説明

11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型を阻害するのに有用な6置換スルホニルアザビシクロ[3.2.1]オクタン

その多くの実施形態において、本発明は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型を阻害するのに有用な、新規な種類の6−置換スルホニル−1,3,3−トリアルキル−6−アザビシクロ[3.2.1]化合物、この化合物を含有する薬学的組成物、およびそのような化合物または薬学的組成物を使用して11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の発現に関連した1つまたは複数の状態を治療し、予防し、阻害し、または回復させる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
この出願は、2007年8月15日に出願された仮出願USSN第60/955,985号(これは、参考として本明細書に援用される)の利益を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型を阻害するのに有用な6−置換スルホニル−1,3,3−トリアルキル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン化合物、この化合物を含有する薬学的組成物、およびそのような化合物または薬学的組成物を使用して11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の発現に関連した1つまたは複数の状態を治療し、予防し、阻害し、または回復させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
グルココルチコイドは、脂肪代謝、機能、および分布を含めた多くの代謝およびホメオスタシスプロセスを制御するステロイドホルモンである。グルココルチコイドは、発生、神経生物学、炎症、血圧、代謝、およびプログラム細胞死に対して、重大かつ多様な生理学的効果も発揮する。
【0004】
グルココルチコイドの作用は、以下の要因に依存する:1)グルココルチコイドの循環レベル;2)循環内のグルココルチコイドのタンパク質結合;3)標的組織内の細胞内受容体密度;および4)まとめて11−β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ(11−β−HSD)として知られているグルココルチコイド活性化およびグルココルチコイド不活性化酵素による組織特異的プレ受容体代謝。11−β−HSDの2種の異なるアイソザイムをクローニングし、特徴付けた。これら2種のアイソザイムは、それぞれ11−β−HSD I型および11−β−HSD II型として知られており、様々なグルココルチコイドの活性および不活性形態の相互変換を触媒する。例えばヒトでは、最初に内因的に産生されたグルココルチコイドはコルチゾールである。11−β−HSD I型および11−β−HSD II型は、ホルモン的に活性なコルチゾールおよび不活性なコルチゾンの相互変換を触媒する。11−β−HSD I型は、ヒト組織内に広く分布され、その発現は、肺、睾丸、中枢神経系、最も豊富には肝臓および脂肪組織で検出された。逆に、11−β−HSD II型発現は、主に腎臓、胎盤、結腸、および唾液腺組織に見出される。
【0005】
11−β−HSD I型の上方制御は、増大した細胞グルココルチコイドレベルおよび増幅したグルココルチコイド活性をもたらすことができる。これは、増大した肝臓グルコース産生、脂肪細胞分化、およびインスリン耐性をもたらす可能性がある。II型糖尿病では、インスリン耐性は、高血糖症の発症で重要な病原性因子である。1型および2型の両方の糖尿病における持続性のまたは管理されていない高血糖症は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈心疾患、末梢血管疾患、脳卒中、腎症、神経疾患、および網膜症を含めた大血管および/または微小血管の合併症の高い発生率に関わっている。インスリン耐性は、重度の高血糖症がない場合であっても、高い血圧、高い空腹時血糖レベル、腹部肥満、高いトリグリセリドレベル、および/または低いHDLコレステロールを特徴とする、メタボリック症候群の構成要素である。さらに、グルココルチコイドは、膵臓β細胞からのインスリンのグルコース刺激性分泌を阻害することが知られている。したがって、11−β−HSD I型の阻害は、メタボリック症候群、肥満、肥満関連障害、高血圧、アテローム性動脈硬化症、脂質障害、II型糖尿病、インスリン耐性、膵炎、および関連した状態の治療に有益であることが予測される。
【0006】
軽度認識障害は、最終的には認知症の進行に関連し得る、加齢の一般的な特徴である。特定の脳の小領域で過剰なグルココルチコイドに対する慢性的な曝露は、認識機能の低下の一因となることが提示された。11−β−HSD I型の阻害は、脳におけるグルココルチコイドへの曝露を低下させ、認識障害、認知症、および/またはうつ病、特にアルツハイマー病に関連したものを含めた神経機能に対する有害なグルココルチコイド作用を防止することが予測される。
【0007】
グルココルチコイドは、コルチコステロイド誘発性緑内障でも、ある役割を有する。この特定の病状は、眼内圧力の著しい増加を特徴とし、治療しないと部分的な視野損失をもたらし最終的には失明する可能性がある。11−β−HSD I型の阻害は、局所グルココルチコイド濃度、したがって眼内圧力を低下させ、緑内障およびその他の視覚障害の管理に利益をもたらすことが予測される。
【0008】
最後に、グルココルチコイドは、骨格組織に悪影響を及ぼす可能性がある。過剰なグルココルチコイドへの連続的な曝露は、骨粗しょう症および骨折の高い危険性をもたらす可能性がある。11−β−HSD I型の阻害は、骨芽細胞および破骨細胞内の局所グルココルチコイド濃度を低下させ、骨粗しょう症を含めた骨疾患の管理に有益な効果をもたらすはずである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の内容に鑑み、11−β−HSD I型を標的とする新しい化合物が、明らかにかつ引き続き求められている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
その多くの実施形態において、本発明は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の阻害薬としての新規な種類の複素環式化合物、この化合物を含有する薬学的組成物、およびそのような化合物または薬学的組成物を使用して11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の発現に関連した1つまたは複数の状態を治療し、予防し、阻害し、または回復させる方法を提供する。
【0011】
一態様では、本出願は、式Iに示される一般構造を有する化合物、または前記化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグを開示する。
【0012】
【化1】

式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表すものであり、
ただし、
〜Rがそれぞれメチルを表し、かつ
が、置換アルコキシカルボニル、置換アルキルカルボニルオキシ、置換スルホニルアミノ、置換カルボニルアミノ、または非置換もしくは置換アミノカルボニルによって置換されているフェニルを表している化合物は除き、
かつ下記の化合物、即ち
1,3,3−トリメチル−6−[(フェニルメチル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(3,4−ジフルオロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−アミノフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[[4−(5−フェニル−2−オキサゾリル)フェニル]スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2−メチル−5−tert−ブチルフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[[3−(4,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[[5−2,6−ジクロロ−4−(4,5−ジヒドロ−3,5−ジオキソ−1,2,4−トリアジン−2(3H)−イル)フェノキシ]−2−ヒドロキシフェニル]スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[[5−[2−[[2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル]アミノ]−4−ピリミジニル]−2−チエニル]スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−エトキシフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[[2−(トリフルオロメチル)フェニル]スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,3−ジクロロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
3−[(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3,2.1]オクト−6−イル)スルホニル]安息香酸;
3−[(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクト−6−イル)スルホニル]安息香酸メチルエステル;
1,3,3−トリメチル−6−[(3−ニトロフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
4−[(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクト−6−イル)スルホニル]安息香酸;
1,3,3−トリメチル−6−[(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[(2−ニトロフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−アセチルフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,5−ジメチルフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−メトキシフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(5−ブロモ−2−エトキシフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,5−ジブロモフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(5−ブロモ−6−クロロ−3−ピリジニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,5−ジクロロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−フェニルスルホニル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)ベンゾ[d]オキサゾール−2(3H)−オン;
6−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)ベンゾ[cd]インドール−2(1H)−オン;
3−((1R,5S)−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン;
2,2,2−トリフルオロ−1−(8−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エタノン;
6−[(4−tert−ブチルフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;および
6−[(3−アミノフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン
は除外する。
【0013】
除かれ除外されたものを含めた式Iの化合物、ならびにその塩、溶媒和物、エステル、およびプロドラッグは、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の阻害薬であり、メタボリック症候群、肥満、肥満関連障害、高血圧、アテローム性動脈硬化症、脂質障害、II型糖尿病、インスリン耐性、膵炎、および関連した状態の治療で使用することができる。
【0014】
あるいは本発明は、治療有効量の、少なくとも1種の式Iの化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグを、その必要がある患者に投与するステップを含む、前記患者のメタボリック症候群を治療するための方法を提供する。
【0015】
【化2】

式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表す。
【0016】
本発明のその他の実施形態は、治療有効量の、少なくとも1種の式Iの化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグを、その必要がある患者に投与するステップを含む、前記患者の肥満または肥満関連障害を治療するための方法である。
【0017】
【化3】

式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表す。
【0018】
本発明の別の実施形態は、治療有効量の、少なくとも1種の式Iの化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグを、その必要がある患者に投与するステップを含む、前記患者のII型糖尿病を治療するための方法である。
【0019】
【化4】

式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表す。
【0020】
本発明の別の実施形態は、治療有効量の、少なくとも1種の式Iの化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグを、その必要がある患者に投与するステップを含む、前記患者のアテローム性動脈硬化症を治療するための方法である。
【0021】
【化5】

式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
一実施形態では、本発明は、構造式Iによって表されるある複素環式化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグであって、様々な部分が上述の通りであるものを開示する。
【0023】
別の実施形態では、本発明は、式Iの化合物、ならびにその塩、溶媒和物、エステル、およびプロドラッグであって、ただし
が、フェニル、ナフチル、ベンジル、スチリリル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、ベンゾチエニル、またはベンゾオキサジアゾリルを表し、そのそれぞれが、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニルアルキル、シクロアルキル、およびモルホリノからなる群から選択される1個または複数の置換基によって任意選択で置換されており、
〜Rが、それぞれアルキルを表す
ものを具体化する。
【0024】
表1は、本発明の代表的な化合物の構造を示す。表およびその中の化合物は、いかなる手法によっても本発明を限定するものではなく、またそのように限定すると解釈すべきでもない。
【0025】
【表1−1】

