説明

風力発電システムおよびその制御方法

【課題】
系統電圧低下、あるいは系統側電力変換器において過電流が発生した場合でも、風力発電システムの運転継続、あるいは瞬時再起動運転を可能とする。
【解決手段】
風力発電システムにおいて、系統電圧振幅の低下率に応じて、ピッチ角の制御方法を変え、かつ系統側電力変換器における過電流発生時は、系統側電力変換器をゲートブロックし、発電機側電力変換器は運転を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統と接続した発電システムに関し、特に風力発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統で電圧や周波数などの異常が発生した場合、風力発電システムは構成機器を保護するために、発電運転を停止し送電を停止する。この際、風力発電システムは、電力系統と電力変換器,発電機の間にある電磁開閉器を開状態にすることで、風力発電システムの主回路を電力系統から解列する。
【0003】
このとき、風力発電システムは発電機から電力を出力できないため、風のエネルギーが回転エネルギーとして蓄えられ、風車が過回転となる恐れがある。
【0004】
特許文献1には、このような風車の過回転を防止するために、電力系統の事故を検出した場合に風車のピッチ角をフェザー状態に変化させるとともに、変換器への過電流をクローバー回路で防止することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】WO2004/067958
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力系統に異常が生じて各風力発電システムが電力系統から解列し、その後電力系統の異常が解消されたとき、従来の風力発電システムは、ピッチ角をフェザー状態としているため、風車は停止もしくは発電運転に必要な回転速度以下となっている可能性がある。よって、電力系統の異常が解消されてから、発電運転を再開するまでには、風車を発電に適した回転速度とするまで時間を要し、即座に発電運転を再開することができなかった。
【0007】
そのため、電力系統の異常が解消されてから、風車を発電に適した回転速度とするまで、長時間発電することができないという問題があった。
【0008】
さらに、電力系統を構成する発電システムに占める風力発電システムの割合が大きい電力系統においては、電力系統の異常が解消された直後に、大規模な発電システムを長時間失ったのと等しい状態となり、電力の需要と供給のバランスが崩れ、周波数の変動や電圧変動が発生し、場合によっては停電を起こす可能性があるという問題があった。
【0009】
本発明の目的は、系統異常が発生した場合において、系統の異常が解消されてから風力発電システムが発電運転を再開するまでの時間を短縮することが可能な風力発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、系統もしくは風力発電システムの異常状態を検出する異常検出手段と、前記異常検出手段が異常を検出しないときの第一のピッチ角制御手段と、前記異常検出手段が異常を検出したときの第二のピッチ角制御手段と、を有し、前記第二のピッチ角制御手段は、前記ローターの回転速度を前記風力発電システムの発電運転可能な回転速度に保つことを特徴とする風力発電システムにより達成することができる。
【0011】
または、電力系統の電圧と電流と周波数の何れか、もしくは前記風力発電システムの電流の検出値が異常値であるときに、前記ブレードのピッチ角を変更することで前記ローターの回転速度を一定範囲内に制御し、かつ前記発電機側変換器が同期発電機への無効電力を制御することを特徴とする風力発電システムの制御方法により達成することができる。
【発明の効果】
【0012】
電力系統の異常が解消された後に、発電運転を休止していた風力発電システムが、発電運転を再開するまでの時間を短縮することが可能となり、風力発電システムの発電電力量を増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
風力発電システムにおいて、系統の電圧を検出する機器を備え、系統電圧振幅の低下率に応じて、ピッチ角の制御方法を変える。
【実施例1】
【0014】
本発明の風力発電システムの構成について図1から図16を用いて説明する。図1に風力発電システム全体の構成を示す。図1に示した風力発電システムは、ブレード11により風を受け、風のエネルギーを回転エネルギーに変換する。回転エネルギーはブレード11が接続しているハブ12を回転させる。なお、ブレード11とハブ12を含む回転部分を、ローター1と呼ぶ。ローター1の回転はシャフト21を介して増速ギヤ22に伝達される。増速ギヤ22はローター1の回転速度を発電機に適した回転速度に変換する。図1では発電機として二次励磁型発電機23を示している。二次励磁型発電機23では固定子巻線に電力系統が接続され、回転子巻線に電力変換器28が、スリップリングを介して接続される。なお本発明は、図2に示したように、発電機が永久磁石型発電機23a,誘導発電機、あるいは同期機であっても利用可能である。
【0015】
次に風力発電システムの、発電運転時の制御系の構成について概要を説明する。図3は二次励磁発電機型風力発電システムの、制御系も含めた詳細な構成を、模式的に表したものである。制御系は、主に風車発電システム全体の動きを制御する上位風車コントローラ25,電力変換器28を制御する電力変換器コントローラ26によって構成されている。上位風車コントローラ25は、風速計24で計測した風速や、エンコーダ27のパルス信号から演算したローター1の回転速度ω[rad/sec],風力発電システムの発電電力P[W]から、発電電力指令P*[W]や、ピッチ角指令φ*[度]を計算する。
【0016】
風力発電システムの発電電力Pは、電力変換器コントローラ26と、電力変換器28によって制御される。電力変換器28は発電機側電力変換器281,系統側電力変換器283,平滑化コンデンサ282などで構成される。発電機側電力変換器281と系統側電力変換器283は、IGBTなどの半導体スイッチング素子を用いて構成する。変換器コントローラ26は、風力発電システムと電力系統との連系点に設置した電圧測定器291および、電流測定器292から、それぞれ3相の交流電圧値VU,VV,VW [V]、3相の電流値IU,IV,IW [A]を内部に取り込む。電力変換器コントローラ26は、内部でこれらの電圧,電流信号から、電圧振幅値Vabs ,有効電力P,無効電力Qなどを演算する。
【0017】
電力変換器コントローラ26は、演算の際、検出した電圧,電流信号を、一旦回転座標系で座標変換し、d軸成分,q軸成分を計算する。座標変換には、系統電圧のU相に追従する位相信号cos(ωSYSt) ,sin(ωSYSt)を用いる。ここでωSYS[rad/sec]は電力系統の交流電圧の角周波数をあらわしており、またt[sec]は時刻を表す。位相信号cos(ωSYSt)が電力系統のU相の電圧位相に一致している場合、電圧のd軸成分Vd,電圧のq軸成分Vq,電流のd軸成分Id,電流のq軸成分Iq は、数1,数2にて計算される。
【0018】
【数1】

【0019】
【数2】

【0020】
電力変換器コントローラ26は、得られたId,Iq,Vd,Vqを用いて、有効電力P[W],無効電力Q[Var]と電圧振幅値Vabs[Vrms],電流振幅値Iabs[Arms]を、それぞれ数3,数4,数5,数6に示す式から求める。
【0021】
【数3】

【0022】
【数4】

【0023】
【数5】

【0024】
【数6】

【0025】
電圧のq成分が0(Vq=0)になるように位相信号を作ると、有効電力,無効電力,電圧振幅は、数7,数8,数9のように表される。
【0026】
【数7】

