説明

非接触送電システム、および非接触送電装置

【課題】アンテナの表面に付着した水滴を除去して送電効率の悪化を防止することが可能な非接触送電システム、および非接触送電装置を提供すること。
【解決手段】電気エネルギーを動力源として利用する車両に対して非接触状態で送電を行うシステムにおいて、車両に搭載されて電力を受電する受電側アンテナと、受電側アンテナに対して電力を送電する送電側アンテナとを備えて、共振周波数で振動する交流電力がアンテナ間の電磁的結合により送電される際、水滴除去手段により送電側アンテナまたは受電側アンテナの少なくとも何れか一方の電磁的結合が形成される結合面に付着する水滴が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願に開示の技術は、電動車両に非接触で送電する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車車両の新たな走行駆動技術として、電気エネルギーを動力源として電動機により駆動力を発生する電気自動車や、内燃機関と電動機との補完により駆動力を発生する、いわゆるハイブリッド自動車の開発が進められ実用化されてきている。
【0003】
電気エネルギーは車両に搭載されている蓄電装置により車両内に蓄積される。蓄電装置にはニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの再充電可能な二次電池が使用されており、二次電池への充電は車両外部の電源からの送電により行われることが一般的である。送電の方法として、車両外部の電源と二次電池を含む蓄電装置との間をケーブルで接続する場合の他、非接触状態で送電する方法が注目されている。
【0004】
車両外部の電源から非接触状態で充電電力を電動車両へ送電するために、高周波電力ドライバと、一次コイルと、一次自己共振コイルとを備える車両用送電装置が開示されている。高周波電力ドライバにより電源からの電力が高周波電力に変換され、一次コイルによって一次自己共振コイルに与えられる。一次自己共振コイルは車両にある二次自己共振コイルとの間で磁気的に結合され、非接触状態で車両に電力が送電される(特許文献1)。
【0005】
また、コイルまたはアンテナを利用して非接触送電を行う技術として、特許文献2、非特許文献1が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−106136号公報
【特許文献2】特表2009−501510号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】アリステディス カラリス(Aristeidis Karalis)、他2名、「エフィシェント ワイヤレス ノンラディエイティブ ミッドレンジ エネルギー トランスファ(Efficient wireless non-radiative mid-range energy transfer)」、[online]、2007年4月27日、アニュアル オブ フィジックス(Annals of Physics)323 (2008) p.34-48、[平成21年11月20日検索], インターネット<URL:www.sciencedirect.com>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、背景技術は、アンテナにより非接触状態で送電を行うための回路構成を例示するに過ぎない。アンテナを非接触状態で対向させて送電を行う場合、アンテナ間の空間に送電効率を悪化させる誘電体は存在しないことが好ましい。誘電体が電磁波の電場成分と相互作用して分極することによりエネルギーが消費されてしまうからである。このため、アンテナの表面に降雨や結露等により水滴が付着すると水の誘電率の影響で送電効率が悪化してしまうおそれがある。
【0009】
本願に開示される技術は、上記の課題に鑑み提案されたものであって、アンテナの表面に付着した水滴を除去することにより、水の誘電分極による送電効率の悪化を防止することが可能な非接触送電システム、および非接触送電装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願に開示される技術に係る非接触送電システムは、電気エネルギーを動力源として利用する車両に対して非接触状態で送電を行うシステムである。車両に搭載されて電力を受電する受電側アンテナと、受電側アンテナに対して電力を送電する送電側アンテナとを備えて、アンテナ間が電磁的結合により結合されて非接触で送電されるものである。送電される電力は、送電側アンテナから受電側アンテナへの送電効率が最大となる共振周波数で、交流電力を送電側アンテナに供給する交流電力ドライバにより行われる。送電側アンテナまたは受電側アンテナの少なくとも何れか一方の電磁的結合が形成される結合面に付着する水滴は水滴除去手段により除去される。
