説明

駆動装置

【課題】低電圧駆動時の動作の信頼性を確保しながら動作速度を向上でき回路を保護できるようにする。
【解決手段】トランジスタQ7が動作するときには、当該トランジスタQ7による増幅回路がソース接地回路として動作する。MOSトランジスタQ7のゲート−ソース間にオン制御電圧が印加されたときには、当該トランジスタQ7のドレイン電位がソース電位に急速に近づき、急速にオン状態に遷移する。また、クランプ回路10がトランジスタQHのゲート−ソース間に設けられているため、当該ゲート−ソース間電圧が必要以上に上昇することがなくなる。この回路部分では、トランジスタQHの閾値電圧VT+トランジスタQ7のドレイン−ソース間電圧VDSのみで駆動できるため、低電圧駆動時でも動作の信頼性を確保できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランジスタを用いて負荷を駆動する駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の駆動装置が特許文献1に開示されている。この特許文献1の技術思想では、主にハイサイド側のトランジスタ(特許文献1中のQH)を駆動する構成に特徴を備えている。この特許文献1の技術思想では、このハイサイド側のトランジスタを駆動するため、当該トランジスタの前段にNチャネル型のMOSトランジスタ(特許文献1中のQ17、Q18)が直列接続されており、この出力にブートストラップコンデンサ(特許文献1中のC11)を接続して構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−109012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし特許文献1に開示された技術思想では、電源電圧(特許文献1中のVs)が低下してしまうと、前段のNチャネル型のMOSトランジスタに対するゲート印加電圧も低下し、電源電圧低下時に立上り時間などの動作時間が遅くなったり、出力電圧が低くなったりと、低電圧駆動時の回路動作の信頼性に劣ってしまう。また、電源電圧がトランジスタのVGSS(ゲート−ソース間定格電圧)以上の高電圧となる時には当該トランジスタを破壊してしまう可能性がある。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、低電圧駆動時の動作の信頼性を確保しながら動作速度を向上でき回路を保護できるようにした駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、次のように作用する。電源電圧が第1のトランジスタの入力端子に電源ノードから通電された状態で第1のトランジスタの制御端子に例えばオン制御信号が印加されると、このオン制御信号に応じて第1のトランジスタがオン状態に遷移する。このとき、第1のトランジスタは入力端子の電位を基準電位として動作するため当該第1のトランジスタによる増幅度は高くなり従来に比較して急峻にオン状態に遷移し、第1のトランジスタの出力端子はその入力端子の電位に急速に近づく。
【0007】
第2のトランジスタの制御端子は第1のトランジスタの出力端子に接続されているため、第2のトランジスタの制御端子の電位も第1のトランジスタの入力端子の電位に急速に近づく。すると、第2のトランジスタは出力端子の電位を基準電位として動作するため、当該第2のトランジスタの制御端子の電位が急速に高くなると第2のトランジスタが急速にオン状態に遷移する。第1および第2のトランジスタが共にオフ状態からオン状態に遷移する速度が速くなり動作速度を向上できる。
【0008】
オン動作するときの動作電圧は、例えば背景技術欄に記載された特許文献1の構成では、第1のトランジスタの制御端子−出力端子間電圧と、第2のトランジスタの制御端子−出力端子間電圧とを加えた電圧で動作する。請求項1記載の発明では、第1のトランジスタのオン時の入力端子−出力端子間のオン電圧と、第2のトランジスタの制御端子−出力端子間電圧とを加えた電圧で動作する。したがって、第1のトランジスタのオン電圧は制御端子−出力端子間電圧よりも低いため、当該第1及び第2のトランジスタの動作電圧を低くすることができ、低電圧駆動時の動作の信頼性を確保できる。
【0009】
電源電圧が第2のトランジスタのVGSS(ゲート−ソース間定格電圧)以上の場合には、第2のトランジスタを破壊する懸念があるものの、クランプ回路が第2のトランジスタの制御端子と出力端子との間に接続されているため、当該制御端子および出力端子間の印加電圧が必要以上に上昇することが制限され第2のトランジスタを保護できる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、制御信号生成素子に第1電流を流すことで第1のトランジスタの制御端子にオン制御信号が印加された後、PWM駆動時のデューティ比に応じて予め設定された比率又は所定の駆動時間後に制御信号生成素子に流れる電流を第1電流よりも低い第2電流にして低減させているため、駆動装置内に流れる通電電流を低減することができ、消費電流を低減できる。
【0011】
請求項3記載の発明のように、電流低減回路は、制御信号生成素子に第1電流を流すときには第1数の複数のスイッチング素子をオンして複数の抵抗に電流を流すように構成し、制御信号生成素子に第2電流を流すときには第1数よりも少ない第2数のスイッチング素子をオンして抵抗に電流を流すように構成すると良い。
【0012】
