説明

飲酒運転防止装置

【課題】運転者に対して飲酒運転に対する心理的抑制を行うことのできる飲酒運転防止装置を提供する。
【解決手段】車内に設けられた呼気吹込口23から吹き込まれた運転者の呼気を取り出し可能に保存するタンク21a,21b,21cと、タンク21a,21b,21cに所定量の呼気が吹き込まれたことを検知する検知手段としての流量センサ31と、流量センサ31からの所定量の呼気が吹き込まれたことを示す検知情報に基づいてエンジンの始動を許可する制御手段としての制御部32とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲酒運転防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、運転者の呼気中のアルコール濃度が基準値を超えていれば車両の運転を禁止する飲酒運転防止装置がある。
例えば、特許文献1に開示された飲酒運転防止装置は、ステアリングホイールに設けられたアルコール検知器が運転席に着座した運転者の呼気中におけるアルコール濃度を検出し、その検出したアルコール濃度に基づいて車両制御装置がエンジンの始動を制御するものである。詳述すると、車両制御装置は、アルコール検知器が検出したアルコール濃度が予め設定された基準値を超えている場合には、エンジンの始動を禁止する。一方、車両制御装置は、アルコール検知器が検知したアルコール濃度が予め設定された基準値未満である場合には、エンジンの始動を禁止することなく通常通り行えるようになっている。
【特許文献1】特開昭63−53120号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示された飲酒運転防止装置を車両に組み込む場合は、コストの面から簡易なアルコール検知器しか採用できないため、アルコール検知機のアルコール濃度の検知精度が低くなりがちとなる。そのため、呼気中のアルコール濃度が例えば飲酒運転と判断される基準値以上(現行の道路交通法では、呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上)である場合であっても基準値未満であると判断されたり、基準値未満である場合であっても基準値以上と判断されたりする虞がある。
【0004】
また、特許文献1に開示された飲酒運転防止装置は基準値未満であれば飲酒していても運転が可能となる。ここで、上述したようなアルコール検知器の検知精度が問題となる。即ち、車載の簡易なアルコール検知機により、呼気中のアルコール濃度が基準値未満と判断された場合であっても、実際に高精度のアルコール検知器で検知したときには基準値以上と判断されることがある。このように、従来の飲酒運転防止装置では、確実に飲酒運転を防止することができない。更に、運転者は、飲酒運転防止装置によって基準値未満と判断されれば運転可能ということから基準値未満までは飲酒を行えるという心理が働くことが考えられ、飲酒を行って運転する可能性が否めない。このように、運転者は飲酒運転防止装置の作動条件を逆手にとるなど、機械であるが故に運転者に対して心理的抑制を行うことができないという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、運転者に対して飲酒運転に対する心理的抑制を行うことのできる飲酒運転防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、車内に設けられた呼気吹込口から吹き込まれた運転者の呼気を取り出し可能に保存するタンクと、前記タンクに所定量の呼気が吹き込まれたことを検知する呼気検知手段と、該検知手段からの所定量の呼気が吹き込まれたことを示す検知信号に基づいてエンジンの始動を許可する始動制御手段とを備えたことをその要旨とする。
【0007】
この発明によれば、車両側ではアルコール検知を行わないため、運転者は自身の呼気中のアルコール濃度を知ることができない。そして、運転者の呼気がタンクに保存され、その保存された呼気を利用して例えば飲酒検問や交通事故時に警察等の所持する高精度のアルコール検知器にて検査される事となる場合があるため、運転者に対して飲酒運転を心理的に抑制することができる。更に、呼気さえ吹き込めば車両の走行が特に制限されることもない。そのため、簡易なアルコール検知器を車載した場合に懸念されるアルコールの誤検出等の問題もない。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の飲酒運転防止装置において、前記タンクは、前記所定量として運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するために必要とされる量の呼気を保存することのできる容積で形成するとともに、前記タンクを複数設けたことをその要旨とする。
