説明

2重円筒によるコードで補強されたゴムシートの製造装置及び製造方法

【課題】 本発明は、コードで補強されたゴムシートを、必要なときに必要な量だけ、しかも高品質の製品を簡便に生産できる手段を提供することにあり、コードの素材やコードの配列角度などを種々変化させて、タイヤ用ベルト材、ボディプライ材等をコンパクトな装置で多品種少量生産を可能にすることにある。
【解決手段】 本発明は、コードで補強されたゴムシートの製造方法および製造装置において、円筒の軸を中心に回転することにより、その円筒の表面にゴム被覆コードが巻き付くように構成されている第一円筒と、その第一円筒円筒径より円筒径が小さく、第一円筒と円筒軸方向を揃えて並設されている第二円筒とからなり、第一円筒から第二円筒にゴム被覆コードを移行させることで、多数本のゴム被覆コードを円筒の表面に互いに接触させながら連続的に螺旋巻きさせることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コードで補強されたゴムシートの製造装置およびその製造方法に関し、特に2重円筒を使用して円筒の表面に連続的にゴム被覆コードを巻き付ける手段によって、コード素材やコードの配列角度などを種々に変化させて、タイヤ用のベルト材、ボディプライ材等を、コンパクトな装置で多品種少量生産できるコードで補強されたゴムシートの製造装置および製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ等に使用されるコードで補強されたゴムシートの製造は、大量、集中生産方式で生産されており、1000本から2000本のコードを繰り出して、大型カレンダー装置でゴム被覆して大巻反を製造し、それから必要な幅、角度に裁断して、必要なベルト材やボディプライ材などを生産していた。しかし、近年、種々の高機能繊維がタイヤ用に開発され、ベルト材やボディプライ材などの繊維仕様、繊維配列角度、ゴム仕様なども種々のものが要求されるようになってきており、それらを上記の大量生産方式で製造するには、時間がかかり、無駄が多く、効率的でなかった。
【0003】
また、特公昭35−18602号に見られるように、大口径のローラにゴム被覆コードからなるリボンを螺旋状に連続巻しつつ、リボンの側縁を互いに接合して筒状の巻付体を形成し、この巻付体を裁断して、大きな面積のコードで補強されたゴムシートを形成し、このシートから所定形状で所定方向にコードが配列したベルト材やボディプライ材等を切り出すこともできるが、裁断残が多くムダである。この場合、小口径のローラにゴム被覆コードを巻き付けて筒状体を作成して、切り出し、何枚も貼り合わせて所定形状のプライ材を作成すれば、ムダは少なくなるが、シートつなぎ合わせに手間と時間がかかり、さらに品質的にもつなぎ合わせ部の不均一が残る。
【0004】
また、特開2001−145961号、特開2002−127270に見られるように、コード補強ゴム被覆リボンを所定径のドラム(またはマンドレルとも呼ばれる)に巻き付け、所定角度で切り出すことで、ベルト材、ボディプライ材等を製造する方式があるが、材料のコード角度や打ち込みを変更するごとに、新たなドラムが必要となっていた。
【0005】
従来、連続的に移動しているコンベアにコードを巻き付けていく方法をとる場合、回転アームにコード類を供給して巻き付ける手段が一般的であった。しかし、回転アームは、多数本のコードが並列してなるリボン状のコード群を巻き付けるには、コードが撚れてしまう問題点があった。しかし、1本のコードを巻き付けていくのでは生産効率が悪い。そこで、回転アームを多段に設け、それぞれの回転アームに1本ずつのコードを供給する手段が取られていた(特公昭53−31976号)が、装置が複雑になり、安価な小型装置で簡便に製造できる装置を提供することができなかった。
【0006】
【特許文献1】特公昭35−18602号公報(第1−2頁、第1図)。
【特許文献2】特開2001−145961号公報(第1−3頁、第1、12図)。
【特許文献3】特開2002−127270号公報(1−3頁、第1図)。
【特許文献4】特公昭53−31976号公報(1−3頁、第1図)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の欠点を除くためになされたものであって、その目的とするところは、近年、自動車におけるトヨタシステムに代表されるように、必要なときに必要な量だけ、しかも高品質の製品を簡便に生産できる方式を、タイヤ等のゴムシートの製造において可能にすることにある。また他の目的は、いろいろなコードの種類やゴムの種類など、多品種の製品を簡便な手段で、必要な時に必要な量だけ供給することが出来るようにすることにある。また他の目的は、コードの配列角度を簡便に変化させて、コードの配列角度を異にする連続的なコードで補強されたゴムシートの製造を可能にすることにある。また他の目的は、破棄されて使用しないシート材の無駄を少なくすることにある。また他の目的は、リボンを円筒上での重ね合わせする際の不均一を無くし、乱れの少ない高品質なコードで補強されたゴムシートを提供することにある。また他の目的は、上記ゴムシートを何枚も重ね合わせて、ベルト材やボディプライ材を作成するような時間や手間の無駄を省くことにある。また他の目的は、リボン状のコード群が回転アームを使用せずに、コンベア上に簡便に巻き付けられていくようにする手段を提供することにある。さらに他の目的は、安価な小型装置による簡便で生産性の良い製造手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、その製造装置としての特徴は、下記の通りである。