説明

鳥威嚇装置および風力発電装置

【課題】 高性能なコンピュータを使わなくても飛翔物の速度をリアルタイムで算出し、飛翔物が鳥であることを検出し、鳥に対して効果的な威嚇を行うことによってバードストライク回避の可能性を高める。
【解決手段】 鳥威嚇装置(13)は、所定の空間領域(11)を連続撮影する撮影装置(12)と、その撮影装置(12)が取得した複数の画像データ間のモード変化で画像内の飛翔体(30)の速度をオプティカルフロー方式で算出し、その算出した飛翔体(30)の速度が予め設定した設定速度以上であって当該速度が鳥による速度に相応しい場合に鳥(31)であると判断する鳥検出装置(46)と、その鳥検出装置(46)が鳥(31)であることを検出したときに前記所定の空間領域(11)に向けて威嚇出力を出力する威嚇装置(13)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鳥威嚇装置および風力発電装置に関する。特に高性能なコンピュータを使わなくても飛翔物が鳥であることをリアルタイムに検出し、その都度、鳥に対して効果的な威嚇を行う鳥威嚇装置および風力発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、風力発電装置に対するバードストライクを回避するための技術は、鳥などの飛翔物を検知する技術、および検知した情報に基づいて風力発電のプロペラを減速または停止させる技術を組み合わせたものが一般的である。
【0003】
上記の技術としては、たとえば特許文献1に記載された技術を利用することが考えられる。この特許文献1は、移動物体の三次元軌跡を計測する技術であり、球技スポーツにおけるボールのように高速で移動する物体の移動軌跡を求める技術である。
【0004】
これは、複数(たいてい2台)のカメラで飛翔物を含む画像データを取得し、同期させた複数の画像データ中において一致する粒子や画素を抽出する(PTVのステレオペアマッチング)。一致した粒子や画素について、三次元における速度の情報に変換し、三次元の軌跡を求めるものである。これにより、風力発電装置に近づいているか否か、等を判断して、風力発電装置の制御に用いる。
【0005】
また、風力発電装置に対するバードストライクを防止するために、例えば工事現場などに見られるような人間を模した腕振り人形を使用し鳥を威嚇していた。
また、鳥を威嚇する方法としては、音、衝撃波などが試みられてきた。風力発電装置に対してではないが、空港周辺の空路域に対する鳥の威嚇技術として、例えば特許文献2に記載された技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−115236号公報
【特許文献2】特開平8−70752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
さて、特許文献1に開示された技術をバードストライクの回避に用いるには、以下のような問題があった。
カメラで飛翔物を撮影する場合、認識した飛翔物を単位時間(例えば、30分の1秒)ごとに追跡し、その撮影した画像における飛翔物の位置の変化量により飛翔物の速度を算出するので時間がかかってしまい、飛翔物のリアルタイム追跡および衝突判断が事実上間に合わない場合が生じてしまうという問題点があった。
【0008】
腕振り人形の場合は、その人形が非常に高価であると共に、常時、動きっぱなしにするとしても飛行する鳥の視界に入っていない可能性もある。そのため、それによる威嚇の効果が十分に発揮されていない場合がありうる。
【0009】
鳥を威嚇するための音については、風力発電装置の付近の住民に対して迷惑になるという問題点があった。また、衝撃波は、周囲にどのような影響を及ぼすか解析が不十分な場合がある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、高性能なコンピュータを使わなくても鳥をリアルタイムに検出し、その都度、鳥に対して効果的な威嚇を行うことによってバードストライク回避の可能性を高める鳥威嚇技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(第一の発明)
