説明

非水電解質二次電池及び非水電解質二次電池を用いた電力貯蔵装置

【課題】非水電解質二次電池の安全性を向上すること、及び多数の非水電解質二次電池を配置した大容量の電力貯蔵装置の安全性を向上すること。
【解決手段】アンモニア化合物を密封した袋体を電池内部の空間に配置する。また、アンモニア化合物を密封した袋体を多数の非水電解質二次電池が配置された筐体における前記電池の安全弁上方に配置する。また、アンモニア化合物を密封した袋体を多数の非水電解質二次電池が配置された大容量電力貯蔵装置の筐体に設けられた煙道の要所に配置する。また、非水電解質二次電池の正極または負極の少なくとも一方に炭酸水素アンモニウム粉末を含める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水電解質二次電池に関するものであり、特に電力貯蔵装置等に使用される非水電解質二次電池の温度上昇を防止する技術に関し、さらに安全弁が破裂して噴出したガスの燃焼やその近隣の電池への連鎖を未然に防ぐ技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非水電解液を用いた電池は、高電圧、高エネルギ密度を有し、且つ貯蔵性、耐漏洩性などの信頼性に優れ、広い用途に用いられている。しかしながら、このような非水電解液の溶媒は可燃性の有機溶媒であり耐電圧性の低いものが多く、二次電池に使用した場合、充放電を繰り返すと溶媒が電気分解され、そのため生成したガスによって電池の内圧が上昇したり、生成物は重合反応を起こして電極に付着して電池エネルギ密度を低下させ、充放電の繰返しによる放電容量の低下が生じる。また、一般に非水電解質二次電池は電池内部への水分侵入を防止するため密閉構造としてあるので、電池の誤用や保護回路の故障等により短絡や過充電などが生じた場合、電池温度が上昇して内蔵する電解液の急速な気化により電池内で多量の高温ガスが発生し、電池内圧が急激に上昇する。この状態が続くと電池本体が破裂する危険がある。これに対する安全対策として、非水電解質二次電池においては、電池内の圧力が一定の圧力以上に上昇したときに安全弁が開放して内圧の過度の上昇を抑制し、電池の破裂を防止するように構成している。多数の二次電池が筐体内に配設された大容量の装置では、噴出した高温のガスにより近隣の二次電池が熱せられて近隣の電池も内部圧力が上昇して安全弁が開放してしまうという異常連鎖を誘発してしまう虞がある。安全弁から噴出したガスは非常に燃え易く、装置に周囲に着火源が存在する場合、電池から放出される可燃性ガスにより火災が発生する可能性もある。
【0003】
上に記したような内部温度の上昇を防止する対策として、正極板或は負極板の少なくとも一方に燐酸アンモニウムを添加した電池(例えば、特許文献1参照。)や第4級のアンモニア塩が負極や電解質に含まれている電池(例えば、特許文献2参照。)が開示されている。
【0004】
また、安全弁を有する多数の非水電解質燃料電池をラックに組み込んだ大容量の蓄電装置において少数の電池の異常が近隣の電池に異常を連鎖的に誘発しない蓄電装置が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。
【特許文献1】特開平11−154535号公報
【特許文献2】特開2004−71340号公報
【特許文献3】特開2003−68266号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献3に開示された蓄電装置及びその管理システムは、多くの非水電解質二次電池が配置された蓄電装置のうち一個の電池に異常が生じて内部温度が上昇し、内部圧力が著しく上昇して安全弁が解放され、高温ガスが噴出した場合に、その影響が近隣の他の電池に及んで異常連鎖を誘発していくことを防止するものであり、或は電池近傍の雰囲気温度を計測してその温度信号に応じてシールドガスを噴き付ける手段を作動させたり、電池外面を覆うジャケットに冷媒を流通させる手段を作動させたりするものであるので、異常連鎖の誘発を防止するのに非常に有効なシステムではあるが、装置としてかなり複雑なものとなり、従って高価なものとならざるを得ず、また、最初に一個の電池の安全弁が開くか、或は電池近傍の雰囲気温度が上昇するかした後でないとシステムが作動開始しないので、システムが完全作動するのに若干時間を要する。
