説明

1H−テトラゾール基を有する成分を含む画像形成性要素

射線感受性組成物および画像形成性要素は画像形成性層中にポリマーまたは非ポリマー成分を含み、当該成分は1H−テトラゾール基を含む。非ポリマー成分は、ラジカル重合性化合物であることができる。ポリマー成分は、主鎖から延びている1H−テトラゾール基を有することができる。ネガ型またはポジ型画像形成性要素におけるかかる化合物の使用は、例えば改善された耐薬品性およびランレングスを示す平版印刷版などの画像形成され現像された要素を提供するための高いフォトスピードと改善された現像性を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輻射線感受性組成物、および平版印刷版を作製するのに使用できるネガ型およびポジ型の画像形成性要素の両方を包含する画像形成性要素に関する。当該画像形成性要素は、ペンダント1H−テトラゾール基を有する特定の高分子および非高分子成分を含む。本発明は、画像形成方法およびそれらの画像形成性要素を画像形成および処理する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
輻射線感受性組成物は、平版印刷版前駆体などを包含する画像形成可能な材料の製造に日常的に使用されている。かかる組成物は、一般的に、輻射線吸収性の化合物または増感剤、バインダー、および場合によっては開始剤組成物および重合性成分を含み、これらはそれぞれ、物理的特性、画像形成性能および画像形成特性の様々な改善をもたらすべく研究の対象になってきた。
【0003】
印刷版前駆体の分野での最近の発展は、レーザーまたはレーザーダイオードにより画像形成できる輻射線感受性組成物の使用に関係する。レーザー露光は、レーザーをコンピューターにより直接制御できるため、中間情報キャリヤ(または「マスク」)としてコンベンショナルなハロゲン化銀グラフィックアーツフィルムを必要としない。市販のイメージセッターにおいて使用されている高性能レーザーまたはレーザーダイオードは一般的に電磁スペクトルの特定の領域の輻射線を放出するため、輻射線感受性組成物は、特定の画像形成レーザーに対して適切な領域において感受性であることが求められる。
【0004】
輻射線感受性組成物および輻射線感受性組成物が組み込まれた画像形成性要素は、一般的に、ネガ型であるかポジ型である。ネガ型印刷版の場合、輻射線感受性組成物の露光された領域は硬化し、非露光領域は現像中に洗い落とされる。ポジ型印刷版の場合、露光された領域は現像液中に溶解し、そして非露光領域は画像になる。
【0005】
かかる画像形成性要素の様々な成分を記載した文献は数百あり、ここで言及するには多すぎる。特許文献は、ここ数十年間産業界が直面した様々な問題に関係する様々な教示があり、特に「コンピューター−トゥー−プレート」(CTP)画像形成性要素および装置が1990年代から重要な位置を占めるようになった。そのため、高い画像形成感度(高フォトスピード)、様々な現像液(一般的にアルカリ性pH)中で速い現像性、印刷室の化学薬品に対して高い耐分解性(「耐薬品性」)、耐刷性、貯蔵安定性、高画像安定性、低い環境への影響、および高いランレングスで、ポジ型およびネガ型の要素の両方を現像するための多大な努力がなされてきた。
【0006】
これらの問題のうちの幾つかは、様々な画像形成成分のためのマトリックスを提供するために画像形成性層において使用される独特のポリマーバインダーを作ることにより解決された。例えば、米国特許第4,511,645号明細書(Kiokeら)には、画像形成を安定化させるためにネガ型画像形成性要素における不飽和側鎖を有するポリマーバインダーの使用が記載されている。さらに、欧州特許出願公開第0 924 570号明細書(Fujimakiら)には、アルカリ性溶液への可溶性を高めるために側鎖にアミド基を有するポリマーバインダーを含む紫外線(UV)/可視光感受性の組成物および画像形成性要素が記載されている。
【0007】
国際公開第2004/074930号(Baumannら)には、UV感受性のネガ型画像形成性要素において、オキサゾール誘導体と組み合わせて、カルボン酸側鎖を有するポリマーバインダーを使用する異が記載されている。かかるポリマーバインダーは、例えば国際公開第2007/090550号(Strehmelら)に記載されているように、UV感受性のネガ型画像形成性要素において、ベンゾオキサゾール誘導体とともに使用される。
【0008】
国際公開第2004/035687号(Loccufierら)には、ポジ型またはネガ型画像形成性要素におけるフェノール系ポリマーバインダーの使用が記載されている。当該ポリマーバインダーは、画像形成性層の耐薬品性を高めるためにフェノール系反復単位に結合したチオ連結複素環式基を含む。当該複素環式基は、様々な硫黄、酸素または窒素含有複素環式基のうちのいずれであってもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第4,511,645号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0 924 570号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/074930号
【特許文献4】国際公開第2007/090550号
【特許文献5】国際公開第2004/035687号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の平版印刷技術における発展にもかかわらず、平版印刷版を提供するのに有用な画像形成性要素の耐薬品性、現像性、ランレングスおよびフォトスピードを改善することが依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基材を含み、当該基材上に画像形成性層を有し、当該画像形成性層が、1H−テトラゾール基を有する水不溶性でアルカリ性溶液に可溶性である成分を含む画像形成性要素を提供する。ただし、当該成分が、1H−テトラゾール基が結合しているフェノール系ポリマーである場合には、かかる結合はチオ連結基なしに提供される。
【0012】
例えば、これらの画像形成性要素の幾つかの実施態様は、1H−テトラゾール基を有する成分が非ポリマーのラジカル重合性化合物またはペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーであるか、あるいはこれらの両方のタイプの成分が存在するネガ型画像形成性要素である。
【0013】
幾つかの具体的な実施態様において、本発明の画像形成性要素は、画像形成性層が、
ラジカル重合性成分、
画像形成輻射線への露光によってフリーラジカル重合性基の重合を開始するのに十分なフリーラジカルを生成することのできる開始剤組成物、
輻射線吸収性化合物、および
主鎖を有し、画像形成輻射線への露光の前だけ画像形成性層が13.5未満のpHを有する現像液に可溶性であるのに十分な量のペンダント1H−テトラゾール基が主鎖に結合しているポリマー、
を含む、ネガ型画像形成性要素である。
【0014】
他の実施態様において、本発明の画像形成性要素は、主鎖と主鎖に結合したペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーを含む少なくとも1つの画像形成性層を含むポジ型画像形成性要素である。当該ポジ型画像形成性要素が内層と外層の両方を有する場合には、ペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーは、これらの層の一方または両方に存在することができる。
【0015】
これらの画像形成性要素のいずれの場合でも、基材は、1または2層以上の画像形成性層が配設される親水性表面を有するアルミニウム含有基材であることができ、画像形成され現像された要素は、適切な平版印刷版であることことができる。
【0016】
本発明は、
A)本発明の画像形成性要素を画像様露光して露光領域および非露光領域を生成させ、
B)露光後ベーキング工程あり又はなしに、画像様露光された要素を13.5以下のpHを有する水溶液により現像すること、
を含む方法も提供する。画像形成性要素がネガ型である場合には、主に非露光領域だけが現像により除去され、画像形成性要素がポジ型である場合には、主に露光領域だけが現像により除去される。
【0017】
本発明は、さらに、
ラジカル重合性成分、
画像形成輻射線への露光によってフリーラジカル重合性基の重合を開始するのに十分なフリーラジカルを生成することのできる開始剤組成物、
輻射線吸収性化合物、および
1H−テトラゾール基を有する成分、
を含み、上記の1H−テトラゾール基を有する成分が、
a)前記ラジカル重合性成分、
b)画像形成輻射線への露光の前に当該ポリマーが13.5以下のpHを有する現像液に可溶性であるのに十分な量のペンダント1H−テトラゾール基が主鎖に結合している水不溶性ポリマー、または
c)これらの両方、
であるネガ型輻射線感受性組成物を提供する。
【0018】
本発明によれば、改善された耐薬品性、現像性、ランレングスおよびフォトスピードを示す画像形成性要素が提供される。これらの画像形成性要素は、ポジ型またはネガ型であることができ、電磁スペクトルのUV、可視、近赤外または赤外領域における分光感度に合わせて設計される。
【0019】
これらの結果は、酸性基である1H−テトラゾール基を含み、アルカリ性溶液に可溶性であるポリマーまたは非ポリマー成分の存在により達成される。1H−テトラゾール基を有する非ポリマーおよびポリマー成分が両方とも本発明において使用できることが驚くべきことである。ほとんどの実施態様において、1H−テトラゾール基は、少量でまたはポリマーバインダーとして多量で使用できるポリマーの主鎖から延びている。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
文脈が特に示さない限り、本明細書において使用される場合に、「輻射線感受性組成物」、「画像形成性要素」、「平版印刷版前駆体」および「印刷版前駆体」という用語は、本発明の実施態様を指す。
【0021】
さらに、文脈が特に示さない限り、本明細書中に記載された種々の成分、例えば、ポリマーまたは非ポリマーの、「1H−テトラゾール基を有する成分」、「開始剤」、「共開始剤」、「フリーラジカル重合性成分」、「輻射線吸収性化合物」、及び類似の用語は、かかる成分の混合物も意味する。従って、単独での当該用語の使用は、単一の成分だけを必ずしも意味するものではない。
【0022】
さらに、特に断らない限り、百分率は、全乾燥質量での百分率、例えば画像形成性層または輻射線感受性組成物の全固形分を基準として質量%を意味する。特に断らない限り、百分率は、乾燥した画像形成性層、または輻射線感受性組成物の全固形分のいずれの場合でも同じである。
【0023】
ポリマーに関連するあらゆる用語の定義を明らかにするために、国際純正応用化学連合(International Union of Pure and Applied Chemistry)(「IUPAC」)によって発行された「Glossary of Basic Terms in Polymer Science」Pure Appl.Chem.68,2287−2311(1996)を参照されたい。しかし、本明細書中に明記した定義が支配的なものと見なされるべきである。
【0024】
「ポリマー」という用語は、オリゴマー、ホモポリマーおよびコポリマーを包含する高分子量及び低分子量ポリマーを意味し、本発明の場合には、少なくとも500の分子量を有するものが定義される。
【0025】
「コポリマー」という用語は、2種又は3種以上の異なるモノマーから誘導されたポリマーを意味する。
【0026】
「主鎖」という用語は、複数のペンダント基が結合したポリマー中の原子(炭素またはヘテロ原子)の鎖を意味する。このような主鎖の一例は、1種又は2種以上のエチレン系不飽和重合性モノマーの重合から得られた「全炭素(all carbon)」主鎖である。しかしながら、他の主鎖は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、この場合、ポリマーは、縮合反応又は何らかの他の手段によって形成される。
【0027】
1H−テトラゾール基を有する成分
画像形成性要素は、それぞれ1H−テトラゾール基を有する1または2種以上の水に不溶性でアルカリ溶液に可溶性である成分を含む少なくとも1つの画像形成性層(後述)を有する。アルカリ性溶液中では、下記式(1)に示されるように、テトラゾール基は1位の水素を失う。
【0028】
【化1】

【0029】
ここで、Xは非ポリマー分子の残りの部分またはポリマー主鎖に連結した連結基を表す。多くの実施態様(ただし全てではない)において、1H−テトラゾール基はその5位で窒素原子に結合されている(すなわち、Xはテトラゾール環に直接結合した窒素原子を含む)。
【0030】
1H−テトラゾール基を有する成分は、概して500未満の分子量を有するという意味で非ポリマーであることができる。1H−テトラゾール基を有する有用な非ポリマー成分は、エチレン不飽和重合性化合物、例えば、重合させることができるか、あるいは、他のコモノマーとともにコポリマーにすることのできるモノマーであることができる。かかる化合物にそれぞれは、フリーラジカルの存在下で重合させることができる1種または2種以上のフリーラジカル重合性基を含む。これらの重合性化合物は、複数のフリーラジカル重合性基および1または2つ以上の1H−テトラゾール基を有することができる。
【0031】
下記表Aは、酸性1H−テトラゾール基を有する非ポリマー化合物の例を含む。かかる非ポリマー化合物は、エチレン不飽和カルボン酸の酸ハロゲン化物(例えばメタクリル酸塩化物およびアクリル酸塩化物)またはエチレン不飽和カルボン酸の酸無水物(例えばアクリル酸無水物およびメタクリル酸無水物)による1H−テトラゾール−5−アミンのアシル化(A1)により調製できる。マレイン酸無水物のようなエチレン不飽和分子内酸無水物の場合には、アミノ基の付加後に、イミドへの縮合が可能である(A2)。同様なアミド類は、エチレン不飽和カルボン酸のアルキルエステル、例えばメチルメタクリレートもしくはメチルアクリレートのアミド化によって、あるいは、アクリロニトリルもしくはメタクリロニトリルのような不飽和カルボン酸のニトリルと1H−テトラゾール−5−アミンとの反応によって調製できる(A3)。さらに、かかる非ポリマー化合物は、例えば2−ハロゲノ−アルキレンアクリレート、2−ハロゲノ−アルキレンメタクリレート、またはクロロメチル化スチレンなどのエチレン不飽和化合物のアルキルハライドのアルキル化により調製できる(A4)。分子比に依存して、1または2つ以上の不飽和基を1H−テトラゾール−5−アミンに導入するすることができる。2官能性、3官能性または多官能性アクリレートへの1H−テトラゾール−5−アミンのマイケル付加により類似の化合物を調製でき、この場合、アクリレート基の幾つかだけが1H−テトラゾール−5−アミンのアミノ基に付加する(A)。アクリレートの官能性および1H−テトラゾール−5−アミンに対するアクリレートの比に依存して、より多くの不飽和基を有するまたはより多くの1H−テトラゾール基を有する反応生成物を調製することができる。マイケル付加の前駆体の例は、2、3、4、5または多官能性ポリオールのアクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレートおよびトリメチロールプロパントリアクリレートである。さらに、マイケル付加物は、1H−テトラゾール−5−アミンと2、3または多官能性ウレタン(メタ)アクリレート、例えば1モルのトリイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネートのビウレット)と3モルのヒドロキシエチルアクリレートとの反応生成物との反応により調製できる。別の類似の生成物は、エチレン不飽和基を有するエポキシ化合物、例えばグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、1モルの(メタ)アクリル酸のジアンビス−グリシジルエーテル付加物と、1H−テトラゾール−5−アミンとの反応により調製できる(A6)。さらに、1H−テトラゾール−5−アミンとイソシアネート含有エチレン不飽和基、イソシアナトエチルメタクリレート、アリルイソシアネートもしくはイソシアナトエチルアクリレート、2−,3−または4−イソシアナトスチレンとの反応により酸性1H−テトラゾール基を有する非ポリマー化合物を調製できる(A7)。エチレン不飽和基を有するカルボニル化合物は、1H−テトラゾール−5−アミンとの反応により1H−テトラゾール基を有するモノマー化合物を調製することにも使用できる(A8)。このタイプの反応の一例は2−(メタクリロイルオキシ)エチルアセトアセテートである。
【0032】
【表1】

【0033】
【表2】

【0034】
【表3】

【0035】
1H−テトラゾール基を有する非ポリマーの重合性成分は、下記のラジカル重合性成分の代わりにまたはラジカル重合性成分に加えて使用できる。かかる実施態様のほとんどで、1H−テトラゾール基を有する非ポリマーの重合性成分は、1H−テトラゾール基を含まない他のラジカル重合性成分と組み合わせて任意の適切なモル比で使用される。
【0036】
上記の非ポリマー成分は、画像形成性層中に、全乾燥質量を基準にして、一般的に少なくとも0.2質量%かつ90質量%以下、より典型的には1〜60質量%の量で存在することができる。
【0037】
本発明の多くの他の実施態様において、1H−テトラゾール基を有する成分は、主鎖に1H−テトラゾール基が結合しているオリゴマーまたはポリマーであり、主鎖に1H−テトラゾール基が結合していることで当該オリゴマーまたはポリマーは13.5以下のpHを有する現像液に可溶性となっている。かかるオリゴマーは一般的に少なくとも500かつ2,000以下の分子量を有し、ポリマーは一般的に最大500,000までのより大きな分子量を有する。より典型的には、本発明において有用なポリマーは、5,000〜100,000の分子量を有する。
【0038】
1H−テトラゾール基を有するポリマーの使用に依存して、1H−テトラゾール基を有するポリマーは、輻射線感受性組成物(または1または2層以上の画像形成性層)中に、全乾燥質量を基準にして少なくとも5%かつ95%以下の量で存在する。ポリマーが使用されるほとんどの実施態様において、ポリマーは、「ポリマーバインダー」として機能するのに十分な量で存在し、例えば、この量は全乾燥質量の少なくとも20%である。1H−テトラゾール基は、一般的に、上記ポリマー中に、当該ポリマー中に存在する全酸性基の少なくとも50モル%かつ100モル%以下を提供するのに十分な量で存在する。
【0039】
本発明において有用なポリマーは、一般的に、下記構造(I)によって表すこともできる。
【0040】
【化2】

