説明

高温材搬送用部材

【課題】耐ビルドアップ性に優れる高温材搬送用部材の提供
【課題手段】高温材搬送用部材の母材表面に、プラズマ粉体肉盛法により、Co基合金またはNi基合金をマトリックスとし、かつCr炭化物粒子を分散相とする複合皮膜を形成する。このとき、皮膜中に存在する未溶解のCr炭化物粒子の分布率を7.0%以下に制限すれば、耐ビルドアップ性が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理などにより加熱される鋼材その他の高温材料を支持、搬送するのに好適な高温材搬送用部材に関し、特に、熱処理炉内の搬送用ローラ、スキッドボタンなどの高温材搬送用部材に関する。
【背景技術】
【0002】
熱間での継目無鋼管の製造その他の金属材料の熱間加工においては、例えば、熱処理炉内の加工用素材もしくは製品、または、熱処理炉などによって高温に加熱されたこれらの材(以下、「高温材」と総称する。)の搬送には、ローラコンベアなどの搬送用部材が使用されることが多い。
【0003】
高温材の搬送に際し、例えば、高温材と搬送用部材との間でスリップが生じると、高温材と搬送用部材との間で焼き付きが生じることがある。その際、高温材からの剥離物またはその酸化物が高温材または搬送用部材表面に局部的に付着すると(以下、これらの付着物を「ビルドアップ」と称する。)、搬送中の高温材表面に押込み疵が発生し、製品の表面品質および歩留まりを低下させるという問題がある。
【0004】
このような不良を抑制するために、従来、搬送用部材の母材の材質を、例えば、Cr、Ni合金鋼などの耐焼き付き性に優れたものとすることが行われているが、それだけでは、十分な効果が得られないのが実情である。そこで、以下に示すように、母材の表面に皮膜を形成した様々な部材が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、ローラ母材の表面に、3Cr−1Ni−Fe系合金にNbCを30〜50体積%含有させた耐熱材料を肉盛り溶接し、次いで、COガスを含む酸化性雰囲気中で熱処理して、その表面に強固な酸化スケール皮膜を付与する発明が開示されている。この発明によれば、熱間材の搬送に際して熱間材とローラとの2面間に凝着が発生しない、耐摩耗性と耐焼き付き性に優れた熱間搬送ローラを製造できるとされている。
【0006】
特許文献2には、母材表面に、体積比で20〜70%のニオブ炭化物粒子を含む金属−炭化物複合皮膜と、該皮膜の最表面に形成させた酸化物皮膜とからなる二層皮膜を有する熱間工具の焼付き防止技術が開示されている。また、特許文献3には、Cr、W、Fe、C、残部Coからなる合金粉末と20〜70重量%の炭化物系セラミック粉末とからなるプラズマ粉体溶接肉盛用複合溶接材に関する発明が提案され、特許文献4には、クロム系炭化物を20〜60体積%含有するコバルトまたはコバルト基合金から肉盛ロールに関する発明が提案されている。
【0007】
特許文献5には、Co−Cr−Fe合金材料にCr32を加えた粉末をプラズマ粉体溶接にて肉盛し、ライニング層を形成する金属部品の表面処理方法に関する発明が開示されている。特許文献6には、炭化物を20〜70体積%含有し、残部が金属からなる金属−炭化物複合皮膜を最表面に構成した耐ビルドアップ性に優れた高温材搬送用ローラに関する発明が開示されている。さらに、特許文献7には、硬化肉盛層における亀裂の発生を抑えるために、溶融した炭素鋼に炭化物または炭窒化物の硬質粒子を一部溶融した未溶融状態で凝固し、さらに焼入れすることが提案されている。
【0008】
上記のような肉盛層を形成させる方法の他、溶射法を用いた表面改質に関する技術も提案されている。
【0009】
例えば、特許文献8には、粒径1〜100μmの硬質粒子が10〜50面積%とマトリックス合金相が90〜50面積%からなる溶射皮膜を胴部表面に具備した鋼材処理用溶射ロールに関する発明が開示されている。また、特許文献9には、10〜60wt%の炭化物サーメット粉末と90〜40wt%のC含有ニッケルクロム合金粉末とからなる混合粉末の溶射皮膜中に再析出した炭化物を分散させた電気めっき用コンダクタロールに関する発明が開示されている。