【0006】
従って、本発明の第1の目的は、電池内部の異常温度上昇が簡単、安価な方法で防止される非水電解質二次電池提供することである。本発明の第2の目的は、多数の非水電解質二次電池を用いて構成された電力貯蔵装置において、ある電池が電池内部の異常温度上昇、圧力上昇により安全弁が開いて高温ガスが噴出した際に該高温ガスにより近隣の電池の温度が上昇して安全弁が開いて高温ガスが噴出し、このような事態が次々と連鎖して発生する異常連鎖の誘発を防止する非水電解質二次電池を用いた電力貯蔵装置を提供することである。
また、本発明の第3の目的は二次電池の急激な発熱を防止するとともに特許文献1、2に開示された二次電池よりも充放電の繰り返しに伴う容量低下が少ない二次電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記第1の目的を達成するために、本発明は、リチウムイオンを互いに放出、吸蔵し合う正極と負極とさらに非水電解質を有してなる非水電解質二次電池において、該電池の電池缶内部空間にアンモニウム化合物、例えば炭酸水素アンモニウムを前記非水電解質が透過しないフィルムで密封して配置したことを特徴とする非水電解質二次電池を提案する。そして前記アンモニウム化合物(例えば炭酸水素アンモニウム)は粉末状態で非水電解質が透過しない電気絶縁性のフィルムよりなる袋に密封して前記電池の内部空間に配置する。前記アンモニウム化合物粉末の平均粒径は8μm乃至20μm以下とし、前記非水電解質が透過しない電気絶縁性のフィルムは150℃乃至250℃の温度で融解するフィルムであるのが好ましい。
【0008】
非水電解質二次電池においては、電解液と電極との反応は発熱反応であり、充放電により発熱するが、通常は発熱と自然冷却とが平衡して温度が異常に上昇することがないように構成されている。しかしながら、過充電やその他の原因で電池内における陰、陽両極の短絡が生じると発熱反応が激しくなって電解液の温度が上昇する。電解液の温度が上昇すると電解液と電極の反応は加速され、益々温度が上昇し、遂には電池内の圧力が著しく上昇して安全弁が開きガスが噴出することになる。このガスは大体400〜500℃で発火する。
【0009】
特に、大型の電池では前記した短絡電流は増大し、また大型の場合、電池の内容積に対する表面積が小さくなる、即ち容量に対して放熱面積が小さくなる、つまり比表面積が小さくなるので、電池内部に熱が籠り易くなり、内部温度が上昇し易い。前記した電極反応を抑えるような処理を電極に施したり、電解液に電極反応を抑える添加剤を添加する方法が提案されているが(例えば、特許文献1、2参照)、そのような対応方法では電極反応が抑えられる結果充放電の容量が低下することは避けがたい。
【0010】
本発明は、電極反応を抑えるのではなく、万一電池内部の異常温度上昇が生じた場合に生成ガスの発火を抑えて事故が拡大することを防ぐものである。粉末状態のアンモニウム化合物(例えば炭酸水素アンモニウム)を150℃乃至250℃の温度で融解する非導電性のフィルムで密封して電池内の空間に配置するのがよい。配置する電池内の空間としては正極電極、負極電極、セパレータからなる積層体の例えば上部空間に配置することができる。
【0011】
アンモニウム化合物(例えば炭酸水素アンモニウム)の粉末を密封したフィルムが融解すると該アンモニウム化合物が熱分解して燃焼阻害物質が発生する。アンモニウム化合物の粉末は絶縁フィルムで密封されているので電解液に混入することはなく、電池の正常動作時には電極反応を阻害することはない。また、アンモニウム化合物粉末の平均粒径を8μm乃至20μmとすることにより、電池の異常発熱時にアンモニウム化合物の熱分解速度を増大させ、迅速に効果を発揮することができる。
【0012】
前記フィルムで密封したアンモニウム化合物(例えば炭酸水素アンモニウム)は電池の安全弁部の電池内部からの噴出ガス流の通路に空間を設け該空間に配置してもよい。通常、安全弁はラプチャーディスク型、つまり電池内部圧力が規定圧力よりも高くなるとディスクが破損して安全弁が開く形式の安全弁が多用されるが、安全弁部に空間を設けてフィルムで密封したアンモニウム化合物を配置しておけば、安全弁が開いた際に噴出するガスでフィルムは融解し、噴出ガスをアンモニウム化合物が覆うことになり、発火が防止される。
