説明

面発光レーザ、面発光レーザアレイ、画像形成装置

【課題】 本願発明は、十分な光出力を確保しつつ、電子写真装置の光源として好適な面発光レーザおよび該面発光レーザを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【解決手段】 上部ミラーの上部に第1の表面段差構造を有し、第1の領域における光路長と、第2の領域における光路長との差Lが、(1/4+N)λ<|L|<(3/4+N)λ(Nは整数)を満たす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面発光レーザ、面発光レーザアレイ、及びこれらを用いた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置として走査光学装置が提案されており、この種の走査光学装置においては、光源から出射された光を光偏向器(例えば、ポリゴンミラー)を用いて被走査面である感光体に潜像を形成している。
【0003】
また、特許文献1には、この画像形成装置の光源として、2次元アレイ化が容易な面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を用いた例が開示されている。
【0004】
この画像形成装置においては、面発光レーザから出射された光束(レーザビーム)を、コリメータレンズにより略平行光束に変換し、ポリゴンミラー(回転多面鏡)の光偏向反射面(偏向面)に導いている。そして光偏向器によって偏向された光束を結像光学系(fθレンズ系)により被走査面上にスポット状に結像させ、該光束で被走査面上を等速走査している。
【0005】
また、この画像形成装置においては、偏向方向(主走査方向)と直交する副走査方向(副走査断面内)ではコリメータレンズから射出された平行光束をシリンドリカルレンズにより光偏向反射面またはその近傍に集光させている。その後、結像光学系で被走査面上に再結像する、いわゆる倒れ補正光学系を用いている。
【0006】
図21は、面発光レーザ1400の断面模式図を示したものである。
半導体からなる基板110上に下部ミラー112、活性層114、上部ミラー116を構成する複数の半導体層が設けられており、これによって垂直共振器が形成されている。活性層114および上部ミラー116は部分的にエッチングされ、メサ構造を形成している。
上部ミラー116には、活性層に流れる電流を制限するとともに、活性層の発光領域を規定する電流狭窄構造118が設けられている。例えば電流狭窄構造118はAlGaAs等の半導体層をメサ構造の側面から酸化することにより構成されている。
【0007】
また、半導体を酸化することにより構成された電流狭窄構造118の絶縁体部分は半導体部分よりも屈折率が低くなっており、電流狭窄構造118は中央部の屈折率が周辺部の屈折率よりも高い、いわゆる導波構造を形成している。このため、電流狭窄構造118は、共振器の基本モード130を含む共振モードのプロファイルを規定する。
【0008】
基板下側の下部電極120および上部ミラー上側の上部電極122により、活性層114に電流が注入され、上部ミラー116と下部ミラー112とで構成された共振器によって面発光レーザ1400は発振に至る。また、上部ミラー116の上側の出射面には誘電体等からなる保護膜124が設けられている。
走査光学系を用いる画像形成装置では、一般に被走査面に単峰の潜像を形成する。このため、面発光レーザの発振モード(横モード)としては、基本モード(最低次のモード)が利用されるのが一般的である。
図21に示すように、基本モード130は共振器内で単峰の強度分布を持ち、この基本モード130の電場振幅プロファイルは一般的にガウス関数で近似できる。すなわち、基本モードで単一横モード発振する面発光レーザから出射するビームは通常ガウスビームである。
【0009】
ここで、光出射面直後の平面における電場の複素振幅(振幅および位相)を近視野複素振幅という。また、その電場の振幅、強度、位相は、それぞれ近視野振幅、近視野強度、近視野位相という。また、近視野強度の分布を近視野像(NFP:Near Field Pattern)という。
【0010】
また、光源を中心とした半径∞の球面における電場の複素振幅(振幅および位相)を遠視野複素振幅という。また、その電場の振幅、強度、位相は、それぞれ遠視野振幅、遠視野強度、遠視野位相という。また、遠視野強度の分布を遠視野像(FFP:Far Field Pattern)という。
【0011】
図22(a)には、この面発光レーザの基本モードの近視野複素振幅(振幅、位相)の一例を示した。また、図22(b)には、基本モードの遠視野複素振幅(振幅、位相)の一例を示した。
【0012】
図21に示す面発光レーザの基本モードの近視野複素振幅のプロファイル132は共振器内の基本モード130のプロファイルとほぼ同形のガウス関数状である。フラウンホーファ回折理論によれば、近視野複素振幅と遠視野複素振幅は、フーリエ変換の関係にある。このため、基本モードのNFPがほぼガウス関数であれば、基本モードのFFPもほぼガウス関数状となる。なお、図22において、近視野複素振幅と遠視野複素振幅の位相は一定であり、ここでは0としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2007−93770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
図21の面発光レーザ1400の基本モードにおいて、NFPのビーム径と、FFPの拡がり角は逆相関関係にある。すなわち、NFPのビーム径を大きくすると、FFPの拡がり角が小さくなり、NFPのビーム径を小さくすると、FFPの拡がり角が大きくなる。
ここで、ガウスビームにおけるビーム径とは、強度が中心ピーク値の1/eとなる半径を指すものとする。また、FFPの拡がり角とは、遠視野強度分布の半値全幅とする。
具体的には、ガウスビームにおいて、NFPのビーム径wと、FFPの拡がり角Y(ここではFFPの半値全幅)との関係は、近軸領域ではレーザ波長λを用いて以下の関係で表される。
Y(rad)=(2log2)1/2λ/πw=0.37×λ/w
一般的に、端面発光レーザよりも活性領域の光出射方向の長さが短い面発光レーザにおいては、十分な光出力を得るために、発光領域の直径を大きく設定する。そのため、NFPのビーム径が大きくなり、FFPの拡がり角が小さくなる。
【0015】
ところで、電子写真装置においては、レーザ光源のFFPの拡がり角が入射瞳に比べて小さいとき、走査光学系の入射瞳中心と端部とでレーザの光強度が大きく異なることになる。この結果、入射瞳中心と端部とで光強度が一様な場合に比べて、感光体に形成される潜像のスポットサイズが広がってしまい、画像の解像度が低くなってしまうという問題がある。
【0016】
また、レーザ光源のFFPの拡がり角が小さい場合においては、レーザ光源の光学系への取り付けのずれにより、光源の光軸方向と光学系の光軸方向とがずれるため、入射瞳内の光強度分布が大きく移動し、偏心するという問題がある。
【0017】
以下、図23を用いて、より詳細に説明する。
【0018】
図23(a)(b)(c)(d)は遠視野振幅のプロファイルを模式的に示したものである。各図における枠170の内側が入射瞳の角度内を表している。
図23(a)(b)はFFPの拡がり角が大きいものを示し、図23(c)(d)はFFPの拡がり角が小さいものを示している。また、図23(a)(c)は、光源の光軸と光学系の光軸がずれていないものを示し、図23(b)(d)は光源の光軸と光学系の光軸がずれているものを示している。
ここで、図23(b)と図23(d)とを比較すると、FFPの拡がり角が小さい場合、すなわち図23(d)は、FFPの拡がり角が大きい場合、すなわち図23(b)に比べて、軸ずれに対する開口通過パワーの変動量や瞳内の偏心度合いが大きいことがわかる。
【0019】
以上のように、面発光レーザでは十分な光出力を確保するために、発光領域の直径を大きく設定すると、NFPのビーム径が大きくなり、FFPの拡がり角が小さくなるという課題がある。この結果、面発光レーザは、電子写真装置の光源としては使いこなしが難しいという課題がある。
