのマトリックス材料の選択を必要とする。
【0013】
安定な充分に分散された非凝集性の有効薬剤ナノ粒子は、顔料、蛍光標識、インク、徐放性製剤、バイオイメージング、薬物送達、遺伝子治療、それらの組合せなど、これらだけに限らない、様々な用途に使用され得る。例えば範囲内では、本発明のナノ粒子は、癌、感染症、糖尿病、嚢胞性線維症およびその他の疾患および障害に対する医療診断および医学的治療用のカルシウム沈着輸送体として使用することができる。
【0014】
蛍光性ナノコンポジット粒子は、イメージングおよび色素用途について特に魅力的なものとするいくつかの特性、例えば生体適合性の長所とともに、発光ピークの正確な調整が可能であること、従来の有機蛍光物質に比べて延長された蛍光寿命、ごくわずかな光退色、自己クエンチングなどを有する。さらにこのナノ粒子の蛍光性発光は、断続的ではない。ナノ粒子内では、色素分子と周囲環境との間の直接接触が避けられ、その結果、おそらくはほとんどのエルギーが吸収されるために蛍光物質の光劣化がなくなり、したがって励起光子の損失がなくなる。その結果、図3〜5に示すように、これらのナノコンポジット粒子は、従来の有機蛍光物質または量子ドットに比べて延長された蛍光寿命を示す。
【0015】
図6〜9に示すようにこれらのナノコンポジット粒子は、制御された孔を有する金属酸化物シェル内および/または可溶性外殻シェル/コーティング内に治療薬をカプセル封入することに基づく薬物送達系であって、分解すると罹患範囲の近傍に直に治療薬を放出する薬物送達系として使用され得る。シェルマトリクス材料によってもたらされる治療薬の保護作用により、生理的溶液において高い水不溶性または不安定性を示す薬剤の送達が可能になる。さらに、こうしたシェルマトリクス材料の分解速度を設計して、標的部位に長期間にわたって治療薬の徐放性を提供することができる。
【0016】
ナノコンポジット懸濁液はまた、セラミド、AZT、およびドブタミンを含む、しかしそれらだけに限らない、薬剤を送達するのに使用され得る。インスリンを、リン酸カルシウムやカルシウムホスホシリケート(calcium phospho-silicate)などの可溶性シェル材料中にカプセル封入することもできる。表面を改質し、それによってナノコンポジット粒子が、胃腸管、血液脳関門、細胞膜などの生理的な膜を通過することを可能にすることができる。ターゲティングされ、時間制御された放出は、コアシェル型ナノ粒子からインスリンなどの治療薬を送達するのに使用され得る。
【0017】
こうしたナノコンポジットはまた、治療用DNAを細胞に送達する遺伝子治療において使用し得る。このナノコンポジット粒子は、カプセル封入によって遺伝物質の安定性を向上させ、標的細胞中への取り込みを改善させることができる。さらに、このナノ粒子は、約200nm未満の微小粒径を維持しながら転写活性型の遺伝子治療薬を送達することができる。
【0018】
微小な粒子サイズは、強化されたナノ粒子の界面化学および分散とともに、ナノコンポジット粒子の有効性に寄与する。微小粒径の実現により、動物モデルまたは人体の細網内皮系(RES)による捕捉を回避することが可能になり、それによってナノ粒子が腸壁や血液脳関門などの膜を通過して生体系で機能することができるようになる。多数の生体バリアは、微小なナノコンポジット粒子によって通過され得て、それによって高濃度の治療薬を標的部位に送達することが可能になる。さらに、こうした分散ナノコンポジット粒子を容易に機能化させて、治療薬を人体中の標的細胞または組織に直接送達させることができる。凝集は、上記の生物医学的用途および非生物医学的用途のすべてに支障を来たす。
【0019】
ナノコンポジット粒子の合成は、水、界面活性剤、およびシクロヘキサンなどの溶媒を含む逆ミセル系を使用して実現される。得られるナノコンポジットの粒径は、水−界面活性剤の比に依存し、水−界面活性剤の比がより高いとより大きなナノコンポジットが生成される。したがって本発明により、生体細胞膜を通過するのに充分に小さい、粒径が約1.0〜100nm、好ましい粒径は約1〜20nmであるナノコンポジット粒子の合成が実現される。しかしながら、以下に定義するように、上記の合成によって得られる一次粒径は、懸濁状態にある粒子の実際の粒径ではない。従来、逆ミセル中で調製されたナノコンポジット粒子は凝集していた。合成後、ナノ粒子の洗浄および回収作業をしている間に凝集が起こる。したがって、一次ナノ粒子の合成だけでは、充分に分散された懸濁液を提供するには不充分である。
【0020】
表1は、SiO2ベースのナノコンポジット粒子の表面改質に使用されるシランカップ
リング剤のリストを提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明は、非凝集性で高分散な安定したコア/シェル型ナノコンポジット粒子の合成方法を初めて提供する。好ましくは、こうしたナノコンポジット粒子は、その上に結合されるアルキルアミンやアルキルカルボン酸のシランカップリング剤などの分散剤を有し、あるいはこの分散剤を、特にカルシウム・ベースのナノ粒子の合成においてクエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩、およびホスホン酸塩からなる群より選択することができる。こうしたナノコンポジット粒子の分散は、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムを使用して、ナノコンポジット粒子を同時に洗浄し分散させることによって実現される。
【0022】
また、本発明により、カルボジイミド介在型ポリエチレングリコール(PEG)カップ
リング剤などの表面改質剤によって、生理的条件下、すなわち等張性環境下においてin
vivoで使用される、非凝集性で充分に分散した安定ナノコンポジット粒子懸濁液を調製することが実現される。
【0023】
さらに、本発明によりin vivoでシェルを吸収性または生分解性にする、有機および/または無機コア上に、リン酸カルシウムシェルやカルシウムホスホシリケートシェルなどのカルシウムベースのシェルを形成することが実現される。根底となるシェルは、多孔性でも高密度(dense)でもよい。
【0024】
さらに、本発明により抗体、アミンを含めたその他の官能基、カルボン酸塩、合成ポリマーなど、広範な機能性を備えたバインダーが結合され、それによってナノ粒子が細胞内薬物送達のための特定部位といった送達適用において使えることが可能になる。さらに、有機基、金属、酵素、巨大分子、プラスミドなど(これらだけに限らない)、その他の部分を、ナノコンポジット粒子表面に添加することができる。例えば、ナノコンポジット粒子は、癌細胞に結合させる葉酸といったターゲット材料で囲まれた徐放性シェル中にカプセル封入された化学療法剤を含むことができる。このターゲット材料を、細胞および/または細胞の核に入り込むことができ、次いでその中で放出されるタンパク質、酵素、DNA、RNA、およびその他の化合物を送達するのに使用することもできる。
【0025】
充分に分散したナノコンポジット粒子の調製は、界面活性剤、疎水性溶媒、水性ベースのコア前駆体、例えば水性ベースの有効薬剤の前駆体、蛍光性分子、顔料、金属、その他の所望のコア材料などを含む逆ミセル系、ならびに好ましくはサイズ排除HPLCシステムを用いる洗浄および分散の方法を使用する本発明の方法に従って実現される(図1、11、および12)。得られる一次のナノコンポジット粒子の粒径は、水−界面活性剤の比に依存し、水−界面活性剤の比がより高いとより大きなナノコンポジットが生成される。具体的には、一次のナノコンポジット粒子の粒径は、水と界面活性剤のモル比、水とシェル前駆体材料のモル比、ならびにシリカシェル粒子では塩基とシェル前駆体材料のモル比を含めた処理パラメーターの操作によって改変され得る。したがって、本発明により、粒径が約1.0〜100nm、好ましくは約1〜20nm、最も好ましくは約10〜20nmの間にあるナノコンポジットの合成が実現される。例えば、R=[水]/[界面活性剤]=2、H=[水]/[TEOS]=100、およびX=[NH4OH]/[TEOS]
=1を、シクロヘキサン/水/Igepal(登録商標)CO−520系に適用した場合、直径が約10nmの球状SiO2ナノコンポジット粒子が合成され得る。粒径が約20
nm以下のナノコンポジット粒子は、血液脳関門を含めた生体細胞膜を通過するのに充分小さいと考えられる。
【0026】
本明細書では、「ナノ粒径」という用語は、粒子が、約100nmより小さい平均寸法を有し、通常バルク相とは関連しない特性、例えば量子光学効果を示すことを含意する細分化の特別な状態を指す。
【0027】
本明細書では、「ナノコンポジット粒子」、「ナノコンポジット」、および「ナノ粒子」という用語は、交換可能である。
本明細書では、「凝集(agglomeration)」という用語は、懸濁液中で物理的(ファンデルワールス、疎水性)または静電気的な力による凝集物(粒状サブユニットからなる結合体)の形成を指す。得られた構造は、「凝集体」と呼ばれる。
【0028】
本明細書では、「非凝集」という用語は、「凝集」の反意語であり、懸濁液中において凝集物が分散した状態を指す。
本明細書では、「凝集物」という用語は、粒状サブユニットからなる凝集体を指す。
【0029】
本明細書では、「一次粒子」というフレーズは、粒子系における最小の同定可能な細分を指す。一次粒子はまた、凝集物のサブユニットになることもできる。
本発明の方法に従って使用することができる界面活性剤の例としては、限定はしないが、ポリ(オキシエチレン(oxyetheylene))ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)が挙げられ、すなわち、疎水性溶媒と、エタノールが存在するような、低分子量疎水性溶媒を含むこともできる水溶液とを組み合わせた、油中水型の逆ミセルを形成する界面活性剤が、例として考えられる。
【0030】
シェル前駆体の例としては、SiO2、TiO2、ZnO、Fe2O3、ZrO2、NiO
、およびGeO2、Sn、Pb、Ag、およびAu、テトラエトキシシラン(TEOS)
、チタン(IV)イソプロポキシド、CaPOx、CaCO3、または一般式Cax(PO4)y(OH)z(SiO2)aのカルシウムホスホシリケート(式中、x、y、z、およびaは、ゼロからより大きな数値の範囲で変えることができる)が挙げられるが、それだけに限らない。
【0031】
さらに、コア材料は、ドブタミン、AZT、抗生物質およびセラミドを含むがそれらだけに限らない薬剤を含有することができ、したがって、伝染性微生物、癌、またはその他の外因性異物に対して使用され得る。さらにこうしたコア材料は、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなど、それらだけに限らない材料に基づく脱水性ヒドロゲルから構成され得る。さらに、このコア材料は、リン酸カルシウムコーティングを有するシリカで構成してもよい。リン酸カルシウムシェル/シリカコア材料は、生理的pH値(pH6.5〜7.4)でクエン酸塩などの薬剤を使用して充分に分散させることができ、したがって、こうしたナノ粒子は、懸濁状の充分に分散したナノ粒子が歯の象牙質に送達されたときに象牙細管中にカルシウムおよびリン酸塩を放出することにより、歯の知覚過敏に対する治療薬として使用することが可能になる。
【0032】
さらに、こうしたナノコンポジット粒子のシェル前駆体材料は、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、およびメタクリル酸−2−ヒドロキシエチルからなる群より選択される細胞毒性剤を含有することができ、したがって、伝染性微生物、癌、またはその他の外因性異物の標的として使用され得る。さらに、このシェル前駆体材料は、クエン酸塩で安定化させたリン酸カルシウムを含むシリカシェルコーティングで構成され得る。したがって、こうしたナノ粒子は、ナノ粒子が歯の象牙質に送達されたときに象牙細管中にカルシウムを放出することにより、歯の知覚過敏に対する治療薬として使用することが可能になる。
【0033】
水性コア前駆体の例としては、Au、Ag、Co、Ni、Cu、Ptなどの金属;CdSなどの半導体;有機顔料;有機染料;フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン123、ローダミンWT、ローダミンBおよびローダミン123などのローダミンB誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、ルシフェリンなどの有機蛍光物質;および/または上記の2つ前のパラグラフに記載のものを含めた治療薬などの有効医薬剤も挙げられるが、それだけに限らない。
【0034】
治療薬の例としては、治療用DNAまたはRNA(あるいは任意の核酸)を細胞に送達させる遺伝子治療で使用することができる遺伝子治療薬剤が挙げられるが、それだけに限らない。本発明のナノコンポジット粒子は、カプセル封入によって遺伝物質の安定性を向上させ、標的細胞内への取り込みを改善させる(図2)。さらに、これらのナノコンポジット粒子は、100nm未満の微小粒径を維持しながら転写活性型の遺伝子治療薬を送達することができる。
【0035】
フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体の例としては、BDCECF、BCECF
−AM、Calcien−AM、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン二酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシエオシン、5,(6)−カルボキシエオシン二酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセイン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセインオクタデシルエステル、5,(6)−カルボキシナフトフルオレセイン二酢酸塩、エオシン−5−イソチオシアネート、エオシン−5−イソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸 N−スクシンイミジルエステル、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセインイソチオシアネート異性体1、フルオレセインイソチオシアネート異性体2、フルオレセインイソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセインオクタデシルエステル、フルオレセインナトリウム塩、ナフトフルオレセイン、ナフトフルオレセイン二酢酸塩、またはN−オクタデシル−N’−(5−フルオレセイニル)チオ尿素(F18)が挙げられるが、それだけに限らない。