また、請求項4記載の発明のように、電流低減回路は、制御信号生成素子に第1電流を流すときには第1数の複数のスイッチング素子をオンして複数の電流源から電流を引くように構成し、制御信号生成素子に第2電流を流すときには第2数の複数のスイッチング素子をオンして電流源から電流を引くように構成するト良い。
【0013】
請求項5記載の発明のように、車載用のフューエルポンプを駆動する駆動装置に適用しても良い。
請求項6記載の発明によれば、抵抗回路が第2のトランジスタの制御端子に接続されているため、第2のトランジスタの制御端子に重畳するノイズの発生を抑制でき、回路動作の信頼性を向上できる。
【0014】
請求項7記載の発明によれば、抵抗回路が第2のトランジスタの制御端子と第1のトランジスタの出力端子との間に接続された第1の抵抗要素と、第2のトランジスタの制御端子と第3のトランジスタの出力端子との間に接続された第2の抵抗要素とを備えており、第1、第2の抵抗要素の抵抗値を可変とすることで、ノイズの発生を抑制しつつ所望の速度を満たすように調整できスイッチング損失を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1実施形態について示す概略的な回路構成図
【図2】(a)及び(b)は、駆動制御信号の一例を示すタイミングチャート
【図3】本発明の第2実施形態について示す要部の回路構成図
【図4】本発明の第3実施形態について示す図3相当図
【図5】(a)及び(b)は、実験結果の波形例を示す図
【図6】クランプ回路の効果を示す波形例を示す図
【図7】本発明の第4実施形態について示すクランプ回路の構成図
【図8】本発明の第5実施形態について示す図3相当図
【図9】本発明の第6実施形態について示す電流低減回路の構成図
【図10】本発明の第7実施形態について示す図9相当図
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1ないし図4を参照しながら説明する。本実施形態では、車載バッテリ電圧(電源電圧)VBから電源供給される車載用のフューエルポンプを負荷Mとした駆動装置1の形態を示す。図1は、電圧VDDの電源ノード及びグランド間に対し、ハイサイド側のNチャネル型のMOSトランジスタQH、ロウサイド側のNチャネル型のMOSトランジスタQLを出力側に直列接続した駆動装置1を示している。トランジスタQHのドレイン−ソース間には還流ダイオードDHが接続されており、トランジスタQLのドレイン−ソース間には還流ダイオードDLが接続されている。
【0017】
この駆動装置1は、トランジスタQHを駆動する駆動回路2、トランジスタQLを駆動する駆動回路3、駆動回路2の電源電圧を生成するブートストラップ回路4を接続して構成されている。この駆動装置1は、半導体集積回路として構成されている。ブートストラップ回路4は、ダイオードD0をバッテリ電圧VBの電源ノードとブースト端子BSの間に接続し、ブートストラップ用のコンデンサC1を負荷Mとブースト端子BSとの間に接続して構成されている。ブースト端子BSは、バッテリ電源電圧VBからダイオードD0を介して電源供給を受けている。コンデンサC1は、バッテリ電圧VBの供給を受けて駆動回路2の電源を供給できるよう十分な容量が確保されている。
【0018】
ロウサイド側の駆動回路3は、電源線5、6間に印加される供給電圧VCD(例えば5V)を受けて動作し、トランジスタQLのゲートに対し駆動制御信号SLに応じた駆動電圧を出力する。ハイサイド側の駆動回路2は、車載バッテリ電源電圧VB(通常時は電圧VCDよりも高い電圧)を入力としたブートストラップ回路4において充電されたコンデンサC1から電源供給を受けて動作する。この駆動回路2は、入力回路7を介して駆動制御信号SHを入力し、トランジスタQHのゲートに対し駆動制御信号SHに応じた駆動電圧を出力する。
【0019】
入力回路7は、図示しない制御回路で生成された駆動制御信号SHを入力して駆動回路2に出力する。駆動制御信号SHは、電圧VIN1、VIN2、VINBの3種類のデジタル信号から構成されている。図2(a)、図2(b)は、駆動制御信号SHの波形例を示している。電圧VIN1は周期Tでデューティ比が変動するPWM信号であり、電圧VINBは電圧VIN1の反転信号である。電圧VIN2は、周期Tでデューティが電圧VIN1のデューティ比よりも予め低く設定されるオンオフ信号電圧であり、当該電圧VIN2のオン立上り時点は電圧VIN2の立上り時点とほぼ一致する。尚、電圧VIN2は、周期Tで予め定められる所定時間だけ「H」となる電圧であっても良い。図2(a)は電圧VIN2のオン時間を一定にした例であり、図2(b)は電圧VIN2のオン時間を電圧VIN1のデューティ比に応じて変更させた例である。デューティ比に応じて変更させることでトランジスタQ7のオン時間を確実に確保出来る。
【0020】
図1に戻って、電圧VIN1は、Nチャネル型MOSトランジスタQ1のゲートに入力されている。このトランジスタQ1のソースは、抵抗R1を介してアナロググランドAGNDに接続されている。
【0021】
他方、電圧VIN2は、Nチャネル型MOSトランジスタQ2のゲートに入力されている。このトランジスタQ2のソースは、抵抗R2を介してアナロググランドAGNDに接続されている。トランジスタQ1およびQ2のドレインは互いに共通接続されている。抵抗R1の抵抗値は、抵抗R2の抵抗値よりも十分大きく設定されており、トランジスタQ1のオン時に流れるオン電流I1は、トランジスタQ2のオン時に流れるオン電流I2よりも十分低くなるように構成されている。
【0022】
