説明

非負の温度係数及び関連した制御回路を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ・ターンオフ・サイリスタ

アノード、カソード及びゲート端子を有するワイド・バンドギャップ・サイリスタと、ベース、コレクタ及びエミッタ端子を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタを含む。バイポーラ・トランジスタとサイリスタとが直列接続されるように、バイポーラ・トランジスタのエミッタ端子は、サイリスタのアノード端子に直接結合される。バイポーラ・トランジスタ及びサイリスタは、ワイド・バンドギャップ・バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを特徴付け、ワイド・バンドギャップ・バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、非導通状態と、ベース端子への第一制御信号の印加及びゲート端子への第二制御信号の印加に応答してバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子に対応する第1主端子とサイリスタのカソード端子に対応する第2主端子との間に電流を流すことができる導通状態との間を切り替えるように構成される。関連した制御回路も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(政府権益の声明)
本発明は、陸軍研究所契約No.W911NF−04−2−0022に基づく米国政府の補助によって開発されたものである。米国政府は一定の本発明の権利を有する。
【0002】
本発明は、パワー半導体デバイスに関し、特に、パワー・スイッチング・デバイスを含むデバイス及び回路に関する。
【背景技術】
【0003】
パワー・デバイスは、大電流を通し高電圧をサポートするために広く用いられる。一般的に、最新のパワー・デバイスは、単結晶シリコン半導体材料から製造される。パワー・デバイスの一種はサイリスタである。サイリスタは、非導通「オフ」状態から導通「オン」状態へ、あるいはその逆方向に切り替えることができる双安定パワー半導体デバイスである。サイリスタ、ハイパワー・バイポーラ接合トランジスタ(HPBJT)、パワー金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)等のパワー半導体デバイスは、大電流を制御又は通し、及び高電圧を遮断できる半導体デバイスである。
【0004】
サイリスタは、一般的に知られており、通常、アノード、カソード及びゲートの3つの端子を有する。サイリスタは、そのゲート端子に電流パルスを受けると、そのアノード端子とカソード端子との間に電流を通すように動作する。特に、ゲートとカソードとの間に短い電流パルスを印加することにより、サイリスタはターンオンする。サイリスタが一旦ターンオンすると、ゲートはデバイスをターンオフする制御ができない。アノードとカソードとの間に逆電圧を印加することにより、ターンオフする。しかし、通常、特別に設計されたゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)は、逆ゲート・パルスによりターンオフする。一般的に、GTOサイリスタは、何らかのトリガ入力により通電を開始し、その後は、ダイオードとして動作する。
【0005】
サイリスタは、過渡電流、つまりdi/dt及びdv/dt能力が非常に高いデバイスである。従来のシリコン・サイリスタでの順電圧(V)降下は、約1.5Vから2Vであり、ハイパワー・デバイスでは、約3Vである。したがって、サイリスタは、大電流を制御又は通し、高電圧を効果的に遮断することができる(すなわち、電圧スイッチである)。
【0006】
サイリスタの2つのパラメータは、ビルトイン電位(サイリスタの製造に用いられる半導体材料のバンドギャップ特性)と、固有オン抵抗(すなわち、デバイスがターンオンした時の線形領域におけるデバイスのアノードとカソードとの間の抵抗)である。通常、サイリスタの固有オン抵抗は、サイリスタに印加された所定の電圧で単位面積当たりの電流を大きくできるようにできるだけ小さくする。固有オン抵抗が小さいほど、所定の定格電流に対する順電圧(V)降下は小さい。所定の半導体材料での最小のVは、そのビルトイン電位(電圧)である。
【0007】
シリコン制御整流器(SCR)等の従来のサイリスタは、シリコン(Si)又はガリウム砒素(GaAs)で製造される。しかし、Si又はGaAsで製造されたサイリスタは、少数キャリア寿命やドリフト領域の厚さ等のSi又はGaAs材料自身に起因する一定の性能限界がある。固有オン抵抗の最大要因は、サイリスタの低ドープの厚いドリフト領域の抵抗である。MOSFET等の多数キャリア・デバイスでは、固有オン抵抗は、ドーピング濃度と、低ドープのドリフト層の厚さにより定まる。少数キャリア(又は、バイポーラ)デバイスは、電子及び正孔の両方のキャリアをドリフト層に注入して、実質的に固有オン抵抗値を減少させる。この効果は、導電率変調と呼ばれる。通常、サイリスタの定格電圧が増加すると、ドリフト領域の厚さを増加させ、ドリフト領域のドーピングを減少させる。効率的な導電率変調のためには、極めて長い少数キャリア寿命が必要である。同時に、ドリフト層の体積も増加するため、ドリフト層に蓄えられるキャリアの量も増加する。したがって、より高い定格遮断電圧を有するデバイスでは、スイッチング時間と周波数を決定するドリフト層内のアクセス・キャリアを除去するのに必要な時間は、劇的に増加する。
【0008】
パワー・デバイスの開発努力として、パワー・デバイスに炭化ケイ素(SiC)デバイスを利用することが行われてきた。炭化ケイ素は、シリコンに比べ、広いバンドギャップ、より低い比誘電率、高い降伏電界強度、高い熱伝導率、高い飽和電子ドリフト速度を有する。これらの特性により、炭化ケイ素のパワー・デバイスは、従来のシリコン・ベースのパワー・デバイスより、高い温度及び高いパワー・レベルで動作することができ、低い固有オン抵抗及び高いスイッチング周波数を有する。シリコン・デバイスと比べた炭化ケイ素デバイスの優位性に関する理論的解析は、バートナガール(Bhatnagar)他の出版物、「パワー・デバイスのための6H−SiC、3C−SiC及びSiの比較」(“Comparison of 6H-SiC, 3C-SiC and Si for Power Devices”)、IEEE Transactions on Electron Devices、第40巻、1993年発行、645頁〜655頁に記載されている。
【0009】
(発明の概要)
本発明のいくつかの実施例によれば、電子デバイスは、アノード、カソード及びゲート端子を有するワイド・バンドギャップ・サイリスタと、ベース、コレクタ及びエミッタ端子を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタと、を含む。バイポーラ・トランジスタのエミッタ端子は、サイリスタのアノード端子に結合される。バイポーラ・トランジスタ及びサイリスタは、ハイブリット又はモノリシック・ワイド・バンドギャップ・バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを特徴付ける。ワイド・バンドギャップ・バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、非導通状態と、バイポーラ・トランジスタのベース端子への第一制御信号の印加及びサイリスタのゲート端子への第二制御信号の印加に応答してバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とサイリスタのカソード端子との間に電流を流すことができる導通状態との間を切り替えるように構成される。
【0010】
いくつかの実施例において、電子デバイスは、第一及び第二制御信号を生成して、サイリスタのゲート端子に第一制御信号を供給し、バイポーラ・トランジスタのベース端子に第二制御信号を供給し、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とサイリスタのカソード端子との間に負荷電流が流れるような導通状態にバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを切り替えるように構成される制御回路を、さらに含む。制御回路は、さらに、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子にサイリスタのゲート端子を結合して、負荷電流をサイリスタのゲート端子に転流し、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを非導通状態に切り替えるように構成される。
【0011】
