1−デオキシノジリマイシンおよび誘導体を用いるポンペ病の治療方法
本発明は、また、突然変異体または野生型α−グルコシダーゼ酵素を、1−デオキシノジリマイシンの誘導体である特異的薬理学的シャペロンと接触させることによって、インビトロおよびインビボで該酵素の活性を増加させる方法を提供する。本発明は、1−デオキシノジリマイシンの誘導体であるシャペロン小分子化合物の投与によってポンペ病を治療する方法を提供する。該1−デオキシノジリマイシン誘導体はNまたはCl位置において置換されている。置換α−グルコシダーゼ遺伝子または酵素との組合せ療法も提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2005年5月17日に出願された米国仮出願第60/682,241号および2005年10月21日に出願された第60/729,329号に基づいて米国特許法第119条の下で優先権を主張するものであり、その全開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、α−グルコシダーゼ酵素の活性を増加させる方法、および、例えば、N−ブチル−1−デオキシノジリマイシン(NB−DNJ)を含めた、1−デオキシノジリマイシン(1−DNJ)および1−DNJ誘導体の有効量を個体に投与することを含むポンペ病を治療する方法を提供する。予期せぬことに、これらの化合物は、ポンペ病の病理学の原因となる酵素である酸性α−グルコシダーゼを増強することが示された。
【0003】
[発明の背景]
ポンペ病
ポンペ病は、いくつかのリソソーム貯蔵障害の1つである。リソソーム貯蔵障害は、欠陥がある加水分解酵素による、細胞グルコスフィンゴ脂質、グリコーゲンまたはムコ多糖の蓄積によって引き起こされる1群の常染色体性劣性遺伝病である。リソソーム障害の例は、限定されるものではないが、ゴーシェ病(Beutlerら,The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,8th ed.2001 Scriverら,ed.pp.3635−3668,McGraw−Hill,New York)、GM1−ガングリオシドーシス(id.at pp.3775−3810)、フコシドーシス(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease 1995.Scriver, C.R.,Beaudet,A.L.,Sly,W.S.and Valle,D.,ed pp.2529−2561,McGraw−Hill,New York)、ムコポリサッカリドーシス(id.at pp 3421−3452)、ポンペ病(id.at pp.3389−3420)、ハーラー・シャイエ病(Weismannら,Science.1970;169,72−74)、ニーマン・ピックAおよびB病(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease 8th ed.2001.ScriverらEd.,pp 3589−3610,McGraw−Hill,New York)、およびファブリー病(Id.at pp.3733−3774)を含む。
【0004】
ポンペ病は、酵素酸α−グルコシダーゼ(Gaa)における欠陥によって引き起こされる。Gaaは、エネルギーで用いられる糖の貯蔵形態であるグリコーゲンをグルコースに代謝させる。グリコーゲンの蓄積は、種々の体の組織、特に心臓、骨格筋、肝臓および神経系に影響する体全体にわたる進行性筋障害に導くと考えられる。National Institute of Neurological Disorders and Strokeによると、ポンペ病は40,000人の新生児のうち約1人に発症すると推定される。
【0005】
ポンペ病には、乳児、若年、および成人発症型の、3つのタイプが認められている。幼児型は最もひどく、筋緊張のひどい欠如、虚弱、拡大された肝臓および心臓、および心筋障害を含む症状が存在する。嚥下が困難となり、舌が突出し、肥大することもある。ほとんどの子供は2歳前に呼吸器系または心臓合併症で死亡する。若年型発症ポンペ病は、まず、初期〜後期子供時代に存在し、体幹、横隔膜および下部四肢における呼吸器系筋肉の進行性虚弱、ならびに運動非許容性を含む。ほとんどの若年型発症ポンペ病患者は、20代または30代を越えて生き延びることはない。成人型発症の症状には、一般化された筋肉虚弱および体幹の呼吸器系筋肉、下部四肢、および横隔膜の筋肉の萎縮がある。成人患者の中には主な症状または運動制限がない患者もいる。
【0006】
現在の治療
ポンペ病の現在の治療は、心臓および呼吸器系症状の対症療法を含む。基礎となる遺伝的欠陥について認められた治療はない。最近、置換Gaa(ミオザイム:Genzyme,Inc.)の使用が合衆国におけるF.D.A.によって承認された。しかしながら、乳児性ポンペ患者における欠損Gaaを置き換えるために酵素置換療法を用いる臨床的評価は、心臓および骨格機能を改善するのに中程度に成功したに過ぎなかった(Klingeら、Neuropediatrics.2005;36(1):6−11)。組換えGaaが、骨格筋の筋障害よりも心筋障害を解決するにおいてより効果的であることが示された(Rabenら,Mol Ther.2005;11(1):48−56)。これは多分に組換え酵素が結合組織に侵入できないからである。組換えGaaを用いるポンペ病を治療する方法は、具体的にはCanfieldに対する米国特許第6,537,785号に記載されている。
【0007】
酵素置換療法(ERT)の主な問題の1つは、注入された酵素の迅速な分解による治療上有効量の酵素の達成および維持である。その結果、ERTは多数の高用量投与を必要とし、コストがかかり、かつ時間がかかる。ERT療法は、適切にフォールディングされたタンパク質の大規模生成、精製および貯蔵、グリコシル化天然タンパク質の入手、および抗−タンパク質免疫応答の発生に伴う困難、およびタンパク質が、かなりの中枢神経系の関与を有する病気に影響させるための十分な量の血液−脳関門を横切ることができないことのようないくつかの更なる警告を有する。加えて、組換え酵素は腎臓などの器官を囲うバリアを通過することができないし、結合組織に侵入することもできない、それゆえ、多くの罹患した組織の機能を回復するのに効果的ではない。
【0008】
機能的タンパク質をコードする核酸配列を含有する組換えベクター、または機能的タンパク質を発現する遺伝子操作されたヒト細胞を用いる遺伝子治療もまた、タンパク質欠乏症およびタンパク質置換によって利益を受ける他の障害を治療するのに用いられている。有力ではあるが、このアプローチは、ベクターが分裂する細胞に感染、または伝達不能であること、標的遺伝子の低い発現量および一旦遺伝子が送達された場合の発現の調節のような技術的困難によって制限される(例えば、多くのウィルスベクターは細胞が効率のためには分裂することを必要とする)。
【0009】
酵素欠乏症の治療に対する第3の比較的最近のアプローチは、小分子阻害剤を使用し、欠損酵素タンパク質の天然基質を減少させ、それにより、観察される病状を軽減する。この「基質抑制」アプローチは、糖脂質蓄積に関与するいくつかのリソソーム貯蔵障害の治療のために具体的に記載されている(米国特許第5,798,366号、第6,291,657号および第6,660,749号参照)。療法として用いるのに提案された小分子阻害剤はN−アルキル−デオキシノジリマイシン(N−アルキル−DNJ)誘導体を含み、これは、糖脂質の合成に関与する酵素の阻害に特異的であり、それにより、欠損酵素によって分解される必要がある細胞糖脂質の量を低下させると報告されている。このアプローチは、糖脂質が生物学的機能で必要であり、過剰の抑制が有害効果を引き起こしかねない点でまた制限される。具体的には、糖脂質は、1つのニューロンのガングリオシドからのシグナルを別のニューロンへ送るために、脳によって使用される。もしあまりにも少ない、またはあまりにも多い糖脂質が存在すると、シグナルを送るニューロンの能力は損なわれる。
【0010】
第4のアプローチである特異的シャペロン戦略は、恐らくは、小胞体(ER)において、または他の細胞タンパク質分解/処理システムにおいて、突然変異したタンパク質を分解から救済する。以前の特許および刊行物には、ミスフォールディングされたリソソーム酵素を含めた内因性酵素タンパク質を、ER品質管理機構による分解から救済するための治療的戦略が記載してある。特定の実施形態において、この戦略は、特異的なリソソーム疾患に関連する欠損リソソーム酵素に特異的に結合する小分子薬理学的シャペロンを使用する。治療をしていない場合には、突然変異した酵素タンパク質はERにおいて不安定であり、(Ishiiら,Biochem.Biophys.Res.Comm.1996;220:812−815)、最終生成物への成熟が遅延し、引き続いて、ER内で分解される。シャペロン戦略では、フォールディングを促し、突然変異したタンパク質の安定性を増強させて、ER品質管理機構からの過度なまたは異常な分解を妨げる化合物を使用する。これらの特異的シャペロンは活性部位−特異的シャペロンと命名されているか、あるいは、特異的薬理学的シャペロンともいう。
【0011】
この戦略の背後にある元々の理論は以下の通りである:突然変異体酵素タンパク質はERにおいて不適切にフォールディングされる(Ishiiら,Biochem.Biophys.Res.Comm.1996;220:812−815)ので、酵素タンパク質は正常な輸送経路(ER→ゴルジ装置→エンドソーム→リソソーム)において遅延し、急速に分解される。従って、突然変異体タンパク質の正しいフォールディングを促す化合物は、突然変異体タンパク質のための活性部位−特異的シャペロンとして働いて、ER品質管理機構からのスムーズな回避を促進するであろう。いくつかの酵素阻害剤は触媒中心を占有することが知られており、その結果、インビトロにて酵素の立体構造が安定化する。
【0012】
特異的薬理学的シャペロン戦略は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Fanらに対する米国特許第6,274,597号、第6,583,158号、第6,589,964号、第6,599,919号および第6,916,829号におけるようにリソソーム貯蔵障害に関する多数の酵素に対して示されている。例えば、ガラクトース、1−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)の小分子誘導体、突然変異体ファブリー酵素α−ガラクトシダーゼA(α−Gal A;Gla)の優れた競合阻害剤は、中性pHにおいてヒト突然変異体α−Gal A(R301Q)のインビトロ安定性を効果的に増加させ、それは、R301QまたはQ279E突然変異体を持つファブリー患者から樹立されたリンパ芽球における突然変異体酵素活性を増強した。更に、突然変異体(R301Q)α−Gal Aを過剰発現するトランスジェニックマウスへのDGJの経口投与は、主な臓器において酵素活性を実質的に上昇させた(Fanら,Nature Med.1999;5:112−115)。米国特許第6,916,829号に記載された別のイミノ糖、イソファゴミン(IFG)およびその誘導体を用いる、および(共に2004年11月12日に出願された係属米国特許出願第10/988,428号および第10/988,427号に記載された)グルコセレブロシダーゼに特異的な他の化合物を用いる、ゴーシェ患者細胞からのグルコセレブロシダーゼ(酸性β−グルコシダーゼ,Gba)の同様な救済が記載されている。上記した米国特許第6,583,158号は、1−デオキシノジリマイシン(DNJ)、α−ホモノジリマイシンおよびカスタノスペリミン(castanospermine)を含めた、ポンペ病の治療のためにGaa救済で働くことが予測されるいくつかの小分子化合物を開示している。
【0013】
本発明は、突然変異体Gaaのための効果的な特異的薬理学的シャペロンであることが見いだされたN−ブチルDNJのようなDNJ誘導体を用いて得られた予期せぬ結果に基づく。
【0014】
[発明の概要]
本発明は、α−グルコシダーゼ(Gaa)酵素、および1−デオキシノジリマイシン(1)またはN−ブチルDNJ(5)のようなデオキシノジリマイシン(DNJ)誘導体と接触させることによって細胞における該酵素の適切な立体構造を誘発し、または安定化する方法を提供する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性のDNJ誘導体の非存在下におけるGaa活性に対する比率は、最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において少なくとも1.5倍である。別の実施形態においてGaa活性の増加は少なくとも5倍である。
【0015】
一実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化1】
[式中、
R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は場合によって1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され;
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキルアリールもしくはアルコキシアルキル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3または複素環で置換され;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
またはその医薬上許容される塩を有する。好ましくは、誘導体の存在下におけるGaa活性の、DNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対するDNJ増加は、細胞における最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度で少なくとも1.5倍であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではないものとする。
【0016】
別の実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化2】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルである;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルである;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
または医薬上許容される塩を有する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性のDNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対する比率は、細胞において最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度で少なくとも1.5倍であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0017】
細胞における最大Gaa活性は実施例に記載したようにインビトロまたはインビボで決定することができ、いずれのDNJ誘導体についての、この活性比率を示すために例示したアッセイのいずれを用いることもできる。
【0018】
特別な実施形態において、R1は場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり、かつ、R2はHである。別の実施形態においてR1はn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである。なお別の実施形態において、R1は−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されたn−エチルまたはn−ブチルである。
【0019】
一実施形態において、R1は
【化3】
である。
【0020】
別の実施形態において、R1はHであり、そしてR2は場合によって、−CF3または複素環で置換される直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールもしくはエーテルである。
【0021】
一実施形態において、R2はn−ノニル基である。
【0022】
特許請求される方法の更なる実施形態において、該化合物は、N−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ、またはCl−ノニルDNJからなる群より選択される。
【0023】
別の実施形態において、該化合物は、腸Gaaの阻害についてのIC50値以下の濃度でリソソームGaa活性を増加させる。
【0024】
一実施形態において、Gaa酵素は突然変異体α−グルコシダーゼである。特別な実施形態において、突然変異体α−グルコシダーゼはD645E;D645H;R224W;S619R;R660H;T1064C;C2104T;D645N;L901Q;G219R;E262K;M408V;G309R;D645N;G448S;R672W;R672Q;P545L;C647W;G643R;M318T;E521K;W481R;L552P;G549R;R854X;V816I;およびT927I、およびその組合せからなる群より選択される。
【0025】
別の実施形態において、Gaaは精製したまたは組換え機能的Gaaである。
【0026】
更なる実施形態において、接触はインビボまたはインビトロで起こる。
【0027】
また、本発明は、N−ブチルDNJのようなデオキシノジリマイシン誘導体の有効量を投与することによってポンペ病を治療する方法を提供する。
【0028】
一実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化4】
[式中、
R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、または5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は場合によって1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され、
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはアルコキシアルキルであり、ここで、R2は場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3または複素環で置換され、
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
または医薬上許容される塩を有する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性のDNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対する比率は、細胞において最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度で少なくとも1.5であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0029】
別の実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化5】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルであり;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、またはアルコキシアルキルであり;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
または医薬上許容される塩を有する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の、DNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対する比率は、細胞において最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において少なくとも1.5であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0030】
一実施形態において、R1は場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり;かつ、R2はHである。特別な実施形態において、R1はn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである。別の実施形態において、R1は−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されたn−エチルまたはn−ブチルである。なお別の実施形態において、R1は
【化6】
である。
【0031】
別の実施形態において、R1はHであり、かつ、R2は場合によってCF3または複素環で置換される直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールもしくはエーテルである。なお別の実施形態において、R2はn−ノニル基である。
【0032】
特別な実施形態において、該化合物は、N−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJまたはCl−ノニルDNJからなる群より選択される。
【0033】
別の実施形態において、該化合物は腸Gaaの阻害に対するIC50値以下の濃度でリソソームGaaを増強する。
【0034】
別の実施形態において、1−デオキシノジリマイシン誘導体の有効量は1日当たり約1mg〜300mgである。代替の実施形態において有効量は1日当たり約5mg〜約150mgである。なお別の実施形態において、有効量は1日当たり約5〜約75mgである。
【0035】
一実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は錠剤またはカプセルのような経口投与形態で投与される。
【0036】
別の実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体はGaa置換酵素と組み合わせて投与される。
【0037】
この実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体およびGaa置換酵素は別々の処方にてまたは単一の処方として投与することができる。
【0038】
例えば、このような一実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は経口投与形態で投与され、Gaa置換酵素は非経口投与形態で投与される。
【0039】
代替の実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は遺伝子治療と組み合わせて投与される。
【0040】
本発明の一実施形態において、上記治療の結果、ポンペ病の病状の軽減がもたらされる。
【0041】
特別な実施形態において、病状は、Gaaの骨格組織における活性低下;心筋症;心臓肥大;進行性筋力低下;筋緊張低下;巨舌症;嚥下、吸引、および/または摂食の困難性;呼吸機能不全;肝臓肥大;顔面筋の弛緩;反射消失;運動不耐性;労作性呼吸困難;起座呼吸;睡眠時無呼吸;起床時の頭痛;傾眠;脊柱前弯症および/または脊柱側弯症;深部腱反射の低下;腰痛;および運動発達のマイルストーンの遅延、の内の少なくとも1つの存在によって特徴づけられる。
【0042】
本発明は、デオキシノジリマイシン誘導体の有効量を投与することによって、ポンペ病の症状を緩和または低下させる方法も提供する。
【0043】
一実施形態において、該症状はGaaの骨格組織における活性低下;心筋症;心臓肥大;進行性筋力低下;筋緊張低下;巨舌症;嚥下、吸引、および/または摂食の困難性;呼吸機能不全;肝臓肥大;顔面筋の弛緩;反射消失;運動不耐性;労作性呼吸困難;起座呼吸;睡眠時無呼吸;起床時の頭痛;傾眠;脊柱前弯症および/または脊柱側弯症;深部腱反射の低下;腰痛;および運動発達のマイルストーンの遅延の少なくとも1つである。
【0044】
代替の実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は置換α−グルコシダーゼタンパク質または遺伝子と組み合わせて投与される。
【0045】
本発明は、更に、DNJ誘導体、そのようなDNJ誘導体を含む組成物、およびそのようなDNJ誘導体を含む医薬組成物を含む。DNJ誘導体は上記したような構造式を有するが、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0046】
特許または出願ファイルには少なくとも1つのカラーの図面が入っている。カラー図面とともに特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料の支払いに際して当局によって提供されるであろう。
【0047】
[詳細な記載]
本発明は、環窒素、または該窒素に隣接する環炭素において置換を特異的な薬理学的シャペロンとして有する小分子イミノ糖DNJおよびDNJの誘導体を用いる、突然変異体Gaaの救済、およびポンペ病の治療のための方法を記載する。これらの分子は、不安定であるGaa突然変異タンパク質に結合し、それらが安定な分子立体構造にフォールディングされるよう誘発することができる。その結果、Gaaはリソソームまで進行し、または運ばれ、グリコーゲンに対する加水分解活性を示し、これにより、この病気に関連した筋肉組織内での病的集積が低下する。
【0048】
定義
本明細書中で用いる用語は、一般には、本発明の文脈内で、かつ各用語が用いられる特別な文脈において、当分野におけるそれらの通常の意味を有する。特定の用語を以下に、または明細書中の他の箇所で議論して、本発明の組成物および方法、およびそれらを製造しかつ使用する方法を記載するにおいて実行者に対して更なるガイダンスを提供する。
【0049】
酸性マルターゼ欠損症、グリコーゲン貯蔵病II型(GSDII)、および糖原病II型ともいわれる「ポンペ病」は、グリコーゲンを代謝するGaa遺伝子における突然変異によって特徴付けられる遺伝的リソソーム貯蔵障害である。本明細書中で用いるようにこの用語は該病気の乳児、若年および成人−発症型を含む。
【0050】
「酸性α−グルコシダーゼ(Gaa)」は、グリコーゲン、マルトース、およびイソマルトーセに存在するα−1,4−およびα−1,6−結合−D−グルコースポリマーを加水分解するリソソーム酵素である。代替の名称は以下の通りである:グルコアミラーゼ;1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼ;アミログルコシダーゼ;ガンマ−アミラーゼ;およびエキソ−1,4−α−グルコシダーゼ、およびγ−アミラーゼ。ヒトGaa遺伝子は染色体17q25.2−25.3にマッピングされており、(各々、配列番号:1および配列番号:2に描かれた)GenBank登録番号Y00839に示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列を有する。70を超える突然変異がポンペ病に関連付けられている。Gaa酵素のミスフォールディングまたは誤ったプロセッシングをもたらす突然変異はT1064C(第355位におけるLeuをProに置換する)、およびC2104T(Arg702をCysに置換する)を含む(Montalvoら,Mol Genet Metab.2004;81(3):203−8)。加えて、Hermansら(Human Mutation 2004;23:47−56)は、該酵素の成熟およびプロセッシングに影響するGaa突然変異のリストを記載する。そのような突然変異はLeu405ProおよびMet519Thrを含む。本発明の方法は、ERにおいてα−グルコシダーゼの不安定なフォールディングを引き起こす突然変異で有用であると予測される。
【0051】
本明細書中で用いるように、用語「薬理学的シャペロン」または、時々は「特異的薬理学的シャペロン」(「SPC」)とは、Gaaに特異的に結合し、以下の効果のうち1つ以上を有する分子をいう:(i)タンパク質の安定な分子立体構造の形成の促進;(ii)タンパク質のERから細胞内での別の場所へ、好ましくは天然細胞内の場所への適切なトラフィッキングを増強し、すなわち、ERに関連したタンパク質分解の予防;(iii)立体構造的に不安定な、すなわち、ミスフォールディングされたタンパク質の凝集の予防;(iv)タンパク質の少なくとも部分的に野生型機能、安定性および/または活性の回復/増強;および/または(v)Gaaを有する細胞の表現型または機能の改善。このようにして、Gaa対する薬理学的シャペロンは、Gaaに結合する分子であり、その結果、Gaaの適切なフォールディング、トラフィッキング、非凝集、および活性をもたらす。本明細書中で用いるように、この用語はBiPのような内因性シャペロン、あるいはグリセロール、DMSOまたは重水のような、種々のタンパク質に対して非特異的シャペロン活性を示した非特異的な物質、すなわち、化学的シャペロンのことではない(Welchら,Cell Stress and Chaperones 1996;1(2):109−115;Welshら,Journal of Bioenergetics and Biomembranes 1997;29(5):491−502;米国特許第5,900,360号;米国特許第6,270,954号;および米国特許第6,541,195号参照)。それには、例えば、該酵素、阻害剤またはアンタゴニストおよびアゴニストの活性部位に結合する活性部位特異的シャペロン(ASSC)などの特異的な結合分子が含まれる。
【0052】
本明細書中で用いるように、用語「特異的に結合する」とは、薬理学的シャペロンとGaaとの相互作用、特に、薬理学的シャペロンとの接触に直接的に参画するGaaのアミノ酸残基との相互作用をいう。薬理学的シャペロンは例えばGaaなどの標的タンパク質に特異的に結合して、Gaaに対してシャペロン効果を発揮するが、関連するまたは関連しないタンパク質の属性群に対しては発揮しない。ある薬理学的シャペロンと相互作用するGaaのアミノ酸残基はタンパク質の「活性部位」内にあってもなくてもよい。以下に記載するように、アミノ酸残基512−520における保存されたヘキサペプチドWiDMNEは、Gaaタンパク質の活性に必要である(参照配列として配列番号:2を用いる)。加えて、Trp516およびAsp518はGaaの触媒活性に必要である(Hermansら,J.Biol.Chem.1991.266:13507−12)。特異的結合は、所定の結合アッセイ、または構造研究、例えば、共結晶化、NMR等を通じて評価することができる。
【0053】
非限定的な一実施形態において、薬理学的シャペロンはGaaの阻害剤またはアンタゴニストである。別の非限定的な実施形態において、薬理学的シャペロンはGaaのアゴニストである。なお別の実施形態において、薬理学的シャペロンは混合アゴニスト/アンタゴニストである。本明細書中で用いるように用語「アンタゴニスト」とは、タンパク質に結合し、Gaaの活性を部分的にまたは完全にブロックし、阻害し、低下させ、または中和する任意の分子のことをいう。用語「アゴニスト」とは、タンパク質に結合し、Gaaの活性を少なくとも部分的に増加させ、増強し、回復し、または模倣するいずれの分子もいう。以下に議論するように、そのような分子がGaaについて知られている。
【0054】
本明細書中で用いるように、用語「Gaa立体構造安定性を増強する」または「Gaa立体構造安定性を増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、それ以前における同一の細胞型、または同一の細胞)におけるGaaに対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンと接触している細胞において機能的立体構造を採用するGaaの量または割合を増加させることをいう。一実施形態において、細胞は立体構造突然変異体Gaaを発現しない。別の実施形態において、例えば、立体構造突然変異体Gaaなどの、ポリペプチドをコードする突然変異体Gaaポリヌクレオチドを発現しない。
【0055】
本明細書中で用いるように、用語「Gaaトラフィッキングを増強する」または「Gaaトラフィッキングを増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、初期における同一の細胞型または同一細胞)におけるGaaの輸送の効率に対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触している細胞中おけるGaaのリソソームへの輸送の効率の増加をいう。
【0056】
本明細書中で用いるように、用語「Gaa活性を増強させる」または「Gaa活性を増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、初期における同一の細胞型または同一細胞)におけるGaaの活性に対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触している細胞における、本明細書中に記載したようなGaaの活性の増加をいう。
【0057】
本明細書中で用いるように、用語「Gaaレベルを増強させる」または「Gaaレベルを増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、初期における同一の細胞型または同一細胞)におけるGaaのレベルに対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触している細胞におけるGaaのレベルの増加をいう。
【0058】
用語「適切な立体構造を安定化する」とは、野生型Gaaタンパク質の立体構造と機能的に同一である突然変異したGaaタンパク質の立体構造を誘発または安定化させるGaa薬理学的シャペロンの能力をいう。用語「機能的に同一」とは、立体構造における些細な変動があり得るが(ほとんど全てのタンパク質はそれらの生理学的状態においていく分かの立体構造柔軟性を呈する)、立体構造柔軟性の結果(1)タンパク質の凝集、(2)小胞体−関連分解経路を通じての排除、(3)例えば、Gaa活性などのタンパク質の機能的障害、および/または(4)例えば、リソソームへの局所化などの、野生型タンパク質に比べて、大なり小なりの細胞内での不適切な輸送を引き起こさないことを意味する。
【0059】
用語「安定な分子立体構造」とは、細胞において少なくとも部分的な野生型機能を提供する、薬理学的シャペロンによって誘発された、タンパク質、すなわち、Gaaの立体構造をいう。例えば、突然変異体Gaaの安定な分子立体構造は、GaaがERから逃れ、ミスフォールディングされ、分解される代わりに、野生型Gaaと同様にリソソームにトラフィッキングされるものであろう。加えて、突然変異したGaaの安定な分子立体構造は、全または部分的Gaa活性、例えば、グリコーゲン、マルトースおよびイソマルトースにおけるα−1,4−およびα−1,6結合の加水分解なども有していることがある。しかしながら、安定な分子立体構造は野生型タンパク質の機能的属性の全てを有しているとは限らない。
【0060】
用語「野生型活性」とは、細胞におけるGaaの正常な生理学的機能をいう。例えば、Gaa活性は、グリコーゲン、マルトース、およびイソマルトースに存在するα−1,4−およびα−1,6−結合−D−グルコースポリマーを加水分解する同時能力と共に、フォールディングし、およびERからリソソームへのトラフィッキングを含む。
【0061】
用語「野生型Gaa」とはGaaをコードするヌクレオチド(配列番号1)配列、および上記したヌクレオチド配列(ヒトGaa GenBank登録番号Y00839)によってコードされるポリペプチド(配列番号:2)配列、およびERにおいて機能的立体構造を達成し、細胞内で適切な局所化を達成し、かつ野生型の活性(例えば、グリコーゲンの加水分解)を呈する能力を有する、正常な個体における対立遺伝子変種のような、(上記したポリペプチド配列と同一の機能的特性および結合親和性を有する)Gaaポリペプチドをコードするいずれかの他のヌクレオチド配列をいう。
【0062】
本明細書中で用いるように、用語「突然変異体α−グルコシダーゼ」または「突然変異体Gaa」とは、変異α−グルコシダーゼアミノ酸配列をもたらす遺伝的突然変異を含有する遺伝子から翻訳されたα−グルコシダーゼポリペプチドをいう。一実施形態において、突然変異によって、野生型α−グルコシダーゼと比較した場合に、ERに通常は存在する条件下で天然立体構造を達成しない、または野生型α−グルコシダーゼと比較して低い安定性または活性を呈するα−グルコシダーゼタンパク質がもたらされる。このタイプの突然変異は、本明細書中においては、「立体構造突然変異」といい、そのような突然変異を担うタンパク質は「立体構造突然変異体」という。この立体構造を達成できないと、タンパク質輸送系における正常な経路を通じて細胞中のその天然の位置まで輸送されるか、または細胞外環境へ輸送されるよりはむしろ分解されるかまたは凝集されるα−グルコシダーゼタンパク質がもたらされる。いくつかの実施形態において、突然変異(例えば、転写効率、スプライシング効率、mRNA安定性等に影響する突然変異)は、タンパク質の効率がより低い発現をもたらすα−グルコシダーゼをコードする遺伝子の非コーディング部分で起こり得る。野生型ならびにα−グルコシダーゼの立体構造突然変異体変種の発現のレベルを増強させることによって、α−グルコシダーゼ薬理学的シャペロンの投与は、そのような効率的でないタンパク質発現に由来する欠陥を緩和することができる。代替として、ERに蓄積できる突然変異体またはナンセンス突然変異体をスプライシングするためには、リソソームヒドロラーゼ活性を回復することなく、ERに存在する突然変異体に結合し、それを援助するシャペロンの能力は、ポンペ患者においていくらか細胞の病理を緩和し、それにより、症状を改善するのに十分であろう。
【0063】
Gaaの例示的な立体構造突然変異は以下の:D645E(Linら,Zhonghua Min Guo Xiao Er Ke Yi Xue Hui Za Zhi.1996;37(2):115−21);D645H(Linら,Biochem Biophys Res Commun.1995 17;208(2):886−93);R224W,S619R,およびR660H(Newら,Pediatr Neurol.2003;29(4):284−7);T1064CおよびC2104T(Montalvoら,Mol Genet Metab.2004;81(3):203−8);D645NおよびL901Q(Kroosら,Neuromuscul Disord.2004;14(6):371−4);G219R,E262K,M408V(Fernandez−Hojasら,Neuromuscul Disord.2002;12(2):159−66);G309R(Kroosら,Clin Genet.1998;53(5):379−82);D645N,G448S,R672W,およびR672Q(Huieら,Biochem Biophys Res Commun.1998;27;244(3):921−7);P545L(Hermansら,Hum Mol Genet.1994;3(12):2213−8);C647W(Huieら,Huieら,Hum Mol Genet.1994;3(7):1081−7);G643R(Hermansら,Hum Mutat.1993;2(4):268−73);M318T(Zhongら,Am J Hum Genet.1991;49(3):635−45);E521K(Hemansら,Biochem Biophys Res Commun.1991;179(2):919−26);W481R(Rabenら,Hum Mutat.1999;13(1):83−4);およびL552PおよびG549R(未公表データ)を含む。
【0064】
スプライシング突然変異体はIVS1AS、T>G、−13およびIVS8+1G>Aを含む。
【0065】
更なるGaa突然変異体は同定されており、当分野で既知である。立体構造突然変異体は当業者によって容易に同定可能である。
【0066】
Gaaのフォールディング、よって、トラフィッキングを損なう突然変異は、タンパク質が細胞内のGaa局所化のためにゴルジ装置または蛍光免疫染色に入るか否かを決定するためのグルコシダーゼ処理の有りおよび無しにて、パルス−チェイス代謝標識のような、当分野で周知のルーチンアッセイによって決定することができる。野生型Gaaは、110kD前駆物質として分泌され、次いで、これは95kDの中間体を介して76kDの成熟Gaaに変換される。
【0067】
そのような機能性は、そのようなタンパク質の機能性を確立することが知られているいずれかの手段によってテストすることができる。例えば、4−αメチルウンベリフェリル−D−グルコピラノシドのような蛍光基質を用いるアッセイを用いて、Gaaの活性を測定するために使用することができる。そのようなアッセイは当分野で周知である(例えば、Hermansら,上記参照)。
【0068】
ある種のテストは、その現実のインビボ活性に対応しても対応しなくてもよいが、それにもかかわらず、タンパク質機能性の適切な代わりのものであるタンパク質の属性を評価することができ、そのようなテストにおける野生型の挙動は、本発明のタンパク質フォールディング救済または増強技術を裏付ける証拠を示す。本発明による1つのそのような活性は、小胞体からリソソームへの機能的Gaaの適切な輸送である。
【0069】
インビトロにて、例えば、ある処方において、シャペロン化合物は、野生型または突然変異したタンパク質をその天然または適切な形態で維持することも補助することができる。この効果は、(i)(すなわち、ERTについての)タンパク質の増大したシェルライフ;(ii)タンパク質の単位/量当たりのより高い活性;または(iii)より高いインビボ効率の1つ以上を介してそれを現実的に発現させることができる。それは、発現の間のERからの増大した収率;温度上昇、またはカオトロピック剤の存在による、および同様な手段によるフォールディング解除に対するより大きな抵抗性を通じて実験的に観察することができる。
【0070】
用語「内因性発現」および「内因的に発現された」とは、その発現、活性または安定性を阻害するGaa核酸またはポリペプチド配列における突然変異のような、Gaaの欠乏、過剰発現、または他の欠陥に関連する病気または障害、例えば、ポンペ病を有しない、または有することが疑われない個体における細胞でのGaaの正常な生理学的発現をいう。この用語は、Gaaが発現されるのが正常である細胞型におけるGaaの発現もいい、細胞または細胞型における発現、例えば、Gaaが健康な個体で発現されない腫瘍を含まない。
【0071】
本明細書中で用いるように、用語「輸送の効率」とは、小胞体から細胞内のその天然の位置、細胞膜へ、または細胞外環境へ輸送される突然変異体タンパク質の能力をいう。
【0072】
酵素の「競合的阻害剤」とは、酵素基質に化学的構造および分子的幾何学と構造的に類似して、基質とほぼ同一の位置における酵素に結合する化合物をいうことができる。このようにして、阻害剤は基質分子と同一の活性部位について競合し、このようにして、Kmを増大させる。もし十分な基質分子が阻害剤を置き換えるのに利用できるならば、すなわち、競合阻害剤が可逆的に結合できるならば、競合阻害は通常は可逆的である。従って、酵素阻害の量は阻害剤の濃度、基質濃度、および活性部位に対する阻害剤および基質の相対的親和性に依存する。
【0073】
非古典的競合阻害は、阻害剤は活性部位に遠隔的に結合し、基質がもはやそれに結合できないように、酵素において立体構造の変化を作り出す場合に起こる。非古典的競合阻害において、活性部位における基質の結合は別々の部位における阻害剤の結合を阻害し、逆も成立する。これはアロステリック阻害を含む。
【0074】
酵素の「線状混合−タイプの阻害剤」は、基剤を結合させるが、その親和性を低下させる競合阻害剤のタイプであり、従って、Kmは増大し、Vmaxは減少する。
【0075】
「非競合阻害剤」とは、酵素とで強い結合を形成し、過剰な基質の添加によって置き換えることができない化合物をいい、すなわち、非競合阻害剤は不可逆的であり得る。非競合阻害剤は酵素またはタンパク質の活性部位において、その近くに、またはそれから離れて結合することができ、酵素との関連では、Kmに対して効果を有しないが、Vmaxを減少させる。非競合阻害とは、阻害剤が酵素−基質(ES)複合体のみに結合する状況をいう。阻害剤が結合する場合、酵素は不活性となる。これは、基質の不存在下において酵素に結合することができる非古典的競合阻害剤とは異なる。
【0076】
