説明

1−アシルジヒドロピラゾール誘導体

式(I)の化合物[式中、R1、R2、R3a、R3b、R3cおよびR3dは請求項1に挙げられる意味を有する]はチロシンキナーゼ、特に、Metキナーゼの阻害剤であり、中でも腫瘍を治療するために使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、価値ある特性を有する新規化合物、特に、医薬の調製に使用できる化合物を見出すという目的を有していた。
【0002】
本発明は、キナーゼ、特に、チロシンキナーゼおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼによるシグナル伝達の阻害、制御および/または調節が役割を果たす化合物、およびその使用、さらにこれらの化合物を含む薬剤組成物およびキナーゼ誘発性疾患の治療のためのこれらの化合物の使用に関する。
【0003】
特に、本発明は、Metキナーゼによるシグナル伝達の阻害、制御および/または調節が役割を果たす化合物およびその使用に関する。
【0004】
細胞の制御が達成される主な機序の1つは、膜を越える細胞外シグナルの伝達(これは、次いで細胞内の生化学的経路を調節する)によるものである。タンパク質リン酸化は、細胞内シグナルが分子から分子へ伝播され、最終的に細胞性応答をもたらす1つの過程に相当する。これらのシグナル伝達カスケードは、多数のプロテインキナーゼならびにホスファターゼの存在からはっきりとわかるように、高度に制御されており、重複することも多い。タンパク質のリン酸化は主にセリン、トレオニンまたはチロシン残基で起こり、したがって、プロテインキナーゼは、そのリン酸化部位の特異性によって分類されている。すなわち、セリン/トレオニンキナーゼおよびチロシンキナーゼ。リン酸化は、このような細胞内で遍在するプロセスであるので、また、細胞表現型はこれらの経路の活性によって大きく影響を受けるために、いくつかの病状および/または疾患は、キナーゼカスケードの分子成分の異常な活性化または機能的変異のいずれに起因すると現在考えられている。したがって、これらのタンパク質の特性決定およびその活性を調節できる化合物に大きな注目が向けられてきた(総説については、Weinstein−Oppenheimerら、Pharma.&.Therap.、2000年、88、229〜279頁を参照のこと)。
【0005】
ヒト発癌における受容体チロシンキナーゼMetの役割およびHGF(肝細胞増殖因子)依存性Met活性化の阻害の可能性が、Oncogene、第23巻、第31号、5387〜5393頁(2004年)においてS.Berthouらによって記載されている。それに記載される阻害剤SU11274、ピロール−インドリン化合物は、癌と闘うのに適している可能性がある。癌治療のためのもう1つのMetキナーゼ阻害剤が、Cancer Res.2003年、63(21)、7345〜55頁においてJ.G.Christensenらによって記載されている。
【0006】
癌と闘うためのさらなるチロシンキナーゼ阻害剤が、Clinical Cancer Research、第10巻、6686〜6694頁(2004年)においてH.Hovらによって報告されている。化合物PHA−665752、インドール誘導体は、HGF受容体c−Metを対象とする。それには、HGFおよびMetが、種々の形の癌、例えば、多発性骨髄腫などの悪性経過に大きく貢献しているとさらに報告されている。
【0007】
したがって、チロシンキナーゼおよび/またはセリン/トレオニンキナーゼ、特に、Metキナーゼによるシグナル伝達を特異的に阻害、制御および/または調節する小化合物の合成が望ましく、本発明の目的でもある。
【0008】
本発明の化合物およびその塩は、耐容性良好でありながら極めて価値のある薬理学的特性を有することがわかった。
【0009】
本発明は、具体的には、Metキナーゼによるシグナル伝達を阻害、制御および/または調節する式Iの化合物、これらの化合物を含む組成物および哺乳類におけるMetキナーゼ誘発性疾患および愁訴、例えば、脈管形成、癌、腫瘍形成、成長および増殖、動脈硬化症、眼疾患、例えば、加齢性黄斑変性症、脈絡膜血管新生および糖尿病性網膜症、炎症性疾患、関節炎、血栓症、繊維症、糸球体腎炎、神経変性、乾癬、再狭窄、創傷治癒、移植拒絶反応、代謝疾患および免疫系の疾患、また自己免疫疾患、硬変、糖尿病および血管の疾患、また不安定性および透過性などの治療のためのその使用方法に関する。
【0010】
固形腫瘍、特に、急激に成長する腫瘍は、Metキナーゼ阻害剤で治療できる。これらの固形腫瘍としては、単球性白血病、脳、泌尿生殖器、リンパ系、胃、咽頭および肺の癌腫、例えば、肺腺癌および小細胞肺癌が挙げられる。
【0011】
本発明は、未制御の、または混乱したMetキナーゼ活性と関連している疾患の予防および/または治療のために、Metキナーゼを制御、調節または阻害する方法を対象とする。特に、式Iの化合物はまた、特定の形の癌の治療において使用できる。さらに、式Iの化合物を用いて、特定の既存の癌化学療法において相加的作用または相乗作用を提供でき、かつ/または式Iの化合物を用いて特定の既存の癌化学療法および放射線療法の有効性を回復させることができる。
【0012】
式Iの化合物はさらに、Metキナーゼの活性または発現の単離および検討のために使用できる。さらに、それらは、未制御の、または混乱したMetキナーゼ活性と関連している疾患の診断法における使用に特に適している。
【0013】
本発明の化合物は、異種移植腫瘍モデルにおいてin vivoで抗増殖性作用を有することが示される場合がある。本発明の化合物は、例えば、腫瘍の成長を阻害するために、リンパ増殖性疾患と関連している炎症を減少させるために、移植拒絶反応または組織修復による神経障害を阻害するなどのために、過剰増殖性疾患を有する患者に投与される。本化合物は、予防目的または治療目的に適している。本明細書において、用語「治療」とは、疾患の予防および以前から存在している状態の治療の両方を指すよう用いられる。例えば、腫瘍の成長を防ぐため、転移成長を防ぐため、心臓血管手術に伴う再狭窄を減少させるなどために、明白な疾患の発生の前に本発明の化合物を投与することによって増殖の予防を達成する。あるいは、本化合物は、患者の臨床症状を安定化させるか改善させることによる進行中の疾患の治療のために用いる。
【0014】
宿主または患者は、任意の哺乳類種、例えば、霊長類種、特に、ヒト、マウス、ラットおよびハムスターをはじめとするげっ歯類、ウサギ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコなどに属するものが可能である。動物モデルは、実験的研究にとって注目されるものであり、ヒト疾患の治療のためのモデルを提供する。
【0015】
本発明の化合物を用いる治療に対する個々の細胞の感受性は、in vitro試験によって調べることができる。通常、細胞の培養物を、種々の濃度の本発明の化合物と、活性物質が細胞死を誘導するのを、遊走を阻害するのを可能にするのに十分である時間の間、通常、約1時間〜1週間の間、混合する。in vitro試験は、生検サンプルに由来する培養細胞を用いて実施できる。次いで、処理後に残存している生存細胞を計数する。
【0016】
用量は、用いる具体的な化合物、具体的な疾患、患者の状態などに応じて変わる。通常、治療量は、患者の生存能力は維持されながら、標的組織中の望ましくない細胞集団を減少させるのには相当に十分である量である。治療は、通常、相当な減少、例えば、細胞負荷の少なくとも約50%の減少が生じるまで継続され、また、望ましくない細胞が、身体において本質的にもはや検出されなくなるまで継続される場合もある。
【0017】
シグナル伝達経路の同定のため、および種々のシグナル伝達経路間の相互作用の検出のために、種々の科学者が、適したモデルまたはモデル系、例えば、細胞培養モデル(例えば、Khwajaら、EMBO、1997年、16、2783〜93頁)およびトランスジェニック動物のモデル(例えば、Whiteら、Oncogene、2001年、20、7064〜7072頁)を開発してきた。シグナル伝達カスケード中の特定の段階を調べるために、相互作用する化合物を利用してシグナルを調節することができる(例えば、Stephensら、Biochemical J.、2000年、351、95〜105頁)。本発明の化合物はまた、動物および/または細胞培養モデルにおいて、または本願に記載される臨床疾患においてキナーゼ依存性シグナル伝達経路を試験するための試薬としても使用できる。
【0018】
キナーゼ活性の測定は、当業者に周知の技術である。基質、例えば、ヒストン(例えば、Alessiら、FEBS Lett.1996年、399、3、333〜338頁)または塩基性ミエリンタンパク質を用いてキナーゼ活性を調べるための一般的な試験系は文献に記載されている(例えば、Campos−Gonzalez、R.およびGlenney、Jr.、J.R.1992年、J.Biol.Chem.267、14535頁)。
【0019】
キナーゼ阻害剤の同定のためには、種々のアッセイ系が利用可能である。シンチレーション近接アッセイ(Sorgら、J.of.Biomolecular Screening、2002年、7、11〜19頁)およびフラッシュプレートアッセイでは、基質としてγATPを用いタンパク質またはペプチドの放射性リン酸化を測定する。阻害化合物の存在下で、放射性シグナルの減少あるいはまったくないことが検出可能である。さらに、ホモジニアス時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術が、アッセイ法として適している(Sillsら、J.of Biomolecular Screening、2002年、191〜214頁)。
【0020】
その他の非放射性ELISAアッセイ法は、特異的ホスホ−抗体(ホスホ−AB)を用いる。ホスホ−ABは、リン酸化された基質とのみ結合する。この結合は、二次ペルオキシダーゼ結合抗ヒツジ抗体を用いる化学発光によって検出できる(Rossら、2002年、Biochem.J.)。
【0021】
細胞増殖および細胞死(アポトーシス)の脱制御と関連している多数の疾患がある。注目する状態として、それだけには限らないが、以下が挙げられる。本発明の化合物は、平滑筋細胞および/または炎症細胞の増殖および/または血管の内膜層中への遊走があり、例えば、新生内膜閉塞性病変の症例では、その血管を通る血流の制限をもたらす種々の状態の治療に適している。注目する閉塞性移植血管疾患としては、アテローム性動脈硬化症、移植後の冠動脈血管疾患、静脈移植血管狭窄、吻合部周辺人工装具性再狭窄、血管形成術またはステント留置後の再狭窄などが挙げられる。
【0022】
(先行技術)
癌と闘うためのその他の4,5−ジヒドロピラゾールは、WO03/079973A2に記載されている。
【0023】
キノリン誘導体は、Metキナーゼ阻害剤としてEP1411046Alに開示されている。
【0024】
ピロール−インドリン誘導体は、WO02/096361A2からMetキナーゼ阻害剤として知られている。
【0025】
化合物1−ベンジルカルボニル−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−lH−ピラゾール(CA番号312607−55−9)および1−ベンジルカルボニル−3−(4−クロロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(CA番号350707−73−2)は公知である(さらなる文献引例なし)。
【0026】
(発明の概要)
本発明は、式Iの化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物に関する
【0027】
【化1】

【0028】
[式中、
1は、ArまたはHetを表し、
2は、−[C(R42n−Arまたは−[C(R42n−Hetを表し、
3、R3a、R3b、R3c、R3dは、各々、互いに独立に、HまたはAを表し、
4は、H、AまたはOR3を表し、
Aは、1〜7個のH原子がF、Clおよび/またはBrによって置換されていてもよく、
かつ/または1個または2個のCH2基が、O、S、SO、SO2および/またはCH=CH基によって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐もしくは分岐アルキル、
または
3〜7個のC原子を有する環状アルキルを表し、
Arは、フェニル、ナフチルまたはビフェニルを表し、その各々は、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R3)2、SR3、NO2、CN、COOR3、CON(R3)2、NR3COA、NR3SO2A、SO2N(R3)2、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O[C(R3)2]pN(R3)、O[C(R3)2]pHet1、NHCONH[C(R3)2]pN(R3)、NHCOO[C(R3)2]pN(R3)、NHCOO[C(R3)2]pHet1、CHOおよび/またはCOAによって一置換、二置換もしくは三置換されており、
Hetは、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R32、SR3、NO2、CN、COOR3、CON(R3)2、O[C(R3)2]pN(R3)、O[C(R3)2]pHet1、NHCONH[C(R3)2]pN(R3)、NHCOO[C(R3)2]pN(R3)、NR3COA、NR3SO2A、COR3、SO2N(R3)2、S(O)mA、CHO、COA、=S、=NH、=NAおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、
Het1は、A、OA、OH、Halおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
mは、0、1または2を表し、
nは、1または2を表し、
pは、1、2、3または4を表す]
(ただし、化合物
1−ベンジルカルボニル−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾールおよび
1−ベンジルカルボニル−3−(4−クロロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾールは除外する)。
【0029】
本発明はまた、これらの化合物の光学的に活性な形(立体異性体)、鏡像異性体、ラセミ化合物、ジアステレオマーおよび水和物および溶媒和物に関する。用語化合物の溶媒和物とは、それら相互の引力によって形成する化合物への不活性溶媒分子の内転(adduction)を意味するものとする。溶媒和物としては、例えば、一水和物または二水和物またはアルコキシドである。
【0030】
用語、製薬上使用可能な誘導体とは、例えば、本発明の化合物の塩およびまた、いわゆるプロドラッグ化合物を意味するものとする。
【0031】
用語、プロドラッグ誘導体とは、例えば、アルキルまたはアシル基、糖またはオリゴペプチドによって修飾されており、生物体中で迅速に切断されて本発明の有効な化合物を形成する式Iの化合物を意味するものとする。
【0032】
これらとしてはまた、例えば、Int.J.Pharm.115、61〜67頁(1995年)に記載される、本発明の化合物の生分解性ポリマー誘導体が挙げられる。
【0033】
表現「有効量」とは、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば、研究者または医師によって求められる、または望まれる生物学的反応または医学的反応を引き起こす医薬または薬剤有効成分の量を表す。
【0034】
さらに、表現「治療上有効な量」とは、この量を投与されていない対応する対象と比較して、以下の結果を有する量を表す:
治療の改善、治癒、疾患、症状、状態、愁訴、障害もしくは副作用の予防または排除、または同様に、疾患、愁訴もしくは障害の進行の低減。
【0035】
表現「治療上有効な量」はまた、正常な生理学的機能を高めるのに有効である量を包含する。
【0036】
本発明はまた、式Iの化合物の混合物、例えば、1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:10、1:100または1:1000の比の、例えば、2種のジアステレオマーの混合物の使用に関する。
【0037】
これらは、立体異性化合物の特に好ましい混合物である。
【0038】
本発明は、式Iの化合物およびその塩ならびに
a)次式IIの化合物
1−CO−CH2CH2−L II
[式中、R1は請求項1に示される意味を有し、Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に官能基で修飾されたOH基を表す]を、
ヒドラジンおよび次式IIIの化合物
2−COOH III
[式中、R2は請求項1に示される意味を有する]と反応させるか、
あるいは
b)R3a、R3b、R3cおよびR3dがHを表す式Iの化合物の調製のために、
i)式IIの化合物を次式IVの化合物
2N−NH−CO−R2 IV
[式中、R2は請求項1に示される意味を有する]と反応させるか、
または
ii)次式Vの化合物
【0039】
【化2】