【0013】
前記アンモニウム化合物は粉末を結着剤を用いてシート状に成形し非水電解質を透過しない電気絶縁性のフィルムで密閉包装して前記電池の内部空間に配置するのもよい。この場合もアンモニウム化合物の粉末は平均粒径8μm乃至20μmのものを用い、包装フィルムは150℃乃至250℃で融解するものであることが好ましい。そして、前記結着材も150℃乃至250℃で軟化して結着力が弱くなるものを用いる。このように、アンモニウム化合物粉末をシート状に成形してフィルムで密閉包装することにより、保管、取扱い、電池内への配置作業が容易となる。
【0014】
本発明は、また、複数の非水電解質二次電池が接続されて筐体内に配置され、各非水電解質二次電池の安全弁上方にアンモニウム化合物(例えば炭酸水素アンモニウム)の粉末を非水電解質を透過せず電気絶縁性である高分子材の袋に密封して配置した非水電解質二次電池を用いた電力貯蔵装置を提案する。各二次電池の安全弁上方にアンモニウム化合物粉末が配置されているので、電池内の温度が異常に上昇して電池内部圧力が上昇し安全弁が開放した際には噴出した高温ガスが上記アンモニウム化合物粉末を密封した袋を融解して前記粉末に接触し、噴出ガスが燃焼に至るのを防止することができる。
【0015】
前記複数の非水電解質二次電池を配置した筐体に各電池が配置された空間に通じる煙道を設け、該煙道の筐体からの出口部にアンモニウム化合物(例えば炭酸水素アンモニウム)の粉末を高分子材の袋に密封して配置するのもよい。該アンモニウム化合物粉末配置分の後流側に吸着材を充填した吸着槽と吸引手段を設けておけば、個々の電池の安全弁上方にアンモニウム化合物粉末を配置しなくてもよい。或はどれかの電池の安全弁が開いてその上方で噴出ガスの燃焼を抑え切れなかった場合でも、前記煙道出口で確実に燃焼を阻止することができる。そして、噴出ガス及びその燃焼ガスは有害成分が吸着、除去された後に排出される。
【0016】
本発明は、また、リチウムイオンを互いに放出、吸蔵し合う正極と負極とさらに非水電解質を有してなる非水電解質二次電池において、正極または負極の少なくとも一方の極の電極活物質に炭酸水素アンモニウム粉末を含ませたことを特徴とする非水電解質二次電池を提案する。炭酸水素アンモニウムの存在により、電池内の温度が異常に上昇する熱暴走時に正極活物質(リチウム含有遷移金属酸化物)から放出される酸素ラジカルを炭酸水素アンモニウムが吸収し、急激な発熱が抑制されるとともに電解液の燃焼反応が阻害される。これによって、電解液が発火するのが防止される。
【発明の効果】
【0017】
アンモニウム化合物の粉末を密封して非水二次電池内の空間、或は安全弁の上方等に配置することにより、電池の過充電や内部短絡により内部温度が異常に上昇して安全弁が開弁し高温ガスが噴出する事態が生じても、素早く反応して発火に至る事態を阻止することができる。また炭酸水素アンモニウム粉末を電極活物質に含ませておくことにより、電池内の急激な温度上昇を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【0019】
図1は本発明の実施形態である非水二次電池の内部空間にアンモニウム化合物(例えば炭酸水素アンモニウム)の粉末を密封した袋が配置された状況を示す図であり、図2は図1の電池の斜視図で前記アンモニウム化合物粉末を密封した袋は除いてある。図3は図1の電池の上面図である。この非水電解質二次電池は所謂角型と呼ばれるものである。
図1〜図3において、1は非水電解質二次電池、2は正極電極、3は負極電極、4はセパレータ、5は電池ケース、6は封口板である。7は正極端子、8は負極端子、15は注液口である。12aは正極電極の一端に形成された正極タブ、12bは正極タブ12aを連結する正極リード、13aは負極電極の一端に形成された負極タブ、13bは負極タブ13aを連結する負極リードである。
【0020】
