説明

食品加工装置及び食品加工方法

【課題】 回転体の内部で対象食品を加工するために、対象食品を十分に分散できる食品加工装置を提供する。
【解決手段】 水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体1を備え、互いに付着する複数の対象食品X,…が回転体1の水平方向の一端側に設けられる投入口10から回転体1の内部に投入され、回転体1が回転することにより回転体1の水平方向の他端側に設けられる放出口11から対象食品X,…を放出する間に、回転体1の内部で対象食品X,…を加工するように構成される食品加工装置において、回転体1は、対象食品X,…を複数の群に分けて加工すべく、内部に複数の部屋12,…を備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転する筒状の回転体の内部に一端側から投入された対象食品を他端側から放出する間に、回転体の内部で対象食品を冷凍や加熱等といった加工を行う食品加工装置及び食品加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、筒状である回転体の内部で対象食品を加工する食品加工装置として、例えば、冷凍装置(例えば、特許文献1)や、加熱装置(例えば、特許文献2)が知られている。かかる食品加工装置は、図9に示すように、横型の回転体(回転ドラム)100の一端側から投入された対象食品(米飯、海老、白子等)X,…を他端側から放出する間に、回転体100を回転させる(図9における矢印I方向)ことにより対象食品X,…を分散しつつ、回転体100の内部を冷却や加熱することにより、対象食品X,…の冷凍や加熱等といった加工を行う。
【特許文献1】特開平7−250663号公報
【特許文献2】特開2002−112896号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、かかる食品加工装置においては、回転体100の内部の対象食品X,…が、重力により下方側(図9における領域J)に滞留したり、回転体100の内周部に配設される撹拌板101,…付近(図9における領域K)に滞留したりする。即ち、対象食品X,…の殆どが回転体100の内部における特定の位置で滞留するため、回転体100の内部における対象食品X,…の分散(撹拌)状態が不十分となることがある。
【0004】
これにより、冷凍装置においては、例えば、対象食品X,X同士や、対象食品Xと回転体100の内面とが凍結し、また、加熱装置においては、例えば、対象食品X,…が十分に加熱(加工)されないといった問題が発生する。かかる問題は、生産効率を向上すべく、対象食品X,…を加工する量、即ち、回転体100の内部に投入する対象食品X,…の量を多くするにつれて、顕著に発生するようになる。
【0005】
よって、本発明は、かかる事情に鑑み、回転体の内部で対象食品を加工するために、対象食品を十分に分散できる食品加工装置及び食品加工方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る食品加工装置は、水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体を備え、互いに付着する複数の対象食品が回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から回転体の内部に投入され、回転体が回転することにより回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出する間に、回転体の内部で対象食品を加工するように構成される食品加工装置において、回転体は、対象食品を複数の群に分けて加工すべく、内部に複数の部屋を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、互いに付着する複数の対象食品が、回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から、筒状の回転体の内部における複数の部屋に投入されると、回転体が水平方向の軸心を中心に回転することにより、対象食品が回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から放出される。そして、対象食品が投入されて放出される間に、回転体の内部における各部屋により、対象食品を複数の群に分けて加工することができる。したがって、一つの群で対象食品を加工する場合と比較して、滞留する位置における対象食品の量を少なくできる。
【0008】