本願の第一の発明は、鳥威嚇装置(13)に係る。
すなわち、 所定の空間領域(11)を連続撮影する撮影装置(12)と、 その撮影装置(12)が取得した複数の画像データ間のモード変化で画像内の飛翔体(30)の速度をオプティカルフロー方式で算出し、その算出した飛翔体(30)の速度が予め設定した設定速度以上であって当該速度が鳥による速度に相応しい場合に鳥であると判断する鳥検出装置(46)と、 その鳥検出装置(46)が鳥であることを検出したときに前記所定の空間領域(11)に向けて威嚇出力を出力する威嚇装置(13)と、を備えたことを特徴とする。
前記の鳥検出装置(46)は、前記撮影装置(12)によって撮影した飛翔体(30)の動きを画像処理して蓄積し、鳥であるか鳥でないかという判断を加えた情報として蓄積したデータベースを用いることによって、鳥の検出を実行することとしても良い。
【0012】
(作用)
オプティカルフロー方式の鳥検出装置(46)が備えられているので、所定の空間領域(11)に侵入してくる飛翔体(30)の速度は、演算処理を実行するコンピュータのパフォーマンスがそれほど高くなくてもリアルタイムに算出可能である。オプティカルフロー方式の鳥検出装置(46)は、予め設定した設定速度以上の飛翔体(30)があってその速度が鳥に相応しいと判断する場合に、その飛翔体(30)が「鳥」であると検出する。この検出方式は、他の方式に比べて演算が容易なため、コンピュータの性能やメモリ容量が小さくて済むからである。これに伴い、消費電力も少なくて済む。
検出対象である飛翔体(30)が撮影装置(12)で撮影する方向において遠くても近くても、予め設定した設定速度以上の飛翔体(30)がある場合は、鳥検出装置(46)はそれを鳥であると判断して検出する。それに対して威嚇装置(13)から威嚇出力を出力する。
【0013】
本願に係る鳥威嚇装置(10)の威嚇範囲として、風力発電装置(20)の周囲に予め所定の空間領域(11)を設定することで、その風力発電装置(20)におけるバードストライク回避の可能性を高めることができる。
また、鳥を威嚇するための音を発しない場合は、風力発電装置の付近の住民に対して迷惑になるという問題を回避できる。
【0014】
(第一の発明のバリエーション1)
第一の発明に係る鳥威嚇装置(10)は、その威嚇装置(13)をLEDストロボとして提供することができる。
【0015】
(作用)
LEDストロボは、電荷チャージが不要であり、所定の信号を入力すれば即時に発光させることができる。また、消費電力も少なく、寿命も長いという利点がある。
【0016】
(第一の発明のバリエーション2)
第一の発明に係る鳥威嚇装置(10)は、その威嚇装置(13)が複数の指向角度を有するとしてもよい。
ここで、「複数の指向角度を有する」とは、単独の指向角度である威嚇装置(13)を複数用意して、それぞれの指向角度を異ならせることとしても良いし、単独の威嚇装置(13)の中に複数の出力装置を備えることとしても良い。
【0017】
(作用)
複数のLEDストロボで複数の指向角度を持たせることで、鳥の様々な進行方向に対して適正な指向のストロボ発光を行うことができ、鳥に対して威嚇する効果を高めることができる。
【0018】
(第一の発明のバリエーション3)
第一の発明に係る鳥威嚇装置(10)は、 太陽電池パネル(15)を備え、その太陽電池パネル(15)で発電した電力を前記鳥検出装置(46)および前記威嚇装置(13)に給電することを特徴とする。
【0019】
(作用)
鳥威嚇装置(10)は、消費電力が少ないため、太陽電池パネル(15)による長時間稼働に適しており、山間部などのように容易に給電しにくい箇所での使用に適している。
【0020】
(第二の発明)
本願の第二の発明は、 地上に立設させたタワー(21)と、そのタワー(21)に固定されたナセル(22)と、そのナセル(22)に対してハブ(23)を介して回転自在に固定された複数のブレード(25)を備えた風力発電装置(20)に係る。