いくつかの実施例において、制御回路は、バイポーラ・トランジスタを導通状態に切り替えるように構成された第一制御信号を生成するように構成される第一電圧源と、サイリスタを導通状態に切り替えるように構成された第二制御信号を生成するように構成される第二電圧源と、バイポーラ・トランジスタのベース端子に第一電圧源を結合し、そこに第一制御信号を供給するように構成される第一スイッチング素子と、サイリスタのゲート端子に第二電圧源を結合し、そこに第二制御信号を供給するように構成される第二スイッチング素子と、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子にサイリスタのゲート端子を結合するように構成される第三スイッチング素子と、を含む。
【0012】
いくつかの実施例において、制御回路は、サイリスタのゲート端子に結合される第一スイッチング素子と、バイポーラ・トランジスタのベース端子に第一制御信号を与えるように構成され、第一スイッチング素子を切り替えてサイリスタのゲート端子に第二制御信号を与えるように構成される反転ドライバ装置と、サイリスタのゲート端子とバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子との間に結合される第二スイッチング素子と、第二スイッチング素子を切り替えてバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子にサイリスタのゲート端子を結合するように構成される非反転ドライバ装置を含む。
【0013】
いくつかの実施例において、第一スイッチング素子は、サイリスタのゲート端子に結合されるソース/ドレーン端子と、反転ドライバ装置の出力に結合されるゲート端子とを有するワイド・バンドギャップ・金属酸化物半導体(MOS)トランジスタを含む。第二スイッチング素子は、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子に結合されるコレクタ端子と、サイリスタのゲート端子に結合されるエミッタ端子と、非反転ドライバ装置の出力に結合されるベース端子とを有するワイド・バンドギャップ・転流バイポーラ・トランジスタを含む。
【0014】
いくつかの実施例において、制御回路は、さらに、印加された光に応答して出力信号を与えるように構成される光トリガ・ドライバ装置を含む。反転ドライバ装置及び非反転ドライバ装置は、光トリガ・ドライバ装置の出力に結合される。反転ドライバ装置は、バイポーラ・トランジスタのベース端子に第一制御信号を与えるように構成され、光トリガ・ドライバ装置に光が印加されている時には、MOSトランジスタを導通状態に切り替えてサイリスタのゲート端子に第二制御信号を与えるように構成される。非反転ドライバ装置は、光トリガ・ドライバ装置に光が印加されていない時には、転流バイポーラ・トランジスタを導通状態に切り替えて、サイリスタのゲート端子に第一バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子を結合するように構成される。
【0015】
いくつかの実施例において、制御回路は、さらに、サイリスタのゲート端子とバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子との間に結合されるバイパス段を含む。バイパス段は、それらの間に電流を通し、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とサイリスタのカソード端子との間の電流が予め定められたレベルを上回る時には、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを非導通状態に切り替えるように構成される。
【0016】
いくつかの実施例において、バイパス段は、バイポーラ・トランジスタのコレクタとサイリスタのゲートとの間の電圧降下が、ツェナー・ダイオードの降伏電圧を上回る時には、導通するように構成されるツェナー・ダイオードを含む。いくつかの実施例において、バイパス段は、サイリスタのゲート端子とバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子との間に、直列接続された複数のパワー・ダイオードを含む
【0017】
いくつかの実施例において、バイパス段が、さらに、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子に結合されるコレクタ端子と、サイリスタのゲート端子に結合されるエミッタ端子と、ツェナー・ダイオードに結合されるベース端子とを有する転流バイポーラ・トランジスタを含む。転流バイポーラ・トランジスタは、ツェナー・ダイオードの導通に応答して、導通状態に切り替えられ、サイリスタのゲート端子に負荷電流を与えてバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを非導通状態に切り替えるように構成される。
【0018】
いくつかの実施例において、バイポーラ・トランジスタ及びサイリスタは、共通パッケージに同梱される。サイリスタの動作温度が上昇すると、サイリスタのアノード端子とカソード端子との間のオン抵抗は減少する。バイポーラ・トランジスタの動作温度が上昇すると、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とエミッタ端子との間のオン抵抗は増加する。
【0019】
いくつかの実施例において、それぞれの動作温度が上昇しても、バイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加は、サイリスタの電気抵抗の減少よりも大きい。したがって、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの動作温度が上昇しても、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの導通状態の電気抵抗は増加する。
【0020】
いくつかの実施例において、それぞれの動作温度の上昇に伴うバイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加とサイリスタの電気抵抗の減少とは実質的に同じである。したがって、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの動作温度が上昇しても、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの導通状態の電気抵抗は実質的に変化しない。
【0021】
いくつかの実施例において、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、バイポーラ・トランジスタが活性領域で動作させられる時、電流飽和能力を提供するように構成される。
【0022】
いくつかの実施例において、バイポーラ・トランジスタは、炭化ケイ素バイポーラ接合トランジスタ(BJT)を含み、サイリスタは、炭化ケイ素ゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)を含む。
【0023】
本発明の別の実施例によれば、パッケージ化したバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、ベース、コレクタ及びエミッタ端子を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタと、アノード、カソード及びゲート端子を有するワイド・バンドギャップ・サイリスタと、を含む。サイリスタのアノード端子は、バイポーラ・トランジスタのエミッタ端子に結合される。コレクタ端子が、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの第一主端子に対応し、カソード端子が、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの第二主端子に対応する。バイポーラ・パワー・トランジスタは、非導通状態と、第一及び第二主端子間に電流を流すことができる導通状態との間を切り替えるように構成される。バイポーラ・パワー・トランジスタは、導通状態において第一及び第二主端子の間で非負の温度係数を有し、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの動作温度が上昇しても、第一及び第二主端子間の電気抵抗は減少しない。
【0024】
いくつかの実施例において、サイリスタの動作温度が上昇すると、サイリスタのアノード端子とカソード端子との間のオン抵抗は減少する。バイポーラ・トランジスタの動作温度が上昇すると、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とエミッタ端子との間のオン抵抗は増加する。
【0025】
いくつかの実施例において、それぞれの動作温度が上昇しても、バイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加は、サイリスタの電気抵抗の減少よりも大きく、正の温度係数を提供し、バイポーラ・パワー・トランジスタの動作温度が上昇しても、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの第一及び第二主端子間の導通状態の電気抵抗は増加する。
