説明

面状発熱体とそれを使用した座席

【課題】面状発熱体にあって、面状発熱体の装着による浮き上がり等を防止するとともに外力により変形する形状に馴染む柔軟性を付与し、器具に装着した際の面状発熱体1の使用感と耐久性等の信頼性を向上させる。
【解決手段】電気絶縁性基材2と、前記電気絶縁性基材上に形成した電極3および電極3より給電され、発熱する高分子抵抗体4と、電極3および高分子抵抗体4を覆い、前記電気絶縁性基材と密着させた被覆材5とを備えた面状発熱体1であって、座席基材9に密着するように面状発熱体1を両面テープ13の第1接着手段で接着固定するとともに、面状発熱体1に、該面状発熱体1が外力により変形する形状に馴染む複数のスリット11を設けている。この複数のスリット11により、外力により変形する形状に馴染む柔軟性を面状発熱体1に付与する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は任意の形状面を持つ器具、例えば連続した曲面、平面等のある器具の曲面形状に装着可能な柔軟性で、かつ変形自在な薄い面状発熱体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の面状発熱体の発熱部には、ベースポリマーと、カーボンブラック、金属粉末、グラファイトなどの導電性物質を溶媒に分散して、特にベースポリマーとして結晶性樹脂を用いてPTC特性を持たせたものが多い(例えば、特許文献1、2、3参照)。
【0003】
図5は従来のPTC特性を持たせた面状発熱体の平面図で、図6は図4のx−y線の断面図、図7は製作時の概略構成断面図である。図5、図6に示したように、面状発熱体は、ポリエステルシートなどの電気絶縁性の基材50上に、導電性ペーストを印刷・乾燥して得られる一対の櫛形状電極51、52と、これにより給電される位置に高分子抵抗体インクを印刷・乾燥して得られる高分子抵抗体53を設け、さらに基材50と同様の材質の被覆材54で櫛形状電極51、52及び高分子抵抗体53を被覆して保護する構成としたものである。
【0004】
基材50及び被覆材54としてポリエステルフィルムを用いる場合には被覆材54に例えばポリエチレン系の熱融着性樹脂55を予め接着しておき、熱を与えながら加圧する(熱時加圧)ことにより、基材50と被覆材54とを熱融着性樹脂55を介して接合される。これにより、櫛形状電極51、52及び高分子抵抗体53は外界から隔離され、長期信頼性を付与されるのである。前記した熱時加圧の手段としては、図7に被覆材54を貼り合わせる際の概略構成断面図を示したが、2本の加熱ロール56、57からなるラミネーター58が一般的である。
【0005】
PTC特性とは、温度上昇によって抵抗値が上昇し、ある温度に達すると抵抗値が急激に増加する抵抗温度特性(抵抗が正の温度係数を有する意味の英語 Positive Temperature Coefficient の頭文字を取っている)を意味しており、PTC特性を有する高分子抵抗体53は、自己温度調節機能を有する面状発熱体を提供できる。
【特許文献1】特開昭56−13689号公報
【特許文献2】特開平6−96843号公報
【特許文献3】特開平8−120182号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、ポリエステルシートなどの電気絶縁性の基材50に印刷した櫛形状電極51、52及び高分子抵抗体53を同じく電気絶縁性の被覆材54で保護する多層構造で、基材50や被覆材54の材質やその厚さによっては、柔軟性に欠け、この面状発熱体をカーシートヒータ(自動車の座席)に用いられた場合の着座感や、ハンドルヒータに用いられた場合の手触り感が損なわれるといった問題があった。
【0007】
また、それに加え、形状が面状で、その面の一部に着座等による荷重が加わった場合、その力が面状発熱体の全体にまで及んで変形し、その変形の形状によっては、面状発熱体の端にいけば、いくほど変形量が増え、面の一部に折り皺などが生じてしまい、その折り皺部分の印刷した電極及び高分子抵抗体に亀裂などが生じ耐久的に劣化してしまう心配があった。
【0008】
さらに、面状で、かつ通気性のないポリエステルシートなどの電気絶縁性の基材50や被覆材54で構成されているため、カーシートヒータに用いられた場合やハンドルヒータに用いられた場合に湿度がこもりやすく、長時間使用するとやはり着座感や手触り感が損なわれてしまう問題があった。
【0009】
また、座席にPTCヒーターを組み込んだときに、固定が不十分であると、浮き上がったり、折れたりして、外観上の見栄えを悪くしたり、PTCヒーターの電極51、52や抵抗体53に亀裂を生じさせて性能劣化させる心配があった。
【0010】
前記従来の技術の問題点に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、面状発熱体の装着による浮き上がり等を防止するとともに、外力により変形する形状に馴染む柔軟性を付与し、器具に装着した際の面状発熱体の使用感と耐久性等の信頼性を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明の面状発熱体は、座席の基部を形成するパット等の座席基材と、前記座席基材を包囲する基材表皮と、前記座席基材と基材表皮の間に位置し非通気性の電気絶縁基板に電極と発熱体材料を配設した自己温度調節機能を有するPTCヒータからなる面状発熱体とを備え、前記座席基材に密着するように面状発熱体を両面テープ等の第1接着手段で接着固定するとともに、前記面状発熱体に、該面状発熱体が外力により変形する形状に馴染む複数の変形形状馴染部を設けた構成としてある。
【0012】
