説明

高周波誘電加熱装置、及び高周波誘電加熱方法

【課題】円筒状の被加熱材を厚さ方向、軸方向の両方において、均一に加熱する。
【解決手段】加硫成型装置10は、内型20と外型40を備える。内型20の外周面27には、筒状に形成された被加熱材30を装着する。外型40は、略円筒形の収納室を有し、その内周面に沿うように円筒形の電極材65を備える。電極材60の内部には、被加熱材30を装着した内型20を配置する。外型40のゴムジャケット43は、圧力媒体によって、電極材60を介して、被加熱材30を加圧する。電極材65と内型20の間に高周波電圧を印加し、高周波誘電によって被加熱材30を加熱する。内型20内の中空部28には、加熱媒体を供給し、被加熱材30を加熱する。外型40の外周を取り囲むように補助加熱装置90を設け、補助加熱装置90によっても被加熱材30を加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワンポット式の加硫成型装置等に適用される高周波誘電加熱装置及び高周波誘電加熱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スリーブ状の被加熱材を加圧・加熱するための装置として、例えばワンポット式の加硫成型装置が知られている(例えば特許文献1)。この加硫成型装置においては、被加熱材は、筒状の外型と、外型内部に同心的に配置される内型の間に配置され、外型および内型の内部に供給される熱媒体により加熱されるとともに、外型と内型によって挟圧され、加熱・加圧されることにより加硫成型される。
【0003】
このワンポット式の加硫成型装置においては、外型または内型に供給される熱媒体の熱エネルギーが、被加熱材の外周面および内周面から被加熱材の内部に熱伝導され、これにより被加熱材全体が加熱される。しかし、被加熱材は、例えばゴムや樹脂で構成される場合、一般的にその熱伝導率が低く、熱伝導による加熱では、被加熱材内部には充分に熱エネルギーが伝導されない。
【0004】
そこで、近年、被加熱材をその内部から加熱する方法が検討されつつあり、その方法の一つとして被加熱材を電極間に配置して、高周波誘電加熱により加熱する方法が提案されつつある。
【0005】
例えば筒状形状を呈する被加熱材を高周波誘電加熱により加熱する場合、上部電極と下部電極の間に、被加熱材を保持したホルダーを配置させ、ホルダーとともに被加熱材を回転させながら、被加熱材を加熱する方法が知られている(例えば特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−824号公報
【特許文献2】特開平11−123758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の高周波誘電加熱によれば、ホルダーを回転させるために余計な動力が必要な上に、ホルダーも高周波電圧により加熱されるので、加熱効率が低下させられる。また、被加熱材はホルダーによって保持されているので、被加熱材に圧力を付勢することは困難である。
【0007】
したがって、特許文献2に記載の高周波誘電加熱においては、ホルダーを省略することが考えられる。しかし、ホルダーによって被加熱材が回転されないと、円筒形の被加熱材には均一に高周波電圧が印加されないので、被加熱材を均一に加熱することが困難である。
【0008】
そこで、本願発明においては、上記問題点に鑑みて成されたものであり、筒状形状を呈する被加熱材を加圧しながら効率よく加熱するとともに、被加熱材を軸方向において均一に加熱することができる高周波誘電加熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る高周波誘電加熱装置は、外周面に筒状の被加熱材が取り巻かれて装着される内型と、被加熱材の外周面に沿うように配置される電極材と、内型を内部に配置させると共に、その一部が高圧空気によって内側に膨張し、被加熱材を、その外周側から電極材を介して押圧して内型とともに挟圧し、被加熱材を加圧する外型と、電極材と内型の間に高周波電圧を印加し、被加熱材を高周波誘電によって加熱する電圧印加手段と、被加熱材を外周側から加熱し、又は外型を加熱する第1の補助加熱手段とを備える。
【0010】
