説明

飲酒運転防止装置及び飲酒運転要因物質採取方法

【課題】運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能な、飲酒運転防止装置及び飲酒運転要因物質採取方法を提供する。
【解決手段】運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールに応じて、運転者の血液中に含まれるアルコールの血中濃度を測定する飲酒運転防止装置であって、運転者が操作するシフトレバー1の内部に内部空間12を形成し、シフトレバー1のうち、シフトレバー1の操作時に運転者の皮膚が接触すると予測した接触予測部位24に、内部空間12と外部空間とを連通させる導入開口部22を形成し、気体に含まれるアルコールを採取するアルコール検出部20を、内部空間12において導入開口部22よりも上方に配置することにより、運転者の体温により昇温して比重が軽くなり、内部空間12を上昇する気体を、アルコール検出部20により検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒運転の要因となるアルコールを運転者から検出して、飲酒運転を防止することが可能な飲酒運転防止装置及び飲酒運転要因物質採取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
飲酒運転等の飲酒運転によって発生する事故は、その被害者や加害者が死亡または重症に至る確率が高い。また、加害者となる運転者当人だけでなく、無関係の人間を巻き込み、より悲惨な事故となる場合が多い。
運転者の体内に、飲酒運転の要因となるアルコールが体内に存在している状態では、注意力及び判断力の低下等が生じる。このような状態で自動車等の運転を行うと、的確な運転操作を行うことが困難となる。これにより、飲酒運転による事故が発生することとなる。
【0003】
このため、道路交通法等の法令や勤務規則等により、アルコールが体内に存在している状態では、自動車等の運転が禁止されている。
しかしながら、現状では、「飲酒量が少なければ、運転には支障が無い」や、「飲酒した時間から数時間程度が経過していれば、運転には支障が無い」等の誤った認識を持つ運転者が存在しているため、飲酒運転によって発生する事故は根絶されていない。
【0004】
このような問題を解決するために、例えば、特許文献1に記載されているような、運転者の血中アルコール濃度を検出し、検出した血中アルコール濃度が所定値を越えている場合に、車両の機能を停止または低下させる技術が提案されている。
この技術では、血中アルコール濃度を検出するために、運転者の呼気に含まれるアルコールを採取するのではなく、運転者の汗に含まれるアルコールを採取している。
【0005】
具体的には、ステアリングホイールやシフトレバー等、運転者の手が触れる運転操作部に、感応膜に付着するアルコール成分により物理的特性が変化する、アルコールセンサを配置する。さらに、アルコールセンサの出力に基づいて運転者の血中アルコール濃度を測定する、測定装置を備える。
このため、同乗者が飲酒している状態であっても、同乗者の状態に影響されることなく、運転者の汗に含まれるアルコールを採取することが可能となり、運転者の血中アルコール濃度を検出することが可能である。さらに、運転者の汗に含まれるアルコールを採取する際に、運転に関する操作から独立した個別の動作を行う必要が無いため、運転者が通常の操作を行うだけで、運転者の汗に含まれるアルコールを採取することが可能である。
【特許文献1】特開2005−224319号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、運転者の汗に含まれるアルコールを採取するために、運転操作部にアルコールセンサを配置している。しかしながら、運転者の操作状態によっては、アルコールセンサと運転者の手との距離が離れてしまうおそれがある。
このような場合、運転者の手から出た汗が、アルコールセンサで採取される前に大気中へ蒸散してしまうおそれがある。
また、運転者の皮膚から放出した汗を含む気体は、運転者の体温により温められて周囲の空気よりも比重が軽くなるため、運転者の汗が蒸散して気体となると、この気体に含まれるアルコールは、気体とともに運転者の手から上方へ移動することとなる。
このため、アルコールセンサを運転者の手よりも下方に配置している場合には、アルコールセンサが採取するアルコールの濃度が、実際の濃度よりも低い値となるおそれがあり、血中アルコール濃度の検出精度が低下するおそれがある。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能な、飲酒運転防止装置及び飲酒運転要因物質採取方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールを検出する飲酒運転防止装置であって、
前記運転者が操作する運転操作部に、外部空間と隔離し、且つ前記運転操作部の内部に形成した内部空間と前記外部空間とを連通させる導入開口部を形成し、
前記内部空間に、前記気体に含まれるアルコールを採取するアルコール検出部を配置し、
前記アルコール検出部よりも下方に、前記導入開口部を配置したことを特徴とする飲酒運転防止装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運転者の皮膚から放出し、さらに運転者の体温によって温められて周囲の空気より比重が軽くなり、導入開口部から内部空間へ導入させて内部空間を上昇する気体を、アルコール検出部により採取することが可能となる。
このため、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールを、効率良く採取することが可能となり、アルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
(第一実施形態)
(構成)
図1は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えた車両Caの構成を示す図である。なお、図1中では、車室内において運転席Dsに着座した運転者Hが、路面上に停車している車両Caを発進させるための動作を行う状態を示している。
図1中に示すように、車両Caは、フロア上に配置したシフトチェンジ用のシフトレバー1を備える、オートマチックトランスミッション車両(AT車)である。したがって、シフトレバー1は、車両Caを発進させるために運転者Hが操作する、運転操作部となる。また、この車両は、フロア上に配置したシフトレバー1を備える車両(フロアシフト車)である。
【0010】
シフトレバー1は、シャフト部2と、把持部4とを備えている。
シャフト部2は、車室内のフロアから上方へ延在する棒状部材であり、車室内のフロアに対して、車両前後方向へ傾斜可能に配置してある。
把持部4は、シャフト部2の上方に固定してある。また、把持部4は、シフトレバー1の操作時において、図1中に示すように、運転者Hの手が上方から把持する部分である。
【0011】
図2は、図1中に円IIで囲んだ範囲の拡大図であり、把持部4の一部及び飲酒運転防止装置6の構成を示す図である。なお、図2中では、説明のために、把持部4及び飲酒運転防止装置6以外の図示を省略している。
図2中に示すように、把持部4は、シフトロック解除ボタン8を備えている。
シフトロック解除ボタン8は、外周面のうち車両前後方向前方側に配置してある。
また、シフトロック解除ボタン8は、ボタン取付け軸10を介して把持部4へ取り付けてある。ボタン取付け軸10は、把持部4を車幅方向に貫通して、シフトロック解除ボタン8を把持部4へ取り付けている。これにより、シフトロック解除ボタン8の動作方向を、ボタン取付け軸10の中心軸を回転中心とした回転方向としている。
【0012】
ところで、シフトレバー1のシフトポジションを、停車状態である「P(パーキング)」レンジから、走行状態となる「R(リバース)」レンジや「D(ドライブ)」レンジ等へ移動させる際には、シフトロック解除ボタン8を押す必要がある。したがって、車両の発進時には、シフトロック解除ボタン8を押さなければ、シフトレバー1を移動させることが不可能な構成となっている。すなわち、車両の発進時には、シフトロック解除ボタン8を押さなければ、シフトポジションを変化させることが不可能な構成となっている。
【0013】
以上により、シフトロック解除ボタン8は、シフトレバー1と同様、車両Caを発進させるために運転者Hが操作する、運転操作部となる。
把持部4の内部には、内部空間12を形成している。
内部空間12は、外部空間、すなわち、車室内の空間と隔離した中空部である。
また、内部空間12は、導入路14と、分岐路16と、下方延在路18とを備えている。
導入路14は、上方から下方へ向かうにつれて、把持部4の中心側から外周側へ向けて傾斜する中空部である。また、導入路14は、内部空間12のうち、後述するアルコール検出部20の近傍空間と、後述する導入開口部22とを連通させている。
本実施形態では、導入路14の下面を、アルコール検出部20から導入開口部22へ向かうにつれて、下方へ連続して傾斜する傾斜面としている。
【0014】
ここで、図3及び図4を参照して、導入路14の断面積について説明する。
図3は、図2のIII−III線断面図であり、図4は、図2のIV−IV線断面図である。なお、図3及び図4中では、説明のために導入路14以外の図示を省略している。
図3及び図4中に示すように、導入路14は、その断面積が、導入開口部22からアルコール検出部20へ向かうにつれて減少するように形成してある。
【0015】
以下、図2を参照した説明に戻る。
また、導入路14は、運転者Hによるシフトレバー1の操作状態に関わらず、常にアルコール検出部20よりも鉛直方向で下方となるように配置する。
ここで、図5から図7を参照して、導入路14の配置について説明する。
図5は、各シフトポジションにおけるシフトレバー1の移動状態を示す図である。
図5中に示すように、シフトレバー1のシフトポジションは、車両前後方向前方側から車両前後方向後方側へ向けて、「P」レンジ→「R」レンジ→「N(ニュートラル)」レンジ→「D」レンジと並ぶように設定している。また、各シフトポジションにおける、水平面に対するシフトレバー1の傾斜角度は、「N」レンジが最小であり、「P」レンジが最大である。
【0016】
図6は、シフトポジションが「N」レンジである状態において、水平面に対するシフトレバー1の傾斜状態を示す図である。また、図7は、シフトポジションが「P」レンジである状態において、水平面に対するシフトレバー1の傾斜状態を示す図である。なお、図6及び図7中では、説明のために、把持部4、シフトロック解除ボタン8、導入路14及びアルコール検出部20以外の図示を省略している。また、導入路14の図示を簡略化している。
【0017】
図6中に示すように、シフトポジションが「N」レンジである状態では、シフトレバー1は、水平面に対して垂直となる。この状態では、導入路14の中心とアルコール検出部20の中心とを通過する中心軸線CLは、水平面に対して角度θNで傾斜する。
一方、図7中に示すように、シフトポジションが「P」レンジである状態では、シフトレバー1は、水平面に対して車両前後方向前方側へ傾斜する。この状態では、導入路14の中心とアルコール検出部20の中心とを通過する中心軸線CLは、水平面に対して角度θPで傾斜する。
ここで、水平面に対する角度θPは、以下の式(1)から求める。
0<θP=θN−θP …(1)
【0018】
以下、図2を参照した説明に戻る。
分岐路16は、導入路14から分岐した中空部であり、導入路14と外部空間とを連通させている。
分岐路16の外部空間側に位置する分岐路開口部17は、後述する接触予測部位24のうち、導入開口部22と異なる位置、具体的には、把持部4の外周部のうち、導入開口部22よりも上方に形成する。
下方延在路18は、アルコール検出部20よりも導入開口部22から離れた位置に連続して下方に延在しており、内部空間12と外部空間とを連通させている。したがって、下方延在路18は、把持部4を下方へ貫通している。
【0019】
把持部4の外周面のうち、車両前後方向後方側に位置する外周面には、内部空間12と外部空間とを連通させる導入開口部22を形成している。
導入開口部22は、例えば、直径5mm程度の円状に形成してある。導入開口部22の形状は、シフトレバー1やシフトロック解除ボタン8の操作時に、導入開口部22が、運転者Hの皮膚によって完全に覆われる形状とする。
また、導入開口部22は、把持部4に形成してある。具体的には、把持部4の車両前後方向後方側に位置する外周面のうち、シフトレバー1やシフトロック解除ボタン8の操作時に、運転者Hの皮膚が接触すると予測した接触予測部位24に形成している。なお、接触予測部位24は、例えば、把持部4の上面や車両前後方向後方側の面である。