また、本発明の面状発熱体は、座席の基部を形成するパット等の座席基材と、前記座席基材を包囲する基材表皮と、前記座席基材と基材表皮の間に位置し非通気性の電気絶縁基板に電極と発熱体材料を配設した自己温度調節機能を有するPTCヒータからなる面状発熱体とを備え、前記座席基材に密着するように面状発熱体を両面テープ等の第1接着手段で接着固定するとともに、前記面状発熱体に、該面状発熱体が外力により変形する形状に馴染む複数のスリットを設けた構成としてある。
【0013】
前記した構成によって、複数の変形形状馴染部または複数のスリットが、面状発熱体の外力により変形する形状に馴染んで変形し、面状発熱体に柔軟性が付与され、かつ外力を吸収し面状発熱体の全体にまで及ばなくなり、器具に装着した際の面状発熱体の使用感がよく、かつ耐久性が向上し、結果として器具の使用感と信頼性の向上にも繋がるものである。
【0014】
また、パッドに密着するようにパッドと非通気性の面状発熱体を両面テープ等で貼り合わせてパッドと面状発熱体を密着するよう配設してあるので、面状発熱体がパッドに沿ってしわやたるみを生じにくくなり座席基材と基材表皮とが密着しやすくなって、面状発熱体から基材表皮への熱伝導がより効果的に直接的に行われようになるとともに、面状発熱体の浮き上がり等が発生しなくなり、さらに構成部品も大幅に削減できるようになる。
【0015】
さらに、パッドに密着するように非通気性の面状発熱体を配設してあるので、着座等の荷重がかかってもパッドには面状発熱体によって全体的に荷重がかかるようになり変形量も少なくなる。
【0016】
そしてまた、面状発熱体に複数の変形形状馴染部または複数のスリットを設けてあるので、基材表皮と面状発熱体およびパッドのいずれかの間に熱溶融性の接着材料を介在させて基材表皮からスチームで接着する工法を用いた場合において、非通気性の面状発熱体であっても面状発熱体の複数の変形形状馴染部または複数のスリットを介してスチームが通
過するようになり、面状発熱体が強固に接着できるようになる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の面状発熱体は、外力により変形した形状に容易に馴染む柔軟性の面状発熱体にでき、かつ外力が面状発熱体の全体にまで及ばなくでき、使用感と信頼性を向上できるとともに、面状発熱体を使用した器具の使用感と信頼性も向上できる。また、パッドと面状発熱体を密着させることができ、基材表皮表面温度上昇即ち速熱性に優れるとともに、表面に浮き上がる面状発熱体の形状などの見栄えや、面状発熱体の取付によるしわなどの心配が無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
第1の発明は、座席の基部を形成するパット等の座席基材と、前記座席基材を包囲する基材表皮と、前記座席基材と基材表皮の間に位置し非通気性の電気絶縁基板に電極と発熱体材料を配設した自己温度調節機能を有するPTCヒータからなる面状発熱体とを備え、前記座席基材に密着するように面状発熱体を両面テープ等の第1接着手段で接着固定するとともに、前記面状発熱体に、該面状発熱体が外力により変形する形状に馴染む複数の変形形状馴染部を設けてなる面状発熱体である。
【0019】
第2の発明は、座席の基部を形成するパット等の座席基材と、前記座席基材を包囲する基材表皮と、前記座席基材と基材表皮の間に位置し非通気性の電気絶縁基板に電極と発熱体材料を配設した自己温度調節機能を有するPTCヒータからなる面状発熱体とを備え、前記座席基材に密着するように面状発熱体を両面テープ等の第1接着手段で接着固定するとともに、前記面状発熱体に、該面状発熱体が外力により変形する形状に馴染む複数のスリットを設けてなる面状発熱体である。
【0020】
前記の構成とすることにより、複数の変形形状馴染部または複数のスリットが、面状発熱体の外力により変形する形状に馴染むように変形し、面状発熱体に馴染む柔軟性を与えるので、例えば面状発熱体を搭載した器具の外力による変形した形状に容易に馴染む柔軟性の面状発熱体にでき、かつ外力の加わった部分の変形形状馴染部またはスリットで外力が吸収され、面状発熱体の全体にまで及ばなくできるとともに、通気性も付与され湿度のこもりも防止できる。
【0021】
従って、外力による変形が面状発熱体の全体に及んで面の一部に折り皺の発生するのを防止でき、かつ通気性があって、例えば自動車の座席にカーシートヒータとして用いられた場合に着座感や、ハンドルヒータとして用いられた場合に手触り感等の使用感の向上と、前記折り皺による電極及び高分子抵抗体等への悪影響が解消され信頼性を向上できる。
【0022】
そしてさらに、パッドに密着するようにパッドと非通気性の面状発熱体を両面テープ等で貼り合わせてパッドと面状発熱体を密着するよう配設してあるので、面状発熱体がパッドに沿ってしわやたるみを有さなくなり座席基材と基材表皮とが密着しやすくなり、面状発熱体から基材表皮への熱伝導がより効果的に直接的に行われ基材表皮表面温度上昇即ち速熱性に優れるとともに、面状発熱体の浮き上がり等が発生しなくなり、表面に浮き上がる面状発熱体の形状などの見栄えや、面状発熱体の取付によるしわなどの心配が無くなり、さらに構成部品も大幅に削減できるようになる。
【0023】
また、パッドに密着するように面状発熱体を両面テープ等の第1接着手段で接着固定してあるので、着座等の荷重がかかってもパッドには面状発熱体によって全体的に荷重がかかるようになり変形量も少なくなり、面状発熱体とパッドの相乗効果で耐荷重・耐久性を増すことができるようになる。
【0024】
第3の発明は、特に、第1または第2のいずれか1つの発明の面状発熱体は、座席基材と基材表皮に密着するように接着手段で接着固定するとともに、面状発熱体を密着させるための接着手段の一方を、面状発熱体を重ねたときに接着するような両面テープ等の第1接着手段とし、もう一方を面状発熱体を重ねたときに接着せず後から加熱などの処理で接着性を有するホットメルト接着芯等の第2接着手段とし、異なる接着方法で接着する構成としてある。
【0025】
