説明

高齢者見守りシステム

【課題】 高齢者が日常使用する歩行補助器具を用いた高齢者見守りシステムにおいて、通信端末に対する操作履歴を共有しても差し支えのない人間関係にある複数の人同志で、操作履歴を伝え合うことによって、電話や電子メール等、具体的なコミュニケーション行為に発展しなくても、相手のことを思う機会を増加させることができる高齢者見守りシステムを提供することを目的とするものである。

【解決手段】 上記歩行補助器具が杖である場合、その杖は、内蔵するセンサによって、利用者との接触、地面との接触、杖の加速度、杖の傾斜度を検知し、それらの情報に基づいて、正常か異常かを判定し、正常である場合、安心情報を見守り者に提供し、異常である場合、緊急情報を、見守り者に提供する高齢者見守りシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者が日常使用する歩行補助器具を用いた高齢者見守りシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
少子高齢化が急速に進む中、高齢者に負担を与えず、プライバシを侵害しないように、高齢者の健康と安全とを見守るサービスが求められている。このようなニーズを受けて、高齢者が自然に生活している中で、高齢者の行動から活動状況を検出し、見守る側の家族等に安心情報を伝えるサービスが登場している。
【0003】
この代表的なサービスとして、象印マホービン株式会杜が提供している「みまもりほっとライン」(たとえば、非特許文献1参照)、東京ガス株式会社が提供する「みまもーる」(たとえば、非特許文献2参照)、松下電工株式会杜が提供する「みまもりネット」(たとえば、非特許文献3参照)等が知られている。
【0004】
上記「みまもりほっとライン」は、無線通信機を内蔵した電子ポットをお年寄りが使うと、その情報がインターネットを通じて、離れて暮らす家族に送信されるサービスである。高齢者の家族は、その様子を携帯電話やパソコンで、いつでもどこでもさり気なく見守ることができる。
【0005】
上記「みまもーる」は、離れて暮らす高齢者や学生のガスの利用状況を、パソコンや携帯電話のEメールで、定期的に知らせるサービスであり、毎日のガスの使われ方に基づいて、食事の支度や入浴等の生活パターンが分かる。
【0006】
上記「みまもりネット」は、家の中に設置した複数のセンサが高齢者を感知し、高齢者の在室状況(時間・部屋名)を見守る家族の携帯電話やパソコン等に、1日1回指定時間にEメールで送るサービスである。
【0007】
これらのサービスは、家電やガスの使用状況、または、非接触人感センサを用いた存在情報を利用したサービスであり、日頃の検出データの傾向に基づいて、生活パターンを推測し、異常を検出するサービスである。
【0008】
この他、株式会社タニタのヘルスプラネット(たとえば、非特許文献4参照)は、体脂肪計や血圧計と歩数計とを組み合わせたシステムであり、バイタルデータを利用した提供サービスの代表例である。それぞれの測定装置で測定された結果をグラフ表示し、測定記録の推移や傾向を簡単に見ることができ、測定結果に対するアドバイスも表示される。このように、バイタルデータの変動や運動量の変動を計測することによって、日常的な健康度チェックを簡単に行えるシステムが増えている。
【0009】
高齢者が移動する際に使用される道具として、杖やシルバーカーがある。杖やシルバーカーは、高齢者に対して馴染みのある道具であり、移動するときには必ず持って歩くので、高齢者が移動すれば杖も移動し、高齢者が転倒すれば杖も転倒する等、杖の動きに基づいて、高齢者の状況を判断することが可能である。そのため、高齢者や障害者向けの福祉システムの媒体として利用されている。現在では、転倒を検知するセンサと通信機能とが付いている杖が提案されている他、地面との衝突を運動量に変換させて算出する杖等が提案されている。
【0010】
また、警報装置や夜間照明が搭載されている杖や、杖の動きから、歩く方向を検出することができる障害者向けのシステムも提案されている。
【非特許文献1】「みまもりほっとライン」象印マホービン株式会社(URL:http://www.mimamori.net/)
【非特許文献2】「みまもーる」東京ガス株式会社(URL:http://www.tasikamete.net/)
【非特許文献3】「みまもりネット」松下電工株式会社(URL:http://www.mew.co.jp/mimamori/)
【非特許文献4】「ヘルスプらネット」株式会社タニタ(URL:http://www.tanita.co.jp/products/planet/index2.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
家電やガス器具等の生活用品の使用状況に基づいて、高齢者の生活パターンを推測し、異常検出を行う従来のシステムは、高齢者が日常生活の中で自然に使用するので、高齢者に対する負荷が小さい。