【0026】
【表1−2】

【0027】
【表1−3】

【0028】
【表1−4】

【0029】
【表1−5】

【0030】
【表1−6】

【0031】
【表1−7】

【0032】
【表1−8】

【0033】
【表1−9】

【0034】
【表1−10】

【0035】
【表1−11】

【0036】
【表1−12】

【0037】
【表1−13】

【0038】
【表1−14】

【0039】
【表1−15】

【0040】
【表1−16】

【0041】
【表1−17】

【0042】
【表1−18】

【0043】
【表1−19】

【0044】
【表1−20】

【0045】
【表1−21】

上述のように、またこの開示の全体を通して、以下の用語は、他に指示しない限り以下の意味を有すると理解するものとする。
【0046】
「患者」は、ヒトおよび動物を含む。
【0047】
「哺乳動物」は、ヒトおよびその他の哺乳類動物を意味する。
【0048】
「アルキル」は、直鎖でも分枝状であってもよい、鎖中に約1から約20個の炭素原子を含む、脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキル基は、鎖中に約1から約12個の炭素原子を含有する。より好ましいアルキル基は、鎖中に約1から約6個の炭素原子を含有する。分枝状とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1個または複数の低級アルキル基が、線状アルキル鎖に結合されていることを意味する。「低級アルキル」は、直鎖でも分枝状でもよい鎖中に約1から約6個の炭素原子を有する基を意味する。「アルキル」は、置換されていなくてもよく、または、同じでも異なっていてもよい1個もしくは複数の置換基であって、各基が独立してハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、オキシム(例えば、=N−OH)、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)、−O−C(O)−アルキル、−O−C(O)−アリール、−O−C(O)−シクロアルキル、カルボキシ、および−C(O)O−アルキルからなる群から選択される1個もしくは複数の置換基により任意選択で置換されていてもよい。適切なアルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、およびt−ブチルが含まれる。
【0049】
「アルケニル」は、少なくとも1つの炭素間二重結合を含有し、かつ鎖中に約2から約15個の炭素原子を含む直鎖でも分枝状であってもよい、脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルケニル基は、鎖中に約2から約12個の炭素原子を有し、より好ましくは鎖中に約2から約6個の炭素原子を有する。分枝状とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1個または複数の低級アルキル基が、線状アルケニル鎖に結合されていることを意味する。「低級アルケニル」は、直鎖でも分枝状であってもよい鎖中に約2から約6個の炭素原子があることを意味する。「アルケニル」は、置換されていなくてもよく、または、同じでも異なっていてもよい1個もしくは複数の置換基であって、各置換基が独立してハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、アルコキシ、および−S(アルキル)からなる群から選択される1個もしくは複数の置換基により任意選択で置換されていてもよい。適切なアルケニル基の非限定的な例には、エテニル、プロペニル、n−ブテニル、3−メチルブト−2−エニル、n−ペンテニル、オクテニル、およびデセニルが含まれる。
【0050】
「アルキレン」は、上記にて定義されたアルキル基から水素原子を除去することによって得られた二官能性基を意味する。アルキレンの非限定的な例には、メチレン、エチレン、およびプロピレンが含まれる。
【0051】
「アルキニル」は、少なくとも1個の炭素間三重結合を含有し、直鎖でも分枝状であってもよい、鎖中に約2から約15個の炭素原子を含んでいる、脂肪族炭化水素基を意味する。好ましいアルキニル基は、鎖中に約2から約12個の炭素原子を有し、より好ましくは鎖中に約2から約4個の炭素原子を有する。分枝状とは、メチル、エチル、またはプロピルなどの1個または複数の低級アルキル基が、線状アルキニル鎖に結合されていることを意味する。「低級アルキニル」は、直鎖でも分枝状であってもよい鎖中に約2から約6個の炭素原子があることを意味する。適切なアルキニル基の非限定的な例には、エチニル、プロピニル、2−ブチニル、および3−メチルブチニルが含まれる。「アルキニル」は、置換されていなくてもよく、または、1個もしくは複数の置換基であって各置換基が独立してアルキル、アリール、およびシクロアルキルからなる群から選択される1個もしくは複数の置換基により任意選択で置換されていてもよい。
【0052】
「アリール」は、約6から約14個の炭素原子、好ましくは約6から約10個の炭素原子を含む、芳香族単環または多環系を意味する。アリール基は、同じでも異なっていてもよくかつ本明細書で定義された、1個または複数の「環系置換基」で、任意選択で置換することができる。適切なアリール基の非限定的な例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0053】
「ヘテロアリール」は、約5から約14個の環原子、好ましくは約5から約10個の環原子を含み、これら環原子の1個または複数が、単独でまたは組み合わせて、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、または硫黄である芳香族単環または多環系を意味する。好ましいヘテロアリールは、約5から約6個の環原子を含有する。「ヘテロアリール」は、同じでも異なっていてもよくかつ本明細書で定義された通りの、1個または複数の「環系置換基」により、任意選択で置換することができる。ヘテロアリールの根幹名の前にある、接頭語のアザ、オキサ、またはチアは、少なくとも窒素、酸素、または硫黄元素がそれぞれ、環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、対応するN−オキシドに任意選択で酸化することができる。「ヘテロアリール」は、上記にて定義されたアリールに縮合された、上記にて定義されたヘテロアリールを含んでもよい。適切なヘテロアリールの非限定的な例には、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、ピリドン(N−置換ピリドンを含む。)、イソキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、オキシインドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピロロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、およびベンゾチアゾリルなどが含まれる。「ヘテロアリール」という用語は、例えばテトラヒドロイソキノリルやテトラヒドロキノリルなど、部分飽和ヘテロアリールの部分も指す。
【0054】
「アラルキル」または「アリールアルキル」は、アリール−アルキル基を意味し、これらアリールおよびアルキルは前述の通りである。好ましいアラルキルは、低級アルキル基を含む。適切なアラルキル基の非限定的な例には、ベンジル、2−フェネチル、およびナフタレニルメチルが含まれる。親部分との結合は、アルキルを介する。
【0055】
「アルキルアリール」は、アルキル−アリール基を意味し、これらアルキルおよびアリールは前述の通りである。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的な例は、トリルである。親部分との結合は、アリールを介する。
【0056】
「シクロアルキル」は、約3から約10個の炭素原子、好ましくは約5から約10個の炭素原子を含む、非芳香族単環または多環系を意味する。好ましいシクロアルキル環は、約5から約7個の環原子を含有する。シクロアルキルは、同じでも異なっていてもよい、上記にて定義された通りの1個または複数の「環系置換基」で、任意選択で置換することができる。適切な単環式シクロアルキルの非限定的な例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルなどが含まれる。適切な多環式シクロアルキルの非限定的な例には、1−デカリニル、ノルボルニル、およびアダマンチルなどが含まれる。
【0057】
「シクロアルキルアルキル」は、親核に対してアルキル部分(上記にて定義された)を介して結合された、上記にて定義されたシクロアルキル部分を意味する。適切なシクロアルキルアルキルの非限定的な例には、シクロヘキシルメチルやアダマンチルメチルなどが含まれる。
【0058】
「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素間二重結合を含有する、約3から約10個の炭素原子、好ましくは約5から約10個の炭素原子を含む、非芳香族単環または多環系を意味する。好ましいシクロアルケニル環は、約5から約7個の環原子を含有する。シクロアルケニルは、同じでも異なっていてもよい、上記にて定義された、1個または複数の「環系置換基」で、任意選択で置換することができる。適切な単環式シクロアルケニルの非限定的な例には、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、およびシクロヘプタ−1,3−ジエニルなどが含まれる。適切な多環式シクロアルケニルの非限定的な例は、ノルボルニレニルである。
【0059】
「シクロアルケニルアルキル」は、親核に対してアルキル部分(上記にて定義された)を介して結合された、上記にて定義されたシクロアルケニル部分を意味する。適切なシクロアルケニルアルキルの非限定的な例には、シクロペンテニルメチルやシクロヘキセニルメチルなどが含まれる。
【0060】
「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素を意味する。フッ素、塩素、および臭素が好ましい。
【0061】
「環系置換基」は、例えば環系の利用可能な水素を置換する、芳香環または非芳香環系に結合された置換基を意味する。環系置換基は、同じでも異なっていてもよく、それぞれは独立して、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、−O−C(O)−アルキル、−O−C(O)−アリール、−O−C(O)−シクロアルキル、オキソ、−C(=N−CN)−NH、−C(=NH)−NH、−C(=NH)−NH(アルキル)、オキシム(例えば、=N−OH)、YN−、YN−アルキル−、YNC(O)−、YNSO−、および−SONYからなる群から選択され、ただしYおよびYは、同じまたは異ならせることができ、独立して、水素、アルキル、アリール、シクロアルキル、およびアラルキルからなる群から選択される。「環系置換基」は、環系の2個の隣接する炭素原子上の2個の利用可能な水素(各炭素上に1個のH)を、同時に置換する単一部分を意味してもよい。そのような部分の例は、例えば下記のような部分を形成する、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ、および−C(CH−などである。
【0062】
【化6】

好ましい実施形態では、Rは、1個または複数の環置換基で任意選択で置換されているフェニル基を表す。1つの特に好ましい実施形態では、環置換基は、フェニル環のパラ位で結合される。別の特に好ましい実施形態では、環置換基は、分枝状アルキル基である。別の特に好ましい実施形態では、環置換基は、ヒドロキシル基またはエーテル結合を含有する。
【0063】
「ヘテロアリールアルキル」は、親核に対してアルキル部分(上記にて定義された)を介して結合された、上記にて定義されたヘテロアリール部分を意味する。適切なヘテロアリールの非限定的な例には、2−ピリジニルメチルやキノリニルメチルなどが含まれる。
【0064】
「ヘテロシクリル」は、約3から約10個の環原子、好ましくは約5から約10個の環原子を含む、非芳香族飽和単環または多環系であって、この環系の原子の1個または複数が、単独でまたは組合せで炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、または硫黄である環系を意味する。この環系には、隣接する酸素および/または硫黄原子が存在しない。好ましいヘテロシクリルは、約5から約6個の環原子を含有する。ヘテロシクリルの根幹名の前にある接頭語のアザ、オキサ、またはチアは、少なくとも窒素、酸素、または硫黄原子がそれぞれ環原子として存在することを意味する。ヘテロシクリル環の任意の−NHは、例えば−N(Boc)、−N(CBz)、および−N(Tos)基としてなど、保護された状態で存在してもよく、そのような保護も、本発明の一部と見なされる。ヘテロシクリルは、同じでも異なっていてもよくかつ上記にて定義された通りである1個または複数の「環系置換基」により任意選択で置換することができる。ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子を任意選択で酸化して、対応するN−オキシド、S−オキシド、またはS,S−ジオキシドにすることができる。適切な単環式ヘテロシクリル環の非限定的な例には、ピペリジル、ピロロジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ラクタム、およびラクトンなどが含まれる。「ヘテロシクリル」は、環系の同じ炭素原子上の2個の利用可能な水素を同時に置換する、単一部分(例えば、カルボニル)を意味してもよい。そのような部分の例は、ピロリドンである。
【0065】
【化7】

「ヘテロシクリルアルキル」は、親核に対してアルキル部分(上記にて定義された)を介して結合された、上記にて定義されたヘテロシクリル部分を意味する。適切なヘテロシクリルアルキルの非限定的な例には、ピペリジニルメチルやピペラジニルメチルなどが含まれる。
【0066】
「ヘテロシクレニル」は、約3から約10個の環原子、好ましくは約5から約10個の環原子を含む、非芳香族単環または多環系であって、この環系の原子の1個または複数が、単独でまたは組合せで炭素以外の元素、例えば窒素、酸素、または硫黄原子であり、少なくとも1つの炭素間二重結合または炭素−窒素二重結合を含有する環系を意味する。この環系には、隣接する酸素および/または硫黄元素が存在しない。好ましいヘテロシクレニル環は、約5から約6個の環原子を含有する。ヘテロシクレニルの根幹名の前にある接頭語のアザ、オキサ、またはチアは、少なくとも窒素、酸素、または硫黄原子がそれぞれ環原子として存在することを意味する。ヘテロシクレニルは、1個または複数の環系置換基により任意選択で置換することができ、ただし「環系置換基」は、上記にて定義した通りである。ヘテロシクレニルの窒素または硫黄原子を任意選択で酸化して、対応するN−オキシド、S−オキシド、またはS,S−オキシドにすることができる。適切なヘテロシクレニル基の非限定的な例には、1,2,3,4−テトラヒドロピリジニル、1,2−ジヒドロピリジニル、1,4−ジヒドロピリジニル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、1,4,5,6−テトラヒドロピリミジニル、2−ピロリニル、3−ピロリニル、2−イミダゾリニル、2−ピラゾリニル、ジヒドロイミダゾリル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロオキサジアゾリル、ジヒドロチアゾリル、3,4−ジヒドロ−2H−ピラニル、ジヒドロフラニル、フルオロジヒドロフラニル、7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプテニル、ジヒドロチオフェニル、およびジヒドロチオピラニルなどが含まれる。「ヘテロシクレニル」は、環系の同じ炭素原子上の2個の利用可能な水素を同時に置換する単一部分(例えば、カルボニル)を意味してもよい。そのような部分の例は、ピロリジノンである。
【0067】
【化8】

「ヘテロシクレニルアルキル」は、親核に対してアルキル部分(上記にて定義された)を介して結合された、上記にて定義されたヘテロシクレニル部分を意味する。
【0068】
本発明の環系を含有するヘテロ原子では、N、O、またはSに隣接する炭素原子上にヒドロキシ基がなく、それと共に、別のヘテロ原子に隣接する炭素上にはNまたはS基がないことに、留意すべきである。このように、例えばこの環では、
【0069】
【化9】