【0026】
いくつかの実施例において、それぞれの動作温度の上昇に伴うバイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加とサイリスタの電気抵抗の減少とは実質的に同じであり、ゼロに近い温度係数を提供し、バイポーラ・パワー・トランジスタの動作温度が上昇しても、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの第一及び第二主端子間の導通状態の電気抵抗は実質的に変化しない。
【0027】
本発明のさらに別の実施例によれば、パッケージ化したバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ・デバイスは、アノード、カソード及びゲート端子を有するワイド・バンドギャップ・ゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)と、ベース、コレクタ及びエミッタ端子を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ接合トランジスタ(BJT)を含む。BJTのエミッタ端子がGTOのアノード端子に直接結合する。バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、非導通状態と、BJTのベース端子への第一制御信号の印加とGTOのゲート端子への第二制御信号の印加とに応答してBJTのコレクタとGTOのカソードとの間に電流を流すことができる導通状態との間を切り替えるように構成される。
【0028】
いくつかの実施例において、GTOの動作温度が上昇すると、GTOのアノード端子とカソード端子との間のオン抵抗は減少し、BJTの動作温度が上昇すると、BJTのコレクタ端子とエミッタ端子との間のオン抵抗は増加する。
【0029】
いくつかの実施例において、GTOは、カソード端子を有する第一導電型の基板と、カソード端子と反対側の基板上に設けた第一導電型とは逆の第二導電型のドリフト層と、ドリフト層上に設けられ、ゲート端子を有する第一導電型のベース層と、ベース層上に設けられ、アノード端子を有する第二導電型の第一層と、を含む。BJTは、第二導電型の第一層の直接上に設けられ、エミッタ端子を有する第一導電型の層と、第一導電型の層上に設けられる第二導電型の第二層と、を含む。第二層は、コレクタ端子を有する第一導電型の高ドープ第一領域と、ベース端子を有する第二導電型の高ドープ第二領域と、を含む。
【0030】
いくつかの実施例において、第一導電型はn型を含み、第二導電型はp型を含む。基板及びその上の層は、炭化ケイ素を含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
添付図面は、本発明がさらに理解されるように、この出願に含まれその一部をなし、本発明のいくつかの実施例を示す。
【0032】
【図1】本発明のいくつかの実施例によるデバイス及び/又は回路を示す回路図。
【図2】本発明のいくつかの実施例によるデバイス及び/又は回路を示す回路図。
【図3】本発明のいくつかの実施例によるデバイス及び/又は回路を示す回路図。
【図4】本発明のいくつかの実施例によるデバイス及び/又は回路を示す回路図。
【0033】
【図5】本発明のいくつかの実施例によるデバイスの電流−電圧(I−V)特性を示すグラフ。
【図6】本発明のいくつかの実施例によるデバイスの電流−電圧(I−V)特性を示すグラフ。
【0034】
【図7】図1のデバイスの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施例を示す添付図面を参照して本発明をより詳細に説明する。しかし、本発明は、多くの様々な形態で実施することができ、本明細書に記載された実施例に限定されないと解すべきである。むしろ、本明細書が十分で完全なものとなり、本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、これらの実施例は提供されている。なお、図面においては、層及び領域の寸法及び相対的寸法は、わかりやすさのために誇張されている場合もある。当然のことながら、要素又は層が、他の要素又は層に対して、「上」、「接続」又は「結合」という場合には、それは、他の要素又は層に対して、直接上にあり、接続し又は結合してもよいし、介在する要素又は層があってもよい。対照的に、要素が、他の要素又は層に対して、「直接上」、「直接接続」又は「直接結合」という場合には、介在する要素又は層はない。本明細書では、「及び/又は」という用語は、関連して列挙されたものの一つ以上の任意のもの及び全ての組み合わせを含む。全体を通して、同じ符号は、同じ要素を意味する。
【0036】
当然のことながら、第1及び第2という用語は、本明細書では、様々な領域、層及び/又は部分を記載するために用いるが、これらの領域、層及び/又は部分は、これらの用語により制限されるべきでない。これらの用語は、1つの領域、層又は部分を、他の領域、層又は部分と区別するためのみに用いる。したがって、本発明の範囲を逸脱することがなければ、以下で説明する第一の領域、層又は部分を、第二の領域、層又は部分といってもよいし、同様に、第二の領域、層又は部分を、第一の領域、層又は部分といってもよい。
【0037】
さらに、「下の」又は「底部」、及び「上の」又は「上部」等の相対語は、本明細書では、図示されるような1つの要素の他の要素に対する関係を記載するために用いる。当然のことながら、相対語は、図示されたデバイスの向きに加え、デバイスの様々な向きを包含することを意図している。例えば、図中のデバイスの向きを反転した場合、他の要素の「下」側と記載された要素は、他の要素の「上」側に向きが変わる。したがって、一例としての用語「下の」は、図の特定の向きに依存して、「下の」及び「上の」の両方の向きを包含することができる。同様に、複数の図の一つにあるデバイスの向きを反転した場合、他の要素の「下」又は「すぐ下」にあると記載された要素は、他の要素の「上」になることもある。したがって、一例としての用語「下」又は「すぐ下」は、上及び下の両方の向きを包含することができる。
【0038】
本明細書に使用される専門用語は、特定の実施例を説明するためだけのものであり、本発明を限定することを意図しない。本明細書では、単数形の「一つの(a)」、「一つの(an)」及び「その(the)」は、文脈によって他の明確な指示がされない限り、複数形も含むことを意図する。さらに、用語「含む(include)」及び/又は「含む(including)」は、本明細書では、記載されている特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又はコンポーネントの存在を特定するが、1つ又は複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそのグループの存在又は付加を除外しない。
【0039】
他に定めのない限りは、本明細書に使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者が一般的に理解するのと同じ意味を有する。さらに、当然のことながら、よく使用される辞書に定義のある用語等の本明細書で使用される用語は、本明細書及び関連技術の文脈における意味と整合する意味を有すると解すべきであり、本明細書に明確な定義がない限り、理想的、つまりあまりに形式的な意味に解しない。
【0040】
図面を参照すると、図1乃至図4は、本発明の様々な実施例を示す回路図である。本発明の実施例によるトランジスタ及びサイリスタは、3C、2H、4H、6H及び15Rのポリタイプを有する炭化ケイ素、又は電子デバイスを製造するために有用な様々な第III族窒化物材料の任意のものから形成される。図示された実施例において、当業者にはよく理解できる方法で、n+領域及びn−領域並びにp+領域及びp−領域は、同一の導電型の材料にそれぞれ異なる複数のドープ濃度レベルを記号で表すために「+」及び「−」が付されている。本明細書では、「+」及び「−」の表記は、材料が、変質したり(degenerate)半絶縁性であることを必ずしも表わさない。p型炭化ケイ素には、例えば、アルミ又はホウ素をドープし、n型炭化ケイ素には、例えば、窒素又はリンをドープする。p型窒化物には、例えば、マグネシウムをドープするが、n型窒化物には、例えば、ケイ素をドープする。
【0041】
当業者に知られているように、サイリスタは、電流フローのためのアノード及びカソード、並びに遮断状態から導通状態に及びその逆にデバイスを切り替えるためのゲートを有する4層からなるラッチ・スイッチング・デバイスである。ゲートに印加された制御信号により、デバイスを、電流がデバイスのアノードとカソードの間を自由に流れることができる「オン」状態又は導通状態に「ラッチ」する。制御信号を除去した後でも、デバイスは導通状態を維持する。第二制御信号は、第一制御信号とは極性が反対で、デバイスを、「オフ」状態又は遮断状態に戻す。しかし、特別に設計されたゲート・ターンオフ・サイリスタ(「GTO」)は、通常、逆ゲート・パルスによりターンオフする。一般的に、GTOサイリスタは、何らかのトリガ入力により導通を開始し、その後は、ダイオードとして動作する。以下に、いくつかのワイド・バンドギャップ・サイリスタの設計についてより詳細に説明するが、ワイド・バンドギャップ・サイリスタの設計は一般的な公知技術である。例えば、米国特許第5,539,217号は、炭化ケイ素(SiC)サイリスタの設計と製造について記載している。このような炭化ケイ素サイリスタは、同様なケイ素サイリスタより改善されたパワー処理能力を示す。
