説明

面実装用方形蓄電セル

【課題】携帯機器等に使用される面実装用コイン形蓄電セルに関し実装面積ロスが大きく小形大容量化が困難という課題を解決し、実装面積効率が高く小形大容量化が可能な面実装用方形蓄電セルを提供すること。
【解決手段】方形の蓄電素子20と、上下に配置され前記蓄電素子20を収納する一対の方形枠状の金属ケース14、15と、この一対の金属ケース14、15の開放端に組み込まれて封止する方形状の絶縁性ガスケット16と、上記一対の金属ケース14、15に夫々接合された正/負極端子板17、18からなり、上記絶縁性ガスケット16を金属ケース14、15の開放端を嵌め込む凹部を有する断面略H形状とし、上記正/負極端子板17、18の一部を接続端子として外表面に露出させるように全体に外装樹脂19を施した構成により、実装面積のロスを低減し、小形大容量化を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種電子機器に使用される面実装用蓄電セルの中で、特に実装面積効率を追求し、外観形状を方形状にした面実装用方形蓄電セルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図11(a)、(b)は、この種の従来の面実装用蓄電セルの構成を示した正面断面図と平面図であり、図11において、40は二次電池またはキャパシタ等のコイン形蓄電セルであり、正/負一対の分極性電極41a、41bを、絶縁性セパレータ42を介して対面するように配置し、図示していない駆動用電解液を含浸させて構成した蓄電素子49の両面に形成した集電体43を介して接続された上蓋金属ケース44と下蓋金属ケース45を、絶縁性ガスケット46を介して機械的かしめや絞り加工により封口された構造となっている。また、このコイン形蓄電セル40の負極に接続された負極端子板48、同じく正極に接続された正極端子板47の先端部には、半田メッキ部47a、48aが形成されている。
【0003】
従来、機器等の小形化に伴い、補助電源やメモリーのバックアップ用として用いられる1次電池やキャパシタの基板上の電子部品の面実装化が進んでおり、面実装用蓄電セルを実装する方法としてリフローハンダ付けによる面実装が主流となってきている。
【0004】
このような要望に対し、上記上蓋金属ケース44と下蓋金属ケース45を、絶縁性ガスケット46を介して機械的かしめや絞り加工により封口された構造は円周上に機械的に均一な封止性能が得られるため、円形状であるコイン状の形態で基板実装におけるリフローはんだ付けにより面実装可能な面実装用蓄電セルとして量産化されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【特許文献1】特開2002−170551号公報
【特許文献2】特開平08−298232号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、近年、携帯電話などの携帯機器等のさらなる小形化が進み、電子部品の高集積化がさらに進行し、補助電源やメモリーのバックアップ用として用いられる面実装用の1次電池やキャパシタにおいてもさらに小形化要求されている。
【0006】
また、基板への電子部品の面実装技術においても、近年の環境問題を考慮し環境負荷物質の削減のために有害物質である鉛を排除した鉛フリーはんだ付け材料が開発され、リフローはんだ付け条件のリフロー温度が高温になり、蓄電セルに対してもリフロー耐熱温度の高い高耐熱性性能で、且つ小形である面実装用蓄電セルが求められている。
【0007】
上記従来の面実装用のコイン形状である蓄電セルでは、二次電池またはキャパシタ等の蓄電セルが円形であるため、基板実装時の蓄電セル部品としての基板を占有する方形床面積は、理論上22%ロス(外装材料の被覆率を考慮しない理論値)することに加え、このコイン形状の蓄電セル40に接続された負極端子板48と正極端子板47が蓄電セル40の外周方向に突出するような構成であるため、蓄電セル40の基板を占有する方形床面積にさらに外周部に突出した端子板の床面積に相当する実装面積を必要となることから、実際のコイン形蓄電セルにおける製品直径6mmで約40%の基板実装面積ロスを生んでいるのが現状である。
【0008】
このような状況下で、携帯電話機を代表とする携帯機器等の近年更なる小形化を必要とする機器に使用される場合には、コイン形状の蓄電セルでは要求される小形大容量化の要望に対応することが困難であるという課題があった。
【0009】
このような課題を解決するために、蓄電セルを方形状にし、正/負極端子板を蓄電セルの外形内に装備することで円形の蓄電セルより約40%基板占有面積効率が良くなり小形化が可能であると考えられる。
