説明

高分子量PEG様化合物を含む治療薬送達システム

本発明は、タンパク質治療薬を含む広範囲の化学および生物学的治療薬を経上皮経路により送達するためのシステムを提供する。このシステムは、治療用化合物と一緒に使用する高分子量ポリエチレングリコール様(HMW PEG様)化合物を含む。必要に応じて、このシステムは、1種以上のHMW PEG様化合物および1種以上の治療薬を含み、デキストランのような保護ポリマーおよび/またはL-グルタミンのような不可欠病原体栄養素を補充した組成物を含む。単独で投与したHMW PEG様化合物も治療上の利点を提供する。また、腸内病原体に起因する消化管由来敗血症を発症するリスクにある上皮のような上皮疾患、障害または症状を予防するまたは治療する方法、並びにHMW PEG様化合物の投与をモニタリングする方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用化合物および治療用組成物をヒトのような哺乳動物に送達または投与するための材料および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療は、疑うまでも無く、継続的な進歩を確保するために著しい費用と努力を伴う近代社会および個々人の基本的懸念ごとの1つである。結果は着実に進歩しており、先進国は、ヒトを含む1種または他の生命体の苦痛とみなされる絶えず増え続けている数の疾患、障害または症状を治療するための増大中の各種治療用化合物を提供する方法をもたらしている。しかしながら、健康についての一般的理解は増大してきているので、医療専門家は、医療を必要とする生命体によって課される制約を益々認識してきている。例えば、哺乳動物は、各々特徴的なサイズ、位置および機構を有する内部臓器系、即ち、臓器および組織を有する。この複雑な内部生体構造は、有効量の活性治療薬を必要とする細胞に送達する能力に制限を課している。健常細胞に対する有害作用および経済性は、大量の治療薬の全身送達を典型的に排除している。結果として、多くの努力は、治療薬の送達に対するターゲッティング手法の開発に向けられている。現在のところ、これらの方法は、治療用化合物の汎用性のある費用効果的なターゲッティングにまで至っていない。さらに、ターゲッティング薬物送達に対する多くの手法は、そのような薬物が治療する生物体の体積内の薬物ターゲットに到達するようにしなければならない内部道程によってもたらされる危険性に対処していない。適切にターゲッティングされている場合でさえも、不安定な薬物は、血流、消化管、リンパ系内で、さらに、身体の細胞外空間内で有効性を喪失する。
【0003】
多くの治療薬、とりわけタンパク質系治療薬においては、基本的な保護方式は、生体内で活性化させるより安定なプロドラッグ化合物を送達するか或いは治療薬含有溶液のpHを安定化させるかのいずれかによって保護を与えなければならない。プロドラッグ法は、候補化合物を個別に特定するための費用高で予測不可能な試験を必要とする。例えば、pH安定化による実際の治療薬の安定化は、治療生物体の生体内環境と適合性のある多くの緩衝液による、広範囲の緩衝液系の開発に至っている。また、安定化は、ウシ血清アルブミン、カゼイン等のような安定化用化合物を含ませることによっても助長し得る。しかしながら、これらの方法は、所定の治療薬と適合性があり且つ有効である緩衝液の開発を必要とすると共に、安定剤の添加は、コストを増大させ、安定剤が所望の治療薬活性を干渉せずまたは他の有害な結果(例えば、免疫原性)を有していないことを担保するための探索を必要する。
もう1つのタイプの安定剤は、タンパク質治療薬のような治療薬に共有結合させている。例えば、ポリエチレングリコール分子(例えば、1〜20kD、典型的には3〜5kD)のタンパク質への共有結合によるタンパク質のPEG化は、治療薬の安定性を改善することが報告されている。Cantin et al., Am. J. 27:659-665 (2002);Specialty Chemicals Magazine, news article ID 7430 (March 25, 2004);Goldenberg, P & T 27(12):619-621 (2002)。しかしながら、これらの修飾は、技術的熟練を必要とし、治療薬のコストを増大させ、有害な二次作用を生体内に導入することなく重要な治療薬活性を保持させていることを確認する注意深い試験が必要である。また、PEG (3〜5kD、例えば、GoLytelyR)のような安定化用化合物は、治療薬を含有する溶液中でも使用されている。また、GoLytelyR (3,340kD)は、それ自体で、例えば、下剤としても使用されている。低分子量PEG (例えば、3〜12kD)の添加は、医学界が探し求めている結果を必ずしも達成していない。即ち、LMW PEGの治療薬含有溶液への添加は、追加のコストを含み、試験を行なってその有効性と無毒性を確認しなければならず、さらに、その使用を新たな治療薬にまで拡大する信頼性を醸成するのに必要な汎用性を欠いている。
【0004】
より大きな分子量のPEG組成物(例えば、20kD)に関しては、Hauet et al., Kidney Int. 62(2):654-667 (2002)は、移植前のドナー腎臓を保存するための20kD PEG含有溶液の使用を報告しており、虚血/再灌流損傷の軽減報告を行っている。しかしながら、上記20kD PEGの溶液は、生体内には投与されていない。また、HMW PEGも僅かな数の生体適合性化合物の任意の1つに共有結合させて、生分解性ナノスフィアを調製するのに使用するジ-ブロックポリマーを合成している。Gref et al., Science 263:1600-1603 (1994)。これらのナノスフィアは生体内使用を意図しているが、そのようなナノスフィアは、これらスフィアが生分解性であることを確認する必要のある生体適合性化合物に共有結合させたHMW PEGを含有しているのみである。ナノスフィアは、他の可能性ある生体内分子担体(例えば、リポソーム、粘着性プラスチック、多糖類ヒドロゲル類)と同様、治療する生物体の生体内環境とは幾分かけ離れた担体内部に治療薬を典型的に隔離することによって、治療薬への安定性および保護手段を提供している。しかしながら、治療薬安定化に対する担体系手法は、回収しなければならない多額の開発コスト並びに治療薬含有担体の調製と送達における相当額の費用を伴う。また、担体系手法は、治療薬自体のあり得るターゲッティング機能を犠牲にし、また、ターゲッティング成果は、これらの技術において解明されていない。さらにまた、担体の使用は、排除または分解させるように(但し、治療薬カーゴが送達されるまではそうでないように)設計しなければならない担体廃棄のさらなる問題を課する。即ち、本技術分野においては、有効性を保持し或いは不安定な薬物さえも安定化させて、そのような化合物を、その意図する作用部位に、その治療価値を喪失する前に送達させることを可能にする治療薬の送達に対する汎用性ある手法が絶えず求められている。
【0005】
全部ではないが殆どの場合において、活性治療薬の送達は、生物体内の異常(例えば、疾患、障害または症状)を治療、改善または予防することを意図している。癌、細胞退化性疾病(例えば、アルツハイマー病)および細菌性敗血症は、主要な健康問題のレベルにまで達し得る或いは多くの場合達するこれらタイプの異常の代表である。理論によって拘束することは望まないが、細胞の異常直前の環境を安定化させることがそのような疾患、障害または症状の同化(elaboration)を遅延させ、改善しまたは予防するのに正の治療効果を有し得ることは可能である。即ち、活性治療薬を送達する汎用性あるシステムに対する当該技術における上記要求以外に、本技術分野においては、異常化のリスクにある細胞の生体内環境を安定化させる組成物、方法およびシステムも絶えず求められている。
微生物介在上皮障害または異常症状は、ヒトおよび動物の健康に対して重大な脅威を与え、医療システムに対する負担を世界的に課している。そのような障害の1つの例である消化管由来の敗血症は、熱傷、新生児全腸炎、重症好中球減少症、炎症性腸疾患および移植後の臓器拒絶反応のような種々の疾患、障害または苦痛のいずれかに悩んでいるヒト患者のような生物体における主要死因である。腸管貯蔵器官は、例えば、重病入院患者における細菌介在敗血症の潜在的致死性病巣であると長いこと認識されている。シュードモナス類(例えば、緑膿菌)のような微生物病原体の腸上皮バリアの調節機能を混乱させる能力は、消化管由来の敗血症を起し得る日和見生物体における決定的な特徴であり得る。多くのこれら感染症において、緑膿菌は、原因病原体として特定されている。重要なことに、腸管は、緑膿菌のような日和見病原体の一次コロニー化部位であることが証明されている。
消化管由来敗血症のような微生物介在性上皮障害の予防または治療に対する通常の治療手法は、不完全な成功を伴っている。抗生物質系手法は、残りの腸内微生物叢に影響を与えない形で腸内病原体に抗生物質を調達する困難性との妥協である。さらに、緑膿菌に代表されるような腸内病原体の多くは、多くの場合、抗生物質攻撃に対して耐性となり、予防または治療に対して費用高で継続的な不完全な成功性の方法しかもたらさない。また、免疫治療法も問題がある。とりわけ、緑膿菌のような多くの腸内病原体は、免疫逃避性(immunoevasive)であり、そのような手法を最低限の有効性しかないものにしている。
【0006】
消化管由来敗血症のような障害の予防または治療に対するもう1つの手法は、腸洗浄である。過去数年間において、ポリエチレングリコール(PEG)溶液を使用する腸洗浄が試みられており、幾つかの事例報告は、PEGが種々の臨床および試験環境に亘って消化管由来敗血症の治療に幾分かの展望を示し得ることを示唆している。これらの溶液中のPEGは3,500ダルトンの平均分子量を有し、これらの溶液は商業的に入手可能である(例えば、Golytely)。PEGのこれら比較的低分子量(LMW)溶液が消化管由来敗血症の治療または予防において治療的利益をもたらすメカニズムは、未知である。典型的には、これらの溶液を使用して、消化管由来敗血症を発症するまたは患うリスクにある生物体の腸管を洗浄または洗い流す。これらのLMW PEG溶液の腸管への投与の結果としては、当該方法の使用化合物の濃度および分子量による処置腸の微生物叢組成における可変性の変化がある。例えば、約20%よりも高いPEG濃度を有する溶液は、殺菌作用を生じ、ストレスを受けた宿主の腸管内の潜在的保護微生物の排除をもたらし得る。また、低分子量PEGの溶液は、ある種の微生物の毒性能力を、これら微生物を保護するにもかかわらず減衰させる点でその有効性を喪失し得る。従って、本技術分野においては、微生物毒性発現(微生物の有害特性)を抑制すると共に、当該微生物または近隣微生物を死滅させず、それによって腸内微生物叢の自然生態系を保護する利益をもたらす溶液が求められている。例えば、本来の微生物叢組成の保護は、さもなければ腸をコロニー化し得る日和見病原体に対して拮抗をもたらすであろう。
微生物叢組成の変化による付随事象は、生物体の生理機能の変化である。これらの生理学的変化は、乳酸塩デヒドロゲナーゼレベルのような任意の多くの特長的酵素活性をアッセイすることによってモニターし得る。従って、腸のLMW PEG治療は、治療生物体の保健および健康にとって予測し得ない、即ち、潜在的に有害で長期の結果を伴って、治療生物体の生理機能に有意の変化をもたらす。さらにまた、そのような治療は、入院ヒト患者のような重病生物体において、大きな腸空洞化の形の肉体的に苦痛のある反応を引き起こす。
即ち、本技術分野においては、治療される生物の生理機能の有意な変化によるさらなる合併症の可能性を生じることなく、微生物介在上皮障害(例えば、消化管由来敗血症)および/またはそのような障害に関連する症状を予防または治療するのに有効な組成物を、そのような利益を達成する方法と一緒に提供することも求められている。
【発明の開示】
【0007】
(発明の概要)
本発明は、当該技術における上述の要求の少なくとも1つを、活性治療薬の送達のための安定環境を与え、或いは、それ自体で、微生物介在性障害を発症するリスクにある上皮表面に特徴を有する異常症状に対する有効な保護を与える高分子量(HMW)ポリエチレングリコール様組成物を提供することによって満たす。HMW PEG様化合物中での安定化送達に適する治療薬の例としては、タンパク質およびペプチド治療薬、並びに小分子治療薬がある。HMW PEG様化合物が治療上の利益をもたらす異常症状の例としては、限定するものではないが緑膿菌のような腸内病原体による消化管由来敗血症、腸内微生物叢に関連する他の腸障害および/または疾患;並びに、ヒトのような哺乳動物の上皮細胞の各種疾患、障害および症状がある。HMW PEG様化合物の例は、HMW PEGである。HMW PEGは、緑膿菌のような病原体の腸上皮表面への接触を抑制または阻止する。さらに、高分子量PEGは、菌体密度感知機構(クオラムセンシング)シグナル伝達ネットワークに関連し得る種々のシグナルに応答性のこれら病原体(例えば、緑膿菌)の毒性発現を抑制する。HMW PEG様化合物(例えば、HMW PEG)が腸内病原体と腸上皮間の感染性界面を遮断する能力は、例えば、異化ストレス後の消化管由来敗血症を予防または治療する別の手法を提供する。重要なことに、HMW PEG様化合物による治療は、ヒト患者並びに各種の他の生物体、例えば、農産的に重要な家畜類(例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ等)、ペット類、および動物園動物において実施するのに費用効率的且つ比較的簡便である。
【0008】
本発明の1つの局面は、ラベル包装材と該包装材中に含有させた有効量の高分子量ポリエチレングリコール様(HMW PEG様)化合物とを含む製造品であって、該包装材が、上記HMW PEG様化合物を、炎症化上皮およびバリア機能障害を含む上皮などの異常上皮細胞によって特徴付けられる症状を治療、改善または予防するのに使用し得ることを表示するラベルまたは添付文書を含んでいる前記製造品を提供する。上記HMW PEG様化合物は、高分子量を有する任意の各種化合物、例えば、カチオン性ポリマー;ポリアルカン、ポリアルケンまたはポリアルキレングリコール(例えば、HMWポリプロピレングリコール、HMWポリエチレングリコール(HMW PEG)またはこれらの混合物);HMW PEGの誘導体、例えば、HMWポリメトキシPEG、HMWモノメトキシPEG、HMWポリプロピレングリコール、またはこれらの混合物であり得る。さらに、上記HMW PEG様化合物は、直鎖C1〜C10アルコキシ基(例えば、メトキシ基)、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基またはこれらの混合物のような少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含む任意の上述の化合物であり得る。上記製造品の化合物は、直鎖C1〜C10アルキル基、枝分れ鎖C1〜C10アルキル基、アリール基(例えば、フェニル基)またはこれらの混合物のようなリンカーをさらに含み得る。また、製造品は、少なくとも5%(w/v)または10%〜20%(w/v)の濃度で存在するHMW PEG様化合物を含む水溶液のような溶液中のHMW PEG様化合物を含み得る。本発明に従うHMW PEG様化合物の平均分子量は、12,000ダルトンよりも大きいか、或いは少なくとも15,000ダルトンであるか、或いは15,000ダルトンよりも大きく20,000ダルトンよりも小さい。
【0009】
ラベルが、上記化合物を投与して上皮の炎症および上皮のバリア機能障害のような異常上皮細胞に特徴を有する症状を治療、改善または予防するための使用説明書を提供する、請求項1記載の本発明の製造品のラベル包装材。さらに詳細には、本発明は、消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症(pig belly)、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの組合せのような症状を意図する。さらに、該症状は、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害、およびこれらの組合せまたは併発のような免疫障害であり得る。炎症性腸疾患の治療、改善または予防用の製造品は、潰瘍性大腸炎、クローン病およびこれらの組合せを治療、改善または予防するのに有用である。
もう1つの局面においては、本発明は、治療上有効量の治療薬をさらに含む上述のような製造品を提供する。さらに詳細には、本発明は、上皮細胞の疾患、障害または症状を治療、改善または予防するのに有用な任意の治療薬を含み、そのような治療薬としては、限定するものではないが、共生微生物製剤、少なくとも1種の共生微生物に由来する組成物、鎮痛性化合物、抗炎症性化合物、免疫系のモジュレーター、抗生物質、抗がん剤、抗潰瘍剤、成長因子、サイトカイン、タンパク質ホルモン、トレフォイルタンパク質およびこれらの混合物がある。治療薬の例としては、5-アミノサリチレート、5-アミノサリチレート部分を含む化合物、コルチコステロイド、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、シクロスポリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、セファロスポリン、タキサン、タキサン部分を含む化合物、カンプトセシン、カンプトセシン部分を含む化合物、5-フルオロウラシル、5-フルオロウラシル部分を含む化合物、抗アンドロゲン化合物、抗エストロゲン化合物、上皮成長因子、腸トレフォイル因子、インスリン、ソマトスタチン、インターフェロンおよびこれらの混合物がある。ある実施態様においては、治療薬は、共生乳酸菌、例えば、ラクトバシルス(Lactobacillus) GG (LGG)、ストレプトコッカス・サリバリウス亜種サーモフィルス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)、ラクトバシルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバシルス・プランタルム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバシルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバシルス・デルブリュック亜種ブルガリクス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacteria longum)、ビフィドバクテリウム・インファンチス(Bifidobacteria infantis)またはビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacteria breve)、並びにこれらの混合物もしくは組合せ(例えば、VSL#3)、またはそのような細菌のいずれかに由来する化合物もしくは組成物である。