そして、座席基材と基材表皮どちらかに両面テープ等の第1接着手段で先に面状発熱体を密着するように貼り付け、その後位置を合わせてホットメルト接着芯等の第2接着手段で貼り付けるようにして、座席基材と基材表皮との間に面状発熱体を定位置に貼り付けられ位置決めも簡単となり、さらに、第2接着手段を面状発熱体より広い面で第2接着手段で座席基材と基材表皮を面状発熱体を含めて密着させ固定することができるようになり、より基材表皮や面状発熱体の取付によるしわなどの心配が無くなる。
【0026】
第4の発明は、特に、第1〜第3のいずれか1つの発明の第1の発明の複数の変形形状馴染部または第2の発明の複数のスリットに対応する両面テープ等の第1接着手段に開口を設けた構成としてある。
【0027】
そして、面状発熱体に設けた複数の変形形状馴染部または複数のスリットに対応する位置の両面テープ等の第1接着手段に開口を設けてあるので、基材表皮と面状発熱体およびパッドのいずれかの間に熱溶融性の接着材料を介在させて基材表皮からスチームで接着する工法を用いた場合において、非通気性の面状発熱体であっても面状発熱体の複数の変形形状馴染部または複数のスリットおよび両面テープ等の第1接着手段に配設した開口を介してスチームが通過するようになり、面状発熱体が強固に接着でき、初期および経年的な基材表皮と面状発熱体およびパッドの浮きなどのトラブルを防止できるようになる。
【0028】
また、取扱や何らかの原因により、面状発熱体に設けた複数の変形形状馴染部または複数のスリットに対応する位置に両面テープ等の第1接着手段が存在すると、その露出する接着面の一部どうしが接着し合いそこを起点として織りじわが発生したり、重なり部を生じて凹凸を形成して基材表皮の表面に浮き上がり見栄えや座り心地が悪くなる心配を生じるが、面状発熱体に設けた複数の変形形状馴染部または複数のスリットに対応する位置の両面テープ等の第1接着手段に開口を設けてあるので、上記心配も生じなくなる。
【0029】
さらに、面状発熱体に設けた複数の変形形状馴染部または複数のスリットに対応する位置に両面テープ等の第1接着手段が存在すると、上記の心配より取扱等に注意を要して工程が複雑になる課題が生じるが、面状発熱体に設ける複数の変形形状馴染部または複数のスリットを形成する前に両面テープ等の第1接着手段を貼り付けて、面状発熱体と両面テープ等の第1接着手段とを同時に複数の変形形状馴染部または複数のスリットを形成することで、上記心配も解消でき、容易に面状発熱体を座席基材と基材表皮に高品位に密着することができるようになり、より基材表皮や面状発熱体の取付によるしわなどの心配が無くなる。
【0030】
第5の発明は、特に、第1〜第4のいずれか1つの発明の複数の変形形状馴染部または第2の発明の複数のスリットを、その一端部を開放して自由端とすることにより、複数の変形形状馴染部または複数のスリットのそれぞれ一端部側が自由な動きをして、第1の発明または第2の発明よりも、さらに面状発熱体が外力により変形する形状に馴染むように変形し、面状発熱体に馴染む柔軟性をより与え、例えば面状発熱体を搭載した器具の外力による変形した形状に容易に馴染む柔軟性の面状発熱体にでき、かつ外力の加わった部分の変形形状馴染部またはスリットのそれぞれの一端部側で外力がより吸収され、面状発熱体の全体にまで及ばなくでき、さらに通気性もより付与され湿度のこもりも防止できる。
【0031】
従って、外力による変形が面状発熱体の全体に及んで面の一部に折り皺の発生することがなくなり、かつ通気性があって、例えば自動車の座席にカーシートヒータとして用いられた場合に着座感や、ハンドルヒータとして用いられた場合に手触り感等の使用感の向上と、前記折り皺による電極及び高分子抵抗体等への悪影響が解消され信頼性を向上できる。
【0032】
第6の発明は、特に、第1〜第5のいずれか1つの発明の複数の変形形状馴染部または複数のスリットを、電極および高分子抵抗体より所定距離離したことにより、構造的に複数の変形形状馴染部または複数のスリットの端部の解れ、そして型抜き時の位置ズレなどで生じやすい電極及び高分子抵抗体の露出に対して余裕を持って防止できる。
【0033】
また、電極及び高分子抵抗体は変形形状馴染部またはスリットの端部より離れて位置し、電気絶縁性基材とそれに密着させた被覆材に保護され外気と遮断されるため、湿気や異物による汚染劣化や、電極の移動によるショートなどの不具合を防止でき、より性能の安定性や耐久性を向上させることができる。
【0034】
第7の発明は、特に、第1〜第6のいずれか1つの発明の複数の変形形状馴染部または複数のスリットにあって、外力により大きな変形を受ける面状発熱体の部分に配置した変形形状馴染部またはスリットを、前記面状発熱体の他部分の変形形状馴染部またはスリットより大きく形成したことにより、大きな外力が加わる面状発熱体の部分の変形形状馴染部またはスリットは、面状発熱体の大きく変形した形状にも充分に馴染むことができ、面状発熱体の全体において変形度合いに差があっても容易に対応できる。
【0035】
従って、面状発熱体が例えば自動車の座席の座部にカーシートヒータとして用いられた場合に、大きな荷重のかかる、尻が当たる座部の部分に大きな変形形状馴染部またはスリットを配置することが可能になり、座部の尻が当たる部分の大きな変形にも馴染んで着座感を一層向上させることができる。
【0036】
第8の発明は、特に、第1〜第7のいずれか1つの発明の電極を、対向した一対の主電極と前記主電極より交互で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とで構成し、複数の変形形状馴染部または複数のスリットは、細長の切り込みで、かつ前記複数の変形形状馴染部または複数のスリットを迂回した前記主電極に沿って交互に、または相対向して配置したものである。
【0037】