【0042】
本発明のいくつかの実施例は、従来のサイリスタでは、特に、動作温度が上昇すると、個々のオン抵抗値の差のため、サイリスタを並列にして実装することが困難であるとの認識から考えられている。特に、いくつかの従来のSiCサイリスタは、負の温度係数(NTC)を有し、動作温度が上昇すると、デバイスのオン抵抗(したがって、順電圧降下V)が減少する。このような順電圧降下の負の温度係数は、接合温度の増加のため、導通電流を増加させる。その結果、一つ以上の並列接続されたサイリスタに電流が集中して熱暴走に到る。
【0043】
本発明の実施例は、直列接続されたワイド・バンドギャップ・サイリスタ及びワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタを含むバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを提供する。このようなワイド・バンドギャップ・デバイスは、炭化ケイ素(SiC)、窒化ガリウム(GaN)及び/又はその他の第III族窒化物材料等のワイド・バンドギャップ材料の活性半導体層を含む。特に、本発明の実施例は、サイリスタのアノード端子に直列接続されたSiCバイポーラ接合トランジスタ(BJT)を少なくとも有するSiCサイリスタを提供する。本明細書ではバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ(「BTO」)というこのような構成は、従来のSiCサイリスタに比べ向上した動作特性を提供する。
【0044】
特に、本発明の実施例によるバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、ワイド・バンドギャップ・サイリスタと直列にワイド・バンドギャップBJTを接続することにより、(例えば、動作温度が上昇しても、デバイスのオン抵抗が、実質的に変化しないような)順電圧降下Vのゼロに近い温度係数、又は(例えば、動作温度が上昇しても、デバイスのオン抵抗が増加するような)正の温度係数(PTC)を提供することができる。例えば、順電圧降下に対し正の温度係数を有するSiC BJTを特に選択して、SiCサイリスタの負の温度係数を減少させ、BTOの主端子間でゼロに近い又は少しだけ正の温度係数を提供することができる。特に、SiC BJTは、飽和領域で動作させた時には、抵抗のように動作し、順電圧降下の正の温度係数を提供することができる。したがって、本発明の実施例によるバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、温度上昇に伴って順電圧降下が増加し、並列接続されたデバイスの電流分布を更に均一にできるため、より容易に並列接続することができる。
【0045】
さらに、本発明のいくつかの実施例によるバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、SiC BJTが活性領域で動作した時には、電流飽和能力を提供することができる。電流飽和能力は、このようなデバイスを、ターンオン中の突入電流及び/又は短絡事故の場合の電流オーバー・シュートから保護することができる。本発明のいくつかの実施例によるバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、飽和電流の負の温度係数も提供することができる。
【0046】
本発明のいくつかの実施例によるバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、比較的高速で切り替えることもできる。例えば、本発明のいくつかの実施例によるBTOは、SiC BJTを用いて、比較的高速でSiCサイリスタのアノード電流をターンオフすることができるため、従来のSiCサイリスタよりも高速で、ターンオフすることができる。また、ツェナー・ダイオード及び/又は直列接続された数個のパワー・ダイオードを含むバイパス段を用いて、アノード電流をサイリスタのゲート端子に逃がすと、サイリスタはターンオフする。本発明のいくつかの実施例によるバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、ゲート誘電体膜がないため、比較的高温で動作することもできる。
【0047】
図1は、本発明のいくつかの実施例による、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイス又は「BTO」100を示した概略図である。図1を参照すると、BTO100は、(図1にSiC GTO110として示される)ワイド・バンドギャップ・サイリスタに直列接続された(図1にSiC BJTエミッタフォロワ105として示される)ワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタを含み、疑似カスコード・ペアを提供する。特に、SiC GTO110は、ゲート端子110g、カソード端子110c、及びアノード端子110aを含む。SiC BJT105は、ベース端子105b、コレクタ端子105c、及びエミッタ端子105eを含む。SiC BJT105のエミッタ端子105eは、SiC GTO110のアノード端子110aに直接結合する。SiC BJT105のコレクタ105cは、(本明細書では第一主端子ともいう)BTOのアノード端子100aに結合及び/又はそれを提供し、SiC GTO110のカソード110cは、(本明細書では第二主端子ともいう)BTO100のカソード端子100cに結合及び/又はそれを提供する。ベース端子105b及びゲート端子110gは、BTO100の制御端子を提供する。BJT105及びGTO110は、共通パッケージで提供され、それらの特定の温度係数及び/又はその他の特性に基づいて選択され、非負の温度係数及び/又はその他の所望の特性を有するパッケージ化されたBTO100を提供する。本明細書では、炭化ケイ素デバイスに関して記載しているが、当然のことながら、BJT105及び/又はGTO110は、例えば、ここで記載した特許のいずれかで記載されているように、その他のワイド・バンドギャップ・半導体材料から製造される。また、図1は、npn型BJT105及びp型サイリスタ110を示しているが、当然のことながら、いくつかの実施例においては、pnp型BJT及びn型サイリスタを使う。
【0048】
ベース端子105b及びゲート端子110gへのそれぞれの制御信号の印加により、BTO100を、(アノード100aとカソード100bとの間に電流が流れない)非導通状態から(アノード100aとカソード100cとの間に電流を流すことができる)導通状態に切り替える。特に、ゲート110gへの制御信号の印加により、SiC GTO110を、導電状態又は「オン」状態に「ラッチ」することにより、アノード110aとカソード110cとの間に電流を流すことができる。同様に、ベース105bへの制御信号の印加により、SiC BJT105をターンオンして、コレクタ端子105cとエミッタ端子105eとの間に電流を通す。特に、ベース105bに印加された制御信号は、例えば、ベース電流Iの変化がコレクタ電流Iにほとんど影響を与えない飽和領域でBJT105を動作させるのに十分なものである。同様の電流レベルが、ベース105bとゲート110gに与えられ、BJT105とGTO110をそれぞれ導通状態とするため、制御回路を用いて、制御信号を生成し、BJT105のベース105bとGTO110のゲート110gの両方に制御信号を供給する。
【0049】
図2は、いくつかの実施例による図1のBTO100を駆動するための回路例を示す概略図である。図2を参照すると、制御回路200は、電圧源210と、BJT105のベース105bに結合されるバッファ増幅器又はドライバ205と、BJT105のコレクタ105cとGTO110のゲート110gとの間に結合される(図2に、ツェナー・ダイオード215として示される)バイパス段とを含む。BJT105のコレクタ105c(例えば、BTO100のアノード端子100a)は、接地230に結合されるが、GTOのカソード110c(例えば、BTO100のカソード端子100c)は、供給電圧VCC220の負側に結合される。GTO110のゲート110gとBJT105のコレクタ105cとの間の電圧降下がツェナー・ダイオード215の降伏電圧を上回る時には、バイパス段が導通するように構成され、故障電流制限機能を提供する。図2はツェナー・ダイオード215について示したが、いくつかの実施例においては、その他の要素(例えば、一つ以上の直列接続されたパワー・ダイオード)を用いてバイパス段を実装してもよい。
【0050】
