説明

飛灰処理装置、飛灰処理方法、廃棄物処理システム、及び廃棄物処理システムの運転方法

【課題】溶融排ガスから集塵手段にて捕集された飛灰を容易に無害化できる飛灰処理装置の提供を目的とする。
【解決手段】飛灰にCr(VI)用重金属溶出防止薬剤を供給して混練する手段と、飛灰中のCr含有量を測定する手段と、飛灰からの溶出液のpHを測定する手段と、予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、その予想値に基づき、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の適切な供給量を目標値として演算する手段と、その目標値となるように供給量を調整する手段とを備え、Cr含有量を測定する手段が、蛍光X線分析装置である飛灰処理装置を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃棄物処理システムにおいて発生する飛灰からの重金属類、特に六価クロム(Cr(VI))の溶出を抑制する飛灰処理装置、飛灰処理方法、前記飛灰処理装置を備えた廃棄物処理システム、及び前記廃棄物処理システムの運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理システムにおいて廃棄物をガス化溶融処理した際に発生する排ガスには、飛灰が含まれている。この飛灰には、一般的に重金属類が多く含まれている。このため、飛灰を埋立処分すると、飛灰から溶出される重金属類によって、環境が汚染されることが懸念され、特に、鉛(Pb)、六価クロム(Cr(VI))、カドミウム(Cd)、水銀(Hg)、ヒ素(As)、セレン(Se)については埋立処分をする際の溶出基準値(環告13号)が設けられており、溶出基準値を満たすように、飛灰からの重金属類の溶出を防止する等の無害化処理を施すことが要求されている。
【0003】
そこで、飛灰中の重金属類が溶出しないようにするための飛灰の無害化処理方法としては、例えば、重金属類を不溶化させたりする固定化等によって、重金属類の溶出を防止するための重金属溶出防止薬剤を飛灰に添加して混練することが挙げられる。具体的には、まず、排ガス中の飛灰をバグフィルタ等の集塵器によって捕集する。捕集された飛灰を飛灰搬送コンベア等によって、飛灰貯留槽に搬送する。そして、飛灰貯留槽から一定量の飛灰を切り出し、これと一定量の重金属溶出防止薬剤とを混練機によって混練する。そうすることによって、飛灰からの重金属類の溶出を抑制していた。
【0004】
しかしながら、重金属類の溶出を抑制するために必要な重金属溶出防止薬剤の供給量は、ガス化溶融炉に投入される廃棄物の性状等によって異なるので、重金属類の溶出防止の観点から、重金属溶出防止薬剤を多めに供給しなければならないという問題があった。このような方法によれば、コストの低減等は困難であった。
【0005】
そこで、これを解消する方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法が挙げられる。下記特許文献1には、ジチオカルバミン酸基を有する液体キレート剤(重金属溶出防止薬剤)を飛灰に加えて処理する方法において、該飛灰中のPb及びCuの含有濃度を測定し、これらの測定値と上記液体キレート剤中のジチオカルバミン酸基濃度とから該飛灰に添加するに必要な液体キレート剤の添加量を決定する飛灰処理用液体キレート剤の必要添加量の決定方法が記載されている。
【特許文献1】特開平11−70374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
重金属溶出防止薬剤を飛灰に添加して混練することによって、飛灰からの重金属類の溶出を抑制する方法としては、上記のように、重金属類の溶出を抑制するために必要な重金属溶出防止薬剤の適切な供給量をどのように決定するのかが問題となる。
【0007】
特許文献1には、飛灰中のPb及びCu含有濃度を分析することによって、Pb及びCuの固定化に必要な重金属溶出防止薬剤の供給量を決定できることについては開示されている。しかしながら、溶出防止をしなければならない重要な重金属類として、Cr(VI)が存在するが、そのための重金属溶出防止薬剤の定量化については何ら提示されていない。
【0008】
本発明は、廃棄物処理システムにおいて、飛灰からの重金属類、特にCr(VI)の溶出を抑制可能な重金属溶出防止薬剤の供給量を適正かつ迅速に推定でき、重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、飛灰を容易に無害化することができる飛灰処理装置、飛灰処理方法、前記飛灰処理装置を備えた廃棄物処理システム、及び前記廃棄物処理システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
Cr(VI)とその他の価数のCrとを合わせたCrの含有量は、蛍光X線分析装置を用いることによって、測定することができるが、Cr(VI)のみの含有量は、蛍光X線分析装置を用いて測定することが困難であった。しかしながら、本発明者等は、Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率が溶出液のpHと相関関係にあることに着目し、Cr(VI)の溶出を防止するための重金属溶出防止薬剤の定量化を達成するに到った。すなわち、本発明の一態様に係る飛灰処理装置は、投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムに設けられ、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれる飛灰であって集塵手段にて捕集された飛灰からの重金属の溶出を抑制するための飛灰処理装置であって、前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練手段と、前記飛灰中の総クロム(Cr)含有量を測定するCr含有量測定手段と、前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定手段と、予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する演算手段と、前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記目標値となるように調整する供給量調整手段とを備え、前記Cr含有量測定手段が、蛍光X線分析装置であることを特徴とするものである。
【0010】
上記構成によれば、飛灰中のCr含有量、及び飛灰からの溶出液のpHを測定することによって、有害なCr(VI)の溶出を防止可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として適正に推定することができる。また、飛灰中のCr含有量を、蛍光X線分析装置を用いて測定するので、迅速に行うことができる。そして、その目標値となるようにCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を調整することによって、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、有害なCr(VI)の溶出を抑制することができる。
【0011】
以上のことから、廃棄物処理システムにおいて、重金属類であるCr(VI)の、飛灰からの溶出を抑制可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を適正かつ迅速に推定でき、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、飛灰を容易に無害化することができる。
【0012】