【0036】
ローダミンおよびローダミン誘導体の例としては、5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン、5−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、6−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシ−X−ローダミン、ジヒドロローダミン123、ジヒドロローダミン6G、リサミンローダミン、ローダミン110塩化物、ローダミン123、ローダミンBヒドラジド、ローダミンB、およびローダミンWTが挙げられるが、それだけに限らない。
【0037】
有機顔料および染料の例としては、7,12−ビス(1−ヒドロキシエチル)−3,8,13,17−テトラメチル−21H,23H−ポルフィン−2,18−ジプロパン酸などのヘマトポルフィリン染料;およびインドシアニングリーンなどのシアニン染料およびその誘導体;インドインブルー;R−フィコエリスリン(PE)、PE−Cy5;PE−Cy5.5;PE−テキサスレッド;PE−Cy7;Cy3 NHSエステル;Cy3マレイミドおよびヒドラジド;Cy3B NHSエステル;Cy3.5 NHSエステル;Cy3アミダイト;Cy5 NHSエステル;Cy−5;Cy5アミダイト;Cy5.5;Cy−5.5 NHSエステル;Cy5.5アネキシンV;Cy7;Cy7 NHSエステル;Cy7Q NHSエステル;アロフィコシアニン(APC);APC−Cy7;APC Cy5.5;ヨウ化プロピジウム(PI);クリスタルバイオレットラクトン;パテントブルーVF;ブリリアントブルーG;またはカスケードブルーアセチルアジドが挙げられるが、それだけに限らない。
【0038】
本発明の方法に従ってナノコンポジット粒子に添加することができるシランカップリング剤の例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)(pH域2.0〜9.0;SiO2の表面を改質するのに広く使用される)、3−アミノプロピルシルセス
キオキサン(pH域2.0〜6.5;シリカ粒子とAgナノ粒子の間の接着促進剤)、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPS)(pH域<9.0;SiO2ナノ
粒子を改変するのに使用される)、トリメトキシシリルプロピル−ジエチレントリアミン(DETA)(最適pH6.8;SiO2ナノ粒子の表面コーティングに使用される)、
または3−トリメトキシシリプロピルコハク酸無水物(trimethoxysilypropylsuccinic anhydride)(pH域>8.0;シリカ表面上に負の電荷を付与するのに使用される)が挙げられるが、それだけに限らない。
【0039】
さらに、アミド結合型カルボキシル基(pH域<7.0;末端開口カーボンナノチュー
ブを機能化するのに使用される)など、アルキルカルボン酸シランカップリング剤を、ナノコンポジット粒子に添加することができる。
【0040】
さらに、動物またはヒトにおいてin vivoでこうしたナノコンポジット粒子を使用するために、カルボジイミド介在型ポリエチレングリコール(PEG)カップリング剤などの表面改質剤を、シランカップリング剤に添加することができる。デンドリマー表面改質剤もまた、生理的環境でのこれらのナノコンポジット粒子の使用を促進するのに使用することができる。
【0041】
さらに、抗体などのバインダーを結合させ、それによってこれらのナノコンポジット粒子は、細胞内で薬剤および核酸の送達のために特定部位を標的とすることが可能になる。
ナノ粒子分散の成功度合い、つまり非凝集は、特定のナノコンポジット懸濁液の平均凝集数(AAN)をコンピュータで計算することによって推定され得る(V.A.HackleyおよびChiara F.Ferraris、「The use of nomenclature in dispersion science and technology」、Special Publ.960−3、米国立標準技術研究所(National Institute of Standards and Technology)、米国商務省、7〜8頁、2001年8月、文書監督指導、米国政府印刷局、私書箱SSOPワシントン(DC)20402−0001)。このAANは、凝集体内に含まれる一次粒子の平均数として定義される。これは、準電気光散乱(QELS)によって決定された粒子体積中央値と、透過型電子顕微鏡(TEM)キャラクタリゼーションによって決定された微視的粒子サイズの体積との比として計算され得る。具体的には、AANは、以下の式のように、例えば、動的光散乱、沈降法、または電界検知技術によって決定される粒子の粒径中央値と、BETガス吸着法から得られる平均等価球体積(VBET)と
の比から計算される。
【0042】
【数1】
【0043】
式中、V50は、粒径中央値から計算された等価球体積であり、D50は、μmであり、SSAは、単位がm2/gの比表面積であり、ρは、単位がg/cm3の粒子密度である。我々の経験に基づくと、AANが10未満では、充分に分散した懸濁液であり、AANが≧10〜30では、適度に分散した懸濁液であり、AANが30より大きいと、分散が不充分な懸濁液である。時には、ナノコンポジット粒子の各々を囲む電気二重層のQELS測定のために、QELSおよびTEMによってもたらされる粒子の粒径に差異が観測される恐れがあるが、本発明者らは、ナノコンポジットコロイド懸濁液のQELSキャラクタリゼーション用の標準プロトコルを開発して、二重層感度に起因する流体力学的半径の影響を最小限にした。図20〜22に示すように、本発明の技術により、AAN<10のナノコンポジット粒子懸濁液の確実な調製が可能になる。
【0044】
本発明の一実施形態では、バイオテクノロジー用途において従来の有機染料が遭遇した様々な機能的制限を回避することができるローダミンB/SiO2およびフルオレセイン
/SiO2のナノコンポジットを、本発明の方法に従って合成する。例えば、それらは、
量子サイズ効果に起因する強いサイズ依存性発光スペクトルを示す(それぞれ図3および4)。さらにこれらのナノ粒子は、吸収の閾値の上ではほぼ連続的な励起スペクトルを有する。その結果、こうしたナノコンポジット粒子を、生体標識技術において格別の発光プローブとして使用するこができる。実際、ローダミンB/SiO2およびフルオレセイン
/SiO2のナノ粒子は、多くの分野において既存の有機発色団よりも優れている。例え
ば、このローダミンB/SiO2およびフルオレセイン/SiO2のナノ粒子は、高い量子収率および光劣化に対する高い耐性を有する(図5)。さらに、これらのナノコンポジット粒子からの光ルミネセンスが、有機染料が遭遇した濃度と同等な濃度で検知され、したがって、従来の蛍光法の使用が可能になり、さらに生体適合性の利益も追加される。したがって、本発明のナノコンポジット粒子は、現在の医療技術の不充分な点を軽減することができる。例えば、本発明の蛍光性ナノ粒子の一適用は、平滑筋細胞(図6A、B)またはニューロン(図6C、D、および7A〜E)など、生体細胞の内部を照らすことである。生きた細胞の有機染料を使用した染色は、広く受け入れられた慣行となっているが、こうした細胞は、大量の染料分子で飽和される必要があり、そうでないとその染色は、結局、光物理的劣化により退色してしまう。ローダミン123/SiO2およびフルオレセイ
ン/SiO2ナノ粒子によりこの問題は解決される。と言うのは、これらが、シリカシェ
ルによって付与される蛍光性コアの保護によって光分解に対して高い耐性を有するからである。理論に束縛されるものではないが、無機シェルは、ナノ粒子蛍光の維持に関与し、それは最高で7カ月およびそれ以降も持続すると考えられる。さらに、本発明の方法に従って合成されるナノコンポジット粒子は、図3に示すように、光退色の抑制および/または極度な低減を示し、ならびに約6カ月を超す寿命を有する。
【0045】
さらに、こうしたナノコンポジット粒子は、化学的アッセイの「曳光弾(tracer
bullet)」として使用され得る。例えば、こうしたナノコンポジット粒子は、リン酸カルシウムを用いてカプセル封入される、乾燥させたヒドロゲルを含有することができ、それは身体全体にわたって循環し、水で膨潤することができる。粒径が約20nmのナノコンポジット粒子は、腎臓のボーマン嚢の糸球体細胞といった細胞膜を通過することができる。したがって、それらは、尿中に排泄され得て、その後、その内容物を分析することができる。
【0046】
本発明のナノコンポジット粒子は、通常血液循環による輸送ができない疎水性治療薬の全身送達に使用され得る(図8)。さらに、粒径が20nm以下のナノコンポジット粒子は血液脳関門を通過することができるため、中枢神経系への薬剤の直接送達が実現され得る。多孔質シリカコーティングまたはリン酸カルシウムで構成されたナノコンポジット粒子は、インスリンなどのホルモンをカプセル封入するのに使用され得る。こうしたナノコンポジット粒子は、小腸管腔の微絨毛を通過することはできるが、尿細管の糸球体細胞を通過しない。したがってこうしたナノコンポジット粒子は、インスリン放出についてフィードバック機序を提供することができ、そこでは、グルコース代謝の結果として産生されるピルビン酸塩が、ナノ粒子のリン酸カルシウムシェルに結合して、このナノ粒子からのインスリン放出を促進する。さらにかかるナノコンポジット粒子を、特異的に膵臓細胞に対して標的化することができ、その後膵臓内でインスリンを放出する。
【0047】
本発明ナノコンポジット粒子の別の用途として、バイオミネラリゼーション(biomineralization)を誘発する薬剤としての、リン酸カルシウム(CP)またはカルシウムホス
ホシリケート(CPS)でコーティングされたシリカ粒子の使用が挙げられる。例えば、CPまたはCPSシェルシリカコア粒子の使用は、露出した象牙細管への取込み用に練り歯磨きで使用され得て、それによりバイオミネラリゼーションが誘発され、細管の閉鎖が促進され、したがって歯の過敏性が緩和される。
【0048】
吸収性シェル型ナノコンポジット粒子を適用するその他の例としては、特定の細胞または組織への全身性または標的送達のための、エイズ治療で使用されるドブタミン、3’−アジド−3’−デオキシチミジン(AZT);癌に対する化学療法剤、または冠状動脈の平滑筋細胞増殖阻害の化学療法剤として使用されるセラミドなどの薬剤の組込みが挙げられる(図9)。
【0049】
本発明蛍光性ナノ粒子のその他の適用としては、毛細管流を検査する蛍光標識、ニューロン細胞の結合性を規定すること、ギャップ結合による色素転位の研究、および汚水処理(septic disposal)系の追跡への使用、ならびにその他の水輸送の研究が挙げられるが、それだけに限らない。
【0050】
本発明の別の実施形態では、ナノコンポジット粒子を含有する逆ミセルマイクロエマルジョンを調製すること、この逆ミセルマイクロエマルジョンをシランカップリング剤で処理すること、約6〜8の所望のpHに維持されたマイクロエマルジョンに対し、酢酸/エタノールといった、酸/アルコール溶液を添加することによって、マイクロエマルジョンを破壊してナノコンポジット粒子の懸濁液を形成すること、およびこのナノコンポジット粒子の懸濁液を同時に洗浄し分散することからなる、油中水型合成プロトコルを使用する懸濁状ナノコンポジット粒子の調製方法が提供される。
【0051】
この逆ミセルは、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520として市販)などの両親媒性界面活性剤、シクロヘキサンなどの疎水性溶媒、および水ベースの溶液(所望により親水性の有機共溶媒が存在していても存在していなくてもよい)で構成される混合物を形成し、この混合物を安定的な均質な油中水型逆ミセルが生成されるのに充分な時間、25℃で攪拌することによって調製される。通常の攪拌時間は、5分〜24時間の範囲であり、好ましい時間は30分である。所望により、特にシリカおよびチタニアのシェル材料については、NH4OHまたは水酸化テトラ
エチルアンモニウムを含めた(それだけに限らないが)塩基を添加し、得られた懸濁液を2分〜24時間のさらなる時間、攪拌する。こうしたナノコンポジット材料に最適な熟成時間は、シェル材料に依存する。シリカおよびチタニアシェルのナノコンポジットでは、24時間が好ましく、リン酸カルシウム、カルシウムホスホシリケート、およびその他のカルシウムベースのものでは、ナノコンポジット粒子の分散方法は、不可逆的な凝集を防ぐために好ましい時間の2分後に開始されなければならない。次いで、APSなどの分散剤を懸濁液に添加して、ナノ粒子の表面電荷を改変させる。
【0052】
マイクロエマルジョンは、逆ミセルを破壊する溶液と一緒に急速に攪拌することによって破壊され、それによって適度に均質な溶液が形成される。好ましい破壊溶液は、酢酸およびエタノールから構成される。水性溶液は、本発明のシクロヘキサン/Igepal(登録商標)CO−520/水系からなるマイクロエマルジョンを効果的に破壊するのに使用することができないことが確認された。
【0053】
本発明の別の実施形態では、チタニアナノコンポジット粒子を合成するのに、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)などの界面活性剤、シクロヘキサンなどの疎水性溶媒、および水性の前駆体で構成される混合物を室温で形成すること、この混合物を好ましい時間である約30分間攪拌すること、塩基を添加して懸濁液を形成すること、この懸濁液を約15分間攪拌すること、ならびにシェル前駆体のチタン(IV)イソプロポキシド(TIPO)を添加することによって逆ミセルマイクロエマルジョンを調製することからなる方法が提供される。該ミセルの充分な熟成は、TIPOを添加した約24時間後に起こる。シランカップリング剤またはクエン酸溶液などの単純な吸着物を懸濁液に添加して、ナノ粒子の表面電荷を改変させた後、酢酸/エタノール溶液でマイクロエマルジョンを破壊する。
【0054】
本発明のさらに別の実施形態では、別個の2種のマイクロエマルジョンが、Igepal(登録商標)CO−520と、シクロヘキサンと、マイクロエマルジョンの基剤として働く前駆体を含有する水溶液とで調製され、有効薬剤コアおよびCa10(PO4)6(OH)2シェルで構成されるリン酸カルシウムナノコンポジット粒子を合成するための方法が