【0041】
ここで、Aは1H−テトラゾール基を含む反復単位を表し、Bは1H−テトラゾール基を含まない反復単位を表し、xは3〜100モル%であり、yは0〜97モル%である。典型的には、xは3〜90モル%であり、yは10〜97モル%であり、Bは、例えば、1または2種以上のアリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、アルキルもしくはアリール基により置換されていてもよい(メタ)アクリルアミド、ポリエチレンオキシドまたはプロピレンオキシドの(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、スチレンもしくはスチレン誘導体、酢酸ビニル、ビニルカルバゾール、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、N−置換マレイミド、または開環マレイン酸無水物の半エステルから誘導された反復単位を表す。B反復単位を誘導することのできる他のモノマーを当業者が容易に分かるであろう。
【0042】
Aは1または2種以上のエチレン不飽和重合性モノマーから誘導された炭素−炭素主鎖を提供する反復単位を表す場合があり、1H−テトラゾール基は、−C(=O)−NR1−、−NR1−、−NR1−(C=O)−NR2−、−S−、−OCO(=O)−もしくは−CH=N−基またはこれらの組み合わせを含む連結基Lを通じて主鎖に結合していてもよい。特に有用な連結基としては、−C(=O)−NR1−および−NR1−(C=O)−NR2−が挙げられる。上記の連結基は、主鎖に直接連結しているか、あるいは連結鎖中に30個以下の原子を有する有機基を通じて結合していることができる。
【0043】
1H−テトラゾール基はポリマー中に様々な方法で導入できる。例えば、本発明において有用なポリマーは、化合物A1〜A8(上記表A参照)と、B反復単位を得ることについて先に記載したものなどのコモノマーおよび当業者が容易に分かるであろう他のものとの重合により調製できる。
【0044】
あるいは、1H−テトラゾール基は、1H−テトラゾール−5−アミン中のアミノ基のための反応性官能基をすでに有するポリマー中に導入することができる。かかる反応性ポリマーの例は、上記のような反応性イソシアナト基、(メタ)アクリレート基、エポキシ基、ニトリル基、ハロメチル基、ジカルボン酸の環状酸無水物、または反応性アルデヒドもしくはケトン基を有する。かかる反応性ポリマーの典型例は、イソシアナトエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、(メタ)アクリロニトリル、クロロメチル化スチレン、マレイン酸無水物、およびメチルビニルケトンから誘導されたものである。例えば、1H−テトラゾール−5−アミンと反応できる(メタ)アクリレート官能化ポリマーは、典型的には、ポリマー中に(メタ)アクリル官能基を導入すること(例えば−OH基と(メタ)アクリル酸クロライドとの反応により、またはβ−ハロゲノ置換プロピオン酸基を導入した後、脱ハロゲン化水素化により)により調製される。
【0045】
さらに、本発明において有用なポリマーは、ペンダント1H−テトラゾール基とペンダントのラジカル重合性反応性側基、例えば、(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基、または例えば米国特許第6,702,437号明細書(Fujimakiら)の第5欄および第6欄に記載されている他の反応性側基を有することもできる。幾つかの実施態様は、バインダーの混合物、すなわちペンダント1H−テトラゾール基を含む1種のポリマーバインダーと、例えば(メタ)アクリル基、アリル基、スチリル基または米国特許第’437号に記載されている側基などのラジカル反応性側基を有する別のポリマーバインダーとの混合物を含む。
【0046】
ネガ型の画像形成性組成物および要素
本発明の幾つかの実施態様では、輻射線感受性組成物は、
ラジカル重合性成分、
画像形成輻射線への露光によってフリーラジカル重合性基の重合を開始させるのに十分なフリーラジカルを生成することのできる開始剤組成物、
輻射線吸収性化合物、および
1H−テトラゾール基を有する成分を含み、1H−テトラゾール基を有する成分は、ラジカル重合性成分であるか、または先に定義したように主鎖に結合したペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーであることができ、あるいは、これらの両方のタイプの成分が存在する。
【0047】
ネガ型の輻射線感受性組成物は、適用されたコーティングが、好適な画像形成輻射線への露光により重合可能であることが必要である用途、特に露光領域の代わりにコーティングの未露光領域を除去することが望ましい用途であればいかなる用途を有するものであってもよい。輻射線感受性組成物は、集積回路用の印刷回路板、マイクロ光学デバイス、カラーフィルター、フォトマスク、および印刷された形態、例えば以下でより詳細に規定するネガ型平版印刷版前駆体などの画像形成性要素における画像形成性層を作製するために使用できる。
【0048】
輻射線感受性組成物(および画像形成性層)は、1または2種以上のフリーラジカル重合性成分を含み、これらの成分の各々はフリーラジカル開始剤を使用して重合することのできる1又は2つ以上のフリーラジカル重合性基を含む。例えば、かかるフリーラジカル重合性成分は、1または2つ以上の付加重合性エチレン系不飽和基、架橋性エチレン系不飽和基、開環重合性基、アジド基、アリールジアゾニウム塩基、アリールジアゾスルホネート基、またはこれらの組み合わせを有する1または2種以上のフリーラジカル重合性モノマーまたはオリゴマーを含むことができる。同様に、かかるフリーラジカル重合性基を有する架橋性ポリマーも使用できる。
【0049】
重合又は架橋することができる好適なエチレン系不飽和型化合物としては、アルコールの不飽和エステル、例えばポリオールのアクリレートおよびメタクリル酸エステルなどの重合性基のうちの1又は2つ以上を有するエチレン系不飽和重合性モノマーを含む。オリゴマー及び/又はプレポリマー、例えばウレタンアクリレートおよびウレタンメタクリレート、エポキシドアクリレートおよびエポキシドメタクリレート、ポリエステルアクリレートおよびポリエステルメタクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびポリエーテルメタクリレート、及び不飽和ポリエステル樹脂などを使用することもできる。実施態様によっては、フリーラジカル重合性成分はカルボキシ基を含む。
【0050】
有用なフリーラジカル重合性成分は、複数のアクリレート及びメタクリレート基並びにそれらの組み合わせを含む付加重合性エチレン系不飽和基を含むフリーラジカル重合性モノマー又はオリゴマー、あるいはフリーラジカル架橋性ポリマーを含む。フリーラジカル重合性化合物としては、複数の重合性基を有する尿素−ウレタン−(メタ)アクリレート又はウレタン−(メタ)アクリレートから誘導されたものが挙げられる。例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートに基づくDESMODUR(登録商標)N100脂肪族ポリイソシアネート樹脂(Bayer Corp.、コネチカット州ミルフォード)と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとを反応させることにより、フリーラジカル重合性成分を調製することができる。有用なフリーラジカル重合性化合物としては、KOWA Americanから入手可能なNK Ester A−DPH(ジペンタエリトリトールヘキサクリレート)、並びにSartomer Company,Inc.から入手可能なSartomer 399(ジペンタエリトリトールペンタアクリレート)、Sartomer 355(ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート)、Sartomer 295(ペンタエリトリトールテトラアクリレート)、及びSartomer 415[エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート]が挙げられる。
【0051】
フリーラジカル重合性成分は、1H−テトラゾール基を有し、フリーラジカルの存在下で重合性でもある上記の非高分子成分のうちの1種または2種以上であってもよい。かかる成分は、一般的に、モノ−、ジ−、またはトリアクリレートであり、あるいは、それらは1H−テトラゾール基が結合しているスチリル化合物である。上記のように、輻射線感受性素子得物中に複数種のフリーラジカル重合性成分が存在していてもよい。
【0052】
多くの他のフリーラジカル重合性成分が当業者に知られており、Photoreactive Polymers: The Science and Technology of Resists,A Reiser,Wiley,New York,1989、pp.102−177の論文、Radiation Curing: Science and Technology,S.P.Pappas編、Plenum,New York,1992のpp.399−440のB.M.Monroeによる論文、及びImaging Processes and Material,J.M.Sturge他編、Van Nostrand Reinhold,New York,1989のpp.226−262のA.B.Cohen及びP.Walkerによる論文「Polymer Imaging」を含む多くの文献に記載されている。例えば、有用なフリーラジカル重合性成分は、欧州特許出願公開第1,182,033号明細書(上記)に段落[0170]から記載されており、米国特許第6,309,792号明細書(Hauck他)、米国特許第6,596,603号明細書(Furukawa)および米国特許第6,893,797号明細書(Munnelly他)にも記載されている。フリーラジカル重合性成分は、米国特許第7,153,632号明細書(Saraiyaら)に記載されているようなカルボキシ基を含んでもよい。
【0053】
上記の1または2種以上の遊離基重合性成分(モノマー、オリゴマーまたはポリマー)は、画像形成性層の総乾燥質量を基準として、少なくとも10質量%から70質量%以下、典型的には20〜50質量%の量で画像形成性層中に存在することができる。全ポリマーバインダー(下記)に対するフリーラジカル重合性成分の質量比は、例えば、ラジカル重合性成分と高分子バインダー(下で説明する)との重量比は、一般的に5:95〜95:5、典型的には10:90〜90:10、または30:70〜70:30である。
【0054】
輻射線感受性組成物(および画像形成性層)は、画像形成輻射線に当該組成物を露光することにより様々なフリーラジカル重合性成分の全ての重合を開始するのに十分なフリーラジカルを生成することができる開始剤組成物も含む。この開始剤組成物は、少なくとも150nmから1400nmのスペクトル範囲に対応する画像形成輻射線に対して一般的に応答性である。望ましい画像形成波長に適切な開始剤組成物が使用される。より典型的には、開始剤組成物は、150〜475nmの波長のUV線(または「紫色光」)に対して、または少なくとも700nm〜1200nmの赤外線に対して感受性である。
【0055】
一般的に、好適な開始剤組成物は、アミン類(例えばアルカノールアミン類など)、チオール化合物、アニリノ二酢酸もしくはそれらの誘導体、N−フェニルグリシンおよびその誘導体、N,N−ジアルキルアミノ安息香酸エステル、N−アリールグリシン類およびそれらの誘導体(例えばN−フェニルグリシンなど)、芳香族スルホニルハライド類、トリハロゲノメチルスルホン類、イミド類(例えばN−ベンゾイルオキシフタルイミドなど)、ジアゾスルホネート類、9,10−ジヒドロアントラセン誘導体;少なくとも2個のカルボキシ基を有し、それらカルボキシ基のうちの少なくとも1つがアリール部分の窒素、酸素または硫黄原子に結合しているN−アリール、S−アリールまたはO−アリールポリカルボン酸(例えば、Westらの米国特許第5,629,354号に記載されているアニリン二酢酸およびその誘導体並びに他の「共開始剤」など);オキシムエーテル類およびオキシムエステル類(例えばベンゾインから誘導されたものなど);α−ヒドロキシまたはα−アミノアセトフェノン類;アルキルトリアリールボレート類、トリハロゲノメチルアリールスルホン類、ベンゾインエーテル類およびベンゾインエステル類、過酸化物(例えば過酸化ベンゾイルなど)、ヒドロペルオキシド類(例えばクミルヒドロペルオキシドなど)、アゾ化合物(例えばアゾビス−イソブチロニトリル)、例えば米国特許第4,565,769号(Dueberら)に開示されている2,4,5−トリアリールイミダゾリル二量体(ヘキサアリールビスイミダゾール類または「HABI類」としても知られている);米国特許第6,562,543号(Ogataら)に記載されているものなどのボレート類および有機ホウ酸塩、並びにオニウム塩(例えばアンモニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩およびN−アルコキシピリジニウム塩など)などの化合物(これらに限定されない)を含む。「紫」感受性組成物の場合、開始剤は、ヘキサアリールビイミダゾール類、オキシムエステル類、またはトリハロメチル置換トリアジン類である。
【0056】
有用な赤外線(IR)感受性の輻射線感受性組成物はオニウム塩を含み、オニウム塩塩としては、スルホニウム、オキシスルホキソニウム、オキシスルホニウム、スルホキソニウム、アンモニウム、セレノニウム、アルソニウム、ホスホニウム、ジアゾニウムまたはハロニウム塩などのオニウム塩が挙げられ、これらに限定されない。代表例などの有用なオニウム塩についてのさらなる詳細は、米国特許出願公開2002/0068241(Oohashiら)、国際公開WO2004/101280(Munnellyら)およビ米国特許第5,086,086号(Brown−Wensleyら)、第5,965,319号(Kobayashi)および第6,051,366号(Baumannら)に記載されている。例えば、好適なホスホニウム塩は、4つの有機置換基を有する正電荷を帯びた超原子価リン原子を含む。トリフェニルスルホニウム塩などの好適なスルホニウム塩は、3つの有機置換基を有する正電荷を帯びた超原子価硫黄を含む。好適なジアゾニウム塩は、正電荷を帯びたアゾ基(すなわち−N=N+ )を有する。好適なアンモニウム塩は、4つの有機置換基を有する置換4級アンモニウム塩、およびN−アルコキシピリジニウム塩などの4級窒素複素環などの正電荷を帯びた窒素原子を含む。好適なハロニウム塩は、2つの有機置換基を有する正電荷を帯びた超原子価ハロゲン原子を含む。オニウム塩は、一般的に、ハライド、ヘキサフルオロホスフェート、チオスルフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロボレート、スルホネート、ヒドロキシド、パークロレート、n−ブチルトリフェニルボレート、テトラフェニルボレート、および当業者に明らかな他のものなどの負電荷を帯びた好適な数の対イオンを含む。
【0057】
ハロニウム塩、例えばヨードニウム塩は有用である。一実施形態において、オニウム塩は、正電荷を帯びたヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−部分、および好適な負電荷を帯びた対イオンを有する。上記ヨードニウム開始剤に対する典型的なアニオンは、クロリド、ブロミド、ニトレート、パークロレート、ヘキサフルオロホスフェート、テトラフルオロボレート、テトラフェニルボレート、およびトリフェニルブチルボレートアニオンである。かかるヨードニウム塩の代表例は、Irgacure(登録商標)250としてCiba Specialty Chemicals(ニューヨーク州タリータウン)から入手可能であり、Irgacure(登録商標)250は、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロホスフェートであり、75%プロピレンカーボネート溶液で供給されている。
【0058】
有用なホウ素成分としては、上記の米国特許第6,569,603号に記載されているものなどの有機ホウ素アニオン(例えばアルカリ金属イオン、オニウム、またはカチオン増感色素などの好適なカチオンと対になった)を含む有機ホウ素塩が挙げられる。有用なオニウムカチオンとしては、アンモニウム、スルホニウム、ホスホニウム、ヨードにウムおよびジアゾニウムカチオンが挙げられるが、これらに限定されない。これらは、単独で、または様々な共開始剤、例えば、引用により本明細書に援用する米国特許第6,884,568号(Timpeら)に記載されているような、メルカプトトリアゾール類、メルカプトベンゾイミダゾール類、メルカプトベンゾオキサゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンゾオキサジアゾール類、メルカプトテトラゾール類などの複素環式メルカプト化合物などと組み合わせて、輻射線感受性組成物の総固形分を基準にして少なくとも0.5質量%、かつ、10質量%以下の量で使用できる。これらの化合物の組み合わせの中で、メルカプトトリアゾール類が好ましい。有用なメルカプトトリアゾール類としては、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−3−メルカプト1,2,4−トリアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、および5−(p−アミノフェニル)−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0059】
他の有用な開始剤組成物は、例えば米国特許第6,936,384号(Munnellyら)に記載されているような1種または2種以上のアジン化合物を含む。これらの化合物は、炭素及び窒素原子から形成された6員環を含む有機複素環式化合物である。アジン化合物としては、複素環基、例えばピリジン、ジアジンおよびトリアジン基を含むもの、並びに炭素環式芳香族環などの1または2個以上の芳香環に縮合したピリジン、ジアジンまたはトリアジン置換基を有する多環式化合物が挙げられる。例えば、アジン化合物としては、例えば、キノリン、イソキノリン、ベンゾジアジンまたはナフトジアジン置換基を有する化合物が挙げられる。単環式および多環式アジン化合物の両方が有用である。
【0060】
有用なアジン化合物は、例えば米国特許第6,309,792号(Hauckら)、第6,010,824号(Komanoら)、第5,885,746号(Iwaiら)、第5,496,903号(Watanabeら)および第5,219,709号(Nagasakaら)に記載されているものなどの、3個の炭素原子と3個の窒素原子を含む6員環を含むトリアジン化合物である。
【0061】
アジニウム形態のアジン化合物も所望により使用できる。アジニウム化合物では、アジン環中の窒素原子の第4級化置換基は遊離基として遊離することができる。アジニウム核の環窒素原子を第4級化しているアルコキシ置換基は、様々なアルコキシ置換基の中から選択できる。
【0062】
ハロメチル置換トリアジン、例えばトリハロメチルトリアジン類などが開始剤組成物において特に有用である。このタイプの代表的な化合物としては、ポリハロメチル置換トリアジン類および他のトリアジン類、例えば2,4−トリクロロメチル−6−メトキシフェニルトリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、および2−[4−(2−エトキシエチル)−ナフト−1−イル]−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メチルチオフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−クロロフェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−2−トリアジン、2,4,6−トリ(トリクロロメチル)−2−トリアジン及び2,4,6−トリ(トリブロモメチル)−2−トリアジンなどの、例えば1〜3個の−CX3基を有する1,3,5−トリアジン誘導体(Xは独立に塩素又は臭素原子を表す)などの1,3,5−トリアジン誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
アジン化合物、特にトリアジン化合物は、単独で、または1または2種以上の共開始剤、例えば、米国特許第4,997,745号(Kawamuraら)に記載されているような、チタノセン類、モノ−およびポリカルボン酸、ヘキサアリールビスイミダゾール類と組み合わせて使用できる。
【0064】
IR感受性の輻射線感受性組成物に使用するのに特に有用な開始剤は、カチオンのアリール基が置換されていても置換されていなくてもよいジアリールヨードニウムボレートである。可能な置換基は、構造(IB)に関して以下に記載する。ボレートアニオンは、例えば構造(IBz)について以下に述べるように、同じまたは異なる有機基で満たされた原子価を有する。
【0065】
有用なヨードニウムカチオンは当該技術分野でよく知られており、米国特許出願公開2002/0068241(Oohashiら)、国際公開WO2004/101280(Munnellyら)および米国特許第5,086,086号(Brown−Wensleyら)、第5,965,319号(Kobayashi)および第6,051,366号(Baumannら)などがあるが、これらに限定されない。例えば、有用なヨードニウムカチオンは、正に帯電したヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4−(2−メチルプロピル)フェニル]−部分と適切に負に帯電したボレート対イオンを含む。
【0066】
有用な開始剤としては、下記構造(IB)により表されるものが挙げられる。
【0067】
【化3】

【0068】
ここで、X及びYは、独立に、ハロ基(例えばフルオロ、クロロ又はブロモ)、炭素原子数1〜20の置換型又は非置換アルキル基(例えばメチル、クロロメチル、エチル、2−メトキシエチル、n−プロピル、イソプロピル、イソブチル、n−ブチル、t−ブチル、全ての分枝状及び線状ペンチル基、1−エチルペンチル、4−メチルペンチル、全てのヘキシル異性体、全てのオクチル異性体、ベンジル、4−メトキシベンジル、p−メチルベンジル、全てのドデシル異性体、全てのイコシル異性体、及び置換又は非置換モノ及びポリ分枝状及び線状ハロアルキル)、炭素原子数1〜20の置換又は非置換アルキルオキシ(例えば置換又は非置換のメトキシ、エトキシ、iso−プロポキシ、t−ブトキシ、(2−ヒドロキシテトラデシル)オキシ、及び種々の他の線状及び分枝状アルキレンオキシアルコキシ基)、炭素環式芳香環中に6又は10個の炭素原子を有する置換又は非置換アリール基(例えばモノ及びポリハロフェニル及びナフチル基などの置換又は非置換フェニル及びナフチル基)、又は環構造中に3〜8個の炭素原子を有する置換又は非置換シクロアルキル基(例えば置換又は非置換のシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル及びシクロオクチル基)である。典型的には、X及びYは独立に、炭素原子数1〜8の置換又は非置換アルキル基、炭素原子数1〜8の置換又は非置換アルキルオキシ基、又は環中に5又は6個の炭素原子を有する置換又は非置換シクロアルキル基であり、より好ましくは、X及びYは、独立に、炭素原子数3〜6の置換又は非置換アルキル基(具体的には炭素原子数3〜6の分枝状アルキル基)である。このように、X及びYは同じか又は異なる基であることが可能であり、種々のX基は同じか又は異なる基であることが可能であり、種々のY基は同じか又は異なる基であることが可能である。「対称的」なホウ酸ジアリールヨードニウム化合物及び「非対称的」なホウ酸ジアリールヨードニウム化合物の両方が考えられるが、「対称的」な化合物が好ましい(すなわち、これらは両フェニル環上に同じ基を有する)。
【0069】
さらに、2つ又は3つ以上の隣接するX又はY基が結合していて、各フェニル環と縮合した炭素環式又は複素環式環を形成していてもよい。
【0070】
X及びY基は、フェニル環上の任意の位置に位置していてもよいが、好ましくは、これらの基は2−又は4−位に位置しており、そしてより好ましくは、いずれか又は両方のフェニル環上の4−位に位置する。
【0071】
どのようなタイプのX及びY基がヨードニウムカチオン中に存在するかとは無関係に、X及びY置換基中の炭素原子数の和は一般的に少なくとも6であり、典型的には少なくとも8であり、そして40以下である。従って、化合物によっては、1又は2個以上のX基が少なくとも6個の炭素原子を含むことができ、そしてYは存在しない(qは0である)。あるいは、1又は2個以上のY基が少なくとも6個の炭素原子を含むこともでき、そしてXは存在しない(pは0である)。さらに、X及びY双方における炭素原子数の和が少なくとも6である限り、1又は2個以上のX基が6個未満の炭素原子を含むことができ、1又は2個以上のY基が6個未満の炭素原子を含むことができる。この場合にも、両フェニル環上に全部で少なくとも6個の炭素原子が存在することができる。
【0072】
構造IBにおいて、p及びqは独立に0又は1〜5の整数であるが、p又はqが少なくとも1であることを条件とする。典型的にはp及びqの両方が少なくとも1であるか、p及びqのそれぞれが1である。このように、X又はY基によって置換されていないフェニル環中の炭素原子は、それらの環位置で水素原子を有することが明らかである。
【0073】
- は下記構造(IBz)により表される有機アニオンである。
【0074】
【化4】