【0020】
そこで、本願発明は、十分な光出力を確保しつつ、電子写真装置の光源として好適な面発光レーザおよび該面発光レーザを用いた画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本願発明に係る面発光レーザは、基板の上に、下部ミラー、活性層、上部ミラー、を含む積層構造体を有し、波長λで発振する面発光レーザであって、前記上部ミラーの上部に設けられ、光出射領域内の中央部に位置する第1の領域と、該光出射領域内であって、該第1の領域より外側に位置する第2の領域との間に段差を有する第1の表面段差構造を備え、前記面発光レーザの外部における前記積層構造体の積層方向に対して垂直な面と、前記上部ミラーの上部境界面、との間の光路長に関して、前記第1の領域における前記光路長と、前記第2の領域における前記光路長との差Lは、(1/4+N)λ<|L|<(3/4+N)λ(Nは整数)を満たすことを特徴とする。
【0022】
また、本願発明に係る画像形成装置は、面発光レーザと、該面発光レーザの光を集光して走査する光学系とを有する画像形成装置であって、前記面発光レーザは、基板の上に、下部ミラー、活性層、上部ミラー、を含む積層構造体を有し、波長λで発振する面発光レーザであって、前記上部ミラーの上部に設けられ、光出射領域内の中央部に位置する第1の領域と、該光出射領域内であって、該第1の領域より外側に位置する第2の領域との間で段差を有する第1の表面段差構造を備え、前記面発光レーザの外部における前記積層構造体の積層方向に対して垂直な面と、前記上部ミラーの上部境界面、との間の光路長に関して、前記第1の領域における前記光路長と、前記第2の領域における前記光路長との差Lは、(1/4+N)λ<|L|<(3/4+N)λ (Nは整数)を満たし、前記第1の表面段差構造の第1の領域の半径aは、前記光学系の入射側FナンバーFno.に対して、a<0.75λ・Fno.を満たすことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本願発明によれば、十分な光出力を確保しつつ、電子写真装置の光源として好適な面発光レーザおよび該面発光レーザを用いた画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態1に係る面発光レーザの断面模式図。
【図2】拡がり角に相当するΩ・wと、遠視野振幅に相当するAw,a,π(Ω)/iとの関係を示す図。
【図3】拡がり角に相当するΩ・wと、遠視野強度に相当するIw,a,π(Ω)の関係を示す図。
【図4】a/wとI(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)の関係を示す図。
【図5】拡がり角に相当するΩ・wと、遠視野振幅に相当するAw,a,π(Ω)/iの関係を示す図。
【図6】拡がり角に相当するΩ・wと、遠視野強度に相当するIw,a,π(Ω)の関係を示す図。
【図7】a/wとI(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)の関係を示す図。
【図8】FFPの計算結果を示す図。
【図9】実施形態1の変形例に係る面発光レーザの断面模式図。
【図10】FFPの計算結果を示す図。
【図11】中央側の光路長が短い表面段差構造を備えた面発光レーザを示す図。
【図12】基板側に表面段差構造を備えた面発光レーザを示す図。
【図13】2つ以上の材料から構成された表面段差構造を備えた面発光レーザを示す図。
【図14】第2の横モード制御機構を備えた面発光レーザを示す図。
【図15】実施形態3に係る表面段差構造を備えた面発光レーザを示す図。
【図16】実施形態4に係る表面段差構造を備えた面発光レーザを示す図。
【図17】実施形態4の変形例に係る表面段差構造を備えた面発光レーザを示す図。
【図18】表面段差構造を備えた面発光レーザアレイを有する画像形成装置を示す図。
【図19】表面段差構造を備えた面発光レーザアレイを有する画像形成装置を示す図。
【図20】ビーム径wとFFPの半値全幅との関係を示す図。
【図21】面発光レーザの断面模式図。
【図22】基本モードの近視野複素振幅と遠視野複素振幅を示す図。
【図23】FFPの拡がり角と軸ずれに対する影響を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図23で示した課題が顕著に生じるのは、レーザから出射する光のFFPが、拡がり角の小さいガウス関数状であり、光源の光軸と光学系の光軸ずれの影響によって、入射瞳を通過する光の強度が変化しやすいからである。したがって、同じ共振モードでも、ガウス関数よりも平坦で幅の広い強度プロファイルであるFFPを実現するレーザを構成すれば良い。
【0026】
そこで、本発明の実施形態においては、近視野位相を一定とせず、中央部と周辺部の透過光の位相差の絶対値がNを整数として(1/4+N)2πから(3/4+N)2πの値となるように構成する。
【0027】
具体的には、波長λで発振する面発光レーザの出射表面かつ発光領域内に、複数の平坦な領域からなり、それらの間に段差を持つ構造である表面段差構造を設け、光出射領域内の中央側領域と外側領域において、(1/4+N)λ<|L|<(3/4+N)λを満足する光路長差Lを与える。ここでNは整数である。
光路長差とは、各領域の面発光レーザの外部における基準面と、表面段差構造の下部との光路長の差である。
【0028】
これにより、スカラー近似のもとで、透過光電場の位相に(1/4+N)2π<θ<(3/4+N)2πを満足する位相差θを与えることができる。
このような位相差を近視野位相に付与することで、近視野複素振幅の低空間周波数成分が低下し高空間周波数成分が増加する。このため、遠視野強度における中央側の光強度が低下し、周辺側の光強度が増加する。
これにより、遠視野強度の半値全幅が拡がり、また0°近傍での遠視野強度のプロファイルをガウスビームのプロファイルよりも平坦にすることができる。
【0029】
以下、具体例を挙げてこの点について説明する。
【0030】
(1次元プロファイル)
まず、1次元のプロファイルで説明する。例えば、発光領域が細長い場合に、長手方向で細くなるFFPを広げるために表面段差構造を利用する場合である。
【0031】
共振モードの電場分布として、x=0に対して対称なモード分布E(x)=g(x)を考える。ここでは共振モード分布はスポット幅wのガウス分布であるとし、g(x)=exp(−x/w)とする。
【0032】
表面段差構造について、例えば共振モードの中心軸上に中心を持つ幅2aの段差構造とし、段差の光路長差Lによる位相差をθとする。また、スカラー回折近似において、θ=−2πL/λと近似する。
【0033】
ここで、モードの時間依存項は複素振幅においてexp(iωt)であるように位相を定義する。ωは角周波数、tは時間である。上記共振モード分布および表面段差構造による近視野複素振幅をψw,a,θ(x)とする。スカラー回折近似を用いると、近視野複素振幅ψw,a,θ(x)は共振モード分布g(x)と、表面段差構造の光路長差により付与される位相分布Sa,θ(x)とを掛け合わせたものとして表現できる。
すなわち、ψw,a,θ(x)=g(x)・Sa,θ(x)と記述できる。
【0034】
この近視野複素振幅により決定される遠視野複素振幅は、フラウンホーファ回折近似において近視野複素振幅のフーリエ変換であり、F[ψw,a,θ(x)]は、Aw,a,θ(Ω)に比例する。
ここで、F[ψw,a,θ(x)]=∫ψw,a,θ(x)exp(−ixΩ)dxとする。
Ωは空間角周波数であり、拡がり角φとするとΩ=−2πφ/λである。遠視野強度Iw,a,θ(Ω)は、|Aw,a,θ(Ω)|に比例する。
a,θ(x)は表面段差構造により変調される位相分布を表し、
a,θ(x)=exp(iθ/2) (|x|<a)
a,θ(x)=exp(−iθ/2) (|x|≧a)
である。
すなわち、x=±aを境界として共振モードに付与される位相分布が異なる。なお、表面段差構造の段差の境界位置と、実効的に付与する位相分布の境界位置は、段構造の形状に応じてわずかに異なるが、ここでは同じであるとしている。
【0035】