本発明の他の一態様に係る飛灰処理装置は、投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムに設けられ、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれ集塵手段にて捕集された飛灰から重金属の溶出を抑制するための飛灰処理装置であって、前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤、前記飛灰中の鉛(Pb)の溶出を防止するためのPb用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練手段と、前記飛灰中の総クロム(Cr)、銅(Cu)及びPbの各含有量を測定する重金属含有量測定手段と、前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定手段と、予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Cr(VI)溶出量の予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を第1目標値として演算する第1演算手段と、前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第1目標値となるように調整する第1供給量調整手段と、予め用意したPb及びCuの含有量とPb及びCuの溶出量との相関関係に基づいて、Pb及びCuの含有量の測定値から前記飛灰からのPb及びCuの溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Pb及びCuの溶出量の予想値に基づき、Cuの含有量にかかわらずPbの溶出を防止可能な前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値として演算する第2演算手段と、前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値となるように調整する第2供給量調整手段とを備え、前記重金属含有量測定手段が、蛍光X線分析装置であることを特徴とするものである。
【0013】
上記構成によれば、まず、飛灰中のCr含有量、及び飛灰からの溶出液のpHを測定することによって、有害なCr(VI)の溶出を防止可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を第1目標値として適正に推定することができる。また、飛灰中のCr含有量を、蛍光X線分析装置を用いて測定するので、迅速に行うことができる。そして、その第1目標値となるようにCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を調整することによって、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、有害なCr(VI)の溶出を抑制することができる。
【0014】
そして、飛灰中のPb及びCuの含有量を測定することによって、有害なPbをCuの含有量にかかわらず飛灰からのPbの溶出を抑制するためのPb用重金属溶出防止薬剤の供給量を第2目標値として適正に推定することができる。また、飛灰中のPb及びCuの含有量を、上記と同様、蛍光X線分析装置を用いて測定するので、迅速に行うことができる。そして、その第2目標値となるようにPb用重金属溶出防止薬剤の供給量を調整することによって、Pb用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、有害なPbの溶出を抑制することができる。
【0015】
以上のことから、廃棄物処理システムにおいて、重金属類であるPb、Cu、及びCrの、飛灰からの溶出を抑制可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤及びPb用重金属溶出防止薬剤の各供給量を適正かつ迅速に推定でき、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤及びPb用重金属溶出防止薬剤をともに多量に供給することなく、飛灰を容易に無害化することができる。
【0016】
本発明の他の一態様に係る廃棄物処理システムは、投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムであって、前記スラグを炉外に排出するためのスラグ排出口よりも上流側の位置に前記スラグ排出口から排出されるスラグの塩基度(CaO/SiO)を調整するための塩基度調整剤を供給する塩基度調整剤供給手段と、前記スラグの塩基度を測定する塩基度測定手段と、測定された塩基度を、予め設定された塩基度の目標値となるように前記塩基度調整剤の供給量を調整する塩基度調整剤供給量調整手段と、前記飛灰処理装置とを備え、前記塩基度測定手段は、前記飛灰処理装置における前記蛍光X線分析装置を含み、前記蛍光X線分析装置によって、前記スラグ中のカルシウム(Ca)とケイ素(Si)との各含有量をそれぞれ測定し、前記CaとSiとの各含有量から酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との含有量をそれぞれ算出し、その算出結果から前記塩基度を算出する手段を有することを特徴とするものである。
【0017】
上記のように、廃棄物をガス化溶融処理して、溶融炉からスラグを排出させる際、溶融炉からスラグの排出を容易にするために、溶融炉内で形成されるスラグの溶融点や溶流点が低いことが望ましい。そして、このスラグの溶融点や溶流点は、スラグの酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との質量比(塩基度)に依存していることが知られている。そこで、スラグの塩基度を調整する方法としては、一般的に、SiOを主成分とする珪砂等の塩基度調整剤を供給されている。しかしながら、その供給量は、経験に頼る部分や多めに供給していることが多かった。
【0018】
そこで、上記構成によれば、前記飛灰処理装置における蛍光X線分析装置によって、前記スラグ中のカルシウム(Ca)とケイ素(Si)との各含有量をそれぞれ測定し、前記CaとSiとの各含有量から酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との含有量をそれぞれ算出し、その算出結果から前記塩基度を算出することができる。そして、このスラグの塩基度の測定値に基づいて、塩基度調整剤の適正な供給量が推定される。
【0019】
以上より、前記飛灰処理装置における蛍光X線分析装置を用いることによって、飛灰に供給される重金属溶出防止薬剤の適正な供給量を迅速に推定することができるだけではなく、スラグに供給される塩基度調整剤の適正な供給量も迅速に推定することができる。
【0020】
本発明の他の一態様に係る飛灰処理方法は、投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムを運転するにあたり、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれ集塵手段にて捕集された飛灰からの重金属の溶出を抑制するための飛灰処理方法あって、前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練工程と、前記飛灰中の総クロム(Cr)含有量を測定するCr含有量測定工程と、前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定工程と、予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する演算工程と、前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記目標値となるように調整する供給量調整工程とを備え、前記Cr含有量測定工程が、蛍光X線分析装置を用いることを特徴とするものである。