【0010】
しかしながら、一方で方形状にした場合には、蓄電セルを構成する上下金属ケースを絶縁性ガスケットを介してかしめや絞りを行う封口構造では、コーナ部で均一に封止できないために基板実装時のリフローはんだによる熱ストレスで内部の電解液が漏れるという課題があった。
【0011】
また、金属ケースを使用せずに方形状の蓄電セルを直接樹脂モールドする構造にすることも考えられるが、蓄電セルの直接樹脂モールドは、リフローはんだ時にリフロー時の熱による電解液の膨張でモールド樹脂に亀裂が生じ、電解液が漏れるなどの信頼性に課題があった。
【0012】
本発明はこのような従来の課題である実装面積のロスを改善するため、方形状の蓄電セルで小形化を図り、かつ、基板実装時のリフロー性能を満足する性能を実現し、近年の携帯機器等の小形化に寄与する面実装用方形蓄電セルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は、正極となる分極性電極と負極となる分極性電極をセパレータを介して積層した方形状の蓄電素子と、上下に対向して配置され前記蓄電素子を収納する一対の方形状の金属ケースと、この一対の金属ケースの開放端に組み込まれて封止する方形枠状の絶縁性ガスケットと、上記一対の金属ケースに夫々接合された正/負極の端子板からなる面実装用方形蓄電セルにおいて、上記絶縁性ガスケットを上下面に一対の金属ケースの開放端を嵌め込む凹部を有する断面略H形状とし、上記正/負極の端子板の一部を実装用接続端子として外表面に露出させるように全体に外装樹脂を施した構成としたものである。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明は、蓄電素子を含めた蓄電セルを方形状にすることによって小形化が図れ、実装面積を削減すると共に、一対の方形状の金属ケースとこの一対の金属ケースの開放端を絶縁性ガスケットの上下面の凹部に嵌め込み、外装樹脂で被覆することにより、機械的カシメや絞り加工せずに確実に封口することができ、基板実装時の鉛フリーのリフローはんだにも耐える高耐熱性能を有する面実装用方形蓄電セルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の第1の発明は、正極となる分極性電極と負極となる分極性電極を、セパレータを介して積層した方形状の蓄電素子と、上下に対向して配置され前記蓄電素子を収納する一対の方形状の金属ケースと、この一対の金属ケースの開放端に組み込まれて封止する方形枠状の絶縁性ガスケットと、上記一対の金属ケースに夫々接合された正/負極の端子板からなる面実装用方形蓄電セルにおいて、上記絶縁性ガスケットを上下面に一対の金属ケースの開放端を嵌め込む凹部を有する断面略H形状とし、上記正/負極の端子板の一部を実装用接続端子として外表面に露出させるように全体に外装樹脂を施した構成としたものである。
【0016】
上記方形状の蓄電素子を上記方形状の金属ケースに封入し、全体に外装樹脂を施した構成であり、蓄電セルの実装面積が従来のコイン形の円形状の蓄電セルに比べ面積効率が高く大幅に小形化が可能であり、また上記絶縁性ガスケットの断面略H形状の凹部に一対の金属ケースの開放端を嵌め込んで封止し外装樹脂を施した構成であり、従来の円形状であるコイン形の一般的な封止方法として用いられるカシメ結合において方形の各コーナ部の機械的なカシメ加工が難しくコーナ部で均一に封止できないという問題に対し、一対の方形状の金属ケースの開放端を嵌め込み封止することにより、一挙に解決することができるものである。
【0017】
本発明の第2の発明は、上記の構成に加え、上記絶縁性ガスケットを外装樹脂の成型温度よりも高い耐熱温度を有する熱可塑性樹脂で構成したものである。
【0018】
上記絶縁性ガスケットにおいて、この絶縁性ガスケットの耐熱温度よりも高い成型温度の外装樹脂で成型加工すると、外装樹脂を形成する温度で絶縁性ガスケットが熱劣化することがあり封止性能の信頼性に欠けることがある。この課題を解決するため、外装樹脂の成型温度よりも高い耐熱温度の絶縁性ガスケットの樹脂材料を選択することで、この問題を解決し封止性能の信頼性を確保することができる。
【0019】
本発明の第3の発明は、上記の構成に加え、前記端子板の少なくとも正/負極のいずれかの端子板が金属ケースとの接続部以外を金属ケースから離れる方向に階段状に折り曲げて段差部を設けた構成としたものである。
【0020】
この段差部の一部が外表面に露呈する状態で、上記蓄電セルを外装樹脂で方形状に被覆することにより外装樹脂の下面部に容易に正/負極の端子板を形成することができ、また、端子板近傍の外装樹脂の割れを低減し金属ケースを外装樹脂で覆うので確実な封止を行うことができる。