【0020】
なお、特に図示しないが、導入開口部22を、例えば、メッシュ構造の布や樹脂製のフィルム等、アルコール成分を透過可能な素材で形成した透過膜で覆ってもよい。この場合、例えば、透過膜の色を、シフトレバー1と同色とすることにより、運転者Hが、導入開口部22の存在を視認することが困難な構成としてもよい。
接触予測部位24のうち、導入開口部22を形成する位置は、シフトレバー1やシフトロック解除ボタン8を操作するために、運転者Hの皮膚が加圧すると予測した加圧方向と対向する、対向予測部位26とする。
【0021】
ここで、図8から図10を参照して、導入開口部22を形成する対向予測部位26の位置について説明する。
図8は、シフトポジションが「P」レンジである状態のシフトレバー1を示す図である。
図8中に示すように、シフトポジションが「P」レンジである状態では、車両Caを発進させるために、シフトポジションを「R」レンジや「D」レンジへ移動させる必要がある。このため、運転者Hが、シフトロック解除ボタン8を操作する必要があり、把持部4を把持した状態で、シフトロック解除ボタン8を車両前後方向後方側(図8中に符号「F」で示す方向)へ、例えば、指によって押すこととなる。
【0022】
このとき、運転者Hは、把持部4の外周面のうち、シフトロック解除ボタン8を配置した車両前後方向前方側と反対側の面、すなわち、車両前後方向後方側の面を、車両前後方向前方側(図8中に符号「FA」で示す方向)へ、掌によって押すこととなる。これにより、把持部4の外周面のうち車両前後方向後方側の面は、その一部が、シフトレバー1やシフトロック解除ボタン8を操作するために、運転者Hの皮膚が加圧すると予測した加圧方向と対向する、対向予測部位26となる。
【0023】
図9は、シフトポジションが「P」レンジである状態において、シフトロック解除ボタン8を操作する際に、運転者Hがシフトロック解除ボタン8を押す力の方向を示す図である。
図9中に示すように、対向予測部位26の範囲(図9中に「Fr」と示す範囲)は、運転者Hがシフトロック解除ボタン8を操作し始めてから操作し終わるまでに、運転者Hがシフトロック解除ボタン8を加圧する方向と対向する。
具体的には、対向予測部位26の下端は、運転者Hがシフトロック解除ボタン8を押し始める力の方向(図9中に示す「Fs」)と対向する方向(図9中に示す「FAs」)となる。また、対向予測部位26の上端は、シフトロック解除ボタン8を押し終わる力の方向(図9中に示す「Fe」)と対向する方向(図9中に示す「FAe」)となる。
【0024】
図10は、図9のX線矢視図である。
図10中に示すように、対向予測部位26の範囲は、把持部4の車両前後方向後方側の面のうち、車幅方向中央付近である。なお、図10中では、図9中と同様、対向予測部位26の範囲を、符号「Fr」と示している。
以下、図2を参照した説明に戻る。
導入開口部22の上方及び下方には、内部空間12から離れる方向へ突出する突出部28を形成している。
突出部28は、把持部4の車両前後方向後方側の外周面と導入開口部22とを連続しており、把持部4の車両前後方向後方側の外周面よりも車両前後方向後方へ突出している。
【0025】
飲酒運転防止装置6は、アルコール検出部20と、血中アルコール濃度算出部30と、比較判定部32と、吸引手段34とを備えている。
アルコール検出部20は、例えば、アルコール類・アルデヒド類を検知するアルコールセンサである。本実施形態では、アルコール検出部20を、有機半導体であるアントラセンを用いて形成したセンサとする。このセンサは、基板上に櫛歯状に形成した一対の電極を対向させて配置し、これらの電極をアントラセンの薄膜(アントラセン膜)で覆う構成である。
【0026】
アントラセン膜の表面にアルコールを含む気体(アルコール蒸気)が接触すると、アルコール蒸気がアントラセン膜の表面に化学吸着されて電荷授受を行い、電気抵抗が減少する。そして、アルコール検出部20は、電気抵抗の変化状態を含む情報信号を、血中アルコール濃度算出部30へ出力する。
これにより、一対の電極間に、例えば、車両に既存のバッテリーから供給する交流電圧を与えた状態で、電極間における電流値を計測すると、この電流値に応じて、アルコール蒸気を検知可能である。なお、直流ではなく交流の電圧を一対の電極間に印加するのは、分極現象の発生を防止するためである。また、上記のようにアントラセンを用いて形成したアルコールセンサは、エチルアルコール以外のアルコール類及びアルデヒド類を化学吸着しても、電気抵抗が減少する。
【0027】
なお、一般的に、単に「アルコール」と言えば、エチルアルコールを指す場合が多い。一方、科学的に、「アルコール」と言えば、COOH基を有するアルコール類全般を意味することが多い。本実施形態では、エチルアルコールを「アルコール」と略称して説明する。
以上により、アルコール検出部20は、運転者Hの皮膚から放出した気体に含まれる、アルコールを採取する機能を有する。アルコールは、飲酒運転の要因となる物質、すなわち、飲酒運転要因物質である。なお、本実施形態では、上記のように、アルコール検出部20をアルコールセンサとした場合について説明する。
【0028】
また、アルコール検出部20を配置する位置は、内部空間12において、導入開口部22よりも上方とする。すなわち、導入開口部22は、アルコール検出部20よりも下方に配置してある。
血中アルコール濃度算出部30は、アルコール検出部20が出力した情報信号に基づいて、アントラセン膜の表面に接触したアルコール蒸気に含まれるアルコールを検出し、運転者Hの血中アルコール濃度を算出する。そして、この算出した血中アルコール濃度を含む情報信号を、比較判定部32へ出力する。
【0029】
比較判定部32は、血中アルコール濃度算出部30が出力した情報信号に基づいて、運転者Hの血中アルコール濃度と所定値とを比較する。
血中アルコール濃度との比較に用いる所定値は、例えば、道路交通法に基づき、呼気中に含まれているアルコールと血中アルコール濃度が対応する値とする。本実施形態では、血中アルコール濃度との比較に用いる所定値を、呼気1リットル中にアルコールが0.15mg以上含まれている場合に対応する、血中アルコール濃度の値とする。また、血中アルコール濃度との比較に用いる所定値は、導入路14の形状に応じた値とする。
【0030】
なお、血中アルコール濃度との比較に用いる所定値は、例えば、所定値の調整に必要なパスワード等を設定することにより、運転者自身が設定を調整することが不可能な構成とすることが好適である。
運転者Hの血中アルコール濃度と所定値とを比較した比較判定部32は、その判定結果に基づいて、車両に既存のトランスミッション等に、車両の駆動状態を制御する制御信号を出力する。
【0031】
具体的には、運転者Hの血中アルコール濃度が所定値未満であると判定すると、運転者Hに対して警報を発する制御信号、及び車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号を出力しない。この状態では、車両は、運転者Hによる通常の走行を行うことが可能である。
一方、運転者Hの血中アルコール濃度が所定値以上であると判定すると、運転者Hに対して警報を発する制御信号と、車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号とを出力する。
【0032】
運転者Hに対して警報を発する制御信号としては、例えば、車両に既存のスピーカーから、音声や警報音等を発声させる制御信号を用いる。また、スピーカーから音声や警報音等を発声させる際には、カーナビゲーションシステム等を用いてもよい。なお、本実施形態では、運転者Hに対して警報を発する制御信号として、車両のスピーカーから音声及び警報音を発声する信号を用いる。
【0033】
車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号としては、例えば、トランスミッションを、中立位置(「N」レンジ)から動かないようにロックして、エンジンから車輪に至る、駆動力の伝達系統を遮断する制御信号を用いる。また、これ以外の制御信号としては、例えば、ステアリングホイール等、操舵に関する機構部分の作動を防止する制御信号や、燃料ノズル等、燃料系統の機器によるエンジンへの燃料送給を遮断する制御信号等を用いる。したがって、車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号を出力した状態では、車両が走行不能となる。なお、本実施形態では、車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号を出力する制御信号として、トランスミッションを制御して、シフトポジションを「P」レンジの位置にロックする信号を用いる。
【0034】
吸引手段34は、例えば、ポンプ等の吸引装置であり、内部空間12の気体を、下方延在路18を介して吸引する。吸引手段34の吸引口は、内部空間12のうちアルコール検出部20よりも導入開口部22から離れた位置に配置する。
吸引手段34による吸引は、例えば、イグニッションスイッチの操作等により、駆動輪の駆動源となるエンジンを始動させた後、所定時間(数秒)毎に行う。また、吸引手段34による吸引は、例えば、一定の流速で行う。
【0035】
(動作)
次に、図1から図10を参照しつつ、図11を用いて、飲酒運転防止装置6の動作について説明する。
図11は、飲酒運転防止装置6の動作を示すフローチャートである。
図11のフローチャートは、路面上に停車している車両Caに乗車し、運転席に着座した運転者Hが、車両Caを発進させるための動作を行う状態からスタートする。この状態では、シフトポジションは「P」レンジである。
運転席に着座した運転者Hは、車両Caを発進させるための動作として、まず、イグニッションスイッチの操作(図11中に示す「IGNオン」)等により、駆動輪の駆動源となるエンジンを始動させる(ステップS10)。なお、駆動輪の駆動源は、上記のエンジンに限定されるものではなく、例えば、交流モータであってもよい。
【0036】
エンジンを始動させた運転者Hは、シフトポジションを「P」レンジから「D」レンジへと移動させるために、把持部4を把持した状態でシフトロック解除ボタン8を操作する。
このとき、運転者Hの掌は、対向予測部位26を加圧して、導入開口部22の上方及び下方に形成した突出部28を加圧する。このため、突出部28が運転者Hの掌と密着するとともに、運転者Hの掌が導入開口部22を閉塞する。これにより、導入開口部22と運転者Hの掌との間に形成される隙間は微小なものとなり、運転者Hの掌から放出した気体は、車室内の空間への蒸散が抑制され、その大部分が導入開口部22へ移動する。
【0037】
運転者Hの掌から放出し、導入開口部22へ移動した気体は、運転者Hの体温によって昇温し、その比重が、内部空間12の空気よりも軽くなる。このため、導入開口部22へ移動した気体は、導入路14内を上昇する。導入路14内を上昇する気体は、導入路14及び分岐路16へ移動するが、吸引手段34が内部空間12の気体を吸入しているため、その大部分が、導入路14内を上昇しながら、内部空間12におけるアルコール検出部20を配置した位置へ移動する。
【0038】
また、分岐路16の外部空間側に位置する分岐路開口部17は、運転者Hの掌が閉塞しているため、運転者Hの掌から放出し、分岐路16へ移動した気体が車室内へ移動することは防止される。
運転者Hの掌から放出した気体が、内部空間12におけるアルコール検出部20を配置した位置へ移動すると、アルコール検出部20は、電気抵抗の変化状態を含む情報信号を、血中アルコール濃度算出部30へ出力する。
【0039】
電気抵抗の変化状態を含む情報信号を受信した血中アルコール濃度算出部30は、受信した情報信号に基づいて、運転者Hの血中アルコール濃度を算出する。そして、この算出した血中アルコール濃度を含む情報信号を、比較判定部32へ出力する。
血中アルコール濃度を含む情報信号を受信した比較判定部32は、血中アルコール濃度算出部30が出力した情報信号に基づいて、運転者Hの血中アルコール濃度と所定値とを比較(図11中に示す「近接センサがアルコールを検知したか」)する(ステップS20)。
【0040】
運転者Hの血中アルコール濃度が所定値以上である場合(図11中に示す「Yes」)、比較判定部32は、運転者Hに対して警報を発する制御信号と、車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号とを出力する。