提供される。塩化カルシウム二水和物およびリン酸二水素ナトリウムは、リン酸カルシウ
ムシェルの前駆体として働く。メタケイ酸ナトリウムを添加して、選択した系における核形成を誘発させる。具体的には、特定量のIgepal(登録商標)CO−520、シクロヘキサン、および水性前駆体溶液を各々含む2種のマイクロエマルジョンを、周囲温度で急速に混合することによって調製する。このマイクロエマルジョンを約5分間混合させる。マイクロエマルジョン#2を、マイクロエマルジョン#1に滴下する。ミセルを約2分間熟成させる。シランカップリング剤またはクエン酸塩の溶液形の分散剤を懸濁液に添加して、ナノ粒子の表面電荷を改変させる。
【0055】
本発明の別の実施形態では、別個の2種のマイクロエマルジョンが、Igepal(登録商標)CO−520と、シクロヘキサンと、マイクロエマルジョンの基剤として働く前駆体を含有する水溶液とで調製される、有効薬剤コアおよびCa10(PO4)6(OH)2
シェルで構成されるカルシウムホスホシリケート(CPS)ナノコンポジット粒子を合成するための方法が提供される。塩化カルシウム二水和物およびリン酸二水素ナトリウムは、リン酸カルシウムシェルの前駆体として働く。メタケイ酸ナトリウムを添加して、選択した系における核形成を誘発させる。具体的には、特定量のIgepal(登録商標)CO−520、シクロヘキサン、および水性前駆体溶液を各々含む2種のマイクロエマルジョンを、周囲温度で急速に混合することによって調製する。このマイクロエマルジョンを約5分間混合させる。マイクロエマルジョン#2を、マイクロエマルジョン#1に滴下する。ミセルを約5分間熟成させ、その後、NH4OH、次いでTEOSを添加する。次い
で、シランカップリング剤を懸濁液に添加して、表面電荷を改変させる。マイクロエマルジョンを、0.02M酢酸/エタノール溶液50mLとともに急速に攪拌しながら破壊する。マイクロエマルジョンを、酢酸/エタノール溶液とともに急速に攪拌しながら破壊する。
【0056】
本発明の方法にはまた、粒径が約1μm〜約100μm、好ましくは約20μmの球状シリカビーズが充填された約5×50mmのHPLCカラムを有するサイズ排除HPLCシステムを使用することからなるナノコンポジット粒子の同時的な洗浄分散も含まれる。脱水したエタノールを、特定のナノ粒子系に対してpH調整し、それをHPLCにポンプ給送してカラム充填剤を湿らせた後、ナノ粒子懸濁液を導入する。次いで、このナノ粒子懸濁液を、シランカップリング剤で処理したマイクロスフェアから構成され得る固定相を介して、HPLCシステムに約1mL/分〜約100mL/分、好ましくは約1mL/分の流速でポンプで送り込む。HPLC充填カラムのアウトフローを検出器に連結して、UV吸光度または蛍光の変化を測定する。このカラムがナノ粒子で完全に満たされたとき、検出器は、監視し、識別する。次いで、これらの粒子を、水が最高で約250容量%、好ましくは約70容量%のエタノール/蒸留水の溶液を使用して溶出させ、再分散させる。
【0057】
洗浄には、ナノ粒子の分散を維持しながら残留前駆体材料および過剰な有効薬剤を除去することが含まれる。洗浄された粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)や準弾性光散乱(QELS)などの技術の妨げになる残留有機物が存在しないので、より容易にかつ正確に同定される。界面活性剤およびその他の有機物質は有害な毒性効果を有するので、生物学的用途のナノ粒子を洗浄することは、重要なステップである。分散計画(scheme)には、ナノ粒子懸濁液に対する保護/分散理論の適用が必要とされる。ナノコンポジット粒子の分散はさらに、サイズ排除高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用してこのナノコンポジット粒子を同時に洗浄し分散させることによって向上される。
【0058】
本発明で教示するサイズ排除HPLCシステムおよび方法により、沈降法、遠心分離法、ソックスレー抽出法といったその他の粒子回収技術よりも優れた、非凝集性の安定したナノコンポジット粒子懸濁液が生成される。HPLC洗浄手順は、複合液体(complex liquid) の分離に使用される分析技術の改変形態である。したがって、HPLC洗浄法は、
界面活性剤、残留前駆体材料、カプセルに封入されなかった有効薬剤の自動除去を可能に
する。廃棄物を含有する担体溶液からのナノ粒子の分離は、移動相と固定相の相互作用が異なるために実現される。
【0059】
HPLCの洗浄分散プロセスは、移動相および固定相の表面改質、懸濁液pH、溶出物溶液組成物、流速、およびカラム寸法を含めた可変的要因により影響を受ける。一般には、固体の充填が約10〜20重量%のナノコンポジット粒子懸濁液が、超音波法(Anton Paar、DMA35N、グラーツ、オーストリア)によって測定されるように、HPLC洗浄後に得られる。
【0060】
本発明を以下の実施例でより詳細に説明するが、その多くの改変形態および変更形態は当業者に明白であるので、実施例は例示のみを意図するものである。
【実施例1】
【0061】
4種の従来技術と比較した、HPLCを使用するAg/SiO2ナノコンポジット粒子の
合成および分散
1.材料および方法
・合成
Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の合成に使用する方法は、T.Liらによってす
でに記載されている(Langmuir、15[13]:4328〜4334頁、1999年)。使用するすべての化学薬品は、入手してそのまま使用した。非イオン性界面活性剤のポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(IgepalCO−520)、シクロヘキサン、硝酸銀、テトラエトキシシラン(TEOS)、シランカップリング剤の3−アミノプロピルトリエトキシシラン(APS)、ヒドラジン、およびNH4OH(28
〜30%)すべてを、Aldrich Chemicals Co.(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入した。無水エタノール(200プルーフ、Pharmca Products,Inc.、ブルックフィールド、コネチカット州)および氷酢酸(J.T.Baker Chemicals)をさらに精製することなく使用した。すべてのストック水溶液を、脱イオン水(比導電率=0.4×10-7S/m)で調製した。
【0062】
簡単に述べると、シクロヘキサン(10ml)とIgepalCO−520(4ml)とを混合し、続いてR比に従って激しく攪拌しながらある量の0.01MのAgNO3水
溶液を添加することによって逆ミセルを形成させた。該マイクロエマルジョン中に少量のヒドラジンを添加することによってAg+イオンを金属Agに還元した。H比に基づき適
正量のTEOSを添加して金属クラスターをコーティングし、NH4OH水溶液の一滴を
触媒として導入して、アルカリpH範囲でTEOSの加水分解を確実にした。マイクロエマルジョンを、攪拌下でSiO2コーティングを完成させるために24時間密閉し沈降さ
せた。次いでAg/SiO2ナノコンポジット粒子を含有する逆ミセルマイクロエマルジ
ョンを、APSのエタノール溶液で処理した。Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の表
面は、APSの表面グラフトのために約7.0より低いpHで正に帯電(約30mV)された。マイクロエマルジョンを、激しく攪拌してpH7.0未満を維持しながら0.02M酢酸/エタノールのストック溶液、50mlで破壊した。懸濁液を、HPLC洗浄技術を使用してエタノールでさらに処理した。また、他の4種の従来技術、すなわち遠心分離法、ソックスレー抽出法、沈降法およびろ過法を、ナノコンポジット粒子の分散に関するHPLC技術の有効性を比べるのに使用した。完全なプロセスを図10に示す。界面活性剤IgepalCO−520の残留濃度を、UV−可視スペクトルによって監視した。ランベルト−ベールの法則を使用して、280nmでの吸光度を測定することによって、IgepalCO−520の検量線を濃度の関数として作成した。
・HPLCによる洗浄
Ag/SiO2ナノコンポジット粒子を含有する逆ミセルマイクロエマルジョンを、初
めにAPSのエタノール溶液で処理した(APS15g(1重量%)を、無水エタノール15mL、氷酢酸0.15mLおよびDI水0.75μLと混合させる)。Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の表面は、APSの表面グラフトのために7.0より低いpHで
正に帯電(〜30mV)された。マイクロエマルジョンを、活発に攪拌してpH7.0未満のpHを維持しながら0.02Mの酢酸/エタノールのストック溶液50mlで破壊した。次いで懸濁液をHPLCシステムにポンプ給送した(Waters Delta Preparation 3000 HPLC system、ミルフォード、マサチューセッツ州)。空のHR5/5カラムを、Amersham Pharmacia Biotech(ピスカタウェイ、ニュージャージー州)から購入した。このカラムに、20μmのAPSで処理された球状シリカビーズ(Stellar Phases,Inc.、ペンシルベニア州)を流速2mL/分で充填した。カラムの末端を、Ag量子ドットコアの表面プラズモンピークの波長である405nmの波長にセットしたUV−可視スペクトル検出器に連結した。無水エタノールを洗浄溶媒としてHPLCシステムにポンプ給送し、ナノコンポジットをエタノールと水の溶液(容量比7:3)で回収した。フラクションコレクターを使用して、洗浄手順全体にわたりHPLCカラムからの溶出液を採取した。HPLCシステムの配置概略図を図11に示す。HPLCシステムの概略を図12Aに示し、それにはAg/SiO2ナノ粒子の透過型電子顕微鏡写真(TEM)(図12B)お
よび固定相中の球状シリカビーズの走査型電子顕微鏡写真(SEM)(図12C)が含まれている。
・同定
Ag/SiO2ナノコンポジット懸濁液のゼータ電位を、動的光散乱原理に基づきZe
ta PALS Analyzer(Brookhaven Instruments Co.、ニューヨーク州)によって測定した。pHを、0.1MのHNO2および0.1
MのKOH水溶液によって調整した。Ag/SiO2懸濁液の形態および分散性を、初め
にタッピングモード(tapping mode)を備えた原子間力顕微鏡(AFM)(MultiMode、Digital Instruments)で調べた。AFM実験用のサンプルを、新たに切断したマイカ基板上にAg/SiO2懸濁液の液滴を置き、その基板を150
0rpmで30秒間スピンコーティングすることによって作製した。画像解析を、高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM)(HF2000、Hitachi、日本;およびJEOL 2010F、東京、日本)で行った。少量の新たに調製した懸濁液を、銅グリッド
上に支持された炭素フィルム上に添加し、真空オーブン中で一晩乾燥させた。最先端技術のMalvern Nanosizer(Malvern Instruments、英国)を使用して、Ag/SiO2懸濁液の分散状態を決定した。入手したままのSiO2マイクロスフェアの形態を、走査型電子顕微鏡(SEM、Hitachi S−3000H、日本)によって得た。SiO2マイクロスフェアの表層構造を、洗浄と分散のサイクル
後にAFMによって調べた。pH測定はすべて、標準バッファー水溶液に対して較正されたSentron pHメーター(Argus IP 65 ISFET probe、Sentron,Inc.、ワシントン州)で行った。
2.結果および考察
・従来の4種の技術を使用したAg/SiO2ナノコンポジット粒子の分散および形態
(a)遠心分離法
遠心分離法で洗浄され再分散されたAg/SiO2ナノコンポジットの分散状態を、図
11A〜Bに示す。R=2、H=100、およびX=1のサンプルでは、TEMによる一次粒径は、30±1.2nmであった(図11A)。動的光散乱によって測定された集団粒径分布は、233nmであった(図11B)。Adairら(Advances in
Ceramics、111、142〜156頁、The American Ceramic Society、オハイオ州、1984年)によって開発された平均凝集数(AAN)概念を使用して、Ag/SiO2懸濁液のAANを、光散乱粒径(DLS)と微視
的粒径(TEM)との体積比を利用することによって計算した。遠心分離法のプロトコルでは、AANは、かなり凝集した懸濁液であることを示す468と推定された。これは、
TEM観察と一致していた。
(b)ソックスレー抽出法
ソックスレー抽出法は、洗浄溶媒の効率性が改善する、材料を連続方式で洗浄し抽出する経路を提供する。Ag/SiO2ナノコンポジットを、ソックスレー抽出器で洗浄し採
取した。洗浄溶媒をその沸点に加熱して溶媒貯留容器から蒸発させ、次いで調製したままのAg/SiO2ナノコンポジットを含む円筒ろ紙の下方まで濃縮させ、最後に貯留容器
中に流し戻した。洗浄サイクルは、約40分間継続する。図4A〜Bは、ソックスレー抽出器で洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジットのTEM画像および粒径分布を示す。
このAANは、約106であると決定され、これはTEM分析によって確認された(図12A)。Ag/SiO2ナノコンポジットの一部が10nm未満の粒径を示したが、これ
は洗浄中にSiO2シェルの分解によって引き起こされた可能性がある(図12B)。
(c)沈降法
Ag/SiO2ナノコンポジットを、APSコーティングの後に沈降法によって洗浄し
た。TEMからの粒径(図13A)と比べると、このAANは、921であることが推定された。このAANは遠心分離のものに比べて高かったが、分散は、ろ過を使用してナノコンポジット凝集物を除去することによってさらに改善される可能性がある。しかし、この洗浄手順は、プロトコルがほとんど機器の使用を必要としないが、通常時間のかかるものである。ナノコンポジット懸濁液は、光散乱分析に従って約25nmの主要モードおよび2μmの副次モードである双峰分布を示した(図13B)。
(d)ろ過法