【0010】
特許文献10には、Crなどの炭化物や硼化物、酸化物、複合酸化物の1種以上を5〜30重量%含有させ、残部Co、CrおよびMoを含有する耐熱性合金からなる繰り返し熱衝撃を受ける摺動摩耗部材に適した溶射皮膜に関する発明が開示されている。また、特許文献11には、炭化タングステン、炭化クロム、炭化ニオブ等の炭化物あるいは一種以上の金属バインダーによる結合された混合物を10〜50wt%含有し、残部C:0.02〜0.25wt%、Cr:0.5〜15wt%含有自溶合金(Ni基またはCo基)よりなる溶射被覆層が0.5〜3mm形成されている連続鋳造用ロールに関する発明が開示されている。
【0011】
【特許文献1】特開平5−84570号公報
【特許文献2】特開平6−315704号公報
【特許文献3】特開昭64−18599号公報
【特許文献4】特開平3−207510号公報
【特許文献5】特開平8−13116号公報
【特許文献6】特開2003−340511号公報
【特許文献7】特開2008−763号公報
【特許文献8】特開平3−2362号公報
【特許文献9】特開平5−295592号公報
【特許文献10】特開平9−316621号公報
【特許文献11】特開2006−263807号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1および特許文献2で提案された技術は、母材にNbCと合金の複合皮膜を形成させるものであり、焼付きを防止しようとするものである。しかしながら、NbCは耐酸化性に乏しく、特に高温のガス雰囲気では安定に存在できずに耐摩耗性が急激に低下する。特許文献3〜5で提案された技術は、母材にCr炭化物を含めた種々の炭化物と金属の複合皮膜を形成させるものであり、高温における耐摩耗性の改善を目指している。しかしながら、これらは耐摩耗性を高めることを目指した結果、硬く脆い金属組織となりプラズマ粉体肉盛施工における冷却時に亀裂が生じやすくなる。亀裂部では耐摩耗性が低下することから、均一な品質が得られないという問題を抱えている。また、長時間の使用における加熱−冷却の熱履歴を受けることでさらに亀裂が発生し耐摩耗性が損なわれる。
【0013】
特許文献6で提案された皮膜も高硬度の脆弱な金属組織となることから、亀裂の発生を避けることは困難で、亀裂部で酸化物付着が容易となり耐ビルドアップ性は低下する。また、特許文献7に記載の発明では、硬くて脆い肉盛層の亀裂発生を抑えることを目指しているが、炭素鋼からなる溶加材と炭化物からなる皮膜であることから、十分な耐酸化性を得ることができず、その結果、皮膜の表面が変化し耐摩耗性および耐ビルドアップ性も劣化していく。
【0014】
特許文献8〜11に示される溶射により皮膜を形成する方法では、加熱溶融したコーティング材料をガス流にて微粒子状とし基材に衝突、積層することで皮膜を形成する。そのため、一般に皮膜内に気孔が形成されやすく、耐摩耗性、耐ビルドアップ性が十分とは言えない。また、プラズマ粉体肉盛法で形成された皮膜は、基材と溶融接合(化学的結合)するのに対し、溶射皮膜と基材は、物理的結合であるため結合力が弱い。そのため、高温材の搬送用ローラでは形成した皮膜が使用中に剥離し、耐摩耗性、耐ビルドアップ性が急激に低下する。
【0015】
この発明は、高温ガス雰囲気、特に1100℃以上のガス雰囲気となる高温中での使用に際し、複合皮膜の亀裂発生を抑制することにより、耐ビルドアップ性、耐摩耗性および耐酸化性に優れた高温材搬送用部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前述のように、従来、金属−セラミックス複合皮膜をプラズマ粉体肉盛法にて表面に被覆することで耐酸化性および耐ビルドアップ性を向上させていたが、安定した耐ビルドアップ性を得ることができなかった。そこで、本発明者らは、高温、特に1100℃以上となる、例えば、熱処理炉内のようなガス雰囲気において、ローラによる搬送に際しても、有効なビルドアップ防止方法を種々研究した結果、以下の知見を得た。
【0017】