比較判定部32が、運転者Hに対して警報を発する制御信号を出力すると、車両のスピーカーから音声及び警報音を発声(図11中に示す「警報」)する。これにより、運転者Hに対して、運転者H自身の状態が車両の運転に不適切な状態である事を警告する(ステップS30)。
【0041】
さらに、比較判定部32が車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号を出力すると、トランスミッションを制御して、シフトポジションを「P」レンジの位置にロックする(図11中に示す「車両制御(シフトロック)」)。これにより、エンジンから車輪への駆動力の伝達を遮断するとともに、駆動輪の回転を防止して、車両の状態を、走行不能な状態に制御する(ステップS40)。
【0042】
以下、上記の動作により走行不能な状態に制御した車両を、上記の運転者と異なる運転者が走行させる場合について説明する。
血中アルコール濃度が所定値以上である運転者Hが車両から降りる際には、この運転者Hは、把持部4を把持している手を離す。なお、以下の説明では、血中アルコール濃度が所定値以上である運転者Hを、「運転者Ha」と記載する。
このとき、内部空間12に存在する昇温した気体、すなわち、アルコールを含んだ気体は、温度が低下する。そして、アルコールを含んだ気体の温度は、常温、すなわち、車室内の空気と同じ温度に近づく。
【0043】
ここで、アルコールを含んだ気体の比重は、通常の空気(車室内の空気)に対して、約1.6倍の比重となっている。このため、内部空間12に存在する気体が常温となると、この常温となった気体を、内部空間12を下降させて、導入開口部22から車室内へ排出することとなる。
このとき、導入路14の下面を、アルコール検出部20から導入開口部22へ向かうにつれて下方へ連続して傾斜する傾斜面としている。このため、常温となった気体に含まれるアルコールを、円滑に導入開口部22から車室内へ排出することとなる。
【0044】
また、運転者Haの手が把持部4から離れると、分岐路16の外部空間側に位置する分岐路開口部17を開放することとなるため、この開放した分岐路開口部17から、分岐路16内に車室内の空気が流入する。これにより、分岐路16及び導入路14内に存在している車室内の空気よりも比重の軽い気体を、外気により下方へ押し出すこととなり、導入開口部22から車室内へ排出することとなる。
さらに、吸引手段34が、内部空間12の気体を、下方延在路18を介して吸引するため、内部空間12に存在する常温となった気体を、下方延在路18を介して内部空間12外へ排出することとなる。
【0045】
以上により、血中アルコール濃度が所定値以上である運転者Haが把持部4から手を離すと、内部空間12に存在していたアルコールを含む気体を、全て、内部空間12外へ排出することとなる。
血中アルコール濃度が所定値以上である運転者Haが運転席から離れた後、この運転者と異なる運転者Hが運転席に着座し、把持部4を把持すると、上記と同様の動作により、比較判定部32が、運転者の血中アルコール濃度と所定値とを比較する。なお、以下の説明では、血中アルコール濃度が所定値以上である運転者Haと異なる運転者Hを、「運転者Hb」と記載する。
【0046】
この状態では、内部空間12に存在していたアルコールを含む気体は、全て、内部空間12外へ移動しているため、交代した運転者Hbの血中アルコール濃度は、血中アルコール濃度が所定値以上である運転者Haに対する判定結果に影響されない。
そして、運転者Hbの血中アルコール濃度が所定値未満である場合(図11中に示す「No」)、比較判定部32は、運転者Hbに対して警報を発する制御信号と、車両の駆動状態を走行不能状態に制御する制御信号とを出力しない。すなわち、車両を走行可能な状態に制御する。
【0047】
このため、運転者Hbによるシフトレバー1の操作が可能となる(図11中に示す「エンド」)。したがって、血中アルコール濃度が所定値未満である運転者Hbにより、車両を走行状態とすることが可能となる。
なお、上述したように、本実施形態の飲酒運転防止装置の動作で実施する飲酒運転要因物質採取方法は、アルコール検出部20により、運転者Hの皮膚から放出した気体に含まれるアルコールを採取する方法である。また、上記のアルコール検出部20は、内部空間12において、導入開口部22よりも上方に配置する。
【0048】
(第一実施形態の効果)
(1)本実施形態の飲酒運転防止装置では、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールを採取するアルコール検出部を、把持部の内部に形成した内部空間に配置している。また、導入開口部を、アルコール検出部よりも下方に配置している。
このため、運転者の皮膚から放出し、さらに運転者の体温によって温められて周囲の空気より比重が軽くなり、導入開口部から内部空間へ導入させて内部空間を上昇する気体を、アルコール検出部により採取することが可能となる。
【0049】
また、アルコール検出部を、把持部の内部に形成した内部空間において、導入開口部よりも下方に配置した場合と比較して、運転者の皮膚から放出した気体を大量に採取することが可能となる。
その結果、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となり、運転者の血中アルコール濃度の検出精度を向上させることが可能となるため、飲酒運転を防止することが可能となる。
【0050】
(2)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間が、アルコール検出部の近傍空間と導入開口部とを連通させる導入路を備えている。また、導入路の下面を、アルコール検出部から導入開口部へ向かうにつれて、下方へ連続して傾斜する傾斜面としている。
このため、運転者の皮膚から放出し、導入開口部から内部空間に導入した気体を、確実にアルコール検出部へ導くことが可能となる。
また、常温となった気体に含まれるアルコールを、円滑に導入開口部から車室内へ排出することとなり、導入路内に存在している気体を、導入路の外部へ確実に排出することが可能となる。
その結果、導入路内の気体を、アルコールの検出に適した状態とすることが可能となり、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【0051】
(3)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入路の断面積を、導入開口部からアルコール検出部へ向かうにつれて減少させている。
このため、導入路のうちアルコール検出部の近傍空間における断面積を、導入開口部の開口面積以上とした場合と比較して、運転者の皮膚から放出した気体を、内部空間へ大量に導入することが可能となる。また、導入路のうちアルコール検出部の近傍空間における、気体の濃度が低下することを抑制可能となる。
その結果、アルコール検出部が採取する気体の量を増加させることが可能となり、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【0052】
(4)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入路全体を、運転者によるシフトレバーの操作状態に関わらず、常にアルコール検出部よりも鉛直方向で下方となるように配置している。
このため、運転者がシフトレバーを操作しており、シフトポジションが「P」レンジ等の停車状態だけでなく、「D」レンジ等の走行状態である場合であっても、導入路内に、運転者の皮膚から放出した気体を確実に導入することが可能となる。
また、運転者が把持部から手を離した際に、導入路内に存在している気体を、導入路の外部へ確実に排出することが可能となる。
【0053】
その結果、車両が停車状態から走行状態へと移行した後であっても、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールを検出することが可能となる。
これにより、例えば、走行状態の車中において運転者が飲酒した場合であっても、危険運手を防止、または抑制することが可能となる。
具体的には、ブレーキ等の操作により、一時的に停車状態となっている場合に、運転者から所定値以上の血中アルコール濃度が検出されると、シフトポジションを「P」レンジ等の停車状態にロックする制御を行う。
【0054】
また、車両が走行状態となっている場合に、運転者から所定値以上の血中アルコール濃度を検出すると、エンジンへの燃料供給量を減少させる等、車両を減速させる制御を行う。そして、最終的には停車させた後、シフトポジションを停車状態にロックする制御を行う。これは、走行状態にある車両を急停車させると、追突等の二次事故を発生させる可能性があるためである。
【0055】
(5)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部を、把持部の外周面のうち、シフトレバーの操作時に運転者の掌が接触すると予測した接触予測部位に形成している。
このため、シフトレバーの操作時にシフトレバーを操作する運転者の掌が導入開口部を閉塞することとなる。
その結果、アルコール検出部が採取する気体の量を増加させることが可能となり、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【0056】
(6)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間が、導入路から分岐して導入路と外部空間とを連通させる分岐路を備えている。また、分岐路の外部空間側に位置する分岐路開口部を、導入開口部よりも上方に形成している。
このため、分岐路の外部空間側に位置する開口部から分岐路内へ流入する空気により、分岐路及び導入路内に存在している比重の軽い気体を、外気により下方へ押し出して、導入開口部から外部空間へ排出することが可能となる。
その結果、導入路内の気体を、アルコールの検出に適した状態とすることが可能となり、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【0057】
(7)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部を、接触予測部位のうち、シフトロック解除ボタンを操作するために運転者の皮膚が加圧すると予測した加圧方向と対向する、対向予測部位に形成している。
このため、運転者の皮膚との接触面積が大きい対向予測部位に導入開口部を形成することとなる。これにより、シフトロック解除ボタンの操作時に、運転者の皮膚とシフトロック解除ボタンとの接触面積が小さい場合であっても、運転者の皮膚から放出した気体を、確実に採取することが可能となる。
【0058】
また、対向予測部位は、シフトロック解除ボタンの操作時に、運転者が無意識に加圧する場所であるため、運転者は、自身の血中アルコール濃度を検出するために、車両の操作から独立した動作を行う必要がない。
その結果、運転者へ精神的・肉体的負荷を与えることなく、運転者の血中アルコール濃度を検出することが可能となる。また、運転者が、自身の血中アルコール濃度が検出されることを、意図的に回避することを抑制可能となる。
【0059】
(8)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間が、アルコール検出部よりも導入開口部から離れた位置に連続して下方に延在し、内部空間と外部空間とを連通させる下方延在路を備えている。
このため、内部空間のうちアルコール検出部よりも導入開口部から離れた位置に存在している気体を、外部空間へ排出することが可能となる。
その結果、導入路内の気体を、アルコールの検出に適した状態とすることが可能となり、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【0060】
(9)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間の気体を吸引する吸引手段を備えている。また、吸引手段の吸引口を、内部空間のうちアルコール検出部よりも導入開口部から離れた位置に配置している。
このため、運転者の皮膚から放出した気体を、内部空間へ強制的に導入することが可能となる。また、内部空間に存在している気体を、強制的に内部空間外へ排出することが可能となる。
その結果、導入路内の気体を、アルコールの検出に適した状態とすることが可能となり、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【0061】
(10)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部の上方及び下方に、内部空間から離れる方向へ突出する突出部を形成している。