【0021】
本発明の第4の発明は、上記の構成に加え、前記絶縁性ガスケットの外周壁部の高さが内周壁部の高さよりも高く構成したものである。
【0022】
面実装用蓄電セルは、小形化と合わせて、実装時に製品高さを低くした扁平構造にすることが必要不可欠な要求事項である。そのために、上記金属ケースの端面部内側と絶縁性ガスケットの内周壁部と係合しており、金属ケースの凹部の内周壁部及び外周壁部の高さが重要である。面実装方形蓄電セルの高さを低くするために絶縁性ガスケットの内周壁部を低くし、且つ、外周壁部の高さを内周壁部の高さより高くすることで、金属ケースの開放端と対面する外周壁部の表面積を大きくし、より確実な封止で扁平構造の面実装用方形蓄電セルが実現できる。
【0023】
本発明の第5の発明は、上記の構成に加え、ガスケットの略H形状の上下の凹部に一対の金属ケースの開放端をそれぞれ嵌め込んで熱溶着して封止するように構成したものである。上記外装樹脂を形成する前に絶縁性のガスケット16に熱を加えて金属ケースと熱溶着して封止することにより、さらに封止性能を高めることができる。
【0024】
本発明の第6の発明は、上記の構成に加え、一対の金属ケースの表面に外装樹脂との密着性を高める粗面化加工を施した構成のものである。上記一対の金属ケースの表面の表面を粗面化することにより、アンカー効果で外装樹脂との密着性を増加させより確実な封止を行うことができる。
【0025】
本発明の第7の発明は、上記の構成に加え、正/負極の端子板の表面に外装樹脂との密着性を高める粗面化加工を施した構成としたものである。正/負極の端子板の表面を粗面化することにより、アンカー効果で外装樹脂との密着性を増加させより確実な封止を行うことができる。
【0026】
本発明の第8の発明は、上記の構成に加え、前記蓄電素子を高分子電解質膜を介して金属酸化物または金属酸化物の水和物と導電性ポリマーからなる分極性電極が対面するように配置された構成としたものであり、蓄電素子より高電圧で且つ高容量、高エネルギー密度の蓄電セルを実現できる。
【0027】
本発明の第9の発明は、上記の構成に加え、前記蓄電素子を多層構造とした構成である。蓄電素子を多層構造にすることにより、蓄電素子の直列接続が可能であり、より高電圧で、且つ高エネルギー密度の蓄電セルを実現できる。
【0028】
(実施の形態1)
以下、本発明の請求項1から6に記載の発明を示す実施の形態について説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態1である面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図、図2(a)〜(c)は同面実装用方形蓄電セルに使用される金属ケースを示した平面図と正面断面図と要部拡大断面図、図3(a)〜(c)は同面実装用方形蓄電セルに使用される絶縁性ガスケットを示す平面図と正面断面図と要部の拡大断面図である。
【0030】
図1において、10は蓄電セルを示し、この蓄電セル10の主要部を構成する蓄電素子20は、方形状に形成された正/負一対の分極性電極11a,11bが同じく方形に形成された絶縁性セパレータ12を介して対面するように配置されることにより方形状に構成されている。この蓄電素子20の両面にカーボン層からなる集電体13が形成されている。
【0031】
また、絶縁性ガスケット16は、図3(a)〜(c)に示すように熱可塑性樹脂により方形枠状に形成されており、この絶縁性ガスケット16の一部の断面である図3(a)の(a−a’部)は略H形状からなり、外周壁部16bと内周壁部16cを連結部16dにより連結し、連結部16dの上下に凹部16aが形成された形状である。上記蓄電素子20に図示しない駆動用電解液を含浸させた状態で、図2(a)〜(c)で示すような方形に形成された上方の金属ケース14の開口部に設けた鍔状の係合部14aを上記絶縁性ガスケット16の略H形状の上部凹部16a内に嵌め込んで係合保持し、同様に下方の金属ケース15の開口部に設けた鍔状の係合部15aを上記金属ケース14と対向させて上記絶縁性ガスケット16の下部凹部16a内に嵌め込んで係合保持している。
【0032】
また、上記一対の金属ケース14,15の外表面に板状の正/負極端子板17、18がそれぞれレーザ溶接にて接続され、金属ケース14、15の表面に沿って互いの相反する方向に引き出し、外装樹脂19で被覆した後、それぞれの正/負極端子板17、18を外装樹脂19の側面に沿って互いに同一方向に折り曲げて外装樹脂19の底面部に正/負極端子板17、18の夫々にメッキ処理を施したメッキ処理部17a、18aを外表面に露出するように構成している。また、正/負極端子板17、18と金属ケース14、15との接続は、機械的なかしめ、超音波溶接、スポット抵抗溶接で実施してもよい。