用語「Vmax」とは、すなわち、基質レベルを飽和させるにおいて酵素触媒反応の最大初期速度をいう。用語「Km」は、1/2Vmaxを達成するのに必要な基質濃度である。
【0077】
酵素「増強剤」は、Gaaに結合し、酵素反応速度を増大させる化合物である。
【0078】
用語「治療上有効な用量」および「有効量」とは、(アンタゴニストの場合には)適当な細胞位置において既に発現されたタンパク質を阻害することなく、または(アゴニストの場合には)適当な細胞位置からのタンパク質のリガンド−媒介受容体内部化を誘発することなく、(機能的立体構造を可能とする)ERにおけるタンパク質プロセッシングを増強させ、かつ標的タンパク質の活性を増強させ、このようにして、対象において治療的応答をもたらすのに十分な量をいう。治療応答は、本明細書中に記載され、かつ当分野で既知の症状、およびいずれかの代替臨床マーカーを含めた療法に対する効果的な応答としてユーザー(例えば、臨床化)が認識するいずれの応答でもあり得る。このようにして、治療的応答は、一般には、病気または障害について当分野で既知のもののような、病気または障害、例えば、ポンペ病の1つ以上の症状、例えば、減少したGaa活性および進行した筋肉虚弱の軽減または阻害であろう。
【0079】
精製された治療タンパク質のインビトロ生産、輸送または貯蔵の間に阻害的であるシャペロン化合物の濃度は、インビボでの投与に際してシャペロンの希釈(および平衡の変化による結合の結果としてのシフト)、生物学的利用性および代謝のため、本発明の目的では依然として「有効量」を構成することができることに留意されたい。
【0080】
「リスポンダー」とは、1つ以上の臨床的症状の改善、緩和または予防、あるいは病気の病理学のインジケーターである1つ以上の代替臨床マーカーの改良または逆行を呈する、ポンペ病と診断された、および現在特許請求する方法に従って治療された個体である。ポンペ病の症状またはマーカーは、限定されるものではないが、減少したGaa組織活性;心筋症;心臓肥大;特に、体幹または下部四肢における進行性筋肉虚弱;ひどい緊張低下;巨舌症(およびある場合には、舌の突き出し);嚥下、吸引、および/または摂食の困難性;呼吸機能不全;肝臓肥大(中程度);顔面筋の弛緩;反射消失;運動不耐性;労作性呼吸困難;起座呼吸;睡眠時無呼吸;起床時の頭痛;傾眠;脊柱前弯症および/または脊柱側弯症;減少した深部腱反射;腰痛;および運動発達のマイルストーンの遅延を含む。
【0081】
用語「酵素置換療法」または「ERT」とは、非天然の精製された酵素の、そのような酵素の欠乏を有する個体への導入をいう。投与されたタンパク質は天然源から、あるいは(以下にかなり詳細に記載する)組換え発現によって得ることができる。該用語は、そうでなければ精製された酵素の投与を必要とし、またはそれから利益を受ける、例えば、酵素不全に罹った個体への精製された酵素の導入もいう。導入された酵素はインビトロにて生産された精製で組換え酵素、または例えば胎盤または動物乳のような摘出された組織または流体から、または植物から精製されたタンパク質であり得る。
【0082】
フレーズ「医薬上許容される」とは、生理学的に許容でき、かつヒトに投与された場合に典型的には望まない反応を生じない分子体および組成物をいう。好ましくは、本明細書中で用いるように、用語「医薬上許容される」は、連邦または州政府の規制当局によって承認された、または合衆国薬局方、または動物、より特別にはヒトで用いるための他の一般的に認められた薬局方でリストされたことを意味する。用語「担体」とは、それと共に化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビークルをいう。そのような医薬担体は水および油のような滅菌液体であり得る。水または水性溶液、生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、特に、注射溶液のための担体として好ましくは使用される。適当な医薬担体はE.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、または他の版に記載されている。
【0083】
本明細書中で用いるように、用語「精製された」とは、無関係な物質、すなわち、汚染物を低下させ、または排除する条件下で隔離されているGaa核酸またはポリペプチドのような物質をいう。例えば、精製されたタンパク質は、それが細胞中で会合する他のタンパク質または核酸を好ましくは実質的に含まない。本明細書中で用いるように、用語「実質的に含まない」は物質の分析テストの関係で使用可能に用いられ、好ましくは、汚染物を実質的に含まない精製された物質は少なくとも50%純粋;より好ましくは少なくとも90%純粋、尚より好ましくは少なくとも99%純粋である。純度は従来の手段、例えば、クロマトグラフィー、ゲル電気詠動、イムノアッセイ、組成分析、生物学的アッセイ、および当分野で既知の他の方法によって評価することができる。
【0084】
用語「約」および「ほぼ」は、一般には、測定の性質または精度を仮定して測定された量についての誤差の許容される程度を意味する。誤差の典型的な例示的程度は、与えられた値または値の範囲の20パーセント(%)内、好ましくは10%内、より好ましくは5%内である。代替として、特に生物学的系においては、用語「約」および「ほぼ」は、大きさのオーダー内、好ましくは与えられた値の5倍内、より好ましくは2倍内である値を意味することができる。本明細書中で与えられる数的量は特に断りのない限り近似であり、用語「約」または「ほぼ」は明示的に述べられていない場合に推定できることを意味する。
【0085】
化学的定義
用語「アルキル」とは、不飽和を含有せず、単一の結合によって分子の残りに結合した炭素および水素原子のみからなる直鎖または分岐鎖のC1−C20炭化水素基をいい、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)をいう。本明細書中で用いられるアルキルは、好ましくは、C1−C8アルキルである。
【0086】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有し、直鎖または分岐鎖であってもよいC2−C20脂肪族炭化水素基、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソ−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルをいう。
【0087】
用語「シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルのような不飽和の非芳香族単環または多環炭化水素環系を示す。多環シクロアルキル基の例はペルヒドロナフチル、アダマンチルおよびノルボルニル基架橋環状基またはスピロ二環基、例えば、スピロ(4,4)ノナ−2−イルを含む。
【0088】
用語「シクロアルカルキル」とは、シクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチルのような安定な構造の形成をもたらす、上記定義のアルキル基に直接結合した上記定義のシクロアルキルをいう。
【0089】
用語「アルキルエーテル」とは、アルキル鎖に取り込まれた少なくとも1つの酸素を有する上記定義のアルキル基またはシクロアルキル基、例えば、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランをいう。
【0090】
用語「アルキルアミン」とは、少なくとも1つの窒素原子を有する上記定義のアルキル基またはシクロアルキル基、例えば、n−ブチルアミンおよびテトラヒドロオキサジンをいう。
【0091】
用語「アリール」とは、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニルのような約6〜約14の炭素原子の範囲を有する芳香族基をいう。
【0092】
用語「アリールアルキル」とは、上記定義のアルキル基に直接結合した上記定義のアリール基、例えば、−CH2C6H5、および−C2H4C6H5をいう。
【0093】
用語「複素環」とは、炭素原子、および窒素、リン、酸素および硫黄からなる群より選択される1〜5のヘテロ原子からなる安定な3〜15員環基をいう。本発明の目的では、複素環基は単環、二環または三環の環系であってもよく、これは融合した、架橋またはスピロ環系を含むことができ、複素環基中の窒素、リン、炭素、酸素または硫黄原子は場合によって種々の酸化状態まで酸化されていてもよい。加えて、窒素原子は場合によって第四級化されていてもよく;および環基は部分的にまたは十分に飽和されていてもよい(すなわちヘテロ芳香族またはヘテロアリール芳香族)。そのような複素環基の例は、限定されるものではないが、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフルニル(benzofurnyl)、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、ペルヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピリジル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾイル、イミダゾリル、テトラヒドロイソウイノリル(tetrahydroisouinolyl)、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、トリアゾリル、インダニル、イソキサゾリル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフルチル(tetrahydrofurtyl)、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジオキサホスホラニル、オキサジアゾリル、クロマニル、イソクロマニルを含む。
【0094】
複素環基は、安定な構造の形成をもたらすいずれかのヘテロ原子または炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0095】
用語「ヘテロアリール」とは複素環をいい、ここで該環は芳香族である。
【0096】
用語「ヘテロアリールアルキル」とは、アルキル基に直接結合した上記定義のヘテロアリール環基をいう。ヘテロアリールアルキル基は、安定な構造の形成をもたらすアルキル基からのいずれかの炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0097】
用語「ヘテロシクリル」とは上記定義の複素環基をいう。ヘテロシクリル環基は、安定な構造の形成をもたらすいずれかのヘテロ原子または炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0098】
用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、アルキル基に直接結合した上記定義の複素環基をいう。ヘテロシクリルアルキル基は、安定な構造の形成をもたらすアルキル基中の炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0099】
「置換されたアルキル」、「置換されたアルケニル」、「置換されたアルキニル」、「置換されたシクロアルキル」、「置換されたシクロアルカルキル」、「置換されたシクロアルケニル」、「置換されたアリールアルキル」、「置換されたアリール」、「置換された複素環」、「置換されたヘテロアリール環」、「置換されたヘテロアリールアルキル」、または「置換されたヘテロシクリルアルキル環」における置換基は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオ(=S)からなる群より選択される1つ以上、あるいはアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環、−COORx、−C(O)Rx、−C(S)Rx、−C(O)NRxRy、−C(O)ONRxRy、−NRxCONRyRz、−N(Rx)SORy、−N(Rx)SO2Ry、−(=N−N(Rx)Ry)、−NRxC(O)ORy、−NRxRy、−NRxC(O)Ry−、−NRxC(S)Ry−NRxC(S)NRyRz、−SONRxRy−、−SO2NRxRy−、−ORx、−ORxC(O)NRyRz、−ORxC(O)ORy−、−OC(O)Rx、−OC(O)NRxRy、−RxNRyRz、−RxRyRz、−RxCF3、−RxNRyC(O)Rz、−RxORy、−RxC(O)ORy、−RxC(O)NRyRz、−RxC(O)Rx、−RxOC(O)Ry、−SRx、−SORx、−SO2Rx、−ONO2から選択される場合によって置換される群と同一または異なってもよく、ここで、上記群の各々におけるRx、RyおよびRzは水素原子、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキル、置換されたまたは置換されていないアリールアルキル、置換されたまたは置換されていないアリール、置換されたまたは置換されていないシクロアルキル置換されたまたは置換されていないシクロアルカルキル、置換されたまたは置換されていない複素環、置換されたまたは置換されていないヘテロシクリルアルキル、置換されたまたは置換されていないヘテロアリール、または置換されたまたは置換されていないヘテロアリールアルキルであり得る。
【0100】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の基をいう。
【0101】
DNJおよびDNJ誘導体
1−デオキシノリジマイシン(化合物1、DNJ;1,5−イミノ−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール−CAS番号19130−96−2)の誘導体はポンペ病を治療するのに有用であることが判明した。DNJは分子式C6H13NO4および163.2の分子量を有する。DNJはSchroderらに対する米国特許第4,806,650号に記載されており、以下の構造式:
【化7】
を有する。
【0102】
本発明で有用なDNJの誘導体は式:
【化8】
[式中、R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキルエーテルもしくはアルキルアミン、5〜12の環原子を含有するアルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は場合によって1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−C(=O)N−(アルキル)2(すなわち、−O−C(=O)N−(Me)2)で置換され、R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはアルキルエーテル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3または複素環で置換される]
によって記載することができる。
【0103】
R1およびR2の少なくとも1つはHではない。
【0104】
好ましいDNJ誘導体は1〜12の炭素原子を有するN−アルキル誘導体を含む。より好ましくは、これらの誘導体が1〜9の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状化合物である。例示的な化合物は、限定されるものではないが、N−メチル−DNJ(2)、N−エチル−DNJ(3)、N−プロピル−DNJ(4)、N−ブチル−DNJ(5)、N−ペンチル−DNJ(6)、N−ヘキシル−DNJ(7)、N−ヘプチル−DNJ(8)、N−オクチル−DNJ(9)、N−ノニル−DNJ(10)、N−メチルシクロプロピル−DNJ(11)およびN−メチルシクロペンチル−DNJ(12)を含む。
【化9】
【0105】
1つの好ましいアルキルDNJ誘導体はN−メチル−1−デオキシノリジマイシン(化合物2、N−メチルDNJ;N−メチルモラノリン、1,5−(メチルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール)であり、Toronto Research Chemicals,Cat.Number M297000,CAS 69567−1−08から市販の合成グルコースアナログである。N−メチルDNJは肝臓においてグリコーゲン−脱分岐酵素のα−1、6−グルコシダーゼを阻害することによってグリコーゲン分解速度を低下させ、α−1,4−グルコシダーゼをブロックすることによって抗高脂血症作用を有する(Arai Mら,Circulation.1998 Apr 7;97(13):1290−7)。
【0106】
別の好ましいアルキルDNJ誘導体はN−ノニル−デオキシノジリマイシン(化合物10、N−ノニルDNJ;1,5−(ノニルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール)、ゴーシェ病(糖脂質蓄積によって特徴付けられるリソソーム貯蔵病)の治療で有用な合成グルコースアナログである(Sawkar AR,ら.,Proc Natl Acad Sci USA.2002;26;99(24):15428−33)。
【0107】
−OH、−COOH、またはOCF3のような置換基を有するアルキルDNJ誘導体は好ましい化合物でもある。例示的な置換されたアルキルDNJ誘導体は、限定されるものではないが;
【化10】
を含む。
【0108】
好ましいDNJ誘導体はN−2−ヒドロキシエチル−デオキシノジリマイシン(化合物13、N−エトキシDNJ;1.5−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール;ミグリトール)、すなわち、2型真性糖尿病を治療するのに用いられる合成グルコースアナログである。Drentら,Diabetes Nutr Metab.2002;15(3):152−9; de Luis Roman Da,Rev Clin Esp.2004 Jan;204(1):32−4。
【0109】
別の好ましいDNJ誘導体は5−N−カルボキシペンチルデオキシノジリマイシン(化合物14、5−N−カルボキシペンチルDNJ;1,5−(5−N−カルボキシペンチルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール)である。この合成グルコースアナログは、Bernotas RC,ら,Biochem J.1990 Sep 1;270(2):539−40によって記載された経路によって合成することができる。
【0110】
更なるDNJ誘導体は化合物:
【化11】
のようなアルキルエーテル誘導体である。
【0111】
他の好ましい化合物は式:
【化12】
によって表されるN−ベンジル置換DNJ誘導体のような誘導体を含む。
【0112】
他の好ましい化合物は式:
【化13】
[式中、Arは芳香族複素環である。]
によって表されるN−CH2−Ar置換DNJ誘導体のような誘導体を含む。
【0113】
窒素−置換DNJ誘導体に加えて、環窒素に隣接するC−1炭素に結合した置換基を有するDNJ誘導体もまた本発明の好ましい化合物である。これらの化合物は、限定されるのではないが、:
【化14】
を含む。ここで、直鎖炭化水素アナログは、限定されるものではないが、1〜12の炭素原子を含み、Rは限定されるものではないが:場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3、NHR、NHCOR’で置換される分岐したアルキル、シクロアルキル、もしくはアルキル、または芳香族または複素環を含み、ここで、R’はアルキル基である。
【0114】
【化15】
式中、HETはテトロヒドロフラン、ピリジン、フラン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、チアゾールおよび結合したベンゾ−アナログ等のような複素環基であり、Arはフェニルまたは置換されたフェニルである。フェニル置換基は官能基(例えば、CH3、Cl、F、またはCH2−O−CF3)であるGからなることができ、およびnは0〜5の整数である。
【0115】
DNJ誘導体の合成
R1において置換を有する本発明の化合物は:欧州特許第49858号、国際公開公報第2005/063706号、米国特許第4,639,436号;国際公開公報第2004/037373号;国際公開公報第95/22975号;米国特許第5,399,567号;米国特許第5,310,745号;Bolsら,Journal of Carbohydrate Chemistry 2004 23(4),223−238,Sawkerら,Cemistry and Biology,2005;12,1235−1244,Overkleef,Journal of Biological Chemistry.2005;273(41),26522−26527;Tanら,Journal of Biological Chemistry.1991,266(22),14504−14510;Romanioukら,Glycobiology.2004;14(4),301−310;Lesur,Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 1997;7(3),355−360;Yoshikuni,Agric.Biol.Chem 1998;52(1),121に記載したように、およびこれらの方法の既知の修飾によってDNJから合成することができる。
【0116】
R2において置換を有する本発明の化合物は、Anzeveno,ら,J.Org.Chem.1989;54(11),2539;国際公開公報第00/56713号;米国特許第4,880,917号;欧州特許第0315017号;および米国特許第5,051,407号に記載されたように、およびBoshageら,Angewante Chemie,Int.Ed.Engl.1981;20(9),806−807および報告されている更なる方法によって、DNJから合成することができ、これらの方法の既知の修飾は国際公開公報第00/56713号,米国特許第5,051,407号、および欧州特許第0315017号に示されている。これらの分子の合成に対する別のアプローチは、Angewante Chemie,Int.Ed.Engl.2003;42,3788−3792においてDavisによって報告されている。
【0117】
本発明の化合物は、テトラ−OBnグルコノラクトンから合成することもできる。この合成は、Perrineら,J.Org.Chem.1967;32,664;Matos,Lopes & Lopes,Synthesis 1999;4,571;Rao & Perlin;Can.J.Chem.1981;59,333;Hoos,Naughton and Vassella,Helv.Chem.Acta,1993;76,1802,and Baxter & Reitz,J.Org.Chem.1994;59,3175に記載された合成から適合させることができる。
【0118】
半合成アプローチは、本発明のDNJ誘導体を形成するために用いることもできる。この酵素経路はGluconobacter Oxydansを用い、米国特許第4,266,025号;米国特許第5,695,969号;米国特許第4,246,345号;米国特許第4,806,650号;0430307;およびKinast & Schedel;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,20,805(1981)に記載された方法から適合されることができる。
【0119】
本発明で有用ないくつかの化合物は購入することができ、例えば、以下の化合物はToronto Research Chemicalsから購入した:1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号D245000)、1−デオキシノジリマイシン塩酸(カタログ番号D245005)、N−ブチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号B691000、CAS[21011−90−0])、ミグリトール(Miglitol)(カタログ番号M344200、CAS[72432−03−2])、N−メチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号297000、CAS[69567−1−8])、N−5−カルボキシペンチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号C181200)、N−(5−アダマンタン−1−イルーメトキシ)−ペンチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号A21000);α−ホモノジリマイシンはTCI America(カタログ番号H1144、CAS 119557−99−2)から購入した。
【0120】
本発明で用いることができる化合物の非限定的リストは:DNJ、N−ブチルDNJ、N−(シクロプロピル)メチルDNJ、N−2−(テトラヒドロフラン)メチルDNJ、N−2−オキソエチルDNJトリフルオロエチル エーテル/N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチルDNJ、N−エチルオキシDNJジメチルカルバメート/N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ)DNJ、N−メチルーDNJ、2−メトキシエチルDNJ、2−エトキシエチルDNJ、4−トリフルオロメチル−ベンジルDNJ、α−シアノ−4−トリフルオロメチル−ベンジルDNJ,4−ペントキシベンジルDNJ、4−ブトキシベンジルDNJ、4−t−BOC−ピペリジニルメチルDNJ,α−C6−n−ノニル−DNJ,およびα−ホモーDNJを含む。最大増強の半分が観察される1mMのDNJに対するパーセント増強はこれらの化合物について以下の表1および2に掲げる(実施例2)。
【0121】
本発明で用いることが考えられる更なる化合物はN−ノニルDNJ(10);ミグリトール(13);N−5−カルボキシ−ペンチル−1−DNJ(14);メチル−2−ベンゾフラニルDNJ(30);メチル−2−ベンゾチアフェニルDNJ(31);α−C6−n−ブチル−DNJ(33);メチル−2−フラニルDNJ(29);N−n−ヘキシルDNJ(7);N−エチルDNJ(3);N−n−プロピルDNJ(4);N−n−ペンチルDNJ(6);およびβ−C6−ベンジル−DNJ(36);2−(N−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−メチルアミノ)エチル)−DNJ(28);およびN−2−(N−メチル−N−メチレンジオキシフェニルアミノ)エチル−DNJ(37)を含む。
【0122】
活性および局所化アッセイ
Gaaの増強された活性、安定性および/またはトラフィッキングは、細胞Gaaポリペプチドの増加を測定することによって、リソソームへのトラフィッキングの増加を決定することによって、例えば、または増大したGaa活性または安定性を決定することによって決定することができる。上記の各々を評価するための非限定的で例示的な方法は以下に記載する。
【0123】
Gaa細胞内発現の決定 細胞内LPLタンパク質レベルを決定する方法は当分野で既知である。このような方法はウエスタンブロッティング、ウエスタンブロッティング(IPウエスタン)に続く免疫沈澱、またはタグドLPLタンパク質を用いる免疫蛍光法を含む。
【0124】
Gaaトラフィッキングの測定 生合成経路を介するタンパク質のトラフィッキングの評価は、例えば、グルコシダーゼと組み合わせて、35S−標識受容体タンパク質でのパルス−チェイス実験を用いて;あるいは好ましくは、トラフィッキングの間にタンパク質修飾を決定するための間接的または直接的免疫蛍光によって達成することができる。これらのおよび他の方法は、例えば、Current Protocols in Cell Biology 2001;John Wiley & Sonsに記載されている。Gaaのリソソームトラフィッキングを検出するための例示的な免疫蛍光実験は、以下に実施例3および4で詳細に記載する。
【0125】
タンパク質の損なわれたトラフィッキングを検出するための他の方法は、当分野でも周知である。例えば、ゴルジ装置中でN−および/またはO−グリコシル化されるタンパク質については、グリコシダーゼ処理および免疫沈澱と組み合わせて、放射性標識タンパク質を用いるパルス−チェイス代謝産物標識を用いて、タンパク質がゴルジにおいて十分なグリコシル化を受けているか否か、あるいはそれらが更なるグリコシル化のためにゴルジへのトラフィッキングの代わりにERにおいて保持されているか否かを検出することができる。
【0126】
細胞局所化を肉眼で検出するための感度のよい方法は、蛍光タンパク質または蛍光抗体を用いる蛍光顕微鏡も含む。例えば、注目するLPLタンパク質は、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、および赤色蛍光タンパク質、続いて、マルチカラーおよび時間−経過顕微鏡観察および電子顕微鏡観察でタグを付して、固定された細胞における、および生きた細胞におけるこれらのタンパク質の運命を調べることができる。タンパク質トラフィッキングでの蛍光イメージングの使用のレビューについては、Watsonら,Adv Drug Deliv Rev 2005;57(1):43−61参照。タンパク質の細胞内共局所化のために共焦点顕微鏡観察の使用の記載については、Miyashitaら,Methods Mol Biol.2004;261:399−410参照。
【0127】
蛍光修正分光測定(FCS)は、単一分子およびリアルタイム分解が可能な超感受性かつ非侵入性検出方法である(Vukojevicら,Cell Mol Life Sci 2005;62(5):535−50)。SPFI(単一粒子蛍光イメージング)は、小さな蛍光粒子で選択的に標識された個々の分子を可視化するために高感度の蛍光を用いる(Cherryら,Biochem Soc Trans 2003;31(Pt5):1028−31)。生きた細胞のイメージングのレビューについては、Hariguchi,Cell Struct Funct 2002;27(5):333−4参照。
【0128】
生理学的条件下でタンパク質の構造および局所化を調べるのに、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)顕微鏡観察も用いられる(Periasamy,J Biomed Opt 2001;6(3):287−91)。
【0129】
Gaa活性の増加の決定 インビトロでは、Gaa活性は実施例2にて以下に記載するように決定することができる。Gaa活性は、Okumiyaら,Mol Genet Metab.2006 May;88(1):22−8に記載されているように、混合されたリンパ球を用いて薬理学的シャペロンでの処理後にインビボで決定することができる。該方法は、リソソーム酸α−グルコシダーゼ活性を測定するための基質としてグリコーゲンおよび4−メチルウンベリフェリル−アルファ−d−グルコピラノシド(4MU−アルファGlc)を使用し、アカルボースを取り込んで、無関係なα−グルコシダーゼ(圧倒的にマルトース−グルコアミラーゼ)の緩衝を排除する。
【0130】
処方、用量および投与
一実施形態において、シャペロン化合物は、好ましくは(以下に更に記載する)経口投与形態で単一療法として投与するが、他の投与形態も考えられる。この実施形態において、投与方法は、ポンペ患者の血漿中の化合物の一定の定常状態レベルを提供するものであるべきと考えられる。これは、分割用量、または制御−放出処方での毎日の投与によって、あるいは維持−放出投与形態の頻度が低い投与によって得ることができる。シャペロン化合物の投与の処方、用量および経路は、以下に詳細に記載する。
【0131】
処方
本発明の一実施形態において、シャペロン化合物は単一療法として投与され、例えば、錠剤またはカプセルまたは液体の形態での経口投与にて、注射用の滅菌水性溶液にて、または投与に先立ってインビトロでの酵素凝集を妨げるために復元の間にまたはその後直ちに置換Gaa(以下参照)の処方に加えるべき凍結乾燥粉末での形態を含めたいずれかの投与経路に適した投与形態とすることができる。
【0132】
シャペロン化合物を経口投与用に処方する場合、錠剤またはカプセルは、結合剤(例えば、予めゼラチン化されたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、マイクロクリスタリンセルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉またはナトリウム澱粉グリコレート);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような医薬上許容される賦形剤での従来の手段によって調製することができる。錠剤は当分野でも周知の方法によって被覆することができる。経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態を取ることができ、あるいはそれらが、使用の前に水または別の適当なビークルでの復元のための乾燥した製品として供することができる。そのような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビークル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)のような医薬上許容される添加剤での従来の手段によって調製することができる。製剤は、必要に応じて、緩衝塩、フレーバー、着色および甘味料も含有することができる。経口投与用の製剤は、活性シャペロン化合物が制御された放出を与えるように適切に処方することができる。
【0133】
本発明の方法で用いることが考えられるシャペロン化合物であるZAVESCA(登録商標)は、ハードゼラチンカプセルとして市販されており、各カプセルは100mgのDNJ、ナトリウム澱粉グリコレート、ポビドン(K30)およびステアリン酸マグネシウムを含有する。カプセルシェルはゼラチンおよび二酸化チタンを含む。
【0134】
非経口/注射用途に適したシャペロン化合物の医薬処方は、一般には、(水溶性である場合)滅菌水性溶液、または分散液、滅菌注射溶液および分散液の即席調製用の滅菌粉末を含む。全ての場合において、該形態は滅菌されていなければならず、かつ容易なシリンジ性が存在する程度まで流動的でなければならない。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保持されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール等)、その適当な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体でもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などによって実現することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めるのが合理的であろう。注射組成物の延長された吸収は、吸収を遅延する剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によって実現することができる。
【0135】
滅菌注射用液は、必要な量の精製されたGaaおよびシャペロン化合物を先に例示した種々の他の成分と共に適当な溶媒に配合し、必要であれば続いて濾過または最終滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、基本的な分散媒体、および先に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビークルに種々の滅菌された有効成分を取り込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これは、有効成分に加えて、それ以前に滅菌濾過された溶液からのいずれかの更なる所望の成分の粉末を生じる。
【0136】
処方は賦形剤を含有することができる。処方に含めることができる医薬上許容される賦形剤はクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、および炭酸水素緩衝液のような緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質;血清アルブミン、コラーゲンおよびゼラチンのようなタンパク質;EDTAまたはEGTA、および塩化ナトリウムのような塩;リポソーム;ポリビニルピロリドン;デキストラン、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールのような糖;プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(例えば、PEG−4000、PEG−6000);グリセロール;グリシンまたは他のアミノ酸;および脂質である。処方で用いるための緩衝液系はクエン酸;酢酸;炭酸水素;およびリン酸緩衝液を含む。リン酸緩衝液は好ましい実施形態である。
【0137】
処方は非イオン性洗剤を含有することもできる。好ましい非イオン性洗剤はポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトンX−100、トリトンX−114、ノニデット(Nonidet)P−40、オクチルα−グルコシド、オクチルβ−グルコシド、Brij35、プルロニック(Pluronic)およびツイーン(Tween)20を含む。
【0138】
投与
シャペロン化合物の投与経路は経口(好ましい)または非経口であってもよく、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、目、筋肉内、口腔内、直腸内、膣内、眼窩内、大脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、心室内、クモ膜下腔、嚢内、関節包内、肺内、鼻内、経粘膜、経皮または吸入であってもよい。
【0139】
シャペロン化合物の上記非経口処方の投与は製剤のボーラスの周期的注射によることができ、あるいは外部(例えば、静脈内バッグ)または内部(例えば、生体分解性インプラント)である貯蔵庫からの静脈内または腹腔内投与によって投与してもよい。例えば、各々を参照として本明細書に組み入れられる米国特許第4,407,957号および第5,798,113号参照。肺内送達方法および装置は、例えば、各々を参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,654、007号、第5,780,014号および第5、814、607号に記載されている。他の有用な非経口送達系は、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能注入系、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、ニードル−送達注射、無ニードル注射、ネブライザー、エアロゾライザー、エレクトロポレーションおよび経皮貼布を含む。無ニードル注射デバイスは、その明細書が参照として本明細書に組み入れられている、米国特許第5,879,327号;第5,520,639号;第5,846,233号および第5,704,911号に記載されている。上記処方のいずれもこれらの方法を用いて投与することができる。
【0140】
皮下注射は、静脈内投与と比較して長い血漿内半減期も持ちつつ、自己投与が可能であるという利点がある。更に、再充填可能注射ペンおよび無ニードル注射デバイスのような患者の便宜のために設計された種々のデバイスを、本明細書中で議論する本発明の処方で用いることができる。
【0141】
用量
内因性突然変異体Gaaを救済し、(および/または投与された精製Gaaを安定化させる;以下の組合せ療法のセクション参照)するのに有効なシャペロン化合物の量は、当業者がケースバイケースに基づいて決定することができる。半減期(t1/2)、ピーク血漿内濃度(Cmax)、ピーク血漿内濃度までの時間(tmax)、曲線下面積(AUC)によって測定された暴露、および置換タンパク質およびシャペロン化合物双方についての組織分布、ならびにシャペロン/置換Gaa結合についてのデータ(親和性定数、会合および解離定数、および価性)のような薬物動態および薬力学は、その活性を阻害することなく、置換タンパク質を安定化し、このようにして、治療効果を付与するのに必要な適合する量を決定するための当分野で既知の通常の方法を用いて得ることができる。
【0142】
細胞培養アッセイまたは動物実験から得られたデータを用いて、ヒトおよびヒト以外の動物で用いられる治療用量範囲を処方することができる。本発明の治療方法で用いられる化合物の用量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性がなくして、(テストされた集団の50%に対して有効な)ED50濃度を含むある範囲の循環濃度内にある。いずれかの治療で用いられる特定の用量は、使用される特定の投与形態、利用される投与の経路、個人(例えば患者)の状態などのような因子に依存して、この範囲内で変化させることができる。
【0143】
治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定し、動物モデルで処方して、IC50を含む循環濃度範囲を達成することができる。化合物のIC50濃度は、(例えば、細胞培養アッセイから決定される)症状の最大の半分の抑制を達成する濃度である。特定の個人、例えば、ヒト患者で用いられる適当な用量は、そのような情報を用いてより正確に決定することができる。
【0144】
血漿中の化合物の尺度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはガスクロマトグラフィーのような技術によって患者のような個人でルーチン測定することができる。
【0145】
組成物の毒性および治療効果は、例えば、細胞培養アッセイにおいて、または実験動物を用いて標準的な医薬的手法によって決定して、LD50およびED50を決定することができる。パラメーターLD50およびED50は当分野でもよく知られており、各々、集団の50%に対して致死効果がある、および集団の50%において治療的に有効である化合物の用量をいう。毒性および治療効果の間の用量比率を治療指数といい、比率:LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を呈するシャペロン化合物が好ましい。
【0146】
1つの例示的な用量養生法として、N−ブチル−DNJ(ZAVESCA(登録商標))は、分割用にて1日当たり100〜300mgの経口用量にてゴーシェ病の治療で投与される(1日当たり2〜3回)。100mgの投与に続き、tmaxはゴーシェ患者において2〜2.5時間の範囲であった。ZAVESCA(登録商標)の半減期は約6〜7時間であり、これは、3回の毎日の投与後1,5〜2日までに定常状態が達成されることを予測する。ZAVESCA(登録商標)がヒトにおいて代謝される証拠はない。
【0147】
Gaaの最適シャペロン活性については、糖脂質合成を妨げるのに必要なものよりもより低い用量のDNJ誘導体が有効であると予測される。例えば、5および150mg/日の間、特に5〜75mg/日の間の用量が、より高いGaa−増強活性を有するDNJ誘導体で好ましい。いくつかのDNJ誘導体は、低下したGaa−増強活性のためわずかにより高い用量を必要とするであろう。
【0148】
シャペロン化合物の最適濃度は、組織における、または血液循環におけるシャペロン化合物のその活性、生物学的利用性、および組織における、または血液循環におけるシャペロン化合物の代謝を妨げることなく、組織または血液循環において、インビボにて組換えタンパク質の適切な立体構造を安定化し、誘発するのに必要な量に従って決定されるであろう。例えば、シャペロン化合物は酵素阻害剤である場合、阻害剤の濃度は、該酵素についての特異的シャペロンのIC50値を計算することによって決定することができる。化合物の生物学的利用性および代謝を考慮し、IC50値のまわりの、またはIC50値をわずかに上回る濃度を、次いで、酵素活性に対する効果、例えば、酵素活性の量を増加させる、または投与された酵素の酵素活性を延長するのに必要な阻害剤の量に基づいて評価することができる。その例として、α−Gal A酵素についての化合物デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)のIC50値は0,04μMであり、DGJは優れた阻害剤であることを示す。従って、α−Gal Aの細胞内濃度は投与されたα−Gal Aのそれよりもかなり低いであろうと予測される。
【0149】
酵素置換療法との組合せ療法