このため、シフトロック解除ボタンの操作時に、突出部が運転者の掌と密着するとともに、運転者の掌が導入開口部を閉塞することとなり、導入開口部と運転者の掌との間に形成される隙間が微小なものとなる。
その結果、運転者の掌から放出した気体は、車室内の空間への蒸散が抑制され、その大部分が導入開口部へ移動するため、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
また、シフトレバーやシフトロック解除ボタンの操作時に、突出部が滑り止めとして機能するため、シフトレバーやシフトロック解除ボタンの操作性を向上させることが可能となる。
【0062】
(11)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、運転操作部を、車両が備えるシフトレバーとしている。また、導入開口部を、シフトレバーのうち運転者の手が把持する把持部に形成している。
このため、運転者が車両を発進されるために必要な動作を行うことにより、運転者の血中アルコール濃度を検出することとなる。これにより、運転者は、自身の血中アルコール濃度を検出するために、車両の操作から独立した動作を行う必要がない。
その結果、運転者へ精神的・肉体的負荷を与えることなく、運転者の血中アルコール濃度を検出することが可能となる。また、運転者が、自身の血中アルコール濃度が検出されることを、意図的に回避することを抑制可能となる。
【0063】
(応用例)
(1)なお、本実施形態の飲酒運転防止装置では、飲酒運転防止装置を車両に備えた場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、飲酒運転防止装置を、例えば、鉄道、船舶、航空機、工業機械、医療器械等、運転者が運転する車両以外の機械に備えてもよい。
この場合、船舶に飲酒運転防止装置を備える場合には、舵取り装置の内部に内部空間を形成し、この内部空間にアルコール検出部を配置する等、飲酒運転防止装置を備える対象に応じて、飲酒運転防止装置の構成を変化させることが好適である。
【0064】
(2)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間の構成を、導入路を備えた構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図12中に示すように、内部空間12の構成を、導入路を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、内部空間の構成を、導入路を備えた構成することが、運転者の皮膚から放出し、導入開口部から内部空間に導入した気体を、確実にアルコール検出部へ導くことが可能となるため、好適である。なお、図12は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【0065】
(3)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入路の断面積を、導入開口部からアルコール検出部へ向かうにつれて減少させたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図13中に示すように、導入路14全体の断面積を、導入開口部22の開口面積と等しくしてもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、導入路の断面積を、導入開口部からアルコール検出部へ向かうにつれて減少させることが、アルコール検出部が採取する気体の量を増加させることが可能となるため、好適である。なお、図13は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【0066】
(4)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入路の断面積を、導入開口部からアルコール検出部へ向かうにつれて減少させたが、これに限定されるものではない。すなわち、導入路の断面積を、導入開口部からアルコール検出部へ向かうにつれて増加させてもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、導入路の断面積を、導入開口部からアルコール検出部へ向かうにつれて減少させることが、アルコール検出部が採取する気体の量を増加させることが可能となるため、好適である。
【0067】
(5)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入路全体を、運転者によるシフトレバーの操作状態に関わらず、アルコール検出部よりも鉛直方向で下方となるように配置しているが、これに限定されるものではない。すなわち、導入路の一部を、運転者によるシフトレバーの操作状態に関わらず、アルコール検出部よりも鉛直方向で上方となるように配置してもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、導入路全体を、運転者によるシフトレバーの操作状態に関わらず、アルコール検出部よりも鉛直方向で下方に配置することが、運転者の皮膚から放出した気体を確実に導入することが可能となるため、好適である。また、運転者が把持部から手を離した際に、導入路内に存在している気体を、導入路の外部へ確実に排出することが可能となるため、好適である。
【0068】
(6)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間の構成を、分岐路を備えた構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図14中に示すように、内部空間12の構成を、分岐路を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、内部空間の構成を、分岐路を備えた構成とすることが、導入路内に存在している比重の軽い気体を、外気により下方へ押し出して、導入開口部から外部空間へ排出することが可能となるため、好適である。なお、図14は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【0069】
(7)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間の構成を、下方延在路を備えた構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図15中に示すように、内部空間12の構成を、下方延在路を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、内部空間の構成を、下方延在路を備えた構成とすることが、内部空間のうちアルコール検出部よりも導入開口部から離れた位置に存在している気体を、外部空間へ排出することが可能となるため、好適である。なお、図15は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【0070】
(8)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間の気体を吸引する吸引手段を備えた構成としているが、これに限定されるものではなく、吸引手段を備えていない構成としてもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、吸引手段を備えた構成とすることが、運転者の皮膚から放出した気体を、内部空間へ強制的に導入することが可能となるため、好適である。また、内部空間に存在している気体を、強制的に内部空間外へ排出することが可能となるため、好適である。
なお、吸引手段を備えていない構成とした場合、下方延在路の外部空間側の部分は、例えば、車両の外部、すなわち、車室の外部へ開放してもよく、また、車両に既存のエアコンが備える外気排出部に接続してもよい。
【0071】
(9)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部の上方及び下方に、内部空間から離れる方向へ突出する突出部を形成しているが、これに限定されるものではなく、導入開口部の上方のみに突出部を形成してもよい。また、導入開口部の周囲に、全周に亘って突出部を形成してもよい。要は、導入開口部の周囲のうち、少なくとも導入開口部の上方に、突出部を形成すればよい。
【0072】
(10)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部の周囲に突出部を形成しているが、これに限定されるものではなく、例えば、図12から15中に示すように、導入開口部22の周囲に突出部を形成しなくともよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、導入開口部の周囲に突出部を形成することが、シフトロック解除ボタンの操作時に導入開口部と運転者の掌との間に形成される隙間が微小なものとなるため、好適である。
【0073】
(11)また、本実施形態の飲酒運転防止装置では、シフトレバーの内部に内部空間を形成し、この内部空間に飲酒運転防止装置を形成するアルコール検出部を配置した場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図16に示すように、サイドブレーキ36が備えるレバー部38の内部に内部空間(図示せず)を形成し、この内部空間に飲酒運転防止装置を形成するアルコール検出部(図示せず)を配置してもよい。なお、図16は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
このように、レバー部38の内部に形成した内部空間にアルコール検出部を配置する構成とした場合は、レバー部38の外周面のうち、下方に配置した面に導入開口部22を形成する。
【0074】
以下、レバー部38の外周面のうち、下方に配置した面に導入開口部22を形成する理由について説明する。
サイドブレーキ36を解除する動作を行う際には、運転者の手が、リリースボタン40をレバー部38の内部へ押し込んだ状態で、レバー部38を、図16中に示す回転中心を中心として下方(図中に示す「操作方向」)へ移動させる必要がある。これにより、レバー部38の外周面のうち下方に配置した面が、レバー部38を操作するために、運転者の皮膚が加圧すると予測した加圧方向と対向する、対向予測部位26となる。
【0075】
以上により、レバー部38の外周面のうち、下方に配置した面に導入開口部22を形成すると、サイドブレーキ36の解除動作を行う際に、運転者の皮膚が導入開口部22を加圧するとともに閉塞することとなる。
なお、アルコール検出部を配置するための内部空間を形成する対象を、本実施形態のシフトレバーや上述したサイドブレーキ以外に、例えば、ステアリングホイールやウインカースイッチとしてもよい。
【0076】
(第二実施形態)
(構成)
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
図17は、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。なお、図17は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図である。
図17中に示すように、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成は、内部空間12の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。なお、図17中では、説明のために、飲酒運転防止装置のうち、アルコール検出部20のみを図示している。
内部空間12は、導入路14を備えている。
内部空間12は、外部空間と隔離した中空部である。
導入路14は、二箇所の変曲点42a,42bを有する中空部である。
また、導入路14は、内部空間12のうち、アルコール検出部20の近傍空間と導入開口部22とを連通させている。
【0077】
変曲点42aは、導入路14のうち、変曲点42bよりも導入開口部22から離れた位置に配置してあり、変曲点42bよりも上方に配置してある。導入路14のうち、アルコール検出部20の近傍空間と変曲点42aとの間は、上方から下方へ向かうにつれて、シフトレバー1の中心側から、シフトレバー1の車両前後方向後方側に位置する外周面へ向けて傾斜させてある。
変曲点42bは、導入路14のうち、変曲点42aと導入開口部22との間に配置してあり、変曲点42aよりも下方に配置してある。導入路14のうち、変曲点42bと導入開口部22の近傍空間との間は、上方から下方へ向かうにつれて、シフトレバー1の中心側から、シフトレバー1の車両前後方向後方側に位置する外周面へ向けて傾斜させてある。