また、本発明に係る食品加工装置においては、回転体の内部を冷却して対象食品を冷凍加工する冷凍手段を備え、回転体は、各部屋を構成する壁部が対象食品よりも小さい孔を複数有して形成されてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、冷凍手段が回転体の内部を冷却するため、対象食品を冷凍加工できる。そして、回転体の各部屋を構成する壁部が対象食品よりも小さい孔を複数有して形成されるため、回転体の各部屋の壁部及び対象食品との接触する部位が小さくなる。これにより、回転体の各部屋の壁部と対象食品とが凍結するのを防止できる。
【0010】
また、本発明に係る食品加工装置においては、冷凍手段は、回転体の内部を冷却するための冷気を供給する冷気供給部を備え、冷気供給部は、対象食品を分散させるべく、回転体の内部の対象食品に向けて冷気を噴きかけるように先端部が配置されてもよい。
【0011】
かかる構成によれば、冷凍手段が冷気供給部から冷気を供給するため、回転体の内部を冷却する。そして、冷気供給部の先端部から、回転体の内部における複数の対象食品に向けて冷気が噴きかけられるため、冷気が複数の対象食品を付勢し、複数の対象食品をさらに効果的に分散できる。
【0012】
また、本発明に係る食品加工装置においては、水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体が一対並設され、一対の回転体の内部にて対象食品を加工するように構成される食品加工装置であって、第1回転体は、互いに付着する複数の対象食品が水平方向の一端側に設けられる投入口から投入されると共に、回転することにより水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出するように構成され、第2回転体は、第1回転体から放出される対象食品が水平方向の一端側に設けられる投入口から投入されると共に、回転することにより水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出するように構成され、少なくとも一方の回転体は、対象食品を複数の群に分けて加工すべく、内部に複数の部屋を備えることを特徴とする。
【0013】
かかる構成によれば、互いに付着する複数の対象食品が第1回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から投入されると、第1回転体が水平方向の軸心を中心に回転することにより、対象食品が第1回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から放出され、さらに、第1回転体から放出される対象食品が第2回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から投入されると、第2回転体が回転することにより、対象食品が第2回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から放出される。
【0014】
そして、対象食品が第1回転体及び第2回転体を通過する間に、対象食品が加工される。ここで、少なくとも一方の回転体が内部に複数の部屋を備えるため、かかる回転体の内部における各部屋により、対象食品を複数の群に分けて加工することができる。したがって、かかる回転体の内部においては、一つの群で対象食品を加工する場合と比較して、滞留する位置における対象食品の量を少なくできる。
【0015】
さらには、回転体が一対設けられるため、それぞれの回転体の内部で異なった加工をすることもできるため、加工内容に対して、フレキシブルに対応することもできる。
【0016】
また、本発明に係る食品加工装置においては、第1回転体及び第2回転体は、個別に回転速度を調整可能な構成を採用してもよい。
【0017】
かかる構成によれば、第1回転体及び第2回転体が個別に回転速度を調整できるため、各回転体を加工内容に応じた回転速度にすることができる。したがって、加工内容に対して、さらに、フレキシブルに対応することもできる。
【0018】
また、本発明に係る食品加工方法は、水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体に、互いに付着する複数の対象食品を、回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から回転体の内部に投入し、回転体を回転させることにより回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出させる間に、回転体の内部で対象食品を加工する食品加工方法において、回転体の内部に設けられる複数の部屋に対象食品をそれぞれ投入するステップと、対象食品を複数の群に分けて加工するステップとを備えることを特徴とする。
【0019】