【0021】
上記構成によれば、飛灰中のCr含有量、及び飛灰からの溶出液のpHを測定することによって、有害なCr(VI)の溶出を防止可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として適正に推定することができる。また、飛灰中のCr含有量を、蛍光X線分析装置を用いて測定するので、迅速に行うことができる。そして、その目標値となるようにCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を調整することによって、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、有害なCr(VI)の溶出を抑制することができる。
【0022】
以上のことから、廃棄物処理システムにおいて、重金属類であるCr(VI)の、飛灰からの溶出を抑制可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を適正かつ迅速に推定でき、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、飛灰を容易に無害化することができる。
【0023】
本発明の他の一態様に係る飛灰処理方法は、投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムを運転するにあたり、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれ集塵手段にて捕集された飛灰からの重金属の溶出を抑制するための飛灰処理方法あって、前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤、前記飛灰中の鉛(Pb)の溶出を防止するためのPb用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練工程と、前記飛灰中の総クロム(Cr)、銅(Cu)及びPbの各含有量を測定する重金属含有量測定工程と、前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定工程と、予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Cr(VI)溶出量の予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を第1目標値として演算する第1演算工程と、前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第1目標値となるように調整する第1供給量調整工程と、予め用意したPb及びCuの含有量とPb及びCuの溶出量との相関関係に基づいて、Pb及びCuの含有量の測定値から前記飛灰からのPb及びCuの溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Pb及びCuの溶出量の予想値に基づき、Cuの含有量にかかわらずPbの溶出を防止可能な前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値として演算する第2演算工程と、前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値となるように調整する第2供給量調整工程とを備え、前記重金属含有量測定工程が、蛍光X線分析装置を用いることを特徴とするものである。
【0024】
上記構成によれば、まず、飛灰中のCr含有量、及び飛灰からの溶出液のpHを測定することによって、有害なCr(VI)の溶出を防止可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を第1目標値として適正に推定することができる。また、飛灰中のCr含有量を、蛍光X線分析装置を用いて測定するので、迅速に行うことができる。そして、その第1目標値となるようにCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を調整することによって、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、有害なCr(VI)の溶出を抑制することができる。
【0025】
そして、飛灰中のPb及びCuの含有量を測定することによって、有害なPbをCuの含有量にかかわらず飛灰からのPbの溶出を抑制するためのPb用重金属溶出防止薬剤の供給量を第2目標値として適正に推定することができる。また、飛灰中のPb及びCuの含有量を、上記と同様、蛍光X線分析装置を用いて測定するので、迅速に行うことができる。そして、その第2目標値となるようにPb用重金属溶出防止薬剤の供給量を調整することによって、Pb用重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、有害なPbの溶出を抑制することができる。
【0026】
以上のことから、廃棄物処理システムにおいて、重金属類であるPb、Cu、及びCrの、飛灰からの溶出を抑制可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤及びPb用重金属溶出防止薬剤の各供給量を適正かつ迅速に推定でき、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤及びPb用重金属溶出防止薬剤をともに多量に供給することなく、飛灰を容易に無害化することができる。
【0027】
本発明の他の一態様に係る廃棄物処理システムの運転方法は、投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムの運転方法であって、前記スラグを炉外に排出するためのスラグ排出口よりも上流側の位置に前記スラグ排出口から排出されるスラグの塩基度(CaO/SiO)を調整するための塩基度調整剤を供給する塩基度調整剤供給工程と、前記スラグの塩基度を測定する塩基度測定工程と、測定された塩基度を、予め設定された塩基度の目標値となるように前記塩基度調整剤の供給量を調整する塩基度調整剤供給量調整工程と、前記飛灰処理方法による飛灰からの重金属の溶出を抑制する飛灰処理工程とを備え、前記塩基度測定工程は、前記飛灰処理工程における前記蛍光X線分析装置を用いて、前記スラグ中のカルシウム(Ca)とケイ素(Si)との各含有量をそれぞれ測定し、前記CaとSiとの各含有量から酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との含有量をそれぞれ算出し、その算出結果から前記塩基度を算出する工程を有することを特徴とするものである。
【0028】
上記構成によれば、前記飛灰処理工程における蛍光X線分析装置によって、前記スラグ中のカルシウム(Ca)とケイ素(Si)との各含有量をそれぞれ測定し、前記CaとSiとの各含有量から酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との含有量をそれぞれ算出し、その算出結果から前記塩基度を算出することができる。そして、このスラグの塩基度の測定値に基づいて、塩基度調整剤の適正な供給量が推定される。
【0029】