酵素置換療法は、注入によって野生型または生物学的に機能的な酵素を外因的に導入することによってタンパク質の量を増加させる。この療法は、先に参照したリソソーム貯蔵障害、ゴーシェ病およびファブリー病を含めた多くの遺伝的障害のために開発されてきた。野生型酵素は、組換え細胞発現系(例えば、哺乳動物細胞または昆虫細胞−Desnickらに対する米国特許第5,580,757号;Seldenらに対する米国特許第6,395,884号および第6,458,574号;Calhounらに対する米国特許第6,461,609号;Miyamuraらに対する米国特許第6,210,666号;Seldenらに対する米国特許第6,083,725号;Rasmussenらに対する米国特許第6,451,600号;Rasmussenらに対する米国特許第5,236,838号;およびGinnsらに対する米国特許第5,879,680号)、ヒト胎盤、または動物乳(Reuserらに対する米国特許第6,188,045号参照)から精製される。注入の後、外因性酵素は、非特異的または受容体−特異的メカニズムを介して組織によって摂取されると予測される。一般には、摂取効率は高くなく、外因性タンパク質の循環時間は短い(Ioannuら,Am.J.Hum.Genet.2001;68:14−25)。加えて、外因性タンパク質は不安定であって、迅速な細胞内分解に付され、ならびに引き続いての処理での有害な免疫学的反応の可能性を有する。
【0150】
ポンペ病の酵素置換は、いくつかのグループ、Klingeら、Neuropediatrics.2005;36(1):6−11;Klingeら、Neuromuscul Disord.2005;15(1):24−31;Van den Houtら,J Inherit Metab Dis.2001;24(2):266−74;およびAmalfitanoら,Genet Med.2001;3(2):132−8によって記載されているが、限定的な成功に過ぎなかった。ヒト投与のための組換えGaaはVan den Houtら,Lancet.2000;56:397−8に記載されている。
【0151】
本発明は、インビトロにて処方または組成物中でタンパク質についてのASSCの共投与によって、ミスフォールディングによって特徴付けられる突然変異したGaaを有するポンペ患者においてインビボにて精製されたタンパク質の安定性を増大させることによって、タンパク質置換療法の有効性を増大させる。
【0152】
一実施形態において、置換Gaaおよびシャペロン化合物は別々の組成物に処方される。一実施形態において、DNJ誘導体シャペロン化合物および置換Gaaは同一の経路、例えば、静脈内注入に従って、あるいは好ましくは、異なる経路、例えば、置換酵素については静脈内注入、および上記セクションに記載されたシャペロン化合物については経口投与によって、投与することができる。
【0153】
置換Gaaはシャペロンの投与について上記した経路のいずれかによって投与するが、好ましくは、投与は非経口である。より好ましくは、投与は注射用の滅菌溶液中にて静脈内である。
【0154】
別の実施形態において、シャペロン化合物および置換Gaaは1つの組成物に処方される。そのような組成物は貯蔵およびインビボ投与の間に酵素の安定を増強させ、それにより、コストを低下させ、治療効果を増大させる。処方は好ましくは静脈内、皮下および腹腔内を含めた非経口投与に適しているが、経口、鼻内、または経皮のような他の投与経路に適した処方も考えられる。
【0155】
投与のタイミング 置換Gaaおよびシャペロン化合物が別々の処方内にある場合、投与は同時としてもよく、またはシャペロン化合物を置換Gaaに先立って、または後に投与してもよい。例えば、置換酵素を静脈内投与する場合、シャペロン化合物を0時間から6時間後の期間の間に投与することができる。代替として、シャペロン化合物はタンパク質に先立って0〜6時間に投与することができる。
【0156】
好ましい実施形態において、シャペロン化合物および置換タンパク質を別々に投与する場合、およびシャペロン化合物が短い循環半減期を有する場合(例えば、小分子)、シャペロン化合物を毎日のように連続的に経口投与して、血液循環中の一定レベルを維持することができる。そのような一定レベルは、患者にとって非毒性であり、および非阻害性治療効果を付与するのに、投与の間の標的置換タンパク質との干渉に関して最適であると決定されたものであろう。
【0157】
別の実施形態において、シャペロン化合物は、(シャペロン化合物の投与によって延長されるであろう)置換Gaaの代謝回転に必要な期間の間に投与される。
【0158】
置換Gaaの用量 現行の方法によると、置換酵素の濃度は、一般には、約0.05〜5.0mg/kg体重の間であり、典型的には、毎週または2週間毎に投与される。酵素は0.1μg/kg〜約10mg/kgの範囲で、好ましくは約0.1mg/kg約2mg/kgの範囲の量で投与することができる。例えば、ファブリー病の治療では、投与される組換えα−Gal Aの用量は、典型的には、0.1〜0.3mg/kgの間あって、毎週または2週間毎に投与される。タンパク質の規則的に反復される用量は患者の生涯にわたって必要である。皮下注射は薬物へのより長い期間の全身暴露を維持する。皮下用量は、好ましくは、2週間毎のまたは毎週の0.1〜5.0mgの体重1kg当たりのα−Gal Aである。また、該α−Gal Aは、例えば、静脈内ボーラス注射にて、ゆっくりと押す静脈内注射にて、または連続的静脈内注射によって静脈内投与される。(例えば、2〜6時間にわたる)連続的静脈内注入は、血液中での特異的レベルの維持を可能とする。
【0159】
組換えまたは精製されたGaaの有効用量は、ポンペにおける標的組織、骨格筋が内皮および間質組織によって組換え投与される酵素から守られるという事実により、ファブリーまたはゴーシェ病で必要とされるものよりも、高いであろうと予測される。組換えGaa(Myozyme,Genzyme,Inc.)は、ポンペ病の治療で現在承認されている。更なる試験がSynpac,Inc.と連携してデューク(Duke)大学、および欧州で進行中である。1つの欧州の実験では、乳児性ポンペ患者はウサギ乳からの組換えヒトGaaの1週間当たり15および20mg/kgの用量で開始し、他方、実験の間には、筋肉組織活動レベルのモニタリングに基づいて、用量は1週間に1回の静脈内注入にて40mg/kgまで増大させた。実験は36週間にわたって144回の注入の間継続した。(Van den Houtら,Pediatrics.2004;113:448−57)。数人の後期−発症ポンペ患者での1つの試験において、ウサギ乳からの組換えヒトGaaは5%グルコースおよび0,1%ヒト血清アルブミンを含む生理食塩水中の1〜2mg/ml溶液として静脈投与され、最初は、10mg/kgの毎週の用量であり、20mg/kgまで増大させた(Winkelら,Ann Neurol.2004;55:495−502)。
【0160】
遺伝子治療との組換え療法
合衆国においては治療的処置について未だ承認されていないが、多数の遺伝的障害のための遺伝子治療(エクスビボおよび直接的導入の双方)は研究中である。本発明では、ポンペ病において欠陥があるGaaを置き換えるための遺伝子治療と組み合わせたシャペロン化合物の使用も考えられる。そのような組合せは、インビボにて治療Gaaの発現のレベルを増大させることによって遺伝子治療の効率を増強させる。というのは、突然変異した酵素のフォールディングおよびプロセッシングの増強に加えて、小分子シャペロンが、野生型または立体構造的に安定なカウンターパートのフォールディングおよびプロセッシングを増強させることが示されているからである(例えば、Fanらに対する米国特許第6,274,597号、実施例3参照)。
【0161】
最近、Sunら(Mol Ther.2005;11(1):57−65)は、ポンペ病の免疫欠陥マウスモデル(Gaaノックアウト/SCIDマウス)への徐脈内注射のためにヒトGaa(hGaa;AAV8としてシュードタイプ化(AAV2/8))をコードするアデノ−関連ウィルス(AAV)ベクターを使用した。hGaaの高いレベルを、AAV2/8ベクター投与後に24時間血漿中で維持した。心臓および骨格筋中でのGaaの欠乏はオスマウスにおいてAAV2/8ベクターで修正し、他方、メスマウスは心臓においてのみ修正を有した。
【0162】
当分野で利用可能である、または利用可能となった遺伝子治療の方法のいずれも、治療遺伝子を送達するのに用いることができる。例示的な方法は以下に記載されている。遺伝子治療の方法の一般的なレビューについては、Goldspielら,Clinical Pharmacy 1993,12:488−505;Wu and Wu,Biotherapy 1991,3:87−95;Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.1993,32:573−596;Mulligaan,Science.1993,260:926−932;およびMorgaan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.1993,62:191−217;May,TIBTECH 1993,11:155−215参照。用いることができる組換えDNA技術の当分野で普通に知られている方法は、Ausubelら,(eds.),1993,Current Protocols in Morecular Biology,John Wiley & Sons,NY;Kriegler,1990,Gene,Transfer and Expression,A Laboratory Mannual,Stockton Press,NYにおいて、およびChapters 12 and 13,Dracopoliら,(eds.),1994,Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY;およびColosimoら,Biotechnics 2000;29(2):314−8,320−2,324に記載されている。
【0163】
本発明の方法で投与すべきGaa遺伝子は、当業者の技量内にある通常の分子生物学微生物学、および組換えDNA技術を用いて単離し、精製することができる。例えば、標的タンパク質をコードする核酸は、文献に記載されているように、組換えDNA発現を用いて単離することができる。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Morecular Cloning: A Laboratory Mannual,Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, New York;DNA Cloning: A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Symphesis (M.J.Gait ed.1984);Nuclic Acid Hybridization [B.D.Hames & S.J.Eiggins eds.(1985)]:Transcription And Translation [B.D.Hames & S.J.Eiggins,eds.(1984)];Animal Cell Culture [R.I.Freshney,ed.(1986)];Immobilized Cells And Enzymes [IRL Press,(1986)];B.E Perbal,A Practical Guide To Morecular Cloning (1984)参照。タンパク質をコードする核酸は、該遺伝子が生物学的活性なタンパク質をコードする限り、全長または切形されていてもよい。
【0164】
次いで、同定され単離されたGaa遺伝子を適当なクローニングベクターに挿入することができる。遺伝子治療に適したベクターはアデノウィルス、アデノ−関連ウィルス(AAV)、ワクシニア、ヘルペスウィルス、バキュロウィルスおよびレトロウィルス、パルボウィルス、レンチウィルス、バクテリオファージ、コスミッド、プラスミド、真菌ベクター、および種々の真核生物および原核生物宿主での発現で記載されており、遺伝子治療で、ならびに単純なタンパク質発現で用いることができる、当分野で典型的に用いられる他の組換えビークルのようなウィルスを含む。
【0165】
好ましい実施形態において、ベクターはウィルスベクターである。ウィルスベクター、特にアデノウィルスベクター、標的細胞のウィルス感染の増大した効率を提供する、カチオン性脂質、ポリL−リシン(PLL)、およびジエチルアミノエチルデキストラン(DELAE−デキストラン)のようなカチオン性両親媒体と複合体化することができる(例えば、本明細書に参照として組み入れられる1997年11月20日に出願されたPCT/US97/21496参照)。本発明で用いられる好ましいウィルスベクターはワクシニア、ヘルペスウィルス、AAVおよびレトロウィルスに由来するベクターを含む。特に、ヘルペスウィルス、特に、その開示が本明細書に組み入れられる米国特許第5,672,344号に開示されたもののような単純疱疹ウィルス(HSV)は、導入遺伝子のニューロン細胞への送達で特に有用である。その開示が本明細書に組み入れられる米国特許第5,139,941号、第5,252,479号および第5,753,500号、およびPCT国際公開公報第97/09441号に開示されたもののようなAAVベクターも有用である。というのは、これらのベクターは宿主染色体へ組み込まれ、ベクターの反復投与の必要性が最小だからである。遺伝子治療におけるウィルスベクターのレビューについては、McConnellら,Hum Gene Ther.2004(11):1022−33;Mccartyら,Annu Rev Genet.2004;38:819−45;Mahら,Clin.PHarmacokinet.2002;41(12):901−11;Scottら,Neuromuscul.Disord.2002;12 Suppl 1:S23−9参照。加えて、米国特許第5,670,488号参照。Beckら,Curr Gene Ther.2004;4(4):457−67は、特に、心血管細胞における遺伝子治療を記載する。
【0166】
送達すべき遺伝子のコーディング配列は、発現制御配列、例えば、遺伝子の発現を指令するプロモーターに操作可能に連結されている。本明細書中で用いるように、フレーズ「操作可能に連結された」とは、プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳停止部位、および他のシグナル配列のようなヌクレオチドの調節およびエフェクター配列とポリヌクレオチド/遺伝子との機能的関係をいう。例えば、プロモーターに対する核酸の操作的結合とは、DNAの転写が、プロモーターを特異的に認識し、それに結合するRNAポリメラーゼによってプロモーターから開始されるように、ポリヌクレオチドおよびプロモーターの間の物理的および機能的関係をいい、ここで、プロモーターはポリヌクレオチドからのRNAの転写を指令する。
【0167】
他の特別な実施形態において、コーディング配列およびいずれかの他の所望の配列に、ゲノム中の所望の部位における相同組換えを促進する領域が均質したベクターを用い、このようにして、ゲノムに組み込まれた核酸分子からの構築体の発現を提供する(Koller and Smithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1989,86:8932−8935;Zijlstraら,Nature.1989,342:435−438;Zarlingらに対する米国特許第6,244,113号:およびPatiらに対する米国特許第6,200,812号)。
【0168】
遺伝子送達
患者へのベクターの送達は直接的であってもよく、その場合、患者は直接的にベクターまたは送達複合体に暴露され、あるいは間接的であってもよく、この場合、細胞をまずインビトロにてベクターで形質転換し、次いで、患者に移植する。これらの2つのアプローチは、各々、インビボおよびエクスビボ遺伝子治療として知られている。
【0169】
直接的導入 特別な実施形態において、ベクターはインビボにて直接的に投与され、そこでは、それは生物の細胞に入り、遺伝子の発現を媒介する。これは、当分野で知られ、かつ上記で議論した多数の方法のいずれかによって、例えば、それを適当な発現ベクターの一部として構築し、それが細胞内になるようにそれを投与することによって、例えば、欠陥があるまたは弱毒化レトロウィルスまたは他のウィルスベクターを用いて感染することによって(米国特許第4,980,286号参照)、または裸のDNAの直接的注射によって、あるいはミクロ粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)の使用によって;または脂質または細胞−表面受容体またはトランスフェクト剤での被覆、バイオポリマー(例えば、ポリ−β−1−64−N−アセチルグルコサミン多糖;米国特許第5,635,493号参照)へのカプセル化、リポソーム、ミクロ粒子またはマイクロカプセルへのカプセル化;ペプチドまたは核に入ることが知られている他のリガンドへ結合したそれを投与することによって;または受容体−媒介エンドサイトーシスに従うリガンドに結合したそれを投与することによって(例えば、Wu and Wu,J.Biol.Chem.1987,62:4429−4432参照)達成することができる。別の実施形態において、核酸−リガンド複合体を形成することができ、そこでは、リガンドは、エンドソームを破壊し、核酸がリソソーム分解を回避するのを可能とするための融合形成ウィルスペプチド、または治療DNAを細胞に導入するのに用いることができる、例えば、アンテナペディアに由来するカチオン性12−量体ペプチド(Miら,Mol.Therapy.2000,2:339−47)を含む。なお別の実施形態において、核酸は、特異的受容体を標的化することによって、細胞特異的摂取および発現のためにインビボで標的化することができる(例えば、PCT国際公開公報第92/06180号、国際公開公報第92/22635号、国際公開公報第92/20316号および国際公開公報第93/14188号参照)。最近、マグネトフェクションといわれる技術がベクターを哺乳動物に送達するのに用いられてきた。この技術は、ベクターを、磁場の影響下で、送達用の超常磁性ナノ粒子と会合させる。この適用は送達時間を低下させ、ベクター効率を増強させる(Schererら,Gene Therapy.2002;9:102−9)。更なる標的化および送達方法が以下のベクターの記載で考えられる。
【0170】
特別な実施形態において、核酸は脂質担体を用いて投与することができる。脂質担体を裸の核酸(例えば、プラスミドDNA)と会合させて、細胞膜を通っての通過を容易とすることができる。カチオン性、アニオン性または中性脂質をこの目的で用いることができる。しかしながら、カチオン性脂質が好ましい。なぜならば、それらは一般に負の電荷を有するDNAと両方に会合することが示されているからである。カチオン性脂質もまたプラスミドDNAの細胞内送達を媒介することが示されている(Felgner and Ringold,Nature.1989;337:387)。マウスへのカチオン性脂質−プラスミド複合体の静脈内注射は、肺におけるDNAの発現をもたらすことが示されている(Brighamら,Am.J.Med.Sci.1989;298:278)。また、Osakaら,J.Pharm.Sci.1996;85(6):612−618;Sanら,Human Gene Therapy.1993;4:781−788;Seniorら,Biochemica et Biophysica Acta.1991;1070:173−179);Kabanov and Kabanov,Bioconjugate Chem.1995;6:7−20;Liuら,Pharmaceut.Res.1996;13;Remyら,Bioconjugate Chem.1994;5:647−654;Beher,J−P.,Bioconjugate Chem.1994;5:382−389;Wymanら,Biochem.1997;36:3008−3017;Marshallら,に対する米国特許第5,939,401号;およびScheuleら,に対する米国特許第6,331,524号参照。
【0171】
代表的なカチオン性脂質は、例えば、その開示が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,283,185号;および例えば米国特許第5,767,099号に開示されたものを含む。好ましい実施形態において、カチオン性脂質は米国特許第5,767,099号に開示されたN4−スペルミンコレステリルカルバメート(GL−67)である。更なる好ましい脂質はN4−スペルミジンコレステリルカルバメート(GL−53)および1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート(GL−89)を含む。
【0172】
好ましくは、ウィルスベクターのインビボ投与では、適当な免疫抑制処置を、ウィルスベクター、例えば、アデノウィルスベクターと組み合わせて使用して、ウィルスベクターおよびトランスフェクトされた細胞の免疫−脱活性化を回避する。例えば、インターロイキン−12(IL−12)、インターフェロン−γ(IFN−γ)または抗−CD4抗体のような免疫抑制サイトカインを投与して、ウィルスベクターに対する液性または細胞性免疫応答をブロックする。その点に関して、最少数の抗原を発現するように設計されたウィルスベクターを使用するのが有利である。
【0173】
間接的導入 体細胞は、上記した方法のいずれかを用いて野生型タンパク質をコードする構築体にてエクスビボで作製し、個体に再度移植することができる。この方法は、一般には、Seldenら,に対する国際公開公報第93/09222号に記載されている。加えて、この技術はPayumoら,Clin.Orthopaed.and Related Res.2002;403S:S228−S242に記載された細胞ベースの送達の所有されたImPACT技術で用いられる。そのような遺伝子治療系においては、体細胞(例えば、線維芽細胞、肝細胞または内皮細胞)を患者から取り出し、インビトロにて培養し、当該治療に係る遺伝子でトランスフェクトし、特徴付け、患者に再度導入する。(個体または組織に由来し、継体に先立って作製された)双方の初代細胞、および(インビボでの導入に先立ってインビトロにて継体した)二次細胞、ならびに当分野で既知の不滅化細胞系を用いることができる。本発明の方法で有用な体細胞は、限定されるものではないが、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、内皮細胞、神経膠細胞、神経細胞、血液の形成されたエレメント、筋肉細胞、培養することができる他の体細胞、および体細胞前駆体のような体細胞を含む。好ましい実施形態において、細胞は線維芽細胞または間葉幹細胞である。
【0174】
受容者初代または二次細胞における外因性遺伝子の発現で必要な更なる配列と共に、外因性遺伝子および、場合によって、選択マーカーをコードする核酸を含む核酸構築体を用いて、コードされた産物は生産される初代または二次細胞をトランスフェクトする。そのような構築体は、限定されるものではないが、レトロウィルス、ヘルペス、アデノウィルス、アデノウィルス−関連、おたふく風邪およびポリオウィルスベクターのような感染性ベクターを含み、この目的で用いることができる。
【0175】
経皮送達は、ケラチノサイト、メラノサイト、および樹状細胞を含めた表皮の細胞型を用いる間接的導入で特に適している(Pfutznerら,Expert Opin.Investig.Drugs.2000;9:2069−83)。
【0176】
間葉幹細胞(MSC)は、骨髄で生産される非血液−生産幹細胞である。MSCは分化し、特殊化された非血液組織に増殖させることができる。レトロウィルスでトランスフェクトされた幹細胞は、自己−更新のためのそれらの能力により療法での良好な候補である。この能力は、遺伝子治療の反復的投与を排除する。別の利点は、もし注射された幹細胞が標的器官に到達し、次いで、分化するならば、それらは器官における損傷しまたは異常に形成された細胞を置き換えることができる。
【0177】
インビトロ安定性
そのシェルフライフの間における医薬処方の安定性の確保は主な挑戦である。タンパク質医薬の開発に先立って、有効成分内の固有のまたは潜在的不安定性が研究し、取り組まれなければならない。タンパク質およびペプチド治療剤の不安定性が化学的不安定性または物理的不安定性として分類される。化学的不安定性の例は加水分解、酸化および脱アミド化である。物理的不安定性の例は凝集、沈殿および表面への吸着である。加えて、タンパク質はpH、温度、剪断応力、凍結/解凍応力、およびこれらの応力の組合せのような応力に付すことができる。
【0178】
最も普及している処方の問題の1つは生成物の凝集であり、生物活性の喪失をもたらす。賦形剤の添加はプロセスを遅らせることができるが、それを完全には妨げることはできない。活性の喪失は物理的アッセイによって検出してもよく、またはそうでなくてもよく、変動の大きな(時々、15〜20%)係数でもってバイオアッセイまたは効力アッセイで明らかであるに過ぎず、実質的な喪失の決定を困難としている。
【0179】
投与すべき置換酵素を安定化させるに加えて、シャペロン化合物の存在によって医薬処方を約7.0〜約7.5の中性pHでの貯蔵が可能になる。これは、通常はより低いpHで貯蔵して安定性を維持しなければならない酵素に利点を付与するであろう。例えば、Gaaを含めたリソソーム酵素は低いpH(例えば、5.0以下)において安定した立体構造を維持する。しかしながら、低いpHにおける置換酵素の延長された貯蔵は、酵素および/または処方の分解を早めかねない。安定化シャペロン化合物の添加は酸中で置換タンパク質を貯蔵する必要性を排除できる。
【0180】
[実施例]
以下に示す実施例によって本発明を更に記載する。そのような実施例の使用は説明のためだけであり、本発明の、およびいずれかの例示された用語の範囲および意味を断じて限定するものではない。同様に、本発明は本明細書中に記載されたいずれかの特別な好ましい実施形態に限定されない。事実、本発明の多くの修飾および異形は、本明細書を読むに際して当業者に明らかであり、その精神および範囲から逸脱することなくなすことができる。したがって、本発明は、特許請求の範囲がその権利を有する同等な全範囲と共に特許請求の範囲の事項によってのみ限定されるべきである。
【0181】
[実施例1]
DNJおよび誘導体の合成
テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノルジマイシン[一般的なイミノ糖調製−1]
【化16】
【0182】
乾燥したCH2Cl2(75mL)中のDMSO(4.4mL、0.124モル)の溶液をアルゴン雰囲気下に置き、−78℃まで冷却した。乾燥したCH2Cl2(50mL)中の無水トリフルオロ酢酸(6.1mL、0.088モル)の溶液をゆっくりと加え、温度を−78℃に維持した。添加が完了した後、反応を更に30分間撹拌する。CH2Cl2中の2,3,4,6−テトラ−O−ベンジルグルシトール(5.4g、10ミリモル)の溶液を滴下する。反応を−78℃で90分間撹拌し、次いで、CH2Cl2(50mL)中のトリエチルアミン(11.2mL、0.08モル)の添加によってクエンチする。反応を0℃まで暖め、次いで、ロトバップ(rotovap)を用いて濃縮する。残渣をMeOH(75mL)で希釈し、MeOH(10.0mL、20.0ミリモル)中の2M NH3の溶液、続いて、ギ酸(0.77mL、20.0ミリモル)、3Åモレキュラシーブおよび最終的に、NaCNBH3(1.57g、25.0ミリモル)を加える。混合物を室温にて一晩撹拌する。溶媒をロトバップを用いて蒸発させる。残渣をEtOAcに溶解させ、10%Na2CO3で洗浄し、次いで、Na2SO4上で乾燥する。濾過の後、溶媒を蒸発させ、生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の段階グラジエント20〜40%EtOAc)によって精製して、2,3,4,6−テトラベンジル−1−デオキシノジリマイシンを得る。
【0183】
1−デオキシノジリマイシン塩酸塩(化合物1)
【化17】
【0184】
EtOH(100mL)中の2,3,4,6−テトラベンジル−1−デオキシノジリマイシン(5.0g、9.5ミリモル)の溶液を2−PrOH(3.0mL、15.0ミリモル)中の5N HClと共に撹拌し、次いで、ロトバップを用いて蒸発させる。残渣をEtOHに溶解させ、ロトバップを用いて再度蒸発させる。残渣をEtOH(150mL)に溶解させ、0.5gのPd(OH)2で室温にて一晩水素化する(50psi)。触媒を濾過によって除去し、濾過ケーキをEtOH/H2Oおよび、次いで、最後にEtOHで洗浄する。濾液をロトバップで蒸発させ、次いで、EtOHで共蒸発させて、白色固体を得る。固体をEtOHでトリチュレート(triturated)し、濾過して、白色固体を得る。EtOH/H2Oからの再結晶により、標記化合物を白色固体として得る。MP 212−215℃,MH+=164。
【0185】
N−(2−ヒドロキシエチル−1−デオキシノジリマイシンジメチルカルバメート(化合物15)
【化18】
【0186】
N−(2−ヒドロキシエチル)−テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノジリマイシンジメチルカルバメート(0.63g、0.99ミリモル)を50mlのメタノールに溶解させ、130マイクロリットルの濃塩酸(1.6ミリモル)および触媒としての20%水酸化パラジウム(0.2g、0.3ミリモル)で処理する。不均一な反応混合物を水素の雰囲気下に置き、15時間撹拌する。触媒をセライトを通す濾過によって除去し、これを更にメタノールで洗浄する。濾液をロトバップを用いて濃縮し、クロロホルム:メタノール(4:1)で溶出するフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製する。適当な画分をロトバップを用いて濃縮し、次いで、水から凍結乾燥して、N−(2−ヒドロキシエチル)−1−デオキシノジリマイシンジメチルカルバメート誘導体(V,化合物14)(MS=279.4,M+H)を得る。
【0187】
N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシエチル)−1−デオキシノジリマイシン(化合物19)
【化19】
【0188】
トリフルオロエチルエーテル中間体(IX)(0.40g、0.62ミリモル)を150mlのメタノールに溶解させ、130マイクロリットルの濃塩酸(1.6ミリモル)および20%水酸化パラジウム(0.2g、0.3ミリモル)で処理する。不均一な反応混合物を水素の雰囲気下に置き、パールシェーカーを用いて40psiまで圧縮する。32時間後、触媒をセライトを通す濾過によって除去し、これを更なるメタノールで洗浄する。濾液をロトバップを用いて濃縮し、クロロホルム:メタノール(4:1)で溶出するフラッシュ/シリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製する。適当な画分をロトバップを用いて濃縮し、次いで、水から凍結乾燥して、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシエチル)−1−デオキシノジリマイシンを黄色フォーム(MS=290.2,M+H)を得る。
【0189】
N−(メトキシエチル)DNJ(化合物20)
【化20】
【0190】
2−メトキシエチルアミンをNH3の代わりに用いる以外は一般的なイミノ糖調製−1を用いて標記化合物を得る。MS(ES+):222[M+1]。
【0191】
N−(エトキシエチル)DNJ(化合物21)
【化21】
【0192】
2−エトキシエチルアミンをNH3の代わりに用いる以外は一般的なイミノ糖調製−1を用いて標記化合物を得る。MS(ES+):258[M+Na]。
【0193】
N−R−(−)−テトラヒドロフリルメチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物17)
【化22】
【0194】
60℃まで暖めつつ、60psiの水素雰囲気下で、テトラヒドロフリルメチル−テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノジリマイシンをエタノール中の水酸化パラジウムを用いて脱ベンジル化する。クロロホルム−メタノール:水酸化アンモニウム(80:20:2)の混合物で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製して、標記化合物の遊離塩基を白色フォームとして得る。次いで、精製された遊離塩基を2−プロパノール中の1.0当量の無水塩酸での処理によって塩酸塩に変換する。溶媒をロトバップを用いる蒸発によって除去して、所望の塩酸塩を白色固体として得る(MS=248.2,M+H)。
【0195】
N−S−(+)−テトラヒドログラニルメチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物18)
【化23】
【0196】
60℃まで暖めつつ、60psiの水素雰囲気下で、N−S−(+)−テトラヒドログラニルメチル−テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノジリマイシンをメタノール中の水酸化パラジウムを用いて脱ベンジル化する。クロロホルム:メタノール:水酸化アンモニウム(80:20:2)の混合液で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製して、標記化合物を白色フォームとして得る(MS=248.2,M+H)。
【0197】
N−エチル−DNJ(化合物3)[一般的なイミノ糖調製−2]
【化24】
【0198】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(60mL)、DI水(3.0mL)、アセトアルデヒド(6.2g、141ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、H2の60psi圧力下で20〜22℃にて20時間水素化する。触媒をセライト−545のベッドを通す濾過によって除去する。濾液をロトバップを用いて蒸発させる。非揮発性残渣をフラッシュシリカゲルカラムに適用し、塩化メチレン:メタノール:29%の濃NH4OH(70:30:5)からなる混合液で溶出させる。適当な画分を収集し、合わせ、ロトバップを用いて蒸発させる。凍結乾燥により所望の単離された生成物を得る。融点168.3〜169.6℃,m/z192(ES,[M+H]+)。
【0199】
N−プロピル−DNJ(化合物4)
【化25】
【0200】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(60mL)、DI水(10.0mL)、プロピオンアルデヒド(8.1,139ミリモル)およびPdブラック(100mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:56.6〜57.2℃,m/z206(ES,[M+H]+)。
【0201】
N−ペンチル−DNJ(化合物6)
【化26】
【0202】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(100mL)、DI水(10.0mL)、バレルアルデヒド(4.22g、49ミリモル)およびPdブラック(100mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:70〜71℃,m/z234(ES,[M+H]+)。
【0203】
N−ヘキシル−DNJ(化合物7)
【化27】
【0204】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(100mL)、DI水(3.0mL)、ヘキサナール(4.3g、42.9ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:64.4〜65.6℃,m/z248(ES,[M+H]+)。
【0205】
N−ヘプチル−DNJ(化合物8)
【化28】
【0206】
1−DNJ−HCl(1.0g、5.0ミリモル)、メタノール(100mL)、ヘプタアルデヒド(4.9g、42.9ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:107〜108℃,m/z262(ES,[M+H]+)。
【0207】
N−オクチル−DNJ(化合物9)
【化29】
【0208】
1−DNJ−HCl(1.0g、5.0ミリモル)、メタノール(100mL)、オクチルアルデヒド(4.9g、42.9ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:193〜195℃,m/z276(ES,[M+H]+)。
【0209】
N−((ベンゾフラン−2−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物30)
【化30】
【0210】
EtOH(30mL)中のデオキシノジリマイシン塩酸(0.5g、2.5ミリモル)の懸濁液をベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒド(0.55g、3.75ミリモル)、HOAc(0.15mL、3.75ミリモル)およびシアノホウ水素化ナトリウム(0.23g、3.75ミリモル)で処理する。混合物を室温にて24〜36時間撹拌する。溶媒をロトバップを用いて蒸発させ、残渣を9/1のMeOH/NH4OHの混合液に溶解させ、シリカ上で蒸発させる。精製は、CHCl3中の0〜20%(9/1 MeOH/NH4OH)のグラジエントでのフラッシュクロマトグラフィーを用いて達成される。適当な画分を合わせ、溶媒を蒸発させて、標記化合物を白色固体として得る。融点169〜175℃。MH+=294。
【0211】
N−((ベンゾチオヘン−3−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物31)
【化31】
【0212】
ゼンゾチオヘン−3−カルボキシアルデヒドをベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに用いる以外は上記で直接的に化合物について記載した方法を用いて、標記化合物を白色固体として得る。融点145〜149℃。MH+=310。
【0213】
N−((フラン−2−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物29)
【化32】
【0214】
フルフラールをベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに用いる以外は上記で直接的に化合物について記載した方法を用いて、標記化合物を無色油として得る。MH+=244。
【0215】
N−((1,4−ベンゾジオキサン−6−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物28)
【化33】
【0216】
1,4−ベンゾジオキサン−6−カルボキシアルデヒドをベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに用いる以外は上記で直接的に化合物について記載した方法を用いて、標記化合物をアモルファス固体として得る。MH+=312。
【0217】
N−シクロプロピルメチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物11)[一般的なイミノ糖調製−3]
【化34】
【0218】
1−デオキシノジリマイシン(Toronto Research Chemicals,カタログ番号D245000,3.0g、18.4ミリモル)を300mlの無水メタノールに溶解させ、シクロプロパンカルボキシアルデヒド(Aldrich,2.5ml,33.1ミリモル)と合わせる。3オングストロームのモレキュラシーブ(6.0g)加え、混合物を15分間撹拌する。MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,19.2g、46.0ミリモル)、続いて氷酢酸(1.1ml、18.4ミリモル)を加える。反応混合物を48時間で45℃まで暖める。溶液をロトバップを用いて濃縮し、まずクロロホルム、次いで、5:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10/1)、次いで、3:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10/1)、および最後に、1:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10/1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製する。ロトバップを用いる適当な画分の濃縮に際し、標記化合物が白色フォームとして単離される(MS=218.8,M+H)。
【0219】
4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJ(化合物23)およびアルファ−シアノ−4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJ(化合物24)
【化35】
【0220】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(300mg、1.839ミリモル)、4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(Aldrich,576.2mg、3.309ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies, 1.92g、4.596ミリモル)、酢酸(110.4mg、1.839ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製は、まずクロロホルム、次いで、10:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJを白色固体として(MS=322,M+H)およびアルファ−シアノ−4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJを白色固体(MS=347,M+H)として得る。
【0221】
4−トリフルオロメトキシ(ベンジル)−DNJ(化合物25)
【化36】
【0222】
一般的イミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(300mg、1.839ミリモル)、4−トリフルオロメトキシベンズアルデヒド(Aldrich,629.2mg、3.309ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,1.92g、4.596ミリモル)、酢酸(110.4mg、1.839ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、標記化合物を白色固体として得る(MS=338,M+H,融点101〜103℃)。
【0223】
4−n−ブトキシ(ベンジル)−DNJ(化合物27)
【化37】
【0224】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(1.0g、6.1ミリモル)、4−ブトキシベンズアルデヒド(Aldrich,2.0g、11.2ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,6.4g、15.3ミリモル)、酢酸(0.37ml,6.4ミリモル)を合わせ、一般的な手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、標記化合物を白色固体として得る(融点153〜155℃)。
【0225】
4−n−ペントキシ(ベンジル)−DNJ(化合物26)
【化38】
【0226】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(1.0g、6.1ミリモル)、4−ブトキシベンズアルデヒド(Alfa Aesar,2.2g、11.2ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,6.4g、15.3ミリモル)、酢酸(0.37ml,6.4ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、標記化合物を白色固体として得る(MS=340,M+H;融点155〜157℃)。
【0227】
N−(1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ピペリジニルメチル)−1−デオキシノジリマイシン(化合物16)