本発明によれば、互いに付着する複数の対象食品が、回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から、筒状の回転体の内部における複数の部屋に投入されると、回転体が水平方向の軸心を中心に回転することにより、回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出する。そして、対象食品が投入されて放出される間に、回転体の内部における各部屋により、対象食品を複数の群に分けて加工することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上の如く、本発明に係る食品加工装置及び食品加工方法によれば、対象食品を複数の群に分けて加工するため、一つの群で対象食品を加工する場合と比較して、滞留する位置における対象食品の量を少なくでき、その結果、回転体の内部で対象食品を加工するために、対象食品を十分に分散できるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係る食品加工装置における第1の実施形態について、図1〜図5を参酌して説明する。
【0022】
本実施形態に係る食品加工装置は、図1〜図3に示すように、水平方向の軸心を中心に回転する(図1〜3における矢印A方向)筒状の回転体(以下、「回転ドラム」ともいう)1を備える。また、食品加工装置は、回転体1を収容する本体部2と、回転体1の内部に複数の対象食品X,…を投入する投入部3と、回転体1から放出される複数の対象食品X,…を取り出す取出部4とを備える。
【0023】
そして、食品加工装置は、互いに付着する複数の対象食品X,…が回転体1の水平方向の一端側に設けられる投入口10から回転体1の内部に投入され、回転体1が回転することにより回転体1の水平方向の他端側に設けられる放出口11から対象食品X,…を放出する間に、回転体1の内部で対象食品X,…を加工するように構成される。具体的には、食品加工装置は、回転体1の内部を冷却して対象食品X,…を冷凍加工する冷凍手段5を備える。
【0024】
回転体1は、対象食品X,…を複数の群に分けて加工すべく、内部に複数の部屋12,…を備える(本実施形態においては、三つ備える)。具体的には、回転体1は、投入口10から放出口11まで連通する部屋12,…を複数備え、対象食品X,…が部屋12,12同士間で移動するのを規制するように構成される。
【0025】
より具体的には、回転体1は、円筒状に形成され且つ水平方向に沿って配置され、さらに、内部に、回転方向に沿う断面が扇形状となる筒状の部屋12,…を複数備える。なお、各部屋12は、水平方向(軸心)に沿って、即ち、水平方向(軸心)と平行に配置される。
【0026】
そして、回転体1は、各部屋12を構成する壁部13,…が対象食品Xよりも小さい孔14,…を複数有して形成される。具体的には、回転体1は、一対の平板状の側壁部13a,13aと円弧状の周壁部13bとにより各部屋12を構成し、一対の側壁部13a,13a及び周壁部13bは、対象食品Xが通過できない大きさである円形状の孔14,…を複数有して形成される。
【0027】
かかる回転体1は、側壁部13aとなる平板状の板及び周壁部13bとなる円弧状の板の一端側同士が連接される長尺な板部材が複数連結されて形成される。具体的には、回転体1は、複数のかかる板部材を備え、平板状の板の他端側同士間と、円弧状板の一端側及び他の円弧状板の他端側間が連結、例えば、溶接(図3における網掛け部)されて形成される。
【0028】
また、回転体1は、対象食品Xが投入口10から放出するのを防止すべく、一端側に、内方に向けた突起状の規制部15を備える。さらに、回転体1は、他端側に、外方に向けた突起状の鍔部16を備える。
【0029】
なお、回転体1は、駆動手段6の駆動を受けて回転する回転軸17を介して回転する。そして、回転体1は、円滑な回転を維持すべく、一端側の外周部に摺動する回転可能な支持体(回転ローラ)7に支持される。さらに、回転体1は、投入口10付近の壁部13(周壁部13b)に付着する対象物X,…を壁部13(周壁部13b)から離反させるべく、振動体(ピストン体)8により、外側から振動が加えられる。
【0030】
本体2は、回転体1を内部に収容し、内部及び外部間の伝熱を防止する断熱室20を備える。また、本体2は、回転体1を回転させるための駆動手段6を内部に収容する機械室21を備える。そして、本体2は、断熱室20を支持する架台22を備え、回転体1が一端側から他端側に向けて下方に傾斜するように構成される。
【0031】
投入部3は、上流側から(図1における矢印B方向に)搬送された対象食品X,…を自然落下により回転体1の内部に投入可能に構成される。具体的には、投入部3は、筒状に形成され、回転体1側の先端部30が下方を向くように傾斜して配置され、さらに、回転体1側の先端部30が回転体1の投入口10に向けて配置される。即ち、投入部3は、断熱室20(本体2)の外部から内部に亘って配置され、対象食品X,…を上方から下方へ滑り落とす、所謂、シュートとしている。