被加熱材を内周側から加熱し、又は内型を加熱する第2の補助加熱手段を備えることが好ましい。例えば、内型は、内部が中空部に形成され、中空部に加熱媒体が供給され、被加熱材を内周側から加熱する第2の補助加熱手段である。例えば、外型は、有底円筒形状を呈し、その内周面の一部が高圧空気によって内側に向けて膨張するジャケット部に形成される。
【0011】
第1の補助加熱手段は、例えば、外型の外周を取り巻くように配置されても良いし、外型の内部には、高圧空気が供給されるために中空部が形成されると共に、第1の補助加熱手段が、中空部の内部に配置されても良い。さらに、本発明に係る高周波誘電加熱装置は、第1の補助加熱手段の外周を被覆する保温材を備えていたほうが良い。
【0012】
第1の補助加熱手段は、被加熱材の軸方向において、不均一に加熱制御可能であることが好ましく、例えば、第1の補助加熱手段は、軸方向に沿って並べられた独立加熱制御可能な複数の加熱部を備える。
【0013】
被加熱材の軸方向において上側及び下側に設けられた加熱部は、相対的に高温に設定されると共に、中央に設けられた加熱部は相対的に低温に設定されることが好ましい。例えば、第1の補助加熱手段は第1乃至第3の加熱部を有し、第1、第2、第3の加熱部は、それぞれ、外型の軸方向において、相対的に上側部分、中央部分、下側部分に設けられる。また、第1の補助加熱手段、すなわち、各加熱部は、電熱線から形成されることが好ましい。
【0014】
本発明に係る高周波誘電加熱方法は、内型の外周面に筒状の被加熱材を装着するとともに、内型を外型内に配置させ、電極材を被加熱材の外周面に沿うように配置させる工程と、外型の一部を高圧空気によって内側に膨張させ、被加熱材を、その外周側から電極材を介して押圧して、外型と内型によって挟圧する工程と、電極材と内型の間に高周波電圧を印加し、被加熱材を高周波誘電によって加熱すると共に、高周波誘電及び高圧空気とは異なる手段によって、被加熱材を外周側から加熱し、又は外型を加熱する工程とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明においては、高周波誘電加熱と共に、被加熱材を加圧するための手段とは異なる手段によって、被加熱材を外周側から補助的に加熱することにより、被加熱材をその軸方向において均一に加熱することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。図1は、第1の実施形態に係る加硫成型装置を示す。加硫成型装置10は、内型20と、内型20を内部に収納する外型40を有する。内型20は、略円柱状に金属で形成され、その内型20内部には熱媒体や冷却水が通過できるように中空部28が形成され、中空部28に熱媒体が供給されることにより、内型20が加熱させられる。内型20の上面22および下面23にはそれぞれ、内型20内部に熱媒体を送入出するための入出管24、25が設けられる。入出管24、25は、上面22および下面23の中心から、それぞれ上方および下方に突出する。なお、熱媒体としては、水蒸気が使用されるが、オイル等も使用可能である。
【0017】
図2は、内型20の外周面に装着される被加熱材30を示す。内型20の外周面27には、織布、編布等の基布80が巻き付けられた後、心線82が周長方向に沿って螺旋状に巻き付けられ、その心線82の上にはさらにゴムシート81が巻き付けられる。このように巻き付けられて装着された基布80、心線82、ゴムシート81は、略円筒形状を呈し、後述する高周波誘電によって加熱されるための被加熱材30となる。略円筒状の被加熱材30は、その軸方向の長さが、図1に示すように内型20の軸X方向の長さより短く、内型20の下端部、上端部においては、被加熱材30が巻きつけられていない。なお、被加熱材30は、この構成に限定されず、高周波誘電により加熱され得るものを含めば良く、例えば各種樹脂、エラストマー、高分子天然材料を含むものであれば良い。
【0018】
外型40は、有底の略円筒形状を呈する外枠部41と、外枠部41の上面に覆うように接続される上蓋部42と、外枠部41の内側に設けられるゴムジャケット43とを備える。外枠部41および上蓋部42は、電流が導通可能なように金属で形成される。外枠部41の底部50は、その中央部に入出管25が挿通するための貫通孔46が設けられる。上蓋部42は、内型20を挿入するための円形の開口部45が形成される。上蓋部42の下面および底部50の上面には、それぞれ下方および上方に突出する環状の上蓋突出部56および底部突出起部57が連接される。