本発明は、(a)円筒の軸を中心に回転することにより、その円筒の表面にゴム被覆コードが巻き付くように構成されている第一円筒と、(b)その第一円筒円筒径より円筒径が小さく、その第一円筒と円筒軸方向を揃えて並設されており、円筒表面が円筒軸方向に移動するコンベアを形成するように構成されており、その第一円筒の表面に巻き付いているそのゴム被覆コードの最初の端部がそのコンベアの表面に接合されてその第一円筒が回転していることによりそのゴム被覆コードがそのコンベア表面に巻き付けられていき、そのコンベアの表面が円筒軸方向に移動することで、そのゴム被覆コードが互いに接触しながら連続的に螺旋巻きされて円筒状ゴムシートが形成されるように構成されている第二円筒と、(c)その第一円筒とその第二円筒へそのゴム被覆コードを供給し、その第一円筒およびその第二円筒の円筒軸方向に移行できるように構成されている移動装置と連結されているコード供給ガイドとを備えた、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記第二円筒のコンベアが、前記円筒の表面を円筒の軸方向に複数本のベルトが駆動されて循環している軸方向循環ベルトを有する、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記第二円筒が、その第二円筒の円筒軸を中心に回転可能なように構成されており、前記第二円筒が前記円筒状ゴムシートを切り開く切断具をさらに有することにより、その第二円筒の回転により前記円筒状ゴムシートを螺旋状に切り出し、切り出されたシートの長手方向に対して所定の角度αにコードが配列されたゴムシートの連続体とするように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記コード供給ガイドが、ゴム被覆コード切断具を有しており、ゴム被覆コードが前記第一円筒表面に一定量巻かれた後、供給されてくるそのゴム被覆コードをそのゴム被覆コード切断具で切断するように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記第一円筒が、外周にほぼ平行に配置された複数本の互いにネルソンロール配置された小径ローラ群から構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記第一円筒が、その第一円筒の表面を螺旋状に循環する螺旋状循環ベルトを有しており、第一円筒表面上に巻かれている前記ゴム被覆コードが、その螺旋状循環ベルトの表面に載せられてその第一円筒から前記第二円筒上に移行されるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記ゴムシート製造装置が複数セット設置されており、その1のゴムシート製造装置に供給されてきた前記ゴム被覆コードが切断された後、連続して供給されてくるそのゴム被覆コードを他のゴムシート製造装置に供給し、ゴムシート製造装置を切り替えつつ前記円筒状ゴムシートを連続的に製造されるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記コード供給ガイドが把持具を有し、その把持具は、前記ゴム被覆コードの端部を前記第二円筒のコンベア表面に接合する際、または前記第一円筒にそのゴム被覆コードが一定量巻かれた後で前記ゴム被覆コード切断具によって切断する前後、または複数の前記ゴムシート製造装置を切り替えて使用する際の切り替え作業を行う際において、前記コード供給ガイドへ供給されてくるそのゴム被覆コードをその把持具で把持しておくように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、前記第二円筒が、その外径を変化させる機構を有するにより、前記円筒状ゴムシートの径を変化させるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。また本発明は、リールから繰り出されたゴムに対する接着処理が施されているコードが、ゴム被覆ダイを通過することによりゴムが被覆されるゴム被覆装置が設けられており、ゴム被覆コードを連続的に作成しつつ前記コード供給ガイドに導かれるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。さらに本発明は、前記ゴム被覆装置と前記コード供給ガイドとの間に、コードの張力調整装置が設けられている、コードで補強されたゴムシートの製造装置に関する。
【0009】
本発明は上記の目的を達成するためになされたものであって、その製造方法としての特徴は、下記の通りである。本発明は、(a)ゴム被覆コードをコード供給ガイドへ導く工程と、(b)円筒の軸を中心に回転可能に構成されている第一円筒と、その第一円筒の円筒軸方向に円筒軸方向を揃えて並設されているその第一円筒円筒径より円筒径が小さい第二円筒とが備えられており、そのコード供給ガイドへ導かれてきたそのゴム被覆コードを、まずその第二円筒の表面に接合される工程と、(c)そのコード供給ガイドがその第二円筒サイドよりその第一円筒サイドに移行し、その第一円筒の円筒軸を中心にした回転によりその第一円筒の表面にそのゴム被覆コードが巻き付けられていく工程と、(d)その第二円筒の円筒表面が円筒軸方向に移動するコンベアを形成しており、その第一円筒の表面に巻き付いているそのゴム被覆コードの最初の端部がその第二円筒の表面に接合されているため、その第一円筒の回転によりその第一円筒表面に巻き付けられているそのゴム被覆コードが第二円筒の表面に巻き付けられていく工程と、(e)その第二円筒の表面が円筒軸方向に移動するコンベア作用で、その第二円筒表面上に巻き付けられていくことで、そのゴム被覆コードが互いに接触しながら連続的に螺旋巻きされて円筒状ゴムシートが形成されていく工程とを含む、コードで補強されたゴムシートの製造方法に関する。また本発明は、前記ゴム被覆コードの複数本が並列して密着しているリボンであるコードで補強されたゴムシートの製造方法に関する。また本発明は、前記第一円筒の外面を螺旋状に循環している螺旋状循環ベルトにより、前記第一円筒に巻かれている前記ゴム被覆コードがその螺旋状循環ベルトの表面に載せられてその第一円筒から第二円筒上に移行させられる、コードで補強されたゴムシートの製造方法に関する。また本発明は、前記第二円筒が、その第二円筒の円筒軸を中心に回転することにより、前記第二円筒上の前記円筒状ゴムシートが切り開かれて螺旋状に切り出され、切り出されたシートの長手方向に対して所定の角度αにコードが配列されたゴムシートの連続体とする、コードで補強されたゴムシートの製造方法に関する。また本発明は、前記ゴムシート製造方法において、前記コードで補強されたゴムシートの製造手段が複数セット設置されており、その1のゴムシート製造装置に供給されてきた前記ゴム被覆コードが切断された後、連続して供給されてくるそのゴム被覆コードを把持具で把持しつつ他のゴムシート製造装置に供給されて、ゴムシート製造手段を切り替えつつ前記円筒状ゴムシートの一定長の製品を次々と製造されていく、コードで補強されたゴムシートの製造方法に関する。さらに本発明は、リールから繰り出されたゴムに対する接着処理が施されているコードが、ゴム押出機から押し出されたゴムを被覆するゴム被覆ダイを通過することによりゴムを被覆され、ゴム被覆コードが連続的に作成されつつ前記コード供給ガイドに導かれる、コードで補強されたゴムシートの製造方法に関する。