正極電極2は正極集電体とその表面に成膜された正極電極膜からなり、負極電極3は負極集電体とその表面に成膜された負極電極膜からなる。そして、複数の正負極電極2、3がセパレータ4を挟んで横方向に積層されて電極積層体14を形成している。正極電極2及び負極3はそれぞれ正極リード12b、負極リード13bで連結されて正極端子7、負極端子8に接続されている。図3において、安全弁9は2個設けられている(図2には図示省略)。該安全弁は電池内の圧力が規定の圧力を越えた際に開いて内部圧力を低下させ電池ケース5の破裂を防ぐものである。15は注液口、16は端子を封口板6に対して絶縁する絶縁部を示す。
【0021】
図1には上記電極積層体14の上端部と封口板6の下の空間にアンモニア化合物の粉末を非導電性のフィルムで密封した袋体20が配置されている状況が示されている。通常、電池ケース5に電極積層体14を納めて封口体6取り付けた後に注液口15から電解液が注入されるが、本発明においては、電池ケース5に電極積層体14を納めた後に電極積層体14の上部空間に前記袋体を配置して封口体6取り付け、その後に注液口15から電解液が注入される。袋体を配置する空間は電極積層体14の上部に限るものではなく、他の場所に空間を設けて配置してもよい。前記アンモニア化合物の粉末は平均粒径が8μm乃至20μmのものを用いるのがよい。粉末を密封した袋体はその形状をある程度柔軟に変形できるので、いろいろな形状の空間に順応させることができる。
【0022】
図4はアンモニア化合物粉末を結着剤でシート状に形成して非導電性のフィルムで包装した実施例を示し、(A)は平面図、(B)は(A)におけるX−X断面を示す。シート体21は結着剤でシート状に成形されたアンモニア化合物21aとそれを密封包装するフィルム21bからなる。このシート体21を電池内の空間に配置してもよい。配置する空間の形状が一定に定まっている場合は、このようにシート状に形成するとその配置作業が容易になるとともに、保管、運搬等も容易になる。
【0023】
前記袋体及びシート体は非導電性のフィルムで覆われているので、粉末或はシート状に固められたアンモニア化合物を成形電極積層体の上に載置しても、電極間を短絡することはなく、また、アンモニア化合物が電解液に接触することもない。
【0024】
前記非導電性のフィルムは好ましくは150℃乃至250℃で融解する、例えば高分子材で作製される。つまり、150℃乃至250℃の温度でフィルムが溶けてアンモニア化合物が散布されるようにする。アンモニア化合物の粉末を結着剤でシート状に成形する際の結着剤は150℃乃至250℃の温度で軟化して結着力が弱まるものを用いる。
【0025】
図5は安全弁部に空間を設けてアンモニア化合物の粉末の粉末を密封した袋体を配置した実施例を示し、封口板6に弁箱41と弁板42からなる安全弁40が取り付けられている。弁箱の下面には電池内部に通じる穴43が設けられている。弁板42は弁箱41に超音波溶接当により規定の圧力で溶接部が剥離して弁が開くようにしてある。或は弁板を樹脂等で作製し、規定の圧力で破壊されて弁が開くようにしてある。弁箱41の前記弁板42下部の空間にアンモニア化合物の粉末を密封した袋体20が配置してある。電池内の圧力が異常上昇して安全弁が開く際には噴出ガスにより袋体20の袋が融解、或は破損して噴出ガスはアンモニア化合物の粉末に接触し発火が防止される。他の形式の安全弁の場合も安全弁部に空間を設けて袋体20を配置するように構成することができる。
【0026】
図6は筐体内に複数の電池が配置された電力貯蔵装置の1例を示し、(A)は筐体32、33内にそれぞれ非水電解質二次電池が4個配置されているうち、筐体32に配置された電池の一個が異常温度上昇により安全弁が開いて噴出ガスが燃焼している状態を示す。(B)はその燃焼熱により筐体32に配置された電池は4個全てが温度上昇して安全弁が開き、連鎖的にガスが噴出して燃焼し、隣の筐体に配置された電池も1個が温度上昇により安全弁が開いてガスが噴出して燃焼している状態を示している。このように、個々の電池に安全弁が装着されていても、電池の温度上昇が急激で噴出ガスが高温の場合は、隣接する電池が影響を受けて連鎖的に事故が波及することになる。
【0027】
本発明の非水電解質二次電池の場合はこのように配置した場合でも、電池内に配置したアンモニア化合物により発火が防止されるので、このような連鎖発火が生じることがなくなる。
【0028】