【0011】
また、本願に開示される技術に係る非接触送電装置は、電気エネルギーを動力源として利用する車両に対して非接触状態で送電を行う送電側の装置である。車両に搭載される受電側アンテナに対して電磁的結合により送電する送電側アンテナと、送電側アンテナから受電側アンテナへの送電効率が最大となる共振周波数で、交流電力を送電側アンテナに供給する交流電力ドライバと、送電側アンテナの電磁的結合が形成される結合面への水滴の付着を抑制する水滴除去手段とを備えている。
【発明の効果】
【0012】
本願に開示される技術に係る非接触送電システム、および非接触送電装置によれば、非接触状態において電磁的結合により行われる電力の送電効率の悪化を抑制することができる。理由は以下の通りである。すなわち、水分は比較的大きな誘電率を有する誘電体である。電磁的結合空間に水分が介在すると水分子が誘電分極するが、誘電分極する際には電磁エネルギーが消費されてしまう。このエネルギー消費により送電効率が悪化してしまうおそれがある。
本願では、送電に先立ち電磁的結合が形成されるアンテナの結合面の水滴を除去することにより電磁的結合が行われる空間から水滴を除去することができる。これにより、水分子の誘電分極に消費されてしまう電磁的エネルギーが送電電力に充てられることとなる。結果として送電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】非接触送電システムを示す図である。
【図2】送電動作における共振周波数を示す図である。
【図3】送電装置の回路ブロック図である。
【図4】受電装置の回路ブロック図である。
【図5】アンテナの構成を示す図である。
【図6】水滴除去手段を備える送電側の送電フローである。
【図7】水滴除去手段を備える受電側の受電フローである。
【図8】非共振動作により水滴を除去する場合の処理フローである。
【図9】温風の吹付けにより水滴を除去する場合の送風ダクトの構成図である。
【図10】ワイパー装置により水滴を除去する場合の図である。
【図11】振動装置により水滴を除去する場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は非接触送電システムを電気自動車あるいはハイブリッド自動車への送電に適用する場合のシステム構成図である。車両2が電気自動車あるいはハイブリッド自動車である。車両2が送電エリア1に入庫している状態を示す。送電エリア1には送電装置10が埋設されており、車両2に搭載されている受電装置20との間で、非接触送電が行われる。
【0015】
非接触送電では、送電装置10の送電側アンテナ11から受電装置20の受電側アンテナ21への電磁波による電磁的結合により電力の送電が行われる。送電側アンテナ11は、送電エリア1の地表面に沿って、電磁的結合がなされる結合面11Aが配置される。受電側アンテナ21は、車両2の下面に沿って、電磁的結合がなされる結合面21Aが配置される。送電側アンテナ11は、所定周波数の交流電力を給電する交流電力ドライバを含む送電部12により駆動される。送電部12は制御回路13により制御される。また、受電側アンテナ21にて受電された交流電力は受電部22により整流されて蓄電池等に蓄積される。受電部22は制御回路23により制御される。
【0016】
ここで、送電部12の交流電力ドライバより送電側アンテナ11に給電される交流電力の所定周波数とは、送電側アンテナ11および受電側アンテナ21を含む系の共振周波数である。図2に系の共振周波数の特性図を示す。横軸は送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との離間距離(L)であり、縦軸は共振周波数(f)である。離間距離(L)がL=L0以上の領域は、受電側アンテナ21との電磁的結合の影響が無視される領域である。系は受電側アンテナ21を含まず送電側アンテナ11が有する固有の共振周波数(f=f0)で共振する。離間距離(L)がL=L0以下の領域では、系は送電側アンテナ11と受電側アンテナ21とが強く電磁的結合された状態となる。電磁的結合に伴う相互インダクタンスあるいは結合定数による影響を受ける領域である。この領域では、共振周波数は離間距離(L)に依存して変化する。送電側アンテナ11の固有の共振周波数(f=f0)を挟んで2つの共振点が存在し、離間距離(L)が短くなることに応じて互いの共振周波数が離れる特性となる。また、この領域での共振周波数で高い送電効率が得られる。