【0010】
本発明は、コードで補強されたゴムシートの製造に関するものである。本発明におけるコードは、繊維で構成された糸やモノフィラメントや金属細線等のコードやその単体をも含む。また、それらのコードの形態としては、長繊維からなるマルチフィラメント、短繊維からなる紡績糸、芯になる糸に他の糸を巻き付けたカバードヤーンやピッコ諸撚糸と呼ばれる糸であってもよい。また、意匠撚糸と呼ばれる糸も使用することもできる。これらのコードは、既に接着処理がされているコードを使用するが、ディッピング装置と連結して、ディッピング処理を施しつつ、ゴム被覆手段に導くこともできる。コードの材質としては、ナイロンやポリエステル、ポリビニルアルコール、アラミド繊維、全芳香族ポリエステル繊維、PBO(パラフェニレンベンゾビスオキサゾール)繊維等の有機繊維や、ガラス繊維、アルミナ繊維、炭素繊維等の無機繊維、またスチールやアモルファス金属等の金属繊維も使用することができる。
【0011】
本発明に使用されるコードは、ゴムへの接着性を向上させる接着処理が施されている。コードへの接着処理としては、有機繊維に対するレゾルシンホルマリンラテックスとゴムエマルジョンを付着させ、水分を乾燥した後、レゾルシンホルマリンをベーキングしてゴムへの接着性をアップさせる方式が代表的である。また、スチールコードでは、ニッケルめっき、銅と亜鉛を電着させるブラスメッキ、亜鉛主体の亜鉛めっき等が施される。さらに金属繊維では、コバルトやモリブデン、シランカップリング剤等を使用した接着処理等の手段も使用することができる。これらの接着処理は、コードの種類、ゴムの種類、求められる接着力等より適宜選択され、ここに例示したものに限られない。
【0012】
また、本発明で使用されるゴムとしては、天然ゴムや合成ゴム等の加硫されて使用されるゴムばかりでなく、ポリウレタンやSBS(スチレン・ブタジエン・スチレンゴム)のような熱可塑性エラストマーと呼ばれる加硫を必要としないゴムも使用することができる。これらのコードやゴムは、目的とするゴムシートの用途によって適宜選択される。ゴム被覆コードは、上記コードに、ここに記載したゴムが被覆されたものをいう。ゴムの被覆は、ゴム押出機より押し出されたゴムを、ダイ中でコードに被覆する手段を用いるが、カレンダーで処理されたゴムを付着させる方式や、接着剤ラテックスをコードに被覆してゴム溶媒を乾燥させる方式なども用いることができる。
【0013】
本発明は、円筒の表面に、連続的にゴム被覆コードを巻き付けることによるコードで補強されたゴムシートの製造手段に関する。円筒とは円筒状、またはロール状のほぼ円筒形の物体である。本発明は、その円筒表面に、ゴム被覆コードが互いに密着して一定角度θで螺旋巻きされることにより円筒状ゴムシートを製造する手段に関する。本発明におけるゴム被覆コードは、1本のコードでもよいが、複数本のゴム被覆コードが並列して密着しているリボンであることが望ましい。なお、本発明のように円筒がコンベアを形成し、一定方向へ進行するように構成されている場合は、通常、回転アームによってコードが供給されるようにするが、コードがリボン状で幅がある場合は、リボンが撚れてきれいな製品とならない。しかし本発明では、幅のあるリボンであっても整然とコードが配列した製品とすることができることに特徴があり、簡便な生産手段であるにもかかわらず、生産性が良い。
【0014】
本発明の円筒は、円柱状の形態であり、円形の平面からなる部分と、曲面からなる側面からなる。そしてその円柱は円形の底面と円筒状側面(以下、円筒表面という)を形成する。なお、円形の底面の円は、厳密な円を意味するものではなく、楕円や、多角形であってもよい。多角形の場合は、本発明の円筒を形成する円柱は、円柱というより多角柱であるが、本発明では、このような場合も円筒と表現する。
【0015】
本発明における円筒は、第一円筒と第二円筒が、それぞれの円筒の軸方向を一致させて並設されていることを特徴とする。そして、第一円筒は第二円筒より円筒径が大きい。そして、第一円筒はその円筒の軸を中心に回転可能である。第二円筒は、円筒表面が円筒の軸方向に連続的に移動可能とすることでコンベアを形成している。
【0016】
本発明では、この第一円筒が円筒の軸を中心に回転するように構成されていることを特徴とする。この第一円筒の回転により、コード供給ガイドより供給されてくるゴム被覆コードが第一円筒の表面に巻き付いていく。第一円筒に巻き付けられるゴム被覆コードは、必ずしも整然と巻き付けられている必要はない。しかし、生産性良く、しかもリボンの端部の変形を少なくし、円筒状ゴムシートの製品姿を良くするためには、次に述べるように、螺旋状循環ベルト上にゴム被覆コードを載せて、第一円筒上を循環することが好ましい。そこで、コード供給ガイドが第一円筒の軸方向に一定速度で移動できるようになっていることにより、第一円筒表面にゴム被覆コードが整然と螺旋巻きされていく。
【0017】
第一円筒は、外周にほぼ平行に配置された複数本(3本から12本が好ましく、6本から8本であることがさらに好ましい)の互いにネルソンロール配置された小径ローラ群が配置されて構成されていることが好ましい。そして、そのローラ群の上を1本のベルト(以下、螺旋状循環ベルトという)が螺旋状に循環する。それらの小径ローラ群の全て、またはその内の数本を駆動することで、螺旋状循環ベルトは小径ローラ群上を螺旋状に移動し、ローラ群の一方の端にくると、最初のローラの端に、別の通路を通じて戻されて循環する。なお、螺旋状循環ベルトの駆動は、上述の小径ローラ群を駆動してもよいが、ベルトを別のプーリ等を介してベルトそのものを駆動してもよい。また、小径ローラ群上での螺旋状循環ベルトの走行位置を正確に定めるために、小径ローラ群の個々のロールに溝が掘られており、その溝に沿ってベルトが案内されるようになっていることが好ましい。第一円筒は円筒の軸を中心に回転しており、その第一円筒の側面沿ってコード供給ガイドが移動する。そして、そこから供給されるゴム被覆コードは、循環している螺旋状循環ベルト上に載せられて第一円筒上に捲かれていく。螺旋状循環ベルトに載せられたゴム被覆コードは、螺旋状循環ベルトの移動に沿って、第一円筒の第二円筒側の端まで運ばれる。
