説明

魚油由来のグリセリド油脂組成物及びその製造方法

多価不飽和脂肪酸であるDHA及びDPAをグリセリド形態で多量含有しているので、栄養・生理学的な長所を有し、EPAの含量が低いので、ω−6脂肪酸の代謝抑制を始めとするEPAの短所を最小化することができ、1、3位の飽和脂肪酸、特にステアリン酸とパルミチン酸の含量が低いので、人体内消化吸収性に優れている魚油由来のグリセリド油脂組成物を提供する。(a)構成脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の含量が45乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)の含量が0.001乃至13重量%で、(b)構成脂肪酸のうち1、3位に結合された炭素数16乃至18の飽和脂肪酸の含量が0.001乃至5重量%で、(c)ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15である魚油由来のグリセリド油脂組成物を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚油由来のグリセリド油脂組成物及びその製造方法に関するもので、より詳細には、多価不飽和脂肪酸であるDHA及びDPAをグリセリド形態で多量含有しているので、栄養・生理学的な長所を有し、EPAの含量が低いので、ω−6脂肪酸の代謝抑制を始めとするEPAの短所を最小化することができ、1、3位の飽和脂肪酸の含量が低いので、多価不飽和脂肪酸の人体内消化吸収性に優れているだけでなく、酸化安定度、水分散性を始めとする加工特性に優れている魚油由来のグリセリド油脂組成物及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多価不飽和脂肪酸、すなわち、PUFAsは、体内で合成されないので、食物による摂取が必要であり、細胞血漿膜の構成分として、特に、乳児の脳において必ず必要な重要な生物学的構成分であると長い間認識されてきた。
【0003】
1970年代にグリーンランドのエスキモー人たちを観察した結果、低い心臓病発病率と長鎖ω−3PUFAsの多量摂取との間には互いに連関性があった[参照:Dyerberg,J.et al.,Amer.J.Cl一n Nutr.28:958−966(1975);Dyerberg,J.et al.,Lancet2(8081):117−119(July 15、1978)]。より最近の研究によって、ω−3PUFAsの心血管系保護効果が確認された[参照:Shimokawa,H.,World Rev Nutr Diet,88:100−108(2001);von Schacky,C.,and Dyerberg,J.,World Rev Nutr Diet,88:90−99(2001)]。そして、ω−3脂肪酸を用いた処置に反応するいくつかの障害、例えば、血管形成術後のある程度の再発狭窄症、炎症及びリウマチ性関節炎症状、喘息、乾癬及び湿疹が発見された。γ−リノレン酸(GLA;ω−6PUFA)は、ストレスと関連した血圧上昇を低下させ、算術試験上での性能を改善させるものと確認された。GLA及びジホモ−γ−リノレン酸(DGLA;他のω−6PUFA)は、血小板凝集を抑制させ、血管拡張を誘発させ、コレステロール水準を低下させ、血管壁平滑筋及び繊維状組織の増殖を抑制させるものと確認された[参照:Brenner et al.,Adv.Exp.Med.Biol.83:85−101(1976)]。GLAまたはDGLAを単独でまたはエイコサペンタエン酸(EPA;ω−3PUFA)と組み合わせて投与することにより、胃腸出血を低下または防止させ、非ステロイド性消炎剤によって誘発された他の副作用を低下または防止させることが明らかになった(U.S.4,666,701)。さらに、GLA及びDGLAは、子宮内膜症と月経前症候群を予防または治療し(U.S.4,758,592)、筋痛性脳脊髄炎及びウイルス感染後の慢性疲労を治療するものと確認された(U.S.5,116,871)。その他の証拠は、PUFAsがカルシウム代謝調節に関与可能であることを指示するが、これは、PUFAsが骨多孔症と腎臓または尿路結石を治療または予防するのに有用であることを提示する。最終的に、PUFAsは、癌及び糖尿病の治療に使用することができる[参照:U.S.4,826,877;Horrobin et al.,Am.J.Clin,Nutr.57(Suppl.):732S−737S(1993)]。
【0004】
PUFAsは、一般的に、必須脂肪酸であるリノール酸(LA)及びα−リノレン酸(ALA)をそれぞれ不飽和化及び延長させることで誘導させたω−6脂肪酸及びω−3脂肪酸に分類される。ここで、ωは、脂肪酸のメチル基末端から数えて最初の二重結合がある炭素までの数を表す。
【0005】
ω−6系のリノール酸、ジホモ−γ−リノレン酸及びアラキドン酸などと、ω−3系のα−リノレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、ドコサペンタエン酸などの各種の脂肪酸は、それぞれ異なる生理作用を表すものと確認された。
【0006】
このようなω−6とω−3脂肪酸は、全て健康維持のために必ず必要であり、約4:1の割合で摂取されるべきである。しかしながら、現在の西欧式食事のために、ω−3よりω−6を平均20倍以上消費する深刻な不均衡がもたらされている。したがって、このような不均衡を回復するために、ω−3脂肪酸の摂取が必要である。
【0007】
ドコサヘキサエン酸(docosahexaenoic acid、以下、‘DHA'という。)は、炭素数22個、6個の二重結合を有するω−3脂肪酸で、その効能としては、主に頭脳機能の強化と視覚発達に寄与することが明らかになっている。このようなDHAは、健康補助食品として愛用されており、高純度製品の場合、高脂血症治療剤などとして使用されている。
【0008】
ドコサペンタエン酸(docosapetaenoic acid、以下、‘DPA'という。)は、炭素数22個、5個の二重結合を有するω−3脂肪酸で、血栓生成抑制能、糖質代謝機能、血管内皮細胞の柔軟性改善効果を有するものとして知られている。