【0017】
図3は送電装置10の回路ブロック図である。制御回路13、発振器14、駆動回路12A、整合回路12B、定在波比測定(Standing Wave Ratio、以下、SWRと略記する)計12C、および送電側アンテナ11を備える。更に、送電エリア1にはエリア内検出センサ15を備える。
【0018】
発振器14から出力されるクロック信号は、制御回路13へ入力され、制御回路13内の動作クロックおよび駆動回路12Aの交流電力の給電などの周期制御に用いられる。
【0019】
制御回路13は、発振器14、SWR計12C、エリア内検出センサ15から受信した信号をもとに、駆動回路12A、整合回路12Bを制御する。
【0020】
駆動回路12Aはインバータや増幅器などで構成される交流電力ドライバを含み、整合回路12BおよびSWR計12Cを通じて送電側アンテナ11に交流電力を供給する。該交流電力は制御回路13により所定周波数の交流電力として周期制御される。
【0021】
整合回路12Bは、駆動回路12Aから供給される交流電力を送電側アンテナ11へ効率よく供給するために、制御回路13からの制御により、送電側アンテナ11と駆動回路12Aとのインピーダンス整合をとる。
【0022】
SWR計12Cは駆動回路12Aから送電側アンテナ11へと送られる交流電力についての定在波比を計測し制御回路13に結果を送信する。交流電力の伝搬による反射波の有無を検出する。
【0023】
送電側アンテナ11はインダクタンス成分とキャパシタンス成分とを有するLC共振コイルであり、後述する受電装置20の受電側アンテナ21との間で磁気的に結合され、受電側アンテナ21へ電力を送電する。
【0024】
エリア内センサ15は送電エリア1に車両2が進入したか否かを検出し、その結果を制御回路13に送信する。
【0025】
図4は、受電装置20の回路ブロック図である。受電装置20は、制御回路23、発振器24、受電側アンテナ21、受電検出回路22A、切替回路22B、整合回路22C、整流平滑回路22D、および充電回路22Eを備える。
【0026】
発振器24から出力されるクロック信号は、制御回路23に入力され、制御回路23内の動作クロックとして用いられる。
【0027】
制御回路23は、発振器24、および受電検出回路22Aから受信した信号をもとに、切替回路22B,および充電回路22Eを制御する。
【0028】
受電検出回路22Aは、例えば、電流センサを備えて構成されている。受電側アンテナ21に流れる電流を検出する。送電装置10からの交流電力の送電が行われているか否かを検出する。
【0029】
切替回路22Bは、制御回路23から受信した信号により、受電側アンテナ21を閉ループ状態にするか、充電回路22Eに接続するか、開ループ状態にするかを切替える。
【0030】
整合回路22Cは、受電側アンテナ21に受電された交流電力が反射されずに整流平滑回路22Dを通じて充電回路22Eへと供給されるように、受電側アンテナ21から整流平滑回路22Dに至る系のインピーダンス整合をとる。
【0031】
整流平滑回路22Dは、受電側アンテナ21から供給される交流電力を直流電力に変換および平滑化し、充電回路22Eに供給する。
【0032】
充電回路22Eは、整流平滑回路22Dから供給される電力をバッテリー等の蓄電装置(不図示)に充電する回路である。ここで、蓄電装置とは、たとえばリチウムイオンやニッケル水素などの二次電池や大容量のキャパシタから成る。制御回路23から制御され充電制御を行う。
【0033】
受電側アンテナ21は、インダクタ成分とキャパシタンス成分とを有するLC共振コイルであり、送電側アンテナ11との間で磁気的に結合され、送電側アンテナ11より交流電力を受電する。
【0034】
図5に示すアンテナの構成は、送電側アンテナ11および受電側アンテナ21に適用されることが可能な構成を例示するものである。アンテナのうちインダクタ成分を奏するコイル部分あるいはコイル部分に加えてキャパシタンス成分を奏するコンデンサ部分(不図示)は、他の導体から電気的に絶縁を保つ必要があること、また車両2に搭載され送電エリア1に設置される場合の強度上の要請から、樹脂等の支持体に埋め込まれた構成とする場合がある。図4は、車両2への搭載および送電エリア1への設置の観点から、平板状に成形された支持体30を例示するものである。
【0035】
図5に図示されているアンテナを送電側アンテナ11や受電側アンテナ21として使用する場合、支持体30の平板のうち、互いに対向する端面が結合面とされる。給電の際には結合面を介して主たる電磁的結合がなされることになるので、結合面への水滴の付着を防止あるいは除去することが、電磁的エネルギーの水分子による消費を抑制して送電効率の向上を図るために必要となる。