【化39】
【0228】
一般的イミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(500mg、3.064ミリモル)、1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ピペリジンカルボキシアルデヒド(CNH Technologies,1.18g、5.516ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argoaut Technologies,3.19g、4.596ミリモル)、酢酸(184mg、3.064ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、N−(1−(tertブトキシカルボニル)−4−ピペルジニルメチル)−1−デオキシノジリマイシンを灰色がかった白色固体として得る(MS=361、M+H、融点46〜50℃)
【0229】
N−シクロペンチル−メチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物12)
【化40】
【0230】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(500mg、3.064ミリモル)、シクロペンタンカルボキシアルデヒド(Aldrich、541mg、5.516ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argomaut Technologies,3.19g、7.661ミリモル)、酢酸(184mg、3.064ミリモル)を合わせ、一般的な手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム 8:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、N−シクロペンチルメチル−1−デオキシノジリマイシンを粘性黄褐色油として得る(MS=246、M+H)。
【0231】
C−1−α−ノニル−1−デオキシノジリマイシンおよびC−1−β−ノニル−1−デオキシノジリマイシン(化合物32)[一般的なイミノ糖調製−4]
【化41】
【0232】
Boshagen,Geiger and Junge(Angewante Chemie,Int.Ed.Engl.,20(9),806−807(1981))によって記載されたのと類似の手法を用い、1−α−シアノ−1−デオキシノジリマイシンをMarcuccio(国際公開公報第00/56713号)(1.0g、5.3ミリモル)の方法に従って調製し、ヘキサメチルジシラザン(11ml)に懸濁させる。懸濁液をイミダゾール(156.33mg、2.5ミリモル)で処理し、アルゴン雰囲気下にて5時間で60℃まで加熱する。混合物を濾過して、固体を除去し、ロトバップを用いて濾液を55〜60℃にて濃縮する。残渣を乾燥したTHF(50mL)に溶解させ、n−ノニルマグネシウムブロマイドの溶液(エーテル中1M、31.9ミリモル、38mL)を15〜20℃で加える。混合物を室温まで温め、5時間撹拌する。混合物を氷浴中で冷却し、1N HCl(30mL)と共に3時間撹拌する。混合物のpHを2N NaOHを加えることによって8.0に調整する。有機層を除去し、水性相を凍結乾燥する。残渣をメタノール(50mL)に溶解させ、濾過して、固体を除去する。濾液を真空下で蒸発乾固する。蒸発の後に得られた残渣を、塩化メチレン:メタノール:29%NH4OH(85:15:1.5)を用いるシリカゲルコラムでのクロマトグラフィーに付す。β−異性体(Rf 0.5)を含有する適当な画分を合わせ、ロトバップを用いて蒸発させ、次いで、凍結乾燥して、C−1−β−ノニル−DNJを得る(MS=m/z290)。
【0233】
C1−α−ブチル−DNJ(化合物33)
【化42】
【0234】
一般的なイミノ糖調製−4を用い、1−α−シアノ−1−デオキシノジリマイシン(2.0g、9.5ミリモル)をC−1−α−ブチル−DNJに変換する。生成物を以下の比率:85:15:1.5)の塩化メチレン:メタノール:29%NH4OHを用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。α−異性体(Rf0.3)を含有する適当な画分を合わせ、蒸発させて、溶媒を除去し、凍結乾燥して、標記化合物を得る(MS=m/z220)
【0235】
1−α−ベンジル−DNJ(化合物35)
【化43】
【0236】
一般的なイミノ糖調製−4を用い、テトラ−(O−トリメチルシリル)−1−α−シアノ−1−デオキシノジリマイシン(2.0g、9.448ミリモル)を調製する。保護された化合物を乾燥したTHF(20ml)に溶解させ、ベンジルマグネシウムブロマイド(THF中2.0M、20mL)を滴下する。混合物を撹拌し、45℃にて一晩加熱する。混合物を室温まで冷却し、2N HCl(30mL)を加え、混合物を3時間撹拌する。ロトバップを用いて溶媒を蒸発させ、残渣を29%NH4OHの溶液で処理して、酸を中和する。溶液をエーテル(2×20mL)で洗浄し、水性相を分離し、凍結乾燥する。固体を塩化メチレン:メタノール:29%NH4OH(80:20:4)と共に撹拌し、濾過し、濾液をロトバップを用いて蒸発させる。残渣を、塩化メチレン:メタノール:29%NH4OH(80:20:4)を用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーに付す。α−異性体(Rf0.3)を含有する適当な画分を合わせ、ロトバップを用いて蒸発させ、次いで、凍結乾燥して標記化合物を得る(融点=73〜74℃、MS=n/z254)。1H−NMR,300MHz(D2O)2.28(m,2H),2.55(ddd,1H,J=2.8,5.6,10Hz),2.99(m,2H),3.06(dd、1H,J=2.8,13.6Hz),3.11(m,1H),3.22(dd,1H,J=7.6,11.2Hz),3.56(dd,1H,J=3.2,11.6Hz),および7.2(m、5H)。
【0237】
[実施例2]
GaaのDNJおよびDNJ誘導体での増強
以下に記載する実験は、糖脂質合成を担う酵素の既知の阻害剤であるDNJおよびDNJ誘導体をN−ブチル−DNJを用いて、糖脂質合成を阻害することなく突然変異体Gaaに結合し、その活性を増強することができることを示す。
【0238】
方法
細胞培養およびシーディング PM11(P545L)、PM8およびPM12(共にスライシング欠陥)、線維芽細胞系を増強実験で用いた。これらの細胞はポンペ患者から単離した線維芽細胞である。細胞を、滅菌された底が黒色透明の96ウェルCostarプレートにて180μL培地中にウェル当たり約5000細胞で蒔き、5%CO2にて37℃で約3〜6時間インキュベートする。培地は10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMからなるものであった。
【0239】
薬物処理 全てのテスト化合物を1:1DMSO:H2Oを100mMストック濃度まで溶解させる。別の滅菌された底が黒色透明のCostarプレートを用いる細胞の系列希釈は以下のように行った:
1.20μLLの1:1 DMSO:H2Oおよび180μLの培地を、培地中5%DMSO、5%H2Oの濃度について、列3〜11および列1、行E〜Hに加えた。
2.20μLの100mM DNJおよび180μLの培地を、10mM DNJの濃度について、列1、行A〜Dに加えた。
3.テストすべき30μLの各100mMストック溶液を、10mMの濃度について、270μLの培地と共に列2中の適当なウェルに加えた。
4.列1を、マルチ−チャネルピペットを用いて3回上下に混合した。
5.列2を上記したように混合し、100μLを列2から列3に移した。列3を上記したように混合し、100μLを11を通って列4の各々に順次移して(列12は左側ブランク)、系列的な3倍希釈を生じさせた。
4.表1に従い、20μLを系列希釈プレートから移した。
5.プレートを37℃、5%CO2にて6日間インキュベートし、1日は投与の日に等しい。
【0240】
酵素活性アッセイ 細胞を200μLのdPBSで2回洗浄し、続いて、クエン酸−リン酸緩衝液(30mMクエン酸ナトリウム、40mM二塩基性リン酸ナトリウム、pH4.0)中の70μLの基質(2.11mM 3mM 4−MU−α−D−glu)、および2.5%DMSOを列1〜12に加えた。5%CO2での37℃における約3時間のインキュベーションに続き、70μLの停止緩衝液(0.4Mグリシン、pH10.8)を列1〜12に加えた。プレートをVictor2マルチ標識カウント−Wallac蛍光プレートリーダーで読み、F460nmにおける蛍光を、ウェル当たり1秒の読み時間を用い、355nmの励起および460nmの発光にて測定した。上清中のタンパク質μg当たりの酵素活性を、発光された蛍光の量から計算し、これは加水分解された基質の量および、よって、溶解物中のGaa活性の量に直接的に比例する。増強比率は、DNJ誘導体の存在下でのGaa活性を、化合物を含まないGaa活性で割ったGaa活性である。
【0241】
結果
DNJ、NB−DNJ、およびN−(シクロプロピル)メチルDNJ 図1に示すように、DNJ(1)、N−ブチル−DNJ、(5)およびN−(シクロプロピル)メチルDNJ(11)で処理した細胞は、PM11細胞系における未処理対照細胞と比較して、Gaa活性の用量−依存性増加を呈した。DNJの最高濃度である1mMは、未処理細胞におけるGaa活性と比較してGaa活性を約7.8倍増大させる(データは示さず)。
【0242】
DNJおよびNB−DNJは、50μMの濃度においてPM12細胞系でのGaa活性を有意に増加させた(2倍を超える)。DNJによるPM8細胞系でのGaa活性の増加もまた観察されなかった(データは示さず)。DNJおよびNB−DNJによるGaaの増強は用量依存性であり、プラトーに先立って3.0〜100μMの範囲において示された増大する増強が伴う。
【0243】
他のDNJ誘導体 表1および2に報告するように、以下の、DNJ誘導体N−メチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ(15)、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ(16)、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ(17)、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ(18)、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ(19)、N−2−メトキシエチル−DNJ(20)、N−2−エトキシエチル−DNJ(21)、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ(23)、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ(24)、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ(25)、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ(26)、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ(27)もまたPM−11におけるGaa活性を有意に増大させた。N−メチルDNJおよびN−カルボキシペンチルDNJを用いる増大したGaa活性は約3〜100μMから用量依存性であった(データは示さず)。
【0244】
%Emaxは、1mM DNJの存在下で観察された増強に対する実験化合物のパーセント最大増強をいう。それは、GraphPad Prismバージョン3.02を用いて分析された理論的非線形回帰曲線の頂部として計算される。増強は、1mM DNJの存在下における平均最大カウントに対して、および化合物の不存在下における最小平均カウントに対して正規化された複数蛍光カウントの平均として定義される。蛍光カウントはバックグラウンドを差し引いた。バックグラウンドは細胞の存在から不存在を引いた平均カウントによって定義される。EC50(μM)とは、Emaxの50%を達成する化合物の濃度をいう。
【0245】
特定のメカニズムに限定されるものではないが、DNJおよびDNJ誘導体はERにおける突然変異体Gaaに結合し、突然変異したタンパク質の適切なフォールディングを誘発し、該酵素がERを出て、リソソームまでトラフィッキングされるのを可能とし、そこで、それはいくらかの酵素活性を呈することができると推定される。
【0246】
【表1】
【0247】
【表2】
【0248】
[実施例3]
DNJおよびDNJ誘導体での処理に際してのインビボGaa活性
薬物の投与 本実施例は、マウスに対するDNJ誘導体の効果についての情報を提供する。DNJ誘導体テスト化合物を0、1mg/kg/日;10mg/kg/日;および100mg/kg/日においてマウスに投与した;器官および血漿を実験の開始から2および4週間後に収集した群当たり20匹の雄C57BL6(25g)を用いた。薬物を飲料水中で与え、従って、水の消費を毎日モニターした。
【0249】
対照群(0mg/kg/日)においては、飲料水(薬物なし)にてマウスに毎日投与し、2つの群に分けた。処理から2週間後に10匹の動物を安楽死させ、血液を下行大動脈または大静脈から収集し、組織を摘出し、次いで、剖検した。処理から4週間後に残りの10匹の動物を安楽死させ、同一の評価に付した。
【0250】
最初のテスト群においては、20匹のマウスに1mg/kg−日の投与目的で飲料水中にて毎日投与した(25gのマウスは毎日5mL/日の飲水速度を有し、従って、飲料水は0.025mg/5mlまたは5マイクログラム/mlの濃度を有するはずであると仮定)。対照と同様に、10匹のマウスを処理から2週間後に安楽死させ、評価した。処理から4週間後に、残りの10匹のマウスを安楽死させ、評価する。
【0251】
10mg/kg−日を目的とするテスト化合物では、20匹のマウスに飲料水中にて毎日投与し(50マイクログラム/mlの化合物濃度と見積もる)、上記した群について記載されたようにテスト用の2つの群に分けた。
【0252】
100mg/kg−日を目的とするテスト化合物では、20匹のマウスに飲料水中で毎日投与し(500マイクログラム/mlの化合物濃度と見積もる)、2つの群に分け、上記した群について記載されたようにテストした。
【0253】
血液試料はリチウムヘパリンに吸い取り、血漿のために回転させた。出血の後、心臓、肝臓、腓腹筋、ヒラメ筋、舌、腎臓および脳を摘出し、バイアルに入れた。バイアルを迅速な凍結のためにドライアイスに入れた。次いで、Gaaおよびグリコーゲンの組織レベルについて組織および血漿を分析した。
【0254】
組織調製 組織の小さな割合を取り出し、500μlの溶解緩衝液(0.1%トリトンX−100を含む、20mMクエン酸ナトリウムおよび40mMリン酸水素二ナトリウム、pH4.0)に加えた。次いで、ミクロホモゲナイザーを用いて組織を短時間で均質化し、続いて、10,000rptにおいて4℃にて10分間遠心した。上清を新しいチューブに移し、酵素アッセイのために用いた。
【0255】
組織酵素アッセイ (96−ウェルプレート中の)2.5μlの上清に17.5μlの反応緩衝液(クエン酸リン酸緩衝液、トリトンを含まず)、および50μlの4−メチルウンベルフェロン(4−MU)−標識基質、α−グルコピラノシド、または標識された陰性対照、β−グルコピラノシドおよびα−ガラクトピラノシドを加えた。プレートを37℃にて1時間インキュベートし、続いて、70μlの停止緩衝液(0.4Mグリシン−NaOH、pH10.6)を加えた。Gaaの活性は、ウェル当たり1秒のリアルタイムを用いて355nmで励起することにより460nmでの吸光度を測定することによって決定した(Victor2マルチ標識カウンター−Wallac)。酵素活性を加えた溶解物の1μl中の量に対して正規化し、溶解物1μl当たりの酵素活性を見積もった。増強比率は、化合物なくしての活性を超える化合物ありでの活性と等しい。
【0256】
結果
図2A〜Dおよび3A〜Dによって示されるように、Gaaレベルは、脳、肝臓、腓腹筋、舌(図2A〜D)および、腎臓、横隔膜、心臓およびヒラメ筋(図3A〜D)においても、DNJおよびN−ブチル−DNJでの2週間の処理の後に増大した。結果は直線的傾向について有意であった。DNJでは、増加は、脳、腓腹筋、舌、腎臓、横隔膜、心臓およびヒラメ筋においては用量−依存的であった(直線傾向については有意)。N−ブチル−DNJでは、増加は脳、肝臓、腓腹筋、舌および腎臓において用量−依存的であった。
【0257】
4週間の処理の後、Gaa活性は、脳、肝臓、腓腹筋、および舌(図4A〜D)および、腎臓、横隔膜、心臓およびヒラメ筋(図5A〜D)においても、DNJでの処理の後に観察された。N−ブチルDNJでの結果は、増加が観察されなかった横隔膜、心臓およびヒラメ筋を除いて同様であった。増加は、脳、腓腹筋、舌、腎臓(DNJのみ)、横隔膜(DNJのみ)、心臓(DNJのみ)、およびヒラメ筋(DNJのみ)において用量−依存的であるように見えた。
【0258】
これらの結果により、特定の薬理学的シャペロンはインビボにて突然変異していないGaaの活性を増加させることができることが確認できる。
【0259】
[実施例4]
DNJ誘導体への暴露の有りおよび無しでのGaaの蓄積および局所化
本実験においては、残存するGaa活性を呈しないまたはほとんど呈しないポンペ患者に由来する4つの細胞系を、Gaaの蓄積および局所化について野生型線維芽細胞と比較した。
【0260】
方法
細胞系 PM8、PM9、PM11、およびPM12細胞系を評価した。PM8はスプライシング欠陥を保有し、その結果、いくらかの残存するGaa活性をもたらし(IVS1AS、T>G、−13):PM9は1つの対立遺伝子上にナンセンス突然変異(R854X)、および他の対立遺伝子上に3つのミスセンス突然変異(D645E、V816I、およびT927I)を保有し、残存Gaa活性は実質的に有さず(<1%);PM11はミスセンス突然変異(P545L)を含有し、いくらかの残存するGaa活性を有する。PM12もまたスプライシング欠陥を有する(IVS8+G>A/M519V)。
【0261】
免疫蛍光および顕微鏡観察 含有または非含有で5日間培養した細胞を、NB−DNJを含むガラスカバースリップ上で5日間増殖させた。細胞を3.7%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、0.5%サポニンで5分間浸透させ、次いで、ウサギ抗−ヒトGaa(Barry Byrneからの贈物)および/またはマウスモノクローナル抗−LAMP1(BD Pharmingen,カタログ番号555798)の1:300希釈で室温にて1時間標識した。AlexaFluor488をコンジュゲートさせた二次抗体であるヤギ抗−ウサギIgG、およびAlexaFluor594(Molecular Probes)をコンジュゲートさせたヤギ−抗−マウスIgGを、次いで、1:500希釈で加え、室温にて1時間インキュベートした。カバースリップを10μlのVectashieldを備えたスライド上に置き、速乾燥ネイルポリッシュでシールし、90i Nkon C1共焦点顕微鏡で観察とした。
【0262】
結果
PM8 残存Gaa活性をほとんど有しないにも拘らず、PM8細胞は、野生型線維芽細胞と比べて、増大したLAMP−1およびGaaサイトゾル染色を呈し、異なる染色パターンを有した。図6に示すように、NB−DNJで処理した野生型線維芽細胞がLAMP−1およびGaa双方について断続的な染色パターンを呈し(図6C〜D)、それはリソソーム中に共局所化するように見えた。対照的に、PM8線維芽細胞においては、染色はLAMP−1およびGaa双方について細胞質に行き渡っていた(図6A〜Bおよび図6E〜F)。コンフルエント野生型線維芽細胞におけるLAMP−1およびGaa双方のオーバーレイにより、リソソームへの共局所化が確認され(図6H)、他方、コンフルエントPM8線維芽細胞におけるオーバーレイにより、細胞質過剰のLAMP−1およびGaaが確認される(図6G)。上記の結果は、リソソーム形成における可能な欠陥、または異常に形成されたエンドソーム/リソソーム構造の大きな凝集体(アグレソーム)の存在を示唆する。
【0263】
PM9 PM9線維芽細胞はサイトゾル(図7B)における過剰のGaa(図7Bおよび7D)およびLAMP−1(図7E)も呈した。オーバーレイは、アグレソームに似たGaa凝集体の形成を示す(図7A、図7Cおよび7F、矢印およびインレイはアグレソームを示す)。DNJ誘導体での処理は、Gaaのリソソームへの局所化を回復させ、アグレソーム形成を低下させると予期される。DNJ誘導体での処理は、Gaaのリソソームへの適切な局所化を回復させ、サイトゾルアグレソームの存在を低下させると予測される。
【0264】
PM11 PM11線維芽細胞は、低下したGaa活性を呈する。NB−DNJ(50μM)およびDNJ(100μM)で処理した場合、PM11細胞は、リソソームマーカーLAMP−1で共標識することによって評価したように、リソソームにおけるGaaの標識につき強度の増大を呈し、これは、トラフィッキングの回復を示す(図8)。未処理PM11線維芽細胞はいくらかのGaa染色を呈し、そのほとんどはLAMP−1と共局所化しない。
【0265】
加えて、PM11細胞における欠陥が、リソソーム酵素(Gaa)のリソソームへのトラフィッキングであることを確認するために、野生型線維芽細胞およびPM11細胞を、各々、初期および後期エンドソームマーカーEEA1およびM6PRにつき染色した。野生型線維芽細胞およびポンペPM11線維芽細胞の間で初期および後期エンドソームについての局所化パターンに差はなかった(データは示さず)。
【0266】
PM12 Gaa染色強度の有意な増加もまた、NB−DNJで処理したPM12線維芽細胞で観察された(データは示さず)。
【0267】
考察
本実施例は、本発明の薬理学的シャペロンが、Gaaを不安定とし、合成の間にERから出られなくする突然変異以外の(およびそれに加えての)Gaa中の突然変異を保有する細胞の表現型を回復することができることを示す。これは、突然変異体GaaのERからリソソームへのトラフィッキングの改良は、リソソームにおけるGaaヒドロラーゼ活性を回復さえすることなく、筋肉のような組織においてポンペ病のいくらかの病原体効果を軽減するのに十分であり得るという仮説を支持する。グリコーゲンの代謝回転は、ポンペ病における患者表現型を改善するのに十分でないのは明らかである。このようにして、トラフィッキングの改善が何故ポンペ病理学を改善できる一仮説では、Gaa活性の欠如が細胞におけるグルコース欠乏を引き起こし、これが(グルコースの迅速な放出のために細胞質グリコーゲンを用いるための)自己貪食応答をトリガし、または攪拌し得るということである。この自己貪食応答はエンドソームトラフィッキング経路を通じてのトラフィッキングを損ない、その結果、膜安定化タンパク質のミストラフィッキング、および筋肉繊維の最終的な分解をもたらす。
【0268】
シャペロン利用法はGaa活性を救済し、グルコース欠乏によって誘発されたグルコース欠乏および自己貪食応答を軽減し、結局は、膜安定化タンパク質のトラフィッキングを回復して、更なる筋肉損傷を妨げることができる。
【0269】
[実施例5]
腸Gaaに対するDNJ誘導体の効果:逆スクリーニング
理想的な特異的薬理学的シャペロンは、サブ抑制濃度以下において、腸Gaaを阻害することなく、リソソームGaaを増強させるであろう。従って、腸Gaa活性は、7.0のpHにおいて、マウス腸からの粗抽出物において評価した。加えて、腸Gaa酵素阻害アッセイを確立して、DNJおよびNB−DNJのような化合物が腸Gaaに対して阻害効果を発揮したか否かを判断した。
【0270】
方法
組織調製 粗抽出物は上記したように、C57BK6マウスからのマウス腸から調製した。上清を新しいチューブに移し、酵素アッセイのために用いた。
【0271】
結果
DNJは1μMのIC50値を持つ腸Gaaのより優れた阻害剤であり、他方、NB−DNJは21μMのIC50阻害値を有した(データは示さず)。
【0272】
[実施例6]
DNJ誘導体でのポンペ患者の治療
上記の結果に鑑み、本発明のDNJおよびDNJ誘導体でのポンペ患者の治療は、筋肉組織でのグリコーゲンの病理学的蓄積を低下させ、それにより、病気状態を緩和する。組換酵素は筋肉組織に侵入できないので、ポンペ病についての現在承認された唯一の治療ERTは骨格筋においてグリコーゲン蓄積を低下させるのに効果的ではないという事実に鑑み、この方法は当分野における長く感じられた必要性を解決する。
【0273】
方法
患者の集団 乳児性、若年性および/または成人−発症型ポンペ病と診断された患者は、経口投与されるDNJ誘導体のランダム化、二重盲式、複数−用量、開放−標識実験で補充され、評価されるであろう。実験対象として適している患者は以下の:a)断面エコーカルジオグラフィーによって決定された左心室質量指標(LVMI)と定義される心筋障害;b)非侵入性ベンティレーションが、気管内チューブを用いることなく適用される換気支持体のいずれかの形態と定義される、侵入性または非侵入性換気支持体についての要件;またはc)Denver発生スクリーニングテスト(DDST−2;Halliogloら,Pediatr Int.2001;43(4):400−4)にて通常の年齢の対等者の90%によって達成される粗大運動技術を行うことができないと定義されるひどい運動遅延を少なくとも有している必要がある。
【0274】
薬物の投与 10の対象の2つの群は50または100mgのDNJまたはDNJ誘導体のいずれかを1日に2回24週間受けるであろう。これは、ゴーシェ病における糖スフィンゴ脂質の基質剥奪で示された量未満である。
【0275】
終点 臨床的効果は、例えば、Denver発生スクリーニングテストおよびAlberta幼児運動スケール(Piperら,Motor Assessment of the Developing Infant.Philadelphia, PA, W.B.Saunders Co.,1994)、幼児発育IIのBayleyスケール(BSIDII);Bayleyら,Bayley Scores of Infant Development.2nd Ed.,San Antonio,Tx:Harcourt Brace & Co.1993)、ならびに筋肉バイオプシーの組織学および生化学分析、すなわち、周期的酸−シッフ(PAS)−陽性染色および酵素活性アッセイを用いる処理−対−未処理患者におけるグリコーゲンレベルの測定、および患者から得られた線維芽細胞におけるGaa活性の測定を用いて測定された、ベンティレーター−フリー生存、左心室質量指標、運動発達および骨格筋機能によって評価されるであろう。臨床測定は、4、12および24週間において評価されるであろう筋肉バイオプシーを除いて2週間毎に評価されるであろう。
【0276】
結果
DNJ誘導体での処理は、症状のいくつかを緩和し、グリコーゲンの筋肉組織レベルを低下させることによって、ポンペ病の治療で効果的であろう。例えば、12週間以内に、筋肉におけるGaa活性の増加が観察され、グリコーゲンの蓄積が低下されるであろうと予測される。加えて、LVMIは低下し、呼吸器系症状は改善されるであろうと予測される。最後に、特に若い患者における運動発育および筋肉調子の進行が期待される。
【0277】
結論
本発明の方法は、唯一の現在の治療がERTであるポンペ病の治療において予期せぬ利点を提供する。好ましくは経口による小分子シャペロンの投与はコスト的に有利であり、ERTが浸透できない組織、すなわち、脳において酵素の救済を可能とする。加えて、シャペロン化合物および置換タンパク質での組合せ療法は、必要な組換または精製酵素の注入の数および/またはその量を低下させることができ、それにより、コストを低下させ、患者に対して利点を提供する。最後に、本発明のシャペロン化合物と組み合わせた置換Gaaの処方は組換酵素を安定化させ、凝集および/または分解を妨げることができ、またそれにより、酵素のシェルライフを増大させる。
【0278】
本発明は、範囲が、本明細書中に記載された特別な実施形態によって限定されない。事実、本明細書中に記載されたものに加えて本発明の種々の修飾は、これまでの記載または添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような修飾は添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【0279】
特許、特許出願、刊行物、製品の記載、登録番号、およびプロトコルは本出願を通じて引用され、その開示はすべての目的についてその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】ポンペ病細胞系PM−11における酸性α−グルコシダーゼの活性に対する1−DNJ、NB−DNJおよびN−(シクロプロピル)メチルDNJイミノ糖誘導体の効果を示す。
【図2A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの脳におけるGaa増強を示す。
【図2B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの肝臓におけるGaa増強を示す。
【図2C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの腓腹筋におけるGaa増強を示す。
【図2D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの舌におけるGaa増強を示す。
【図3A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの腎臓におけるGaa増強を示す。
【図3B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの横隔膜におけるGaa増強を示す。
【図3C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの心臓におけるGaa増強を示す。
【図3D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスのヒラメ筋におけるGaa増強を示す。
【図4A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの脳におけるGaa増強を示す。
【図4B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの肝臓におけるGaa増強を示す。
【図4C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの腓腹筋におけるGaa増強を示す。
【図4D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの舌におけるGaa増強を示す。
【図5A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの腎臓におけるGaa増強を示す。
【図5B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの横隔膜におけるGaa増強を示す。
【図5C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの心臓におけるGaa増強を示す。
【図5D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスのヒラメ筋におけるGaa増強を示す。
【図6A】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6B】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6C】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6D】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6E】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6F】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6G】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6H】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図7A】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7B】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7C】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7D】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7E】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7F】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図8】DNJまたはNB−DNJで処理された、Gaa、LAMP−1、およびGaa/LAMP−1デュアル染色PM11ポンペ細胞系を示す。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2005年5月17日に出願された米国仮出願第60/682,241号および2005年10月21日に出願された第60/729,329号に基づいて米国特許法第119条の下で優先権を主張するものであり、その全開示は参照として本明細書に組み入れられる。
【0002】
[発明の分野]
本発明は、α−グルコシダーゼ酵素の活性を増加させる方法、および、例えば、N−ブチル−1−デオキシノジリマイシン(NB−DNJ)を含めた、1−デオキシノジリマイシン(1−DNJ)および1−DNJ誘導体の有効量を個体に投与することを含むポンペ病を治療する方法を提供する。予期せぬことに、これらの化合物は、ポンペ病の病理学の原因となる酵素である酸性α−グルコシダーゼを増強することが示された。
【0003】
[発明の背景]
ポンペ病
ポンペ病は、いくつかのリソソーム貯蔵障害の1つである。リソソーム貯蔵障害は、欠陥がある加水分解酵素による、細胞グルコスフィンゴ脂質、グリコーゲンまたはムコ多糖の蓄積によって引き起こされる1群の常染色体性劣性遺伝病である。リソソーム障害の例は、限定されるものではないが、ゴーシェ病(Beutlerら,The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease,8th ed.2001 Scriverら,ed.pp.3635−3668,McGraw−Hill,New York)、GM1−ガングリオシドーシス(id.at pp.3775−3810)、フコシドーシス(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease 1995.Scriver, C.R.,Beaudet,A.L.,Sly,W.S.and Valle,D.,ed pp.2529−2561,McGraw−Hill,New York)、ムコポリサッカリドーシス(id.at pp 3421−3452)、ポンペ病(id.at pp.3389−3420)、ハーラー・シャイエ病(Weismannら,Science.1970;169,72−74)、ニーマン・ピックAおよびB病(The Metabolic and Molecular Bases of Inherited Disease 8th ed.2001.ScriverらEd.,pp 3589−3610,McGraw−Hill,New York)、およびファブリー病(Id.at pp.3733−3774)を含む。
【0004】
ポンペ病は、酵素酸α−グルコシダーゼ(Gaa)における欠陥によって引き起こされる。Gaaは、エネルギーで用いられる糖の貯蔵形態であるグリコーゲンをグルコースに代謝させる。グリコーゲンの蓄積は、種々の体の組織、特に心臓、骨格筋、肝臓および神経系に影響する体全体にわたる進行性筋障害に導くと考えられる。National Institute of Neurological Disorders and Strokeによると、ポンペ病は40,000人の新生児のうち約1人に発症すると推定される。
【0005】
ポンペ病には、乳児、若年、および成人発症型の、3つのタイプが認められている。幼児型は最もひどく、筋緊張のひどい欠如、虚弱、拡大された肝臓および心臓、および心筋障害を含む症状が存在する。嚥下が困難となり、舌が突出し、肥大することもある。ほとんどの子供は2歳前に呼吸器系または心臓合併症で死亡する。若年型発症ポンペ病は、まず、初期〜後期子供時代に存在し、体幹、横隔膜および下部四肢における呼吸器系筋肉の進行性虚弱、ならびに運動非許容性を含む。ほとんどの若年型発症ポンペ病患者は、20代または30代を越えて生き延びることはない。成人型発症の症状には、一般化された筋肉虚弱および体幹の呼吸器系筋肉、下部四肢、および横隔膜の筋肉の萎縮がある。成人患者の中には主な症状または運動制限がない患者もいる。
【0006】
現在の治療
ポンペ病の現在の治療は、心臓および呼吸器系症状の対症療法を含む。基礎となる遺伝的欠陥について認められた治療はない。最近、置換Gaa(ミオザイム:Genzyme,Inc.)の使用が合衆国におけるF.D.A.によって承認された。しかしながら、乳児性ポンペ患者における欠損Gaaを置き換えるために酵素置換療法を用いる臨床的評価は、心臓および骨格機能を改善するのに中程度に成功したに過ぎなかった(Klingeら、Neuropediatrics.2005;36(1):6−11)。組換えGaaが、骨格筋の筋障害よりも心筋障害を解決するにおいてより効果的であることが示された(Rabenら,Mol Ther.2005;11(1):48−56)。これは多分に組換え酵素が結合組織に侵入できないからである。組換えGaaを用いるポンペ病を治療する方法は、具体的にはCanfieldに対する米国特許第6,537,785号に記載されている。
【0007】
酵素置換療法(ERT)の主な問題の1つは、注入された酵素の迅速な分解による治療上有効量の酵素の達成および維持である。その結果、ERTは多数の高用量投与を必要とし、コストがかかり、かつ時間がかかる。ERT療法は、適切にフォールディングされたタンパク質の大規模生成、精製および貯蔵、グリコシル化天然タンパク質の入手、および抗−タンパク質免疫応答の発生に伴う困難、およびタンパク質が、かなりの中枢神経系の関与を有する病気に影響させるための十分な量の血液−脳関門を横切ることができないことのようないくつかの更なる警告を有する。加えて、組換え酵素は腎臓などの器官を囲うバリアを通過することができないし、結合組織に侵入することもできない、それゆえ、多くの罹患した組織の機能を回復するのに効果的ではない。
【0008】
機能的タンパク質をコードする核酸配列を含有する組換えベクター、または機能的タンパク質を発現する遺伝子操作されたヒト細胞を用いる遺伝子治療もまた、タンパク質欠乏症およびタンパク質置換によって利益を受ける他の障害を治療するのに用いられている。有力ではあるが、このアプローチは、ベクターが分裂する細胞に感染、または伝達不能であること、標的遺伝子の低い発現量および一旦遺伝子が送達された場合の発現の調節のような技術的困難によって制限される(例えば、多くのウィルスベクターは細胞が効率のためには分裂することを必要とする)。
【0009】
酵素欠乏症の治療に対する第3の比較的最近のアプローチは、小分子阻害剤を使用し、欠損酵素タンパク質の天然基質を減少させ、それにより、観察される病状を軽減する。この「基質抑制」アプローチは、糖脂質蓄積に関与するいくつかのリソソーム貯蔵障害の治療のために具体的に記載されている(米国特許第5,798,366号、第6,291,657号および第6,660,749号参照)。療法として用いるのに提案された小分子阻害剤はN−アルキル−デオキシノジリマイシン(N−アルキル−DNJ)誘導体を含み、これは、糖脂質の合成に関与する酵素の阻害に特異的であり、それにより、欠損酵素によって分解される必要がある細胞糖脂質の量を低下させると報告されている。このアプローチは、糖脂質が生物学的機能で必要であり、過剰の抑制が有害効果を引き起こしかねない点でまた制限される。具体的には、糖脂質は、1つのニューロンのガングリオシドからのシグナルを別のニューロンへ送るために、脳によって使用される。もしあまりにも少ない、またはあまりにも多い糖脂質が存在すると、シグナルを送るニューロンの能力は損なわれる。
【0010】
第4のアプローチである特異的シャペロン戦略は、恐らくは、小胞体(ER)において、または他の細胞タンパク質分解/処理システムにおいて、突然変異したタンパク質を分解から救済する。以前の特許および刊行物には、ミスフォールディングされたリソソーム酵素を含めた内因性酵素タンパク質を、ER品質管理機構による分解から救済するための治療的戦略が記載してある。特定の実施形態において、この戦略は、特異的なリソソーム疾患に関連する欠損リソソーム酵素に特異的に結合する小分子薬理学的シャペロンを使用する。治療をしていない場合には、突然変異した酵素タンパク質はERにおいて不安定であり、(Ishiiら,Biochem.Biophys.Res.Comm.1996;220:812−815)、最終生成物への成熟が遅延し、引き続いて、ER内で分解される。シャペロン戦略では、フォールディングを促し、突然変異したタンパク質の安定性を増強させて、ER品質管理機構からの過度なまたは異常な分解を妨げる化合物を使用する。これらの特異的シャペロンは活性部位−特異的シャペロンと命名されているか、あるいは、特異的薬理学的シャペロンともいう。
【0011】
この戦略の背後にある元々の理論は以下の通りである:突然変異体酵素タンパク質はERにおいて不適切にフォールディングされる(Ishiiら,Biochem.Biophys.Res.Comm.1996;220:812−815)ので、酵素タンパク質は正常な輸送経路(ER→ゴルジ装置→エンドソーム→リソソーム)において遅延し、急速に分解される。従って、突然変異体タンパク質の正しいフォールディングを促す化合物は、突然変異体タンパク質のための活性部位−特異的シャペロンとして働いて、ER品質管理機構からのスムーズな回避を促進するであろう。いくつかの酵素阻害剤は触媒中心を占有することが知られており、その結果、インビトロにて酵素の立体構造が安定化する。
【0012】
特異的薬理学的シャペロン戦略は、その全体が参照として本明細書に組み入れられる、Fanらに対する米国特許第6,274,597号、第6,583,158号、第6,589,964号、第6,599,919号および第6,916,829号におけるようにリソソーム貯蔵障害に関する多数の酵素に対して示されている。例えば、ガラクトース、1−デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)の小分子誘導体、突然変異体ファブリー酵素α−ガラクトシダーゼA(α−Gal A;Gla)の優れた競合阻害剤は、中性pHにおいてヒト突然変異体α−Gal A(R301Q)のインビトロ安定性を効果的に増加させ、それは、R301QまたはQ279E突然変異体を持つファブリー患者から樹立されたリンパ芽球における突然変異体酵素活性を増強した。更に、突然変異体(R301Q)α−Gal Aを過剰発現するトランスジェニックマウスへのDGJの経口投与は、主な臓器において酵素活性を実質的に上昇させた(Fanら,Nature Med.1999;5:112−115)。米国特許第6,916,829号に記載された別のイミノ糖、イソファゴミン(IFG)およびその誘導体を用いる、および(共に2004年11月12日に出願された係属米国特許出願第10/988,428号および第10/988,427号に記載された)グルコセレブロシダーゼに特異的な他の化合物を用いる、ゴーシェ患者細胞からのグルコセレブロシダーゼ(酸性β−グルコシダーゼ,Gba)の同様な救済が記載されている。上記した米国特許第6,583,158号は、1−デオキシノジリマイシン(DNJ)、α−ホモノジリマイシンおよびカスタノスペリミン(castanospermine)を含めた、ポンペ病の治療のためにGaa救済で働くことが予測されるいくつかの小分子化合物を開示している。
【0013】
本発明は、突然変異体Gaaのための効果的な特異的薬理学的シャペロンであることが見いだされたN−ブチルDNJのようなDNJ誘導体を用いて得られた予期せぬ結果に基づく。