さらに、電圧VINBは,Nチャネル型MOSトランジスタQ3のゲートに入力されている。このトランジスタQ3のソースは、抵抗R3を介してアナロググランドAGNDに接続されている。
【0023】
トランジスタQ1及びQ2のドレインの共通接続点N1は、抵抗R4を介してNチャネル型のMOSトランジスタQ4のソースに接続されている。また、トランジスタQ3のドレインは、抵抗R5を介してNチャネル型のMOSトランジスタQ5のソースに接続されている。
【0024】
これらのトランジスタQ4及びQ5のゲートには、電源電圧VCDがダイオードD1を介して印加されている。また、トランジスタQ4のゲート−ソース間には、ツェナーダイオードD2が逆方向接続されており、当該ダイオードD2がトランジスタQ4のゲートを保護する。さらに、トランジスタQ5のゲート−ソース間には、ツェナーダイオードD3が逆方向接続されており、当該ダイオードD3がトランジスタQ5のゲートを保護する。
【0025】
トランジスタQ4のドレインは、抵抗R6を介してPチャネル型のMOSトランジスタQ6及びQ7(第1のトランジスタに相当)のゲート(制御端子)に接続されている。トランジスタQ6及びQ7のソース(入力端子)はブースト端子BSに共通接続されている。トランジスタQ7のドレイン(出力端子)は、トランジスタQH(第2のトランジスタに相当)のゲート(制御端子)に接続されると共に、Nチャネル型のMOSトランジスタQ8(第3のトランジスタに相当)のドレイン(出力端子)に接続されている。トランジスタQ8のソースは、トランジスタQH及びQLの共通接続点を介して負荷Mに接続されている。
【0026】
抵抗R6及びR7とブースト端子BSとの間には、トランジスタQ6及びQ7を駆動するための駆動回路8が設けられている。また、トランジスタQ5とブースト端子BSとの間には、トランジスタQ8を駆動するための駆動回路9が設けられている。
【0027】
駆動回路8は、抵抗R8、NPN形トランジスタQ9、ダイオードD7、Pチャネル型のMOSトランジスタQ10を図示形態に接続して構成されている。この駆動回路8の出力は、トランジスタQ6及びQ7のゲートに与えられており、駆動制御信号SHに応じてトランジスタQ6及びQ7のゲート印加電圧を調整し、主にトランジスタQ6及びQ7をオフ駆動するときに動作する。
【0028】
以下、駆動回路8の具体的な結線関係を説明する。抵抗R8の一端とトランジスタQ9のコレクタとトランジスタQ10のソースとは共通接続されており、これらの共通接続点はトランジスタQ6及びQ7のソースに接続されている。抵抗R8の他端はトランジスタQ9のベースに接続されている。ダイオードD7は、トランジスタQ9のエミッタからベースに向けて順方向接続されている。トランジスタQ9のエミッタはトランジスタQ10のゲートに接続されている。トランジスタQ10のドレインはトランジスタQ6及びQ7のゲートに共通接続されている。
【0029】
駆動回路9は、PNP形トランジスタQ11、Q12、抵抗R9、R10、Nチャネル型のMOSトランジスタQ13、ツェナーダイオードD8及びD9を主として図示形態に接続して構成される。この駆動回路9の出力は、トランジスタQ8のゲートに与えられており、駆動制御信号SHの電圧VINBに応じてトランジスタQ8のゲート印加電圧を調整し、当該トランジスタQ8をオンオフ駆動するときに動作する。
【0030】
以下、駆動回路9の具体的な結線関係を説明する。トランジスタQ11のエミッタと抵抗R9の一端は共通接続されており、抵抗R9の他端はトランジスタQ11のベースに接続されると共にトランジスタQ12のエミッタに接続されている。トランジスタQ11のコレクタはトランジスタQ12のベースに接続されると共にトランジスタQ14のコレクタに接続されている。
【0031】
トランジスタQ12のコレクタは、トランジスタQ13のドレインに接続されると共に、トランジスタQ8のゲートに接続されている。トランジスタQ13のソースはトランジスタQ8のソースに共通接続されている。トランジスタQ13のゲート−ソース間には、抵抗R10が接続されると共に、ダイオードD8及びD9が逆方向直列接続されており、当該トランジスタQ13のゲート−ソース間電圧が所定電圧以上に上昇しないよう保護が図られている。
【0032】
トランジスタQ14のベースは、トランジスタQ7及びQ8の共通接続点に接続されている。またトランジスタQ14のエミッタは、ダイオードD4のアノードに接続されている。ダイオードD4のカソードはトランジスタQ5のドレインに接続されている。トランジスタQ6のドレインはトランジスタQ13のゲートに接続されると共に、ダイオードD5のアノードに接続されている。ダイオードD5のカソードはトランジスタQ5のドレインに接続されている。トランジスタQ13のソースは、ダイオードD6のアノードに接続されており、ダイオードD6のカソードはトランジスタQ4及びQ5のゲートに接続されている。
【0033】
トランジスタQ7のゲート−ソース間には、抵抗R11と共に、ツェナーダイオードD10及びD11が逆方向直列接続されており、当該トランジスタQ7のゲート−ソース間電圧が所定電圧以上に上昇しないよう保護が図られている。また、トランジスタQ8のゲート−ソース間には、抵抗R12と共に、ツェナーダイオードD11及びD12が逆方向直列接続されており、当該トランジスタQ8のゲート−ソース間電圧が所定電圧以上に上昇しないよう保護が図られている。
【0034】