【0036】
図6は、送電装置10の制御回路13により制御される送電フローである。送電装置10の動作開始(ST0)後、送電装置10はエリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知されるまで待機する(ST2)。
【0037】
エリア内検出センサ15により受電装置20の進入が検知された後、駆動回路12Aは受電側の受電側アンテナ21に電流が流れる程度の低電力で電流を出力し始める(ST4)。
【0038】
該電流の出力開始の後、駆動回路12Aは制御回路13の制御により出力電力の周波数を走査する(ST6)。周波数を走査しながらSWR計12Cで定在波比を計測することで、出力電力の周波数と定在波比の特性が得られる。ここで、定在波比が極小となる周波数が共振周波数である。
【0039】
出力周波数の走査は2つの共振周波数が検出されるまで行われる(ST8:No)。共振周波数が2つ確認される場合は、受電側アンテナ21が送電側アンテナ11の給電可能領域内に存在していると確認される(ST8:Yes)。
【0040】
処理(ST9−1)および(ST9−2)は、水滴除去手段の一例である。先ず、送電側アンテナ11の結合面11Aに水滴が付着しているか否かを検出する(ST9−1)。
【0041】
ここで、水滴の検出は、雨滴センサ等の既知のセンサに基づいて行うことができる。また、温度及び湿度を計測し予め記憶されている判断テーブル(不図示)に基づいて判断を行うことができる。ここで、判断テーブルでは、温度に対する飽和水蒸気圧等のデータをもとに、予め定められた基準に基づいて実測される温度データおよび湿度データから判断を行うことができる。
【0042】
水滴の付着が検出されれば(ST9−1:Yes)、水滴除去処理(ST9−2)を実行する。水滴の付着が検出されなければ(ST9−1:No)、水滴除去処理(ST9−2)はスキップされる。
【0043】
水滴除去処理(ST9−2)では、主に送電側アンテナ11の結合面11Aに付着している水滴の除去処理を行う。ここでの除去方法としては、例えば、以下の3方式が考えられる。
【0044】
送電側アンテナ11の結合面11Aに付着している水滴の除去に適用される第1の具体例は、共振周波数から外れた周波数で送電動作を行う方法である。図8に処理フローを示す。処理(ST9−1)により水滴を検出すると、制御回路13は処理(ST6、ST8)で検出された共振周波数とは異なる周波数を選択する(S1)。この周波数で駆動回路12Aを駆動して送電動作を開始する(S3)。送電側アンテナ11および受電側アンテナ21を含む系は共振周波数から外れた周波数で交流電力の送電が行われる。これにより、送電側アンテナ11では電力損が発生し発熱することとなる。この発熱により送電側アンテナ11の結合面11Aに付着した水滴を乾燥除去する。この場合、送電動作(S3)は、予め定められた時間継続して行われる。この継続時間が送電側アンテナ11の結合面11Aに付着した水滴を乾燥除去するのに十分な時間に設定されていれば、処理(S3)の終了後、図6の送電フローにおいて、次の処理へ移行することができる(図6中、(A)の場合)。また、継続時間が水滴の乾燥除去に不十分な時間であっても、処理(S3)の終了後、図6の送電フローにおいて、処理(ST9−1)に戻るフローとすれば、再度の水滴検出がされ(図6中、(B)の場合)、水滴除去処理が繰り返される。何れの場合にも、送電側アンテナ11の結合面11Aに付着した水滴を加熱により乾燥除去することができる。
【0045】
尚、第1の方法では、送電動作を行うため、受電側アンテナ21にも交流電力が受電され電力損が発生する。送電側アンテナ11の結合面11Aに加えて受電側アンテナ21の結合面21Aに付着した水滴も乾燥除去される。
【0046】
送電側アンテナ11の結合面11Aに付着している水滴の除去に適用される第2の具体例は、送電側アンテナ11の結合面11Aを摺動するワイパー装置51による拭水動作を行う方法である。図10に図示する。処理(ST9−1)により水滴を検出すると、制御回路13は指示信号Sを出力する。ワイパー装置51は、送電装置10内の送電側アンテナ11近傍に設置されており指示信号Sに応じて動作を開始する。
【0047】