これにより、細長の切り込みで、かつ主電極に沿って交互に、または相対向して配置した変形形状馴染部またはスリットは、枝電極を横切ることがないから、発熱面積をできるだけ広く保持しながら設けることが可能になり、変形形状馴染部またはスリットを設けることにより生じるワット密度の上昇を抑えることができ、信頼性を向上させることができる。
【0038】
また、一般に枝電極は主電極に比べ細いため、面状発熱体に加えられた力によって生じる変形に対して亀裂等の劣化を生じやすい。然るに本実施の形態では、複数の変形形状馴染部または複数のスリットが面状発熱体に加えられた外力を遮るように作用し、外力が個々の変形形状馴染部またはスリットを越えて面状発熱体の全体にまで及ばなくなり、その外力による面状発熱体の変形が全体に及んで多くの枝電極に折り皺などが生じるのが防止され、信頼性を向上させることができる。
【0039】
第9の発明は、特に、第1〜第8のいずれか1つの発明の電極を、対向した一対の主電極と前記主電極より交互で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とで構成し、複
数の変形形状馴染部または複数のスリットは開放した一端部を、枝電極の主電極からの導出端部側に配置したものである。
【0040】
これにより、枝電極の主電極からの導出端部側に、開放した一端部を配置した複数の変形形状馴染部または複数のスリットは、それぞれ一端部側が自由な動きをして面状発熱体が外力により変形する形状に円滑に馴染むように変形し、面状発熱体に変形に馴染む柔軟性をより与え、例えば面状発熱体を装着して使用する器具の外力による変形した形状に容易に馴染む柔軟性の面状発熱体にでき、さらに通気性もより付与され湿度のこもりも防止できる。
【0041】
また、外力の加わった面状発熱体の部分の変形形状馴染部またはスリットのそれぞれの開放した一端部側で外力が、より吸収されて面状発熱体の全体にまで及ばなくできることはもちろん、枝電極の主電極からの導出端部への悪影響を避けることができる。
【0042】
従って、外力による変形が面状発熱体の全体に及んで面の一部に折り皺の発生することがなくなり、また枝電極の主電極からの導出端部への外力による悪影響が避けられ、さらに通気性があって、例えば自動車の座席にカーシートヒータとして用いられた場合に着座感や、ハンドルヒータとして用いられた場合に手触り感等の使用感の向上と、前記折り皺による電極及び高分子抵抗体等への悪影響が解消され信頼性を向上できる。
【0043】
第10の発明は、特に、第1〜第9のいずれか1つの発明の電極を、対向した一対の主電極と前記主電極より交互で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とで構成し、かつ主電極を面状発熱体の対向する外側部に配置し、複数の変形形状馴染部または複数のスリットは開放した一端部を、枝電極の主電極からの導出端部側である前記外側部に臨ましたものである。
【0044】
これにより、複数の変形形状馴染部または複数のスリットの一端部の開放は、面状発熱体の外側部に臨むことで動きが一層円滑になり、第7の発明と同様の作用効果が顕著に期待できる。
【0045】
第11の発明は、特に、第1〜第10のいずれか1つの発明の電極を、対向した一対の主電極と前記主電極より交互に、または同一位置で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とで構成し、複数の変形形状馴染部または複数のスリットは開放した一端部を、枝電極の主電極からの導出端部側に配置し、さらに複数の変形形状馴染部または前記スリットの一部は、使用器具の吊り込み部に対応するための面状発熱体の切り込み凹部に臨ましたものである。
【0046】
これにより、複数の変形形状馴染部または複数のスリットの一端部の開放は、面状発熱体の外側部だけでなく、前記外側部より内側になる面状発熱体の切り込み凹部にも臨むことで、外力による面状発熱体の変形に対し、その外側、内側において変形形状馴染部またはスリットが馴染むことが可能になり、第7の発明と同様の作用効果が顕著に期待できる。
【0047】
また、面状発熱体の内側になる複数の変形形状馴染部または複数のスリットの一端部の開放を、使用器具の吊り込み部に対応するための面状発熱体の切り込み凹部を利用することで構成を簡単にできる。
【0048】
第12の発明は、特に、第1〜第10のいずれか1つの発明の面状発熱体を座部または背もたれ部の一方または両方に設けた座席とすることにより、前記した第1〜第9のいずれか1つの発明の作用効果が得られ、使用感のいい、そして信頼性の高い座席を提供でき
る。
【0049】
第13の発明は、特に、第12の発明の座部または背もたれ部にあって、大きな荷重を受ける部分に、面状発熱体の複数の変形形状馴染部または複数のスリットのうち、大きな変形形状馴染部またはスリットを配置させたことにより、前記した第1〜第9のいずれか1つの発明の作用効果が得られ、使用感のいい、そして信頼性の高い座席を提供できる。
【0050】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0051】
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1において自動車の座席に使用した面状発熱体を示す平面図で、図2は同面状発熱体の要部断面図、図3は図1に示す面状発熱体を取りつけた自動車の座席を示す側面図で、図4は同じく面状発熱体を取りつけた自動車の座席を示す正面図である。
【0052】
図1において、面状発熱体1は、ポリエステル不織布(図示せず)にラミネートされたポリエステルフィルム等の薄肉の長方形の電気絶縁性基材2上に銀ペーストの印刷・乾燥により形成した一対(電気的に正側と負側)の電極3と、電極3に重なるように高分子抵抗体インクを印刷・乾燥により形成した高分子抵抗体4を形成している。そして、上記電極3、高分子抵抗体4、及び電気絶縁性基材2と接着性を有するアクリル系接着剤等の接着性樹脂層(図示せず)を予め形成されたポリエステルフィルム等の薄肉の電気絶縁性オーバコート材をラミネートした不織布等の被覆材5を貼り合わせて形成される。