次に、位相差πの表面段差構造による遠視野強度について考える。図2にa/wの値を変えたときの、拡がり角に相当するΩと、遠視野振幅に相当するAw,a,π(Ω)の関係を表すものとして、Ω・wとAw,a,π(Ω)/iの関係を表すグラフを示す。なお、Aw,a,π(Ω)/i=F[ψw,a,π(x)/i]である。
【0036】
また、図3にa/wの値を変えたときの、拡がり角に相当するΩと、遠視野強度に相当するIw,a,π(Ω)の関係を表すものとしてΩ・wとIw,a,π(Ω)の関係を表すグラフを示す。なお、Iw,a,π(Ω)=|Aw,a,π(Ω)|である。図2および図3の両者とも、横軸はΩにwを乗じることにより規格化を行っている。
【0037】
図2において、段差構造の径が非常に大きい場合(a/w→+∞)、または非常に小さい場合(a/w→0)、Aw,a,π(Ω)/iはそれぞれG(Ω)、−G(Ω)となる。
ここで、G(Ω)はF[g(x)]であり、g(x)=exp(−x/w)の場合は、G(Ω)=exp(−Ω/4)である。
したがって、図3に示した遠視野強度Iw,a,π(Ω)の分布もガウス関数状となる。すなわち、これは表面段差構造がないときの遠視野強度の分布である。
【0038】
一方、aが有限の値であるとき、Aw,a,π(Ω)/iはG(Ω)よりも幅が拡がり、Aw,a,π(0)/i>0であるa/wに対しては、Iw,a,π(Ω)の分布は、表面段差構造がないときの遠視野強度Iw,a,0(Ω)の分布よりも幅が広くなる。
【0039】
また、Iw,a,π(Ω)のΩ=0近傍での形状について、a/wがほぼ1より大きな範囲では、単峰の形状となり、上に凸の形状となっている。
【0040】
また、a/wがほぼ1より小さい範囲で、Aw,a,π(0)/i>0であるa/wに対しては下に凸の関数形となる。
表面段差構造の光路長差により付与される位相分布Sa,θ(x)は、θ=0、θ=πを用いて、式変形を行うと、Sa,θ(x)=cos(θ/2)Sa,0(x)+sin(θ/2)Sa,π(x)と書ける。
【0041】
フーリエ変換の線形性から、
w,a,θ(Ω)=cos(θ/2)Aw,a,0(Ω)+sin(θ/2)Aw,a,π(Ω)である。
(x)の対称性(偶関数、実関数)から、Aw,a,0(Ω)は実数関数であり、Aw,a,π(Ω)は純虚数関数である。
よって、Iw,a,θ(Ω)=cos(θ/2)Iw,a,0(Ω)+sin(θ/2)Iw,a,π(Ω)となる。
【0042】
すなわち、上記の仮定において、位相差θを与える表面段差構造による遠視野強度は、表面段差構造がない場合の遠視野強度Iw,a,0(Ω)と、もっとも大きな変調を近視野複素振幅に与える位相差πの表面段差構造による遠視野強度Iw,a,π(Ω)とをある比率で足しあわせたものである。
w,a,π(Ω)の分布がIw,a,0(Ω)の分布よりも幅が広くなるa/wにおいて、Iw,a,θ(Ω)の分布はIw,a,0(Ω)分布よりも幅が広くなる。
上式のIw,a,0(Ω)、Iw,a,π(Ω)の係数を比較して、cos(θ/2)<sin(θ/2)となるのは、(1/4+N)2π<θ<(3/4+N)2πのときであり、このときIw,a,θ(Ω)はIw,a,π(Ω)の影響を大きく受けるため、遠視野強度分布(FFP)を大きく広げることができる。
【0043】
像形成の安定性にとっては、FFPの拡がり角が大きいことだけでなく、FFPが中心部でフラットであるものが特に好ましい。すなわち、ガウスビームに比べて平坦である以上に、ほぼ完全に平坦であるものが好ましい。
【0044】
また、図3を参照すると理解できるように、Ω=0近傍での形状について、Iw,a,0(Ω)は上に凸であり、Iw,a,π(Ω)はa/wによって上に凸から下に凸となる。
【0045】
このため、あるθの範囲では、Iw,a,θ(Ω)をその中心部においてほぼ完全に平坦にするaが存在する。
w,a,θ(Ω)のΩ=0での2階微分係数をI(2)w,a,θ(0)とすると、I(2)w,a,θ(0)=0のとき、Iw,a,θ(Ω)はΩ=0でほぼ完全に平坦である。
ここで、I(2)w,a,θ(0)=cos(θ/2)I(2)w,a,0(0)+sin(θ/2)I(2)w,a,π(0)である。
【0046】
そのため、I(2)w,a,θ(0)=0は、以下の式に変形できる。
−1/tan(θ/2)=I(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)・・・・式(A)
また、図4に、a/wに対するI(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)を示す。すなわち、I(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)は、−0.23より大きい値でなければならないため、以下の式で記述できる。
(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)>−0.23・・・・式(B)
よって、式(A)と式(B)により、1/tan(θ/2)<0.23を満たすθ、すなわち0.36×2π<θ<0.64×2πにおいて、Iw,a,θ(Ω)をΩ=0の地点でほぼ完全に平坦にすることができる。
なお、この条件を光路長で記述すると、(0.36+N)λ<|L|<(0.64+N)λとなる。
【0047】
電子写真装置用の光源としては、遠視野位相が入射瞳内で一定であることが望ましい。瞳内で位相に分布を持っている場合、光学系の収差にもよるが、光源と光学系との光軸ずれによって、感光体におけるスポット位置が所定の位置からずれる可能性がある。なお、ここで、遠視野位相は、入射瞳における実波面と参照波面の差に相当する。
【0048】
遠視野位相は、Aw,a,θ(Ω)の偏角として考えることができる。
ここで、Aw,a,θ(Ω)の実部はcos(θ/2)Aw,a,0(Ω)、虚部はsin(θ/2)Aw,a,π(Ω)/iである。
ここで、|Aw,a,π(Ω)/Aw,a,0(Ω)|はΩに対して一定でないため、θ≠Mπ(Mは整数)のとき、Aw,a,θ(Ωx)の偏角はΩxに対し一定でない。このため、遠視野複素振幅は位相分布を持つ。一方、θ=Mπ(Mは整数)のとき、Aw,a,0(Ω)またはAw,a,π(Ω)の偏角が一定となる範囲で遠視野位相は一定となる。
【0049】
この観点から、本発明における表面段差構造による位相差θは、θ=(N+1/2)2πであることが特に好ましい。すなわち、光路長で考えると、|L|=(1/2+N)λを満たすことが特に好ましい。
なお、θ=(N+1/2)2π以外の位相差であっても、光学系の収差、および許容可能なずれ、および光源を光学系への取り付ける際の光軸方向位置の調整によっては、電子写真装置用の光源として十分に使用可能である。
【0050】
また、第1の段差構造の位置ずれによる特性変動を抑えるには段差部分は垂直であることが好ましい。エッチング方法の都合などにより段差部分がテーパー状となる場合、遠視野位相を一定とするためには|L|を(1/2+N)λよりも少し大きく取るのが良い。
【0051】
(2次元プロファイル)
次に、発光領域が円形の場合に、円形状の表面段差構造を設ける場合について述べる。共振モードの電場分布として、x,y=0に対して対称なモード分布E(x,y)=g(x,y)を考える。ここでは共振モード分布はスポット幅wのガウス分布であるとし、g(x,y)=exp(−ρ/w)とする。ρ=(x+y1/2である。
【0052】
表面段差構造について、例えば共振モードの中心軸上に中心を持つ半径aの段差構造とし、その光路長差によるスカラー近似のもとでの位相差をθとする。
【0053】
以下、1次元の場合と同様に計算した結果を述べる。
【0054】
図5にa/wの値を変えたときのΩ・wと、Aw,a,π(Ω)/iの関係を表すグラフを示す。なお、Aw,a,π(Ω)/i=F[ψw,a,π(x)/i]である。
【0055】
また、図6にa/wの値を変えたときのΩ・wと、Iw,a,π(Ω)の関係を表すグラフを示す。なお、Iw,a,π(Ω)=|Aw,a,π(Ω)|である。Iw,a,θ(Ω)のΩ=0、Ω=0での2階微分係数をI(2)w,a,θ(0)とする。
【0056】