【0019】
ゴムジャケット43は、円筒形状を呈し外枠部41と同心的に配設されるとともに、その円筒形状の両端部が拡径するように広げられ、上蓋突出部56および底部突出部57の外周側の側面に嵌合されて上蓋部42および底部50に固定される。ゴムジャケット43は、これら突出部に嵌合することにより、その径方向内側に向かって膨張された場合でも、ゴムジャケット43の上蓋部42および底部50に対する固定状態は維持される。
【0020】
ゴムジャケット43と外枠部41の内周面72の間には、底部50を底面とし、上蓋部42を上面とする中空部54が形成される。ゴムジャケット43の内周面は、突出部56、57の内周面、開口部45の内周面とともに、略同一曲面を形成し、これにより、外型40は、この同一曲面を内周面とし、底部50を底面とする有底円筒状の収納室67を形成する。
【0021】
ゴムジャケット43(すなわち収納室67)の内部には、電極材60が配置される。電極材60は、円筒形に形成される電極部65と、電極部65の上端部から外側に向かって広がる鍔部66を有する。電極部65は、収納室67の内周面に沿うように外枠部41に同心的に設けられ、鍔部66は上蓋部42の上面に沿って設けられる。電極材60の鍔部66は上蓋部42の上面に固定され、これにより電極材60は、外型40に取り付けられている。また、電極材65の下端部は、後述するように、突出部57の内周面に上下方向に移動可能に支持されている。外枠部41には、注入口51、52が設けられ、注入口51、52から中空部54に高圧空気である圧力媒体が注入・排出される。
【0022】
被加熱材30の上には、基部61a及び突出部61bによって一体に形成され、断面L字状を呈する第1絶縁ブロック61が設けられる。基部61aは、円筒状を呈すると共に、突出部61bは基部61aの外周に沿って、基部61aの下面から下方に向けて突出し、円筒状を呈する。内型20が外型40内に収納されるとき、基部61aは、図3に示すように、内型20の上面22に載せられ、突出部61bは内型20と外型40の間に配置され、被加熱材30の上面近傍まで突出する。第1絶縁ブロック61には、外周部近傍において、内型20の軸方向に貫通したエア抜き穴71が設けられる。
【0023】
底部50の上面には、内径が挿通孔46の径に一致する円筒状の基部62aと、基部62aの外周に沿って上方に突出し、外周が電極部65の内周面に沿うように形成される円筒状の突出部62bから構成される断面L字状の第2絶縁ブロック62が設けられる。第1及び第2の絶縁ブロック61、62は、シリコン、またはフッ素樹脂(例えばポリテトラフルオロエチレン)等の絶縁体で形成される。
【0024】
外枠部41のさらに外周側には、補助加熱装置90が設けられる。補助加熱装置90は、外型40の軸方向に沿うように並べられた第1乃至第3の加熱部91、92、93から構成される。第1乃至第3の加熱部91、92、93それぞれは、電気を通電することにより発熱する電熱線から形成されると共に略円筒形状を呈し、それぞれ独立に加熱制御可能である。第1乃至第3の加熱部91、92、93は、それぞれ、外型40の軸方向における、外枠部41(外型40)の外周面の上側部分、中央部分、及び下側部分を取り囲むように配置される。第1乃至第3の加熱部91、92、93の外周面は、石綿等で形成される保温材94で被覆されている。
【0025】
図3は、内型20が外型40内に収納されたときの加硫成型装置を示す。被加熱材30が装着された内型20が、外型40内に収納されると、内型20の入出管25が第2絶縁ブロック62の基部62aの内側、及び貫通孔46の内部に挿通され、内型20の下面23が基部62aの上面に載置される。これにより、被加熱材30の下面は、突出部62bの上面に接触し、または近接される。このように内型20が収納されると、内型20の軸Xと外型40(外枠部41)の軸が一致し、被加熱材30は電極部65の径方向内側に配置され、その外周面が電極部65の内周面に沿うように配置される。すなわち、内型20が外型40内に収納されると、内型20、外型40、被加熱材30および電極部65は、同心的に設けられ、それぞれの軸は一致する。
【0026】