【0012】
しかし、観測可能な場所が、ほぼ自宅のみに限定されるという問題があり、また、実際に機器が使用される時間が不確定であるという問題がある。このために、現実的には、異常検出を行うというよりも、機器が使用されている時間のみに限り、見守る側の人々に安心感を与える仕組みである。
【0013】
非接触の人感センサ等を用いて、高齢者の行動状況を検出する従来のシステムでは、高齢者の生活する各部屋に、複数のセンサを配置する必要があり、センサとサーバ等とを接続するネットワーク構築やセンサの配置設計に、かなり手間がかかり、また費用が必要であるという問題がある。したがって、現時点では、高齢者の各家庭に、センサネットワークを設置することは、あまり現実的ではない。
【0014】
次に、高齢者のバイタルデータを計測して見守りを行う従来例において、高齢者が日常的に測定器を使用する必要があるという大前提があり、個人に健康維持やダイエット等の積極的な目標がある場合のみ効果が見込める。ウェアラブルなバイタルセンサからバイタルデータを取得する場合、通常の高齢者は、バイタルセンサを身につけることに、非常に大きな抵抗感があり、見守りをさり気なく行うという本来の目的に反し、しかも、高齢者に対する負荷が、効果を上回る危険性があるという問題がある。
【0015】
ところで、杖は、高齢者の福祉器具として、日常的に多く使われている道具であり、それを媒体とした様々なアイデアが提案されている。しかし、杖の動きに基づいて、高齢者の活動状況を正確に推定し、見守る側の人々に安心感を与えるシステムは、今のところ見当たらない。
【0016】
転倒を検知するセンサと通信機能とが付いている杖が、従来、提案されているが、転倒の検出方法について、明確には提案されてなく、杖が横に置かれていた場合や、立て掛けていた状態から、何かのきっかけで倒れた場合等に、誤報が多くなる可能性がある。
【0017】
この他、従来例では、緊急情報のみを、家族等の見守る側の人に伝えるので、安心情報を伝えることができないという問題がある。
【0018】
また、従来、地面との衝突を運動量に変換する杖が提案されているが、個人によって、杖を突く間隔や、強さが異なるので、一般的な移動距離や運動量を算出することが困難である。杖の動きから、歩く方向を検出できるものも提案されてはいるが、視覚障害者用であるので、路上に点字ブロック等を設ける必要がある。したがって、杖の動きに基づいて、家族等の見守る側の人に安心情報を与える情報源としては不十分であるという問題がある。
【0019】
本発明は、高齢者が日常使用する歩行補助器具を用いた高齢者見守りシステムにおいて、通信端末に対する操作履歴を共有しても差し支えのない人間関係にある複数の人同志で、操作履歴を伝え合うことによって、電話や電子メール等、具体的なコミュニケーション行為に発展しなくても、相手のことを思う機会を増加させることができる高齢者見守りシステムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、高齢者が使用する歩行補助器具を用いて、負担感のない見守りサービスを実現するシステムであり、上記歩行補助器具が杖である場合、その杖は、内蔵するセンサによって、利用者との接触、地面との接触、杖の加速度、杖の傾斜度を検知し、それらの情報に基づいて、正常か異常かを判定し、正常である場合、安心情報を見守り者に提供し、異常である場合、緊急情報を、見守り者に提供する高齢者見守りシステムである。
【0021】
また、本発明は、上記歩行補助器具がシルバーカーである場合、そのシルバーカーは、内蔵するセンサによって、利用者との接触、シルバーカーの加速度、シルバーカーの傾斜度、車輪の回転数、シルバーカーの位置を検知し、それらの情報に基づいて、正常か異常かを判定し、正常である場合、安心情報を見守り者に提供し、異常である場合、緊急情報を、見守り者に提供する高齢者見守りシステムである。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、高齢者が日常使用する歩行補助器具を用いた高齢者見守りシステムにおいて、通信端末に対する操作履歴を共有しても差し支えのない人間関係にある複数の人同志で、操作履歴を伝え合うことによって、電話や電子メール等、具体的なコミュニケーション行為に発展しなくても、相手のことを思う機会を増加させることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0024】
図1は、本発明の実施例1である高齢者見守りシステム100を示すシステム構成図である。
【0025】
高齢者見守りシステム100は、杖10と、無線基地局RB1と、基幹ネットワークNW1と、無線端末T11、T12と、有線端末T13、T14と、管理サーバCS1と、データベースDB1とを有する。