【0078】
また、導入路14のうち、変曲点42aと変曲点42bとの間は、上下方向に延在させてあり、アルコール検出部20の近傍空間と変曲点42aとの間及び変曲点42bと導入開口部22の近傍空間との間に対して傾斜させてある。
把持部4の外周面には、上述した第一実施形態と異なり、突出部を形成していない。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0079】
(動作)
次に、図17を参照しつつ、飲酒運転防止装置の動作について説明する。なお、以下の説明では、内部空間12、特に導入路14以外の構成については、上述した第一実施形態と同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
路面上に停車している車両に乗車し、運転席に着座した運転者が、車両を発進させるための動作を行う際には、エンジンを始動させた後、把持部4を把持した状態でシフトロック解除ボタン8を操作する。
このとき、運転者の掌は、対向予測部位26を加圧して導入開口部22を閉塞し、運転者の掌から放出した気体は、車室内の空間への蒸散が抑制され、その大部分が導入開口部22へ移動する。
【0080】
導入開口部22へ移動した、運転者の掌から放出した気体は、運転者の体温によって昇温し、その比重が、内部空間12の空気よりも軽くなるため、導入路14内を上昇する。
このとき、導入路14内を上昇する気体は、まず、変曲点42bを通過して進行方向を変える。具体的には、下方から上方へ向かうにつれて、シフトレバー1の車両前後方向後方側から、シフトレバー1の中心側へ向けて移動する方向から、この方向に対して傾斜し、鉛直方向の下方から上昇する方向へ移動する。
【0081】
変曲点42bを通過して進行方向を変えた気体は、導入路14内における上昇を継続し、変曲点42aを通過して進行方向を変える。具体的には、鉛直方向の下方から上昇する方向から、この方向に対して傾斜し、下方から上方へ向かうにつれて、シフトレバー1の車両前後方向後方側から、シフトレバー1の中心側へ向けて移動する方向へ移動する。
そして、変曲点42aを通過して進行方向を変えた気体は、内部空間12におけるアルコール検出部20を配置した位置へ向けて移動する。
【0082】
運転者の掌から放出した気体が、内部空間12におけるアルコール検出部20を配置した位置へ移動すると、アルコール検出部20は、電気抵抗の変化状態を含む情報信号を、血中アルコール濃度算出部へ出力する。
電気抵抗の変化状態を含む情報信号を受信した血中アルコール濃度算出部と、血中アルコール濃度を含む情報信号を受信した比較判定部の動作は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0083】
(第二実施形態の効果)
(1)本実施形態の飲酒運転防止装置では、内部空間が備える導入路が、二個所の変曲点を有するため、導入開口部から導入路内に導入した気体に塵等の異物が混入していても、この異物の移動を、変曲点によって抑制することが可能となる。
その結果、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となり、運転者の血中アルコール濃度の検出精度を向上させることが可能となるため、飲酒運転を防止することが可能となる。
(応用例)
(1)なお、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入路が二箇所の変曲点を有する構成について説明したが、これに限定されるものではなく、導入路が一箇所または三箇所以上の変曲点を有する構成としてもよい。要は、導入路が一または複数箇所の変曲点を有する構成とすればよい。
【0084】
(第三実施形態)
(構成)
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
図18は、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図であり、図18(a)は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1を示す図、図18(b)は、図18(a)のB線矢視図である。なお、図18(b)中では、説明のために、シフトレバー1のうち、把持部4のみを図示している。
図18中に示すように、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成は、把持部4の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。
【0085】
シフトレバー1は、外周面のうち側方、具体的には助手席側の面に配置した、シフトロック解除ボタン8を備えている。
シフトロック解除ボタン8は、把持部4の内部に配置したスプリング(図示せず)を介して、把持部4へ取り付けてある。このスプリングは、伸縮方向を車幅方向としている。これにより、シフトロック解除ボタン8の動作方向を、車幅方向としている。
【0086】
把持部4の外周面のうち、車両前後方向前方側に位置する外周面には、内部空間(図示せず)と外部空間とを連通させる導入開口部22を形成している。
導入開口部22は、把持部4の車両前後方向前方側に位置する外周面のうち、シフトレバー1の操作時に、運転者の皮膚が接触すると予測した接触予測部位24に形成している。
また、接触予測部位24のうち、導入開口部22を形成する位置を、シフトレバー1を操作するために、運転者の皮膚が加圧すると予測する加圧予測部位44とする。
【0087】
ここで、加圧予測部位44の位置について説明する。
図18(a)中に示すように、シフトポジションが「P」レンジである状態では、車両を発進させるために、シフトポジションを「D」レンジへ移動させる必要がある。このため、運転者が、把持部4を把持しながらシフトロック解除ボタン8を操作した状態で、シフトレバー1を、車両前後方向前方側から車両前後方向後方側(図18(a)中に符号「F」で示す方向)へ引き寄せることとなる。
【0088】
このとき、運転者は、把持部4の外周面のうち、シフトレバー1を引き寄せるために加圧する面、すなわち、車両前後方向前方側の面を、車両前後方向後方側へ、指の腹や掌によって押すこととなる。これにより、把持部4の外周面のうち、車両前後方向前方側の面は、その一部を、シフトレバー1を操作するために、運転者の皮膚が加圧すると予測する加圧予測部位44とする。
【0089】
図18(b)中に示すように、加圧予測部位44の範囲は、把持部4の車両前後方向前方側の面のうち、車幅方向中央付近である。なお、図18(b)中では、加圧予測部位44の範囲を、符号「Fp」と示している。また、加圧予測部位44の上端部を「FpA」と示し、加圧予測部位44の下端部を「FpB」と示している。
加圧予測部位44の上端部FpAは、運転者がシフトレバー1を引き寄せるために加圧する面のうち、運転者が接触する部分の中心となると予測する部位である。これにより、加圧予測部位44の上端部FpAに導入開口部22を形成すると、シフトレバー1を操作する運転者の皮膚が、導入開口部22を閉塞すると予測する。
【0090】
したがって、本実施形態では、導入開口部22を形成する位置を、加圧予測部位44の上端部FpAとする。
また、加圧予測部位44の下端部FpBは、例えば、女性等の手が小さい運転者がシフトレバー1を引き寄せるために加圧する面のうち、運転者が接触する部分の中心となると予測する部位である。
また、把持部4の外周面には、上述した第一実施形態と異なり、突出部を形成していない。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0091】
(動作)
次に、図18を参照しつつ、飲酒運転防止装置の動作について説明する。なお、以下の説明では、把持部4、特に導入開口部22以外の構成については、上述した第一実施形態とほぼ同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
路面上に停車している車両に乗車し、運転席に着座した運転者が、車両を発進させるための動作を行う際には、エンジンを始動させた後、把持部4を把持した状態でシフトロック解除ボタン8を操作する。
シフトロック解除ボタン8を操作した運転者は、シフトロック解除ボタン8を操作した状態を保持しながら、シフトレバー1を車両前後方向前方側から車両前後方向後方側へ引き寄せる。
【0092】
このとき、運転者の皮膚は、加圧予測部位44を加圧しながら導入開口部22を閉塞するため、運転者の皮膚から放出した気体は、車室内の空間への蒸散が抑制され、その大部分が導入開口部22へ移動する。
導入開口部22へ移動した、運転者の掌から放出した気体は、運転者の体温によって昇温し、その比重が、内部空間の空気よりも軽くなるため、導入路内を上昇する。
運転者の掌から放出した気体が、内部空間におけるアルコール検出部を配置した位置へ移動すると、アルコール検出部は、電気抵抗の変化状態を含む情報信号を、血中アルコール濃度算出部へ出力する。
電気抵抗の変化状態を含む情報信号を受信した血中アルコール濃度算出部と、血中アルコール濃度を含む情報信号を受信した比較判定部の動作は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
(第三実施形態の効果)
(1)本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部を、接触予測部位のうち、シフトレバーを操作するために運転者の皮膚が加圧すると予測する、加圧予測部位に形成している。
このため、シフトレバーの操作時に、運転者の皮膚とシフトレバーボタンとの接触面積が小さい場合であっても、運転者の皮膚から放出した気体を、確実に採取することが可能となる。
また、加圧予測部位は、シフトレバーの操作時に、運転者が無意識に加圧する場所であるため、運転者は、自身の血中アルコール濃度を検出するために、車両の操作から独立した動作を行う必要がない。
その結果、運転者へ精神的・肉体的負荷を与えることなく、運転者の血中アルコール濃度を検出することが可能となる。また、運転者が、自身の血中アルコール濃度が検出されることを、意図的に回避することを抑制可能となる。
【0094】
(応用例)
(1)なお、本実施形態の飲酒運転防止装置では、フロアシフト車が備えるシフトレバーに飲酒運転防止装置を備えた構成としたが、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図19に示すように、ステアリングコラム(図示せず)に取り付けたシフトレバー1を備える車両(コラムシフト車)が備えるシフトレバー1に飲酒運転防止装置を備えた構成としてもよい。なお、図19は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図であり、図19(a)は、コラムシフト車が備えるシフトレバー1の上面図、図19(b)は、図19(a)のB線矢視図である。
【0095】
コラムシフト車が備えるシフトレバー1に飲酒運転防止装置を備える際には、導入開口部22を、シフトレバー1の外周面のうち、車両前後歩行前方側に位置する外周面に形成する。なお、図19(b)中に示すように、この変形例では、複数個所の導入開口部22を形成する。これは、シフトレバー1の外周面のうち、車両前後歩行前方側に位置する外周面は、運転者を含む車両の乗員から見えにくい面であるため、デザイン面の制限が少ないためである。
【0096】
以下、図19を参照しつつ、図20を用いて、シフトレバー1の外周面のうち、車両前後歩行前方側に位置する外周面に導入開口部22を形成する理由について説明する。
図20は、コラムシフト車が備えるシフトレバー1のシフトポジションと、各シフトポジション間の移動に伴う動作(図中に示す「シフトゲートパターン」)を示す図である。
図20中に示すように、コラムシフト車が備えるシフトレバー1は、シフトポジションが「P」レンジである状態から、シフトポジションを「D」レンジへ移動させる際に、車両前後方向後方側(図20中に符号「F」で示す方向)へ引き寄せる必要がある。
【0097】
したがって、シフトレバー1の外周面のうち、車両前後歩行前方側に位置する外周面を、シフトレバー1を操作するために、運転者の皮膚が加圧すると予測する加圧予測部位44とする。
また、変形例としては、コラムシフト車が備えるシフトレバーに飲酒運転防止装置を備えた構成以外に、例えば、図21に示すように、エンジン始動用のエンジンスタートボタン46に備えた構成がある。なお、図21は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【0098】