【0018】
この第一円筒の表面に巻き付けられたゴム被覆コードは、下記に詳述するように第二円筒に移行される。この第二円筒は、第一円筒の円筒軸と同軸で、かつ第一円筒より外径が小さい。そして、第二円筒の表面は、円筒の軸方向に移動可能にするコンベアを形成している。このコンベアを形成する手段は、円筒状ゴムシートがリング状ローラ間を循環する方式によっても行うことができる。しかし、最も好ましい態様として、円筒の表面を円筒の軸方向に複数本のベルト(以下、軸方向循環ベルトという)が駆動されて循環されるように構成されていることにより実現される。第一円筒に巻き付けられるゴム被覆コードは、最初に、そのゴム被覆コードの端部を第二円筒のコンベアに接合されている。そして、第一円筒に捲かれていったゴム被覆コードは、第一円筒の螺旋状循環ベルトによって、第一円筒の端部まで運ばれてくる。第一円筒は円筒の軸を中心に回転し、第二円筒ではゴム被覆コードの端部が接合されているので、第一円筒に巻き付けられているゴム被覆コードが第二円筒の表面に巻き付けられていく。そして、第二円筒のコンベア作用によって、第二円筒上に、ゴム被覆コードは、互いに接触しながら螺旋状に巻き付けられて円筒状ゴムシートが形成され、第二円筒の軸方向に搬送されていく。
【0019】
ゴム被覆コードの端部が、最初に第二円筒の表面に接合されているが、この接合は、接着剤によってもよいし、粘着テープ等を利用してもよいが、いずれにしても仮止め的な接合で、簡単に剥がせるものであることが好ましい。
【0020】
ゴム被覆コードは、コード供給ガイドによって、第一円筒および第二円筒に導かれる。コード供給ガイドは、櫛(コーム)、糸道などの糸ガイドや、ローラやローラに溝が掘られているローラガイドなどが使用される。そして、このコード供給ガイドは、第一円筒と第二円筒の側面を円筒の軸方向に移動できる移動装置に載せられている。移動装置は、レールまたはネジによってコード供給ガイドが支持され、モータ等で移動される。コード供給ガイドは、後述する把持具によって把持されていない状態では、一定の間隔の開いた溝の形状を有する糸道が兼ねることができる。
【0021】
コード供給ガイドは、把持具が具備されていることが好ましい。本発明のゴム被覆コードは把持具によって把持され、まず第二円筒の表面に案内されて接合される。また、この把持具は、第一円筒にゴム被覆コードが一定量巻かれた後で、ゴム被覆コードを切断具で切断する際に切断作業が安定して行えるように、ゴム被覆コードを把持しておくことに使用される。さらにこの把持具は、後述する複数の前記ゴムシート製造装置を切り替えて使用する際の切り替え作業において、コード供給ガイドへ供給されてくるゴム被覆コードを把持具で把持して、次の装置に案内することにも使用される。
【0022】
コード供給ガイドは、コード切断具が具備されていることが好ましい。本発明のゴム被覆コードまたはその並列配列体であるリボンが、第一円筒に一定量巻かれた後で切断具により切断される。このコード切断具としては、カミソリ刃や押切刃、シアーカッタ等の切断器具が使用される。これらのコード切断具は、自動化されており、一定量のゴム被覆コードが捲かれた後、把持具に把持されて切断されることが好ましい。なお、一定量のゴム被覆コードとは、目的とする円筒状ゴムシートの長さになる量のゴム被覆コードをいう。
【0023】
本発明の第二円筒には、形成された円筒状ゴムシートを押圧する押圧具を有することが望ましい。押圧具は、円筒状ゴムシートのゴム被覆コードの配列を均一にし、ゴム被覆コード相互の接合をより確実なものにし、ゴムシートの表面を滑らかにする。押圧はローラ等を直接円筒に押し当てることで行うこともできる。
【0024】
本発明の第二円筒は、第二円筒全体としても円筒軸を中心に回転していることが好ましい。そして、ゴム被覆コードが円筒に巻き付くことによって形成されている円筒状ゴムシートを、切断具によって螺旋状に切り出す手段を有することで、円筒状ゴムシートを螺旋状に切り開くことができる。円筒状ゴムシートは、そのままで円筒状のシートとして、所定の長さに切断されて製品とすることができる。しかし、切断具でこの円筒状ゴムシートを切り開き、コンベア速度と円筒そのものの回転速度の関係で、螺旋状に切り出すことにより、シートの長手方向に対して所定の角度αにコードが配列されたゴムシートを連続して取り出すことができる。切断場所は、コンベア上で行うこともできるが、コンベアを傷つけることのないよう、コンベアを出たところで切断することが好ましい。コンベアを出た所で、上記の押圧具と一体的になった切断具を設けることにより、装置がコンパクトになる。切断具としては、カミソリ刃、回転刃と受ローラ、上下刃による押し切り、シェアーカッター、レーザービームなど種々のタイプのものが使用される。なお、上記第二円筒の回転方向は、第一円筒の回転方向と逆方向であることが望ましい。しかし、逆方向回転によって得られた製品のコードの配列角度α1と、同一方向回転で得られた製品のコードの配列角度α2は、シートの長さ方向に対して対称角度をなすように成形することもできる。
【0025】
螺旋状に切り開かれて、コードが配列されたゴムシートにおけるシートの長手方向に対するコード配列角度αは、円筒の円筒径、円筒の回転数、リボンが第二円筒に巻き付けられた際の螺旋角θなどによって定められる。本発明におけるコードで補強されたゴムシートの幅は、円筒の径によって定められる。所定の角度αのコードの配列は、例えばラジアルタイヤのボディプライ用シートでは、シートの長手方向に対して80〜90度、タイヤ用ベルト材では、10度から35度、好ましくは15度から30度の範囲から選ばれる。ここで、ボディプライ用シートとは、ラジアルタイヤ、バイアスタイヤ、ベルテッドバイアスタイヤ等の骨格となるカーカスシートである。ベルト用シートとは、ラジアルタイヤ、ベルテッドバイアスタイヤ等において、強くて伸びにくいコードを、ほぼ周方向に密に配列させて、いわゆる「たが効果」を有する。他に、タイヤに使用されるコードで補強されたゴムシートには、ブレーカと呼ばれるものもあり、本発明のコードで補強されたゴムシートに含まれる。
【0026】
なお、本発明における円筒状ゴムシートの径は、第二円筒の外径を変えることで、変化させることが出来る。例えば、小径ローラ群のセット位置を決める穴を多段に設けることで行うことでも実現できる。しかし、より簡便に精度良く行う手段について、図5の説明で行う。