【0010】
本発明のもう1つの局面は、HMW PEG様化合物および有効量の治療薬を含む組成物を投与することを特徴とする必要とする対象者の上皮への治療用組成物の投与方法に関する。本発明に従う製造品に関しては、該方法において使用するのに適する治療薬としては、限定するものではないが、共生微生物製剤、少なくとも1種の共生微生物に由来する組成物、鎮痛性化合物、抗炎症性化合物、免疫系のモジュレーター、抗生物質、抗がん剤、抗潰瘍剤、成長因子、サイトカイン、タンパク質ホルモン、トレフォイルタンパク質およびこれらの混合物がある。治療薬の例としては、5-アミノサリチレート、5-アミノサリチレート部分を含む化合物、コルチコステロイド、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、シクロスポリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、セファロスポリン、タキサン、タキサン部分を含む化合物、カンプトセシン、カンプトセシン部分を含む化合物、5-フルオロウラシル、5-フルオロウラシル部分を含む化合物、抗アンドロゲン化合物、抗エストロゲン化合物、上皮成長因子、腸トレフォイル因子、インスリン、ソマトスタチン、インターフェロンおよびこれらの混合物がある。本発明に従う方法の1つの実施態様においては、上記HMW PEG様化合物は、HMW PEG (例えば、HWM PEG 15〜20kD)である。上記治療薬を投与し得る上皮としては、限定するものではないが、腸粘膜、肺粘膜、鼻粘膜、尿道粘膜、食道粘膜、頬粘膜および皮膚がある。ある実施態様においては、治療薬を投与する対象者は、哺乳動物、例えば、ヒトである。本発明のこの局面は、経口投与、直腸投与、洗腸、局所投与、静脈内注入、腹腔内注入、尿道内投与、腟内投与、挿管および補助もしくは無補助呼吸のような本技術分野において既知の任意の投与方法を意図する。本発明のこの局面の各種実施態様においては、治療薬は、タンパク質化合物である。また、上記方法は、有効量のPA-Iレクチン/付着因子、例えば、緑膿菌PA-Iレクチン/付着因子を投与することを含み得る;PA-Iレクチン/付着因子の投与は、とりわけ、タンパク質治療薬の投与を含む方法において意図する。
【0011】
本発明のもう1つの局面は、有効量のHMW PEG様化合物を必要のある対象者に投与することを含み、該HMW PEG様化合物が、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGであることを特徴とする対象者の上皮の微生物介在症状の治療方法に関する。該HMW PEG様化合物は、少なくとも10%で20%未満のHMW PEG様化合物(w/v)を含む水溶液中に存在し得る。対象者は、哺乳動物、例えば、ヒトであり得る。上皮は、腸粘膜、肺粘膜、鼻粘膜、尿道粘膜、膣粘膜、食道粘膜、頬粘膜および皮膚であり得る。本発明のこの局面を実施するに当っては、上記HMW PEG様化合物を、経口投与、直腸投与、腟内投与、腸への投与、局所投与、静脈内注入、腹腔内注入、挿管および補助または無補助呼吸のような本技術分野において既知の任意の経路によって投与し得る。本発明のこの局面による治療において適する症状としては、限定するものではないが、消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの組合せがある。関連する局面においては、本発明は、有効量のHMW PEG様化合物を、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害、およびこれらの合併または併発症のような症状を治療する必要のある対象者に投与する方法を含む。本発明のこれらの局面の双方において、上記HMW PEG様化合物は、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物のような少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGであり得る。微生物によって誘導されたまたはされないの如何にかかわらず、治療に適応し得る症状としては、消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの合併または併発症がある。明確に意図するのは、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害およびこれらの組合せのような症状の治療である。
【0012】
もう1つの局面においては、本発明は、有効量のHMW PEG様化合物を必要とする対象者に投与することを含み、該HMW PEG様化合物が、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGであることを特徴とする上記症状の任意の症候を改善する方法を提供する。
本発明のさらなる局面は、有効量のHMW PEG様化合物を必要とする対象者に投与することを含み、該HMW PEG様化合物が、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGであることを特徴とする、症状の予防方法に関する。本発明は、消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの合併または併発症のような症状の予防方法を意図する。
本発明のさらにもう1つの局面は、消化管由来の敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの合併または併発症のような症状の治療用医薬品の製造における、上述したようなHMW PEG様化合物の使用である。とりわけ意図するのは、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害およびこれらの合併または併発症のような免疫障害に関連する症状を治療する医薬品の製造において有用な化合物である。
【0013】
本発明のもう1つの局面は、消化管由来敗血症、熱傷、新生児壊死性全腸炎、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、炎症性腸疾患、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎およびピッグベリー症からなる群から選ばれた微生物介在性障害を発症するリスクにある上皮表面を含む疾病症状のような異常症状を有する動物の死亡可能性を低減する方法を提供し、必要のある動物に有効投与量のポリエチレングリコール(PEG)を投与することを含み、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。適切な動物としては、限定するものではないが、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタおよびヒトがある。上記方法においては、PEGは、好ましくは、少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有し、好ましくは5,000〜20,000ダルトン、または15,000〜20,000ダルトンである。また、好ましいのは、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、11,000、12,000、13,000、14,000および25,000ダルトンの平均分子量を有するPEGである。さらに、PEGは、5〜20%のPEG、好ましくは10〜20%のPEG (例えば、10%のPEG)を含む水溶液中に存在し得る。該方法の1つの実施態様においては、上記症状は腸内での緑膿菌生物体の存在に関連し、そのような緑膿菌の細胞膜完全性は、検出可能な程度に変化することはない。該方法のもう1つの実施態様においては、緑膿菌の増殖パターンは、検出可能な程度に変化することはない。
本発明のもう1つの局面は、腸のような哺乳動物の上皮をポリエチレングリコール(PEG)と接触させることを含む消化管由来敗血症の抑制方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有する。この方法の1つの実施態様においては、哺乳動物の腸は、PEGと少なくとも30分間接触する。
【0014】
本発明のさらなる局面は、有効投与量のポリエチレングリコールを必要とする動物に投与することを含む、上皮の病原体、例えば、腸内病原体中でのPA-Iレクチン/付着因子発現を阻害する方法;有効投与量のポリエチレングリコールを必要とする動物に投与することを含む、PA-Iレクチン/付着因子の上皮誘導性(例えば、腸上皮誘導性)活性化を阻害する方法;有効投与量のポリエチレングリコールを必要とする動物に投与することを含む、上皮の病原体(例えば、腸内病原体)のC4-HSL誘導性形態変化を阻害する方法;有効投与量のポリエチレングリコールを必要とする動物に投与することを含む、上皮の病原体(例えば、腸内病原体)内の毒性発現を低減させる方法;有効投与量のポリエチレングリコールを必要とする動物に投与することを含む、上皮表面と微生物毒性因子との相互作用の低減させるまたは阻止する方法;有効投与量のポリエチレングリコールを必要とする動物に投与することを含む、病原体密度感知機構活性化の発生を阻止することによる上皮(例えば、腸)病原性を改善する方法;および、上皮をポリエチレングリコールと接触させることを含む、脊椎動物の上皮(例えば、腸上皮)とシュードモナス類(例えば、緑膿菌)のような細菌との相互作用を阻害する方法を含む。本発明のこれらの局面の全てにおいて、上記PEGは、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有する。
本発明のさらなる局面は、(腸)上皮層をポリエチレングリコールと接触させることを含む、腸上皮層のような哺乳動物の上皮層の経上皮電気抵抗の緑膿菌誘導性低下を阻害する方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有する。好ましくは、上記PEGは、15,000〜20,000ダルトンの平均分子量を有する。好ましい実施態様においては、微生物(例えば、緑膿菌)の膜の完全性は、検出可能な程度に変化しない。
本発明のさらにもう1つの局面は、腸をポリエチレングリコールと接触させることを含む、細菌細胞の哺乳動物の腸のような哺乳動物の上皮への付着の抑制方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有する。同様にこの方法においても、上記PEGは15,000〜20,000ダルトンの平均分子量を有するのが好ましい。PEGは、5〜20%のPEG、好ましくは5〜10%のPEGを含む水溶液中に存在し得る。この方法による付着抑制に適応し得るとみなされる細菌細胞の例は、シュードモナス類、例えば、緑膿菌である。
【0015】
本発明のもう1つの局面は、細菌細胞をポリエチレングリコールと接触させることを含む、細菌細胞内でのPA-Iレクチン/付着因子の発現の低減方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは15,000ダルトンの平均分子量を有し、好ましくは15,000〜20,000ダルトンである。この場合も、上記PEGは、5〜20%のPEG、好ましくは5〜10%のPEGを含む水溶液中に存在し得る。
もう1つの局面においては、本発明は、消化管由来敗血症、熱傷、新生児壊死性全腸炎(NEC)、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、炎症性腸疾患、腸疾患(例えば、重病における)、移植片拒絶反応、回腸嚢炎およびピッグベリー症からなる群から選ばれた微生物介在性上皮障害を示す動物における死亡の可能性の低減方法を提供し、哺乳動物の腸上皮細胞および腸内細菌細胞からなる群から選ばれた細胞に付着する有効量の化合物(例えば、PEG)を投与することを含み、該化合物は、上記細胞にトポグラフ的に非対称形で付着し、それによって哺乳動物の腸上皮細胞と細菌細胞との相互作用を抑制する。好ましい化合物は、界面活性剤である。この方法の1つの実施態様においては、上記化合物は、PEGであり、好ましくは、少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有する。この方法のもう1つの実施態様においては、上記の抑制は、原子間力顕微鏡により測定する。この方法のさらにもう1つの実施態様においては、細菌細胞は腸内病原体であり、その増殖特性の検出可能な程度の変化は存在しない。関連局面においては、この方法は、有効量のデキストランを動物の腸内に導入することおよび/または有効量のL-グルタミン、デキストラン被覆L-グルタミン、デキストラン被覆インスリン、デキストラン被覆酪酸、1種以上のフルクト-オリゴ糖、N-アセチル-D-ガラクトサミン、デキストラン被覆マンノースおよびガラクトース、ラクトースおよび残余の本技術分野において既知の緩衝液および安定剤を動物の腸に導入することをさらに含む。単一組成物として一緒に投与する場合、この多成分単一溶液投与は、重度の異化-、手術-および外傷タイプのストレス後に生じるような腸内微生物叢および腸のバリア機能の破壊を見越して、腸管を治療し整備する。
【0016】
本発明のもう1つの局面は、ポリエチレングリコールを腸に投与することを含む、消化管由来敗血症のような上皮の異常症状から生じるまたは該症状に特徴を有する何らかの疾患または症状に関連する症候の改善方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有し、好ましくは15,000〜20,000ダルトンである。上記PEGは、5〜20%のPEG、好ましくは5〜10%のPEGを含む水溶液中に存在し得る。本発明は、本明細書において開示したいずれかの疾患または症状に関連する症候を改善することを含む。
本発明のさらにもう1つの局面は、例えば、局所的に、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンを有する有効投与量のポリエチレングリコールを乳腺の上皮表面に投与することを含む、乳生産量に影響を与える微生物介在性障害を発症するリスクにある乳腺の上皮表面の形の異常症状を示す動物の泌乳能力の損失の予防方法である。動物の例は、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ウマおよびヒトのような哺乳動物である。関連する局面においては、本発明は、例えば、局所的に、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンを有する有効投与量のポリエチレングリコールを乳腺に投与することを含む、乳生産量に影響を与える乳腺の上皮表面の微生物介在性障害に特徴を有する動物の泌乳能力の損失の処置方法を提供する。もう1つの関連局面においては、本発明は、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは少なくとも15,000ダルトンを有する有効投与量のポリエチレングリコールを動物に投与することを含む、授乳齢の動物における微生物介在性上皮障害の発症の予防方法を提供する。適切な動物としては、ヒト、家畜、家庭内ペットおよび動物園動物のような哺乳動物がある。1つの実施態様においては、上記PEGは、本技術分野において既知の任意の乳幼児用調合物と混合する。
【0017】
本発明の関連局面は、乳幼児用調合物とポリエチレングリコール(PEG)を含む組成物であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。この場合も、牛乳、ヤギ乳等のような哺乳動物の乳をベースとする調合物並びに大豆乳をベースとする調合物のような、本技術分野において既知の任意の乳幼児用調合物を使用し得る。また、調合物は、任意のビタミンおよび/または鉄分含有強化物のような成分を富化させ得る。PEGは、好ましくは、少なくとも15,500ダルトンの平均分子量を有し、好ましくは、乳幼児調合物の再構成または水和時に5〜20%で存在する。本発明は、さらに、乳幼児用調合物とPEGを含む有効投与量の組成物を動物に投与することを含む、好ましくは授乳齢の動物への栄養分供給方法も提供する。
本発明のさらにもう1つの局面は、少なくとも5,000ダルトン、好ましくは15,000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコールおよび適切なアジュバント、担体または希釈剤を含む製薬組成物である。関連する局面においては、上記組成物は、デキストラン被覆L-グルタミン、デキストラン被覆インスリン、デキストラン被覆酪酸、1種以上のフルクト-オリゴ糖、N-アセチル-D-ガラクトサミン、デキストラン被覆マンノースおよびガラクトース、ラクトースおよび残余の本技術分野において既知の緩衝液および安定剤からなる群から選ばれた化合物をさらに含む。
本発明のさらなる局面は、消化管由来敗血症のような微生物介在性障害を発症するリスクにある上皮表面に特徴を有する異常症状の治療処置または予防のためのキットであり、上述の製薬組成物の1つおよび該組成物の上記異常症状の治療処置または予防における使用を説明するプロトコールを含む。キットに含ませるのに適するプロトコールは、本明細書において開示するいずれか1つの治療または予防方法のを説明する。
【0018】
本発明のさらに他の局面は、疾病を含む微生物介在性障害のリスクにある上皮表面に特徴を有する異常症状の予防方法に関する。例えば、本発明は、有効投与量のポリエチレングリコール(PEG)を含む組成物を動物に投与することを含む、疾患または異常症状の予防方法を含み、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。本発明の予防方法に適する適切な疾病または異常症状は、外耳炎、急性中耳炎、慢性中耳炎、機械換気関連肺炎、消化管由来敗血症、新生児壊死性全腸炎、抗生物質誘導性下痢、偽膜性大腸炎、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、好中球減少性全腸炎、膵炎、慢性疲労症候群、腸内毒素症候群、顕微鏡的大腸炎、慢性尿道感染症、性感染症、および感染症からなる群から選ばれる。そのような予防方法の対象者として適する動物は、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ブタ、ニワトリ、ウマおよびヒトからなる群から選ばれる。PEGは、好ましくは、少なくとも15,000ダルトンの平均分子量を有する;また、好ましいのは、15,000〜20,000ダルトンの平均分子量を有するPEGである。さらに、PEGは、10〜20%のPEG、好ましくは10%のPEGを含む水溶液であり得る。投与する組成物は、液体溶液、局所用ゲル、および噴霧に適する溶液からなる群から選ばれるビヒクルをさらに含み得る。さらに、上記組成物は、デキストラン被覆L-グルタミン、デキストラン被覆インスリン、デキストラン被覆酪酸、フルクト-オリゴ糖、N-アセチル-D-ガラクトサミン、デキストラン被覆マンノース、ガラクトースおよびラクトースからなる群から選ばれた化合物をさらに含み得る。1つの実施態様においては、上記組成物は、PEG、デキストラン被覆L-グルタミン、デキストラン被覆インスリン、デキストラン被覆酪酸、フルクト-オリゴ糖、N-アセチル-D-ガラクトサミン、デキストラン被覆マンノース、ガラクトースおよびラクトースを含む。