【0009】
エイコサペンタエン酸(eicosapentaenoic acid、以下、‘EPA'という。)は、炭素数20個、5個の二重結合を有するω−3脂肪酸で、人体内で血小板凝集を抑制させ、血漿内のトリグリセリドの水準を低下させ、VLDL(very lowdensity lipoprotein)とLDL(low density lipoprotein)の水準を低下させ、HDL(high density lipoprotein)の水準を高め、血液粘性及び血圧を低下させ、消炎作用と抗腫瘍作用をするなどの多様な生理活性を表している。
【0010】
このような多価不飽和脂肪酸を用いた油脂に関する一例として、日本特許第2572692号はDHA含有トリグリセリド及びその製造方法に対して開示しており、日本特許第2602743号はEPA含有トリグリセリド及びその製造方法に対して開示しており、日本特許公開第2003−160794号はオメガ−3系不飽和脂肪酸含有トリグリセリドに対して開示している。また、米国特許第6,852,758号はオメガ−3不飽和脂肪酸を含有したジグリセリドに対して開示しており、米国特許第6,410,078号は高度不飽和脂肪酸含有トリグリセリドに対して開示しており、米国特許第6,200,624はオメガ−6脂肪酸であるARA及びDHAを含有するトリグリセリドに対して開示しており、ヨーロッパ特許第1544281号はDHAを含有したモノグリセリドに対して開示しており、国際公開第WO00/18944号はCLAを含有するトリグリセリド形態の組成物を開示している。
【0011】
また、国際公開第WO2005/5144号は、アラキドン酸の不足状態を改善し、アラキドン酸を増加させるためにDPAを含有する油脂を使用することを提示しているが、DPAの含量が極めて低い濃度で、製造費用の高い微生物由来の油脂に対するもので、国際公開第WO2003/24237号は、体脂肪蓄積を防止可能なω−3脂肪酸を含有する油脂組成物に対して記述しているが、ジグリセリドの構成脂肪酸のうちω−3脂肪酸の含量が15重量%未満で低い。
【0012】
上述した多数の特許ではω−3脂肪酸を使用しているが、炭素数18個以上の広範囲な脂肪酸に対する接近であり、多価不飽和脂肪酸を多量含有した例を探すことができない。特に、多価不飽和脂肪酸を含有したトリグリセリドに関するものがほとんどであり、多価不飽和脂肪酸を含有するジグリセリドに関するほとんどの特許の場合にも、DPAの機能性を適用した例がない。さらに、EPAの含量を制限した例がない。
【0013】
一方、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の重要なω−3脂肪酸は、異なる類型の魚油と海洋プランクトンで発見される。また、微生物[例えば、ポルフィリディウム(Porphyridium)、モルティエラ(Mortierella)]から生産可能であるが、費用が多くかかり、商業的規模での培養が困難であるという短所がある。したがって、魚油から多価不飽和脂肪酸を含有する油脂組成物を製造する方法が大いに開発されている。
【0014】
その一例として、日本特許公開第8−214891号は、変形された固定化酵素を使用して多価不飽和脂肪酸を豊富に含有する構造脂質の製造方法に対して開示しており、日本特許公開第6−287593号は、魚油などに含有された多価不飽和脂肪酸の酸化防止のためにエステル交換反応を行い、油脂を安定化する方法を提示している。
【0015】
しかしながら、上述した特許は、多価不飽和脂肪酸を45重量%以上の高含量で濃縮させることができなく、生産単価が高いので効率的でない。
【発明の開示】
【0016】
[発明が解決しようとする課題]
本発明は、上述した問題点を解決するためのもので、その目的は、多価不飽和脂肪酸であるDHA及びDPAをグリセリド形態で多量含有しているので、栄養・生理学的な長所を有し、EPAの含量が低いので、ω−6脂肪酸の代謝抑制を始めとするEPAの短所を最小化することができ、1、3位の飽和脂肪酸、特にステアリン酸とパルミチン酸の含量が低いので、人体内消化吸収性に優れている魚油由来のグリセリド油脂組成物を提供することにある。
【0017】
本発明の他の目的は、魚油から多価不飽和脂肪酸を高含量で濃縮可能であり、生産単価が低いので経済的な前記魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0018】
[課題を解決するための手段]
上記のような目的を達成するために、本発明は、(a)構成脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の含量が45乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)の含量が0.001乃至13重量%で、(b)構成脂肪酸のうち1、3位に結合された炭素数16乃至18の飽和脂肪酸の含量が0.001乃至5重量%で、(c)ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15である魚油由来のグリセリド油脂組成物を提供する。
【0019】
また、本発明は、(a)1、3位に特異的な固定化酵素を使用して精製魚油の1、3位に特異的な加水分解を行う段階;(b)前記(a)段階で加水分解された加水分解物を脂肪酸部分とグリセリド部分に分画し、分画された脂肪酸の分子蒸留によって多価不飽和脂肪酸を分離する段階;(c)前記(b)段階で分画されたグリセリドの冷却結晶化を行って液体脂を分画する段階;(d)前記(b)段階で分離された多価不飽和脂肪酸と前記(c)段階で分画された液体脂を5.0〜80.0:20.0〜95.0の重量比で混合し、25乃至80℃の温度条件、10乃至400rpmの撹拌条件及び0.001乃至10Torrの減圧下で1乃至48時間の間1、3位に特異的な固定化酵素を使用してエステル交換反応を行う段階;及び(e)蒸留及び一般精製過程で未反応残留物質を除去する段階を含む魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法を提供する。