【0075】
ここで、上記式中、R1、R2、R3、及びR4は、独立に、フルオロアルキル基以外の炭素原子数1〜12の置換又は非置換アルキル基(例えばメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、全てのペンチル異性体、2−メチルペンチル、全てのヘキシル異性体、2−エチルヘキシル、全てのオクチル異性体、2,4,4−トリメチルペンチル、全てのノニル異性体、全てのデシル異性体、全てのウンデシル異性体、全てのドデシル異性体、メトキシメチル、及びベンジル)、芳香環中に6〜10個の炭素原子を有する置換又は非置換炭素環式アリール基(例えばフェニル、p−メチルフェニル、2,4−メトキシフェニル、ナフチル及びペンタフルオロフェニル基)、炭素原子数2〜12の置換又は非置換アルケニル基(例えばエテニル、2−メチルエテニル、アリル、ビニルベンジル、アクリロイル及びクロトノチル基)、炭素原子数2〜12の置換又は非置換アルキニル基(例えばエチニル、2−メチルエチニル及び2,3−プロピニル基)、環構造体中に3〜8個の炭素原子を有する置換又は非置換シクロアルキル基(例えばシクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、4−メチルシクロヘキシル及びシクロオクチル基)、又は5〜10個の炭素、酸素、硫黄及び窒素原子を有する置換又は非置換ヘテロシクリル基(芳香族基及び非芳香族基の両方を包含する。例えば置換又は非置換のピリジル、ピリミジル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾイリル、インドリル、キノリニル、オキサジアゾリル及びベンゾオキサゾリル基)である。又は、R1、R2、R3、及びR4のうちの2又は3つ以上が結合して、ホウ素原子を有する複素環を形成していてもよく、このような環は炭素、窒素、酸素及び窒素原子を最大7個有する。R1からR4までのいずれの基もハロゲン原子を含有せず、特にフッ素原子を含有しない。
【0076】
典型的には、R1、R2、R3、及びR4は、独立に、上で規定した置換又は非置換アルキル又はアリール基であり、そしてより好ましくは、R1、R2、R3、及びR4のうちの少なくとも3つが、同じか又は異なる置換又は非置換アリール基(例えば置換又は非置換フェニル基)である。例えば、R1、R2、R3、及びR4の全てが、同じか又は異なる置換又は非置換アリール基であるか、あるいは、これらの基の全てが同じ置換又は非置換フェニル基である。Z- は、フェニル基は置換又は非置換(例えば、全てが非置換)であるテトラフェニルボレートである。
【0077】
代表的なホウ酸ヨードニウム化合物としては、4−オクチルオキシフェニルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、[4−[(2−ヒドロキシテトラデシル)−オキシ]フェニル]フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−へキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、ビス(t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−ヘキシルフェニル−フェニルヨードニウム−テトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムn−ブチルトリフェニルボレート、4−シクロヘキシルフェニル−フェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、2−メチル−4−t−ブチルフェニル−4’−メチルフェニルヨードニウムテトラフェニルボレート、4−メチルフェニル−4’−ペンチルフェニルヨードニウムテトラキス[3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、4−メトキシフェニル−4’−シクロヘキシルフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、4−メチルフェニル−4’−ドデシルフェニルヨードニウムテトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、ビス(ドデシルフェニル)ヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、及びビス(4−t−ブチルフェニル)ヨードニウムテトラキス(1−イミダゾリル)ボレートが挙げられる。これらの化合物のうちの2種又は3種の混合物を、ホウ酸ヨードニウム開始剤組成物において使用することもできる。
【0078】
ホウ酸ジアリールヨードニウム化合物は、一般的に、ヨウ化アリールと置換又は非置換アレーンとを反応させ、続いてホウ酸アニオンとイオン交換することにより調製できる。様々な調製方法の詳細が、米国特許第6,306,555号明細書(Schulz他)及びこの特許明細書中で引用された文献、及びCrivelloによる,J.Polymer Sci.,Part A:Polymer Chemistry,37,4241−4254(1999)に記載されている。
【0079】
様々なフリーラジカル生成化合物(開始剤)を、単独で、または様々な共開始剤、例えば、米国特許第6,884,568号(Timpeら)に記載されているような、メルカプトトリアゾール類、メルカプトベンゾイミダゾール類、メルカプトベンゾオキサゾール類、メルカプトベンゾチアゾール類、メルカプトベンゾオキサジアゾール類、メルカプトテトラゾール類などの複素環式メルカプト化合物などと組み合わせて、輻射線感受性組成物の全固形分を基準として少なくとも0.5質量%かつ10質量%以下の量で使用できる。有用なメルカプトトリアゾール類としては、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−3−メルカプト1,2,4−トリアゾール、5−メルカプト−1−フェニル−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,5−ジフェニル−1,2,4−トリアゾール、および5−(p−アミノフェニル)−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが挙げられる。
【0080】
例えば、メタロセン類(例えばチタノセン類およびフェロセン類など)、ポリカルボン酸(例えばHauckらによる欧州特許第1,079,972号明細書に記載されている)、ハロアルキルトリアジン類、チオール類またはメルカプタン類(例えばメルカプトトリアゾール類)、ボレート塩、および米国特許第5,942,372号(Westら)に記載されているようなアルコキシまたはアシルオキシ基により置換された複素環窒素を含む光オキシダントなどの共開始剤も使用できる。
【0081】
メタロセン類は、1または2個以上のシクロペンタジエニル配位子を有する有機金属化合物である。シクロペンタジエニル配位子は環炭素の1つ又は全てで任意選択的に置換されていてもよい。5員配位子環中の各炭素は、遷移金属中心に配位している。メタロセン類は、鉄、チタン、タングステン、モリブデン、ニッケル、コバルト、クロム、ジルコニウムおよびマンガンなどの様々な遷移金属を有するとして知られている。
【0082】
例えば、少なくとも1つのシクロペンタジエニル配位子により配位された鉄中心を有するが、フェロセン類はビシクロペンタジエニル「サンドウィッチ」化合物も包含する。好適なフェロセン化合物としては、鉄中心に配位したヘキサハプト(hexhapto)ベンゼン配位子を有するものが挙げられる。かかる化合物の例は、米国特許第6,936,384号明細書(Munnellyら)の第7欄に記載されている。他の好適なフェロセン類としては、ハロゲン化された、アリール置換された、またはハロアリール置換されたシクロペンタジエニル配位子を有する化合物が挙げられる。
【0083】
チタノセン類も、本発明の実施に有用である。かかる化合物は、少なくとも1個のペンタハプト(pentahapto)シクロペンタジエニル配位子が配位したチタン中心を有し、一般的に、有機金属錯体で知られているさらなる配位子を含む。幾つかの好適なチタノセン化合物は、それらの構造中にアリール配位子、ハロアリール配位子、またはピロール置換アリール配位子を含む。有用なチタノセン類の例としては、米国特許第6,936,384号明細書(上記)に記載されているものが挙げられる。市販されているチタノセンの1つは、実施例に記載する、Ciba Specialty ChemicalsからIrgacure(登録商標)784として販売されている(ビス)シクロペンタジエニル−(ビス)2,6−ジフルオロ−3−(ピル−1−イル)フェン−1−イルチタンである。他の好適なチタノセン類は、米国特許第4,548,891号(Riedikerら)、第4,590,287号(Riedikerら)、第5,008,302号(Huslerら)、第5,106,722号(Huslerら)、第6,010,824号(Komanoら)および第6,153,660号(Fujimakiら)に記載されている。
【0084】
当業者は、下記のあらゆる輻射線吸収性化合物(または増感剤)に対して全ての開始剤(または共開始剤)を使用できるわけではないことを理解するであろう。例えば、開始剤と増感剤の幾つかの組み合わせは、フォトスピードまたは他の特性にとって適切でないことがあるが、所望の画像形成性、現像性および貯蔵安定性をもたらすように、所定の分光感度に応じた開始剤と任意選択的な共開始剤と輻射線吸収性化合物の最適な組み合わせを当業者が見出すには、本明細書の教示を参照して常套的な実験を行うだけでよいであろう。
【0085】
例えば、いくつかの開始剤/共開始剤の組み合わせを、本発明の様々な実施態様で使用でき、かかる組み合わせとしては、
a)少なくとも2個のカルボキシ基を含み、それらのうちの少なくとも1つがアリール部分の窒素、酸素または硫黄原子に結合しているN−アリール、S−アリールまたはO−アリールポリカルボン酸(例えばアニリン二酢酸およびその誘導体)である共開始剤と組み合わせて、上記のようなトリアジン類、
b)4つの同じまたは異なるアルキルもしくはアリール基またはそれらの組み合わせを含むホウ素含有対イオン(当該ホウ素含有対イオンは赤外線吸収性染料のための対イオンであるか、またはオニウム塩における対イオンである)、
c)上記のようなメルカプタン誘導体である共開始剤と組み合わせて、上記のようなトリアジン類、
d)例えば米国特許第6,936,384号(上記)に記載されているようなメタロセン類(例えばチタノセンまたはフェロセン)である共開始剤と組み合わせて、上記のようなオ二ウム塩(例えばヨードニウム塩)、
e)上記のようなメルカプトトリアゾール類である共開始剤と組み合わせて、上記のようなヨードニウム塩(例えばヨードニウムボレート)、
f)アルキルトリアリールボレートまたはテトラアリールボレートと組み合わせて、上記のようなトリアジン、
g)ポリハロアルキル置換化合物またはアジニウム化合物と、例えば欧州特許第1,079、972号明細書(上記)に記載されているようなポリカルボン酸、並びに
h)ヘキサアリールビイミダゾールと複素環式メルカプト化合物、例えばメルカプトトリアゾール、
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
開始剤組成物中のフリーラジカル生成開始剤は、一般的に、当該組成物(または画像形成性層)の全乾燥質量を基準にして少なくとも0.5%かつ30%以下、典型的には少なくとも2%かつ20%以下の量で輻射線感受性組成物(またが画像形成性層)中に存在する。各種開始剤成分(共開始剤を含む)の最適な量は各種化合物に応じて異なることがあり、当業者は輻射線感受性組成物の所定の感度を設計することができる。
【0087】
輻射線感受性組成物(および画像形成性層)は、電磁スペクトルのUVからIR領域、すなわち少なくとも150nmかつ1400nm以下の分光感度を有し、画像形成輻射線を吸収(または画像形成輻射線に対して当該組成物を増感)する1種または2種以上の輻射線吸収性化合物(または増感剤)を一般的に含む。幾つかの増感剤を任意の波長で使用できるが、ほとんどの増感剤は特定の波長範囲内で最適に有用である。例えば、幾つかの増感剤は、少なくとも150nmかつ650nm以下(UVおよび紫乃至可視)の露光波長での使用に対して最適である。他に、少なくとも150nmかつ475nm以下のUV(紫)線への露光に対して特に最適な増感剤や、少なくとも650nmかつ1500nm以下(近赤外および赤外)の露光波長での使用に対して最適な増感剤がある。
【0088】
幾つかの実施態様では、輻射線感受性組成物は、フリーラジカル生成化合物がUV線感受性(少なくとも150nmかつ475nm以下)であるUV増感剤を含み、光重合を促進する。幾つかの実施態様では、輻射線感受性組成物は、少なくとも375nmかつ475nm以下の範囲内の「紫色」光に対して増感される。かかる組成物に対して有用な増感剤は、特定のピリジウムおよびチオピリジウム染料と3−ケトクマリンを含む。かかる分光感度に対して有用な幾つかの他の増感剤は、例えば、第6,908,726号(Korionoffら)、有用なビスオキサゾール誘導体および同族体を記載した国際公開第2004/074929号(Baumannら)、並びに米国特許出願公開第2006/0063101号および第2006/0234155号明細書(両方ともBaumannら)に記載されている。
【0089】
さらに他の有用な増感剤は、国際公開第2006/053689号(Strehmelら)に定義されている構造(I)単位を有するオリゴマーまたはポリマー化合物であり、当該化合物はヘテロ原子間に共役π系を与える適切な芳香族または複素芳香族単位を有する。
【0090】
さらに有用な「紫」−可視輻射線増感剤は国際公開2004/074929号(Baumannら)に記載されている化合物である。これらの化合物は、芳香族複素環基と共役する少なくとも1個の炭素−炭素二重結合を含むスペーサー基に結合された同じまたは異なる芳香族複素環式基を含み、当該公開公報の式(I)によってより詳しく表される。
【0091】
電磁スペクトルの可視領域(すなわち少なくとも400nm、かつ、650nm以下)に吸収を示す増感剤も使用できる。かかる増感剤の例は当業界でよく知られており、例えば米国特許第6,569,603号(上記)の第17〜22欄に記載の化合物が挙げられる。他の有用な可視およびUV感受性の増感組成物としては、米国特許第5,368,990号(Kawabata他)に記載されているような、シアニン染料、ジアリールヨードニウム塩、及び共開始剤(上記)が挙げられる。
【0092】
紫/可視領域の増感のための他の有用な増感剤は、国際公開第2004/074930号(Baumannら)に記載されているような2,4,5−トリアリールオキサゾール誘導体である。これらの化合物は、単独でまたは上記の共開始剤、特に上記の1,3,5−トリアジン類、またはチオール化合物とともに使用できる。有用な2,4,5−トリアリールオキサゾール誘導体は、構造G−(Ar13により表すことができる。ここで、Ar1 は同じまたは異なる、環中に6〜12個の炭素原子を有する置換または非置換の炭素環式アリール基であり、Gはフラン、オキサゾールまたはオキサジアゾール環である。Ar1 基は、1または2個以上のハロ基、置換もしくは非置換アルキル、置換もしくは非置換シクロアルキル、置換もしくは非置換アリール、アミノ(第1級、第2級または第3級)、または置換もしくは非置換のアルコキシもしくはアリールオキシ基により置換されていてもよい。例えば、アリール基は、1または2個以上のR'1〜R'3基によりそれぞれ置換されていてもよく、R'1〜R'3基は独立に水素または炭素原子数1〜20の置換もしくは非置換アルキル基(例えば、メチル、エチル、iso−プロピル、n−ヘキシル、ベンジル、およびメトキシメチル基など)、環中の6〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換炭素環式アリール基(例えば、フェニル、ナフチル、4−メトキシフェニルおよび3−メチルフェニル基)、環中に5〜10個の炭素原子を有する置換もしくは非置換シクロアルキル基、−N(R'4)(R'5)基、または−OR'6基である。ここで、R'4〜R'6は独立に、先に定義した置換または非置換のアルキルまたはアリール基を表す。好ましくは、R'1〜R'3の少なくとも1つは−N(R'4)(R'5)基(R'4およびR'5は同じまたは異なるアルキル基である)である。各Ar1 基に対して好ましい置換基としては同じまたは異なる第1級、第2級および第3級アミンが挙げられ、より好ましくは、それらは同じジアルキルアミンである。
【0093】
さらに別の部類の有用な紫/可視輻射線増感剤としては、構造Ar1−G−Ar2 により表される化合物が挙げられる。ここで、Ar1 およびAr2 は同じまたは異なる、環中に6〜12個の炭素原子を有する置換または非置換アリール基であるか、あるいはAr2 はアリーレン−G−Ar1 またはアリーレン−G−Ar2 基であり、Gはフラン、オキサゾールまたはオキサジアゾール環である。Ar1 は先に定義したのと同じであり、Ar2 はAr1 のように同じまたは異なるアリール基であることができる。「アリーレン」は、Ar1 について定義したアリール基のいずれであってもよいが、それらが2価になるように水素原子が除かれている。
【0094】
欧州特許第684,522号明細書(上記)には、250nm〜700nmの範囲内にスペクトル吸収を示す1種または2種以上の染料を含む可視光感受性組成物および画像形成性要素が記載されている。
近赤外または赤外線に対して感受性である本発明の実施態様において、輻射線感受性組成物は、少なくとも700nmかつ1500nm以下、典型的には少なくとも700nmかつ1200nm以下の輻射線を吸収する赤外線吸収性化合物を含むことができる。
【0095】
有用なIR感受性輻射線吸収性化合物としては、カーボンブラック、他のIR吸収性顔料、および様々なIR感受性染料(「IR染料」)が挙げられる。好適な赤外線(IR)染料の例としては、アゾ染料、スクアリリウム染料、クロコネート染料、トリアリールアミン染料、チオアゾリウム染料、インドリウム染料、オキソノール染料、オキサゾリウム染料、シアニン染料、メロシアニン染料、フタロシアニン染料、インドシアニン染料、インドトリカルボシアニン染料、オキサトリカルボシアニン染料、チオシアニン染料、チアトリカルボシアニン染料、メロシアニン染料、クリプトシアニン染料、ナフタロシアニン染料、ポリアニリン染料、ポリピロール染料、ポリチオフェン染料、カルコゲノピリロアリーリデン染料及びビ(カルコゲノピリロ)ポリメチン染料、オキシインドリジン染料、ピリリウム染料、ピラゾリンアゾ染料、オキサジン染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、キノンイミン染料、メチン染料、アリールメチン染料、スクアリン染料、オキサゾール染料、クロコニン染料、ポルフィリン染料、及び上記の染料の部類の置換形態物又はイオン性形態物が挙げられるが、これらに限定されない。好適な染料は、例えば米国特許第5,208,135号(Patelら)、第6,153,356号(Uranoら)、第6,264,920号(Achilefuら)、第6,309,792号(Hauckら)、及び第6,787,281号明細書(Taoら)、並びに欧州特許出願公開第1,182,033号(上記)に記載されている。
【0096】
好適なシアニン染料のある部類についての概要が、国際公開第2004/101280号(Munnellyら)の段落[0026]中に式で示されており、有用なIR吸収性化合物は下記実施例に示す。
【0097】
低分子量IR吸収性染料に加えて、ポリマーに結合されたIR染料部分も利用できる。さらに、IR染料のカチオンも利用できる。すなわち、このカチオンは、カルボキシ、スルホ、ホスホ又はホスホノ基を側鎖に有するポリマーと、イオン的に相互作用する染料塩のIR吸収性部分である。
【0098】
近赤外線吸収性シアニン染料も有用であり、例えば米国特許第6,309,792号(Hauckら)、米国特許第6,264,920号(Achilefuら)、米国特許第6,153,356号(Uranoら)及び米国特許第5,496,903号明細書(Watanateら)に記載されている。好適な染料は、通常の方法と出発物質を使って製造することができ、あるいは、American Dye Source(カナダ国ケベック州べ・ウルフェ)及びFEW Chemicals(ドイツ国)などの様々な商業的供給源から入手可能である。近赤外ダイオードレーザービーム用の他の有用な染料は、例えば、米国特許第4,973,572号明細書(上記)に記載されている。
【0099】
望ましい発色団を有する他の有用な赤外線感受性染料は下記構造DYE−Iにより定義できる。
【0100】
【化5】

【0101】
ここで、R1'、R2'およびR3'は、独立に、水素、あるいは、ハロ、シアノ、置換または非置換アルコキシ(炭素原子数1〜8、線状および分岐状アルコキシ基の両方)、置換または非置換アリールオキシ(炭素環式環中に6〜10個の炭素原子を有する)、置換または非置換アシルオキシ(炭素原子数2〜6)、カルバモイル、置換または非置換アシル、置換または非置換アシルアミド、置換または非置換アルキルアミノ(少なくとも1個の炭素原子を有する)、置換または非置換の炭素環式アリール基(芳香環中に6〜10個の炭素原子を有する、例えばフェニルおよびナフチル基)、置換または非置換アルキル基(炭素原子数1〜8、線状および分岐状異性体の両方)、1つの又は縮合環基中に5〜10個の炭素原子を有する置換または非置換シクロアルキル基、置換または非置換アリールアミノ、あるいは置換または非置換ヘテロアリール(環中に少なくとも5個の炭素とヘテロ原子を有する)基である。あるいは、R1'、R2'およびR3'基のうちの任意の2つが1つに結合して、もしくは隣接する複素環式基と結合して同じまたは異なる5〜7員の置換または非置換の炭素環式または複素環式環を完成していてもよい。
【0102】
例えば、R1'、R2'およびR3'は、独立に、水素、置換または非置換の炭素環式アリール基、および置換または非置換ヘテロアリール基である。
【0103】
4’、R5’、R6’、及びR7’は、それぞれ独立に、水素、置換もしくは非置換のアルキル基(炭素数1〜10)、置換もしくは非置換のシクロアルキル基(環中に炭素原子4〜6個有する)、置換もしくは非置換のアリール基(環中に炭素原子少なくとも6個有する)、又は置換もしくは非置換のヘテロアリール基(環中に5〜10個の炭素及びヘテロ原子を有する)を表す。
【0104】
あるいは、R4’及びR5’又はR6’及びR7’は、一緒に結合して置換もしくは非置換の5員〜9員の複素環を形成することができ、あるいはR4’、R5’、R6’、又はR7’は、アニリノ窒素の結合位置に対してオルトの位置で隣接する芳香環の炭素原子と結合して、それらが結合している窒素原子と共に、置換もしくは非置換の5員又は6員の複素環を形成することができる。
【0105】
例えば、R4’、R5’、R6’、及びR7’は、独立に、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のシクロアルキル基、置換もしくは非置換のアリール基であり、あるいはR4’及びR5’又はR6’、及びR7’は、一緒に結合して置換もしくは非置換の5員〜7員の複素環を形成することができる。より好ましくは、これらは独立に、炭素数1〜8の置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のフェニル基であり、あるいはR4’及びR5’又はR6’、及びR7’は、一緒に結合して置換もしくは非置換の5員〜7員のヘテロアリール基を形成することができる。
【0106】
DYE I構造で、sは1、2または3であり、Z2は一価アニオンであり、X”及びY”はそれぞれ独立にR1’又は置換もしくは非置換の5員〜7員の縮合炭素環又は複素環を完成するのに必要な原子団であり、q及びrは独立に1〜4の整数である。
【0107】
例えば、X”及びY”は独立に水素又は縮合アリール又はヘテロアリール環を提供するのに必要な炭素及びヘテロ原子である。
【0108】
米国特許第6,623,908号明細書(Zhengら)中に、染料1〜染料17,染料19および染料20として示された代表的なIR染料を含む、かかるビス(アミノアリール)ペンタジエンIR染料についてさらなる詳細がある。
【0109】
幾つかの有用な赤外線吸収性染料はテトラアリールペンタジエン発色団を有する。かかる発色団は、一般的に、鎖内に5個の炭素原子を有するペンタジエン連結基を含み、当該連結基の各端部に2個の置換または非置換アリール基が結合している。ペンタジエン連結基は、水素原子が1または2個以上の置換基で置換されていてもよく、あるいは、代わりの炭素−炭素単結合および炭素−炭素二重結合が鎖中に存在する限り、2または3個以上の水素原子が原子と置き換わって連結基中に環を形成していてもよい。
【0110】
かかるIR感受性染料は下記構造DYE−IIにより表すことができる。
【0111】
【化6】