図7に、a/wに対するI(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)を示す。図7から理解されるように、I(2)w,a,π(0)/I(2)w,a,0(0)>−0.13である。
よって、1/tan(θ/2)<0.13を満たすθ、すなわち0.39×2π<θ<0.61×2πにおいて、Iw,a,θ(Ω)をΩ=0、かつ、Ω=0でほぼ完全に平坦にすることができる。
なお、この式を光路長で記述すると、(0.39+N)λ<|L|<(0.61+N)λとなる。
【0057】
また、この場合も同様、遠視野位相に分布を持たせないために、表面段差構造による位相差θは、θ=(N+1/2)2πであることが特に好ましい。
なお、表面段差構造のエッジでの散乱などにより、実際の近視野複素振幅においてはスカラー回折近似で求めた近視野複素振幅に加えて高い空間周波数成分の振動が重なっている場合がある。
【0058】
しかしながら、そのような高周波数成分は、遠方では外側に拡がる成分(すなわち光学系に入射しない成分)に反映されるため、遠視野複素振幅においてはその影響を無視することができる。
なお、本発明の効果を奏する表面段差構造の形状は上記円形の柱形状に限るものではなく、楕円や長方形の柱形状のものでも良い。
たとえば、楕円形状の場合、楕円の長軸方向にくらべ楕円の短軸方向において遠視野複素振幅は大きく変化する。すなわち、短軸方向において遠視野強度分布の幅をより大きくすることができる。したがって、画像形成装置の光学系の瞳形状が対称でない場合に、より広い遠視野強度分布の広がりを求められる方向に、楕円の短軸を用いることで、より効率のよい光源とすることができる。
【0059】
[実施形態1]
実施形態1の面発光レーザ100の断面模式図を図1に示す。
【0060】
実施形態1の面発光レーザは、半導体からなる基板110の上に、下部ミラー112、活性層114、上部ミラー116が形成されている。
【0061】
面発光レーザの基本モード130の発振波長λは例えばλ=680nmである。材料の一例を示すと、半導体からなる基板110は、例えばn型のGaAs基板である。なお、面発光レーザの偏光制御のため、GaAs基板の研磨面の法線方向は、結晶方位[1 0 0]方向に対して結晶方位[0 −1 −1]方向に向かって10度傾斜している。
下部ミラー112は、例えばn型のAl0.5Ga0.5As/AlAsが交互に光学厚さλ/4ずつ70ペア積層された半導体多層膜反射鏡である。
活性層114は、GaInP/AlGaInPの多重量子井戸構造である。
上部ミラー116は、例えばp型のAl0.5Ga0.5As/Al0.9Ga0.1Asが交互に光学厚さλ/4ずつ35ペア積層された半導体多層膜反射鏡である。
上部ミラー116および活性層114においては、円筒状のメサ構造が形成されている。
上部ミラー116の上部に上部電極122、基板110の下部に下部電極120が配されている。
上部電極122はたとえばTi/Pt/Au、下部電極はAuGe/Auである。上部電極122には開口が設けられており、そこからレーザ光が取り出される。
上部ミラー116と活性層114との間、または、上部ミラー116の内部に、Al0.98Ga0.02Asからなる層が設けられている。この層を前記メサの側壁から酸化することで、部分的に酸化された構造による円形の電流狭窄構造118が構成されている。電流狭窄構造118の未酸化部分の半径G1は、たとえば2.8μmである。
【0062】
また酸化された部分は酸化されていない部分に比べて大幅に屈折率が低下するため、この屈折率分布により、面発光レーザの横モードが決定される。
共振器内の基本モード130のプロファイルは、酸化による電流狭窄構造の位置・厚さによって変化するものの、およそガウス関数で近似できる。
基本モード130の発光領域の中心(光源の光軸136)は電流狭窄構造118の中心とほぼ一致している。
基本モードはガウス関数状のプロファイルであり、たとえばスポットサイズ半径(電場強度が中心ピークの1/eとなる径)wは2.3μmである。上部ミラー116の上部境界面142の上部に、単一材料(第1の材料)で構成された円形の表面段差構造150が形成されている。
表面段差構造150の中心は、電流狭窄構造118の中心とほぼ一致している。表面段差構造150の半径R1はたとえば3.0μmである。
第1の材料は例えばSiOであり、その屈折率nは例えば1.5である。
【0063】
また、面発光レーザ100の置かれている環境媒質140はたとえば空気であり、その屈折率nは1である。
【0064】
この表面段差構造150は、凸型の構造をしており、発光領域の中央側に位置する第1の領域160の実厚さはP1であり、外側に位置する第2の領域162の実厚さはP2である。この表面段差構造150により、出射面からのレーザの透過光にとっては、第1の領域160と第2の領域162とで、光路長差L=|L1−L2|が存在する。
【0065】
ここで、光路長L1は、第1の領域160における上部ミラー116の上部境界面142から平面144までの光路長である。また、光路長L2は、第2の領域162の上部境界面142から平面144までの光路長である。平面144は、面発光レーザの外部に設けられた前記積層構造体の積層方向に対して垂直な基準面である。
【0066】
図1の例では、第1の領域160における環境媒質と、第2の領域162における環境媒質とが同じ材料であるため、光路長差Lは以下の式で求めることができる。
L=|L1−L2|=n×(P1−P2)−n×(P1−P2)ここで、表面段差構造150では、第1の領域160における透過光の電場振幅と、第2の領域162における透過光の電場振幅に(1/4+N)2π<θ<(3/4+N)2πの位相差θを与える(Nは整数)。
【0067】
そのため、光路長で考えると、光路長差Lが以下の式を満たすように、P1およびP2を調整する。
(1/4+N)λ<L<(3/4+N)λ (但し、Nは整数)
ここで、小さい値のNほど表面段差構造のエッジ部分での散乱損失を抑えることができる。たとえば、N=0とするとよい。
たとえば、P1=2λ/n、P2=0.5λ/nとすると、L=|L1−L2|=n×(P1−P2)−n×(P1−P2)=0.5λとなる。
【0068】
この光路長差Lにより、近視野複素振幅においては、第1の領域160を透過した光の電場振幅と、第2の領域162を透過した光の電場振幅とに、位相差θ=L/λ×2π[rad]が生じることになる。たとえば、上記数値例では、θ=πとなり、(1/4+N)2π<θ<(3/4+N)2πの位相差が与えられる。
【0069】
図8に、この表面段差構造のない場合と、表面段差構造がある場合の遠視野強度分布の計算結果を示す。なお、両者の遠視野位相は一定である。両者を比較すると、この表面段差構造により、遠視野強度の分布は拡がり、半値全幅は約1.9倍になっていることが分かる。
【0070】
また、光軸(0°)近傍における遠視野強度プロファイルは、表面段差構造によりほぼ平坦になっている。
【0071】
(他の構成例)
図9は、図8の表面段差構造がある場合のFFPをさらに広げるための表面段差構造の構成例である。
【0072】
すなわち、発光領域の中央側である第1の領域160を透過する光の電場複素振幅と、その外側に位置する第2の領域162を透過する光の電場複素振幅は逆符号の成分を持つように構成される。そして、第2の領域162を透過する光の電場複素振幅と、さらにその外側に位置する第3の領域164を透過する光の電場複素振幅についても、逆符号の成分を持つように構成される。このことを考慮して、図9のL1、L2、L3を設定する。
【0073】
すなわち、第2の領域162における光路長L2と、第3の領域164における光路長L3との差L´は以下の式を満たすように設定される。
(N+1/4)λ<|L´|<(N+3/4)λ (Nは整数)
例えば、共振器内の波長680nmの基本モードがガウス関数であるとし、そのビーム幅wを2.3μmとする。また、光源の光軸136と、第1の領域160と第2の領域162との境界との距離R1を2.3μmとし、光源の光軸136と、第2の領域162と第3の領域164との境界との距離R2を3.8μmとする。このとき、隣接する領域を透過した光で位相差がπとなるように、|L1−L2|=|L3−L2|=λ/2とする。
【0074】