すなわち、 その風力発電装置(20)の周囲に予め設定した所定の空間領域(11)を連続撮影すべく地上に設けた撮影装置(12)と、その撮影装置(12)が取得した複数の画像データ間のモード変化で画像内の飛翔体(30)の速度をオプティカルフロー方式で算出し、その算出した飛翔体(30)の速度が予め設定した設定速度以上であって当該速度が鳥による速度に相応しい場合に鳥(31)であると判断する鳥検出装置(46)を備え、 前記ナセル(22)に、その鳥検出装置(46)が鳥であることを検出したときに前記所定の空間領域(11)に向けて威嚇出力を出力する威嚇装置(13)を備える。
【0021】
(用語説明)
「風力発電装置(20)の周囲」とは、風力発電装置(20)を覆うほどの大きさの空間領域(11)を意味する場合や、風力発電装置(20)の外側に隣接する空間領域(11)を意味する場合がある。
【0022】
(作用)
風力発電装置(20)は、オプティカルフロー方式の鳥検出装置(46)が備えられているので、所定の空間領域(11)に侵入してくる飛翔体(30)の速度がリアルタイムに算出され、その飛翔体(30)が撮影装置(12)で撮影する方向で遠くても近くても、予め設定した設定速度以上であってその速度が鳥に相応しいと判断する場合は、それを鳥であると判断して検出する。それに対してナセル(22)に設けた威嚇装置(13)から威嚇出力を出力するので、ブレードの回転に直交する方向で前方に対するバードストライクを回避することができる。さらに加えて威嚇出力がナセル(22)の後方へ向けて指向する威嚇装置(13)を設けるならば、ブレードの回転に直交する方向で後方に対するバードストライクを回避することができる。他は前述した鳥威嚇装置(10)と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0023】
請求項1から請求項4に記載の発明によれば、高性能なコンピュータを使わなくても飛翔物の速度をリアルタイムで算出し、飛翔物が鳥であることを検出し、その都度、鳥に対して効果的な威嚇を行うことによってバードストライク回避の可能性を高める鳥威嚇装置(10)を提供することができた。
また、請求項5に記載の発明によれば、高性能なコンピュータを使わなくても飛翔物の速度をリアルタイムで算出し、飛翔物が鳥であることを検出し、その都度、鳥に対して効果的な威嚇を行うことによってバードストライク回避の可能性を高める風力発電装置(20)を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態の鳥威嚇装置を示す概略的な斜視図である。
【図2】図1の鳥威嚇装置の正面図である。
【図3】本発明の他の実施形態の鳥威嚇装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1および図2を参照して説明する。この実施の形態に係る鳥威嚇装置10は、風力発電装置20の周囲に、所定の空間領域11が設定される。この所定の空間領域11は、その領域に鳥31などの飛翔体30が進入してきた場合に風力発電装置20に衝突するおそれがあるために、鳥31の進入を許容しない領域である。
【0026】
「飛翔体30」とは、鳥31などの生物の他に、風で飛ばされてくる物体も含む。
「風力発電装置20の周囲」とは、風力発電装置20を覆うほどの大きさの空間領域11を意味する場合や、風力発電装置20の外側に隣接する空間領域11を意味する場合がある。
【0027】
風力発電装置20は、例えば図2に示されているように、地上に立設したタワー21と、そのタワー21に固定されたナセル22と、そのナセル22に対してハブ23を介して回転自在に設けたロータ24に固定された複数のブレード25と、回転停止ポジションを含めたブレード25の角度変更を制御するブレード角度制御装置を含む風力発電運転制御装置26を備えている。
【0028】
「回転停止ポジション」とは、ブレード25が風を受けても回転しないポジションをいい、代表的には、フェザリングポジションまたは回転速度の十分な減速であるが、ブレード25の回転を停止させるためのブレーキを補助的に用いる場合、ブレーキをメインとしてブレード25の回転を停止させる場合も含むものである。
【0029】
回転の減速制御手段としては、ブレード25の全体のピッチ角を変更するピッチ制御機と、揚力を失うようなブレード25の形状とピッチ角とを選択させるとともに、停止時にはブレード25の先端が90度向きを変えてブレーキとするストール制御機とがある。