【0027】
本発明におけるゴム被覆コードは、リール(またはボビン)から繰り出されたゴムに対する接着処理が施されているコードが、ゴム押出機から押し出されたゴムを被覆するゴム被覆ダイを通過することによって、ゴム被覆コードを連続的に作成しつつ本発明のコード供給ガイドに導かれることが好ましい。そして、円筒状ゴムシートを形成させる装置にゴム被覆装置が連結していることにより、別工程でゴムを被覆する場合のコードの繰出、巻取、保管という煩雑で場所をとる工程が不要であるばかりでなく、コードの繰り出し時や巻芯におけるムダも少なくなる。また、コードが巻き取られることがないので、コードの汚れも少なく、また、薬品がブルームすることもなく、フレッシュなゴム被覆コードを使用できるので、品質的にも優れたものとなる。
【0028】
円筒とコード供給ガイドを有する装置にゴム被覆装置を連結した場合、コード供給ガイドに導かれるコードの張力を一定にする張力調整装置を設けることが好ましい。ゴム押出機は、ゴムの押出量が一定になるまでに時間を要する。したがって、その間のゴム被覆コードをムダにすることなく、安定して本発明の装置を運転するためには、コードの供給速度を変えることや、また、コードで補強されたゴムシート形成装置における小さいトラブルにおいては、押出機を止めることなく対処することが必要となる。張力調整は、ダンサーローラを設けて、ダンサーローラの位置を感知する手段や、張力そのものを電気的に感知するなどの手段で、ゴム被覆装置に供給されるコードの速度を変えることなく、アキュムレータ(またはフェスツーン)に蓄えられることによって行われる。
【0029】
本発明において、両円筒に一定量だけゴム被覆コードが巻かれると、コードは切断されるが、それによってゴム被覆工程の押出機等を停止することは生産性を悪くする。本発明では、コードで補強されたゴムシート製造装置が複数セット並列配置され、1のセットでゴム被覆コードが切断された後、供給ガイドの把持具によって把持された状態で、他のセットに移行され、その第二円筒の表面に貼り付けられて、そのセットでの生産を開始される。このように複数の生産セットが順次交代で使用されることにより、ゴム被覆コードの押出機等の供給サイトは中断することなく生産を続けることができ、生産性は悪くならない。この場合、ゴム被覆ダイスとコード供給ガイドの間にある張力調整装置やアキュムレータは、この1のセットから他のセットへの移行の際の張力を一定にするためにも有益である。
【0030】
また、本発明におけるリール等から繰り出されたゴムに対する接着処理が施されているコードは、撚糸機または合糸機により撚が与えられながら繰り出されて、本発明のコード供給ガイドに導かれるようにすることもできる。コードに加撚する手段としては、通常撚糸機が使用される。撚糸機は、コードに撚をかけるもので、複数本のコードを合糸しながら撚をかけるものも含まれる。また、短繊維の精紡機として使用されるリング精紡機やミユール精紡機などの原理も使用できる。撚糸機は、リング撚糸機を基本とするが、そのタイプにより、アップツイスター、ダブルツイスター、フライヤー式撚糸機、イタリー式撚糸機、カバリング式撚糸機等が使用でき、また八丁式撚糸機等の古いタイプも使用できる。本発明での撚糸機は、コードが繰り出されつつ撚糸されるものが好ましく、コードの繰出機と撚糸機を兼ね併せたものが最も好ましい。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、タイヤ等に使用されるコードで補強されたゴムシートの製造に関して、従来の大量生産方式における非効率や材料や時間のムダを除くことができ、必要なときに必要な量だけ、しかも高品質の製品を簡便に生産できる方式を提供する。また、いろいろなコードの種類やゴムの種類など、多品種の製品を簡便な手段で、必要な時に必要な量だけ供給することが出来る。また、コードの配列角度を簡便に変化させて、コードの配列角度を異にする連続的なコードで補強されたゴムシートを製造することを可能にする。また、破棄されて使用しないシート材の無駄を少なくすることができる。また、今までのプライ用シートを何枚も重ね合わせるような時間や手間の無駄を本発明では省くことができる。また、従来、連続的に移動しているコンベアにコードを巻き付けていく方法をとる場合、回転アームにコード類を供給して巻き付ける手段が一般的であったが、回転アームは、多数本のコードが並列してなるリボン状のコード群を巻き付けるには、コードが撚れてしまう問題点があったのに対し、本発明では、リボン状のコード群を、回転アームを使用せずに、コンベア上に簡便に巻き付けていくようにすることを可能にする。その結果、コード本数の多い幅広のリボンを一挙に巻き付けていくことにより格段と生産性が良くなった。さらに本発明は、安価な小型装置により、簡便で生産性の良い製造手段を提供することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下本発明を、図面で示す実施例に基づいて説明する。本発明は、第一円筒と第二円筒およびコード供給ガイドを主構成要素とする円筒状ゴムシート製造装置からなる。図1では第一円筒について、図2と図3では、主として第二円筒について説明する。そして、図4で、これらの組み合わせである円筒状ゴムシート製造装置の全体を説明する。
【0033】
図1は、第一円筒の斜視図である。第一円筒11は、第一ドラム12を有し、それに直接リボンを巻き付けてもよい。しかし、第一円筒11上に乱れなく巻き付けられるためには、第一ドラム12の外側に、さらに小径ローラ(図では8本)13a、13b、13c、・・・、13hを、円筒軸方向に設け、第一ドラム12に、留め具14によって固定されている。小径ローラ群13は、互いにネルソンローラの配置に第一ドラム12の軸とは若干角度を付けて配置されている。そしてこの小径ローラ13群上を、螺旋状循環ベルト15が螺旋状に循環するように配置されている。螺旋状循環ベルト15は、小径ローラ群13がネルソンローラの配置で若干傾けられているため、小径ローラ13aから小径ローラ13bに移る際に、小径ローラ13bに直角方向に入ろうとする。そのため、螺旋状循環ベルト15は、小径ローラ13群上を螺旋状に移転できる。そして小径ローラ13hの端で小径ローラから外れた部分で螺旋状循環ベルト15qは、その別の経路を通って、小径ローラ部のスタート時における他の端に導かれることによって循環される。小径ローラ13群には、螺旋状循環ベルト15の幅に相当した溝が付型された溝付ローラであることが好ましく、螺旋状循環ベルト15がこの溝に案内されて移行することによって、移行がスムースになる。また、第一ドラム12や小径ローラ群13(全てである必要はなく、その一部でもよい)は駆動されていることが好ましい。しかし、小径ローラ13群の駆動の代わりに、螺旋状循環ベルト15が、小径ローラ13群から外れて別の経路を通過する箇所で、プーリ等により螺旋状循環ベルト15を駆動することもできる。