図10にこの場合の遠視野強度(FFP)を示す。なお遠視野位相は一定である。
【0075】
上記の数値例によれば、表面段差構造がないときに比べて、FFPの半値全幅は約2.6倍となっており、図1で示した表面段差構造よりもさらにFFPを広げることができる。
【0076】
また、図1、図9では外側よりも中央側の方の光路長が長い凸型のものを開示したが、図11に示すように外側よりも中央側の方の光路長が短い凹型の表面段差構造150でも良い。
この場合、遠視野位相分布の正負が反転するが、強度分布は同じものとなる。
なお、凸型と凹型では、表面段差構造の段差の境界位置と、実効的に付与する位相分布の境界位置の差にわずかな違いがあるが、ここでは同じとしている。
【0077】
また、図12に示すように、本発明の実施形態にかかる面発光レーザでは、基板側から光を取り出すことも可能である。なお、この場合においても、光取り出し側を上側と表現するものとする。例えば上部ミラー116とは、活性層114から見て光出射方向にあるミラーのことであり、レーザが取り付けられる位置に応じて上部に位置しているミラーではない。
基板110と上部ミラー116は例えばn型半導体であり、下部ミラー112はp型半導体である。光出射領域においては基板110および上部電極122が除去されている。なお、その他の部材も上記のように適宜設定することができる。
【0078】
(反射率分布)
表面段差構造の形状によっては、活性層から見た上部ミラーの反射率分布に影響を与える場合がある。
しかし、たとえば、図1の表面段差構造において、実厚さP1、P2において、|n・P1−n・P2|をλ/2の整数倍とした場合、上部ミラーに反射率分布はほぼ生じない。
上部ミラーに表面段差構造による反射率分布をできるだけ持たせないことで、表面段差構造による共振器内の共振モードへの影響を抑えることができる。
なお、必ずしも反射率分布を完全にゼロにする必要はなく、所望の特性を与えるために、反射率分布をつけても良い場合がある。たとえば、外側の領域の反射率を、中央側の領域よりも下げることで、高次モードに損失を選択的に与えてもよい。
外側の領域の透過率が中央側の領域の透過率よりも高くなる場合は、外側の領域からの透過光の影響が大きくなる。このため、透過率が同じ場合にFFPを平坦にする表面段差構造の径よりも大きな径の表面段差構造を用いることで、FFPを平坦にできる。
【0079】
(作製方法)
本実施形態の図1を用いて説明した面発光レーザの作製方法について述べる。
【0080】
半導体の基板110の上に、下部ミラー112、活性層114、上部ミラー116を含む半導体層を成長させる。結晶成長は、例えばMOCVDなどにより行う。
上部ミラー116の中、または、下部ミラー112と活性層114との間には、上部ミラー116や下部ミラー112の構成層よりもAl組成の多い半導体層(電流狭窄層)が含まれている。この半導体層に対し、電流狭窄層の側壁が露出するようにメサ構造を形成する。
メサ構造の形成においては、例えばフォトリソグラフィーの技術を用い、ドライエッチングの技術を用いる。メサ構造は円筒状であり直径は例えば30μmである。
メサ構造に対し、前記電流狭窄層を側壁から高温水蒸気雰囲気中で酸化し、電流狭窄構造を形成する。酸化は例えば450℃で行う。電流狭窄構造の半径はたとえば2.8μmとする。
メサ構造の上部ミラー116の上に、誘電体を成膜し、表面段差構造150を形成する。表面段差構造150は、上記で説明した形状とする。誘電体は例えばSiOやSiNであり、プラズマCVDやスパッタにて成膜する。
【0081】
また、SiOのプラズマCVDなどの成膜条件を変えることにより、表面段差構造により屈折率nを制御することもできる。例えばn=1.5とした場合、n・P1とn・P2はλ/2の整数倍としつつ、位相差を180°とすることができる。この場合、P1は2λ/n、P2は0.5λ/nである。
SiOは屈折率がほぼ1.5であるため上記条件を満たし、かつ、耐性の高い保護膜として使用できるため好適である。
表面段差構造150の形成法としては、エッチングやリフトオフなどがある。
【0082】
例えば、メサ上に(P1−P2)に相当する厚さの第1の誘電体膜を成膜し、外側領域の第1の誘電体をエッチングにより除去し、その上にP2に相当する厚さの第2の誘電体膜を成膜する。または、メサ上にP2に相当する厚さの第2の誘電体膜を成膜し、メサ上の外側領域にリフトオフ用のレジストパターンを形成し、P1−P2に相当する厚さの第2の誘電体膜を成膜した後、リフトオフレジストを除去してもよい。
【0083】
このようにして表面段差構造150を形成した後に、メサの上部ミラー116の上部に上部電極122と、基板110の下部に下部電極120とを設ける。下部電極120や上部電極122は例えば蒸着により形成する。
表面段差構造と電流狭窄構造を有する面発光レーザにさらに第2の横モード制御機構を備えさせることができる。
【0084】
図14には、第2の横モード制御機構として、第2の電流狭窄構造119を設けた構成例を示している。第2の電流狭窄構造119は、図14(a)に示すようにイオン注入による絶縁化であってもよいし、図14(b)に示すように2つめの酸化狭窄構造を追加してもよい。
【0085】
これらの第2の電流狭窄構造119は、第1の電流狭窄構造118の上部に形成され、該第1の電流狭窄構造118よりもより狭く電流を狭窄する構造となっている。この第2の電流狭窄構造119により、キャリア分布を制御することができる。
【0086】
[実施形態2]
実施形態1では表面段差構造を単一の材料により構成した例について説明した。本実施形態では、表面段差構造を複数の材料で構成する例について説明する。
【0087】
本実施形態のメリットとしては、表面段差構造による上部ミラー(表面段差構造も含む)の反射係数分布制御と透過係数分布制御の自由度が高くなることが挙げられる。
【0088】
図13には、屈折率の異なる第1の材料180と第2の材料182から構成されている表面段差構造150を有する面発光レーザを示している。
たとえば第1の材料180は誘電体で屈折率が1.5〜2.0程度、第2の材料182は半導体で屈折率が3.0〜3.5程度である。
【0089】
実施形態1と同様に、FFPの拡がり角を大きくして、FFPの中心部をフラットにするためには、第1の領域160と第2の領域162の透過光における位相差θを、以下の式を満たすように設定する必要がある。
(1/4+N)2π<θ<(3/4+N)2π
図13に示す実施形態においても、実施形態1と同様に光路長L1は、第1の領域160における上部ミラー116の上部境界面142から平面144までの光路長である。また、光路長L2は、第2の領域162の上部境界面142から平面144までの光路長である。平面144は、面発光レーザの外部に設けられた前記積層構造体の積層方向に対して垂直な基準面である。また、光路長差Lは、|L1−L2|である。これにより、透過光に与えられる位相差θは、θ=−2πL/λである。
【0090】
また、第1の領域160と第2の領域162の境界は、光源の光軸136から距離R1だけ離れた位置にある。
たとえば、第1の材料180の屈折率が1.5、第2の材料182の屈折率を3.0であるとする。また、第1の領域において、第1の材料180である誘電体を1.0λ、第2の材料182である半導体を0.5λの光学厚さとし、第2の領域において第1の材料180である誘電体を0.5λの光学厚さとする。このように構成すれば、誘電体のみを用いていた実施形態1に係る面発光レーザよりも薄い段差で表面段差構造を形成することができる。そのため、上部ミラーに反射率分布がなく透過光位相差が180°となる表面段差構造を構成することができる。これにより、実施形態1の場合よりも散乱損失を抑えることができる。
たとえば、上部ミラー上に、第2の材料182である半導体膜を光学厚さ0.5λで成膜し、その後、第1の材料180である誘電体膜を光学厚さ0.5λで成膜する。レジストをこれらに塗布した後、パターニングを行い、第2の領域に162の誘電体膜(第1の材料180)をエッチングする。その後、その誘電体膜(第1の材料180)をマスクとして、第2の領域の半導体膜(第2の材料182)をエッチングする。その後レジストを除去し、全体に第1の材料180である誘電体膜0.5λを成膜することで、図13に示した表面段差構造を形成できる。