【0032】
また、投入部3は、対象食品X,…を確実に回転体1の内部に投入すべく、先端部30の一部が回転体1の内部に配置される。さらに、投入部3は、回転体1の内部に投入する前に対象食品Xが凍結して固着するのを防止すべく、また、対象食品Xが滑り落ちるのを助長すべく、部分的又は全体的に振動するように構成される。具体的には、投入部3は、先端部30の近傍に振動体31を備える。
【0033】
取出部4は、回転体1の他端側から放出された対象食品X,…を自然落下により、本体2の内部から外部(図1における矢印C方向)に取り出し可能に構成される。具体的には、取出部4は、筒状に形成され、略垂直方向に沿って配置され、さらに、上端部41が回転体1の放出口11の近傍に配置される。即ち、取出部4は、断熱室20(本体2)の内部から外部に亘って配置され、対象食品Xを上方から下方へ滑り落とす、所謂、シュートとしている。
【0034】
また、取出部4は、回転体1から放出される対象食品X,…を確実に受け入れるべく、回転体1の他端側に配置される鍔部16の一部が内部に配置される。さらに、取出部4は、対象食品X,…を断熱室20(本体2)から取り出し可能であると共に、断熱室20の内部及び外部の気体が往来(混合)するのを規制するように構成される。具体的には、取出部4は、ロータリーバルブ40を備える。
【0035】
冷凍手段5は、回転体1の内部を冷却するための冷気を供給する冷気供給部50を備える。具体的には、冷凍手段5は、断熱室20の外部(図1における矢印D方向)から送られてくる冷気(例えば、マイナス190度の窒素ガス)を断熱室20(本体2)の内部に供給すべく、断熱室20(本体2)の内部から外部に亘って配置される管状の冷気供給部50を備える。
【0036】
また、冷凍手段5は、温度検知手段(図示しない)と温度制御手段(図示しない)とを備えることにより、断熱室20(本体2)の内部の温度を一定(例えば、マイナス80度)にすべく、冷気を供給するように構成される。
【0037】
冷気供給部50は、対象食品X,…を分散させるべく、回転体1の内部の対象食品X,…に向けて冷気を噴きかけるように先端部51が配置される。具体的には、冷気供給部50は、先端部51が回転体1の一端側の近傍に配置され、さらに、先端部51が回転体1の内部(投入口10)に向けて配置される。なお、別の冷気供給部(図示しない)がさらに設けられ、かかる冷気供給部の先端部が回転体1の他端側の近傍に配置され且つ回転体1の内部(放出口11)に向けて配置されている。
【0038】
なお、本体部2(断熱室20)は、冷気供給部50により内部に冷気が供給されるため、室内圧を維持すべく、内部の気体を外部に向けて(図1における矢印E方向に)排気するための排気部23を上方側に備える。また、本体部2(断熱室20)は、対象食品Xから発生する水や先浄水等の液体を外部に向けて(図1における矢印F方向に)排出するための排液部(ドレン排出部)24を下方側に備える。
【0039】
本実施形態に係る食品加工装置の構成は以上の通りであり、次に、本実施形態にかかる食品加工装置の作用について説明する。
【0040】
まず、図2に示すように、投入部3の先端部30が回転体1の投入口10に向けて配置されているため、上流設備から投入部3の内部に搬送された対象食品X,…が、回転体1の投入口10を介して複数の部屋12,…に、互いに付着した状態で投入される。このとき、投入部3の先端部30の一部が回転体1の内部に配置されているため、対象食品X,…を確実に回転体1の複数の部屋12,…に投入できる。
【0041】
そして、回転体1が回転しているため、互いに付着した状態で投入された対象食品X,…を分散させ(散らけさせ)、また、冷気供給部50が先端部51から回転体1の内部(投入口10)に向けて(図2における矢印H方向に)冷気を供給(噴出)するため、対象食品X,…に冷気を噴きかけ、対象食品X,…を付勢してさらに分散させる。なお、回転体1の一端側に設けられた突起状の規制部15により、対象食品Xが投入口10から放出するのを防止している。
【0042】
そして、図3に示すように、回転体1が部屋12,12同士間で対象食品X,…を移動させないため、対象食品X,…が各部屋12,…ごとに分けた状態で維持される。さらに、回転体1の各部屋12が回転方向に沿う断面が扇形状、即ち、円形ではなく角を有する形状であるため、図4〜図5に示すように、各部屋12の内部において対象食品X,…が滞留する位置を連続的又は断続的に変化させ、その結果、対象食品X,…を適度に分散させる。
【0043】
なお、図4〜図5は、図4(a)、図4(b)、図4(c)、図5(a)、図5(b)、図5(c)の順で、回転体1が約60度ずつ回転した状態をそれぞれ示している。