【0112】
ここで、Ar1〜Ar4は、芳香環(例えばフェニル、ナフチル、およびアントリル、または他の芳香族縮合環系)中に少なくとも炭素原子を有する同じまたは異なる置換または非置換アリール基であり、これらアリール基のうちの1〜3個は同じまたは異なる第3級アミノ基(例えばフェニル基の4位で)により置換されている。典型的には、アリール基のうちの2個が同じまたは異なる第3級アミノ基により、通常、ポリメチン鎖(すなわち分子)の異なる端部で置換されている。例えば、Ar1またはAr2およびAr3またはAr4は第3級アミン基を有する。代表的なアミノ基としては、炭素原子数10以下の置換もしくは非置換アルキル基またはアリール基により置換されたもの、例えばジアルキルアミノ基(例えばジメチルアミノおよびジエチルアミノ)、ジアリールアミノ基(例えばジフェニルアミノ)、アルキルアリールアミノ基(例えばN−メチルアニリノ)、並びに例えばピロリジノ、モルホリノおよびピペリジノ基などの複素環式基が挙げられるが、これらに限定されない。第3級アミノ基は、Ar1〜Ar4のうちの1または2個以上がジュロリジン基を表すように縮合環の一部を構成していてもよい。
【0113】
上記の第3級基に加えて、アリール基は1または2個以上の炭素原子数1〜10の置換または非置換アルキル基、ハロ原子(例えばクロロまたはブロモ)、ヒドロキシル基、チオエーテル基、および炭素原子数1〜10の置換又は非置換アルコキシ基により置換されていてもよい。共役系に電子密度を与える置換基が有用である。構造(DYE−II)に具体的に示されていないが、アリール基を連結する共役鎖の上(またはアリール基を連結する共役鎖の部分として)存在してもよい。
【0114】
構造(DYE−II)において、X-は強酸から誘導された適切な対イオンであり、X-としては例えばClO4-、BF4-、CF3SO3-、PF6-、AsF6-、SbF6-およびペルフルオロエチルシクロヘキシルスルホネートが挙げられる。他のカチオンとしては、上記のようなホウ素含有対イオン(ボレート)、メチルベンゼンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸、p−クロロベンゼンスルホン酸、およびハロゲン化物が挙げられる。
【0115】
本発明のいくつかの実施態様としては、ホウ酸アニオン、例えば四置換ホウ酸アニオンが挙げられ、当該アニオンの置換基は同じまたは異なるアルキル(1〜20個の炭素原子を有する)またはアリール基(フェニルまたはナフチル基)であることができ、これらの基は必要に応じてさらに置換されていてもよい。このタイプの特に有用なホウ素含有対イオンとしては、アルキルトリアリールボレート、ジアルキルジアリールボレート、およびテトラアリールボレートが挙げられる。これらのホウ素含有対イオンの例は、例えば欧州特許出願公開第438,123号明細書(Murofushi他)に記載されている。
【0116】
有用な輻射線吸収性化合物は多くの商業的供給者から入手でき、あるいは、それらは既知の原料および方法を使用して調製できる。
【0117】
輻射線吸収性化合物(または増感剤)は、輻射線感受性組成物(および画像形成性層)中に、全固形分を基準にして、一般的に少なくとも1%かつ30%以下、典型的には少なくとも3%かつ20%以下の量で存在することができる。この目的に必要な具体的な量は、望ましい発色団を提供するために使用される個々の化合物に依存して、当業者は容易に分かるであろう。
【0118】
画像形成性層は、画像形成輻射線への露光前にアルカリ性現像液への望ましい溶解性をもたらす1種または2種以上の一次ポリマーバインダーを含む。ほとんどの実施態様において、ポリマーバインダーは、上記のようなペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーである。しかしながら、かかるポリマーは、唯一のまたは「一次(primary)」ポリマーバインダーである必要はないが、多くの実施態様において、それらは輻射線感受性組成物中の唯一のポリマーバインダーである。一次ポリマーバインダーは、一般的に、輻射線感受性組成物中に、全層乾燥質量または固形分を基準にして10〜70%の量で存在する。
【0119】
必要に応じて使用される二次ポリマーバインダーとしては、ポリマー主鎖に結合した1または2個以上のエチレン不飽和ペンダント基(反応性ビニル基)を有するものが挙げられるが、これらに限定されない。かかる反応性基は、フリーラジカルの存在下で重合または架橋することができる。ペンダント基は、炭素−炭素直接結合により、または特に限定されない連結基(「X」)を通じてポリマー主鎖に直接結合されていてよい。反応性ビニル基は、少なくとも1個のハロゲン原子、カルボキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、またはアルキル、アリール、アルコキシ、もしくはアリールオキシ基、特に1または2個以上のアルキル基により置換されていてもよい。幾つかの実施態様において、反応性ビニル基は、例えば米国特許第6,569,603号明細書(Furukawaら)に記載されているようにフェニレン基を通じてポリマー主鎖に結合される。他の有用なポリマーバインダーは、ペンダント基中にビニル基を有し、これらは、本明細書で引用した欧州特許出願公開第1,182,033号明細書(Fujimakiら)および米国特許第4,874,686号明細書(Urabeら)および第7,041,416号明細書(Wakataら)、特に欧州特許出願公開第1,182,033号明細書中に一般式(1)〜(3)に関連して、記載されている。幾つかのペンダント反応性ビニル基は、アリルエステル、スチリルおよび(メタ)アクリロイル基など(これらに限定されない)を包含するアルケニル基である。例えば、かかる基は、アリル(メタ)アクリレートによりもたらすことができ、あるいは、当業者が容易に分かる条件を使用して、ポリマー前駆体をアリルハライド、4−ビニルベンジルクロリドまたは(メタ)アクリロイルクロリドと反応させることによりもたらすことができる。
【0120】
さらなる二次ポリマーバインダーは、上記のもの以外の、ネガ型輻射線感受性組成物用として当該技術分野で知られているもののいずれであってもよい。二次ポリマーバインダーは、画像形成性層の乾燥被覆質量を基準にして1.5〜70質量%、典型的には1.5〜40質量%の量で存在することができ、二次ポリマーバインダーは、全てのポリマーバインダーの乾燥質量の30〜60質量%を構成することができる。
【0121】
二次ポリマーバインダーは均質であることができる。すなわち、二次ポリマーバインダーは、コーティング溶剤中に溶解されているか、または離散粒子として存在することができる。かかる第二次ポリマーバインダーとしては、(メタ)アクリル酸および酸エステル樹脂[例えば(メタ)アクリレート]、ポリビニルアセタール、フェノール樹脂、スチレンから誘導されたポリマー、N−置換環状イミド又は無水マレイン酸、例えば欧州特許出願公開第1,182,033号明細書(Fujimakiら)及び米国特許第6,309,792号明細書(Hauckら)、第6,352,812号(Shimazuら)、第6,569,603号明細書(Furukawaら)及び第6,893,797号明細書(Munnellyら)に記載されているものなどが挙げられる。米国特許第7,175,949号明細書(Taoら)に記載されているビニルカルバゾールポリマー、および米国特許第7,279,255号明細書(Taoら)に記載されているペンダントビニル基を有するポリマーも有用である。粒子状の形態のポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/スチレンのコポリマー、カルボキシフェニルメタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリルアミド/N−フェニルマレイミドから誘導された溶解されたコポリマー、ポリエチレングリコールメタクリレート/アクリロニトリル/ビニルカルバゾール/スチレン/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、N−フェニルマレイミド/メタクリルアミド/メタクリル酸から誘導されたコポリマー、ウレタン−アクリル中間体A(p−トルエンスルホニルイソシアネートとヒドロキシエチルメタクリレートの反応生成物)/アクリロニトリル/N−フェニルマレイミドから誘導されたコポリマー、およびN−メトキシメチルメタクリルアミド/メタクリル酸/アクリロニトリル/n−フェニルマレイミドから誘導されたコポリマーが有用である。
【0122】
他の有用な二次ポリマーバインダーは、粒子状のポリ(ウレタン−アクリル)混成体であり、これは、画像形成性層中に分配(通常は均一に)される。これらの混成体の各々は、50,000〜500,000の分子量を有し、粒子は10〜10,000nm(好ましくは30〜500nm、より好ましくは30〜150nm)の平均粒径を有する。これらの混成体は、それらの製造に使用される個々の反応物に依存して、「芳香族的」または「脂肪族的」な性質を有するものであることができる。2種または3種以上のポリ(ウレタン−アクリル)混成体の粒子のブレンドも使用できる。例えば、Hybridur(登録商標)570ポリマー分散体とHybridur(登録商標)870ポリマー分散体のブレンドを使用できる。
【0123】
いくつかのポリ(ウレタン−アクリル)混成体はAir Products and Chemicals,Inc.(ペンシルベニア州アレンタウン所在)から分散体で市販されており、例えば、ポリ(ウレタン−アクリル)混成体のHybridur(登録商標)540、560、570、580、870、878および880ポリマー分散体として市販されている。これらの分散体は、一般的に、適切な水性媒体中に固形分少なくとも30%でポリ(ウレタン−アクリル)混成体粒子を含み、水性媒体は、市販の界面活性剤、消泡剤、分散剤、腐食防止剤および任意の顔料および水混和性有機溶剤を含んでもよい。各市販のHybridur(登録商標)ポリマー分散体についてのさらなる詳細は、Air Products and Chemicals,Inc.のウェブサイトをアクセスすることで得ることができる。
【0124】
画像形成性層は、それぞれ一般的には200を超え、典型的には少なくとも300で、かつ、1000以下の分子量を有する1または2種以上のホスフェート(メタ)アクリレートをさらに含んでもよい。「ホスフェート(メタ)アクリレート」とは、「ホスフェートメタクリレート類」や、アクリレート部分中のビニル基上に置換基を有する他の誘導体も包含することを我々は意図する。
【0125】
各ホスフェート部分は、典型的には、脂肪族鎖[すなわち−(脂肪族−O)−鎖]、例えば、少なくとも1個のアルキレンオキシ単位で構成されるアルキレンオキシ鎖[すなわち−(アルキレン−O)m−鎖](ここで、アルキレン部分は2〜6個の炭素原子を有し、線状または分岐状であることができ、mは1〜10である)によりアクリレート部分に連結されている。例えば、アルキレンオキシ鎖は、エチレンオキシ単位を含み、mは2〜8であるか、またはmは3〜6である。個々の化合物中のアルキレンオキシ鎖は長さが同じであっても異なっていてもよく、同じまたは異なるアルキレン基を有する。
【0126】
有用なホスフェート(メタ)アクリレートは下記構造(III)により表すことができる。
【0127】
【化7】

【0128】
ここで、nは1または2であり、Mは水素または一価のカチオン(例えばアルカリ金属イオン、アンモニウムカチオン(1〜4個の水素原子を含むカチオンを包含する))である。例えば、有用なMカチオンとしては、ナトリウム、カリウム、−NH4 、−NH(CH2CH2OH)3 、および−NH3(CH2CH2OH)が挙げられるが、これらに限定されない。nが2である場合には、M基は同じであるかまたは異なる。Mが水素である化合物が特に有用である。
【0129】
R基は、独立に、下記構造(IV)により表される同じまたは異なる基である。
【0130】
【化8】

【0131】
ここで、R1 およびR2 は、独立に、水素、あるいはハロ(例えばクロロまたはブロモ)、または置換された若しくは置換されていない炭素原子数1から6のアルキル基(例えばメチル、クロロメチル、メトキシメチル、エチル、イソプロピルおよびt−ブチル基)である。多くの実施態様において、R1 およびR2 の一方または両方は、水素またはメチルであり、いくつかの実施態様において、R1 は水素であり、R2 はメチルである。
【0132】
Wは、鎖内に少なくとも2個の炭素もしくは酸素原子または炭素原子と酸素原子の組み合わせを有する脂肪族基であり、qは1〜10である。そのため、Wは、1または2個以上の酸素原子(オキシ基)、カルボニル、オキシカルボニルまたはカルボニルオキシ基が割り込んだ炭素原子数1〜8のアルキレン基を1または2個以上含んでいてもよい。例えば、1個のかかる脂肪族基はアルキレンカルボニルオキシアルキレン基である。上記脂肪族基中に含まれる有用なアルキレン基は2〜5個の炭素原子を有し、分岐状であっても線状であってもよい。
【0133】
R基は、独立に、下記構造(V)により表される同じまたは異なる基であることもできる。
【0134】
【化9】

【0135】
ここで、R1 、R2 およびqは先に定義したとおりであり、R3 〜R6 は、独立に、水素、あるいは置換された若しくは置換されていない炭素原子数1〜6のアルキル基(例えばメチル、メトキシメチル)、エチル、クロロメチル、ヒドロキシメチル、エチル、iso−プロピル、n−ブチル、t−ブチルおよびn−ペンチル基である。典型的には、R3 〜R6 は、独立に、水素またはメチルであり、ほとんどの実施態様において、全てが水素である。
【0136】
構造IVおよびVにおいて、qは1〜10または2〜8であり、例えば3〜6である。
【0137】
本発明において有用な代表的なホスフェート(メタ)アクリレートは例えば米国特許第7,175,969号明細書(Rayら)に記載されている。
【0138】
ホスフェートアクリレートは、画像形成性層中に、全固形分を基準にして、少なくとも0.5%かつ20%以下、典型的には、少なくとも0.9%かつ10%以下の量で存在することができる。
【0139】
輻射線感受性組成物および画像形成性層は、1種または2種以上のトリアルコキシシリルアルキル(メタ)アクリレートまたはビニルトリアルコキシシランをさらに含んでよく、これらのうちのそれぞれは一般的に120を超え、典型的には少なくとも145で、1,000以下の分子量を有する。
【0140】
輻射線感受性組成物(および画像形成性層)は、少なくとも200かつ4000以下の分子量を有するポリ(アルキレングリコール)またはそのエーテル若しくはエステルである「一次添加剤」を含んでもよい。この一次添加剤は、画像形成性層の総乾燥質量を基準として少なくとも2質量%かつ50質量%以下の量で存在する。特に有用な一次添加剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールメチルエーテル、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートおよびポリエチレングリコールモノメタクリレートのうちの1または2種以上が挙げられるが、これらに限定されない。また、SR9036(エトキシル化(30)ビスフェノールAジメタクリレート)、CD9038(エトキシル化(30)ビスフェノールAジアクリレート)、及びSR494(エトキシル化(5)ペンタエリトリトールテトラアクリレート)、及び全てSartomer Company, Inc.から得ることができる同様の化合物も有用である。いくつかの実施態様において、一次添加剤は、重合性ビニル基を含有しないことを意味する「非反応性」であってよい。
【0141】
輻射線感受性組成物(および画像形成性層)は、総乾燥質量を基準として20質量%以下の量の、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ビニルイミダゾール)、又はポリエステルである「二次添加剤」を含むこともできる。
【0142】
輻射線感受性組成物(および画像形成性層)は、分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、塗布性又は他の特性のための界面活性剤、粘度形成剤、書き込み画像の視覚化を可能にするための色素及び着色剤(例えばクリスタルバイオレット、メチルバイオレット、エチルバイオレット、ビクトリアブルー、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、並びにフタロシアニン顔料、例えば銅フタロシアニンおよび金属を含まないフタロシアニン)、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、抗酸化剤、現像助剤、レオロジー調整剤、又はこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷分野において一般的に使用されている任意の他の添加物などの種々の任意選択の化合物を、コンベンショナルな量で含むこともできる。有用な粘度形成剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、及びポリ(ビニルピロリドン)が挙げられる。
【0143】
UV/紫色光に対して感受性である輻射線感受性組成物は、1種または2種以上の熱重合抑制剤、例えば国際公開第2004/074929号(上記)の第10頁(第14〜22行)に記載されているものを含んでもよい。
【0144】
ネガ型画像形成性要素は、上記のとおりの輻射線感受性組成物を適切な基材に適切に適用して画像形成性層を形成することによって形成できる。この基材は、親水性を高めるために輻射線感受性組成物の適用に先立って後述する様々な方法で処理またはコーティングすることができる。典型的には、中間層なそに基材に直接適用された輻射線感受性組成物を含む1層の画像形成性層だけが存在する。
【0145】
幾つかの実施態様で、要素は、例えば欧州特許第1,788,429号、第1,788,431号および第1,788,434号(全て上記)並びに米国特許出願公開第2005/0266349号(上記)に記載されているような画像形成性層上に配設される従来オーバーコート(「酸素不透過トップコート」または「酸素バリヤー層」としても知られている)として知られているものを含んでもよい。かかるオーバーコート層は、主たるポリマーバインダーとしてポリ(ビニルアルコール)を含む。存在する場合には、オーバーコートは画像形成性要素の最外層である。
【0146】
基材は、一般的に、親水性表面を有するか又は画像形成側の適用された画像形成性層配合物よりも親水性の高い表面を少なくとも有する。基材は支持体を含み、その支持体は、平版印刷版などの画像形成性要素を製造するために通常使用されているいかなる材料から構成されたものであってもよい。支持体は、通常、シート、フィルム又は箔(もしくはウェブ)の形態にあり、色記録がフルカラー画像を記録するように使用条件下で、強靱で、安定であり、可撓性で、かつ、寸法の変化に対して抵抗性がある。典型的には、支持体は、ポリマーフィルム(例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリカーボネート、セルロースエステルポリマー及びポリスチレンのフィルムなど)、ガラス、セラミック類、金属シートもしくは箔、又は剛性紙(樹脂コート紙及び金属化紙など)、又はこれら材料のいずれかの積層体(例えば、ポリエステルフィルム上にアルミニウム箔を積層したもの)などのいかなる自立性材料でもよい。金属支持体としては、アルミニウム、銅、亜鉛、チタン及びこれらの合金のシート又は箔が挙げられる。
【0147】
他の有用な基材は、アルミニウム支持体で構成され、このアルミニウム支持体は、物理的(機械的)研磨、電気化学的研磨、または化学的研磨などの当該技術分野で知られている方法を用いて処理され、通常はこの後に陽極酸化処理される。アルミニウム支持体は、物理的または電気化学的に研磨され、次いで、リン酸または硫酸とコンベンショナルな手順を用いて陽極酸化される。有用な親水性平版印刷基材は、電気化学的に研磨され、次いで硫酸またはリン酸により陽極酸化されたアルミニウム支持体であり、この支持体は、平版印刷のための親水性表面を提供する。
【0148】
アルミニウム支持体の硫酸陽極酸化は、一般的に、その表面上に1.5〜5g/m2 、より典型的には3〜4.3g/m2 の酸化物量(被覆量)をもたらす。リン酸陽極酸化は、一般的に、その表面上に1.5〜5g/m2 、より典型的には1〜3g/m2 の酸化物量をもたらす。陽極酸化に硫酸が使用される場合には、より多い酸化物量(少なくとも3g/m2)は、より長い版寿命をもたらすことができる。
【0149】
親水性を高めるために、アルミニウム支持体を、例えばシリケート、デキストリン、フッ化ジルコニウムカルシウム、ヘキサフルオロケイ酸、ヘキサフルオロケイ酸、ポリ(ビニルホスホン酸)(PVPA)、ビニルホスホン酸コポリマー、ポリ[(メタ)アクリル酸]、またはアクリル酸コポリマーで処理することによって、中間層を形成できる。さらに、アルミニウム支持体を、さらに無機フッ化物(PF)を含んでもよいホスフェート溶液で処理してもよい。アルミニウム支持体は、表面の親水性を改善するために、電気化学的研磨され、硫酸陽極酸化され、既知の手順を用いて、PVPAまたはPFで処理することができる。
【0150】
基材の厚さは、変えることができるが、印刷による摩耗に耐えるように十分厚く、かつ、印刷版を巻けるように十分薄くなければならない。有用な実施態様としては、100〜700μmの厚さを有する処理されたアルミニウム箔が挙げられる。
【0151】
画像形成性要素の取扱いと「触感」を改善するために、基材の裏面(非画像形成側)に帯電防止剤及び/又はスリップ層もしくは艶消し層をコートしてもよい。
【0152】
基材は、適用された輻射線感受性組成物を上に有する円筒形表面であってもよく、従って、印刷機の一体部分であってもよい。かかる画像形成された円筒状物の使用については、例えば、米国特許第5,713,287号明細書(Gelbart)に記載されている。
【0153】
輻射線感受性組成物は、任意の適切な装置及び方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティングを使用して、コーティング液中の溶液または分散液として基材に適用できる。輻射線感受性組成物は、好適な基材(例えば印刷機上印刷シリンダー(on−press printing cylinder))上に吹き付けることによっても適用できる。
【0154】
かかる製造法の例は、フリーラジカル重合性成分、ポリマーバインダー、開始剤組成物、輻射線吸収性化合物、1H−テトラゾール基を有する成分、および輻射線感受性組成物の任意の他の成分を、適切なコーティング溶剤、例えば、水、有機溶剤[例えば、1−メトキシプロパン−2−オールなどのグリコールエーテル、メチルエチルケトン(2−ブタノン)、メタノール、エタノール、1−メトキシ−2−プロパノール、iso−プロピルアルコール、アセトン、γ−ブチロラクトン、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、及び当業界でよく知られている他のもの]、並びにこれらの混合物などの中で混合し、得られた溶液を基材に適用し、適切な乾燥条件下で蒸発により溶剤を除去することである。いくつかの代表的なコーティング溶剤およびネガ型画像形成性層配合物は下記実施例1〜5に記載する。適切な乾燥後、画像形成層のコーティング質量は一般的には少なくとも0.1かつ5g/m以下、あるいは少なくとも0.5かつ3.5g/m以下である。
【0155】
基材上に各種の層を適用し乾燥させたら、画像形成性要素へのまたは画像形成性要素からの水分の移行を実質的に妨げる不透水性材料中に画像形成性層を封じることができる。
【0156】
「封じる」とは、画像形成性要素を、上面および下面の両方並びに全ての縁部が不透水性シート材料中に包み込まれる、入れられる、覆われるまたは収容されることを意味する。そのため、画像形成性要素はいったん封じられたら、その周囲環境には暴露されない。1つの又は積み重なった画像形成性要素のこの処理に関する詳細は米国特許第7,157,969号明細書(上記)に示されている。
【0157】
ポジ型画像形成要素
本発明の他の有用な実施態様は、上記のような主鎖とそれに結合したペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーを含む少なくとも1つの画像形成性層をそれぞれ含むポジ型画像形成性要素である。
【0158】
例えば、ポリマーは、上記したとおりの構造(I)により表すことができ、xは3〜100モル%であり、yは0〜97モル%である。ポジ型画像形成性要素の幾つかの実施態様において、xは3〜97モル%であり、yは3〜97モル%である。
【0159】
Aは1種または2種以上のエチレン不飽和重合性モノマーから誘導された炭素−炭素主鎖を含む反復単位を表し、1H−テトラゾール基は、−C(=O)−NR1−、−NR1−、−NR1−(C=O)−NR2−、−S−、−OCO(=O)−もしくは−CH=N−基またはこれらの組み合わせを含む連結基Lを通じて主鎖に結合しており、R1およびR2は独立に水素またはアルキル、アリールもしくはシクロアルキル基であり、Lは任意選択的に1または2個以上のアルキレンまたはアリーレン基を含み、
Bは1または2種以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンもしくはスチレン誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、マレイミド、または開環マレイン酸無水物の半エステルから誘導された反復単位を含む。
【0160】
かかるポジ型画像形成性要素の幾つかの実施態様は、1つの画像形成性要素を含むものもあれば、内層画像形成性層と当該内層画像形成性層上に配置された外層画像形成性層を含むものがある。上記のペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーは、1つの画像形成層中に分散されても、あるいは、多層画像形成性要素の内層および外層画像形成性層のうちの一方または両方に分散されてもよい。ほとんどの実施態様において、ポリマーは、かかる要素中の2つの画像形成性層のうちの一方だけに存在する。
【0161】
単層画像形成性要素
一般的に、単層画像形成性要素は、1種または2種以上の一次ポリマーバインダーを含む画像形成性層配合物を適切な基材に適切に適用して画像形成性層を形成することにより形成される。この基材は、通常、前記配合物の適用に先立って、下記のような様々な方法で処理またはコーティングされる。接着性または親水性の向上のための「中間層」をもたらすように基材を処理することができ、この中間層上に1つの画像形成性層が適用される。
【0162】
基材は、一般的に、親水性表面、又は少なくとも、画像形成側上の適用された輻射線感光性組成物よりも高親水性である表面を有する。基材は、画像形成性要素、例えば平版印刷版を作製するために従来より使用されている任意の材料から構成され得る支持体を含んでなる。かかる基材の具体的な詳細およびそれらの製造方法は、ネガ型画像形成性要素に関して先に記載したとおりである。アルミニウム、銅、亜鉛、チタン及びこれらの合金のシート又は箔などの金属支持体が特に有用である。
【0163】
単層画像形成性要素は、1種又は2種以上の輻射線吸収性化合物も含む。これらの化合物は、任意の好適なエネルギー形態(例えば紫外線または可視光)に対して感受性であることができるが、これらの化合物は、通常、近赤外または赤外線に対して感受性である。そのため、輻射線吸収性化合物は、700〜1400nm、典型的には700〜1200nmに分光感度を有する。IR染料などの好適な赤外線感受性化合物の例はネガ型画像形成性要素に関して上記したとおりである。
【0164】
輻射線吸収性化合物は、一般的に、適切な輻射線への露光後に、画像形成性層を水性現像液に対して不溶性にするのに十分な量で画像形成性層中に存在する。この量は、一般的に少なくとも0.5質量%かつ30質量%以下、典型的には3〜10質量%である(全乾燥層質量を基準)。この目的に必要な具体的な量は、使用される個々の化合物及び使用しようとするアルカリ性現像液の特性に応じて、当業者であれば容易に分かるであろう。ほとんどの実施態様において、輻射線吸収性化合物は単層画像形成性層中に存在する。代わりにまたはさらに、単層画像形成性層と熱的に接触している別個の層中に輻射線吸収性化合物が位置していてもよい。この場合、画像形成中に、輻射線吸収性化合物の作用を、元々当該化合物が含まれていなかった画像形成性層に移すことができる。
【0165】
さらに、画像形成性層中に必要に応じて溶解抑制成分を組み込んでもよい。かかる成分は、一次ポリマーバインダー用の溶解抑制成分として機能する溶解抑制剤として作用する。溶解抑制剤は、ポリマーバインダー中の各種の基との水素結合のための受容部位として作用すると考えられる極性官能基を典型的には有する。当該受容部位は、高い電子密度を有し、電気的陰性の第1列の元素、例えば炭素、窒素及び酸素などから選択できる原子を含む。アルカリ性現像液に可溶性である溶解抑制剤が有用である。溶解抑制剤に有用な極性基としては、エーテル基、アミン基、アゾ基、ニトロ基、フェロセニウム基、スルホキシド基、スルホン基、ジアゾ基、ジアゾニウム基、ケト基、スルホン酸エステル基、リン酸エステル基、トリアリールメタン基、オニウム基(例えばスルホニウム基、ヨードニウム基及びホスホニウム基)、複素環式環中に窒素原子が組み込まれている基、及び正電荷を帯びた原子を含む基(例えば第4級化アンモニウム基)が挙げられるが、これらに限定されない。溶解抑制剤として有用な正電荷を帯びた窒素原子を含む化合物としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム化合物ならびに第4級化複素環式化合物、例えば、キノリニウム化合物、ベンゾチアゾリウム化合物、ピリジニウム化合物、及びイミダゾリウム化合物が挙げられる。さらなる詳細及び溶解抑制剤として有用な代表的な化合物は、例えば米国特許第6,294,311号明細書(上記)に記載されている。有用な溶解抑制剤としては、トリアリールメタン染料、例えば、エチルバイレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、ビクトリアブルーR、ビクトリアピュアブルーBO、BASONYL(登録商標)バイレット610、及びD11(PCAS、フランス国ロンジュモー)が挙げられる。
【0166】
画像形成性層において使用されるポリマーバインダーは、熱画像形成後、一般的に、アルカリ性現像液(以下に定義)に可溶性である。上記のように、画像形成性層は、1H−テトラゾール基を有する1または2種以上の成分を含むことができる。ポジ型画像形成性要素のほとんどの実施態様において、これらの成分はポリマーであり、そして存在する場合には、十分な量で存在して、それらは画像形成性層用のポリマーバインダーとして機能する。かかる実施態様では、ペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマー(1または2種以上)は、画像形成性層の全乾燥質量を基準にして少なくとも10質量%、典型的には20〜80質量%の量で存在する。
【0167】
画像形成性層は、さらなるポリマーまたはポリマーバインダーを含んでもよい。さらなるポリマーまたはポリマーバインダーは、ポリ(ビニルフェノール)もしくはその誘導体、またはフェノール系ポリマーであることができる。さらなるポリマーまたはポリマーバインダーは、ポリマー分子中に組み込まれたカルボン酸(カルボキシ)基、スルホン酸(スルホ)基、ホスホン酸(ホスホノ)基またはリン酸基を含んでいてもよい。他の有用なさらなるポリマーとしては、ノボラック樹脂、レゾール樹脂、ペンダントフェノール基を有するポリ(ビニルアセタール)、ならびにこれらの樹脂のうちの任意のものの混合物(例えば1または2種以上のノボラック樹脂と1または2種以上のレゾール樹脂の混合物など)が挙げられるが、これらに限定されない。ノボラック樹脂は、ペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーとの組み合わせで最も有用である。一般的に、かかる樹脂は、慣用的な方法を使用して求めた場合に、少なくとも3,000かつ200,000、典型的には6,000〜100,000の数平均分子量を有する。典型的なノボラック樹脂としては、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、フェノール−クレゾール−ホルムアルデヒド樹脂、p−t−ブチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂、およびピロガロール−アセトン樹脂、例えば、m−クレゾールまたはm,p−クレゾール混合物とホルムアルデヒドを慣用的な条件を用いて反応させることにより調製されるノボラック樹脂が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、幾つかの有用なノボラック樹脂としては、キシレノール−クレゾール樹脂、例えば、例えば少なくとも4,000の高い分子量を有するSPN400、SPN420、SPN460およびVPN1100(AZ Electronicsから入手可能)、並びにEP25D40GおよびEP25D50G(下記実施例に記載)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0168】
他の有用なさらなる樹脂としては、ポリ(ヒドロキシスチレン)およびヒドロキシスチレンの反復単位を含むコポリマー並びに置換ヒドロキシスチレンの反復単位を含むポリマーおよびコポリマーなどのフェノール系ヒドロキシル基を有するポリビニル化合物が挙げられる。例えば米国特許第5,554,719号(Sounik)および第6,551,738号(Ohsawaら)、および米国特許出願公開第2003/0050191号(Bhattら)および第2005/0051053号(Wisnudelら)、並びに同時係属の本願と同一出願人による米国特許出願公開第2008/0008959号(Levanonら)に記載されているような、4−ヒドロキシスチレンから誘導された複数の分岐ヒドロキシスチレン反復単位を有する分岐ポリ(ヒドロキシスチレン)も有用である。例えば、かかる分岐ヒドロキシスチレンポリマーは、ヒドロキシスチレンから、例えば4−ヒドロキシスチレンから誘導された反復単位を含み、当該反復単位は、ヒドロキシ基に対してオルトに位置する反復ヒドロキシスチレン単位(例えば4−ヒドロキシスチレン単位)でさらに置換されていてもよい。これらの分岐ポリマーは、1,000〜30,000、好ましくは1,000〜10,000、より好ましくは3,000〜7,000の質量平均分子量(Mw)を有することができる。さらに、これらの分岐ポリマーは、2未満、好ましくは1.5〜1.9の多分散度を有することができる。分岐ポリ(ヒドロキシスチレン)は、ホモポリマーであっても、あるいは、非分岐ヒドロキシスチレン反復単位を有するコポリマーであってもよい。
【0169】
有用な一次ポリマーバインダーの1つのグループは、ポリ(ビニルフェノール)及びその誘導体である。かかるポリマーは、ビニルフェノールモノマー、すなわち、置換または非置換ビニルフェノールの重合により得られる。置換ビニルフェノール反復単位としては、構造(I)において「a」の反復単位について以下に記載するものが挙げられる。幾つかのビニルフェノールコポリマーが欧州特許出願公開第1,669,803号明細書(Barclayら)に記載されている。
【0170】
他の有用なポリマーバインダーは下記構造(POLYMER):
【0171】
【化10】