【0033】
上記一対の分極性電極11a,11bは、活性炭粉末と導電性付与剤であるカーボンブラック、バインダとしてポリテトラフルオロエチレンを混合して混練機で十分に混練してペーストを作製し、このペーストを所望の大きさの方形に成型し、これを乾燥することにより形成したものである。
【0034】
また、上記金属ケース14,15は、ステンレス板を用いて夫々同形状、同寸法に構成されたものである。
【0035】
また、上記絶縁性ガスケット16は、熱可塑性樹脂が適しており、本実施の形態1においては、ガラスファイバー入りポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いた。
【0036】
また、上記外装樹脂19としては熱硬化性樹脂が適しており、本実施の形態1においてはエポキシ系樹脂を用いた。この外装樹脂19で被覆する際には、図示しない射出成型金型内に配置した蓄電セル10としての金属ケース14,15ならびに正/負極端子板17,18の一部を夫々図示しないスライドピンにより圧接保持するようにしてモールド成型を行う。
【0037】
また、上記外装樹脂19として熱硬化性樹脂以外に熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0038】
また、本発明は、絶縁性ガスケット16を上記外装樹脂19の成型温度よりも高い耐熱温度を有する熱可塑性樹脂で形成したものである。
【0039】
上記絶縁性ガスケット16において、この絶縁性ガスケット16の耐熱温度よりも高い成型温度の外装樹脂19で成型加工すると、外装樹脂19を形成する温度で絶縁性ガスケット16が熱劣化し封止性能の信頼性に欠けることがある。この課題を解決するため、外装樹脂19の成型温度よりも高い耐熱温度の絶縁性ガスケット16の樹脂材料を選択することで、この問題を解決し封止性能の信頼性を確保することができる。
【0040】
例えば、外装樹脂19を熱硬化性樹脂であるエポキシ系樹脂とする場合は、エポキシ系樹脂による成型温度がおおよそ150℃から200℃のレベルであり、絶縁性ガスケット16の樹脂としては、耐熱性280℃以上を有するガラスファイバー入りポリフェニレンサルファイド(PPS)以外に、ガラスファイバー入りPPSとブチルゴムの混合樹脂や耐熱性270℃レベルを有する液晶ポリマー(LCP)、耐熱性300℃を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK材)等が適している。また、外装樹脂19を熱可塑性樹脂である液晶ポリマー(LCP)とする場合は、液晶ポリマーの耐熱温度がおおよそ270℃のレベルであり、絶縁性ガスケット16の樹脂としては、耐熱性280℃以上を有するガラスファイバー入りポリフェニレンサルファイド(PPS)や耐熱性300℃を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK材)等が適している。また、絶縁性ガスケット16の材料に弾性を求めるのであれば、ブチルゴムが適している。ブチルゴムとして更に好ましくは、ノンハロゲン系ブチルゴムに補強剤としてカーボンブラックとシリカを添加し、アルキルフェノール樹脂で樹脂加硫したものを用いたものが良い。
【0041】
また、本発明は、前記正/負極端子板17、18の少なくともいずれか一方が金属ケース14、15の接続部以外を金属ケース14,15から離れる方向に階段状に折り曲げて段差部を設けた構成のものである。
【0042】
図4は、請求項3に基づく実施例である面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図である。基本的な構成は、上記実施の形態1で示した図1と同じであり、異なる部分についてのみ説明する。図4において、一対の金属ケース14,15の外表面に正極端子板17と負極端子板18がそれぞれ接合され、この負極端子板18の金属ケース15との接合部以外を金属ケース15から離れる方向に階段状に折り曲げて段差部18bが設けられており、この段差部18bの一部と上記正極端子板17の一部を外表面に露出するように外装樹脂19で被覆する。これにより面実装対応の方形蓄電セル10が構成される。
【0043】