以上より、前記飛灰処理工程における蛍光X線分析装置を用いることによって、飛灰に供給される重金属溶出防止薬剤の適正な供給量を迅速に推定することができるだけではなく、スラグに供給される塩基度調整剤の適正な供給量も迅速に推定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、廃棄物処理システムにおいて、飛灰からの重金属類、特にCr(VI)の溶出を抑制可能な重金属溶出防止薬剤の供給量を適正かつ迅速に推定でき、重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、飛灰を容易に無害化することができる飛灰処理装置、飛灰処理方法、前記飛灰処理装置を備えた廃棄物処理システム、及び前記廃棄物処理システムの運転方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、本発明の実施形態に係る廃棄物処理システムの全体構成を示す概略図である。この廃棄物処理システムは、ガス化溶融炉20と、このガス化溶融炉20に対して廃棄物であるごみを供給するごみ供給部10と、前記ガス化溶融炉20から排出される溶融排ガスを処理するための排ガス処理部30と、前記溶融排ガスから分離される飛灰を無害化処理する飛灰処理装置40と、前記ガス化溶融炉20で形成されるスラグの塩基度を調整する塩基度調整装置60とを備える。なお、前記廃棄物処理システムでの処理対象となる廃棄物の種類は、特に制限されない。前記廃棄物としては、例えば、都市ごみ、下水汚泥、及びPCB汚染物等の各種廃棄物が挙げられる。
【0032】
前記ごみ供給部10は、ごみピット11と、ごみ搬送装置12と、給塵装置13とを備える。前記ごみピット11は、廃棄物処理システム外から搬入される処理対象であるごみを受け入れ、これを一旦貯留する。前記ごみ搬送装置12は、ごみクレーン14を備え、このごみクレーン14が前記ごみピット11内のごみをつかんで前記給塵装置13へ搬送する。前記給塵装置13は、ごみ投入ホッパ15を備え、このごみ投入ホッパ15が、前記ごみ搬送装置12から投入されるごみを受け入れる。そして、前記給塵装置13は、ごみ搬送用のスクリューコンベア16を内蔵し、前記ごみ投入ホッパ15内に投入されたごみを前記ガス化溶融炉20に供給する。
【0033】
前記ガス化溶融炉20は、ガス化炉21と溶融炉22とを備える。前記ガス化炉21は、前記給塵装置13から供給されるごみを熱分解し、これによって熱分解ガスを生じさせる。このガス化炉21としては、公知のガス化炉を用いることができ、例えば、流動床炉やキルン炉等が挙げられる。前記溶融炉22は、前記熱分解ガス中の可燃成分を高温燃焼させるとともに、同ガス中の灰分を溶融してスラグを生じさせる。このスラグは、溶融炉22内、例えば、溶融炉22の炉壁に付着する。前記溶融炉22の炉底にはスラグ排出口23が設けられる。このスラグ排出口23は、前記炉壁に付着し流下するスラグを炉外へ排出するためのものである。また、この溶融炉22では、その炉内温度の調節のために必要に応じて図略のバーナーによる補助燃料の燃焼が行われてもよい。
【0034】
前記排ガス処理部30は、図2にも示すように、廃熱ボイラ31と、ガス減温塔32と、集塵装置34と、誘引送風機35と、煙突36とを備える。なお、図2は、前記排ガス処理部30の構成を示す概略図である。前記廃熱ボイラ31は、前記溶融炉23から排出される高温の溶融排ガスから熱を回収するためのものである。具体的には、例えば、前記溶融排ガスの保有する熱を利用して蒸気を生成し排出するものである。前記ガス減温塔32は、前記廃熱ボイラ31から排出される溶融排ガスが導入される塔本体と、この塔本体内に冷却水を噴霧する噴霧装置と、当該塔本体の出口でのガス温度を検出する温度センサと、この温度センサにより検出される出口ガス温度を一定に保つように前記噴霧装置による冷却水供給流量を調節するコントローラとを備える。前記廃熱ボイラ31及び前記ガス減温塔32は、前記溶融排ガスの温度を後段の前記集塵装置34の使用に適した温度まで降下させる。
【0035】
前記集塵装置34は、前記ガス減温塔32から排出される溶融排ガス中の飛灰をろ過分離するバグフィルタ37を備える。また、前記集塵装置34には、排ガス処理薬剤供給部33を備えていてもよい。排ガス処理薬剤供給部33は、前記ガス減温塔32から排出される溶融排ガスに排ガス処理薬剤を供給することによって、溶融排ガス中の酸性ガス成分、例えば、塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)等を中和して除去する。その際、飛灰のpHも変化する可能性がある。飛灰のpHが変化することによって、飛灰から溶出される重金属類の種類が異なる。例えば、pHが10.5程度と比較的低ければ、Crは溶出されるが、Pbはほとんど溶出されない。また、pHが12.5と高ければ、PbもCrも溶出される。そして、この集塵装置34により飛灰が除去された排ガスは、前記誘引送風機35を経て、前記煙突36から排出される。なお、排ガス処理薬剤としては、溶融排ガス中の酸性ガス成分を中和させるための排ガス処理薬剤であれば、特に限定なく使用できる。具体的には、例えば、消石灰や重曹等のアルカリ性物質等が挙げられる。
【0036】
前記飛灰処理装置40は、前記集塵装置34によって分離され捕集される飛灰からの重金属の溶出を抑制し、飛灰を無毒化処理するための装置であって、飛灰搬出装置41と、飛灰貯留槽42と、飛灰投入ホッパ43と、混練装置44と、重金属溶出防止薬剤供給部45と、重金属溶出防止薬剤供給量制御部46とを備える。
【0037】
前記飛灰搬送装置41は、前記集塵装置34によって分離され捕集される飛灰を、前記飛灰貯留槽42に搬送する。前記飛灰貯留槽42は、前記飛灰搬送装置41によって搬送される飛灰を受け入れ、これを一旦貯留し、その後、前記飛灰投入ホッパ43に投入する。投入のタイミングは、所定量貯留される毎であってもよいし、所定時間経過後であってもよい。前記飛灰投入ホッパ43は、前記飛灰貯留槽42から投入される飛灰を受け入れ、前記混練装置44に搬送する。前記混練装置44は、前記飛灰投入ホッパ43によって搬送される飛灰と、前記重金属溶出防止薬剤供給部45によって供給される重金属溶出防止薬剤とを混練する。
【0038】
前記重金属溶出防止薬剤供給部45は、重金属溶出防止薬剤貯留槽47とポンプ48とを備える。前記重金属溶出防止薬剤貯留槽47は、飛灰からの重金属の溶出を防止するための重金属溶出防止薬剤を貯留する。重金属溶出防止薬剤としては、飛灰と混練することによって、飛灰からの重金属の溶出を防止することができるものであれば、特に限定なく用いることができ、公知の重金属溶出防止薬剤を用いることができる。具体的には、有毒なCr(VI)の溶出を防止させ無害化させる際に用いるCr(VI)用重金属溶出防止薬剤としては、例えば、亜硫酸ソーダや硫酸第1鉄等が挙げられる。これらのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤を用いることによって、Cr(VI)を三価クロム(Cr(III))に還元することができ、Cr(VI)の溶出が防止される。また、Pdの溶出を防止させ無害化させる際に用いるPb用重金属溶出防止薬剤としては、例えば、ジカリウム=ピペラジン−1,4−ジカルボジチオアート(重金属処理剤TS−275)等のジチオカルバミン酸塩類やリン酸等が挙げられる。これらのPb用重金属溶出防止薬剤を用いることによって、Pb用重金属溶出防止薬剤がPbとキレート化等をし、不溶化(固定化)され、Pbの溶出が防止される。なお、Pb用重金属溶出防止薬剤は、Pbだけではなく、Cuも固定化する。前記ポンプ48は、前記重金属溶出防止薬剤貯留槽47に貯留されている重金属溶出防止薬剤を前記混練装置44に供給する。その際の供給量は、前記重金属溶出防止薬剤供給量制御部46の制御による。
【0039】
前記重金属溶出防止薬剤供給量制御部46は、重金属含有量測定部49と、pH測定部50と、供給量目標値演算部51と、重金属溶出防止薬剤供給量調整部52とを備え、後述するように、重金属溶出防止薬剤の供給量を制御する。
【0040】