【0053】
また、この面状発熱体1は、暖房用ヒータとして自動車の座席である座部6及び背もたれ7に取り付けて使用され、座部6及び背もたれ7の吊り込み部(図示せず)に対応するための、開放した一端部8aを有する切り込み凹部8を長手方向に沿って中央部に設け、そして座部6の前側に一端部8aを位置させて取り付けられる。
【0054】
電極3は、相対向するように幅の広い一対(電気的に正側と負側)の主電極3a、3bを面状発熱体1の長手方向の外側部及びこれら外側部に相対向した切り込み凹部8に沿って配設され、それぞれの主電極3a、3bから交互に相手側の主電極に向って複数の枝電極3c、3dを導出して全体として櫛形形状になっており、これに重なるように配設した高分子抵抗体4に多数の枝電極3c、3dより給電することで、高分子抵抗体4に電流が流れ、発熱する。
【0055】
このような面状発熱体1を装着した座部6及び背もたれ7は、一般的に座席に腰掛けた人体による荷重がかかった時に変形し、荷重がかからなくなると復元する座席の基部を形成するパット等の座席基材9と座席表皮10を備えており、従って座部6及び背もたれ7の座席基材9に両面テープ13で電気絶縁性基材2が貼りつけられ、座席表皮9に被覆材5を接着して取り付けられる薄い面状発熱体1も、前記した座部6及び背もたれ7の変形に対応して相似の変形をしなければならない。
【0056】
一方、面状発熱体1は上記したように電気の通電及び発熱のために備えている、電気絶縁性基材2に印刷配線した主電極3a、3b及び主電極3a、3bより導出し電気絶縁性基材2の広い面状に印刷配線した多数の枝電極3c、3dと、これらに重ねて電気絶縁性基材2の広い面状に印刷配線した高分子抵抗体4の機能に加え、上記した座席の変形に対応した面状発熱体1の変形の際に悪影響が無いようにする信頼性と座席であれば着座した時に皺にならないようにする着座感を1つとする使用感とに考慮しなければならない。
【0057】
そこで、本実施の形態では面状発熱体1が上記荷重である外力により変形する形状に馴染むように変形し、面状発熱体1に馴染む柔軟性を付与する複数の変形形状馴染部としての1つの例であるスリット11を面状発熱体1に形成している。
【0058】
すなわち、複数のスリット11は、面状発熱体1の外側部、切り込み凹部8より、相対向する外側部側及び切り込み凹部8の側に向って、面状発熱体1の外側部の側、切り込み凹部8の側に、開放して自由端になった一端部11aを臨まして交互に細長く切り込んで形成している。従って、複数の変形形状馴染部またはスリット11はこれを避けて蛇行した主電極3a、3bに沿って形成していることになり、また変形形状馴染部またはスリット11の一端部11aは枝電極3c、3dの主電極3a、3bからの導出端部側に配置したことになる。
【0059】
また、複数のスリット11は、電極3及び高分子抵抗体4より所定距離Lの位置に配置し、面状発熱体1の構造上から、細長く切り込んだスリット11の端部の解れ、そして型抜き時の位置ズレ等による電極3及び高分子抵抗体4の露出が起こらないようにしている。さらに複数のスリット11は、外力により大きく変形する面状発熱体1の部分1aである、例えば尻の当たる部分に配置したスリット11bを、面状発熱体1の他部分のスリット11より2倍近く大きく形成し、かつ開放した一端部11cも切り込み凹部8に臨まして大きく形成している。
【0060】
なお、高分子抵抗体4はPTC特性を有し、温度が上昇すると抵抗値が上昇し、所定の温度になるように自己温度調節機能を有するようになり、温度コントロールが不要で安全性の高い面状発熱体1としての機能を有するようになる。図中、12は主電極3への電源供給線である。
【0061】
また、面状発熱体1はその片面に第1接着手段である両面テープ13を貼り付けたのち、面状発熱体1と両面テープ13とを同時に型抜き等の抜き手段で打ち抜いて、外形形状を形成するようにして、これを密着するように両面テープ13で先に座部6及び背もたれ7のクッション部分を形成する座席基材9に位置を合わせて貼り付け、その後ホットメルト接着芯等の面状発熱体1より広い面の第2接着手段14で基材表皮10に面状発熱体1を含めて密着させ固定してある。
【0062】
上記実施の形態において、自動車の座席の座部6に使用者が着座して座部6が、尻の当たった部分を中心にして変形した際における面状発熱体1の変形動作、作用を以下に説明する。すなわち、一般的に座部6は図3、図4に矢印で示すように尻の当たった部分が大きな荷重を受けて大きく変形し、これを中心に左右の側部及び前側部にかけて徐々に変形が小さくなっていく形状に変形する。
【0063】
従って、上記したような座部6の変形に対応して内部の面状発熱体1も図3、図4に1点鎖線で示すような形状に変形するものである。このような、外力による面状発熱体1の変形が起こった際に、複数のスリット11、11bは次の様に作用して面状発熱体1に座部6の変形形状に対応できる柔軟性を与えるものである。
【0064】
すなわち、複数のスリット11、11bは、面状発熱体1の外力により変形する形状に馴染むように変形し、面状発熱体1に馴染む柔軟性を与えるので、面状発熱体1を外力による変形した形状に容易に馴染む柔軟性の面状発熱体にでき、かつ外力のかかった部分及びその近傍のスリット11、11bで前記外力が吸収され、面状発熱体1の全体にまで及ばなくできるとともに、スリット11、11bによる通気性も付与され湿度のこもりも防止できる。
【0065】
特に、外力がかかった部分とその近傍にあるスリット11、11bおいて、その一端部11a、11cが開放されているため自由な動きとなり、つまりスリット11、11bは一端部11a、11c側に近づくほど尻の荷重が少なくなり隙間が広がり気味で、かつ上向き気味に作用し外力を吸収する。
【0066】