この負極端子板18の段差部18bの一部が外装樹脂19の外表面に露出する状態で、外装樹脂19で方形状に被覆させることにより、負極端子板18の長さに起因するリアクタンスを最小にし、且つ、外装樹脂19の底部において、外装樹脂19からの端子引き出し部で外装樹脂19の割れのない確実な封止構造が得られ、負極端子板18を容易に形成することができる。すなわち、前記実施例である図1の構造において、蓄電セル10の重要な電気的特性の一つであるリアクタンスを減らすためには、負極端子板18の長さを短くする必要があり、負極端子板18を外装樹脂19の底部から引き出すことにより、負極端子板18の長さを短くできリアクタンスは低減できる。
【0044】
しかし、正/負極端子板17、18を引き出す側の外装樹脂19の底部と蓄電素子20の間は、小形化のために肉薄部で構成されており、機械的強度は低くなっている。そのために外装樹脂19の底部から負極端子板18が露出する境界部において、端子板を折り曲げるために機械的応力を加えることによりこの境界部で樹脂割れが発生する課題があった。しかし、上記負極端子板18をあらかじめ階段状に折り曲げて段差部18bを設けることにより、外装樹脂19を設けた後に負極端子板18を折り曲げる必要がなく、外装樹脂19に機械的応力が加わらず確実な封止を行うことができ、且つ、負極端子板18のリアクタンスを最小にするものである。
【0045】
また、蓄電素子20を上下に反転した構造の正極端子板17を蓄電セル10の下側に配置した構造において、正極端子板17について上記階段状に折り曲げて段差部を設ける構成も同様の効果が得られる。
【0046】
また、本発明は、前記絶縁性ガスケット16において、この絶縁性ガスケット16の外周壁部16bの高さが、内周壁部16cの高さよりも高くした構成のものである。
【0047】
図5は、その構成における面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図である。また、図6(a)〜(c)は、同面実装用方形蓄電セルに使用される金属ケースを示す平面図と正面断面図と要部拡大断面図である。図7(a)〜(c)は、同面実装用方形蓄電セル16に使用される絶縁性ガスケットを示す平面図と正面断面図と要部拡大断面図である。基本的な構成は、上記実施の形態1で示した図1と同じであり、異なる部分についてのみ説明する。図5において、絶縁性ガスケット16の断面略H形状における凹部16aに一対の金属ケース14,15の開放端14a、15aを嵌め込み係合保持し、外装樹脂19で覆う構造において、図7に示す絶縁性ガスケット16の断面略H形状における外周壁部16bの凹部16aの内面と、金属ケース14,15の開放端部で接合し、外装樹脂19により封止される。この絶縁性ガスケット16の外周壁部16bの高さh2を内周壁部16cの高さh1より高くすることにより、金属ケース14、15の開放端14a、15aとの対面する表面積を増加させ外装樹脂19により確実な封止を行い、且つ、面実装時の製品高さを低く抑えた低背品を実現できる。
【0048】
すなわち、図6において、一対の金属ケース14、15は、通常、アルミニウム平板材やステンレス平板材などが使用され、この平板材を絞り加工ないし、インパクト加工により成形される。しかしながら、絞り加工やインパクト加工後、金属ケース14,15の局面部14b、15bにおいて割れやクラックを防止するために、金型から金属ケース14、15を抜く時の抜き角度(θ)や打ち抜きのエッジ部に曲率半径(R)を持たせて加工金型が設計され、加工された金属ケース14,15は、局面部14b、15bにおいて抜き角度(θ)又は曲率(R)により、開放端14a、15aにおいて傾斜を有している。この抜き角度や曲率による傾斜により絶縁性ガスケット16の上下凹部16aに金属ケース14,15の開放端14a、15aを嵌め込むと金属ケース14、15が絶縁性ガスケット16の内周壁部16cのエッジ部16fにおいて係合時に接触するため、内周壁部16cの高さ寸法が重要な要素となる。
【0049】
一方で、携帯電話などの携帯機器は小形化と合わせて実装時に製品高さを低くした扁平構造が必要不可欠な要求事項であり、絶縁性ガスケット16の内周壁部16cの高さ寸法を高くできないという課題を有していた。
【0050】
そこで、本発明は、絶縁性ガスケット16の外周壁部16bの高さh2を内周壁部16cの高さh1より高くすることで、金属ケース14、15との対面面積を大きくし、封止性能を維持しながら、金属ケース14,15の実際の加工時にできる開放端14a、15aの傾斜を有していても面実装用方形蓄電セルの低背化が可能な構造とできる。
【0051】