【0020】
さらに、本発明は、(a)位置非特異的な固定化酵素を使用して精製魚油の位置非特異的な加水分解を行う段階;(b)前記(a)段階で加水分解された加水分解物を脂肪酸部分とグリセリド部分に分画し、分画された脂肪酸の分子蒸留によって多価不飽和脂肪酸を分離する段階;(c)精製魚油の冷却結晶化を行って液体脂を分画する段階;(d)前記(b)段階で分離された多価不飽和脂肪酸と前記(c)段階で分画された液体脂を30.0〜80.0:20.0〜70.0の重量比で混合し、25乃至80℃の温度条件、10乃至400rpmの撹拌条件及び常圧下で1乃至48時間の間1、3位に特異的な固定化酵素を使用してエステル交換反応を行う段階;及び(e)蒸留及び一般精製過程で未反応残留物質を除去する段階を含む魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法を提供する。
【0021】
[発明の効果]
本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、多価不飽和脂肪酸であるDHA及びDPAをグリセリド形態で多量含有しているので、栄養・生理学的な長所を有し、EPAの含量が低いので、ω−6脂肪酸の代謝抑制を始めとするEPA摂取による短所を最小化することができ、1、3位の飽和脂肪酸の含量が低いので、多価不飽和脂肪酸の人体内消化吸収性に優れているだけでなく、酸化安定度、水分散性を始めとする加工特性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0023】
本発明者たちは、多価不飽和脂肪酸を高含量で含有しながら、人体内消化吸収性に優れている魚油由来のグリセリド油脂組成物に対して鋭意研究した結果、1、3位に結合された炭素数16乃至18の飽和脂肪酸の含量が低い場合、多価不飽和脂肪酸の消化吸収性が増加するだけでなく、飽和脂肪酸によって引き起こされる味感低下、高い融点温度などの問題点が解決できることを確認し、これに基づいて本発明を完成するようになった。
【0024】
本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、構成脂肪酸として、多価不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)を45乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)を0.001乃至13重量%含有し、ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15であることを特徴とする。
【0025】
本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、構成脂肪酸としてDHA及びDPAを高含量で含有し、認知能力向上、視力発達、抗癌作用、学習強化効果を始めとする多様な生理作用を有するDHA、及び血栓生成抑制能、糖質代謝機能及び血管系疾患予防効果を有するDPAの機能性付与が可能である。
【0026】
また、血小板凝集抑制作用と出血時間の延長作用があり、摂取時に注意が必要なEPAの含量が13重量%未満で低い。EPAは、血漿内のトリグリセリドの水準を低下させ、VLDL(very low density lipoprotein)とLDL(low density lipoprotein)の水準を低下させ、HDL(highdensity lipoprotein)の水準を高め、血液粘性及び血圧を低下させ、消炎作用と抗腫瘍作用をするなどの多様な生理活性を有するが、エイコサノイド合成過程中にω−6脂肪酸の代謝を抑制し、乳幼児の場合、EPAによって体内のアラキドン酸が減少し、成長が鈍化する結果をもたらす。本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、EPAの含量が0.001乃至13%、DHA/EPAの重量比が3.5乃至15で、EPAの含量を低下させることで、EPA摂取による上記のような短所を最小化することができる。
【0027】
また、DHA/DPAの重量比が0.5乃至8、DHA/EPAの重量比が3.5乃至15で、魚油に存在するω−3脂肪酸のうちエイコサペンタエン酸(EPA)の含量を低下させ、DHA及びDPAの含量を高めた。
【0028】
本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、1、3位に結合された炭素数16乃至18の飽和脂肪酸の含量が0.001乃至5重量%であることを特徴とする。
【0029】
すなわち、本発明は、飽和脂肪酸の含量が低いことから酸化安定度を確保可能であり、健康上に利点を有するだけでなく、飽和脂肪酸によって引き起こされる味感低下、高い融点温度などの問題点を解決することで、加工特性を改善させることができる、
このとき、前記飽和脂肪酸がパルミチン酸(C16:0)またはステアリン酸(C18:0)であると、酸化安定度、多価不飽和脂肪酸の消化吸収側面で好ましい。
【0030】
1、3位のパルミチン酸とステアリン酸は、小腸でリパーゼによって分解された後、ケン化物の形態をなし、結局、エネルギー源として使用されるべき脂肪酸の吸収減少を引き起こすだけでなく、不溶性塩を形成することで、多価不飽和脂肪酸の吸収を減少させる。したがって、1、3位のパルミチン酸とステアリン酸の含量は、0.001乃至5重量%であることが好ましい。
【0031】