【0009】
この発明では、タンクには、運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するために必要とされる量の呼気が保存される。そして、このようなタンクを複数設けたことで、複数回の運転時の呼気が保存することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の飲酒運転防止装置において、前記呼気中のアルコール濃度を検知するアルコール検知器を備え、前記制御手段は、前記アルコール検知器にて前記呼気からアルコールを検知した場合に該呼気を保存したタンクにアルコール濃度に応じた優先度を付け、新たに呼気を保存する際に前記タンクの全てに前記所定量の呼気が保存されている場合には、優先度の最も低いタンクに保存されている呼気を放出させることをその要旨とする。
【0011】
この発明によれば、アルコール検知器により呼気からアルコールが検出された場合には、該呼気はアルコール濃度に応じて優先的に保存されることとなる。このように、後々に必要とされる蓋然性の高い呼気を優先的に保存することができるため、タンクの設置スペースを抑えつつ呼気を保存することができる。また、アルコールが検知された呼気を優先的に保存することから飲酒運転の証拠が残る。そのため、運転者はより確実に飲酒運転を控えようと考え、これによって運転者に対して飲酒運転の抑制効果を与えることができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲酒運転防止装置において、前記制御手段は、前記検知手段を通じてタンクに呼気が吹き込まれたことを検知した時には、該吹き込まれた日時を記憶手段に記憶するようにしたことをその要旨とする。
【0013】
この発明では、呼気吹込口から呼気が吹き込まれた日時が記憶手段にて記憶される。これにより、運転者のいつの呼気なのか記憶することができるため、例えばアルコール検知器にてタンク内の呼気を検査して、いつ飲酒運転を行ったかということを知ることができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲酒運転防止装置において、前記制御手段は、前記タンクに保存された呼気の取り出しを許可された特定の人に所持される外部端末との間で通信による相互認証を行い、該認証が成立した場合には、前記タンクに保存された呼気を取り出し可能とすることをその要旨とする。
【0015】
この発明によれば、タンクに保存された呼気の取り出しを許可された特定の人に所持される外部端末との間で通信による相互認証を行い、該認証が成立した場合には、前記タンクに保存された呼気が取り出し可能となる。このため、例えば警察等の特定の人のみがタンク内の呼気を取り出すことができる。
【発明の効果】
【0016】
従って、上記記載の発明によれば、運転者に対して飲酒運転に対する心理的抑制を行うことのできる飲酒運転防止装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に従って説明する。
図1に示すように、図示しない車両において、車内に設けられたステアリングホイールの近傍には、メカニカルキー1を差し込んでそのキープレート2のキー溝3が正しいか否かを判別するキーシリンダ4が設けられている。
【0018】
キーシリンダ4には、ACC(アクセサリ)系やエンジン系に電気的に繋がるイグニッションスイッチ5が接続されている。キーシリンダ4に差し込まれたメカニカルキー1がオフ位置、ACC位置、イグニッションオン位置及びエンジンスタート位置の4位置の間で回動操作されると、その回動操作位置に応じてイグニッションスイッチ5のスイッチ状態が切り替わる。
【0019】
キーシリンダ4には、エンジン6の点火制御や燃料噴射制御を行うエンジンECU7がイグニッションスイッチ5を介して接続されている。メカニカルキー1がキーシリンダ4に挿し込まれてエンジンスタート位置に回動操作されると、イグニッションスイッチ5のスタータリレーがオン状態となり、このオン信号がエンジン6の始動を要求する始動要求信号としてエンジンECU7へ出力される。
【0020】