また、本発明は、絶縁性ガスケット16の略H形状の上下の凹部16aに一対の金属ケース14,15の開放端をそれぞれ嵌め込んで熱溶着して封止する構成とすることもできる。図8は、その構成を示した面実装用方形蓄電セルの断面図である。基本的な構成は上記実施の形態1で示した図1と同じであり、異なる部分についてのみ説明する。図8において、絶縁性ガスケット16に熱可塑性樹脂を使用している構成である場合、外装樹脂19を形成する前に絶縁性ガスケット16に耐熱温度を超えた温度を上下の絶縁性ガスケット16の外周壁部16bの外側より、金属ケース14、15の端面部に向かって加え、金属ケース15、16の方形状の枠全周囲において熱圧接することにより、金属ケース14,15との熱溶着部16mを形成して封止することによりさらに封止性能を高めることができる。絶縁性ガスケット16にポリフェニレンサルファイド(PPS)を使用した場合は、耐熱温度を超えた300℃程度の温度で熱溶着することにより、封止性能を高めることが可能である。
【0052】
また、本発明は、一対の金属ケース14,15の表面に外装樹脂19との密着性を高める粗面化加工を施した構成とすることもできる。上記一対の金属ケース14、15はステンレス材を用いているが、金属ケース14、15の外側表面を粗面化することにより、アンカー効果で外装樹脂19との密着性を増加させ、より確実な封止を行うことができる。金属ケース14、15の粗面化加工は、サンドブラストによる粗面化やダル加工、梨地処理などにより行うことができる。
【0053】
また、本発明は、正/負極端子板17,18の表面に外装樹脂19との密着性を高める粗面化加工を施した構成とすることもでき、正/負極端子板17、18の表面を粗面化することにより、アンカー効果で外装樹脂19との密着性を増加させより確実な封止を行うことができる。
【0054】
また、上記正/負極端子板17,18はアルミニウム材またはステンレス材を用いて構成されているものであり、外装樹脂19との密着性を向上させる目的で、表面粗さ(Ra)が0.05μm以上の粗面化加工が施されると共に、図示しない基板に実装されて半田付けされる部分には錫メッキ処理部17a,18aが施されているものである。
【0055】
以上のように、本発明の実施の形態による面実装用方形蓄電セルは、蓄電素子20を含めた蓄電セル10を方形状にすることによって実装面積のロスを低減すると共に、金属ケース14,15の開口端の係合部14a,15aどうしを断面略H形状を有した絶縁性ガスケット16で係合保持し、これを外装樹脂19で被覆した構成により、一般的な結合方法として用いられるカシメ結合において方形の各コーナ部のカシメ加工が難しいという問題を一挙に解決することができるものであり、基板実装時のリフローはんだ時の耐熱性を満足するといった封止を含めた信頼性の高いレベルで、保証することが可能になる格別の効果も得られる。
【0056】
(実施の形態2)
以下、本発明の請求項8及び9に記載の発明を示す実施の形態2について説明する。
【0057】
図9は、他の面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図である。蓄電素子20が高分子電解質膜を介して金属酸化物または金属酸化物の水和物と導電性ポリマーからなる分極性電極が対面するように配置された構成のものであり、蓄電素子20の高電圧で、且つ高容量、高エネルギー密度の蓄電セル10を実現できる。基本的な構成は、上記図1に示したものと同じであり、異なる部分についてのみ説明する。
【0058】
図9において、蓄電セル10を構成する蓄電素子20は、高分子電解質膜32を介して金属酸化物と導電性ポリマーからなる分極性電極31a、31bが対面するように配置し構成したものである。
【0059】
上記金属酸化物と導電性ポリマーからなる分極性電極31a、31bは、金属酸化物の粒子と導電性ポリマーを、揮発性溶媒に分散または溶解させてペースト状としたのち、集電体13とする金属箔に塗布・乾燥することにより作製することができる。
【0060】
金属酸化物としては、RuO2,CoO2,Co34,MnO2,NiO,PbO2,WO3またはRuO2とIrO2、TiO2、ZrO2、V25、Nb25の少なくとも1種との複合物を挙げることができる。また、上記金属酸化物は、金属酸化物の水和物であってもよく、金属酸化物の粒子は0.01〜5μmのものが好ましい。
【0061】
導電性ポリマーとしては、ポリアニリン類、ポリピロール類、ポリチオフェン類などの導電性高分子からなるもの、または、スルホン酸基、スルホンイミド基、カルボン酸基等のイオン性基を有するプロトン伝導性ポリマーからなるものが挙げられる。
【0062】
また、高分子電解質膜32は、PTFE(ポリテトラフロロエチレン)繊維をスルホン酸基またはカルボン酸基を有する含フッ素陽イオン交換樹脂に混合して得られた膜のもの、多孔フィルムに官能基を有する含フッ素重合体の溶液を含浸して得られた膜等や、市販されているNafion(登録商標)、Aciplex(登録商標)、Flemion(登録商標)等を用いることができる。