【0172】
により表される変性ノボラックまたはレゾール樹脂である。
【0173】
ここで、Yは、
【0174】
【化11】

【0175】
であり、aは90〜99モル%であり(典型的には92〜98モル%)、bは1〜10モル%(典型的には2〜8モル%)であり、R1 及びR3 は独立に水素またはヒドロキシ、アルキルもしくはアルコキシ基であり、R2 は水素またはアルキル基であり、Xはアルキレン、オキシ、チオ、−OC(=O)Ar−、−OC(=O)CH=CH−または−OCO(CH2n4−基(ここで、Arはアリール基である)であり、m及びpは独立に1または2であり、n1は0または5以下の整数(例えば0,1,2または3)であり、n2は0または5以下の整数(例えば0,1または2)であり、n3は0または1(典型的には0)であり、n4は少なくとも1(例えば8以下)であり、Zは−C(=O)OH、−S(=O)2OH、−P(=O)(OH)2または−OP(=O)(OH)2である。
【0176】
一次ポリマーバインダー中に存在するアルキル及びアルコキシ基(R1 、R2 及びR3 の場合)は、置換されていなくても、1または2個以上のハロ、ニトロ、またはアルコキシ基により置換されていてもよく、1〜3個の炭素原子を有することができる。かかる基は、線状、分岐状または環状(すなわち、「アルキル」は、本発明の目的に対して、「シクロアルキル」も包含する)であることができる。
【0177】
Xがアルキレンである場合には、そのアルキレンは1〜4個の炭素原子を有することができ、上記のアルキル及びアルコキシ基と同様に更に置換されていてもよい。さらに、アルキレン基は、環及び鎖中に少なくとも5個の炭素原子を有する置換または非置換シクロアルキレン基であってもよい。Arは、置換または非置換の6または10員炭素環式芳香族基、例えば置換もしくは非置換フェニル及びナフチル基である。典型的にはArは非置換フェニル基である。
【0178】
幾つかの実施態様において、ポリマーバインダーは、aが92〜98モル%であり、bが2〜8モル%であり、Zが−C(=O)OHである構造(POLYMER)により表される反復単位を含み、層の全乾燥質量を基準にして乾燥被覆量15〜100質量%で存在する。
【0179】
画像形成性層中に存在し得る他のポリマーバインダーとしては、ノボラック樹脂及びレゾール樹脂などのフェノール系樹脂が挙げられ、かかる樹脂は、1又は2以上のペンダントジアゾ基、カルボン酸エステル基、リン酸エステル基、スルホン酸エステル基、スルフィン酸エステル基、またはエーテル基を含んでもよい。フェノール系樹脂のヒドロキシ基は、例えば米国特許第6,218,083号明細書(McCulloughら)及び国際公開第99/001795号(McCulloughら)に記載されているような−T−Z基(式中、Tは極性基を表し、Zは非ジアジド官能基を表す)に変換することができる。ヒドロキシ基は、例えば米国特許第5,705,308号明細書(Westら)及び米国特許第5,705,322号明細書(Westら)に記載されているようなo−ナフトキノンジアジド部分を含有するジアゾ基により誘導体化されていてもよい。他の有用なポリマーバインダー樹脂としては、欧州特許出願公開第737,896号明細書(Ishizukaら)に記載されているようなアクリレートコポリマー、例えば米国特許第6,391,524号明細書(Yatesら)、独国特許第10 239 505号明細書(Timpeら)および国際公開第2004081662号(Memeteaら)に記載されているようなセルロースエステル及びポリ(ビニルアセタール)が挙げられる。
【0180】
これらのさらなるポリマーバインダーは、画像形成性層の全乾燥質量を基準にして15〜100質量%(典型的には30〜95質量%)の量で画像形成性層中に存在することができる。
【0181】
1つの画像形成性層は、各種添加剤、例えば分散剤、保湿剤、殺生物剤、可塑剤、コーティング特性及び他の特性を目的として界面活性剤、増粘剤、書き込まれた画像の可視化を可能にする染料または着色剤、pH調整剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、現像助剤、レオロジー調整剤又はこれらの組み合わせ、あるいは平版印刷技術分野で通常使用されている他の添加剤を通常の量でさらに含んでもよい。
【0182】
単層画像形成性要素は、通常のコーティングまたは積層法を使用して基材(及びその上に設けられた任意の他の親水性層)の表面上に層配合物を適用することにより作製できる。例えば、所望の成分を適切なコーティング溶剤に分散又は溶解させ、得られた配合物を、適切な装置及び方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティングなどを使用して、基材に逐次的又は同時に適用できる。これらの配合物は、適切な支持体(例えば印刷機上印刷シリンダーまたは印刷スリーブ)上に吹き付けることによって適用することもできる。
【0183】
単層の画像形成性層のコーティング量は、0.5〜2.5g/m2 、典型的には1〜2g/m2 である。
【0184】
画像形成性層配合物を適用するために使用される溶剤の選択は、当該配合物中のポリマー材料及び他の成分の性質に依存する。一般的に、画像形成性層配合物は、当該技術分野でよく知られた条件及び技術を使用して、アセトン、メチルエチルケトン、または他のケトン、テトラヒドロフラン、1−メトキシプロパン−2−オール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、及びそれらの混合物からコーティングされる。
【0185】
あるいは、当該層(1又は2以上)は、通常の押出コーティング法により、それぞれの層の組成物の溶融混合物から適用することができる。典型的には、かかる溶融混合物は、揮発性有機溶剤を含有しない。
【0186】
上記の各種の層配合物の適用の間に、他の配合物をコーティングする前に溶剤(1種又は複数種)を除去するために、中間乾燥工程を用いることができる。乾燥工程は、各種の層の混合を防止するのにも役立つ。
【0187】
本発明の代表的な単層ポジ型画像形成性要素は下記実施例9に記載する。
【0188】
多層画像形成性要素
一般的に、多層画像形成性要素は、基材と、内層(当該技術分野では「下層」としても知られている)と、内層上に配設された外層(当該技術分野では「最上層」または「トップコート」としても知られている)を含む。熱画像形成前は、外層は、一般的に、現像に割り当てられる通常の時間内でアルカリ性現像液に溶解しないまたはアルカリ性現像液により除去されないが、熱画像形成後は、外層の露光領域はアルカリ性現像液などの現像液に可溶性である。内層も一般的に現像液により除去される。輻射線吸収性化合物(上記)もかかる画像形成性要素中に存在することができ、典型的には内層中に存在するが、必要に応じて内層と外層との間の別個の層中に存在してもよい。
【0189】
画像形成性要素は、適切な基材に内層組成物を適切に適用することにより形成される。この基材は、未処理または未被覆の支持体であることができるが、通常は、内層組成物の適用前に、上記のような様々な方法で処理またはコーティングされる。基材は、一般的に親水性表面を有するか、あるいは、外層組成物よりも親水性の高い表面を少なくとも有する。基材は支持体を含み、その支持体は、平版印刷版などの画像形成性要素を製造するために通常使用されているいかなる材料から構成されたものであってもよい。かかる基材についてのさらなる詳細は、ネガ型画像形成性層に関して先に示したとおりである。
【0190】
内層は、外層と基材の間に配設される。典型的には、内層は基材(上記のような任意の親水性コーティングを含む)上に直接配置される。内層は、第1のポリマーバインダーを含み、この第1のポリマーバインダーは、低pH現像液により除去可能であり、典型的には現像液に可溶であり、現像液のスラッジ化学を低減する。さらに、第1のポリマーバインダーは、通常、外層をコーティングするために使用される溶剤に不溶性であり、そのため、内層を溶解させずに内層上に外層をコーティングすることができる。必要に応じて、内層にこれらのポリマーバインダーの混合物を使用できる。第1のポリマーバインダーは、先により詳しく説明したペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーであることができる。かかるポリマーバインダーは、一般的に、乾燥した内層の全質量の少なくとも10質量%、一般的には60〜95質量%の量で存在する。
【0191】
内層に有用な他のポリマーバインダーとしては、(メタ)アクリロニトリルポリマー、カルボキシ基を含む(メタ)アクリル樹脂、ポリビニルアセタール、マレイン酸化ウッドロジン、スチレン−無水マレイン酸コポリマー、(メタ)アクリルアミドポリマー、例えばN−アルコキシアルキルメタクリルアミドから誘導されたポリマー、N−置換環状イミドから誘導されたポリマー、ペンダント環状尿素基を有するポリマー、及びこれらの組み合わせが挙げられる。さらに他の有用なポリマーバインダーとしては、N−置換環状イミド(特にN−フェニルマレイミド)、(メタ)アクリルアミド(特に、メタクリルアミド)、ペンダント環状尿素基を有するモノマー及び(メタ)アクリル酸(特にメタクリル酸)から誘導されたポリマーが挙げられる。このタイプのポリマーバインダーとしては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシル−マレイミド、N−(4−カルボキシフェニル)マレイミド、N−ベンジルマレイミド又はこれらの混合物から誘導された反復単位20〜75モル%、典型的には35〜60モル%と、アクリルアミド、メタクリルアミド又はこれらの混合物から誘導された反復単位10〜50モル%と、メタクリル酸から誘導された反復単位5〜30モル%を含むコポリマーが挙げられる。例えばヒドロキシエチルメタクリレートなどの他の親水性モノマーを、メタクリルアミドの一部又はすべての代わりに使用してもよい。例えばアクリル酸などの他のアルカリ可溶なモノマーを、メタクリル酸の一部又は全部の代わりに使用してもよい。必要に応じて、これらのポリマーは、(メタ)アクリロニトリル又はN−[2−(2−オキソ−1−イミダゾリジニル)エチル]メタクリルアミドから誘導された反復単位も含んでよい。
【0192】
さらに他の有用なポリマーバインダーは、カルボキシ基を有するエチレン不飽和重合性モノマー(例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及び当該技術分野で知られている他の類似のモノマー(アクリル酸及びメタクリル酸が好ましい))から誘導された5モル%〜30モル%と、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド又はこれらの混合物から誘導された反復単位20モル%〜75モル%と、必要に応じて、メタクリルアミドから誘導された反復単位5モル%〜50モル%と、下記構造:
CH2=C(R2)−C(=O)−NH−CH2−OR1
[式中、R1はC1〜C12アルキル、フェニル、C1〜C12置換フェニル、C1〜C12アラルキル、又はSi(CH33であり、R2 は水素又はメチルである]
のモノマー化合物から誘導された1又は2以上の反復単位3モル%〜50モル%(典型的には10モル%〜40モル%)を重合した形態で含むことができる。これらのポリマー材料のうちの幾つかのものの製造方法は米国特許第6,475,692号(Jarek)に開示されている。
【0193】
内層に対してさらなる有用なポリマーバインダーは、例えば米国特許第7,144,661号(Rayら)、第7,163,777号(Rayら)および第7,223,506号(Kitsonら)、並びに米国特許出願公開第2006/0257764号(Rayら)および第2007/0172747号(Rayら)に記載されている。
【0194】
さらなるポリマーバインダーは、内層中の主たるポリマー材料である。すなわち、第1のポリマーバインダーは、内層中の全ポリマー材料の50%超かつ100%以下(乾燥質量)を構成する。さらに他の有用なポリマー材料としては、N−フェニルマレイミドから誘導された反復単位を1〜30モル%と、メタクリルアミドから誘導された反復単位を1〜30モル%と、アクリロニトリルから誘導された反復単位を20〜75モル%と、構造(XI):
【0195】
【化12】

【0196】
(式中、R22はOH、COOH又はSO2NH2であり、R23はH又はメチルである)
を有する1種又は2種以上のモノマーから誘導された反復単位を20〜75モル%と、任意選択的に、構造(XII):
【0197】
【化13】