ワイパー装置51による拭水動作は、予め定められた時間継続に行われる。この継続時間が送電側アンテナ11の結合面11Aに付着した水滴を拭い去るのに十分な時間に設定されていれば、図6の送電フローにおいて、次の処理へ移行することができる(図6中、(A)の場合)。また、継続時間が水滴を拭い去るのに不十分な時間であっても、図6の送電フローにおいて、処理(ST9−1)に戻るフローとすれば、再度の水滴検出がされ(図6中、(B)の場合)、水滴除去処理が繰り返される。何れの場合にも、送電側アンテナ11の結合面11Aに付着した水滴をワイパー装置51による機械的な拭水動作により除去することができる。
【0048】
送電側アンテナ11の結合面11Aに付着している水滴の除去に適用される第3の具体例は、送電側アンテナ11の結合面11Aに振動を与える振動装置52により水滴を振り落とす方法である。図11に図示する。振動装置52は、送電側アンテナ11に振動面を接触させて設置される。図11の場合は、結合面11Aに設置される場合を図示するが、必ずしも結合面11Aに設置しなければならないわけではない。結合面11Aに振動が伝搬し水滴がふるい落とされれば、何れの位置に設置されていてもよいことは言うまでもない。
【0049】
処理(ST9−1)により水滴を検出すると、制御回路13は指示信号Sを出力する。振動装置52は、指示信号Sに応じて動作を開始する。
【0050】
振動装置52による振動動作は、予め定められた時間継続に行われる。この継続時間が送電側アンテナ11の結合面11Aに付着した水滴を振い落すのに十分な時間に設定されていれば、図6の送電フローにおいて、次の処理へ移行することができる(図6中、(A)の場合)。また、継続時間が水滴を振い落すのに不十分な時間であっても、図6の送電フローにおいて、処理(ST9−1)に戻るフローとすれば、再度の水滴検出がされ(図6中、(B)の場合)、水滴除去動作が繰り返される。何れの場合にも、送電側アンテナ11の結合面11Aに付着した水滴を振動装置52による機械的な振い落し動作により除去することができる。
【0051】
なお、振動動作により水滴を確実に結合面11Aから振い落すために、結合面11Aが水平面に対して所定の角度を有して送電側アンテナ11に設置すれば、振動動作により有効に水滴を振い落すことができる。
【0052】
説明を図6の送電フローに戻す。水滴除去処理(ST9−2)が終了すると、送電側アンテナ11と受電側アンテナ21との距離と共振周波数との特性(図2)から、送電側アンテナ11と受電側アンテナ21の距離が得られる(ST10)。
【0053】
そして、送電装置10から受電装置20に送電を行うため、駆動回路12Aは制御回路13の制御により、出力を増大させる(ST14)。
【0054】
受電装置20は、充電が終わると受電側アンテナ21のループを開く。これにより、送電部のSWR計12Cにより計測される定在波比が変化し、送電部は充電終了を検知できる(ST16:Yes)。充電終了を検知した送電装置10の制御回路13は駆動回路12Aの出力を停止させる(ST18)。送電部は動作を終了する(ST20)。
【0055】
図7は、受電装置20の制御回路23により制御される受電フローである。動作開始(SR0)時において受電装置20の切替回路22Bは受電側アンテナ21を閉ループ状態にするように接続する(SR2)。受電検出回路22Aは送電装置10から電力が供給され受電側アンテナ21に電力が流れるまで待機する(SR4)。
【0056】
処理(SR5−1)および(SR5−2)は、水滴除去処理の一例である。送電フロー(図6)における処理(ST9−1)および(ST9−2)と同様である。また、水滴の検出方法についても、送電フロー(図6)における処理(ST9−1)の場合と同様である。
【0057】
水滴除去処理(SR5−1)では、受電側アンテナ21の結合面21Aに付着している水滴の除去処理を行う。ここでの除去方法としては、例えば、以下の2方式が考えられる。
【0058】
受電側アンテナ21の結合面21Aに付着している水滴の除去に適用される第1の具体例は、車両2の空調設備からの送風動作を行う方法である。図9に車両2の空調構成を図示する。ブロア装置41とブロア装置41からの送風を受電側アンテナ21の結合面21Aに導く送風ダクト42とを備えている。ここで、ブロア装置41は、例えば、車室内の空調やエンジン等の冷却のために備えられた装置を利用することができる。また、送風ダクト42は、車室内の空調ダクト(不図示)とは別個に備えることもでき、また空調ダクト(不図示)から開閉弁(不図示)等を介して分岐して備える構成とすることもできる。
【0059】