そして、スリット11、11bは、面状発熱体1の外力により変形する形状に馴染むように変形し、荷重のかかった面状発熱体1の部分及びその近傍に馴染む柔軟性を与え、外力による変形が面状発熱体1の全体に及んで面の一部に折り皺が発生するのを防止でき、また一端部11a、11cが開放している複数のスリット11、11bには湿気のこもりがなくなり、通気性がよくなる。
【0067】
また、外力による変形が面状発熱体1の全体に及んで面の一部に折り皺の発生することがなくなるため、折り皺による主電極3a、3bと枝電極3c、3dの接続部である導出端部及び高分子抵抗体4に亀裂を生じさせる危険等の悪影響も解消される。
【0068】
従って、外力による変形が面状発熱体1の全体に及んで面の一部に折り皺が生じなくなり、かつ通気性がいいので、座部6の着座感等の使用感がよくなる。また、この面状発熱体1を自動車のハンドルを暖房するため、ハンドルヒータとして用いられた場合に手触り感等の使用感がよくなる。さらに、前記折り皺による電極及び高分子抵抗体等への悪影響の解消で信頼性が向上する。
【0069】
また本実施の形態で、複数のスリット11、11bは、電極3および高分子抵抗体4より所定距離Lだけ離れているため、構造的にスリット11、11bの端部の解れ、そして型抜き時の位置ズレなどで生じやすい電極3及び高分子抵抗体4の露出に対して余裕を持って露出しないように対処できる。
【0070】
一方、電極3及び高分子抵抗体4は、スリット11、11bより所定距離Lだけ離れて位置することになるため、電気絶縁性基材2とそれに密着させた被覆材5に保護され外気と遮断されるため、湿気や異物による汚染劣化や、電極3の移動によるショートなどの不具合を防止でき、より性能の安定性や耐久性を向上させることができる。
【0071】
また本実施の形態で、複数のスリット11、11bにあって、尻等の大きな荷重で変形を受ける面状発熱体1aの部分に配置したスリット11bは、面状発熱体1の他部分のスリット11より2倍ほど開口面積を大きく形成し、かつ一端部11cも大きくしたので、尻等の大きな外力が加わり面状発熱体1が大きく変形した形状にも充分に馴染むことができ、面状発熱体1の全体において部分的に変形度合いに差があっても容易に対応できる。
【0072】
従って、座部6として大きな荷重のかかる、尻が当たる座部6の部分の大きな変形にも馴染んで着座感を一層向上させることができる。
【0073】
また本実施の形態で、電極3は一対の主電極3a、3bとこの主電極3a、3bより交互に相手側の主電極3aまたは主電極3bに向かって導出した複数の枝電極3c、3dで構成し、複数のスリット11、11bは、細長の切り込みで、かつ複数のスリット11、11bを迂回した主電極3a、3bに沿って平行に、かつ交互に配置しているため、枝電極3c、3dを横切ることがないから、発熱面積をできるだけ広く保持しながら設けることができてスリットを設けることにより生じるワット密度の上昇を抑えることができ、信頼性を向上させることができる。
【0074】
また、一般に枝電極3c、3dは主電極3a、3bに比べ細いため、面状発熱体1に加えられた外力によって生じる変形に対して亀裂等の劣化を生じやすい。然るに本実施の形
態では、複数のスリット11、11bが面状発熱体1に加えられた外力を遮るように作用し、外力がかかった部分及びその近傍の個々のスリット11、11bを越えて面状発熱体1の全体にまで及ばなくなり、その外力による面状発熱体1の変形が全体に及んで多くの枝電極3c、3dに折り皺などが生じるのが防止され、信頼性を向上させることができる。
【0075】
また本実施の形態で、複数のスリット11、11bは開放した一端部11a、11cを、枝電極3c、3dの主電極3a、3bからの導出端部側に配置しているので、複数のスリット11、11bの一端部11a、11c側が自由な動きをして面状発熱体1が外力により変形する形状に円滑に馴染むように変形し、面状発熱体1に、変形に馴染む柔軟性をより与え、座部6の着座による変形した形状に容易に馴染む柔軟性の面状発熱体1にでき、さらに通気性もより付与され湿度のこもりを防止できる。
【0076】
また、座部6に着座したことによる外力の加わった面状発熱体1の部分及びその近傍のスリット11、11bのそれぞれの開放した一端部11a、11cの側で外力が、より吸収されて面状発熱体1の全体にまで及ばなくできることはもちろん、枝電極3c、3dの主電極3a、3bからの導出端部への悪影響を避けることができる。
【0077】
従って、外力による変形が面状発熱体1の全体に及んで面の一部に折り皺の発生することがなくなり、また枝電極3c、3dの主電極3a、3bからの導出端部への外力による悪影響が避けられ、かつ通気性により座部6の着座感や、ハンドルヒータとしての手触り感等の使用感の向上と、前記折り皺による電極3及び高分子抵抗体4等への悪影響が解消され信頼性を向上できる。
【0078】
また本実施の形態で、複数のスリット11は、開放した一端部11aが枝電極3c、3dの主電極3a、3bからの導出端部側である面状発熱体1の外側部に臨んでいるため、その動きが一層円滑になり、面状発熱体1に変形形状に対する馴染む柔軟性を確実に与えられる。
【0079】
また本実施の形態で、複数のスリット11は、開放した一端部11aが枝電極3c、3dの主電極3a、3bからの導出端部側である面状発熱体1の外側部の側に臨み、さらに複数のスリット11の一部及びスリット11bが、面状発熱体1の切り込み凹部8に臨んでいるため、外力による面状発熱体1の変形に対し、その面状発熱体1の外側、内側においてスリット11、11bが馴染むことが可能になり、面状発熱体1に変形形状に対する馴染む柔軟性を確実に与えられる。そして、面状発熱体1の内側になる複数の変形形状馴染部または複数のスリット11、11bの一端部11a、11cの開放を、座部6の吊り込み部に対応するための、切り込み凹部8を利用することで構成を簡単にできる。
【0080】