さらに、トランジスタQ7およびQ8のドレインの共通接続点とトランジスタQ8のソースとの間には、図示極性でツェナーダイオードD14、D15が複数接続されている。これらのダイオードD14、D15は、トランジスタQHのゲート−ソース間電圧が所定電圧以上に上昇しないように定電圧保護を図るものであり、クランプ回路10として機能する。尚、クランプ回路10は、下記(Z)式に示す電荷量Qを吸収可能な回路で構成される。
【0035】
Q=(C1の容量値)×(バッテリ電圧VB−ダイオードD0の順方向電圧VF)
−(トランジスタQHのゲート容量Cg×クランプ電圧Vcl) …(Z)
ブートストラップ回路4は、ハイサイド側のトランジスタQHがオフで且つロウサイド側のトランジスタQLがオンしている期間において、バッテリ電圧VBを供給する電源線からコンデンサC1に充電される回路であり、トランジスタQ7およびQHがオフからオン状態に遷移するにあたって、コンデンサC1の充電電圧に応じてブースト端子BSの電圧を昇圧させる回路である。駆動回路2は、このブースト端子BSの電圧を電源電圧としてトランジスタQHを駆動している。
【0036】
上記構成の定常状態における基本的動作について説明する。本実施形態では、ハイサイド側の駆動回路2、入力回路7およびトランジスタQHの動作に特徴を備えているため、この部分を中心に説明する。図2に示すように、駆動制御信号SH(電圧VIN1,VIN2,VINB)がトランジスタQ1〜Q3のゲートに印加される。
【0037】
PWM制御等で用いられる駆動制御信号SH及びSLは、所定のスイッチング周波数(1/T)で「H」レベルと「L」レベルを繰り返し、デッドタイム期間を除いて互いに異なるレベルとなる。駆動制御信号SHの電圧VIN1、SLがそれぞれ「H」、「L」のときには、トランジスタQHがオン、トランジスタQLがオフとなり、駆動制御信号SHの電圧VIN1、SLがそれぞれ「L」、「H」のときには、トランジスタQHがオフ、トランジスタQLがオンとなる。主に、トランジスタQHがオフで且つトランジスタQLがオンとなっているときに、コンデンサC1にはバッテリ電圧VBが充電され、トランジスタQHがオン、トランジスタQLがオフとなっているときに当該コンデンサC1の充電電圧が昇圧され当該昇圧電圧がブースト端子BSを通じて駆動回路2に供給される。
【0038】
以下、駆動制御信号SHが変化したときの動作について説明する。
(A)駆動制御信号SHの電圧VIN1が「H」レベル、駆動制御信号SLが「L」レベルとなる場合
図2の(1)に示すタイミングにおいて、制御回路は駆動制御信号SHの電圧VIN1を「H」とする。この時点では、トランジスタQ1及びQ2のゲートに「H」が与えられ、トランジスタQ3のゲートに「L」が与えられる。
【0039】
このとき、トランジスタQ1およびQ2は共にオン状態に遷移すると共に、トランジスタQ3はオフ状態に遷移する。トランジスタQ3がオフするため、抵抗R7及びR8、トランジスタQ9、ダイオードD7に流れる通電経路も遮断される。したがって、トランジスタQ10はオフ状態となり、駆動回路8は機能しない。
【0040】
トランジスタQ1およびQ2がオンすると、その共通接続点N1から電流I1+I2を引く。定常状態では、ブートストラップ回路4によりバッテリ電圧VBが昇圧されたブースト端子BSの電圧がダイオードD10及びD11、抵抗R11及びR6、トランジスタQ4、抵抗R4に印加されるようになり、電流I1+I2が当該素子D10及びD11、R11及びR6、Q4、R4を通じて流れる。ダイオードD10の逆方向電圧とダイオードD11の順方向電圧とを加えた電圧がトランジスタQ6及びQ7のゲート−ソース間に印加されるようになり、両トランジスタQ6及びQ7が共にオン状態に遷移する。
【0041】
このとき、トランジスタQ11、Q14、ダイオードD4に流れる通電経路が遮断され、トランジスタQ11、Q14が共にオフし、トランジスタQ12もオフする。また、トランジスタQ6はオンするものの、トランジスタQ5がオフするため、ダイオードD5を通じた通電経路も遮断され、抵抗R10及びダイオードD8及びD9の印加電圧に応じてトランジスタQ13のゲート電圧が上昇し、当該トランジスタQ13がオンする。したがって、トランジスタQ8のゲート、ソースにはほぼ同一電位が印加されるようになり、トランジスタQ8はオフする。トランジスタQ7がオン状態に遷移しつつトランジスタQ8がオフ状態に遷移するため、トランジスタQHのゲート電圧が上昇しトランジスタQHがオンする。
【0042】
トランジスタQHがオン状態になるのに十分な時間T2が経過した後、図2の(2)に示すタイミングにおいて、制御回路は駆動制御信号SHの電圧VIN2を「H」から「L」に制御する。すると、トランジスタQ2がオフし、共通接続点N1から引かれる電流もI1+I2からI1に低下する。本実施形態に示すように、抵抗R1の抵抗値が抵抗R2の抵抗値に比較して十分に大きく設定されていると、電流I1を電流I1+I2に比較して十分に低くできる。すなわち、トランジスタQ1とこのトランジスタQ1に直列接続された抵抗R1、および、トランジスタQ2とこのトランジスタQ2に直列接続された抵抗R2は、電流低減回路として機能する。これにより、抵抗R4、R6、R11、ダイオードD10及びD11による制御信号生成素子に流れる通電電流を大幅に低減でき、消費電流を低減できる。
(B)駆動制御信号SHの電圧VIN1が「L」レベル、駆動制御信号SHが「H」レベルの場合
ハイサイド側のオン時間が経過した後、図2の(3)のタイミングにおいて、制御回路は電圧VIN1を「H」から「L」に制御すると共に、電圧VINBを「L」から「H」に制御する。すると、トランジスタQ1及びQ2が共にオフし、抵抗R4及びR6に流れる電流が遮断される。