【0091】
また、本実施形態の表面段差構造は、エッチング・リフトオフなどで連続して形成しても良いし、複数の加工プロセスにて形成しても良い。
たとえば、電流狭窄構造118の作成前に第2の材料182の表面段差構造を形成し、電流狭窄構造118の作成後に第1の材料180の表面段差構造を形成することができる。
【0092】
また、第2の材料による表面段差構造のパターニングを、メサのパターニングと同時に行うセルフアラインメントプロセスにて行い、メサ形成および電流狭窄構造の形成後、第1の材料の表面段差構造を実施形態1と同様に形成することもできる。
【0093】
また、実施形態1で説明した図1以外の形態も、本実施形態で説明した構成を用いることができる。
【0094】
[実施形態3]
本実施形態では、径の異なる複数の表面段差構造を設けた例を説明する。
【0095】
たとえば、主に遠視野複素振幅を制御する表面段差構造(第1の表面段差構造)と、主に上部ミラーの反射率分布を制御する表面段差構造(第2の表面段差構造)とを設け、それぞれの用途に応じて最適に径を変えることができる。ここで、上部ミラーの反射率とは、実施形態2と同様に、上部ミラーと表面段差構造を合わせた構造体の反射率のことである。
【0096】
図15は、2つの表面段差構造を備えた面発光レーザの断面図である。上部ミラー上に、反射率制御のための第2の表面段差構造155と、遠視野複素振幅制御のための第1の表面段差構造150とが積層されている。
【0097】
第2の表面段差構造155を構成する第2の材料の屈折率をn、第1の表面段差構造150を構成する第1の材料の屈折率をnとする。第2の材料は例えば半導体であり、第1の材料は例えば誘電体である。
【0098】
第2の表面段差構造155は、その段差を境界として、発光領域の中央側領域(第4の領域166)と外側領域(第5の領域168)に分けられる。この第2の表面段差構造155により、中央部の反射率よりも、周辺部の反射率を下げることができ、横モード制御を行うことができる。
【0099】
第2の表面段差構造155は、たとえば、第2の材料の周辺部に対して、λ/4の奇数倍となる光学厚さの分だけエッチングを行うことにより形成される。
【0100】
第1の表面段差構造150は、実施形態1で説明した構造と同様に、中央側領域(第1の領域160)と外側領域(第2の領域162)とで透過光に大きな位相差を与えるものである。
【0101】
ここで第1の表面段差構造150を構成する材料(第1の材料)の屈折率nと、第2の表面段差構造155を構成する材料(第2の材料)の屈折率nは異なる。たとえば、第1の材料は誘電体のSiOでありnは1.5である。また、たとえば第2の材料は半導体のAl0.5Ga0.5Asであり、nは3.3である。2つの表面段差構造のパラメータは、2つの目的、すなわち横モード制御および遠視野複素振幅制御に対して最適化をすることが可能である。
第1の表面段差構造150と第2の表面段差構造155の径(図15に示すR1とR2)は異なる。たとえば、R1は3.1μm、R2は2.3μmである。
【0102】
まず、第2の表面段差構造155の段差は、第2の材料の光路長差|Q1−Q2|がλ/4の奇数倍となるように構成される。
【0103】
たとえば、Q1=0.5λ/n、Q2=0.25λ/nである。
これにより、活性層から入射する波長λの光に対し、第2の材料と第1の材料との界面での反射は、中央側領域(第4の領域166)と外側領域(第5の領域168)で位相が反転することになる。これにより、ミラーの反射率は、中央側領域(第4の領域166)の方が、外側領域(第5の領域168)よりも反射率を高くすることができる。
【0104】
第2の表面段差構造155の幅R2は、基本モードには大きな反射損を与えず、高次モードには発振を抑制できるだけの反射損を与えられるように決めることができる。
【0105】
ここで、周辺部の反射率を下げたことにより、周辺部の透過率は上昇する。
例えば、反射率が99.5%から95%に低下した場合、透過率は10倍(透過係数の絶対値の比は√10倍)となる。
【0106】
特に、第2の表面段差構造155に大きな反射率分布を持たせたときに、第5の領域168における第2の表面段差構造155からの透過光量が、第4の領域166における第2の表面段差構造155からの透過光量に比べて多くなることがある。この場合、第5の領域168における第2の表面段差構造155からの透過光量に対して、位相差を付与するように、第1の表面段差構造150を構成する必要がある。
【0107】
そこで、R2より大きな径であるR1の位相差分布により、少なくとも第5の領域168の中で位相差を設けることで、単峰あるいは平坦な遠視野強度分布を得ることができる。
すなわち、図15に示すように、大きな位相差を持つ第1の領域160と第2の領域162の境界の少なくとも一部が第5の領域168に含まれるように構成することができる。
【0108】
第1の領域160かつ第5の領域168となる領域において、第2の表面段差構造155の下側境界面142から第1の表面段差構造150の上方にある平面144までの光路長をL1とする。また、第2の領域162かつ第5の領域168となる領域において、下側境界面142から平面144までの光路長をL2とする。そして、光路長L1と光路長L2との間に90°から270°の位相差θがつくように、第1の表面段差構造の実厚さP1、P2を決める。
【0109】
第1の表面段差構造の幅R1は、基本モードのFFPの拡がり角を大きくして、FFPの中心部を平坦とするように設計できる。ここでは、面発光レーザの置かれている環境媒質140の屈折率をnとする(たとえば環境媒質が空気とするとn=1)。そうすると、L1−L2は、(n−n)×(P1−P2)である。
なお、「n×P1」、「n×P2」をそれぞれλ/2の整数倍の光学厚さとすれば、第1の表面段差構造による反射率分布は形成されない。このような例を満たすものとしては、たとえば、P1=2λ/n、P2=0.5λ/nがある。
【0110】
また、第5の領域かつ第2の領域は遠視野複素振幅の分布に与える影響が大きいため、反射率を低く設定しないことが好ましい。一方、第5の領域かつ第1の領域は横モード制御のために、ある程度反射率を低く設定することが好ましい。すなわち、第5の領域においては、上記のように、第1の領域に属する領域(内側)に比べて、第2の領域に属する領域(外側)の反射率を高く設定することが好ましい。
【0111】
ここで、「n×P2」がλ/2の整数倍以外の値では、その光路長の大きさに応じて、第2の領域における上部ミラーの反射率に周期的な変調を与えることができる。特に、「n×P2」をλ/4の奇数倍とすると、第5の領域かつ第2の領域の反射率を、第5の領域かつ第1の領域の反射率よりも高くすることができる。
【0112】
[実施形態4]
本実施形態では、実施形態2と実施形態3を組み合わせた例を説明する。
すなわち、複数の径の異なる表面段差構造を持ち、さらに少なくとも一つの表面段差構造は複数の材料からなる面発光レーザである。
【0113】
図16(a)、(b)はそれぞれ第1の表面段差構造、第2の表面段差構造を説明する図である。また、図16(c)は面発光レーザの上部ミラー116上に、図16(a)と(b)の構造を積層したものの断面模式図である。
【0114】
まず、図16(b)の第2の表面段差構造は、屈折率の異なる複数の材料である第1の材料180と第2の材料182からなる。
第2の材料182は例えば半導体であり屈折率は3である。第1の材料180は例えば誘電体であり屈折率は1.5である。
第2の表面段差構造は例えば半径R2の円筒状の段差構造である。
【0115】
図16(b)に示すように、第2の表面段差構造の底部から、第2の表面段差構造の上部の平面144までの光路長を、L6、L7とする。
第2の材料182と第1の材料180との界面は屈折率差が大きいため、上部ミラーの反射率に大きな影響を与える。例えば、第2の材料182の光学厚さをλ/4の奇数倍とすることで、上部ミラーに反射率分布を持たせることができる。
第1の材料180の厚さは、L6とL7の光路長差がλ/2となるように構成する。