【0040】
[式中、R1およびR2は請求項1に示される意味を有する]を
ヒドラジンまたはメチルヒドラジンと反応させるか、
または
iii)次式VIの化合物
1−CO−CH=CH2 VI
[式中、R1は請求項1に示される意味を有する]を
ヒドラジンおよび次式VIIの化合物
L−CO−R2 VII
[式中、R2は請求項1に示される意味を有し、
LはCl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に官能基で修飾されたOH基を表す]と反応させるか、
あるいは
c)R3a、R3bが、Hを表し、
3cが、HまたはAを表し、
3dが、HまたはAを表す
ただし、基R3cまたはR3dのうち少なくとも一方はAを表す、式Iの化合物の調製のために、
次式VIIIの化合物
【0041】
【化3】

【0042】
[式中、
1およびAは、請求項1に示される意味を有し、
3a、R3bは、Hを表し、
3cは、HまたはAを表し、
3dは、HまたはAを表し、
ただし、基R3cまたはR3dのうち少なくとも一方はAを表す]を、
ヒドラジンおよび式IIIの化合物と反応させるか、
あるいは、
d)R3c、R3dが、Hを表し、
3aが、HまたはAを表し、
3bが、HまたはAを表し、
ただし、基R3aまたはR3bの少なくとも一方はAを表す、式Iの化合物の調製のために、
次式IXの化合物
【0043】
【化4】