【0198】
(式中、R24はOH、COOH又はSO2NH2であり、R25はH又はメチルである)
を有する1種又は2種以上のモノマーから誘導された反復単位を1〜30モル%、3〜20モル%とを含むコポリマーが挙げられる。
【0199】
内層は、活性化メチロール及び/又は活性化アルキル化メチロール基を有する樹脂である1種又は2種以上の第2のさらなるポリマー材料を含んでもよい。当該第2のさらなるポリマー材料としては、例えば、レゾール樹脂及びそれらのアルキル化類似体、メチロールメラミン樹脂及びそれらのアルキル化類似体(例えばメラミン−ホルムアルデヒド樹脂)、メチロールグリコールウリル樹脂及びアルキル化類似体(例えばグリコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂)、チオウレア−ホルムアルデヒド樹脂、グアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、ならびにベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂が挙げられる。市販のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂及びグルコールウリル−ホルムアルデヒド樹脂としては、例えば、CYMEL(登録商標)樹脂(Dyno Cyanamid)とNIKALAC(登録商標)樹脂(Sanwa Chemical)が挙げられる。活性化メチロール及び/又は活性化アルキル化メチロール基を有する上記の樹脂は、好ましくは、レゾール樹脂又はレゾール樹脂の混合物である。レゾール樹脂は当業者にはよく知られている。それらは、過剰のフェノールを用いて、塩基性条件下、フェノール類とアルデヒド類との反応により調製される。市販のレゾール樹脂としては、例えば、GP649D99レゾール(Georgia Pacific)とBKS−5928レゾール樹脂(Union Carbide)が挙げられる。有用な第2のさらなるポリマー材料としては、N−フェニルマレイミドから誘導された反復単位を25〜75モル%、35〜60モル%と、メタクリルアミドから誘導された反復単位を10〜50モル%、好ましくは15〜40モル%と、メタクリル酸から誘導された反復単位を5〜30モル%、好ましくは10〜30モル%とを含むコポリマーも挙げられる。これらの第2のさらなるコポリマーは、米国特許第6,294,311号(Shimazuら)及び第6,528,228号明細書(Savariar−Hauckら)に開示されている。
【0200】
ほとんどの実施態様において、内層は、700〜1400nm、好ましくは700〜1200nmの輻射線を吸収する輻射線吸収性化合物(これは、通常、赤外線吸収性化合物)をさらに含む。有用な輻射線吸収性化合物の例は、ネガ型画像形成性要素に関連して先に記載したものである。ほとんどの実施態様において、赤外線吸収性化合物は内層にのみ存在する。
【0201】
輻射線吸収性化合物は、当該化合物が含まれている層の全乾燥質量を基準にして一般的には少なくとも0.5%かつ30%以下、典型的には3〜25%の量で多層画像形成性要素中に存在することができる。使用すべき化合物の個々の量は当業者が容易に決定できる。
【0202】
内層は、界面活性剤、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、増粘剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤、酸化防止剤、着色剤、有機または無機粒子などの他の成分を含んでもよい。
【0203】
内層は、一般的に、0.5〜2.5g/m2、好ましくは1〜2g/m2の乾燥コーティング被覆量を有する。上記のポリマーバインダーは全体として、一般的に、乾燥した層の全質量を基準として、少なくとも50質量%、好ましくは60〜90質量%を構成し、この量は、他にどのようなポリマー及び化学成分が存在するかに応じて変わりうる。上記のように、ペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーは、内層中の唯一のポリマーバインダーであるか、またはいくつかのポリマーバインダーのうちの1つであることができる。任意のさらなるポリマーバインダーが、内層の全乾燥質量を基準として5〜45質量%の量で存在することができる。
【0204】
画像形成性要素の外層は、内層の上方に配置され、ほとんどの実施態様において内層と外側の層との間に中間層はない。外層は、上記の第1のポリマーバインダーとは通常異なる第2のポリマーバインダーを含む。この第2のポリマーバインダーは、単層画像形成性要素について先に定義したポリマーバインダーのうちの1または2種以上であることができる。他の有用なポリマーバインダーは例えば米国特許第7,163,770号明細書(Saraiyaら)および米国特許第7,160,653号(Huangら)に記載されている。しかしながら、外層は、上記のペンダント1H-テトラゾール基を有するポリマーを含んでもよい。かかるポリマーは、外層中にのみ存在するか、あるいは、ペンダント1H−テトラゾール基を有する同じまたは異なるポリマーが内層と外層の両方に存在してもよい。多くの実施態様において、外層は、輻射線吸収性化合物を実質的に含まない。これは、輻射線吸収性化合物のいずれも外層に意図的に組み込まれず、ごくわずかな量が他の層から外層中に拡散するということを意味する。しかしながら、他の実施態様において、例えば、先に記載した中間層におけるように、欧州特許出願公開第1,439,058号(Watanabeら)および欧州特許第1,738,901号(Lingierら)に記載されているように、輻射線吸収性化合物は外層だけに存在するか、あるいは外層と内層の両方に存在することがある。
【0205】
1種または2種以上の第2のポリマーバインダーは、外層中に、外層の全乾燥質量を基準として、15〜100質量%、典型的には70〜98質量%の乾燥被覆量で存在する。
【0206】
外層は着色剤を含んでもよい。有用な着色剤は、例えば米国特許第6,294,311号(上記)に記載されており、トリアリールメタン染料、例えばエチルバイオレット、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーン、ブリリアントグリーン、ビクトリアブルーB、ビクトリアブルーR及びビクトリアピュアブルーBOなどが挙げられる。これらの化合物は、現像された画像形成性要素において非露光領域と露光領域との違いを際立たせるコントラスト染料として機能することができる。また外層は、必要に応じて、コントラスト染料、プリントアウト染料、コーティング界面活性剤、分散助剤、保湿剤、殺生物剤、増粘剤、乾燥剤、消泡剤、保存剤及び酸化防止剤を含有していてもよい。
【0207】
外層は、一般的に、0.2〜2g/m2、典型的には0.4〜1.5g/m2の乾燥コーティング被覆量を有する。
【0208】
内層と外層との間に、それら内層及び外層に接する別個の層があってもよい。この別個の層は、輻射線吸収性化合物の内層から外層への移行を最低限に抑えるためのバリヤーとして機能することができる。この別個の「バリヤー」層は、一般的に、アルカリ性現像液に可溶性である第3のポリマー材料を含んで成る。この第3のポリマーバインダーが、内層中の第1のポリマーバインダー(1種又は複数種)と異なる場合には、内層の第1のポリマーバインダーが不溶性である少なくとも1種の有機溶剤に、当該第3のポリマーバインダーが可溶であることが好ましい。有用な第3のポリマーバインダーはポリ(ビニルアルコール)である。一般的に、このバリヤー層は、内層の1/5未満の厚さのものであるべきであり、典型的には内層の1/10未満の厚さのものであるべきである。
【0209】
あるいは、内層と外層の間に、赤外線吸収性化合物を含む別個の層があってもよく、赤外線吸収性化合物は内層中にも存在してよく、別個の層中にのみ存在していてもよい。
【0210】
多層画像形成性要素は、通常のコーティング法又は積層法を使用して、親水性基材(及びその上に配置された任意の他の親水性層)の表面の上に内層配合物を適用し、次に、その内層上に外層配合物を適用することによって製造できる。内層配合物と外層配合物が混合するのを避けることが重要である。
【0211】
例えば、多層画像形成性要素を、
第1のポリマーバインダーおよび輻射線吸収性化合物を含む内層と、
第1のポリマーバインダーとは通常異なり、画像形成輻射線への露光によりアルカリ性現像液に可溶性となる第2のポリマーバインダーを含むインク受容性外層と、
を用いて作製することができる。
【0212】
内層と外層は、所望の成分を適切なコーティング溶剤に分散又は溶解させ、得られた配合物を、適切な装置及び方法、例えばスピンコーティング、ナイフコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティング、スロットコーティング、バーコーティング、ワイヤロッドコーティング、ローラーコーティング又は押出ホッパーコーティングを使用して、基材に逐次的又は同時に適用できる。これらの配合物は、適切な支持体(例えば印刷機上印刷シリンダー)上に吹き付けることによって適用することもできる。
【0213】
内層及び外層の両方をコートするのに使用される溶剤の選択は、上記配合物中の第1及び第2のポリマーバインダー、他のポリマー材料、及び他の成分の性質に依存する。内層配合物と外層配合物が混合することを防止するため、又は外層配合物を適用するときに内層が溶解するのを防止するために、外層配合物は、内層の第1ポリマーバインダー(1種又は複数種)が不溶である溶剤からコートされるべきである。
【0214】
一般的に、内層配合物は、メチルエチルケトン(MEK)、1−メトキシ−2−プロピルアセテート(PMA)、γ−ブチロラクトン(BLO)及び水の混合物、MEK、BLO、水及び1−メトキシプロパン−2−オール(Dowanol(登録商標)PM又はPGMEとしても知られている)の混合物、ジエチルケトン(DEK)、水、乳酸メチル及びBLOの混合物、DEK、水及び乳酸メチルの混合物、又は乳酸メチル、メタノール及びジオキソランの混合物からコートされる。
【0215】
外層配合物は、内層を溶解しない溶剤又は溶剤混合物からコートすることができる。この目的に応じた典型的な溶剤としては、ブチルアセテート、iso−ブチルアセテート、メチルiso−ブチルケトン、DEK、1−メトキシ−2−プロピルアセテート(PMA)、iso−プロピルアルコール、PGMA及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特に有用なものは、DEKとPMAの混合物、又はDEKとPMAとイソプロピルアルコールの混合物である。
【0216】
あるいは、内層と外層は、押出コーティング法により、それぞれの層の組成物の溶融混合物から適用することができる。典型的には、かかる溶融混合物は、揮発性有機溶剤を含有しない。
【0217】
上記の各種の層配合物の適用の間に、他の配合物をコーティングする前に溶剤(1種又は複数種)を除去するために、中間乾燥工程を用いることができる。乾燥工程は、各種の層の混合を防止するのにも役立つ。
【0218】
層を乾燥後、要素を、乾燥された層からの水分の除去を妨げる条件下、40〜90℃での少なくとも4時間(例えば少なくとも20時間)の熱処理によりさらに「状態調整」してもよい。例えば、熱処理は、50〜70℃で少なくとも24時間行われる。熱処理中に、画像形成性要素を、前駆体から水分が除去されるのを妨げる有効なバリヤーを提供する水不透過性シート材料で包むか当該水不透過性シート材料で覆うか、あるいは、画像形成性要素の熱処理は、相対湿度が少なくとも25%に調節された環境中で行われる。さらに、画像形成性要素の縁部を水不透過性シート材料で封止することができ、この場合、水不透過性シート材料はポリマーフィルム又は金属箔であり、ポリマーフィルム又は金属箔は、画像形成性要素の縁部を封止する。
【0219】
実施態様によっては、この熱処理は、少なくとも100個の画像形成性要素を含む積層体で行うことができ、あるいは、画像形成性要素が箔状またはウェブ状である場合に行うことができる。積層体で状態調整された場合には、個々の画像形成性要素は、適切な挿間紙により分離されていてもよい。かかる紙は幾つかの商業的供給者から入手可能である。挿間紙は、状態調整後、パッキング、輸送および顧客による使用中に、画像形成性要素の間にあってもよい。
【0220】
本発明の多層画像形成性要素を製造するための代表的な方法を下記の本発明の実施例6〜8に示す。
【0221】
画像形成条件
画像形成性要素は、任意の有用な形態および大きさまたは形状をとることができ、限定されないが、印刷版前駆体、印刷シリンダー、印刷スリ−ブ(中空または中実の両方)及び印刷テープ(可撓性印刷ウエブを含む)がある。
【0222】
使用中、本発明のポジ型およびネガ型画像形成性要素は、波長150〜1500nmで、好適な画像形成または露光輻射線の源に暴露される。例えば、画像形成は、例えば、少なくとも750nmかつ1400nm以下、典型的には少なくとも700nmかつ1200nm以下の波長で、例えば赤外線レーザーからの画像形成または露光輻射線を使用して行うことができる。必要に応じて、同じ時間で、複数の波長の画像形成輻射線を使用して画像形成を行うことができる。他の画像形成性要素、特にネガ型画像形成性要素を、UV、「紫色光」または可視画像形成輻射線の好適な供給源に暴露させることができる。
【0223】
そのため、本発明の幾つかの実施態様において、画像形成性要素は250〜475nmの波長で行われる画像露光または750〜1250nmの波長で行われる画像露光に対する分光感度を有することができる。
【0224】
画像形成性要素を露光するために使用されるレーザーは、その信頼性及びメンテナンスの少なさのために、通常、ダイオードレーザーであるが、他のレーザー、例えば気体又は固体レーザーも使用できる。レーザー画像形成のための出力、強度及び露光時間の組み合わせは、当業者は容易に分かるであろう。
【0225】
画像形成装置は、単独でプレートセッターとして機能することができるか、あるいは、平版印刷機内に直接組み込まれていてもよい。後者の場合、印刷は、画像形成および現像の直後に開始することができ、これにより印刷機設定時間をかなり短縮することができる。画像形成装置は、画像形成性部材をドラムの内側又は外側の円筒面に装着した状態で、平台記録器として、又はドラム型記録器として構成することができる。有用な画像形成装置の一例は、波長830nmの近赤外線を放出するレーザーダイオードを含む、Eastman Kodak Company(カナダ国ブリティッシュコロンビア州バーナビー所在)から入手可能な複数の型式のCreo Trendsetter(登録商標)プレートセッターとして入手することができる。他の好適な画像形成源としては、波長1064nmで作動するCrescent 42Tプレートセッター(イリノイ州シカゴ所在のGerber Scientificから入手可能)、及びScreen PlateRite 4300シリーズ又は8600シリーズのプレートセッター(イリノイ州シカゴ所在のScreenから入手可能)が挙げられる。さらなる有用な輻射線源としては、要素が印刷版シリンダーに取り付けられている間に要素に画像を形成するために使用することができるダイレクト画像形成印刷機が挙げられる。好適なダイレクト画像形成印刷機の例としては、Heidelberg SM74−DI印刷機(オハイオ州デイトン所在のHeidelbergから入手可能)が挙げられる。
【0226】
赤外線による画像形成は、一般的に、画像形成性層の感度に依存して、少なくとも30mJ/cm2かつ500mJ/cm2以下、典型的には少なくとも50mJ/cm2かつ300mJ/cm2以下の画像形成エネルギーで行うことができる。
【0227】
有用なUVおよび「紫」レーザー画像形成装置としては、Prosetter(独国のHeidelberger Druckmaschinen製)、Luxel V−8(日本国のFUJI製)、Python(英国Highwater)、MakoNews、Mako 2, Mako 4またはMako 8(米国ECRM製)、Micra(日本国Screen製)、Polaris and Advantage(ベルギーAGFA製)、Laserjet(独国Krause製)、およびAndromeda(登録商標)A750M(独国Lithotech)のイメージセッターが挙げられる。
【0228】
スペクトルのUV乃至可視領域、特にUV領域(例えば少なくとも250nmかつ450nm以下)の画像形成輻射線は、一般的に、少なくとも0.01mJ/cm2かつ0.5mJ/cm2以下、典型的には少なくとも0.02mJ/cm2かつ0.1mJ/cm2以下のエネルギーを使用して達成できる。例えば、少なくとも0.5kW/cm2かつ50kW/cm2以下、典型的には少なくとも5kW/cm2かつ30kW/cm2以下の範囲内の出力密度でUV/可視光感受性画像形成性要素を画像形成することが望ましい。
【0229】
ネガ型画像形成性要素の画像形成後、潜像の形成を促進するために加熱工程を用いてよい。この加熱工程は、いわゆる「予熱装置」において実現できる。当該予熱装置は、画像形成された要素を現像する処理機と別の装置であっても、画像形成された要素を現像する処理機に組み込まれていてもよい。様々なタイプの予熱装置が存在する。最も一般的な予熱装置は、画像形成された要素を加熱するために、赤外線もしくは熱風循環またはこれらの組み合わせを使用する。この目的のために使用される温度は70〜200℃、典型的には90〜160℃である。
【0230】
画像形成された要素を現像する前に、特に保護酸素バリヤーまたはトップコートを有するネガ型要素のために、プレリンス工程を行うことができる。このプレリンス工程は、独立型装置で行うか、または画像形成された要素を水で手動ですすぐことにより行われるか、あるいは、画像形成された要素を現像するために使用される処理機内に組み込まれた線状装置で行うことができる。フリーラジカル生成輻射線感受性組成物および画像形成性要素の場合、予熱装置およびプレリンス装置は通常、画像形成された要素を現像するために使用される処理機内に組み込まれる。
【0231】
現像及び印刷
画像形成後、予熱工程の必要有りまたは無しに、画像形成された要素は、コンベンショナルな処理及び水性現像液などの水性溶液を使用して「印刷機外(off-press)」現像することができる。
【0232】
当業者は、本発明のネガ型画像形成性要素のための最良の現像液が単層または多層ポジ型画像形成性要素のための最良の現像液と異なることがあるであろうことを理解するであろう。当業者は、当該技術分野での技術水準および教示から、本発明の所与のタイプの画像形成性要素にどの現像液が最良であるかを、特に下記の実施例のガイダンスを考慮して決定することができるであろう。
【0233】
現像液組成物は、通常、界面活性剤、キレート化剤(例えばエチレンジアミン四酢酸の塩)、有機溶剤(例えばベンジルアルコール)、及びアルカリ成分(例えば無機メタケイ酸塩、有機メタケイ酸塩、水酸化物、重炭酸塩)を含む。現像液のpHは典型的には4〜14である。画像形成された要素は、一般的に、コンベンショナルな処理条件を用いて現像される。水性アルカリ性現像液および有機溶剤含有アルカリ性現像液を使用できる。
【0234】
有機溶剤含有アルカリ性現像液は、一般的に、水に混和性または分散性である1種または2種以上の有機溶剤の単相溶液であり、一般的に12未満のpHを有する。有用な有機溶剤としては、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドとのフェノールの反応生成物[例えばエチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)]、ベンジルアルコール、モノ−、ジ−もしくはトリエチレングリコールと炭素原子数6以下の酸とのエステル及びモノ−、ジ−もしくはトリプロピレングリコールと炭素原子数6以下の酸とのエステル、並びにモノ−、ジ−もしくはトリエチレングリコールのエーテル、ジエチレングリコールのエーテル、および炭素原子数6以下のアルキル基を有するモノ−、ジ−もしくはトリプロピレングリコールのエーテル、例えば2−エチルエタノール及び2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤は一般的に、現像液の総重量を基準として0.5〜15%の量で存在する。
【0235】
本発明において有用な代表的な現像液としては、ND−1ディベロッパー、955ディベロッパ−、956ディベロッパー、986ディベロッパー、ディベロッパー980および956ディベロッパー(Eastman Kodak Companyから入手可能)、HDN−1ディベロッパーおよびLP−DSディベロッパー(Fuji Photoから入手可能)、並びにEN 232ディベロッパーおよびPL10ディベロッパー(Agfaから入手可能)が挙げられる。
【0236】
有用な水性アルカリ性現像液は、一般的に、少なくとも7のpHを有し、好ましくは少なくとも11かつ13.5以下のpHを有する。かかる現像液としては3000ディベロッパー、9000ディベロッパー、GOLDSTAR(登録商標)ディベロッパー、GOLDSTAR(登録商標)プラス・ディベロッパー、GOLDSTAR(登録商標)Premiumディベロッパー、GREENSTARディベロッパー、ThermalProディベロッパー、PROTHERMディベロッパー、MX1813ディベロッパー、およびMX1710ディベロッパー(全てEastman Kodak Companyから入手可能)、並びにFuji HDP7ディベロッパー(Fuji Photo)、およびEnergy CTPディベロッパー(Agfa)が挙げられる。これらの組成物は、一般的に、界面活性剤、キレート化剤(例えばエチレンジアミン四酢酸塩)、およびアルカリ性成分(例えば無機メタシリケート、有機メタシリケート、水酸化物、および炭酸水素塩)も含む。
【0237】
かかるアルカリ性現像液は、外層への現像液の攻撃を抑制する現像液に可溶性の化合物である1または2種以上の「コーティング攻撃抑制剤(coating−attack suppressing agents)」を含んでもよい。「現像液に可溶性」とは、十分な当該1または2種以上の抑制剤が現像液に溶解して現像液による攻撃を抑制することを意味する。これらの化合物の混合物を使用できる。典型的には、コーティング攻撃抑制剤は、反復する−(CH2−CHRa−O−)−単位(Raは水素またはメチルもしくはエチル基である)を含む現像液に可溶性のポリエトキシル化、ポリプロポキシル化、またはポリブトキシル化化合物である。各剤は同じまたは異なる反復単位(ランダムまたはブロック型で)を有してよい。このタイプの代表的な化合物としては、ポリグリコールおよび上記の反復単位を有する重縮合生成物が挙げられるが、これらに限定されない。各化合物および代表的な供給元、商品名、または製造方法の例は、例えば米国特許代6,649,324号明細書(Fiebagら)に記載されている。
【0238】
現像後にすすぎ後工程およびガム引き工程なしに(いわゆる「単浴現像」)、画像形成された要素を現像するのに、4〜9のpHを有する現像液が有用である。かかる現像液は、ほとんどの場合、現像された版を指紋から保護するため、および印刷版で使用された場合の版のトーニングを防止するために、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、ポリ(アクリル酸)のような親水性ポリマー、または他の親水性ポリマーを含む。
【0239】
一般的に、現像液を含むアプリケーターで外層を擦るか又はワイピングすることにより、画像形成された要素に現像液が適用される。あるいは、画像形成された要素に、現像液をブラシ塗布することもでき、又は露光領域を除去するのに十分な力で外層に吹付けることにより、現像液を適用することができる。さらに、現像液中に画像形成された要素を浸漬することもできる。全ての場合において、印刷室の化学薬品に対して優れた耐性を有する平版印刷版において、現像された画像が生成する。これらの現像プロセスは、標準的な滞留時間並びに循環およひ補充率を使用して適切な現像処理機または装置で実施できる。
【0240】
印刷機外現像に続いて、画像形成された要素を水で濯ぎ、そして好適な様式で乾燥させることができる。乾燥させた要素を、コンベンショナルなガム引き用溶液(好ましくはアラビアゴム減感溶液)で処理することもできる。さらに、紫外線又は可視光へのブランケットまたはフラッド露光を伴うか又は伴わずに、ポストベーキング作業を実施することもできる。あるいは、ポストベーキング作業なしで、ブランケット紫外線または可視光露光を行うことができる。
【0241】
別の実施態様において、画像形成後で現像前の露光後ベーキング工程有りまたは無しに、画像形成された要素を以下に記載するようにガム(またはアラビアガム)を使用して「印刷機外」で現像することができる。ガム溶液は、典型的には、印刷版の平版印刷画像を汚染(例えば、酸化、指紋、塵埃または引掻き傷)から保護することのできる1種または2種以上の表面活性化合物を含む水溶液である。当該技術分野では、一般的に、2つのタイプの「ガム」溶液が知られている:(1)平版印刷版の製造のために使用される通常のプリベーク温度で蒸発しない1または2種以上の化合物、典型的には、アニオンまたは非イオン界面活性剤を通常含む「ベーク」、「ベーキング」または「プリベーク」ガム、および、(2)1または2種以上の親水性ポリマー(合成および天然由来の両方、たとえば、アラビアゴムセルロール化合物、(メタ)アクリル酸ポリマー、およびポリサッカライド)を通常含む「フィニッシャー」ガム。
【0242】
現像のためにこのガムを使用することによって、少なくとも4かつ14以下のpHを有するコンベンショナルな水性現像液組成物を避けることができる。
【0243】
ガムは、希釈または濃縮形態で用意できる。下記成分の量は、本発明の実施で使用することがある希釈ガムでの量を指す。しかし、濃縮ガムを使用でき、各種成分(例えば、アニオン界面活性剤)の量はそれに応じて増えることが理解されるべきである。
【0244】
ガムは、適切な量の塩基を使用して調節された場合に3よりも高く、かつ9以下のpHを一般的に有する水溶液である。ガムの粘度は、適切な量の増粘化合物、例えばポリ(ビニルアルコール)またはポリ(エチレンオキシド)などを添加することにより1.7〜5cPの値に調節することができる。
【0245】
さらに、これらのガムは、1または2種以上のアニオン界面活性剤を唯一の必須成分として含むが、それでも必要に応じて任意の成分(下記)が存在していてもよい。
【0246】
有用なアニオン界面活性剤としては、カルボン酸基、スルホン酸基またはリン酸基(またはそれらの塩)を有するものが挙げられる。スルホン酸(またはその塩)基を有するアニオン界面活性剤が特に有用である。例えば、アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩、アビエテート、ヒドロキシアルカンスルホネート、アルカンスルホネート、ジアルキルスルホスクシネート、アルキルジフェニルオキシドジスルホネート、直鎖アルキルベンゼンスルホネート、分岐アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホネート、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテルの塩、ナトリウムN−メチル−N−オレイルタウレート、モノアミドジナトリウムN−アルキルスルホスクシネート、石油スルホネート、硫酸化ひまし油、硫酸化獣脂、脂肪族アルキルエステルの硫酸エステルの塩、アルキル硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル、脂肪族モノグリセリドの硫酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルの硫酸エステルの塩、アルキルリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステルの塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステルの塩、スチレンマレイン酸無水物コポリマーの部分鹸化化合物、オレフィン−マレイン酸無水物コポリマーの部分鹸化化合物、およびナフタレンスルホネートホルマリン縮合物が挙げられる。アルキルジフェニルオキシドジスルホネート(例えばドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム)、アルキル化ナフタレンスルホン酸、スルホン化アルキルジフェニルオキシド、およびメチレンジナフタレンスルホン酸が一次または「第1」のアニオン界面活性剤として特に有用である。幾つかの市販の例を下記実施例に記載する。かかる界面活性剤は、McCutcheon’s Emulsifiers & Detergents,2007版に記載されているような様々な供給者から入手可能である。
【0247】
かかる界面活性剤の具体例としては、ドデシルフェノキシベンゼンジスルホン酸ナトリウム、アルキル化ナフタレンスルホネートのナトリウム塩、メチレン−ジナフタレン−ジスルホン酸二ナトリウム、ドデシル−ベンゼンスルホン酸ナトリウム、(ジ)スルホン化アルキルジフェニルオキシド、ペルフルオロアルキルスルホン酸アンモニウム又はカリウム、及びジオクチル−スルホコハク酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0248】
1または2種以上のアニオン界面活性剤が一般的に、少なくとも1質量%、典型的には1〜45質量%または3〜30質量%(ガムの質量を基準)の量で存在する。
【0249】
2または3種以上のアニオン界面活性剤(「第1」、「第2」など)を組み合わせて使用できる。かかる混合物において、第1の界面活性剤、例えばアルキルジフェニルオキシドジスルホネートは、一般的に少なくとも1質量%、典型的には3〜30質量%の量で存在することができる。第2の界面活性剤は、少なくとも0.1質量%、典型的には2〜30質量%の量で存在することができる。第2またはさらなるアニオン界面活性剤は、置換芳香族アルカルアルキルスルホネートおよび脂肪族アルカリサルフェートから選択することができる。アニオン界面活性剤の1つの具体的な組み合わせとしては、1または2種以上のアルキルジフェニルオキシドと1または2種以上の芳香族アルカリアルキルスルホネート(例えばアルカリアルキルナフタレンスルホネート)が挙げられる。
【0250】
ガムは、欧州特許第1,751,625号明細書(上記)の[0029]に記載されているような非イオン界面活性剤、または[0024]に記載されているような親水性ポリマーを含んでもよい。特に有用な非イオン界面活性剤としては、Mazol(登録商標)PG031−K(トリグリセロールモノオレエート)、Tween(登録商標)80(ソルビタン誘導体)、Pluronic(登録商標)L62LF(プロピレンオキシドとエチレンオキシドのブロックコポリマー)、およびZonyl(登録商標)FSN(フルオロカーボン)、並びに印刷版表面にガムをうまくコーティングするための非イオン界面活性剤、例えば非イオン性ポリグリコールが挙げられる。これらの非イオン界面活性剤は、10質量%以下、通常2質量%未満の量で存在することができる。
【0251】
ガムのための他の任意成分としては、無機塩(例えば米国特許出願公開第2005/0266349号明細書の[0032]に記載されているものなど)、湿潤剤(例えばグリコール)、金属キレート化剤、防腐剤、消泡剤、インク受容剤(例えば米国特許第‘349号に記載されているものなど)、および上記のような増粘剤が挙げられる。かかる成分の量は当該技術分野で知られている。カルシウムイオンキレート化剤は特に有用であり、カルシウムイオンキレート化剤としては、ポリアミノポリカルボン酸、アミノポリカルボン酸、またはそれらの塩[例えば、エチレンジアミン四酢酸の塩(EDTAナトリウム塩)など]、有機ホスホン酸およびそれらの塩、ならびにホスホノアルカントリカルボン酸およびそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。有機アミンも有用である。キレート化剤は、ガム中に0.001〜1質量%の量で存在することができる。
【0252】
一般的に、ガムは、外層にガムをラビング、吹き付け、噴射、浸漬、コーティングまたはワイピングすることによって、あるいは、ローラー、含浸パッドまたはガムを含むアプリケーターによって、画像形成された要素に適用される。例えば、画像形成された要素にガムをはけ塗りすることができ、ガムを外層に注ぐか、あるいは、欧州特許第1,788,431号明細書(上記)に記載されているようなスプレーノズルシステムを使用して露光領域を除去するのに十分な力で吹き付けすることによりガムを適用することができる。さらに、画像形成された要素をガム中に浸漬し、手動または装置でラビングしてもよい。
【0253】
ガムは、印刷版をラビングまたはブラッシングするための少なくとも1つのローラーを有するガム引きユニット(またはガム引きステーション)で適用することもでき、ガムは現像中に適用される。かかるガム引きユニットを使用することによって、画像形成された層の非露光領域をより完全および迅速に基材から除去することができる。現像で使用されたガムをタンクに集めることができ、ガムを数回使用でき、必要に応じてガムの貯留容器から補充することができる。ガムリプレニッシャーは現像で使用されるものと同じ濃度であっても、あるいは、濃縮形態で供給され水で数倍に希釈されてもよい。
【0254】
印刷機外現像の後、UVまたは可視光へのブランケットまたはフラッド露光有りまたは無しに、ポストベーク作業を行うことができる。得られる画像形成された要素のランレングスを向上させるために、画像形成され現像された要素をポストベーク作業でベークすることができる。ベーキングは、例えば170℃〜240℃の温度で7〜10分間、または120℃で30分間行うことができる。代わりに、ポストベーク作業なしに、ブランケットUVまたは可視光露光を行うことができる。
【0255】
従って、現像プロセスがどのようなものであろうと、本発明の方法は、露光後のベーキング工程を省き、現像により主に非露光領域のみ除去して、親水性アルミニウム含有機材を有するネガ型平版印刷版をもたらすことにより行うことができる。
【0256】
代わりに、重荷露光領域だけが現像中に除去され、親水性アルミニウム基材を有するポジ型平版印刷版をもたらす。
【0257】
当業者が知っているように、かかる現像プロセスは、ごくわずかな量の露光領域(ネガ型の場合)または非露光領域(ポジ型の場合)を除去することがあるが、所望の画像に有意な影響を及ぼすほどではない。
【0258】
幾つかの実施態様において、本発明の方法を使用して、画像形成性層の乾燥質量を基準にして少なくとも5%かつ95%以下の量で画像形成性層中に存在し、下記構造(I)により表されるポリマーを含む画像形成性要素を画像形成し現像することによりネガ型またはポジ型の平版印刷版が提供される。
【0259】
【化14】