【0043】
他方、トランジスタQ3がオンすると、トランジスタQ5、Q3には定常的に電流が流れるようになる。また、トランジスタQ3がオンすると、抵抗R8、トランジスタQ9およびダイオードD7を通じて過渡的にトランジスタQ10のゲート容量が充電されることになり、トランジスタQ10がオンする。トランジスタQ10がオンすると、トランジスタQ10のドレイン電位がブースト端子BSの電位とほぼ同電位となる。このことから、トランジスタQ6、Q7のゲート電位およびソース電位はほぼ同電位となり、トランジスタQ6およびQ7がオフする。
【0044】
また、前述の動作とほぼ同時に、トランジスタQ3がオンすると、駆動回路9を構成する抵抗R9、トランジスタQ11、Q12に通電されるようになる。電流がトランジスタQ12を通じて抵抗R12、ダイオードD12、D13に流れる。また、前述したように、トランジスタQ6、Q7はオフするように動作するため、トランジスタQ13のゲート電位が低下し、トランジスタQ13がオフ状態に移行する。これにより、トランジスタQ8のゲート電位が上昇し、トランジスタQ8がオン状態に移行する。
【0045】
トランジスタQ8がオンになると、トランジスタQHのゲート電位、ソース電位がほぼ同電位となり、トランジスタQHがオフする。このようにして、図2の(3)のタイミングから所定時間を経てハイサイド側のトランジスタQHがオフするようになる。その後、図2の(4)の時点において、前記した(1)の動作が繰り返されるようになる。
【0046】
以下、本実施形態に係る特徴部分の動作を詳細説明する。本実施形態の特徴部分は、主にトランジスタQ7、Q8、QH、クランプ回路10の過渡的な動作にある。そこで、この部分の回路の諸電圧、電流の過渡現象について説明する。
【0047】
従来より、ブートストラップ回路4を構成するコンデンサC1の両端子に接続される前段および次段のトランジスタQ7、QHは、共にNチャネル型のMOSトランジスタにより構成されていることが多い。しかしながら、前段のトランジスタ(本実施形態のトランジスタQ7に相当)が例えば特許文献1の技術思想のようにNチャネル型のMOSトランジスタで構成されていると、当該前段および次段のトランジスタ(本実施形態のトランジスタQ7、QHに相当)を共にオフ状態からオン状態にするためには、初段および次段のトランジスタのゲート−ソース間電圧を共に閾値電圧VTに到達させる必要がある。すなわち、前段のNチャネル型のMOSトランジスタのゲート電位と負荷Mの端子電圧との間に閾値電圧VTの2倍の電圧が必要となる。しかも、これらの前段及び次段のトランジスタのオン抵抗を下げるためにはさらに高電圧とする必要がある。
【0048】
したがって、車両内に搭載されるバッテリ電圧VBが何らかの事情に応じて低下したときに所望のスイッチング速度を得られない、または出力(VMP)電圧低下の可能性がある。特に、本実施形態に示すようにフューエルポンプを負荷Mとして適用しているときに、バッテリ電圧VBが低下してしまいフューエルポンプが作動しなくなると車両自体が動作できなくなってしまうため、この不具合は避ける必要がある。この場合、例えば前段のトランジスタがNチャネル型のMOSトランジスタで構成されているとソースフォロアで動作するため、電圧増幅度が低くスイッチングスピードが劣る要因となっていることが確認されている。
【0049】
本実施形態では、この前段のトランジスタに代えてPチャネル型のMOSトランジスタQ7を適用している。この場合、トランジスタQ7による増幅回路はソース接地回路として動作するため、当該トランジスタQ7による回路が高電圧増幅度の回路となる。したがって、図2の(1)の時点で、MOSトランジスタQ7のゲート−ソース間にオン制御電圧が印加されたときには、当該MOSトランジスタQ7のドレイン電位がソース電位に急速に近づき、従来構成に比較して急速にオン状態に遷移しオン時間が短時間となる。トランジスタQ7が急速にオン状態に遷移すると、トランジスタQHのゲート電位が急峻に上昇し、トランジスタQHが急速にオン状態に遷移する。これにより、素早くスイッチングすることができ動作速度を向上できる。
【0050】
電圧VBがトランジスタQHのゲート−ソース間定格電圧VGSS以上の高電圧時にトランジスタQHのゲート電位を上昇させる時でも、クランプ回路10がトランジスタQHのゲート−ソース間に接続されているため、当該ゲート−ソース間電圧が必要以上に上昇することがなくなる。これにより、トランジスタQHのゲート−ソースを高電圧から保護することができる。
【0051】
このとき、当該回路構成部分(両トランジスタQ7及びQHの構成部分)では、(トランジスタQHの閾値電圧VT+トランジスタQ7のドレイン−ソース間電圧VDS)のみで駆動できる。トランジスタQ7のドレイン−ソース間電圧VDSは閾値電圧VTよりも大幅に低い電圧であるため、トランジスタQ7及びQHの動作電圧を低くすることができ、バッテリ電圧VBが低下したとしても安定して動作する。これにより、低電圧駆動時の動作の信頼性を確保できる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態によれば、動作速度を向上できると共に、低電圧駆動時の動作の信頼性を確保でき、回路を保護できる。また、電圧VIN1及びVIN2の立上り後に、PWM駆動時のデューティ比に応じて予め設定された比率又は所定の駆動時間後に電圧VIN2を立下げているため、トランジスタQ2がオフすることで駆動装置1に流れる通電電流を低減でき、駆動装置1の消費電流を低減できる。