エンジンスタートボタン46は、停止状態のエンジンを始動させる際に操作するボタンである。すなわち、車両を走行状態とするために、運転者が操作する必要がある運転操作部である。
エンジンスタートボタン46に飲酒運転防止装置を備える際には、導入開口部22を、エンジンスタートボタン46のうち、運転者が押圧(加圧)する面の中心に形成する。これは、エンジンスタートボタン46を操作する運転者は、その指により、エンジンスタートボタン46の中央及びその周辺を加圧すると予測するためである。なお、図21中に示す符号Fは、運転者がエンジンスタートボタン46を押圧する押圧方向を示す矢印である。
【0099】
したがって、エンジンスタートボタン46のうち、運転者が加圧する面の中心及びその周辺を、運転者の皮膚が加圧すると予測する加圧予測部位44とする。
さらに、変形例としては、例えば、図22に示すように、エンジン始動用のエンジンスタートノブ48に備えた構成がある。なお、図22は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図であり、図22(a)は、エンジンスタートノブ48の斜視図、図22(b)は、図22(a)のB線矢視図である。また、図22(a),(b)中に記載した矢印Rは、エンジンの始動時に、運転者がエンジンスタートノブ48を回転させる回転方向を示している。
【0100】
エンジンスタートノブ48は、停止状態のエンジンを始動させる際に操作するノブであり、基部48aと、回転部48bとを備えている。
基部48aは、車室内のダッシュパネル等に固定してあり、回転部48bを支持している。
回転部48bは、基部48aよりも運転手側へ突出する柱状部材であり、基部48aに対して相対回転可能に取り付けてある。また、エンジンの始動時には、運転者が、回転部48bを把持して回転させる必要がある。すなわち、エンジンスタートノブ48は、車両を走行状態とするために、運転者が操作する必要がある運転操作部である。
【0101】
エンジンスタートノブ48に飲酒運転防止装置を備える際には、導入開口部22を、回転部48bのうち、車幅方向を向く面(側面)の、回転中心(図中に示す「P」)よりも端部側に形成する。これは、エンジンスタートノブ48を操作する運転者は、その親指が、回転部48bの側面のうち回転中心よりも上端側を加圧し、人指し指が、回転部48bの側面のうち回転中心よりも下端側を加圧すると予測するためである。なお、図22(a)中に示す符号Fは、運転者がエンジンスタートノブ48を加圧する加圧方向を示す矢印である。
【0102】
したがって、回転部48bの側面のうち、運転者が加圧する部位を、運転者の皮膚が加圧すると予測する加圧予測部位44とする。
上述したシフトレバー、エンジンスタートボタン及びエンジンスタートノブ以外の変形例としては、例えば、図23に示すように、運転席のシートベルト50を形成するシートバックル52に備えた構成がある。なお、図23は、飲酒運転防止装置の変形例を示す図であり、図23(a)は、シートベルト50の斜視図、図23(b)は、図23(a)のB―B線矢視図である。
【0103】
シートベルト50は、ベルト部54と、シートバックル52と、挿入部56と、保持部58とを備えている。
シートバックル52は、ベルト部54と挿入部56とを接続している。挿入部56を保持部58の内部へ挿入する際に、運転者が把持する把持部を形成している。
保持部58は、運手席に固定してあり、挿入部56を内部に挿入すると、挿入部56を保持する機構を有する。
運転席のシートベルト50は、法令により許可された車両を除き、車両の走行時に使用すべき部品である。すなわち、シートバックル52は、車両を走行状態とするために、運転者が操作する必要がある運転操作部である。
【0104】
シートベルト50に飲酒運転防止装置を備える際には、導入開口部22を、シートバックル52のうち、上面の運転席に近い側に形成する。これは、挿入部56を保持部58の内部へ挿入する運転者は、シートバックル52の上面のうち、少なくとも運転席に近い側を、掌等の皮膚によって加圧すると予測するためである。なお、図23(b)中に示す符号Fは、運転者が挿入部56を保持部58の内部へ挿入する際に、シートバックル52を加圧する加圧方向を示す矢印である。
したがって、シートバックル52の上面のうち、運転者が加圧する部位を、運転者の皮膚が加圧すると予測する加圧予測部位44とする。
【0105】
(第四実施形態)
(構成)
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
図24は、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。なお、図24は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図であり、図24(a)は、シフトレバー1の側面図、図24(b)は、図24(a)のB―B線矢視図である。
図24中に示すように、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成は、把持部4の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。
シフトレバー1は、外周面のうち側方、具体的には助手席側の面に配置した、シフトロック解除ボタン8を備えている。
本実施形態では、導入開口部22を、シフトロック解除ボタン8の運転者が押圧(加圧)する面の中心に形成している。これは、シフトロック解除ボタン8を操作する運転者は、その指により、シフトロック解除ボタン8の中央及びその周辺を加圧すると予測するためである。
【0106】
したがって、シフトロック解除ボタン8のうち、運転者が加圧する面の中心及びその周辺を、運転者の皮膚が加圧すると予測する加圧予測部位44とする。
また、シフトロック解除ボタン8のうち、導入開口部22の周囲には、導入開口部22へ近づくにつれて内部空間側へオフセットして傾斜する傾斜部60を形成している。
また、導入開口部22の周囲には、内部空間から離れる方向へ突出する突出部28を形成している。
なお、シフトロック解除ボタン8以外の構成は、上述した第三実施形態に記載したものと同様であるため、その説明は省略する。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0107】
(動作)
次に、図24を参照しつつ、飲酒運転防止装置の動作について説明する。なお、以下の説明では、シフトロック解除ボタン8以外の構成については、上述した第三実施形態とほぼ同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
路面上に停車している車両に乗車し、運転席に着座した運転者が、車両を発進させるための動作を行う際には、エンジンを始動させた後、把持部4を把持した状態でシフトロック解除ボタン8を操作する。
このとき、運転者の皮膚は、加圧予測部位44を加圧して、導入開口部22の周囲に形成した突出部28を加圧する。このため、突出部28が運転者の皮膚と密着するとともに、運転者の皮膚が導入開口部22を閉塞する。
【0108】
また、運転者の皮膚は、導入開口部22の周囲に形成した傾斜部60により、突出部28との密着性が増加する。これにより、導入開口部22と運転者の皮膚との間に形成される隙間は微小なものとなり、運転者の皮膚から放出した気体は、車室内の空間への蒸散が抑制され、その大部分が導入開口部22へ移動する。
導入開口部22へ移動した、運転者の皮膚から放出した気体は、運転者の体温によって昇温し、その比重が、内部空間の空気よりも軽くなるため、導入路内を上昇する。
【0109】
運転者の皮膚から放出した気体が、内部空間におけるアルコール検出部を配置した位置へ移動すると、アルコール検出部は、電気抵抗の変化状態を含む情報信号を、血中アルコール濃度算出部へ出力する。
電気抵抗の変化状態を含む情報信号を受信した血中アルコール濃度算出部と、血中アルコール濃度を含む情報信号を受信した比較判定部の動作は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0110】
(第四実施形態の効果)
(1)本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部の周囲に、導入開口部へ近づくにつれて内部空間側へオフセットして傾斜する傾斜部を形成している。
このため、導入開口部の周囲に傾斜部を形成していない場合と比較して、運転者の皮膚と突出部との密着性が増加し、運転者の皮膚と導入開口部との密着性が増加する。
その結果、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となり、運転者の血中アルコール濃度の検出精度を向上させることが可能となるため、飲酒運転を防止することが可能となる。
【0111】
(応用例)
(1)なお、本実施形態の飲酒運転防止装置では、導入開口部の周囲に、突出部及び傾斜部を形成したが、これに限定されるものではなく、導入開口部の周囲に、傾斜部のみを形成してもよい。もっとも、本実施形態の飲酒運転防止装置のように、導入開口部の周囲に、突出部及び傾斜部を形成することが、傾斜部のみを形成した場合と比較して、運転者の皮膚と導入開口部との密着性が増加するため、好適である。
【0112】
(第五実施形態)
(構成)
次に、本発明の第五実施形態について説明する。
図25は、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。なお、図25は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図であり、平常時、すなわち、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作していない状態を示す図である。
図25中に示すように、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成は、突出部28の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。
【0113】
突出部28は、支持部28aと、接触部28bとを備えている。
支持部28aは、把持部4の内部に配置した板状部材であり、車両前後方向に延在している。支持部28aの車両前後方向前方側の端部は、シフトロック解除ボタン8の把持部4側の面に取り付けている。
接触部28bは、支持部28aの車両前後方向後方側の端部によって形成してある。また、接触部28bは、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作していない状態では、把持部4内に収納する。
【0114】
一方、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作している状態では、接触部28bは、図26中に示すように、把持部4の外周面のうち、上述した第一実施形態と同様の対向予測部位26から、車両前後方向後方側へ突出する。これは、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作すると、シフトロック解除ボタン8が車両前後方向後方側へ移動し、シフトロック解除ボタン8の把持部4側の面に取り付けた支持部28aが、車両前後方向後方側へ移動するためである。なお、図26は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図であり、計測時、すなわち、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作している状態を示す図である。なお、図26中に示す符号Fは、運転者がシフトロック解除ボタン8を押圧する押圧方向を示す矢印である。
なお、上記のような支持部28aは、シフトロック解除ボタン8の操作に応じて、突出部28を運転者の皮膚を加圧するように変位させる突出部変位手段を形成している。
また、上記のような接触部28bは、突出部28のうち運転者の皮膚を加圧する部位を形成している。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0115】
(動作)
次に、図25及び図26を参照しつつ、飲酒運転防止装置の動作について説明する。なお、以下の説明では、突出部28以外の構成については、上述した第一実施形態とほぼ同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