【0260】
ここで、xは3〜97モル%であり、yは3〜97モル%であり、
Aは、1または2種以上のエチレン不飽和重合性モノマーから誘導された炭素−炭素主鎖を構成する反復単位を表し、前記1H−テトラゾール基は−C(=O)−NR1−、−NR1−、−NR1−(C=O)−NR2−、−S−、−OCO(=O)−もしくは−CH=N−基またはこれらの組み合わせを含む連結基Lを通じて前記主鎖に結合しており、R1およびR2は独立に水素またはアルキル、アリール、もしくはシクロアルキル基であり、
Bは1または2種以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンもしくはスチレン誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、マレイミド、または開環マレイン酸無水物の半エステルから誘導された反復単位を表す。
【0261】
1H−テトラゾール基を有する成分を含む本発明のネガ型画像形成性要素は、印刷機上現像(または画像形成および現像)することもできる。印刷機上現像は、コンベンショナルな処理装置で典型的に使用されるアルカリ性現像液の使用を回避する。画像形成された要素は、印刷機上に載置され、画像形成性層中の非露光領域は、印刷時における初期刷り時に、適切な湿し水、平版印刷インク、又はそれらの両方の組み合わせによって除去される。水性湿し水の典型的な成分としては、pH緩衝剤、減感剤、界面活性剤及び湿潤剤、保湿剤、低沸点溶剤、殺生物剤、消泡剤及び金属イオン封鎖剤が挙げられる。湿し水の代表例は、Varn Litho Etch 142W+Varn PAR(アルコール代替物)(イリノイ州アディソン所在のVarn Internationalから入手可能)である。
【0262】
印刷は、平版印刷インクと湿し水を、画像形成された要素の印刷面に適用することにより行うことができる。非画像形成領域、すなわち画像形成および現像工程により露出した親水性基材の表面が湿し水を取り込み、画像形成された層の画像形成(非除去)領域がインクを取り込む。次に、インクは、適切な受容材料(例えば、布地、紙、金属、ガラスまたはプラスチック)に転写され、これら材料上に望ましい刷り上がりの画像をもたらす。必要に応じて、中間の「ブランケット」ローラーを使用して、インクを、画像形成された部材から受容材料に転写することができる。画像形成された部材は、刷りの間、必要に応じて、従来のクリーニング手段を使用してクリーニングできる。
【0263】
以下の例により本発明を例示するが、決して本発明を限定することを意図したものではない。
【実施例】
【0264】
特に断らない限り、実施例で使用した化学成分は、Aldrich Chemical Co.(ワイオミング州ミルウォーキー)などの1または2以上の商業的供給者から得ることができる。
AIBNは2,2’−アゾビス(iso−ブチロニトリル)を表す。
AMAはアリルメタクリレートを表す。
BCはエチレングリコールモノブチルエーテル(またはブチルセロソルブ)を表す。
BLOはγ−ブチロラクトンである。
Byk(登録商標)307は、BYK Chemie(コネチカット州ウォリングフォード所在)から入手可能なポリエトキシル化ジメチルポリシロキサンコポリマー(25質量%キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液)である。
コポリマーAは、従来の条件および方法を使用してN−フェニルマレイミド、メタクリルアミドおよびメタクリル酸(45:35:20モル%)から誘導された反復単位を有するコポリマーを表す。
コポリマーBは従来の条件および方法を使用してN−フェニルマレイミド、メタクリルアミド、N−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアおよびメタクリル酸(37:20:29:14モル%)から誘導された反復単位を有するコポリマーを表す。
コポリマーGは、100gのメトキシエタノール中に溶解した20gのコポリマーA(先に定義)を0.19gのNaOHおよび3.53gのIR染料Aと攪拌し、1リットルの水中で4時間析出させ、濾過し、生成物を40℃で24時間乾燥させることにより得られた生成物である。
DAAはジアセトンアルコールである。
DEKはジエチルケトンである。
【0265】
現像液D1は、水(94.73質量%)、水酸化カリウム溶液(45質量%)0.17質量%、Blaunon B13(5.1質量%)から構成されていた。混合後、数滴の30質量%KOH溶液によりpHを12に調節した。
DMFはN,N−ジメチルホルムアミドを表す。
Dowanol(登録商標)PMは、Dow Chemical Company(ミシガン州ミッドランド)から入手したプロピレングリコールメチルエーテルである。これは、往々にしてPGMEとして示す。
Dowanol(登録商標)PMAは、Dow Chemical Companyから入手した1−メトキシ−2−プロピルアセテートである。
染料D11(CAS 4333334−19−1)はPCAS(フランス国ロンジュモー)により供給された 5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼンスルホン酸とのN−[4−[[4−(ジエチルアミノ)フェニル][4−(エチルアミノ)−1−ナフタレニル]メチレン]−2,5−シクロヘキサジエン−1−イリデン]−N−エチルエタナミニウムの塩と(1:1)であり、下記の構造を有する。
【0266】
【化15】

【0267】
エチルバイオレットは、C.I.42600(CAS 2390−59−2,λmax=596nm)が割り当てられており、p−(CH3CH22NC64)3+Cl-の式により表される。
GP649D99はGeorgia−Pacific(ジョージア州アトランタ)から入手したレゾール樹脂である。
HMDIはヘキサメチレンジイソシアネートを表す。
HEMAはヒドロキシエチルメタクリレートを表す。
HEPiは2(2−ヒドロキシエチル)−ピペリジンを表す。
IPMAAはN−イソプロピルメタクリルアミドを表す。
IR染料A(Trump)は、下記式により表され、Eastman Kodak Company(ニューヨーク州ロチェスター)から入手可能である。
【0268】
【化16】

【0269】
MAAはメタクリル酸を表す。
MAMはメタクリルアミドを表す。
MATは5−(メタクリルアミド)テトラゾールを表す。
MMAはメチルメタクリレートを表す。
Newcol B13はNippon Nyukazai Co.,Ltd.(日本国)から入手したエトキシル化β−ナフトールである。
NK Ester BPE 500は、Shin−Nakamura Ltd.(日本国)から入手した、10個のエチレンオキシド単位を有するエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートである。
PD 494およびPD 140AはBorden Chemicals(ニューヨーク州ルイスビル)から入手したメタ/パラクレゾールノボラックである。
N−PMIはN−フェニルマレイミドを表す。
PVPAはポリ(ビニルホスホン酸)を表す。
PAR 62は下記構造を有する。
【0270】
【化17】

【0271】
SMA 1000はCray Valley(フランス国)から入手したスチレン−マレイン酸無水物コポリマーである。
基材Aは、電気的に砂目立てされ、陽極酸化され、ポリ(ビニルリン酸)処理にかけられた0.3mm厚アルミニウムシートである。
THFはテトラヒドロフランを表す。
TN13はEastman Kodak Company(ニューヨーク州ロチェスター)から入手した15モル%トシル化N13である。
UMAはDegussa(ドイツ国)から入手可能なモノマーであるN−(2−メタクリロイルオキシエチル)エチレンウレアである。
955ディベロッパー、980ディベロッパーおよびGoldStar(登録商標)Premiumディベロッパーは、Eastman Kodak Company(ニューヨーク州ロチェスター)から入手可能である。
【0272】
合成例1(MAT):
5−アミノ−1,2,3,4−テトラゾール(10.1g)を、250mlのTHFと12mlの水の混合物中に分散させた。攪拌しながら20℃でメタクリロイルクロリド(10.7g)を加えた。メタクリロイルクロリドの約3分の1を10分間以内に加えた後、溶液は透明になり、メタクリロイルクロリドの全量を加えてから15分後に白色結晶の析出が始まった。室温で2時間攪拌あと、分散液を4℃に冷却し、その温度に24時間保った。濾過後、得られた結晶を真空中20℃で4時間乾燥させた。融点は238.5〜239.5℃であり、UV吸収極大は269nmであった。
【0273】
合成例2(MAT/AMA/IPMAA、モル比=10:70:20のコポリマー):
MAT(2.9g),AMA(17.7g),IPMAA(5.1g)およびAIBN(0.2g)を295gのDMF中に溶解させた。エアーバブリングにより酸素を除去した後、溶液を70℃で8時間加熱した。室温に冷却後、水により白色ポリマーが析出した。得られたポリマーを真空中25℃で25時間乾燥させた。このポリマーは43.8mg KOH/gの酸価を有していた。GPC:Mw=30,900,Mn=6050.
【0274】
合成例3(MAT/AMA/IPMAA、モル比=20:60:20のコポリマー):
MAT(5.7g),AMA(15.1g),IPMAA(5.1g)およびAIBN(0.2g)を299gのDMF中に溶解させた。エアーバブリングにより酸素を除去した後、溶液を70℃で8時間加熱した。室温に冷却後、水により白色ポリマーが析出した。得られたポリマーを真空中25℃で25時間乾燥させた。このポリマーは73.6mg KOH/gの酸価を有していた。GPC:Mw=12600,Mn=4900.
【0275】
合成例4(MAT/AMA/IPMAA、モル比=30:50:20のコポリマー):
MAT(8.6g),AMA(12.6g),IPMAA(5.1g)およびAIBN(0.2g)を302gのDMF中に溶解させた。エアーバブリングにより酸素を除去した後、溶液を70℃で8時間加熱した。室温に冷却後、水により白色ポリマーが析出した。得られたポリマーを真空中25℃で25時間乾燥させた。このポリマーは92.7mg KOH/gの酸価を有していた。GPC:Mw=14300,Mn=6100.
【0276】
合成例5(MAT/MMA、モル比=14:86のコポリマー):
MAT(8g),MMA(34.4g)およびAIBN(0.4g)を99gのDMF中に溶解させた。エアーバブリングにより酸素を除去した後、溶液を70℃で8時間加熱した。室温に冷却後、水により白色ポリマーが析出した。得られたポリマーを真空中25℃で25時間乾燥させた。このポリマーは56.3mg KOH/gの酸価を有していた。
【0277】
合成例6(MAT/MMA、モル比=24:76のコポリマー):
MAT(13.7g),MMA(30.4g)およびAIBN(0.4g)を103gのDMF中に溶解させた。エアーバブリングにより酸素を除去した後、溶液を70℃で8時間加熱した。室温に冷却後、水により白色ポリマーが析出した。得られたポリマーを真空中25℃で25時間乾燥させた。このポリマーは106mg KOH/gの酸価を有していた。
【0278】
合成例7(MAA/MMA、モル比=13:87の比較用コポリマー):
MAA(2.5g),MMA(19.6g)およびAIBN(0.6g)を60gのプロピレングリコールモノメチルエーテル中に溶解させた。エアーバブリングにより酸素を除去した後、溶液を70℃で8時間加熱した。室温に冷却後、水により白色ポリマーが析出した。得られたポリマーを真空中25℃で25時間乾燥させた。このポリマーは74mg KOH/gの酸価を有していた。
【0279】
コポリマーC、DおよびEの合成
【0280】
【表4】

【0281】
凝縮器、窒素供給源、温度計及び加熱マントルを備えた500mlの4つ口丸底フラスコ中の200gのジオキソランと50gの水と100gのエタノール溶剤との溶剤混合物中に表IIに示すモノマーを入れることによりコポリマーC,DおよびEを合成した。温度を75℃に上昇させる間に窒素を溶液中にバブリングした。AIBN(1.2g)を反応混合物に加え、1時間後、反応混合物の温度を75℃に保ちながら、さらに1時間おきに0.4gずつAIBNを3回加えた。さらに1時間後、反応混合物を放冷した。得られたコポリマーを、1mlのHCl(30質量%)を加えた2.6リットルの水中で析出させることにより単離した。得られた析出物を濾過し、0.5リットルの水で洗浄し、再び濾過した。一定質量になるまでコポリマーを流動床乾燥機内で40℃で乾燥させた。各コポリマーの収率は95%であった。得られたコポリマーのモル比を下記表IIIに示す。
【0282】
【表5】