ろ過洗浄法は、W.Tanら(米国特許第6,548,264号、2003年、名称「Coated Nanoparticles」)およびX.Zhaoら(Adv.Mater.、16:173〜176頁、2004年)によって報告されたプロトコルに従う。マイクロエマルジョンをアセトンで破壊し凝固させ、次いでナノコンポジットをろ過(2μmフィルタ、Millipore、ベッドフォード、マサチューセッツ州)し、アセトンおよびエタノールで3回洗浄した。Tanらのプロトコルは、ナノコンポジット懸濁液のpHレベルをpH7未満、好ましくは約pH6〜7になるように制御しないものである。これは凝集を防ぐのに必要である。したがって図14Aに示すように、Tanらのプロトコルは、ナノコンポジット粒子の不可逆的な凝集をもたらした。動的光散乱の測定で得られた粒子粒径分布は、双峰分布であり(図14B)、この凝集粒径は、約250nmであった。Ag/SiO2ナノコンポジットエタノール懸濁液のAANは、約318であっ
た。凝集は、ナノコンポジット同士を接触させて形成および成長させるアセトンによって誘発された凝固のために起きた可能性が最も高い。
【0063】
図15A〜Bは、従来の4種の洗浄プロトコルを使用した、油中水型逆ミセル合成に由来するAg/SiO2ナノコンポジットの形態を示す。シクロヘキサン/Igepal/
水の逆ミセル系におけるナノコンポジットの生成メカニズムおよび化学反応速度論は、F.J.Arriagadaらによってすでに詳細に説明されている(J.Colloid
Interface Sci.211:210〜220頁、1999年;Colloids and Surfaces A、154:311〜326頁、1999年;J.Colloid Interface Sci.218:68〜76頁、1999年)。合成されたままのナノコンポジット粒子を洗浄し回収するのに使用される従来法では、TEM画像に明らかに示されるように、粒子間のファンデルワールス力によって誘発される凝集を防ぐことができなかった(図15A)。
【0064】
逆ミセル合成で生成されたナノコンポジットの粒径および形は、水と界面活性剤のモル比Rおよび水とTEOSの比Hに依存する。Ag/SiO2ナノコンポジットの成長に関
する一般的な傾向として、銀コアの粒径はRに比例するが、シリカシェルの厚さはHが増加するにつれて減少する。R=2、H=100、およびX=1([NH4OH]対[TE
OS])では、逆ミセル合成によって得られたAg/SiO2ナノコンポジットの粒径は
、約30±1.2nmであり、銀の量子ドットは、約5±0.6nmである(95%信頼区間)。次いで、SiO2層の厚さは、約12nmであった(図15B)。
【0065】
ナノコンポジット合成中の凝集形成ステップは、同定されていない。しかし、逆ミセル中に捕捉されたナノコンポジット粒子は界面活性剤の保護層のために凝集しないことが知られており、したがって、界面活性剤層を洗い流すことにより凝集が誘発されると考えられる。したがって、非凝集性のナノコンポジット粒子を合成するためには、ナノコンポジットを同時に洗浄し分散させることが重要であり必要である。
・HPLCを使用したAg/SiO2ナノコンポジット粒子の分散および形態
サイズ排除HPLCシステムを使用して、ナノコンポジット粒子を同時に洗浄し分散させて、充分に分散したAg/SiO2懸濁液を生成させた。図16は、このHPLCシス
テムの固定相として使用されたシリカマイクロスフェアの形態を示す。このシリカ粒子は、均一な球体であり、平均粒子粒径が20μm、孔サイズが65Å(表面積425m2/
g)であった。シリカマイクロスフェアをHPLCカラムに乾燥充填したとき、ランダム充填密度57%を得た。これにより43%もの高いカラム孔隙率が生成され、HPLC作動中にナノコンポジットが移動する多数のマイクロチャネルを形成することができた。これらのシリカマイクロスフェアをAPSで処理して正の電荷を生じさせ、それによって、正に帯電したAg/SiO2ナノコンポジットが固定相シリカの表面に固着するのを防い
だ。これはHPLCプロトコルの重要なステップである。
【0066】
図17に示すスペクトルは、HPLCカラム内部でのAg/SiO2の洗浄プロセスを
反映している。抽出溶媒(エタノール/水(容量比7:3))を2mL/分でポンプ給送したとき、HPLCカラムからのAg/SiO2の溶出に約3分かかった。スペクトル強
度は、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子が検出器内の通過開始点で著しく増加し、安
定した懸濁液が、HPLC末端で連続的に採取された。HPLCスペクトルは、洗浄サイクルの範囲内に観察される副次的ショルダーを伴ない、高い強度を有する、比較的細いバンドのように現れ(HPLC検出器の設定のために電圧として記録されている)、これは充分に洗浄されたAg/SiO2懸濁液を採取する根拠となった。PEAKFIT(登録
商標)によるスペクトルのデコンボリューション(deconvolution)により、3個の個別の
ピーク(3個のピークの面積比は、1.1:1.8:1であり、ピークの中央位置は、95.1(s)、112.2(s)、および150.7(s)であった)が得られ、それらは個々のAg/SiO2ナノコンポジット粒子およびそれらの凝集物(ダブレット、トリ
プレットなど)に対するHPLCカラムの分解能と一致した。これは、Ag/SiO2ナ
ノコンポジット粒子の濃度がランベルト−ベールの法則にかなり基づいていることを示唆した。
【0067】
洗浄手順全体は、実際の溶出液採取時間の約3分を含めて約45分かかった。これは、遠心分離法や沈降法といった従来の洗浄手順よりはるかに効率的である。スペクトルのプロフィルから、大部分のAg/SiO2ナノコンポジット粒子が、一定速度でHPLCカ
ラムを通って移動し、それによってこのナノコンポジット粒子が間隙チャネル内を連続的に移動する結果、該ナノコンポジットがSiO2マイクロスフェア固定相の表面上で凝集
して堆積する機会を減らすことができたことを示唆した。しかし、より小さな粒子がより大きな粒子に比べて溶出には、より長い時間を要する傾向があるというクロマトグラフィーの原理から述べられるように、スペクトルの非対称なプロフィルは、少数のAg/SiO2ナノコンポジット粒子が粒子粒径変動のためにカラムを通過するのにより長い時間が
必要であったことを示していた。これは、少数のダブレット、トリプレット、さらにはより大きなクラスターが、洗浄工程で個々のAg/SiO2ナノコンポジット粒子とともに
形成されたことを示している。
【0068】
図18A〜Bは、HPLC方法で洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット粒子の形
態を示す。図18Aは、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の2種の懸濁液である。図
18Bは、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の3種のデジタル画像である。200〜
600nmのUV−可視分析によれば、このAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、機
器による検出限界内の界面活性剤を含んでいなかった。と言うのは、IgepalCO−520の特徴的な280nmの吸収帯が確認されなかったからである。ゼータ電位(+30mV)は、HPLC洗浄後でさえAPSでグラフト化された強固な表面を強く示している。このAg/SiO2ナノコンポジット粒子の平均粒径は、HPLC洗浄の前にTEM
によって決定されたのと同じままであり、Agコアは5±0.6nmであり、全体の粒径は約30±1.2nm(R=2、H=100、X=1)であった。R=8、H=300、およびX=1では、HPLC洗浄の後、平均粒径の20.3±1.5nmが観察された。個々のナノコンポジットとともに、2個、3個、または4個の粒子で形成されたナノスケールのクラスターもHRTEMで観察された。幸いにも、連続的な粒子間結合を有する凝集物は見つからなかった。これは、HPLC法により、ナノコンポジットの凝集が、ナノコンポジットが間隙チャネルを通過することができる粒径まで破壊されることを示唆している。
【0069】
新たに切断されたマイカ基板上にスピンコーティングされたAg/SiO2エタノール
/水懸濁液(R=2、H=100、X=1)のAFM画像を、図19に示す。回転速度1500rpmで、ナノコンポジット粒子をマイカの表面上に薄く分散させた。さらなる分析では、平均粒子粒径が約60nmとなり、それによってHRTEMでの主要ユニットとして粒子粒径が30nmであった場合、AANが約2となることが示された。さらに、HPLCで処理されたAg/SiO2懸濁液は、1カ月の期間にわたる沈降試験によって実
験的に確認されたように極めて安定していることが判明した。
【0070】
Ag/SiO2エタノール/水懸濁液の分散状態を、動的光散乱法によって決定した。
Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の流体力学的粒径分布を図20に示す(R=8、H
=300、X=1)。極端に細い単一モード(monomode)分布を示すAg/SiO2ナノコ
ンポジット粒子では、集団平均粒径が18.6±1.5nmであった。光散乱の結果は、TEMによって測定された粒径(20.3±1.5nm)と非常によく一致した。HPLC洗浄されたサンプルのAANは、約1.0であった。光散乱はコロイド懸濁液の分散の全体の状態をより正確に明らかにするために、このことはHPLC洗浄後にエタノール/水の共溶媒中でAg/SiO2ナノコンポジット粒子が充分に分散していることを意味し
ている。動的光散乱データとTEMの粒径分析との一致は流体力学的効果を要約し、それによって調製されたままの懸濁液中でイオン類が所定量で存在していることを示している。
・APSグラフト化
シランカップリング剤は、シリカベースのナノ粒子表面を改質するのにしばしば使用される。表Iは、多くの用途に利用されるいくつかのシランカップリング剤を要約したものである。APSは、最も一般に使用されるシランカップリング剤のうちの1つである。APSによる表面グラフト化の有効性を図21に示す。APSがコーティングされていないAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、そのpHがエタノール/水溶液中でpH2より
高い場合、弱い負電荷を示した。そのpHが7.0より高い場合、ゼータ電位曲線は水平となり、横ばいに達し、ピーク値は約−30mVとなった。しかし、APSでグラフト化されたAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、比較的高い表面電荷を得て、負から正に
転化した。pH7.0より低い酸性領域では、APSでコーティングされたAg/SiO2ナノコンポジット粒子は、30mVもの高いゼータ電位を示し、目立ったAPS濃度効
果は観察されなかった。対照的に、SiO2マイクロスフェアは、APS濃度が1.5重
量%に達したとき、ゼータ電位の顕著な増加を示した(図22)。これは最も可能性が高いのは、SiO2マイクロスフェアの大きな表面積および多孔性によるものである。グラ
フトメカニズムの詳細な考察は、他に記載されている(E.P.Plueddemann
、「Silane coupling agent」、29〜48頁、Plenum Press、ニューヨーク州、1982年;T.Ungら、Langmuir、14:3740〜3748頁、1998年;C.H.Chiangら、J. Colloid Interface Sci.74(2):396〜403頁、1980年;C.H.Chiangら、J. Colloid Interface Sci.86(1):26〜34頁、1982年)。主な反応は、以下の通りに記載されている。
【0071】
3Si−OH(表面)+NH2C3H6Si(OC2H5)3 → (Si−O)3−SiC3H6NH2+3C2H5OH
この反応は、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の表面上のシラン基がシロキサン基と
置換され、エタノールがSi−O結合形成の結果として放出されたことを示唆している。アミン基の端部が溶媒の方を向き、pH<7.0ではプロトン化するこの構成がもっぱら望ましい。その結果、正の帯電は、主としてAPSからの正に帯電したアミン基に起因して、酸性pHの範囲内で容易になされる。ゼータ電位測定から、処理されたサンプルの表面電荷がpH<7.0で一様に正であることが示されている。pHがpH6よりさらに低くなると、ゼータ電位は急速に増加して約+30mVで横ばいの値となり、これは提案した理論的な解釈を支持している。
【0072】
APSを用いる、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子とSiO2マイクロスフェア両方の表面グラフトの重要性を図15に示し、そこではHPLC洗浄後の非処理SiO2ナノ
コンポジットのAFM画像が示されている。HPLCカラムは、APSでAg/SiO2
表面をグラフト化する前では、洗浄工程で容易にブロックされる。このことは、図23に示される表面の形態を考慮に入れると説明がつく。シリカマイクロスフェアの三次元の姿は、初めは平滑だった表面が、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子との相互作用により
著しく損なわれたことを示した。HPLC洗浄前のシリカマイクロスフェアの形態は、SEM(図16)およびAFM観察によれば、表面粗さが極めて低い均一な球状であった。しかし、この表面はHPLC洗浄中に損なわれ、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子の
凝集物が、大きなシリカマイクロスフェアの表面上に付着した。シリカマイクロスフェアに付着した凝集物の1個は、粒径が約0.5μmであり、したがって、一次粒子のサイズが約30nmである場合、それは少なくとも150個の個々のナノコンポジット粒子から構成されていることになる。SiO2マイクロスフェアの表面上へのAg/SiO2ナノコンポジット粒子の凝集についての正確なメカニズムは充分に理解されてはいないが、APSでグラフト化したAg/SiO2ナノコンポジット粒子と負に帯電した球状SiO2マイクロスフェアとの間のクーロン(columbic)相互作用は、凝集の発生に重要な役割を果たしている。HPLC洗浄は弱酸性pH域(pH5.0〜7.0)で行われるため、ナノコンポジットは、APSコーティングのために正の電荷を得て、一方、SiO2マ