なお、上記実施の形態で複数の変形形状馴染部としてのスリット11は対向して左右から交互に設けたが、左右から同一線上に相対向させて配置しても本実施の形態と同等の作用効果を期待できるものである。
【0081】
また、上記実施の形態で面状発熱体1は座席の座部6の吊り込み部に対応して切り込み凹部8を長手方向の中央部に1つ設けたが、取り付ける使用器具、例えば座席に応じて切り込み凹部がなかったり、または2個、3個と設けてもよいものである。そして、吊り込み部が無いときには、スリット11の開放した一端部11aは、主電極3a、3bとも面状発熱体1の相対向する外側部に配置され、この主電極より導出した枝電極の導出端部側になるものである。
【0082】
また、上記実施の形態で面状発熱体1の吊り込み対応の切り込み凹部8は、開放した一
端部8aが図面上で下に配置しているが、この切り込み凹部8の一端部8aが開放されていないものであってもよく、そして前記のような一端部が開放されていない切り込み凹部の側に、スリット11、11bの一端部11a、11cを臨ましていても、そのスリット11、11bの機能は吊り込み対応の切り込み凹部8の面積が、一端部11a、11cより遙かに大きいので本実施の形態と同じように作用するものである。
【0083】
また、上記実施の形態で変形形状馴染部としてスリット11、11bは、細幅長で全体が同一幅であるが、取り付けて使用する器具の形態に応じて、その当初の課題が達成される範囲で種々変更してもよいもので、例えば長さ全体を波形状にする、長手方向の所々に膨出部を設ける、長さ全体を傾斜させて配置する、長さ全体を幅の殆どない切り込み線にする、また一端部が開放されていない自由端のない幅の狭い細長いスリット等が考えられる。
【0084】
そしてさらに、座席基材9に密着するように座席基材9と非通気性の面状発熱体1を両面テープ13で貼り合わせて座席基材9と面状発熱体1を密着するよう配設してあるので、面状発熱体1が座席基材9に沿ってしわやたるみを有さなくなり座席基材9と基材表皮10とが密着しやすくなり、面状発熱体1から基材表皮10への熱伝導がより効果的に直接的に行われ基材表皮10表面温度上昇即ち速熱性に優れるとともに、面状発熱体1の浮き上がり等が発生しなくなり、表面に浮き上がる面状発熱体1の形状などの見栄えや、面状発熱体1の取付によるしわなどの心配が無くなり、さらに構成部品も大幅に削減できるようになる。
【0085】
また、座席基材9に密着するように面状発熱体1を両面テープ13で接着固定してあるので、着座等の荷重がかかっても座席基材9には面状発熱体1によって全体的に荷重がかかるようになり変形量も少なくなり、面状発熱体1と座席基材9の相乗効果で耐荷重・耐久性を増すことができるようになる。
【0086】
そして、座席基材9と基材表皮10どちらかに第1接着手段である両面テープ13で先に面状発熱体1を密着するように貼り付け、その後位置を合わせてホットメルト接着芯等の第2接着手段14で貼り付けるようにして、座席基材9と基材表皮10との間に面状発熱体1を定位置に貼り付けられ位置決めも簡単となり、さらに、第2接着手段14を面状発熱体1より広い面で第2接着手段14で座席基材9と基材表皮10を面状発熱体1を含めて密着させ固定することができるようになり、より基材表皮10や面状発熱体1の取付によるしわなどの心配が無くなる。
【0087】
そして、面状発熱体1に設けた複数のスリット11に対応する位置の両面テープ13に開口を設けてあるので、基材表皮10と面状発熱体1および座席基材9のいずれかの間に熱溶融性の接着材料を介在させて基材表皮10からスチームで接着する工法を用いた場合、つまり本実施の形態のホットメルト接着芯等の第2接着手段14において、非通気性の面状発熱体1であっても面状発熱体1の複数のスリットおよび両面テープ13に配設した開口を介してスチームが通過するようになり、面状発熱体1が強固に接着でき、初期および経年的な基材表皮10と面状発熱体1および座席基材9の浮きなどのトラブルを防止できるようになる。
【0088】
また、取扱や何らかの原因により、面状発熱体1に設けた複数のスリットに対応する位置に両面テープ13が存在すると、その露出する接着面の一部どうしが接着し合いそこを起点として織りじわが発生したり、重なり部を生じて凹凸を形成して基材表皮10の表面に浮き上がり見栄えや座り心地が悪くなる心配を生じるが、面状発熱体1に設けた複数のスリットに対応する位置の両面テープ13の第1接着手段に開口を設けてあるので、上記心配も生じなくなる。
【0089】
さらに、面状発熱体1に設けた複数のスリットに対応する位置に両面テープ13が存在すると、上記の心配より取扱等に注意を要して工程が複雑になる課題が生じるが、面状発熱体1に設ける複数のスリットを形成する前に両面テープ13を貼り付けて、面状発熱体1と両面テープ13の第1接着手段とを同時に複数のスリットを形成することで、上記心配も解消でき、容易に、面状発熱体1を座席基材9と基材表皮10に高品位に密着することができるようになり、より基材表皮10や面状発熱体1の取付によるしわなどの心配が無くなる。
【産業上の利用可能性】
【0090】
以上のように、本発明にかかる面状発熱体は、外力により変形した形状に容易に馴染む柔軟性の付与と外力が面状発熱体の全体にまで及ばなくすることが可能になるので、暖房用ヒータとして自動車の座席、ハンドル、その他の暖房を必要とする器具に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の実施の形態1における自動車の座席に使用した面状発熱体の平面図
【図2】同実施の形態1における面状発熱体の要部断面図
【図3】同実施の形態1における面状発熱体を取りつけた自動車の座席を示す側面図
【図4】同実施の形態1における面状発熱体を取りつけた自動車の座席を示す正面図
【図5】従来の面状発熱体1を示す平面図
【図6】同発熱体の断面図
【図7】同発熱体の被覆材の貼り合わせ時の概略構成図