なお、風力発電装置20はフェザリングポジション以外にも、強風に応じて回転効率を落とすようなポジションを選択可能に形成されていることが多い。回転を完全に停止してしまうと運転再開に時間がかかるが、十分な減速の場合には運転再開が容易であるので発電ロスを減らすことができるからである。
【0030】
また、本実施形態の鳥威嚇装置10には、上記の所定の空間領域11を連続撮影するカメラ12を備えた撮影装置が設けられており、その撮影装置により、本実施形態では1秒間に50回の連続撮影が行われる。
カメラ12はC−MOSセンサを用いたカメラである。そのC−MOSセンサを備えたカメラを用いているのは、CCD素子よりも露光時間の制御が容易であり、飛行速度の速い鳥類の画像を捉えるのに適しており、また曇天などにおいても撮影が容易でレーザ光の照射などの設備が不要となるからである。
【0031】
本実施形態の鳥威嚇装置10には、上記の所定の空間領域11に向けて威嚇出力を出力する威嚇装置13が、図1および図2に示されているように、本実施形態では地上に配置されている。その威嚇装置13としては、例えば、光、音、超音波、衝撃波などがあるが、本実施形態ではLEDのストロボが用いられている。ストロボは光線の点滅であり、威嚇方法として光は鳥31に対して視覚的効果があり、音、衝撃波などに比べて最も使い勝手が良いと考えられる。事実、ストロボを照射することによる鳥31への威嚇については所定の効果が報告されている。
【0032】
一般的なカメラ用フラッシュと同等の構成からなるストロボの場合、電気をコンデンサにチャージさせてから一気に発光させるものであり、常に電気をチャージさせておく必要がある。また、次の発光までに時間がかかるといった問題がある。すなわち、待機電力が無駄になることが多く、ランニングコストが多額になる。また、連続発光が困難である上、ストロボの消耗、寿命といったランニングコストも掛かる。
一方、LEDのストロボは、電荷チャージが不要であり、所定の低周波の信号で即時に発光させることができる。また、消費電力が少ない。さらに、指向角度が狭いので光が遠くまで届くために狙い通り所定の空間領域11に向けて照射することができる。
【0033】
上記のカメラ12は、図1に示されているように、画像処理装置16を経て制御装置40に接続されている。その画像処理装置16ではカメラ12で撮像した画像に基づいて飛翔体30の二次元像の位置座標を追跡し測定するものである。
【0034】
図1では説明のために座標面14を図示しているが、その座標面14の二次元像を追跡する方法にはオプティカルフロー方式を用いることができる。そのオプティカルフロー方式とは、通常、時間的に連続するデジタル画像などの視覚表現の中で物体の動きをベクトルで表したものである。
より具体的に説明する。画像内を例えば、縦20かける横30などに分割し、その600に分けた一つの小領域毎に速度を算出する。そして、その速度が設定値以上のときに鳥に起因して生じた速度(飛行する鳥に相応しい速度)と判断することにより、画像中を動く飛翔体が「鳥である」と、検出する。
【0035】
本実施形態では、オプティカルフロー方式は、例えば二枚の画像データ間の明度・輝度や彩度といったピクセル毎のモード変化により、飛翔体30を含む画像内の領域全体について速度を算出するものである。背景の物体や鳥31が動いても、それを計算式に当てはめて計算し、特定の飛翔体30を含む画像内の領域全体について算出する方式である。この速度計算は、制御装置40にて実行される。
【0036】
制御装置40には、中央処理装置であるCPU41に、種々のデータを入力するための入力装置42と画像やデータ等を表示するための表示装置43、並びに各データを記憶するメモリ44が接続されている。さらに、CPU41には、前記画像処理装置16で測定した画像データに基づいて、連続する二枚の画像データ間のモード変化で画像内の物体の速度をオプティカルフロー方式で算出する演算装置45と、その演算装置45で算出した飛翔体30を含む領域全体についての速度のうち、ある小領域の速度が予め設定した設定速度以上であるときにその速度が鳥に起因した速度であることにより鳥を検出すると判断する鳥検出装置46(比較判断装置)と、その鳥検出装置46が鳥31であることを検出したときに威嚇装置13に威嚇出力を出力する指令を与える指令部47が接続されている。