図7の処理(SR5−1)により水滴を検出すると、制御回路23は指示信号Sを出力する。指示信号Sに応じて、ブロア装置41が動作を開始する。これにより、受電側アンテナ21の結合面21Aに送風される。この場合、温風を送風することもできる。この送風により受電側アンテナ21の結合面21Aに付着した水滴を乾燥除去する。この場合、送風動作は、予め定められた時間継続に行われる。この継続時間が受電側アンテナ21の結合面21Aに付着した水滴を乾燥除去するのに十分な時間に設定されていれば、図7の送電フローにおいて、次の処理へ移行することができる(図7中、(A)の場合)。また、継続時間が水滴の乾燥除去に不十分な時間であっても、図7の送電フローにおいて、処理(SR5−1)に戻るフローとすれば、再度の水滴検出がされ(図7中、(B)の場合)、水滴除去処理が繰り返される。何れの場合にも、受電側アンテナ21の結合面21Aに付着した水滴を乾燥除去することができる。
【0060】
受電側アンテナ21の結合面21Aに付着している水滴の除去に適用される第2の具体例は、ワイパー装置51による拭水動作を行う方法である。図10に図示する。送電側アンテナ11の結合面11Aにも適用される方法と同様であり、ここでの説明は省略する。
【0061】
説明を図7の送電フローに戻す。水滴除去処理(SR5−2)が終了すると、受電側アンテナ21に電力が流れた後、受電検出回路22Aは受電側アンテナ21に流れる電力が大きく増加するのを検知するまで、すなわち、送電を検知するまで待機する(SR6:No)。送電を検知した後(SR6:Yes)、受電側アンテナ21から充電回路22Eまでを接続するように、受電装置20の制御回路23は切替回路22Bを制御する(SR8)。
【0062】
受電側アンテナ21に接続された充電回路22Eはバッテリーの充電を開始する(SR10)。バッテリーの充電が終了するまで以上の状態が保持される(SR12:No)。
バッテリーの充電が終了すると(SR12:Yes)、制御回路23は切替回路22Bを制御し、受電側アンテナ21と充電回路22Eの接続を切断した上で、受電側アンテナ21のループを開き(SR14)、受電部は動作を終了する(SR16)。
【0063】
ここで、駆動回路12Aは交流電力ドライバを含んで構成される回路の一例である。また、図8の処理フローは非共振動作手段の一例である。また、ブロア装置41は送風部の一例である。ここで、図8の処理フローおよびブロア装置41は加熱手段の一例である。また、ワイパー装置51はワイパー手段の一例である。また、振動装置52は振動手段の一例である。また、送電フロー(図6)における処理(ST9−1)受電フロー(図7)における処理(SR5−1)は水滴検知手段の一例である。
【0064】
以上、詳細に説明したように、本発明の実施形態によれば、送電側アンテナ11の結合面11Aや受電側アンテナ21の結合面21Aに付着した水滴は、加熱による乾燥による除去動作、機械的な除去動作により行うことができる。
【0065】
加熱による乾燥除去には2つの方法が例示される。その1は、非共振周波数での送電動作(図8)により送電側アンテナ11および受電側アンテナ21に電力損を発生させ、この電力損に基づく発熱により送電側アンテナ11の結合面11Aに付着する水滴を加熱乾燥して水滴を除去することである。尚、この場合、受電側アンテナ21においても同様に電力損が発生するので、受電側アンテナ21の結合面21Aについても同時に加熱乾燥することができる。その2は、車両2に備えられているブロア装置41からの温風を送風ダクト42により導き受電側アンテナ21の結合面21Aに吹き付けることで乾燥することである。
【0066】
機械的な除去動作には次の2つの方法が例示される。その1は、ワイパー装置51の拭水動作により、受電側アンテナ21の結合面21Aの水滴を拭い去ることである。その2は、振動装置52の振動動作により、受電側アンテナ21の結合面21Aの水滴を振い落とすことである。
【0067】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内での種々の改良、変更が可能であることは言うまでもない。
例えば、水滴の除去動作は、その方法に応じて送電側アンテナ11の結合面11Aに適用するものと受電側アンテナ21の結合面21Aに適用するもので分けて記載したが、本発明の趣旨からすればこれに限定されるものではないことは言うまでもない。たとえば、温風の吹付けによる乾燥では、実施形態では、車両2に備えられているブロア装置41を使用する構成を説明したが、送電エリア1あるいは送電装置10にブロア装置を備えれば、送電側アンテナ11の結合面11Aに対しても同様に適用することができる。
また、ブロア装置41から送り出される風は温風に限らず、常温の風であっても水滴は乾燥除去することができる。