図3は、いくつかの実施例において、BTO100を駆動するための回路300の例をより詳細に示す。BTO100を制御するための制御回路300は、2つのアノード基準の電圧源V1 310及びV2 320と、スイッチ301乃至304と、図3では電圧クランプ・ダイオード(又はツェナー・ダイオード)D1 315を実装したバイパス段とを含む。V1 310は、ベース105cに制御信号を与え、SiC BJT105を駆動する。V2 320は、ゲート110gに制御信号を与え、SiC GTO110を駆動する。クランプ・ダイオードD1 315は、V2 320で与えられる電圧よりも高い降伏電圧Vを有する。
【0051】
BTO100を導通状態にターンオンするために、スイッチ301及び303を閉じ、スイッチ302及び304を開く。スイッチ301を閉じることにより、V1 310の正側にベース105bを結合する。(「コレクタ接地」ともいう)エミッタフォロワであるためには、SiC BJT105のベース105bをコレクタ電位より高く引き上げて、SiC BJT105を飽和領域にしなければならない。V1 310は、この電圧を与えるために用い、SiC BJT105のベース・エミッタ間電圧降下VBEよりも高い定格電圧を有する。例えば、いくつかの実施例において、V1 310は、約3Vから約3.5Vの電圧を与えるように構成される。V1 310は、SiC BJT105に加えられるベース電流Iを調節するようにも構成される。スイッチ303を閉じることにより、V2 320の負側に、SiC GTO110のゲート110gを結合し、これにより、SiC GTO110を、遮断又は非導通状態から導通状態に遷移させる。V2 320の定格電圧も、SiC GTO110のアノード・ゲート間接合の順電圧よりも少し高い値に設定する。例えば、いくつかの実施例において、V2 330は、約3Vから約3.5Vの電圧を与えるように構成される。V2 320は、SiC GTO110に加えられるゲート電流IGを調節するようにも構成される。このように、BJT105及びGTO110が、共に導通状態に切り替えられた時に、BTO100のアノード100a端子とカソード100c端子との間に負荷電流が流れる。
【0052】
BTO100をターンオフして遮断又は非導通状態に切り替えるために、スイッチ301及び303を開いてスイッチ302及び304を閉じる。スイッチ301を開いてスイッチ302を閉じることによりV2 320の負側にSiC BJT105のベース105bを結合し、これにより、SiC BJT105をターンオフする。スイッチ303を開いてスイッチ304を閉じることにより、BTO100のアノード100aにSiC GTO110のゲート110gを結合する。結果として、負荷電流は、BTOのアノード100aからGTOのゲート110gに転流する。これにより、SiC GTO110のアノード・ゲート間接合に逆バイアスがかかる結果、SiC GTO110は瞬時にターンオフする。
【0053】
さらに、図3を参照すると、本発明のいくつかの実施例によるBTO100を含む制御回路300は、故障電流制限機能を提供する。特に、SiC BJT105のコレクタ電流Iが、ベース電流IとSiC BJT105の電流利得βとの積を下回っている間は、SiC BJT105は強力な飽和状態を維持する。この条件が一旦満足されなくなると、SiC BJT105は、活性領域に入り、その電流を、ベース電流Iと電流利得βとの積の値に制限する。これにより、SiC BJT105のコレクタ・エミッタ間電圧VCEは急増し、結果として、SiC GTOのゲートとSiC BJTのコレクタとの間の電圧も、対応した速度で増加する。ゲート110gとコレクタ105cとの間の電圧降下は、その電圧が、クランプ・ダイオードD1 315の降伏電圧Vを上回るまで増加し、上回る時点で、クランプ・ダイオードD1 315は導通を開始する。クランプ又は降伏電圧VがV2 320によって与えられた電圧を上回ることにより、クランプ・ダイオードD1 315が通常動作で導通状態となることを防ぐ。SiC BJT105のコレクタ・エミッタ間電圧VCEの増加と、クランプ・ダイオードD1 315によりSiC BJT105のコレクタ105cをSiC GTOのゲート110gにクランプすることとを組み合わせることにより、SiC GTO110のアノード・ゲート間接合を逆バイアスする。これにより、BTOのアノード100aからGTOのゲート110gに、強制的に負荷電流を転流させて、SiC GTO110を急速にターンオフさせることにより故障電流を阻止する。
【0054】
図4に、本発明のいくつかの実施例による別の制御回路400の例を示す。図4に示すように、制御回路400は、SiC GTO110の転流素子としてBJT Q2 425を用いる。図4を参照すると、BTO100が導通状態にある時には、負荷電流は、BTO100のアノード端子100aから、SiC BJT Q1 105及びSiC GTO 110を経由して、BTO100のカソード端子100cに流れる。回路400の残りの部分は、SiC GTO 110及びSiC BJT Q1 105を制御するために用いる。特に、制御回路400は、絶縁ターンオン/オフ信号を与える光トリガ・ドライバ401(光発光ダイオードその他の光源401a及び反転ドライバ401bを含む)と、反転ドライバINV402及び非反転ドライバBUF403と、SiC GTO 110にターンオン・ゲート電流を与える低電圧n型金属酸化物半導体(NMOS)トランジスタ404及び抵抗R1 405と、転流及び故障状態中にSiC GTOのゲート110gをクランプするために用いるバイパス段(BJT Q2 425及びツェナー・ダイオードD1 415を含む)とを含む。GTO100は、カスコードSiC BJT Q1 105とSiC GTO110とを含む。BTO100のカソード端子100cは、供給電圧VCC220の負側に結合される。2つの浮遊DC電圧源V1’410及びV2’420は、BTO100の接地アノード端子100aを基準として電源供給に用いる。
【0055】
図4の制御回路400の例の動作は、以下に詳細に示すように、以下の実装に基づく。特に、駆動電圧の基準点又は接地230は、BTO100のアノード端子100aである。反転ドライバINV402及び非反転ドライバBUF403の出力は、BTO100のアノード端子100aを基準とする正及び負の電位を与える。電圧振幅は、+V1’(高)から−V2’(低)であり、+V1’410及び−V’420で与えられる電圧は、それぞれ図3の電源V1 310及びV2 320で与えられる電圧と同様である。(全部ではないが)多くのコレクタ電流条件下で、SiC BJT Q1 105及びBJT Q2 425のエミッタをアノード電位まで引き上げるために、電圧源V1’410により与えられる電圧の大きさと反転ドライバINV402及び非反転ドライバBUF403の電流源能力は、十分な大きさである。(全部ではないが)多くの負荷電流条件下で、(SiC BJT Q1 105が導通している時に)SiC GTO 110をターンオンするために、電圧源V2’420により与えられる電圧の大きさとNMOSトランジスタ404の電流源能力は、十分な大きさである。反転ドライバINV402、非反転ドライバBUF403及びNMOSトランジスタ404の出力には、適切な電流制限が設けられ、(全部ではないが)多くの動作条件下で安全に動作することができる。
【0056】
さらに、図4を参照して、BTO100の遮断又は非導通状態を以下で説明する。SiC GTO110が遮断又は非導通状態にあり、光トリガ・ドライバ401をトリガするための光源401aにより光が与えられていない時には、反転ドライバINV402の出力は、電圧−V2’であり、非反転ドライバBUF403の出力は、電圧+V1’である。その結果、SiC BJT Q1 105及びNMOSトランジスタ404は、「オフ」又は遮断状態であり、BJT Q2 425は、「オン」又は導通状態である。これにより、SiC GTOのゲート110gがBTOのアノード100aに効果的に結合され、電圧の経時的変化(dV/dt)に対して比較的高い耐性を有する強固な遮断状態が提供される。
【0057】
BTO100の遮断状態から導通状態への遷移は、以下のとおりである。光トリガ・ドライバ401をトリガするための光源401aにより光が与えられている時には、反転ドライバINV402の出力は、+V1’に変化し、非反転ドライバBUF403の出力は、−V2’に変化する。その結果、BJT Q2 425はターンオフし、SiC BJT Q1 105及びNMOSトランジスタ404はターンオンする。SiC BJT Q1 105が導通状態にあるため、SiC GTO110のアノード110aは、BTO100のアノード端子100aと強く接続する。これにより、電流は、DC電圧源V2’420から、NMOSトランジスタ404を経由し、抵抗R1 405に流れ、SiC GTO110のゲート110gに入り、SiC GTO110のアノード110aを経由し、DC電圧源V2’420に戻る。この動作により、SiC GTO110のゲート110gには、抵抗R1 405の抵抗値で制限されたゲート電流Iで、順方向バイアスをかける。これにより、BTO100は導通状態となり、アノード端子100aとカソード端子100cとの間に負荷電流が流れる。この時間中、NMOSトランジスタ404のドレーン電流を、SiC GTOのゲート110gを駆動するのに適切なレベルに制限するように、NMOSトランジスタ404にバイアスをかける。