ここで、前記グリセリドは、消化吸収性、油脂の安定性及び生理効果面で20乃至98重量%のトリグリセリド及び2乃至80重量%のジグリセリド2乃至80重量%を含むことが好ましい。さらに、本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、(i)構成脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の含量が45乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)の含量が0.001乃至13重量%で、構成脂肪酸のうち1、3位に結合されたステアリン酸及びパルミチン酸の含量が0.001乃至5重量%で、ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15である20乃至98重量%のトリグリセリド;及び(ii)構成脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の含量が55乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)の含量が0.001乃至10重量%で、構成脂肪酸のうち1、3位に結合されたステアリン酸及びパルミチン酸の含量が0.001乃至3重量%で、ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15で、1,3−ジグリセリド/1,2−ジグリセリドの重量比が0.4乃至4.5である2乃至80重量%のジグリセリドを含むことが最も好ましい。
【0032】
本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、トリグリセリドより水分散性が良好なジグリセリドを含有しており、酸化安定度を増加させるために使用するBHA(butylhydroxyanisole)、BHT(butylated hydroxy toluene)、TBHQ(tert−Butylhydroquinone)、天然抗酸化剤、カテキン、ビタミンCまたはこれらの誘導体、またはビタミンEなどの抗酸化剤の溶解が容易であるという長所がある。
【0033】
本発明に係る魚油由来のグリセリド油脂組成物は、抗酸化剤をさらに含むことが好ましい。このとき、抗酸化剤は、酸化安定性の面で0.001乃至5重量%の含量でさらに添加されることが好ましく、通常、食品に添加可能なものを使用することができる。好ましくは、BHA(butylhydroxyanisole)、BHT(butylated hydroxy toluene)、TBHQ(tert−Butylhydroquinone)、天然抗酸化剤、カテキン、ビタミンCまたはこれらの誘導体、またはビタミンEを使用する。
【0034】
上記のように本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、必須栄養成分であるとともに、多様な生理活性を有する多価不飽和脂肪酸であるDHA及びDPAを高含量で含有しているので、栄養・生理学的な長所を有し、EPA含量が小さいので、EPA摂取による副作用を最小化することができ、1、3位に結合された飽和脂肪酸の含量が低いので、酸化安定度及び人体内消化吸収性が改善され、ジグリセリドを適正比率で含有しているので、水分散性に優れている。
【0035】
したがって、本発明に係る魚油由来のグリセリド油脂組成物は、食用油、サラダ油、フライ用油脂、マーガリン、ファット・スプレッド、ショートニング、アイスクリーム、生クリームの代替物、ドレッシング、マヨネーズ、製菓用油脂食品または乳幼児食として使用される。
【0036】
本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物は、下記の二つの方法で製造することができる。
【0037】
第一の方法では、精製魚油の1、3位に特異的な加水分解を行い、その加水分解物からグリセリド、脂肪酸を分画した後、分画した脂肪酸の分子蒸留を再び行い、多価不飽和脂肪酸を分離する。一方、分画されたグリセリドの冷却結晶化を行い、不飽和脂肪酸を含有する油脂である液体脂を分画する。その後、1、3位に特異的な固定化酵素を使用して、分離された多価不飽和脂肪酸と分画された液体脂のエステル交換反応を行う。
【0038】
このとき、分離された多価不飽和脂肪酸及び分画された液体脂は、5.0〜80.0:20.0〜95.0の重量比で混合されるが、前記混合比を逸脱する場合、残留脂肪酸またはモノグリセリドの重量比が高くなり、以後、精製工程上の収率が低下し、エステル交換反応速度が著しく低下するという問題点がある。
【0039】
エステル交換反応は、1、3位に特異的な固定化酵素を使用して0.001乃至10Torrの減圧、25乃至80℃の温度条件及び10乃至400rpmの撹拌条件下で1乃至48時間の間行われる。このとき、0.001Torr未満の減圧条件では、エステル交換反応速度が増加しないだけでなく、必要以上の真空度を提供するために過多の真空設備を備えるべきであって非経済的であり、10Torrを超える場合、合成中に生成される水分が円滑に除去されないので、合成進行率が低下し、25℃未満の温度では効果的な反応が形成されなく、80℃超過の温度では、酵素の不活性化の発生によって反応速度が著しく低下する。また、10rpm未満の撹拌条件では円滑に混合されず、400rpm超過の条件では、強力な撹拌によって乳化現象が発生するが、このような乳化現象は、反応体積の増加とともに著しく発生するようになる。エステル交換反応時間が1時間未満である場合、反応が不完全な状態で製造工程が終了し、48時間を超える場合、これ以上反応が進行されないという問題点がある。
【0040】
第二の方法では、精製魚油の位置非特異的な加水分解を行い、その加水分解物からグリセリドと脂肪酸を分画した後、分画された脂肪酸の分子蒸留を再び行い、多価不飽和脂肪酸を分離する。一方、精製魚油の冷却結晶化を行い、不飽和脂肪酸を含有する油脂である液体脂を分画する。その後、1、3位に特異的な固定化酵素を使用して、分離された多価不飽和脂肪酸と分画された液体脂のエステル交換反応を行う。
【0041】
このとき、分離された多価不飽和脂肪酸と分画された液体脂は、30.0〜80.0:20.0〜70.0の重量比で混合されるが、前記混合比を逸脱する場合、残留脂肪酸またはモノグリセリドの重量比が高くなり、以後、精製工程上の収率が低下し、エステル交換反応速度が著しく低下するという問題点がある。
【0042】