【0027】
【数8】

【0028】
【数9】

【0029】
電力変換器コントローラ26は、上位風車コントローラ25からの電力指令に、有効電力Pが追従するように発電機側電力変換器281の出力電流を制御する。このため、電力変換器コントローラ26は、電流測定器294で検出した電流値を取り込む。同時に、系統側電力変換器283は、出力電流を制御することにより、電力変換器28の直流部電圧を、所定値に保つ。このため、電力変換器コントローラ26は、電流測定器293で検出した電流値を取り込む。電力変換器コントローラ26は、電力変換器28にPWM(pulsewidth modulation)制御に従ったゲートパルス信号を送り、電力変換器28はゲートパルス信号に応じてスイッチング動作をすることで、風力発電システムの有効電力,無効電力を制御する。また電力変換器コントローラ26は、発電機に取り付けられたエンコーダ27のパルス信号から、発電機の回転速度、およびギヤ比換算することで、ローター1の回転速度ωを演算する。以上が、風力発電システムの通常発電運転時(本発明において、通常発電運転とは、風力発電システムもしくは電力系統の異常を検出していない状態の運転方法を意味するものとする)における制御方式である。
【0030】
次に本発明のピッチ角制御方式について説明する。ピッチ角制御系の構成図を図4に示す。上位風車コントローラ25は、風速計24の計測した風速値を平均化演算器2501において時間平均し、風速の平均値v[m/sec ]を求める。上位風車コントローラ25は、回転速度指令演算器2502において、得られた風速の平均値v[m/sec ]からテーブル参照することにより、回転速度指令ω* を作成する。上位風車コントローラ25は、得られた回転速度指令ω*、ローター1の回転速度ω[rad/sec],発電電力P[W]から、発電電力指令P*[W]と、ブレード11のピッチ角指令φ*[度]を計算する。ピッチ角制御器111は、上位風車コントローラ25からのピッチ角指令φ* [度]に従って、ブレード11のピッチ角を制御する。本発明の特徴的な部分は、通常発電運転時と、異常時運転継続モード(本発明において、異常時運転継続モードとは、風力発電システムもしくは電力系統の異常を検出した後の運転モードを意味するものとする)において、ピッチ角制御、および発電電力制御の方式を切り替える点である。具体的には、通常発電運転時は、ピッチ角指令φ*、及び電力指令P*はそれぞれ、ピッチ角指令・電力指令演算器2503で作成された値を用いる(φ*=φ1*,P*=P1*)。異常時運転継続モードにおいては、ピッチ角指令は異常時ピッチ角指令演算器によって作成された値を用い(φ*=φ2*)、発電電力指令は0[W]とする(P*=0)。
【0031】
ピッチ角制御は、ローター1の回転速度を制御する役割を担う。ローター1の全体のエネルギーバランスは、数10で表される。
【0032】
【数10】