ここで環境媒質140の屈折率を1として、第1の材料180の光学厚さをλとする。このとき、L6−L7=(3−1)/3・λ/4+(1.5−1)/1.5・λ=λ/2となる。すなわち第2の表面段差構造は近視野複素振幅に位相差πの分布を与える構造となっている。
【0116】
次に、図16(a)の第1の表面段差構造は、第3の材料184からなる。第3の材料184は例えば誘電体であり、たとえば屈折率は1.7であるなお、第3の材料は第1の材料と同じ材料でも良い。
第1の表面段差構造は例えば半径R1の円筒状の段差構造である。ここで、R1>R2である。
【0117】
図16(a)に示すように、第1の表面段差構造の底部から、第1の表面段差構造の上部の平面144までの光路長を、L4、L5とする。
第3の材料の段差は、L4とL5の光路長差がλ/2となるように構成する。
ここで環境媒質140の屈折率を1とする。例えば、第3の材料の段差の光学厚さは1.5λである。このとき、L4−L5=(1.5−1)/1.5・1.5λ=λ/2となる。すなわち第1の表面段差構造は近視野複素振幅に位相差πの分布を与える構造である。
この2つの表面段差構造を図16(c)に示すように上部ミラー116上に積層する。2つの表面段差構造の中心軸は一致している。
【0118】
また、共振モードが光軸に対して対称であり、また表面段差構造の中心軸が、共振モードの対称軸と一致しているとする。
第1の表面段差構造は第2の表面段差構造上に積層するために半径R2において段差が生じている。しかしそれぞれの表面段差構造の光学厚さ分布は維持されるものとする。
【0119】
図16(c)において、上部ミラー116と第2の表面段差構造の界面から、第1の表面段差構造上に存在する平面までの光学厚さを、L1、L2、L3とする。
第2の表面段差構造により、半径R2より外側の領域では内側より反射率が低くなっており透過率が高くなっている。この透過率が高くなった領域で、第1の表面段差構造により大きな位相差が与えられるため、FFPを広げることができる。
また、L1−L2=λ/2であり、L2−L3=λ/2であるから、L1−L3=λである。
共振モードが発光中心軸に対して対称であり、波面がフラットであるとき、表面段差構造の光学厚さの差が0.5λの整数倍のみで構成された対称な構造であれば、スカラー回折近似の範囲において、この表面段差構造は共振モードに0、πのみで構成された位相差分布を与える。このとき、フーリエ変換の対称性から、この表面段差構造により変調された近視野複素振幅による遠視野複素振幅は、中央部で位相差分布が生じない。このため、電子写真装置用の光源として特に好ましいFFPを持つ面発光レーザとすることができる。
【0120】
なお、上記の第1の表面段差構造および第2の表面段差構造は凸型の光路長分布を持つものであったが、図17(a)に示すように、凸型の第2の表面段差構造と凹型の第1の表面段差構造の組み合わせも可能である。また、図17(b)に示すように、凹型の第2の表面段差構造と凹型の第1の表面段差構造との組み合わせ、図17(c)に示すように凹型の第2の表面段差構造と凸型の第1の表面段差構造の組み合わせも可能である。
【0121】
[実施形態5]
実施形態1乃至4で説明した面発光レーザを複数配して構成された面発光レーザアレイ光源と走査装置を用いた応用例として、画像形成装置について説明する。
【0122】
図18、図19に、面発光レーザアレイ光源514を備えた電子写真記録方式の画像形成装置の構造図を示す。
【0123】
図18(a)は画像形成装置の平面図であり、図18(b)は同装置の側面図である。また、図19(a)は主走査方向における光学配置の模式図であり、図19(b)は副走査方向における光学配置の模式図である。
【0124】
図18、図19において、500は感光ドラム、502は帯電器、504は現像器、506は転写帯電器、508は定着器、510は回転多面鏡、512はモータである。また、514は面発光レーザアレイ光源、516は反射鏡、520はコリメータレンズ、521はシリンドリカルレンズ、及び522はf−θレンズである。面発光レーザアレイ光源514は直線偏光であり、その方向は例えば主走査方向に平行であるとする。
【0125】
図18において、モータ512は回転多面鏡510を回転駆動するものである。
【0126】
本実施形態における回転多面鏡510は、例えば6つの反射面を備えている。
面発光レーザアレイ514は、記録用光源となるものであり、ドライバにより画像信号に応じて点灯または消灯するように構成されている。こうして光変調されたレーザ光は、面発光レーザアレイ514からの光を集光するコリメータレンズ520を介し回転多面鏡510に向けて照射される。
【0127】
図19(a)に示すように、コリメータレンズ520と回転多面鏡510の間の光軸上には主走査開口絞り530が置かれている。レーザアレイ光源514からの各光束が回転多面鏡510の鏡面上で揃うように、主走査開口絞り530は回転多面鏡510のできるだけ近くに置かれる。
【0128】
また図19(b)に示すように、副走査開口絞り532が、レーザアレイ光源514とシリンドリカルレンズ521の間で、f−θレンズ522の中心の共役となる位置に置かれる。これらの光学系および開口絞りにより入射瞳が決まる。
回転多面鏡510は矢印方向に回転していて、面発光レーザアレイ514から出力されたレーザ光は、回転多面鏡510の回転に伴い、その反射面で連続的に出射角度を変える偏向ビームとして反射される。この反射光は、f−θレンズ522により歪曲収差の補正等を受け、反射鏡516を経て感光ドラム500に照射され、感光ドラム500上で主走査方向に走査される。このとき、回転多面鏡510の1面を介したビーム光の反射により、感光ドラム500の主走査方向に面発光レーザアレイ514に対応した複数のライン分の画像が形成される。
感光ドラム500は、予め帯電器502により帯電されており、レーザ光の走査により順次露光され、静電潜像が形成される。また、感光ドラム500は矢印方向に回転していて、形成された静電潜像は、現像器504により現像され、現像された可視像は転写帯電器506により、転写紙に転写される。可視像が転写された転写紙は、定着器508に搬送され、定着を行った後に機外に排出される。
面発光レーザアレイ514の各面発光レーザの出射面には、図1等に示すように円筒状の表面段差構造150(半径a)が形成されている。なお、表面段差構造の径に異方性がある場合には、一番小さい径を半径aとする。
表面段差構造150により付与される位相差はπである。特に、表面段差構造の径に異方性がある場合は、非点収差を抑えるために表面段差構造150により付与される位相差はπであることが好ましい。
このときの共振モードのビーム径wと、FFPの半値全幅との関係を図20に示す。共振モードとしては実施形態1に示すガウス関数を仮定している。表面段差構造が設けられていない場合、ビーム径wとFFPは逆の相関があり、Y(rad)=(2log2)1/2λ/πw=0.37×λ/wである。
【0129】
しかし、表面段差構造により、w/a<0.8(FFPが単峰である範囲)においてFFPの半値全幅は最小値が存在し、そのときYは約0.75λ/aである。
結像スポット径を安定させるためには、面発光レーザアレイ514のFFPの半値全幅が、走査光学系の入射側開口角(光軸上の光源から入射瞳の直径が張る角度)を上回っていることが好ましい。逆に下回っている場合、スポット径は太くなってしまい安定しない。
すなわち、光学系の入射側FナンバーFno.は、(0.75λ/a)>(1/Fno.)が好ましい。したがってa<0.75λ・Fno.が好ましい条件となる。なお、上記Fナンバーは、主走査と副走査でFナンバーが異なる場合は、最小値をFno.とする。また、表面段差構造の径に異方性がある場合は、最小値を半径aとする。
このとき、上記面発光レーザのFFPは、共振モード径が大きすぎる場合(表面段差構造の径の0.8倍以上)を除いて、入射瞳径よりも大きなFFP強度半値幅を持つことになる。
入射瞳に応じた径の表面段差構造を用いることにより、FFP半値幅が拡大され、安定したスポット径の結像スポットを得ることができる。
【0130】