前記重金属含有量測定部49は、蛍光X線分析装置を備え、前記飛灰貯留槽42に貯留された飛灰を一部取り出して、この蛍光X線分析装置によって、その飛灰中の重金属の含有量を測定する。その際、重金属の金属毎にその含有量が測定される。なお、Crの場合、Cr(VI)の含有量ではなく、他の価数のCrを含めたCr(以下、「T−Cr」とも称する。)の含有量として測定される。また、蛍光X線分析装置としては、公知の蛍光X線分析装置を用いることができ、エネルギー分散型蛍光X線分析装置が好ましく用いられる。具体的には、例えば、アワーズテック株式会社製のOURSTEX160等が挙げられる。前記pH測定部50は、前記飛灰貯留槽42に貯留された飛灰を一部取り出して、溶出処理を施して得られた溶出液のpHを測定する。その際に用いるpH測定器としては、公知のpH測定器を用いることができる。なお、以下、前記重金属として、Crの場合に着目して説明する。
【0041】
前記供給量目標値演算部51は、前記重金属含有量測定部49から出力されるT−Cr含有量と、前記pH測定部50から出力されるpHとから、Cr(VI)の溶出を防止可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する。この目標値の演算は、測定したpHにおけるT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出するステップと、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算するステップと、目標値を演算するステップとにより達成される。なお、Cr(VI)等の重金属の溶出を防止可能な重金属溶出防止薬剤の供給量とは、重金属の溶出が所定の値、例えば、規制値以下になる最低量であることが好ましい。
【0042】
測定したpHにおけるT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出するステップは、前記pH測定部50から出力されるpHから算出することができる。このことは、溶出液のpHとT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量との間には相関関係があり、この相関関係は予め実測により求めることが可能である。具体的には、溶出液のpHと、T−Cr含有量と、Cr(VI)溶出量とをそれぞれ各種分析計によって測定することによって、推算することが可能であり、当該相関関係は、例えば、一次式(直線式)に近似することが可能である。すなわち、この予め用意した溶出液のpHとT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量との相関関係に基づいて、前記pH測定部50によって測定したpHにおけるT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出することができる。
【0043】
次に、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算するステップは、前記ステップによって算出されたT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率にT−Cr含有量を乗ずることによって演算することができる。
【0044】
最後に、目標値を演算するステップは、前記予想値から演算することができる。具体的には、Cr(VI)溶出量とCr(VI)の溶出を防止可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量との間には相関関係があり、この相関関係は予め実測により求めることが可能である。より具体的には、Cr(VI)溶出量を分析計によって測定し、各溶出量において、Cr(VI)溶出量が所定の値、例えば、規制値以下になるCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を測定することによって、推算することが可能である。当該相関関係は、化学当量に従うので、例えば、一次式(直線式)に近似することが可能である。
【0045】
以上より、前記供給量目標値演算部51は、前記相関関係を記憶し、当該関係と、前記重金属含有量測定部49から出力されるT−Cr含有量と、前記pH測定部50から出力されるpHとに基づいて、Cr(VI)の溶出を防止可能なCr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する。
【0046】
前記重金属溶出防止薬剤供給量調整部52は、前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記目標値となるように、前記ポンプ48に制御信号を出力して、前記ポンプ48の駆動時間及び駆動速度等を調整する。
【0047】
なお、前記供給量目標値演算部51及び前記重金属溶出防止薬剤供給量調整部52は、マイクロコンピュータ等により構成される。
【0048】
前記塩基度調整装置60は、前記溶融炉22のスラグ排出口23から排出されるスラグの塩基度を調整するための装置である。前記塩基度調整装置60は、塩基度調整剤供給装置61と、スラグ塩基度測定部62と、塩基度調整剤調節部63とを備える。
【0049】
前記塩基度調整剤供給装置60は、前記ガス化炉21に投入されるごみの中に塩基度調整剤を供給するための装置であって、その供給用の搬送手段であるスクリューコンベア64と、このスクリューコンベア64を回転させるモータ65とを備える。前記塩基度調整剤は、公知の塩基度調整剤を用いることができる。排出されるスラグの塩基度が高い場合には、具体的には、例えば、スラグの塩基度を下げるためにSiOが主成分である珪砂等が挙げられる。
【0050】
前記スラグ塩基度測定部62は、前記飛灰処理装置40における蛍光X線分析装置を備える。そして、前記蛍光X線分析装置によって、前記スラグ中のカルシウム(Ca)とケイ素(Si)との各含有量をそれぞれ測定する。CaとSiとの各含有量から、酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との含有量をそれぞれ算出する。具体的には、例えば、CaOの場合、Caの含有量の測定値に(40+16)/40=1.4を乗じた値が、CaOの含有量となる。また、例えば、SiO場合、Siの含有量の測定値に(28+16×2)/28=15/7を乗じた値が、SiOの含有量となる。そして、その算出結果の比から、前記塩基度(CaO/SiO)を算出する。そうすることによって、ここでの蛍光X線分析装置と前記飛灰処理装置40における蛍光X線分析装置とが同一であることによって、初期投資額を減らすことができ、好ましい。
【0051】
前記塩基度調整剤調節部63は、前記スラグ塩基度測定部62によって算出される塩基度が、予め設定された目標値、例えば、0.8等に近づけるための塩基度調整剤の供給量を決定する。そして、この決定された供給量が得られるように、前記塩基度調整剤供給装置60のモータ65に制御信号を出力してその駆動速度を制御する。前記塩基度の測定値と実際の塩基度調整剤供給量との関係は、理論上又はシミュレーション上、予め用意しておくことは可能である。また、前記塩基度調整剤調節部63は、マイクロコンピュータ等により構成され、前記供給量目標値演算部51及び前記重金属溶出防止薬剤供給量調整部52と同一のマイクロコンピュータ等から構成されていてもよい。
【0052】
以上より、本実施形態に係る廃棄物処理システムは、飛灰からの重金属であるCrの溶出を確実に防止する重金属溶出防止薬剤の供給量を適正かつ迅速に推定でき、重金属溶出防止薬剤を多量に供給することなく、飛灰を容易に無害化することができる。
【0053】
また、廃棄物処理システムは、前記塩基度調整装置60を備えていなくてもよいが、前記塩基度調整装置60を備えることによって、前記飛灰処理装置40における蛍光X線分析装置を用いることによって、飛灰に供給される重金属溶出防止薬剤の適正な供給量を迅速に推定することができるだけではなく、スラグに供給される塩基度調整剤の適正な供給量も迅速に推定することができる。
【0054】