【0033】
数10式中の記号の意味は、それぞれI[kg・m2]:回転体の慣性モーメント、ω[rad/sec]:ローター1の回転速度、Pin[W]:風からの入力パワー,P[W]:風力発電システムの発電電力、PLOSS:損失,t[sec] :時間,d/dt:微分演算子である。数10が示すように、ローター1の回転速度ωを制御するためには、ピッチ角制御器のピッチ制御によりPinを変化させるか、あるいは発電出力の制御によりPを変化させる必要がある。
【0034】
図5は、通常発電運転時における、風速vとピッチ角制御方式、および発電電力Pの関係を示したものである。風力発電システムは、その特性により発電運転が可能な風速領域がある。平均風速がvci(カットイン風速)より、大きい場合、発電運転を開始する。逆に、vciより風速が小さい場合、風力発電システムはピッチ角を所定の値に固定し、発電を行わず待機状態にいる。発電電力は、風速が大きくなるのに伴って増大し、vr (定格風速)以上では、ほぼ一定値になる。風速が、vCO(カットアウト風速)より大きい条件では、風力発電システムは、ブレード11を可能な限り風と平行にすることで(φ=0[度]、フェザー状態)、風の入力エネルギーを最小にし、発電を行わず待機状態にする。
【0035】
発電運転時のピッチ角制御方式は、風速の大きさによって、大まかに次のように区別される。風速の平均値vがvci<v<vr の間では、ピッチ角は風向に対して最大値をとる(φ=30[度])、このようにすることで、ブレード11は風のエネルギーを最大限利用することができる。この間、風速の瞬時変動によって、ローターの回転速度が変化するが、風力発電システムが出力する発電電力Pを制御することによって、回転速度ωの変動を抑制する。一方、vr<v<vC0 の間では、上位風車コントローラ25は、発電電力指令Pを、定格発電電力値に固定する。風力発電システムの発電電力Pは、電力変換器28によって一定に制御される。この間、回転速度ωは、ピッチ角を変化させることで、制御される。
【0036】
通常発電運転時における、ピッチ角指令φ*[度]と発電電力指令P*[W]の作成の詳細な手順を、図6に示す。ピッチ角指令演算器25032は、回転速度指令値ω* と、回転速度の検出値ωからピッチ角指令φ1*(=φ*)を作成する。同時に、発電電力指令演算器25034は、回転速度指令値ω* と、回転速度の検出値ω,発電電力量Pから、発電電力指令P1*(=P*)を作成する。
【0037】
次に本発明における、異常検出時のピッチ角制御方式について説明する。異常検出時においては、風力発電システムは電力系統6への発電電力の供給を停止(P=0)する。このため数10から明らかなように、電力制御による回転速度制御が困難となり、比較的に応答速度の遅いピッチ角制御に依存した回転速度制御となるため、特別な制御が必要となる。異常の対象となる現象としては、系統電圧低下,系統電圧の上昇,変換器における過電流,系統周波数の変動、などが上げられる。
【0038】
まず異常現象のうち、系統電圧低下について説明する。電力系統では、落雷や送電線の樹木への接触,負荷の故障,人災による送電線の相間接触などにより、送電線の電圧が一時的に低下する場合がある。電圧の低下現象は、軽微な事故であれば、事故区間の遮断により、数秒以内に解消される。
【0039】
同様な系統電圧の異常現象として、系統電圧の上昇も発生しうる。系統電圧上昇の原因としては、負荷、発電機が電力系統に連系する際に瞬時的に発生する突入電流などによって引き起こされる。
【0040】
このような、瞬時的な電圧低下,電圧上昇が発生した場合、風力発電システムは発電運転を停止する。これは、風力発電システム構成機器の保護のためである。
【0041】
電圧の異常状態の検出は、電力変換器28を制御する電力変換器コントローラ26の内部で行う。電圧の異常状態の検出機構を、図7を用いて説明する。電力変換器コントローラ26は、数2,数5に示した演算を電力変換器コントローラ26内の電圧振幅演算器2602で行い、系統電圧振幅Vabs を得る。電力変換器コントローラ26は、内部に系統事故であると判断する電圧レベルVGFを保持しており、演算から求めた系統電圧振幅Vabsと、VGF を運転中に常時、比較している。比較は、電力変換器コントローラ26内部の比較演算器2604により行われ、Vabs<VGF が成り立った場合は、系統電圧が異常であると判断し、低電圧検出信号を発生する。系統電圧の過電圧の検出も同様の構成によって行われる。つまり電力変換器コントローラ26は内部に過電圧レベルVOVを保持しており、VabsとVOVを常に比較している。Vabs>VOVの関係が成り立った場合には、系統電圧が、過電圧状態であると判断し、過電圧検出信号を発生する。
【0042】
次に異常現象として、過電流現象について説明する。風力発電システムは、通常発電運転の範囲であれば、その出力する電流振幅は、定格電流以下である。しかしながら、系統事故などにより、定格電流を大きく上回る過大な電流が流れる場合がある。この現象を以降で過電流と呼ぶ。過電流時の電流振幅が、風力発電システム定格電流の1.5 〜2倍に達すると、電力変換器28の構成機器である半導体素子が、破壊される可能性がある。このため電力変換器や、風力発電システムの過電流検出時には、電力変換器28は瞬時に運転を停止し、風力発電システムが待機モードに移行する必要がある。なお。過電流の原因が電力系統の短時間の事故などであった場合は、過電流減少直後に、発電運転を再開する方が、電力系統安定化の観点から望ましい場合がある。
【0043】
過電流の検出方法を、図7を用いて説明する。過電流は、電力変換器コントローラ26の過電流検出演算器26005aで検出される。電力変換器コントローラ26は、数1,数6に示した演算を、過電流検出演算器26005a内の電流振幅演算器2605で行い、出力電流の振幅Iabs を得る。電力変換器コントローラ26は、内部に過電流であると判断する電流振幅レベルIOCを保持している。電流振幅レベルIOCは、通常、発電システム定格電流振幅の1.5倍から2.0倍に設定される。電力変換器コントローラ26は、内部演算の比較演算器2606において、IOCとIabsを運転中に常時比較している。Iabs>IOCが成り立った場合は、過電流状態であると判断し、過電流検出信号を発生する。以上で電流測定器292により検出された風力発電システム全体の出力電流(IU,IV,IW)の過電流検出方法について説明したが、過電流検出演算器26005aと同様な方法を用いて、電力変換器28の過電流現象も検出する。系統側電力変換器283については、過電流検出演算器26005bにおいて、電流測定器293で検出した系統側電力変換器283の出力電流(IsU,IsV,IsW)を用いて、過電流を検出する。発電機側電力変換器281については、過電流検出演算器26005cにおいて、電流測定器294で検出した発電機側電力変換器281の出力電流(IgU,IgV,IgW)を用いて、過電流を検出する。
【0044】
系統周波数の変動も、異常検出の対象となる。電力系統の運用周波数は、それぞれの電力系統で決まっており、電力系統が通常の状態であれば、運用周波数から大きくずれることはない。しかしながら系統事故などにより、周波数が大きく変動する場合がある。このような場合、風力発電システムにおける電流制御が困難となる場合があるため、風力発電システム保護のため、発電運転を停止する。
【0045】
系統周波数の変動の検出構成を、図7で説明する。電力変換器コントローラ26は、内部の系統周波数検出器2607において、系統電圧の検出値より電力系統の周波数ωSYSを検出する。電力変換器コントローラ26は、内部に周波数の上限ωSYSH、および下限 ωSYSLを保持している。電力変換器コントローラ26は、比較演算器2608、と比較演算器2609において、ωSYSとωSYSH,ωSYSLを、運転中に常時比較しており、ωSYS>ωSYSHあるいはωSYS<ωSYSLを検出したら、周波数変動大信号を発生する。
【0046】
なお、図7に示した異常検出方法は、全て電力変換器コントローラ26の内部演算により行っているが、図8に示したような電気回路で構成しても良い。図8では、絶対値演算回路2610aと、コンパレータ2616aで構成した過電流検出回路26006aで過電流異常検出する。図8では、3相の電流検出値IU,IV,IW から、絶対値演算回路2610a,2611a,2612aとダイオード2613a,2614a,2615aを用いることで、電流のピーク値を検出する。この電流ピーク値を、コンパレータ2616aにおいて過電流レベルIOCと比較することにより、過電流を検出する。なお、過電流レベルIOCは、5Vの電圧源と、抵抗器2618a,可変抵抗器2617aにより設定される。電力変換器28の過電流も、同様の回路構成をもつ過電流検出回路26006bおよび過電流検出回路26006cによって検出する。なお、図8には示していないが、過電圧現象も同様な電気回路構成で検出することが可能である。
【0047】
電力変換器コントローラ26は、上記の異常検出信号(過電流,電圧異常,周波数異常)を少なくともひとつ検出した場合は、電力変換器を動作させるゲートパルス信号を停止する。この動作をゲートブロックと呼ぶ。同時に、上位風車コントローラに異常検出信号を伝達する。上位風車コントローラは、異常検出信号を検出した場合、風力発電システム全体を、異常時運転継続モードに移行させる。
【0048】
本発明における、異常時運転継続モード中のピッチ角制御の方式について、以下で説明する。異常状態が解消された後に、風力発電システムがすぐ発電運転状態に移行するためには、異常時運転継続モード中においても、ローター1の回転速度を発電運転可能な範囲に維持しておくことが必要となる。ローター1の回転速度制御は、ピッチ角制御と発電電力制御によって行われる。ピッチ角制御は図3に示したピッチ角制御器111で行われる。ピッチ角制御器111は電動モーターかあるいは油圧駆動系などによって構成される。ピッチ角の制御は、フェザー状態(φ=0[度])から最大角(φ=30[度])まで変化させるのに、数十秒程度必要である。一方、発電電力制御は、0から定格まで変化させるのに、数100msec 程度である。このため、回転速度制御は、ピッチ角制御よりも発電電力制御のほうが、応答が速い。
【0049】
異常状態検出後の異常時運転継続モード中は、風力発電システムは発電運転を停止するため、電力系統に発電電力を供給しない。このとき、数10の中においてP=0となるため、応答が遅いピッチ角制御のみで回転速度を制御しなければならず、通常のピッチ制御のままでは、回転速度が運転範囲を逸脱しやすい。特に、定格発電運転中に異常状態を検出した場合、数10の中のPが定格発電電力から0[W]まで急激に変化するため、回転速度ωが急激に上昇する。回転速度ωの上昇を抑えるためには、通常の発電運転時とは異なったピッチ角制御方式が必要となる。
【0050】
図9に、異常状態検出後の異常時運転継続モード中のピッチ角制御方式の一例を示す。異常時運転継続モード中は、回転速度の検出値ωに応じて、ピッチ角の制御方式を切り替える。具体的には、回転速度に二つのレベルωa,ωbをもうけ、この二つのレベルと回転速度検出値ωを比較することで、ピッチ角制御方式を切り替える。なお、ωa,ωbと、運転可能な回転速度の上限ωH,下限ωLの間には、数11に示すような関係が成り立つ。
【0051】
【数11】