【0044】
[式中、
1およびAは、請求項1に示される意味を有し、
3c、R3dは、Hを表し、
3aは、HまたはAを表し、
3bは、HまたはAを表し、
ただし、基R3aまたはR3bの少なくとも一方はAを表し、
Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に官能基で修飾されたOH基を表す]を、
ヒドラジンおよび式IIIの化合物と反応させ、
ならびに/あるいは
式Iの塩基もしくは酸をその塩の1種に変換することを特徴とする、請求項1から11に記載の式Iの化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、塩、溶媒和物および立体異性体の調製方法に関する。
【0045】
上記および下記で、基R1、R2、R3a、R3b、R3c、R3dは、特に断りのない限り、式Iについて示される意味を有する。
【0046】
Aはアルキルを表し、非分岐(直鎖)であるか、分岐しており、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個のC原子を有する。Aは、メチル、さらに、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチルまたはt−ブチル、さらにまた、ペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピル、ヘキシル、1−、2−、3−もしくは4−メチルペンチル、1,1−、1,2−、1,3−、2,2−、2,3−もしくは3,3−ジメチルブチル、1−もしくは2−エチルブチル、1−エチル−1−メチルプロピル、1−エチル−2−メチルプロピル、1,1,2−もしくは1,2,2−トリメチルプロピルを表すことが好ましく、例えば、トリフルオロメチルがより好ましい。
【0047】
Aは、1、2、3、4、5または6個のC原子を有するアルキルを表すことが極めて特に好ましく、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシル、トリフルオロメチル、ペンタフルオロエチルまたは1,1,1−トリフルオロエチルが好ましい。
【0048】
シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを表すことが好ましい。
【0049】
Arは、例えば、フェニル、o−、m−もしくはp−トリル、o−、m−もしくはp−エチルフェニル、o−、m−もしくはp−プロピルフェニル、o−、m−もしくはp−イソプロピルフェニル、o−、m−もしくはp−t−ブチルフェニル、o−、m−もしくはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−もしくはp−ニトロフェニル、o−、m−もしくはp−アミノフェニル、o−、m−もしくはp−(N−メチルアミノ)フェニル、o−、m−もしくはp−(N−メチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−もしくはp−アセトアミドフェニル、o−、m−もしくはp−メトキシフェニル、o−、m−もしくはp−エトキシフェニル、o−、m−もしくはp−エトキシカルボニルフェニル、o−、m−もしくはp−(N,N−ジメチルアミノ)フェニル、o−、m−もしくはp−(N,N−ジメチルアミノカルボニル)フェニル、o−、m−もしくはp−(N−エチルアミノ)フェニル、o−、m−もしくはp−(N,N−ジエチルアミノ)フェニル、o−、m−もしくはp−フルオロフェニル、o−、m−もしくはp−ブロモフェニル、o−、m−もしくはp−クロロフェニル、o−、m−もしくはp−(メチルスルホンアミド)フェニル、o−、m−もしくはp−(メチルスルホニル)フェニル、o−、m−もしくはp−メチルスルファニルフェニル、o−、m−もしくはp−シアノフェニル、o−、m−もしくはp−カルボキシフェニル、o−、m−もしくはp−メトキシカルボニルフェニル、o−、m−もしくはp−ホルミルフェニル、o−、m−もしくはp−アセチルフェニル、o−、m−もしくはp−アミノスルホニルフェニル、o−、m−もしくはp−(モルホリン−4−イルカルボニル)フェニル、o−、m−もしくはp−(モルホリン−4−イルカルボニル)フェニル、o−、m−もしくはp−(3−オキソモルホリン−4−イル)フェニル、o−、m−もしくはp−(ピペリジニルカルボニル)フェニル、o−、m−もしくはp−[2−(モルホリン−4−イル)エトキシ]フェニル、o−、m−もしくはp−[3−(N,N−ジエチルアミノ)プロポキシ]フェニル、o−、m−もしくはp−[3−(3−ジエチルアミノプロピル)ウレイド]フェニル、o−、m−もしくはp−(3−ジエチルアミノプロポキシカルボニルアミノ)フェニルを表し、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,4−もしくは2,5−ジニトロフェニル、2,5−もしくは3,4−ジメトキシフェニル、3−ニトロ−4−クロロフェニル、3−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−3−クロロ−、2−アミノ−4−クロロ−、2−アミノ−5−クロロ−もしくは2−アミノ−6−クロロフェニル、2−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノ−もしくは3−ニトロ−4−N,N−ジメチルアミノフェニル、2,3−ジアミノフェニル、2,3,4−、2,3,5−、2,3,6−、2,4,6−もしくは3,4,5−トリクロロフェニル、2,4,6−トリメトキシフェニル、2−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル、p−ヨードフェニル、3,6−ジクロロ−4−アミノフェニル、4−フルオロ−3−クロロフェニル、2−フルオロ−4−ブロモフェニル、2,5−ジフルオロ−4−ブロモフェニル、3−ブロモ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−6−メトキシフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニル、3−フルオロ−4−メトキシフェニル、3−アミノ−6−メチルフェニル、3−クロロ−4−アセトアミドフェニルまたは2,5−ジメチル−4−クロロフェニルを表すことがさらにより好ましい。
【0050】
さらなる実施形態では、Arは、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R3)2、CN、NO2、SR3、CON(R3)2、NR3COA、NR3SO2A、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2)pN(R3)、O(CH2)pHet1、NHCOO[C(R3)2]pHet1、NHCONH(CH2)pN(R3)および/またはNHCOO(CH2)pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表すことが好ましい。
【0051】
Hetは、さらなる置換にかかわらず、例えば、2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2、4−または5−イミダゾリル、1−、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニルを表し、1,2,3−トリアゾール−1−、−4−または−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−3−または5−イル、1−または5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−または−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−または−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−または−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−または−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−または−5−イル、3−または4−ピリダジニル、ピラジニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−または7−インドリル、4−または5−イソインドリル、インダゾリル、1−、2−、4−または5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−または7−ベンゾイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾイソチアゾリル、4−、5−、6−または7−ベンザ−2,1,3−オキサジアゾリル、2−、3−、4−、5−、6−、7−または8−キノリル、1−、3−、4−、5−、6−、7−または8−イソキノリル、3−、4−、5−、6−、7−または8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−または8−キナゾリニル、5−または6−キノキサリニル、2−、3−、5−、6−、7−または8−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニルを表すことがさらにより好ましく、1,3−ベンゾジオキソール−5−イル、1,4−ベンゾジオキサン−6−イル、2,1,3−ベンゾチアジアゾール−4−、−5−イルまたは2,1,3−ベンゾキサジアゾール−5−イルまたはジベンゾフラニルを表すことがさらに好ましい。
【0052】
複素環式基はまた、部分的にまたは完全に水素化されていてもよい。
【0053】
したがって、Hetはまた、さらなる置換にもかかわらず、例えば、2,3−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または−5−フリル、2,5−ジヒドロ−2−、−3−、−4−または5−フリル、テトラヒドロ−2−または−3−フリル、1,3−ジオキソラン−4−イル、テトラヒドロ−2−または−3−チエニル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、2,5−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピロリル、1−、2−または3−ピロリジニル、テトラヒドロ−1−、−2−または−4−イミダゾリル、2,3−ジヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−または−5−ピラゾリル、テトラヒドロ−1−、−3−または−4−ピラゾリル、1,4−ジヒドロ−1−、−2−、−3−または−4−ピリジル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−または−6−ピリジル、1−、2−、3−または4−ピペリジニル、2−、3−または4−モルホリニル、テトラヒドロ−2−、−3−または−4−ピラニル、1,4−ジオキサニル、1,3−ジオキサン−2−、−4−または−5−イル、ヘキサヒドロ−1−、−3−または−4−ピリダジニル、ヘキサヒドロ−1−、−2−、−4−または−5−ピリミジニル、1−、2−または3−ピペラジニル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、−2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−キノリル、1,2,3,4−テトラヒドロ−1−、2−、−3−、−4−、−5−、−6−、−7−または−8−イソキノリル、2−、3−、5−、6−、7−または8−3,4−ジヒドロ−2H−ベンゾ−1,4−オキサジニルを表し、2,3−メチレンジオキシフェニル、3,4−メチレンジオキシフェニル、2,3−エチレンジオキシフェニル、3,4−エチレンジオキシフェニル、3,4−(ジフルオロメチレンジオキシ)フェニル、2,3−ジヒドロベンゾフラン−5−または6−イル、2,3−(2−オキソメチレンジオキシ)フェニルまたは同様に3,4−ジヒドロ−2H−1,5−ベンゾジオキセピン−6−または−7−イルを表すことがさらに好ましく、2,3−ジヒドロベンゾフラニル、2,3−ジヒドロ−2−オキソフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリル、1,3−ジヒドロインドール、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドールまたは2−オキソ−2、3−ジヒドロベンゾイミダゾリルを表すことがさらに好ましい。
【0054】
さらなる実施形態では、Hetは、非置換であるか、またはHal、A、NH2および/または=O(カルボニル酸素)によって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する、単環式、二環式または三環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表すことが好ましい。
【0055】
Het1は、=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表すことが好ましい。Het1は、=Oによって同様に一置換もしくは二置換されていてもよい、ピペリジン−1−イル、ピロリジン−1−イル、モルホリン−4−イル、ピペラジン−1−イル、1,3−オキサゾリジン−3−イルまたはイミダゾリジニルを表すことが特に好ましい。
【0056】
Het2は、基がHalによって一置換または二置換されていてもよい、ベンゾ−1,2,5−チアジアゾリル、インドリル、ピリジル、ピリミジニル、チエニル、フリルまたはベンゾジオキソリルを表すことが好ましい。
【0057】
1は、非置換であるか、またはHal、OA、OH、CN、NO2、NH2、NHA、NA2、SAおよび/またはNHSO2Aによって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニル、
あるいは、
非置換であるか、または一Hal置換チエニルもしくはフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、ジベンゾフラニル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリル、インドリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドリルまたは3−アミノ−1H−インダゾリルを表すことが好ましい。
【0058】
2は、−[C(R4)2]n−Ar'または−[C(R4)2]n−Het2を表すことが好ましく、ここで、
Ar’は、非置換であるか、またはHal、OH、OA、CN、NHCOA、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2)pN(R3)、O(CH2)pHet1、NHCOO[C(R3)2]pHet1、NHCONH(CH2)pN(R3)および/またはNHCOO(CH2)pN(R3)によって一置換、二置換または三置換されているフェニルを表し、
Het1は、Aおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Het2は、非置換であるか、またはHalおよび/または=Oによって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する、単環式、二環式または三環式芳香族または不飽和複素環を表す。
【0059】
Halは、F、ClまたはBr、同様にIも表すことが好ましいが、FまたはClが特に好ましい。
【0060】
本発明を通じて、1回を超えて現れるすべての基は、同一である場合も異なっている場合もある。すなわち、互いに独立している。
【0061】
式Iの化合物は、1個または複数のキラル中心を有する場合があり、したがって、種々の立体異性体の形が生じ得る。式Iは、これらの形のすべてを包含する。
【0062】
したがって、本発明は、特に、前記の基の少なくとも1個が、上記に示される好ましい意味のうちの1つを有する、式Iの化合物に関する。いくつかの好ましい化合物群ならびにその製薬上使用可能な誘導体、塩、溶媒和物、および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物は、式Iに準拠する以下の下位式Ia〜Iiによって表現することができ、これでは、より詳細に指定されない基は、式Iについて示される意味を有するが、
Iaでは、Aは、1〜7個のH原子が、Fおよび/またはClによって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐または分岐アルキルを表し、
Ibでは、Arは、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R3)2、CN、NO2、SR3、CON(R3)2、NR3COA、NR3SO2A、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2)pN(R3)、O(CH2)pHet1、NHCOO[C(R3)2]pHet1、NHCONH(CH2)pN(R3)および/またはNHCOO(CH2)pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Icでは、Hetは、非置換であってもよいし、またはHal、A、NH2および/または=O(カルボニル酸素)によって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、
Idでは、R1は、非置換であるか、またはHal、OA、OH、CN、NO2、NH2、NHA、NA2、SAおよび/またはNHSO2Aによって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニル、
あるいは、
非置換であるか、または一Hal置換チエニルもしくはフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、ジベンゾフラニル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリル、インドリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドリルまたは3−アミノ−1H−インダゾリルを表し、
Ieでは、R2は、−[C(R4)2]n−Ar'または−[C(R4)2]n−Het2を表し、
Ar’は、非置換であるか、またはHal、OH、OA、CN、NHCOA、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2)pN(R3)、O(CH2)pHet1、NHCOO[C(R3)2]pHet1、NHCONH(CH2)pN(R3)および/またはNHCOO(CH2)pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Het1は、Aおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Het2は、非置換であるか、またはHalおよび/または=Oによって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式芳香族または不飽和複素環を表し、
Ifでは、R2は、−[C(R4)2]nAr'または
ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチル、チエニルメチル、ベンゾイミダゾリルメチル、ベンゾ−1,3−ジオキソリルメチル、キノキサリニルメチル、ピリジルメチル、カルバゾリルメチル、ベンゾトリアゾリルメチル、[2−(チオフェン−2−イル)ベンズイミダゾリル]メチル、[2−(5−クロロチオフェン−2−イル)ベンズイミダゾリル]メチル、4,5−ジヒドロピリダジニルメチル、3−オキソ−4,5−ジヒドロピリダジニルメチル、2−アミノベンゾイミダゾリルメチル、ベンゾチアゾリルメチル、2−アミノベンゾチアゾリルメチルまたは1,3−ジヒドロ−2−オキソベンゾイミダゾリルメチルを表し、
Ar’は、非置換であるか、またはHal、OH、OA、CN、NHCOA、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2)pN(R3)、O(CH2)pHet1、NHCOO[C(R3)2]pHet1、NHCONH(CH2)pN(R3)および/またはNHCOO(CH2)pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Het1は、Aおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Igでは、Aは、1〜5個のH原子が、Fおよび/または塩素によって置換されていてもよい、1〜6個のC原子を有する非分岐または分岐アルキルを表し、
Ihでは、R1は、ArまたはHetを表し、
2は、−[C(R4)2]n−Arまたは−[C(R4)2]n−Hetを表し、
3、R3a、R3b
3c、R3dは、各々、互いに独立に、HまたはAを表し、
4は、H、AまたはOR3を表し、
Aは、1〜7個のH原子がFおよび/またはClによって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する、非分岐または分岐アルキルを表し、
Arは、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R3)2、CN、NO2、SR3、S(O)mA、CON(R3)2、NR3COA、NR3SO2A、CO−Het1、Het1、O(CH2)pN(R3)、O(CH2)pHet1、NHCOO[C(R3)2]pHet1、NHCONH(CH2)pN(R3)および/またはNHCOO(CH2)pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Hetは、非置換であってもよいし、またはHal、A、NH2および/または=O(カルボニル酸素)によって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、
Het1は、A、OA、OH、Halおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
nは、1または2を表し、
pは、1、2、3または4を表し、
Iiでは、R1は、非置換であるか、またはHal、OA、OH、CN、NO2、NH2、NHA、NA2、SAおよび/またはNHSO2Aによって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニル、
あるいは、
非置換であるか、または一Hal置換チエニルもしくはフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、ジベンゾフラニル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリル、インドリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドリルまたは3−アミノ−1H−インダゾリルを表し、
2は、−[C(R4)2]n−Ar'または−[C(R4)2]n−Het2を表し、