路面上に停車している車両に乗車し、運転席に着座した運転者が、車両を発進させるための動作を行う際には、エンジンを始動させた後、把持部4を把持した状態でシフトロック解除ボタン8を操作する。
運転者がシフトロック解除ボタン8を操作すると、シフトロック解除ボタン8の把持部4側の面が、支持部28aを車両前後方向後方側へ移動させるため、接触部28bは、対向予測部位26から、車両前後方向後方側へ突出する。
【0116】
接触部28bが、対向予測部位26から車両前後方向後方側へ突出すると、この接触部28bを、対向予測部位26を加圧している運転者の皮膚に押し付けることとなる。このため、運転者の皮膚と接触部28bは、互いに加圧し合うこととなり、接触部28bが運転者の皮膚と密着するとともに、導入開口部22を運転者の皮膚によって閉塞することとなる。
これにより、導入開口部22と運転者の皮膚との間に形成される隙間は微小なものとなり、運転者の皮膚から放出した気体は、車室内の空間への蒸散が抑制され、その大部分が導入開口部22へ移動する。
導入開口部22へ移動した、運転者の皮膚から放出した気体は、運転者の体温によって昇温し、その比重が、内部空間の空気よりも軽くなるため、導入路内を上昇する。
【0117】
運転者の皮膚から放出した気体が、内部空間におけるアルコール検出部を配置した位置へ移動すると、アルコール検出部は、電気抵抗の変化状態を含む情報信号を、血中アルコール濃度算出部へ出力する。
電気抵抗の変化状態を含む情報信号を受信した血中アルコール濃度算出部と、血中アルコール濃度を含む情報信号を受信した比較判定部の動作は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0118】
(第五実施形態の効果)
(1)本実施形態の飲酒運転防止装置では、シフトロック解除ボタンの操作に応じて、突出部を運転者の皮膚を加圧するように変位させる突出部変位手段を備えている。
このため、車両を走行状態とするために必要な操作である、シフトロック解除ボタンの操作時に、突出部が運転者の掌と密着するとともに、運転者の掌が導入開口部を閉塞することとなり、導入開口部と運転者の掌との間に形成される隙間が微小なものとなる。
シフトロック解除ボタンの操作時に、運転者が車両の操作から独立した動作を行う必要がなく、運転者の血中アルコール濃度を検出することが可能となる。
その結果、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となるとともに、運転者へ精神的・肉体的負荷を与えることなく、運転者の血中アルコール濃度を検出することが可能となる。また、運転者が、自身の血中アルコール濃度が検出されることを、意図的に回避することを抑制可能となる。
【0119】
(応用例)
(1)なお、本実施形態の飲酒運転防止装置では、突出部変位手段の構成を、シフトロック解除ボタンの操作に応じて、突出部を運転者の皮膚を加圧するように変位させる構成としたが、突出部変位手段の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図27及び図28中に示すように、シフトレバー1の操作に応じて、突出部28を運転者の皮膚を加圧するように変位させる構成としてもよい。なお、図27及び図28は、本実施形態の変形例を示す図であり、図27は、シフトポジションが「P」レンジである状態のシフトレバー1を示す図、図28は、シフトポジションが「D」レンジである状態のシフトレバー1を示す図である。
【0120】
この場合、突出部変位手段の構成は、例えば、エンジンの始動に伴い、図示しないアクチュエータを作動させ、支持部28aを車両前後方向後方側へ移動させる構成とする。これにより、接触部28bを、対向予測部位26から車両前後方向後方側へ突出させる構成とすればよい。また、この場合、シフトレバー1を操作してシフトポジションを「D」レンジとすると、アクチュエータにより支持部28aを車両前後方向前方側へ移動させて、接触部28bを把持部4内に収納する構成とすればよい。また、アクチュエータを用いる構成以外に、シフトレバー1の傾斜状態等に応じて支持部28aを移動させる機構を備えた構成としてもよい。
【0121】
(第六実施形態)
(構成)
次に、本発明の第六実施形態について説明する。
図29は、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。なお、図29は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図であり、通常時、すなわち、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作していない状態を示す図である。
図29中に示すように、本実施形態の飲酒運転防止装置の構成は、把持部4の構成を除き、上述した第一実施形態と同様の構成となっている。
【0122】
本実施形態では、把持部4の内部に、遮蔽手段62と、伸縮手段64と、伝達手段66とを配置している。
遮蔽手段62は、連通部68と、遮蔽部70とを備えている。
連通部68は、筒状部材であり、その中空部は、車両前後方向に貫通している。
遮蔽部70は、連通部68の上方及び下方に取り付けた板状部材であり、上下方向に延在している。なお、以下の説明及び図中では、連通部68の上方に取り付けた遮蔽部70を「遮蔽部70a」と記載し、連通部68の下方に取り付けた遮蔽部70を「遮蔽部70b」と記載する。
【0123】
伸縮手段64は、上下方向に延在するコイルばねによって形成してあり、その上端部を把持部4の内部に取付け、下端部を遮蔽部70aの上部に取り付けている。伸縮手段64の伸縮方向は上下方向である。また、伸縮手段64の弾性力は、伝達手段66が遮蔽手段62に加える負荷が減少すると収縮して、遮蔽手段62を上方へ引き上げる弾性力である。
【0124】
伝達手段66は、伝達部72と、ガイド部74とを備えている。
伝達部72は、例えば、ワイヤ等の可撓性を有する線状部材によって形成してある。伝達部72の一方の端部は、シフトロック解除ボタン8の把持部4側の面に取り付けてあり、伝達部72の他方の端部は、遮蔽部70bの下部に取り付けてある。
ガイド部74は、例えば、ローラーガイドによって形成してある。また、ガイド部74は、伝達部72の両端部間において、伝達部72と接触しており、シフトロック解除ボタン8を操作していない状態で、連通部68を導入開口部22よりも下方に引き下げる位置に配置する。
したがって、シフトロック解除ボタン8を操作していない状態では、遮蔽部70aは導入開口部22を閉塞することとなり、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を遮断する。
【0125】
一方、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作している状態では、図30中に示すように、伸縮手段64が収縮して、遮蔽手段62を上方へ引き上げて、連通部68を導入開口部22の高さまで引き上げる。これは、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作すると、伝達部72の張力が低下して、伝達手段66が遮蔽手段62に加える負荷が減少するためである。なお、図30は、本実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図であり、計測時、すなわち、運転者がシフトロック解除ボタン8を操作している状態を示す図である。また、図30中に示す符号Fは、運転者がシフトロック解除ボタン8を押圧する押圧方向を示す矢印である。
【0126】
したがって、シフトロック解除ボタン8を操作している状態では、連通部68が導入開口部22と内部空間12と連通させることとなり、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を許容する。
なお、上記のような遮蔽手段62、伸縮手段64及び伝達手段66は、シフトロック解除ボタン8の操作に応じて、導入開口部22を閉塞する閉塞手段を形成している。
その他の構成は、上述した第一実施形態と同様である。
【0127】
(動作)
次に、図29及び図30を参照しつつ、飲酒運転防止装置の動作について説明する。なお、以下の説明では、突出部28以外の構成については、上述した第一実施形態とほぼ同様であるため、異なる部分の動作を中心に説明する。
路面上に停車している車両に、運転者及び同乗者が乗車し、運転者が車両を発進させるための動作を行っていない状態、すなわち、シフトロック解除ボタン8を操作していない状態では、遮蔽部70aが導入開口部22を閉塞している。
このため、遮蔽部70aが、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を遮断することとなる。これにより、同乗者が飲酒している状態であっても、この同乗者が発する呼気、すなわち、アルコールを含む気体が、内部空間12に侵入することを防止可能となる。
【0128】
運転席に着座した運転者が、車両を発進させるための動作を行う際には、エンジンを始動させた後、把持部4を把持した状態でシフトロック解除ボタン8を操作する。
このとき、導入開口部22は、運転者の手が閉塞しているため、同乗者が発するアルコールを含む気体が、導入開口部22から内部空間12へ侵入することを防止可能となる。
運転者がシフトロック解除ボタン8を操作すると、伝達部72の張力が低下して、伝達手段66が遮蔽手段62に加える負荷が減少するため、伸縮手段64が収縮して、連通部68を導入開口部22の高さまで引き上げる。
【0129】
伸縮手段64が収縮して連通部68を導入開口部22の高さまで引き上げると、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を許容することとなる。このため、運転者の皮膚から放出した気体が、導入開口部22へ移動する。
導入開口部22へ移動した、運転者の皮膚から放出した気体は、運転者の体温によって昇温し、その比重が、内部空間の空気よりも軽くなるため、導入路内を上昇する。
【0130】
運転者の皮膚から放出した気体が、内部空間におけるアルコール検出部を配置した位置へ移動すると、アルコール検出部は、電気抵抗の変化状態を含む情報信号を、血中アルコール濃度算出部へ出力する。
電気抵抗の変化状態を含む情報信号を受信した血中アルコール濃度算出部と、血中アルコール濃度を含む情報信号を受信した比較判定部の動作は、上述した第一実施形態と同様であるため、その説明を省略する。
【0131】
運転者の血中アルコール濃度と所定値とを比較した結果、運転者の血中アルコール濃度が所定値未満であれば、比較判定部は、車両を走行可能な状態に制御する。このため、運転者は、車両を走行状態とするために、シフトポジションを「D」レンジ等に移動させる。
そして、シフトポジションを「D」レンジ等に移動させた運転者が、シフトロック解除ボタン8を操作していない状態となると、遮蔽部70aが、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を遮断することとなる。
このため、車両の走行時に、同乗者が発するアルコールを含む気体が、内部空間12に侵入することを防止可能となる。
【0132】
(第六実施形態の効果)
(1)本実施形態の飲酒運転防止装置では、シフトロック解除ボタンの操作に応じて、導入開口部を閉塞する閉塞手段を備えている。
このため、運転者がシフトロック解除ボタンを操作していない状態では、導入開口部と内部空間との間における気体の移動を遮断することとなり、同乗者が発するアルコールを含む気体が、内部空間に侵入することを防止可能となる。
また、運転者がシフトロック解除ボタンを操作している状態では、導入開口部と内部空間との間における気体の移動を許容することとなり、運転者の血中アルコール濃度を検出することが可能となる。
その結果、同乗者の状態に影響されずに、運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールの検出精度を向上させることが可能となる。
【0133】
(応用例)
(1)なお、本実施形態の飲酒運転防止装置では、閉塞手段の構成を、シフトロック解除ボタンの操作に応じて、導入開口部を閉塞する構成としたが、閉塞手段の構成は、これに限定されるものではない。すなわち、例えば、図31及び図32中に示すように、シフトレバー1の操作に応じて、遮蔽部70を、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を遮断、または許容するように変位させる構成としてもよい。なお、図31及び図32は、本実施形態の変形例を示す図であり、図31は、シフトポジションが「P」レンジである状態のシフトレバー1を示す図、図32は、シフトポジションが「D」レンジである状態のシフトレバー1を示す図である。