イクロスフェアは、このpH域で負に帯電される。2種の反対電荷に帯電したナノコンポジットが互いに接近した場合、凝集の傾向は、静電的引力により増強される。おそらく、これがHPLCカラムがブロックされ、その結果最初の洗浄および採取の試みが失敗する機構である。したがって表面電位を制御し、それによってナノコンポジットの凝集がなくなるように、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子に施したのと同様に、同じ表面グラフ
ト化をSiO2マイクロスフェアに施した。そうしたプロトコルが、サイズ排除クロマト
グラフィーに基づいた、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子のHPLC洗浄において重
要なステップであることが解明された。このプロトコルに正確に従った場合、エタノール/水溶媒でのAg/SiO2ナノコンポジット粒子の安定した懸濁液が、型どおり合成さ
れた。ナノコンポジット粒子を合成する従来の方法(上記のW.Tanらによって使用された方法など)では、重要な特徴、すなわち、シランカップリング剤、エタノール/水溶液でのナノコンポジットの希釈、ならびにサイズ排除HPLCまたは沈降およびろ過システムは、使用されていない。
・洗浄溶媒
移動相と固定相両方にとり分散剤によるナノコンポジット粒子の表面改質とともに、適切な抽出溶媒の選択もまた、HPLC洗浄プロトコルの操作の成功にとって重要である。洗浄溶液の選択が凝集を防ぐのに重要であることが分かった。例えば、DI水、純粋な無水エタノール、イソプロパノール、およびアセトン溶媒を使用した場合、Ag/SiO2
ナノコンポジット粒子は、HPLCカラム上部でクラスター化し続ける。好ましいエタノール/水の共溶媒(エタノール:水=7:3(容量))をポンプで送り入れた場合、このクラスターは、ナノ粒子が充分に分散されるにつれて、下方へ移動しはじめ、最終的にカラムから溶出された。
・懸濁液のpH
充分に分散したナノコンポジット粒子分散物を作製する場合、懸濁液のpHに対する制御は、重要なパラメーターである。図24Aは、動的光散乱による粒径分布を示す。図24Bに示すように、pHが2.8では、Ag/SiO2ナノコンポジット懸濁液は、TE
Mおよび動的光散乱分析に基づくと相当な凝集を含み、AANは、双峰性の粒径分布のために約15となった。実測pHが9.7であるアルカリ性域では、SiO2シェルの分解
により、Ag金属コアの接触ならびに小粒子粒径の形成がもたらされる。ほとんど分散していない懸濁液は、AANがナノコンポジット構造への損傷を示す0.02となった。pHを約pH6.0に調整した場合、AANが約1となり充分に分散したAg/SiO2ナ
ノコンポジット懸濁液が得られた。このサンプルの動的光散乱データは、粒径分布が単一モードであることを示唆し、これはTEM分析と一致している。対応するAANは約1であり、それによってpHが約6.0で懸濁液が充分に分散されることが示された。
・カラムの長さ
HPLC洗浄の効率に影響を及ぼす別のパラメーターは、HPLCカラムのサイズである。大きな寸法のカラムには、より多い洗浄溶媒および時間が必要とされる。異なる特定のサイズ寸法を有する3タイプのHPLCカラムを検討した。カラムHR16(16×500mm)およびHR10/10(10×100mm)は、Ag/SiO2ナノコンポジ
ット粒子の溶出には長すぎたが、短いカラムのHR5/5(5×50mm)は、Ag/SiO2ナノコンポジット分散に適していることが証明された。粒径がR0のナノコンポジットにとり到達し得るポア(pore)容積(V)は、以下の式のように表される。
【0073】
V=π・(Rp−R0)2×(L−R0)
式中、Rpは、孔(pore)の半径であり、Lは、カラムの長さである。Ag/SiO2ナノコンポジット粒子では、条件のL>>R0は満たされ、全容積VはLに比例する。したが
って、より長いカラムの長さLは、洗浄時間を明らかに増加させる。
3.結論
シランカップリング剤のAPSは、Ag/SiO2ナノコンポジット粒子と効果的に反
応し、それによってAg/SiO2ナノコンポジット粒子の表面電荷が増大され、Ag/
SiO2ナノコンポジット粒子が、HPLC操作中に、正に帯電した球状SiO2固定相マトリクスを通じて分散することが保証される。この原理に基づいたサイズ排除クロマトグラフィーにより、シリカマイクロスフェア上のAg/SiO2ナノコンポジット粒子の凝
集および堆積が除去された。したがって、このHPLC法によって生成された溶出分散物は、優れた均一性および安定性を示し、ゼータ電位は最高+30mVであった。得られたエタノール/水懸濁液は、巨視的デバイスにとり、コロイド化学に基づいた「ボトムアップ型」ナノスケール集合体の理想的な前駆体である。移動相と固定相の両方の表面改質、溶媒、懸濁液のpH、カラムの寸法といった処理パラメーターは、HPLC分散プロトコルに極めて重要なものである。分離プロセスにおいては、この手法は、界面活性剤なしでの分散が主要な問題である多くの類似したナノ微粒子系に拡張される可能性がある。
【実施例2】
【0074】
ローダミンB/SiO2ナノコンポジット粒子、AAN=1
油中水型合成法を使用してナノコンポジット粒子合成を行うのに、ポリオキシエチレン
(5)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサン、テトラエトキシシラン(TEOS)、3−アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、水酸化アンモニウムおよび酢酸を、Aldrich Chemical Co.(ミルウォーキー、ウィスコンシン州)から購入した。マイクロエマルジョンの合成プロセスで利用される各化学薬品を、入手したまま使用した。使用するストック水溶液を、脱イオン(DI)水(比導電率=0.4×10-7S/m)で調製した。フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン123、ローダミンB、インドシアニングリーン(Aldrich Chemical Co.、ミルウォーキー、ウィスコンシン州)、ローダミンWT(Presto Dye Chem Co.、フィラデルフィア、ペンシルベニア州)、カスケードブルーアセチルアジド(Molecular Probes,Inc.、ユージーン、オレゴン州)、Cy3アミダイト、およびCy5アミダイト(Amersham
Biosciences、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を含めた様々な有機蛍光物質染料を、ナノコンポジット粒子にカプセル封入することができる。
【0075】
Igepal(登録商標)CO−520(4mL)、シクロヘキサン(10mL)および10-2MのローダミンB(0.325mL)溶液を、密閉したファルコンカップ(falcon cup)内で室温で一緒にして、逆ミセルマイクロエマルジョンを形成した。次いで、溶液を適度な速度で30分間攪拌した。次に、NH4OH(0.05mL)を添加し、懸濁液
を15分間攪拌した。続いて、TEOS(0.08mL)を添加した。ミセルを約24時間熟成させ、続いてシランカップリング剤APS(0.013mL)を添加した。マイクロエマルジョンを、0.02Mの酢酸/エタノール溶液(50mL)とともに急速に攪拌しながら破壊した。
【0076】
ナノコンポジットローダミンB/SiO2懸濁液の分散状態を、平均凝集数(AAN)
手法を用いて分析した。サンプルのパラメーターは、R=4、H=100、X=1であった。QELS同定から、95%信頼区間で、粒子の粒径D50=32.0nm、および標準偏差=6.9nmがもたらされた。TEMによる同定では、粒子粒径として25nm±5nmが得られた(30個の粒子をカウントした)。ローダミンB/SiO2ナノ懸濁液の
AANは、1であった。したがってこの懸濁液は、充分に分散されたものとして分類することができる。図27A〜Bは、有機コア材料がローダミンBである有機コア/シリカシェル型ナノコンポジット粒子のTEM画像を2種の異なる倍率で示している。
【実施例3】
【0077】
リン酸カルシウムナノコンポジット粒子の合成
リン酸カルシウムシェルナノコンポジット粒子の合成には、2種の別個であるマイクロエマルジョンの調製が含まれる。非イオン性界面活性剤、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520、Aldrich Chemical Co.)、シクロヘキサン(Aldrich Chemical Co.)、および蒸留水が、マイクロエマルジョンの基剤として働く。この界面活性剤は、さらに精製することなく使用した。生じるナノ粒子の粒径を、水と界面活性剤の比(R=[水]/[界面活性剤])を変えることによって制御した。脱水塩化カルシウム(CaCl2、9
9+%、Aldrich Chemical Co.)およびリン酸水素ナトリウム(Na2HPO4、99+%、Aldrich Chemical Co.)は、リン酸カルシウムシェルの前駆体として働く。メタケイ酸ナトリウム(SiO2、44〜47%)、テ
トラエトキシシラン(TEOS、99%)、および水酸化アンモニウム(NH4OH)(
29%)(Fisher Scientificからすべて入手)を、入手したままで使用した。
【0078】
Igepal(2mL)、シクロヘキサン(5mL)とともに治療薬/薬剤/有機蛍光物質材料を含有する脱イオン水、あるいはメタケイ酸ナトリウム含有脱イオン水からなる
合計量が10mLの2種のマイクロエマルジョンそれぞれを、周囲温度で調製した。これらのマイクロエマルジョンを急速に混合した。溶液が外見的に均質になった後、前駆体材料を添加し、約15分間貯蔵した。次いで、マイクロエマルジョンを、分液漏斗を使用してゆっくり連続的に一緒にした。シランカップリング剤またはクエン酸塩の溶液形の分散剤を懸濁液に添加して、粒子表面の電荷を改変した。マイクロエマルジョンを、酸/アルコール溶液を使用して破壊し、HPLCを使用して洗浄し分散させた。リン酸カルシウムシリケートナノコンポジット粒子は、実施例2および3を組み合わせて合成することができる。初めに、実施例2に記載したように、コア−SiO2シェル型ナノコンポジット粒
子を、シェルが厚さ1〜3nmとなるような方法で合成することができる。次いで、これらの粒子を、実施例3で示した前駆体マイクロエマルジョンのうちの一方に組み込み、引き続き、それに従って処理した。
【実施例4】
【0079】
ローダミンWT/Ca10(PO4)6(OH)2ナノコンポジット粒子、AAN=1
実施例2に記載したように、すべての材料を入手し、調製した。
各々がIgepal(登録商標)CO−520、シクロヘキサン、および前駆体水溶液を含む2種の別個のマイクロエマルジョンを、密閉したファルコンカップでこれらの成分を周囲温度で急速に混合することによって調製した。マイクロエマルジョン#1は、Igepal(登録商標)CO−520(4mL)、シクロヘキサン(10mL)、10-2Mの塩化カルシウム溶液(1.2mL)、および10-3MのローダミンWT溶液(1mL)からなっていた。マイクロエマルジョン#2は、Igepal(登録商標)CO−520(4mL)、シクロヘキサン(10mL)、6×10-3Mのリン酸二水素ナトリウム溶液(1.2mL)、および脱イオン水(1mL)中のメタケイ酸ナトリウム(500ppm)からなっていた。どちらのマイクロエマルジョンも5分間混合させた。次いで、マイクロエマルジョン#2を、使い捨てのプラスチックピペットを使用してマイクロエマルジョン#1にゆっくりと滴下した。ミセルを2分間熟成させた。シランカップリング剤のトリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン(DETA)を懸濁液に添加して、ナノ粒子表面の電荷を改変した。次いで、マイクロエマルジョンを、0.02Mの酢酸/エタノール溶液(50mL)とともに急速に攪拌しながら破壊した。
【0080】
ナノコンポジットローダミンWT/Ca10(PO4)6(OH)2懸濁液の分散状態を、
平均凝集数(AAN)手法を使用して分析した。サンプルのパラメーターは、R=11、H=100、X=1であった。QELS同定から、粒子粒径D50=67.0nmがもたらされた。TEMによる同定では、粒子粒径として60nm±10nmが得られた。ローダミンWT/Ca10(PO4)6(OH)2ナノ懸濁液のAANは、1であった。したがって
、この懸濁液は、充分に分散されたものとして分類することができる。
【0081】
上述の実施形態の広範な本発明の概念から逸脱することなく、上述の実施形態に変更を施すことができるであろうことは、当業者なら理解されよう。したがって、本発明は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲で定義される本発明の思想および範囲内にある改変形態を包含するものであることを理解されたい。
【0082】
本出願は、2004年6月1日出願の米国仮特許出願第60/575,887号および2004年6月14日出願の米国仮特許出願第60/579,214号の優先権を主張し、参照によりその両方を本明細書に組み込む。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】図1は、本発明の逆ミセルの合成、洗浄および回収法を示す概略図である。
【図2】図2は、ナノコンポジット粒子による有効薬剤の細胞内送達の機序を示す概略図である。
【図3】図3は、フルオレセイン/SiO2ナノ粒子の蛍光発光スキャンを示す図である。
【図4】図4は、1MのローダミンWT/SiO2ナノコンポジット粒子および10-5MのローダミンWTストック溶液について蛍光発光のタイムスキャンを示す図である。
【図5】図5は、ナノコンポジット粒子の光減衰(photodecay)実験の結果を示す図である。
【図6】平滑筋細胞およびラット星状神経節の位相差(phase contrast)および蛍光画像を示す図である。図6A〜Bは、それぞれフルオレセイン/SiO2ナノ粒子を取り込んだ培養血管A7r5平滑筋細胞の位相差および蛍光画像である。図6C〜Dはナノ粒子を心臓に注射した5日後に急性摘出したラットの星状神経節ニューロンそれぞれの位相画像および蛍光画像である。
【図7】ラット星状神経節の位相差および蛍光画像を示す図である。図7A〜Bはin vitroで0.002%の10-2MローダミンB/SiO2ナノ粒子にさらした(15分間)星状神経節(SG)ニューロンそれぞれの位相差および蛍光画像である。図7C〜Dはin vitroで0.002%の10-2Mフルオレセイン/SiO2ナノ粒子にさらした(15分間)SGニューロンそれぞれの位相画像および蛍光画像を示す。図7Eは注射7日後のSGニューロンにおけるフルオレセイン/SiO2含有ニューロンの蛍光画像である。