Ar'は、非置換であるか、またはHal、OH、OA、CN、NHCOA、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2)pN(R3)、O(CH2)pHet1、NHCOO[C(R3)2]pHet1、NHCONH(CH2)pN(R3)および/またはNHCOO(CH2)pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Het1は、Aおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Het2は、非置換であってもよいし、またはHalおよび/または=Oによって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式芳香族または不飽和複素環を表し、
3、R3a、R3b
3c、R3dは、各々、互いに独立に、HまたはAを表し、
4は、H、AまたはOR3を表し、
Aは、1〜5個のH原子がFおよび/または塩素によって置換されていてもよい、1〜6個のC原子を有する非分岐または分岐アルキルを表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
nは、1または2を表し、
pは、1、2、3または4を表す。
【0063】
式Iの化合物および同様にその調製のための出発材料は、さらに、文献(例えば、Houben−Weyl、Methoden der organischen Chemie[有機化学の手法]、Georg−Thieme−Verlag、Stuttgartなどの標準的な著作物に)に記載される、それ自体公知の方法によって、公知であり、かつ、前記反応に適した反応条件下で的確であるよう調製する。ここで、本明細書においては、より詳細に記載されない、それ自体公知の変法も使用できる。
【0064】
通常、式II、III、IV、V、VI、VII、VIIIおよびIXの出発化合物は、公知である。しかし、新規である場合は、それ自体公知の方法によってそれらを調製できる。
【0065】
式Iの化合物は、まず、式IIの化合物を、ヒドラジン、好ましくは、ヒドラジン水和物と反応させることによって得ることができることが好ましい。式IIの化合物において、Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に修飾されたOH基、例えば、活性化されたエステル、イミダゾリドまたは1〜6個のC原子を有するアルキルスルホニルオキシ(好ましくは、メチルスルホニルオキシまたはトリフルオロメチルスルホニルオキシ)または6〜10個のC原子を有するアリールスルホニルオキシ(好ましくは、フェニル−またはp−トリルスルホニルオキシ)などを表すことが好ましい。
【0066】
次いで、反応溶液に式IIIのカルボン酸を加える。反応は、脱水剤、例えば、カルボジイミド、例えば、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCCI」)、1,1'−カルボニルジイミダゾールまたはN−3−ジメチルアミノプロピル−N'−エチルカルボジイミド(「DAPECI」)、さらに、プロパンホスホン酸無水物(Angew.Chem.92、129(1980年)参照)、ジフェニルホスホリルアジドまたは2−エトキシ−N−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンなどの存在下で成し遂げることが好ましい。
【0067】
通常、反応は不活性溶媒中で実施する。
【0068】
反応時間は、用いる条件に応じて数分から14日の間であり、反応温度は約−15°〜150°の間、通常−5°〜90°、特に好ましくは20°〜60℃である。
【0069】
適した不活性溶媒の例としては、炭化水素、例えばヘキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエンまたはキシレン;塩素化炭化水素、例えばトリクロロエチレン、1,2−ジクロロエタン、四塩化炭素、クロロホルムまたはジクロロメタン;アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノールまたはt−ブタノール;エーテル、例えばジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン;グリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノメチルまたはモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム);ケトン、例えばアセトンまたはブタノン;アミド、例えばアセトアミド、ジメチルアセトアミドまたはジメチルホルムアミド(DMF);ニトリル、例えばアセトニトリル;スルホキシド、例えばジメチルスルホキシド(DMSO);二硫化炭素;カルボン酸、例えばギ酸または酢酸;ニトロ化合物、例えばニトロメタンまたはニトロベンゼン;エステル、例えばエチルアセテート、あるいは前記溶媒の混合物がある。
【0070】
ジクロロメタンおよび/またはDMFが特に好ましい。
【0071】
3a、R3b、R3cおよびR3dがHを表す式Iの化合物は、式IIの化合物を、式IVの化合物と反応させることによって得ることができることがさらに好ましい。
【0072】
反応は、通常、上記に示される不活性溶媒中で実施する。アセトニトリル、ジクロロメタンおよび/またはDMFが特に好ましい。
【0073】
反応は、通常、酸結合剤、好ましくは、有機塩基、例えばDIPEA、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンまたはキノリンの存在下で実施する。
【0074】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩の添加またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、好ましくは、カリウム、ナトリウム、カルシウムまたはセシウムの弱酸の別の塩の添加もまた、好都合であり得る。
【0075】
反応時間は、用いる条件に応じて、数分から14日の間であり、反応温度は約−30°〜140°の間、通常−10°〜90°、特に約0°〜約70°の間である。
【0076】
3a、R3b、R3cおよびR3dがHを表す式Iの化合物は、式Vの化合物を、ヒドラジンまたはメチルヒドラジンと反応させることによって得ることができることがさらに好ましい。
【0077】
反応は、通常、上記に示される不活性溶媒中で実施する。THFが特に好ましい。
【0078】
反応時間は、用いる条件に応じて、数分から14日の間であり、反応温度は約−30°〜140°の間、通常−10°〜90°、特に約0°〜約70°の間である。
【0079】
式Vの化合物は、式IIIの化合物の、N−アミノフタルイミドとの反応と、それに続く中間体化合物の式IIの化合物との反応によって得られる。
【0080】
3a、R3b、R3cおよびR3dがHを表す式Iの化合物は、式VIの化合物を、ヒドラジンおよび式VIIの化合物と反応させることによって得ることができることがさらに好ましい。
【0081】
式VIIの化合物では、Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に修飾されたOH基、例えば、活性化されたエステル、イミダゾリドまたは1〜6個のC原子を有するアルキルスルホニルオキシ(好ましくは、メチルスルホニルオキシまたはトリフルオロメチルスルホニルオキシ)または6〜10個のC原子を有するアリールスルホニルオキシ(好ましくは、フェニル−またはp−トリスルホニルオキシ)などを表すことが好ましい。
【0082】
反応は、通常、上記に示される不活性溶媒中で実施する。アセトニトリル、ジクロロメタンおよび/またはDMFが特に好ましい。
【0083】
反応は、通常、酸結合剤、好ましくは有機塩基、例えばDIPEA、トリエチルアミン、ジメチルアニリン、ピリジンまたはキノリンの存在下で実施する。
【0084】
アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩の添加またはアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属、好ましくはカリウム、ナトリウム、カルシウムまたはセシウムの弱酸の別の塩の添加もまた、好都合であり得る。
【0085】
反応時間は、用いる条件に応じて、数分から14日の間であり、反応温度は約−30°〜140°の間、通常−10°〜90°、特に約0°〜約70°の間である。
【0086】
式Iの化合物
[式中、
3a、R3bが、Hを表し、
3cが、HまたはAを表し、
3dが、HまたはAを表し、
ただし、基R3cまたはR3dのうち少なくとも一方はAを表す]は、式VIIIの化合物
[式中、
1およびAは、請求項1に示される意味を有し、
3a、R3bは、Hを表し、
3cは、HまたはAを表し、
3dは、HまたはAを表し、
ただし、基R3cまたはR3dのうち少なくとも一方はAを表す]を、ヒドラジンおよび式IIIの化合物と反応させることによって得ることができることがさらに好ましい。
【0087】
反応は、式VIIIの化合物の、ヒドラジン、好ましくは、ヒドラジン水和物との反応と、それに続く式IIIの化合物の添加によって成し遂げることが好ましい。
【0088】
反応は、脱水剤、例えば、カルボジイミド、例えば、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCCI」)、1,1'−カルボニルジイミダゾールまたはN−3−ジメチルアミノプロピル−N'−エチルカルボジイミド(「DAPECI」)、さらに、プロパンホスホン酸無水物(Angew.Chem.92、129(1980年)参照)、ジフェニルホスホリルアジドまたは2−エトキシ−N−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンなどの存在下で成し遂げることが好ましい。
【0089】
通常、反応は、上記に示される不活性溶媒中で実施する。
【0090】
反応はDMF中で実施することが好ましい。
【0091】
反応時間は、用いる条件に応じて、数分から14日の間であり、反応温度は約−15°〜150°の間、通常−5°〜90°、特に好ましくは20°〜60℃である。
【0092】
式Iの化合物
[式中、
3c、R3dが、Hを表し、
3aが、HまたはAを表し、
3bが、HまたはAを表し、
(ただし、基R3aまたはR3bのうち少なくとも一方はAを表す)]は、式IXの化合物
[式中、
1およびAは、請求項1に示される意味を有し、
3c、R3dは、Hを表し、
3aは、HまたはAを表し、
3bは、HまたはAを表し、
(ただし、基R3aまたはR3bのうち少なくとも一方はAを表す)]を、ヒドラジンおよび式IIIの化合物と反応させることによって得ることができることがさらに好ましい。
【0093】
反応は、式IXの化合物の、ヒドラジン、好ましくはヒドラジン水和物との反応と、それに続く式IIIの化合物の添加によって実施することが好ましい。
【0094】
反応は、脱水剤、例えばカルボジイミド、例えばN,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド(「DCCI」)、1,1'−カルボニルジイミダゾールまたはN−3−ジメチルアミノプロピル−N'−エチルカルボジイミド(「DAPECI」)、さらに、プロパンホスホン酸無水物(Angew.Chem.92、129(1980年)参照)、ジフェニルホスホリルアジドまたは2−エトキシ−N−エトキシカルボニル−1,2−ジヒドロキノリンなどの存在下で成し遂げることが好ましい。
【0095】
通常、反応は、上記に示される不活性溶媒中で実施する。
【0096】
反応はDMF中で実施することが好ましい。
【0097】
反応時間は、用いる条件に応じて、数分から14日の間であり、反応温度は約−15°〜150°の間、通常−5°〜90°、特に好ましくは20°〜60℃の間である。
【0098】
薬剤の塩およびその他の形態
本発明による前記化合物は、それらの最終的な塩ではない形態で使用することができる。他方、本発明はまた、技術的に知られている方法によりさまざまな有機および無機の酸および塩基から誘導することができる医薬品として許容されるこれら化合物の塩の形態でのそれらの使用に関する。式Iの化合物の医薬品として許容される塩の形態は、大部分を従来の方法により調製する。式Iの化合物が、カルボキシル基を含有する場合、その適当な塩の1つは、その化合物を適当な塩基と反応させて対応する塩基付加塩を生じさせることにより形成することができる。上記塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化リチウムを含むアルカリ金属水酸化物;水酸化バリウムおよび水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物;アルカリ金属アルコキシド、例えば、カリウムエトキシドおよびナトリウムプロポキシド;およびさまざまな有機塩基、例えばピペリジン、ジエタノールアミン、N−メチルグルタミンなどがある。式Iの化合物のアルミニウム塩も同様に含まれる。式Iのいくつかの化合物の場合、酸付加塩は、これらの化合物を、医薬品として許容される有機酸および無機酸、例えば、塩化水素、臭化水素またはヨウ化水素等のハロゲン化水素、その他の無機酸および硫酸塩、硝酸塩またはリン酸塩および同種のものなど対応するそれらの塩、およびエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等のアルキルおよびモノアリールスルホン酸、ならびにその他の有機酸、および、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酒石酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、サリチル酸塩、アスコルビン酸塩、および同種のもの等対応するそれらの塩で処理することにより形成することができる。したがって、医薬品として許容される式Iの化合物の酸付加塩としては、以下のもの:酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アルギニン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、重亜硫酸塩、臭化物、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、カプリル酸塩、塩化物、クロロ安息香酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、二水素リン酸塩、ジニトロ安息香酸塩、硫酸ドデシル、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、ガラクタル酸塩(粘液酸から)、ガラクツロン酸塩、グルコヘプタン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミコハク酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、イソ酪酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メタリン酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル安息香酸塩、一水素リン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルモエ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、フェニル酢酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、フタル酸塩が挙げられるが、これは限定を意味しない。
【0099】
さらに、本発明による化合物の塩基塩としては、アルミニウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、銅塩、鉄(III)塩、鉄(II)塩、リチウム塩、マグネシウム塩、マンガン(III)塩、マンガン(II)塩、カリウム塩、ナトリウム塩および亜鉛塩が挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。上記の塩のうち、優先されるのは、アンモニウム塩、アルカリ金属塩のナトリウム塩およびカリウム塩、ならびにアルカリ土類金属塩のカルシウム塩およびマグネシウム塩である。医薬品として許容される毒性のない有機塩基から誘導される式Iの化合物の塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、天然の置換アミンも含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂も含む、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、クロロプロカイン、コリン、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン(ベンザチン)、ジクロロヘキシルアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リドカイン、リシン、メグルミン、N−メチル−D−グルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、およびトリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン(トロメタミン)の塩が挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。
【0100】
塩基性窒素含有基を含有する本発明の化合物は、(C1〜C4)アルキルハロゲン化物、例えば、メチル、エチル、イソプロピルおよびt−ブチルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;ジ(C1〜C4)アルキル硫酸、例えばジメチル、ジエチルおよびジアミル硫酸;(C10〜C18)アルキルハロゲン化物、例えばデシル、ドデシル、ラウリル、ミリスチルおよびステアリルの塩化物、臭化物およびヨウ化物;ならびにアリール(C1〜C4)アルキルハロゲン化物、例えば塩化ベンジルおよび臭化フェネチル等の作用物質を用いて第四級化することができる。水溶性および油溶性の両方の本発明による化合物を上記の塩を用いて調製することができる。
【0101】
上記のうちの好ましい薬剤の塩としては、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、ベシル酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、グルコン酸塩、ヘミコハク酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、イセチオン酸塩、マンデル酸塩、メグルミン、硝酸塩、オレイン酸塩、ホスホン酸塩、ピバリン酸塩、リン酸ナトリウム、ステアリン酸塩、硫酸塩、スルホサリチル酸塩、酒石酸塩、チオリンゴ酸塩、トシル酸塩およびトロメタミンが挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。
【0102】
式Iの塩基性化合物の酸付加塩は、その遊離の塩基の形態を十分な量の所望の酸と接触させて、従来どおりに塩を形成させることにより調製する。遊離の塩基は、その塩の形態を塩基と接触させて従来どおりに遊離の塩基を単離することにより再生させることができる。その遊離の塩基の形態は、極性溶媒中の溶解性等の本発明のためのある一定の物理的性質に関して、対応するその塩の形態とは異なるが、一方で、その塩は、その他の点において、そのそれぞれの遊離の塩基の形態に対応する。
【0103】
言及したように、医薬品として許容される式Iの化合物の塩基付加塩は、アルカリ金属およびアルカリ土類金属または有機アミン等の金属類またはアミン類により形成される。好ましい金属は、ナトリウム、カリウム、マグネシウムおよびカルシウムである。好ましい有機アミンは、N,N'−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−D−グルカミンおよびプロカインである。
【0104】
本発明による酸性化合物の塩基付加塩は、その遊離の酸の形態を十分な量の所望の塩基と接触させて、従来どおりに塩を形成させることにより調製する。その遊離の酸は、その塩の形態を酸と接触させて従来どおりに遊離の酸を単離することにより再生させることができる。その遊離の酸の形態は、極性溶媒中の溶解性等の本発明のためのある一定の物理的性質に関して、対応するその塩の形態とは異なるが、一方で、その塩は、その他の点において、そのそれぞれの遊離の酸の形態に対応する。
【0105】
本発明による化合物が、このタイプの医薬品として許容される塩を形成することができる複数の基を含有する場合、本発明はまた、多塩も包含する。典型的な多塩の形態としては、例えば、酸性酒石酸塩、二酢酸塩、二フマル酸塩、ジメグルミン、二リン酸塩、二ナトリウムおよび三塩酸塩が挙げられるが、これは限定を意味するように意図されていない。
【0106】
上で述べたことに関しては、現在の関連における「医薬品として許容される塩」という表現は、特にこの塩の形態が、活性成分の遊離の形態または以前に使用された活性成分のいずれか別の塩の形態と比較してその活性成分に改良された薬物動態学的特性を与える場合に、式Iの化合物をその塩の1つの形態で含む活性成分を意味すると捉えるものと理解することができる。活性成分の医薬品として許容される塩の形態はまた、この活性成分にそれが以前は有していなかった望ましい薬物動態学的特性を初めて提供し、体内におけるその治療効果に対するこの活性成分の薬力学についての好ましい影響を有することさえできる。
【0107】
本発明は、さらに、少なくとも1つの式Iの化合物および/またはすべての比率のそれらの混合物を含めた医薬品として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体、ならびに場合により賦形剤および/または補助剤を含む薬剤に関する。
【0108】
医薬品製剤は、予め定められた1投薬単位当たりの有効成分の量を含む投薬単位の形で投与することができる。上記単位は、処置する状態、投与の方法ならびに患者の年齢、体重および状態により、例えば、本発明による化合物の0.5mgから1g、好ましくは1mgから700mg、特に好ましくは5mgから100mgを含むことができ、または医薬品製剤は、予め定められた1投薬単位当たりの有効成分の量を含む投薬単位の形で投与することができる。好ましい投薬単位の製剤は、有効成分の上で示した1日量または分割投与量、あるいは対応するそれらの画分を含むものである。さらに、この型の医薬品製剤は、医薬品技術において一般に知られている方法を使用して調製することができる。
【0109】
医薬品製剤は、任意の望ましい適切な方法、例えば、経口(頬側または舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(頬側、舌下または経皮を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉内、静脈内または皮内を含む)の方法による投与に適合させることができる。上記製剤は、例えば、有効成分を賦形剤(1つまたは複数)または補助剤(1つまたは複数)と組み合わせることにより、医薬品技術において知られているすべての方法を使用して調製することができる。
【0110】