【0063】
また、上記集電体13とする金属箔はステンレス、アルミニウム、チタン等の箔を用いることができる。
【0064】
以上のように本実施による面実装用方形蓄電セルは、蓄電素子20を高分子電解質膜32を介して金属酸化物または金属酸化物の水和物と導電性ポリマーからなる分極性電極31a、31bが対面するように配置し、それを積層した構成のものを用いることにより、高い電圧で高エネルギー密度を得ることができる。
【0065】
また、蓄電セル10を金属ケース14、15内に収納しこれを外装樹脂19で被覆して金属ケース14、15を外装樹脂19で押さえられるため、より一層封止能力が向上し低インピーダンス化を図ることができ、鉛フリーハンダ付けを行っても蓄電素子20へのリフローはんだ付けの熱ストレスを抑制でき、長寿命化を図ることができるという格別な効果が得られる。
【0066】
なお、図10は、本発明の他の実施例である面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図である。基本的な構成は、上記図9に基づく構成と同じであり、異なる部分についてのみ説明する。図10において、蓄電素子20を多層構造とした構成のものである。蓄電素子20を多層構造にすることにより、蓄電素子20の直列接続が可能であり、より高電圧で、且つ高エネルギー密度の蓄電セル10を実現できる。また、上記高分子電解質膜32を介して金属酸化物と導電性ポリマーからなる分極性電極31a、31bが対面するように配置し、それを3段〜6段積み重ねた蓄電素子が一対の金属ケース14、15で圧縮されて収納することにより、更なるインピーダンス特性の低減を図ることができる。
【実施例】
【0067】
実施の形態1に基づく下記2種類の実施例1および実施例2の面実装用方形蓄電セル及び実施の形態2に基づく下記2種類の実施例3および実施例4の面実装用方形蓄電セルにおいて、鉛フリー半田を用いてプリント基板にリフローハンダ付け(ピーク温度260℃ 40sec)面実装を行い、その容量変化と漏液の検査結果と、耐湿負荷試験(40℃ 60%RH 2.6V負荷 1000時間)後の容量変化の結果を(表1)に示す。なお、比較例として図11に示した面実装用方形型電気二重層キャパシタを用いた。また、サンプル数は50個であり、容量変化率はリフロー前後の容量変化率である。
【0068】
(実施例1)
図5に示す絶縁性ガスケットにガラス入りPPSを採用し陰極端子板に階段に折り曲げた段差部を設け、絶縁性ガスケットの外周壁部の高さを内周壁部の高さより高くし、金属ケースならびに正/負極端子板の表面に粗面化加工を施した面実装用方形蓄電セルを実施例1とする。
【0069】
(実施例2)
図8に示す面実装用方形蓄電セルで、上記実施例1の図5に示す面実装用方形蓄電セルにおいて絶縁性ガスケットの略H形状の凹部と金属ケースの開放端とを熱溶着を施した面実装用方形蓄電セルを実施例2とする。
【0070】
(実施例3)
図9に示す高分子電解質膜をセパレータとして使用し、分極性電極を対面するように構成した面実装用方形蓄電セルを実施例3とする。
【0071】
(実施例4)
上記図9に示す実施例3において、絶縁性ガスケットの略H形状の凹部と金属ケースの開放端とを熱溶着を施した面実装用方形蓄電セルを実施例4とする。
【0072】
(比較例)
上記図11に示すようなコイン形と同じかしめ構造で金属ケースに方形のステンレスケースを用い封止加工を施した面実装用方形電気2重層キャパシタを比較例とする。
【0073】
【表1】

【0074】
(表1)から明らかなように、本発明の実施例1〜4の面実装用方形蓄電セルは比較例に比べて、リフロー後の容量変化率が小さく、液漏れも無いことから、鉛フリーのリフロー温度に耐えることができる。また、耐湿負荷試験においても、比較例と比べて容量変化率が小さいことから信頼性の高い面実装用方形蓄電セルを提供することができる。
【0075】
なお、本実施において、蓄電セル10として電気二重層キャパシタを例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、二次電池などの蓄電セルであっても良いものであり、同様の効果が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明による面実装用方形蓄電セルは、実装面積のロスを無くして小形大容量化を図ると共に、高信頼性を実現することができるという効果を有し、特に小形化、高密度実装が要求される携帯機器用分野等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の実施の形態1による面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図