【0026】
杖10は、接触センサ11、12と、加速度センサ13と、傾斜センサ14と、処理装置15と、無線通信装置16とを有する。接触センサ11は、人が柄を握ったことを感知する。接触センサ12は、杖10と地面との接触を感知する。
【0027】
無線通信装置16は、杖10が搭載する各センサの計測値を、処理装置15の命令で管理サーバCS1に送信する。
【0028】
無線基地局RB1は、杖10との通信を行う。基幹ネットワークNW1は、杖10と管理サーバCS1とを結ぶ。無線端末T11、T12は、「見守る側のユーザ」が、正常/異常の情報を受け取る携帯電話等である。有線端末T13、T14は、「見守る側のユーザ」が正常/異常であることを示す情報を受け取るパソコン等である。
【0029】
管理サーバCS1は、複数の杖10から送信される測定値に基づいて、杖10を使用する高齢者等が正常/異常であることを判断する。データベースDB1は、杖10に関する測定値、杖10を使用するユーザ、正常/異常を判別した結果を送信する「見守る側のユーザ」に関する情報を登録、管理する。
【0030】
次に、実施例1の制御動作について説明する。
【0031】
図2は、実施例1の制御動作を示すフローチャートである。
【0032】
S11、S12では、高齢者等の「見守られる側のユーザ」が、杖10の柄を握り、接触センサ11が感知するまで待機する。これによって、見守られる側のユーザが、杖10を使用している状態、または杖10を持っている状態を、正確に検出することができる。
【0033】
S13では、処理装置15は、杖10の柄を握ったことを感知したことをきっかけとして、接触センサ11、12、加速度センサ13、傾斜センサ14の測定値の取得を開始し、取得データを、処理装置15に設けられているメモリに記録する。
【0034】
S14では、処理装置15は、メモリに記憶されている取得データを、通信フレームに変換し、無線通信装置16を制御し、管理サーバCS1に送信する。S15では、管理サーバCS1は、受信データを、データベースDB1に保存し、S16で、異常検出を行う。
【0035】
図3は、実施例1における各センサの測定データの一例を示す図である。
【0036】
図3に示すように、高齢者が正常に移動している場合、時刻t1までは、杖10に90度に取り付けられている傾斜センサ14の傾斜度が周期的に変化し、加速度もほぼ一定であることがわかる。ここでは、加速度センサ13の測定値の振る舞いをわかりやすくするために、1軸のセンサの場合について絶対値で示してある。また、柄と下面に取り付けた接触センサ12とについて、柄は握られた状態を維持し、杖10の下面が、地面とほぼ一定の時間間隔で接触していることがわかる。S17では、管理サーバCS1は、正常であると判断すると、指定された端末に、安心情報を送信する。
【0037】
上記のように、接触センサ11、12、加速度センサ13、傾斜センサ14の測定値が、設定した閾値の範囲内で変化している場合、正常であると判断し、家族等、見守る側の人々に、測定値そのものではなく安心情報を提供することができる。これによって、見守りシステム100において、杖10という媒体を利用して、安心情報、異常情報をさり気なく提供することができる。
【0038】
一方、時刻t1〜t2の間では、傾斜度が、異常な値を示し、加速度は、急激に増加し、減少していることがわかる。同時に、柄や下面の接触がないことがわかる。このことから、杖を使用している高齢者(見守られる側のユーザ)が、転倒したか、または、何かと衝突した等、異常が発生した可能性が高いことがわかる。
【0039】
また、時刻t2以降の振る舞いは、時刻t1までの振る舞いと殆ど同様であり、高齢者が、時刻tl〜時刻t2において転倒してが、自力で立ち上がり、歩行を開始したか、または、何かの拍子に杖が手から離れ、転がった可能性がある。
【0040】
時刻t1〜時刻t2までの時間が非常に長い場合、または、時刻t2以降のように正常な振る舞いが見られない場合は、緊急の駆けつけ等が必要となる異常事態であると判断し、緊急情報を出力することができる。
【0041】
S18では、管理サーバCS1が、異常事態であると判断すると、指定端末に緊急情報を送信する。ここでは、時刻t1〜t2の間の時間幅に閾値を設け、家族等の見守る側の人々に、緊急情報を提供することによって、緊急通報システムとして利用することができる。さらに、時刻t1〜時刻t2の時間幅に、段階的な閾値を設けることによって、見守る側が、心配すべきか、しなくてもよいかを判断することができる。
【0042】
上記のように、異常発生の可能性のある現象と、その前後の振る舞いとを検出することによって、これまでの見守りシステムよりも、状況判断がより正確になる。もし、時刻t1までに、高齢者が柄に接触せず(高齢者が接触する接触センサ11が接触を検出せず)、地面との接触を検出する接触センサ12が、ほぼ一定間隔でない接触検出を行った場合等は、杖10を何かに立て掛けていた状態から、何かの原因で倒れただけという可能性がある。従来システムでは、このように、杖を何かに立て掛けていた状態から、何かの原因で倒れた場合を検出することができない。