【0044】
そして、図2に戻り、回転体1が対象食品Xを分散させつつ、冷凍手段5が冷気供給部50から冷気を供給するため、回転体1の内部を冷却する。これにより、分散された対象食品X,X同士を凍結させることなく、対象食品X,…を冷凍加工できる。
【0045】
さらに、回転体1の各部屋12を構成する壁部13が対象食品X,…よりも小さい孔14,…を複数有して形成されているため、回転体1の各部屋12の壁部13と対象食品Xとの接触する部位が小さくなる。これにより、回転体1の各部屋12の壁部13と対象食品Xとが凍結することなく、対象食品X,…を冷凍加工できる。
【0046】
なお、回転体1は、対象食品X,X同士や、回転体1の各部屋12の壁部13と対象食品Xとが凍結するのを防止すべく、対象食品Xを適度に分散させるために、適度な速度で回転している。そして、回転体1が一端側から他端側に向けて下方に傾斜しているため、回転体1が回転することにより、対象食品X,…を一端側から他端側へと移動させ、回転体1の放出口11から対象食品X,…を放出する。
【0047】
そして、取出部4が放出された対象食品Xを上端部41で受け入れ、自然落下により取り出して下流設備へ搬送する。このとき、回転体1の鍔部16の一部が取出部4の内部に配置されているため、取出部4が回転体1から放出される対象食品X,…を確実に受け入れる。
【0048】
以上より、本実施形態に係る食品加工装置は、回転体1の内部が複数の部屋12,…を有するため、互いに付着する複数の対象食品X,…を複数の群に分けて加工することができる。したがって、従来のように一つの群で対象食品X,…を加工する場合(例えば図9の場合)と比較して、滞留する位置における対象食品X,…の量を少なくできるため、回転体1の内部で対象食品X,…を十分に分散した状態で、対象食品X,…を加工できる。
【0049】
また、本実施形態に係る食品加工装置は、回転体1の各部屋12を構成する壁部13,…が対象食品Xよりも小さい孔14,…を複数有して形成されるため、冷凍手段5が回転体1の内部を冷却して対象食品X,…を冷凍加工する際に、対象食品X,…が他の部屋12に移動するのを防止すると共に、回転体1の各部屋12の壁部13,…と対象食品X,…との接触する部位を小さくできる。したがって、対象食品X,…同士が凍結するのを防止すると共に、回転体1の各部屋12の壁部13,…と対象食品X,…とが凍結するのを防止できる。
【0050】
また、本実施形態に係る食品加工装置は、冷凍手段5の冷気供給部50が回転体1の内部に冷気を供給しつつ、回転体1の内部における複数の対象食品X,…に冷気を噴きかけるため、複数の対象食品X,…をさらに効果的に分散できる。したがって、対象食品X,…同士が凍結するのをさらに防止できる。
【0051】
次に、本発明に係る食品加工装置における第2の実施形態について、図6及び図7を参酌して説明する。なお、図6において、図1〜図5の符号と同一の符号を付した部分は、第1実施形態と同一の構成又は要素を表す。
【0052】
本実施形態に係る食品加工装置は、図6及び図7に示すように、水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体1,1’が一対並設され、一対の回転体1,1’の内部にて対象食品X,…を加工するように構成される。具体的には、食品加工装置は、水平方向の幅寸法が略同一である一対の回転体1,1’が、各軸心が平行となるように上下方向(鉛直方向)に並設され、上方に配置される第1回転体1、下方に配置される第2回転体1’の順に対象食品X,…が各内部を水平方向(図6におけるB1矢印方向、及びB3矢印方向)にて通過するように構成される。
【0053】
また、食品加工装置は、第1回転体1の内部にて対象食品X,…を表面凍結(仮凍結)させ、第2回転体1’の内部にて対象食品X,…を本凍結させるように構成させる。ここで、「表面凍結(仮凍結)」とは、対象食品X,…が互いに付着しない程度に、少なくとも表面を凍結することを指し、「本凍結」とは、対象食品X,…が内部まで(全体的に)凍結することを指す。
【0054】
そして、食品加工装置は、各回転体1,1’の内部を冷却するための冷気供給部50,50を備え、各回転体1,1’の内部の温度を個別に調整可能に構成される。具体的には、食品加工装置は、第1回転体1の内部の温度(例えば約マイナス80℃)よりも、第2回転体1’の内部の温度(例えば約マイナス180℃)の方が低く設定される。
【0055】
さらに、食品加工装置は、第1回転体1及び第2回転体1’が個別に回転速度を調整可能に構成される。具体的には、食品加工装置は、第1回転体1を回転させる駆動手段6と、第2回転体1’を回転させる別の駆動手段6とを備え、第1回転体1の回転速度が第2回転体1’の回転速度よりも速く設定される。
【0056】