【0019】
本発明のさらにもう1つの局面は、有効量のポリエチレングリコール(PEG)を含む組成物を動物に適用する処置を含む皮膚感染症の予防方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。該組成物は、軟膏、クリーム、ゲルおよびローションからなる群から選ばれたビヒクルをさらに含み得る。本発明は、感染症を発症させる因子が、炭疽菌、痘瘡ウイルス、腸病原性大腸菌(EPEC)、腸管出血性大腸菌(EHEC)、腸管凝集付着性大腸菌(EAEC)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)、ロタウイルス、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、霊菌(Serratia marcescens)、クラベシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytocia)、エンテロバクテリア・クロアカ(Enterobacteria cloacae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびカンジダ・グロブラタ(Candida globrata)からなる群から選ばれることを意図する。
本発明のもう1つの局面は、有効量のポリエチレングリコール(PEG)を動物に投与する処置を含む呼吸器感染症の予防方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。本発明の予防方法に適応し得る呼吸器感染症は、換気装置に関連する肺炎(例えば、機械換気関連肺炎)のような本技術分野において既知の任意の経路による感染性因子、空気感染性因子、くしゃみによるような噴霧化流体中に分散した感染性因子等との接触によって発症し得る。ある実施態様においては、上記方法は、炭疽菌および痘瘡ウイルスからなる群から選ばれた因子による呼吸器感染症を予防する。
本発明のさらにもう1つの局面は、尿道の少なくとも1部を活性化させて慢性尿道感染症を予防する方法であり、PEGを含む有効量の組成物を尿道に送達させる処置を含み、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。1つの実施態様においては、上記組成物を、少なくとも膀胱を含む尿道の1部に投与する。
【0020】
本発明のもう1つの局面は、ポリエチレングリコール(PEG)をコンドームに適用する処置を含む性感染症の予防方法であり、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。本発明の関連局面は、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有するPEGを含む少なくとも部分的なコーティングを含むコンドームである。さらにもう1つの関連局面は、コンドームと少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)とを含むキットである。
また、本発明は、ポリエチレングリコール(PEG)を含む有効投与量の組成物を必要のある動物に投与することを含む消化管障害の予防方法を含み、該PEGは、少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する。本発明の予防方法に適応する消化管障害の例は、新生児壊死性全腸炎、抗生物質誘導性下痢、偽膜性大腸炎、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、好中球減少性全腸炎、膵炎、腸内毒素症候群および顕微鏡的大腸炎からなる群から選ばれ得る。
本発明のもう1つの局面は、必要のある動物へのポリエチレングリコール(PEG)の投与をモニターする方法であり、標識化PEG(該PEGは少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する)を含む有効量の組成物を必要のある動物に投与し、標識化PEGを検出することを含み、それによって、標識化PEG(例えば、微生物と結合した)の量および/または位置により、投与の有効性を評価するのに有用な情報を得る。該モニタリング方法の1つの実施態様においては、標識は、フルオロフォア(例えば、フルオレセイン、ローダミン、Cy3、Cy5)である。該方法のもう1つの実施態様においては、標識化PEGの検出は、内視鏡検査を含む。また、該モニタリング方法は、標識化PEGを糞便サンプル中で検出することを意図する(即ち、標識化PEGは、微生物のような成分と結合しており、その源は糞便サンプルである)。さらに、該モニタリング方法は、微生物に対して特異性の第2標識を投与し、この第2標識を検出することをさらに含む。この関連で使用するときの“特異性”とは、標識が少なくとも1種の微生物に検出可能に結合することを意味する。
【0021】
本発明のもう1つの局面は、必要のある動物へのポリエチレングリコール(PEG)の投与をモニターする方法であり、ポリエチレングリコール(該PEGは少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する)を受けた動物からサンプルを採取し、該サンプルを上皮細胞層と接触させ、該上皮細胞へのサンプル中の微生物の付着を測定することを含み、それによって、上記PEGの量および/または位置が投与の有効性を評価するのに有用な情報を提供する。測定は、顕微鏡検査によって行い得る。
本発明に従うもう1つのモニタリング方法は、必要のある動物へのポリエチレングリコール(PEG)の投与をモニターする方法であり、ポリエチレングリコール(該PEGは少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する)を受けた動物からサンプルを採取し、上皮細胞層と該サンプルと接触させ、該上皮層の経上皮電気抵抗を測定することを含み、それによって、有効投与を、対照値に対する経上皮電気抵抗の低下軽減により示す。対照値は、内部的(即ち、PEG投与前にTEERを測定)または外部的(即ち、比較において信頼して使用し得る他の試験において展開した値)であり得る。
本発明のさらにもう1つのモニタリング方法は、ポリエチレングリコール(該PEGは少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する)を受けた動物からサンプルを採取し、微生物を該サンプルから分離し、微生物の細胞表面の疎水性を測定することを含み、それによって、サンプル中の何らかの微生物の疎水性により、投与の有効性を評価するのに有用な情報を得る、必要のある動物へのポリエチレングリコール(PEG)の投与をモニターする方法である。この関連において使用するときの“分離”とは、本技術分野において理解されているような疎水性測定を充分に可能にするサンプルの他の成分(例えば、固形物)からの分離を意味する。
【0022】
本発明に関連する局面は、ポリエチレングリコール投与のモニタリング用キットであり、標識化PEGおよびその投与のモニタリングにおける標識化PEGの使用を説明するプロトコールを含む。適切なプロトコールは、投与に関して本明細書で開示したまたは本技術分野において既知であるいずれかの方法、PEGの送達または適用を含む。本発明のこの局面のある実施態様においては、上記キットは、遊離の標識を含む。
本発明のさらにもう1つのモニタリング方法は、ポリエチレングリコール(該PEGは少なくとも5,000ダルトンの平均分子量を有する)を受けた動物からサンプルを採取し、該サンプル中のPA-Iレクチン/付着因子活性を測定することを含み、それによって、PA-Iレクチン/付着因子活性により、投与の有効性を評価するのに有用な情報を得る、必要のある動物へのポリエチレングリコール(PEG)の投与をモニターする方法である。この方法の1つの実施態様においては、PA-Iレクチン/付着因子を、任意の公知形の特異性抗-PA-Iレクチン/付着因子抗体またはPA-Iレクチン/付着因子が特異的に結合する炭水化物のようなPA-Iレクチン/付着因子結合性パートナーに結合させることによって検出する。本発明の関連局面は、PA-Iレクチン/付着因子結合性パートナーおよびサンプル中のPA-Iレクチン/付着因子を検出するための該結合性パートナーの使用を説明するプロトコールを含むポリエチレングリコール(PEG)投与のモニタリング用キットである。適切なプロトコールは、PEGの使用に関して本明細書で開示したまたは本技術分野において既知であるいずれかの方法を含む。
本発明の他の特徴および利点は、図面および実施例を含む以下の詳細な説明を参照することによってさらに良好に理解し得るであろう。
【0023】
(発明の詳細な説明)
本発明は、安定化されて活性な治療薬の送達を達成するための簡単且つ経済的な手法をまとめて提示する製品、方法およびシステムを提供し、さらにまた、各種上皮障害(例えば、微生物介在性上皮障害)、即ち、ヒトを含む多くの哺乳動物を苦しめている異常症状および疾患の治療および/または予防法を提供する。HMWポリエチレングリコール様化合物のような高分子量の極性ポリマー、例えば、HMW PEGのようなHMW PEG様化合物を、必要とする動物(多くの健康または生命にかかわる異常症状、即ち、消化管由来敗血症のような上皮障害および疾患のリスクがある動物が挙げられる)に投与することにより、最小限のコストおよび実行者の最小限の訓練によって治療し得る。典型的に溶液として投与するHMW PEG様化合物の容量は、送達させる治療薬および治療薬の意図する標的に依存し、例えば、治療薬が腸管全体またはその1部に亘って充分に活性である場合、腸管またはその適切な部分を有効にコーティングする充分なHMW PEG様溶液が望ましいであろう。治療薬が、例えば、腸内の送達地点から離れた作用部位を有し、それによる取込みを単純に意図する場合は、HMW PEG様溶液は、本技術分野において理解されているように、腸内腔内で治療薬の希釈を防止することのみを必要とするであろう。理論によって拘束することは望まないが、本発明によって得られる利点は、微生物介在性上皮障害を、そのような微生物の生存に資する環境を確立させることによって成功裏に予防し、改善しまたは治療し得るという原理と一致している。本発明の以下のより詳細な説明の理解は、本開示において使用する以下の用語の意味を確立させ、2004年2月6日に出願した共同所有の仮米国特許出願第60/542,725号;2004年4月20日に出願し、“Cytoprotective and Anti-Inflammatory Factors Derived From Probiotic And Commensal Flora Microorganisms”と題し、発明者としてEugene ChangおよびElaine Petrof名義の仮米国特許出願第 号(代理人整理番号27373/40027);および、2004年4月20日に出願し、“Cytoprotective Factors Derived From Probiotic And Commensal Flora Microorganisms”と題し、発明者としてEugene ChangおよびElaine Petrof名義の仮米国特許出願第 号(代理人整理番号27373/40049)を考慮することによって容易となる;これらの3つの出願の各々は、本明細書にその全体を合体させる。
【0024】
“異常症状”とは、広義には、哺乳動物の障害、哺乳動物の疾患、および微生物介在性障害を発症するリスクにある上皮表面によって特徴付けられる哺乳動物の健康のあらゆる異常状態を包含するものと定義する。微生物介在性障害を発症するリスクにある上皮表面によって特徴付けられる異常症状は、上皮表面が微生物介在性障害を発症している状態を含む。症状の例としては、熱傷、新生児全腸炎、重症好中球減少症、炎症性腸疾患、腸炎(例えば、重病の)および移植片(例えば、臓器)拒絶反応のような、医療介入を必要とするまたは医療介入に由来するヒト疾患およびヒト障害がある。
“熱傷”とは、例えば、直火、水蒸気、高熱流体および高熱表面の形の熱への組織の暴露に由来する哺乳動物の組織に対する損傷を意味する。
“化学薬品接触”損傷とは、化学薬品との直接接触によって生じる損傷を称し、化学薬品熱傷または他の損傷を含み得る。
“重症”好中球減少症は、循環好中球数の著しい減少を伴う、その通常且つ慣用的な所定の症状を意味する。
“移植片拒絶反応”とは、移植した材料(例えば、臓器)の、宿主生物によるその材料の究極的な拒絶に関連すると認められる何らかの発症を称する。
“投与”とは、本技術分野において認識されている任意の適切な手段によるその通常且つ慣用的意味の送達を示す。投与の形態の例としては、経口送達、肛門送達、直接穿刺または注入(静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下および他の形での注入のような)、局所適用、およびスプレー(例えば、噴霧スプレー)、目、耳、鼻、口、肛門または尿道口へのゲルまたは流体適用、および挿管がある。
“有効投与量”は、その投与量を受入れる生物体に対し有益な効果を与え、且つその投与量を投与する目的、その投与量を受入れる生物体のサイズおよび状態、および有効投与量の決定に適切であると本技術分野において認識されている他の変動要因に応じて変動し得る物質の量である。有効投与量を決定する方法は、当該技術における熟練範囲内の一般的最適化手順を含む。
【0025】
“動物”とは、通常の意味の非植物、非原生の生物生命体を表す。好ましい動物は、ヒトのような哺乳動物である。
本開示の関連においては、“必要”とは、生物体、臓器、組織または細胞の状態であって、その状態に特徴を有する生物体に有効投与量を投与することから利益を受け得る状態である。例えば、消化管由来敗血症を発症するまたはその症候を示すリスクにあるヒトは、本発明に従う製薬組成物のような製品の有効投与量を必要とする生物である。
“平均分子量”とは、その平均値の決定の正確度の如何にかかわらず、組成物の各成分(例えば、各分子)の分子量の算術平均の通常且つ慣用的意味を表す。例えば、3.5キロダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコール、即ち、PEGは、それら分子量の算術平均をあるレベルの正確度で3.5キロダルトンと判定することを条件として、種々の分子量のPEG分子を含有し得、本技術分野において理解されているように、算術平均の推定値を反映し得る。同様に、PEG 15-20は、その分子量が15〜20キロダルトンの算術平均を与えるPEGを意味し、当該算術平均は上述の説明に従う。これらのPEG分子としては、限定するものではないが、単純なPEGポリマーがある。例えば、複数の比較的小さめのPEG分子(例えば、7,000〜10,000ダルトン)は、必要に応じてフェノールのようなリンカー分子により、より大きな平均分子量(例えば、15,000〜20,000ダルトン)を有する単一分子として結合させ得る。
“細胞膜完全性”とは、本技術分野において理解されているように、生存細胞の機能的成分としての細胞膜の機能的に有意の変化が相対的に無いことを意味する。
“検出可能な程度に変化”とは、本技術分野において理解されているような状況下において適切な検出手段を使用して感知し得るその通常且つ慣用的意味の変化を表す。
“増殖パターン”とは、細胞の増殖時間または倍化時間、細胞の初期群のトポグラフ的外観、および細胞または細胞群の増殖パターンの理解に寄与するものとして本技術分野において認識されている他の変動要因のような、細胞増殖を特徴付けるものとして本技術分野において認識されている細胞または細胞群(例えば、細胞集団)の性質の有用性を集合的に称する。
【0026】
“阻害(または抑制)”とは、低減させるまたは阻止することによる通常且つ慣用的意味の阻害(または抑制)を示す。例えば、形態学的変化の阻害(または抑制)とは、形態学的変化をより困難にするか或いは全く阻止することを意味する。
“PA-IまたはPA-Iレクチン/付着因子発現”とは、PA-Iレクチン/付着因子の活性特性の生成または産生を意味する。典型的には、PA-Iレクチン/付着因子発現は、PA-Iレクチン/付着因子の少なくとも1つの活性特性を有するPA-Iレクチン/付着因子ポリペプチドを得るためのPA-Iレクチン/付着因子をコードするmRNAの翻訳を含む。必要に応じて、PA-Iレクチン/付着因子は、上記のmRNAを得るためのPA-Iレクチン/付着因子をコードするDNAの転写もさらに含む。
“上皮誘導性活性化”とは、上皮細胞の直接または間接的影響による所定のターゲット(例えば、PA-Iレクチン/付着因子)の活性の増大を意味する。本発明の関連においては、例えば、PA-Iレクチン/付着因子の上皮誘導性活性化は、上皮細胞または細胞群と腸内病原体との直接の接触により発現した上皮の間接的影響に起因する当該ポリペプチドの活性の増大を称する。
“形態学的変化”とは、その通常且つ慣用的意味の形状の変化を表す。
“腸内病原体”とは、ヒトのような動物において消化管由来敗血症の全体的または部分的に原因となり得る病原性微生物を意味する。シュードモナス類(例えば、緑膿菌)のようなグラム陰性桿菌のような本技術分野において既知の腸内病原体は、この定義に包含される。
“改善”とは、その通常且つ慣用的意味のまたはそれと一致した程度または重篤度の軽減を意味する。
“病原性菌体密度”とは、本技術分野において知られているように、閾濃度または閾数の生物体(例えば、腸内病原体)が存在しているという菌体密度感知機構のシグナルまたは情報交換を開始するまたは維持するに充分な数の病原性生物体(例えば、緑膿菌)の凝集または会合を意味する。
“相互作用”とは、分子、細胞等のような2種以上の生物学的産生物間の相互作用におけるようなその通常且つ慣用的意味の相互作用を表す。
【0027】
“経上皮電気抵抗”、即ち、TEERとは、上皮組織における電気抵抗の測定値を称し、上皮組織内の上皮細胞間の緊密な接合状態を評価するのに包括的に使用し得るという、この用語が本技術分野において得られた意味を表す。
“付着”とは、その通常且つ慣用的意味の一時的な時間よりも長い物理的結合を表す。
“トポグラフ的に非対称”とは、対称形でない3次元対象物(例えば、細胞)の表面のイメージ、マップまたは他の表示を称する。
走査力顕微鏡測定法としても知られる“原子間力顕微鏡測定法”とは、本技術分野において理解されているように、ラスター走査で片持ちの(cantilevered)プローブにサンプル表面を横断させて、高感度のプローブ偏向検出用手段を使用することによって、物質の高解像力トポグラフ的マップを獲得する方法である。