即ち、表面にプラズマ粉体肉盛法により金属粉末とセラミックス粒子とからなる複合皮膜を形成させた高温材搬送用部材は、熱処理炉等の1100℃以上のガス雰囲気にて使用された時に、複合皮膜中の未溶解のCr炭化物が相変態し、未溶解のCr炭化物周囲に原子拡散によるボイドが発生する。特に、複合皮膜中の未溶解のCr炭化物の分布率が7.0%を超えた場合、このボイドが発生した複合皮膜の強度が低下し、高温ガス雰囲気で加熱された高温材の搬送時に、複合皮膜中の微小な割れを起点として亀裂が発生し、その部分にて耐ビルドアップ性を低下させることが判明した。
【0018】
本発明は、このような知見に基づきなされたものであり、「母材表面に、プラズマ粉体肉盛法により皮膜を形成した高温材搬送用部材であって、皮膜が、Co基合金またはNi基合金をマトリックスとし、かつCr炭化物粒子を分散相とする複合皮膜であり、皮膜中に存在する未溶解のCr炭化物粒子の分布率が7.0%以下であることを特徴とする高温材搬送部材。」を要旨とする。未溶解のCr炭化物粒子の分布率は、5.0%以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、熱処理炉の炉内のような高温環境下で高温材を搬送しても、長期間にわたりビルドアップが生じず、搬送材への押込み疵が発生することがない。また、その耐久性も優れている。従って、熱間加工製品の品質向上、歩留まり向上に加えて、搬送ローラの寿命延長による製造コスト低減などに大きく寄与するので、その効果は著しい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明に係る高温材搬送用部材は、母材表面に、Co基合金またはNi基合金をマトリックスとし、Cr炭化物を分散相とした複合皮膜を有する。この複合皮膜は、Co基合金またはNi基合金の粉末と、Cr炭化物の粉末とからなる混合粉末を用いて、プラズマ粉体肉盛法により形成されたものである。以下の説明において、特に定めない限り、含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
【0021】
1.マトリックス
複合皮膜のマトリックスとなる合金は、CoまたはNiを主体とする合金である。例えば、Co基合金としてはC:0.03〜2%、Cr:20〜30%、W+Mo:1〜15%を含有するCo基合金、Ni基合金としてはC:0.10%以下、Cr:20〜30%、W+Mo:1〜15%を含有するNi基合金などが挙げられる。これらの合金は、1100℃以上のガス雰囲気下でも優れた耐酸化性を有する。特に、Co基合金の方が高温での耐摩耗性に優れるため好ましい。
【0022】
2.分散相
複合皮膜の分散相となるCr炭化物は、高温での耐酸化性を確保しながら、高温硬度を高める効果を有している。そのため、合金粉末との複合皮膜において優れた耐酸化性と耐摩耗性を発揮する。特に1100℃以上のガス雰囲気において有効である。Cr炭化物としては、Cr32、Cr73、Cr236などが挙げられる。また、これらの炭化物が複合されていてもよい。Cr炭化物の含有量は、特に規定しないが、搬送用部材の複合皮膜上での酸化スケールの剥離性を高めるために、混合粉末全量に対する体積比で、20体積%以上とすることが好ましい。さらに好ましいのは30体積%以上である。一方、Cr炭化物の含有量が70体積%を超えると、耐ビルドアップ性向上作用が飽和するうえ、合金の比率が低下して炭化物の保持力が低下し、複合皮膜の形成が困難となる場合がある。また、プラズマ粉体肉盛施工時の亀裂を助長することがある。このため、複合皮膜におけるCr炭化物の含有量は、70体積%以下とするのが好ましい。
【0023】
ここで、Cr炭化物の大きさについては、特に制限はないが、マトリックス中に均一に分散させるのに有効であることから、炭化物粒子の平均直径で50〜200μmの範囲のものを用いるのが好ましい。炭化物の形状は球形、楕円形、棒状などであっても構わず、これらが混合されていてもよい。
【0024】