エステル交換反応は、1、3位に特異的な固定化酵素を使用して25乃至80℃の温度、10乃至400rpmの撹拌条件及び常圧下で1乃至48時間の間行われる。エステル交換反応温度が25℃未満である場合、飽和脂肪酸の融点に近接して結晶が発生し、反応液が濁るという問題点があり、80℃を超える場合、酵素活性が制限を受けることで合成収率が低下し、生産単価が高くなり、撹拌条件によって乳化現象が発生するという問題点がある。また、撹拌条件が10rpm未満である場合、円滑に混合されなく、400rpm超過の条件では、強力な撹拌によって固定化酵素に加えられる物理的な強度が増加し、酵素不活性化促進現象が深化される。また、反応時間が1時間未満である場合、反応が不完全な状態で製造工程が終了し、48時間を超える場合、これ以上反応が進行されない。
【0043】
本発明の方法のうち酵素反応に使用される酵素としては、従来に公知された1、3位特異性リパーゼであるクモノスカビ属(Rhizopus sp.)微生物、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)微生物及びケカビ属(Mucor sp.)微生物などの微生物由来のリパーゼ、または位置非特異性リパーゼであるカンジダシリンドラセア(Candida cylindracea)、膵臓リパーゼなどが好ましいが、特に何れか一種の酵素に限定されることはない。本発明の実施例では、1、3−位特異性リパーゼ(Lipozyme RM IM)をノボノルディスク社から購入して使用した。
【0044】
前記酵素の使用量は、酵素反応の反応物質100重量部に対して0.1乃至20重量部であることが好ましい。このとき、酵素の使用量が0.1重量部未満である場合には、反応転換率が著しく低下し、20重量部を超える場合には、これ以上反応が進行されないので、経済性が低下するという問題点がある。
【0045】
以下、本発明の製造方法を詳細に説明する。
【0046】
(1)1、3位に特異的な加水分解反応段階
反応条件をより詳しく説明すると、まず、精製魚油と水を混合し、1、3位に特異的な固定化酵素を使用して全体的または部分的な加水分解反応を行う。本加水分解段階では、精製魚油100重量部に対して水を40乃至150重量部添加することが好ましく、全体の脂肪酸のうち10乃至90重量%の脂肪酸をグリセリドから分離する工程を行う。
【0047】
(2)位置非特異的な加水分解反応段階
本段階は、(a)段階を代替可能な加水分解方法で、上述した(a)段階と同一量の精製魚油と水を使用して、油脂内脂肪酸の一部分、すなわち、全体の脂肪酸のうち0.1乃至99重量%の脂肪酸をグリセリドから分離する工程を行う。
【0048】
加水分解条件は、前記混合された油脂と水の混合物を10乃至400rpmで撹拌することが好ましく、撹拌速度が10rpm未満であると、弱い撹拌力によって油脂と水との層分離が形成され、加水分解率が低下するという問題点があり、400rpmを超えると、油脂と水との乳化現象が発生し、後ほどの水と油脂の分離が難しくなるという問題点があって好ましくない。
【0049】
(3)脂肪酸、グリセリド分画段階
また、前記(1)または(2)から獲得した加水分解された油脂は、反応終末点を確認した後、撹拌を停止し、定置条件を提供することで、水と分離した油脂部分を収得する。このように収得された油脂には脂肪酸、モノグリセリド、トリグリセリドが混合されているので、本段階では、脂肪酸、特に飽和脂肪酸を除去する。
【0050】
脂肪酸除去方法としては、蒸留法、結晶法、低温結晶法、尿素添加法、クロマトグラフィー法などを使用することができ、特に、尿素添加法を使用して飽和脂肪酸を選択的に結晶化して析出する方法、常圧蒸留または減圧蒸留を通した脂肪酸除去方法、または、低温条件を提供することで、脂肪酸特有の融点温度差を用いた結晶化法が好ましい。このような分画法は、単独でまたは混用によって脂肪酸除去率を高めることができる。特に、減圧蒸留法は、最終分画法として使用可能であり、減圧蒸留条件が0.001torr未満であると、蒸留時に脂肪酸、モノグリセリド及びジグリセリドが一緒に蒸留されるという問題点があり、10torrを超えると、脂肪酸の蒸留が難しいので、減圧蒸留条件の適用において真空度調節が非常に重要である。
【0051】
(4)液体脂分画段階
本段階は、精製魚油のグリセリドまたは分画されたグリセリドの融点を用いて多価不飽和脂肪酸を多く含有するグリセリドと飽和脂肪酸を多く含有するグリセリドを分離することを目的とする。精製魚油を50℃で約1時間の間10〜300rpmで撹拌しながら結晶化に影響を与えられる粒子を除去した後、−10℃まで5乃至10℃/hrの冷却速度で精製魚油の温度を低下させ、固体脂を生成させる。このとき、冷却速度は、5〜10℃/hrであることが最も適切である。これより冷却速度が速い場合には、部分的に油脂が硬くなって分離が難しくなり、これより冷却速度が低い場合には、固体脂の選択性低下によって収率が低下し、長い工程時間が要求され、生産性が低下するようになる。
【0052】
一方、撹拌速度が300rpmを越える場合、結晶形成に支障を与えることで収率が低下し、10rpm未満である場合、熱伝逹の阻害によって固体脂の形成が難しくなる。また、結晶形成を促進するために結晶促進剤である多様な乳化剤を添加することで、高い収率を達成することができる。
【0053】
(5)エステル交換反応段階
1、3位置特異的な固定化酵素を使用して多価不飽和脂肪酸と液体脂のエステル交換反応を行い、本発明の魚油由来のグリセリド油脂組成物を得る。
【0054】
エステル交換反応段階は、分画されたグリセリド、適切な比率の脂肪酸または分画された多価不飽和脂肪酸及び液体脂を混合した後、25乃至80℃の温度、10乃至400rpmの撹拌条件及び0.001乃至10Torrの減圧下で1乃至48時間の間1、3位置特異的な固定化酵素を使用したエステル交換反応を行う段階である。
【0055】