また、送電側アンテナ11において、アンテナを支持する支持体30に駆動回路12Aのモジュールを設置してやれば、送電時に駆動回路12Aから回路動作に応じて発せられるスイッチング損失等の熱損失により支持体30に熱が加えられる。これにより、送電側アンテナ11の結合面11Aに付着している水滴を乾燥除去することができる。
尚、水滴を除去する手段としては、この他にも以下に例示する構成が考えられる。例えば、結合面11A,21Aの表面に撥水性材料をコーティングすることで水分の付着を除去することができる。ここで、撥水性材料とは、テフロン(登録商標)等のフッ素系高分子などが適用できる。また、結合面11A、21Aの表面構造を微細なフラクタル形状とすることで、水滴の付着を防止することができる。あるいは微細な柱状形状を形成することでもよい。例えば、垂直配向したカーボンナノチューブ膜などで構成することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 送電エリア
2 車両
10 送電装置
11 送電側アンテナ
11A、21A 結合面
12 送電部
13、23 制御回路
12A 駆動回路
12B 整合回路
12C 定在波比測定(SWR)計
14、24 発振器
15 エリア内検出センサ
20 受電装置
21 受電側アンテナ
22 受電部
22A 受電検出回路
22B 切替回路
22C 整合回路
22D 整流平滑回路
22E 充電回路
30 支持体
41 ブロア装置
42 送風ダクト
51 ワイパー装置
52 振動装置



【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーを動力源として利用する車両に対して非接触状態で送電を行う非接触送電システムであって、
前記車両に搭載され、電磁的結合により受電する受電側アンテナと、
前記受電側アンテナに対して前記電磁的結合により送電する送電側アンテナと、
前記送電側アンテナから前記受電側アンテナへの送電効率が最大となる共振周波数で、交流電力を前記送電側アンテナに供給する交流電力ドライバと、
前記送電側アンテナまたは前記受電側アンテナの少なくとも何れか一方の、前記電磁的結合が形成される結合面への水滴の付着を抑制する水滴除去手段とを備えることを特徴とする非接触送電システム。
【請求項2】
前記水滴除去手段は、
送電動作に先立ち前記結合面に付着する水滴を検知する水滴検知手段と、
前記水滴検知手段による水滴の検知に応じて、前記結合面への熱供給により前記水滴を乾燥させる加熱手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の非接触送電システム。
【請求項3】
前記加熱手段は、
前記共振周波数とは異なる周波数で前記交流電力ドライバを駆動する非共振動作手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の非接触送電システム。
【請求項4】
前記加熱手段は、
前記車両において、送風部からの送風を前記結合面に導く送風ダクトを備えることを特徴とする請求項2に記載の非接触送電システム。
【請求項5】
前記水滴除去手段は、
前記結合面に付着する水滴を検知する水滴検知手段と、
前記水滴検知手段による水滴の検知に応じて、前記結合面に対して拭水動作を行うワイパー手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の非接触送電システム。
【請求項6】
前記水滴除去手段は、
前記結合面に付着する水滴を検知する水滴検知手段と、
前記水滴検知手段による水滴の検知に応じて、前記結合面を振動させる振動手段とを備えることを特徴とする請求項1に記載の非接触送電システム。
【請求項7】
電気エネルギーを動力源として利用する車両に対して非接触状態で送電を行う非接触送電装置であって、
前記車両に搭載される受電側アンテナに対して電磁的結合により送電する送電側アンテナと、
前記送電側アンテナから前記受電側アンテナへの送電効率が最大となる共振周波数で、交流電力を前記送電側アンテナに供給する交流電力ドライバと、
前記送電側アンテナの前記電磁的結合が形成される結合面への水滴の付着を抑制する水滴除去手段とを備えることを特徴とする非接触送電装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−125153(P2011−125153A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−281394(P2009−281394)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】