前述のように、1100℃以上のガス雰囲気にて使用された時に、複合皮膜中の未溶解のCr炭化物が相変態し、未溶解のCr炭化物周囲に原子拡散によるボイドが発生する。このボイドの量が少ない場合には問題とならないが、複合皮膜中の未溶解のCr炭化物の分布率が7.0%を超えると、このボイドが多量に発生し、複合皮膜の強度が低下する。その結果、高温ガス雰囲気で加熱された高温材の搬送時に、複合皮膜中の微小な割れを起点として亀裂が発生し、その部分にて耐ビルドアップ性を低下させる。
【0025】
従って、皮膜中に存在する未溶解のCr炭化物粒子の分布率を7.0%以下に制限することとした。耐ビルドアップ性の観点から、5.0%以下とするのが好ましい。
【0026】
ここで、未溶解のCr炭化物は、球状、角状であり、プラズマ粉体溶接時に析出した針状のCr炭化物とは異なる。従って、皮膜の断面を研磨した後、マクロ写真(×15倍)を4視野撮影し、それを画像の自動計測機能ソフトを用いて、形状から未溶解のCr炭化物が占める面積比率を定量分析し、その平均値を「皮膜中に存在する未溶解のCr炭化物粒子の分布率」として定義する。
【0027】
なお、複合皮膜中の未溶解のCr炭化物を低減する手法としては、例えば、肉盛溶接時の予熱温度、肉盛溶接時のビードピッチ間の温度、溶接電流などを制御することにより、肉盛溶接時の溶融プールを大きくし、凝固までの時間を長くすることがあげられる。
【0028】
3.複合皮膜の形成方法
本発明に係る高温材搬送用部材における複合皮膜の形成方法は、電極と母材との間に発生させたプラズマ中に上記混合粉末を送給して母材表面に溶融肉盛する方法、即ち、プラズマ粉体肉盛法を用いる。この方法によれば、プラズマ溶射などに比べ気孔率が少なく、また基材との密着性も高く剥離による損傷が低減できる。さらに簡便に皮膜を形成できるうえ、製作コストの面でも有利である。
【0029】
複合皮膜の厚さには、特に制限はないが、常温から高温におよぶ範囲で十分な表面強度を確保するためには0.3mm以上の厚みを有することが好ましい。特に1100℃以上のガス雰囲気で使用する場合には、0.5mm以上の厚みを有することが好ましく、1mm以上の厚みであれば、なお良い。
【0030】
4.高温材搬送用部材の母材
本発明に係る高温材搬送用部材の母材としては、従来から搬送用ローラなどに用いられている公知の鋼を使用できる。特に、高温の炉内(高温雰囲気中)で使用する場合は、繰り返し熱応力による変形やクラックの進展による割損などが生じないことが必要であり、被加工材の温度や変形抵抗、使用条件等を考慮して、適宜選択すればよい。例えば、ステンレス鋳鋼、耐熱鋳鋼等を使用すればよい。
【0031】
母材表面に複合皮膜を形成した後は、そのまま製品として使用することができる。また、応力除去焼鈍や外表面の切削加工などを適宜施しても構わない。
【実施例】
【0032】
まず、表1に示す化学組成を有する合金粉末および炭化物粉末を体積比率が同量となるように混合して得た混合粉末(試番1〜4)を用意した。これらの粉末を用い、プラズマ粉体肉盛法によりNi−Cr合金からなる母材表面に約0.5〜3mm厚さの皮膜を形成し、供試材とした。肉盛溶接後の未溶解のCr炭化物の分布率は、肉盛溶接時の予熱温度、肉盛溶接時のビードピッチ間の温度および溶接電流を変化させることにより調整した。これらの供試材について、本発明の効果を確認するべく、下記の試験を行った。
【0033】
[ビルドアップ試験]
上記の各供試材から、被膜を形成した面が試験片の端面となるように直径20mm、長さ50mmの円柱状試験片(試験材A)を切り出し、一方、SUS304鋼から、直径20mm、長さ50mmの円柱状試験片(試験材B)を切り出し、図1に示す試験機を用いて、ビルドアップ試験に供した。
【0034】
図1は、ビルドアップの発生を模擬する回転摩擦圧着試験機の構成を示す断面模式図である。この試験機は、熱処理炉内でローラコンベアなどの搬送用部材で高温材を搬送する場合に発生するビルドアップ模擬した実験装置である。図1において、符号1は高温材搬送用部材を模した円柱状試験材A、符号2は試験材Aの端面に形成した皮膜、符号3は搬送される材料を模した円柱状の試験材B、符号4は高周波加熱用コイル、符号5aおよび5bは試験材支持具、符号6は加熱室をそれぞれ示している。