【0034】
図2は、本発明の第一円筒と第二円筒の構成を示す装置の側面図である。第一円筒11と第二円筒21は、円筒軸(図の一点鎖線)を同一にして並設されている。第一円筒11の第一ドラム12は、タイミングベルト20の駆動を受けて、円筒軸を中心に回転するように構成されている。第二円筒21は、循環する軸方向循環ベルト22a、22e等によって円周状に囲まれて構成されており、その循環により、円筒の表面が軸方向に移動するように構成されている。軸方向循環ベルト22a、22eは、タイミングベルト23により駆動を受け、ベベルギア24aと24eを介して、ローラ25aと26a間およびローラ25eと26e間を循環している。第一円筒11に巻かれているリボン1は、第一円筒11が回転していることにより、第二円筒21上にローラガイド27に案内されて軸方向循環ベルト22が構成するコンベア上に巻かれていく。また、ベベルギア24やローラ25,ローラ26などが支持されている第二ドラム28は、タイミングベルト29により駆動を受けて、第二ドラム28の円筒の軸(図の一点鎖線)を中心に回転している。第一円筒11の第一ドラム12と第二円筒21の第二ドラム28の回転方向は逆方向であることが望ましい。
【0035】
第二円筒21に巻かれたリボン1は、軸方向循環ベルト22の軸方向移送作用により、互いに接触させながら連続的に螺旋巻きされて、ゴム被覆コード群からなる円筒状ゴムシート2を構成する。円筒状ゴムシート2は、第二円筒21自身の回転と切断具30(図では回転押し切り刃と受けローラ)の切り開き作用によって、螺旋状に切り出されて、コードが一定方向に配列したゴムシート3となる。
【0036】
図3は、図2のA−A線断面図を示す。第二円筒21は、軸方向循環ベルト22a、22b、22c、22d、22e、22f、22g、22hの8本により円筒(断面が多角形で、内部が空洞の多角柱となるが、本発明ではこのような形態も円筒に含める)を形成している。軸方向循環ベルト22aは、循環の帰りは22a−2、循環ベルト22bの循環の帰りは22b−2で示してある。この軸方向循環ベルト22で構成される第二円筒21に、リボン1が巻き付けられて、円筒状ゴムシート2が形成されている。
【0037】
図4は、第一円筒、第二円筒およびコード供給ガイドを含めた円筒状ゴムシート製造装置の全体を示す側面図である。第二円筒21は、第一円筒11の内側に、円筒軸を同じくして並設されており、第二円筒21の円筒径は第一円筒11の径より小さい。ゴム被覆コードの並列体であるリボン1が、把持具を兼ねるコード供給ガイド31を通じて、第一円筒11に捲かれている。コード供給ガイド31には、エアーシリンダ32が設けられており、スタート時にリボン1を把持したコード供給ガイド31が、第二円筒21に表面に近づき、リボン1を接合できるようになっている。また、コード供給ガイド31は、モータ33によって回転するネジ34に連結されており、第一円筒11及び第二円筒21の側面を円筒軸方向に移動できるようになっている。このコード供給ガイド31の円筒軸方向の移動により、リボン1は第一円筒11上の螺旋状循環ベルト15(図4では省略してある)上に整然と載せられて、第一円筒上に巻かれていく。螺旋状循環ベルト15は、モータ35によって駆動されているギア36によって、小径ローラ13群を回転し、螺旋状循環ベルトの速度が定められる。
【0038】
図4におけるコード供給ガイド31は、把持具を兼ねる場合について例示した。第一円筒11から第二円筒21へ、リボン1が移されていく過程にローラガイド27が設けられていることが好ましく、このローラガイド27もコード供給ガイドの1形態として把えることができる。ローラガイド27は、円筒状ゴム2を押圧する押圧具を兼ねることができる。また、コード供給ガイド31には、コード切断具37も設けられていることが好ましい。
【0039】
図5は、図2における第二円筒21の円筒径Dを変更する手段の例を示す装置の側面図である。図は上半分と下半分が対称的であるので、上半分について説明するが、下半分も同様である。第二ドラム28の外側に配設されている軸方向循環ベルト22a(一点鎖線で示してある)が、ローラ41a、42a、43a、44a、45a間を循環するように構成されている。このローラ41aは、レール46aに支持されている。第二ドラム28の先端はテーパー状になっており、摺動材47、48を介して、架台49を支持している。架台49は、コロ50a、51aを介してシャフト46aを支持している。第二ドラム28の先端は、ネジ52になっており、フランジ53を挟んで、ダブルナット54が設けられている。ダブルナット54を締めることによって、架台49はテーパー部を滑って押し込められ、その結果、第二円筒21の径Dは拡大される。径Dを小さくしたい場合は、ダブルナット54を緩める側に回転することにより実現される。
【0040】
本発明の円筒状ゴムシート2が製造される工程を、図6の図(a)、図(b)、図7の図(c)、図(d)に分けて説明し、それぞれの工程における装置の断面図で示す。図6の図(a)は、コード供給ガイド31に把持されたリボン1が、エアーシリンダ32のアーム55により案内されて、第二円筒21を形成する軸方向コンベアベルト22上に貼り付けられる。図(b)は、軸方向コンベアベルト22上に貼り付けられたリボン1は、ローラガイド27に案内されて、第二円筒21上に押圧されている。ローラガイド27は、押圧ローラ56と一体となっており、エアーシリンダ57によって作動している。このときコード供給ガイド31は、把持状態を解除して、溝状の糸道としての役目をしており、第二円筒から離れている。
【0041】