【0134】
この場合、閉塞手段の構成は、例えば、エンジンを始動させると、図示しないアクチュエータが作動して、遮蔽部70を下方へ移動させる構成とする。これにより、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を許容する構成とすればよい。また、この場合、シフトレバー1を操作してシフトポジションを「D」レンジとすると、アクチュエータにより遮蔽部70を上方へ移動させる構成とする。これにより、導入開口部22と内部空間12との間における気体の移動を遮断する構成とすればよい。また、アクチュエータを用いる構成以外に、シフトレバー1の傾斜状態等に応じて遮蔽部70を移動させる機構を備えた構成としてもよい。
【0135】
また、閉塞手段の構成を、上述の構成とする場合、例えば、シフトレバーの操作中において、シフトポジションを「P」レンジから「R」レンジへ移動させる移動中のみ、遮蔽部70を下方へ移動させてもよい。この場合、運転者が車両を発進させるための操作を行う前に、車室内にアルコールを含む気体が充満している状態であっても、アルコールを含む気体が内部空間に侵入することを防止可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0136】
【図1】本発明の第一実施形態の飲酒運転防止装置を備えた車両Caの構成を示す図である。
【図2】図1中に円IIで囲んだ範囲の拡大図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】図2のIV−IV線断面図である。
【図5】各シフトポジションにおけるシフトレバー1の移動状態を示す図である。
【図6】シフトポジションが「N」レンジである状態において、水平面に対するシフトレバー1の傾斜状態を示す図である。
【図7】シフトポジションが「P」レンジである状態において、水平面に対するシフトレバー1の傾斜状態を示す図である。
【図8】シフトポジションが「P」レンジである状態のシフトレバー1を示す図である。
【図9】シフトポジションが「P」レンジである状態において、運転者Hがシフトロック解除ボタン8を押す力の方向を示す図である。
【図10】図9のX線矢視図である。
【図11】飲酒運転防止装置6の動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明の第一実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図13】本発明の第一実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図14】本発明の第一実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図15】本発明の第一実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図16】本発明の第一実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図17】本発明の第二実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の構成を示す図である。
【図18】本発明の第三実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。
【図19】本発明の第三実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図20】コラムシフト車が備えるシフトレバー1のシフトポジションと、各シフトポジション間の移動に伴う動作を示す図である。
【図21】本発明の第三実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図22】本発明の第三実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図23】本発明の第三実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図24】本発明の第四実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。
【図25】本発明の第五実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。
【図26】本発明の第五実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図である。
【図27】本発明の第五実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図28】本発明の第五実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図29】本発明の第六実施形態の飲酒運転防止装置の構成を示す図である。
【図30】本発明の第六実施形態の飲酒運転防止装置を備えたシフトレバー1の一部を示す図である。
【図31】本発明の第六実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【図32】本発明の第六実施形態の飲酒運転防止装置の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0137】
1 シフトレバー
4 把持部
6 飲酒運転防止装置
8 シフトロック解除ボタン
12 内部空間
14 導入路
16 分岐路
17 分岐路開口部
18 下方延在路
20 アルコール検出部
22 導入開口部
24 接触予測部位
26 対向予測部位
28 突出部
30 血中アルコール濃度算出部
32 比較判定部
34 吸引手段
36 サイドブレーキ
38 レバー部
42 変曲点
44 加圧予測部位
46 エンジンスタートボタン
48 エンジンスタートノブ
50 シートベルト
52 シートバックル
60 傾斜部
62 遮蔽手段
64 伸縮手段
66 伝達手段
Ca 車両
H 運転者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールを検出するアルコール検出部を備える飲酒運転防止装置であって、
前記運転者が操作する運転操作部の内部に、外部空間と隔離する内部空間を形成し、
前記運転操作部に、前記内部空間と前記外部空間とを連通させる導入開口部を形成し、
前記アルコール検出部を、前記内部空間に配置し、
前記導入開口部を、前記アルコール検出部よりも下方に配置したことを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項2】
前記内部空間は、前記アルコール検出部またはアルコール検出部の近傍空間と前記導入開口部とを連通させる導入路を備え、
前記導入路の下面を、前記アルコール検出部から前記導入開口部へ向かうにつれて下方へ連続して傾斜する傾斜面としたことを特徴とする請求項1に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項3】
前記導入路の断面積を、前記導入開口部の開口面積以下としたことを特徴とする請求項2に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項4】
前記導入路の断面積を、前記導入開口部から前記アルコール検出部へ向かうにつれて減少させたことを特徴とする請求項3に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項5】
前記導入路は、一または複数個所の変曲点を有することを特徴とする請求項2から4のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項6】
前記導入路全体を、前記運転者による前記運転操作部の操作状態に関わらず常に前記アルコール検出部よりも鉛直方向で下方となるように配置することを特徴とする請求項2から5のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項7】
前記導入開口部を、前記運転操作部の操作時に前記運転者の皮膚が接触すると予測した接触予測部位に形成したことを特徴とする請求項1から6のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項8】
前記内部空間は、前記導入路から分岐して導入路と前記外部空間とを連通させる分岐路を備え、
前記分岐路の前記外部空間側に位置する分岐路開口部を、前記導入開口部よりも上方に形成したことを特徴とする請求項7に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項9】
前記導入開口部を、前記接触予測部位のうち、前記運転操作部の操作時に前記運転者の皮膚が加圧すると予測した加圧予測部位に形成したことを特徴とする請求項7または8に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項10】
前記導入開口部を、前記接触予測部位のうち、前記運転操作部の操作時に前記運転者の皮膚が加圧すると予測した加圧方向と対向する対向予測部位に形成したことを特徴とする請求項7から9のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項11】
前記内部空間は、前記アルコール検出部よりも前記導入開口部から離れた位置に連続して下方に延在する下方延在路を備え、
前記下方延在路は、前記内部空間と前記外部空間とを連通させることを特徴とする請求項1から10のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項12】
前記内部空間の気体を吸引する吸引手段を備え、
前記吸引手段の吸引口を、前記内部空間のうち前記アルコール検出部よりも前記導入開口部から離れた位置に配置したことを特徴とする請求項1から11のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項13】
前記導入開口部の周囲に、前記導入開口部へ近づくにつれて前記内部空間側へオフセットして傾斜する傾斜部を設けたことを特徴とする請求項1から12のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項14】
前記導入開口部の周囲のうち少なくとも導入開口部の上方に、前記内部空間から離れる方向へ突出する突出部を設けたことを特徴とする請求項1から13のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項15】
前記運転操作部の操作に応じて前記突出部を前記運転者の皮膚を加圧するように変位させる突出部変位手段を備えることを特徴とする請求項14に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項16】
前記運転操作部の操作に応じて前記導入開口部を閉塞する閉塞手段を備えることを特徴とする請求項1から15のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項17】
前記運転操作部を、車両が備えるシフトレバーとし、
前記導入開口部を、前記シフトレバーのうち前記運転者の手が把持する把持部に形成したことを特徴とする請求項1から16のうちいずれか1項に記載した飲酒運転防止装置。
【請求項18】
運転者の皮膚から放出した気体に含まれるアルコールを採取する飲酒運転要因物質採取方法であって、
前記運転者が操作する運転操作部の内部に、外部空間と隔離する内部空間を形成し、
前記運転操作部に、前記内部空間と前記外部空間とを連通させる導入開口部を形成し、
前記内部空間において前記導入開口部よりも上方に配置したアルコール検出部により、前記気体に含まれるアルコールを採取することを特徴とする飲酒運転要因物質採取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−201661(P2009−201661A)
【公開日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−46200(P2008−46200)
【出願日】平成20年2月27日(2008.2.27)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】