【0053】
制御信号生成素子(R4,R6,R11,D10,D11)に電流I1+I2(第1電流)を流すことでトランジスタQ7のゲートにオン制御信号が印加された後、PWM駆動時のデューティ比に応じて予め設定された比率又は所定の駆動時間後に制御信号生成素子に流れる第2電流を電流I1にしているため、消費電流を低減できる。
【0054】
この場合、制御信号生成素子(R4,R6,R11,D10,D11)に電流I1+I2を流すときには、2つ(第1数)のトランジスタQ1、Q2をオンして抵抗R1、R2に電流を流し、制御信号生成素子に電流I1を流すときには、1つ(第2数)のトランジスタQ1をオンして抵抗R1に電流を流して電流を低下させているため、消費電流を低減できる。
【0055】
(第2実施形態)
図3は、本発明の第2実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、第2の2トランジスタの制御端子に抵抗回路を接続したところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0056】
トランジスタQHのゲート電圧(制御端子の制御信号)は、ブースト端子BSの電圧変化の影響を受けやすく、当該トランジスタQHの制御信号は負荷Mの駆動電圧に直結する。トランジスタQHのゲートにノイズが重畳する可能性があるときには、図3に示すように、トランジスタQHのゲートとトランジスタQ7及びQ8の共通接続点との間に位置して抵抗R13による抵抗回路を付加すると良い。すると、抵抗R13が端子GHに重畳するノイズを抑制することができ、トランジスタQHのゲート電圧を調整することができる。
本実施形態によれば、トランジスタQHのゲートに接続された抵抗回路を具備しているため、トランジスタQHに重畳するノイズを抑制できる。
(第3実施形態)
図4は、本発明の第3実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、第2のトランジスタの制御端子に接続される抵抗回路として、第2のトランジスタの制御端子と前記第1のトランジスタの出力端子との間に接続された第1の抵抗要素と、前記第2のトランジスタの制御端子と第3のトランジスタの入力端子との間に接続された第2の抵抗要素とを備えているところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0057】
この図4に示すように、抵抗R13a(第1の抵抗要素に相当)がトランジスタQHのゲートとトランジスタQ7のドレインとの間に位置して構成されている。また、抵抗R13b(第2の抵抗要素に相当)がトランジスタQHのゲートとトランジスタQ8のドレインとの間に位置して構成されている。これらの抵抗R13a及びR13bは抵抗回路を構成し、当該抵抗回路がトランジスタQ7及びQ8のドレイン間に介在している。
【0058】
抵抗R13aはトランジスタQHがオン状態からオフ状態に遷移する立上り電圧の時定数を調整する素子である。抵抗R13bはトランジスタQHがオフ状態からオン状態に遷移する立下り電圧の時定数を調整する素子である。これらの抵抗R13a及びR13bの抵抗値を適宜調整することで、ブートストラップ作用に伴うオーバーシュート量を調整できると共にノイズの抑制具合を調整できる。
【0059】
これらの抵抗R13a及びR13bは、ノイズの発生を抑制しつつスイッチング損失を低減しながら立下り速度を所望の動作速度を満たすようにするため、抵抗R13bの抵抗値を抵抗R13aの抵抗値よりも小さく設定すると良い。
【0060】
尚、クランプ回路10は、特に立上り電圧のオーバーシュートを抑制するため設けられるため、トランジスタQ7のドレインと抵抗R13aとの間の共通接続点に接続されている。
【0061】
本実施形態によれば、抵抗R13aがトランジスタQHのゲートとトランジスタQ7のドレインとの間に接続されており、抵抗R13bがトランジスタQHのゲートとトランジスタQ8のドレインとの間に接続されているため、ブートストラップ作用に伴うオーバーシュート量を調整できると共にノイズの抑制具合を調整できる。さらに、トランジスタQHのゲート電圧の急峻な立上り時のノイズを特に抑制できると共に、トランジスタQHのノイズの発生を抑制しつつゲート電圧の立下り速度について所望の速度を満たすように調整できスイッチング損失を低減できる。
【0062】
<具体的動作を示す波形例>
図5(a)及び図5(b)は、発明者らが実験を行ったときの波形例を示している。図5(a)は、信号波形例を示しており、図5(b)は、図5(a)の立上り電圧、立下り電圧のスケール拡大図を概略的に示している。立上り電圧は、図5(a)に示すように、ブースト端子BSの立上り電圧(約13[V]から26[V]の立上り)に負荷Mの端子電圧の立上り電圧も追従しているのがわかる。ブースト端子BSの電圧はオーバーシュートしているものの、クランプ回路10の作用によってトランジスタQHのゲート端子GHの電圧が抑えられている。この実験結果によれば、負荷Mの端子電圧の10%−90%立上り時間として、14.264[ns]を実現している。また、90%−10%立下り時間は14.955[ns]を実現している。
【0063】
本出願に係る発明者と同一出願人による先行特許文献1(特開2006−109012号公報)の技術思想では、前述したようにNチャネル型のMOSトランジスタを前段および次段のトランジスタとして用いているが、この技術思想を適用すると、およそ50[ns]の立上り時間、立下り時間と計測されている。本実施形態の構成を適用すると、その1/3になり大幅に時間短縮できることが確認されている。