【0043】
また、時刻t1〜とt2の長さに、段階的な閾値を設けることによって、心配度を示す情報を提供し、また、正常な状態には安心情報を提供することによって、見守られる人と見守る人とのコミュニケーションのきっかけを作り、心配情報や安心情報自体が、言葉にはならないメッセージであり、より良い信頼関係が築かれる可能性がある。
【0044】
つまり、管理サーバCS1は、杖10の下面に設けられている接触センサ12が、所定の時間間隔で、地面と接触していることを検出すると、安心情報を出力する。
【0045】
また、管理サーバCS1は、杖に設けられている接触センサ11、12、加速度センサ13、傾斜センサ14の測定値が、設定した閾値の範囲内で変化していることを検出すると、安心情報を出力し、一方、接触センサ11、12、加速度センサ13、傾斜センサ14の測定値が、設定した閾値の範囲外で変化していることを検出すると、異常情報を出力する。
【0046】
さらに、管理サーバCS1は、上記接触センサ11、12、加速度センサ13、傾斜センサ14の測定値が、設定した閾値の範囲外で変化している時間が、所定時間以上であれば、緊急情報を出力する。
【0047】
また、管理サーバCS1は、上記緊急情報を出力する場合、上記所定時間として、段階的な閾値を設けることによって、心配度をランク付けする。
【0048】
さらに、管理サーバCS1は、高齢者が接触する接触センサ11が接触を検出せず、地面との接触を検出する接触センサ12が、ほぼ一定間隔でない接触検出を行った場合、杖10を立て掛けていた状態から、倒れた状態であると判断する。
【0049】
上記のように、実施例1は、接触センサ11、12、加速度センサ13、傾斜センサ14の測定値を組み合わせることによって、従来システムよりも、杖を使用する高齢者の状況をより正確に検出し、安心情報、異常信号を送ることによって、さり気なく見守ることができる。また、緊急情報だけでなく、安心度や心配度を表す情報を、見守る側の人々に提供することによって、日常のコミュニケーションツールとしても機能する。
【実施例2】
【0050】
図4は、本発明の実施例2である高齢者見守りシステム200を示すシステム構成図である。
【0051】
高齢者見守りシステム200は、GPSや携帯電話、PHSが持つ位置情報を利用し、杖の位置を把握することによって、杖の動きから異常を検知した場合に、どこに駆けつければよいかを把握する高齢者見守りシステムである。
【0052】
高齢者見守りシステム200は、杖20と、無線基地局RB2と、基幹ネットワークNW2と、無線端末T21,22と、有線端末T23、T24と、管理サーバCS2と、データベースDB21と、位置情報データベースDB22とを有する。
【0053】
杖20は、人が柄を握ったことを感知する接触センサ11と、杖20と地面との接触を感知する接触センサ12と、加速度センサ13と、傾斜センサ14と、処理装置25と、無線通信装置16と、位置情報検出装置27とを有する。
【0054】
無線通信装置16は、杖20が搭載する各センサの計測値を、処理装置25の命令で管理サーバCS2に送信する。位置情報検出装置27は、GPSや移動体電話網の基地局情報から、杖20の位置情報を検知する。
【0055】
無線基地局RB2は、杖20との通信を行う。基幹ネットワークNW2は、杖20と管理サーバCS2とを結ぶ。無線端末T21,22は、「見守る側のユーザ」が正常/異常であることを示す情報を受け取る携帯電話等である。有線端末T23、T24は、「見守る側のユーザ」が正常/異常であることを示す情報を受け取るパソコン等である。
【0056】
管理サーバCS2は、複数の杖20から送信されてくる測定値に基づいて、杖20を使用する高齢者等が、正常/異常であることを判断する。
【0057】
データベースDB21は、杖20に関する測定値、杖20を使用するユーザ(見守られる側のユーザ)に関する情報、正常/異常を判別した結果を送信される「見守る側のユーザ」に関する情報を登録、管理する。位置情報データベースDB22は、杖20の位置情報を管理する。
【0058】
次に、本発明の実施例2の制御動作について説明する。
【0059】
図5は、本発明の実施例2の制御動作を示すフローチャートである。
【0060】
S21で、処理装置25は、位置情報検出装置27に命令し、位置情報を定期的に取得し、無線通信装置16が、管理サーバCS2に、位置情報を送信する。管理サーバCS2が、上記送信された位置情報を、位置情報データベースDB22に記録する。位置情報は、GPS等を利用して取得し、衛星からの電波が受信できない屋内等の場所では、携帯電話やPHSの基地局情報や、特定の場所に設置されている赤外線センサや無線タグ等によって検出される位置情報を利用する。