“製薬組成物”とは、ヒト患者のような生活動物に対する治療的投与に適する化合物の調合物を意味する。本発明に従う好ましい製薬組成物は、電解質、デキストラン被覆L-グルタミン、デキストラン被覆インスリン、ラクッラース(lactulase)、D-ガラクトース、N-アセチル-D-ガラクトサミンおよび5〜20%のPEG(15,000〜20,000)を含む、粘度、電解質プロフィールおよび浸透圧において平衡させた溶液を含む。
“アジュバント、担体または希釈剤”とは、各々、本技術分野において獲得している用語の意味を表す。アジュバントは、共投与される免疫原の免疫原性を延長させるように作用する1種以上の物質である。担体は、担持される物質の転位置によるような操作を容易にする1種以上の物質である。希釈剤は、希釈剤に接触させた所定の物質の濃度を低下させるまたは所定物質を希釈する1種以上の物質である。
【0028】
“HMW PEG様化合物”とは、3.5キロダルトン(kD)よりも大きい平均分子量を有するものとして定義する比較的高分子量のPEG化合物を称する。好ましくは、HMW PEGは、5キロダルトンよりも大きい平均分子量を有し、特定の実施態様においては、HMW PEGは、少なくとも8キロダルトン、12キロダルトンよりも大きい、少なくとも15キロダルトン、15〜20キロダルトンの平均分子量を有する。さらに、“HMW PEG様化合物”としては、HMW PEG誘導体があり、そのような誘導体の各々は、少なくとも1個のさらなる官能基を含有するHMW PEGである。好ましいHMW PEG誘導体は、カチオン性ポリマーである。官能基の例としては、好ましくはC1〜C10のアルコキシ群のいずれか、アリールオキシ群のいずれか、フェニルおよび置換フェニル基がある。そのような官能基は、末端または中央のいずれかのような任意の位置でHMW PEG分子に結合させ得る;また、小さめのPEG分子またはその誘導体に連結させて単一のHMW PEG様化合物とするように機能する官能基、例えば、フェニルおよびその置換体も含ませる。さらに、さらなる官能基を有するHMW PEG様分子は、1個のそのような基または2個以上のそのような基を有し得る;また、各分子は、そのような分子が、少なくとも1種の治療薬を、その送達中或いは上皮細胞の疾患、障害または症状の治療、改善または予防において安定化させるのに有用であることを条件として、さらなる官能基の混合物も有し得る。
“培養液”および“培地”は、本出願の全体を通じて、細胞培養培地および細胞培養培養液を称するのに使用する。単数形または複数形の当該名詞は、各々の使用における関連から明らかとなろう。
【0029】
一般的に、HMW PEG様化合物は、単独でまたは治療薬と組合せて、治療する症状に対して適切な任意の手段によって投与し得る。成分(1種以上)は、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、粉末剤の形またはシロップ剤のような液体製剤によるような経口により;舌下、口腔内または経皮送達により;非経口、皮下、静脈内、筋肉内または胸骨内注射または注入により(例えば、注入可能な滅菌水溶液、非水溶液または懸濁液として);吸入スプレーによるような経鼻的に;座薬の形におけるように直腸内により;座薬または注入による、例えば、挿管による腟または尿道内により;またはリポソームにより送達し得る。無毒性の製薬上許容し得るビヒクルまたは希釈剤を含有する投与量単位製剤を投与し得る。化合物は、即時放出または持続放出に適する形で投与し得る。即時放出または持続放出は、本技術分野において既知の適切な製薬組成物によって達成し得る。
経口投与用の組成物の例としては、例えば、嵩を付与するための微結晶性セルロース、懸濁剤としてのアルギン酸またはアルギン酸ナトリウム、粘度上昇剤としてのメチルセルロース、本技術分野において既知のものであるような甘味化剤または風味料を含有し得る懸濁液;例えば、微結晶性セルロース、リン酸二カルシウム、澱粉、ステアリン酸マグネシウムおよび/またはラクトースおよび/または本技術分野において既知であるもののような他の賦形剤、結合剤、増量剤、崩壊剤、希釈剤および潤滑剤を含有し得る即時放出錠剤がある。本発明の化合物は、例えば、成形、圧縮または凍結乾燥錠剤により、舌下および/または口腔内投与によって経口送達させ得る。例としての組成物は、マンニトール、ラクトース、スクロースおよび/またはシクロデキストリンのような急速溶解性希釈剤を含み得る。また、そのような製剤には、比較的高分子量のセルロース(AVICELR)またはポリエチレングリコール(PEG;GoLytelyR、3.34kD)のような賦形剤;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(SCMC)および/または無水マレイン酸コポリマー(例えば、GANREZR)のような粘膜付着を促進させるための賦形剤も含ませ得る。潤滑剤、流動促進剤、風味料、着色剤および安定剤も製造および使用を容易にするために添加し得る。
【0030】
経鼻エアゾールまたは吸入投与用の組成物の例としては、例えば、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存剤、吸収および/または生体利用性を増強させるための吸収促進剤、および/または本技術分野において既知のもののような他の安定剤または分散剤を含有し得る溶液がある。
腸内投与用の組成物の例としては、例えば、マンニトール、1,3-ブタンジオール、水、リンゲル液、等張塩化ナトリウム溶液のような適切な無毒性希釈剤または溶媒、或いは合成モノ-またはジ-グリセリドおよびオレイン酸のような脂肪酸を含む他の適切な分散剤、湿潤剤および懸濁剤を含有する溶液または懸濁液がある。この関連においては、例えば、ココアバター、合成グリセリドエステルまたはポリエチレングリコール(例えば、GoLytelyR)のような適切な非刺激性賦形剤を含有し得る座薬を意図する。
本発明の化合物の有効量は、当業者であれば、決定し得ることである。任意の特定の対象者における投与の特定の投与量レベルおよび頻度は、変動し得、使用する特定の化合物の活性、当該化合物の代謝安定性および作用時間長、種、年齢、体重、対象者の一般的健康、性別および食餌、投与方式および時間、排出速度、薬物併用、および特定の症状の重篤度のような種々の要因に依存するであろう。治療の好ましい対象者としては、消化管由来敗血症のような微生物介在性上皮症状または疾患を発症するリスクにある動物、最も好ましくは、ヒト、およびイヌ、ネコ、ウマ等のような家畜のような哺乳動物種がある。
【実施例】
【0031】
以下、実施例により、本発明の実施態様を具体的に説明する。実施例1は、肝切除マウスにもたらされた消化管由来敗血症に対する高分子量PEGによる保護を説明する。実施例2は、HMW PEGが腸上皮細胞への病原体付着を如何にして阻止するかを説明する。実施例3は、HMW PEGが、一般的には病原性毒性発現を、とりわけPA-Iレクチン/付着因子発現を如何にして抑制するかを説明する。実施例4は、PEGが病原体の増殖または細胞膜完全性に影響を与えないことを示す。実施例5は、原子間力顕微鏡を使用して、HMW PEG被覆病原体の特異なトポグラフ立体構造を例証する。実施例6は、HMW PEGが影響を及ぼした細胞-細胞相互作用を説明する。実施例7は、本発明の組成物を使用する予防方法を説明する。実施例8は、本発明の治療方法および相応するキットにおけるような、HMW PEG投与のモニタリング方法を開示する。実施例9は、30%肝切除後の消化管由来敗血症に対するHMW PEG様化合物の保護効果を説明する。実施例10および11は、共生治療薬のラクトバシルスGG、即ち、LGG (実施例10)およびVSL3 (実施例11)の送達を安定化させるための使用を開示する。実施例12は、HMW PEG様化合物を使用しての化学または生物学的治療薬の投与を説明する。
【0032】
(実施例1)
30%肝切除術後の消化管由来敗血症に対するHMW PEG保護
雄Balb/cマウスを麻酔し、通常のプロトコールを使用して肝切除術に供した。柔軟左葉に沿った30%無血肝切除を実施した。対照マウスは、肝切除術なしの肝臓操作を受けた。試験群および対照群は、各々、7匹のマウスを含んでいた。全てのマウスにおいて、107cfu/mlの緑膿菌PA27853の200μl容量を、塩水、PEG 3.350またはPEG 15-20(複数のPEG)のいずれか中に希釈して、直接のニードル穿刺により盲腸基部に注入した。比較的小さい分子量のPEGは、商業的に入手可能であり;15,000〜20,000ダルトンの平均分子量を有するPEG 15-20は、フェノール環に共有結合させたPEG 7-8とPEG 8-10の組合せである。PEG 7-8は7,000〜8,000ダルトンの平均分子量を有し、PEG 8-10は8,000〜10,000ダルトンの平均分子量を有する。当業者であれば、HMW PEG類が任意の種々のPEGサブユニットを有する化合物を含み、各サブユニットが相互にまたはPEG分子の接合に適する官能基を有する比較的小分子である1種以上のリンカー分子に好ましくは共有結合した任意の種々の平均分子量を有することは理解していることであろう。適切なリンカーは、HMW PEGの生物学的活性を実質的に保持する(本明細書において開示する有益な予防または治療効果を具現化するための充分な生物学的活性の保持)。
48時間の試験において一定のPEG源を与えるために、ニードルを小腸(回腸)に導き、1mlの塩水、PEG 3.35またはPEG 15-20を隣接腸中に逆行注入した。穿刺部位を絹縫合糸で結紮し、盲腸をアルコールで綿棒消毒した。マウスをケ−ジに戻し、次の48時間H2Oのみを与えた。
PEG 15-20の投与量応答曲線は、図1のパネルbにおいて見られる。a:PEG 15-20の統計的に有意の保護効果は、フィッシャー精密検定によって判定した (P<0.001)。b:PEG 15-20の最低保護濃度は、5%であると判定した (P<0.05)。c:30%肝切除術および1×107cfu/mlのPA27853の直接盲腸注入後24時間での盲腸内容物(糞便)、洗浄盲腸粘膜、肝臓および血液の定量的細菌培養物。1元ANOVAは、肝切除術後のマウスの盲腸内容物、粘膜、肝臓および血液中の細菌数の統計学的に有意の増大を実証していた(P<0.001)。肝臓および血液細菌数の有意の減少(P<0.05)はPEG 3350において観察されたが、PEG 15-20は、PA27853のマウス肝臓および血液への伝播を完全に阻止していた。
【0033】
緑膿菌株ATCC 27853 (PA27853)は、血液培養物からの非ムコイド臨床分離物である。30%無血肝切除術を前以って受けたマウス中への株PA27853の直接盲腸注入は、臨床的敗血症状態をもたらし、48時間での生存体はなかった。同様に緑膿菌を注入し、肝切除術なしの偽開腹術を受けたマウス(対照)は、何らの臨床的敗血症の兆候なしで完全に生存している(図1a)。PEG溶液がこのモデルにおける死亡を予防するまたは低下させる能力を判定するために、1×107cfu/ml濃度の200μlのPA27853をポリエチレングリコールの2つの10%(w/v)溶液の1つに懸濁させた(PEG 3.35対PEG 15-20)。PEG 3.35は、これが過去25年間臨床使用において利用可能であったPEGの分子量を代表するので選択した(GolytelyR)。比較において、使用した本発明に従うPEG溶液は、15〜20kDで変動する分子量を有していた。懸濁させた株を盲腸中に直接穿刺により導入した。PEG 3.35は、肝切除術後のマウスの死亡に対し効果を有していなかったのに対し、PEG 15-20は、完全に保護性であった。事実、PEG 15-20は、フィッシャー精密検定によって判定したとき、統計学的に有意の保護効果を有していた(P<0.001)。投与量応答試験は、5%溶液が完全に保護性であるPEG 15-20の最低濃度であることを実証した(P<0.05;図1b参照);但し、当業者であれば、5%未満のHMW PEG溶液も幾分かの保護を与えることは予期されるであろうし、従って、本発明の範囲内に属することを理解されたい。試験マウスおよび対照マウスにおける細菌数に関しては、1元分散分析(ANOVA)により、肝切除術後のマウスの盲腸内容物、粘膜、肝臓および血液中の細菌数の統計学的に有意の増大を実証した(P<0.001)。肝臓および血液細菌数の有意の減少(P<0.05)はPEG 3350において観察されたが、PEG 15-20は、PA27853のマウス肝臓および血液への伝播を完全に阻止していた。PEG 15-20は、肝臓および血流への腸内PA27853の伝播を完全に抑制していた(図1c)。データは、PEG溶液の作用が、非殺菌性であるメカニズムに関与していることを示唆している。哺乳動物細胞に対し無毒性であるPEG濃度(即ち、≦約10%)で投与した場合、細菌増殖パターンに対する影響は、実証されなかった。
本実施例は、HMW PEGが、部分肝切除術の形で手術介入に供したマウスにおける消化管由来敗血症に起因する死亡率を低下させることを実証している。このマウスモデルは、HMW PEG療法が、侵襲的手術(例えば、部分肝切除術)のような生理的ストレスを受けたヒトのような哺乳動物のような動物種の死亡率を低下させるのに(即ち、任意の所定の生物体の死亡の可能性を低下させるのに)有用であることを示唆している。HMW PEG療法は、生理的ストレス後に実施したとき(例えば、術後治療中に)、敗血症に関連する死亡または重病の予防方法において有用であることが期待される。さらに、HMW PEG療法は、ストレスの導入を予測し得る環境下での生理的ストレス化の前(例えば、術前治療)に使用して重病または死亡のリスクを低下させ得る。また、HMW PEG療法は、消化管由来敗血症に関連する疾患または異常症状に関連する症候を改善するのにも有用である。
【0034】
(実施例2)
HMW PEGは腸上皮への病原体付着を阻止する
緊密な接合は、哺乳動物の腸管のバリア機能において重要な役割を果たす上皮細胞骨格の動的要素である。緑膿菌は、Caco-2細胞およびT-84細胞双方の経上皮電気抵抗(TEER)により測定したとき、緊密な接合部浸透性に意味のある変化をもたらす。Caco-2細胞は、培養中に安定なTEERを維持する良好に特性決定されたヒト結腸上皮細胞であり、この細胞系は、腸内病原体の生体内挙動を有する認知された生体外モデルを提供する。培養Caco-2単分子層の緑膿菌PA27853誘導性TEER低下に対するPEGの保護効果を判定するために、1×107cfu/mlのPA27853を、10%のPEG 3.35または10%のPEG 15-20の存在下の2つのCaco-2細胞単分子層上に頂端接種した。TEERを8時間連続して測定し、TEERの最大降下を記録した。
PEG 15-20のみが、緑膿菌誘導性TEER低下を有意に保護した(図2a)。図2に示すデータは、1×107cfu/mlのPA27853への8時間頂端暴露中に観察した三連の培養物(n=7)のベースラインからの平均±SEM%最大TEER降下を示す。PA27853に暴露させたCaco-2細胞において実証したときの統計学的に有意のTEER低下は、1元ANOVAによって明らかになった(P<0.001)。PA27853により誘導されたTEER落込みに対する統計学的に有意の保護効果をPEG 15-20において実証した(P<0.001)。図2bは、PEG 3.35の存在下およびPA27853への頂端暴露によるCaco-2細胞を示す。PEG 3.35の存在下での共培養4時間後、巣状付着性細菌を示すCaco-2細胞単分子層の分裂が観察され、細胞は、単分子層足場の30〜40ミクロン上で浮遊していた(図2b)。対照的に、PEG 15-20の存在下にPA27853に4時間頂端暴露させたCaco-2細胞の画像を示す図2cは、試験したいずれの面においても浮遊細胞の形跡を示していなかった。Caco-2細胞完全性に対するPEG 15-20の保護効果は、1×106cfu/mlのPA27853に4時間暴露後の細胞上清中での15倍高い細菌回収に反映された少ない細菌付着に関連していた。
【0035】
TEERの維持によって判断するような、緑膿菌のバリア分裂効果に対するPEG培養ヒト腸上皮細胞の抵抗性は、侵襲性病原体による攻撃に直面する緊密接合バリア機能を安定化させる実用的な手法を提供する。PEG 15-20の治療的価値のさらなる証拠は、上皮輸送機能(Na+/H+交換、グルコース輸送)がこの化合物によっては影響を受けないことである。
即ち、HMW PEGは、腸上皮バリアに対し、比較的不活性であり、安定化効果を有する。本発明は、HMW PEGを、哺乳動物、好ましくはヒトのような動物に投与することによる、緑膿菌のような腸内病原体に関連する腸バリア機能異常の治療方法を含む。腸バリア異常は、本技術分野において既知の任意の診断法または他の手段によって明確にし得る。しかしながら、HMW PEG治療前に腸バリア異常を特定する必要はない。HMW PEG治療に伴う低コストおよび高度の安全性は、この方法を、好ましくはリスクのある生物体に向けての予防的用途、並びに腸バリア異常の少なくとも1つの症候特徴を示す動物に適用する治療方法の双方において適切なものとする。HMW PEG治療方法は、腸バリア異常に関連する症候を改善するであろうし、好ましくは、該方法は、治療生物体からの消化管由来敗血症の作用を低減または排除するであろう。
【0036】
(実施例3)
HMW PEGは病原体内での病原性発現を抑制する
緑膿菌PA27853中でのPA-Iレクチン/付着因子の発現は、肝切除術後のマウス盲腸内で増大し、マウス腸内での緑膿菌の致死性作用に重要な役割を果たした。PA-Iは、PA27853の上皮への付着を容易にすることにより、さらに、細胞毒素、外毒素Aおよびエラスターゼに対して有意のバリア欠損を生じさせることにより、マウス腸内で有意の毒性決定因子として機能する。緑膿菌中でのPA-I発現は、転写制御因子RhIRおよびその同族アクチベーターC4-HSLによって調節される。PA27853中でのPA-Iの発現は、C4-HSLへの暴露によるだけでなく、Caco-2細胞、Caco-2細胞膜調製物およびCaco-2細胞培養物からの上清との接触によっても増大した。
ノーザンハイブリダイゼーションを使用して転写レベルでのPA-I発現を分析した。緑膿菌の全RNAを、改変三清浄剤法により分離した。各プローブは、PA-Iプライマー:F(ACCCTGGACATTATTGGGTG) (SEQ ID NO: 1)、R(CGATGTCATTACCATCGTCG) (SEQ ID NO: 2)、および16Sプライマー:F(GGACGGGTGAGTAATGCCTA) (SEQ ID NO: 3)、R(CGTAAGGGCCATGATGACTT) (SEQ ID NO: 4)を使用して、PCRにより産生させ、pCR2.1ベクター(Invitrogen社)中にクローニングした。挿入物は、PA-Iまたは16Sいずれかの配列に合致させた配列であった。PA-Iおよび16Sに対する特異的cDNAプローブをα32P-dCTPにより放射性標識した。特異的放射活性をStorm 860ホスホイメージャー(Molecular Dynamics社、カリフォルニア州)により測定し、対照と比較した相対的%変化を、PA-Iと16Sの強度比に基づき算出した。ウェスタンブロットは、ウサギアフィニティー精製ポリクローナル抗-PA-I抗体を使用して、PA-Iタンパク質分析において使用した。1mlの緑膿菌細胞をPBSで洗浄し、溶解緩衝液(4% SDS、50mM Tris-HCl、pH 6.8)中で100℃に加熱した;イムノブロット分析を、トリシンSDS-PAGE後のタンパク質のエレクトロトランスファー(electrotransfer)により実施した。PA-Iレクチンは、ECL試薬(Amersham社、ニュージャージー州)により検出した。