また、廃棄物処理システムは、前記排ガス処理部30の構成に限定されず、例えば、図3に示すような構成であってもよい。なお、図3は、前記排ガス処理部30の他の構成を示す概略図である。前記集塵装置34は、第1バグフィルタ38と、排ガス処理薬剤供給部33と、第2バグフィルタ39とを備える。前記第1バグフィルタ38は、前記バグフィルタ37と同様の構成であって、前記ガス減温塔32から排出される溶融排ガス中の第1飛灰をろ過分離して捕集する。前記第2バグフィルタ39は、前記第1バグフィルタ38の後段に備えられ、前記第1バグフィルタ38を通過したガス中に残存する第2飛灰をろ過分離して捕集する。そして、前記第1バグフィルタ38と前記第2バグフィルタ39との間に備えられた前記排ガス処理薬剤供給部33によって、前記第1バグフィルタ38を通過したガスに排ガス処理薬剤を供給することによって、溶融排ガス中の酸性ガス成分、例えば、塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)等を中和して除去する。その際、飛灰のpHも変化する。飛灰のpHが変化することによって、飛灰から溶出される重金属類の種類が異なる。そうすることによって、前記第2バグフィルタ39によって捕集される前記第2飛灰は、前記第1バグフィルタ38によって捕集される前記第1飛灰よりPbが溶出されやすい。
【0055】
そして、前記第2飛灰よりPbが溶出されにくい前記第1飛灰は、第1飛灰処理装置71によって、無毒化処理が施される。この際、前記第1飛灰は、Pbが溶出されにくいが、第1飛灰処理装置71においては、Cr(VI)だけではなく、Pbの溶出を抑制する無害化処理を施してもよい。また、前記第2飛灰は、第2飛灰処理装置72によって、無毒化処理が施される。そして、第1飛灰処理装置71及び第2飛灰処理装置72としては、重金属溶出防止薬剤供給量制御部が、前記重金属溶出防止薬剤供給量制御部46と異なる以外、前記飛灰処理装置40と同様のものを用いることができる。ここでの重金属溶出防止薬剤供給量制御部は、重金属含有量測定部と、供給量目標値演算部と、重金属溶出防止薬剤供給量調整部とを備え、後述するように、重金属溶出防止薬剤の供給量を制御する。
【0056】
前記重金属含有量測定部は、前記重金属含有量測定部46の前記重金属含有量測定部49と同様であって、前記第1飛灰及び第2飛灰(以下、各飛灰とも称する)中の重金属の含有量を測定する。なお、ここでは、各飛灰からのCr(VI)の処理は、上記の場合と同様であるので、各飛灰中のPbについて説明する。前記供給量目標値演算部は、前記重金属含有量測定部から出力されるPb及びCuの含有量から、Cuの含有量にかかわらず、有害なPbの溶出を防止可能なPb用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する。この目標値の演算は、前記各飛灰からのPb及びCuの溶出量の予想値を演算するステップと、目標値を演算するステップとにより達成される。
【0057】
前記各飛灰からのPb及びCuの溶出量の予想値を演算するステップは、前記重金属含有量測定部から出力されるPb及びCuの含有量から算出することができる。このことは、Pb及びCuの含有量とPb及びCuの溶出量との間には相関関係があり、この相関関係は予め実測により求めることが可能である。具体的には、Pb及びCuの含有量と、Pb及びCuの溶出量とをそれぞれ各種分析計によって測定することによって、推算することが可能であり、当該相関関係は、例えば、一次式(直線式)に近似することが可能である。すなわち、この予め用意したPb及びCuの含有量とPb及びCuの溶出量との相関関係に基づいて、前記各飛灰からのPb及びCuの溶出量の予想値を演算することができる。
【0058】
次に、目標値を演算するステップは、前記予想値から演算することができる。このことは、Pb及びCuの溶出量とPbの溶出を防止可能なPb用重金属溶出防止薬剤の供給量との間には相関関係があり、この相関関係は予め実測により求めることが可能である。具体的には、Pb及びCuの溶出量を分析計によって測定し、各溶出量において、Pb溶出量が所定の値、例えば、規制値以下になるPb用重金属溶出防止薬剤の供給量を測定することによって、推算することが可能である。当該相関関係は、化学当量に従うので、例えば、一次式(直線式)に近似することが可能である。
【0059】
以上より、前記供給量目標値演算部は、前記相関関係を記憶し、当該関係と、前記重金属含有量測定部から出力されるPb及びCuの含有量とに基づいて、Cuの含有量にかかわらず、有害なPbの溶出を防止可能なPb用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する。
【0060】
前記重金属溶出防止薬剤供給量調整部は、前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記目標値となるように、前記ポンプ48に制御信号を出力して、前記ポンプ48の駆動時間及び駆動速度等を調整する。
【0061】
なお、ここでの前記供給量目標値演算部及び前記重金属溶出防止薬剤供給量調整部は、マイクロコンピュータ等により構成され、前記供給量目標値演算部51、前記重金属溶出防止薬剤供給量調整部52及び前記塩基度調整剤調節部63と同一のマイクロコンピュータ等から構成されていてもよい。
【0062】
以下、前記廃棄物処理システムを用いた場合についての実測値等について説明する。
【0063】
まず、重金属であるCrについて説明する。
【0064】
図4は、3つの廃棄物処理システム(施設A、施設B及び施設C)における、飛灰中のT−Cr含有量と未処理飛灰からのCr(VI)の溶出量との関係を示すグラフである。図4に示すように、飛灰中のT−Cr含有量と飛灰からのCr(VI)溶出量とには相関関係がないことがわかる。このことから、飛灰中のT−Cr含有量を測定するだけでは、Cr(VI)溶出量を推定することができず、よって、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の適切な供給量を演算することができないことを示す。
【0065】
ただし、Cr(VI)の含有量とCr(VI)の溶出量とでは、比例関係(一次関数)の関係があることがわかり、何らかの方法でCr(VI)の含有量がわかれば、Cr(VI)の含有量もわかることになる。また、Cr(VI)の含有量が測定できない場合でも測定可能なT−Crの含有量に所定の係数を乗じることによって、Cr(VI)の含有量及びCr(VI)の溶出量が推定できると言える。ここで、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の適切な供給量を演算するための、溶出液のpHとT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係について説明する。
【0066】
図5は、3つの廃棄物処理システム(施設A、施設B及び施設C)における、溶出液のpHとT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との関係を示すグラフである。図5に示すように、施設ごとに、溶出液のpHとT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との間に相関関係があることがわかる。
【0067】
図6は、T−Cr含有量と溶出液のpHから推測したCr(VI)溶出量と未処理飛灰からのCr(VI)溶出量との関係を示すグラフである。ここでのT−Cr含有量と溶出液のpHから推測したCr(VI)溶出量とは、各施設における溶出液のpHとT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率をT−Cr含有量の測定値に乗じた値である。図6に示すように、測定したpHにおけるT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率をT−Cr含有量の測定値に乗じた値と未処理飛灰からの実際のCr(VI)溶出量との間に相関関係があることがわかる。このことから、溶出液のpHと飛灰中のCr含有量とを測定することによって、Cr(VI)溶出量を推定することができ、よって、Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の適切な供給量を演算することができることを示す。