車両には、メカニカルキー1に埋設されたトランスポンダ8を用いて無線通信によりID照合を行うイモビライザーシステム9と、運転者の呼気を保存することで飲酒運転を心理的に抑制する飲酒運転防止装置20が設けられている。
【0021】
イモビライザーシステム9には、このシステムにおいてID照合を行うイモビライザーECU10が設けられている。このイモビライザーECU10は、車内バス11を通じてエンジンECU7に接続されるとともに、キーシリンダ4の外周に沿って複数回巻装された円環状のコイルアンテナ12が増幅器13を介して接続されている。また、キーシリンダ4には、メカニカルキー1がキーシリンダ4に挿入(半挿)された事を検出するキースイッチ14が設けられるとともに、このキースイッチ14はイモビライザーECU10に接続されている。
【0022】
イモビライザーECU10は、キースイッチ14のスイッチ信号からメカニカルキー1がキーシリンダ4に挿し込まれたことを検出すると、コイルアンテナ12から駆動電波Svを断続的に発信させる。トランスポンダ8は、この駆動電波Svを受信すると、これを電源として起動を開始し、自身の固有コードであるトランスポンダコードを乗せたトランスポンダ信号Skを車両に向けて発信する。このトランスポンダ信号Skは、コイルアンテナ12で受信されるとともに、増幅器13により増幅されてイモビライザーECU10に出力される。イモビライザーECU10は、この増幅されたトランスポンダ信号Skが入力されると、同トランスポンダ信号Skに含まれるメカニカルキー1側のトランスポンダコードと、車両に登録されたトランスポンダコードとを比較することにより、メカニカルキー1との間のイモビライザー照合を行う。
【0023】
イモビライザーECU10は、イモビライザー照合が成立すれば、その照合成立の旨をエンジンECU7に通知する。キー側トランスポンダ照合成立の通知を受けたエンジンECU7は、自身が持つ暗号コードをイモビライザーECU10に出力する。エンジンECU7から暗号コードを受けたイモビライザーECU10は、この暗号コードを参照することにより、エンジンECU7がペアを成すものか否かを判定する。イモビライザーECU10は、これらの照合が成立すれば、エンジン始動を許可すべく自身のメモリにイモビライザー照合成立フラグF1を立てることにより、イモビライザーシステム9によるエンジン6の始動禁止状態を解除する。
【0024】
飲酒運転防止装置20は、飲酒検問や交通事故時に警察等の所持する高精度のアルコール検知器(図示略)にて飲酒検査等を行うために運転者の呼気を複数のタンク21(21a,21b,21c)内に保存する。タンク21の図示しない入口及び出口には、呼気が通過する呼気経路22として、入口管22a及び出口管22bが接続されている。入口管22aの基端側は3つに分岐して、各タンク21a〜21cの入口に接続されている。入口管22aのタンク21と反対側の先端部は車室内側へ延設されている。その先端部には、運転者の呼気が吹き込まれる呼気吹込口23が設けられている。この呼気吹込口23は、車室内に設けられている。出口管22bの基端側は3つに分岐して、各タンク21a〜21cの出口に接続されている。出口管22bのタンク21と反対側の先端部には排出口24が形成されている。尚、各タンク21a〜21cは運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するために必要とされる量の呼気を保存することのできる容積に形成されている。
【0025】
入口管22aの各タンクに分岐接続される3つの基端には、同入口管22aを閉鎖及び開放可能とされた弁25,26,27が設けられている。また、入口管22aにおいて、分岐点よりも先端側の部位には呼気吹込口23から呼気が吹き込まれたこと及び呼気吹込口23から吹き込まれた運転者の呼気の流量を検知する流量センサ31が設けられている。出口管22bの各タンクに分岐接続される3つの基端には、同出口管22bを閉鎖及び開放可能とされた弁28,29,30が設けられている。また、飲酒運転防止装置20には、流量センサ31及び弁25〜30を制御する制御部32が設けられており、同制御部32には日時を計測するタイマ33と制御部32が得た情報を記憶する記憶部34とが接続されている。そして、イモビライザーECU10と制御部32とが接続されることでイモビライザーシステム9と飲酒運転防止装置20とが接続されている。
【0026】