前記交換反応の経済性と効率性を確保するために、固定化酵素用反応器の選定が非常に重要であるが、反応方式、溶媒、基質、反応器の配列、リパーゼ、固定化方法、固定化補助剤の使用可否及び種類、支持物質を考慮した上で、次のような反応器が生産可能である。すなわち、回分式撹拌反応器(Batch stirred tank reactor:BSTR)、パックドベッド反応器(Packed−bed reactor:PBR)、膜反応器(Membrane reactor:MR)などのように、固定化酵素の損失を最小化しながらエステル交換反応の最適化を誘導する反応器の運営技術が非常に重要である。10乃至300rpm、特に150rpmの撹拌速度、25乃至80℃、特に45℃の温度で実施されることが好ましく、移送速度として、生産品の品質を確認しながら適切な運転条件を提供しなければならない。撹拌速度または移送速度が過度に遅いと、転換率が低下するという問題点があり、撹拌速度または移送速度が適正な水準を超えると、固定化酵素の破損が大きくなるだけでなく、生産品の品質が悪化されるので、撹拌速度または移送速度の制御が重要である。また、反応温度が25℃未満であると、酵素による転換率が遅くなるという問題点があり、80℃を超えると、初期反応は速いが、酵素などが熱によって影響を受けられるという問題点がある。また、反応時間が1時間未満であると、反応時間が短くなるので転換率がよくない。
【0056】
上記のように、本発明に係る製造方法は、製造工程が比較的簡単であり、生産性に優れているだけでなく、低い生産単価で高機能性油脂の生産が可能である。
【0057】
以下、本発明の理解を助けるために実施例と実験例を提示する。
【0058】
下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎなく、本発明が下記の実施例に限定されることはない。
【0059】
(実施例1)
1.位置非特異的な加水分解反応
撹拌器が設置された3Lの反応器に精製魚油(1000g)、精製水(1000g)及び位置非特異性リパーゼ(Lipase−OF、Meito sangyo)4gを混合した後、300RPMの撹拌速度で撹拌しながら40℃で10時間の間非選択的な加水分解を行い、加水分解された油脂組成物を製造した。 2.脂肪酸分画
前記製造された加水分解された油脂のうちモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなどのグリセリドと脂肪酸を分画するために、収得した加水分解油脂の減圧蒸留を1Torr真空条件下で行って脂肪酸(820g)を獲得し、獲得した遊離脂肪酸の分子蒸留を220℃で再び行い、炭素数が22個以上である多価不飽和脂肪酸(340g)を分画した。
【0060】
3.液体脂分画
別途の工程で精製魚油(1000g)を50℃で充分に溶かした後、−5℃まで15RPMで徐々に撹拌しながら冷却させる冷却結晶化工程を経て固体脂(650g)を除去し、多価不飽和脂肪酸がより多く含有された液体脂(150g)を獲得した。
【0061】
4.エステル交換反応及び精製
前記2.段階で分画した多価不飽和脂肪酸(330g)と前記3.段階で分画した液体脂(110g)を混合し、ノボザイム(Novozyme)435 6.6gを添加し、5Torrの減圧、250RPMの撹拌条件及び40℃の温度で20時間の間エステル交換反応を実施した。その後、前記酵素をフィルターで除去し、約430gの工程油を得た後、分子蒸留によって残留遊離脂肪酸を除去した後、脱色及び脱臭を行うことで本発明に係る油脂組成物を収得した。
【0062】
前記油脂組成物の脂肪酸及びグリセリドは、分析例に記載された方法で分析し、下記の表1乃至表4に示した。
【0063】
(実施例2) 1.1、3位に特異的な加水分解反応
撹拌器が設置された3Lの反応器に精製魚油(1000g)、精製水(1000g)及び1、3位置特異性リパーゼ(Novozyme CALB L、ノボノルディスク社)8gを混合した後、150RPMの撹拌速度で撹拌しながら45℃で10時間の間反応させ、1、3位特異的に加水分解された油脂組成物を製造した。 2.グリセリドと脂肪酸の分画
前記製造された加水分解された油脂のうちモノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリドなどのグリセリドと脂肪酸を分画するために、収得した加水分解油脂の減圧蒸留を1Torr真空条件下で行い、脂肪酸(620g)とグリセリド(300g)を獲得し、獲得した遊離脂肪酸の分子蒸留を220℃で再び行い、炭素数が22個以上である多価不飽和脂肪酸(250g)を分画した。
【0064】
3.液体脂分画
別途の工程で前記2.段階で得たグリセリド(300g)を50℃で充分に溶かした後、−5℃まで15RPMで徐々に撹拌しながら冷却させる冷却結晶化工程を経て固体脂(650g)を除去し、多価不飽和脂肪酸がより多く含有された液体脂(150g)を獲得した。
【0065】
4.エステル交換反応及び精製
前記2.段階で分画した多価不飽和脂肪酸の濃縮物(250g)と液体脂(80g)を混合し、ノボザイム(Novozyme)435 5.0gを添加し、5Torrの減圧、250RPMの撹拌条件及び40℃の温度で20時間の間エステル交換反応を実施した。その後、前記酵素をフィルターで除去し、約430gの工程油を得た後、分子蒸留によって残留遊離脂肪酸を除去した後、脱色及び脱臭を行って本発明に係る油脂組成物を収得した。
【0066】
前記油脂組成物の脂肪酸及びグリセリドは、分析例に記載された方法で分析し、下記の表1乃至表4に示した。
【0067】
(比較例)
(比較例1)
前記実施例と同一の方法で製造した魚油由来のグリセリド油脂組成物(100g)、パルミチン酸19.5g及びステアリン酸10.5gを混合した後、リポザイムRM IM(Novozyme)4.0gを添加し、5Torrの減圧、250RPMの撹拌条件及び40℃の温度で8時間の間エステル交換反応を実施した。その後、前記酵素をフィルターで除去し、約127gの工程油を得た後、分子蒸留によって残留遊離脂肪酸を除去した後、脱色及び脱臭を行って油脂組成物97gを収得した。
【0068】
前記油脂組成物の脂肪酸及びグリセリドは、分析例に記載された方法で分析し、下記の表1乃至表4に示した。