経口投与に適合する医薬品製剤は、例えばカプセルまたは錠剤;粉末または顆粒;水性もしくは非水性液体中の溶液または懸濁液;食用気泡または気泡食品;あるいは水中油滴型乳濁液または油中水滴型乳濁液等の独立単位として投与することができる。
【0111】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形の経口投与の場合、有効成分要素は、例えばエタノール、グリセロール、水および同種のものなど、経口で、毒性がなく、医薬品に許容される不活性の賦形剤と組み合わせることができる。粉末は、化合物を適当な細かい粒度に粉砕し、それを同じように粉砕した医薬品用賦形剤、例えば食用になる炭水化物等、例えばデンプンまたはマンニトール等と混合することにより調製する。香料、防腐剤、分散剤および染料をさらに存在させることができる。
【0112】
カプセルは、粉末混合物を上記のように調製し、成型したゼラチンの殻にそれを充填することにより製造する。例えば高分散ケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固形のポリエチレングリコール等の流動促進剤および滑剤を充填作業の前に粉末混合物に添加することができる。例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウム等の錠剤分解物質または可溶化剤を、カプセルが摂取された後の薬剤の有効性を改良するためにさらに加えることができる。
【0113】
さらに、所望によりまたは必要に応じて、適当な結合剤、滑剤および錠剤分解物質ならびに染料をその混合物中にさらに組み込むことができる。適当な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖例えばグルコースまたはβ−ラクトース等、トウモロコシからつくった甘味料、天然および合成ゴム例えばアラビアゴム、トラガカントまたはアルギン酸ナトリウム等、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックス類などが挙げられる。これらの剤形に使用される滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。錠剤分解物質としては、それらに限定されないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、その混合物を粒状にするか乾式プレスにかけ、滑剤および錠剤分解物質を加え、全体の混合物を加圧成型して錠剤を生じさせることにより製剤化する。粉末混合物は、適当な方法で粉砕した化合物を、上記のような希釈剤または基材および場合により結合剤例えばカルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン等、溶解遅延剤例えばパラフィン等、吸収促進剤例えば第四級塩等、および/または吸収剤例えばベントナイト、カオリンまたは第二リン酸カルシウム等と混合することにより調製する。粉末混合物は、それを結合剤例えばシロップ、デンプン糊、アカディア(acadia)粘液またはセルロースまたはポリマー材料の溶液等、で湿潤させ、それを加圧して篩を通すことにより顆粒状にすることができる。顆粒化の別法として、粉末混合物を打錠器に通し、不均一の形状の塊を生じさせてそれを破砕して顆粒を形成させることもできる。その顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱物油を添加して錠剤の鋳型へのくっつきを防止するように滑らかにすることができる。その滑らかにした混合物を、次に加圧して錠剤を生じさせる。本発明による化合物はまた、自由に流れる不活性賦形剤と混合し、次いで、顆粒化または乾式プレスのステップを行わずに直接加圧して錠剤を生じさせることもできる。セラックシール層、糖またはポリマー材料の層からなる透明または不透明な保護層およびワックスの光沢層が存在してもよい。異なる用量単位の間を区別することができるように、染料をこれらのコーティングに添加することができる。
【0114】
経口液例えば溶液、シロップおよびエリキシル剤等は、所定量が化合物の事前に特定した量を含むように用量単位の形で調製することができる。シロップは適当な香料の水溶液中に化合物を溶解することによって調製することができ、一方、エリキシル剤は毒性のないアルコール媒体を使用して調製する。懸濁剤は毒性のない媒体中に化合物を分散させることによって製剤化することができる。可溶化剤および乳化剤例えばエトキシレート化イソステアリルアルコール類およびポリオキシエチレンソルビトールエーテル類等、防腐剤、香料添加剤例えばペパーミント油等、あるいは天然甘味料もしくはサッカリン、またはその他の人工甘味料などをさらに添加することができる。
【0115】
経口投与のための用量単位の製剤は、所望に応じて、マイクロカプセルに封入することができる。その製剤はまた、例えば、ポリマー、ワックスおよび同種のもの中の粒子材料のコーティングまたは埋め込みによって、放出が延長または遅延するように調製することができる。
【0116】
式Iの化合物ならびにその塩、溶媒和物および生理的に機能する誘導体はまた、例えば小さい単層小胞、大きい単層小胞および多層小胞等のリポソーム送達系の形で投与することができる。リポソームは、例えばコレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリン等さまざまなリン脂質から形成することができる。
【0117】
式Iの化合物ならびにその塩、溶媒和物および生理的に機能する誘導体はまた、化合物分子が結合する個々の担体としてモノクローナル抗体を使用して送達することもできる。該化合物はまた、目標の薬剤の担体としての可溶性ポリマーに結合させることもできる。上記ポリマーは、パルミトイル基により置換されている、ポリビニルピロリドン、ピラン共重合体、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリシンを包含し得る。該化合物は、さらに、薬剤の制御放出を達成するのに適する生分解性ポリマーの類、例えば、ポリ乳酸、ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリラート、およびヒドロゲルの橋かけまたは両親媒性ブロック共重合体に結合させることができる。
【0118】
経皮的投与に適合する医薬品製剤は、レシピエントの表皮に伸ばして密接に接触させる独立した硬膏剤として投与することができる。かくして、例えば、有効成分は、Pharmaceutical Research,3(6),318(1986)中、一般用語で記載されているイオン泳動により硬膏剤から送達することができる。
【0119】
局所投与に適合する医薬品化合物は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁剤、ローション剤、散剤、液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤または油剤として製剤化することができる。
【0120】
眼またはその他の外部組織、例えば口および皮膚の治療のためには、製剤は、好ましくは局所の軟膏またはクリームとして適用する。軟膏を与える製剤の場合、有効成分はパラフィンまたは水混和性のクリーム基剤のいずれかと共に使用することができる。別法では、有効成分は水中油滴型クリーム基剤または油中水滴型基剤により製剤化して、クリーム剤を生じさせることができる。
【0121】
眼の局所適用に対応する医薬品製剤としては点眼液が挙げられ、その有効成分は適当な担体、特に水性溶媒中に溶解または懸濁させる。
【0122】
口中の局所適用に対応する医薬品製剤としては、トローチ剤、パステル剤およびうがい薬が含まれる。
【0123】
直腸投与に適合する医薬品製剤は、座剤または浣腸剤の形で投与することができる。
【0124】
担体物質が固体である経鼻投与に適合する医薬品製剤は、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含み、それは、鼻呼吸をするやり方で、すなわち、鼻の近くに保持した粉末を含有する容器から鼻腔を通して急速に吸入することにより投与される。担体物質が液体の鼻腔用スプレーまたは鼻点滴剤としての投与に適した製剤は、水または油中の有効成分の溶液を含む。
【0125】
吸入による投与に適合する医薬品製剤は、微細な粒子状粉末または霧を含み、それはさまざまな型のエアロゾルの加圧容器、噴霧器または吸入器により発生させることができる。
【0126】
膣投与に適合する医薬品製剤は、膣坐薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡沫またはスプレー製剤として投与することができる。
【0127】
非経口的投与に適合する医薬品製剤としては、酸化防止剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含んでおり、それを用いて製剤を治療されるレシピエントの血液と等張にする水性および非水性の無菌の注射液、ならびに懸濁媒体および増粘剤を含むことができる水性および非水性の無菌の懸濁剤が挙げられる。その製剤は、単回投与または複数回投与の容器、例えば密閉したアンプルおよびガラス瓶で投与することができ、使用直前に無菌の担体液(例えば注射のための水)の添加のみが必要であるように凍結乾燥した状態で保存することができる。
【0128】
処方せんにしたがって調製される注射液または懸濁剤は、無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0129】
上で特に言及した構成要素に加えて、該製剤が、独特のタイプの製剤に対して技術的に通常のその他の作用物質も含むことができることは言うまでも無く、したがって、例えば、経口投与に適する製剤は香料を含むことができる。
【0130】
式Iの化合物の治療有効量は、例えば、その動物の年齢と体重、治療を必要とする正確な状態、およびその重傷度、製剤の性質および投与の方法を含む多数の要因に依存し、最終的には治療をする医師または獣医により決定される。しかしながら、腫瘍性増殖、例えば結腸癌または乳癌の治療のための本発明による化合物の有効量は、一般に、1日にレシピエント(哺乳類)の体重1kg当たりの0.1から100mgの範囲、特に、典型的には、1日に体重1kg当たりの1から10mgの範囲である。したがって、体重70kgの成熟した哺乳類に対する1日当たりの実際量は、通常、70と700mgの間であり、この量は、1日当たりの単回投与量として、または通常は、全体の1日の投与量が同じになるように1日当たりの連続した分割投与量(例えば、2回、3回、4回、5回または6回等)として投与することができる。塩または溶媒和物あるいはそれらの生理的に機能する誘導体の有効量は、本発明による化合物それ自体の有効量の一部分として決定することができる。同様の投与量が上記のその他の状態の治療に対して適しているものと見なすことができる。
【0131】
本発明は、その上、少なくとも1つの式Iの化合物および/またはすべての比率のそれらの混合物を含めた医薬品として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体と、少なくとも1つのさらなる薬剤有効成分を含む薬剤に関する。
【0132】
本発明はまた、
(a)式Iの化合物および/またはすべての比率のそれらの混合物を含めた医薬品として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体の有効量と、
(b)さらなる薬剤有効成分の有効量
の別々のパックからなるセット(キット)に関する。
【0133】
該セットは、箱、個々の瓶、袋またはアンプル等の適当な容器よりなる。そのセットは、例えば、それぞれが有効量の式Iの化合物ならびに/またはすべての比率のそれらの混合物を含めた医薬品として使用可能なそれらの誘導体、溶媒和物および立体異性体と、有効量のさらなる薬剤有効成分を、溶解された形または凍結乾燥された形で含む。
【0134】
(使用)
本化合物は、チロシンキナーゼにより誘発される疾患の治療における、哺乳類特に人に対する医薬品有効成分として適している。これらの疾患としては、腫瘍細胞の増殖、固形腫瘍の増殖を促進する病的な新血管形成(または血管新生)、眼の新血管形成(糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)が挙げられる。
【0135】
本発明は、式Iの化合物および/またはそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物の、癌の治療および予防のための薬剤を調製するための使用を含む。治療のため選択される癌腫は、脳癌、尿生殖路癌、リンパ系の癌、胃癌、喉頭癌および肺癌の群から始まる。選択される癌の形態のさらなる群は、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫および乳癌である。
【0136】
同様に含まれるのは、本発明の請求項1に記載の化合物および/またはそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物の、血管新生が関与する疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための使用である。
【0137】
同様に含まれるのは、式Iの化合物および/またはそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物の、血管新生が関与する疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための使用である。
【0138】
血管新生が関与する上記疾患は、網膜血管新生、糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症および同種のもの等の眼疾患である。
【0139】
式Iの化合物ならびに/またはそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物の、炎症性疾患の治療または予防のための薬剤を調製するための使用も、また、本発明の範囲に含まれる。上記炎症性疾患の例としては、関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎、遅延型過敏反応などが挙げられる。
【0140】
同様に含まれるのは、本発明による化合物ならびに/またはそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物の、哺乳類におけるチロシンキナーゼ誘発性疾患もしくはチロシンキナーゼ誘発性状態の治療または予防のための薬剤を調製するための使用であって、この方法は、本発明による化合物の治療有効量を、上記治療を必要としている病気の哺乳動物に投与する。その治療量は、その特定の疾患によって変化し、必要以上の努力無しで当該技術に熟達した者によって決定され得る。
【0141】
本発明はまた、請求項1による本発明の化合物ならびに/またはそれらの生理的に許容される塩および溶媒和物の、網膜血管新生の治療または予防のための薬剤を調製するための使用を含む。
【0142】
糖尿病性網膜症および加齢黄斑変性症等の眼疾患の治療または予防のための方法は、同じく本発明の一部である。関節リウマチ、乾癬、接触性皮膚炎および遅延型過敏反応等の炎症性疾患の治療または予防、ならびに骨肉腫、骨関節炎およびクル病の群に由来する骨の病態の治療または予防のための使用は、同じく本発明の範囲に含まれる。
【0143】
「チロシンキナーゼ誘発性疾患または状態」という表現は、1つまたは複数のキナーゼの活動によって決まる病的状態を指す。チロシンキナーゼは、増殖、接着ならびに遊走および分化を含むさまざまな細胞活動のシグナル伝達経路に直接または間接的に参加する。チロシンキナーゼ活性と関連する疾患としては、腫瘍細胞の増殖、固形腫瘍の増殖を促進する病的な新血管形成、眼の新血管形成(糖尿病性網膜症、加齢黄斑変性症など)および炎症(乾癬、関節リウマチなど)が挙げられる。
【0144】
式Iの化合物は、癌、特に、急激に成長する腫瘍の治療のために患者に投与できる。
【0145】
したがって、本発明は、キナーゼシグナル伝達の阻害、制御および/または調節が役割を果たす疾患の治療用の医薬の調製のための、式Iの化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物の使用に関する。
【0146】
本明細書では、Metキナーゼが好ましい。
【0147】
請求項1に記載の化合物によるチロシンキナーゼの阻害によって影響を受ける疾患の治療用の医薬の調製のための、式Iの化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物の使用が好ましい。
【0148】
請求項1に記載の化合物によるMetキナーゼの阻害によって影響を受ける疾患の治療用の医薬の調製のための使用が特に好ましい。
【0149】
固形腫瘍である疾患の治療のための使用が特別に好ましい。
【0150】
固形腫瘍は、肺、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、泌尿生殖路、リンパ系、胃および/または喉頭の腫瘍からなる群から選択されることが好ましい。
【0151】
固形腫瘍は、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から選択されることがさらにより好ましい。
【0152】
血液および免疫系の腫瘍の治療のための、好ましくは、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病からなる群から選択される腫瘍の治療のための使用がさらに好ましい。
【0153】
開示される式Iの化合物は、その他の既知治療薬、例えば、抗癌剤と組み合わせて投与できる。本明細書において、用語「抗癌剤」とは、癌を治療する目的で癌患者に投与される任意の薬剤を指す。
【0154】
本明細書において定義される抗癌治療は、単独療法として適用される場合もあるし、または、本発明の化合物の他に、従来の手術または放射線療法もしくは化学療法を含む場合もある。このような化学療法として、以下のカテゴリーの抗腫瘍剤のうち1種以上が挙げられる:
(i)腫瘍内科学において用いられる、抗増殖性/抗悪性腫瘍性/DNA傷害剤およびそれらの組合せ、例えばアルキル化剤(例えばシスプラチン、カルボプラチン、シクロホスファミド、ナイトロジェンマスタード、メルファラン、クロロアンブシル(chloroambucil)、ブスルファンおよびニトロソ尿素);代謝拮抗物質(例えば葉酸代謝拮抗物質、例えば5−フルオロウラシルおよびテガフールのようなフルオロピリミジン、ラルチトレキセド、メトトレキサート、シトシンアラビノシド、ヒドロキシ尿素およびゲムシタビン);抗腫瘍抗生物質(例えばアントラサイクリン、例えばアドリアマイシン、ブレオマイシン、ドキソルビシン、ダウノマイシン、エピルビシン、イダルビシン、マイトマイシン−C、ダクチノマイシンおよびミトラマイシン);細胞分裂抑制薬(例えばビンカアルカロイド、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシンおよびビノレルビン、ならびにタキソイド、例えばタキソールおよびタキソテール);トポイソメラーゼ阻害剤(例えばエピポドフィロトキシン、例えばエトポシドおよびテニポシド、アムサクリン、トポテカン、イリノテカンおよびカンプトセシン)ならびに細胞分化誘導薬(例えばオールトランス型レチノイン酸、13−シス−レチノイン酸およびフェンレチニド);
(ii)細胞増殖抑制剤、例えば抗エストロゲン剤(例えばタモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェンおよびイドキシフェン)、エストロゲン受容体ダウンレギュレーター(例えばフルベストラント)、抗アンドロゲン(例えばビカルタミド、フルタミド、ニルタミドおよび酢酸シプロテロン)、LHRHアンタゴニストまたはLHRHアゴニスト(例えばゴセレリン、ロイプロレリンおよびブセレリン)、プロゲステロン(例えば酢酸メゲストロール)、アロマターゼ阻害剤(例えばアナストロゾール、レトロゾール、ボラゾール(vorazole)およびエキセメスタンのような)ならびに5α−レダクターゼの阻害剤、例えば、フィナステリド;
(iii)癌細胞浸潤を阻害する薬剤(例えばメタロプロテイナーゼ阻害剤、例えばマリマスタットおよびウロキナーゼプラスミノゲンアクチベーター受容体機能の阻害剤);
(iv)増殖因子機能の阻害剤、(例えば、このような阻害剤として、増殖因子抗体、増殖因子受容体抗体(例えば抗erbb2抗体トラスツズマブ[Herceptin(商標)]および抗erbbl抗体セツキシマブ[C225])が挙げられる)、ファルネシルトランスフェラーゼ阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤およびセリン/トレオニンキナーゼ阻害剤、例えば上皮成長因子ファミリーの阻害剤(例えばEGFRファミリーチロシンキナーゼ阻害剤、例えばN−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−メトキシ−6−(3−モルホリノプロポキシ)キナゾリン−4−アミン(ゲフィチニブ、AZD1839)、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)キナゾリン−4−アミン(エルロチニブ、OSl−774)および6−アシルアミド−N−(3−クロロ−4−フルオロフェニル)−7−(3−モルホリノプロポキシ)−キナゾリン−4−アミン(CI 1033))、例えば血小板由来増殖因子ファミリーの阻害剤、例えば肝細胞増殖因子ファミリーの阻害剤;
(v)抗血管新生薬、例えば血管内皮増殖因子の効果を阻害するもの(例えば抗血管内皮細胞増殖因子抗体ベバシズマブ[Avastin(商標)]、公開国際特許出願WO97/22596、WO97/30035、WO97/32856およびWO98/13354)に開示されるものなどの化合物およびその他の機序で働く化合物(例えばリノミド、インテグリンαvβ3機能の阻害剤およびアンジオスタチン);
(vi)血管傷害剤、例えばコンブレタスタチンA4ならびに国際特許出願WO99/02166、WO00/40529、WO00/41669、WO01/92224、WO02/04434およびWO02/08213に開示される化合物;
(vii)アンチセンス療法、例えば上記で列挙された標的を対象とするもの、例えばISIS 2503、抗Rasアンチセンス;
(viii)遺伝子療法アプローチ、例えば異常な遺伝子、例えば異常なp53または異常なBRCA1もしくはBRCA2の置換のためのアプローチ、GDEPT(遺伝子指向性酵素プロドラッグ療法)アプローチ、例えばシトシンデアミナーゼ、チミジンキナーゼまたは細菌ニトロ還元酵素を用いるものおよび化学療法または放射線療法に対する患者の耐性を増大させるためのアプローチ、例えば多剤耐性遺伝子療法;ならびに
(ix)免疫療法アプローチ、例えば患者の腫瘍細胞の免疫原性を増大させるためのex−vivoおよびin−vivoアプローチ、例えばインターロイキン2、インターロイキン4または顆粒球マクロファージコロニー刺激因子などのサイトカインを用いるトランスフェクション、T細胞アネルギーを低減させるためのアプローチ、トランスフェクトされた免疫細胞、例えばサイトカインでトランスフェクトされた樹状細胞を用いるアプローチ、サイトカインでトランスフェクトされた腫瘍細胞株を用いるアプローチおよび抗イディオタイプ抗体を用いるアプローチ。
【0155】
以下の表1の医薬を式Iの化合物と組み合わせることが好ましいが、これに限らない。
【0156】
【表1−1】