内型20が、収納室67内に収納されると、内型20および外型40には、それぞれ導線(不図示)が接続され、これら導線は、電圧供給のための不図示の電源に接続される。電源は0.5〜100kWの範囲で高周波誘電のための電圧を出力することが可能である。外型40は、電極材60が取り付けられた上蓋部42を介して、電極部65に電気的に接続されており、電極部65と内型20の間には、高周波電圧が印加可能になる。
【0027】
次に、本実施形態における加熱・加硫方法について説明する。内型20が外型40内に収納された状態において、内型20の中空部28内には、熱媒体が供給され、内型20が加熱されると共に、補助加熱装置90が通電されて加熱される。補助加熱装置90は、第3の加熱部93が最も高温に設定され、外型40及び被加熱材30に最も多いエネルギーを供給する共に、第2の加熱部92が最も低温に設定され、外型40及び被加熱材30に最も少ない熱エネルギーを供給する。
【0028】
次いで、外型40に設けられた中空部54内部に圧力媒体が供給され、ゴムジャケット43がその径方向内側に膨張させられる。ゴムジャケット43の膨張により、円筒形の電極部65は縮径し、内側に撓んで変位させられ、被加熱材30に密着する。そして、被加熱材30は、電極部65を介してゴムジャケット43に押圧され、これにより被加熱材30は、ゴムジャケット43と内型20に挟圧され、所定圧力が付勢される。
【0029】
このように所定圧力が付勢された状態で、内型20と外型40の間には、電力が供給され、電極部65と、内型20の間には、高周波電圧が印加され、被加熱材30は高周波誘電により加熱される。また、上述したように、内型20内は熱媒体により加熱されると共に、補助加熱装置90は通電して加熱されている。したがって、被加熱材30は、高周波誘電加熱、内型20内の加熱、及び補助加熱装置90の加熱によって所定時間加熱され、加硫成型される。
【0030】
被加熱材30の加熱が終了すると、高周波電圧の印加及び補助加熱装置90への通電が停止されると共に、内型20内には、冷却水が供給され、被加熱材30が冷却された後、外型40から内型20が取り出される。内型20は、外部に取り出された後、被加熱材30が内型20から取り外され、これにより加硫成型された円筒状の被加熱材が得られる。なお、本実施形態においては、加硫成型された被加熱材は、基布80と、基布80に巻き付けられた心線82と、心線82に加硫接着されたゴム層とを備えるベルトスラブとなる。ベルトスラブは、研磨加工された後、周方向に沿って切断され、無端状の平ベルト、Vベルト等の各種ベルトと成る。勿論、被加熱材30は、加熱・加圧されることにより、ベルトスラブ以外のものに成型されても良い。
【0031】
以上のように、円筒形状の被加熱材30は厚さ方向に高周波電圧が印加され、その厚さ方向において略均一に加熱される。一方、高周波誘電によって加えられた熱エネルギーは被加熱材30の上面及び下面から放出されるので、被加熱材30は、その軸方向において均一に加熱されないおそれがある。しかし、高周波誘電加熱と共に、内型20内部の熱媒体及び第1〜第3の加熱部91〜93によっても、被加熱材30が加熱されているので、被加熱材30は軸方向においても、均一に加熱されることが可能である。
【0032】
特に、被加熱材30には、第1及び第3の加熱部91、93によって、軸X方向における上側部分及び下側部分に相対的に多量の熱エネルギーが供給される。したがって、被加熱材30の下側部分及び上側部分は、高周波誘電によって供給された熱エネルギーを放出するが、その放出分は補助加熱装置90の加熱によって補うことが可能である。さらに、本実施形態においては、第1乃至第3の加熱部91〜93の外周は、保温材94が被覆されているため、第1乃至第3の加熱部91〜93の熱エネルギーは効率的に被加熱材30及び外型40に伝播される。
【0033】
また、内型20及び外型40それぞれは、熱媒体及び補助加熱装置90によって、加熱されるので、被加熱材30の内周面及び外周面から放出されて損失される熱エネルギーは減少される。
【0034】
なお、本実施形態において、被加熱材30は、外型40を支持する土台部分によって吸熱されるため、被加熱材30の下側部分の熱損失は、上側部分に比べて高くなる。したがって、上述したように、第3の加熱部93の方が、第1の加熱部91より高く加熱されている。なお、本実施形態では、高周波電圧の印加は、被加熱材30の加熱が終了するまで、継続して行われたが、途中で停止されても良い。