第1回転体1は、互いに付着する複数の対象食品X,…が水平方向の一端側に設けられる投入口10から投入されると共に、回転することにより水平方向の他端側に設けられる放出口11から対象食品を放出するように構成される。なお、第1回転体1は、前記の第1実施形態に係る回転体1と同一の構成であるため、説明を省略する。
【0057】
第2回転体1’は、第1回転体1から放出される対象食品X,…が、下方に向けて(図6におけるB2矢印方向に)自然落下しつつ案内部9に案内されて水平方向の一端側に設けられる投入口10’から投入されると共に、回転することにより水平方向の他端側に設けられる放出口11’から対象食品X,…を放出するように構成される。そして、第2回転体1’は、投入口10’が第1回転体1の放出口11’の下方(略真下)に配置され、放出口11’が第1回転体1の投入口10の下方(略真下)に配置される。
【0058】
また、第2回転体1’は、対象食品X,…を複数の群に分けて加工すべく、内部に複数の部屋12’,…を備える。具体的には、第2回転体1’は、内部に、回転軸17(軸心)周りに螺旋状に形成される複数(図7においては三つ)の部屋12’,…を備える。なお、第2回転体1’は、例えば、周壁部13b’となる円筒状の部材と、円筒状の部材に内設され且つ側壁部13a’となるスクリュ状の部材とで形成される。
【0059】
以上より、本実施形態係る食品加工装置は、第1回転体1及び第2回転体1’が内部に複数の部屋12,12’,…を備えるため、第1回転体1及び第2回転体1’の内部における各部屋12,12’により、対象食品X,…を複数の群に分けて加工することができる。したがって、一つの群で対象食品X,…を加工する場合と比較して、滞留する位置における対象食品X,…の量を少なくでき、その結果、第1回転体1及び第2回転体1’の内部で対象食品X,…を加工するために、対象食品X,…を十分に分散できる
【0060】
また、本実施形態に係る食品加工装置は、第1回転体1及び第2回転体1’が個別に回転速度を調整することができるため、第1回転体1は、対象食品X,・・・が互いに付着した状態で表面凍結するのを防止すべく、比較的速い速度で回転する一方、第2回転体1’は、対象食品X,…を確実に本凍結させるべく、比較的遅い速度で回転している。したがって、各回転体1,1’における加工内容に対して、フレキシブルに対応することもできる。
【0061】
また、本実施形態に係る食品加工装置は、第1回転体1及び第2回転体1’が、水平方向の幅寸法が略同一に形成されると共に、第1回転体1が、回転軸17に平行に形成される部屋12,…を備える一方、第2回転体1’が、回転軸17周りに螺旋状に形成される部屋12’,…を備える。したがって、第2回転体1’は、第1回転体1と比較して、対象食品X,…が内部を移動する距離が長くなるため、第1回転体1と水平方向の幅寸法が略同一であっても、対象食品X,…を確実に本凍結させることができる。
【0062】
なお、本発明に係る食品加工装置は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0063】
例えば、本発明に係る食品加工装置は、図8に示すように、回転体1''が壁部13''に撹拌板18,…を備えてもよい。かかる構成によれば、対象食品をさらに効果的に分散することができる。なお、図8においては、撹拌板18が各部屋12''の周壁部13b''に一つ設けられているが、例えば、撹拌板が側壁部13a''に設けられてもよく、また、撹拌板が各部屋12''に複数設けられてもよい。
【0064】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、回転体1,1’が円筒状に形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、回転体が角筒状に形成される場合でもよい。
【0065】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、回転体1,1’が水平方向、より正確には、一端側から他端側に向けて下方に傾斜する方向の軸心を中心に回転する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、回転体が真の水平方向の軸心を中心に回転する場合でもよい。要するに、回転体は、真の水平方向又は略水平方向の軸心を中心に回転すればよい。
【0066】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、回転体1,1’の内部に回転軸17が配置される場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、回転体の外部に回転軸が配置される場合でもよい。要するに、回転体が水平方向の軸心を中心に回転可能に構成されていればよい。