制御部32は、呼気吹込口23から吹き込まれた呼気をタンク21a,21b,21cのいずれかに送り込んで保存しようと弁25〜30を制御する。詳しくは、呼気が流量センサ31を通過すると、流量センサ31は呼気が通過したという通過情報を制御部32に出力する。通過情報を受けた制御部32は、例えばタンク21aに呼気を保存しようとする場合、弁25を開放状態に制御するとともに弁26〜30を閉鎖状態に制御する。そして、その時の日時をタイマ33によって計測し、その計測した日時情報をタンク21aと関連付けて記憶部34に保存する。そして、流量センサ31がタンク21a内に所定量(例えば1リットル)の呼気が吹き込まれたことを検知すると、その検知情報を制御部32に出力する。検知情報を受けた制御部32は、弁25を閉鎖状態にする。これによって、タンク21a内への呼気の保存が完了する。この時、制御部32は、タンク21a内に所定量の呼気が吹き込まれたという検知情報を受けるとイモビライザーECU10に呼気保存完了の信号を出力する。呼気保存完了の信号を受けたイモビライザーECU10は、自身のメモリに呼気保存完了フラグF2を立てることにより、エンジンECU7に対してエンジン始動許可を行う。
【0027】
即ち、イモビライザーECU10は、前述したイモビライザーシステム9によるエンジン6の始動禁止状態を解除した上で、飲酒運転防止装置20の制御部32からの呼気保存完了の信号を受けることで、エンジン始動許可をエンジンECU7に対して行う。エンジンECU7は、イモビライザーECU10からのエンジン始動許可を受けた状態で、イグニッションスイッチ5のスタータリレーがオン状態となることにより、即ち始動要求信号が入力されることによりエンジン6の始動を開始する。
【0028】
ここで、飲酒運転防止装置20は、タンク21a,21b,21cを複数設けているため、運転者の呼気を複数回(三回分)保存することができる。そのため、例えばタンク21aに所定量の呼気が保存されている場合、制御部32は、空のタンク21b,21cのいずれか一方に呼気を保存しようと作動する。これによって、所定量の呼気が保存されたタンク21aには呼気が運ばれることなく、タンク21b,21cのいずれか一方に呼気が保存されることとなり、タンク21a内の呼気と混合することが無い。同様に、タンク21a,21bに所定量の呼気が保存されている場合も、制御部32は、空のタンク21cに呼気を保存しようと作動する。また、タンク21a,21b,21cに所定量の呼気が保存されている場合に新たに呼気を保存しようとする際には、制御部32は、タンク21a,21b,21cと関連付けて記憶部34に保存されている日時情報を読みとり、呼気が保存されたタンク21a,21b,21cの内で最も古いものを選び出す。そして、例えば制御部32がタンク21aを選び出した場合、制御部32は弁28を開放状態として排出口24から図示しないファンを用いて呼気を排出させる。これにより、呼気が保存されたタンク21aを空にすることができ、新たに呼気を保存することが出来る。尚、制御部32は、空になったタンクに保存されていた呼気の日時情報を記憶部34から消去する。
【0029】
また、タンク21a,21b,21c内の呼気は排出することだけでなく、次のようなことにも利用される。例えば、制御部32はRS−232C等の通信線を介してPC等の外部端末40を接続可能に構成し、同外部端末40からの制御信号による制御部32の操作を通じて、弁28〜30の開閉制御を行ってタンク21a,21b,21cから呼気を取り出し、その呼気中のアルコール濃度を検知することもできる。詳しくは、制御部32と通信線を介して接続された外部端末40を用いてタンク21a,21b,21cに保存された呼気の取り出しを許可された特定の者(例えば警察)により、制御部32を操作するためのセキュリティ認証(例えばパスワード認証)が行われる。そのセキュリティ認証により制御部32へのアクセスが許可された特定の者である旨の認証がなされると、制御部32は外部端末40による自身の操作を許可する。制御部32によって操作が許可された外部端末40は、記憶部34に保存されている日時情報を取り出し可能となるとともに、タンク21a,21b,21のいずれか一つの呼気を取り出すために、それに応じた弁28,29,30のいずれかを開放状態として且つ図示しないファンを作動させてタンク内の呼気を排出口24から放出させる。この時、例えば排出口24に警察等が所有する図示しない高精度のアルコール検知器を接続することで、呼気中のアルコール濃度を検出することが可能となる。これによって、高精度のアルコール検知が可能となるため、呼気保存時が飲酒運転であるかどうか判断できる。また、本実施形態において、飲酒運転防止装置20ではアルコール検知を行っていないため、運転者自身が飲酒運転であるか(呼気1リットル中のアルコール濃度が0.15mg以上であるか)知る術がないため、上述した警察等によるタンク21a,21b,21c内の呼気を調べられることを考えて運転者自身が飲酒運転を控えるようになる。このように、運転者に対して飲酒運転を心理的に抑制することができる。