第7図の図(c)では、コード供給ガイド31が、ネジ34によって第一円筒11サイトに移行されており、リボン1は第一円筒11に巻かれていく状態を示す。そして同時に、第一円筒11に巻かれたリボン1は、第一円筒11の回転により、第二円筒21上に巻き付いていく。図(d)は、コード供給ガイド31に供給されるリボン1は、コード供給ガイド31のグリップ作用で把持された状態で切断されている。このとき、第一円筒11に巻き付けられたリボン1は、図(c)の場合に同様、第一円筒11から第二円筒21に移されて行く状態を示す。供給されてくるリボン1は、切断されているので、第一円筒11に巻かれたリボン1が全て第二円筒に移され、全て円筒状ゴムシート2となると、一定長さの円筒状ゴムシート2が製造されたことになる。
【0042】
図8は、コードにゴムを被覆するゴム被覆工程と、図4で示した円筒状ゴムシート形成装置とが連結されている例を装置の側面図で示す。ゴムに対する接着処理が施されているコード61が、クリールスタンド62に設置されたボビン63から繰り出され、ターンローラ64a、64bを経て、ゴム押出機65のダイ66へと導かれる。ゴム押出機65により、未加硫ゴムが押し出され、ダイ66によりコード61に未加硫ゴムが被覆され、リボン1とされる。リボン1のゴムの被覆は、通常は、コードを予熱して行うことが多く、ターンローラ64a、64bが加熱されていることにより、予熱されることが好ましい。リボン1は、張力調整装置67(アキュムレータを兼ねている)を経て、第一円筒11と第二円筒21とからなる円筒状ゴムシート製造装置へ、コード供給ガイド31を介して導かれる。図4で示した円筒状ゴムシート製造装置では、円筒状ゴムシート2が形成され、切断具30で切り開かれて、コードで補強されたゴムシート3の連続体となり、直接タイヤ成形装置のボディプライ成形ドラム、或いは、ベルト成形ドラムへ導かれる。
【0043】
図9は、本発明のコードで補強されたゴムシートの製造装置AとBが並列配置された例を示す。装置Aでは、既に両円筒に巻き付けが終了し、コード供給ガイド31で把持された先のリボン1は切断されて、第一円筒11上のリボン1が第二円筒21へ移行されている状態を示す(図7のd図の状態)。押出機側から送られてくるリボン1は、コード供給ガイド31に把持されて、エアーシリンダ32とコード供給ガイド31とが一体となって、レール71上を装置Bへと移行されている。装置Bでは、リボン1が第二円筒21へと貼り付けられて、装置が稼働し始める図6のa図の状態を示す。このようにコードで補強されたゴムシートの製造装置を複数設け、押出機側から供給されてくるリボンを停止することなく、次々に装置を乗り換えて生産することにより、生産性をアップさせることができる。
【0044】
図10のA図は、ラジアルタイヤのボディプライ材となる円筒状ゴムシート2が切り開かれていく状態を示し、この場合におけるコードがゴムシートの長さ方向とのなす角度αは、リボン1の幅が小さく、第二円筒上のコンベアでの巻き付け角度θが無視できる場合は、直角すなわち90度であり、そのボディプライの幅R=πD(Dは、円筒の径)となる。この場合、円筒は、コードの巻付け角度θを補正する分だけ若干回転させる。B図は、円筒自体が回転することにより、切断具で円筒状ゴムシート2が切り開かれて、コードの配列角度αとなるコードで補強されたゴムシート3の連続体となる状態を示す。本発明では、リボン1の幅を大きくとれるので、第二円筒21における巻き付け角度θは大きくなるが、第二円筒21の回転により調整できる。C図に示すように、コンベア上の巻き付け角度θ、リボンの幅w、第二円筒の径D、第一円筒の回転数m、コンベアの速度、第二円筒の回転数nなどによって定められる。
【実施例1】
【0045】
図4および図8に示す製造装置を使用して、ポリエステルコードによる自動車タイヤ用ボディプライ材の製造の例を示す。ゴムとの接着性を得るためにディッピング処理が施された1100dtex/2のポリエスエルコード10本を繰り出した。そのコード群を60mmφゴム押出機より押し出された未加硫配合ゴム中を通過させてゴム被覆を行い、幅10mmのリボンとした。このリボンは、コード供給ガイドを通じて、第二円筒のコンベア上に貼り付けられる。第一円筒では、螺旋状循環ベルトが循環しており、その第一円筒の円筒外径(多角錐なので、一番広い部分)は、450mmである。また、第二円筒は、8本のコンベアが多角柱になるように配置されており、軸方向循環ベルトが構成するコンベアが、コードが供給される側から軸方向に1.15m/分で走行している。その多角柱の外径は131mmであった。回転数は33.5回/分で回転する第一円筒に巻き付けられたリボンが、第一円筒から第二円筒へ移されてくることにより、連続的にリボンが第二円筒に巻き付けられ、円筒状ゴムシートが形成される。このとき、コンベア上に巻き付けられて螺旋巻き付け角度θは、1.5度であった。このコンベア上を送られてくる円筒状ゴムシートは、コンベアを出た所で、切断具(カミソリ刃)で直角に切り出すことにより、幅412mmのシートを連続して得ることができ、シートの長手方向に対してコードの角度αが90度に配列したシートとなった(図10のA図参照)。この第二円筒の回転方向は第一円筒の回転方向とは逆で、螺旋巻き付け角θである1.5度を補正するように緩やかに回転している。この直角にコードが配列したゴムシートは、自動車タイヤ用ボディプライ材として、タイヤ成型機において使用される。
【実施例2】
【0046】
図4および図8に示す装置を使用して、スチールコードによる自動車タイヤ用ベルト材の製造の例を示す。ゴムとの接着性を得るためにめっき処理された0.25mmφの素線を撚り合わせた(2+2)×0.25スチールコードを8本繰り出した。そのコード群を60mmφゴム押出機よりダイに押し出されてきた未加硫配合ゴム中を通過させてゴム被覆を行い、幅10mmのリボンとした。そしてそのリボンは、実施例1と同様、コード供給ガイドへと導かれる。第一円筒では、螺旋状循環ベルトが循環しており、その第一円筒の円筒外径は、450mmであり、回転数は33.5回/分で回転する。この第一円筒に巻き付けられたリボンが、第一円筒から第二円筒へ移されてくることにより、リボンが軸方向循環ベルトによって構成されているコンベア上に巻き付けられ、円筒状ゴムシートが形成される。この螺旋巻き付け角度θは、1.4度であった。この第二円筒を構成するコンベアは、8本の小径ローラ群が多角柱になるように配置されており、軸方向循環ベルトが構成するコンベアは、コードが供給される側から軸方向に0.57m/分で走行しており、その多角柱の外径は128mmであった。この第二円筒の回転方向は第一円筒の回転方向とは逆方向であった。このコンベア上を送られてくる円筒状ゴムシートは、コンベアを出た所で、切断具(回転刃と受ローラ)で円筒軸に対して28.5度に切り出すことにより、幅194mmのシートを連続して得ることができ、シートの長手方向に対してコードの傾斜角度αが27度に配列したシートとなった(図10のB図参照)。この斜めにコードが配列した補強用ゴムシートは、自動車タイヤ用ベルト材の第一ベルトとして、タイヤ成型機において使用される。