図7は複数の非水電解質二次電池が垂直方向にも積層して配置された電気貯蔵装置の例を示す。同図において、110は非水電解質二次電池、110aは該電池の安全弁である。図では筐体111内に電池110が5列、3段に配置されている。111aは棚板、111bは側壁、111cは天板、111dは水平煙道、111eは安全弁110aからガスが噴出した場合に水平煙道111dに導くダクト126の開口部、111fは垂直煙道である。111gは前記天板111cから下方に突出する籠で、該籠に図には明示してないがアンモニア化合物粉末を密封した袋体が配置される。該籠は、例えば図8(A)、に示すように金網製の籠である。図8(B)は図8(A)のY−Y矢視図である。該籠111gは各電池110の安全弁110aの上方に配置されている。尚、矢印100は前記噴出ガスが流れる方向を示している。
【0029】
電池の異常温度上昇により電池内圧が規定圧以上に上昇して安全弁が開いた場合、安全弁から噴出したガスは先ず安全弁の上方に配置された籠内のアンモニア化合物粉末を密封した袋体に衝突して袋を融解或は破ってアンモニア化合物の粉末に接触し、該粉末が飛散して噴出ガスを覆うことになり、噴出ガスの発火が防止される。
【0030】
安全弁から噴出したガスは水平煙道111d、及び垂直煙道111fを通って煙道出口部112へ進むので、アンモニア化合物を密封した袋体は必ずしも電池の安全弁上方に配置する必要はなく、煙道の要所に配置しておくだけでもよい。その場合、最上段の電池以外からの噴出ガスは必ず垂直煙道111fを通るので、前記袋体は垂直煙道に設けるのがよい。その際、袋体によって煙道が塞がれないように、例えば複数の袋体を間隔を空けて配置し、噴出ガスの通路を確保しながら噴出ガスが袋体に接触するように配置する構成とする。
【0031】
非水二次電池の電極においては、電極集電体表面に電極活物質の粉末及び導電助剤粉末等が結着剤と混合されて膜状に成形されるが、本発明の電極では、さらに正極または負極の少なくとも一方に炭酸水素アンモニウム粉末を含めて結着剤と混合して膜状に成形される。炭酸水素アンモニウムの存在により、電池内の温度が異常に上昇する熱暴走時に正極活物質(リチウム含有遷移金属酸化物)から放出される酸素ラジカルを炭酸水素アンモニウムが吸収し、急激な発熱が抑制されるとともに電解液の燃焼反応が阻害される。
【0032】
図9は、電極に炭酸水素アンモニウム(NH)HCOを含めた場合(実施例)を、特許文献1に開示された燐酸アンモニウム(NH)HPOを含めた場合(比較例2)、及びこれらを含めない場合(比較例1)の充放電サイクル特性を比較したグラフである。炭酸水素アンモニウム(NH)HCOを含めた実施例は比較例1よりは特性の劣化が若干早いが、比較例2よりは劣化が大幅に遅いことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
多数の非水電解質二次電池を筐体内に配置した大容量の電力貯蔵装置の安全性をコンパクトで安価な構成で確保することができる。また、個々の非水電解質二次電池の信頼性をサイクル特性を犠牲にすることなく向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施例に係る非水電解質二次電池の断面図である。
【図2】図1の電池の斜視図で図1の袋体20を除去した状態を示す図である。
【図3】図1の上面図である。
【図4】アンモニウム化合物密封体の他の実施例を示す図であり、(A)は平面図、(B)は(A)におけるX−X断面図である。
【図5】本発明の他の実施例に係り、アンモニウム化合物密封体を安全弁内の空間に配置した場合を例示した図である。
【図6】複数の非水電解質二次電池を配置した場合に、1個の電池の事故が隣接する電池に連鎖的に波及する状況を示した図である。
【図7】多数の非水電解質二次電池を立体的に配置した大容量の電力貯蔵装置における本発明の実施例を示す図である。
【図8】図7におけるZ部の拡大詳細図である。
【図9】充放電サイクル特性を示すグラフである。
【符号の説明】
【0035】
1 非水電解質二次電池
2 正極電極
3 負極電極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 封口板
7 正極端子
8 負極端子
9 安全弁
12a 正極タブ
12b 正極リード
13a 負極タブ