【0030】
次に、本実施の形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)車内に設けられた呼気吹込口23から吹き込まれた運転者の呼気を取り出し可能に保存するタンク21a,21b,21cと、タンク21a,21b,21cに所定量の呼気が吹き込まれたことを検知する検知手段としての流量センサ31と、流量センサ31からの所定量の呼気が吹き込まれたことを示す検知情報に基づいてエンジンの始動を許可する制御手段としての制御部32とを備えた。車両側ではアルコール検知を行わないため、運転者は自身の呼気中のアルコール濃度を知ることができない。そして、運転者の呼気がタンク21a,21b,21cのいずれかに保存され、その保存された呼気を利用して例えば飲酒検問や交通事故時に警察等の所持する高精度のアルコール検知器にて検査される事となる場合があるため、運転者に対して飲酒運転を心理的に抑制することができる。更に、呼気さえ吹き込めば車両の走行が特に制限されることもない。そのため、簡易なアルコール検知器を車載した場合に懸念されるアルコールの誤検出等の問題もない。
【0031】
(2)タンク21a,21b,21cには、運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するために必要とされる量の呼気が保存される。そして、このようなタンク21a,21b,21cを複数設けたことで、複数回の運転時の呼気が保存することができる。
【0032】
(3)呼気吹込口23から呼気が吹き込まれた日時が記憶部34にて記憶される。これにより、運転者のいつの呼気なのか記憶することができるため、例えば図示しないアルコール検知器にてタンク内の呼気を検査して、いつ飲酒運転を行ったかということを知ることができる。
【0033】
(4)タンク21a,21b,21cに保存された呼気の取り出しを許可された特定の人に所持される外部端末40と飲酒運転防止装置20内の制御部32との間で通信によるセキュリティ認証を行い、該認証が成立した場合には、タンク21a,21b,21cに保存された呼気が取り出し可能となる。このため、例えば警察等の特定の人のみがタンク内の呼気を取り出すことができる。この時、排出口24に図示しない高精度のアルコール検知器を設置することで、タンク21a,21b,21cのいずれかから放出された呼気中のアルコール濃度を検出することが可能となる。
【0034】
尚、本発明の実施の形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施の形態では、飲酒運転防止装置20とイモビライザーシステム9とを併用して、呼気保存の完了及びイモビライザーシステム9によるエンジン6の始動禁止状態を解除することによってエンジン6の始動の許可を行っているが、こうした構成に限らない。例えば、イモビライザーECU10を省略することも可能である。この場合には、制御部32をエンジンECU7に接続する。制御部32は、呼気の吹き込み完了が検出された時にはエンジン6の始動を許可する。
【0035】
また、制御部32をエンジンECU7に直接接続するようにしてもよい。この場合は、上記実施の形態と同様に、イモビライザーシステム9による始動禁止状態の解除及び制御部32からの呼気保存の完了によってエンジン6の始動の許可を行う。
【0036】
・上記実施の形態では、呼気をタンク21a,21b,21cに保存しているが、こうした構成に限らず、次のような構成を採用することも可能である。例えば、図1に2点鎖線で示すように、入口管22aにおける流量センサ31と弁25,26,27との間にアルコール検知器50を設け、同アルコール検知器50により、呼気中のアルコール濃度を検知して、その検知データを記憶部34に記憶させる。そして、呼気中からアルコールが検知された場合に、その呼気を保存したタンクにアルコール濃度に応じて優先度を付け、新たな呼気を保存する際に全てのタンクに呼気が保存されている場合は、優先度の低いタンクに保存されている呼気から先に放出させる機能を制御部32に付加してもよい。このように、後々に必要となる蓋然性の高い呼気を優先的に保存することができるため、タンクの設置スペースを極力抑えつつ呼気を保存することができる。また、アルコールが検知された呼気を優先的に保存することから飲酒運転の証拠が残る。そのため、運転者はより確実に飲酒運転を控えようと考え、これによって運転者に対して飲酒運転の抑制効果を与えることができる。