【0035】
なお、被加熱材30とゴムジャケット43の間、および内型20と被加熱材30の間、並びに被加熱材30内に内在される空気は、ゴムジャケット43の加圧により、第1絶縁ブロック61に設けられたエア抜き穴71より加硫成型装置10の外部に放出される。さらに、本実施形態では、内型20は、第2絶縁ブロック62を介して、外型40上に載置され、これにより内型20と外型40の接触が有効に防止され、ショートが防止される。また、ゴムジャケット43と、外型40との固定部分から、圧力媒体が漏れるおそれがあるが、補助加熱は第1〜第3の加熱部によってなさるので、圧力媒体を水蒸気にする必要がなく、圧力媒体が原因でショートするおそれもない。
【0036】
図4は、外型40に設けられた電極材60を示す。電極材60は、上述したように略円筒形状を呈する電極部65と、電極部65の上端部に接続され、外側に向けて広がる鍔部66が設けられる。電極材60は、例えば、鉄、アルミニウム、銅、その他の導電性の高い金属、又はこれらの合金により一体的に形成される。
【0037】
電極部65には、その軸方向に平行に延びる矩形の複数のスリット75が設けられ、これら複数のスリット75によって電極部65は、その軸方向に延びる複数の薄板部76として、周方向に分離されている。ここで、各スリット75は、電極部65の上端から所定の距離おいた位置から、下端から所定の距離おいた位置まで延び、電極部の下端部と上端部においては、電極部65は周方向に分離されてない。すなわち、複数の軸方向に延びる薄板部76は、その両端部が、周方向全周に亘って延びる環状の固定部77により、連接されている。ここで、各薄板部76はその厚さが非常に薄く可撓性を有し、径方向に押圧されると、固定部77を支点としてその押圧される方向に撓みつつ変位される。
【0038】
薄板部76の下端部を連接する固定部77には、電極材60の軸方向に延び、スリット75より幅及び長さが短い2以上の支持スリット97が設けられる。底部突出部57(図1参照)の内周面の支持スリット97に対向する位置には、幅長さが支持スリット97にほぼ等しく、軸方向の長さが支持スリット97より短い突起(不図示)が設けられている。接続部48に設けられた突起は、支持スリット97内に挿通され、これにより電極材60は、周方向には変位できないが、軸方向に所定量以上変位しようとすると、突起によりその変位が規制される。すなわち、電極材60は、軸方向に変位可能に接続部48により支持される。なお、電極材60には、支持スリット97が設けられず、接続部48によって支持されていなくても良い。
【0039】
なお、電極材60の電極部65および鍔部66の厚さ、すなわち各薄板部76の厚さは、ゴムジャケット43の押圧により変形可能な範囲であれば良く、例えば0.1〜0.5mm、好ましくは0.2mmである。また、各スリットは、同一の矩形形状を呈し、等間隔に設けられ、その幅が例えば1〜5mm、好ましくは2mmである。一方、各薄板部の幅は、例えば15〜25mm、好ましくは20mmである。
【0040】
電極材60が加硫成形装置10に取り付けられている場合、電極材60の固定部77は、上蓋部42の側面45および、底部50の接続面48に対向する位置に設けられる。一方、各薄板部76はゴムジャケット43に対向する位置に設けられる。したがって、ゴムジャケット43がその径方向内側に向けて膨張させられると、固定部77は、ゴムジャケット43によりほとんど押圧されないが、各薄板部76はゴムジャケット43により押圧される。
【0041】
各薄板部76は押圧されると、径方向内側に変形しつつ変位し、電極部65が縮径して、各薄板部76が接近させられる。したがって、電極部65が押圧される前に離間されていた各薄板部76は、押圧されるとほとんど接するような状態になる。すなわち、被加熱材30の外周面のほぼ全ての領域は、電極部65によって覆われることとなる。
【0042】
以上の構成により、円筒形状の被加熱材30は、その内周面のほぼ全ての領域が内型20に、外周面のほぼ全ての領域が電極部65に密着させられている。したがって、被加熱材30は、高周波誘電加熱により、効率よく加熱される。また、複数に分割された各薄板部76は、固定部77によって連接されることにより、固定部77から容易に電力供給を受けることができる。
【0043】