【0069】
(比較例2)
前記実施例2と同一の方法で製造した魚油由来のグリセリド油脂組成物(100g)、パルミチン酸19.5g及びステアリン酸10.5gを混合した後、リポザイムRM IM(Novozyme)4.0gを添加し、5Torrの減圧、250RPMの撹拌条件及び40℃の温度で8時間の間エステル交換反応を実施した。その後、前記酵素をフィルターで除去し、約127gの工程油を得た後、分子蒸留によって残留遊離脂肪酸を除去した後、脱色及び脱臭を行って油脂組成物97gを収得した。
【0070】
前記油脂組成物の脂肪酸及びグリセリドは、分析例に記載された方法で分析し、下記の表1乃至表4に示した。
【0071】
(比較例3)
市販されたイワシ原油(1000g)を購入し、脱酸、脱色及び脱臭を行って油脂組成物(850g)を収得した。
【0072】
前記油脂組成物の脂肪酸及びグリセリドは、分析例に記載された方法で分析し、下記の表1乃至表4に示した。
【0073】
【表1】

【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

(実験例)
(魚油由来のグリセリド油脂組成物の風味)
前記実施例1及び実施例2、比較例1乃至比較例3の魚油由来のグリセリド油脂組成物を使用して一定の条件に露出した後、風味及び色価を評価した。
【0077】
各油脂組成物100gに抗酸化剤を添加しない条件で行った。
【0078】
自動酸化測定機械であるRancimat(Rancimat 743、Metrohm、Switzerland)を使用し、80℃の試料の温度、20L/hrのガス流速、1時間露出の条件で実施した。その結果を下記の表5に示した。
【0079】
【表5】

前記表5に示すように、色価の変化程度と風味に対して、多価不飽和脂肪酸を高含量で含有し、1、3位に飽和脂肪酸を低含量で含有した本発明に係る実施例1及び実施例2が、1、3位に飽和脂肪酸をより多く含有した比較例1乃至3よりも良好であった。特に、抑制された着色は、多様な適用分野に応用したとき、優れた加工特性を期待することができる。
【0080】
不ケン化物とケン化物の脂肪酸量を比較すると同時に、体重の変化を測定した。
【0081】
下記の表6のような組成の飼料を2週間給与し、ラットの消化吸収率及び成長率変化を測定して下記の表7に示した。
【0082】
【表6】

【0083】
【表7】

前記表7に示すように、実施例1及び実施例2を使用して配合した飼料を口腔で摂取した各実験群の便で、比較例1及び比較例2と比較してケン化物の量が有意に30%程度減少し、精製魚油である比較例3の半分水準であった。また、このような傾向は、不ケン化物の量と全体の脂肪酸のうち、特にDHA、DPAの排出量を通しても同一であった。このような結果は、油脂の1、3位の飽和脂肪酸、特にパルミチン酸(C16:0)とステアリン酸(C18:0)の含量と密接な関係があった。すなわち、パルミチン酸とステアリン酸が小腸でリパーゼによって分解された後、ケン化物の形態をなし、結局、エネルギー源として使用されるべき脂肪酸の吸収減少を引き起こすだけでなく、不溶性塩を形成することで、多価不飽和脂肪酸の吸収減少につながることを確認することができた。結果的に、体重の変化を通して分かるように、1、3位のパルミチン酸とステアリン酸の含量は、脂肪酸の吸収を減少させる。
【0084】
【表8】

(分析例)
1.脂肪酸組成分析のための気体クロマトグラフィー
カラムはHP−INNOWAX(Agilent社、米国)で、搬送ガスはヘリウム(2.1ml/分)で、オーブン温度は150〜260℃で、水素炎イオン化検出器(FID)が275℃に設定された条件で、サンプルを25g/Lの濃度で注入して分析した。
【0085】
2.グリセリド組成分析のための液体クロマトグラフィー
カラムはSupelcosil LC−Si 5μm、25cm[Supelco社、米国]で、移動相溶媒は溶媒A(ベンゼン70:クロロホルム30:酢酸2)と溶媒B(エチルアセテート)で、サンプルの注入濃度は1mg/ml(クロロホルム溶媒)である条件で、蒸発光散乱検出器(ELSD)を使用して2.3ml/分の流速で分析した。
【0086】
3.グリセリドの位置異性体分析のための液体クロマトグラフィー
カラムはChromSpher Lipids、5μm、25cm[varian、USA]で、移動相溶媒は0.5%アセトニトリルを含むノルマル−ヘキサン(n−hexane)で、サンプルの注入濃度は1mg/ml(クロロホルム溶媒)である条件で、蒸発光散乱検出器(ELSD)を使用して2.3ml/分の流速で分析した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)構成脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の含量が45乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)の含量が0.001乃至13重量%で、
(b)構成脂肪酸のうち1、3位に結合された炭素数16乃至18の飽和脂肪酸の含量が0.001乃至5重量%で、
(c)ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15である
魚油由来のグリセリド油脂組成物。
【請求項2】
前記飽和脂肪酸は、
パルミチン酸(C16:0)またはステアリン酸(C18:0)であることを特徴とする
請求項1に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物。
【請求項3】
前記グリセリドは、
20乃至98重量%のトリグリセリド及び2乃至80重量%のジグリセリドを含むことを特徴とする
請求項1に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物。
【請求項4】