【0014】
[発明の概要]
本発明は、α−グルコシダーゼ(Gaa)酵素、および1−デオキシノジリマイシン(1)またはN−ブチルDNJ(5)のようなデオキシノジリマイシン(DNJ)誘導体と接触させることによって細胞における該酵素の適切な立体構造を誘発し、または安定化する方法を提供する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性のDNJ誘導体の非存在下におけるGaa活性に対する比率は、最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において少なくとも1.5倍である。別の実施形態においてGaa活性の増加は少なくとも5倍である。
【0015】
一実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化1】
[式中、
R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は場合によって1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され;
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキルアリールもしくはアルコキシアルキル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3または複素環で置換され;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
またはその医薬上許容される塩を有する。好ましくは、誘導体の存在下におけるGaa活性の、DNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対するDNJ増加は、細胞における最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度で少なくとも1.5倍であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではないものとする。
【0016】
別の実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化2】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルである;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルである;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
または医薬上許容される塩を有する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性のDNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対する比率は、細胞において最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度で少なくとも1.5倍であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0017】
細胞における最大Gaa活性は実施例に記載したようにインビトロまたはインビボで決定することができ、いずれのDNJ誘導体についての、この活性比率を示すために例示したアッセイのいずれを用いることもできる。
【0018】
特別な実施形態において、R1は場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり、かつ、R2はHである。別の実施形態においてR1はn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである。なお別の実施形態において、R1は−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されたn−エチルまたはn−ブチルである。
【0019】
一実施形態において、R1は
【化3】
である。
【0020】
別の実施形態において、R1はHであり、そしてR2は場合によって、−CF3または複素環で置換される直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールもしくはエーテルである。
【0021】
一実施形態において、R2はn−ノニル基である。
【0022】
特許請求される方法の更なる実施形態において、該化合物は、N−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ、またはCl−ノニルDNJからなる群より選択される。
【0023】
別の実施形態において、該化合物は、腸Gaaの阻害についてのIC50値以下の濃度でリソソームGaa活性を増加させる。
【0024】
一実施形態において、Gaa酵素は突然変異体α−グルコシダーゼである。特別な実施形態において、突然変異体α−グルコシダーゼはD645E;D645H;R224W;S619R;R660H;T1064C;C2104T;D645N;L901Q;G219R;E262K;M408V;G309R;D645N;G448S;R672W;R672Q;P545L;C647W;G643R;M318T;E521K;W481R;L552P;G549R;R854X;V816I;およびT927I、およびその組合せからなる群より選択される。
【0025】
別の実施形態において、Gaaは精製したまたは組換え機能的Gaaである。
【0026】
更なる実施形態において、接触はインビボまたはインビトロで起こる。
【0027】
また、本発明は、N−ブチルDNJのようなデオキシノジリマイシン誘導体の有効量を投与することによってポンペ病を治療する方法を提供する。
【0028】
一実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化4】
[式中、
R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、または5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は場合によって1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され、
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはアルコキシアルキルであり、ここで、R2は場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3または複素環で置換され、
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
または医薬上許容される塩を有する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性のDNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対する比率は、細胞において最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度で少なくとも1.5であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0029】
別の実施形態において、DNJ誘導体は以下の構造:
【化5】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルであり;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、またはアルコキシアルキルであり;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]、
または医薬上許容される塩を有する。好ましくは、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の、DNJ誘導体非存在下におけるGaa活性に対する比率は、細胞において最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において少なくとも1.5であり、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0030】
一実施形態において、R1は場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり;かつ、R2はHである。特別な実施形態において、R1はn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである。別の実施形態において、R1は−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されたn−エチルまたはn−ブチルである。なお別の実施形態において、R1は
【化6】
である。
【0031】
別の実施形態において、R1はHであり、かつ、R2は場合によってCF3または複素環で置換される直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールもしくはエーテルである。なお別の実施形態において、R2はn−ノニル基である。
【0032】
特別な実施形態において、該化合物は、N−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJまたはCl−ノニルDNJからなる群より選択される。
【0033】
別の実施形態において、該化合物は腸Gaaの阻害に対するIC50値以下の濃度でリソソームGaaを増強する。
【0034】
別の実施形態において、1−デオキシノジリマイシン誘導体の有効量は1日当たり約1mg〜300mgである。代替の実施形態において有効量は1日当たり約5mg〜約150mgである。なお別の実施形態において、有効量は1日当たり約5〜約75mgである。
【0035】
一実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は錠剤またはカプセルのような経口投与形態で投与される。
【0036】
別の実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体はGaa置換酵素と組み合わせて投与される。
【0037】
この実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体およびGaa置換酵素は別々の処方にてまたは単一の処方として投与することができる。
【0038】
例えば、このような一実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は経口投与形態で投与され、Gaa置換酵素は非経口投与形態で投与される。
【0039】
代替の実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は遺伝子治療と組み合わせて投与される。
【0040】
本発明の一実施形態において、上記治療の結果、ポンペ病の病状の軽減がもたらされる。
【0041】
特別な実施形態において、病状は、Gaaの骨格組織における活性低下;心筋症;心臓肥大;進行性筋力低下;筋緊張低下;巨舌症;嚥下、吸引、および/または摂食の困難性;呼吸機能不全;肝臓肥大;顔面筋の弛緩;反射消失;運動不耐性;労作性呼吸困難;起座呼吸;睡眠時無呼吸;起床時の頭痛;傾眠;脊柱前弯症および/または脊柱側弯症;深部腱反射の低下;腰痛;および運動発達のマイルストーンの遅延、の内の少なくとも1つの存在によって特徴づけられる。
【0042】
本発明は、デオキシノジリマイシン誘導体の有効量を投与することによって、ポンペ病の症状を緩和または低下させる方法も提供する。
【0043】
一実施形態において、該症状はGaaの骨格組織における活性低下;心筋症;心臓肥大;進行性筋力低下;筋緊張低下;巨舌症;嚥下、吸引、および/または摂食の困難性;呼吸機能不全;肝臓肥大;顔面筋の弛緩;反射消失;運動不耐性;労作性呼吸困難;起座呼吸;睡眠時無呼吸;起床時の頭痛;傾眠;脊柱前弯症および/または脊柱側弯症;深部腱反射の低下;腰痛;および運動発達のマイルストーンの遅延の少なくとも1つである。
【0044】
代替の実施形態において、デオキシノジリマイシン誘導体は置換α−グルコシダーゼタンパク質または遺伝子と組み合わせて投与される。
【0045】
本発明は、更に、DNJ誘導体、そのようなDNJ誘導体を含む組成物、およびそのようなDNJ誘導体を含む医薬組成物を含む。DNJ誘導体は上記したような構造式を有するが、但し、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない。
【0046】
特許または出願ファイルには少なくとも1つのカラーの図面が入っている。カラー図面とともに特許または特許出願公開の写しは、請求および必要な手数料の支払いに際して当局によって提供されるであろう。
【0047】
[詳細な記載]
本発明は、環窒素、または該窒素に隣接する環炭素において置換を特異的な薬理学的シャペロンとして有する小分子イミノ糖DNJおよびDNJの誘導体を用いる、突然変異体Gaaの救済、およびポンペ病の治療のための方法を記載する。これらの分子は、不安定であるGaa突然変異タンパク質に結合し、それらが安定な分子立体構造にフォールディングされるよう誘発することができる。その結果、Gaaはリソソームまで進行し、または運ばれ、グリコーゲンに対する加水分解活性を示し、これにより、この病気に関連した筋肉組織内での病的集積が低下する。
【0048】
定義
本明細書中で用いる用語は、一般には、本発明の文脈内で、かつ各用語が用いられる特別な文脈において、当分野におけるそれらの通常の意味を有する。特定の用語を以下に、または明細書中の他の箇所で議論して、本発明の組成物および方法、およびそれらを製造しかつ使用する方法を記載するにおいて実行者に対して更なるガイダンスを提供する。
【0049】
酸性マルターゼ欠損症、グリコーゲン貯蔵病II型(GSDII)、および糖原病II型ともいわれる「ポンペ病」は、グリコーゲンを代謝するGaa遺伝子における突然変異によって特徴付けられる遺伝的リソソーム貯蔵障害である。本明細書中で用いるようにこの用語は該病気の乳児、若年および成人−発症型を含む。
【0050】
「酸性α−グルコシダーゼ(Gaa)」は、グリコーゲン、マルトース、およびイソマルトーセに存在するα−1,4−およびα−1,6−結合−D−グルコースポリマーを加水分解するリソソーム酵素である。代替の名称は以下の通りである:グルコアミラーゼ;1,4−α−D−グルカングルコヒドロラーゼ;アミログルコシダーゼ;ガンマ−アミラーゼ;およびエキソ−1,4−α−グルコシダーゼ、およびγ−アミラーゼ。ヒトGaa遺伝子は染色体17q25.2−25.3にマッピングされており、(各々、配列番号:1および配列番号:2に描かれた)GenBank登録番号Y00839に示されるヌクレオチドおよびアミノ酸配列を有する。70を超える突然変異がポンペ病に関連付けられている。Gaa酵素のミスフォールディングまたは誤ったプロセッシングをもたらす突然変異はT1064C(第355位におけるLeuをProに置換する)、およびC2104T(Arg702をCysに置換する)を含む(Montalvoら,Mol Genet Metab.2004;81(3):203−8)。加えて、Hermansら(Human Mutation 2004;23:47−56)は、該酵素の成熟およびプロセッシングに影響するGaa突然変異のリストを記載する。そのような突然変異はLeu405ProおよびMet519Thrを含む。本発明の方法は、ERにおいてα−グルコシダーゼの不安定なフォールディングを引き起こす突然変異で有用であると予測される。
【0051】
本明細書中で用いるように、用語「薬理学的シャペロン」または、時々は「特異的薬理学的シャペロン」(「SPC」)とは、Gaaに特異的に結合し、以下の効果のうち1つ以上を有する分子をいう:(i)タンパク質の安定な分子立体構造の形成の促進;(ii)タンパク質のERから細胞内での別の場所へ、好ましくは天然細胞内の場所への適切なトラフィッキングを増強し、すなわち、ERに関連したタンパク質分解の予防;(iii)立体構造的に不安定な、すなわち、ミスフォールディングされたタンパク質の凝集の予防;(iv)タンパク質の少なくとも部分的に野生型機能、安定性および/または活性の回復/増強;および/または(v)Gaaを有する細胞の表現型または機能の改善。このようにして、Gaa対する薬理学的シャペロンは、Gaaに結合する分子であり、その結果、Gaaの適切なフォールディング、トラフィッキング、非凝集、および活性をもたらす。本明細書中で用いるように、この用語はBiPのような内因性シャペロン、あるいはグリセロール、DMSOまたは重水のような、種々のタンパク質に対して非特異的シャペロン活性を示した非特異的な物質、すなわち、化学的シャペロンのことではない(Welchら,Cell Stress and Chaperones 1996;1(2):109−115;Welshら,Journal of Bioenergetics and Biomembranes 1997;29(5):491−502;米国特許第5,900,360号;米国特許第6,270,954号;および米国特許第6,541,195号参照)。それには、例えば、該酵素、阻害剤またはアンタゴニストおよびアゴニストの活性部位に結合する活性部位特異的シャペロン(ASSC)などの特異的な結合分子が含まれる。
【0052】
本明細書中で用いるように、用語「特異的に結合する」とは、薬理学的シャペロンとGaaとの相互作用、特に、薬理学的シャペロンとの接触に直接的に参画するGaaのアミノ酸残基との相互作用をいう。薬理学的シャペロンは例えばGaaなどの標的タンパク質に特異的に結合して、Gaaに対してシャペロン効果を発揮するが、関連するまたは関連しないタンパク質の属性群に対しては発揮しない。ある薬理学的シャペロンと相互作用するGaaのアミノ酸残基はタンパク質の「活性部位」内にあってもなくてもよい。以下に記載するように、アミノ酸残基512−520における保存されたヘキサペプチドWiDMNEは、Gaaタンパク質の活性に必要である(参照配列として配列番号:2を用いる)。加えて、Trp516およびAsp518はGaaの触媒活性に必要である(Hermansら,J.Biol.Chem.1991.266:13507−12)。特異的結合は、所定の結合アッセイ、または構造研究、例えば、共結晶化、NMR等を通じて評価することができる。
【0053】
非限定的な一実施形態において、薬理学的シャペロンはGaaの阻害剤またはアンタゴニストである。別の非限定的な実施形態において、薬理学的シャペロンはGaaのアゴニストである。なお別の実施形態において、薬理学的シャペロンは混合アゴニスト/アンタゴニストである。本明細書中で用いるように用語「アンタゴニスト」とは、タンパク質に結合し、Gaaの活性を部分的にまたは完全にブロックし、阻害し、低下させ、または中和する任意の分子のことをいう。用語「アゴニスト」とは、タンパク質に結合し、Gaaの活性を少なくとも部分的に増加させ、増強し、回復し、または模倣するいずれの分子もいう。以下に議論するように、そのような分子がGaaについて知られている。
【0054】
本明細書中で用いるように、用語「Gaa立体構造安定性を増強する」または「Gaa立体構造安定性を増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、それ以前における同一の細胞型、または同一の細胞)におけるGaaに対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンと接触している細胞において機能的立体構造を採用するGaaの量または割合を増加させることをいう。一実施形態において、細胞は立体構造突然変異体Gaaを発現しない。別の実施形態において、例えば、立体構造突然変異体Gaaなどの、ポリペプチドをコードする突然変異体Gaaポリヌクレオチドを発現しない。
【0055】
本明細書中で用いるように、用語「Gaaトラフィッキングを増強する」または「Gaaトラフィッキングを増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、初期における同一の細胞型または同一細胞)におけるGaaの輸送の効率に対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触している細胞中おけるGaaのリソソームへの輸送の効率の増加をいう。
【0056】
本明細書中で用いるように、用語「Gaa活性を増強させる」または「Gaa活性を増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、初期における同一の細胞型または同一細胞)におけるGaaの活性に対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触している細胞における、本明細書中に記載したようなGaaの活性の増加をいう。
【0057】
本明細書中で用いるように、用語「Gaaレベルを増強させる」または「Gaaレベルを増加させる」とは、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触していない細胞(好ましくは、例えば、初期における同一の細胞型または同一細胞)におけるGaaのレベルに対する、Gaaに特異的な薬理学的シャペロンに接触している細胞におけるGaaのレベルの増加をいう。
【0058】
用語「適切な立体構造を安定化する」とは、野生型Gaaタンパク質の立体構造と機能的に同一である突然変異したGaaタンパク質の立体構造を誘発または安定化させるGaa薬理学的シャペロンの能力をいう。用語「機能的に同一」とは、立体構造における些細な変動があり得るが(ほとんど全てのタンパク質はそれらの生理学的状態においていく分かの立体構造柔軟性を呈する)、立体構造柔軟性の結果(1)タンパク質の凝集、(2)小胞体−関連分解経路を通じての排除、(3)例えば、Gaa活性などのタンパク質の機能的障害、および/または(4)例えば、リソソームへの局所化などの、野生型タンパク質に比べて、大なり小なりの細胞内での不適切な輸送を引き起こさないことを意味する。
【0059】
用語「安定な分子立体構造」とは、細胞において少なくとも部分的な野生型機能を提供する、薬理学的シャペロンによって誘発された、タンパク質、すなわち、Gaaの立体構造をいう。例えば、突然変異体Gaaの安定な分子立体構造は、GaaがERから逃れ、ミスフォールディングされ、分解される代わりに、野生型Gaaと同様にリソソームにトラフィッキングされるものであろう。加えて、突然変異したGaaの安定な分子立体構造は、全または部分的Gaa活性、例えば、グリコーゲン、マルトースおよびイソマルトースにおけるα−1,4−およびα−1,6結合の加水分解なども有していることがある。しかしながら、安定な分子立体構造は野生型タンパク質の機能的属性の全てを有しているとは限らない。
【0060】
用語「野生型活性」とは、細胞におけるGaaの正常な生理学的機能をいう。例えば、Gaa活性は、グリコーゲン、マルトース、およびイソマルトースに存在するα−1,4−およびα−1,6−結合−D−グルコースポリマーを加水分解する同時能力と共に、フォールディングし、およびERからリソソームへのトラフィッキングを含む。
【0061】
用語「野生型Gaa」とはGaaをコードするヌクレオチド(配列番号1)配列、および上記したヌクレオチド配列(ヒトGaa GenBank登録番号Y00839)によってコードされるポリペプチド(配列番号:2)配列、およびERにおいて機能的立体構造を達成し、細胞内で適切な局所化を達成し、かつ野生型の活性(例えば、グリコーゲンの加水分解)を呈する能力を有する、正常な個体における対立遺伝子変種のような、(上記したポリペプチド配列と同一の機能的特性および結合親和性を有する)Gaaポリペプチドをコードするいずれかの他のヌクレオチド配列をいう。
【0062】
本明細書中で用いるように、用語「突然変異体α−グルコシダーゼ」または「突然変異体Gaa」とは、変異α−グルコシダーゼアミノ酸配列をもたらす遺伝的突然変異を含有する遺伝子から翻訳されたα−グルコシダーゼポリペプチドをいう。一実施形態において、突然変異によって、野生型α−グルコシダーゼと比較した場合に、ERに通常は存在する条件下で天然立体構造を達成しない、または野生型α−グルコシダーゼと比較して低い安定性または活性を呈するα−グルコシダーゼタンパク質がもたらされる。このタイプの突然変異は、本明細書中においては、「立体構造突然変異」といい、そのような突然変異を担うタンパク質は「立体構造突然変異体」という。この立体構造を達成できないと、タンパク質輸送系における正常な経路を通じて細胞中のその天然の位置まで輸送されるか、または細胞外環境へ輸送されるよりはむしろ分解されるかまたは凝集されるα−グルコシダーゼタンパク質がもたらされる。いくつかの実施形態において、突然変異(例えば、転写効率、スプライシング効率、mRNA安定性等に影響する突然変異)は、タンパク質の効率がより低い発現をもたらすα−グルコシダーゼをコードする遺伝子の非コーディング部分で起こり得る。野生型ならびにα−グルコシダーゼの立体構造突然変異体変種の発現のレベルを増強させることによって、α−グルコシダーゼ薬理学的シャペロンの投与は、そのような効率的でないタンパク質発現に由来する欠陥を緩和することができる。代替として、ERに蓄積できる突然変異体またはナンセンス突然変異体をスプライシングするためには、リソソームヒドロラーゼ活性を回復することなく、ERに存在する突然変異体に結合し、それを援助するシャペロンの能力は、ポンペ患者においていくらか細胞の病理を緩和し、それにより、症状を改善するのに十分であろう。
【0063】
Gaaの例示的な立体構造突然変異は以下の:D645E(Linら,Zhonghua Min Guo Xiao Er Ke Yi Xue Hui Za Zhi.1996;37(2):115−21);D645H(Linら,Biochem Biophys Res Commun.1995 17;208(2):886−93);R224W,S619R,およびR660H(Newら,Pediatr Neurol.2003;29(4):284−7);T1064CおよびC2104T(Montalvoら,Mol Genet Metab.2004;81(3):203−8);D645NおよびL901Q(Kroosら,Neuromuscul Disord.2004;14(6):371−4);G219R,E262K,M408V(Fernandez−Hojasら,Neuromuscul Disord.2002;12(2):159−66);G309R(Kroosら,Clin Genet.1998;53(5):379−82);D645N,G448S,R672W,およびR672Q(Huieら,Biochem Biophys Res Commun.1998;27;244(3):921−7);P545L(Hermansら,Hum Mol Genet.1994;3(12):2213−8);C647W(Huieら,Huieら,Hum Mol Genet.1994;3(7):1081−7);G643R(Hermansら,Hum Mutat.1993;2(4):268−73);M318T(Zhongら,Am J Hum Genet.1991;49(3):635−45);E521K(Hemansら,Biochem Biophys Res Commun.1991;179(2):919−26);W481R(Rabenら,Hum Mutat.1999;13(1):83−4);およびL552PおよびG549R(未公表データ)を含む。
【0064】
スプライシング突然変異体はIVS1AS、T>G、−13およびIVS8+1G>Aを含む。
【0065】
更なるGaa突然変異体は同定されており、当分野で既知である。立体構造突然変異体は当業者によって容易に同定可能である。
【0066】
Gaaのフォールディング、よって、トラフィッキングを損なう突然変異は、タンパク質が細胞内のGaa局所化のためにゴルジ装置または蛍光免疫染色に入るか否かを決定するためのグルコシダーゼ処理の有りおよび無しにて、パルス−チェイス代謝標識のような、当分野で周知のルーチンアッセイによって決定することができる。野生型Gaaは、110kD前駆物質として分泌され、次いで、これは95kDの中間体を介して76kDの成熟Gaaに変換される。
【0067】
そのような機能性は、そのようなタンパク質の機能性を確立することが知られているいずれかの手段によってテストすることができる。例えば、4−αメチルウンベリフェリル−D−グルコピラノシドのような蛍光基質を用いるアッセイを用いて、Gaaの活性を測定するために使用することができる。そのようなアッセイは当分野で周知である(例えば、Hermansら,上記参照)。
【0068】
ある種のテストは、その現実のインビボ活性に対応しても対応しなくてもよいが、それにもかかわらず、タンパク質機能性の適切な代わりのものであるタンパク質の属性を評価することができ、そのようなテストにおける野生型の挙動は、本発明のタンパク質フォールディング救済または増強技術を裏付ける証拠を示す。本発明による1つのそのような活性は、小胞体からリソソームへの機能的Gaaの適切な輸送である。
【0069】
インビトロにて、例えば、ある処方において、シャペロン化合物は、野生型または突然変異したタンパク質をその天然または適切な形態で維持することも補助することができる。この効果は、(i)(すなわち、ERTについての)タンパク質の増大したシェルライフ;(ii)タンパク質の単位/量当たりのより高い活性;または(iii)より高いインビボ効率の1つ以上を介してそれを現実的に発現させることができる。それは、発現の間のERからの増大した収率;温度上昇、またはカオトロピック剤の存在による、および同様な手段によるフォールディング解除に対するより大きな抵抗性を通じて実験的に観察することができる。
【0070】
用語「内因性発現」および「内因的に発現された」とは、その発現、活性または安定性を阻害するGaa核酸またはポリペプチド配列における突然変異のような、Gaaの欠乏、過剰発現、または他の欠陥に関連する病気または障害、例えば、ポンペ病を有しない、または有することが疑われない個体における細胞でのGaaの正常な生理学的発現をいう。この用語は、Gaaが発現されるのが正常である細胞型におけるGaaの発現もいい、細胞または細胞型における発現、例えば、Gaaが健康な個体で発現されない腫瘍を含まない。
【0071】
本明細書中で用いるように、用語「輸送の効率」とは、小胞体から細胞内のその天然の位置、細胞膜へ、または細胞外環境へ輸送される突然変異体タンパク質の能力をいう。
【0072】
酵素の「競合的阻害剤」とは、酵素基質に化学的構造および分子的幾何学と構造的に類似して、基質とほぼ同一の位置における酵素に結合する化合物をいうことができる。このようにして、阻害剤は基質分子と同一の活性部位について競合し、このようにして、Kmを増大させる。もし十分な基質分子が阻害剤を置き換えるのに利用できるならば、すなわち、競合阻害剤が可逆的に結合できるならば、競合阻害は通常は可逆的である。従って、酵素阻害の量は阻害剤の濃度、基質濃度、および活性部位に対する阻害剤および基質の相対的親和性に依存する。
【0073】
非古典的競合阻害は、阻害剤は活性部位に遠隔的に結合し、基質がもはやそれに結合できないように、酵素において立体構造の変化を作り出す場合に起こる。非古典的競合阻害において、活性部位における基質の結合は別々の部位における阻害剤の結合を阻害し、逆も成立する。これはアロステリック阻害を含む。
【0074】
酵素の「線状混合−タイプの阻害剤」は、基剤を結合させるが、その親和性を低下させる競合阻害剤のタイプであり、従って、Kmは増大し、Vmaxは減少する。
【0075】
「非競合阻害剤」とは、酵素とで強い結合を形成し、過剰な基質の添加によって置き換えることができない化合物をいい、すなわち、非競合阻害剤は不可逆的であり得る。非競合阻害剤は酵素またはタンパク質の活性部位において、その近くに、またはそれから離れて結合することができ、酵素との関連では、Kmに対して効果を有しないが、Vmaxを減少させる。非競合阻害とは、阻害剤が酵素−基質(ES)複合体のみに結合する状況をいう。阻害剤が結合する場合、酵素は不活性となる。これは、基質の不存在下において酵素に結合することができる非古典的競合阻害剤とは異なる。
【0076】
用語「Vmax」とは、すなわち、基質レベルを飽和させるにおいて酵素触媒反応の最大初期速度をいう。用語「Km」は、1/2Vmaxを達成するのに必要な基質濃度である。
【0077】
酵素「増強剤」は、Gaaに結合し、酵素反応速度を増大させる化合物である。
【0078】
用語「治療上有効な用量」および「有効量」とは、(アンタゴニストの場合には)適当な細胞位置において既に発現されたタンパク質を阻害することなく、または(アゴニストの場合には)適当な細胞位置からのタンパク質のリガンド−媒介受容体内部化を誘発することなく、(機能的立体構造を可能とする)ERにおけるタンパク質プロセッシングを増強させ、かつ標的タンパク質の活性を増強させ、このようにして、対象において治療的応答をもたらすのに十分な量をいう。治療応答は、本明細書中に記載され、かつ当分野で既知の症状、およびいずれかの代替臨床マーカーを含めた療法に対する効果的な応答としてユーザー(例えば、臨床化)が認識するいずれの応答でもあり得る。このようにして、治療的応答は、一般には、病気または障害について当分野で既知のもののような、病気または障害、例えば、ポンペ病の1つ以上の症状、例えば、減少したGaa活性および進行した筋肉虚弱の軽減または阻害であろう。
【0079】
精製された治療タンパク質のインビトロ生産、輸送または貯蔵の間に阻害的であるシャペロン化合物の濃度は、インビボでの投与に際してシャペロンの希釈(および平衡の変化による結合の結果としてのシフト)、生物学的利用性および代謝のため、本発明の目的では依然として「有効量」を構成することができることに留意されたい。
【0080】
「リスポンダー」とは、1つ以上の臨床的症状の改善、緩和または予防、あるいは病気の病理学のインジケーターである1つ以上の代替臨床マーカーの改良または逆行を呈する、ポンペ病と診断された、および現在特許請求する方法に従って治療された個体である。ポンペ病の症状またはマーカーは、限定されるものではないが、減少したGaa組織活性;心筋症;心臓肥大;特に、体幹または下部四肢における進行性筋肉虚弱;ひどい緊張低下;巨舌症(およびある場合には、舌の突き出し);嚥下、吸引、および/または摂食の困難性;呼吸機能不全;肝臓肥大(中程度);顔面筋の弛緩;反射消失;運動不耐性;労作性呼吸困難;起座呼吸;睡眠時無呼吸;起床時の頭痛;傾眠;脊柱前弯症および/または脊柱側弯症;減少した深部腱反射;腰痛;および運動発達のマイルストーンの遅延を含む。
【0081】
用語「酵素置換療法」または「ERT」とは、非天然の精製された酵素の、そのような酵素の欠乏を有する個体への導入をいう。投与されたタンパク質は天然源から、あるいは(以下にかなり詳細に記載する)組換え発現によって得ることができる。該用語は、そうでなければ精製された酵素の投与を必要とし、またはそれから利益を受ける、例えば、酵素不全に罹った個体への精製された酵素の導入もいう。導入された酵素はインビトロにて生産された精製で組換え酵素、または例えば胎盤または動物乳のような摘出された組織または流体から、または植物から精製されたタンパク質であり得る。
【0082】
フレーズ「医薬上許容される」とは、生理学的に許容でき、かつヒトに投与された場合に典型的には望まない反応を生じない分子体および組成物をいう。好ましくは、本明細書中で用いるように、用語「医薬上許容される」は、連邦または州政府の規制当局によって承認された、または合衆国薬局方、または動物、より特別にはヒトで用いるための他の一般的に認められた薬局方でリストされたことを意味する。用語「担体」とは、それと共に化合物が投与される希釈剤、補助剤、賦形剤、またはビークルをいう。そのような医薬担体は水および油のような滅菌液体であり得る。水または水性溶液、生理食塩水溶液および水性デキストロースおよびグリセロール溶液は、特に、注射溶液のための担体として好ましくは使用される。適当な医薬担体はE.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、第18版、または他の版に記載されている。
【0083】
本明細書中で用いるように、用語「精製された」とは、無関係な物質、すなわち、汚染物を低下させ、または排除する条件下で隔離されているGaa核酸またはポリペプチドのような物質をいう。例えば、精製されたタンパク質は、それが細胞中で会合する他のタンパク質または核酸を好ましくは実質的に含まない。本明細書中で用いるように、用語「実質的に含まない」は物質の分析テストの関係で使用可能に用いられ、好ましくは、汚染物を実質的に含まない精製された物質は少なくとも50%純粋;より好ましくは少なくとも90%純粋、尚より好ましくは少なくとも99%純粋である。純度は従来の手段、例えば、クロマトグラフィー、ゲル電気詠動、イムノアッセイ、組成分析、生物学的アッセイ、および当分野で既知の他の方法によって評価することができる。
【0084】
用語「約」および「ほぼ」は、一般には、測定の性質または精度を仮定して測定された量についての誤差の許容される程度を意味する。誤差の典型的な例示的程度は、与えられた値または値の範囲の20パーセント(%)内、好ましくは10%内、より好ましくは5%内である。代替として、特に生物学的系においては、用語「約」および「ほぼ」は、大きさのオーダー内、好ましくは与えられた値の5倍内、より好ましくは2倍内である値を意味することができる。本明細書中で与えられる数的量は特に断りのない限り近似であり、用語「約」または「ほぼ」は明示的に述べられていない場合に推定できることを意味する。
【0085】
化学的定義
用語「アルキル」とは、不飽和を含有せず、単一の結合によって分子の残りに結合した炭素および水素原子のみからなる直鎖または分岐鎖のC1−C20炭化水素基をいい、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、1−メチルエチル(イソプロピル)、n−ブチル、n−ペンチル、1,1−ジメチルエチル(t−ブチル)をいう。本明細書中で用いられるアルキルは、好ましくは、C1−C8アルキルである。
【0086】
用語「アルケニル」とは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有し、直鎖または分岐鎖であってもよいC2−C20脂肪族炭化水素基、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)、イソ−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニルをいう。
【0087】
用語「シクロアルキル」とは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルのような不飽和の非芳香族単環または多環炭化水素環系を示す。多環シクロアルキル基の例はペルヒドロナフチル、アダマンチルおよびノルボルニル基架橋環状基またはスピロ二環基、例えば、スピロ(4,4)ノナ−2−イルを含む。
【0088】
用語「シクロアルカルキル」とは、シクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチルのような安定な構造の形成をもたらす、上記定義のアルキル基に直接結合した上記定義のシクロアルキルをいう。
【0089】
用語「アルキルエーテル」とは、アルキル鎖に取り込まれた少なくとも1つの酸素を有する上記定義のアルキル基またはシクロアルキル基、例えば、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランをいう。
【0090】
用語「アルキルアミン」とは、少なくとも1つの窒素原子を有する上記定義のアルキル基またはシクロアルキル基、例えば、n−ブチルアミンおよびテトラヒドロオキサジンをいう。
【0091】
用語「アリール」とは、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、ビフェニルのような約6〜約14の炭素原子の範囲を有する芳香族基をいう。
【0092】
用語「アリールアルキル」とは、上記定義のアルキル基に直接結合した上記定義のアリール基、例えば、−CH2C6H5、および−C2H4C6H5をいう。
【0093】
用語「複素環」とは、炭素原子、および窒素、リン、酸素および硫黄からなる群より選択される1〜5のヘテロ原子からなる安定な3〜15員環基をいう。本発明の目的では、複素環基は単環、二環または三環の環系であってもよく、これは融合した、架橋またはスピロ環系を含むことができ、複素環基中の窒素、リン、炭素、酸素または硫黄原子は場合によって種々の酸化状態まで酸化されていてもよい。加えて、窒素原子は場合によって第四級化されていてもよく;および環基は部分的にまたは十分に飽和されていてもよい(すなわちヘテロ芳香族またはヘテロアリール芳香族)。そのような複素環基の例は、限定されるものではないが、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフルニル(benzofurnyl)、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、ペルヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピリジル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾイル、イミダゾリル、テトラヒドロイソウイノリル(tetrahydroisouinolyl)、ピペリジニル、ピペラジニル、2−オキソピペラジニル、2−オキソピペリジニル、2−オキソピロリジニル、2−オキソアゼピニル、アゼピニル、ピロリル、4−ピペリドニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、トリアゾリル、インダニル、イソキサゾリル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフルチル(tetrahydrofurtyl)、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジオキサホスホラニル、オキサジアゾリル、クロマニル、イソクロマニルを含む。
【0094】
複素環基は、安定な構造の形成をもたらすいずれかのヘテロ原子または炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0095】
用語「ヘテロアリール」とは複素環をいい、ここで該環は芳香族である。
【0096】
用語「ヘテロアリールアルキル」とは、アルキル基に直接結合した上記定義のヘテロアリール環基をいう。ヘテロアリールアルキル基は、安定な構造の形成をもたらすアルキル基からのいずれかの炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0097】
用語「ヘテロシクリル」とは上記定義の複素環基をいう。ヘテロシクリル環基は、安定な構造の形成をもたらすいずれかのヘテロ原子または炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0098】
用語「ヘテロシクリルアルキル」とは、アルキル基に直接結合した上記定義の複素環基をいう。ヘテロシクリルアルキル基は、安定な構造の形成をもたらすアルキル基中の炭素原子における主要構造に結合することができる。
【0099】