【0037】
緑膿菌PA27853の1mMの菌体密度感知機構シグナル伝達分子C4-HSLへの暴露は、PA-Iタンパク質発現の統計学的に有意の増大(P<0.001、1元ANOVA)をもたらし、これは、10%のPEG 3.35の存在下においては部分的に、10%のPEG 15-20によってはるかに大きい度合で抑制された(図3)。C4-HSL誘導PA-I発現に対するPEG 15-20の最低完全抑制濃度は、5%であった(P<0.01、1元ANOVA)。PEGの存在および不存在下にC4-HSLに暴露させた個々の細菌細胞の電子顕微鏡検査は、C4-HSLが緑膿菌の形状および線毛発現に形態学的変化をもたらしていることを示した(図3b)。C4-HSL誘導性形態作用は、PEG 15-20の存在下では完全に排除され、PEG 3.35においては排除されてなかった。ハロータイプ効果は、PEG 15-20に暴露させたPA27853の周りで観察された(図3b)。PA27853の0.1mMのC4-HSLへの暴露は、ノーザンブロットを使用して評価したPA-I mRNA発現の統計学的に有意の増大(P<0.001、1元ANOVA)をもたらした。PA-I発現は、10%のPEG 15-20によって大きく抑制されていた。図3dは、Caco-2細胞への4時間暴露によって誘導されたPA-I mRNAの増大は、PEG 15-20によっては抑制され、PEG 3.35によっては抑制されてなかったことを示す(P<0.001、1元ANOVA)。
本実施例において示したデータは、100μM〜1mMのC4-HSLにより誘導させたPA27853中でのPA-I発現(タンパク質およびmRNA)の有意の減衰(3〜4倍減少)が、細菌を10%のPEG 15-20で予備処理したときに観察されたことを示している。この効果は、PEG 3.35によっては観察されなかった(図3a)。また、C4-HSL誘導性PA-I発現の減衰は、10%のPEG 3.35によっても観察されたが、減衰度合は、10%のPEG 15-20よりも有意に低かった。PA-Iタンパク質のC4-HSL誘導発現を抑制したPEG 15-20の最低濃度は、5%であった(図3b)。C4-HSLに暴露させた個々の細菌細胞の電子顕微鏡測定は、C4-HSLがPA27853の形状および線毛発現に形態学的変化を生じさせていることを実証していた(図3b)。C4-HSL誘導性形態学作用は、PEG 15-20の存在においては完全に排除されていたが、PEG 3.35においては排除されていなかった(図3b)。Caco-2細胞への4時間の暴露により誘導されたPA-I発現(mRNA)は、PEG 15-20の存在下では抑制されていたが、PEG 3.35においては抑制されてなかった(図3b)。PEG 15-20によるCaco-2細胞誘導性PA-I発現の保護効果は、1夜暴露試験において持続していた。
【0038】
また、HMW PEGは、既知の刺激に応答しての緑膿菌の毒性発現にも影響を与える。PA27853中でのC4-HSL誘導性PA-I発現の減衰は、菌体密度感知機構シグナル伝達がこの病原体における毒性発現の良好に確立されたメカニズムであることを条件として、PEG 15-20の主要な保護効果であり得る。PA-IのCaco-2細胞誘導性発現へのPEG 15-20誘導性干渉は、PEG 15-20の保護効果の重要な局面であると予測される。PEG 15-20は、30%肝切除術後のマウスからの濾過盲腸内容物(糞便)に応答しての緑膿菌(PA27853) PA-I発現を減衰させることにより、宿主動物に対して保護効果を有することが判明した。PEG 15-20が毒素発現を増大させる宿主要因から緑膿菌を隠蔽する能力は、生物体を消化管由来敗血症から保護するさらにもう1つのメカニズムであることが期待される。
従って、本発明は、キットの形の材料、およびHMW PEGを動物に投与してシュードモナス類の1種のような腸内病原体による毒素因子または決定因子の発現に特徴を有する症状を予防するまたは治療するための相応する方法を含む。毒素決定因子は、毒素に直接的にまたは間接的に寄与し得る。間接的寄与の例は、腸上皮への腸内病原体付着および/または細胞毒素、外毒素Aおよびエラスターゼに対するバリア欠損の発生に対する緑膿菌のPA-Iレクチン/付着因子の効果である。
【0039】
(実施例4)
PEGは病原体の細胞増殖または細胞膜完全性に影響を与えない
細菌膜完全性に対する2つのPEG溶液(PEG 3.35およびPEG 15-20)の効果を、SYTO 9およびヨウ化プロピジウムからなる染色法によって評価した。いずれのPEG溶液も細菌膜浸透性に対して何ら効果を有してなかった(図4a)。膜完全性は、生/死細菌判別キットL-3152 (Molecular Probes社)を使用して判定した。細菌を、種々のインキュベーション時間で採取したサンプルの10倍希釈液を塗抹することにより、定量し、数をcfu/mlとして表した。上記2つのPEG溶液のいずれかを含有するTSB培地中で1夜増殖させた緑膿菌の増殖曲線は、細菌量に対していずれのPEG溶液による抑制効果も示していなかった(図4b)。事実、PEG含有培地各々における増殖パターンは、PEGを含まないTSB培地における増殖パターンと区別できなかった。エネルギー代謝に関与するハウスキーピング酵素の乳酸塩デヒドロゲナーゼ(LDH)の活性を、増殖の指数増殖期および静止期中の種々の時点で測定した。LDH活性は、結合ジアフォラーゼ酵素アッセイにおいて、CytoTox 96 (Promega社)からの基質混合物を使用して測定した。タンパク質濃度は、BCAタンパク質アッセイ(Pierce社)を使用して測定した。各PEG存在下に増殖させた緑膿菌の無細胞上清中のLDH活性の変化は、観察されなかった。この試験の結果は、HMW PEGが細菌増殖パターンに対し無視し得る効果しか有していないことを示唆している。
本発明の方法および相応する製品(例えば、キット)は、消化管由来敗血症に関連する疾患または異常症状を、腸内微生物叢の組成に有意の影響を与えることなく予防または治療するという利益を提供する。同様に、本発明の方法および製品は、そのような疾患または異常症状に関連する症候を腸の微生物組成への有意の変化なしで改善するのに使用し得る。当業者であれば、腸内微生物叢の組成を有意に混乱させない方法(およびキット)は、そのような方法がそのような混乱に由来する二次的健康合併症をもたらすことを予測されない限りにおいて望ましいことを理解し得るであろう。
【0040】
(実施例5)
PEG被覆病原体の原子間力顕微鏡測定
1夜増殖させたPA27853の培養物の1%アリコートを、10%のHMW PEGを含むまたは含まないトリプシン大豆培地(TSB)中で、37℃で4時間二次培養させた。各二次培養物の1滴を取出し、緑膿菌PA27853細胞をPBSで入念に洗浄し、吹付け空気内の雲母上で10分間乾燥させ、直ちに画像化した。タッピング方式AFMによる乾燥細菌の画像化は、Multimode Nanoscope IIIA Scanning Probe Microscope (MMAFM, Digital Instruments社)により空気中で実施した。サブコンフルエントCaco-2細胞を10%のHMW PEGで4時間処理し、PBSで入念に洗浄した。細胞のAFM画像化は、Oリングを使用しないでPBS中で実施した。電子顕微鏡測定においては、PA27853を1mM C4-HSLおよび10% HMW PEGを含むまたは含まないTSB中に接種し、1夜インキュベートした。1%緑膿菌の1滴を、酢酸ウラニルで染色し、電子顕微鏡による検証前に0.5M NaClで洗浄した。
Caco-2細胞の原子間力顕微鏡測定は、刷子縁微繊毛を含む古典的な不均一表面を示し、一方、PEG 3.35に暴露させたCaco-2細胞は、上皮細胞の表面上で平滑なより平坦な外観を示していた(図5a、c)。PEG 15-20は、Caco-2細胞を、トポグラフ的に形成された面に沿って非対称形を充填することによってカーペットで覆う形のようであり(図5e)、より複雑なトポグラフ的に形成された被覆を与えていた。幾分同様な形で、PEG 3.35に暴露させたPA27853細胞は、拡散性の平坦パターンで細菌細胞へのポリマーの平滑コーティングパターンを示している(図6b)のに対し、PEG 15-20は、よりトポグラフ的に非対称の形で細菌周囲を取巻き且つ束縛しているようである。PEG 15-20における細菌直径の原子間力測定の断面分析は、PEG溶液内での細菌/PEG外被(envelope)の有意の増大を実証している(図5e、f)。換言すれば、PEG 3.35が個々の細菌細胞の辺りで平滑な外被を形成しているのに対し(図5e)、PEG 15-20は、個々の細胞を強固に束縛し(図5f)、ポリマー/細菌直径も増大させ(図5g、5h)、それによって個々の細菌細胞を互いに引き離している。
【0041】
理論によって拘束することは望まないが、HMW PEGは、緑膿菌を腸上皮から単に物理的に引き離すことによって、その有益な効果を発揮し得る。また、HMW PEGは、病原性細胞の細胞-細胞相互作用に由来する病原性菌体密度感知機構活性化シグナルの形成を阻止することによって利益を提供する。この場合も、理論によって拘束することは望まないけれども、HMW PEGによる生物学的表面のコーティングは、コーティングPEG鎖の立体配座的自由度の喪失および接近するタンパク質の反発をもたらすことが可能である。HMW PEGとCaco-2細胞間の極性-極性相互作用は、PEG鎖の弾力性に影響を与えて、ある種のHMW PEG側鎖を、タンパク質を反発する分子構築物へ拘束させ得る。本実施例において示したデータは、HMW PEGコーティングCaco-2細胞が、おそらくはHMW PEGとCaco-2細胞のある種の動的相互作用の結果としての“立体配座エントロピー”喪失により、コーティングされていないCaco-2細胞よりも緑膿菌に対し反発性であるという結論を裏付けている。
本試験の結果は、HMW PEG処理が処理細胞に対し効果を有し、とりわけ、そのような細胞の表面トポロジーに影響を与えるのを確証している。さらにまた、そのような細胞に対するHMW PEG暴露の効果は、PEG 3.35がそのような細胞に対して有する効果とは異なっている。理論によって拘束することは望まないが、本実施例において開示した結果は、PEG 3.35のような低分子量PEGに対比してHMW PEGが示す細胞に対する著しく異なる効果に物理的相互関連を与えている。
【0042】
(実施例6)
HMW PEGは細胞-細胞相互作用に影響を与える
緑膿菌の空間的定位に対するPEG溶液の効果を直接観察するために、緑色蛍光タンパク質をコードするegfp遺伝子を担持する緑膿菌PA27853/EGFPの生存株による試験を実施した。試験は、Caco-2細胞の存在および不存在下に実施した。細菌およびその培養上皮との相互作用の双方に対するPEG効果を画像化するために、微分干渉コントラスト(DIC)顕微鏡およびGFP画像法を使用した。
緑色蛍光タンパク質をコードするEGFP遺伝子を、pBI-EGFPプラスミド(Clontech社)をテンプレートとして使用して増幅させた。XbaIおよびPstI制限部位を、プライマー TCTAGAACTAGTGGATCCCCGCGGATG (SEQ ID NO: 5)およびGCAGACTAGGTCGACAAGCTTGATATC (SEQ ID NO: 6)を使用して導入した。PCR産生物を、TA-クローニングキット(Invitrogen社)を使用して、pCR 2.1ベクター中に直接クローニングし、次いで、pCR2.1/EGFP構築物の大腸菌DH5a中への形質転換を行なった。EGFP遺伝子を、この構築物から、XbaIおよびPstIによる消化により切取り、切取った遺伝子を含有するフラグメントを、同じ制限酵素により消化させている大腸菌-緑膿菌シャトルベクターpUCP24中にクローニングした。上記シャトルベクター中にEGFP遺伝子を含有する得られた構築物(即ち、pUCP24/EGFP)を、25μFおよび2500Vで、PA27583エレクトロコンピンテント(electro-competent)細胞中にエレクトロポレーションさせた。PA27853/EGFP含有細胞を、100μg/mlのゲンタマイシン(Gm)を含有するLB寒天プレート上で選択した。
【0043】
PA27853/EGFPを担持する細胞を、100μg/mlのGmを含有するLB中で1夜増殖し、1%の培養物を使用して、50μg/mlのGmを含有する新鮮LB中に接種した。3時間の増殖後、イソプロピル-β-D-チオガラクトピラノシド(IPTG)を添加し0.5mMの最終濃度とし、培養物をさらに2時間インキュベートした。100μlの上記細菌培養物を、HEPESで緩衝させ10%のウシ胎仔血清(HDMEM HF)および10%のHMW PEGを含有する1mlのHDMEM培地(Gibco BRL社)と混合した。1mlの細菌懸濁液を、0.15mm厚のdTC3ディッシュ (Bioptech社)中に注入した。0.15mm厚のdTC3ディッシュ (Bioptech社)内でHDMEM HF中で増殖させた4日齢Caco-2細胞(p10-p30)を、HMW PEGを含むまたは含まないHDMEM HF中で1回洗浄した。上記のようにして調製した1mlの細菌懸濁液を、Caco-2細胞を含有するdTC3ディッシュに添加した。dTC3ディッシュ内の細菌細胞の分散パターンを、Axiovert 100 TV蛍光倒立顕微鏡により、DICおよびGFP蛍光フィルターを使用して、63×の対物倍率にて直接観察した。温度は、Bioptechsサーモスタット温度制御装置によって調節した。タングステンランプ(100V)をDICおよびGFP励起の双方において使用した。Intelligent Imaging Innovations社からの3Dイメージングソフトウェア(Slidebook)を使用し、GFPフィルターを使用してZ面中の細菌細胞分散パターンを画像化した。Caco-2細胞を含まない培地中の均一分散プランクトン様緑膿菌細胞をDIC画像(図6a1)およびZ面再構築(図6a2)において観察した。Caco-2細胞の存在においては、細菌細胞は、凝集外観を発生させ(図6b1)、Caco-2細胞への付着を観察した(図6b2)。10% PEG 3350の溶液は、細菌の運動性を低下させ、壁底(図6c2)に付着したキノコ状の細菌微細コロニー(図6c1)の即時の形成を誘導させた。Caco-2細胞の存在においては、細菌微細コロニーは、上皮細胞の面の約8ミクロン上にあった(図6d1,2)。10%のPEG 15-20の溶液は、緑膿菌細胞の運動性を大きく消失させた。にもかかわらず、PEG 15-20含有培地中での最初の0.5〜1時間のインキュベーションにおいては、細菌細胞は、壁底に密接したクモ足状微細コロニー(図6e1,2)を形成していた。数時間以内で、クモ足状微細コロニーが培地の空間/容積全体を占めた。Caco-2細胞の存在においては、緑膿菌細胞は、クモ足様形状を喪失し、上皮面よりも(30〜40ミクロン)上に高揚しているのを観察した(図6f1,2)。
【0044】
3次元での細菌-上皮細胞相互作用の空間的定位を判定するために、Z面再構築を実施した。画像は、上記2つのPEG溶液が、緑膿菌の凝集挙動に対する異なる効果を有し、Caco-2細胞の存在または不存在に応じて細菌の空間的定位に異なる影響を与えていること実証した。培地による試験においては、緑膿菌のみが均一に分散したパターンを示すことを観察した(図6a)。しかしながら、Caco-2細胞の存在下に試験した細菌細胞は、凝集外観を発生させ、壁底部の上皮細胞の面に近接しているのが観察された(図6b)。PEG 3.35単独の存在下に試験した細菌細胞は、大凝集会合体を形成し、培養壁の底部に残存し(図6c)、一方、PEG 3.35を含有する培地中のCaco-2細胞により試験した細菌細胞は、上皮細胞の面の上(約8ミクロン)に懸濁したままであり、その凝集外観を維持していた(図6d)。PEG 15-20単独の存在下に試験した細菌細胞は、均一な微細凝集パターンを示しており(図6e)、一方、PEG 15-20を含有する培地中のCaco-2の存在下に試験した細菌細胞は、上皮の面上でより高く(〜32ミクロン)凝集形状で懸濁していた(図6f)。時限試験においては、細菌運動性は、PEG 3.35によって、また、PEG 15-20によってはさらに高い度合で低下していることが観察された。
実施例5で開示した試験と同様な形で、この実施例は、細胞-細胞相互作用に対するHMW PEGの観察された効果において、本明細書において開示するような有益な予防および治療活性と一致する物理的相互関連を提示している。HMW PEGの使用は、腸内での有害な細胞-細胞相互作用(例えば、腸上皮細胞とシュードモナス類のような腸内病原体間の)を低減させまたは排除して、消化管由来敗血症に関連する疾患および/または異常症状のリスクを低減させることが期待される。
【0045】
(実施例7)
疾患/異常症状の予防方法
また、本発明は、ヒトおよび他の動物、とりわけ他の哺乳動物における種々の疾患および/または異常症状の予防方法も提供する。これらの方法においては、有効量のHMW PEGを、必要のあるヒト患者または動物対象者に投与する。上記PEGは、本技術分野において既知の一般的最適化手順を使用して決定する投与スケジュールを使用して投与し得る。好ましくは、上記PEGは、5,000〜20,000ダルトン、より好ましくは10,000〜20,000ダルトンの平均分子量を有する。少なくとも5%のHMW PEGを投与することを意図する。HMW PEGは、任意の適切な剤形で、例えば、HMW PEGを含む製薬組成物中および動物への注入に適する滅菌等張溶液中の溶液として、ゲルまたはクリームとして、噴霧に適する溶液(例えば、吸入用途用)として投与し得る。投与は、任意の通常の経路を使用して行い得る;とりわけ、HMW PEGを経口または局所(例えば、経皮)投与することを意図する。ある実施態様においては、投与するHMW PEG組成物は、デキストラン被覆L-グルタミン、デキストラン被覆インスリン、デキストラン被覆酪酸、フルクト-オリゴ糖、N-アセチル-D-ガラクトサミン、デキストラン被覆マンノース、ガラクトースおよびラクッロースからなる群から選ばれた化合物をさらに含む。もう1つの実施態様においては、投与HMW PEG組成物は、デキストラン被覆L-グルタミン、デキストラン被覆インスリン、デキストラン被覆酪酸、1種以上のフルクト-オリゴ糖、N-アセチル-D-ガラクトサミン、デキストラン被覆マンノース、ガラクトースおよびラクッロースをさらに含む。
【0046】