【0061】
S22では、高齢者等の「見守られる側のユーザ」が、杖20の柄を握ったことを、接触センサ11が感知する。これによって、見守られる側のユーザが、杖20を使用している状態、または持っている状態を、正確に検出することができる。
【0062】
S23で、処理装置25は、柄を握っていることを感知することをきっかけとして、接触センサ11、12、加速度センサ13、傾斜センサ14による測定値の取得を開始し、取得データを、位置情報と関連付けて、処理装置25に設けられているメモリに記録する。
【0063】
S24で、処理装置25は、メモリに記憶されている取得データを、通信フレームに変換し、無線通信装置16を制御し、管理サーバCS2に送信する。S25で、管理サーバCS2は、受信データを、データベースDB21に保存し、S26で、異常を検出する。
【0064】
S27で、管理サーバCS2は、異常でないと判断すると、見守る側の人が指定する端末T21〜T24に、安心情報を送信する。S28では、異常や危険を検出した場合、緊急情報を、指定端末T21〜T24に送信する。
【0065】
図6は、実施例2において、指定端末が携帯電話である場合に、携帯電話に送信した安心情報、緊急情報の例を示す図である。
【0066】
アイコンの表情を変えることによって、緊急度を表示し、併せて位置情報を表示し、通常は、安心情報として表示し、緊急時は、緊急情報として表示する。また、緊急度の閾値を、段階的に設定することによって、ちょっと心配な場合には、見守る側の人へ軽度の異常情報を通知する。接触センサ11、12による接触検知がない時間の長さ、加速度、傾斜度の変動値に応じて、緊急度の閾値を段階的に設けるようにしてもよい。
【0067】
実施例2によれば、上記のように、位置情報を検出する位置情報検出装置27を、杖20に搭載することによって、緊急時に駆けつけなければならない場所を把握することができる。
【実施例3】
【0068】
図7は、本発明の実施例3である高齢者見守りシステム300を示すシステム構成図である。
【0069】
高齢者見守りシステム300は、高齢者等の見守られる側の人が使用する端末(異常を検出する媒体)が、シルバーカーであるシステムである。
【0070】
高齢者見守りシステム300は、シルバーカー30と、無線基地局RB3と、ネットワークNW3と、見守る側が使用する無線端末T31、T32と、見守る側が使用する有線端末T33、T34と、管理サーバCS3と、データベースDB31と、位置情報データベースDB32とを有する。
【0071】
シルバーカー30は、取っ手に設けられている接触センサ31と、加速度センサ33と、傾斜センサ34と、シルバーカー30の全体を制御する処理装置35と、無線通信装置36と、位置情報検出装置37と、ロータリエンコーダ38と、車輪39とを有する。
【0072】
管理サーバCS1は、接触センサ31と、加速度センサ33と、傾斜センサ34と、ロータリエンコーダ38とによって測定された取得データを管理する。
【0073】
図8は、実施例3の制御動作を示すフローチャートである。
【0074】
S31で、処理装置35は、位置情報検出装置37が検出した位置情報を、管理サーバCS3に定期的に送信する。S32で、処理装置35は、高齢者による取っ手への接触を、接触センサ31が感知すると、S33で、接触センサ31、加速度センサ33、傾斜センサ34、ロータリエンコーダ38が測定を開始し、位置情報と関連付けられた測定データとして、処理装置35に設けられているメモリに記録する。
【0075】
杖20における動作と同様に、シルバーカー30を使用し、移動していることを、取っ手の接触センサ31によって検知し、これをきっかけとして、測定を開始する。接触センサ31は、取っ手への接触の有無を検知し、傾斜センサ14は、シルバーカー30の傾斜度を検知し、加速度センサ13は、シルバーカー30の加速度を検知し、ロータリエンコーダは、車輪39の回転数を感知する。
【0076】
S34で、処理装置35は、処理装置35に設けられているメモリに記録されている取得データを、通信フレームに変換し、無線通信によって管理サーバCS3に送信する。S35で、管理サーバCS3は、受信データをデータベースDB31に保存し、異常を検知する。
【0077】
S36で、傾斜度、加速度、回転数によって、シルバーカー30の動きを推測し、それを使用する「見守られる側の人」の状態を推測する。傾斜度、加速度、単位時間当たりの回転数について、閾値を設け、全てのパラメータが閾値を越えていない場合、「見守る側の人」の指定する端末に、安心情報を送信する(S37)。また、少なくとも1つのパラメータが閾値を越えた場合、緊急情報を、「見守る側の人」の指定する端末に送信する(S38)。また、位置情報も併せて送信することによって、見守る側の人が、直ちに駆けつけることができる。