【0052】
回転速度の検出値がωa≦ω≦ωbの関係にある間は、ピッチ制御は、PI制御器25063によって行われる。PI制御器25063は、回転速度の目標値ω* と回転速度検出値ωの差分を、比例積分演算することにより、ピッチ角指令φ2*(=φ* )を決定する。ω<ωa の場合には、ピッチ角指令選択器25064は、ピッチ角指令として最も風のエネルギーを受ける角度φ2*=30[度]を選択する。同様に、ω>ωb の場合には、ピッチ角指令選択器25064は、ピッチ角指令として最も風のエネルギーを受けない角度φ2*=0[度]を選択する。
【0053】
図10に、回転速度とピッチ角の時間変化の様子を示す。図10では、時刻t1 に異常状態を検出し、発電を停止、以降は異常時運転継続モードにある。異常検出の瞬間に、回転速度は、ω>ωb関係にあるため、ピッチ各指令としてφ*=0[度]が選択される。このようにすることで、回転速度が運転可能領域の上限に近づいた際、風の入力エネルギーを急速に減衰させることができるので、回転速度が低下し、回転速度が回転速度の上限ωHを上回ることを防止できる。時刻t2<t<t3の間は、ωa<ω<ωb の関係があるため、PI制御によるピッチ角指令に従う。t3<t<t4の間は、ω<ωa であり、運転速度の下限に達しやすい領域にある。この際は、ピッチ角指令としてφ* =30[度]が選択される。これにより、風のエネルギー入力エネルギーを急速に増大させることができるので、回転速度が上昇し、回転速度ωが回転速度の下限ωLを下回ることを防止できる。
【0054】
異常時運転継続モード中の他のピッチ角制御方式として、図11に示す方式を用いてもよい。図11に示した方式では、異常時運転継続モード中は、回転速度の検出値ωに応じて、予め定められたピッチ角指令を選択する。具体的には、ω<ωaのときはφ*=30[度]を、ωa≦ω≦ωb のときにはφ*=15[度]、ω>ωbのときにはφ*=0[度]を選択する。
【0055】
図11に示したピッチ角制御方式を行った際の、回転速度ωとピッチ角φの動きを図12に示す。図12の例では、時刻t1 に異常状態を検出し、発電を停止、以降は異常時運転継続モードにある。異常時運転継続モード中は、回転速度の大きさに応じて、3段階のピッチ角指令を選択する。時刻t1<t<t2 の間は、回転速度がω>ωbとなり、運転可能領域の上限に近いため、ピッチ角指令としてφ* =0[度]を選択することで、風の流入エネルギーを減衰させ、回転速度の上限逸脱を防止する。逆に、t3<t<t4の間では、回転速度がω<ωa となり、運転可能領域の下限に近づいたため、ピッチ角指令としてφ* =30[度]を選択する。これにより、風の流入エネルギーを増大させ、回転速度の下限を逸脱するのを防止する。
【0056】
また、異常時運転継続モード中の他のピッチ角制御方式としては、図13に示す方式を用いてもよい。図13に示すピッチ角制御方式では、異常時運転継続モード中は回転速度指令値ω*を、風速にかかわらず、一定値ωCに固定する。ωC は運転可能な回転速度の上限ωHと下限ωLの中間値程度に設定する。ピッチ角指令φ2は、この回転速度指令値ωCと、回転速度の検出値ωの差分にPI制御演算を行ったもので作成される。図14に、図13に示したピッチ角制御を行った場合の、回転速度ωとピッチ角φの動きを示す。図14の例では、時刻t1 に異常状態を検出し、発電を停止、以降は異常時運転継続モードにある。異常時運転継続モード中は、回転速度の目標値ω* は、風速によらず一定値となる。このようにすることで、ローター1の回転速度が、運転可能な領域を逸脱しにくくなる。なお、以上の構成においては、ローター1の回転速度が高い領域においては、ピッチ角をフェザー状態(ピッチ角φ=0[度])に固定したが、フェザー状態付近の所定値に固定しても、同様な過回転防止効果が得られる。
【0057】
なお、異常現象のうち系統電圧低下においては、風力発電システムの制御電源を、電力系統から供給できなくなる。このため、図15に示したように、風力発電システムを構成する制御器(上位風車コントローラ25,ピッチ角制御器111,電力変換器コントローラ26など)は、それぞれ補助電源を備えている。電力系統の電圧低下現象が発生していない場合は、制御器の電力は、電力系統の交流6.6kV(あるいは1.4kV)から、降圧トランス41により交流200V(あるいは交流400V)に降圧され、補助電源30a,30b,30cを介して供給される。補助電源30a,30b,30cは、内部に蓄電池などの蓄電設備をそなえており、電力系統の電圧低下現象が発生していない場合は、電力系統から制御器へ制御電源を供給し、同時に蓄電設備への充電動作を行っている。
【0058】
電力系統の電圧低下現象が発生し、電力系統から制御器(上位風車コントローラ25,ピッチ角制御器111,電力変換器コントローラ26など)への電力供給ができなくなった場合、補助電源30a,30b,30cはそれぞれ内部の蓄電設備から、制御電源に電力を供給する。このような補助電源を持つ構成により、系統電圧低下中であっても、制御器は電力を確保でき、異常時運転継続モードにおける動作が可能となる。
【0059】
なお、以上で説明したような異常時運転継続モード中のピッチ角制御方式は、二次励磁発電機型風力発電システムの他に、図16に示す永久磁石発電機型風力発電システム,誘導発電機型風力発電システム、図17に示す直流励磁同期発電機型風力発電システムなどにも適用が可能である。
【0060】
以上に説明してきたように、異常検出後の異常時運転継続モードにおいてピッチ角制御方式を通常の発電運転時の制御方式から異常時運転継続モードに切り替え、ピッチ角指令を風車の回転速度に応じて切り替える、または、回転速度を一定の目標値に制御するためにピッチ角指令を調整する。このようなピッチ角制御の方法により、ローター1の回転速度制御をピッチ角の調整によってのみ行う必要がある異常時運転継続モード中においても、ローター1の回転速度を運転可能領域に収めることが容易となり、異常状態が解消された後、すぐに通常の発電運転状態に移行することが可能となる。これにより、風力発電システムの発電運転時間を延ばすことができ、発電量が増加する。また系統事故直後の電力供給により、電力系統全体の安定化に寄与できる。
【実施例2】
【0061】
本発明の実施例について説明する。本実施例においては、ピッチ角制御方式を、系統電圧の低下率に応じて変更する。
【0062】
本発明は、図1,図2に示したような、電力変換器28を構成要素にもち、発電電力の制御が可能な風力発電システムに適用できる。通常発電運転時のピッチ角制御,発電電力の制御は、実施例1に示した通りであるので、説明は省略する。
【0063】
本発明における、系統電圧低下中の風力発電システムの運転方式について、以下で説明する。電力系統では、落雷や送電線の樹木への接触,負荷の故障,人災による送電線の相間接触などにより、送電線の電圧が一時的に低下する場合がある。電圧の低下現象は、軽微な事故であれば、事故区間の遮断により、数秒以内に解消されることが多い。
【0064】
風力発電システムが、系統電圧低下中においても発電電力を電力系統に供給すると、以下のような利点がある。つまり、数10に示したように風力発電システムのローター1の回転速度は、主に風からの入力パワーPin[W]と発電システムの発電電力P[W]によって決まる。例えば系統事故中において、電力系統に発電電力を供給できない場合、数10中においてP=0となるため、回転速度ωが急激に上昇する。一方、系統事故中であっても、電力系統へ発電電力Pを供給できれば、回転速度ωの上昇が緩慢になる。このような発電電力の大きさの違いによって、回転速度ωの上昇速度は変化する。
【0065】
つぎに系統電圧と発電電力Pの関係について説明する。系統電圧瞬低中は数9に示した系統電圧Vabs=|Vd|が低下するため、数7式に示したように、事故前と同じ電流Idを流しても、発電電力Pは小さくなる。発電電力Pを事故前と同じ値に保つためには、出力電流Id を増加させる必要があるが、電力変換器28や、発電機からの制約により、限界がある。電力変換器28の出力できる電流値の最大値をIMAX [Arms]とした場合、数12式に示すように、風力発電システムの発電電力量の最大値PMAX [W]は系統電圧に比例する。
【0066】
【数12】