2および5が付された炭素に直接結合された−OHは存在しない。
【0070】
例えば下記の部分などの互変異性形態
【0071】
【化10】

は、本発明のある実施形態で均等と見なされることにも留意すべきである。
【0072】
「アルキニルアルキル」は、アルキニル−アルキル基を意味し、これらアルキニルおよびアルキルは前述の通りである。好ましいアルキニルアルキルは、低級アルキニルおよび低級アルキル基を含有する。親部分との結合は、アルキルを介する。適切なアルキニルアルキル基の非限定的な例には、プロパルギルメチルが含まれる。
【0073】
「ヘテロアラルキル」は、ヘテロアリール−アルキル基を意味し、これらヘテロアリールおよびアルキルは前述の通りである。好ましいヘテロアラルキルは、低級アルキル基を含有する。適切なアラルキル基の非限定的な例には、ピリジルメチルおよびキノリン−3−イルメチルが含まれる。親部分との結合は、アルキル基を介する。
【0074】
「ヒドロキシアルキル」は、HO−アルキル基を意味し、このアルキルは先に定義された通りである。好ましいヒドロキシアルキルは、低級アルキルを含有する。適切なヒドロキシアルキル基の非限定的な例には、ヒドロキシメチルおよび2−ヒドロキシエチルが含まれる。
【0075】
「アシル」は、H−C(O)−、アルキル−C(O)−、またはシクロアルキル−C(O)−基を意味し、これらの中の様々な基は、先に述べた通りである。親部分との結合は、カルボニルを介する。好ましいアシルは、低級アルキルを含有する。適切なアシル基の非限定的な例には、ホルミル、アセチル、およびプロパノイルが含まれる。
【0076】
「アロイル」は、アリール−C(O)−基を意味し、このアリール基は先に述べた通りである。親部分との結合は、カルボニルを介する。適切な基の非限定的な例には、ベンゾイルおよび1−ナフトイルが含まれる。
【0077】
「アルコキシ」は、アルキル−O−基を意味し、このアルキル基は先に述べた通りである。適切なアルコキシ基の非限定的な例には、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、およびn−ブトキシが含まれる。親部分との結合は、エーテル酸素を介する。
【0078】
「アリールオキシ」は、アリール−O−基を意味し、このアリール基は先に述べた通りである。適切なアリールオキシ基の非限定的な例には、フェノキシおよびナフトキシが含まれる。親部分との結合は、エーテル酸素を介する。
【0079】
「アラルキルオキシ」は、アラルキル−O−基を意味し、このアラルキル基は先に述べた通りである。適切なアラルキルオキシ基の非限定的な例には、ベンジルオキシおよび1−または2−ナフタレンメトキシが含まれる。親部分との結合は、エーテル酸素を介する。
【0080】
「アルキルチオ」は、アルキル−S−基を意味し、このアルキル基は、先に述べた通りである。適切なアルキルチオ基の非限定的な例には、メチルチオおよびエチルチオが含まれる。親部分との結合は、硫黄を介する。
【0081】
「アリールチオ」は、アリール−S−基を意味し、このアリール基は、先に述べた通りである。適切なアリールチオ基の非限定的な例には、フェニルチオおよびナフチルチオが含まれる。親部分との結合は、硫黄を介する。
【0082】
「アラルキルチオ」は、アラルキル−S−基を意味し、このアラルキル基は先に述べた通りである。適切なアラルキルチオ基の非限定的な例は、ベンジルチオである。親部分との結合は、硫黄を介する。
【0083】
「アルコキシカルボニル」は、アルキル−O−CO−基を意味する。適切なアルコキシカルボニル基の非限定的な例には、メトキシカルボニルおよびエトキシカルボニルが含まれる。親部分との結合は、カルボニルを介する。
【0084】
「アリールオキシカルボニル」は、アリール−O−C(O)−基を意味する。適切なアリールオキシカルボニル基の非限定的な例には、フェノキシカルボニルおよびナフトキシカルボニルが含まれる。親部分との結合は、カルボニルを介する。
【0085】
「アラルコキシカルボニル」は、アラルキル−O−C(O)−基を意味する。適切なアラルコキシカルボニル基の非限定的な例は、ベンジルオキシカルボニルである。親部分との結合は、カルボニルを介する。
【0086】
「アルキルスルホニル」は、アルキル−S(O)−基を意味する。好ましい基は、アルキル基が低級アルキルのものである。親部分との結合は、スルホニルを介する。
【0087】
「アリールスルホニル」は、アリール−S(O)−基を意味する。親部分との結合は、スルホニルを介する。
【0088】
「置換されている」という用語は、指定された原子上の1個または複数の水素が、指定された基から選択されるものに置き換えられることを意味し、ただし、既存の環境下での、指定された原子の通常の価数を超えることはなく、かつその置換によって安定な化合物が得られることを条件とする。置換基および/または変数の組合せは、そのような組合せが安定な化合物をもたらす場合に限り、許容される。「安定な化合物」または「安定な構造」とは、有用な純度になるまで反応混合物から単離するのに、また有効な治療薬に配合するのに耐えられるよう、十分に堅牢な化合物を意味する。
【0089】
「任意選択で置換されている」という用語は、特定の基、ラジカル、または部分による任意選択的な置換を意味する。
【0090】
化合物に関する「精製された」、「精製された形の」、または「単離され精製された形の」という用語は、合成プロセスから(例えば、反応混合物から)、または自然源から、またはこれらの組合せから単離された後の、前記化合物の物理的状態を指す。このように、化合物に関する「精製された」、「精製された形の」、または「単離され精製された形の」という用語は、本明細書に記述されまたは当業者に周知の(例えば、クロマトグラフィーおよび再結晶化など)1つまたは複数の精製プロセスから得られた後の、本明細書に記述されまたは当業者に周知の標準的な分析技法によって特徴付けることが可能な十分な純度を有する、前記化合物の物理的状態を指す。
【0091】
本明細書の文脈、スキーム、実施例、および表において満足のいかない価数を有する任意の炭素ならびにヘテロ原子は、価数を満足させる十分な数の(1個または複数の)水素原子を有すると想定されることにも留意されたい。
【0092】
化合物中の官能基に「保護された」と付す場合、これは、化合物が反応を受けたときに、官能基が、保護された部位で望ましくない副反応を妨害するための修飾形態にあることを意味する。適切な保護基は、当業者によってならびにT.W. Greeneら、Protective Groups in Organic Synthesis(1991年)、Wiley、New Yorkなどの標準的な教科書を参照することによって、認められることになる。
【0093】
任意の変数(例えば、アリール、複素環、Rなど)が、任意の構成要素または式Iで複数回出現する場合、各出現ごとのその定義は、他のすべての出現におけるその定義とは無関係である。
【0094】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、特定の成分を指定量で、ならびに特定された成分の組合せから直接または間接的に得られる任意の生成物を指定量で含む、生成物を包含するものである。
【0095】
本発明の化合物のプロドラッグおよび溶媒和物も、本明細書では企図される。プロドラッグの考察は、T. HiguchiおよびV. Stella、Pro−drugs as Novel Delivery Systems(1987年)、14巻、the A.C.S. Symposium Seriesと、Bioreversible Carriers in Drug Design、(1987年)Edward B. Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Pressに提示されている。「プロドラッグ」という用語は、式(I)の化合物、またはこの化合物の、薬学的に受容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物が得られるように、in vivoで変換される化合物(例えば、薬物前駆体)を意味する。この変換は、例えば血液中の加水分解を通してなど、様々なメカニズムによって(例えば、代謝または化学的プロセスによって)行ってもよい。プロドラッグの使用に関する考察は、T. HiguchiおよびW. Stella、「Pro−drugs as Novel Delivery Systems」、14巻、the A.C.S. Symposium Seriesと、Bioreversible Carriers in Drug Design、Edward B. Roche編、American Pharmaceutical Association and Pergamon Press、1987年に提示される。
【0096】
例えば、式(I)の化合物、またはこの化合物の、薬学的に受容可能な塩、水和物、もしくは溶媒和物が、カルボン酸官能基を含有する場合、プロドラッグは、酸基の水素原子を、例えば(C〜C)アルキル、(C〜C12)アルカノイルオキシメチル、4から9個の炭素原子を有する1−(アルカノイルオキシ)エチル、5から10個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルカノイルオキシ)−エチル、3から6個の炭素原子を有するアルコキシカルボニルオキシメチル、4から7個の炭素原子を有する1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、5から8個の炭素原子を有する1−メチル−1−(アルコキシカルボニルオキシ)エチル、3から9個の炭素原子を有するN−(アルコキシカルボニル)アミノメチル、4から10個の炭素原子を有する1−(N−(アルコキシカルボニル)アミノ)エチル、3−フタリジル、4−クロトノラクトニル、γ−ブチロラクトン−4−イル、ジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノ(C〜C)アルキル(β−ジメチルアミノエチルなど)、カルバモイル−(C〜C)アルキル、N,N−ジ(C〜C)アルキルカルバモイル−(C〜C)アルキルと、ピペリジノ−、ピロリジノ−、またはモルホリノ(C〜C)アルキルなどの基で置換することによって形成されたエステルを含むことができる。
【0097】
同様に、式(I)の化合物がアルコール官能基を含有する場合、プロドラッグは、アルコール基の水素原子を、例えば(C〜C)アルカノイルオキシメチル、1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル、1−メチル−1−((C〜C)アルカノイルオキシ)エチル、(C〜C)アルコキシカルボニルオキシメチル、N−(C〜C)アルコキシカルボニルアミノメチル、スクシノイル、(C〜C)アルカノイル、α−アミノ(C〜C)アルカニル、アリールアシル、およびα−アミノアシル、またはα−アミノアシル−α−アミノアシルなどの基で置換することによって形成することができ、ただし各α−アミノアシル基は、天然のL−アミノ酸、P(O)(OH)、−P(O)(O(C〜C)アルキル)、またはグリコシル(炭水化物のヘミアセタール形態のヒドロキシル基の除去によって得られた基)などから独立して選択されるものである。
【0098】
式(I)の化合物がアミン官能基を取り込む場合、プロドラッグは、アミン基の水素原子を、例えばR−カルボニル、RO−カルボニル、NRR’−カルボニル(ただし、RおよびR’は、それぞれ独立して、(C〜C10)アルキル、(C〜C)シクロアルキル、ベンジルであり、またはR−カルボニルは、天然のα−アミノアシルもしくは天然のα−アミノアシルである。)、−C(OH)C(O)OY(ただしYは、H、(C〜C)アルキルまたはベンジルである。)、−C(OY)Y(ただしYは、(C〜C)アルキルでありYは、(C〜C)アルキル、カルボキシ(C〜C)アルキル、アミノ(C〜C)アルキル、またはモノ−N−もしくはジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノアルキルである。)、−C(Y)Y(ただしYは、Hまたはメチルであり、Yは、モノN−またはジ−N,N−(C〜C)アルキルアミノモルホリノである。)、ピペリジン−1−イル、またはピロリジン−1−イルなどの基で置換することによって形成することができる。
【0099】
本発明の1種または複数の化合物は、非溶媒和形態で、ならびに水やエタノールなどの、薬学的に受容可能な溶媒との溶媒和形態で存在してもよく、本発明は、溶媒和および非溶媒和形態の両方を包含することが意図される。「溶媒和物」は、本発明の化合物と、1種または複数の溶媒分子との物理的結合を意味する。この物理的結合では、水素結合を含めたイオンおよび共有結合の様々な結合度がある。ある場合には、溶媒和物は、例えば1個または複数の溶媒分子が結晶固体の結晶格子に組み込まれたときに、単離することが可能になる。「溶媒和物」は、溶液相および単離可能な溶媒和物の両方を包含する。適切な溶媒和物の非限定的な例には、エタノレートやメタノレートなどが含まれる。「水和物」は、溶媒分子がHOの場合の溶媒和物である。
【0100】
本発明の1種または複数の化合物は、溶媒和物に任意選択で変換してもよい。溶媒和物の調製は、一般に知られている。このように、例えばM. Cairaら、J. Pharmaceutical Sci.、93巻(3号)、601〜611頁(2004年)は、酢酸エチルでならびに水からの、抗真菌フルコナゾールの溶媒和物の調製について記述している。溶媒和物、半溶媒和物、および水和物などの同様の調製は、E.C. van Tonderら、AAPS PharmSciTech.、5巻(1号)、article 12(2004年);およびA.L.Binghamら、Chem. Commun.、603〜604頁(2001年)によって記述されている。典型的な、非限定的プロセスでは、本発明の化合物を、所望の量の所望の溶媒(有機または水またはこれらの混合物)に、周囲温度よりも高い温度で溶解し、この溶液を、結晶が形成されるよう十分な速度で冷却し、次いでこれを標準的な方法により単離する。例えばI.R.分光法などの分析技法は、溶媒和物(または水和物)として、結晶中に溶媒(または水)が存在することを示す。
【0101】
「有効量」または「治療有効量」は、上述の疾患を阻害するのに有効な、したがって所望の治療、回復、阻害、または予防効果をもたらす、本発明の化合物または組成物の量を示すことを意味する。
【0102】
式Iの化合物は、本発明の範囲内でもある塩を形成することができる。本明細書で式Iの化合物に言及する場合には、他に指示しない限り、その化合物の塩への言及が含まれることが理解される。本明細書で用いられる「(1種または複数の)塩」という用語は、無機および/または有機酸で形成された酸性塩、ならびに無機および/または有機塩基で形成された塩基性塩を示す。さらに、式Iの化合物が、限定するものではないがピリジンやイミダゾールなどの塩基性部分と、限定するものではないがカルボン酸などの酸性部分との両方を含有する場合、両性イオン(「分子内塩」)は、形成されていてもよく、本明細書で使用される「(1種または複数の)塩」という用語の範囲内に含まれる。薬学的に受容可能な(即ち、無毒性の、生理学的に許容される)塩が好ましいが、その他の塩も有用である。式Iの化合物の塩は、例えば、式Iの化合物と、ある量の、例えば等量の酸または塩基とを、塩が沈殿するような媒体中でまたは水性媒体中で反応させ、その後、凍結乾燥することによって形成してもよい。
【0103】
例示的な酸付加塩には、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、ショウノウ酸塩、カンファスルホン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、リン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、およびトルエンスルホン酸塩(トシル酸塩としても知られる)などが含まれる。さらに、塩基性の薬学的化合物から薬学的に有用な塩を形成するのに適していると一般に見なされる酸は、例えば、P. Stahlら、Camille G.(編)Handbook of Pharmaceutical Salts. Properties, Selection and Use(2002年)Zurich:Wiley−VCH;S. Bergeら、Journal of Pharmaceutical Sciences(1977年)66巻(1号)1〜19頁;P. Gould、International J. of Pharmaceutics(1986年)33巻、201〜217頁;Andersonら、The Practice of Medicinal Chemistry(1996年)、Academic Press、New York;およびThe Orange Book(Food & Drug Administration、Washington, D.C.、そのウェブサイト上)によって論じられている。これらの開示は、本明細書に参照により組み込まれている。
【0104】
例示的な塩基性塩には、アンモニウム塩、ナトリウムやリチウム、カリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウムやマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩、ジシクロヘキシルアミンやt−ブチルアミンなどの有機塩基(例えば、有機アミン)との塩、およびアルギニンやリシンなどのアミノ酸との塩が含まれる。塩基性窒素含有基は、低級アルキルハロゲン化物(例えば、塩化メチル、塩化エチル、塩化ブチル、臭化メチル、臭化エチル、臭化ブチル、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、およびヨウ化ブチル)、ジアルキルスルフェート(例えば、硫酸ジメチル、ジエチル、およびジブチル)、長鎖ハロゲン化物(例えば、塩化デシル、塩化ラウリル、塩化ステアリル、臭化デシル、臭化ラウリル、臭化ステアリル、ヨウ化デシル、ヨウ化ラウリル、ヨウ化ステアリル)、およびアラルキルハロゲン化物(例えば、臭化ベンジルおよびフェネチル)などの薬剤で、四級化されていてもよい。
【0105】
そのような酸塩および塩基塩のすべては、本発明の範囲内で薬学的に受容可能な塩であるとし、すべての酸および塩基塩は、本発明の目的のため、対応する化合物の遊離形態と均等と見なされる。
【0106】
本発明の化合物の薬学的に受容可能なエステルは、以下の群を含む:(1)ヒドロキシ基のエステル化によって得られるカルボン酸エステルであって、エステル分類のカルボン酸部分の非カルボニル部分が、直鎖または分枝鎖アルキル(例えば、アセチル、n−プロピル、t−ブチル、またはn−ブチル)、アルコキシアルキル(例えば、メトキシメチル)、アラルキル(例えば、ベンジル)、アリールオキシアルキル(例えば、フェノキシメチル)、アリール(例えば、ハロゲンやC1〜4アルキル、C1〜4アルコキシ、アミノなどで任意選択で置換されているフェニル)から選択されるエステル;(2)アルキルまたはアラルキルスルホニルなどのスルホン酸エステル(例えば、メタンスルホニル);(3)アミノ酸エステル(例えば、L−バリルまたはL−イソロイシル);(4)ホスホン酸エステル、および(5)モノ−、ジ−、またはトリホスホン酸エステル。リン酸エステルは、例えばC1〜20アルコールもしくはその反応性誘導体によって、または2,3−ジ(C6〜24)アシルグリセロールによって、さらにエステル化されてもよい。
【0107】
式Iの化合物と、その塩、溶媒和物、エステル、およびプロドラッグは、それらの互変異性形態で(例えば、アミノまたはイミノエーテルとして)存在してもよい。そのような互変異性形態のすべては、本発明の一部として本明細書では考えられる。
【0108】
式(I)の化合物は、非対称またはキラル中心を含有していてもよく、したがって、異なる立体異性体の形で存在する。式(I)の化合物のすべての立体異性体ならびにその混合物は、ラセミ混合物も含め、本発明の一部を形成するものとする。さらに本発明は、すべての幾何位置異性体を包含する。例えば、式(I)の化合物が二重結合または縮合環を取り込む場合、シス形およびトランス形の両方、ならびに混合物は、本発明の範囲内に包含される。