【0078】
実施例3によれば、上記のように、高齢者の移動状態を検出する媒体として、シルバーカー30を用いる高齢者見守りシステムを提供することができる。これによって、杖20の場合と同様に、さり気なく、高齢者を見守ることができる。
【実施例4】
【0079】
図9は、本発明の実施例4である高齢者見守りシステム400を示すシステム構成図である。
【0080】
高齢者見守りシステム400は、杖やシルバーカーの動きに関する情報を、高齢者同志で伝え合うコミュニケーションを利用した高齢者見守りシステムである。
【0081】
高齢者見守りシステム400は、杖20と同じ構成の杖40、50、60と、シルバーカー70、80、90と、杖40、50、60を持って移動する高齢者が携帯する無線端末T41、T42、T45と、ネットワークNW4と、管理サーバCS4と、データベースDB4と、高齢者が自宅等で使用する表示機能付通信端末T43、T44とを有する。
【0082】
データベースDB4は、高齢者の個人情報と、使用端末情報と、高齢者の活動情報(杖40、50、60やシルバーカー30から検出される情報)とを管理する。
【0083】
シルバーカー70、80、90は、図7に示すシルバーカー30に、表示機能を加えたシルバーカーである。
【0084】
次に、実施例4の制御動作について説明する。
【0085】
図10は、実施例4の制御動作を示すフローチャートである。
【0086】
S41で、杖40、50、60、シルバーカー70、80、90は、各センサが取得した情報を、管理サーバCS4に送信する。S42で、管理サーバCS4は、杖40、50、60と、シルバーカー70、80、90とから送信された情報を受信し、それぞれの所有者(高齢者)情報に関連付けて、データベースDB4に保存する。
【0087】
S43で、管理サーバCS4は、データベースDB4に記録されている情報を、活動情報に変換し、高齢者の通信端末T41、T42、T45に送信する。ここで、活動情報を送信する端末は、所有者同志が合意した相手にだけ送信し、仲のよい仲間同志(コミュニティ)等で、情報共有が行われる。
【0088】
S44で、活動情報は、指定された通信端末で受信され、各表示装置に表示される。
【0089】
図11は、管理サーバCS4が各センサの測定情報をコミュニティ内で共有するために変換した活動情報の表示例を示す図である。
【0090】
図11において、A、B、C、D、Eは、高齢者を示す。
【0091】
図11(1)は、杖40、50、60とシルバーカー30との位置を、アイコンで表示している状態を示す図である。この場合、各センサの測定結果が閾値を越えていれば、危険度に応じて、アイコンの種類を変える。これによって、コミュニティ内で、高齢者同志が互いに見守ることができる。
【0092】
図11(2)は、杖40、50、60の下面に設けられている接触センサ(図示せず)が地面と接触する回数、シルバーカー30の車輪の回転数に基づいて算出された活動量を示すグラフである。
【0093】
上記算出した活動量を、コミュニティ内で、共有する。これによって、他の高齢者の活動状況を見て刺激されたことによる活動量の増加、コミュニケーションのきっかけができ、交流回数の増加が見込まれ、コミュニティの中で活動情報を共有することが期待される。
【0094】
実施例4は、杖40、50、60やシルバーカー30の動きに関する情報を、高齢者同志で伝え合うコミュニケーションを利用した高齢者見守りシステムである。高齢者同志がお互いの情報を双方向でやりとりすることによって、高齢者同志のコミュニケーションを、これまでよりも活発化するきっかけを与える可能性がある。また、お互いの状況を知ることによって、高齢者同志の助け合いが生じ、高齢者同志でもお互いを見守ることができる。
【0095】
高齢者見守りシステム400は、見守る側の人が一方的に監視する形式とは異なり、高齢者等の見守られる側の人にとって、精神的負担が軽くなる可能性を秘めている。
【0096】
上記各実施例によれば、通信端末に対する操作履歴を共有しても差し支えのない人間関係にある複数の人同志で、操作履歴を伝え合うことによって、電話や電子メール等、具体的なコミュニケーション行為に発展しなくても、相手のことを思う機会を増加させることができる。
【0097】
つまり、相手の通信端末に、相手が何らかの操作をすると、その入力内容に応じて、自分の端末に表示されている抽象的な画像に、相手の操作内容が反映され、これによって、発信者に関する事情をある程度知っている人、または理解している人であれば、相手の行動や気持ちを何となく推測できる。
【0098】
また、上記実施例において取り扱う操作履歴は、通信端末に対する通常の操作、または、簡単な入力によって得られる情報であるので、情報発信に対する負担が殆どなく、また、操作履歴に応じて、換算され、抽象化されたイメージ画像が、相手の端末に表示されるので、表示されている抽象化イメージ画像を第三者が発見しても、発信者や発信場所を特定できないか、当事者以外が知ってもあまり意味がない。