【0037】
本実施形態の鳥威嚇装置10には、太陽電池パネル15が備えられており、その太陽電池パネル15で発電した電力が前記鳥検出装置46、すなわち制御装置40および前記威嚇装置13に給電される構成である。
【0038】
上記構成により、本実施形態の鳥威嚇装置10は、オプティカルフロー方式の鳥検出装置46が備えられているので、所定の空間領域11に侵入してくる飛翔体30の速度が演算装置45でリアルタイムに算出される。当該飛翔体30がカメラ12で撮影する方向で遠くても近くても、その算出した飛翔体30の速度が予め設定した設定速度以上であって当該速度が鳥による速度に相応しい場合に、鳥31であると判断する。
たとえその飛翔体30が鳥31でなく、例えば風で飛ばされた何かの物体である場合、それに対して威嚇装置13から威嚇出力を出力することになるが、少なくとも鳥31に対しては確実に威嚇出力を出力することができるので、その目的は達成し、風力発電装置20におけるバードストライクを回避する可能性を高めている。尚、風力発電装置20は必ずしも画像内に入っている必要はない。
【0039】
なお、前記の鳥検出装置46は、前記撮影装置12によって撮影した飛翔体30の動きを画像処理して蓄積し、鳥であるか鳥でないかという判断を加えた情報として蓄積したデータベースを用いることによって、鳥の検出を実行することも可能である。このような場合、飛翔体30が鳥31でなく、例えば風で飛ばされた何かの物体である場合、鳥とは異なる動きをするので、それに対して威嚇装置13から威嚇出力を出力しない。
また、鳥検出装置46における「鳥」の判断基準となる速度の設定値は、「所定速度以上」という下限設定だけでなく、あわせて「所定速度以下」という上限設定をすることも可能ある(すなわち、時速Aキロメートル以上時速Bキロメートル以下を「鳥」と判断する、という設定も可能である)。
更に、画像内において、風力発電装置20のブレードが入っている場合は、ブレードによる速度が大きい場合があるので、鳥がブレードほど速い速度で移動しないことを考慮すれば、上限値を設定することにより、鳥検出の精度を高めることができる。
【0040】
オプティカルフロー方式の鳥検出装置46は、他の方式に比べて演算が単純なため、コンピュータの性能やメモリ容量が小さくて済む。これに伴い、コストを抑えることができ、消費電力も少なくて済むという効果もある。
また、威嚇装置13はLEDストロボを採用しており、前述したように電荷チャージが不要であり、所定の信号を入力すれば即時に発光させることができる。また、消費電力も少ない。
これらのことから、オプティカルフロー方式の鳥検出装置46と、LEDストロボの威嚇装置13を組み合わせた鳥威嚇装置10は、消費電力が少ないため、太陽電池パネル15やバッテリーによる長時間稼働に適しており、山間部などのように容易に給電しにくい箇所での使用に適している。
【0041】
前述した実施形態では撮影装置として一台のカメラ12が用いられ、威嚇装置13として一つのLEDストロボが用いられているが、二台以上のカメラ12と二つ以上の例えばLEDストロボを設けることができる。これにより、風力発電装置20の周囲にいくつかの所定の空間領域11を設定して各空間領域11を撮影し、対応する空間領域11に侵入する鳥31に対して威嚇出力を出力することができるので、より一層確実にバードストライクを回避することができる。
【0042】
また、威嚇装置13は、一つの空間領域11に対して複数のLEDストロボを配置することができる。これにより複数の指向角度を持たせることができるので、LEDストロボの発光が鳥31の視界に入り易くなる。つまり、鳥31の進行方向はいろいろと変化するので、ある指向角度の発光では鳥31がそれを視覚することができない可能性があるが、複数のLEDストロボで複数の指向角度を持たせることにより、鳥31の様々な進行方向に対して適正な指向のストロボ発光を行うことができ、鳥31に対して威嚇する効果を高めることができる。