【符号の説明】
【0092】
1 面状発熱体
1a 大きな荷重のかかる部分
2 電気絶縁性基材
3 電極
3a、3b 主電極
3c、3d 枝電極
4 高分子抵抗体
5 被覆材
6 座部
8 切り込み凹部
8a 一端部
9 座席基材
10 座席表皮
11、11b スリット(変形形状馴染部)
11a、11c 一端部
L 所定距離
13 第1接着手段である両面テープ
14 ホットメルト接着芯等の第2接着手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座席の基部を形成するパット等の座席基材と、前記座席基材を包囲する基材表皮と、前記座席基材と基材表皮の間に位置し非通気性の電気絶縁基板に電極と発熱体材料を配設した自己温度調節機能を有するPTCヒータからなる面状発熱体とを備え、前記座席基材に密着するように面状発熱体を両面テープ等の第1接着手段で接着固定するとともに、前記面状発熱体に、該面状発熱体が外力により変形する形状に馴染む複数の変形形状馴染部を設けてなる面状発熱体。
【請求項2】
座席の基部を形成するパット等の座席基材と、前記座席基材を包囲する基材表皮と、前記座席基材と基材表皮の間に位置し非通気性の電気絶縁基板に電極と発熱体材料を配設した自己温度調節機能を有するPTCヒータからなる面状発熱体とを備え、前記座席基材に密着するように面状発熱体を両面テープ等の第1接着手段で接着固定するとともに、前記面状発熱体に、該面状発熱体が外力により変形する形状に馴染む複数のスリットを設けてなる面状発熱体。
【請求項3】
面状発熱体は、座席基材と基材表皮に密着するように接着手段で接着固定するとともに、面状発熱体を密着させるための接着手段の一方を、面状発熱体を重ねたときに接着するような両面テープ等の第1接着手段とし、もう一方を面状発熱体を重ねたときに接着せず後から加熱などの処理で接着性を有するホットメルト接着芯等の第2接着手段とした請求項1または2のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項4】
複数の変形形状馴染部または複数のスリットに対応する位置の両面テープ等の第1接着手段に開口を設けた請求項1〜3記載のいずれか1項記載の面状発熱体。
【請求項5】
複数の変形形状馴染部または複数のスリットは、その一端部を開放して自由端としてなる請求項1〜4に記載の面状発熱体。
【請求項6】
複数の変形形状馴染部または複数のスリットは、電極および高分子抵抗体より所定距離おいて配置してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項7】
複数の変形形状馴染部または複数のスリットは、外力により大きく変形する面状発熱体の部分に配置した変形形状馴染部またはスリットを、前記面状発熱体の他部分の変形形状馴染部またはスリットより大きく形成してなる請求項1〜6のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項8】
電極は、対向した一対の主電極と前記主電極より交互で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とを有し、複数の変形形状馴染部または複数のスリットは、細長の切り込みで、かつ前記複数の変形形状馴染部または複数のスリットを迂回した前記主電極に沿って交互に、または相対向して配置してなる請求項1〜7のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項9】
電極は、対向した一対の主電極と前記主電極より交互で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とを有し、複数の変形形状馴染部または複数のスリットは、開放した一端部を枝電極の主電極からの導出端部側に配置してなる請求項1〜8のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項10】
電極は、対向した一対の主電極と前記主電極より交互で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とを有し、かつ主電極を面状発熱体の対向する外側部に配置し、複数の変形形状馴染部または複数のスリットは開放した一端部を、枝電極の主電極からの導出端部側
である前記外側部に臨ましてなる請求項1〜9のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項11】
電極は、対向した一対の主電極と前記主電極より交互または同一位置で、かつ相手側に向かって導出した複数の枝電極とを有し、複数の変形形状馴染部または複数のスリットは開放した一端部を、枝電極の主電極からの導出端部側に配置し、さらに複数の変形形状馴染部または前記スリットの一部は、使用器具の吊り込み部に対応するための面状発熱体の切り込み凹部に臨ましてなる請求項1〜10のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の面状発熱体を座部または背もたれ部の一方または両方に設けてなる座席。
【請求項13】
座部または背もたれ部にあって、大きな荷重を受ける部分に、面状発熱体の複数の変形形状馴染部または複数のスリットのうち、大きな変形形状馴染部またはスリットを配置させてなる請求項12記載の座席。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−52945(P2007−52945A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−235744(P2005−235744)
【出願日】平成17年8月16日(2005.8.16)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】