【図8】図8は、有機蛍光物質および治療用薬剤を含有する機能化されたナノコンポジット粒子を示す概略図である。
【図9】図9は、セラミド/Ca10(PO4)6(OH)2ナノ粒子がヒトの冠状動脈平滑筋細胞の増殖阻害を誘発することを示す棒グラフである。
【図10】図10は、Ag/SiO2ナノコンポジット懸濁液を逆ミセル合成および様々な方法を用いる洗浄から得ることを示す流れ図である。
【図11】図11は、サイズ排除クロマトグラフィーに基づき、Ag/SiO2ナノコンポジットのエタノール/水懸濁液を洗浄かつ分散させるHPLCシステム装置を示す概略構成図であり、UV−可視検出波長はAg/SiO2ナノコンポジット用に405nmに設定され、HPLCカラムのサイズはHR5/5(5×50mm)である。
【図12】ナノ粒子を洗浄し分散させるのに使用されるHPLCシステムを示す概略図であり、図12AはHPLCシステムであり、図12BはAg/SiO2ナノ粒子のTEMであり、図12Cは固定相中の球状シリカビーズのSEMである。
【図13】遠心分離法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図13Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図13Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図14】ソックスレー抽出法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図14Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図14Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図15】沈降法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図15Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図15Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図16】ろ過法によって洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)を示す図であり、図16Aは一次粒子の粒径のTEM分析を示し、図16Bは動的光散乱による粒径分布を示す。
【図17】従来の方法で洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジット懸濁液(R=2、H=100、X=1)の形態を示す図であり、図17Aはコアシェル構造のTEM画像を示し、図17BはTEM画像から得られた粒径分布を示す。
【図18】HPLCシステムの固定相として使用されるSiO2マイクロスフェアのSEM画像を示す図である。SiO2マイクロスフェアをAPSで処理し(SiO2(90g)を、APS(0.336mL)、氷酢酸(1.5mL)、DI水(7.5mL)、およびエタノール(150mL)と混合し、一晩攪拌し、70℃で乾燥)、表面積は425m2/gであり、平均孔サイズは6.5nmである。
【図19】HPLCシステムで洗浄された、Ag/SiO2エタノール/水懸濁液(R=2、H=100、X=1)のHPLCスペクトルを示す図である。スペクトルは、UV−可視検出器によって405nm(Ag量子ドットの表面プラズモン共鳴)で得られる。洗浄溶媒は、エタノール/水溶液(容量比7:3)であり、流速は、2mL/分である。スペクトルは、PEAKFIT(登録商標)によってデコンボリュート(deconvolute)されたものであり、ピークの中央位置は、95.1、112.2、および150.7(s)である。
【図20】HPLCで洗浄されたAg/SiO2ナノコンポジットエタノール/水(7:3容量比)懸濁液の形態を示す図であり、図20Aはナノコンポジットの2種の懸濁液AおよびBであり、図20Bはデジタル画像:懸濁液A;R=2、H=100、X=1、D50=30nm、SD=1.2nm、懸濁液B;R=8、H=100、X=1、D50=20.3nm、SD=1.5nm(95%信頼区間)を示し、TEM画像は、粒径、コアシェル構造、および懸濁液AおよびBの分散状態を示す。
【図21】HPLC洗浄で得られたAg/SiO2ナノコンポジット(R=2、H=100、X=1)懸濁液のAFM画像を示す図である。画像は、TAPPING MODE(商標)によって得られたものである。サンプルは、Ag/SiO2エタノール/水懸濁液の液滴を新たに切断したマイカ基板上に配置し、1500rpmで30秒間、スピンコートして作製されたものである。3D画像は、凝集粒径が約60nmであることを示している。
【図22】動的光散乱(DLS)およびTEM分析によって測定された、Ag/SiO2ナノコンポジット(R=8、H=300、X=1)の粒径分布を示す図である。DLSでは、D50=18.6nm、SD=1.5nmであり、TEM分析からの粒径は、20.3±1.5nmである(30個の粒子をカウントした)。DLSとTEM分析との間は、ほとんど合致しており、AANはほぼ1に等しく、充分に分散された懸濁液であることを示していることに留意されたい。
【図23】Ag/SiO2ナノコンポジット(R=2、H=100、X=1)エタノール/水懸濁液のゼータ電位を、pHおよびAPS濃度の関数として示す図である。APSを添加した後に、電荷が負から正に転換したことに注意されたい。懸濁液のpHは、標準バッファー水溶液に対して較正したSentron pHメーターを使用して測定した。誤差のバーは、95%信頼区間である。
【図24】SiO2マイクロスフェアのゼータ電位を、pHおよびAPS濃度の関数として示す図である。SiO2の平均粒径は20μmであり、表面積は425m2/gであり、平均孔サイズは6.5nmである。SiO2マイクロスフェアは、エタノール/水(7:3容量比)溶液に分散させたものである。懸濁液のpHは、標準バッファー水溶液に対して較正したSentron pHメーターを使用して測定した。誤差バーは95%信頼区間である。
【図25】SiO2マイクロスフェアの表面上に形成されたAg/SiO2ナノコンポジット(R=2、H=100、X=1)凝集体のAFM画像を示す図である。APSの表面コーティングのみを、Ag/SiO2ナノコンポジットに施し(平均粒径30nm)、SiO2マイクロスフェアを別の処理なしに使用した(平均粒径20μm)。ブロックされたHPLCカラムからのSiO2マイクロスフェアを、新たに切断したマイカ基板上に置いた。
【図26】Ag/SiO2ナノコンポジットエタノール/水懸濁液(R=8、H=100、X=1)について分散状態へのpHの影響を示す図であり、図26Aは、動的光散乱による粒径分布を示し、図26Bは、レース状炭素グリッドに懸濁液の液滴を置き、25℃で乾燥させることによって得られたTEM画像である。SiO2シェルはpH9.7で溶解し、それによって双峰分布を生じることに留意されたい。
【図27】有機コア材料として、(A)低および(B)高密度にローダミンBを含有する有機コア/シリカシェルナノコンポジット粒子の粒径および形態を示す透過型電子顕微鏡写真(TEM)の画像を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノコンポジット粒子を含む逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと、
該逆ミセルマイクロエマルジョンを分散剤で処理するステップと、
該マイクロエマルジョンに破壊剤を添加することによって、該マイクロエマルジョンを破壊してナノコンポジット粒子の懸濁液を形成するステップと、
該ナノコンポジット粒子の懸濁液を洗浄し分散させるステップと
を含む、懸濁状の非凝集性分散コア/シェル型ナノコンポジット粒子を調製する方法。
【請求項2】
酸/アルコール溶液が、前記ナノコンポジット粒子の懸濁液をpH約5〜9に維持し、前記破壊剤が、酸性化したアルコール溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記破壊剤が、酢酸/エタノール溶液であり、前記分散剤が、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩およびホスホン酸塩からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
追加ステップ、すなわち、
界面活性剤、溶媒、および水性コア前駆体で構成される混合物を室温で形成することによって、前記逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと、
該混合物を約2分〜24時間攪拌するステップと、
塩基を添加して、懸濁液を形成するステップと、
該懸濁液を約2分〜24時間攪拌するステップと、
シリカまたはチタニアシェル前駆体材料を添加するステップと、
該マイクロエマルジョンを約24時間熟成させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)C−520)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、シクロヘキサンである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記水性コア前駆体が、Au、Ag、Co、Ni、Cu、CdS、Pt、有機顔料、有機染料;フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、ルシフェリンなどの有機蛍光物質、および1種または複数の薬剤からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が、核酸を転写活性型で細胞に送達する遺伝子治療薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体が、
BDCECF、BCECF−AM、Calcien−AM、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン二酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシエオシン、5,(6)−カルボキシエオシン二酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセイン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセインオクタデシルエステル、5,(6)−カルボキシナフトフルオレセイン二酢酸塩、エオシン−5−イソチオシアネート、エオシン−5−イソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸 N−スクシンイミジルエ
ステル、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセインイソチオシアネート異性体1、フルオレセインイソチオシアネート異性体2、フルオレセインイソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセインオクタデシルエステル、フルオレセインナトリウム塩、ナフトフルオレセイン、ナフトフルオレセイン二酢酸塩、またはN−オクタデシル−N’−(5−フルオレセイニル)チオ尿素(F18)からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ローダミンおよびローダミン誘導体が、
5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン、5−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、6−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシ−X−ローダミン、ジヒドロローダミン123、ジヒドロローダミン6G、リサミンローダミン、ローダミン110塩化物、ローダミン123、ローダミンBヒドラジド、ローダミンB、およびローダミンWT
からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記有機顔料および染料が、
7,12−ビス(1−ヒドロキシエチル)−3,8,13,17−テトラメチル−21H,23H−ポルフィン−2,18−ジプロパン酸などのヘマトポルフィリン染料;およびインドシアニングリーンなどのシアニン染料およびその誘導体;インドインブルー;R−フィコエリスリン(PE)、PE−Cy5;PE−Cy5.5;PE−テキサスレッド;PE−Cy7;Cy3 NHSエステル;Cy3マレイミドおよびヒドラジド;Cy3B
NHSエステル;Cy3.5 NHSエステル;Cy3アミダイト;Cy5 NHSエステル;Cy−5;Cy5アミダイト;Cy5.5;Cy−5.5 NHSエステル;Cy5.5アネキシンV;Cy7;Cy7 NHSエステル;Cy7Q NHSエステル;アロフィコシアニン(APC);APC−Cy7;APC Cy5.5;ヨウ化プロピジウム(PI);クリスタルバイオレットラクトン;パテントブルーVF;ブリリアントブルーG;またはカスケードブルーアセチルアジド
からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記シェル前駆体材料が、SiO2、TiO2、ZnO、Fe2O3、ZrO2、NiO、
およびGeO2、Sn、Pb、AgおよびAu、CaPOx、CaCO3、テトラエトキシ
シラン(TEOS)、チタン(IV)イソプロポキシド、および一般式Cax(PO4)y
(OH)z(SiO2)aのカルシウムホスホシリケートからなる群より選択される、請求
項4に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆体がテトラエトキシシラン(TEOS)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆体がチタン(IV)イソプロポキシド(TIPO)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