【0157】
【表1−2】

【0158】
【表1−3】

【0159】
【表1−4】

【0160】
【表1−5】

【0161】
【表1−6】

【0162】
【表1−7】

【0163】
【表1−8】

【0164】
【表1−9】

【0165】
【表1−10】

【0166】
【表1−11】

【0167】
【表1−12】

【0168】
【表1−13】

【0169】
この種の併用治療は、治療の個々の成分の同時分配、連続分配または別個の分配を用いて達成できる。この種の併用製剤は本発明の化合物を用いる。
【0170】
アッセイ
実施例に記載される式Iの化合物を、以下に記載されるアッセイによって試験し、キナーゼ阻害活性を有することがわかった。その他のアッセイは文献から公知であり、当業者であれば容易に実施できる(例えば、Dhanabalら、Cancer Res.59:189〜197頁;Xinら、J.Biol.Chem.274:9116〜9121頁;Sheuら、Anticancer Res.18:4435〜4441頁;Ausprunkら、Dev.Biol.38:237〜248頁;Gimbroneら、J.Natl.Cancer Inst.52:413〜427頁;Nicosiaら、In Vitro 18:538〜549頁)。
【0171】
Metキナーゼ活性の測定
製造業者のデータ(Met、active、upstate、カタログ番号14−526)によれば、Metキナーゼは、昆虫細胞(Sf21;ヨトウガ(S.frugiperda))におけるタンパク質産生およびその後のバキュロウイルス発現ベクターにおける「N末端に6個のHisタグのついた」組換えヒトタンパク質としてのアフィニティークロマトグラフィー精製を目的として発現されている。
【0172】
キナーゼ活性は、種々の利用可能な測定系を用いて測定できる。シンチレーション近接法(Sorgら、J.of Biomolecular Screening、2002年、7、11〜19頁)、フラッシュプレート法またはフィルター結合試験では、放射活性物質で標識したATP(32P−ATP、33P−ATP)を用いて基質としてタンパク質またはペプチドの放射性リン酸化を測定する。阻害化合物が存在する場合には、放射性シグナルの減少またはまったくないことが検出され得る。さらに、ホモジニアス時間分解蛍光共鳴エネルギー移動(HTR−FRET)および蛍光偏光(FP)技術をアッセイ法として使用できる(Sillsら、J.of Biomolecular Screening、2002年、191〜214頁)。
【0173】
その他の非放射性ELISAアッセイ法は、特異的なホスホ−抗体(ホスホ−AB)を用いる。ホスホ−抗体は、リン酸化された基質とのみ結合する。この結合は、二次ペルオキシダーゼ結合抗体を用い化学発光によって検出できる(Rossら、2002年、Biochem.J.)。
【0174】
フラッシュプレート法(Metキナーゼ)
用いる試験プレートは、Perkin Elmer製の96ウェルフラッシュプレート(商標)マイクロタイタープレート(カタログ番号SMP200)である。以下に記載されるキナーゼ反応の成分を、ピペットでアッセイプレートに入れる。Metキナーゼおよび基質ポリ−Ala−Glu−Lys−Tyr、(pAGLT、6:2:5:1)を、100μlの総容積中、試験物質の存在下または不在下で放射活性物質で標識した33P−ATPとともに室温で3時間インキュベートする。反応は、150μlの60mM EDTA溶液を用いて終結する。室温でさらに30分間インキュベーションした後、上清を吸引濾去し、ウェルを、各回200μlの0.9% NaCl溶液を用いて3回洗浄する。シンチレーション測定装置(Topcount NXT、Perkin−Elmer)によって結合している放射能の測定を行う。
【0175】
用いる最大の値は、阻害剤を含まないキナーゼ反応である。これは、およそ6000〜9000cpmの範囲になくてはならない。用いる薬理学的ゼロ値は、最終濃度0.1mMのスタウロスポリンである。阻害値(IC50)は、RS1_MTSプログラムを用いて求める。
【0176】
ウェルあたりのキナーゼ反応条件:
30μlのアッセイバッファー
10%のDMSOを含むアッセイバッファー中、10μlの試験される物質
10μlのATP(終濃度1μMコールド、0.35μCiの33P−ATP)
アッセイバッファー中、50μlのMetキナーゼ/基質混合物
(10ngの酵素/ウェル、50ngのpAGLT/ウェル)。
【0177】
用いる溶液:
− アッセイバッファー:
50mM HEPES
3mM 塩化マグネシウム
3μM オルトバナジウム酸ナトリウム
3mM 塩化マンガン(II)
1mM ジチオトレイトール(DTT)
pH=7.5(水酸化ナトリウムを用いて設定する)
− 停止溶液:
60mM Titriplex III(EDTA)
33P−ATP:Perkin−Elmer;
− Metキナーゼ:Upstate、カタログ番号14−526、保存液1μg/10μl;比活性954U/mg;
− ポリ−Ala−Glu−Lys−Tyr、6:2:5: 1:Sigmaカタログ番号P1152。
【0178】
上記および下記において、すべての温度は℃で示されている。以下の実施例では、「従来の後処理」とは、必要に応じて水を加え、必要に応じてpHを最終産物の成分に応じて2〜10の間の値に調節し、混合物を酢酸エチルまたはジクロロメタンを用いて抽出し、相を分離し、有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させ、残渣をシリカゲルでのクロマトグラフィーによって、および/または結晶化によって精製することを意味する。シリカゲルでのRf値、溶出剤:酢酸エチル/メタノール9:1。
【0179】
質量分析(MS):El(電子衝撃イオン化)M+
FAB(高速原子衝撃)(M+H)+
ESI(エレクトロスプレーイオン化)(M+H)+
APCI−MS(大気圧化学イオン化−質量分析)(M+H)+
【0180】
保持時間Rt[分]:HPLCによる測定
カラム: Merck製Chromolith SpeedROD、50×4.6mm2(オーダー番号1.51450.0001)
勾配: 5.0分、t=0分、A:B=95:5、t=4.4分:A:B=25:75、t=4.5分〜t=5.0分:A:B=0:100
流速: 3.00ml/分
溶出剤A:水+0.1%のTFA(トリフルオロ酢酸)
溶出剤B:アセトニトリル+0.08%のTFA
波長: 220nm。
【0181】
実施例1
1−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチルカルボニル)−3−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A1」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0182】
【化5】

【0183】
1.1 40mlの1−ブタノール中、15.0g(67.5mmol)のベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イル酢酸エチルの溶液に、6.8ml(140mmol)のヒドラジン水和物を加え、得られた溶液を沸騰で2時間加熱する。反応混合物を放冷し、得られた沈殿を吸引濾別する。沈殿を、エタノールで洗浄し、乾燥させる:無色の結晶としてのベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルアセトヒドラジド;ESI 209。
【0184】
1.2 4mlのアセトニトリル中、104mg(0.50mmol)のベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルアセトヒドラジドおよび114mg(0.5mmol)の3−クロロ−l−(2,4−ジメトキシフェニル)プロパン−l−オンの懸濁液に、326mg(1.00mmol)の炭酸セシウムを加え、混合物を室温で18時間撹拌する。反応混合物を濾過する。濾液を蒸発させ、溶出剤として酢酸エチル/石油エーテルを用いる、シリカゲルカラムでのクロマトグラフィーに付す:無色の結晶としての「A1」;ESI 383。
【0185】
実施例2
1−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチルカルボニル)−3−(4−フルオロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A2」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0186】
【化6】

【0187】
2.1 971mg(5.00mmol)のベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イル酢酸および811mg(5.00mmol)のN−アミノフタルイミドの溶液に、1.25g(6.5mmol)のN−(3−ジメチルアミノプロピル)−N'−エチルカルボジイミドヒドロクロリド(DAPECI)を加え、混合物を室温で18時間撹拌する。反応混合物を水に加え、得られた沈殿を濾別し、水で洗浄し、真空乾燥する:無色の結晶としての2−ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イル−N−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)アセトアミド;ESI 339。
【0188】
2.2 5mlのアセトニトリル中、169mg(0.50mmol)の2−ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イル−N−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)アセトアミドおよび93.3mg(0.5mmol)の3−クロロ−1−(4−フルオロフェニル)プロパン−1−オンの溶液に、218mg(0.67mmol)の炭酸セシウムを加え、混合物を室温で18時間撹拌する。反応混合物を濾過し、濾液を蒸発させる:無色の固体としての2−ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イル−N−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)−N−[3−(4−フルオロフェニル)−3−オキソプロピル]アセトアミド;ESI 489。この物質を、さらなる精製を行うことなく次の反応ステップに用いる。
【0189】
2.3 5mlのテトラヒドロフラン中、150mg(0.37mmol)の2−ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イル−N−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソインドール−2−イル)−N−[3−(4−フルオロフェニル)−3−オキソプロピル]アセトアミドの溶液に、20.7mgのメチルヒドラジンを加え、混合物を室温で18時間撹拌する。反応混合物を蒸発させ、残渣を、石油エーテル/酢酸エチルを用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーに付す:無色の結晶としての「A2」;ESI 341。
【0190】
実施例3
1−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチルカルボニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A3」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0191】
【化7】