【図2】(a)同面実装用方形蓄電セルに使用される金属ケースを示す平面図、(b)同正面断面図、(c)同要部拡大断面図
【図3】(a)同面実装用方形蓄電セルに使用される絶縁性ガスケットを示す平面図、(b)正面断面図、(c)要部拡大断面図
【図4】本発明の実施の形態1による他の実施例の面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図
【図5】本発明の実施の形態1による他の実施例の面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図
【図6】(a)同面実装用方形蓄電セルに使用される金属ケースを示す平面図、(b)同正面断面図、(c)同要部拡大断面図
【図7】(a)同面実装用方形蓄電セルに使用される絶縁性ガスケットを示す平面図、(b)正面断面図、(c)要部拡大断面図
【図8】本発明の実施の形態1による他の実施例の面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図
【図9】本発明の実施の形態2による実施例の面実装用方形蓄電セルの構成を示した断面図
【図10】本発明の実施の形態2による他の実施例の面実装用方形蓄電セルの構成を示した正面図
【図11】(a)従来の面実装用コイン形蓄電セル構成を示した正面断面図、(b)同平面図
【符号の説明】
【0078】
10 蓄電セル
11a,11b 分極性電極
12 セパレータ
13 集電体
14,15 金属ケース
16 絶縁性ガスケット
17 正極端子板
17a 錫メッキ処理部
18 負極端子板
18a 錫メッキ処理部
18b 負極側の段差部
19 外装樹脂
20 蓄電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極となる分極性電極と負極となる分極性電極をセパレータを介して積層した方形状の蓄電素子と、上下に対向して配置され前記蓄電素子を収納する一対の方形状の金属ケースと、この一対の金属ケースの開放端に組み込まれて封止する方形枠状の絶縁性ガスケットと、前記一対の金属ケースに夫々接合された正/負極の端子板からなる面実装用方形蓄電セルにおいて、前記絶縁性ガスケットを上下面に一対の金属ケースの開放端を嵌め込む凹部を有する断面略H形状とし、前記正/負極の端子板の一部を実装用接続端子として外表面に露出させるように全体に外装樹脂を施した面実装用方形蓄電セル。
【請求項2】
前記絶縁性ガスケットを外装樹脂の成型温度よりも高い耐熱温度を有する熱可塑性樹脂で形成したことを特徴とする請求項1に記載の面実装用方形蓄電セル。
【請求項3】
前記端子板の少なくとも正/負極のいずれかの端子板が金属ケースとの接続部以外を金属ケースから離れる方向に階段状に折り曲げて段差部を設けた構成としたことを特徴とする請求項1に記載の面実装用方形蓄電セル。
【請求項4】
前記絶縁性ガスケットの外周壁部の高さを内周壁部の高さよりも高く構成したことを特徴とする請求項1に記載の面実装用方形蓄電セル。
【請求項5】
前記絶縁性ガスケットの略H形状の上下の凹部に一対の金属ケースの開放端をそれぞれ嵌め込み熱溶着して封止したことを特徴とする請求項1に記載の面実装用方形蓄電セル。
【請求項6】
前記一対の金属ケースの表面に外装樹脂との密着性を高める粗面化加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の面実装用方形蓄電セル。
【請求項7】
前記正/負極の端子板の表面に外装樹脂との密着性を高める粗面化加工を施したことを特徴とする請求項1に記載の面実装用方形蓄電セル。
【請求項8】
前記蓄電素子を高分子電解質膜を介して金属酸化物または金属酸化物の水和物と導電性ポリマーからなる分極性電極が対面するように配置された構成としたことを特徴とする請求項1に記載の面実装用方形蓄電セル。
【請求項9】
前記蓄電素子を多層構造としたことを特徴とする請求項1または8に記載の面実装用方形蓄電セル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−135384(P2009−135384A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−5352(P2008−5352)
【出願日】平成20年1月15日(2008.1.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】