【0067】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、回転体1,1’の各部屋12,12’の回転方向に沿う断面(軸心と直交する面における断面)が略同形状で形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、回転体の各部屋の回転方向に沿う断面がそれぞれ相違する形状で形成される場合でもよい。
【0068】
さらには、水平方向の位置により、回転体の各部屋の回転方向に沿う断面が相違する場合でもよい。例えば、一つの回転体において、上流側(投入口側)を軸心と平行に形成される複数の部屋とし、下流側(放出口側)を軸心周りに螺旋状に形成される部屋として、上流側の部屋と下流側の部屋とが連通して形成される場合でもよい。
【0069】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、回転体1,1’が内部に部屋12,12’を三つ備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、回転体が内部に部屋を二つ又は四つ以上備える場合でもよい。
【0070】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、(第1)回転体1が周壁部13bに対して側壁部13aが着脱できない場合を説明したが、かかる場合に限られず、回転体は、側壁部が周壁部に対して着脱可能に構成される場合でもよい。かかる構成によれば、対象食品の加工内容や対象食品の形状(大きさ)により、部屋の数を調整でき、フレキシブルに対応することができる。
【0071】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、(第1)回転体1の壁部13,…が円形状の孔14,…を有して形成される場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、回転体の壁部が網目状や格子状に形成される場合でもよい。また、本発明においては、孔は、必須の構成ではなく、回転体の壁部に設けられない場合でもよく、さらに、側壁部又は周壁部の何れか一方のみに設けられる場合でもよい。
【0072】
また、上記実施形態にかかる食品加工装置においては、回転体1,1’の各部屋12,12’に対象食品X,…をランダムに投入する場合を説明したが、かかる場合に限られず、回転体1,1’の各部屋12,12’に定量の対象食品X,…を均等に投入する場合でもよい。
【0073】
例えば、定量の対象食品Xを回転体1の内部に投入可能な定量投入手段と、定量投入手段が投入する際の回転体1の角度位置を検知する回転角検知手段とを備え、回転体1の各部屋12に定量の対象食品X,…を均等に投入可能に構成されてもよい。かかる場合、例えば、定量投入手段は、定量搬送コンベヤとすることができ、さらに、回転角検知手段は、回転軸17に取り付けられたロータリーエンコーダとすることができる。
【0074】
また、上記実施形態に係る食品加工装置においては、冷凍手段5を備え、対象食品X,…を冷凍加工する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、加熱手段を備え、対象食品X,…を加熱(蒸し)加工する場合でもよく、また、洗浄手段を備え、対象食品Xを洗浄加工する場合でもよい。
【0075】
また、本発明に係る食品加工装置は、冷気供給部50が冷気を連続的に供給してもよく、又は、断続的に供給してもよい。そして、例えば、断熱室20(本体2)の内部の温度を一定にすると共に、複数の対象食品X,…を分散させるために、断熱室20の内部の気体を回収して、複数の対象食品X,…に噴きかけるように当該回収気体を冷気供給部50から連続的に噴出させ、さらに、温度を一定にするために必要な量の冷気(窒素ガス)を当該回収気体に添加するように構成されてもよい。
【0076】
かかる構成によれば、断熱室20(本体2)の内部の温度を一定とするために、冷気(窒素ガス)が連続的ではなく断続的に供給することになる場合であっても、複数の対象食品X,…に連続的に気体を噴きつけて、複数の対象食品X,…を分散させることができる。
【0077】
また、上記第2実施形態に係る食品加工装置においては、一対の回転体1,1’を上下方向(鉛直方向)に並設する場合を説明したが、かかる場合に限られず、例えば、一対の回転体を横方向(水平方向)に並設する場合でもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態に係る食品加工装置においては、第1回転体1及び第2回転体1’の双方が複数の部屋12,12’を備える場合を説明したが、かかる場合に限られず、対象食品の加工内容に応じて、何れか一方の回転体のみに部屋を備える場合でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係る食品加工装置の全体図であって、一部が断面を表す正面図を示す。