【0058】
導通状態にあるBTO100の動作は、以下のとおりである。負荷電流は、BTO100のアノード端子100aとSiC BJT Q1 105のコレクタ105cに入ってエミッタ105eから出て、SiC GTO110のアノード110aに入ってカソード110cとBTO100のカソード端子100cから出る。SiC BJT Q1 105及びSiC GTO110は、直列接続され、SiC GTO110のアノード・カソード間電圧降下を減少させる。特に、SiC BJT105は、正の温度係数を有し、動作温度の上昇と共に、そのコレクタ・エミッタ間電圧降下VCEが増加する。このように、本発明のいくつかの実施例による各パッケージ化されたBTO100のSiC BJT Q1 105は、その順電圧降下の正の温度係数及びSiC GTO110の負の温度係数に基づいて選択され、SiC GTO110の負の温度係数を減少及び/又は効果的に打ち消し、さらにいくつかの実施例においてBTO100の正の温度係数さえも与える。SiC GTO110の負の温度係数のため、従来のSiC GTOでの並列配列では、静的な電流分担が困難である。したがって、SiC BJT Q1 105を、SiC GTO110に直列接続して用いることにより、GTO100は非負(例えば、ゼロに近い又は正さえも)の温度係数を持つことができるため、電流分布をより平坦にし、本発明のいくつかの実施例によるBTOを並列接続することを容易にする。
【0059】
BTO100の導通状態から遮断状態への遷移は、以下のとおりである。光トリガ・ドライバ401をトリガするための光源401aにより光が与えられていない時には、反転ドライバINV402の出力は、−V2’に変化し、非反転ドライバBUF403の出力は、+V1’に変化する。その結果、SiC BJT Q1 105及びNMOSトランジスタ404はターンオフし、BJT Q2 425はターンオンする。SiC BJT Q1 105が非導通状態にあるため、SiC GTO110のアノード110aは、BTO100のアノード端子100aから切断される。BJT Q2 425が導通状態にあり、NMOSトランジスタ404が非導通状態にあるため、SiC GTO110のゲート110gは、電圧源V2’420から切断され、BTO100のアノード端子100aと接続される。したがって、負荷電流は、アノード端子100aからSiC GTO110のゲート110gに転流することによりSiC GTO110を急速にターンオフする。
【0060】
図4に示した本発明の実施例も、万一負荷電流が予め定められたレベルを上回るという場合には、SiC GTO110をターンオフする過電流特性を提供する。特に、SiC BJT Q1 105により与えられるコレクタ電流Iは、そのベース電流Iと電流利得βとの積の値で定まる。この値を上回ると、SiC BJT Q1 105は線形領域での動作に入り、定電流源として動作を開始する。その結果、SiC BJT105のコレクタ・エミッタ間電圧VCEは急速に増加し、結果として、BTOのアノード端子100aとSiC GTOのゲート110gとの間の電圧は増加する。アノード・ゲート間電圧降下が、ツェナー・ダイオードD1 415の降伏電圧を上回る時には、ダイオードD1 415が導通してBJT Q2 425に、ゲート電圧を予め定められたレベルにクランプさせる。故障電流が増加すると、SicBJT Q1 105のコレクタ・エミッタ間電圧VCEはさらに増加することにより、SiC GTO110のアノード・ゲート間接合に逆バイアスをかけ、SiC GTO110をターオンオフし、負荷電流を遮断する。制御回路400が損傷を受けることを防ぐように、BJT Q2 425がSiC GTO110のゲート110gをクランプする電圧を選択する。
【0061】
図4を参照して上記したように、SiC BJT Q1 105は、導通状態の連続全負荷電流をサポートし、遮断状態時には電圧V2’をサポートするように選択される。導通状態中、SiC BJT Q1 105のコレクタ・エミッタ間電圧降下VCEは、SiC GTO110のアノード・ゲート間接合に順バイアスをかけるために、十分に小さくすべきである。また、BJT Q2 425も、導通状態(例えば、SiC GTO110の転流中)の全負荷電流をサポートし、遮断状態時には電圧V2’をサポートするように選択される。導通状態中、BJT Q2 425のコレクタ・エミッタ間電圧降下VCEは、NMOSトランジスタ404に対する破壊の可能性を減少及び/又は防ぐために、V2’未満にすべきである。
【0062】
図5及び図6は、本発明のいくつかの実施例によるBTOの電流−電圧(I−V)特性を示すグラフである。特に、図5及び図6は、本発明のいくつかの実施例による、10kV SiC GTO及び1600V SiC BJTを含むSiC BTOの順方向I−V特性を示す。図5に示すように、BTOのオン抵抗が温度上昇と共に増加する構成は、正の温度係数を提供する。特に、線505(室温)、線510(約100℃)、線515(約150℃)及び線520(約200℃)で示すように動作温度が上昇すると、(増加するBTOの電圧降下で示される)BTOのオン抵抗は増加する。図6は、本発明のいくつかの実施例によるSiC BTOは、動作温度が上昇すると電流飽和能力を提供することを、線605(室温)及び線610(約200℃)で示す。
【0063】
図7は、本発明のいくつかの実施例による、共通基板上のバイポーラ・トランジスタ105及びサイリスタ110を含むSiC BTO 100の断面図である。いくつかの実施例において、先に詳細に説明したバイポーラ・トランジスタ105及びサイリスタ110は、n型4H炭化ケイ素層52上に製造及び/又は後で設ける。SiCバイポーラ・トランジスタは、例えば、米国特許第4,945,394号に記載されているが、SiCサイリスタは、例えば、米国特許第5,539,217号に記載され、それらの開示全体を本明細書で参照することにより援用する。
【0064】
図7に示すように、いくつかの実施例によるBTO100は、n型層52を含む。n型層52上には、コンタクト100c/110cが設けられ、BTO100及びGTO110の両方のカソード端子を提供する。n型層52上には、p型ドリフト層54が設けられ、p型ドリフト層54上には、n型ベース層56が設けられる。n型ベース層56の高ドープn+領域57上には、GTO110のゲートコンタクト110gが設けられる。n型ベース層56上には、p型層58が設けられ、p型層58上には、n型層60が設けられる。n型層60及びp型層58上には、それぞれBJT105のエミッタ端子及びGTO110のアノード端子として、コンタクト105e及び110aが設けられる。n型層60上には、p型層62が設けられる。p型層62は、高ドープp+領域63及び高ドープn+領域64を含む。高ドープp+領域63上には、BJT105のベース・コンタクト105bが設けられ、高ドープn+領域64上には、BTO100のアノード端子及びBJT105のコレクタ端子として、ベース・コンタクト100a/105cが設けられる。
【0065】
したがって、n型領域64、p型層62及びn型層60は、SiC BJT105を特徴付ける。p+領域63上のコンタクト105bは、BJT105のベース端子を提供し、n+領域64上のコンタクト100a/105cは、BJT105のコレクタ端子(及びBTO100のアノード端子)を提供し、n型層60上のコンタクト105eは、BJTのエミッタ端子を提供する。また、p型層58、n型ベース層56、p型ドリフト層54及びn型層52は、SiC GTO110を特徴付ける。n型ベース層56上のコンタクト110gは、GTO110のゲートコンタクトを提供し、p型層58上のコンタクト110aは、GTO110のアノード端子を提供し、n型層52上のコンタクト100c/110cは、GTO110のカソード端子(及びBTO100のカソード端子)を提供する。GJT105及びGTO110が直列接続されるように、BJTのエミッタを提供するn型層60は、GTOのアノードを提供するp型層58の直接上にある。
【0066】
図1−図7を参照して説明したように、本発明のいくつかの実施例は、バイポーラ・トランジスタ105及びサイリスタ110のモノリシック集積回路又はハイブリッド集積回路により実現することができる。本明細書では、「ハイブリッド」バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスとは、ディスクリート・バイポーラ・トランジスタ105とディスクリート・サイリスタ110のカスコード構成及び/又はその他の組合せをいう。「モノリシック」バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスとは、バイポーラ・トランジスタ105及びサイリスタ110の両方が同一の半導体チップ及び/又は基板上で製造されたデバイスをいう。本発明のいくつかの実施例によるパッケージ化されたバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、バイポーラ・トランジスタ105及びサイリスタ110を組み合わせたモノリシック集積回路及びハイブリッド集積回路の両方を含む。