「置換されたアルキル」、「置換されたアルケニル」、「置換されたアルキニル」、「置換されたシクロアルキル」、「置換されたシクロアルカルキル」、「置換されたシクロアルケニル」、「置換されたアリールアルキル」、「置換されたアリール」、「置換された複素環」、「置換されたヘテロアリール環」、「置換されたヘテロアリールアルキル」、または「置換されたヘテロシクリルアルキル環」における置換基は、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、アミノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオ(=S)からなる群より選択される1つ以上、あるいはアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アリール、アリールアルキル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル、複素環、−COORx、−C(O)Rx、−C(S)Rx、−C(O)NRxRy、−C(O)ONRxRy、−NRxCONRyRz、−N(Rx)SORy、−N(Rx)SO2Ry、−(=N−N(Rx)Ry)、−NRxC(O)ORy、−NRxRy、−NRxC(O)Ry−、−NRxC(S)Ry−NRxC(S)NRyRz、−SONRxRy−、−SO2NRxRy−、−ORx、−ORxC(O)NRyRz、−ORxC(O)ORy−、−OC(O)Rx、−OC(O)NRxRy、−RxNRyRz、−RxRyRz、−RxCF3、−RxNRyC(O)Rz、−RxORy、−RxC(O)ORy、−RxC(O)NRyRz、−RxC(O)Rx、−RxOC(O)Ry、−SRx、−SORx、−SO2Rx、−ONO2から選択される場合によって置換される群と同一または異なってもよく、ここで、上記群の各々におけるRx、RyおよびRzは水素原子、置換されたまたは置換されていないアルキル、ハロアルキル、置換されたまたは置換されていないアリールアルキル、置換されたまたは置換されていないアリール、置換されたまたは置換されていないシクロアルキル置換されたまたは置換されていないシクロアルカルキル、置換されたまたは置換されていない複素環、置換されたまたは置換されていないヘテロシクリルアルキル、置換されたまたは置換されていないヘテロアリール、または置換されたまたは置換されていないヘテロアリールアルキルであり得る。
【0100】
用語「ハロゲン」とは、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素の基をいう。
【0101】
DNJおよびDNJ誘導体
1−デオキシノリジマイシン(化合物1、DNJ;1,5−イミノ−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール−CAS番号19130−96−2)の誘導体はポンペ病を治療するのに有用であることが判明した。DNJは分子式C6H13NO4および163.2の分子量を有する。DNJはSchroderらに対する米国特許第4,806,650号に記載されており、以下の構造式:
【化7】
を有する。
【0102】
本発明で有用なDNJの誘導体は式:
【化8】
[式中、R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アルキルエーテルもしくはアルキルアミン、5〜12の環原子を含有するアルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は場合によって1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−C(=O)N−(アルキル)2(すなわち、−O−C(=O)N−(Me)2)で置換され、R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニルもしくはアルキルエーテル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3または複素環で置換される]
によって記載することができる。
【0103】
R1およびR2の少なくとも1つはHではない。
【0104】
好ましいDNJ誘導体は1〜12の炭素原子を有するN−アルキル誘導体を含む。より好ましくは、これらの誘導体が1〜9の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状化合物である。例示的な化合物は、限定されるものではないが、N−メチル−DNJ(2)、N−エチル−DNJ(3)、N−プロピル−DNJ(4)、N−ブチル−DNJ(5)、N−ペンチル−DNJ(6)、N−ヘキシル−DNJ(7)、N−ヘプチル−DNJ(8)、N−オクチル−DNJ(9)、N−ノニル−DNJ(10)、N−メチルシクロプロピル−DNJ(11)およびN−メチルシクロペンチル−DNJ(12)を含む。
【化9】
【0105】
1つの好ましいアルキルDNJ誘導体はN−メチル−1−デオキシノリジマイシン(化合物2、N−メチルDNJ;N−メチルモラノリン、1,5−(メチルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール)であり、Toronto Research Chemicals,Cat.Number M297000,CAS 69567−1−08から市販の合成グルコースアナログである。N−メチルDNJは肝臓においてグリコーゲン−脱分岐酵素のα−1、6−グルコシダーゼを阻害することによってグリコーゲン分解速度を低下させ、α−1,4−グルコシダーゼをブロックすることによって抗高脂血症作用を有する(Arai Mら,Circulation.1998 Apr 7;97(13):1290−7)。
【0106】
別の好ましいアルキルDNJ誘導体はN−ノニル−デオキシノジリマイシン(化合物10、N−ノニルDNJ;1,5−(ノニルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール)、ゴーシェ病(糖脂質蓄積によって特徴付けられるリソソーム貯蔵病)の治療で有用な合成グルコースアナログである(Sawkar AR,ら.,Proc Natl Acad Sci USA.2002;26;99(24):15428−33)。
【0107】
−OH、−COOH、またはOCF3のような置換基を有するアルキルDNJ誘導体は好ましい化合物でもある。例示的な置換されたアルキルDNJ誘導体は、限定されるものではないが;
【化10】
を含む。
【0108】
好ましいDNJ誘導体はN−2−ヒドロキシエチル−デオキシノジリマイシン(化合物13、N−エトキシDNJ;1.5−(2−ヒドロキシエチルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール;ミグリトール)、すなわち、2型真性糖尿病を治療するのに用いられる合成グルコースアナログである。Drentら,Diabetes Nutr Metab.2002;15(3):152−9; de Luis Roman Da,Rev Clin Esp.2004 Jan;204(1):32−4。
【0109】
別の好ましいDNJ誘導体は5−N−カルボキシペンチルデオキシノジリマイシン(化合物14、5−N−カルボキシペンチルDNJ;1,5−(5−N−カルボキシペンチルイミノ)−1,5−ジデオキシ−D−グルシトール)である。この合成グルコースアナログは、Bernotas RC,ら,Biochem J.1990 Sep 1;270(2):539−40によって記載された経路によって合成することができる。
【0110】
更なるDNJ誘導体は化合物:
【化11】
のようなアルキルエーテル誘導体である。
【0111】
他の好ましい化合物は式:
【化12】
によって表されるN−ベンジル置換DNJ誘導体のような誘導体を含む。
【0112】
他の好ましい化合物は式:
【化13】
[式中、Arは芳香族複素環である。]
によって表されるN−CH2−Ar置換DNJ誘導体のような誘導体を含む。
【0113】
窒素−置換DNJ誘導体に加えて、環窒素に隣接するC−1炭素に結合した置換基を有するDNJ誘導体もまた本発明の好ましい化合物である。これらの化合物は、限定されるのではないが、:
【化14】
を含む。ここで、直鎖炭化水素アナログは、限定されるものではないが、1〜12の炭素原子を含み、Rは限定されるものではないが:場合によって−OH、−COOH、−CF3、−OCF3、NHR、NHCOR’で置換される分岐したアルキル、シクロアルキル、もしくはアルキル、または芳香族または複素環を含み、ここで、R’はアルキル基である。
【0114】
【化15】
式中、HETはテトロヒドロフラン、ピリジン、フラン、ピロール、イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、オキサゾール、チアゾールおよび結合したベンゾ−アナログ等のような複素環基であり、Arはフェニルまたは置換されたフェニルである。フェニル置換基は官能基(例えば、CH3、Cl、F、またはCH2−O−CF3)であるGからなることができ、およびnは0〜5の整数である。
【0115】
DNJ誘導体の合成
R1において置換を有する本発明の化合物は:欧州特許第49858号、国際公開公報第2005/063706号、米国特許第4,639,436号;国際公開公報第2004/037373号;国際公開公報第95/22975号;米国特許第5,399,567号;米国特許第5,310,745号;Bolsら,Journal of Carbohydrate Chemistry 2004 23(4),223−238,Sawkerら,Cemistry and Biology,2005;12,1235−1244,Overkleef,Journal of Biological Chemistry.2005;273(41),26522−26527;Tanら,Journal of Biological Chemistry.1991,266(22),14504−14510;Romanioukら,Glycobiology.2004;14(4),301−310;Lesur,Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters 1997;7(3),355−360;Yoshikuni,Agric.Biol.Chem 1998;52(1),121に記載したように、およびこれらの方法の既知の修飾によってDNJから合成することができる。
【0116】
R2において置換を有する本発明の化合物は、Anzeveno,ら,J.Org.Chem.1989;54(11),2539;国際公開公報第00/56713号;米国特許第4,880,917号;欧州特許第0315017号;および米国特許第5,051,407号に記載されたように、およびBoshageら,Angewante Chemie,Int.Ed.Engl.1981;20(9),806−807および報告されている更なる方法によって、DNJから合成することができ、これらの方法の既知の修飾は国際公開公報第00/56713号,米国特許第5,051,407号、および欧州特許第0315017号に示されている。これらの分子の合成に対する別のアプローチは、Angewante Chemie,Int.Ed.Engl.2003;42,3788−3792においてDavisによって報告されている。
【0117】
本発明の化合物は、テトラ−OBnグルコノラクトンから合成することもできる。この合成は、Perrineら,J.Org.Chem.1967;32,664;Matos,Lopes & Lopes,Synthesis 1999;4,571;Rao & Perlin;Can.J.Chem.1981;59,333;Hoos,Naughton and Vassella,Helv.Chem.Acta,1993;76,1802,and Baxter & Reitz,J.Org.Chem.1994;59,3175に記載された合成から適合させることができる。
【0118】
半合成アプローチは、本発明のDNJ誘導体を形成するために用いることもできる。この酵素経路はGluconobacter Oxydansを用い、米国特許第4,266,025号;米国特許第5,695,969号;米国特許第4,246,345号;米国特許第4,806,650号;0430307;およびKinast & Schedel;Angew.Chem.Int.Ed.Engl.,20,805(1981)に記載された方法から適合されることができる。
【0119】
本発明で有用ないくつかの化合物は購入することができ、例えば、以下の化合物はToronto Research Chemicalsから購入した:1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号D245000)、1−デオキシノジリマイシン塩酸(カタログ番号D245005)、N−ブチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号B691000、CAS[21011−90−0])、ミグリトール(Miglitol)(カタログ番号M344200、CAS[72432−03−2])、N−メチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号297000、CAS[69567−1−8])、N−5−カルボキシペンチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号C181200)、N−(5−アダマンタン−1−イルーメトキシ)−ペンチル−1−デオキシノジリマイシン(カタログ番号A21000);α−ホモノジリマイシンはTCI America(カタログ番号H1144、CAS 119557−99−2)から購入した。
【0120】
本発明で用いることができる化合物の非限定的リストは:DNJ、N−ブチルDNJ、N−(シクロプロピル)メチルDNJ、N−2−(テトラヒドロフラン)メチルDNJ、N−2−オキソエチルDNJトリフルオロエチル エーテル/N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチルDNJ、N−エチルオキシDNJジメチルカルバメート/N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ)DNJ、N−メチルーDNJ、2−メトキシエチルDNJ、2−エトキシエチルDNJ、4−トリフルオロメチル−ベンジルDNJ、α−シアノ−4−トリフルオロメチル−ベンジルDNJ,4−ペントキシベンジルDNJ、4−ブトキシベンジルDNJ、4−t−BOC−ピペリジニルメチルDNJ,α−C6−n−ノニル−DNJ,およびα−ホモーDNJを含む。最大増強の半分が観察される1mMのDNJに対するパーセント増強はこれらの化合物について以下の表1および2に掲げる(実施例2)。
【0121】
本発明で用いることが考えられる更なる化合物はN−ノニルDNJ(10);ミグリトール(13);N−5−カルボキシ−ペンチル−1−DNJ(14);メチル−2−ベンゾフラニルDNJ(30);メチル−2−ベンゾチアフェニルDNJ(31);α−C6−n−ブチル−DNJ(33);メチル−2−フラニルDNJ(29);N−n−ヘキシルDNJ(7);N−エチルDNJ(3);N−n−プロピルDNJ(4);N−n−ペンチルDNJ(6);およびβ−C6−ベンジル−DNJ(36);2−(N−(ベンゾ[d][1,3]ジオキソール−5−イル)−N−メチルアミノ)エチル)−DNJ(28);およびN−2−(N−メチル−N−メチレンジオキシフェニルアミノ)エチル−DNJ(37)を含む。
【0122】
活性および局所化アッセイ
Gaaの増強された活性、安定性および/またはトラフィッキングは、細胞Gaaポリペプチドの増加を測定することによって、リソソームへのトラフィッキングの増加を決定することによって、例えば、または増大したGaa活性または安定性を決定することによって決定することができる。上記の各々を評価するための非限定的で例示的な方法は以下に記載する。
【0123】
Gaa細胞内発現の決定 細胞内LPLタンパク質レベルを決定する方法は当分野で既知である。このような方法はウエスタンブロッティング、ウエスタンブロッティング(IPウエスタン)に続く免疫沈澱、またはタグドLPLタンパク質を用いる免疫蛍光法を含む。
【0124】
Gaaトラフィッキングの測定 生合成経路を介するタンパク質のトラフィッキングの評価は、例えば、グルコシダーゼと組み合わせて、35S−標識受容体タンパク質でのパルス−チェイス実験を用いて;あるいは好ましくは、トラフィッキングの間にタンパク質修飾を決定するための間接的または直接的免疫蛍光によって達成することができる。これらのおよび他の方法は、例えば、Current Protocols in Cell Biology 2001;John Wiley & Sonsに記載されている。Gaaのリソソームトラフィッキングを検出するための例示的な免疫蛍光実験は、以下に実施例3および4で詳細に記載する。
【0125】
タンパク質の損なわれたトラフィッキングを検出するための他の方法は、当分野でも周知である。例えば、ゴルジ装置中でN−および/またはO−グリコシル化されるタンパク質については、グリコシダーゼ処理および免疫沈澱と組み合わせて、放射性標識タンパク質を用いるパルス−チェイス代謝産物標識を用いて、タンパク質がゴルジにおいて十分なグリコシル化を受けているか否か、あるいはそれらが更なるグリコシル化のためにゴルジへのトラフィッキングの代わりにERにおいて保持されているか否かを検出することができる。
【0126】
細胞局所化を肉眼で検出するための感度のよい方法は、蛍光タンパク質または蛍光抗体を用いる蛍光顕微鏡も含む。例えば、注目するLPLタンパク質は、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、シアン蛍光タンパク質、黄色蛍光タンパク質、および赤色蛍光タンパク質、続いて、マルチカラーおよび時間−経過顕微鏡観察および電子顕微鏡観察でタグを付して、固定された細胞における、および生きた細胞におけるこれらのタンパク質の運命を調べることができる。タンパク質トラフィッキングでの蛍光イメージングの使用のレビューについては、Watsonら,Adv Drug Deliv Rev 2005;57(1):43−61参照。タンパク質の細胞内共局所化のために共焦点顕微鏡観察の使用の記載については、Miyashitaら,Methods Mol Biol.2004;261:399−410参照。
【0127】
蛍光修正分光測定(FCS)は、単一分子およびリアルタイム分解が可能な超感受性かつ非侵入性検出方法である(Vukojevicら,Cell Mol Life Sci 2005;62(5):535−50)。SPFI(単一粒子蛍光イメージング)は、小さな蛍光粒子で選択的に標識された個々の分子を可視化するために高感度の蛍光を用いる(Cherryら,Biochem Soc Trans 2003;31(Pt5):1028−31)。生きた細胞のイメージングのレビューについては、Hariguchi,Cell Struct Funct 2002;27(5):333−4参照。
【0128】
生理学的条件下でタンパク質の構造および局所化を調べるのに、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)顕微鏡観察も用いられる(Periasamy,J Biomed Opt 2001;6(3):287−91)。
【0129】
Gaa活性の増加の決定 インビトロでは、Gaa活性は実施例2にて以下に記載するように決定することができる。Gaa活性は、Okumiyaら,Mol Genet Metab.2006 May;88(1):22−8に記載されているように、混合されたリンパ球を用いて薬理学的シャペロンでの処理後にインビボで決定することができる。該方法は、リソソーム酸α−グルコシダーゼ活性を測定するための基質としてグリコーゲンおよび4−メチルウンベリフェリル−アルファ−d−グルコピラノシド(4MU−アルファGlc)を使用し、アカルボースを取り込んで、無関係なα−グルコシダーゼ(圧倒的にマルトース−グルコアミラーゼ)の緩衝を排除する。
【0130】
処方、用量および投与
一実施形態において、シャペロン化合物は、好ましくは(以下に更に記載する)経口投与形態で単一療法として投与するが、他の投与形態も考えられる。この実施形態において、投与方法は、ポンペ患者の血漿中の化合物の一定の定常状態レベルを提供するものであるべきと考えられる。これは、分割用量、または制御−放出処方での毎日の投与によって、あるいは維持−放出投与形態の頻度が低い投与によって得ることができる。シャペロン化合物の投与の処方、用量および経路は、以下に詳細に記載する。
【0131】
処方
本発明の一実施形態において、シャペロン化合物は単一療法として投与され、例えば、錠剤またはカプセルまたは液体の形態での経口投与にて、注射用の滅菌水性溶液にて、または投与に先立ってインビトロでの酵素凝集を妨げるために復元の間にまたはその後直ちに置換Gaa(以下参照)の処方に加えるべき凍結乾燥粉末での形態を含めたいずれかの投与経路に適した投与形態とすることができる。
【0132】
シャペロン化合物を経口投与用に処方する場合、錠剤またはカプセルは、結合剤(例えば、予めゼラチン化されたトウモロコシ澱粉、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、マイクロクリスタリンセルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモ澱粉またはナトリウム澱粉グリコレート);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)のような医薬上許容される賦形剤での従来の手段によって調製することができる。錠剤は当分野でも周知の方法によって被覆することができる。経口投与のための液体製剤は、例えば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態を取ることができ、あるいはそれらが、使用の前に水または別の適当なビークルでの復元のための乾燥した製品として供することができる。そのような液体製剤は、懸濁化剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビークル(例えば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油);および保存剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)のような医薬上許容される添加剤での従来の手段によって調製することができる。製剤は、必要に応じて、緩衝塩、フレーバー、着色および甘味料も含有することができる。経口投与用の製剤は、活性シャペロン化合物が制御された放出を与えるように適切に処方することができる。
【0133】
本発明の方法で用いることが考えられるシャペロン化合物であるZAVESCA(登録商標)は、ハードゼラチンカプセルとして市販されており、各カプセルは100mgのDNJ、ナトリウム澱粉グリコレート、ポビドン(K30)およびステアリン酸マグネシウムを含有する。カプセルシェルはゼラチンおよび二酸化チタンを含む。
【0134】
非経口/注射用途に適したシャペロン化合物の医薬処方は、一般には、(水溶性である場合)滅菌水性溶液、または分散液、滅菌注射溶液および分散液の即席調製用の滅菌粉末を含む。全ての場合において、該形態は滅菌されていなければならず、かつ容易なシリンジ性が存在する程度まで流動的でなければならない。それは製造および貯蔵の条件下で安定でなければならず、細菌および真菌のような微生物の汚染作用に対して保持されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、およびポリエチレングリコール等)、その適当な混合物、および植物油を含有する溶媒または分散媒体でもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティングの使用によって、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持によって、および界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、種々の抗菌および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸などによって実現することができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウムを含めるのが合理的であろう。注射組成物の延長された吸収は、吸収を遅延する剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンの組成物における使用によって実現することができる。
【0135】
滅菌注射用液は、必要な量の精製されたGaaおよびシャペロン化合物を先に例示した種々の他の成分と共に適当な溶媒に配合し、必要であれば続いて濾過または最終滅菌することによって調製される。一般に、分散液は、基本的な分散媒体、および先に列挙したものからの必要な他の成分を含有する滅菌ビークルに種々の滅菌された有効成分を取り込むことによって調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉末の場合には、好ましい調製方法は真空乾燥および凍結乾燥技術であり、これは、有効成分に加えて、それ以前に滅菌濾過された溶液からのいずれかの更なる所望の成分の粉末を生じる。
【0136】
処方は賦形剤を含有することができる。処方に含めることができる医薬上許容される賦形剤はクエン酸緩衝液、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、および炭酸水素緩衝液のような緩衝液、アミノ酸、尿素、アルコール、アスコルビン酸、リン脂質;血清アルブミン、コラーゲンおよびゼラチンのようなタンパク質;EDTAまたはEGTA、および塩化ナトリウムのような塩;リポソーム;ポリビニルピロリドン;デキストラン、マンニトール、ソルビトールおよびグリセロールのような糖;プロピレングリコールおよびポリエチレングリコール(例えば、PEG−4000、PEG−6000);グリセロール;グリシンまたは他のアミノ酸;および脂質である。処方で用いるための緩衝液系はクエン酸;酢酸;炭酸水素;およびリン酸緩衝液を含む。リン酸緩衝液は好ましい実施形態である。
【0137】
処方は非イオン性洗剤を含有することもできる。好ましい非イオン性洗剤はポリソルベート20、ポリソルベート80、トリトンX−100、トリトンX−114、ノニデット(Nonidet)P−40、オクチルα−グルコシド、オクチルβ−グルコシド、Brij35、プルロニック(Pluronic)およびツイーン(Tween)20を含む。
【0138】
投与
シャペロン化合物の投与経路は経口(好ましい)または非経口であってもよく、静脈内、皮下、動脈内、腹腔内、目、筋肉内、口腔内、直腸内、膣内、眼窩内、大脳内、皮内、頭蓋内、脊髄内、心室内、クモ膜下腔、嚢内、関節包内、肺内、鼻内、経粘膜、経皮または吸入であってもよい。
【0139】
シャペロン化合物の上記非経口処方の投与は製剤のボーラスの周期的注射によることができ、あるいは外部(例えば、静脈内バッグ)または内部(例えば、生体分解性インプラント)である貯蔵庫からの静脈内または腹腔内投与によって投与してもよい。例えば、各々を参照として本明細書に組み入れられる米国特許第4,407,957号および第5,798,113号参照。肺内送達方法および装置は、例えば、各々を参照として本明細書に組み入れられる、米国特許第5,654、007号、第5,780,014号および第5、814、607号に記載されている。他の有用な非経口送達系は、エチレン−酢酸ビニルコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、移植可能注入系、ポンプ送達、カプセル化細胞送達、リポソーム送達、ニードル−送達注射、無ニードル注射、ネブライザー、エアロゾライザー、エレクトロポレーションおよび経皮貼布を含む。無ニードル注射デバイスは、その明細書が参照として本明細書に組み入れられている、米国特許第5,879,327号;第5,520,639号;第5,846,233号および第5,704,911号に記載されている。上記処方のいずれもこれらの方法を用いて投与することができる。
【0140】
皮下注射は、静脈内投与と比較して長い血漿内半減期も持ちつつ、自己投与が可能であるという利点がある。更に、再充填可能注射ペンおよび無ニードル注射デバイスのような患者の便宜のために設計された種々のデバイスを、本明細書中で議論する本発明の処方で用いることができる。
【0141】
用量
内因性突然変異体Gaaを救済し、(および/または投与された精製Gaaを安定化させる;以下の組合せ療法のセクション参照)するのに有効なシャペロン化合物の量は、当業者がケースバイケースに基づいて決定することができる。半減期(t1/2)、ピーク血漿内濃度(Cmax)、ピーク血漿内濃度までの時間(tmax)、曲線下面積(AUC)によって測定された暴露、および置換タンパク質およびシャペロン化合物双方についての組織分布、ならびにシャペロン/置換Gaa結合についてのデータ(親和性定数、会合および解離定数、および価性)のような薬物動態および薬力学は、その活性を阻害することなく、置換タンパク質を安定化し、このようにして、治療効果を付与するのに必要な適合する量を決定するための当分野で既知の通常の方法を用いて得ることができる。
【0142】
細胞培養アッセイまたは動物実験から得られたデータを用いて、ヒトおよびヒト以外の動物で用いられる治療用量範囲を処方することができる。本発明の治療方法で用いられる化合物の用量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性がなくして、(テストされた集団の50%に対して有効な)ED50濃度を含むある範囲の循環濃度内にある。いずれかの治療で用いられる特定の用量は、使用される特定の投与形態、利用される投与の経路、個人(例えば患者)の状態などのような因子に依存して、この範囲内で変化させることができる。
【0143】
治療的に有効な用量は、細胞培養アッセイから最初に推定し、動物モデルで処方して、IC50を含む循環濃度範囲を達成することができる。化合物のIC50濃度は、(例えば、細胞培養アッセイから決定される)症状の最大の半分の抑制を達成する濃度である。特定の個人、例えば、ヒト患者で用いられる適当な用量は、そのような情報を用いてより正確に決定することができる。
【0144】
血漿中の化合物の尺度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)またはガスクロマトグラフィーのような技術によって患者のような個人でルーチン測定することができる。
【0145】
組成物の毒性および治療効果は、例えば、細胞培養アッセイにおいて、または実験動物を用いて標準的な医薬的手法によって決定して、LD50およびED50を決定することができる。パラメーターLD50およびED50は当分野でもよく知られており、各々、集団の50%に対して致死効果がある、および集団の50%において治療的に有効である化合物の用量をいう。毒性および治療効果の間の用量比率を治療指数といい、比率:LD50/ED50として表すことができる。大きな治療指数を呈するシャペロン化合物が好ましい。
【0146】
1つの例示的な用量養生法として、N−ブチル−DNJ(ZAVESCA(登録商標))は、分割用にて1日当たり100〜300mgの経口用量にてゴーシェ病の治療で投与される(1日当たり2〜3回)。100mgの投与に続き、tmaxはゴーシェ患者において2〜2.5時間の範囲であった。ZAVESCA(登録商標)の半減期は約6〜7時間であり、これは、3回の毎日の投与後1,5〜2日までに定常状態が達成されることを予測する。ZAVESCA(登録商標)がヒトにおいて代謝される証拠はない。
【0147】
Gaaの最適シャペロン活性については、糖脂質合成を妨げるのに必要なものよりもより低い用量のDNJ誘導体が有効であると予測される。例えば、5および150mg/日の間、特に5〜75mg/日の間の用量が、より高いGaa−増強活性を有するDNJ誘導体で好ましい。いくつかのDNJ誘導体は、低下したGaa−増強活性のためわずかにより高い用量を必要とするであろう。
【0148】
シャペロン化合物の最適濃度は、組織における、または血液循環におけるシャペロン化合物のその活性、生物学的利用性、および組織における、または血液循環におけるシャペロン化合物の代謝を妨げることなく、組織または血液循環において、インビボにて組換えタンパク質の適切な立体構造を安定化し、誘発するのに必要な量に従って決定されるであろう。例えば、シャペロン化合物は酵素阻害剤である場合、阻害剤の濃度は、該酵素についての特異的シャペロンのIC50値を計算することによって決定することができる。化合物の生物学的利用性および代謝を考慮し、IC50値のまわりの、またはIC50値をわずかに上回る濃度を、次いで、酵素活性に対する効果、例えば、酵素活性の量を増加させる、または投与された酵素の酵素活性を延長するのに必要な阻害剤の量に基づいて評価することができる。その例として、α−Gal A酵素についての化合物デオキシガラクトノジリマイシン(DGJ)のIC50値は0,04μMであり、DGJは優れた阻害剤であることを示す。従って、α−Gal Aの細胞内濃度は投与されたα−Gal Aのそれよりもかなり低いであろうと予測される。
【0149】
酵素置換療法との組合せ療法
酵素置換療法は、注入によって野生型または生物学的に機能的な酵素を外因的に導入することによってタンパク質の量を増加させる。この療法は、先に参照したリソソーム貯蔵障害、ゴーシェ病およびファブリー病を含めた多くの遺伝的障害のために開発されてきた。野生型酵素は、組換え細胞発現系(例えば、哺乳動物細胞または昆虫細胞−Desnickらに対する米国特許第5,580,757号;Seldenらに対する米国特許第6,395,884号および第6,458,574号;Calhounらに対する米国特許第6,461,609号;Miyamuraらに対する米国特許第6,210,666号;Seldenらに対する米国特許第6,083,725号;Rasmussenらに対する米国特許第6,451,600号;Rasmussenらに対する米国特許第5,236,838号;およびGinnsらに対する米国特許第5,879,680号)、ヒト胎盤、または動物乳(Reuserらに対する米国特許第6,188,045号参照)から精製される。注入の後、外因性酵素は、非特異的または受容体−特異的メカニズムを介して組織によって摂取されると予測される。一般には、摂取効率は高くなく、外因性タンパク質の循環時間は短い(Ioannuら,Am.J.Hum.Genet.2001;68:14−25)。加えて、外因性タンパク質は不安定であって、迅速な細胞内分解に付され、ならびに引き続いての処理での有害な免疫学的反応の可能性を有する。
【0150】
ポンペ病の酵素置換は、いくつかのグループ、Klingeら、Neuropediatrics.2005;36(1):6−11;Klingeら、Neuromuscul Disord.2005;15(1):24−31;Van den Houtら,J Inherit Metab Dis.2001;24(2):266−74;およびAmalfitanoら,Genet Med.2001;3(2):132−8によって記載されているが、限定的な成功に過ぎなかった。ヒト投与のための組換えGaaはVan den Houtら,Lancet.2000;56:397−8に記載されている。
【0151】
本発明は、インビトロにて処方または組成物中でタンパク質についてのASSCの共投与によって、ミスフォールディングによって特徴付けられる突然変異したGaaを有するポンペ患者においてインビボにて精製されたタンパク質の安定性を増大させることによって、タンパク質置換療法の有効性を増大させる。
【0152】
一実施形態において、置換Gaaおよびシャペロン化合物は別々の組成物に処方される。一実施形態において、DNJ誘導体シャペロン化合物および置換Gaaは同一の経路、例えば、静脈内注入に従って、あるいは好ましくは、異なる経路、例えば、置換酵素については静脈内注入、および上記セクションに記載されたシャペロン化合物については経口投与によって、投与することができる。
【0153】
置換Gaaはシャペロンの投与について上記した経路のいずれかによって投与するが、好ましくは、投与は非経口である。より好ましくは、投与は注射用の滅菌溶液中にて静脈内である。
【0154】
別の実施形態において、シャペロン化合物および置換Gaaは1つの組成物に処方される。そのような組成物は貯蔵およびインビボ投与の間に酵素の安定を増強させ、それにより、コストを低下させ、治療効果を増大させる。処方は好ましくは静脈内、皮下および腹腔内を含めた非経口投与に適しているが、経口、鼻内、または経皮のような他の投与経路に適した処方も考えられる。
【0155】
投与のタイミング 置換Gaaおよびシャペロン化合物が別々の処方内にある場合、投与は同時としてもよく、またはシャペロン化合物を置換Gaaに先立って、または後に投与してもよい。例えば、置換酵素を静脈内投与する場合、シャペロン化合物を0時間から6時間後の期間の間に投与することができる。代替として、シャペロン化合物はタンパク質に先立って0〜6時間に投与することができる。
【0156】
好ましい実施形態において、シャペロン化合物および置換タンパク質を別々に投与する場合、およびシャペロン化合物が短い循環半減期を有する場合(例えば、小分子)、シャペロン化合物を毎日のように連続的に経口投与して、血液循環中の一定レベルを維持することができる。そのような一定レベルは、患者にとって非毒性であり、および非阻害性治療効果を付与するのに、投与の間の標的置換タンパク質との干渉に関して最適であると決定されたものであろう。
【0157】
別の実施形態において、シャペロン化合物は、(シャペロン化合物の投与によって延長されるであろう)置換Gaaの代謝回転に必要な期間の間に投与される。
【0158】
置換Gaaの用量 現行の方法によると、置換酵素の濃度は、一般には、約0.05〜5.0mg/kg体重の間であり、典型的には、毎週または2週間毎に投与される。酵素は0.1μg/kg〜約10mg/kgの範囲で、好ましくは約0.1mg/kg約2mg/kgの範囲の量で投与することができる。例えば、ファブリー病の治療では、投与される組換えα−Gal Aの用量は、典型的には、0.1〜0.3mg/kgの間あって、毎週または2週間毎に投与される。タンパク質の規則的に反復される用量は患者の生涯にわたって必要である。皮下注射は薬物へのより長い期間の全身暴露を維持する。皮下用量は、好ましくは、2週間毎のまたは毎週の0.1〜5.0mgの体重1kg当たりのα−Gal Aである。また、該α−Gal Aは、例えば、静脈内ボーラス注射にて、ゆっくりと押す静脈内注射にて、または連続的静脈内注射によって静脈内投与される。(例えば、2〜6時間にわたる)連続的静脈内注入は、血液中での特異的レベルの維持を可能とする。
【0159】
組換えまたは精製されたGaaの有効用量は、ポンペにおける標的組織、骨格筋が内皮および間質組織によって組換え投与される酵素から守られるという事実により、ファブリーまたはゴーシェ病で必要とされるものよりも、高いであろうと予測される。組換えGaa(Myozyme,Genzyme,Inc.)は、ポンペ病の治療で現在承認されている。更なる試験がSynpac,Inc.と連携してデューク(Duke)大学、および欧州で進行中である。1つの欧州の実験では、乳児性ポンペ患者はウサギ乳からの組換えヒトGaaの1週間当たり15および20mg/kgの用量で開始し、他方、実験の間には、筋肉組織活動レベルのモニタリングに基づいて、用量は1週間に1回の静脈内注入にて40mg/kgまで増大させた。実験は36週間にわたって144回の注入の間継続した。(Van den Houtら,Pediatrics.2004;113:448−57)。数人の後期−発症ポンペ患者での1つの試験において、ウサギ乳からの組換えヒトGaaは5%グルコースおよび0,1%ヒト血清アルブミンを含む生理食塩水中の1〜2mg/ml溶液として静脈投与され、最初は、10mg/kgの毎週の用量であり、20mg/kgまで増大させた(Winkelら,Ann Neurol.2004;55:495−502)。
【0160】
遺伝子治療との組換え療法
合衆国においては治療的処置について未だ承認されていないが、多数の遺伝的障害のための遺伝子治療(エクスビボおよび直接的導入の双方)は研究中である。本発明では、ポンペ病において欠陥があるGaaを置き換えるための遺伝子治療と組み合わせたシャペロン化合物の使用も考えられる。そのような組合せは、インビボにて治療Gaaの発現のレベルを増大させることによって遺伝子治療の効率を増強させる。というのは、突然変異した酵素のフォールディングおよびプロセッシングの増強に加えて、小分子シャペロンが、野生型または立体構造的に安定なカウンターパートのフォールディングおよびプロセッシングを増強させることが示されているからである(例えば、Fanらに対する米国特許第6,274,597号、実施例3参照)。
【0161】
最近、Sunら(Mol Ther.2005;11(1):57−65)は、ポンペ病の免疫欠陥マウスモデル(Gaaノックアウト/SCIDマウス)への徐脈内注射のためにヒトGaa(hGaa;AAV8としてシュードタイプ化(AAV2/8))をコードするアデノ−関連ウィルス(AAV)ベクターを使用した。hGaaの高いレベルを、AAV2/8ベクター投与後に24時間血漿中で維持した。心臓および骨格筋中でのGaaの欠乏はオスマウスにおいてAAV2/8ベクターで修正し、他方、メスマウスは心臓においてのみ修正を有した。
【0162】
当分野で利用可能である、または利用可能となった遺伝子治療の方法のいずれも、治療遺伝子を送達するのに用いることができる。例示的な方法は以下に記載されている。遺伝子治療の方法の一般的なレビューについては、Goldspielら,Clinical Pharmacy 1993,12:488−505;Wu and Wu,Biotherapy 1991,3:87−95;Tolstoshev,Ann.Rev.Pharmacol.Toxicol.1993,32:573−596;Mulligaan,Science.1993,260:926−932;およびMorgaan and Anderson,Ann.Rev.Biochem.1993,62:191−217;May,TIBTECH 1993,11:155−215参照。用いることができる組換えDNA技術の当分野で普通に知られている方法は、Ausubelら,(eds.),1993,Current Protocols in Morecular Biology,John Wiley & Sons,NY;Kriegler,1990,Gene,Transfer and Expression,A Laboratory Mannual,Stockton Press,NYにおいて、およびChapters 12 and 13,Dracopoliら,(eds.),1994,Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY;およびColosimoら,Biotechnics 2000;29(2):314−8,320−2,324に記載されている。
【0163】
本発明の方法で投与すべきGaa遺伝子は、当業者の技量内にある通常の分子生物学微生物学、および組換えDNA技術を用いて単離し、精製することができる。例えば、標的タンパク質をコードする核酸は、文献に記載されているように、組換えDNA発現を用いて単離することができる。例えば、Sambrook,Fritsch & Maniatis,Morecular Cloning: A Laboratory Mannual,Second Edition (1989) Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor, New York;DNA Cloning: A Practical Approach,Volumes I and II(D.N.Glover ed.1985);Oligonucleotide Symphesis (M.J.Gait ed.1984);Nuclic Acid Hybridization [B.D.Hames & S.J.Eiggins eds.(1985)]:Transcription And Translation [B.D.Hames & S.J.Eiggins,eds.(1984)];Animal Cell Culture [R.I.Freshney,ed.(1986)];Immobilized Cells And Enzymes [IRL Press,(1986)];B.E Perbal,A Practical Guide To Morecular Cloning (1984)参照。タンパク質をコードする核酸は、該遺伝子が生物学的活性なタンパク質をコードする限り、全長または切形されていてもよい。
【0164】
次いで、同定され単離されたGaa遺伝子を適当なクローニングベクターに挿入することができる。遺伝子治療に適したベクターはアデノウィルス、アデノ−関連ウィルス(AAV)、ワクシニア、ヘルペスウィルス、バキュロウィルスおよびレトロウィルス、パルボウィルス、レンチウィルス、バクテリオファージ、コスミッド、プラスミド、真菌ベクター、および種々の真核生物および原核生物宿主での発現で記載されており、遺伝子治療で、ならびに単純なタンパク質発現で用いることができる、当分野で典型的に用いられる他の組換えビークルのようなウィルスを含む。
【0165】