【0067】
このため、回転速度上昇防止のためのピッチ角制御方式を、系統電圧の低下率によって、それぞれ変更する必要がある。例えば、系統電圧が0になる事故の場合、数7中のVdはほぼ0であるから、電力系統に供給できる電力Pも、ほぼ0となる。このため、回転速度の上昇を抑えるためには、数10中の入力パワーPinを急速に減少させる必要がある。つまり、ピッチ角を風向と平行になる方向(フェザー方向)に変化させる必要がある。
【0068】
一方、系統電圧が通常時の80%程度までしか低下しない時は、系統異常時であっても、ほぼすべての発電電力を電力系統に供給できる。つまり、数10中の発電電力Pの減少が少なく、回転速度上昇も緩やかである。ピッチ角制御も、入力パワーPinを急速に減少させる必要が無いため、図4に示した通常の制御方式を維持する、あるいは風速条件がvci<v<vrの範囲であっても、回転速度が上限を超えた場合のみ、過回転を抑えるピッチ角制御を行う程度で十分である。
【0069】
本実施例におけるピッチ角制御系と電力制御器系の構成図を図18に示す。上位風車コントローラ25dは、風速計24dの計測した風速値を平均化演算器2501dにおいて時間平均し、風速の平均値v[m/sec ]を求める。上位風車コントローラ25dは、回転速度指令演算器2502dにおいて、得られた風速の平均値v[m/sec ]からテーブル参照することにより、回転速度指令ω* を作成する。上位風車コントローラ25dは、得られた回転速度指令ω* ,ローター1の回転速度検出値ω[rad/sec],発電電力P[W],系統電圧振幅Vabs[W]から、発電電力指令P*[W]とともに、ブレード11のピッチ角指令φ*[度]を計算する。ピッチ角制御器111dは、上位風車コントローラ25dからのピッチ角指令φ*[度]に従って、ブレード11のピッチ角を制御する。
【0070】
ピッチ角指令・電力指令演算器2503dの動作について、図19を用いて説明する。本発明では、電圧低下の大きさにより、ピッチ角制御方式を切り替えることを特徴とする。具体的には、系統事故中において、系統電圧を3段階に分けて、それぞれの領域においてピッチ角制御方式を変更する。通常時の系統電圧を100%とすると、送電線の電圧範囲は、系統運用者の規定によって変わるが、およそ90%〜110%程度である。ここではVGF=90%以下を系統事故状態であると判断し、さらに系統事故時の期間を、系統電圧の大きさに応じて三つに分ける。
【0071】
例えば系統電圧がVGF(=90%)〜Vabs2(=80%)の間は、系統事故中であっても、ほぼ全ての発電電力を電力系統に供給できるため、事故による影響は小さく、回転速度の上昇はほとんどない。ピッチ角制御は、風速に応じた通常運転時の制御方式を継続し、ωとω*に応じて、ピッチ角指令を作成する。
【0072】
系統電圧がVabs2[%](80%)〜Vabs1[%](20%)の間は、ピッチ角をあらかじめ設定しておいた角度φ=15[度]まで急速に変化させて、固定する。なお、この所定の角度は、ピッチ角最大値とフェザー状態の中間程度の値である。このようなピッチ角制御を行うことで、風の入力エネルギーを一部逃がすことで過回転を防止し、かつ事故期間中もローターの回転を維持して、事故復帰後すぐに通常発電状態に移行することを可能とする。
【0073】
系統電圧がVabs1[%](=20[%])未満の場合は、電力系統にほとんど発電電力を供給できないため、ローター1の回転速度ωが急速に上昇する。回転速度の上昇を抑えるため、ピッチ角制御器111はピッチ角をフェザー状態φ* =0[度]まで急速に変化させる。なお、発電電力指令P *に関しては、最大電力指令演算器25037dにより、数7式による発電可能な最大発電電力量Pmax が演算され、リミッタ25036dによって、発電電力指令P*を限定する。
【0074】
図18,図19に示したピッチ角制御方式を適用した場合の、ピッチ角指令の時間変化を図20に示す。図20は、横軸が時間を、縦軸が系統電圧振幅とピッチ角指令を示している。図20では、時刻t1に系統電圧振幅が、Vabs<VGFとなるが、ピッチ角制御方式は、通常の発電運転時と同様に、回転速度に応じたピッチ角制御を行う。時刻t2 <t<t3、およびt4<t<t5の間は、系統電圧振幅がVabs1<Vabs<Vabs2であるため、ピッチ角指令φ*を15[度]に固定する。同様に、時刻t3<t<t4 の間は、系統電圧振幅がVabs<Vabs1であるため、ピッチ角指令φ*を0[度]に固定する。このようなピッチ角制御を行うことで、回転速度が運転範囲を逸脱するのを、防止しやすくなる。
【0075】
なお、ピッチ角制御方式を切り替える系統電圧の値(VGF,Vabs1,Vabs2など)は、風力発電システムが連系する電力系統、あるいは風力発電システムの連系容量,風力発電システムの特性によって、それぞれ変更することが可能である。またピッチ角制御方式を切り替える際の系統電圧レベル、およびピッチ角の固定レベルは3つ以上であってもよい。
【0076】
また、本発明は、図3に示す二次励磁型風力発電システム、図16に示す永久磁石発電機型風力発電システム、誘導発電機型風力発電システム、図17に示す直流励磁同期発電機型風力発電システムなどに適用が可能である。
【0077】
以上のような系統電圧低下率に応じて、ピッチ角制御方式を選択することで、瞬時系統電圧低下時もローターの過回転を抑制することができ、事故復帰直後の瞬時発電運転再開が可能となる。これにより、風力発電システムの運転時間が長くできるため、発電量が増加する。また系統事故直中、系統事故除去直後の電力供給により、系統全体の安定化に寄与できる。
【実施例3】
【0078】
本発明の第3の実施例について図21,図22,図23,図24を用いて説明する。図21は永久磁石発電機を用いた、本実施例による風力発電システムの構成を示している。制御系は、主に風車全体の動きを制御する上位風車コントローラ25e,電力変換器28eを制御する電力変換器コントローラ26eによって構成されている。上位風車コントローラ25eは、風速計24eで計測した風速、ローター1の回転速度ω[rad/sec]などから、発電電力指令や、ブレード11eのピッチ角指令を計算する。
【0079】
風力発電システムの発電電力は、電力変換器28eによって制御される。電力変換器28eは主に発電機側電力変換器281e,系統側電力変換器283e,平滑化コンデンサ282eで構成される。発電機側電力変換器281eと系統側電力変換器283eは、IGBTなどの半導体スイッチング素子を用いて構成する。通常運転時は、発電機側電力変換器281eは、有効電力制御を行うことで、上位風車コントローラ25eの有効電力指令Pに従って発電電力を制御している。発電機側電力変換器281eは、同時に無効電力制御を行うことで、永久磁石型発電機23eの端子電圧を制御している。また系統側電力変換器283eは、電力変換器28eの直流部の電圧制御を行うことで、電力系統に発電電力を供給する。また系統側電力変換器283eは、同時に電力系統へ出力する無効電力も制御する。
【0080】
電力変換器コントローラ26eは、風力発電システムの連系点に設置した電圧測定器291eおよび、電流測定器292eから、それぞれ3相の交流電圧値VU,VV,VW[V]、3相の電流値IU,IV,IW [A]を内部に取り込む。電力変換器コントローラ26eは、内部でこれらの電圧,電流信号から、電圧振幅値Vabs [rms],電流振幅値Iabs [Arms],有効電力(発電電力)P[W],無効電力Q[Var]などを演算する。Vabs[Vrms]とIabs[Arms]は、具体的には数13,数14に従って演算される。
【0081】
【数13】

【0082】
【数14】

【0083】
電力変換器コントローラ26eは、演算した電力変換器出力電流振幅Iabsを、常に電力変換器コントローラ26e内部の所定値ICLR,IOCと比較し、系統側電力変換器283eの過電流現象を検出している。なお所定値には、数15に示すような関係がある。
【0084】
【数15】