【図2】同実施形態に係る食品加工装置の要部拡大図であって、正面視の断面図を示す。
【図3】同実施形態に係る食品加工装置の回転体における全体図であって、図2のG−G線における断面図を示す。
【図4】同実施形態に係る食品加工装置の回転体における、対象食品の分散状態を表す要部拡大図であって、(a)〜(c)はそれぞれ側面視の断面図を示す。
【図5】同実施形態に係る食品加工装置の回転体における、対象食品の分散状態を表す要部拡大図であって、(a)〜(c)はそれぞれ側面視の断面図を示す。
【図6】本発明の他の実施形態に係る食品加工装置の全体図であって、一部が断面を表す正面図を示す。
【図7】同実施形態に係る食品加工装置の回転体における全体図であって、(a)は側面視の断面図、(b)は正面視の断面図を示す。
【図8】本発明のさらに他の実施形態に係る食品加工装置の回転体における全体図であって、側面視の断面図を示す。
【図9】従来における食品加工装置の回転体における全体図であって、側面視の断面図を示す。
【符号の説明】
【0080】
1…(第1)回転体、1’…(第2)回転体、5…冷凍手段、10…投入口、11…放出口、12…部屋、13…壁部、14…孔、50…冷気供給部、51…先端部、X…対象食品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体を備え、互いに付着する複数の対象食品が回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から回転体の内部に投入され、回転体が回転することにより回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出する間に、回転体の内部で対象食品を加工するように構成される食品加工装置において、回転体は、対象食品を複数の群に分けて加工すべく、内部に複数の部屋を備えることを特徴とする食品加工装置。
【請求項2】
回転体の内部を冷却して対象食品を冷凍加工する冷凍手段を備え、回転体は、各部屋を構成する壁部が対象食品よりも小さい孔を複数有して形成される請求項1に記載の食品加工装置。
【請求項3】
冷凍手段は、回転体の内部を冷却するための冷気を供給する冷気供給部を備え、冷気供給部は、対象食品を分散させるべく、回転体の内部の対象食品に向けて冷気を噴きかけるように先端部が配置される請求項2に記載の食品加工装置。
【請求項4】
水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体が一対並設され、一対の回転体の内部にて対象食品を加工するように構成される食品加工装置であって、
第1回転体は、互いに付着する複数の対象食品が水平方向の一端側に設けられる投入口から投入されると共に、回転することにより水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出するように構成され、
第2回転体は、第1回転体から放出される対象食品が水平方向の一端側に設けられる投入口から投入されると共に、回転することにより水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出するように構成され、
少なくとも一方の回転体は、対象食品を複数の群に分けて加工すべく、内部に複数の部屋を備えることを特徴とする食品加工装置。
【請求項5】
第1回転体及び第2回転体は、個別に回転速度を調整可能に構成される請求項4に記載の食品加工装置。
【請求項6】
水平方向の軸心を中心に回転する筒状の回転体に、互いに付着する複数の対象食品を、回転体の水平方向の一端側に設けられる投入口から回転体の内部に投入し、回転体を回転させることにより回転体の水平方向の他端側に設けられる放出口から対象食品を放出させる間に、回転体の内部で対象食品を加工する食品加工方法において、回転体の内部に設けられる複数の部屋に対象食品をそれぞれ投入するステップと、対象食品を複数の群に分けて加工するステップとを備えることを特徴とする食品加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−296982(P2009−296982A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157724(P2008−157724)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(508182501)株式会社中西冷熱 (1)
【Fターム(参考)】