本発明は、外耳炎、急性または慢性中耳炎、機械換気関連肺炎、消化管由来敗血症、新生児壊死性全腸炎、抗生物質誘導性下痢、偽膜性大腸炎、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、好中球減少性全腸炎、膵炎、慢性疲労症候群、腸内毒素症候群、顕微鏡的大腸炎、慢性尿道感染症、性感染症、および感染症(例えば、炭疽菌、痘瘡ウイルス、腸病原性大腸菌(EPEC)、腸管出血性大腸菌(EHEC)、腸管凝集付着性大腸菌(EAEC)、クロストリジウム・ディフィシレ、ロタウイルス、緑膿菌、霊菌、クラベシエラ・オキシトカ、エンテロバクテリア・クロアカ、カンジダ・アルビカンス、カンジダ・グロブラタ等のようなバイオテロ因子に汚染された環境への暴露)のような種々の疾患および異常症状の予防方法を提供する。慢性尿道感染症を予防するまたはそのような感染症を治療する方法の好ましい実施態様においては、HMW PEGは、膀胱洗浄剤の形で送達させる。性感染症予防においては、本発明の組成物を、好ましくは、コンドームを潤滑化するのに使用する。バイオテロ因子による感染症の予防方法の好ましい実施態様においては、本発明に従う組成物を、局所適用に適するゲルまたはクリームの形で調製する。そのような局所適用は、生存、健康または快適性の点でヒトまたは動物に脅威をもたらす、任意のバイオテロ因子に関連するまたは種々の化学または物理化学薬剤に関連する各種疾患./異常症状の予防において有用であることが期待される。そのような化学または物理化学薬剤としては、皮膚を火傷させさもなければ損傷させ得、且つ本発明の組成物中で不活性にされ或いは溶解性に乏しい薬剤がある。
【0047】
上記予防方法の1つの実施態様においては、雄Balb/cマウスを麻酔し、PEG 15-20の5%水溶液を盲腸の基部に直接ニードル穿刺によって注入する。48時間の試験において一定のPEG源を与えるために、ニードルを小腸(回腸)に導き、1mlのPEG 15-20を隣接腸中に逆行注入する。穿刺部位を絹縫合糸で結紮し、盲腸をアルコールで綿棒消毒する。マウスをケ−ジに戻し、H2Oのみを与える。48時間後、マウスを、柔軟左葉に沿った肝臓の30%無血切除を含む通常の肝切除術に供する。対照マウスは、肝切除術なしの肝臓操作を受ける。HMW PEGの投与を含む該予防的治療は、マウスにおける手術関連消化管由来敗血症の発症を低減または排除することが期待される。
これらの方法は、マウス、モルモット、イヌおよびネコのようなペット類からウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウおよび任意の他の家畜類のような農業的に重要な動物までの予防的ケアの域を超えて適用し得る。さらにまた、これらの予防方法は、ヒトに適用して、外耳炎、急性または慢性中耳炎、機械換気関連肺炎、消化管由来敗血症、壊死性全腸炎、抗生物質誘導性下痢、偽膜性大腸炎、炎症性腸疾患、過敏性腸疾患、好中球減少性全腸炎、膵炎、慢性疲労症候群、腸内毒素症候群、顕微鏡的大腸炎、慢性尿道感染症、性感染症、および、限定するものではないが、炭疽および痘瘡のような感染因子(例えば、バイオテロ組成物)のような疾患および/または異常症状を発症するリスクにある多くの患者または候補者の健康または平均余命を改善し得ることが期待される。上述したように、上記予防方法は、任意の既知または通常の投与経路による、ヒトまたは他の動物への少なくとも5%HMW PEG (5〜20kD)を含む組成物の投与を含む。好ましくは、上記予防方法は、1以上の上述の疾患および/または異常症状を発症するリスクにある個々人において実施するが、本発明の組成物および方法は、ヒトまたは他の動物の集団全体または下位集団におけるそのような疾患または異常症状を広範囲に治療または予防する予防的または治療的役割のいずれかにおいて有用であることを意図する。
【0048】
(実施例8)
HMW PEG投与のモニタリング方法
また、本発明は、例えば、治療方法におけるHMW PEGの投与をモニタリングする方法も意図する。そのようなモニタリング方法においては、標識化HMW PEGを単独または標識していないHMW PEGと組合せて投与し、標識を、単純な終点判定を含む連続または断続スケジュールの治療中に検出する。用語“標識化”HMW PEGとは、標識または検出可能な化合物をHMW PEGに直接または間接的に結合させるか、或いはHMW PEGを、標識をHMW PEGと結合させ得るレポーター化合物に結合させることを意味する(勿論、HMW PEGに結合させないまたはHMW PEGと結合させるように設計した標識も、後述するように、本発明は意図する)。HMW PEGは、本技術分野において既知の任意の検出可能な標識を使用して標識化し、PEGを、PEGを検出するのに充分なレベルに標識化する。当業者であれば、そのレベルは、標識および検出方法によって変動することを理解されたい。当業者であれば、一般的な最適化手順を使用して、標識化の度合を最適にすることは可能であろう。標識は、使用中に、好ましくは保存中に安定である非共有または共有結合によって、HMW PEGに化学的に結合させる。HMW PEGに共有結合させた標識が好ましい。標識結合密度は、HMW PEGの生物学的活性を実質的に保有するように調節する(本明細書において開示する有益な予防または治療効果を実現させるために充分な生物学的活性の保持)。このことは、本技術分野において知られているように、HMW PEG:標識比を調整することによって典型的に達成される。HMW PEGの平均分子量の相対的サイズを考慮すれば、広範囲の標識が、HMW PEGへの結合において、その生物学的活性の実質的な保持でもって適し得ることが期待される。
【0049】
本発明が意図する標識は、放射性標識、発色団、フルオロフォア、およびレポーター(検出可能な化合物および検出可能な化合物をレポーターの近くに局在化させる抗体のような結合パートナーの産生を触媒する酵素のような)を含む本技術分野において既知の標識である。酵素レポーターの例としては、発光系の酵素成分および比色反応の触媒がある。さらに詳細には、レポーター分子の例としては、ビオチン、アビジン、ストレプタビジン、および酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、分泌性アルカリホスファターゼ(SEAP)のようなアルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ)がある。そのようなレポーターの使用は、当業者にとって周知であり、例えば、米国特許第3,817,837号、米国特許第3,850,752号、米国特許第3,996,345号および米国特許第4,277,437号に記載されている。レポーター酵素によって検出可能な化合物に転換させ得る酵素基質の例としては、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルβ-D-ガラクトピラノシドまたはXgal、およびBluo-galがある。検出可能な化合物へ転換し得る化合物としての酵素基質は、本技術分野において理解されているように、ある種の実施態様における標識でもあり得る。標識およびその使用を教示している米国特許としては、米国特許第3,817,837号、米国特許第3,850,752号、米国特許第3,939,350号および米国特許第3,996,345号がある。放射性標識の例は、3H、14C、32P、33P、35Sおよび125Iである;フルオロフォアの例は、フルオレセイン(FITC)、ローダミン、Cy3、Cy5、エクオリンおよび緑色蛍光タンパク質である。好ましい標識は、フルオレセインのようなフルオロフォアである。
また、本発明のモニタリング方法は、2種以上の標識を含み得る。1つの実施態様においては、1つの標識は治療後または治療中のHMW PEGの位置を特定するように機能し、第2の標識は、該標識が少なくとも1種の微生物に検出可能に結合する限りにおいて、1種以上の微生物に対して特異的である。例えば、1つのモニタリング方法は、HMW PEGの生物学的活性を実質的に保持する形でHMW PEGに結合させたフルオレセイン、および原核生物特異性β-ガラクトシダーゼ活性の検出のための遊離の(即ち、結合していない) XgalまたはBluo-galを含み得る。フルオレセインはHMW PEGを局在化させるが、着色(青色)生成物は、シュードモナス類のようなラクトース代謝性原核微生物の存在を指標する。また、本発明は、単一標識がこの情報(即ち、HMW PEGの位置および微生物の存在の指示)を与えるモニタリング方法も含む。
【0050】
本技術分野において既知の任意の検出方法を、本発明のモニタリング方法において使用し得る。標識のタイプ、モニタリングに供する生体物質(例えば、皮膚、三半規管または腸の上皮細胞;糞便、粘膜または組織サンプル)、所望する識別レベル、定量を期待するかどうか等のような幾つかの要因が選定した検出方法に影響を与え得る。適切な検出方法としては、肉眼による単純な目視検査;必要に応じて適切な光源および記録用のカメラを備えた内視鏡のような器具による目視検査;ガイガーカウンター、X線フィルム、シンチレーションカウンター等の通常の使用;および本技術分野において既知の任意の他の検出方法がある。
当業者であれば、本発明のモニタリング方法は、治療方法を最適化するのに有用であることを理解されたい。例えば、1つのモニタリング方法は、三半規管の上皮のような上皮細胞に送達させて外耳炎を予防または治療するHMW PEGの量および/または濃度を最適化するために(例えば、HMW PEGの溶液または混合物における所望の粘度を得るために)使用し得る。さらなる例としては、腸治療の最適化は、標識化HMW PEGに暴露させた腸管の内視鏡検査または糞便サンプルのモニタリングによって容易にし得る。
本発明のモニタリング方法は、微生物と腸上皮細胞を接触させ、微生物の上皮細胞への付着を、本技術分野において既知の任意の方法を使用して検出することを含む、腸上皮細胞に付着し得る微生物についての糞便アッセイを含む。好ましい実施態様においては、腸上皮細胞をマイクロタイターウェルの底および/または側面のような適切な表面上に固定する。もう1つの好ましい実施態様においては、検出可能な生成物を産生し得るレポーターのような直接標識または間接標識を、検出工程前または検出工程中に添加する。該モニタリング方法は、遊離標識の添加もさらに含み得る。例えば、遊離Bluo-galを、ラクトース代謝性原核微生物を含有する疑いのあるサンプルに添加する;存在する場合、微生物酵素β-ガラクトシダーゼがBluo-galを開裂させて検出可能な青色生成物を与えるであろう。
【0051】
1つの実施態様においては、商業的に入手可能な腸上皮細胞(例えば、Caco-2細胞、ATCC HTB 37および/またはIEC-6細胞、ATCC CRL 1952)を、通常の方法を使用してマイクロタイターディッシュのウェルに固定する。糞便サンプルを採集し、リン酸緩衝生理食塩水のような液と混合する。懸濁微生物を含有する混合物の液相を得(例えば、適切な濾過(即ち、液体懸濁中の細菌からの総固形分の分離)、デカンテーション等により)、PBS中に1:100希釈する。Bluo-galを活性微生物懸濁液に添加する。微生物懸濁液をマイクロタイターウェルに24℃で1時間添加し、次いで、ウェルを適切な液(例えば、PBS)で洗浄して未結合微生物を除去する。固定上皮細胞に結合していないまたは結合した微生物を、例えば、偏光顕微鏡法を使用して計数することによって検出する。別の実施態様においては、イムノアッセイを使用して付着を検出する;適切な免疫試薬は、放射性標識、フルオロフォアまたは発色団のような標識に必要に応じて結合させた微生物(1種以上)特異性モノクローナルまたはポリクローナル抗体である。
当業者であれば、腸上皮細胞も微生物も固定させることを必要としないが、そのような固定化は、上皮細胞に付着している微生物の正確な検出を容易にし得ることを理解されたい。例えば、1つの実施態様においては、固定化糞便微生物を、固定させていない腸上皮細胞と接触させる。さらに、当業者であれば、本技術分野において既知の任意の適切な液体を使用して微生物懸濁液を得ることができ、好ましい液体は任意の既知の等張緩衝液であることも理解されたい。また、上述したように、任意の既知の標識を使用して細胞付着を検出することもできる。
関連する局面においては、本発明は、微生物細胞付着のアッセイ用キットを提供し、該キットは、上皮細胞および該上皮細胞への微生物細胞付着をアッセイするためのプロトコールを含む。該プロトコールは、微生物を検出するための既知の方法を説明する。好ましいキットは、腸上皮細胞を含む。本発明の他のキットは、フルオロフォアまたはレポーターのような標識をさらに含む。
【0052】
本発明が意図するもう1つのモニタリング方法は、微生物疎水性のアッセイである。この方法においては、微生物細胞の相対的または絶対疎水性を、任意の通常の方法を使用して測定する。方法の1つの例は、本技術分野において知られているように、存在し得る微生物の疎水性相互作用クロマトグラフィーへの暴露を含む。本明細書に参考としてその全体を合体させるUkuku et al., J. Food Prot. 65:1093-1099 (2002)。方法のもう1つの例は、存在し得る微生物の非極性:極性液体分配(例えば、1-オクタノール:水またはキシレン:水)である。本明細書に参考としてその全体を合体させるMajtan et al., Folia Microbiol (Praha) 47:445-449 (2002)を参照されたい。
PEG投与をモニタリングするための疎水性アッセイの1つの実施態様においては、糞便サンプルを、0.15M NaClを含有する50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH 7.4)中に懸濁させる。懸濁液中の微生物を遠心分離により集め、同じ緩衝液中に再懸濁させ、遠心分離-再懸濁サイクルを繰返す。可能であれば、微生物を同じ緩衝液中に660nmで0.4の吸光度に再懸濁させ、これによって、標識化PEGを使用しないで、分光光度測定的にモニタリングを可能にする。微生物懸濁液をキシレン(2.5:1(v/v)、Merck社)で処理し、懸濁液を2分間激しく撹拌し、懸濁液を室温で20分間沈降せしめる。その後、水性相中の微生物の存在を、例えば、660nmでの吸光度の分光光度測定によって測定する。リン酸ナトリウム緩衝液を含有するブランクを使用してバックグラウンドを排除する。
これらの方法において使用する糞便サンプルからの微生物細胞を得るに当っては、HMW PEGは、微生物懸濁液を得るのに使用する液体および微生物懸濁液を希釈するのに使用し得るいずれの液体中でも相対的に不溶性であるのが好ましい。
【0053】
さらに、本発明は、微生物疎水性のアッセイを含む上記モニタリング方法を実施するためのキットも提供し、該キットは、腸上皮細胞および微生物疎水性の測定を説明するプロトコールを含む。好ましいキットは、腸上皮細胞を含む。関連するキットは、フルオロフォアまたはレポーターのような標識をさらに含む。
さらに、本発明は、腸内微生物叢のサンプルを得、PA-Iレクチン/付着因子活性を検出することを含むモニタリング方法も提供する。本技術分野において既知の任意のPA-Iレクチン/付着因子活性の検出方法を使用し得る。例えば、PA-Iレクチン/付着因子は、PA-Iレクチン/付着因子を特異的に認識する抗体(ポリクローナル、モノクローナル、Fabフラグメントのような抗体フラグメント、単鎖、キメラ、ヒト化または本技術分野において既知の任意の他の形の抗体)を使用して検出し得る。該イムノアッセイは、本技術分野において既知の任意のイムノアッセイ方式、例えば、ELISA、ウェスタン、免疫沈降法等の形を取る。別法として、PA-Iレクチン/付着因子の炭水化物結合能力を検出してもよく、或いは、PA-Iレクチン/付着因子の腸上皮バリア破壊活性を、例えば、サンプルへの暴露前および/または暴露中の上皮層の経上皮電気抵抗、即ち、TEERをモニターすることによって測定してもよい。関連キットにおいては、本発明は、PA-Iレクチン/付着因子結合性パートナーおよびPA-Iレクチン/付着因子活性(例えば、結合活性)を検出するためのプロトコールを含む。本発明に従う他のキットは、PA-Iレクチン/付着因子に結合することが分っている任意の炭水化物およびPA-Iレクチン/付着因子活性(例えば、結合活性)を検出するためのプロトコールを含む。
【0054】
(実施例9)
HMW PEG様化合物を使用する消化管由来敗血症の治療
雄Balb/cマウスを、全て実施例1において説明したようにして、麻酔し、30%肝切除術に供し、塩水、PEG 3.350 (10%(w/v))またはモノメトキシPEG 15-20 (mPEG) (10%(w/v))のいずれかに希釈し、直接ニードル穿刺により盲腸基部中に注入した200μlの107cfu/ml緑膿菌PA27853で攻撃する。一定源の塩水、LMW PEG、HMW mPEGを、適切なニードルを小腸(回腸)に導くことによって与え、1mlの塩水、PEG 3.35またはHMW mPEGを隣接腸中に逆行注入する。穿刺部位を絹縫合糸で結紮し、盲腸をアルコールで綿棒消毒する。全て実施例1で説明した方法に従い、マウスをケ−ジに戻し、次の48時間H2Oのみを与える。
結果は、HMW PEG (15〜20kD)を使用して得られた結果と類似していることが予測される;図1および実施例1を参照されたい。いずれの保護効果の統計学的有意性も、フィッシャー精密検定を使用して判定する(P<0.001)。
当業者であれば、如何なるHMW PEG様化合物も、30%肝切除術のような手術介入後の発症する消化管由来敗血症に対する保護効果のアッセイに適応し得ることを理解されたい。フィッシャー精密検定(P<0.0001)によって明確にされるような統計学的に有意の保護効果に関与する化合物は、本発明に従う化合物として容易に同定される。対照として、盲腸内容物、粘膜、肝臓および血液中の細菌数の1元ANOVAを実施して、細菌数が、手術およびHMW PEG様化合物の不存在下に緑膿菌攻撃に供した生物体の盲腸内容物、粘膜、肝臓および血液中で統計学的に有意の増大(P<0.001)を示すことを裏付け得る。アッセイに含ませ得るもう1つの対照は、若干の生物体を、肝切除術を受ける試験生物体の場合の偽開腹術のような“偽”手順に供することである。本発明に従うHMW PEG様化合物は、肝臓および血液細菌数の統計学的に有意の減少(P<0.05)を得ること、さらに、好ましくは、病原体の検出可能レベルのあらゆる伝播を阻止することが期待される。さらにまた、消化管由来敗血症に感受性の任意の生物体をそのようなアッセイにおいて使用することができ、消化管由来敗血症を発症するリスクに生物体をさらす事象は、多かれ少なかれ肝臓損失に関与する肝切除術、全体的にそのような事象が消化管由来敗血症のリスク増大に関連することが知られている限りの他の手術手順または事象のような、消化管由来敗血症のリスク増大に関連することが知られている任意の事象であり得る。HMW PEG様療法は、生理学的ストレス後(例えば、術後治療中)に実施したとき、敗血症に関連する死亡または重病の予防方法において有用であることが期待される。さらに、HMW PEG様療法は、ストレス導入が予測され得る状況下の生理学的ストレス化(例えば、術前治療)前に使用して、重病または死亡のリスクを低下させ得る。また、HMW PEG様療法は、消化管由来敗血症に関連する疾患、障害または異常症状に関連する症候を改善するのにも有用である。