【0109】
ジアステレオマー混合物は、例えばクロマトグラフィーおよび/または分別結晶などの当業者に周知の方法により、その物理化学的相違に基づいて、それら個々のジアステレオマーに分離することができる。鏡像異性体は、適切な光学活性化合物(例えば、キラルアルコールやモッシャー酸クロリドなどのキラル補助基)との反応により鏡像異性体混合物をジアステレオマー混合物に変換し、ジアステレオマーを分離し、個々のジアステレオマーを対応する純粋な鏡像異性体に変換する(例えば、加水分解する)ことによって、分離することができる。また、式(I)の化合物のいくつかは、アトロプ異性体(例えば、置換ビアリール)であってもよく、本発明の一部と見なされる。鏡像異性体は、キラルHPLCカラムを使用して分離することもできる。
【0110】
式(I)の化合物は、異なる互変異性形態で存在し得ることも可能であり、そのような形態のすべては本発明の範囲内に包含される。また、例えば、この化合物のすべてのケト−エノールおよびイミン−エナミン形も、本発明に含まれる。
【0111】
鏡像異性体形態(不斉炭素が存在しない場合であっても存在し得る)、回転異性体形態、アトロプ異性体、およびジアステレオマー形態を含めた、様々な置換基上の不斉炭素により存在し得るような本発明の化合物(この化合物の塩、溶媒和物、エステル、およびプロドラッグ、ならびにこのプロドラッグの塩、溶媒和物、およびエステルを含む)のすべての立体異性体(例えば、幾何異性体や光学異性体など)は、位置異性体(例えば、4−ピリジルおよび3−ピリジルなど)のように本発明の範囲内であることが企図される(例えば、式(I)の化合物が二重結合または縮合環を取り込む場合、シスおよびトランス形の両方ならびに混合物は、本発明の範囲内に包含される。また、例えばこの化合物のすべてのケト−エノールおよびイミン−エナミン形も、本発明に含まれる)。本発明の化合物の個々の立体異性体は、例えば、その他の立体異性体を実質的に含まなくてもよく、または例えばラセミ化合物として、もしくはその他すべてのもしくはその他選択される立体異性体と混合してもよい。本発明のキラル中心は、IUPAC 1974 Recommendationsに定義されるようにSまたはR配置を有することができる。「塩」、「溶媒和物」、「エステル」、および「プロドラッグ」などの用語の使用は、本発明の化合物の鏡像異性体、立体異性体、回転異性体、互変異性体、位置異性体、ラセミ化合物、またはプロドラッグの塩、溶媒和物、エステル、およびプロドラッグに等しく適用されるものとする。
【0112】
本発明は、1個または複数の原子が、通常は天然に見出される原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換されていることを除き、本明細書に引用されたものと同一な、本発明の同位体標識化合物も包含する。本発明の化合物に組み込むことができる異性体の例には、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、および塩素の異性体、例えばそれぞれH、H、13C、14C、15N、18O、17O、31P、32P、35S、18F、および36Clなどの異性体が含まれる。
【0113】
式(I)の、ある同位体標識化合物(例えば、Hおよび14Cで標識された)は、化合物および/または基質組織分布アッセイに有用である。トリチウム化(即ち、H)および炭素−14(即ち、14C)同位体は、それらの調製および検出可能性を容易にするのに特に好ましい。さらに、重水素(即ち、H)などのより重い同位体での置換は、より大きな代謝安定性(例えば、in−vivo半減期の増大または投薬要件の低減)からある治療上の利点をもたらすことができ、したがって、いくつかの状況では好ましいと考えられる。式(I)の同位体標識化合物は、一般に、非同位体標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いることにより、以下のスキームおよび/または実施例に開示されるものと同様の手順に従って調製することができる。
【0114】
式Iの化合物、ならびに式Iの化合物の塩、溶媒和物、エステル、およびプロドラッグの多形性形態は、本発明に含まれるものとする。
【0115】
本発明による化合物は、薬理学的性質を有し、特に式Iの化合物は、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の阻害薬にすることができる。
【0116】
本明細書で使用される「肥満」という用語は、太り過ぎでありかつボディマス指数(BMI)が25以上である患者を指す。一実施形態では、肥満患者は25以上のBMIを有する。別の実施形態では、肥満患者は25から30のBMIを有する。別の実施形態では、肥満患者は30よりも大きいBMIを有する。さらに別の実施形態では、肥満患者は40よりも大きいBMIを有する。
【0117】
本明細書で使用される「肥満関連障害」という用語は、(i)25以上のBMIを有する患者で生じる障害、および(ii)摂食障害、および過剰な食物摂取に関連したその他の障害を指す。肥満関連障害の非限定的な例には、浮腫、息切れ、睡眠時無呼吸、皮膚障害、および高血圧が含まれる。
【0118】
本明細書で使用される「メタボリック症候群」という用語は、患者を心臓血管疾患および/または2型糖尿病に罹りやすくする一組の危険因子を指す。患者が以下の5つの危険因子の1つまたは複数を有する場合、この患者はメタボリック症候群を有すると言われている:
1)男性で40インチ超および女性で35インチ超の腹囲によって測定されるような、中心性/腹部肥満;
2)150mg/dL以上の空腹時トリグリセリドレベル;
3)男性で40mg/dL未満または女性で50mg/dL未満のHDLコレステロールレベル;
4)130/85mmHg以上の血圧;および
5)110mg/dL以上の空腹時グルコースレベル。
【0119】
好ましい投薬量は、式Iの化合物が、約0.001から5mg/kg体重/日である。特に好ましい投薬量は、式Iの化合物、または前記化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグが、約0.01から5mg/kg体重/日である。
【0120】
一実施形態では、本発明は、1種または複数の式Iの化合物または薬学的に受容可能なその塩もしくは溶媒和物と、式Iの化合物ではない少なくとも1種の追加の治療薬とを患者に投与するステップを含み、それら投与される量が共に、状態の治療または予防に有効である、患者の状態を治療するための方法を提供する。
【0121】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用な追加の治療薬の非限定的な例には、抗肥満薬、抗糖尿病薬、メタボリック症候群を治療するのに有用な任意の薬剤、心臓血管疾患を治療するのに有用な任意の薬剤、コレステロール生合成阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、胆汁酸捕捉薬、プロブコール誘導体、IBAT阻害薬、ニコチン酸受容体(NAR)作動薬、ACAT阻害薬、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害薬、低密度リポタンパク質(LDL)活性剤、魚油、水溶性繊維、植物ステロール、植物スタノール、植物スタノールの脂肪酸エステル、またはこれら追加の治療薬の2種以上の任意の組合せが含まれる。
【0122】
状態を治療するための本発明の方法で有用な抗肥満薬の非限定的な例には、リモナバントなどのCB1拮抗薬または逆作動薬、ニューロペプチドY拮抗薬、MCR4作動薬、MCH受容体拮抗薬、ヒスタミンH受容体拮抗薬または逆作動薬、代謝速度増強薬、栄養吸収阻害薬、レプチン、食欲抑制薬、およびリパーゼ阻害薬が含まれる。
【0123】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用な食欲抑制薬の非限定的な例には、カンナビノイド受容体1(CB)拮抗薬または逆作動薬(例えば、リモナバント)、ニューロペプチドY(NPY1、NPY2、NPY4、およびNPY5)拮抗薬、代謝型グルタミン酸サブタイプ5受容体(mGluR5)拮抗薬(例えば、2−メチル−6−(フェニルエチニル)−ピリジンおよび3[(2−メチル−1,4−チアゾール−4−イル)エチニル]ピリジン)、メラニン凝集ホルモン受容体(MCH1RおよびMCH2R)拮抗薬、メラノコルチン受容体作動薬(例えば、メラノタン−IIおよびMc4r作動薬)、セロトニン取込み阻害薬(例えば、デキスフェンフルラミンおよびフルオキセチン)、セロトニン(5HT)輸送阻害薬(例えば、パロキセチン、フルオキセチン、フェンフルラミン、フルボキサミン、セルタリン、およびイミプラミン)、ノルエピネフリン(NE)輸送阻害薬(例えば、デシプラミン、タルスプラム、およびノミフェンシン)、グレリン拮抗薬、レプチンまたはその誘導体、オピオイド拮抗薬(例えば、ナルメフェン、3−メトキシナルトレキソン、ナロキソン、およびナルテルキソン)、オレキシン拮抗薬、ボムベシン受容体サブタイプ3(BRS3)作動薬、コレシストキニン−A(CCK−A)作動薬、毛様体神経栄養因子(CNTF)またはその誘導体(例えば、ブタビンジドおよびアキソキン)、モノアミン再取り込み阻害薬(例えば、シブトラミン)、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)作動薬、トピラメート、およびフィトファーム化合物57が含まれる。
【0124】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用な代謝速度増強薬の非限定的な例には、アセチル−CoAカルボキシラーゼ−2(ACC2)阻害薬、βアドレナリン受容体3(β3)作動薬、ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ阻害薬(DGAT1およびDGAT2)、脂肪酸シンターゼ(FAS)阻害薬(例えば、セルレニン)、ホスホジエステラーゼ(PDE)阻害薬(例えば、テオフィリン、ペントキシフィリン、ザプリナスト、シルデナフィル、アムリノン、ミルリノン、シロスタミド、ロリプラム、およびシロミオラスト)、甲状腺ホルモンβ作動薬、脱共役タンパク質活性剤(UCP−1、2、または3)(例えば、フィタン酸、4−[(E)−2−(5,6,7,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]安息香酸およびレチノイン酸)、アシル−エストロゲン(例えば、オレオイル−エストロン)、グルココルチコイド拮抗薬、11−βヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ1型(11β HSD−1)阻害薬、メラノコルチン−3受容体(Mc3r)作動薬、およびステアロイル−CoAデサチュラーゼ−1(SDC−1)化合物が含まれる。
【0125】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用な栄養吸収阻害薬の非限定的な例には、リパーゼ阻害薬(例えば、オルリスタット、リプスタチン、テトラヒドロリプスタチン、テアサポニン、およびジエチルウムベリフェリルホスフェート)、脂肪酸輸送阻害薬、ジカルボキシレート輸送阻害薬、グルコース輸送阻害薬、およびホスフェート輸送阻害薬が含まれる。
【0126】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なコレステロール生合成阻害薬の非限定的な例には、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬、スクアレンシンターゼ阻害薬、スクアレンエポキシダーゼ阻害薬、およびこれらの混合物が含まれる。
【0127】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なコレステロール吸収阻害薬の非限定的な例には、エゼチミブ、および同じ目的に適したその他の化合物が含まれる。一実施形態では、コレステロール吸収阻害薬はエゼチミブである。
【0128】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なHMG−CoAレダクターゼ阻害薬には、限定するものではないがロバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、シムバスタチン、アトルバスタチン、セリバスタチン、CI−981、レスバスタチン、リバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチン、またはL−659,699((E,E)−11−[3’R−(ヒドロキシ−メチル)−4’−オキソ−2’R−オキセタニル]−3,5,7R−トリメチル−2,4−ウンデカジエン酸)などのスタチンが含まれる。
【0129】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なスクアレン合成阻害薬には、限定するものではないがスクアレンシンセターゼ阻害薬、スクアレスタチン1、およびスクアレンエポキシド阻害薬、例えばNB−598((E)−N−エチル−N−(6,6−ジメチル−2−ヘプテン−4−イニル)−3−[(3,3’−ビチオフェン−5−イル)メトキシ]ベンゼン−メタンアミド塩酸塩)などが含まれる。
【0130】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用な胆汁酸捕捉薬には、限定するものではないがコレスチルアミン(Bristol−Myers Squibbから入手可能なQUESTRAN(登録商標)またはQUESTRAN LIGHT(登録商標)コレスチルアミンなど、胆汁酸を結合することが可能な第四級アンモニウム陽イオン基を含有するスチレン−ジビニルベンゼンコポリマー)、コレスチポール(Pharmaciaから入手可能なCOLESTID(登録商標)など、ジエチレントリアミンと1−クロロ−2,3−エポキシプロパンとのコポリマー)、塩酸コレセベラム(三共から入手可能な、WelChol(登録商標)錠剤(エピクロロヒドリンと架橋しかつ1−ブロモデカンおよび(6−ブロモヘキシル)−トリメチルアンモニウムブロミドによりアルキル化されたポリ(塩酸アリルアミン))など)、3,3−イオエン、N−(シクロアルキル)アルキルアミンおよびポリグルサムなどの水溶性誘導体、不溶性四級化ポリスチレン、サポニン、ならびにこれらの混合物が含まれる。適切な無機コレステロール捕捉薬には、サリチル酸ビスマスと、モンモリロナイトクレイ、水酸化アルミニウム、および炭酸カルシウム制酸薬が含まれる。
【0131】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なプロブコール誘導体には、限定するものではないがAGI−1067と、米国特許第6,121,319号および第6,147,250号に開示されているものが含まれる。
【0132】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なIBAT阻害薬には、限定するものではないが国際公開第00/38727号に開示されているような2,3,4,5−テトラヒドロ−1−ベンゾチエピン1,1−ジオキサイド構造を含む治療用化合物などの、ベンゾチエピンが含まれる。
【0133】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なニコチン酸受容体作動薬には、限定するものではないが利用可能な場合には、酸形態、塩、エステル、両性イオン、および互変異性体を含めたピリジン−3−カルボキシレート構造またはピラジン−2−カルボキシレート構造を有するものが含まれる。本発明の方法に有用なニコチン酸受容体作動薬のその他の例には、ニコチン酸、ニセリトロール、ニコフラノース、およびアシピモックスが含まれる。適切なニコチン酸生成物の例は、Kos Pharmaceuticals,Inc.(Cranbury、NJ)から入手可能なNIASPAN(登録商標)(ナイアシン持続放出錠剤)である。
【0134】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なACAT阻害薬には、限定するものではないがアバシミベ、HL−004、レシミビド、およびCL−277082(N−(2,4−ジフルオロフェニル)−N−[[4−(2,2−ジメチルプロピル)フェニル]−メチル]−N−ヘプチル尿素)が含まれる。参照により本明細書に組み込まれるP. Changら、「Current, New and Future Treatments in Dyslipidaemia and Atherosclerosis」、Drugs、2000年7月;60巻(1号);55〜93頁を参照されたい。
【0135】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なCETP阻害薬には、限定するものではないが参照により本明細書に組み込まれる国際公開第00/38721号および米国特許第6,147,090号に開示されているものが含まれる。
【0136】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なLDL受容体活性剤には、限定するものではないがHOE−402、LDL受容体活性を直接刺激するイミダゾリジニル−ピリミジン誘導体が含まれる。M. Huettingerら、「Hypolipidemic activity of HOE−402 is Mediated by Stimulation of the LDL Receptor Pathway」、Arterioscler.Thromb.、1993年;13巻:1005〜12頁を参照されたい。
【0137】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用な天然水溶性繊維には、限定するものではないがオオバコ、グアー、オートムギ、およびペクチンが含まれる。
【0138】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用な植物スタノールの脂肪酸エステルには、限定するものではないがBENECOL(登録商標)マーガリンで使用されるシトスタノールエステルが含まれる。
【0139】
状態を治療するための本発明の方法に有用な抗糖尿病薬の非限定的な例には、インスリン感受性改善薬、β−グルコシダーゼ阻害薬、DPP−IV阻害薬、インスリン分泌促進薬、肝臓グルコース生産低減化合物、抗高血圧薬、ナトリウムグルコース摂取輸送2(SGLT−2)阻害薬、インスリンおよびインスリン含有組成物、および上述の抗肥満薬が含まれる。
【0140】
一実施形態では、抗糖尿病薬はインスリン分泌促進薬である。一実施形態では、インスリン分泌促進薬はスルホニル尿素である。
【0141】
本発明の方法で有用なスルホニル尿素の非限定的な例には、グリピジド、トルブタミド、グリブリド、グリメピリド、クロルプロパミド、アセトヘキサミド、グリアミリド、グリクラジド、グリキドン、グリベンクラミド、およびトラザミドが含まれる。
【0142】
別の実施形態では、インスリン分泌促進薬はメグリチニドである。
【0143】
状態を治療するための本発明の方法に有用なメグリチニドの非限定的な例には、レパグリニド、ミチグリニド、およびナテグリニドが含まれる。
【0144】
さらに別の実施形態では、インスリン分泌促進薬は、GLP−1またはGLP−1模倣体である。
【0145】
本発明の方法に有用なGLP−1模倣体の非限定的な例には、Byetta−Exanatide、Liraglutinide、CJC−1131(ConjuChem、Exanatide−LAR(Amylin)、BIM−51077(Ipsen/LaRoche)、ZP−10(Zealand Pharmaceuticals)、および国際公開第00/07617号に開示されている化合物が含まれる。
【0146】
本発明の方法に有用なインスリン分泌促進薬のその他の非限定的な例には、エキセンジン、GIP、およびセクレチンが含まれる。
【0147】