(i)構成脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の含量が45乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)の含量が0.001乃至13重量%で、構成脂肪酸のうち1、3位に結合されたステアリン酸及びパルミチン酸の含量が0.001乃至5重量%で、ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15である20乃至98重量%のトリグリセリド;及び
(ii)構成脂肪酸のうちドコサヘキサエン酸(DHA)及びドコサペンタエン酸(DPA)の含量が55乃至95重量%、エイコサペンタエン酸(EPA)の含量が0.001乃至10重量%で、構成脂肪酸のうち1、3位に結合されたステアリン酸及びパルミチン酸の含量が0.001乃至3重量%で、ドコサヘキサエン酸(DHA)/ドコサペンタエン酸(DPA)の重量比が0.5乃至8、ドコサヘキサエン酸(DHA)/エイコサペンタエン酸(EPA)の重量比が3.5乃至15で、1,3−ジグリセリド/1,2−ジグリセリドの重量比が0.4乃至4.5である2乃至80重量%のジグリセリドを含むことを特徴とする
請求項3に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物。
【請求項5】
0.001乃至5重量%の抗酸化剤をさらに含有することを特徴とする
請求項1に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物。
【請求項6】
前記抗酸化剤は、
BHA(butylhydroxyanisole)、BHT(butylated hydroxy toluene)、TBHQ(tert−Butylhydroquinone)、天然抗酸化剤、カテキン、ビタミンC及びビタミンEからなる群から選択されることを特徴とする
請求項5に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物を含有する食品。
【請求項8】
前記食品は、
食用油、サラダ油、フライ用油脂、マーガリン、ファット・スプレッド、ショートニング、アイスクリーム、生クリームの代替物、ドレッシング、マヨネーズ、製菓用油脂食品または乳幼児食であることを特徴とする
請求項7に記載の食品。
【請求項9】
(a)1、3位に特異的な固定化酵素を使用して精製魚油の1、3位に特異的な加水分解を行う段階;
(b)前記(a)段階で加水分解された加水分解物を脂肪酸部分とグリセリド部分に分画し、分画された脂肪酸の分子蒸留によって多価不飽和脂肪酸を分離する段階;
(c)前記(b)段階で分画されたグリセリドの冷却結晶化を行って液体脂を分画する段階;
(d)前記(b)段階で分離された多価不飽和脂肪酸と前記(c)段階で分画された液体脂を5.0〜80.0:20.0〜95.0の重量比で混合し、25乃至80℃の温度条件、10乃至400rpmの撹拌条件及び0.001乃至10Torrの減圧下で1乃至48時間の間1、3位に特異的な固定化酵素を使用してエステル交換反応を行う段階;及び
(e)蒸留及び一般精製過程で未反応残留物質を除去する段階
を含む
魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法。
【請求項10】
(a)位置非特異的な固定化酵素を使用して精製魚油の位置非特異的な加水分解を行う段階;
(b)前記(a)段階で加水分解された加水分解物を脂肪酸部分とグリセリド部分に分画し、分画された脂肪酸の分子蒸留によって多価不飽和脂肪酸を分離する段階;
(c)精製魚油の冷却結晶化を行って液体脂を分画する段階;
(d)前記(b)段階で分離された多価不飽和脂肪酸と前記(c)段階で分画された液体脂を30.0〜80.0:20.0〜70.0の重量比で混合し、25乃至80℃の温度条件、10乃至400rpmの撹拌条件及び常圧下で1乃至48時間の間1、3位に特異的な固定化酵素を使用してエステル交換反応を行う段階;及び
(e)蒸留及び一般精製過程で未反応残留物質を除去する段階
を含む
魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法。
【請求項11】
前記(c)段階の液体脂分画段階は、
5乃至10℃/hrの冷却速度、100〜300rpmの撹拌速度で行われることを特徴とする
請求項9または10に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法。
【請求項12】
前記1、3位に特異的な固定化酵素は、
クモノスカビ属(Rhizopus sp.)、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)またはケカビ属(Mucor sp.)微生物由来のリパーゼであることを特徴とする
請求項9または10に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法。
【請求項13】
前記位置非特異的な固定化酵素は、
カンジダシリンドラセア(Candida cylindracea)または膵臓リパーゼであることを特徴とする
請求項10に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法。
【請求項14】
前記固定化酵素の使用量は、
酵素反応物質100重量部に対して0.1乃至20重量部であることを特徴とする請求項9または10に記載の魚油由来のグリセリド油脂組成物の製造方法。

【公表番号】特表2010−503748(P2010−503748A)
【公表日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−528172(P2009−528172)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/KR2007/004272
【国際公開番号】WO2008/032949
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(509072733)イルシン ウェルズ カンパニー リミテッド (1)
【Fターム(参考)】