なお、表面段差構造は主走査方向と副走査方向に対応する面内方向にて異方性を持たせてもよく、その場合はFナンバーが小さい方向(開口角が大きい方向)に対応する面内方向にて、FFPをより広げるため表面段差構造の径を小さくすることができる。
【0131】
この結果、主走査方向と副走査方向とで入射側Fナンバーが異なるとき、表面段差構造の径を主走査方向と副走査方向で同じとするよりも変えたほうが、結像スポットの安定性を保ちながら、開口絞りにけられる光量を減らし、効率よくレーザ出射光を走査面上に結像することができる。
【0132】
したがって、副走査方向の入射側Fナンバーが大きい画像形成装置において、レーザの表面段差構造として楕円形状のものを用いる場合、楕円の長軸の方向と、面発光レーザアレイにおいて素子が等しい間隔で配列されている方向(副走査方向)とを一致させるのが良い。
副走査方向の入射側Fナンバーが小さい画像形成装置においては、楕円の短軸の方向を副走査方向と一致させるのが良い。
【0133】
すなわち、第1の方向に等間隔で複数配された面発光レーザアレイにおいては、第1の段差構造の第1の領域が楕円形状であり、楕円形状の短軸方向または長軸方向が第1の方向と一致していることが好ましい。
【0134】
一例として数値を挙げると、面発光レーザとして実施形態1の図1に示す円筒対称な構造とし、λ=680nm、表面段差構造の半径a=3.8μm、表面段差構造の段差による光路長差=0.5λとする。また、入射側Fナンバーを10とする。表面段差構造がないときのFFP半値全幅Yは、w=3.0μmではおよそ0.084radである。したがってビーム径によっては入射瞳の内側で遠視野強度がピーク強度の半分を下回ってしまう。
【0135】
しかし、表面段差構造により、FFP半値全幅は拡がり、上記構造の場合Y>0.13となる。よって、入射瞳内で遠視野強度はピーク強度の半値以上であり、潜像形成の安定性が向上した画像形成装置を得ることができる。
【0136】
なお、上記のうち、面発光レーザについて述べた点は、それを用いた画像形成装置についても同様に妥当する。また、本発明は上記実施の形態に制限されるものではなく、様々な変更及び変形が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、下部ミラー、活性層、上部ミラー、を含む積層構造体を有し、波長λで発振する面発光レーザであって、
前記上部ミラーの上部に設けられ、光出射領域内の中央部に位置する第1の領域と、該光出射領域内であって、該第1の領域より外側に位置する第2の領域との間に段差を有する第1の表面段差構造を備え、
前記面発光レーザの外部における前記積層構造体の積層方向に対して垂直な面と、前記上部ミラーの上部境界面、との間の光路長に関して、
前記第1の領域における前記光路長と、前記第2の領域における前記光路長との差Lは、以下の式を満たすことを特徴とする面発光レーザ。
(1/4+N)λ<|L|<(3/4+N)λ (Nは整数)
【請求項2】
前記Lは、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
(0.36+N)λ<|L|<(0.64+N)λ (Nは整数)
【請求項3】
前記Lは、以下の式を満たすことを特徴とする請求項1の面発光レーザ。
(0.39+N)λ<|L|<(0.61+N)λ (Nは整数)
【請求項4】
前記|L|は、(1/2+N)λであることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項5】
前記Nは、0であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項6】
前記第1の領域と前記第2の領域における、前記第1の段差構造の光学厚さは、それぞれλ/2の整数倍であることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項7】
第1の表面段差構造を構成する材料はSiOであることを特徴とする請求項6に記載の面発光レーザ。
【請求項8】
前記第1の表面段差構造は、前記第2の領域と、前記光出射領域内であって、該第2の領域より外側に位置する第3の領域との間に段差を有し、
前記第2の領域における前記光路長と、前記第3の領域における前記光路長との差L´は以下の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
(N+1/4)λ<|L´|<(N+3/4)λ (Nは整数)
【請求項9】
前記第1の表面段差構造は、半導体および誘電体を有することを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項10】
前記第1の表面段差構造の上側または下側に設けられ、光出射領域内の中央部に位置する第4の領域と、該光出射領域内であって、該第4の領域より外側に位置する第5の領域との間に段差を有する第2の表面段差構造を更に有し、
前記第1の領域と前記第2の領域の境界の少なくとも一部が、前記第5の領域に含まれることを特徴とする請求項1に記載の面発光レーザ。
【請求項11】
前記第4の領域の前記上部ミラーと前記第1の表面段差構造および前記第2の表面段差構造を合わせた構造体の反射率は、前記第5の領域の前記上部ミラーと前記第1の表面段差構造および前記第2の表面段差構造を合わせた構造体の反射率よりも高いことを特徴とする請求項10に記載の面発光レーザ。
【請求項12】
前記第2の表面段差構造の前記第4の領域と前記第5の領域の光路長差はλ/4の奇数倍であることを特徴とする請求項10に記載の面発光レーザ。
【請求項13】
前記第1の表面段差構造の前記第2の領域の光路長はλ/4の奇数倍であることを特徴とする請求項12に記載の面発光レーザ。
【請求項14】
前記第2の表面段差構造は屈折率の異なる複数の材料から形成されており、前記複数の材料の少なくとも一つの材料は、前記第4の領域における前記光路長と、前記第5の領域における前記光路長との差がλ/4の奇数倍であることを特徴とする請求項10に記載の面発光レーザ。
【請求項15】
前記第1の表面段差構造について、前記第1の領域における前記光路長と、前記第2の領域における前記光路長との差はλ/2の整数倍であることを特徴とする請求項10に記載の面発光レーザ。
【請求項16】
請求項1記載の面発光レーザが、第1の方向に等間隔で複数配された面発光レーザアレイであって、前記第1の段差構造の前記第1の領域は楕円形状であり、該楕円形状の短軸方向または長軸方向が前記第1の方向と一致していることを特徴とする面発光レーザアレイ。
【請求項17】
面発光レーザと、該面発光レーザの光を集光して走査する光学系とを有する画像形成装置であって、
前記面発光レーザは、基板の上に、下部ミラー、活性層、上部ミラー、を含む積層構造体を有し、波長λで発振する面発光レーザであって、
前記上部ミラーの上部に設けられ、光出射領域内の中央部に位置する第1の領域と、該光出射領域内であって、該第1の領域より外側に位置する第2の領域との間で段差を有する第1の表面段差構造を備え、
前記面発光レーザの外部における前記積層構造体の積層方向に対して垂直な面と、前記上部ミラーの上部境界面、との間の光路長に関して、
前記第1の領域における前記光路長と、前記第2の領域における前記光路長との差Lは、(1/4+N)λ<|L|<(3/4+N)λ (Nは整数)を満たし、前記第1の表面段差構造の第1の領域の半径aは、前記光学系の入射側FナンバーFno.に対して、a<0.75λ・Fno.を満たすことを特徴とする画像形成装置。
【請求項18】
前記光学系の走査方向に対応する主走査方向と、該主走査方向に垂直な副走査方向で前記第1の表面段差構造の径が異なり、前記光学系の入射側Fナンバーが小さい方向における径が、前記光学系の入射側Fナンバーが大きい方向における径よりも小さいことを特徴とする請求項17に記載の画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−104805(P2012−104805A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−199434(P2011−199434)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】