【0099】
したがって、上記各実施例は、利用者の負担を軽くした履歴情報を共有することによって、相手のことを想像し、相手が変わりなく活動していることを知り、安心するという人間の内面的な効果を生み出す。
【0100】
ところで、杖は、毎年15億円程度の市場があり、元気な高齢者等が出歩くための必需品となっている。また、歩行器やシルバーカーも、毎年数10億円の市場があり、杖よりも楽に歩行できることから人気の商品となっている。杖は、高齢者が自然に持ち運んで利用するので、それを使用することによる抵抗感は殆どなく、高齢者等の見守られる側の人の日常的な動作を取得する媒体として適している。
【0101】
高齢者等の「見守られる側のユーザ」が杖を利用しながら正常に移動した場合、高齢者が杖を握るという行為のほか、杖が周期的に前後に傾いたり、地面と杖の下面が周期的に接触したりするという現象が生じる。このため、高齢者の正常な移動と異常事態を杖の動きから容易に検出することができる。したがって、杖を高齢者の活動状況推定の媒体として利用すると、特別なセンサや機器を身に付けたり、活動する場所を限定する必要がない。同様に、シルバーカーや歩行器も、高齢者が握るという行為、車輪が回転し移動するという動作が発生するので、車輪の回転数、回転速度から活動状況が容易に抽出可能である。
【0102】
また、杖やシルバーカーは、そのもの自体が接触センサ、加速度センサ、傾斜センサ等の検出装置に比べて十分大きいので、センサを搭載した場合の大きさやデザイン面に関する課題が殆どない。しかも、GPSや携帯電話等を取り付けることで位置情報を同時に検出でき、無線通信機能を搭載することで屋内外の殆どの場所でリアルタイムデータを取得することができる。さらに、地面との接触度や傾斜度を検出することによって転倒等の事故も正確に検知可能である。
【0103】
これによって、高齢者は特別な機材等を利用したり、身に付けたりする負担がなく、屋内外において杖を利用して移動する高齢者の活動状況をさり気なく見守ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】本発明の実施例1である高齢者見守りシステム100を示すシステム構成図である。
【図2】実施例1の制御動作を示すフローチャートである。
【図3】実施例1における各センサの測定データの一例を示す図である。
【図4】実施例2である高齢者見守りシステム200を示すシステム構成図である。
【図5】実施例2の制御動作を示すフローチャートである。
【図6】実施例2において、指定端末が携帯電話である場合に、携帯電話に送信した安心情報、緊急情報の例を示す図である。
【図7】実施例3である高齢者見守りシステム300を示すシステム構成図である。
【図8】実施例3の制御動作を示すフローチャートである。
【図9】実施例4である高齢者見守りシステム400を示すシステム構成図である。
【図10】実施例4の制御動作を示すフローチャートである。
【図11】管理サーバCS4が各センサの測定情報をコミュニティ内で共有するために変換した活動情報の表示例を示す図である。
【符号の説明】
【0105】
100、200、300、400…高齢者見守りシステム、
10、20、40、50、60…杖、
11、12、31…接触センサ、
13、33…加速度センサ、
14、34…傾斜センサ、
15、25、35…処理装置、
16、36…無線通信装置、
27、37…位置情報検出装置、
38…ロータリエンコーダ、
39…車輪、
RB1、RB2、RB3、RB4…無線基地、
T11、T12、T21、T22、T31、T32、T41、T42、T45…無線端末、
T13、T14、T23、T24、T33、T34、T43、T44…有線端末、
CS1、CS2、CS3、CS4…管理サーバ、
30、70、80、90…シルバーカー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者との接触をきっかけに、地面との接触と、加速度または傾斜度とを検出し、通信機能を具備する杖と;
上記杖が検出した接触情報、加速度情報、傾斜度情報のうちの少なくとも1つの情報と、上記杖の所有者に関する情報と、上記杖が検出した情報を利用する利用者に関する情報とを記録するデータベースと;
上記杖が検出した情報を上記データベースに登録・削除し、上記杖が検出した情報の送受信を管理し、上記杖から送信された検出情報を、上記データベースに登録し、上記杖から送信された検出情報を、安心情報または緊急情報に変換する管理サーバと;
上記杖が検出した情報を、上記管理サーバから受信し、この受信した情報に基づいて、上記杖を使用する利用者の状態を推定し、上記杖を利用する人を見守る人に、上記管理サーバが送信した安心情報または緊急情報を提供する通信端末と;