また、被加熱材30が加熱により膨張・収縮し、その外周面の径が大きく(または小さく)なる場合でも、電極材60は、その拡径(または縮径)に追随して拡径(または縮径)し、加熱中継続して被加熱材30に密着させられる。ここで、各薄板部76は、接近し重なる場合もあるが、そのような場合でも、各薄板部76は薄いので、被加熱材30に充分に密着させられる。同様の理由により、被加熱材30の外周径が異なるような場合でも、各薄板部76は、被加熱材30に密着可能であり、本実施形態に係る加硫成型装置10では、周径の異なる被加熱材を加熱可能である。
【0044】
さらに、電極材60は可撓性を有し、変形して外周面に密着するので、ゴムジャケット43からの押圧力を被加熱材に伝播させやすい。そして、被加熱材30の外周面のほぼ全ての領域は電極部65に密着させられるので、被加熱材には均一に圧力が付勢しやすい。なお、スリットは軸方向に対して、傾いていても良く、また例えばジグザグ、Z字状、S字状に蛇行して延びていても良い。また、電極部65は、被加熱材30の外周面に沿うように配置されれば、ゴムジャケット43の内部に埋設されていても良い。この場合、電極材60において、鍔部66は省略される。さらには、電極材60は外型40に取り付けられていなくても良く、被加熱材30の外周に巻かれていても良い。また、電極部65は可撓性を有する金属板で形成され、スリット75が設けられていなくても良い。
【0045】
図5は、第2の実施形態に係る加硫成型装置を示す。第1の実施形態と第2の実施形態との相違点は、補助加熱装置90及び保温材94の配置位置のみであるので、以下その相違点について説明する。図5に示すように、補助加熱装置90は、外型40の内部であって、ゴムジャケット43と内周面72の間に形成された中空部54内に配置される。補助加熱装置90は、第1の実施形態と同様に、軸方向Xにおける、ゴムジャケット43の上側部分、中央部分、及び下側部分それぞれを取り囲む第1乃至第3の加熱部91、92、93を備える。第1乃至第3の加熱部91、92、93の外周面には、さらに保温材94が被覆されている。
【0046】
以上のような構成によれば、被加熱材43に近接する位置に補助加熱装置90を配置させることができるので、より効率的に被加熱材43を加熱することができる。
【0047】
なお、第1及び第2の実施形態において、補助加熱装置90を構成する独立に加熱制御可能な加熱部は複数あることが好ましいが、1つ以上であればいくつであっても良い。また、各加熱部の軸方向の高さは互いに同一であっても良いし、異なっていても良い。
【実施例】
【0048】
以下、本発明について、実施例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明は以下説明する実施例によって何ら限定されるものではない。
【0049】
[実施例]
実施例においては、第1の実施形態の製造方法に倣って平ベルトを製造し、円柱形の内型に織布、心線及び、天然ゴムから形成される未加硫ゴムシートを順に巻き付けた。未成型ベルトスリーブを装着した内型を外型に挿入した後、電極部と内型の間に、加熱設定温度を170℃とし、高周波電圧を印加した。また、内型内には170℃の水蒸気を供給するとともに、外型内には、高圧空気を供給し、高圧空気によりゴムジャケットを膨張させ、外型と内型により未成型ベルトスリーブを挟圧した。さらに、電熱線から構成され、軸方向に並べられる第1、第2、第3の加熱部は、それぞれ、190℃、170℃、200℃に加熱した。以上の加熱によって、被加熱材を加硫し、筒状のベルトスラブを得た。得られたベルトスラブを冷却した後、内型を外型から取り出し、ベルトスラブを内型から取り外した。ベルトスラブは、厚さ7mm、周長長さ400mm、軸方向の高さ(スラブ高さ)450mmのものであった。
【0050】
[比較例]
比較例においては、内型内に熱媒体を供給せず、補助加熱装置を設けなかった以外は、実施例と同様の条件によりベルトスラブを製造した。
【0051】
[ベルトの評価方法]
得られた実施例及び比較例のベルトスラブにおいて、軸方向における最上部、中央部、最下部から試験サンプルを取り出し評価した。
【0052】
[ピコ摩耗試験]
ピコ摩耗試験は、JISK6264に準拠して行った。具体的には、ゴム層の厚さ方向における外表面部分から取り出した厚さ2mm、径25mmの円盤形状の試験片を、JISK6264に記載される方法に従って摩耗させ、摩耗量を測定した。ピコ摩耗試験において、摩耗された摩耗量を表1に示す。