【0068】
次に、埋立処分の際に、溶出基準値が設けられている、重金属であるPbについて説明する。
【0069】
図7は、ある廃棄物処理システムでの飛灰中のPb含有量及び飛灰からのPb溶出量のそれぞれの年間推移を示したグラフである。図7は、飛灰中のPb含有量と飛灰からのPb溶出とが互いに近似した変化をすることを明確に示している。
【0070】
図8は、2つの廃棄物処理システム(施設D及び施設E)における、飛灰中のPb含有量と未処理飛灰からのPb溶出量との関係を示すグラフである。また、図9は、2つの廃棄物処理システム(施設D及び施設E)における、飛灰中のCu含有量と未処理飛灰からのCu溶出量との関係を示すグラフである。図8及び図9に示すように、飛灰中のPb及びCuの含有量と未処理飛灰からのPb及びCuの溶出量との間に相関関係があることがわかる。このことから、飛灰中のPb及びCuの含有量を測定することによって、Pb及びCuの溶出量を推定することができる。よって、Pb用重金属溶出防止薬剤の適切な供給量を演算することができることを示す。このことは、図10からもわかる。
【0071】
図10は、2つの廃棄物処理システム(施設D及び施設E)における、Pb及びCuの推定溶出量から算出した重金属溶出防止薬剤の推定必要量と、重金属溶出防止薬剤の実際の必要量との関係を示したグラフである。重金属溶出防止薬剤の推定必要量とは、Pb及びCuの含有量から推定されたPb及びCuの推定溶出量から算出した重金属溶出防止薬剤の推定必要量である。また、重金属溶出防止薬剤の実際の必要量とは、飛灰からのPbの溶出量が所定の量、例えば、規制値以下となるのに実際に要した重金属溶出防止薬剤の量である。図10から、Pb及びCuの推定溶出量から、Pb用重金属溶出防止薬剤の適切な供給量を演算することができることがわかる。
【0072】
最後にスラグの塩基度について説明する。
【0073】
図11は、スラグの塩基度とスラグ溶融点との関係を示すグラフである。また、図12は、スラグの塩基度とスラグ溶流点との関係を示すグラフである。スラグ溶流点とは、溶融炉内等でスラグが流れだす温度である。図11及び図12からわかるように、スラグの塩基度が0.8付近、例えば、0.5〜1.1程度であれば、1250℃以下で、スラグが流れだすので好ましい。
【0074】
図13は、スラグの塩基度を原子吸光装置及び蛍光X線分析装置によって測定した結果を示すグラフである。図13からわかるように、蛍光X線分析装置を用いて、スラグの塩基度を測定しても、原子吸光装置によって測定した場合と同様の結果が得られる。このことから、重金属溶出防止薬剤の定量化に用いられる蛍光X線分析装置をそのまま流用しても、原子吸光装置と同様、飛灰中の重金属の含有量を測定することができる。よって、蛍光X線分析装置によって測定して得られたスラグの塩基度は、所定の塩基度、例えば0.8付近になるように、塩基度調整剤の供給量を調整するための基準となる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係る廃棄物処理システムの全体構成を示す概略図である。
【図2】前記排ガス処理部30の構成を示す概略図である。
【図3】前記排ガス処理部30の他の構成を示す概略図である。
【図4】3つの廃棄物処理システム(施設A、施設B及び施設C)における、飛灰中のT−Cr含有量と未処理飛灰からのCr(VI)の溶出量との関係を示すグラフである。
【図5】3つの廃棄物処理システム(施設A、施設B及び施設C)における、溶出液のpHとT−Cr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との関係を示すグラフである。
【図6】T−Cr含有量と溶出液のpHから推測したCr(VI)溶出量と未処理飛灰からのCr(VI)溶出量との関係を示すグラフである。
【図7】ある廃棄物処理システムでの飛灰中のPb含有量及び飛灰からのPb溶出量のそれぞれの年間推移を示したグラフである。
【図8】2つの廃棄物処理システム(施設D及び施設E)における、飛灰中のPb含有量と未処理飛灰からのPb溶出量との関係を示すグラフである。
【図9】2つの廃棄物処理システム(施設D及び施設E)における、飛灰中のCu含有量と未処理飛灰からのCu溶出量との関係を示すグラフである。
【図10】2つの廃棄物処理システム(施設D及び施設E)における、Pb及びCuの推定溶出量から算出した重金属溶出防止薬剤の推定必要量と、重金属溶出防止薬剤の実際の必要量との関係を示したグラフである。
【図11】スラグの塩基度とスラグ溶融点との関係を示すグラフである。
【図12】スラグの塩基度とスラグ溶流点との関係を示すグラフである。
【図13】スラグの塩基度を原子吸光装置及び蛍光X線分析装置によって測定した結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0076】
10 ごみ供給部
11 ごみピット
12 ごみ搬送装置
13 給塵装置
14 ごみクレーン
15 ごみ投入ホッパ
16,64 スクリューコンベア
20 ガス化溶融炉
21 ガス化炉
22 溶融炉
23 スラグ排出口
30 排ガス処理部
31 廃熱ボイラ
32 ガス減温塔
33 調整剤供給部
34 集塵装置
35 誘引送風機
36 煙突
37 バグフィルタ
38 第1バグフィルタ
39 第2バグフィルタ
40 飛灰処理装置
41 飛灰搬出装置
42 飛灰貯留槽
43 飛灰投入ホッパ
44 混練装置
45 重金属溶出防止薬剤供給部
46 重金属溶出防止薬剤供給量制御部
47 重金属溶出防止薬剤貯留槽
48 ポンプ
49 重金属含有量測定部
50 pH測定部
51 供給量目標値演算部
52 重金属溶出防止薬剤供給量調整部
60 塩基度調整装置
61 塩基度調整剤供給装置
62 スラグ塩基度測定部
63 塩基度調整剤調節部
65 モータ
71 第1飛灰処理装置
72 第2飛灰処理装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムに設けられ、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれる飛灰であって集塵手段にて捕集された飛灰からの重金属の溶出を抑制するための飛灰処理装置であって、
前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練手段と、
前記飛灰中の総クロム(Cr)含有量を測定するCr含有量測定手段と、
前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定手段と、
予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する演算手段と、
前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記目標値となるように調整する供給量調整手段とを備え、
前記Cr含有量測定手段が、蛍光X線分析装置であることを特徴とする飛灰処理装置。
【請求項2】
投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムに設けられ、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれ集塵手段にて捕集された飛灰から重金属の溶出を抑制するための飛灰処理装置であって、