別の実施形態では、抗糖尿病薬はインスリン感受性改善薬である。
【0148】
本発明の方法に有用なインスリン感受性改善薬の非限定的な例には、トログリタゾンやロシグリタゾン、ピオグリタゾン、エングリタゾンなどのPPAR活性剤または作動薬、メトホルミンやフェンホルミンなどのビグアニジン、PTP−1B阻害薬、およびグルコキナーゼ活性剤が含まれる。
【0149】
別の実施形態では、抗糖尿病薬はβ−グルコシダーゼ阻害薬である。
【0150】
本発明の方法で有用なβ−グルコシダーゼ阻害薬の非限定的な例には、ミグリトール、アカルボース、およびボグリボースが含まれる。
【0151】
別の実施形態では、抗糖尿病薬は肝臓グルコース生産低減薬である。
【0152】
本発明の方法に有用な肝臓グルコース生産低減薬の非限定的な例には、グルコファージおよびグルコファージXRが含まれる。
【0153】
さらに別の実施形態では、抗糖尿病薬は、長時間作用型や短時間作用型のインスリンなど、すべてのインスリン製剤を含めたインスリンである。
【0154】
経口投与可能なインスリンおよびインスリン含有組成物の非限定的な例には、AutoImmune製AL−401と、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる米国特許第4,579,730号、第4,849,405号、第4,963,526号、第5,642,868号、第5,763,396号、第5,824,638号、第5,843,866号、第6,153,632号、第6,191,105号、および国際公開第85/05029号に開示された組成物が含まれる。
【0155】
別の実施形態では、抗糖尿病薬はDPP−IV阻害薬である。
【0156】
本発明の方法に有用なDPP−IV阻害薬の非限定的な例には、シタグリプチン、サクサグリプチン、デナグリプチン、ビルダグリプチン、アログリプチン、安息香酸アログリプチン、Galvus(Novartis)、ABT−279およびABT−341(Abbott)、ALS−2−0426(Alantos)、ARI−2243(Arisaph)、BI−AおよびBI−B(Boehringer Ingelheim)、SYR−322(武田)、MP−513(三菱)、DP−893(Pfizer)、およびRO−0730699(Roche)が含まれる。
【0157】
さらなる実施形態では、抗糖尿病薬はSGLT−2阻害薬である。
【0158】
本発明の方法に有用なSGLT−2阻害薬の非限定的な例には、ダパグリフロジンおよびセルグリフロジン、AVE2268(Sanofi−Aventis)およびT−1095(田辺製薬)が含まれる。
【0159】
状態を治療するための本発明の方法に有用な抗高血圧薬の非限定的な例には、β−遮断薬およびカルシウムチャネル遮断薬(例えば、ジルチアゼム、ベラパミル、ニフェジピン、アムロピジン、およびミベフラジル)、ACE阻害薬(例えば、カプトプリル、リシノプリル、エナラプリル、スピラプリル、セラノプリル、ゼフェノプリル、ホシノプリル、シラゾプリル、およびキナプリル)、AT−1受容体拮抗薬(例えば、ロサルタン、イルベサルタン、およびバルサルタン)、レニン阻害薬、およびエンドセリン受容体拮抗薬(例えば、シタクスセンタン)が含まれる。
【0160】
一実施形態では、抗糖尿病薬は、デンプンおよびある糖の分解を遅くしまたは遮断する薬剤である。
【0161】
デンプンおよびある糖の分解を遅くしまたは遮断する、本発明の組成物および方法で使用するのに適した抗糖尿病薬の非限定的な例には、α−グルコシダーゼ阻害薬およびインスリン産生を増加させるあるペプチドが含まれる。α−グルコシダーゼ阻害薬は、摂取された炭水化物の消化を遅らせることによって、身体が血糖を低下させるのを助け、その結果、食後の血糖濃度の上昇がさらに小さくなる。適切なα−グルコシダーゼ阻害薬の非限定的な例には、アカルボース、ミグリトール、カミグリボース、WO 01/47528(参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているあるポリアミン、ボグリボースが含まれる。インスリン産生を増加させるのに適切なペプチドの非限定的な例には、アムリンチド(CAS Reg.No.122384−88−7、Amylin製)、プラムリンチド、エキセンジン、国際公開第00/07617号に開示されているグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)作動性活性を有するある化合物が含まれる。
【0162】
状態を治療または予防するための本発明の方法に有用なその他の特定の追加の治療薬には、限定するものではないがリモナバント、2−メチル−6−(フェニルエチニル)−ピリジン、3[(2−メチル−1,4−チアゾール−4−イル)エチニル]ピリジン、メラノタン−II、デキスフェンフルラミン、フルオキセチン、パロキセチン、フェンフルラミン、フルボキサミン、セルタリン、イミプラミン、デシプラミン、タルスプラム、ノミフェンシン、レプチン、ナルメフェン、3−メトキシナルトレキソン、ナロキソン、ナルトレキソン、ブタビンジド、アキソキン、シブトラミン、トピラメート、フィトファーム化合物57、セルレニン、テオフィリン、ペントキシフィリン、ザプリナスト、シルデナフィル、アムリノン、ミルリノン、シロスタミド、ロリプラム、シロミラスト、フィタン酸、4−[(E)−2−(5,6,7,8−テトラメチル−2−ナフタレニル)−1−プロペニル]安息香酸、レチノイン酸、オレオイル−エストロン、オルリスタット、リプスタチン、テトラヒドロリプスタチン、テアサポニン、およびリン酸ジエチルウムベリフェリルが含まれる。
【0163】
一実施形態では、糖尿病を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物、抗糖尿病薬、および/または抗肥満薬を投与するステップを含む。
【0164】
別の実施形態では、糖尿病を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物および抗糖尿病薬を投与するステップを含む。
【0165】
別の実施形態では、糖尿病を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物および抗肥満薬を投与するステップを含む。
【0166】
一実施形態では、肥満症を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物、抗糖尿病薬、および/または抗肥満薬を投与するステップを含む。
【0167】
別の実施形態では、肥満症を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物および抗糖尿病薬を投与するステップを含む。
【0168】
別の実施形態では、肥満症を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物および抗肥満薬を投与するステップを含む。
【0169】
一実施形態では、メタボリック症候群を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物と、抗肥満薬、抗糖尿病薬、メタボリック症候群を治療するのに有用な任意の薬剤、心臓血管疾患を治療するのに有用な任意の薬剤、コレステロール生合成阻害薬、ステロール吸収阻害薬、胆汁酸捕捉薬、プロブコール誘導体、IBAT阻害薬、ニコチン酸受容体(NAR)作動薬、ACAT阻害薬、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害薬、低密度リポタンパク質(LDL)活性剤、魚油、水溶性繊維、植物ステロール、植物スタノール、および植物スタノールの脂肪酸エステルから選択される1種または複数の追加の治療薬とを投与するステップを含む。
【0170】
一実施形態では、追加の治療薬がコレステロール生合成阻害薬である。別の実施形態では、コレステロール生合成阻害薬がHMG−CoAレダクターゼ阻害薬である。別の実施形態では、HMG−CoAレダクターゼ阻害薬がスタチンである。別の実施形態では、スタチンは、ロバスタチン、プラバスタチン、シムバスタチン、またはアトルバスタチンである。
【0171】
一実施形態では、追加の治療薬がコレステロール吸収阻害薬である。別の実施形態では、コレステロール吸収阻害薬がエゼチミブである。別の実施形態では、コレステロール吸収阻害薬がスクアレンシンセターゼ阻害薬である。別の実施形態では、コレステロール吸収阻害薬がスクアレンエポキシダーゼ阻害薬である。
【0172】
一実施形態では、追加の治療薬は、コレステロール吸収阻害薬およびコレステロール生合成阻害薬を含む。別の実施形態では、追加の治療薬は、コレステロール吸収阻害薬およびスタチンを含む。別の実施形態では、追加の治療薬は、エゼチミブおよびスタチンを含む。別の実施形態では、追加の治療薬は、エゼチミブおよびシムバスタチンを含む。
【0173】
一実施形態では、メタボリック症候群を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物、抗糖尿病薬、および/または抗肥満薬を投与するステップを含む。
【0174】
別の実施形態では、メタボリック症候群を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物および抗糖尿病薬を投与するステップを含む。
【0175】
別の実施形態では、メタボリック症候群を治療または予防するための本発明の併用療法は、式(I)の化合物および抗肥満薬を投与するステップを含む。
【0176】
一実施形態では、心臓血管疾患を治療または予防するための本発明の併用療法は、1種または複数の式(I)の化合物と、心臓血管疾患を治療または予防するのに有用な追加の薬剤とを投与するステップを含む。
【0177】
そのような投与を必要とする患者に併用治療薬を投与する場合、組み合わせた治療薬、またはその治療薬を含む1種または複数の薬学的組成物は、例えば連続的に、並行して、一緒に、および同時になど、任意の順序で投与してもよい。そのような併用療法での様々な活性剤の量は、異なる量(異なる投薬量)でも同じ量(同じ投薬量)であってもよい。
【0178】
一実施形態では、1種または複数の式Iの化合物は、追加の(1種または複数の)治療薬がその予防的または治療効果を発揮する間に投与され、またはその逆も同様である。
【0179】
別の実施形態では、1種または複数の式Iの化合物と追加の(1種または複数の)治療薬とは、そのような薬剤が状態を治療するための単独療法として使用されるときに一般に用いられる用量で投与される。
【0180】
別の実施形態では、1種または複数の式Iの化合物および追加の(1種または複数の)治療薬は、そのような薬剤が状態を治療するための単独療法として使用されるときに一般に用いられる用量よりも少ない用量で投与される。
【0181】
さらに別の実施形態では、1種または複数の式Iの化合物および追加の(1種または複数の)治療薬は、相乗的に作用し、そのような薬剤が状態を治療するための単独療法で使用されるときに一般に用いられる用量よりも少ない用量で投与される。
【0182】
一実施形態では、1種または複数の式Iの化合物および追加の(1種または複数の)治療薬は、同じ組成物中に存在する。一実施形態では、この組成物は、経口投与に適している。別の実施形態では、この組成物は、静脈内投与に適している。
【0183】
1種または複数の式Iの化合物および追加の(1種または複数の)治療薬は、相加的にまたは相乗的に作用することができる。相乗的な組合せは、1種または複数の薬剤のより少ない投薬量の使用を可能にし、かつ/または併用療法での1種または複数の薬剤の投与頻度を少なくすることが可能になる。1種または複数の薬剤の、より少ない投薬量またはより少ない投与頻度は、この治療薬の効力を低下させることなく、この治療薬の毒性を低下させることができる。
【0184】
一実施形態では、1種または複数の式Iの化合物および追加の(1種または複数の)薬剤の投与は、これら薬剤に対するある状態の耐性を阻害することができる。
【0185】
一実施形態では、患者の糖尿病または糖尿病の合併症を治療する場合、追加の治療薬は、式Iの化合物ではない抗糖尿病薬である。別の実施形態では、追加の薬剤は、式Iの化合物の任意の潜在的な副作用を低減させるのに有用な薬剤である。そのような潜在的な副作用には、限定するものではないが吐き気、嘔吐、頭痛、熱、倦怠感、筋肉痛、下痢、全身の痛み、および注射部位の痛みが含まれる。
【0186】
本発明の化合物の薬理学的性質は、いくつかの薬理学的アッセイによって確認してもよい。後述の例示的な薬理学的アッセイは、本発明による化合物およびその塩を用いて実施した。
【0187】
本発明は、少なくとも1種の式Iの化合物、または前記化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグと、少なくとも1種の薬学的に受容可能な担体とを含む、薬学的組成物も対象とする。
【0188】
「薬学的組成物」という用語は、例えば本発明の化合物および本明細書に記述される追加の薬剤のリストから選択される追加の薬剤など、複数(例えば2種)の薬学的に活性な薬剤と、任意の薬学的に不活性な賦形剤とからなる、バルク組成物および個々の投薬単位の両方も包含するものである。バルク組成物およびそれぞれ個々の投薬単位は、固定量の、前述の「複数の薬学的に活性な薬剤」を含有することができる。バルク組成物は、個々の投薬単位にまだ形成されていない材料である。例示的な投薬単位は、錠剤や丸薬などの経口投薬単位である。同様に、本明細書に記述されている、本発明の薬学的組成物を投与することによって患者を治療する方法は、前述のバルク組成物および個々の投薬単位の投与も包含するものである。
【0189】
本発明により記述される化合物から薬学的組成物を調製する場合、不活性な、薬学的に受容可能な担体は、固体または液体にすることができる。固形調製物には、粉末、錠剤、分散性顆粒、カプセル、カシェ剤、および坐薬が含まれる。粉末および錠剤は、約5から約95%の活性成分からなるものでもよい。適切な固体担体は当技術分野で知られており、例えば、炭酸マグネシウム、マグネシウムステート、タルク、糖、またはラクトースである。錠剤、粉末、カシェ剤、およびカプセルは、経口投与に適した固体剤形として使用することができる。薬学的に受容可能な担体、および様々な組成物の製造方法の例は、A. Gennaro(編)、Remington’s Pharmaceutical Sciences、18版(1990年)、Mack Publishing Co.、Easton、Pennsylvaniaに見出すことができる。
【0190】
液体形態の調製物には、溶液、懸濁液、およびエマルジョンが含まれる。例として、非経口注入または甘味料の添加のための水または水−プロピレングリコール溶液と、経口溶液、懸濁液、およびエマルジョン用乳白剤を挙げることができる。液体形態の調製物は、鼻内投与であってもよい。
【0191】
吸入に適したエアロゾル調製物は、溶液および粉末形態の固形分を含んでもよく、これらを、不活性圧縮ガス、例えば窒素などの、薬学的に受容可能な担体と組み合わせてもよい。
【0192】
使用のすぐ前に、経口または非経口投与用の液体形態の調製物に変換されることが意図される、固形調製物も含まれる。そのような液体形態には、溶液、懸濁液およびエマルジョンが含まれる。
【0193】
本発明の化合物は、経皮的に送達可能であってもよい。経皮組成物は、クリーム、ローション、エアロゾル、および/またはエマルジョンの形をとることができ、この目的のため当技術分野で従来からなされているように、マトリックスまたはリザーバタイプの経皮パッチに含めることができる。
【0194】
本発明の組成物は、皮下から送達してもよい。
【0195】
好ましくは、化合物は経口投与される。
【0196】
好ましくは、薬学的調製物は、単位剤形である。そのような形では、調製物は、適切な量の、例えば所望の目的を達成するのに有効な量の活性成分を含有する、適切なサイズにされた単位用量に細分される。
【0197】
調製物の単位用量中の活性化合物の量は、特定の用途に応じて、様々に変えてもよく、約1mgから約100mg、好ましくは約1mgから約50mg、より好ましくは約1mgから約25mgに調節することができる。
【0198】
用いられる実際の投薬量は、患者の要件および治療がなされる状態の重症度に応じて変えてもよい。特定の状況に関する適正な投薬計画の決定は、当業者の範囲内である。便宜上、1日当たりの全投薬量を分割して、必要に応じて1日の間に少量ずつ投与してもよい。
【0199】
本発明の化合物および/または薬学的に受容可能なその塩の投与の量および頻度は、患者の年齢、状態、およびサイズ、ならびに治療がなされる症状の重症度などの因子を考慮しながら、主治医の判断に応じて調節されることになる。経口投与のための、典型的な推奨される1日投薬計画は、約1mg/日から約500mg/日、好ましくは1mg/日から200mg/日に及ぶ量を、2から4回に分けて投与することができる。
【0200】
本発明の別の態様は、治療有効量の、少なくとも1種の式Iの化合物、または前記化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグと、薬学的に受容可能な担体、ビヒクル、または希釈剤とを含むキットである。
【0201】
本発明のさらに別の態様は、ある量の少なくとも1種の式Iの化合物、または前記化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグと、ある量の少なくとも1種の上述の治療薬とを含むキットであり、これらの量の2種以上の成分は、所望の治療効果をもたらすものである。
【0202】
本明細書に開示される本発明は、開示の範囲を限定すると解釈すべきではない以下の調製物および実施例によって具体化される。代替のメカニズム的経路および類似構造は、当業者に明らかにされよう。
【0203】
NMRデータが示される場合、Hスペクトルは、Variant VXR−200(200MHz、H)、Varian Gemini−300(300MHZ)、Varian Mercury VX−400(400MHz)、またはBruker−Biospin AV−500(500MHz)で得られ、単位をppmとして、括弧付きで示されるプロトン数および多重度と共に報告した。LC/MSデータが示される場合、分析は、Applied Biosystems API−100質量分光計およびC18カラム、10〜95%CHCN−HO(0.05%TFA)勾配を使用して行った。観察された親イオンを示す。
【0204】
以下の溶媒および試薬は、それらの略称を括弧内に示してもよい。
【0205】
Me=メチル
Et=エチル
Pr=プロピル
Bu=ブチル
Ph=フェニル
Ac=アセチル
μl=マイクロリットル
AcOEtまたはEtOAc=酢酸エチル
AcOHまたはHOAc=酢酸
ACN=アセトニトリル
atm=気圧
BocまたはBOC=tert−ブトキシカルボニル
DCE=ジクロロエタン
DCMまたはCHCl=ジクロロメタン
DIPEA=ジイソプロピルエチルアミン
DMAP=4−ジメチルアミノピリジン
DMF=ジメチルホルムアミド
DMS=ジメチルスルフィド
DMSO=ジメチルスルホキシド
EDCl=1−(3−ジメチルアミノプロピル)−3−エチルカルボジイミン
FmocまたはFMOC=9−フルオレニルメトキシカルボニル
g=グラム
h=時間
hal=ハロゲン
HOBt=1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
LAH=リチウムアルミニウム水素化物
LCMS=液体クロマトグラフィー質量分析
min=分
mg=ミリグラム
mL=ミリリットル
mmol=ミリモル
MCPBA=3−クロロペルオキシ安息香酸
MeOH=メタノール
MS=質量分光分析
NMR=核磁気共鳴分光分析
RTまたはrt=室温(周囲、約25℃)
TEAまたはEtN=トリエチルアミン
TFA=トリフルオロ酢酸
THF=テトラヒドロフラン
TLC=薄層クロマトグラフィー
TMS=トリメチルシリル
Tr=トリフェニルメチル
【実施例】
【0206】
本発明の化合物は、調製スキームおよび以下の実施例で概略的に記述されるように調製することができる。
【0207】
調製スキーム
【0208】
【化11】