13b 負極リード
15 注液口
16 絶縁部
20 袋体
21 シート体
31 非水電解質二次電池
32、33 筐体
100 矢印
110 非水電解質二次電池
110a 安全弁
111 筐体
111a 棚板
111b 側壁
111c 天板
111d 水平煙道
111e 開口部
111f 垂直煙道
111g 籠
120 消火槽

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオンを互いに放出、吸蔵し合う正極と負極とさらに非水電解質を有してなる非水電解質二次電池において、該電池の電池缶内部空間にアンモニウム化合物を前記非水電解質が透過しないフィルムで密封して配置したことを特徴とする非水電解質二次電池。
【請求項2】
リチウムイオンを互いに放出、吸蔵し合う正極と負極と非水電解質とさらに安全弁を有してなる非水電解質二次電池において、前記安全弁部の電池内部からの噴出ガス流の通路に空間を設け、該空間にアンモニウム化合物を前記非水電解質が透過しないフィルムで密封して配置したことを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項3】
前記アンモニウム化合物は粉末状態で電気絶縁性のフィルムよりなる袋に密封して前記電池の内部空間に配置されることを特徴とする請求項1或は2に記載の非水電解質二次電池。
【請求項4】
前記アンモニウム化合物は粉末を結着剤を用いてシート状に成形し電気絶縁性のフィルムで密閉包装して前記電池の内部空間に配置されることを特徴とする請求項1記載の非水電解質二次電池。
【請求項5】
前記アンモニウム化合物粉末の平均粒径は8μm乃至20μmであることを特徴とする請求項3或は4に記載の非水電解質二次電池。
【請求項6】
前記フィルムは150℃乃至250℃の温度で融解することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池。
【請求項7】
前記アンモニウム化合物粉末をシート状に成形するための前記結着剤は150℃乃至250℃の温度で軟化して結着力が弱くなる結着剤であることを特徴とする請求項4記載の非水電解質二次電池。
【請求項8】
複数のリチウムイオンを互いに放出、吸蔵し合う正極と負極と非水電解質とさらに安全弁を有してなる非水電解質二次電池が接続されて筐体内に配列された電力貯蔵装置において、前記筐体の各非水電解質二次電池の安全弁上方にアンモニウム化合物粉末を高分子材の袋に密封した袋体を配置したことを特徴とする非水電解質二次電池を用いた電力貯蔵装置。
【請求項9】
複数のリチウムイオンを互いに放出、吸蔵し合う正極と負極と非水電解質とさらに安全弁を有してなる非水電解質二次電池が接続されて筐体内に配列された電力貯蔵装置において、電池の異常発熱により安全弁が作動した場合に電池内部から噴出するガスを導く煙道が筐体内に形成され、該煙道内の要所にアンモニウム化合物粉末を高分子材の袋に密封した袋体を該袋体が前記煙道を閉塞することがないような構成で配置したことを特徴とする非水電解質二次電池を用いた電力貯蔵装置。
【請求項10】
前記アンモニウム化合物粉末の平均粒径は8μm乃至20μmであることを特徴とする請求項8或は9に記載の非水電解質二次電池を用いた電力貯蔵装置。
【請求項11】
前記高分子材のフィルムは150℃乃至250℃の温度で融解することを特徴とする請求項8或は9に記載の非水電解質二次電池を用いた電力貯蔵装置。
【請求項12】
リチウムイオンを互いに放出、吸蔵し合う正極と負極とさらに非水電解質を有してなる非水電解質二次電池において、正極または負極の少なくとも一方の極の電極活物質に炭酸水素アンモニウム粉末を含ませたことを特徴とする非水電解質二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−227171(P2007−227171A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47333(P2006−47333)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(000164438)九州電力株式会社 (245)
【Fターム(参考)】