好ましい実施形態において、ベクターはウィルスベクターである。ウィルスベクター、特にアデノウィルスベクター、標的細胞のウィルス感染の増大した効率を提供する、カチオン性脂質、ポリL−リシン(PLL)、およびジエチルアミノエチルデキストラン(DELAE−デキストラン)のようなカチオン性両親媒体と複合体化することができる(例えば、本明細書に参照として組み入れられる1997年11月20日に出願されたPCT/US97/21496参照)。本発明で用いられる好ましいウィルスベクターはワクシニア、ヘルペスウィルス、AAVおよびレトロウィルスに由来するベクターを含む。特に、ヘルペスウィルス、特に、その開示が本明細書に組み入れられる米国特許第5,672,344号に開示されたもののような単純疱疹ウィルス(HSV)は、導入遺伝子のニューロン細胞への送達で特に有用である。その開示が本明細書に組み入れられる米国特許第5,139,941号、第5,252,479号および第5,753,500号、およびPCT国際公開公報第97/09441号に開示されたもののようなAAVベクターも有用である。というのは、これらのベクターは宿主染色体へ組み込まれ、ベクターの反復投与の必要性が最小だからである。遺伝子治療におけるウィルスベクターのレビューについては、McConnellら,Hum Gene Ther.2004(11):1022−33;Mccartyら,Annu Rev Genet.2004;38:819−45;Mahら,Clin.PHarmacokinet.2002;41(12):901−11;Scottら,Neuromuscul.Disord.2002;12 Suppl 1:S23−9参照。加えて、米国特許第5,670,488号参照。Beckら,Curr Gene Ther.2004;4(4):457−67は、特に、心血管細胞における遺伝子治療を記載する。
【0166】
送達すべき遺伝子のコーディング配列は、発現制御配列、例えば、遺伝子の発現を指令するプロモーターに操作可能に連結されている。本明細書中で用いるように、フレーズ「操作可能に連結された」とは、プロモーター、エンハンサー、転写および翻訳停止部位、および他のシグナル配列のようなヌクレオチドの調節およびエフェクター配列とポリヌクレオチド/遺伝子との機能的関係をいう。例えば、プロモーターに対する核酸の操作的結合とは、DNAの転写が、プロモーターを特異的に認識し、それに結合するRNAポリメラーゼによってプロモーターから開始されるように、ポリヌクレオチドおよびプロモーターの間の物理的および機能的関係をいい、ここで、プロモーターはポリヌクレオチドからのRNAの転写を指令する。
【0167】
他の特別な実施形態において、コーディング配列およびいずれかの他の所望の配列に、ゲノム中の所望の部位における相同組換えを促進する領域が均質したベクターを用い、このようにして、ゲノムに組み込まれた核酸分子からの構築体の発現を提供する(Koller and Smithies,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.1989,86:8932−8935;Zijlstraら,Nature.1989,342:435−438;Zarlingらに対する米国特許第6,244,113号:およびPatiらに対する米国特許第6,200,812号)。
【0168】
遺伝子送達
患者へのベクターの送達は直接的であってもよく、その場合、患者は直接的にベクターまたは送達複合体に暴露され、あるいは間接的であってもよく、この場合、細胞をまずインビトロにてベクターで形質転換し、次いで、患者に移植する。これらの2つのアプローチは、各々、インビボおよびエクスビボ遺伝子治療として知られている。
【0169】
直接的導入 特別な実施形態において、ベクターはインビボにて直接的に投与され、そこでは、それは生物の細胞に入り、遺伝子の発現を媒介する。これは、当分野で知られ、かつ上記で議論した多数の方法のいずれかによって、例えば、それを適当な発現ベクターの一部として構築し、それが細胞内になるようにそれを投与することによって、例えば、欠陥があるまたは弱毒化レトロウィルスまたは他のウィルスベクターを用いて感染することによって(米国特許第4,980,286号参照)、または裸のDNAの直接的注射によって、あるいはミクロ粒子衝撃(例えば、遺伝子銃;Biolistic,Dupont)の使用によって;または脂質または細胞−表面受容体またはトランスフェクト剤での被覆、バイオポリマー(例えば、ポリ−β−1−64−N−アセチルグルコサミン多糖;米国特許第5,635,493号参照)へのカプセル化、リポソーム、ミクロ粒子またはマイクロカプセルへのカプセル化;ペプチドまたは核に入ることが知られている他のリガンドへ結合したそれを投与することによって;または受容体−媒介エンドサイトーシスに従うリガンドに結合したそれを投与することによって(例えば、Wu and Wu,J.Biol.Chem.1987,62:4429−4432参照)達成することができる。別の実施形態において、核酸−リガンド複合体を形成することができ、そこでは、リガンドは、エンドソームを破壊し、核酸がリソソーム分解を回避するのを可能とするための融合形成ウィルスペプチド、または治療DNAを細胞に導入するのに用いることができる、例えば、アンテナペディアに由来するカチオン性12−量体ペプチド(Miら,Mol.Therapy.2000,2:339−47)を含む。なお別の実施形態において、核酸は、特異的受容体を標的化することによって、細胞特異的摂取および発現のためにインビボで標的化することができる(例えば、PCT国際公開公報第92/06180号、国際公開公報第92/22635号、国際公開公報第92/20316号および国際公開公報第93/14188号参照)。最近、マグネトフェクションといわれる技術がベクターを哺乳動物に送達するのに用いられてきた。この技術は、ベクターを、磁場の影響下で、送達用の超常磁性ナノ粒子と会合させる。この適用は送達時間を低下させ、ベクター効率を増強させる(Schererら,Gene Therapy.2002;9:102−9)。更なる標的化および送達方法が以下のベクターの記載で考えられる。
【0170】
特別な実施形態において、核酸は脂質担体を用いて投与することができる。脂質担体を裸の核酸(例えば、プラスミドDNA)と会合させて、細胞膜を通っての通過を容易とすることができる。カチオン性、アニオン性または中性脂質をこの目的で用いることができる。しかしながら、カチオン性脂質が好ましい。なぜならば、それらは一般に負の電荷を有するDNAと両方に会合することが示されているからである。カチオン性脂質もまたプラスミドDNAの細胞内送達を媒介することが示されている(Felgner and Ringold,Nature.1989;337:387)。マウスへのカチオン性脂質−プラスミド複合体の静脈内注射は、肺におけるDNAの発現をもたらすことが示されている(Brighamら,Am.J.Med.Sci.1989;298:278)。また、Osakaら,J.Pharm.Sci.1996;85(6):612−618;Sanら,Human Gene Therapy.1993;4:781−788;Seniorら,Biochemica et Biophysica Acta.1991;1070:173−179);Kabanov and Kabanov,Bioconjugate Chem.1995;6:7−20;Liuら,Pharmaceut.Res.1996;13;Remyら,Bioconjugate Chem.1994;5:647−654;Beher,J−P.,Bioconjugate Chem.1994;5:382−389;Wymanら,Biochem.1997;36:3008−3017;Marshallら,に対する米国特許第5,939,401号;およびScheuleら,に対する米国特許第6,331,524号参照。
【0171】
代表的なカチオン性脂質は、例えば、その開示が参照として本明細書に組み入れられる米国特許第5,283,185号;および例えば米国特許第5,767,099号に開示されたものを含む。好ましい実施形態において、カチオン性脂質は米国特許第5,767,099号に開示されたN4−スペルミンコレステリルカルバメート(GL−67)である。更なる好ましい脂質はN4−スペルミジンコレステリルカルバメート(GL−53)および1−(N4−スペルミン)−2,3−ジラウリルグリセロールカルバメート(GL−89)を含む。
【0172】
好ましくは、ウィルスベクターのインビボ投与では、適当な免疫抑制処置を、ウィルスベクター、例えば、アデノウィルスベクターと組み合わせて使用して、ウィルスベクターおよびトランスフェクトされた細胞の免疫−脱活性化を回避する。例えば、インターロイキン−12(IL−12)、インターフェロン−γ(IFN−γ)または抗−CD4抗体のような免疫抑制サイトカインを投与して、ウィルスベクターに対する液性または細胞性免疫応答をブロックする。その点に関して、最少数の抗原を発現するように設計されたウィルスベクターを使用するのが有利である。
【0173】
間接的導入 体細胞は、上記した方法のいずれかを用いて野生型タンパク質をコードする構築体にてエクスビボで作製し、個体に再度移植することができる。この方法は、一般には、Seldenら,に対する国際公開公報第93/09222号に記載されている。加えて、この技術はPayumoら,Clin.Orthopaed.and Related Res.2002;403S:S228−S242に記載された細胞ベースの送達の所有されたImPACT技術で用いられる。そのような遺伝子治療系においては、体細胞(例えば、線維芽細胞、肝細胞または内皮細胞)を患者から取り出し、インビトロにて培養し、当該治療に係る遺伝子でトランスフェクトし、特徴付け、患者に再度導入する。(個体または組織に由来し、継体に先立って作製された)双方の初代細胞、および(インビボでの導入に先立ってインビトロにて継体した)二次細胞、ならびに当分野で既知の不滅化細胞系を用いることができる。本発明の方法で有用な体細胞は、限定されるものではないが、線維芽細胞、ケラチノサイト、上皮細胞、内皮細胞、神経膠細胞、神経細胞、血液の形成されたエレメント、筋肉細胞、培養することができる他の体細胞、および体細胞前駆体のような体細胞を含む。好ましい実施形態において、細胞は線維芽細胞または間葉幹細胞である。
【0174】
受容者初代または二次細胞における外因性遺伝子の発現で必要な更なる配列と共に、外因性遺伝子および、場合によって、選択マーカーをコードする核酸を含む核酸構築体を用いて、コードされた産物は生産される初代または二次細胞をトランスフェクトする。そのような構築体は、限定されるものではないが、レトロウィルス、ヘルペス、アデノウィルス、アデノウィルス−関連、おたふく風邪およびポリオウィルスベクターのような感染性ベクターを含み、この目的で用いることができる。
【0175】
経皮送達は、ケラチノサイト、メラノサイト、および樹状細胞を含めた表皮の細胞型を用いる間接的導入で特に適している(Pfutznerら,Expert Opin.Investig.Drugs.2000;9:2069−83)。
【0176】
間葉幹細胞(MSC)は、骨髄で生産される非血液−生産幹細胞である。MSCは分化し、特殊化された非血液組織に増殖させることができる。レトロウィルスでトランスフェクトされた幹細胞は、自己−更新のためのそれらの能力により療法での良好な候補である。この能力は、遺伝子治療の反復的投与を排除する。別の利点は、もし注射された幹細胞が標的器官に到達し、次いで、分化するならば、それらは器官における損傷しまたは異常に形成された細胞を置き換えることができる。
【0177】
インビトロ安定性
そのシェルフライフの間における医薬処方の安定性の確保は主な挑戦である。タンパク質医薬の開発に先立って、有効成分内の固有のまたは潜在的不安定性が研究し、取り組まれなければならない。タンパク質およびペプチド治療剤の不安定性が化学的不安定性または物理的不安定性として分類される。化学的不安定性の例は加水分解、酸化および脱アミド化である。物理的不安定性の例は凝集、沈殿および表面への吸着である。加えて、タンパク質はpH、温度、剪断応力、凍結/解凍応力、およびこれらの応力の組合せのような応力に付すことができる。
【0178】
最も普及している処方の問題の1つは生成物の凝集であり、生物活性の喪失をもたらす。賦形剤の添加はプロセスを遅らせることができるが、それを完全には妨げることはできない。活性の喪失は物理的アッセイによって検出してもよく、またはそうでなくてもよく、変動の大きな(時々、15〜20%)係数でもってバイオアッセイまたは効力アッセイで明らかであるに過ぎず、実質的な喪失の決定を困難としている。
【0179】
投与すべき置換酵素を安定化させるに加えて、シャペロン化合物の存在によって医薬処方を約7.0〜約7.5の中性pHでの貯蔵が可能になる。これは、通常はより低いpHで貯蔵して安定性を維持しなければならない酵素に利点を付与するであろう。例えば、Gaaを含めたリソソーム酵素は低いpH(例えば、5.0以下)において安定した立体構造を維持する。しかしながら、低いpHにおける置換酵素の延長された貯蔵は、酵素および/または処方の分解を早めかねない。安定化シャペロン化合物の添加は酸中で置換タンパク質を貯蔵する必要性を排除できる。
【0180】
[実施例]
以下に示す実施例によって本発明を更に記載する。そのような実施例の使用は説明のためだけであり、本発明の、およびいずれかの例示された用語の範囲および意味を断じて限定するものではない。同様に、本発明は本明細書中に記載されたいずれかの特別な好ましい実施形態に限定されない。事実、本発明の多くの修飾および異形は、本明細書を読むに際して当業者に明らかであり、その精神および範囲から逸脱することなくなすことができる。したがって、本発明は、特許請求の範囲がその権利を有する同等な全範囲と共に特許請求の範囲の事項によってのみ限定されるべきである。
【0181】
[実施例1]
DNJおよび誘導体の合成
テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノルジマイシン[一般的なイミノ糖調製−1]
【化16】
【0182】
乾燥したCH2Cl2(75mL)中のDMSO(4.4mL、0.124モル)の溶液をアルゴン雰囲気下に置き、−78℃まで冷却した。乾燥したCH2Cl2(50mL)中の無水トリフルオロ酢酸(6.1mL、0.088モル)の溶液をゆっくりと加え、温度を−78℃に維持した。添加が完了した後、反応を更に30分間撹拌する。CH2Cl2中の2,3,4,6−テトラ−O−ベンジルグルシトール(5.4g、10ミリモル)の溶液を滴下する。反応を−78℃で90分間撹拌し、次いで、CH2Cl2(50mL)中のトリエチルアミン(11.2mL、0.08モル)の添加によってクエンチする。反応を0℃まで暖め、次いで、ロトバップ(rotovap)を用いて濃縮する。残渣をMeOH(75mL)で希釈し、MeOH(10.0mL、20.0ミリモル)中の2M NH3の溶液、続いて、ギ酸(0.77mL、20.0ミリモル)、3Åモレキュラシーブおよび最終的に、NaCNBH3(1.57g、25.0ミリモル)を加える。混合物を室温にて一晩撹拌する。溶媒をロトバップを用いて蒸発させる。残渣をEtOAcに溶解させ、10%Na2CO3で洗浄し、次いで、Na2SO4上で乾燥する。濾過の後、溶媒を蒸発させ、生成物をフラッシュクロマトグラフィー(ヘキサン中の段階グラジエント20〜40%EtOAc)によって精製して、2,3,4,6−テトラベンジル−1−デオキシノジリマイシンを得る。
【0183】
1−デオキシノジリマイシン塩酸塩(化合物1)
【化17】
【0184】
EtOH(100mL)中の2,3,4,6−テトラベンジル−1−デオキシノジリマイシン(5.0g、9.5ミリモル)の溶液を2−PrOH(3.0mL、15.0ミリモル)中の5N HClと共に撹拌し、次いで、ロトバップを用いて蒸発させる。残渣をEtOHに溶解させ、ロトバップを用いて再度蒸発させる。残渣をEtOH(150mL)に溶解させ、0.5gのPd(OH)2で室温にて一晩水素化する(50psi)。触媒を濾過によって除去し、濾過ケーキをEtOH/H2Oおよび、次いで、最後にEtOHで洗浄する。濾液をロトバップで蒸発させ、次いで、EtOHで共蒸発させて、白色固体を得る。固体をEtOHでトリチュレート(triturated)し、濾過して、白色固体を得る。EtOH/H2Oからの再結晶により、標記化合物を白色固体として得る。MP 212−215℃,MH+=164。
【0185】
N−(2−ヒドロキシエチル−1−デオキシノジリマイシンジメチルカルバメート(化合物15)
【化18】
【0186】
N−(2−ヒドロキシエチル)−テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノジリマイシンジメチルカルバメート(0.63g、0.99ミリモル)を50mlのメタノールに溶解させ、130マイクロリットルの濃塩酸(1.6ミリモル)および触媒としての20%水酸化パラジウム(0.2g、0.3ミリモル)で処理する。不均一な反応混合物を水素の雰囲気下に置き、15時間撹拌する。触媒をセライトを通す濾過によって除去し、これを更にメタノールで洗浄する。濾液をロトバップを用いて濃縮し、クロロホルム:メタノール(4:1)で溶出するフラッシュシリカゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製する。適当な画分をロトバップを用いて濃縮し、次いで、水から凍結乾燥して、N−(2−ヒドロキシエチル)−1−デオキシノジリマイシンジメチルカルバメート誘導体(V,化合物14)(MS=279.4,M+H)を得る。
【0187】
N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシエチル)−1−デオキシノジリマイシン(化合物19)
【化19】
【0188】
トリフルオロエチルエーテル中間体(IX)(0.40g、0.62ミリモル)を150mlのメタノールに溶解させ、130マイクロリットルの濃塩酸(1.6ミリモル)および20%水酸化パラジウム(0.2g、0.3ミリモル)で処理する。不均一な反応混合物を水素の雰囲気下に置き、パールシェーカーを用いて40psiまで圧縮する。32時間後、触媒をセライトを通す濾過によって除去し、これを更なるメタノールで洗浄する。濾液をロトバップを用いて濃縮し、クロロホルム:メタノール(4:1)で溶出するフラッシュ/シリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製する。適当な画分をロトバップを用いて濃縮し、次いで、水から凍結乾燥して、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシエチル)−1−デオキシノジリマイシンを黄色フォーム(MS=290.2,M+H)を得る。
【0189】
N−(メトキシエチル)DNJ(化合物20)
【化20】
【0190】
2−メトキシエチルアミンをNH3の代わりに用いる以外は一般的なイミノ糖調製−1を用いて標記化合物を得る。MS(ES+):222[M+1]。
【0191】
N−(エトキシエチル)DNJ(化合物21)
【化21】
【0192】
2−エトキシエチルアミンをNH3の代わりに用いる以外は一般的なイミノ糖調製−1を用いて標記化合物を得る。MS(ES+):258[M+Na]。
【0193】
N−R−(−)−テトラヒドロフリルメチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物17)
【化22】
【0194】
60℃まで暖めつつ、60psiの水素雰囲気下で、テトラヒドロフリルメチル−テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノジリマイシンをエタノール中の水酸化パラジウムを用いて脱ベンジル化する。クロロホルム−メタノール:水酸化アンモニウム(80:20:2)の混合物で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製して、標記化合物の遊離塩基を白色フォームとして得る。次いで、精製された遊離塩基を2−プロパノール中の1.0当量の無水塩酸での処理によって塩酸塩に変換する。溶媒をロトバップを用いる蒸発によって除去して、所望の塩酸塩を白色固体として得る(MS=248.2,M+H)。
【0195】
N−S−(+)−テトラヒドログラニルメチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物18)
【化23】
【0196】
60℃まで暖めつつ、60psiの水素雰囲気下で、N−S−(+)−テトラヒドログラニルメチル−テトラ−O−ベンジル−1−デオキシノジリマイシンをメタノール中の水酸化パラジウムを用いて脱ベンジル化する。クロロホルム:メタノール:水酸化アンモニウム(80:20:2)の混合液で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製して、標記化合物を白色フォームとして得る(MS=248.2,M+H)。
【0197】
N−エチル−DNJ(化合物3)[一般的なイミノ糖調製−2]
【化24】
【0198】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(60mL)、DI水(3.0mL)、アセトアルデヒド(6.2g、141ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、H2の60psi圧力下で20〜22℃にて20時間水素化する。触媒をセライト−545のベッドを通す濾過によって除去する。濾液をロトバップを用いて蒸発させる。非揮発性残渣をフラッシュシリカゲルカラムに適用し、塩化メチレン:メタノール:29%の濃NH4OH(70:30:5)からなる混合液で溶出させる。適当な画分を収集し、合わせ、ロトバップを用いて蒸発させる。凍結乾燥により所望の単離された生成物を得る。融点168.3〜169.6℃,m/z192(ES,[M+H]+)。
【0199】
N−プロピル−DNJ(化合物4)
【化25】
【0200】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(60mL)、DI水(10.0mL)、プロピオンアルデヒド(8.1,139ミリモル)およびPdブラック(100mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:56.6〜57.2℃,m/z206(ES,[M+H]+)。
【0201】
N−ペンチル−DNJ(化合物6)
【化26】
【0202】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(100mL)、DI水(10.0mL)、バレルアルデヒド(4.22g、49ミリモル)およびPdブラック(100mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:70〜71℃,m/z234(ES,[M+H]+)。
【0203】
N−ヘキシル−DNJ(化合物7)
【化27】
【0204】
1−DNJ(1.0g、6.1ミリモル)、メタノール(100mL)、DI水(3.0mL)、ヘキサナール(4.3g、42.9ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:64.4〜65.6℃,m/z248(ES,[M+H]+)。
【0205】
N−ヘプチル−DNJ(化合物8)
【化28】
【0206】
1−DNJ−HCl(1.0g、5.0ミリモル)、メタノール(100mL)、ヘプタアルデヒド(4.9g、42.9ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:107〜108℃,m/z262(ES,[M+H]+)。
【0207】
N−オクチル−DNJ(化合物9)
【化29】
【0208】
1−DNJ−HCl(1.0g、5.0ミリモル)、メタノール(100mL)、オクチルアルデヒド(4.9g、42.9ミリモル)およびPdブラック(50mg)の混合物を迅速に撹拌し、N−エチル−DNJの調製で記載したのと同様な条件を用いて処理する。標記化合物を白色固体として得る。融点:193〜195℃,m/z276(ES,[M+H]+)。
【0209】
N−((ベンゾフラン−2−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物30)
【化30】
【0210】
EtOH(30mL)中のデオキシノジリマイシン塩酸(0.5g、2.5ミリモル)の懸濁液をベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒド(0.55g、3.75ミリモル)、HOAc(0.15mL、3.75ミリモル)およびシアノホウ水素化ナトリウム(0.23g、3.75ミリモル)で処理する。混合物を室温にて24〜36時間撹拌する。溶媒をロトバップを用いて蒸発させ、残渣を9/1のMeOH/NH4OHの混合液に溶解させ、シリカ上で蒸発させる。精製は、CHCl3中の0〜20%(9/1 MeOH/NH4OH)のグラジエントでのフラッシュクロマトグラフィーを用いて達成される。適当な画分を合わせ、溶媒を蒸発させて、標記化合物を白色固体として得る。融点169〜175℃。MH+=294。
【0211】
N−((ベンゾチオヘン−3−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物31)
【化31】
【0212】
ゼンゾチオヘン−3−カルボキシアルデヒドをベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに用いる以外は上記で直接的に化合物について記載した方法を用いて、標記化合物を白色固体として得る。融点145〜149℃。MH+=310。
【0213】
N−((フラン−2−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物29)
【化32】
【0214】
フルフラールをベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに用いる以外は上記で直接的に化合物について記載した方法を用いて、標記化合物を無色油として得る。MH+=244。
【0215】
N−((1,4−ベンゾジオキサン−6−イル)メチル)デオキシノジリマイシン(化合物28)
【化33】
【0216】
1,4−ベンゾジオキサン−6−カルボキシアルデヒドをベンゾフラン−2−カルボキシアルデヒドの代わりに用いる以外は上記で直接的に化合物について記載した方法を用いて、標記化合物をアモルファス固体として得る。MH+=312。
【0217】
N−シクロプロピルメチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物11)[一般的なイミノ糖調製−3]
【化34】
【0218】
1−デオキシノジリマイシン(Toronto Research Chemicals,カタログ番号D245000,3.0g、18.4ミリモル)を300mlの無水メタノールに溶解させ、シクロプロパンカルボキシアルデヒド(Aldrich,2.5ml,33.1ミリモル)と合わせる。3オングストロームのモレキュラシーブ(6.0g)加え、混合物を15分間撹拌する。MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,19.2g、46.0ミリモル)、続いて氷酢酸(1.1ml、18.4ミリモル)を加える。反応混合物を48時間で45℃まで暖める。溶液をロトバップを用いて濃縮し、まずクロロホルム、次いで、5:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10/1)、次いで、3:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10/1)、および最後に、1:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10/1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて粗生成物を精製する。ロトバップを用いる適当な画分の濃縮に際し、標記化合物が白色フォームとして単離される(MS=218.8,M+H)。
【0219】
4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJ(化合物23)およびアルファ−シアノ−4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJ(化合物24)
【化35】
【0220】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(300mg、1.839ミリモル)、4−トリフルオロメチルベンズアルデヒド(Aldrich,576.2mg、3.309ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies, 1.92g、4.596ミリモル)、酢酸(110.4mg、1.839ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製は、まずクロロホルム、次いで、10:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJを白色固体として(MS=322,M+H)およびアルファ−シアノ−4−トリフルオロメチル(ベンジル)−DNJを白色固体(MS=347,M+H)として得る。
【0221】
4−トリフルオロメトキシ(ベンジル)−DNJ(化合物25)
【化36】
【0222】
一般的イミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(300mg、1.839ミリモル)、4−トリフルオロメトキシベンズアルデヒド(Aldrich,629.2mg、3.309ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,1.92g、4.596ミリモル)、酢酸(110.4mg、1.839ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、標記化合物を白色固体として得る(MS=338,M+H,融点101〜103℃)。
【0223】
4−n−ブトキシ(ベンジル)−DNJ(化合物27)
【化37】
【0224】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(1.0g、6.1ミリモル)、4−ブトキシベンズアルデヒド(Aldrich,2.0g、11.2ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,6.4g、15.3ミリモル)、酢酸(0.37ml,6.4ミリモル)を合わせ、一般的な手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、標記化合物を白色固体として得る(融点153〜155℃)。
【0225】
4−n−ペントキシ(ベンジル)−DNJ(化合物26)
【化38】
【0226】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(1.0g、6.1ミリモル)、4−ブトキシベンズアルデヒド(Alfa Aesar,2.2g、11.2ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argonaut Technologies,6.4g、15.3ミリモル)、酢酸(0.37ml,6.4ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、8:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、6:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、標記化合物を白色固体として得る(MS=340,M+H;融点155〜157℃)。
【0227】
N−(1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ピペリジニルメチル)−1−デオキシノジリマイシン(化合物16)
【化39】
【0228】
一般的イミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(500mg、3.064ミリモル)、1−(tert−ブトキシカルボニル)−4−ピペリジンカルボキシアルデヒド(CNH Technologies,1.18g、5.516ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argoaut Technologies,3.19g、4.596ミリモル)、酢酸(184mg、3.064ミリモル)を合わせ、一般的手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム、次いで、10:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、N−(1−(tertブトキシカルボニル)−4−ピペルジニルメチル)−1−デオキシノジリマイシンを灰色がかった白色固体として得る(MS=361、M+H、融点46〜50℃)
【0229】
N−シクロペンチル−メチル−1−デオキシノジリマイシン(化合物12)
【化40】
【0230】
一般的なイミノ糖調製−3を用い、1−デオキシノジリマイシン(500mg、3.064ミリモル)、シクロペンタンカルボキシアルデヒド(Aldrich、541mg、5.516ミリモル)、MP−シアノボロハイドライド(Argomaut Technologies,3.19g、7.661ミリモル)、酢酸(184mg、3.064ミリモル)を合わせ、一般的な手法に記載したように撹拌する。精製はまずクロロホルム 8:1クロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)、次いで、4:1のクロロホルム:メタノール/水酸化アンモニウム(10:1)で溶出するフラッシュシリカ−ゲルクロマトグラフィーを用いて達成して、N−シクロペンチルメチル−1−デオキシノジリマイシンを粘性黄褐色油として得る(MS=246、M+H)。
【0231】
C−1−α−ノニル−1−デオキシノジリマイシンおよびC−1−β−ノニル−1−デオキシノジリマイシン(化合物32)[一般的なイミノ糖調製−4]
【化41】
【0232】
Boshagen,Geiger and Junge(Angewante Chemie,Int.Ed.Engl.,20(9),806−807(1981))によって記載されたのと類似の手法を用い、1−α−シアノ−1−デオキシノジリマイシンをMarcuccio(国際公開公報第00/56713号)(1.0g、5.3ミリモル)の方法に従って調製し、ヘキサメチルジシラザン(11ml)に懸濁させる。懸濁液をイミダゾール(156.33mg、2.5ミリモル)で処理し、アルゴン雰囲気下にて5時間で60℃まで加熱する。混合物を濾過して、固体を除去し、ロトバップを用いて濾液を55〜60℃にて濃縮する。残渣を乾燥したTHF(50mL)に溶解させ、n−ノニルマグネシウムブロマイドの溶液(エーテル中1M、31.9ミリモル、38mL)を15〜20℃で加える。混合物を室温まで温め、5時間撹拌する。混合物を氷浴中で冷却し、1N HCl(30mL)と共に3時間撹拌する。混合物のpHを2N NaOHを加えることによって8.0に調整する。有機層を除去し、水性相を凍結乾燥する。残渣をメタノール(50mL)に溶解させ、濾過して、固体を除去する。濾液を真空下で蒸発乾固する。蒸発の後に得られた残渣を、塩化メチレン:メタノール:29%NH4OH(85:15:1.5)を用いるシリカゲルコラムでのクロマトグラフィーに付す。β−異性体(Rf 0.5)を含有する適当な画分を合わせ、ロトバップを用いて蒸発させ、次いで、凍結乾燥して、C−1−β−ノニル−DNJを得る(MS=m/z290)。
【0233】
C1−α−ブチル−DNJ(化合物33)
【化42】
【0234】
一般的なイミノ糖調製−4を用い、1−α−シアノ−1−デオキシノジリマイシン(2.0g、9.5ミリモル)をC−1−α−ブチル−DNJに変換する。生成物を以下の比率:85:15:1.5)の塩化メチレン:メタノール:29%NH4OHを用いるシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。α−異性体(Rf0.3)を含有する適当な画分を合わせ、蒸発させて、溶媒を除去し、凍結乾燥して、標記化合物を得る(MS=m/z220)
【0235】
1−α−ベンジル−DNJ(化合物35)
【化43】
【0236】
一般的なイミノ糖調製−4を用い、テトラ−(O−トリメチルシリル)−1−α−シアノ−1−デオキシノジリマイシン(2.0g、9.448ミリモル)を調製する。保護された化合物を乾燥したTHF(20ml)に溶解させ、ベンジルマグネシウムブロマイド(THF中2.0M、20mL)を滴下する。混合物を撹拌し、45℃にて一晩加熱する。混合物を室温まで冷却し、2N HCl(30mL)を加え、混合物を3時間撹拌する。ロトバップを用いて溶媒を蒸発させ、残渣を29%NH4OHの溶液で処理して、酸を中和する。溶液をエーテル(2×20mL)で洗浄し、水性相を分離し、凍結乾燥する。固体を塩化メチレン:メタノール:29%NH4OH(80:20:4)と共に撹拌し、濾過し、濾液をロトバップを用いて蒸発させる。残渣を、塩化メチレン:メタノール:29%NH4OH(80:20:4)を用いるシリカゲルカラムでのクロマトグラフィーに付す。α−異性体(Rf0.3)を含有する適当な画分を合わせ、ロトバップを用いて蒸発させ、次いで、凍結乾燥して標記化合物を得る(融点=73〜74℃、MS=n/z254)。1H−NMR,300MHz(D2O)2.28(m,2H),2.55(ddd,1H,J=2.8,5.6,10Hz),2.99(m,2H),3.06(dd、1H,J=2.8,13.6Hz),3.11(m,1H),3.22(dd,1H,J=7.6,11.2Hz),3.56(dd,1H,J=3.2,11.6Hz),および7.2(m、5H)。
【0237】
[実施例2]
GaaのDNJおよびDNJ誘導体での増強
以下に記載する実験は、糖脂質合成を担う酵素の既知の阻害剤であるDNJおよびDNJ誘導体をN−ブチル−DNJを用いて、糖脂質合成を阻害することなく突然変異体Gaaに結合し、その活性を増強することができることを示す。
【0238】
方法
細胞培養およびシーディング PM11(P545L)、PM8およびPM12(共にスライシング欠陥)、線維芽細胞系を増強実験で用いた。これらの細胞はポンペ患者から単離した線維芽細胞である。細胞を、滅菌された底が黒色透明の96ウェルCostarプレートにて180μL培地中にウェル当たり約5000細胞で蒔き、5%CO2にて37℃で約3〜6時間インキュベートする。培地は10%FBSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシンを含むDMEMからなるものであった。
【0239】
薬物処理 全てのテスト化合物を1:1DMSO:H2Oを100mMストック濃度まで溶解させる。別の滅菌された底が黒色透明のCostarプレートを用いる細胞の系列希釈は以下のように行った:
1.20μLLの1:1 DMSO:H2Oおよび180μLの培地を、培地中5%DMSO、5%H2Oの濃度について、列3〜11および列1、行E〜Hに加えた。
2.20μLの100mM DNJおよび180μLの培地を、10mM DNJの濃度について、列1、行A〜Dに加えた。
3.テストすべき30μLの各100mMストック溶液を、10mMの濃度について、270μLの培地と共に列2中の適当なウェルに加えた。
4.列1を、マルチ−チャネルピペットを用いて3回上下に混合した。
5.列2を上記したように混合し、100μLを列2から列3に移した。列3を上記したように混合し、100μLを11を通って列4の各々に順次移して(列12は左側ブランク)、系列的な3倍希釈を生じさせた。
4.表1に従い、20μLを系列希釈プレートから移した。
5.プレートを37℃、5%CO2にて6日間インキュベートし、1日は投与の日に等しい。
【0240】
酵素活性アッセイ 細胞を200μLのdPBSで2回洗浄し、続いて、クエン酸−リン酸緩衝液(30mMクエン酸ナトリウム、40mM二塩基性リン酸ナトリウム、pH4.0)中の70μLの基質(2.11mM 3mM 4−MU−α−D−glu)、および2.5%DMSOを列1〜12に加えた。5%CO2での37℃における約3時間のインキュベーションに続き、70μLの停止緩衝液(0.4Mグリシン、pH10.8)を列1〜12に加えた。プレートをVictor2マルチ標識カウント−Wallac蛍光プレートリーダーで読み、F460nmにおける蛍光を、ウェル当たり1秒の読み時間を用い、355nmの励起および460nmの発光にて測定した。上清中のタンパク質μg当たりの酵素活性を、発光された蛍光の量から計算し、これは加水分解された基質の量および、よって、溶解物中のGaa活性の量に直接的に比例する。増強比率は、DNJ誘導体の存在下でのGaa活性を、化合物を含まないGaa活性で割ったGaa活性である。
【0241】
結果
DNJ、NB−DNJ、およびN−(シクロプロピル)メチルDNJ 図1に示すように、DNJ(1)、N−ブチル−DNJ、(5)およびN−(シクロプロピル)メチルDNJ(11)で処理した細胞は、PM11細胞系における未処理対照細胞と比較して、Gaa活性の用量−依存性増加を呈した。DNJの最高濃度である1mMは、未処理細胞におけるGaa活性と比較してGaa活性を約7.8倍増大させる(データは示さず)。
【0242】
DNJおよびNB−DNJは、50μMの濃度においてPM12細胞系でのGaa活性を有意に増加させた(2倍を超える)。DNJによるPM8細胞系でのGaa活性の増加もまた観察されなかった(データは示さず)。DNJおよびNB−DNJによるGaaの増強は用量依存性であり、プラトーに先立って3.0〜100μMの範囲において示された増大する増強が伴う。
【0243】
他のDNJ誘導体 表1および2に報告するように、以下の、DNJ誘導体N−メチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ(15)、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ(16)、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ(17)、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ(18)、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ(19)、N−2−メトキシエチル−DNJ(20)、N−2−エトキシエチル−DNJ(21)、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ(23)、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ(24)、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ(25)、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ(26)、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ(27)もまたPM−11におけるGaa活性を有意に増大させた。N−メチルDNJおよびN−カルボキシペンチルDNJを用いる増大したGaa活性は約3〜100μMから用量依存性であった(データは示さず)。
【0244】
%Emaxは、1mM DNJの存在下で観察された増強に対する実験化合物のパーセント最大増強をいう。それは、GraphPad Prismバージョン3.02を用いて分析された理論的非線形回帰曲線の頂部として計算される。増強は、1mM DNJの存在下における平均最大カウントに対して、および化合物の不存在下における最小平均カウントに対して正規化された複数蛍光カウントの平均として定義される。蛍光カウントはバックグラウンドを差し引いた。バックグラウンドは細胞の存在から不存在を引いた平均カウントによって定義される。EC50(μM)とは、Emaxの50%を達成する化合物の濃度をいう。
【0245】
特定のメカニズムに限定されるものではないが、DNJおよびDNJ誘導体はERにおける突然変異体Gaaに結合し、突然変異したタンパク質の適切なフォールディングを誘発し、該酵素がERを出て、リソソームまでトラフィッキングされるのを可能とし、そこで、それはいくらかの酵素活性を呈することができると推定される。
【0246】
【表1】
【0247】
【表2】
【0248】
[実施例3]