【0283】
下記の成分を使用してコポリマーFを同様に調製した。
【0284】
【表6】

【0285】
攪拌器、温度モニター、還流器および窒素パージを備えた250mlの3つ口丸底フラスコを恒温水槽に据え付けた。溶剤を含むこのフラスコに、モノマーを加え、窒素を流しながら75℃に加熱した。0.19gの開始剤AIBNを加えることにより反応が開始した。1時間の反応時間後、さらに0.19gのAIBNを加えた。4時間のさらなる反応時間後、溶液を放冷した。得られたポリマーを水中で析出させることにより単離し、40℃で一晩乾燥させ、84%の収率を得た。
【0286】
発明例1〜5および比較例1:(ネガ型画像形成性要素)
表IVに記載の輻射線感受性組成物を、濾過後に、基材Aの試料にコーティングした。コーティングされた組成物を90℃で4分間乾燥させると、乾燥コーティング被覆量1.6g/mのネガ型画像形成性層が得られた。当該コーティングされた層に、ポリ(ビニルアルコール)(Air Productsから入手したCelvol 203、88%の加水分解度を有する)の水溶液をオーバーコート(乾燥被覆量2g/m)し、90℃で4分間乾燥後に、表Vにまとめた乾燥コーティング量を有するネガ型印刷版前駆体を得た。
【0287】
405nmに増感された印刷版前駆体を、405nmで発光するレーザーダイオード(P=30mW)を備えたイメージセッター(LithotechのAndromeda(登録商標)A750M)を用いて露光した。定義されたトーン値(目標トーン値を概ね得るために全てデータを線形化した)を有するUGRAグレイスケールV2.4を、上記前駆体上に画像形成した。印刷版前駆体の感度を、全体露光でUGRAオフセット試験スケール1982を使用して決定した。画像形成された要素を90℃で2分間加熱し、オーバーコート層を水で洗い落とし、現像セクションに2つのブラシを有する処理機内で現像液D1を使用して、現像工程の滞留時間20秒間で現像を行った。現像後、得られた印刷版を水ですすぎ、Eastman Kodak Company製のGum 850 Sでガム引きし、乾燥させた。画像形成された要素のストリップを現像液中に浸漬し、機械的補助なしに画像形成性層コーティングを除去するのにかかった時間を測定することにより現像時間を求めた。
【0288】
80%の対応する溶剤と20%の水との混合物中に露光され未だガム引きされていない版を室温で60分間浸漬し、浸漬されていない版に対する版の質量減少量を計算することによって、DAAおよびBCの浸漬損失量を求めた。この浸漬損失量は、UVインク印刷で使用されるクリーナーによる攻撃に対する印刷版の安定性についての目安である。
【0289】
ランレングスを決定するために、各印刷版を、研摩性インク(Sun Chemicalから入手可能なOffset S 7184、10%の炭酸カルシウムを含む)使用するシート供給式オフセット印刷機に装填した。べた領域が摩耗の兆候を示す前のコピー数がランレングスに対応する。
【0290】
下記表Vから、カルボン酸基を有するポリマーを含有する画像形成性要素と比較して、本発明に係るポリマーを含有する印刷版前駆体がより高いフォトスピード、より良好な現像性、DAAおよびBC水混合物中でのより少ない浸漬損失量、およびより優れたランレングスを示すことが判る。
【0291】
【表7】

【0292】
【表8】

【0293】
発明例6〜8および比較例2〜3:(ポジ型の多層画像形成性要素):
ポジ型平版印刷版を以下のように作製した:
ボトム(内側)層1:
MEK:Dowanol(登録商標)PMA:BLO:H2O(質量比35/45/10/10)を含む溶剤混合物37.5g中に2.06gのコポリマーA、0.38gのIR染料A、0.038gの染料D11および0.038gのByk(登録商標)307を溶解させることによりコーティング配合物を調製し、それを基材A上にコーティングし、135℃で45秒間乾燥させて乾燥コーティング量1.35g/m2とした。
【0294】
ボトム(内側)層2:
MEK:Dowanol(登録商標)PMA:BLO:H2O(質量比35/35/15/15)を含む溶剤混合物37.5g中に2.06gのコポリマーB、0.38gのIR染料A、0.038gの染料D11および0.038gのByk(登録商標)307を溶解させることによりコーティング配合物を調製し、それを基材A上にコーティングし、135℃で45秒間乾燥させて乾燥コーティング量1.35g/m2とした。
【0295】
ボトム(内側)層3:
1,3−ジオキソラン:メタノール:BLO:H2O(質量比60/20/10/10)を含む溶剤混合物37.5g中に2.06gのコポリマーC、0.38gのIR染料A、0.038gの染料D11および0.038gのByk(登録商標)307を溶解させることによりコーティング配合物を調製し、それを基材A上にコーティングし、135℃で45秒間乾燥させて乾燥コーティング量1.35g/m2とした。
【0296】
ボトム(内側)層4:
この層は、コポリマーCをコポリマーDに置き換えたことを除き、ボトム(内側)層3について記載したとおりである。
【0297】
ボトム(内側)層5:
この層は、コポリマーCをコポリマーEに置き換えたことを除き、ボトム(内側)層3について記載したとおりである。
【0298】
トップ(外側)層1:
ジエチルケトンとDowanol(登録商標)PMA(質量比92:8)の溶剤混合物40g中に2.38gのTN13、0.032gのエチルバイオレットおよび0.030gのByk(登録商標)307を溶解させることによりコーティング配合物を調製した。この配合物を、下記表VIに示すように上記の各種ボトム層(内側)層上にコーティングし、135℃で45秒間乾燥させて約0.65g/m2とトップ層コーティング量とした。
【0299】
トップ(外側)層2:
トップ(外側)層1配合物でTN13をPD 494に置き換えることにより別のコーティング配合物を調製した。
【0300】
トップ(外側)層3:
ジエチルケトンとDowanol(登録商標)PMA(質量比92:8)の溶剤混合物40g中に2.38gのSMA1000、0.032gのエチルバイオレットおよび0.030gのByk(登録商標)307を溶解させることによりさらに別のコーティング配合物を調製した。
【0301】
得られた多層ポジ型平版印刷版前駆体を下記表VIに記載するように調製した。Kodak Trendsetter Quantumイメージセッターを使用して830nmで画像形成を行い、下記表VIに記載するように現像を行った。「G+Jプロセッサー」は市販のGlunz&Jensenプロセッサーを指す。各種結果も表VIに示されている。
【0302】
【表9】

【0303】
透明点:
各場合の透明点を、360rpmで、4Wから始まって1ワットおきの出力系列で画像形成し、Mercuryプロセッサー内で1000mm/分で各現像液により23℃で現像することにより求めた。透明なバックグラウンドを得るのに必要とした最低エネルギーは上記表VIに示した。
【0304】
解像度:
透明点エネルギーよりも30%高い標準的な露光エネルギーで、倍率100倍で顕微鏡下で1および2画素線で観察することにより解像度を評価した。本発明および比較用の印刷版のすべてが標準的な露光で優れた解像度を示した。
【0305】
耐溶剤性:
下記の溶剤と水の80/20混合物中で5分間ボトム層被覆版の重量浸漬損失を測定することにより耐溶剤性を求めた。攻撃的な印刷室溶剤:ブチルセロソルブ(BC)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DGME)、およびジアセトンアルコール(DAA)。5分後の損失百分率を表VIIに記録した。
【0306】
【表10】

【0307】
これらの例から、カルボン酸基を有するポリマーの代わりに1H−テトラゾール基を有するポリマーを使用することにより、画像形成された多層ポジ型要素の耐溶剤性の改善に加えて良好な現像性がもたらされることが判る。
【0308】
発明例9および比較例4:(ポジ型の単層画像形成性要素):
欧州特許出願公開第1,747,900号明細書(Hauckら)の比較例2に記載されているように比較例4を作製した。画像形成性層成分をDowanol(登録商標)PM/MEK(質量比80/20)中に溶解させて10w/w%溶液とした。このコーティング配合物を基材A上にコーティングし、105℃で90秒間乾燥させて1.50g/m2とした。得られた印刷版前駆体を55℃で3日間状態調整(5%の水を含む挿間紙の使用および耐水ラッピングを含む標準的な状態調整プロセス)した。
【0309】
1,3−ジオキソラン/メタノール/γ−ブチロラクトン/水(質量比60/20/10/10)で溶剤混合物を調製し、画像形成性層成分を溶解させるために使用した。PD494ノボラックの代わりにコポリマーCを使用(23.5w/w%)したことを除き、発明例9の画像形成性要素を比較例4のように作製した。
【0310】
要素の評価:
2つのポジ型画像形成性要素を、Kodak Quantum 800イメージセッターを使用して10.5Wおよび98から175mJ/cm2までの5つの露光段階(98,110,126,147,176)に対応する様々なドラム速度で試験パターンにより画像形成した。画像形成された要素を、次に、Goldstar Premiumディベロッパーを使用して、23℃で1000mm/分(滞留時間30秒間)でMercuryプロセッサー内で処理した。
【0311】
10,20および40μmの線とギャップから構成される50%超トーン値領域の視覚的評価によりリニアスピード(linear speed)を導き出した。同じ光学濃度(視覚的消失(visual melting))を示した領域におけるエネルギーを下記表VIIIに示す。
【0312】
石油エーテル/イソプロパノール/水(質量比79/20/1)で構成される溶剤混合物中に、まだ画像形成されていない要素のストリップ(5cm×20cm)を浸漬することによって、耐溶剤性を試験した。4分間まで30秒間ごとに要素をティッシュで擦り、擦った領域の溶剤混合物中の滞留時間が異なるようにした。次に、要素を取り出し、水ですすいだ。最初の目に見える攻撃がはっきりと見えた時間を表VIIIに示す。
【0313】
【表11】

【0314】
表VIII中の結果は、1H−テトラゾール基を含むここに記載のポリマーを使用して単層ポジ型画像形成性要素が得られることを示している。得られた印刷版前駆体は、良好な画像形成特性を示し、様々な既知のフェノール系ポリマーを有する同様な前駆体と比べてかなり改善された耐溶剤性を示した。
【0315】
発明例10〜11および比較例5:(ポジ型多層画像形成性要素):
ポジ型多層画像形成性要素を以下のように作製した:
【0316】
ボトム(内側)層6:
MEK:Dowanol(登録商標)PM:BLO:H2O(質量比35/45/10/10)を含む溶剤混合物37.5g中に2.06gのコポリマーG、0.038gのD11および0.038gのByk(登録商標)307を溶解させることによりコーティング配合物を調製し、それを基材A上にコーティングし、135℃で45秒間乾燥させて乾燥コーティング量1.35g/m2とした。
【0317】
ボトム(内側)層3(上記):
発明例10の場合に、20gの溶剤混合物(質量比8:1:1でジエチルケトン:Dowanol(登録商標)PMA:イソプロピルアルコール)中にコポリマーF(2.4g)、0.012gのByk(登録商標)307および0.013gのエチルバイオレットを溶解させ、ボトム(内側)層6の上にコーティングし、乾燥させて0.65g/m2のコーティング量とした。
【0318】
発明例11の場合、例10について記載したトップ(外側)層配合物をボトム(内側)層3の上にコーティングし、乾燥させて0.65g/m2のコーティング量とした。
【0319】
比較例5の場合、100mlのジエチルケトン中に4.8gのPD140A、2.1gのP3000、0.03gのエチルバイオレットおよび0.04gのByk(登録商標)307を溶解させることによりトップ(外側)層のための配合物を調製した。この配合物をボトム(内側)層1の上にコーティングし、乾燥させて0.65g/m2のコーティング量とした。
【0320】
画像形成性要素を、Creo Quantum 800を使用して、9Wで、150rpmから360rpmの間で30rpmおきのドラム速度(67〜161mJ/cm2まで)で試験パターンにより画像形成した。画像形成された要素を、Mercuryプロセッサー内で900mm/分で956ディベロッパー(Eastman Kodak Company)により現像し、発明例10では92mJ/cm2超の露光量で、発明例11では75mJ/cm2超の露光量で優れた解像度およびクリーンなバックグラウンドで良好な画像を得た。比較例5を同様に現像し、92mJ/cm2超の露光量で優れた解像度およびクリーンなバックグラウンドで良好な画像を得た。
【0321】
956ディベロッパーへのコポリマーFの溶解性を、30mlの956ディベロッパー中で当該ポリマー0.3gを攪拌することにより試験した。この樹脂は残渣なしに完全に溶解した。
【0322】
980ディベロッパーへの樹脂成分PD140AおよびP3000の溶解性を、30mlの980ディベロッパー中で0.2gのPD140Aおよび0.1gのP3000をそれぞれ別々に攪拌することにより評価した。このことから、かかるポリマーバインダーを含むトップ(外側)層組成物が、プロセッサー内でフィルター閉塞および再堆積の問題を引き起こしうることが判る。
【0323】
通常使用されている印刷室化学薬剤であるブチルセロソルブ(BC)およびジプロピレングリコールモノメチルエーテル(DGME)に対する耐溶剤性をコポリマーFと比較例5で使用したトップ(外側)層ポリマー(PD140AおよびP3000)について、各例からのポリマー樹脂を基材A上にコーティングし、数滴の各溶剤を30秒間隔で載せ、3分後に拭き取ることにより評価した。コポリマーFは3分後に除去されなかったが、比較例5のトップ(外側)層に使用した樹脂は30秒間以内に除去された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材を含み、当該基材上に画像形成性層を有し、当該画像形成性層が、1H−テトラゾール基を有する水不溶性でアルカリ性溶液に可溶性である成分(ただし、当該成分が、1H−テトラゾール基が結合しているフェノール系ポリマーである場合には、かかる結合はチオ連結基なしに提供される)を含む画像形成性要素。
【請求項2】
前記成分が前記1H−テトラゾール基が結合している主鎖を有するポリマーであり、前記ポリマーが13.5以下のpHを有するアルカリ性現像液に可溶性である、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記ポリマーが、前記画像形成性層中に、画像形成性層の全乾燥質量を基準にして少なくとも5%かつ95%以下の量で存在する、請求項2に記載の要素。
【請求項4】
前記1H−テトラゾール基がその5位で窒素原子に結合している、請求項1に記載の要素。
【請求項5】
前記1H−テトラゾール基は、前記ポリマー中に存在する全酸性基の少なくとも50モル%を提供するのに十分に前記ポリマー中に存在する、請求項2に記載の要素。
【請求項6】
250nm〜700nmの分光感度を有するネガ型要素であり、1H−テトラゾール基を有する前記成分が非ポリマーのラジカル重合性化合物であるか、またはペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーであり、前記ポリマーは任意選択的にラジカル重合性反応性側基を有してもよい、請求項1に記載の要素。
【請求項7】
700nm〜1250nmの分光感度を有するネガ型要素であり、1H−テトラゾール基を有する前記成分が非ポリマーのラジカル重合性化合物であるか、または1H−テトラゾールペンダント基を有するポリマーである、請求項1に記載の要素。
【請求項8】
画像形成性層が、
ラジカル重合性成分、
画像形成輻射線への露光によってフリーラジカル重合性基の重合を開始するのに十分なフリーラジカルを生成することのできる開始剤組成物、
輻射線吸収性化合物、および
主鎖を有し、画像形成輻射線への露光の前だけ画像形成性層が13.5未満のpHを有する現像液に可溶性であるのに十分な量のペンダント1H−テトラゾール基が主鎖に結合しているポリマー、
を含むネガ型画像形成性要素である請求項1に記載の要素。
【請求項9】
前記ポリマーが下記構造(I):
【化1】

(式中、Aは1H−テトラゾール基を含む反復単位を表し、Bは1H−テトラゾール基を含まない反復単位を表し、xは3〜100モル%であり、yは0〜97モル%である)により表される、請求項8に記載の要素。
【請求項10】
xが3〜90モル%であり、yが10〜97モル%であり、Bが、1または2種以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンもしくはスチレン誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、マレイミド、または開環マレイン酸無水物の半エステルから誘導された反復単位を表す、請求項9に記載の要素。
【請求項11】
xが3〜90モル%であり、yが10〜97モル%であり、Aが1または2種以上のエチレン不飽和重合性モノマーから誘導された炭素−炭素主鎖を構成する反復単位を表し、前記1H−テトラゾール基が、−C(=O)−NR1−、−NR1−、−NR1−(C=O)−NR2−、−S−、−OCO(=O)−もしくは−CH=N−基またはこれらの組み合わせを含む連結基Lを通じて前記主鎖に結合しており、R1およびR2は独立に水素またはアルキル、アリールもしくはシクロアルキル基である、請求項9に記載の要素。
【請求項12】
主鎖と主鎖に結合した前記ペンダント1H−テトラゾール基を有するポリマーを含む少なくとも1つの画像形成性層を含むポジ型画像形成性要素である請求項1に記載の要素。
【請求項13】
前記ポリマーが下記構造(I):
【化2】

(式中、Aは前記1H−テトラゾール基を含む反復単位を表し、Bは1H−テトラゾール基を含まない反復単位を表し、xは3〜100モル%であり、yは0〜97モル%である)により表される、請求項12に記載の要素。
【請求項14】
xが3〜97モル%であり、yが3〜97モル%であり、Aが1または2種以上のエチレン不飽和重合性モノマーから誘導された炭素−炭素主鎖を構成する反復単位を表し、前記1H−テトラゾール基が、−C(=O)−NR1−、−NR1−、−NR1−(C=O)−NR2−、−S−、−OCO(=O)−もしくは−CH=N−基またはこれらの組み合わせを含む連結基Lを通じて前記主鎖に結合しており、R1およびR2は独立に水素またはアルキル、アリールもしくはシクロアルキル基であり、
Bが、1または2種以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンもしくはスチレン誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、マレイミド、または開環マレイン酸無水物の半エステルから誘導された反復単位を表す、請求項13に記載の要素。
【請求項15】
内側画像形成性層と前記内側画像形成性層上に配設された外側画像形成性層とを含み、前記ペンダント1H−テトラゾール基を有する前記ポリマーが、前記内側および外側画像形成性層のうちの一方または両方の中に分散されている、請求項12に記載の要素。
【請求項16】
750〜1250nmの分光感度を有し、赤外線染料を含む、請求項12に記載の要素。
【請求項17】
平版印刷版前駆体であり、前記基材が親水性表面を有するアルミニウム含有基材であり、基材の親水性表面上に前記画像形成性層が配設されている、請求項1に記載の要素。
【請求項18】
A)請求項1に記載の画像形成性要素を画像様露光して露光領域および非露光領域を生成させ、
B)露光後予熱工程あり又はなしに、画像様露光された要素を13.5以下のpHを有するアルカリ性水溶液により現像すること、
を含む方法。
【請求項19】
前記露光後予熱工程が省かれ、主に前記非露光領域のみが前記現像により除去されて、親水性アルミニウム含有基材を有するネガ型平版印刷版を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記画像形成性要素が、250〜450nmの波長で行われる画像様露光、または750〜1250nmの波長で行われる画像様露光に対する分光感度を有する、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
主に前記非露光領域のみが前記現像により除去されて、親水性アルミニウム含有基材を有するポジ型平版印刷版を提供する、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記画像形成性要素が1H−テトラゾール基を有する非ポリマー成分を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記画像形成性要素が、前記画像形成性層中に、画像形成性層の全乾燥質量を基準にして少なくとも5%かつ95%以下の量で存在し、下記構造(I):
【化3】

(式中、xは3〜97モル%であり、yは3〜97モル%であり、
Aは1または2種以上のエチレン不飽和重合性モノマーから誘導された炭素−炭素主鎖を構成する反復単位を表し、前記1H−テトラゾール基は、−C(=O)−NR1−、−NR1−、−NR1−(C=O)−NR2−、−S−、−OCO(=O)−もしくは−CH=N−基またはこれらの組み合わせを含む連結基Lを通じて前記主鎖に結合しており、R1およびR2は独立に水素またはアルキル、アリールもしくはシクロアルキル基であり、
Bは、1または2種以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、スチレンもしくはスチレン誘導体、酢酸ビニル、ビニルピロリドン、ビニルアルコール、マレイミド、または開環マレイン酸無水物の半エステルから誘導された反復単位を表す)により表される請求項18に記載の方法。
【請求項24】
ラジカル重合性成分、
画像形成輻射線への露光によってフリーラジカル重合性基の重合を開始するのに十分なフリーラジカルを生成することのできる開始剤組成物、
輻射線吸収性化合物、および
1H−テトラゾール基を有する成分、
を含み、上記の1H−テトラゾール基を有する成分が、
a)前記ラジカル重合性成分、
b)画像形成輻射線への露光の前に当該ポリマーが13.5以下のpHを有する現像液に可溶性であるのに十分な量のペンダント1H−テトラゾール基が主鎖に結合している水不溶性ポリマー、または
c)これらの両方、
であるネガ型輻射線感受性組成物。
【請求項25】
250〜450nmまたは750〜1250nmの分光感度を有する請求項24に記載の組成物。

【公表番号】特表2011−505600(P2011−505600A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536908(P2010−536908)
【出願日】平成20年11月21日(2008.11.21)
【国際出願番号】PCT/US2008/013014
【国際公開番号】WO2009/073098
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】