【0085】
系統側電力変換器283eは、図22に示したように、IGBT2833eと還流ダイオード2832e、および電力変換器コントローラ26eから受信した、ゲートパルス信号に従ってIGBTを駆動するゲート駆動回路2831eとで構成されている。IGBT2833eはある一定値以上の電流を流したままでスイッチング動作を行うと、破損する可能性が高まる。そのため、電力変換器コントローラ26eは、過電流を検出した際、系統側電力変換器283eにスイッチング動作を停止させる信号を送る。過電流が発生する原因としては、系統事故や電力変換器構成機器の短絡事故、あるいは電力変換器コントローラ26eの誤作動などがある。
【0086】
図23に、系統事故による電圧低下現象が起こった場合の、Vabs検出値とIabs検出値の動きを示す。図23では、時刻t0に系統事故が発生し、それ以前では、系統電圧Vabsは正常(Vabs=100%)であり、また風力発電システムは定格電力で発電している(Iabs=100%)ものとする。時刻t0以降から電圧低下が始まり、このため系統側電力変換器283eの電流制御性能が悪化し、電流値振幅Iabs が増加をはじめる。系統電圧の低下速度が速い場合、Iabsの増加が早く、図23に示したように、過電流検出Iabs>IOC(時刻t1)のほうが、系統事故検出Vabs<90[%](時刻t2) より早く起こる。このため、風力発電システムは、まず過電流対応の制御モードに制御方式を切り替え、その後、系統電圧低下対応の制御方式に切り替える必要がある。
【0087】
図24に、風力発電システムの、過電流検出時の運転のフローチャートを示す。以下で、過電流検出から、発電運転再開までの運転方法の時系列変化を説明する。
1)過電流検出時
電力変換器コントローラ26eが過電流を検出した際、系統側電力変換器283eはゲートブロックをする。系統電圧低下による過電流であれば、ゲートブロックにより電流振幅Iabs は急速に減少する。電流振幅が減少しなかった場合は、過電流発生の原因が、風力発電システム構成機器の故障である可能性が高いため、上位風車コントローラ25eは、遮断器5eに開信号を送り、風力発電システムを停止状態に移行させる。
【0088】
一方、発電機側電力変換281eは、永久磁石型発電機23eの回転速度により、系統側過電流検出時の運転方法が異なる。永久磁石型発電機23eは、回転速度の増加とともに、誘起電圧が増大する。誘起電圧が発電機側電力変換器281eの出力電圧より大きくなる場合、電力制御ができなくなるため、弱め界磁運転と呼ぶ制御を行う。これは、発電機側電力変換器281eが、永久磁石型発電機23eの固定子に供給する無効電力を制御することにより、端子電圧を下げる運転方式のことである。弱め界磁運転時の発電機端子電圧と無効電力の関係を、図25を用いて説明する。永久磁石型発電機23eの発電機端子電圧は、無負荷時においては回転速度とほぼ比例して増大する。このため、ある回転速度以上では、発電機端子電圧が、発電機側電力変換器281eの出力電圧より大きくなり、発電機の電力制御が困難になる。このため、予め定めた回転速度ωc[rad/sec]より回転速度が大きい運転領域では、発電機側電力変換器281eが、発電機に対して無効電力を供給する。無効電力の供給により、発電機端子電圧の上昇が抑制され、回転速度が高い領域でも、発電機側電力変換器281eによる電力制御を可能とすることができる。なお、図25においては、無効電力を回転速度に対して直線的に出力しているが、弱め界磁運転の無効電力出力方式はこれに限定されるものではなく、別の出力方式を行っても、同様な効果が得られる。
【0089】
系統側電力変換器283eで過電流が発生した場合、系統側電力変換器283eはゲートブロックをするため、電力系統に電力を供給できない。このため、電力変換器28eの直流部の電圧上昇を抑制するために、発電機側電力変換器281eは、永久磁石型発電機23eからの有効電力の流入を止める必要がある。回転速度が高い場合は、発電機側電力変換器281eは、永久磁石型発電機23eへの無効電力供給を継続しなければならない場合がある。なぜなら、回転速度が上昇し、電力変換器28eの直流電圧より永久磁石型発電機23eの誘起電圧の方が高くなった場合、発電機側電力変換器281eの還流ダイオードを介して、発電機のエネルギーが直流部に流れ込み、直流部の電圧を上昇させてしまうからである。このような場合、弱め界磁運転により端子電圧を下げ、直流部の電圧上昇を抑えることができる。よって、回転速度が高い場合には、発電機側電力変換器281eは、永久磁石型発電機23e端子の有効電力を0[W]に制御し、同時に無効電力制御による弱め界磁運転は継続する。これにより、事故期間中の直流部電圧上昇を抑制し、事故復帰直後の発電機側の電流制御,電力制御が可能となる。なお、永久磁石型発電機23eの回転速度が低く、発電機端子電圧が、電力変換器28eの直流部電圧より低い場合、直流部充電が起こらないため、発電機側電力変換器281eは、ゲートブロックを行い、停止してもよい。
【0090】
また、永久磁石型発電機23eの電圧特性によっては、強め界磁運転を行う必要がある。永久磁石型発電機23eは、回転速度の減少とともに、誘起電圧が減少する。このため、回転速度が小さい領域で電力制御を行う場合、多くの電流量が必要となる場合がある。電流量が発電機側電力変換器281eの電流容量制限を上回る場合、電力制御が困難となる。強め界磁運転について示したのが、図26である。強め界磁運転では、回転速度が小さい領域で、発電機端子電圧が上昇する方向に無効電力を出力する。これにより、回転速度が小さい領域でも発電機側電力変換器281eの出力する電流量が少なくてすみ、電力制御が可能となる。
【0091】
回転速度が小さい強め界磁運転時に過電流を検出した場合、発電機側電力変換器281eは永久磁石型発電機23e端子の有効電力を0[W]に制御し、同時に強め界磁運転を継続する。これにより、事故中の直流部の電圧を制御することが可能となり、事故復帰直後の発電機側の電流制御,電力制御が容易になる。
【0092】
一方、過電流発生時は発電機側電力変換器281eの制御により、数10中の有効電力Pがほぼゼロになるため、ローターの回転速度が上昇する。このため、ピッチ角制御器111eは、実施例1で述べたようにローターの回転速度が、運転可能範囲内に維持されるように、ピッチ角を制御する。
【0093】
なお、ピッチ角制御の追従の遅れ、あるいは急速な風速の上昇により、ピッチ角制御による過回転抑制が十分でなく、回転速度が過回転になる現象が発生する場合がある。過回転状態が発生した場合、風力発電システムは構成機器保護のため、発電運転を停止し、待機状態に移行する。待機状態に移行する際、永久磁石型発電機23eと発電機側電力変換器281e間にある遮断器295eを開放する。遮断器295eを開放するまでの間は、過回転状態であっても発電機側の弱め界磁運転は継続する。弱め界磁運転を継続することで、発電機側からのエネルギー流入による直流部の電圧上昇を防止するためである。
2)過電流減少から過電流除去まで
電力変換器コントローラ26eは、系統側電力変換器283eのゲートブロック中も数13,数14の演算を行うことで、系統電圧Vabsと系統電流Iabsを観測し続ける。Iabsがあらかじめ定めた所定値ICLRを下回った場合(つまりIabs<ICLR)、電力変換器コントローラ26eは過電流が除去されたと判別する。この際、Vabs の大きさにより、電力系統が電圧低下状態であるか、あるいは正常状態であるかを判別し、その後の制御方式を変更する。
2−1)系統電圧正常時の再始動
過電流除去時の系統電圧振幅Vabs が、あらかじめ定められた所定値VGFより大きかった場合、電力変換器コントローラ26eは系統電圧が正常だと判断し、風力発電システムは発電運転を再開する。
【0094】
系統側電力変換器283eは、ゲートブロックを解除し、直流電圧維持制御と、無効電力制御を再開する。また、発電機側電力変換器281eは、再び上位有効電力指令に従った有効電力制御、および無効電力制御を再開する。また、上位風車コントローラ25eは、通常発電運転時のピッチ角指令をピッチ角制御器111eに伝達する。さらに、上位風車コントローラ25eは電力指令を電力変換器コントローラ26eに伝達する。
2−2)系統電圧低下時の再始動
系統電圧低下時の再始動方法は、風力発電システムが接続する電力系統の運用規格によって、変更する必要がある。
【0095】
系統電圧低下中において、風力発電システムの電力系統からの遮断が規定されている場合は、風力発電システムは、1)に記載したゲートブロック動作を継続し、系統電圧が正常に復帰したら、2−1)と同じ手順で、発電運転を再開させる。ただし系統電圧低下状態が所定時間以上経過した場合は、風力発電システム全体を待機状態に移行させる。
【0096】
系統電圧低下中において、風力発電システムが連系しても可能な場合は、系統側電力変換器283eのゲートブロックを解除し、再び直流電圧制御を再開する。発電機側電力変換器281eも、上位有効電力指令に従う有効電力制御と、無効電力制御を再開する。系統電圧低下中は、発電電力の全てを電力系統に供給することができないため、発電システムが過回転に陥りやすい。そのため、ピッチ角制御器111eは、実施例1,2で説明したように、回転速度が運転可能範囲内に維持されるように、ピッチ角を制御する。
【0097】
また、系統連系規格が、系統電圧低下中において、風力発電システムの無効電流供給運転を規定している場合もある。このような電力系統に風力発電システムが連系している場合、系統側電力変換器283eはゲートブロックを解除し、無効電力制御は行わずに、直流電圧制御と、無効電流制御を開始する。出力する無効電流量は、系統連系規格により規定されており、この規格に沿った無効電流量を出力する。発電機側電力変換器も、上位有効電力指令に従う有効電力制御と、無効電力制御を再開する。系統電圧低下中は、発電電力の全てを電力系統に供給することができないため、発電システムが過回転に陥りやすい。そのため、ピッチ角制御器111eは、ローターの回転速度が、運転可能範囲内に維持されるように、ピッチ角を制御する。
【0098】
なお、電力系統の規定によっては、系統電圧低下中において、有効電力の入出力が、電力系統との間でできない場合も考えられる。また無効電流出力を100%要求される場合は、機器の制限により、有効電力はわずかしか入出力できない。数16に有効電力と、電力変換器28eの直流部電圧VDCとの関係を示す。
【0099】
【数16】