を有することを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項2】
請求項1項において、
上記杖は、上記杖自身の位置を示す位置情報を検出する杖であり、
上記管理サーバは、上記杖が検出した接触情報、加速度情報、傾斜度情報を、位置情報と関連付けて、上記データベースに保存し、上記通信端末に安心情報または緊急情報を提供する際に、上記位置情報を添付して提供するサーバであることを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項3】
請求項1項において、
上記管理サーバは、上記杖の下面に設けられている上記接触センサが、所定の時間間隔で、地面と接触していることを検出すると、安心情報を出力するサーバであることを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項4】
請求項1項において、
上記管理サーバは、上記杖に設けられている上記接触センサ、上記加速度センサ、上記傾斜センサの測定値が、設定した閾値の範囲内で変化していることを検出すると、安心情報を出力し、一方、上記接触センサ、上記加速度センサ、上記傾斜センサの測定値が、設定した閾値の範囲外で変化していることを検出すると、異常情報を出力するサーバであることを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項5】
請求項1項において、
上記管理サーバは、上記接触センサ、上記加速度センサ、上記傾斜センサの測定値が、設定した閾値の範囲外で変化している時間が、所定時間以上であれば、緊急情報を出力するサーバであることを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項6】
請求項5項において、
上記管理サーバは、上記緊急情報を出力する場合、上記所定時間として、段階的な閾値を設けることによって、心配度をランク付けするサーバであることを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項7】
請求項1項において、
上記管理サーバは、高齢者が接触する接触センサが接触を検出せず、地面との接触を検出する接触センサが、ほぼ一定間隔でない接触検出を行った場合、上記杖を立て掛けていた状態から、倒れた状態であると判断するサーバであることを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項8】
利用者との接触をきっかけに、加速度、傾斜度、車輪の回転数、位置情報のうちの少なくとも1つを検出し、通信機能を具備するシルバーカーと;
上記シルバーカーが検出した接触情報、加速度情報、傾斜度情報、回転数情報、位置情報と、上記シルバーカーの所有者に関する情報と、上記シルバーカーが検出した情報を利用する利用者に関する情報とを記録するデータベースと;
上記シルバーカーが検出した情報を上記データベースヘ登録・削除し、上記シルバーカーが検出した情報を送受信し、上記シルバーカーから送信された検出情報を、上記データベースに登録し、検出情報を、安心情報または緊急情報に変換する管理サーバと;
上記シルバーカーが検出した情報を受信し、上記管理サーバが送信した安心情報または緊急情報を受信し、表示し、上記シルバーカーの動きに基づいて、上記シルバーカーを使用する利用者の状態を推定し、上記シルバーカーを利用する人を見守る人に、安心情報または緊急情報を提供する通信端末と;
を有することを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項9】
請求項1、請求項2、請求項8のいずれか1項において、
上記管理サーバは、上記杖または上記シルバーカーが収集した情報を、所定の活動情報に変換し、上記杖または上記シルバーカーの利用者のうちで、許可された仲間同志で共有するように配信するサーバであり、
上記通信端末は、上記管理サーバが送信した情報を受信し、表示し、上記杖または上記シルバーカーの利用者同志で、上記杖または上記シルバーカーが検出した情報を共有する端末であることを特徴とする高齢者見守りシステム。
【請求項10】
請求項1、請求項2、請求項8、請求項9のうちのいずれか1項において、
上記管理サーバは、上記通信端末のうちで許可されている通信端末に、上記安心情報または緊急情報を送信するサーバであることを特徴とする高齢者見守りシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−85609(P2006−85609A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272124(P2004−272124)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】