【0192】
窒素下、2mlのDMF中、105mg(2.1mmol)のヒドラジン水和物の溶液に、229mg(1.00mmol)の3−クロロ−1−(3,4−ジメトキシフェニル)プロパン−1−オンを加える。反応混合物を、窒素下、50℃で1時間加熱する。混合物を室温に放冷し、194mg(1.00mmol)のベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イル酢酸および249g(1.3mmol)のDAPECIを加え、混合物を室温で18時間撹拌する。反応混合物を水に加え、得られた沈殿を濾別し、水で洗浄する。残渣を分取HPLCによって精製する:無色の結晶としての「A3」;ESI 383。
【0193】
実施例4
1−(3−メトキシベンジルカルボニル)−3−(3−クロロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A4」)、ESI329の調製は、以下のスキームと同様に実施する(M.E.Camachoら、J.Med.Chem.2004年、47、5641〜5650頁の方法による)。
【0194】
【化8】

【0195】
以下の化合物は同様に得られる。
【0196】
【表2−1】

【0197】
【表2−2】

【0198】
【表2−3】

【0199】
【表2−4】

【0200】
【表2−5】

【0201】
実施例5
1−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチルカルボニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−5,5−ジメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A25」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0202】
【化9】

【0203】
実施例6
1−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチルカルボニル)−3−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,4−ジメチル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A26」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0204】
【化10】

【0205】
実施例7
1−[3−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)ベンジルカルボニル]−3−(5−クロロチオフェン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A27」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0206】
【化11】

【0207】
7.1 −10℃で維持した、200mlのジクロロメタン中、3.94g(22.8mmol)の3−ヒドロキシフェニル酢酸メチル、4.24ml(34.6mmol)の2−モルホリノエタノールおよび8.90g(33.9mmol)のトリフェニルホスフィンの溶液に、6.77ml(34.8mmol)のジイソプロピルアゾジカルボキシレートを、撹拌しながら滴下する。反応混合物を−10℃でさらに1時間、次いで、室温で18時間撹拌する。反応混合物を1Nの塩酸で3回抽出する。合わせた水相を、32%水酸化ナトリウム水溶液を用いてアルカリ性にし、酢酸エチルで3回抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させる:黄色を帯びたオイルとしての[3−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)フェニル]酢酸メチル;ESI 280。
【0208】
7.2 12mlの25%HCl水溶液中、2.38g(8.00mmol)の[3−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)フェニル]酢酸メチルの溶液を、室温で2日間静置し、その後、真空蒸発させる:無色の固体としての[3−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)フェニル]酢酸ヒドロクロリド;ESI 266。
【0209】
7.3 実施例3と同様に、[3−(2−モルホリン−4−イルエトキシ)フェニル]酢酸ヒドロクロリドの、3−クロロ−1−(5−クロロチオフェン−2−イル)プロパン−1−オンとの反応により、化合物「A27」が得られる。
【0210】
以下の化合物は同様に得られる。
【0211】
【表3−1】

【0212】
【表3−2】

【0213】
実施例7a
化合物1−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチルカルボニル)−3−(5−クロロフラン−2−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A75」)は、以下のスキームと同様に得る。
【0214】
【化12】

【0215】
実施例8
以下の化合物は実施例3または7aと同様に得られる。
【0216】
【表4−1】

【0217】
【表4−2】

【0218】
【表4−3】

【0219】
【表4−4】

【0220】
【表4−5】

【0221】
【表4−6】

【0222】
【表4−7】

【0223】
【表4−8】

【0224】
【表4−9】

【0225】
【表4−10】

【0226】
【表4−11】

【0227】
【表4−12】

【0228】
【表4−13】

【0229】
【表4−14】

【0230】
【表4−15】

【0231】
【表4−16】

【0232】
【表4−17】

【0233】
【表4−18】

【0234】
【表4−19】

【0235】
【表4−20】

【0236】
【表4−21】

【0237】
実施例9
1−(ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチルカルボニル)−3−(3−アミノ−1H−インダゾール−5−イル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A83」)は、以下のスキームと同様に実施する。
【0238】
【化13】

【0239】
実施例10
3−(3−フルオロフェニル)−1−[2−(1H−ベンズイミダゾール−5−イル)アセチル]−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A151」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0240】
【化14】

【0241】
1.100mlのジクロロメタン中、6.08ml(50.0mmol)の3−フルオロベンゾイルクロリドおよび5.37g(55.0mmol)のN,O−ジメチルヒドロキシルアミンヒドロクロリドの0℃で維持した溶液に、8.88ml(110mmol)のピリジンを加える。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで、10mlの1Nの塩酸を加える。有機相を分離して回収し、1Nの塩酸および水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させる:無色のオイルとしての3−フルオロ−N−メトキシ−N−メチルベンズアミド;ESI 184。
【0242】
2.70mlのTHF中、5.80g(31.6mmol)の3−フルオロ−N−メトキシ−N−メチルベンズアミドの0℃で維持した溶液に、窒素下、THF中、ビニルマグネシウムブロミドの1モル溶液35mlを滴下する。反応混合物を室温で40分間撹拌し、次いで、飽和塩化アンモニウム溶液を加え、混合物を室温でさらに10分間撹拌する。反応混合物にt−ブチルメチルエーテルを加える。有機相を分離して回収し、炭酸水素ナトリウム溶液および水で洗浄し、真空乾燥する:黄色のオイルとしての1−(3−フルオロフェニル)−3−(メトキシメチルアミノ)プロパン−1−オン;ESI 212。
【0243】
3.20mlのTHF中、2.40g(11.4mmol)の1−(3−フルオロフェニル)−3−(メトキシメチルアミノ)プロパン−1−オンの溶液に3.54ml(56.8mmol)のヨードメタンを加え、混合物を室温で3日間静置する。得られた結晶を吸引濾別し、t−ブチルメチルエーテルで洗浄し、真空乾燥する:黄色を帯びた結晶としての[3−(3−フルオロフェニル)−3−オキソプロピル]メトキシジメチルアンモニウムヨーダイド;ESI 226。
【0244】
4.2mlのDMF中、94mg(1.89mmol)のヒドラジン水和物の溶液に、窒素下、318mg(0.90mmol)の[3−(3−フルオロフェニル)−3−オキソプロピル]メトキシジメチルアンモニウムヨーダイドを加える。反応混合物を、窒素下、50℃で1時間加熱する。混合物を室温に放冷し、159mg(0.90mmol)の(1H−ベンズイミダゾール−5−イル)酢酸および224mg(1.17mmol)のDAPECIを加え、混合物を室温で18時間撹拌する。反応混合物に水を加え、これを次いで、ジクロロメタンで抽出する。有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させる。残渣を分取HPLCによって精製する:黄色を帯びた結晶としての3−(3−フルオロフェニル)−1−[2−(1H−ベンズイミダゾール−5−イル)アセチル]−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール;ESI 323。
【0245】
以下の化合物は同様に得られる。
【0246】
【表5】

【0247】
実施例11
3−モルホリン−4−イルプロピル(3−[2−[3−(2,5−ジクロロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−1−イル]−2−オキソエチル]フェニル)カルバメート(「A154」)の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0248】
【化15】

【0249】
1.25mlのメタノール中、3.30g(6.28mmol)の1−[3−(2,5−ジクロロフェニル)−4,5−ジヒドロピラゾール−1−イル]−2−(3−ニトロフェニル)エタノンの溶液に、5.00g(25.6mmol)の塩化スズ(II)を加える。この溶液を沸騰で3時間加熱し、室温で18時間静置する。反応混合物を、2Nの水酸化ナトリウム溶液32mlを用いてアルカリ性にし、珪藻土を通して吸引濾過する。残渣を水とともに沸騰し、濾過する。残渣を、溶出剤としてメタノール/ジクロロメタンを用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーに付す:無色の固体としての2−(3−アミノフェニル)−1−[3−(2,5−ジクロロフェニル)−4、5−ジヒドロピラゾール−1−イル]エタノン;ESI 348。
【0250】
2.2mlのジクロロメタン中、174mg(0.50mmol)の2−(3−アミノフェニル)−1−[3−(2,5−ジクロロフェニル)−4,5−ジヒドロピラゾール−1−イル]エタノンの懸濁液に、59.4mg(0.20mmol)のビス(トリクロロメチル)炭酸塩を加える。次いで、氷冷しながら、102mg(1.00mmol)のトリエチルアミンを滴下し、反応混合物を室温で10分間撹拌する。次いで、76.1ml(0.55mmol)の3−モルホリン−4−イルプロパン−1−オルを加え、混合物を室温で18時間撹拌する。反応混合物に水を加える。有機相を分離して回収し、水相をジクロロメタンで数回抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させ、真空乾燥させる。残渣を、溶出剤としてジクロロメタン/メタノールを用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーに付す。生成物を含む画分を合わせ、蒸発させ、2−プロパノール中、塩化水素の0.1N溶液5mlに溶解し、この溶液を、50mlのジエチルエーテルに滴下する。得られた沈殿を濾別し、ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させる:無色の固体としての3−モルホリン−4−イルプロピル(3−[2−[3−(2,5−ジクロロフェニル)−4,5−ジヒドロピラゾール−1−イル]−2−オキソエチル]フェニル)カルバメートヒドロクロリド(「A154」);ESI 519。
【0251】
1H−NMR(d6−DMSO):δ=2.10(m,2H)、3.06(bs,2H)、3.17(m,2H)、3.4(m,2H)、3.42(t,J=10Hz,2H)、3.81(bs,2H)、3.93(t,J=10Hz,2H)、3.94(m,2H)、3.96(s,2H)、4.16(t,J=6Hz,2H)、6.95(d,J=8Hz,1H)、7.21(t,J=8Hz,1H)、7.34(bd,J=h 8Hz,1H)、7.44(bs,1H)、7.56(dd,J1=8.5Hz,J2=2.5Hz,1H)、7.63(d,J=8.5Hz,1H)、7.79(d,J=2.5Hz,1H)、9.67(s,1H)、10.95(bs,1H)。
【0252】
以下の化合物は同様に得られる。
【0253】
【表6−1】

【0254】
【表6−2】

【0255】
実施例12
1−(4−フルオロベンジルカルボニル)−3−(3−メトキシフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール(「A159a」)、ESI 313の調製は、以下のスキームと同様に実施する。
【0256】
【化16】


【0257】
第1のステップ、マンニッヒ反応は、例えば、D.Lewisら、Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 13(2003年)1385〜1398頁に記載されている。以下の化合物は同様に得られる。
【0258】
【表7−1】

【0259】
【表7−2】

【0260】
【表7−3】

【0261】
薬理学データ
Metキナーゼ阻害
【0262】
【表8】

【0263】
以下の実施例は医薬に関する:
実施例A:注射用バイアル
3lの再蒸留水中、100gの式Iの有効成分と、5gのリン酸一水素二ナトリウムとからなる溶液を、2Nの塩酸を用いてpH6.5に調整し、滅菌濾過し、注射用バイアルに移し、滅菌条件下で凍結乾燥し、滅菌条件下で密閉する。各注射用バイアルは、5mgの有効成分を含む。
【0264】
実施例B:坐剤
20gの式Iの有効成分と、100gのダイズレシチンおよび1400gのココアバターからなる混合物を融解し、型に注ぎ入れ、放冷する。各坐剤は、20mgの有効成分を含む。
【0265】
実施例C:溶液
940mlの再蒸留水中、1gの式Iの有効成分、9.38gのNaH2PO4・2H2O、28.48gのNa2HPO4・12H2Oおよび0.1gの塩化ベンズアルコニウムから溶液を調製する。pHを6.8に調整し、溶液を1lにし、照射によって滅菌する。この溶液は点眼薬の形で使用できる。
【0266】
実施例D:軟膏
500mgの式Iの有効成分を、無菌条件下で99.5gのワセリンと混合する。
【0267】
実施例E:錠剤
1kgの式Iの有効成分、4kgのラクトース、1.2kgのジャガイモデンプン、0.2kgのタルクおよび0.1kgのステアリン酸マグネシウムからなる混合物を、従来法で圧縮し、各錠剤が10mgの有効成分を含むような方法で錠剤を得る。
【0268】
実施例F:糖衣錠
錠剤を実施例Eと同様に圧縮し、続いて、スクロース、ジャガイモデンプン、タルク、トラガカントおよび色素からなる被膜を用い、従来法でコーティングする。
【0269】
実施例G:カプセル剤
2kgの式Iの有効成分を、各カプセルが20mgの有効成分を含むような従来法で、ハードゼラチンカプセルに入れる。
【0270】
実施例H:アンプル剤
60lの再蒸留水中、1kgの式Iの有効成分の溶液を濾過滅菌し、アンプル中に移し、滅菌条件下で凍結乾燥させ、滅菌条件下で密閉する。各アンプル剤は、10mgの有効成分を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