【0100】
DC[V]は電力変換器28eの直流部電圧、C[F]は直流部平滑化コンデンサ282eのコンデンサ容量、PSYS [W]は系統側電力変換器283eから電力系統に出力する有効電力、(つまり風力発電システムの発電電力)、Pgen[W] は発電機側電力変換器281eから電力変換器28eの直流部に入る有効電力、PLOSS[W]は損失により失われるエネルギーである。系統事故中は、系統側電力変換器283eは、系統電圧が低下しているため。発電電力PSYS を定格まで制御することができない。このため、実施例1で説明したように、通常発電運転時は、系統側電力変換器283eが直流部の電圧を制御するが、系統事故中においては、発電機側電力変換器281eが直流電圧制御を行っても良い。
3)系統電圧復帰時の運転方法
電力変換器コントローラ26eは系統電圧低下中も、系統電圧振幅Vabsを監視しており、Vabsがあらかじめ定められた所定値より大きくなった場合、電力変換器コントローラ26eは系統電圧が正常になったと判断し、風力発電システムは発電運転を再開する。つまり、系統側電力変換器283eは直流電圧制御と、無効電力制御を行い、発電機側電力変換器281eは有効電力制御と無効電力制御を行う。
【0101】
一方で系統電圧復帰時は、系統電圧が変動するため、系統側電力変換器283eは過電流を起こしやすい。電力変換器コントローラ26eが過電流を検出した際は、上記で説明したのと同様な手順を行うことにより、風力発電システムは発電運転を再開できる。
【0102】
なお本実施例に示した発明の内容は、ピッチ角制御機能を有する風力発電システムに限定されるものではない。例えば、ピッチ角制御機能を持ないストール機能をもつ風力発電システムに対しても、適応可能である。
【0103】
以上のような運転方式をとることにより、系統側電力変換器で過電流が発生した場合であっても、風力発電システムが電力系統に連系したまま運転を継続することが可能である。これにより、風力発電システムの運転時間が長くできるため、発電量が増加する。また系統事故直後の電力供給により、系統全体の安定化に寄与できる。
【0104】
なお、以上の発明は永久磁石発電機を用いた風力発電システムへの適用について説明したが、同じように系統側に電力変換器を持つ構成の風力発電システム全て(例えば、図3に示す二次励磁型発電機を持つ全ての風力発電システム、図17に示す直流励磁型同期発電機23cを持つ風力発電システム)に適用できる。
【0105】
また、上述した各実施例に示す構成は、各実施例の構成によってのみ効果を奏するものではなく、各実施例を組み合わせることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】二次励磁型発電機を用いた風力発電システムの構成図。
【図2】永久磁石型発電機、あるいは誘導発電機を用いた風力発電システムの構成図。
【図3】二次励磁型発電機を用いた風力発電システムの構成図。
【図4】ピッチ角制御系と電力制御系の構成図。
【図5】通常発電時における平均風速と、発電電力,ピッチ角制御方式の関係を示した図。
【図6】通常発電時におけるピッチ角指令,電力指令演算を示した図。
【図7】異常状態の検出方法を示した図。
【図8】異常状態の検出方法を示した図。
【図9】異常時運転継続モード中のピッチ角指令の作成方法を示した図。
【図10】異常運転モード中における、ピッチ角と回転速度の振る舞いを示した図。
【図11】異常時運転継続モード中のピッチ角指令の作成方法を示した図。
【図12】異常運転モード中における、ピッチ角と回転速度の振る舞いを示した図。
【図13】異常時運転継続モード中のピッチ角指令の作成方法を示した図。
【図14】異常運転モード中における、ピッチ角と回転速度の振る舞いを示した図。
【図15】風力発電システムを構成する制御器とその補助電源を示した図。
【図16】永久磁石発電機、または誘導型発電機を用いた風力発電システムの構成図。
【図17】直流励磁型同期発電機を用いた風力発電システムの構成図。
【図18】ピッチ角制御系と電力制御系の構成図。
【図19】ピッチ角指令,電力指令演算を示した図。
【図20】系統電圧低下中における、系統電圧振幅とピッチ角の振る舞いを示した図。
【図21】永久磁石発電機を用いた風力発電システムの構成図。
【図22】系統側電力変換器の構成を示した図。
【図23】系統電圧低下中における、系統電圧振幅と電力変換器出力電流の振る舞いを示した図。
【図24】過電流検出時の風力発電システムの運転方法を示した図。
【図25】弱め界磁運転時の発電機端子電圧と無効電力の関係を示した図。
【図26】弱め界磁運転時および強め界磁運転時の発電機端子電圧と無効電力の関係を示した図。
【符号の説明】
【0107】
1,1a ローター
2,2a ナセル
3,3a タワー
4,4a,4b,4c,4e 連系トランス
5,5a,5b,5c,5e,284,295b,295c,295e 遮断器
6,6a,6b,6c,6e 電力系統
11,11a1,11b,11c,11e ブレード
12,12a,12b,12c,12e ハブ
21,21a シャフト
22,22a ギヤ
23 二次励磁型発電機
23a,23b,23e 永久磁石型発電機
23c 直流励磁型同期発電機
24,24a,24b,24c,24d,24e 風速計
25,25b,25c,25d,25e,26e 上位風車コントローラ
26,26b,26c,26d 電力変換器コントローラ
27,27b,27c,27d,27e エンコーダ
28,28a,28b,28c,28e 電力変換器
30a,30b,30c 補助電源
41 降圧トランス
111,111b,111c,111d,111e ピッチ角制御器
280c 励磁装置
281,281b,281c,281e 発電機側電力変換器
282,282b,282c,282e平滑化コンデンサ
283,283b,283c,283e 系統側電力変換器
291,291b,291c,291e 電圧測定器
292,292b,292e,293,293b,293c,293e,294 電流測定器
2501,2501d 平均化演算器
2502,2502d 回転速度指令演算器
2503,2503d ピッチ角指令・電力指令演算器
2504 ピッチ角指令,電力指令切替器
2506,2506a,2506b 異常時ピッチ角指令演算器
2506a1,2506b1,25038d,25064 ピッチ角指令選択器
2506b1,25031,25031d,25062 減算器
2506b3,25063 PI制御器
2601,2601a OR演算器
2602,2602a 電圧振幅演算器
2603,2603a,2604,2604a,2606,2608,2608a,
2609,2609a 比較演算器
2605 電流振幅演算器
2607,2607a 系統周波数検出器
2610a,2611a,2612a 絶対値演算回路
2613a,2614a,2615a ダイオード
2616a コンパレータ
2617a 可変抵抗器
2618a 抵抗器
2619a OR回路
2831 ゲート駆動回路
2832 還流ダイオード
2833 IGBT
25032,25032d ピッチ角指令演算器
25034,25034d 電力指令演算器