x、y、z、およびaが、ゼロからより大きな数値の範囲で変動し得る、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記分散剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルシルセスキオキサン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、およびアミド結合型カルボキシル基からなる群より選択されるシランカップリング剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記シランカップリング剤が3−アミノプロピルトリメトキシシランである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノコンポジット粒子のコアが、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群より選択されるヒドロゲル材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
動物またはヒトにおいてin vivoで前記ナノコンポジット粒子を使用するために、前記分散剤に表面改質剤を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記表面改質剤がバインダーである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バインダーが抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
有機基、金属、酵素、巨大分子およびプラスミドからなる群より選択される部分を前記シェル前駆体材料に結合させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノコンポジット粒子の粒径が、水相と界面活性剤とのモル比、水相とシェル前駆体材料とのモル比、および塩基とシェル前駆体材料とのモル比を調整することによって改変される、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
粒径が約1μm〜約100μmの球状シリカビーズが充填されたHPLCカラムで構成されるサイズ排除HPLCシステムを使用して、前記ナノコンポジット粒子を洗浄し分散させるステップと、
破壊剤を前記HPLCカラムにポンプ給送するステップと、
前記ナノ粒子懸濁液を、前記HPLCカラムに固定相を通して約1ml/分〜約100ml/分の流速でポンプ給送するステップと、
該HPLC充填カラムのアウトフローに連結した検出器によってUV吸光度または蛍光の変化を測定し、いつ該カラムがナノ粒子で完全に満たされたかを決定するステップと、
前記ナノ粒子を、最高約250容量%溶液である水混和性有機溶媒と水の溶液で溶出させ、再分散させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記球状シリカビーズは粒径が約20μmである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水混和性有機溶媒と水の溶液が最高約70容量%溶液である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記HPLCカラムは長さが約5×50mmである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記固定相が前記分散剤で処理されたマイクロスフェアで構成される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノコンポジット粒子が約1〜100nmの一次粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノコンポジット粒子が約10〜20nmの一次粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノコンポジット粒子が約20nmの一次粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
(i)ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサンおよび水性の有効薬剤前駆体で構成される混合物を室温で形成するステップと、
(ii)該混合物を約30分間攪拌するステップと、
(iii)NH4OHを添加して懸濁液を形成するステップと、
(iv)該懸濁液を約15分間攪拌するステップと、
(v)シェル前駆体を添加するステップと、
(vi)マイクロエマルジョンを約24時間熟成させるステップとを含む、
逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと;
該逆ミセルマイクロエマルジョンを3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理するステップと;
該マイクロエマルジョンに、後記懸濁液をpH約6〜7に維持する酢酸/エタノール溶液を添加することによって該マイクロエマルジョンを破壊して、ナノコンポジット粒子の懸濁液を形成するステップと;
(i)HPLCカラムに粒径が約20μmの球状シリカビーズを充填するステップと、
(ii)エタノールを前記HPLCカラムにポンプ給送するステップと、
(iii)該ナノ粒子懸濁液を、前記HPLCカラムに固定相を通じて流速約1ml/分でポンプ給送するステップと、
(iv)該HPLC充填カラムのアウトフローに連結した検出器でUV吸光度または蛍光の変化を測定して、いつ該カラムがナノ粒子で完全に満たされたかを決定するステップと、
(v)該ナノ粒子を、水が最高約70容量%のエタノール/水溶液で溶出させ、再分散させるステップとを含む、
前記ナノコンポジット粒子の懸濁液を、サイズ排除HPLCシステムを使用して洗浄し分散させるステップとを含む、
非凝集性分散コア/シェル型ナノコンポジット粒子を合成する方法。
【請求項33】
追加ステップ、すなわち、
界面活性剤、溶媒、pHがpH6〜8に調整されたある量の水性コア前駆体、およびCa++形態のカルシウムを含む第1混合物を形成するステップと;
界面活性剤、溶媒、pHがpH6〜8に調整されたある量の水性コア前駆体、およびPO4-形態のリン、さらに任意選択のSiO3-を含む第2混合物を形成するステップと;
該第1混合物と該第2混合物とを一緒に混合して約2分間、熟成させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記水性コア前駆体はpHがpH7.4に調整されている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記界面活性剤がポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)C−520)である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記溶媒がシクロヘキサンである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記水性コア前駆体が、Au、Ag、Co、Ni、Cu、CdS、Pt、有機顔料、有機染料;フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、ルシフェリンなどの有機蛍光物質、および1種または複数の薬剤からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤が核酸を転写活性型で細胞に送達する遺伝子治療薬である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノコンポジット粒子の粒径が、水相と界面活性剤とのモル比、水相とシェル前駆体材料とのモル比、および塩基とシェル前駆体材料とのモル比を調整することによって改変される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
(i)ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサン、薬剤前駆体およびCa++で構成される第1混合物を室温で形成するステップと、
(ii)ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサン、薬剤前駆体およびPO4-、さらに任意選択でSiO2-で構成される第2混合物を形成するステップと、
(iii)前記第1混合物と第2混合物を約2分間混合し、熟成させるステップとを含む、
逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと;
該逆ミセルマイクロエマルジョンを3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理するステップと;
該マイクロエマルジョンに、後記懸濁液をpH約6〜7に維持する酢酸/エタノール溶液を添加することによって該マイクロエマルジョンを破壊して、ナノコンポジット粒子の懸濁液を形成するステップと;
(i)HPLCカラムに粒径が約20μmの球状シリカビーズを充填するステップと、
(ii)エタノールを前記HPLCカラムにポンプ給送するステップと、
(iii)前記ナノ粒子懸濁液を、前記HPLCカラムに固定相を通して流速約1ml/分でポンプ給送するステップと、
(iv)該HPLC充填カラムのアウトフローに連結した検出器でUV吸光度または蛍光の変化を測定して、いつ該カラムがナノ粒子で完全に満たされたかを決定するステップと、
(v)該ナノ粒子を、水が最高約70容量%のエタノール/水の溶液で溶出させ、再分散させるステップとを含む、
前記ナノコンポジット粒子の懸濁液を、サイズ排除HPLCシステムを使用して洗浄し分散させるステップと
を含む、非凝集性分散コア/シェル型ナノコンポジット粒子を合成する方法。
【請求項1】
ナノコンポジット粒子を含む逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと、
該逆ミセルマイクロエマルジョンを分散剤で処理するステップと、
該マイクロエマルジョンに破壊剤を添加することによって、該マイクロエマルジョンを破壊してナノコンポジット粒子の懸濁液を形成するステップと、
該ナノコンポジット粒子の懸濁液を洗浄し分散させるステップと
を含む、懸濁状の非凝集性分散コア/シェル型ナノコンポジット粒子を調製する方法。
【請求項2】
酸/アルコール溶液が、前記ナノコンポジット粒子の懸濁液をpH約5〜9に維持し、前記破壊剤が、酸性化したアルコール溶液である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記破壊剤が、酢酸/エタノール溶液であり、前記分散剤が、クエン酸塩、シュウ酸塩、コハク酸塩およびホスホン酸塩からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
追加ステップ、すなわち、
界面活性剤、溶媒、および水性コア前駆体で構成される混合物を室温で形成することによって、前記逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと、
該混合物を約2分〜24時間攪拌するステップと、
塩基を添加して、懸濁液を形成するステップと、
該懸濁液を約2分〜24時間攪拌するステップと、
シリカまたはチタニアシェル前駆体材料を添加するステップと、
該マイクロエマルジョンを約24時間熟成させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記界面活性剤が、ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)C−520)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒が、シクロヘキサンである、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記水性コア前駆体が、Au、Ag、Co、Ni、Cu、CdS、Pt、有機顔料、有機染料;フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、ルシフェリンなどの有機蛍光物質、および1種または複数の薬剤からなる群より選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記薬剤が、核酸を転写活性型で細胞に送達する遺伝子治療薬である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記フルオレセインおよびフルオレセイン誘導体が、
BDCECF、BCECF−AM、Calcien−AM、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン、5,(6)−カルボキシ−2’,7’−ジクロロフオレセイン二酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシエオシン、5,(6)−カルボキシエオシン二酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン、5−カルボキシフルオレセイン、6−カルボキシフルオレセイン、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩、5,(6)−カルボキシフルオレセイン酢酸塩 N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセイン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシフルオレセインオクタデシルエステル、5,(6)−カルボキシナフトフルオレセイン二酢酸塩、エオシン−5−イソチオシアネート、エオシン−5−イソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸、フルオレセイン−5,(6)−カルボキサミドカプロン酸 N−スクシンイミジルエ
ステル、フルオレセインイソチオシアネート、フルオレセインイソチオシアネート異性体1、フルオレセインイソチオシアネート異性体2、フルオレセインイソチオシアネート二酢酸塩、フルオレセインオクタデシルエステル、フルオレセインナトリウム塩、ナフトフルオレセイン、ナフトフルオレセイン二酢酸塩、またはN−オクタデシル−N’−(5−フルオレセイニル)チオ尿素(F18)からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ローダミンおよびローダミン誘導体が、