【0055】
(実施例10)
HMW PEG様化合物はラクトバシルスGG、即ち、共生治療薬の送達を安定化させる
共生微生物ラクトバシルスGG (LGG)由来の調整培地は、腸上皮細胞中での細胞保護性ヒートショックタンパク質 hsp25およびhsp72の発現を誘導させる。2004年4月20日に出願され、“Cytoprotective Factors Derived From Probiotic And Commensal Flora Microorganisms”と題し、発明者としてEugene ChangおよびElaine Petrof名義の仮米国特許出願第 号(代理人整理番号27373/40049)を参照されたい;該米国特許出願は、本明細書にその全体を参考として合体させる。上記治療用調整培地の送達を試験して、HMW PEG様化合物の存在下での投与が何らかの改善を与えるかどうかを判定した。
この実施例において説明する試験においては、HMW PEG (15〜20kD)をHMW PEG様化合物として使用し、YAMC (young adult mouse colon;若齢成体マウス結腸)細胞をアッセイ対象として使用した。YAMC細胞は、MHCクラスIIプロモーターのインターフェロンガンマ感受性成分の制御下に温度感受性SV40大T抗原(tsA58)のトランス遺伝子を発現するイモルチマウス(Immortimouse)由来の条件付で不死化したマウス結腸上皮細胞である。該細胞は、R. Whitehead博士(Vanderbilt University、テネシー州ナッシュビル)の寛大なる贈与である。当業者であれば、他の容易に入手し得る非最終分化腸細胞も上記YAMC細胞の代りに使用し得ることを理解されたい。YAMC細胞を、許容条件(33℃)下に、5%(v/v)のウシ胎仔血清、5U/mlのマウスインターフェロン-γ(IFN-γ;GibcoBRL社、ニューヨーク州グランドアイランド)、50μg/mlのストレプトマイシン、50U/mlのペニシリンを含み、ITS+ Premix (BD Biosciences社、マサチューセッツ州ベッドフォード)を補充したRPMI 1640培地中に維持した。インターフェロン-γ(IFN-γ)の不存在下の37℃の非許容(非形質転換)条件下に、これらの細胞は、分化を受け、緊密接合部形成、極性、微繊毛頂端膜および輸送機能のような成熟上皮細胞機能および特性を発生させる。
【0056】
細胞を、60mmの組織培養ディッシュ当り2.5×105の密度で塗沫した。細胞付着を可能にする33℃での24時間の増殖後、培地を無IFN培地と交換し、細胞を37℃(非許容条件)に24時間移行させて分化結腸細胞フェノタイプの発現を可能にした。細胞をLGG調整培地(1:10希釈、即ち、600μl)により、1夜または本明細書で開示する他の条件で処理し、その後、溶解し、ウェスタンブロット分析に供した。
処理後、細胞を2回洗浄し、次いで、氷冷HBS (150mM NaCl、5mM KCl、10 mM HEPES、pH 7.4)中で細片化した。細胞をペレット化し(室温で20秒間14,000×g)、次いで、氷冷溶解緩衝液[10mM Tris pH 7.4、5mM MgCl2、50U/mlのデオキシリボヌクレアーゼ(DNAse)およびリボヌクレアーゼ(RNAse) + 完全プロテアーゼインヒビター混合物(Roche Molecular Biochemicals社、イリノイ州インディアナポリス)]中に再懸濁させた。タンパク質濃度を、ビシンコニン酸手順を使用して測定した。サンプルを、3X Laemmli Stop緩衝液の添加後、75℃に5分間加熱し、その後、-80℃で保存し、1週間以内で使用した。
ウェスタンブロット分析においては、レーン当り20マイクログラムのタンパク質を12.5%SDS-PAGE上で分解し、本技術分野において既知であるようなPVDF膜(Polyscreen;Perkin-Elmer NEN社、マサチューセッツ州ボストン)上の1X Towbin緩衝液(組成:25mM Tris、192mM グリシン、pH 8.8、15%(v/v)メタノール)中に移した。膜を、TBS-Tween (0.05%(v/v)のTween 20を含むTris緩衝食塩水(150mM NaCl、5mM KCl、10mM Tris、pH 7.4)中の5%(w/v)無脂肪乳中で、室温で1時間遮断した。一次抗体をTBS-Tweenに添加し、特異性抗-hsp-25抗体(SPA801、Stressgen社、カナダ、BC、ビクトリア)、抗-hsp72抗体(SPA 810、Stressgen社)または抗-hcp73抗体(SPA 815、Stressgen社)と一緒に4℃で1夜インキュベートした。その後、ブロットを、ペルオキシダーゼ接合二次抗体(Jackson Immunoresearch Labs社、ペンシルベニア州フォートワシントン)との室温で1時間のインキュベーション前に、TBS-Tween中で、各々10分間5回室温で洗浄した。その後、膜をTBS-Tween中で洗浄し(5回×10分間)、次いでTBS(無Tween)中で最終洗浄した。ブロットを、増強化学発光系ECL試薬(Supersignal、Pierce社、イリノイ州ロックフォード)で可視化し、製造者の使用説明書に従い現像化した。
【0057】
初期結果は、HMW PEG単独では腸上皮細胞におけるヒートショックタンパク質発現を誘導させておらず(図7、レーン2)、LGG処理に先立ってのHMW PEG処理は、HMW PEGをLGGの前に投与した場合、LGG処理によって通常観察されるhsp発現の誘導を阻止しているようであることを示していた(図7のレーン3と4を比較されたい)。対照的に、HMW PEG前のLGGの投与は、LLG単独とは異なっていないhps発現をもたらしており(レーン3と5を比較されたい)、HMW PEGが、HMW PEGをLGGの後に投与した場合、hsp発現の誘導を抑制しないことを示唆していた。
その後、異なる比率のLGG+HMW PEGの各種混合物を使用して腸上皮細胞を処理して、その組合せがより健全なヒートショックタンパク質応答をもたらすかどうかを判定し、必要であろう最適組合せを判定した。データは、LLG:HMW PEGの1:1比(図7、レーン7)および1:1.5比(図7、レーン10)が、最も健全なヒートショックタンパク質発現を生じさせる2つの組合せであることを示唆している。事実、後者の組合せは、熱ストレス、即ち、ヒートショックタンパク質産生を刺激するのに通常使用される判断基準よりももっと健全であるシグナルを生じていた(図7のレーン9とレーン10を比較されたい)。
当業者であれば、治療薬(例えば、LGG調整培地)対HMW PEG様化合物の比は変動し得、そのような変動は本発明が意図するものであることを理解されたい。勿論、特定のHMW PEG様化合物も変化し得、与えられたHMW PEG様化合物は使用前に有効性についてアッセイする。HMW PEGおよびHMW mPEGは現在のところ好ましい化合物であるが、広範囲のHMW PEG様化合物を本発明における使用において意図する。さらに、LLGの細胞保護性化合物(1種以上)が調整培地中に存在することを明らかにするにすると、当業者であれば、多くの通常の方法のどれかを使用して該活性化合物(1種以上)のより純粋な調製物を達成し得るであろうし、本発明の範囲内において、HMW PEG様化合物はそのような調製物の投与においても使用しえることを意図する。例えば、本発明は、HMW PEG様化合物の存在下での投与において熱安定性であり、酸安定性であり、サイズ的に10kD未満であるLGG由来のタンパク質またはペプチド治療薬を意図する。より一般的には、HMW PEG様化合物は、全菌微生物並びに調整培地、部分精製調製物、同質まで精製した調製物および化学合成生成物のような広範囲の共生治療薬の投与において有用であることが期待される。また、本発明に従うHMW PEG様化合物は、広範囲の構造(例えば、ペプチド、タンパク質、小分子エフェクター等)および治療効果を有する非共生治療薬を送達させるのにも有用である。
【0058】
(実施例11)
HMW PEG様化合物はVSL#3、即ち、共生治療薬の送達を安定化させる
共生微生物混合物VSL#3 (VSL Pharmaceuticals社、メリーランド州ゲイサーズバーグ)由来の調整培地は、ヒートショックタンパク質hsp25およびhsp72の発現を誘導することにより、また、リン酸化IkBαのようなIkBαの分解を、おそらくは上皮細胞のような細胞内のある種のプロテアソーム活性(キモトリプシン様活性の抑制、カスパーゼ様活性の弱い抑制、トリプシン様活性の検出し得ない抑制)に対するその選択的効果によって抑制することにより、腸上皮細胞に影響を与えることが証明されている。従って、VSL#3は、NFkB遺伝子発現調節に従う遺伝子発現に影響を与える。2004年2月6日に出願された仮米国特許出願第60/542,725号;および、2004年4月20日に出願され、“Cytoprotective and Anti-Inflammatory Factors Derived From Probiotic And Commensal Flora Microorganisms”と題し、発明者としてEugene ChangおよびElaine Petrof名義の仮米国特許出願第 号(代理人整理番号27373/40027)を参照されたい;これら米国特許出願の各々は、本明細書にその全体を参考として合体させる。上記治療用調整培地の送達を試験して、HMW PEG様化合物の存在下での投与が何らかの改善を与えるかどうかを判定した。
本実施例において説明する試験は、HMW PEG様化合物としてのHMW PEG、VSL#3由来の調整培地およびYAMC細胞を使用して実施した。
YAMC細胞の増殖、IFNγの添加、非許容温度でのインキュベーション、HMW PEG様化合物を含むまたは含まないVSL#3調整培地への暴露、細胞溶解およびウェスタンブロット分析は、全て実施例11で説明したようにして、本明細書で説明するLGG調整培地を等量のVSL#3調整培地に代えて実施した。
VSL#3調整培地は、時間依存性の形でその共生生物活性を喪失し、保存する温度には依存していないようである。その生物活性およびヒートショックタンパク質を誘導する能力を喪失し始めたVSL#3調整培地の数バッチを、その効力を再生させる試みにおいてHMW PEGと別々に組合せた。通常、600μlの調整培地が、消化管上皮細胞におけるヒートショック応答を誘導させるのに使用する最適量である。VSL#3調整培地のこれら減衰バッチは、全て、効果を観察するのに通常必要とする2倍の量を必要としてし、応答を僅かに弱く誘導し得ていた(図8のレーン2、6および10参照)。
【0059】
共生薬-HMW PEG混合物の最適比であるとLGG試験(実施例10参照)において以前に決定した同じ比を保って、600μlの減衰状態調節VSL#3倍値を600μlのHMW PEGと混合し、上皮細胞表面に適用した。600μlのVSL#3単独は何らのヒートショック応答を誘導し得なかったものの(図8のレーン1、5および9)、HMW PEGの添加は、ヒートショックタンパク質発現を増強し得たのみならず、減衰VSL#3調整培地の3つの個々のバッチの効力を充分に再生させ得ていた(図8のレーン3,7および11を比較されたい)。バッチHの場合、HMW PEGの添加は、完全に喪失している(即ち、検出し得なかった;図8のレーン9および10〜11を比較されたい)活性を再生させていた。
ウォッシュアウト試験を実施することによってHMW PEGの増強効果を消去し得るかどうかを判定する試験を実施した、即ち、VSL-HMW PEG混合物を適用し、細胞上で10分間放置し、次いで、吸引除去し、培地を新鮮培地交換によって置換えた。細胞を16時間後の採集し、ヒートショックタンパク質発現について評価した。VSL#3減衰調整培地単独によるそのような処理はシグナルを生じていなかったが、VSL-HMW PEG混合物においては、健全なヒートショックタンパク質誘導が3つの減衰バッチ全てにおいて観察された(図8のレーン4,8および12)。このことは、共生混合物へのHMW PEGの添加がその効力を増強させたのみならずその半減期も延長させたことを示唆している。理論によって拘束することは望まないが、半減期延長は、共生生物活性因子をウォッシュアウト処理後でさえも上皮細胞と接触したままにし得るHMW PEGの付着特性に基づき得ていた。また、非限定的な理論的観察として提案すれば、HMW PEGは、共生因子の構造を安定化させることも可能である。ヒートショック陽性対照細胞(図8、レーン14)および未処理陰性対照細胞(図8、レーン13)も示している。
実施例10において説明したように、治療薬(例えば、VSL#3調整培地)対HMW PEG様化合物の比は変導し得、そのような変動は、使用する特定のHMW PEG様化合物における変動のように本発明が意図するものである。さらに、VSL#3調整培地中の活性化合物(1種以上)のより純粋な調製物も意図し、本発明の範囲に属する。例えば、VSL#3調整培地は、さらなる精製取組みに供して、酸安定性で、エーテル抽出性である10kD未満の平均分子量を有するタンパク質またはペプチドのより純粋な調製物を得ることができ、そのような治療薬は、本発明の方法および使用に意図する。本発明に従うHMW PEG様化合物は、広範囲の構造(例えば、ペプチド、タンパク質、小分子エフェクター等)を有し、また広範囲の治療効果を示す共生および/または非共生治療薬を送達させるのにも有用である。
【0060】
(実施例12)
生体内送達中の治療薬を安定化させるためのHMW PEG様化合物の使用
広範囲の化学および生物学的治療薬および薬物は、HMW PEG様化合物を含む送達系を使用しての上皮細胞への送達に適している。本発明に従う化合物の保護または安定化局面は、例えば、腸のような上皮粘膜への投与に適する治療薬の範囲を広げることが期待される。顕著な例は、経口送達に適応してなく、多くの糖尿病患者において毎日の注射を必要としていた治療用タンパク質インスリンである。適切なタンパク質治療薬のもう1つの例は、ホルモン療法である。タンパク質系(例えば、タンパク質、ポリペプチドまたはペプチド類)治療薬の投与における送達系の使用に関する本発明の当該局面に関しては、本発明は、例えば、腸の上皮細胞の緊密な接合を開放させてタンパク質系治療薬の取込みを容易にするのに有効な量のPA-Iレクチン/付着因子のさらなる添加を意図する。
本発明の系により送達する治療薬の範囲の例は、癌症状を治療するのに使用する小分子化学療法剤のような小分子治療薬である。本技術分野において既知の任意の範囲の放射化学を含む化学的治療薬およびタンパク質系を含む生物学的治療薬は、本明細書において説明する送達系を使用して、適応性について容易にアッセイし得る。大多数のそのような治療薬は、上記送達系を使用し、新たな送達手段を開発しまたは既知の治療薬投与経路を増強するかして投与可能であることが期待される。そのような治療薬は、本明細書において提示する取扱い説明に従い投与する。例えば、実施例1、9、10および11を参照されたい。
本発明のこの局面の他の具体的な実施態様は、本発明のHMW PEG様送達系を使用しての性感染疾患の症候を予防、治療または改善するための治療薬の投与である。例えば、AIDSの治療は、HMW PEGのようなHMW PEG様化合物の溶液中の有効量の抗-HIV治療薬の腟、経口または直腸(例えば、座薬として)送達による投与を含む。1つの実施態様においては、治療薬は、共生微生物またはそれに由来する活性成分である。他の実施態様においては、治療薬は、任意の既知の抗HIV治療薬である。そのような治療薬、実際には、本明細書において開示したまたは本技術分野において既知の任意の治療薬有効量は、当業者であれば、容易に決定し得ることであり、本技術分野において理解されているように、年齢、体重、一般的健康等のような変動要因に依存する。これらの治療薬送達系は、抗-HIVワクチン開発が臨床関連のワクチンの提供から10年であり得るという報告に鑑み、重要な健康上の有益性を提供することが期待される。
【0061】
本発明の数多くの修正および変更は、上記の教示に照らして可能であり、本発明の範囲に属する。本明細書において引用した全ての刊行物の開示全体を、参考として本明細書に合体させる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】偽装開腹術または30%肝切除術に供し、次いで緑膿菌PA27853を盲腸に直接注入した48時間でのマウスの死亡率を示す。マウスは、30%無血左葉肝切除を直ぐに受け、その後、1×107cfu/mlのPA27853の直接盲腸注入を行なった。各群は、7匹のマウスを含んでいた。対照マウスは、偽装開腹術を受け、次いで、等量のPA27853を盲腸に注入した。PEG群のマウスにおいては、1×107cfu/mlのPA27853をPEG 3.35 (LMW PEG 3.350)またはPEG 15-20 (HMW PEG 15,000〜20,000ダルトン)のいずれかに盲腸注入前に懸濁させた。PEG 15-20の投与量応答曲線は、パネルbにおいて見られる。a:PEG 15-20の統計的に有意の保護効果は、フィッシャー精密検定によって判定した (P<0.001)。b:PEG 15-20の最低保護濃度は、5%であると判定した (P<0.05)。c:30%肝切除術および1×107cfu/mlのPA27853の直接盲腸注入後24時間での盲腸内容物(糞便)、洗浄盲腸粘膜、肝臓および血液の定量的細菌培養物。1元ANOVAは、肝切除術後のマウスの盲腸内容物、粘膜、肝臓および血液中の細菌数の統計学的に有意の増大を実証していた(P<0.001)。肝臓および血液細菌数の有意の減少(P<0.05)はPEG 3350において観察されたが、PEG 15-20は、PA27853のマウス肝臓および血液への伝播を完全に阻止していた。
【図2】経上皮電気抵抗(TEER)により評価したときのPA27853誘導性上皮バリア機能障害に対するPEG 15-20の保護効果を示す。a:データは、1×107cfu/mlのPA27853への8時間頂端暴露中に観察した三連の培養物(n=7)のベースラインからの平均±SEM%最大TEER低下を示す。TEERの統計学的に有意の低下を、PA27853に暴露させたCaco-2細胞において実証した(1元ANOVA (P<0.001))。PA27853により誘導されたTEER落込みに対する統計学的に有意の保護効果をPEG 15-20において実証した(P<0.001)。b:PEG 3.35の存在下およびPA27853への頂端暴露のCaco-2細胞の画像。共培養4時間後に撮った画像は、単分子層完全性の喪失を示し、細胞は細胞足場の30〜40ミクロン上で浮遊しており、細胞膜へのPA27853の付着を示していた。c:PA27853に頂端暴露させたCaco-2細胞は、PEG 15-20の存在下の4時間後、試験したいずれの面においても浮遊細胞の形跡を示していなかった。