【0067】
上記実施例は、特定の図面を参照して説明されているが、当然のことながら、本発明のいくつかの実施例は、追加及び/又は介在する層、構造又は要素を含み、及び/又は特定の層、構造又は要素が削除されてよい。より一般的には、前記実施例は、本発明の例示にすぎず、本発明を制限するものではないと解すべきである。本発明の実施例を説明してきたが、当業者であれば、本発明の新規な教示及び利点から実質的に逸脱することなく、実施例に多くの修正が可能なことは容易に分かることである。したがって、このような修正の全ては、請求の範囲で定義されている本発明の範囲に含まれることを意図している。当然のことながら、以上の説明は、本発明の例示であり、開示した特定の実施例に限定されないと解すべきであり、開示した実施例及びその他実施例に対する修正は、添付の請求項の範囲内に含まれることを意図している。本発明は、以下の請求項により定義されており、これらの請求項の均等物も本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード、カソード及びゲート端子を有するワイド・バンドギャップ・サイリスタと、
ベース、コレクタ及びエミッタ端子を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタであって、バイポーラ・トランジスタのエミッタ端子がサイリスタのアノード端子に結合されるワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタと、を備える電子デバイスにおいて、
バイポーラ・トランジスタ及びサイリスタは、ワイド・バンドギャップ・バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを特徴付け、ワイド・バンドギャップ・バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、非導通状態と、バイポーラ・トランジスタのベース端子への第一制御信号の印加及びサイリスタのゲート端子への第二制御信号の印加に応答してバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とサイリスタのカソード端子との間に電流が流れるような導通状態との間を切り替えるように構成される電子デバイス。
【請求項2】
請求項1記載の電子デバイスであって、
第一及び第二制御信号を生成して、サイリスタのゲート端子に第一制御信号を供給し、バイポーラ・トランジスタのベース端子に第二制御信号を供給し、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とサイリスタのカソード端子との間に負荷電流が流れるような導通状態にバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを切り替えるように構成される制御回路を、さらに備える電子デバイスにおいて、
制御回路は、さらに、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子にサイリスタのゲート端子を結合して、負荷電流をサイリスタのゲート端子に転流し、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを非導通状態に切り替えるように構成される電子デバイス。
【請求項3】
請求項2記載の電子デバイスにおいて、
制御回路は、
バイポーラ・トランジスタを導通状態に切り替えるように構成された第一制御信号を生成するように構成される第一電圧源と、
サイリスタを導通状態に切り替えるように構成された第二制御信号を生成するように構成される第二電圧源と、
バイポーラ・トランジスタのベース端子に第一電圧源を結合し、そこに第一制御信号を供給するように構成される第一スイッチング素子と、
サイリスタのゲート端子に第二電圧源を結合し、そこに第二制御信号を供給するように構成される第二スイッチング素子と、
バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子にサイリスタのゲート端子を結合するように構成される第三スイッチング素子と、を含む電子デバイス。
【請求項4】
請求項2記載の電子デバイスにおいて、
制御回路は、
サイリスタのゲート端子に結合される第一スイッチング素子と、
バイポーラ・トランジスタのベース端子に第一制御信号を与えるように構成され、第一スイッチング素子を切り替えてサイリスタのゲート端子に第二制御信号を与えるように構成される反転ドライバ装置と、
サイリスタのゲート端子とバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子との間に結合される第二スイッチング素子と、
第二スイッチング素子を切り替えてバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子にサイリスタのゲート端子を結合するように構成される非反転ドライバ装置を含む電子デバイス。
【請求項5】
請求項4記載の電子デバイスにおいて、
第一スイッチング素子は、サイリスタのゲート端子に結合されるソース/ドレーン端子と、反転ドライバ装置の出力に結合されるゲート端子とを有するワイド・バンドギャップ・金属酸化物半導体(MOS)トランジスタを含み、
第二スイッチング素子は、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子に結合されるコレクタ端子と、サイリスタのゲート端子に結合されるエミッタ端子と、非反転ドライバ装置の出力に結合されるベース端子とを有するワイド・バンドギャップ・転流バイポーラ・トランジスタを含む電子デバイス。
【請求項6】
請求項5記載の電子デバイスであって、
制御回路は、さらに、
印加された光に応答して出力信号を与えるように構成される光トリガ・ドライバ装置を含む電子デバイスにおいて、
反転ドライバ装置及び非反転ドライバ装置は、光トリガ・ドライバ装置の出力に結合され、
反転ドライバ装置は、バイポーラ・トランジスタのベース端子に第一制御信号を与えるように構成され、光トリガ・ドライバ装置に光が印加されている時には、MOSトランジスタを導通状態に切り替えてサイリスタのゲート端子に第二制御信号を与えるように構成され、
非反転ドライバ装置は、光トリガ・ドライバ装置に光が印加されていない時には、転流バイポーラ・トランジスタを導通状態に切り替えて、サイリスタのゲート端子に第一バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子を結合するように構成される電子デバイス。
【請求項7】
請求項2記載の電子デバイスにおいて、
制御回路は、さらに、
サイリスタのゲート端子とバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子との間に結合され、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とサイリスタのカソード端子との間の電流が予め定められたレベルを上回る時には、サイリスタのゲート端子とバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子との間に電流を通し、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを非導通状態に切り替えるように構成されるバイパス段を含む電子デバイス。
【請求項8】
請求項7記載の電子デバイスにおいて、
バイパス段は、バイポーラ・トランジスタのコレクタとサイリスタのゲートとの間の電圧降下が、ツェナー・ダイオードの降伏電圧を上回る時には、導通するように構成されるツェナー・ダイオードを含む電子デバイス。
【請求項9】
請求項8記載の電子デバイスであって、
バイパス段は、さらに、
バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子に結合されるコレクタ端子と、サイリスタのゲート端子に結合されるエミッタ端子と、ツェナー・ダイオードに結合されるベース端子とを有する転流バイポーラ・トランジスタを含む電子デバイスにおいて、
転流バイポーラ・トランジスタは、ツェナー・ダイオードの導通に応答して、導通状態に切り替えられ、サイリスタのゲート端子に負荷電流を与えてバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスを非導通状態に切り替えるように構成される電子デバイス。
【請求項10】
請求項7記載の電子デバイスにおいて、
バイパス段は、サイリスタのゲート端子とバイポーラ・トランジスタのコレクタ端子との間に、直列接続された複数のパワー・ダイオードを含む電子デバイス。
【請求項11】
請求項1記載の電子デバイスであって、