5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン、5−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、6−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシテトラメチルローダミン N−スクシンイミジルエステル、5,(6)−カルボキシ−X−ローダミン、ジヒドロローダミン123、ジヒドロローダミン6G、リサミンローダミン、ローダミン110塩化物、ローダミン123、ローダミンBヒドラジド、ローダミンB、およびローダミンWT
からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記有機顔料および染料が、
7,12−ビス(1−ヒドロキシエチル)−3,8,13,17−テトラメチル−21H,23H−ポルフィン−2,18−ジプロパン酸などのヘマトポルフィリン染料;およびインドシアニングリーンなどのシアニン染料およびその誘導体;インドインブルー;R−フィコエリスリン(PE)、PE−Cy5;PE−Cy5.5;PE−テキサスレッド;PE−Cy7;Cy3 NHSエステル;Cy3マレイミドおよびヒドラジド;Cy3B
NHSエステル;Cy3.5 NHSエステル;Cy3アミダイト;Cy5 NHSエステル;Cy−5;Cy5アミダイト;Cy5.5;Cy−5.5 NHSエステル;Cy5.5アネキシンV;Cy7;Cy7 NHSエステル;Cy7Q NHSエステル;アロフィコシアニン(APC);APC−Cy7;APC Cy5.5;ヨウ化プロピジウム(PI);クリスタルバイオレットラクトン;パテントブルーVF;ブリリアントブルーG;またはカスケードブルーアセチルアジド
からなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記シェル前駆体材料が、SiO2、TiO2、ZnO、Fe2O3、ZrO2、NiO、
およびGeO2、Sn、Pb、AgおよびAu、CaPOx、CaCO3、テトラエトキシ
シラン(TEOS)、チタン(IV)イソプロポキシド、および一般式Cax(PO4)y
(OH)z(SiO2)aのカルシウムホスホシリケートからなる群より選択される、請求
項4に記載の方法。
【請求項13】
前記前駆体がテトラエトキシシラン(TEOS)である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記前駆体がチタン(IV)イソプロポキシド(TIPO)である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
x、y、z、およびaが、ゼロからより大きな数値の範囲で変動し得る、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記分散剤が、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルシルセスキオキサン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルジエチレントリアミン、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、およびアミド結合型カルボキシル基からなる群より選択されるシランカップリング剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記シランカップリング剤が3−アミノプロピルトリメトキシシランである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ナノコンポジット粒子のコアが、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、およびメタクリル酸2−ヒドロキシエチルからなる群より選択されるヒドロゲル材料を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
動物またはヒトにおいてin vivoで前記ナノコンポジット粒子を使用するために、前記分散剤に表面改質剤を添加するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記表面改質剤がバインダーである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記バインダーが抗体である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
有機基、金属、酵素、巨大分子およびプラスミドからなる群より選択される部分を前記シェル前駆体材料に結合させることをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項23】
前記ナノコンポジット粒子の粒径が、水相と界面活性剤とのモル比、水相とシェル前駆体材料とのモル比、および塩基とシェル前駆体材料とのモル比を調整することによって改変される、請求項4に記載の方法。
【請求項24】
粒径が約1μm〜約100μmの球状シリカビーズが充填されたHPLCカラムで構成されるサイズ排除HPLCシステムを使用して、前記ナノコンポジット粒子を洗浄し分散させるステップと、
破壊剤を前記HPLCカラムにポンプ給送するステップと、
前記ナノ粒子懸濁液を、前記HPLCカラムに固定相を通して約1ml/分〜約100ml/分の流速でポンプ給送するステップと、
該HPLC充填カラムのアウトフローに連結した検出器によってUV吸光度または蛍光の変化を測定し、いつ該カラムがナノ粒子で完全に満たされたかを決定するステップと、
前記ナノ粒子を、最高約250容量%溶液である水混和性有機溶媒と水の溶液で溶出させ、再分散させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記球状シリカビーズは粒径が約20μmである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記水混和性有機溶媒と水の溶液が最高約70容量%溶液である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記HPLCカラムは長さが約5×50mmである、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記固定相が前記分散剤で処理されたマイクロスフェアで構成される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
前記ナノコンポジット粒子が約1〜100nmの一次粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記ナノコンポジット粒子が約10〜20nmの一次粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記ナノコンポジット粒子が約20nmの一次粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
(i)ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサンおよび水性の有効薬剤前駆体で構成される混合物を室温で形成するステップと、
(ii)該混合物を約30分間攪拌するステップと、
(iii)NH4OHを添加して懸濁液を形成するステップと、
(iv)該懸濁液を約15分間攪拌するステップと、
(v)シェル前駆体を添加するステップと、
(vi)マイクロエマルジョンを約24時間熟成させるステップとを含む、
逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと;
該逆ミセルマイクロエマルジョンを3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理するステップと;
該マイクロエマルジョンに、後記懸濁液をpH約6〜7に維持する酢酸/エタノール溶液を添加することによって該マイクロエマルジョンを破壊して、ナノコンポジット粒子の懸濁液を形成するステップと;
(i)HPLCカラムに粒径が約20μmの球状シリカビーズを充填するステップと、
(ii)エタノールを前記HPLCカラムにポンプ給送するステップと、
(iii)該ナノ粒子懸濁液を、前記HPLCカラムに固定相を通じて流速約1ml/分でポンプ給送するステップと、
(iv)該HPLC充填カラムのアウトフローに連結した検出器でUV吸光度または蛍光の変化を測定して、いつ該カラムがナノ粒子で完全に満たされたかを決定するステップと、
(v)該ナノ粒子を、水が最高約70容量%のエタノール/水溶液で溶出させ、再分散させるステップとを含む、
前記ナノコンポジット粒子の懸濁液を、サイズ排除HPLCシステムを使用して洗浄し分散させるステップとを含む、
非凝集性分散コア/シェル型ナノコンポジット粒子を合成する方法。
【請求項33】
追加ステップ、すなわち、
界面活性剤、溶媒、pHがpH6〜8に調整されたある量の水性コア前駆体、およびCa++形態のカルシウムを含む第1混合物を形成するステップと;
界面活性剤、溶媒、pHがpH6〜8に調整されたある量の水性コア前駆体、およびPO4-形態のリン、さらに任意選択のSiO3-を含む第2混合物を形成するステップと;
該第1混合物と該第2混合物とを一緒に混合して約2分間、熟成させるステップと
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記水性コア前駆体はpHがpH7.4に調整されている、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記界面活性剤がポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)C−520)である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記溶媒がシクロヘキサンである、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記水性コア前駆体が、Au、Ag、Co、Ni、Cu、CdS、Pt、有機顔料、有機染料;フルオレセインのナトリウム塩、ローダミン、ローダミン誘導体、フルオレセイン、フルオレセイン誘導体、ルシフェリンなどの有機蛍光物質、および1種または複数の薬剤からなる群より選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記薬剤が核酸を転写活性型で細胞に送達する遺伝子治療薬である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記ナノコンポジット粒子の粒径が、水相と界面活性剤とのモル比、水相とシェル前駆体材料とのモル比、および塩基とシェル前駆体材料とのモル比を調整することによって改変される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
(i)ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサン、薬剤前駆体およびCa++で構成される第1混合物を室温で形成するステップと、
(ii)ポリ(オキシエチレン)ノニルフェニルエーテル(Igepal(登録商標)CO−520)、シクロヘキサン、薬剤前駆体およびPO4-、さらに任意選択でSiO2-で構成される第2混合物を形成するステップと、
(iii)前記第1混合物と第2混合物を約2分間混合し、熟成させるステップとを含む、
逆ミセルマイクロエマルジョンを調製するステップと;
該逆ミセルマイクロエマルジョンを3−アミノプロピルトリメトキシシランで処理するステップと;
該マイクロエマルジョンに、後記懸濁液をpH約6〜7に維持する酢酸/エタノール溶液を添加することによって該マイクロエマルジョンを破壊して、ナノコンポジット粒子の懸濁液を形成するステップと;
(i)HPLCカラムに粒径が約20μmの球状シリカビーズを充填するステップと、
(ii)エタノールを前記HPLCカラムにポンプ給送するステップと、
(iii)前記ナノ粒子懸濁液を、前記HPLCカラムに固定相を通して流速約1ml/分でポンプ給送するステップと、
(iv)該HPLC充填カラムのアウトフローに連結した検出器でUV吸光度または蛍光の変化を測定して、いつ該カラムがナノ粒子で完全に満たされたかを決定するステップと、
(v)該ナノ粒子を、水が最高約70容量%のエタノール/水の溶液で溶出させ、再分散させるステップとを含む、
前記ナノコンポジット粒子の懸濁液を、サイズ排除HPLCシステムを使用して洗浄し分散させるステップと
を含む、非凝集性分散コア/シェル型ナノコンポジット粒子を合成する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図19】
【図22】
【図23】
【図24】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図8】
【図10】
【図19】
【図22】
【図23】
【図24】
【図5】
【図6】
【図7】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公表番号】特表2008−501509(P2008−501509A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−515527(P2007−515527)
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019239
【国際公開番号】WO2005/118702
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(502224803)ザ ペン ステイト リサーチ ファウンデーション (6)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年6月1日(2005.6.1)
【国際出願番号】PCT/US2005/019239
【国際公開番号】WO2005/118702
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願人】(502224803)ザ ペン ステイト リサーチ ファウンデーション (6)
【Fターム(参考)】
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