【0064】
図6は、クランプ回路の効果を示す別の波形例を示している。この図6に示すように、ブースト端子BSの立上り電圧がオーバーシュートしているが、クランプ回路10が構成されているため、トランジスタQHのゲート端子GHでは、このブースト端子BSの急峻な立上り電圧の影響が極力抑えられていることがわかる。
尚、図5および図6では、立上り電圧等のオーバーシュート量が互いに異なっているものの、これらは抵抗R13、R13a、R13bの抵抗値の設定が異なるためであり、これらの抵抗値を調整することで所望の状態に調整できる。
【0065】
(第4実施形態)
図7は、本発明の第4実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、クランプ回路の構成にある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
この図7に示すように、クランプ回路10に代わるクランプ回路11は、ツェナーダイオードD16と抵抗R14とを直列に接続し、ダイオードD16のアノードと抵抗R14との共通接続点にベースを接続したNPN形トランジスタQ15を接続して構成される。トランジスタQ15のコレクタは、ダイオードD16のカソードに接続されており、トランジスタQ15のエミッタは抵抗R14の他端に接続されている。このようなクランプ回路11でも同様の機能を備えているため、クランプ回路10に代えて適用できる。
【0066】
(第5実施形態)
図8は、本発明の第5実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、第1のトランジスタ、第3のトランジスタ(それぞれ前述実施形態のMOSトランジスタQ7、Q8)の種類を変更して適用したところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
図8は、図3に代わる回路構成図を概略的に示している。この図8に示すように、PNPトランジスタQ7aが、MOSトランジスタQ7に代えて形成されている。また、NPNトランジスタQ8aが、MOSトランジスタQ8に代えて形成されている。このように、第1、第3トランジスタの種類を変更したとしても前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0067】
(第6実施形態)
図9は、本発明の第6実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、電流低減回路の構成を変更して適用したところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0068】
図9は、駆動制御信号SHの入力部分の回路構成を主として示している。
この図9に示すように、電流低減回路としてのトランジスタQ2に代えて、トランジスタQ2a、Q2bが並列接続されており、これらのトランジスタQ2a、Q2bにそれぞれ抵抗R2a、R2bが直列接続されている。トランジスタQ2a、Q2bは、そのゲートが互いに共通接続されており、電圧VIN2が印加される。制御回路が駆動制御信号SHの電圧VIN2を「H」とすると、トランジスタQ2a、Q2bがオンし、電流が抵抗R2aおよびR2bの並列抵抗に流れることになる。
【0069】
その後、制御回路が駆動制御信号SHの電圧VIN2を「H」から「L」に制御する。すると、トランジスタQ2a、Q2bがオフし、抵抗R1が引く電流も低下する。抵抗R1の抵抗値が抵抗R2aおよびR2bの並列抵抗値に比較して十分に大きく設定されていると、電流を十分に低くできる。すなわち、本実施形態では、トランジスタQ1、Q2a、Q2b、抵抗R1、R2a、R2bは電流低減回路として機能する。抵抗R2a、R2bの抵抗値を適宜設定することで前述実施形態に比較して設計の自由度を増すことができる。
【0070】
本実施形態によれば、制御信号生成素子(R4,R6,R11,D10,D11)に電流I1+I2を流すときには、3つ(第1数)のトランジスタQ1、Q2a、Q2bをオンして抵抗R1、R2a、R2bに電流を流し、制御信号生成素子に電流I1を流すときには、1つ(第2数)のトランジスタQ1をオンして抵抗R1に電流を流して電流を低下させているため、消費電流を低減できる。
【0071】
(第7実施形態)
図10は、本発明の第7実施形態を示すもので、前述実施形態と異なるところは、電流低減回路の構成を変更して適用したところにある。前述実施形態と同一部分については同一符号を付して説明を省略し、以下、異なる部分について説明する。
【0072】
図10に示すように、前述実施形態で説明した抵抗R1〜R3に代えて電流源I1、I2、IBを設けて構成している。また、MOSトランジスタQ1〜Q3に代えて、電圧制御型のアナログスイッチ(スイッチング素子)SW1〜SW3を適用して構成している。
【0073】
本実施形態によれば、制御信号生成素子(R4,R6,R11,D10,D11)に電流I1+I2を流すときには、2つ(第1数)のアナログスイッチSW1〜SW2をオンして電流源I1、I2から電流を引くように構成し、電流I1を流すときには、1つ(第2数)のアナログスイッチSW1をオンして電流を引くように構成している。このような実施形態でも前述実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0074】