【0043】
前述した実施形態の鳥威嚇装置10は、威嚇装置13が地上に設置されているが、図3に示されているように、風力発電装置20のナセル22に、威嚇装置13としての例えばLEDストロボを設置することができる。
【0044】
図3では、LEDストロボの発光の指向方向が複数のブレード25の回転に直交する前方(図3において右方向)へ向くように配置している。これにより、LEDストロボの発光は回転する複数のブレード25の間から前方へ発光することになるので、風力発電装置20の前方側から飛んでくる鳥31に対してLEDストロボの発光で威嚇することができる。
また、これに加えて、もう一つのLEDストロボをブレード25の回転に直交する後方(図3において左方向)へ向けて発光するようにナセル22に配置することができる。これにより、風力発電装置20の後方側から飛んでくる鳥31に対してLEDストロボの発光で威嚇することができる。
【0045】
本願発明は、農作物などを荒らす野生動物の忌避装置としても応用可能である。前述の鳥検出装置46の代わりに、特定の動物(例えば鹿、熊、猿)を検出する装置とし、その装置で動物を検出したらLEDストロボにて発光威嚇する前述の威嚇装置13を備えるのである。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本願発明は、風力発電装置の製造業、風力発電装置のメンテナンス業、鳥威嚇装置の製造業などにおいて利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0047】
10 鳥威嚇装置 11 空間領域
12 カメラ(撮影装置) 13 威嚇装置
14 座標面 15 太陽電池パネル
16 画像処理装置
20 風力発電装置 21 タワー
22 ナセル 23 ハブ
24 ロータ 25 ブレード
26 風力発電運転制御装置
30 飛翔体 31 鳥
40 制御装置 41 CPU
42 入力装置 43 表示装置
44 メモリ 45 演算装置
46 鳥検出装置 47 指令部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の空間領域を連続撮影する撮影装置と、その撮影装置が取得した複数の画像データ間のモード変化で画像内の飛翔体の速度をオプティカルフロー方式で算出し、その算出した飛翔体の速度が予め設定した設定速度以上であって当該速度が鳥による速度に相応しい場合に鳥であると判断する鳥検出装置と、その鳥検出装置が鳥であることを検出したときに前記所定の空間領域に向けて威嚇出力を出力する威嚇装置と、を備えた鳥威嚇装置。
【請求項2】
前記威嚇装置は、LEDストロボとした請求項1記載の鳥威嚇装置。
【請求項3】
前記威嚇装置は、複数の指向角度を有する請求項1または請求項2のいずれかに記載の鳥威嚇装置。
【請求項4】
太陽電池パネルを備え、その太陽電池パネルで発電した電力を前記鳥検出装置および前記威嚇装置に給電することとした請求項1から請求項3のいずれかに記載の鳥威嚇装置。
【請求項5】
地上に立設させたタワーと、そのタワーに固定されたナセルと、そのナセルに対してハブを介して回転自在に固定された複数のブレードを備えた風力発電装置であって、
その風力発電装置の周囲に予め設定した所定の空間領域を連続撮影すべく地上に設けた撮影装置と、その撮影装置が取得した複数の画像データ間のモード変化で画像内の飛翔体の速度をオプティカルフロー方式で算出し、その算出した飛翔体の速度が予め設定した設定速度以上であって当該速度が鳥による速度に相応しい場合に鳥であると判断する鳥検出装置を備え、
前記ナセルに、その鳥検出装置が鳥であることを検出したときに前記所定の空間領域に向けて威嚇出力を出力する威嚇装置を備えた風力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−193768(P2010−193768A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41569(P2009−41569)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】