ポリスチレンDIEA樹脂(47mg、0.045mmol)を、40ウェルのディープウェルポリプロピレンマイクロタイタープレートに添加し、その後、1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ−[3.2.1]オクタンX(8.0mg、0.05mmol)のMeCN/THF(2:1)ストック液(1mL)を添加した。次いで個々の塩化スルホニル(R1〜45SOCl)(0.210mL、0.10mmol)それぞれの0.5Mストック液をウェルに添加し、次いでこれを密封し、25℃で20時間振盪させた。溶液を、ポリプロピレンフリットに通して、ポリスチレンイソシアネート樹脂(103mg、3当量、1.52mmol/g)およびポリスチレントリサミン樹脂(74mg、6当量、4.23mmol/g)が入っている第2のマイクロタイタープレートに濾過した。上部プレートをMeCN(0.5mL)で洗浄した後、このプレートを除去し、底部マイクロタイタープレートを密封し、25℃で16時間振盪させた。次いで溶液を、ポリプロピレンフリットに通して96ウェル収集プレート内に濾過した。次いで上部プレートのウェルを、MeCN(2×0.5mL)で洗浄し、このプレートを除去した。次いで収集プレート内に得られた溶液をバイアルに移し、溶媒を、SpeedVacを介して真空除去することにより、スルホンアミドが得られた。
【0209】
調製スキームを使用して、本発明の化合物を調製することができる。
【0210】
化合物番号1
【0211】
【化12】