【図3】PA27853中でのPA-I発現に対するPEGの抑制効果を示す。a:ウェスタンブロット分析。1mMの菌体密度感知機構シグナル伝達分子C4-HSLへのPA27853の暴露は、PA-Iタンパク質発現の統計学的に有意の増大(P<0.001、1元ANOVA)をもたらし、これは、10%のPEG 3.35の存在下においては部分的に、10%のPEG 15-20によってはるかに多く抑制された。a’:C4-HSL誘導PA-I発現に対するPEG 15-20の最低抑制濃度は、5%であった(P<0.01)。b:PEGの存在および不存在下にC4-HSLに暴露させた個々の細菌細胞の電子顕微鏡測定は、C4-HSLが緑膿菌の形状および線毛発現に形態学的変化をもたらしていることを示した。C4-HSL誘導性形態作用は、PEG 15-20の存在下では完全に排除され、PEG 3.35においては排除されてなかった。ハロータイプ効果は、PEG 15-20に暴露させたPA27853の周りで観察された。c:ノーザンハイブリダイゼーション。PA27853の0.1mMのC4-HSLへの暴露は、PA-I mRNA発現の統計学的に有意の増大(P<0.001、1元ANOVA)をもたらし、これは、10%のPEG 15-20によって大きく抑制されていた。d:Caco-2細胞への4時間暴露によって誘導されたPA-I mRNAの増大は、PEG 15-20の存在においては抑制され、PEG 3.35において抑制されてなかった(P<0.001、1元ANOVA)。
【図4】PA27853の細菌膜完全性および増殖パターンに対するPEG溶液の効果を示す。a:細菌膜完全性に対する2つのPEG溶液の効果を、SYTO 9およびヨウ化プロピジウムからなる染色法によって評価した。いずれのPEG溶液も細菌膜浸透性に対して何ら効果を有してなかった。b:PA27853増殖パターンは、PEGを含まないTSB培地(対照)と対比して、2つのPEG溶液において同じようであった。
【図5】PEGに暴露させたCaco-2細胞および細菌細胞の原子間力顕微鏡(AFM)画像を示す。a〜c:培地単独(a)、PEG 3.35を含む培地(b)、およびPEG 15-20を含む培地の存在下でのCaco-2細胞のAFM画像。PEG 3.35はCaco-2細胞上に平滑カーペット状物を形成していることが観察され(b)、一方、PEG 15-20は、よりトポグラフ的に構成された被膜を形成していた(c)。d〜f:PEG 3.35およびPEG 15-20中でのPA27853のAFM画像。PEG 3.35が個々の細菌細胞の辺りで平滑な外被を形成していたが(e)、PEG 15-20は、個々の細胞を強固に束縛しているだけでなく(f)、ポリマー/細菌直径も増大させ(g、h)、それによって個々の細菌を互いに引き離していた。
【図6】PA27853の分散/凝集パターンに対するPEG溶液の効果を示す。dTC3ディッシュ内の細菌細胞の分散パターンを、Axiovert 100 TV蛍光倒立顕微鏡により、DICおよびGFP蛍光フィルターを使用して、63×の対物倍率にて直接観察した。温度は、Bioptechsサーモスタット温度制御装置によって調節した。タングステンランプ(100V)をDICおよびGFP励起の双方において使用した。Intelligent Imaging Innovations社からの3Dイメージングソフトウェア(Slidebook)を使用し、GFPフィルターを使用してZ面中の細菌細胞分散パターンを画像化した。Caco-2細胞を含まない培地中の均一分散プランクトン様緑膿菌細胞をDIC画像(6a1)およびZ面再構築(6a2)において観察した。Caco-2細胞の存在においては、細菌細胞は、凝集外観を発生させ(6b1)、Caco-2細胞への付着を観察した(6b2)。10%のPEG 3350は、細菌の運動性を低下させ、壁底(6c2)に付着したキノコ状の細菌微細コロニー(6c1)の即時の形成を誘導した。Caco-2細胞の存在においては、細菌微細コロニーは、上皮細胞の面上で8ミクロン程度であった(6d1,2)。10%のPEG 15-20は、緑膿菌細胞の運動性を大きく消失させた。にもかかわらず、PEG 15-20含有培地中での最初の0.5〜1時間のインキュベーションにおいては、細菌細胞は、壁底に密接したクモ足状微細コロニー(6e1,2)を形成していた。数時間以内で、クモ足状微細コロニーが培地の空間/容積全体を占めた(図示せず)。Caco-2細胞の存在においては、緑膿菌細胞は、クモ足様形状を喪失し、上皮面よりも上(30〜40ミクロン)に高揚しているのを観察した(6f1,2)。
【図7】HMW PEG様化合物(即ち、HMW PEG 15-20kD)を含む溶液中およびHMW PEG様化合物を含まない溶液中での共生治療薬(LGG)による腸上皮細胞の治療効果を示す。若齢成体マウス結腸(YAMC)細胞を種々の処置(以下のゲルレーン表示参照)に供し、その後、採集し、ヒートショックタンパク質発現についてウェスタンブロット分析により評価した。レーン1= 未処置細胞(陰性対照);レーン2= 高分子量PEG単独、600μl添加;レーン3= ラクトバシルスGG (LGG)調整培地単独、600μl添加;レーン4= 最初細胞に600μlのPEG添加、その後、2時間後に600μlのLGG添加;レーン5= 最初にLGG添加、その後、2時間後にPEG添加(レーン4と同じ容量);レーン6= 300μlのLGG+600μlのPEGの混合物添加;レーン7= 1:1比の混合物(600μlのLGG+600μlのPEG);レーン8= 900μlのLGG+600μlのPEGの混合物;レーン9= 600μlのLGG+300μlのPEGの混合物;レーン10 = 600μlのLGG+900μlのPEGの混合物;レーン11 = 熱ストレスに供した細胞(HS = ヒートショック、陽性対照)。ウェスタンブロットを実施して、上記で列挙した種々の処置による誘導性ヒートショックタンパク質hsp72 (上方パネル)およびhsp25 (中央パネル)の誘導を評価した。hsc73(下方パネル)は、等量のタンパク質を全てのレーンに負荷させたことを確認するための負荷対照として機能する。
【図8】HMW PEG様化合物(即ち、HMW PEG 15-20kD)を含む溶液中およびHMW PEG様化合物を含まない溶液中での共生治療薬(VSL#3)による腸上皮細胞の治療効果を示す。若齢成体マウス結腸(YAMC)細胞を、この場合も、以下に示すような種々の処置に供し、その後、16時間後に採集し、ヒートショックタンパク質発現についてウェスタンブロット分析により評価した。レーン1= VSL#3調整培地バッチA、細胞に600μl添加、16時間放置;レーン2= VSL#3調整培地バッチA、細胞に1200μl添加、16時間放置;レーン3= VSL#3培地バッチA、600μlのPEGと混合した600μl、細胞に16時間添加;レーン4= VSL#3 A/PEG混合物、10分間放置、次いで除去(培地交換);レーン5= VSL#3調整培地バッチB、細胞に600μl添加、16時間放置;レーン6= VSL#3調整培地バッチB、細胞に1200μl添加、16時間放置;レーン7= VSL#3培地バッチB、600μlのPEGと混合した600μl、細胞に16時間添加;レーン8= VSL#3 B/PEG混合物、10分間放置、次いで除去(培地交換);レーン9= VSL#3調整培地バッチH、細胞に600μl添加、16時間放置;レーン10 = VSL#3調整培地バッチH、細胞に1200μl添加、16時間放置;レーン11= VSL#3培地バッチH、600μlのPEGと混合した600μl、細胞に16時間添加;レーン12= VSL#3 H/PEG混合物、10分間放置、次いで除去(培地交換);レーン13 = 未処置細胞(陰性対照);レーン14= 熱ストレスに供した細胞(HS = ヒートショック、陽性対照)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラベル包装材と、前記ラベル包装材中に収容した有効量の高分子量ポリエチレングリコール様(HMW PEG様)化合物とを含む製造品であって、
前記ラベル包装材は、前記HMW PEG様化合物を、炎症性上皮とバリア機能障害を含む上皮とからなる群から選ばれる症状を治療、改善または予防するのに使用可能であることを表示するラベルまたは添付文書を含む、前記製造品。
【請求項2】
HMW PEG様化合物が、高分子量ポリアルカン、ポリアルケンまたはポリアルキレングリコールである、請求項1記載の製造品。
【請求項3】
高分子量(HMW)ポリアルカン、ポリアルケンまたはポリアルキレングリコールが、HMWポリプロピレングリコール、HMWポリエチレングリコール(HMW PEG)およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項2記載の製造品。
【請求項4】
HMW PEG様化合物がHMW PEGである、請求項3記載の製造品。
【請求項5】
HMW PEG様化合物が、HMW PEG、HMWポリメトキシPEG、HMWモノメトキシPEG、HMWポリプロピレングリコールおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項2記載の製造品。
【請求項6】
直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1の共有結合官能基をさらに含む、請求項5記載の製造品。
【請求項7】
共有結合官能基がメトキシ基である、請求項6記載の製造品。
【請求項8】
直鎖C1〜C10アルキル基、枝分れ鎖C1〜C10アルキル基、アリール基およびこれらの混合物からなる群から選ばれるリンカーをさらに含む、請求項2記載の製造品。
【請求項9】
リンカーがフェニル基である、請求項8記載の製造品。
【請求項10】
HMW PEG様化合物が水溶液中に存在する、請求項2記載の製造品。
【請求項11】
HMW PEG様化合物が、少なくとも5%(w/v)の濃度で溶液中に存在する、請求項10記載の製造品。
【請求項12】
HMW PEG様化合物が、10%〜20%(w/v)の濃度で溶液中に存在する、請求項10記載の製造品。
【請求項13】
HMW PEG様化合物が、12,000ダルトンよりも大きい平均分子量を有する、請求項2記載の製造品。
【請求項14】
平均分子量が、少なくとも15,000ダルトンである、請求項13記載の製造品。
【請求項15】
平均分子量が、15,000ダルトンよりも大きく且つ20,000ダルトン未満である、請求項14記載の製造品。
【請求項16】
ラベル包装材が、該化合物を投与して上皮の炎症および上皮のバリア機能障害からなる群から選ばれる症状を治療、改善または予防するための使用説明書を提供する、請求項1記載の製造品。
【請求項17】
症状が、消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項16記載の製造品。
【請求項18】
症状が、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害およびこれらの組合せからなる群から選ばれる免疫障害である、請求項17記載の製造品。
【請求項19】
症状が、潰瘍性大腸炎、クローン病およびこれらの組合せからなる群から選ばれる炎症性大腸炎である、請求項18記載の製造品。
【請求項20】
治療上有効量の治療薬をさらに含む、請求項1記載の製造品。
【請求項21】
治療薬が、共生微生物製剤、少なくとも1種の共生微生物に由来する組成物、鎮痛性化合物、抗炎症性化合物、免疫系のモジュレーター、抗生物質、抗がん剤、抗潰瘍剤、成長因子、サイトカイン、タンパク質ホルモン、トレフォイルタンパク質およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項20記載の製造品。
【請求項22】
治療薬が、5-アミノサリチレート、5-アミノサリチレート部分を含む化合物、コルチコステロイド、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、シクロスポリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、セファロスポリン、タキサン、タキサン部分を含む化合物、カンプトセシン、カンプトセシン部分を含む化合物、5-フルオロウラシル、5-フルオロウラシル部分を含む化合物、抗アンドロゲン化合物、抗エストロゲン化合物、上皮成長因子、腸トレフォイル因子、インスリン、ソマトスタチン、インターフェロンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項21記載の製造品。
【請求項23】
治療薬が共生乳酸菌である、請求項21記載の製造品。
【請求項24】
治療薬が、ラクトバシルスGG (LGG)、VSL#3およびこれらの混合物からなる群から選ばれる微生物製剤である、請求項23記載の製造品。
【請求項25】
HMW PEG様化合物および有効量の治療薬を含む組成物を投与することを含む、治療薬組成物の投与を必要とする対象者の上皮に治療薬組成物を投与する方法。
【請求項26】
治療薬が、共生微生物製剤、少なくとも1種の共生微生物に由来する組成物、鎮痛性化合物、抗炎症性化合物、免疫系のモジュレーター、抗生物質、抗がん剤、抗潰瘍剤、成長因子、サイトカイン、タンパク質ホルモン、トレフォイルタンパク質およびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項25記載の方法。
【請求項27】
治療薬が、5-アミノサリチレート、5-アミノサリチレート部分を含む化合物、コルチコステロイド、メトトレキサート、6-メルカプトプリン、シクロスポリン、バンコマイシン、メトロニダゾール、セファロスポリン、タキサン、タキサン部分を含む化合物、カンプトセシン、カンプトセシン部分を含む化合物、5-フルオロウラシル、5-フルオロウラシル部分を含む化合物、抗アンドロゲン化合物、抗エストロゲン化合物、上皮成長因子、腸トレフォイル因子、インスリン、ソマトスタチン、インターフェロンおよびこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項25記載の方法。
【請求項28】
HMW PEG様化合物がHMW PEGである、請求項25記載の方法。
【請求項29】
上皮が、腸粘膜、肺粘膜、鼻粘膜、尿道粘膜、食道粘膜、頬粘膜および皮膚からなる群から選ばれる、請求項25記載の方法。
【請求項30】
対象者が哺乳動物である、請求項25記載の方法。
【請求項31】
対象者がヒトである、請求項30記載の方法。
【請求項32】
治療薬組成物を、経口投与、直腸投与、洗腸、局所投与、静脈内注入、腹腔内注入、尿道内投与、腟内投与、挿管および補助呼吸からなる群から選ばれる経路によって投与する、請求項25記載の方法。
【請求項33】
治療薬が、タンパク質化合物である、請求項25記載の方法。
【請求項34】
有効量のPA-Iレクチン/付着因子を投与することをさらに含む、請求項33記載の方法。
【請求項35】
対象者の上皮の微生物介在性症状を治療する方法であって、
有効量のHMW PEG様化合物を必要とする対象者に投与することを含み、前記HMW PEG様化合物が、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGである、前記方法。
【請求項36】
HMW PEG様化合物が、少なくとも10%〜20%未満のHMW PEG様化合物(w/v)を含む水溶液として存在する、請求項35記載の方法。
【請求項37】
対象者が哺乳動物である、請求項35記載の方法。
【請求項38】
対象者がヒトである、請求項37記載の方法。
【請求項39】
上皮が、腸粘膜、肺粘膜、鼻粘膜、尿道粘膜、膣粘膜、食道粘膜、頬粘膜および皮膚からなる群から選ばれる、請求項35記載の方法。
【請求項40】
HMW PEG様化合物を、経口投与、直腸投与、腟内投与、腸への投与、局所投与、静脈内注入、腹腔内注入、挿管および呼吸からなる群から選ばれる経路によって投与する、請求項35記載の方法。
【請求項41】
症状が、消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項35記載の方法。
【請求項42】
症状が、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項35記載の方法。
【請求項43】
HMW PEG様化合物が、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGであり、且つ症状が、消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項35記載の方法。
【請求項44】
症状が、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害およびこれらの組合せからなる群から選ばれる、請求項43記載の方法。
【請求項45】
有効量のHMW PEG様化合物を必要とする対象者に投与することを含み、前記HMW PEG様化合物が、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGである、請求項43記載の症状の症候を改善する方法。
【請求項46】
有効量のHMW PEG様化合物を必要とする対象者に投与することを含み、前記HMW PEG様化合物が、直鎖C1〜C10アルコキシ基、枝分れ鎖C1〜C10アルコキシ基、C1〜C10アリールオキシ基およびこれらの混合物からなる群から選ばれる少なくとも1個の共有結合官能基をさらに含むHMW PEGである、請求項43記載の症状を予防する方法。
【請求項47】
消化管由来敗血症、炎症性腸疾患、過敏性腸症候群、上皮に対する熱傷、上皮に対する化学薬品接触損傷、新生児壊死性全腸炎、免疫障害、重症好中球減少症、中毒性大腸炎、腸疾患、移植片拒絶反応、回腸嚢炎、ピッグベリー症、コレラ、粘膜炎症、皮膚の炎症およびこれらの組合せからなる群から選ばれる症状の治療用医薬品の製造における、請求項25〜46のいずれか1項記載のHMW PEG様化合物の使用。
【請求項48】
症状が、白血病、リンパ腫、AIDS、乾癬、炎症性腸疾患、紅斑性狼瘡、強皮症、関節リウマチ、化学療法誘導性免疫障害、放射線誘導性免疫障害およびこれらの組合せからなる群から選ばれる免疫障害である、請求項47記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−533755(P2007−533755A)
【公表日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−509597(P2007−509597)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/013465
【国際公開番号】WO2006/073430
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(506354180)ザ ユニヴァーシティ オヴ シカゴ (1)
【Fターム(参考)】