【0037】
・上記実施の形態では、タンク21a,21b,21cを設けているが、個数はこれに限定しない。
・上記実施の形態では、タンク21a,21b,21cを設けているが、こうした構成に限らず、例えば一つのタンク内を複数の区画にわけて、それぞれの区画に呼気を保存するようにしてもよい。
【0038】
・上記実施の形態では、呼気を吹き込む者が運転者であるかどうかという判定を行っていないが、運転者の本人性の判定を行ってもよい。この構成として、例えば予め運転者の顔の画像データを記憶させておき、別途車内に設けたカメラにより吹き込み時の顔を認証することで、運転者本人であるかどうか判定する構成が採用できる。これにより、呼気の吹き込みを運転者本人に限定することができるため、吹き込み時に運転者以外の者が吹き込むことを防止することができる。また、吹き込み時の顔の画像データを記憶部34に格納し、制御部32に接続される外部端末40を通じて、吹き込み時の顔画像データを取得可能としてもよい。
【0039】
・上記実施の形態では、制御部32と外部端末40とをRS−232C等の通信線にて有線通信による認証を行っているが、無線通信による認証であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本実施の形態における飲酒運転防止装置及びイモビライザーシステムを示すブロック図である。
【符号の説明】
【0041】
6…エンジン、20…飲酒運転防止装置、21,21a,21b,21c…タンク、23…呼気吹込口、31…流量センサ(検知手段)、32…制御部(制御手段)、34…記憶部(記憶手段)、40…外部端末、50…アルコール検知器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車内に設けられた呼気吹込口から吹き込まれた運転者の呼気を取り出し可能に保存するタンクと、
前記タンクに所定量の呼気が吹き込まれたことを検知する検知手段と、
該検知手段からの所定量の呼気が吹き込まれたことを示す検知信号に基づいてエンジンの始動を許可する制御手段と
を備えたことを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の飲酒運転防止装置において、
前記タンクは、前記所定量として運転者の呼気中のアルコール濃度を検出するために必要とされる量の呼気を保存することのできる容積に形成するとともに、前記タンクを複数設けたことを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項3】
請求項2に記載の飲酒運転防止装置において、
前記呼気中のアルコール濃度を検知するアルコール検知器を備え、
前記制御手段は、前記アルコール検知器にて前記呼気からアルコールを検知した場合に該呼気を保存したタンクにアルコール濃度に応じた優先度を付け、新たに呼気を保存する際に前記タンクの全てに前記所定量の呼気が保存されている場合には、優先度の最も低いタンクに保存されている呼気を放出させることを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の飲酒運転防止装置において、
前記制御手段は、前記検知手段を通じてタンクに呼気が吹き込まれたことを検知した時には、該吹き込まれた日時を記憶手段に記憶するようにしたことを特徴とする飲酒運転防止装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の飲酒運転防止装置において、
前記制御手段は、前記タンクに保存された呼気の取り出しを許可された特定の人に所持される外部端末との間で通信による相互認証を行い、該認証が成立した場合には、前記タンクに保存された呼気を取り出し可能とすることを特徴とする飲酒運転防止装置。

【図1】
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【公開番号】特開2009−101917(P2009−101917A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276517(P2007−276517)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】