前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤、前記飛灰中の鉛(Pb)の溶出を防止するためのPb用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練手段と、
前記飛灰中の総クロム(Cr)、銅(Cu)及びPbの各含有量を測定する重金属含有量測定手段と、
前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定手段と、
予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Cr(VI)溶出量の予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を第1目標値として演算する第1演算手段と、
前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第1目標値となるように調整する第1供給量調整手段と、
予め用意したPb及びCuの含有量とPb及びCuの溶出量との相関関係に基づいて、Pb及びCuの含有量の測定値から前記飛灰からのPb及びCuの溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Pb及びCuの溶出量の予想値に基づき、Cuの含有量にかかわらずPbの溶出を防止可能な前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値として演算する第2演算手段と、
前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値となるように調整する第2供給量調整手段とを備え、
前記重金属含有量測定手段が、蛍光X線分析装置であることを特徴とする飛灰処理装置。
【請求項3】
投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムであって、
前記スラグを炉外に排出するためのスラグ排出口よりも上流側の位置に前記スラグ排出口から排出されるスラグの塩基度(CaO/SiO)を調整するための塩基度調整剤を供給する塩基度調整剤供給手段と、
前記スラグの塩基度を測定する塩基度測定手段と、
測定された塩基度を、予め設定された塩基度の目標値となるように前記塩基度調整剤の供給量を調整する塩基度調整剤供給量調整手段と、
請求項1又は請求項2に記載の飛灰処理装置とを備え、
前記塩基度測定手段は、前記飛灰処理装置における前記蛍光X線分析装置を含み、前記蛍光X線分析装置によって、前記スラグ中のカルシウム(Ca)とケイ素(Si)との各含有量をそれぞれ測定し、前記CaとSiとの各含有量から酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との含有量をそれぞれ算出し、その算出結果から前記塩基度を算出する手段を有することを特徴とする廃棄物処理システム。
【請求項4】
投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムを運転するにあたり、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれ集塵手段にて捕集された飛灰からの重金属の溶出を抑制するための飛灰処理方法あって、
前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練工程と、
前記飛灰中の総クロム(Cr)含有量を測定するCr含有量測定工程と、
前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定工程と、
予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を目標値として演算する演算工程と、
前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記目標値となるように調整する供給量調整工程とを備え、
前記Cr含有量測定工程が、蛍光X線分析装置を用いることを特徴とする飛灰処理方法。
【請求項5】
投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムを運転するにあたり、前記ガス化溶融炉から排出される溶融排ガス中に含まれ集塵手段にて捕集された飛灰からの重金属の溶出を抑制するための飛灰処理方法あって、
前記飛灰中の六価クロム(Cr(VI))の溶出を防止するためのCr(VI)用重金属溶出防止薬剤、前記飛灰中の鉛(Pb)の溶出を防止するためのPb用重金属溶出防止薬剤を前記飛灰に供給して混練する混練工程と、
前記飛灰中の総クロム(Cr)、銅(Cu)及びPbの各含有量を測定する重金属含有量測定工程と、
前記飛灰からの溶出液のpHを測定するpH測定工程と、
予め用意した溶出液のpHとCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率との相関関係に基づいて、測定したpHにおけるCr含有量に対するCr(VI)溶出量の比率を算出し、算出された比率をCr含有量の測定値に乗ずることによって、前記飛灰からのCr(VI)溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Cr(VI)溶出量の予想値に基づき、Cr(VI)の溶出を防止可能な前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を第1目標値として演算する第1演算工程と、
前記Cr(VI)用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第1目標値となるように調整する第1供給量調整工程と、
予め用意したPb及びCuの含有量とPb及びCuの溶出量との相関関係に基づいて、Pb及びCuの含有量の測定値から前記飛灰からのPb及びCuの溶出量の予想値を演算し、かつ、前記Pb及びCuの溶出量の予想値に基づき、Cuの含有量にかかわらずPbの溶出を防止可能な前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値として演算する第2演算工程と、
前記Pb用重金属溶出防止薬剤の供給量を前記第2目標値となるように調整する第2供給量調整工程とを備え、
前記重金属含有量測定工程が、蛍光X線分析装置を用いることを特徴とする飛灰処理方法。
【請求項6】
投入される廃棄物を熱分解し、その熱分解により発生する熱分解ガス中の灰分を溶融しスラグ化するガス化溶融炉を備える廃棄物処理システムの運転方法であって、
前記スラグを炉外に排出するためのスラグ排出口よりも上流側の位置に前記スラグ排出口から排出されるスラグの塩基度(CaO/SiO)を調整するための塩基度調整剤を供給する塩基度調整剤供給工程と、
前記スラグの塩基度を測定する塩基度測定工程と、
測定された塩基度を、予め設定された塩基度の目標値となるように前記塩基度調整剤の供給量を調整する塩基度調整剤供給量調整工程と、
請求項4又は請求項5に記載の飛灰処理方法による飛灰からの重金属の溶出を抑制する飛灰処理工程とを備え、
前記塩基度測定工程は、前記飛灰処理工程における前記蛍光X線分析装置を用いて、前記スラグ中のカルシウム(Ca)とケイ素(Si)との各含有量をそれぞれ測定し、前記CaとSiとの各含有量から酸化カルシウム(CaO)と二酸化ケイ素(SiO)との含有量をそれぞれ算出し、その算出結果から前記塩基度を算出する工程を有することを特徴とする廃棄物処理システムの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−75897(P2010−75897A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−250223(P2008−250223)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】