[式中、
1は、ArまたはHetを表し、
2は、−[C(R42n−Arまたは−[C(R42n−Hetを表し、
3、R3a、R3b、R3c、R3dは、各々、互いに独立に、HまたはAを表し、
4は、H、AまたはOR3を表し、
Aは、1〜7個のH原子がF、Clおよび/またはBrによって置換されていてもよく、
かつ/または1個または2個のCH2基が、O、S、SO、SO2および/またはCH=CH基によって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐もしくは分岐アルキル、
または
3〜7個のC原子を有する環状アルキルを表し、
Arは、フェニル、ナフチルまたはビフェニルを表し、その各々は、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R32、SR3、NO2、CN、COOR3、CON(R32、NR3COA、NR3SO2A、SO2N(R32、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O[C(R32pN(R3)、O[C(R32pHet1、NHCONH[C(R32pN(R3)、NHCOO[C(R32pN(R3)、NHCOO[C(R32pHet1、CHOおよび/またはCOAによって一置換、二置換もしくは三置換されており、
Hetは、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R32、SR3、NO2、CN、COOR3、CON(R32、O[C(R32pN(R3)、O[C(R32pHet1、NHCONH[C(R32pN(R3)、NHCOO[C(R32pN(R3)、NR3COA、NR3SO2A、COR3、SO2N(R32、S(O)mA、CHO、COA、=S、=NH、=NAおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、
Het1は、A、OA、OH、Halおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Halは、F、Cl、BrまたはIを表し、
mは、0、1または2を表し、
nは、1または2を表し、
pは、1、2、3または4を表す]
ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物
(ただし、化合物
1−ベンジルカルボニル−3−フェニル−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾールおよび
1−ベンジルカルボニル−3−(4−クロロフェニル)−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾールは除外する)。
【請求項2】
Aが、1〜7個のH原子が、Fおよび/またはClによって置換されてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐または分岐アルキルを表す、請求項1に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項3】
Arが、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R32、CN、NO2、SR3、CON(R32、NR3COA、NR3SO2A、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2pN(R3)、O(CH2pHet1、NHCOO[C(R32pHet1、NHCONH(CH2pN(R3)および/またはNHCOO(CH2pN(R3)によって、一置換もしくは二置換もしくは三置換されているフェニルを表す、請求項1または2に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項4】
Hetが、非置換であるか、またはHal、A、NH2および/または=O(カルボニル酸素)によって一置換もしくは二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表す、請求項1から3の一項または複数項に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項5】
1が、非置換であるか、またはHal、OA、OH、CN、NO2、NH2、NHA、NA2、SAおよび/またはNHSO2Aによって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニル、
または
非置換であるか、または一Hal置換チエニルもしくはフラニル、3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、ジベンゾフラニル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリル、インドリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドリルまたは3−アミノ−1H−インダゾリルを表す、請求項1から4の一項または複数項に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項6】
2が、−[C(R42n−Ar’または−[C(R42]−Het2を表し、
Ar’が、非置換であるか、またはHal、OH、OA、CN、NHCOA、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2pN(R3)、O(CH2pHet1、NHCOO[C(R32pHet1、NHCONH(CH2pN(R3)および/またはNHCOO(CH2pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Het1が、Aおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Het2が、非置換であるか、またはHalおよび/または=Oによって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する、単環式、二環式または三環式芳香族または不飽和複素環を表す、請求項1から5の一項または複数項に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項7】
2が、−[C(R42n−Ar’または
ベンゾ−1,2,5−チアジアゾール−5−イルメチル、チエニルメチル、ベンゾイミダゾリルメチル、ベンゾ−1,3−ジオキソリルメチル、キノキサリニルメチル、ピリジルメチル、カルバゾリルメチル、ベンゾトリアゾリルメチル、[2−(チオフェン−2−イル)ベンズイミダゾリル]メチル、[2−(5−クロロチオフェン−2−イル)ベンズイミダゾリル]メチル、4,5−ジヒドロピリダジニルメチル、3−オキソ−4、5−ジヒドロピリダジニルメチル、2−アミノベンゾイミダゾリルメチル、ベンゾチアゾリルメチル、2−アミノベンゾチアゾリルメチルまたは1,3−ジヒドロ−2−オキソベンゾイミダゾリルメチルを表し、
Ar’が、非置換であるか、またはHal、OH、OA、CN、NHCOA、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2pN(R3)、O(CH2pHet1、NHCOO[C(R32pHet1、NHCONH(CH2pN(R3)および/またはNHCOO(CH2pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Het1が、Aおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表す、請求項1から6の一項または複数項に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項8】
Aが、1〜5個のH原子がFおよび/または塩素によって置換されていてもよい、1〜6個のC原子を有する、非分岐または分岐アルキルを表す、請求項1から7の一項または複数項に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項9】
1が、ArまたはHetを表し、
2が、−[C(R42n−Arまたは−[C(R42n−Hetを表し、
3、R3a、R3b、R3c、R3dが、各々、互いに独立に、HまたはAを表し、
4が、H、AまたはOR3を表し、
Aが、1〜7個のH原子が、Fおよび/またはClによって置換されていてもよい、1〜10個のC原子を有する非分岐または分岐アルキルを表し、
Arが、非置換であるか、またはHal、A、OR3、N(R32、CN、NO2、SR3、S(O)mA、CON(R32、NR3COA、NR3SO2A、CO−Het1、Het1、O(CH2pN(R3)、O(CH2pHet1、NHCOO[C(R32pHet1、NHCONH(CH2pN(R3)および/またはNHCOO(CH2pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Hetが、非置換であってもよいし、またはHal、A、NH2および/または=O(カルボニル酸素)によって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する、単環式、二環式または三環式飽和、不飽和または芳香族複素環を表し、
Het1が、A、OA、OH、Halおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Halが、F、Cl、BrまたはIを表し、
nが、1または2を表し、
pが、1、2、3または4を表す、請求項1から8の一項または複数項に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項10】
1が、非置換であるか、またはHal、OA、OH、CN、NO2、NH2、NHA、NA2、SAおよび/またはNHSO2Aによって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニル、
あるいは
非置換または一Hal置換チエニルもしくはフラニル、
3,4−ジヒドロ−2−オキソ−1H−キナゾリニル、ジベンゾフラニル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾキサゾリル、2−オキソ−2,3−ジヒドロベンゾイミダゾリル、インドリル、2−オキソ−1,3−ジヒドロインドリルまたは3−アミノ−1H−インダゾリルを表し、
2が、−[C(R42n−Ar’または−[C(R42n−Het2を表し、
Ar’が、非置換であるか、またはHal、OH、OA、CN、NHCOA、S(O)mA、CO−Het1、Het1、O(CH2pN(R3)、O(CH2pHet1、NHCOO[C(R32pHet1、NHCONH(CH2pN(R3)および/またはNHCOO(CH2pN(R3)によって一置換、二置換もしくは三置換されているフェニルを表し、
Het1が、Aおよび/または=O(カルボニル酸素)によって一置換または二置換されていてもよい、1〜2個のNおよび/またはO原子を有する単環式飽和複素環を表し、
Het2が、非置換であるか、またはHalおよび/または=Oによって一置換、二置換もしくは三置換されていてもよい、1〜4個のN、Oおよび/またはS原子を有する単環式、二環式または三環式芳香族または不飽和複素環を表し、
3、R3a、R3b、R3c、R3dが、各々、互いに独立に、HまたはAを表し、
4が、H、AまたはOR3を表し、
Aが、1〜5個のH原子がFおよび/または塩素によって置換されていてもよい、1〜6個のC原子を有する非分岐または分岐アルキルを表し、
Halが、F、Cl、BrまたはIを表し、
nが、1または2を表し、
pが1、2、3または4を表す、請求項1から9の一項または複数項に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項11】
以下の群から選択される、請求項1に記載の化合物
【表1−1】

【表1−2】

【表1−3】

【表1−4】

【表1−5】

【表1−6】

【表1−7】

【表1−8】

【表1−9】

【表1−10】

【表1−11】

【表1−12】

【表1−13】

【表1−14】

【表1−15】

【表1−16】

【表1−17】

【表1−18】

ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物。
【請求項12】
a)次式IIの化合物
1−CO−CH2CH2−L II
[式中、R1は請求項1に示される意味を有し、Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に官能基で修飾されたOH基を表す]を、
ヒドラジンおよび次式IIIの化合物
2−COOH III
[式中、R2は請求項1に示される意味を有する]と反応させるか、
あるいは
b)R3a、R3b、R3cおよびR3dがHを表す式Iの化合物の調製のために、
i)式IIの化合物を次式IVの化合物
2N−NH−CO−R2 IV
[式中、R2は請求項1に示される意味を有する]と反応させるか、
または
ii)次式Vの化合物
【化2】

[式中、R1およびR2は請求項1に示される意味を有する]を
ヒドラジンまたはメチルヒドラジンと反応させるか、
または
iii)次式VIの化合物
1−CO−CH=CH2 VI
[式中、R1は請求項1に示される意味を有する]を
ヒドラジンおよび次式VIIの化合物
L−CO−R2 VII
[式中、R2は請求項1に示される意味を有し、
LはCl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に官能基で修飾されたOH基を表す]と反応させるか、
あるいは
c)R3a、R3bが、Hを表し、
3cが、HまたはAを表し、
3dが、HまたはAを表し、
ただし、基R3cまたはR3dのうち少なくとも一方はAを表す、式Iの化合物の調製のために、
次式VIIIの化合物
【化3】

[式中、
1およびAは、請求項1に示される意味を有し、
3a、R3bは、Hを表し、
3cは、HまたはAを表し、
3dは、HまたはAを表し、
ただし、基R3cまたはR3dのうち少なくとも一方はAを表す]を、
ヒドラジンおよび式IIIの化合物と反応させるか、
あるいは、
d)R3c、R3dが、Hを表し、
3aが、HまたはAを表し、
3bが、HまたはAを表し、
ただし、基R3aまたはR3bの少なくとも一方はAを表す、式Iの化合物の調製のために、
次式IXの化合物
【化4】

[式中、
1およびAは、請求項1に示される意味を有し、
3c、R3dは、Hを表し、
3aは、HまたはAを表し、
3bは、HまたはAを表し、
ただし、基R3aまたはR3bの少なくとも一方はAを表し、
Lは、Cl、Br、Iまたは遊離もしくは反応的に官能基で修飾されたOH基を表す]を、
ヒドラジンおよび式IIIの化合物と反応させ、
ならびに/あるいは
式Iの塩基または酸をその塩の1種に変換することを特徴とする、請求項1から11に記載の式Iの化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体の調製方法。
【請求項13】
少なくとも1種の請求項1から11に記載の式Iの化合物ならびに/またはその製薬上使用可能な誘導体、塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物と、場合より、賦形剤および/またはアジュバントとを含む医薬。
【請求項14】
キナーゼシグナル伝達の阻害、制御および/または調節が役割を果たす疾患を治療するための医薬を調製するための、請求項1から11に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、塩、溶媒和物、互変異性体および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物の使用。
【請求項15】
請求項1から11に記載の化合物によるチロシンキナーゼの阻害によって影響を受ける疾患を治療するための医薬を調製するための、請求項1から11に記載の化合物ならびにその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物の請求項14に記載の使用。
【請求項16】
請求項1から11に記載の化合物によるMetキナーゼの阻害によって影響を受ける疾患を治療するための医薬を調製するための、請求項14に記載の使用。
【請求項17】
治療される疾患が充実腫瘍である、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
充実腫瘍が、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭頸部、食道、頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、泌尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および/または肺の腫瘍からなる群に由来する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
充実腫瘍が、単球性白血病、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫および乳癌からなる群に由来する、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
充実腫瘍が、肺腺癌、小細胞肺癌、膵臓癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌からなる群に由来する、請求項18に記載の使用。
【請求項21】
治療される疾患が血液および免疫系の腫瘍である、請求項15または16に記載の使用。
【請求項22】
腫瘍が、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病からなる群に由来する、請求項21に記載の使用。
【請求項23】
請求項1から11のうちの一項または複数の項に記載の、少なくとも1種の式Iの化合物ならびに/またはその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物と、少なくとも1種のさらなる医薬有効成分とを含む医薬。
【請求項24】
(a)有効量の、請求項1から11の一項または複数項に記載の式Iの化合物および/またはその製薬上使用可能な誘導体、溶媒和物、塩および立体異性体ならびにあらゆる比のそれらの混合物と、
(b)有効量のさらなる医薬有効成分と
の分離したパックからなるセット(キット)。

【公表番号】特表2009−504694(P2009−504694A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−526389(P2008−526389)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007055
【国際公開番号】WO2007/019933
【国際公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】