(他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に示す変形又は拡張が可能である。
前述実施形態では、当該実施形態の特徴を示すため、素子保護用又は安定動作用の回路を省略したり設けたりしている部分もあるが、例えば過電流を制限するための抵抗素子などを実用上適宜挿入したり、素子保護用又は安定動作用の回路を適宜省いた回路に適用しても良い。駆動装置1の構成はトランジスタQ7、QHを具備していれば、当該トランジスタQ7のゲート(制御端子)に印加するゲート信号生成回路の構成は前記した構成に限られない。つまり、入力回路7、駆動回路8、9の構成は前記構成に限られない。トランジスタQ2、抵抗R2、駆動制御信号SHの電圧VIN2を削除した構成に適用できる。
【0075】
前述実施形態では、車載用のフューエルポンプのハイサイド側の駆動回路2に適用した駆動装置1を説明したが用途は限られない。
前述実施形態では、トランジスタQ7をPチャネル型のMOSトランジスタで構成した実施形態を示したが、これに限定されるものではなく、例えば、PNP形トランジスタ(バイポーラトランジスタ等)を適用しても良い。制御信号生成素子の構成は前記した構成に限られない。構成素子を必要に応じて削除したり、抵抗などの素子をさらに付加して構成しても良い。
【符号の説明】
【0076】
図面中、1は駆動装置、2、3は駆動回路、4はブートストラップ回路、5、6は電源線、7は入力回路、C1はコンデンサ、D0はダイオード、Q2はNチャネル型のMOSトランジスタ(電流低減回路)、Q7はPチャネル型のMOSトランジスタ(第1のトランジスタ)、Q8はNチャネル型のMOSトランジスタ(第3のトランジスタ)、QHはNチャネル型のMOSトランジスタ(第2のトランジスタ)、Mは負荷を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御端子、入力端子および出力端子を備え、電源ノードから電源電圧が前記入力端子に通電されるPNP形又はPチャネル型の第1のトランジスタと、
制御端子、入力端子および出力端子を備え、前記第1のトランジスタの出力端子に制御端子が接続されたNチャネル型の第2のトランジスタと、
電源ノードと前記第2のトランジスタの出力端子との間に接続されたブートストラップ回路と、
前記第2のトランジスタの制御端子と出力端子との間に接続されたクランプ回路と、を備え、
前記第2のトランジスタの出力端子に接続された負荷を駆動することを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記第1のトランジスタの制御端子に接続された制御信号生成素子と、
前記制御信号生成素子に第1電流を流すことで前記第1のトランジスタの制御端子にオン制御信号が印加された後、PWM駆動時のデューティ比に応じて予め設定された比率又は所定の駆動時間後に前記制御信号生成素子に流れる電流を前記第1電流よりも低い第2電流にする電流低減回路とを備えたことを特徴とする請求項1記載の駆動装置。
【請求項3】
前記電流低減回路は、複数のスイッチング素子と、当該複数のスイッチング素子にそれぞれ直列接続された複数の抵抗とを備え、
前記制御信号生成素子に第1電流を流すときには第1数の複数のスイッチング素子をオンして前記複数の抵抗に電流を流すように構成され、
前記制御信号生成素子に第2電流を流すときには前記第1数よりも少ない第2数のスイッチング素子をオンして前記抵抗に電流を流すように構成されていることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項4】
前記電流低減回路は、複数のスイッチング素子と、当該複数のスイッチング素子にそれぞれ直列接続された複数の電流源とを備え、
前記制御信号生成素子に第1電流を流すときには第1数の複数のスイッチング素子をオンして前記複数の電流源から電流を引くように構成され、
前記制御信号生成素子に第2電流を流すときには前記第1数よりも少ない第2数のスイッチング素子をオンして前記電流源から電流を引くように構成されていることを特徴とする請求項2記載の駆動装置。
【請求項5】
車載用のフューエルポンプを駆動する駆動装置に適用したことを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の駆動装置。
【請求項6】
前記第2のトランジスタの制御端子に接続された抵抗回路を備えたことを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の駆動装置。
【請求項7】
出力端子を備え、前記第1のトランジスタとは逆導電型の第3のトランジスタであって、前記出力端子が前記第2のトランジスタの制御端子に接続された第3のトランジスタを備え、
前記抵抗回路は、前記第2のトランジスタの制御端子と前記第1のトランジスタの出力端子との間に接続された第1の抵抗要素と、前記第2のトランジスタの制御端子と前記第3のトランジスタの出力端子との間に接続された第2の抵抗要素とを備えていることを特徴とする請求項6記載の駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−146901(P2011−146901A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5893(P2010−5893)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】