【0053】
[剥離強度]
図6は、剥離強度の試験方法を示すための模式図である。本試験では、試験機として島津製作所製オートグラフAGS−5KNを用いた。試験サンプル100はベルトスラブを周方向に沿って幅25mmに切断した後、幅方向に沿って切断した帯状の平ベルトを用いた。図6に示すように、試験サンプル100において、織布180及び心線182からゴム層181を50mm以上剥離させ、織布180及び心線182を共に第1のチャック191で掴み、ゴム層182を第2のチャック192で掴んだ。第1及び第2のチャック191、192を、サンプルの長手方向に沿って、それぞれ反対方向に引っ張ることにより、ゴム層182を50mm/分で剥離させ、剥離強度を測定した。
【0054】
[破断強度及び破断伸度]
破断強度及び破断伸度の測定は、試験機として島津製作所製オートグラフAGS−5KNを用いて行った。試験サンプルはベルトスラブを周方向に沿って幅10mmに切断した後、幅方向に沿って切断した帯状の平ベルトを用いた。試験サンプルは、測定部が200mmになるように長さ方向における両端それぞれをチャックで挟み、長さ方向に500mm/分で引っ張り、破断強度及び破断伸度を測定した。
【0055】
[硬さ]
実施例、比較例に係るベルトスラブのゴム層のゴム硬さを、JIS K6253−1997 TypeAの測定方法に従って測定した。
【0056】
[耐屈曲性]
実施例及び比較例のベルトスラブを周長方向に沿って切断して得られた幅10mmの無端状の平ベルトを試験サンプルとし、図7に示すベルトレイアウトで取り付け、耐屈曲性を評価した。本試験では、図7から明らかなように、原動及び従動平プーリ201、202に実施例又は比較例の平ベルト100を掛け回し、テンショナ203でベルトの外周側からテンションを付勢した。平ベルト100は、15.7m/sの速度で半時計回りに回転させ、ベルトが破壊されるまでの屈曲回数を測定した。なお、本試験においては、平ベルトは、1回転毎に、プーリを3回通過するので、ベルト1回転毎に屈曲回数は3回とカウントする。
【0057】
【表1】


※耐屈曲試験において、1×10回以上とあるのは、1×10回屈曲されてもベルトが破断しなかったことを示す。
【0058】
表1に示すように、比較例のベルトスラブにおいては、軸方向における最上部、最下部の摩耗量に比べて、中央部の摩耗量が多くなった。これは、中央部が最下部及び最上部に比べ、充分に加熱されなかったことによるものである。それに対して、実施例における軸方向における最上部、中央部、最下部はピコ磨耗が略同一であり、被加熱材は均一に加熱されたと理解できる。
【0059】
同様に、実施例のベルトスラブについてのその他の測定値も、軸方向における位置が異なってもほぼ同一になった。それに対して、比較例のベルトスラブにおいては、最上部及び最下部の各測定値が、スラブ中央部の各測定値より低く、スラブ上部及び下部は、強度が低下していたことが理解できる。これは、実施例のベルトスラブは、軸方向の位置が異なっていても均一に加熱されているが、比較例のベルトスラブは、軸方向における上部、及び下部が、中央部に比べ充分に加熱されず、加硫不足であったためと考えられる。
【0060】
以上の実施例から明らかなように、本発明においては、高周波誘電加熱とは別の媒体で、外周側及び内周側から被加熱材を加熱することにより、軸方向において温度むらなく均一に加熱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】第1の実施形態に係る加硫成型装置の内型と外型の断面図である。
【図2】被加熱材の模式的な断面図である。
【図3】内型が外型内に挿入されたときの加硫成型装置を示す断面図である。
【図4】第1の実施形態に係る電極材を示す斜視図である。
【図5】第2の実施形態に係る加硫成型装置の内型と外型の断面図である。
【図6】剥離強度の試験方法を示すための模式図である。
【図7】耐屈曲試験におけるベルトレイアウトを示すための模式図である。
【符号の説明】
【0062】
10 加硫成型装置
20 内型
27 外周面
30 被加熱材
40 外型
43 ゴムジャケット(ジャケット部)
28、54 中空部
60 電極材