DNJおよびDNJ誘導体での処理に際してのインビボGaa活性
薬物の投与 本実施例は、マウスに対するDNJ誘導体の効果についての情報を提供する。DNJ誘導体テスト化合物を0、1mg/kg/日;10mg/kg/日;および100mg/kg/日においてマウスに投与した;器官および血漿を実験の開始から2および4週間後に収集した群当たり20匹の雄C57BL6(25g)を用いた。薬物を飲料水中で与え、従って、水の消費を毎日モニターした。
【0249】
対照群(0mg/kg/日)においては、飲料水(薬物なし)にてマウスに毎日投与し、2つの群に分けた。処理から2週間後に10匹の動物を安楽死させ、血液を下行大動脈または大静脈から収集し、組織を摘出し、次いで、剖検した。処理から4週間後に残りの10匹の動物を安楽死させ、同一の評価に付した。
【0250】
最初のテスト群においては、20匹のマウスに1mg/kg−日の投与目的で飲料水中にて毎日投与した(25gのマウスは毎日5mL/日の飲水速度を有し、従って、飲料水は0.025mg/5mlまたは5マイクログラム/mlの濃度を有するはずであると仮定)。対照と同様に、10匹のマウスを処理から2週間後に安楽死させ、評価した。処理から4週間後に、残りの10匹のマウスを安楽死させ、評価する。
【0251】
10mg/kg−日を目的とするテスト化合物では、20匹のマウスに飲料水中にて毎日投与し(50マイクログラム/mlの化合物濃度と見積もる)、上記した群について記載されたようにテスト用の2つの群に分けた。
【0252】
100mg/kg−日を目的とするテスト化合物では、20匹のマウスに飲料水中で毎日投与し(500マイクログラム/mlの化合物濃度と見積もる)、2つの群に分け、上記した群について記載されたようにテストした。
【0253】
血液試料はリチウムヘパリンに吸い取り、血漿のために回転させた。出血の後、心臓、肝臓、腓腹筋、ヒラメ筋、舌、腎臓および脳を摘出し、バイアルに入れた。バイアルを迅速な凍結のためにドライアイスに入れた。次いで、Gaaおよびグリコーゲンの組織レベルについて組織および血漿を分析した。
【0254】
組織調製 組織の小さな割合を取り出し、500μlの溶解緩衝液(0.1%トリトンX−100を含む、20mMクエン酸ナトリウムおよび40mMリン酸水素二ナトリウム、pH4.0)に加えた。次いで、ミクロホモゲナイザーを用いて組織を短時間で均質化し、続いて、10,000rptにおいて4℃にて10分間遠心した。上清を新しいチューブに移し、酵素アッセイのために用いた。
【0255】
組織酵素アッセイ (96−ウェルプレート中の)2.5μlの上清に17.5μlの反応緩衝液(クエン酸リン酸緩衝液、トリトンを含まず)、および50μlの4−メチルウンベルフェロン(4−MU)−標識基質、α−グルコピラノシド、または標識された陰性対照、β−グルコピラノシドおよびα−ガラクトピラノシドを加えた。プレートを37℃にて1時間インキュベートし、続いて、70μlの停止緩衝液(0.4Mグリシン−NaOH、pH10.6)を加えた。Gaaの活性は、ウェル当たり1秒のリアルタイムを用いて355nmで励起することにより460nmでの吸光度を測定することによって決定した(Victor2マルチ標識カウンター−Wallac)。酵素活性を加えた溶解物の1μl中の量に対して正規化し、溶解物1μl当たりの酵素活性を見積もった。増強比率は、化合物なくしての活性を超える化合物ありでの活性と等しい。
【0256】
結果
図2A〜Dおよび3A〜Dによって示されるように、Gaaレベルは、脳、肝臓、腓腹筋、舌(図2A〜D)および、腎臓、横隔膜、心臓およびヒラメ筋(図3A〜D)においても、DNJおよびN−ブチル−DNJでの2週間の処理の後に増大した。結果は直線的傾向について有意であった。DNJでは、増加は、脳、腓腹筋、舌、腎臓、横隔膜、心臓およびヒラメ筋においては用量−依存的であった(直線傾向については有意)。N−ブチル−DNJでは、増加は脳、肝臓、腓腹筋、舌および腎臓において用量−依存的であった。
【0257】
4週間の処理の後、Gaa活性は、脳、肝臓、腓腹筋、および舌(図4A〜D)および、腎臓、横隔膜、心臓およびヒラメ筋(図5A〜D)においても、DNJでの処理の後に観察された。N−ブチルDNJでの結果は、増加が観察されなかった横隔膜、心臓およびヒラメ筋を除いて同様であった。増加は、脳、腓腹筋、舌、腎臓(DNJのみ)、横隔膜(DNJのみ)、心臓(DNJのみ)、およびヒラメ筋(DNJのみ)において用量−依存的であるように見えた。
【0258】
これらの結果により、特定の薬理学的シャペロンはインビボにて突然変異していないGaaの活性を増加させることができることが確認できる。
【0259】
[実施例4]
DNJ誘導体への暴露の有りおよび無しでのGaaの蓄積および局所化
本実験においては、残存するGaa活性を呈しないまたはほとんど呈しないポンペ患者に由来する4つの細胞系を、Gaaの蓄積および局所化について野生型線維芽細胞と比較した。
【0260】
方法
細胞系 PM8、PM9、PM11、およびPM12細胞系を評価した。PM8はスプライシング欠陥を保有し、その結果、いくらかの残存するGaa活性をもたらし(IVS1AS、T>G、−13):PM9は1つの対立遺伝子上にナンセンス突然変異(R854X)、および他の対立遺伝子上に3つのミスセンス突然変異(D645E、V816I、およびT927I)を保有し、残存Gaa活性は実質的に有さず(<1%);PM11はミスセンス突然変異(P545L)を含有し、いくらかの残存するGaa活性を有する。PM12もまたスプライシング欠陥を有する(IVS8+G>A/M519V)。
【0261】
免疫蛍光および顕微鏡観察 含有または非含有で5日間培養した細胞を、NB−DNJを含むガラスカバースリップ上で5日間増殖させた。細胞を3.7%パラホルムアルデヒドで15分間固定し、0.5%サポニンで5分間浸透させ、次いで、ウサギ抗−ヒトGaa(Barry Byrneからの贈物)および/またはマウスモノクローナル抗−LAMP1(BD Pharmingen,カタログ番号555798)の1:300希釈で室温にて1時間標識した。AlexaFluor488をコンジュゲートさせた二次抗体であるヤギ抗−ウサギIgG、およびAlexaFluor594(Molecular Probes)をコンジュゲートさせたヤギ−抗−マウスIgGを、次いで、1:500希釈で加え、室温にて1時間インキュベートした。カバースリップを10μlのVectashieldを備えたスライド上に置き、速乾燥ネイルポリッシュでシールし、90i Nkon C1共焦点顕微鏡で観察とした。
【0262】
結果
PM8 残存Gaa活性をほとんど有しないにも拘らず、PM8細胞は、野生型線維芽細胞と比べて、増大したLAMP−1およびGaaサイトゾル染色を呈し、異なる染色パターンを有した。図6に示すように、NB−DNJで処理した野生型線維芽細胞がLAMP−1およびGaa双方について断続的な染色パターンを呈し(図6C〜D)、それはリソソーム中に共局所化するように見えた。対照的に、PM8線維芽細胞においては、染色はLAMP−1およびGaa双方について細胞質に行き渡っていた(図6A〜Bおよび図6E〜F)。コンフルエント野生型線維芽細胞におけるLAMP−1およびGaa双方のオーバーレイにより、リソソームへの共局所化が確認され(図6H)、他方、コンフルエントPM8線維芽細胞におけるオーバーレイにより、細胞質過剰のLAMP−1およびGaaが確認される(図6G)。上記の結果は、リソソーム形成における可能な欠陥、または異常に形成されたエンドソーム/リソソーム構造の大きな凝集体(アグレソーム)の存在を示唆する。
【0263】
PM9 PM9線維芽細胞はサイトゾル(図7B)における過剰のGaa(図7Bおよび7D)およびLAMP−1(図7E)も呈した。オーバーレイは、アグレソームに似たGaa凝集体の形成を示す(図7A、図7Cおよび7F、矢印およびインレイはアグレソームを示す)。DNJ誘導体での処理は、Gaaのリソソームへの局所化を回復させ、アグレソーム形成を低下させると予期される。DNJ誘導体での処理は、Gaaのリソソームへの適切な局所化を回復させ、サイトゾルアグレソームの存在を低下させると予測される。
【0264】
PM11 PM11線維芽細胞は、低下したGaa活性を呈する。NB−DNJ(50μM)およびDNJ(100μM)で処理した場合、PM11細胞は、リソソームマーカーLAMP−1で共標識することによって評価したように、リソソームにおけるGaaの標識につき強度の増大を呈し、これは、トラフィッキングの回復を示す(図8)。未処理PM11線維芽細胞はいくらかのGaa染色を呈し、そのほとんどはLAMP−1と共局所化しない。
【0265】
加えて、PM11細胞における欠陥が、リソソーム酵素(Gaa)のリソソームへのトラフィッキングであることを確認するために、野生型線維芽細胞およびPM11細胞を、各々、初期および後期エンドソームマーカーEEA1およびM6PRにつき染色した。野生型線維芽細胞およびポンペPM11線維芽細胞の間で初期および後期エンドソームについての局所化パターンに差はなかった(データは示さず)。
【0266】
PM12 Gaa染色強度の有意な増加もまた、NB−DNJで処理したPM12線維芽細胞で観察された(データは示さず)。
【0267】
考察
本実施例は、本発明の薬理学的シャペロンが、Gaaを不安定とし、合成の間にERから出られなくする突然変異以外の(およびそれに加えての)Gaa中の突然変異を保有する細胞の表現型を回復することができることを示す。これは、突然変異体GaaのERからリソソームへのトラフィッキングの改良は、リソソームにおけるGaaヒドロラーゼ活性を回復さえすることなく、筋肉のような組織においてポンペ病のいくらかの病原体効果を軽減するのに十分であり得るという仮説を支持する。グリコーゲンの代謝回転は、ポンペ病における患者表現型を改善するのに十分でないのは明らかである。このようにして、トラフィッキングの改善が何故ポンペ病理学を改善できる一仮説では、Gaa活性の欠如が細胞におけるグルコース欠乏を引き起こし、これが(グルコースの迅速な放出のために細胞質グリコーゲンを用いるための)自己貪食応答をトリガし、または攪拌し得るということである。この自己貪食応答はエンドソームトラフィッキング経路を通じてのトラフィッキングを損ない、その結果、膜安定化タンパク質のミストラフィッキング、および筋肉繊維の最終的な分解をもたらす。
【0268】
シャペロン利用法はGaa活性を救済し、グルコース欠乏によって誘発されたグルコース欠乏および自己貪食応答を軽減し、結局は、膜安定化タンパク質のトラフィッキングを回復して、更なる筋肉損傷を妨げることができる。
【0269】
[実施例5]
腸Gaaに対するDNJ誘導体の効果:逆スクリーニング
理想的な特異的薬理学的シャペロンは、サブ抑制濃度以下において、腸Gaaを阻害することなく、リソソームGaaを増強させるであろう。従って、腸Gaa活性は、7.0のpHにおいて、マウス腸からの粗抽出物において評価した。加えて、腸Gaa酵素阻害アッセイを確立して、DNJおよびNB−DNJのような化合物が腸Gaaに対して阻害効果を発揮したか否かを判断した。
【0270】
方法
組織調製 粗抽出物は上記したように、C57BK6マウスからのマウス腸から調製した。上清を新しいチューブに移し、酵素アッセイのために用いた。
【0271】
結果
DNJは1μMのIC50値を持つ腸Gaaのより優れた阻害剤であり、他方、NB−DNJは21μMのIC50阻害値を有した(データは示さず)。
【0272】
[実施例6]
DNJ誘導体でのポンペ患者の治療
上記の結果に鑑み、本発明のDNJおよびDNJ誘導体でのポンペ患者の治療は、筋肉組織でのグリコーゲンの病理学的蓄積を低下させ、それにより、病気状態を緩和する。組換酵素は筋肉組織に侵入できないので、ポンペ病についての現在承認された唯一の治療ERTは骨格筋においてグリコーゲン蓄積を低下させるのに効果的ではないという事実に鑑み、この方法は当分野における長く感じられた必要性を解決する。
【0273】
方法
患者の集団 乳児性、若年性および/または成人−発症型ポンペ病と診断された患者は、経口投与されるDNJ誘導体のランダム化、二重盲式、複数−用量、開放−標識実験で補充され、評価されるであろう。実験対象として適している患者は以下の:a)断面エコーカルジオグラフィーによって決定された左心室質量指標(LVMI)と定義される心筋障害;b)非侵入性ベンティレーションが、気管内チューブを用いることなく適用される換気支持体のいずれかの形態と定義される、侵入性または非侵入性換気支持体についての要件;またはc)Denver発生スクリーニングテスト(DDST−2;Halliogloら,Pediatr Int.2001;43(4):400−4)にて通常の年齢の対等者の90%によって達成される粗大運動技術を行うことができないと定義されるひどい運動遅延を少なくとも有している必要がある。
【0274】
薬物の投与 10の対象の2つの群は50または100mgのDNJまたはDNJ誘導体のいずれかを1日に2回24週間受けるであろう。これは、ゴーシェ病における糖スフィンゴ脂質の基質剥奪で示された量未満である。
【0275】
終点 臨床的効果は、例えば、Denver発生スクリーニングテストおよびAlberta幼児運動スケール(Piperら,Motor Assessment of the Developing Infant.Philadelphia, PA, W.B.Saunders Co.,1994)、幼児発育IIのBayleyスケール(BSIDII);Bayleyら,Bayley Scores of Infant Development.2nd Ed.,San Antonio,Tx:Harcourt Brace & Co.1993)、ならびに筋肉バイオプシーの組織学および生化学分析、すなわち、周期的酸−シッフ(PAS)−陽性染色および酵素活性アッセイを用いる処理−対−未処理患者におけるグリコーゲンレベルの測定、および患者から得られた線維芽細胞におけるGaa活性の測定を用いて測定された、ベンティレーター−フリー生存、左心室質量指標、運動発達および骨格筋機能によって評価されるであろう。臨床測定は、4、12および24週間において評価されるであろう筋肉バイオプシーを除いて2週間毎に評価されるであろう。
【0276】
結果
DNJ誘導体での処理は、症状のいくつかを緩和し、グリコーゲンの筋肉組織レベルを低下させることによって、ポンペ病の治療で効果的であろう。例えば、12週間以内に、筋肉におけるGaa活性の増加が観察され、グリコーゲンの蓄積が低下されるであろうと予測される。加えて、LVMIは低下し、呼吸器系症状は改善されるであろうと予測される。最後に、特に若い患者における運動発育および筋肉調子の進行が期待される。
【0277】
結論
本発明の方法は、唯一の現在の治療がERTであるポンペ病の治療において予期せぬ利点を提供する。好ましくは経口による小分子シャペロンの投与はコスト的に有利であり、ERTが浸透できない組織、すなわち、脳において酵素の救済を可能とする。加えて、シャペロン化合物および置換タンパク質での組合せ療法は、必要な組換または精製酵素の注入の数および/またはその量を低下させることができ、それにより、コストを低下させ、患者に対して利点を提供する。最後に、本発明のシャペロン化合物と組み合わせた置換Gaaの処方は組換酵素を安定化させ、凝集および/または分解を妨げることができ、またそれにより、酵素のシェルライフを増大させる。
【0278】
本発明は、範囲が、本明細書中に記載された特別な実施形態によって限定されない。事実、本明細書中に記載されたものに加えて本発明の種々の修飾は、これまでの記載または添付の図面から当業者に明らかとなるであろう。そのような修飾は添付の特許請求の範囲の範囲内にあることを意図する。
【0279】
特許、特許出願、刊行物、製品の記載、登録番号、およびプロトコルは本出願を通じて引用され、その開示はすべての目的についてその全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0280】
【図1】ポンペ病細胞系PM−11における酸性α−グルコシダーゼの活性に対する1−DNJ、NB−DNJおよびN−(シクロプロピル)メチルDNJイミノ糖誘導体の効果を示す。
【図2A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの脳におけるGaa増強を示す。
【図2B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの肝臓におけるGaa増強を示す。
【図2C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの腓腹筋におけるGaa増強を示す。
【図2D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの舌におけるGaa増強を示す。
【図3A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの腎臓におけるGaa増強を示す。
【図3B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの横隔膜におけるGaa増強を示す。
【図3C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスの心臓におけるGaa増強を示す。
【図3D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで2週間処理した正常なC57BL6マウスのヒラメ筋におけるGaa増強を示す。
【図4A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの脳におけるGaa増強を示す。
【図4B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの肝臓におけるGaa増強を示す。
【図4C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの腓腹筋におけるGaa増強を示す。
【図4D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの舌におけるGaa増強を示す。
【図5A】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの腎臓におけるGaa増強を示す。
【図5B】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの横隔膜におけるGaa増強を示す。
【図5C】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスの心臓におけるGaa増強を示す。
【図5D】種々の濃度のDNJおよびNB−DNJで4週間処理した正常なC57BL6マウスのヒラメ筋におけるGaa増強を示す。
【図6A】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6B】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6C】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6D】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6E】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6F】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6G】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図6H】野生型(6C)およびポンペPM8(6Aおよび6F)線維芽細胞におけるGaa免疫染色を示す。この図面は、野生型(6D)およびポンペPM8線維芽細胞(6Bおよび6E)におけるリソソームマーカーLAMP−1についてのリソソーム染色も示す。野生型(6H)およびPM8(6G)線維芽細胞についてのGaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される。
【図7A】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7B】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7C】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7D】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7E】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図7F】PM9ポンペ線維芽細胞におけるGaa(7Bおよび7D)LAMP−1(7E)についての免疫蛍光染色を示す。GaaおよびLAMP−1染色のオーバーレイも示される(7A、7Cおよび7F)。
【図8】DNJまたはNB−DNJで処理された、Gaa、LAMP−1、およびGaa/LAMP−1デュアル染色PM11ポンペ細胞系を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞中のα−グルコシダーゼ酵素の活性を増加させる方法であって、
式:
【化1】
[式中、
R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は、場合によって、1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され;
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキルアリールもしくはアルコキシアルキル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は、場合によって、−OH、−COOH、−CF3、−OCF3、または複素環で置換され;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体が、1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記酵素と接触させるステップを含む方法。
【請求項2】
細胞中のα−グルコシダーゼ酵素の活性を増加させる方法であって、
式:
【化2】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルであり;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記酵素と接触させるステップを含む方法。
【請求項3】
R1が場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、
シクロアルキル、またはアルコキシアルキルであり;
かつ、R2がHである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R1がn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
R1が−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されるn−エチル、n−ブチルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
R1が
【化3】
である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
R1がHであり、
かつ、R2が場合によって−CF3または複素環で置換される直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールまたはエーテルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
R2がn−ノニル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物がN−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ、またはCl−ノニルDNJからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物がN−ブチル−デオキシノジリマイシンである、請求項9に記載の方法
【請求項11】
DNJ誘導体の非存在下におけるGaa活性に対し、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の増加が、細胞中の最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において、少なくとも1.5倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
DNJ誘導体の非存在下におけるGaa活性に対し、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の増加が、細胞中の最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において、少なくとも5倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、腸Gaaの阻害に対するIC50値以下の濃度で、リソソームGaa活性を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記α−グルコシダーゼ酵素が突然変異体α−グルコシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記突然変異体α−グルコシダーゼが、D645E;D645H;R224W;S619R;R660H;T1064C;C2104T;D645N;L901Q;G219R;E262K;M408V;G309R;D645N;G448S;R672W;R672Q;P545L;C647W;G643R;M318T;E521K;W481R;L552P;G549R;R854X;V816I;およびT927I、およびその組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記α−グルコシダーゼ酵素が精製された、または組換え機能的α−グルコシダーゼ酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記接触がインビボで起こる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記接触がインビトロで起こる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
それを必要とする個人においてポンペ病を治療する方法であって、
式:
【化4】
[式中、
R1は、H、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は、場合によって、1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され;
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、もしくはアルコキシアルキル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は、場合によって、−OH、−COOH、−CF3、−OCF3、または複素環で置換され;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記個人に投与するステップを含む方法。
【請求項20】
それを必要とする個人においてポンペ病を治療する方法であって、
式:
【化5】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルであり;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記個人に投与するステップを含む方法。
【請求項21】
R1が場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、もしくはアルコキシアルキルであり;
かつ、R2がHである、
請求項19に記載の方法。
【請求項22】
R1がn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
R1が−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されるn−エチルまたはn−ブチルである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
R1が
【化6】
である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
R1がHであり、
かつ、R2が場合によって−CF3または複素環で置換される、直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールもしくはエーテルである、
請求項19に記載の方法。
【請求項26】
R2がn−ノニル基である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物がN−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ、またはCl−ノニル−DNJからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物がN−ブチル−デオキシノジリマイシンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の、DNJ誘導体を使用しないGaa活性に対する比率が少なくとも1.5倍である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
DNJ誘導体を使用しないGaa活性に対し、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の増加が少なくとも5倍である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が腸Gaaの阻害に対するIC50値以下の濃度でリソソームGaaを増強させる、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記有効量は一日当たり約1mg〜約300mgである、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記有効量は一日当たり約5mg〜約150mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記有効量は一日当たり約5mg〜約75mgである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1−デオキシノジリマイシン誘導体は経口投与形態で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記経口投与形態が錠剤またはカプセルである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1−デオキシノジリマイシン誘導体はα−グルコシダーゼ置換酵素と組み合わせて投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記α−グルコシダーゼが置換α−グルコシダーゼ遺伝子と組み合わせて投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
細胞中のα−グルコシダーゼ酵素の活性を増加させる方法であって、
式:
【化1】
[式中、
R1はH、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は、場合によって、1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され;
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキルアリールもしくはアルコキシアルキル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は、場合によって、−OH、−COOH、−CF3、−OCF3、または複素環で置換され;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体が、1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記酵素と接触させるステップを含む方法。
【請求項2】
細胞中のα−グルコシダーゼ酵素の活性を増加させる方法であって、
式:
【化2】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルであり;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記酵素と接触させるステップを含む方法。
【請求項3】
R1が場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、
シクロアルキル、またはアルコキシアルキルであり;
かつ、R2がHである、
請求項1に記載の方法。
【請求項4】
R1がn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
R1が−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されるn−エチル、n−ブチルである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
R1が
【化3】
である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
R1がHであり、
かつ、R2が場合によって−CF3または複素環で置換される直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールまたはエーテルである、
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
R2がn−ノニル基である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記化合物がN−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ、またはCl−ノニルDNJからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記化合物がN−ブチル−デオキシノジリマイシンである、請求項9に記載の方法
【請求項11】
DNJ誘導体の非存在下におけるGaa活性に対し、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の増加が、細胞中の最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において、少なくとも1.5倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
DNJ誘導体の非存在下におけるGaa活性に対し、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の増加が、細胞中の最大Gaa活性を提供するDNJ誘導体の濃度において、少なくとも5倍である、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記化合物が、腸Gaaの阻害に対するIC50値以下の濃度で、リソソームGaa活性を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記α−グルコシダーゼ酵素が突然変異体α−グルコシダーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記突然変異体α−グルコシダーゼが、D645E;D645H;R224W;S619R;R660H;T1064C;C2104T;D645N;L901Q;G219R;E262K;M408V;G309R;D645N;G448S;R672W;R672Q;P545L;C647W;G643R;M318T;E521K;W481R;L552P;G549R;R854X;V816I;およびT927I、およびその組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記α−グルコシダーゼ酵素が精製された、または組換え機能的α−グルコシダーゼ酵素である、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記接触がインビボで起こる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記接触がインビトロで起こる、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
それを必要とする個人においてポンペ病を治療する方法であって、
式:
【化4】
[式中、
R1は、H、または1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキル、5〜12の環原子を含有するアリール、アルキルアリール、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、ここで、R1は、場合によって、1つ以上の−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換され;
R2はH、1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、もしくはアルコキシアルキル、または5〜12の炭素原子を含有するアリールであり、ここで、R2は、場合によって、−OH、−COOH、−CF3、−OCF3、または複素環で置換され;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記個人に投与するステップを含む方法。
【請求項20】
それを必要とする個人においてポンペ病を治療する方法であって、
式:
【化5】
[式中、
R1はH、または場合によって−OH、−COOH、−Cl、−F、−CF3、−OCF3、−O−C(=O)N−(アルキル)2で置換される1〜12の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、アルコキシアルキルもしくはアミノアルキルであり;
R2はH、または1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキルもしくはアルコキシアルキルであり;
かつ、R1およびR2の少なくとも1つはHではない]
の化合物、またはその医薬上許容される塩を含む1−デオキシノジリマイシン誘導体(ここで、DNJ誘導体は1−デオキシノジリマイシンまたはα−ホモノジリマイシンではない)の有効量を前記個人に投与するステップを含む方法。
【請求項21】
R1が場合によって−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換される1〜9の炭素原子を含有する直鎖または分岐鎖のアルキル、シクロアルキル、もしくはアルコキシアルキルであり;
かつ、R2がHである、
請求項19に記載の方法。
【請求項22】
R1がn−メチル、n−エチル、n−ブチル、n−シクロプロピルメチル、またはn−ノニルである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
R1が−OH、−COOH、CF3、OCF3、または−C(=O)N−(Me)2で置換されるn−エチルまたはn−ブチルである、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
R1が
【化6】
である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
R1がHであり、
かつ、R2が場合によって−CF3または複素環で置換される、直鎖または分岐鎖のアルキル、アルケニル、アリールもしくはエーテルである、
請求項19に記載の方法。
【請求項26】
R2がn−ノニル基である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記化合物がN−メチル−DNJ、N−ブチル−DNJ、N−シクロプロピルメチル−DNJ、N−(2−(N,N−ジメチルアミド)エチルオキシ−DNJ、N−4−t−ブチルオキシカルボニル−ピペリジニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−2−R−テトラヒドロフラニルメチル−DNJ、N−(2−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エチル−DNJ、N−2−メトキシエチル−DNJ、N−2−エトキシエチル−DNJ、N−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−アルファ−シアノ−4−トリフルオロメチルベンジル−DNJ、N−4−トリフルオロメトキシベンジル−DNJ、N−4−n−ペントキシベンジル−DNJ、およびN−4−n−ブトキシベンジル−DNJ、またはCl−ノニル−DNJからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
前記化合物がN−ブチル−デオキシノジリマイシンである、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の、DNJ誘導体を使用しないGaa活性に対する比率が少なくとも1.5倍である、請求項19に記載の方法。
【請求項30】
DNJ誘導体を使用しないGaa活性に対し、DNJ誘導体の存在下におけるGaa活性の増加が少なくとも5倍である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記化合物が腸Gaaの阻害に対するIC50値以下の濃度でリソソームGaaを増強させる、請求項19に記載の方法。
【請求項32】
前記有効量は一日当たり約1mg〜約300mgである、請求項19に記載の方法。
【請求項33】
前記有効量は一日当たり約5mg〜約150mgである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記有効量は一日当たり約5mg〜約75mgである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記1−デオキシノジリマイシン誘導体は経口投与形態で投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項36】
前記経口投与形態が錠剤またはカプセルである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記1−デオキシノジリマイシン誘導体はα−グルコシダーゼ置換酵素と組み合わせて投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項38】
前記α−グルコシダーゼが置換α−グルコシダーゼ遺伝子と組み合わせて投与される、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図6F】
【図6G】
【図6H】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【公表番号】特表2008−545657(P2008−545657A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512533(P2008−512533)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/019406
【国際公開番号】WO2006/125141
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2006/019406
【国際公開番号】WO2006/125141
【国際公開日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【出願人】(507170099)アミカス セラピューティックス インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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