1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ−[3.2.1]オクタン(0.06mL、0.33mmol)をCHCl(3.3mL)に溶かした溶液に、ジイソプロピルエチルアミン(0.17mL、0.99mmol)を添加し、その後、塩化スルホニル(0.49mmol)を添加した。反応混合物を、窒素中で21時間、RTで攪拌し、その後、1N HClでクエンチし、CHClで抽出した。有機物をMgSO上で乾燥し、濾過し、濃縮することにより、粗製材料が得られた。PTLC(15%EtOAc/ヘキサン)による精製で、所望のスルホンアミド化合物番号1(115mg、100%)が得られた。
【0212】
化合物番号2、3、47、48、51〜67、76〜81、およびN−(4−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)フェニル)アセトアミド、TRIPOSから購入した化合物を、市販の塩化スルホニルを使用して、化合物番号1の合成で記述したものと同様の手法で調製した。収率は、40から100%に及んだ。
【0213】
化合物番号23の分離
【0214】
【化13】

化合物23を、化合物番号1と同じ手法で調製した。
【0215】
化合物番号23約90mgを、5%IPA/ヘキサン(1.2mL)に溶解し、chiralpak AS分取HPLCカラム(5cm×50cm)に注入し、5%IPA/ヘキサンで、100mL/分で溶出した。254nmで検出した。化合物番号54(異性体1、保持時間=30.1分)45mgと、異性体1および2の混合物45mgが得られた。混合物(45mg)を25%IPA/ヘキサンに溶解し、chiralpak AS分取カラムに再び注入し、3%IPA/ヘキサンで、50mL/分で溶出した。化合物番号55(異性体2、保持時間=約67分)20.5mgが得られた。
【0216】
化合物番号16の分離
【0217】
【化14】

化合物番号16を、化合物番号1と同じ手法で調製した。
【0218】
化合物番号16約240mgを、5%IPA/ヘキサン(1.2mL)に溶解し、chiralpak AS分取HPLCカラム(5cm×50cm)に注入し、15%IPA/ヘキサンで、75mL/分で溶出した。254nmで検出した。化合物番号67(異性体1、保持時間=46.4分)81.3mgと、異性体1および2の混合物102mgが得られた。混合物(102mg)を25%IPA/ヘキサンに溶解し、chiralpak AS分取カラムに再び注入し、15%IPA/ヘキサンで、50mL/分で溶出した。化合物番号66(異性体2、保持時間=86.9分)44.0mgが得られた。
【0219】
化合物番号67の還元
【0220】
【化15】

化合物番号67(0.039g、0.12mmol)をMeOH(1.5mL)に溶かした溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(0.012g、0.32mmol)を、0℃の(氷浴)中で添加した。室温で1時間攪拌した後、反応を、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、CHClで抽出した。有機画分を合わせ、MgSO上で乾燥し、濾過し、濃縮することにより、粗製材料が得られた。PTLC(2%MeOH/CHCl)による精製で、所望の還元生成物中間体Aが、鏡像異性体の混合物(33mg、85%)として得られた。
【0221】
化合物番号67の分離
【0222】
【化16】

先の実施例の中間体A約18mgを、20%IPA/ヘキサン(1.0mL)に溶解し、chiralpak AD半分取HPLCカラムに注入し、10%IPA/ヘキサンで、10mL/分で溶出した。254nmで検出した。化合物番号73(異性体1、保持時間=19.1分)7.9mgおよび化合物番号72(異性体2、保持時間=22.6分)7.3mgが得られた。
【0223】
化合物番号66の分離
【0224】
【化17】