25036d,25061 リミッタ
25037d 最大電力指令演算器
26001 異常検出演算器
26002 電力演算器
26003 電力制御演算器
26004 回転速度演算器
26005a,26005b,26005c 過電流検出演算器
26006a,26006b,26006c 過電流検出回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピッチ角を変化可能なブレードと、前記ブレードと機械的に接続されたローターと、
前記ローターによって駆動される発電機と、
前記発電機に電気的に接続され、前記発電機から電力系統へ出力される電力を制御する電力変換器と、
前記ピッチ角を制御するピッチ角制御手段とを有する風力発電システムにおいて、
系統もしくは前記風力発電システムの異常状態を検出する異常検出手段と、
前記異常検出手段が異常を検出しないときの第一のピッチ角制御手段と、
前記異常検出手段が異常を検出したときの第二のピッチ角制御手段と、を有し、
前記第二のピッチ角制御手段は、前記ローターの回転速度を前記風力発電システムの発電運転可能な回転速度に保つことを特徴とする風力発電システム。
【請求項2】
請求項1において、
予め定めた第一の所定値と前記第一の所定値よりも小さな第二の所定値を持ち、
前記第二のピッチ角制御手段は、
前記ローターの回転速度が、前記風力発電システムの発電運転可能な前記ローターの回転速度の上限値よりも小さく、第一の所定値よりも大きい場合に、ピッチ角を所定の値に固定し、
前記ローターの回転速度が、前記風力発電システムの発電運転可能な前記ローターの回転速度の下限値よりも大きく、第二の所定値よりも小さい場合に、ピッチ角を最大角とすることを特徴とする風力発電システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記第二のピッチ角制御手段は、前記ローターの回転速度が前記第一の所定値以下かつ前記第二の所定値以上であるときに、前記ローターの回転速度または風速に応じてピッチ角を変更することを特徴とする風力発電システム。
【請求項4】
請求項2において、
前記第二のピッチ角制御手段は、前記ローターの回転速度が前記第一の所定値以下かつ前記第二の所定値以上であるときに、ピッチ角を一定の角度とすることを特徴とする風力発電システム。
【請求項5】
請求項1において、
前記第二のピッチ角制御手段は、前記ローターの回転速度の目標値を、前記風力発電システムの発電運転可能な回転速度範囲内の一定値とする制御手段であることを特徴とする風力発電システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記異常検出手段は、系統の電圧振幅値が予め定めた範囲よりも大きいもしくは小さいことを検出することを特徴とする風力発電システム。
【請求項7】
請求項1において、
前記異常検出手段は、前記風力発電システムもしくは前記電力変換器から出力される電流の振幅値が予め定めた値よりも大きいことを検出することを特徴とする風力発電システム。
【請求項8】
請求項1において、
前記異常検出手段は、系統の交流電圧の周波数が予め定めた範囲よりも大きいもしくは小さいことを検出することを特徴とする風力発電システム。
【請求項9】
請求項1において、
前記異常検出手段が異常を検出した場合に、前記電力変換器はゲートブロックすることを特徴とする風力発電システム。
【請求項10】
請求項1において、
前記第二のピッチ角制御手段は、
系統の電圧振幅に応じて前記ブレードのピッチ角を変更することを特徴とする風力発電システム。
【請求項11】
請求項1において、
系統の電圧振幅に応じて電力系統へ出力する電力を調整することを特徴とする風力発電システム。
【請求項12】
請求項10において、
系統の電圧振幅に応じて電力系統へ出力する電力を調整することを特徴とする風力発電システム。
【請求項13】
請求項10において、
前記第二のピッチ角制御手段は、前記系統の電圧振幅値が所定値よりも小さいときに前記ピッチ角をフェザー状態まで変化させることを特徴とする風力発電システム。
【請求項14】
請求項1において、
前記第二のピッチ角制御手段は、前記系統の電圧振幅値が第三の所定値よりも大きいときに前記ローターの回転速度に応じて回転速度を制御し、
前記系統の電圧振幅値が前記第三の所定値より小さな第四の所定値よりも小さいときに前記ピッチ角をフェザー状態まで変化させ、
前記系統の電圧振幅値が前記第三の所定値以下かつ前記第四の所定値以上のときに前記ピッチ角を所定の角度まで変化させることを特徴とする風力発電システム。
【請求項15】
請求項1において、
前記異常検出手段が異常を検出したときに、前記電力変換器が発電機への無効電力を調整する無効電力制御手段を有することを特徴とする風力発電システム。
【請求項16】
請求項9において、
前記電力変換器がゲートブロックをしているときに、前記異常検出手段が異常を検出しないときに、前記ゲートブロックを解除することを特徴とする風力発電システム。
【請求項17】
ピッチ角可変のブレードと、前記ブレードと機械的に接続されたローターと、前記ローターによって駆動される同期発電機と、
前記同期発電機に電気的に接続され、前記同期発電機から出力される可変周波数の発電電力を直流電力に変換する発電機側変換器と、
前記発電機側変換器と電力系統とに電気的に接続され、前記直流電力を固定周波数の交流電力に変換する系統側変換器と、を有する風力発電システムにおいて、
電力系統の電圧と電流と周波数の何れか、もしくは前記風力発電システムの電流の検出値が異常値であるときに、
前記ブレードのピッチ角を変更することで前記ローターの回転速度を一定範囲内に制御し、かつ前記発電機側変換器が前記同期発電機への無効電力を制御することを特徴とする風力発電システムの制御方法。
【請求項18】
請求項17において、
前記風力発電システムの電流の検出値が異常値であるときに、
前記系統側変換器はゲートブロックを開始し、かつ前記発電機側変換器が前記同期発電機の端子の有効電力を零に制御することを特徴とする風力発電システムの制御方法。
【請求項19】
請求項17において、
前記風力発電システムの電流の検出値が異常値であるときに、
前記発電機側変換器が前記同期発電機への無効電力を制御することにより、前記同期発電機固定子の端子電圧を前記発電機側変換器の運転可能電圧範囲内に制御することを特徴とする風力発電システムの制御方法。
【請求項20】
請求項17において、
前記風力発電システムの電流の検出値が異常値であるときに、
前記発電機側変換器が前記同期発電機への無効電力を制御することにより、前記同期発電機からの電流量を前記発電機側変換器の電流容量以下に制御することを特徴とする風力発電システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公開番号】特開2008−283747(P2008−283747A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124060(P2007−124060)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】