【0035】
試験材を試験装置の上下に支持具に設置した後、加熱室を閉じ、高周波加熱用コイルに通電し、1時間保持して、試験材Aを大気中で1250℃にまで加熱した。当初、試験材B(符号3)は、図1に示すように試験材Aの上方待機位置で停止させた。次いで、試験材Bを回転させつつ、下降させて、その端面を試験材Aの複合皮膜の表面に圧接した。このとき、試験材Bに負荷した荷重Pは98N、回転数は5rpm、1サイクルの圧接作業における圧接時間は6秒とした。圧接終了後、試験材Bを上方の待機位置に戻し、これを1サイクルの圧接作業とした。この圧接作業を100サイクル繰り返した後に降温し、試験材Aを支持具より取り外し、目視観察によりビルドアップの発生状況を調査した。この作業をビルドアップが発生するまで繰り返した。皮膜中に存在する未溶解のCr炭化物粒子の分布率とビルドアップが発生したサイクル数との関係を表2に示した。
【0036】
なお、試験材Bの下降開始から圧接開始までの時間および圧接終了から上昇完了までの時間はいずれも15秒であり、100サイクルが終了するまでの時間は約1時間であり、その後、約1時間かけて常温付近まで冷却した。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
なお、表2において、「◎」はビルドアップ試験において、200サイクル以下ではビルドアップが確認されなかった例を、「○」は100サイクルではビルドアップが確認されなかったが、200サイクルではビルドアップが確認された例を、「×」は100サイクルでビルドアップが確認された例をそれぞれ示している。
【0040】
表2に示すように、試番1〜4いずれの条件においても、未溶解のCr炭化物の分布率が7.0%を超える例では、100サイクルのビルドアップ試験にも耐えることができなかったが、分布率が7.0%以下の例では、マトリックスとなる合金がNi基またはCo基のいずれであっても優れた耐ビルドアップ性を有していた。特に、分布率が5.0%以下の例では、200サイクルのビルドアップ試験にも耐えることができた。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明によれば、熱処理炉の炉内のような高温環境下で高温材を搬送しても、長期間にわたりビルドアップが生じず、搬送材への押込み疵が発生することがない。また、その耐久性も優れている。従って、熱間加工製品の品質向上、歩留まり向上に加えて、搬送ローラの寿命延長による製造コスト低減などに大きく寄与するので、その効果は著しい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】回転摩擦圧着試験機の構成を示す断面模式図
【符号の説明】
【0043】
1:円柱状試験材A(高温材搬送用部材を模した試験材)
2:皮膜
3:円柱状試験材B(搬送される材料を模した試験材)
4:高周波加熱用コイル
5a:試験材支持具(回転、昇降機構付き)
5b:試験材支持具
6:加熱室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母材表面に、プラズマ粉体肉盛法により皮膜を形成した高温材搬送用部材であって、
皮膜が、Co基合金またはNi基合金をマトリックスとし、かつCr炭化物粒子を分散相とする複合皮膜であり、皮膜中に存在する未溶解のCr炭化物粒子の分布率が7.0%以下であることを特徴とする高温材搬送部材。

【図1】
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【公開番号】特開2010−13698(P2010−13698A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−174666(P2008−174666)
【出願日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【出願人】(390001801)大阪富士工業株式会社 (12)
【Fターム(参考)】