中間体Bは、中間体Aが化合物番号67から調製された場合と同じ手法で、化合物番号66から調製した。化合物番号71(異性体3、保持時間=18.8分、95%)および化合物番号70(異性体4、保持時間=22.8分、5%)は、化合物番号72および化合物番号73と同じ手法で調製した。
【0225】
化合物番号81の調製
【0226】
【化18】

化合物番号67(34mg、0.10mmol)をTHF(2mL)に溶かした溶液に、臭化メチルマグネシウム(エーテル中3M、0.18mL、0.40mmol)を添加した。反応は、室温で1.5時間攪拌し、その後、飽和塩化アンモニウム溶液でクエンチし、CHClで抽出した。有機画分を乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮することにより、粗製材料が得られた。分取TLC(25%EtOAc/ヘキサン)による精製の結果、所望の化合物である化合物番号81(20.9mg、60%)が得られた。
【0227】
化合物番号80は、化合物番号66からの化合物番号81と同じ手法で調製した。
【0228】
化合物番号79の調製
【0229】
【化19】

NaH(6mg、0.25mmol)を、化合物番号81(18.2mg、0.050mmol)をDMF(1mL)に溶かした溶液に、0℃で添加した。15分後、ヨードメタン(0.01mL、0.10mmol)を添加し、その反応を室温に温めた。1.75時間後、反応を水でクエンチし、EtOAcで抽出した。合わせた有機物を水で洗浄し、MgSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮することによって、粗製材料が得られた。PTLC(20%EtOAc/ヘキサン)による精製で、化合物番号79(9.0mg、48%)が得られた。
【0230】
化合物番号78を、化合物番号80からの化合物番号79と同様の手法で調製した。
【0231】
【化20】

in vitro 11β−HSD1活性アッセイ
11β−HSD1膜の調製
N末端mycタグを有するヒト11β−HSD1を、製造業者の取扱指示書に従いバキュロウイルスBac−to−Bac発現システム(Invitrogen)を使用して、Sf9細胞で発現させた。細胞を、感染から3日後に収集し、PBSで洗浄し、その後凍結させた。膜を作製するために、細胞を、緩衝液A(20mM Tris−HCl、pH7.4、100mM NaCl、2mM EDTA、2mM EGTA、およびComplete(商標)プロテアーゼ阻害薬錠剤(Roche Molecular Biochemicals))に再懸濁し、900psiの窒素ボンベ中で溶解した。細胞溶解産物を、600gで10分間遠心分離して、核および大きな細胞残屑を除去した。上澄みを、100,000gで1時間遠心分離した。膜ペレットを緩衝液Aに再懸濁し、液体窒素中で急速冷凍し、使用まで−70℃で保存した。
【0232】
11β−HSD1活性の測定
11β−HSD1酵素活性を、20mM NaPO、pH7.5、0.1mM MgCl、3mM NADPH(毎日新たに調製した)、125nM H−コルチゾン(American Radiochemicals)、および0.5μgの膜を含有する50μlの反応内で測定した。反応を、室温で1時間インキュベートした後、20mM NaPO、pH7.5、30μM 18β−グリシルレチン酸、1μg/mlモノクローナル抗コルチゾル抗体(Biosource)、および2mg/ml抗マウス抗体でコーティングされたシンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズ(Amersham Bioscience)を含有する50μM緩衝液を添加することによって、停止させた。混合物を、激しく振盪させながら室温で2時間インキュベートし、TopCountシンチレーションカウンターで分析した。
【0233】
本発明による化合物は、このアッセイにおいて11β−HSD1に対する活性を示した。
【0234】
11β−HSD−1を阻害するためのin vivoスクリーニング
痩せたオスC57BI/6Nマウスに、デキサメタゾン(0.5mg/kg)および試験薬剤またはビヒクル(20%HPβCD(10ml/kg))の溶液を経口投与した。1時間後、コルチゾンを投与した(1mg/kg sc、ゴマ油に溶かしたもの)。コルチソンを投与してから1時間後、動物を安楽死させて血液を収集し、血漿コルチゾルレベルを市販のELISAで決定した。
【0235】
本発明による化合物は、このスクリーニングにおいて11β−HSD1を阻害した。
【0236】
表2は、本発明の代表的な化合物の11β−HSD−1活性を示す。この表およびそこに記載されている化合物は、いかなる方法によっても本発明を限定するものではなく、またそのように限定すると解釈すべきではない。
【0237】
【表2−1】

【0238】
【表2−2】

本発明について、前述の特定の実施形態に関連して述べてきたが、その多くの代替例、修正例、およびその他の変形例が、当業者に明らかにされよう。そのような代替例、修正例、および変形例のすべては、本発明の精神および範囲内にあるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式I:
【化21】

によって表される化合物、または該化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグであって、式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表し、
ただし、
〜Rがそれぞれメチルを表し、かつ
が、置換アルコキシカルボニル、置換アルキルカルボニルオキシ、置換スルホニルアミノ、置換カルボニルアミノ、または非置換もしくは置換アミノカルボニルによって置換されているフェニルを表している化合物は除き、
かつ下記の化合物、即ち
1,3,3−トリメチル−6−[(フェニルメチル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(3,4−ジフルオロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−アミノフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[[4−(5−フェニル−2−オキサゾリル)フェニル]スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2−メチル−5−tert−ブチルフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[[3−(4,7−ジヒドロ−1−メチル−7−オキソ−3−プロピル−1H−ピラゾロ[4,3−d]ピリミジン−5−イル)−4−エトキシフェニル]スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[[5−2,6−ジクロロ−4−(4,5−ジヒドロ−3,5−ジオキソ−1,2,4−トリアジン−2(3H)−イル)フェノキシ]−2−ヒドロキシフェニル]スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[[5−[2−[[2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル]アミノ]−4−ピリミジニル]−2−チエニル]スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−エトキシフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[[2−(トリフルオロメチル)フェニル]スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,3−ジクロロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
3−[(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3,2.1]オクト−6−イル)スルホニル]安息香酸;
3−[(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクト−6−イル)スルホニル]安息香酸メチルエステル;
1,3,3−トリメチル−6−[(3−ニトロフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
4−[(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクト−6−イル)スルホニル]安息香酸;
1,3,3−トリメチル−6−[(2,3,5,6−テトラメチルフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−[(2−ニトロフェニル)スルホニル]−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−アセチルフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,5−ジメチルフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(4−メトキシフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(5−ブロモ−2−エトキシフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,5−ジブロモフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,4−ジフルオロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(5−ブロモ−6−クロロ−3−ピリジニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−[(2,5−ジクロロフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
1,3,3−トリメチル−6−フェニルスルホニル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;
6−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)ベンゾ[d]オキサゾール−2(3H)−オン;
6−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)ベンゾ[cd]インドール−2(1H)−オン;
3−((1R,5S)−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)−1H−ピラゾロ[3,4−b]ピリジン;
2,2,2−トリフルオロ−1−(8−(1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン−6−イルスルホニル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−イル)エタノン;
6−[(4−tert−ブチルフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン;および
6−[(3−アミノフェニル)スルホニル]−1,3,3−トリメチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン
は除外する、
化合物、または該化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグ。
【請求項2】
が、フェニル、ナフチル、ベンジル、スチリリル、フラニル、チエニル、ピラゾリル、ピリジル、オキサゾリル、ベンゾチエニル、またはベンゾオキサジアゾリルを表し、そのそれぞれが、アルキル、ハロゲン、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルキルスルホニル、シアノ、ニトロ、アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、カルボキシル、アルコキシカルボニルアルキル、シクロアルキル、およびモルホリノからなる群から選択される1個または複数の置換基によって任意選択で置換されており、
〜Rが、それぞれアルキルを表す、
請求項1に記載の化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグ。
【請求項3】
下式:
【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

からなる群から選択される化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグ。
【請求項4】
少なくとも1種の請求項1に記載の化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグと、少なくとも1種の薬学的に受容可能な担体、補助薬、またはビヒクルとを含む薬学的組成物。
【請求項5】
少なくとも1種の請求項3に記載の化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグと、少なくとも1種の薬学的に受容可能な担体、補助薬、またはビヒクルとを含む薬学的組成物。
【請求項6】
1種または複数の追加の治療薬をさらに含む、請求項4に記載の薬学的組成物。
【請求項7】
1種または複数の追加の治療薬をさらに含む、請求項5に記載の薬学的組成物。
【請求項8】
前記追加の治療薬が、抗肥満薬、抗糖尿病薬、メタボリック症候群を治療するのに有用な薬剤、心臓血管疾患を治療するのに有用な薬剤、コレステロール生合成阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、胆汁酸捕捉薬、プロブコール誘導体、IBAT阻害薬、ニコチン酸受容体(NAR)作動薬、ACAT阻害薬、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害薬、低密度リポタンパク質(LDL)活性剤、魚油、水溶性繊維、植物ステロール、植物スタノール、および植物スタノールの脂肪酸エステルからなる群から選択される1種または複数のメンバーである、請求項6に記載の薬学的組成物。
【請求項9】
前記追加の治療薬が、抗肥満薬、抗糖尿病薬、メタボリック症候群を治療するのに有用な薬剤、心臓血管疾患を治療するのに有用な薬剤、コレステロール生合成阻害薬、コレステロール吸収阻害薬、胆汁酸捕捉薬、プロブコール誘導体、IBAT阻害薬、ニコチン酸受容体(NAR)作動薬、ACAT阻害薬、コレステリルエステル転送タンパク質(CETP)阻害薬、低密度リポタンパク質(LDL)活性剤、魚油、水溶性繊維、植物ステロール、植物スタノール、および植物スタノールの脂肪酸エステルからなる群から選択される、請求項7に記載の薬学的組成物。
【請求項10】
細胞で11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型を阻害する方法であって、該細胞を、有効量の少なくとも1種の式I:
【化31】

の化合物、または前記化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグと接触させるステップを含む方法であって、式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表す、
方法。
【請求項11】
治療有効量の、少なくとも1種の式I:
【化32】

の化合物、または該化合物の、薬学的に受容可能な塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグを、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の発現に関連した1つまたは複数の状態の治療を必要とする患者に投与するステップを含む、前記状態を治療するための方法であって、式中、
は、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アリールアルケニル、ヘテロアリール、またはヘテロアリールアルキルを表し、
〜Rは、独立して、アルキルを表す、
方法。
【請求項12】
前記状態が、メタボリック症候群、肥満、肥満関連障害、高血圧、脂質障害、II型糖尿病、インスリン耐性、および膵炎からなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記状態が、肥満または肥満関連障害である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記状態が、II型糖尿病である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
治療有効量の、少なくとも1種の、下式:
【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

からなる群から選択される化合物、または薬学的に受容可能なその塩、溶媒和物、エステル、もしくはプロドラッグを、11β−ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼI型の発現に関連した1つまたは複数の状態の治療を必要とする患者に投与するステップを含む、前記状態を治療するための方法。
【請求項16】
前記状態が、メタボリック症候群、肥満、肥満関連障害、高血圧、アテローム性動脈硬化症、脂質障害、II型糖尿病、インスリン耐性、および膵炎からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記状態が、肥満または肥満関連障害である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記状態が、II型糖尿病である、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記状態が、アテローム性動脈硬化症である、請求項16に記載の方法。

【公表番号】特表2010−536750(P2010−536750A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−521002(P2010−521002)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/009609
【国際公開番号】WO2009/023181
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(596129215)シェーリング コーポレイション (785)
【氏名又は名称原語表記】Schering Corporation
【Fターム(参考)】