90 補助加熱装置
91〜93 第1〜第3の加熱部
94 保温材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面に筒状の被加熱材が取り巻かれて装着される内型と、
前記被加熱材の外周面に沿うように配置される電極材と、
前記内型を内部に配置させると共に、その一部が高圧空気によって内側に膨張し、前記被加熱材を、その外周側から前記電極材を介して押圧して内型とともに挟圧し、前記被加熱材を加圧する外型と、
前記電極材と前記内型の間に高周波電圧を印加し、前記被加熱材を高周波誘電によって加熱する電圧印加手段と、
前記被加熱材を外周側から加熱し、又は前記外型を加熱する第1の補助加熱手段と
を備える高周波誘電加熱装置。
【請求項2】
前記被加熱材を内周側から加熱し、又は前記内型を加熱する第2の補助加熱手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項3】
前記内型は、内部が中空部に形成され、前記第2の補助加熱手段は前記中空部に供給される加熱媒体であることを特徴とする請求項2に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項4】
前記外型は、有底円筒形状を呈し、その内周面の一部が前記高圧空気によって内側に向けて膨張するジャケット部に形成されることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項5】
前記第1の補助加熱手段は、外型の外周を取り巻くように配置されることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項6】
前記外型の内部には、高圧空気が供給されるために中空部が形成され、前記第1の補助加熱手段は、前記中空部の内部に配置されることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項7】
前記第1の補助加熱手段の外周を被覆する保温材を備えることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項8】
前記第1の補助加熱手段は、前記被加熱材の軸方向において、不均一に加熱制御可能であることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項9】
前記第1の補助加熱手段は、独立に加熱制御可能な複数の加熱部を有し、前記複数の加熱部は前記軸方向に沿って並べられることを特徴とする請求項8に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項10】
前記軸方向において上側及び下側に設けられた前記加熱部は、相対的に高温に設定されると共に、中央に設けられた加熱部は相対的に低温に設定されることを特徴とする請求項9に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項11】
前記第1の補助加熱手段は、電熱線から形成されることを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電加熱装置。
【請求項12】
内型の外周面に筒状の被加熱材を装着するとともに、前記内型を外型内に配置させ、電極材を被加熱材の外周面に沿うように配置させる工程と、
前記外型の一部を高圧空気によって内側に膨張させ、前記被加熱材を、その外周側から前記電極材を介して押圧して、前記外型と内型によって挟圧する工程と、
前記電極材と前記内型の間に高周波電圧を印加し、前記被加熱材を高周波誘電によって加熱すると共に、前記高周波誘電及び高圧空気とは異なる手段によって、前記被加熱材を外周側から加熱し、又は前記外型を加熱する工程と
を備える高周波誘電加熱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−132716(P2008−132716A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321787(P2006−321787)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000111085)ニッタ株式会社 (588)
【Fターム(参考)】