バイポーラ・トランジスタ及びサイリスタが、共通パッケージに同梱された電子デバイスにおいて、
サイリスタの動作温度が上昇すると、サイリスタのアノード端子とカソード端子との間のオン抵抗は減少し、バイポーラ・トランジスタの動作温度が上昇すると、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とエミッタ端子との間のオン抵抗は増加する電子デバイス。
【請求項12】
請求項11記載の電子デバイスにおいて、
バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの動作温度が上昇しても、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの導通状態の電気抵抗が増加するように、それぞれの動作温度が上昇しても、バイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加は、サイリスタの電気抵抗の減少よりも大きい電子デバイス。
【請求項13】
請求項11記載の電子デバイスにおいて、
バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの動作温度が上昇しても、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの導通状態の電気抵抗が実質的に変化しないように、それぞれの動作温度の上昇に伴うバイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加とサイリスタの電気抵抗の減少とは実質的に同じである電子デバイス。
【請求項14】
請求項1記載の電子デバイスにおいて、
バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、バイポーラ・トランジスタが活性領域で動作させられる時、電流飽和能力を提供するように構成される電子デバイス。
【請求項15】
請求項1記載の電子デバイスにおいて、
バイポーラ・トランジスタは、炭化ケイ素バイポーラ接合トランジスタ(BJT)を含み、サイリスタは、炭化ケイ素ゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)を含む電子デバイス。
【請求項16】
ベース、コレクタ及びエミッタ端子を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタであって、コレクタ端子が、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの第一主端子に対応するワイド・バンドギャップ・バイポーラ・トランジスタと、
アノード、カソード及びゲート端子を有するワイド・バンドギャップ・サイリスタであって、サイリスタのアノード端子が、バイポーラ・トランジスタのエミッタ端子に結合され、カソード端子が、バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスの第二主端子に対応するワイド・バンドギャップ・サイリスタと、を備えるパッケージ化したバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスにおいて、
バイポーラ・パワー・トランジスタは、非導通状態と、第一及び第二主端子間に電流が流れるような導通状態との間を切り替えるように構成され、バイポーラ・パワー・トランジスタは、導通状態において第一及び第二主端子の間で非負の温度係数を有するバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイス。
【請求項17】
請求項16記載のデバイスにおいて、
サイリスタの動作温度が上昇すると、サイリスタのアノード端子とカソード端子との間のオン抵抗は減少し、バイポーラ・トランジスタの動作温度が上昇すると、バイポーラ・トランジスタのコレクタ端子とエミッタ端子との間のオン抵抗は増加するバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイス。
【請求項18】
請求項17記載のデバイスにおいて、
バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスが導通状態において第一及び第二主端子の間で正の温度係数を有するように、それぞれの動作温度が上昇しても、バイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加は、サイリスタの電気抵抗の減少よりも大きいバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイス。
【請求項19】
請求項17記載のデバイスにおいて、
バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスが導通状態において第一及び第二主端子の間でゼロに近い温度係数を有するように、それぞれの動作温度の上昇に伴うバイポーラ・トランジスタのオン抵抗の増加とサイリスタの電気抵抗の減少とは実質的に同じであるバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイス。
【請求項20】
請求項1記載のデバイスにおいて、
バイポーラ・トランジスタは、炭化ケイ素バイポーラ接合トランジスタ(BJT)を含み、サイリスタは、炭化ケイ素ゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)を含むバイポーラ・パワー・スイッチング・デバイス。
【請求項21】
アノード、カソード及びゲート端子を有するワイド・バンドギャップ・ゲート・ターンオフ・サイリスタ(GTO)と、
ベース、コレクタ及びエミッタ端子を有するワイド・バンドギャップ・バイポーラ接合トランジスタ(BJT)であって、BJTのエミッタ端子がGTOのアノード端子に直接結合するワイド・バンドギャップ・バイポーラ接合トランジスタ(BJT)と、を備えるパッケージ化したバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ・デバイスにおいて、
バイポーラ・パワー・スイッチング・デバイスは、非導通状態と、BJTのベース端子への第一制御信号の印加とGTOのゲート端子への第二制御信号の印加とに応答してBJTのコレクタとGTOのカソードとの間に電流を流すことができる導通状態との間を切り替えるように構成されるパッケージ化したバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ・デバイス。
【請求項22】
請求項21記載のデバイスにおいて、
GTOの動作温度が上昇すると、GTOのアノード端子とカソード端子との間のオン抵抗は減少し、BJTの動作温度が上昇すると、BJTのコレクタ端子とエミッタ端子との間のオン抵抗は増加するバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ・デバイス。
【請求項23】
請求項21記載のデバイスにおいて、
GTOは、
カソード端子を有する第一導電型の基板と、
カソード端子と反対側の基板上に設けた第一導電型とは逆の第二導電型のドリフト層と、
ドリフト層上に設けられ、ゲート端子を有する第一導電型のベース層と、
ベース層上に設けられ、アノード端子を有する第二導電型の第一層と、を含み、
BJTは、
第二導電型の第一層の直接上に設けられ、エミッタ端子を有する第一導電型の層と、
第一導電型の層上に設けられる第二導電型の第二層であって、コレクタ端子を有する第一導電型の高ドープ第一領域と、ベース端子を有する第二導電型の高ドープ第二領域とを含む第二層と、を含むバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ・デバイス。
【請求項24】
請求項23記載のデバイスにおいて、
第一導電型はn型を含み、第二導電型はp型を含むバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ・デバイス。
【請求項25】
請求項23記載のデバイスにおいて、
基板及びその上の層は、炭化ケイ素を含むバイポーラ・ターンオフ・サイリスタ・デバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−526381(P2012−526381A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509813(P2012−509813)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【国際出願番号】PCT/US2010/025053
【国際公開番号】WO2010/129083
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(592054856)クリー インコーポレイテッド (468)
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
【Fターム(参考)】