【実施例3】
【0047】
上記実施例2の変形例として、第二円筒の回転方向を第一円筒の回転方向と同一にすることができる。この切り出されたシートは、実施例2のベルト材のコード角度とシートの長手方向に対して、対称角度をなすベルト材を得られ、自動車タイヤ用ベルト材の第二ベルト材として使用される。上記実施例2をゴムシート製造装置の第一セットとし、この実施例3を第二セットとすると、自動車タイヤ用第一ベルト、第二ベルトが交互に得られることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明のコードで補強されたゴムシートは、タイヤのボディプライ用シートやベルト用シート等に用いられるが、空気バネ、ダイヤフラム、ベルトコンベア、フレキシブルコンテナなど他の産業用機械等における強度を要求されるゴムシートの分野においても使用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の第一円筒の斜視図。
【図2】本発明の第二円筒の側面から見た断面図。
【図3】図2のA−A面での断面図。
【図4】本発明の円筒状ゴムシートの製造装置の側面から見た断面図。
【図5】本発明の第二円筒の外径を変化させる手段の例を示した装置の側面図。
【図6】本発明の円筒状ゴムシートの製造プロセスを、工程毎に示した装置の断面図。
【図7】図6に引き続き、本発明の円筒状ゴムシートの製造プロセスを、工程毎に示した装置の断面図。
【図8】本発明のコードで補強されたゴムシートの製造プロセスで、繰出、ゴム被覆、ゴムシート形成装置が結びつけられた例で、側面図で示す。
【図9】本発明のコードで補強されたゴムシート製造装置を並列配置した例を示す装置の断面図。
【図10】本発明のゴム被覆コードからなる円筒状シートを切り開いて、コードで補強されたゴムシートを製造する際の切り開き方法によるコードの配列状態を示す。
【符号の説明】
【0050】
1:リボン、 2:円筒状ゴムシート、 3:コードで補強されたゴムシート。
11:第一円筒、 12:第一ドラム、 13:小径ローラ、
14:留め具、 15:螺旋状循環ベルト。
20:タイミングベルト、 21:第二円筒、 22:軸方向循環ベルト、
23:タイミングベルト、 24:ベベルギア、 25、26:ローラ、
27:ローラガイド、 28:第二ドラム、
29:タイミングベルト、 30:切断具。
31:コード供給ガイド、 32:エアーシリンダ、 33:モータ、
34:ネジ、 35:モータ、 36:ギア、 37:コード切断具。
41、42、43、44,45:ローラ、 46:レール、
47,48:摺動材、 49:架台、 50、51:コロ、
52:ネジ、 53:フランジ、 54:ダブルナット。
55:アーム、 56:押圧ローラ、 57:エアーシリンダ。
61:コード、 62:クリールスタンド、 63:ボビン、
64a、64b:ターンローラ、 65:ゴム押出機、 66:ダイ、
67:張力調整装置。
71:レール。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)円筒の軸を中心に回転することにより、その円筒の表面にゴム被覆コードが巻き付くように構成されている第一円筒と、
(b)該第一円筒円筒径より円筒径が小さく、該第一円筒と円筒軸方向を揃えて並設されており、円筒表面が円筒軸方向に移動するコンベアを形成するように構成されており、該第一円筒の表面に巻き付いている該ゴム被覆コードの最初の端部が該コンベアの表面に接合されて該第一円筒が回転していることにより該ゴム被覆コードが該コンベア表面に巻き付けられていき、該コンベアの表面が円筒軸方向に移動することで、該ゴム被覆コードが互いに接触しながら連続的に螺旋巻きされて円筒状ゴムシートが形成されるように構成されている第二円筒と、
(c)該第一円筒と該第二円筒へ該ゴム被覆コードを供給し、該第一円筒および該第二円筒の円筒軸方向に移行できるように構成されている移動装置と連結されているコード供給ガイドと、
を備えた、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項2】
請求項1における前記第二円筒のコンベアが、前記円筒の表面を円筒の軸方向に複数本のベルトが駆動されて循環している軸方向循環ベルトを有する、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項3】
請求項1における前記第二円筒が、該第二円筒の円筒軸を中心に回転可能なように構成されており、該第二円筒が該円筒状ゴムシートを切り開く切断具をさらに有することにより、該第二円筒の回転により前記円筒状ゴムシートを螺旋状に切り出し、切り出されたシートの長手方向に対して所定の角度αにコードが配列されたゴムシートの連続体とするように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項4】
請求項1における前記コード供給ガイドが、ゴム被覆コード切断具を有しており、前記ゴム被覆コードが前記第一円筒表面に一定量巻かれた後、供給されてくる該ゴム被覆コードを該ゴム被覆コード切断具で切断するように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項5】
請求項1における前記第一円筒が、外周にほぼ平行に配置された複数本の互いにネルソンロール配置された小径ローラ群から構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項6】
請求項1における前記第一円筒が、該第一円筒の表面を螺旋状に循環する螺旋状循環ベルトを有しており、該第一円筒表面上に巻かれている前記ゴム被覆コードを、該螺旋状循環ベルトの表面に載せられて該第一円筒から前記第二円筒上に移行されるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項7】
請求項1における前記ゴムシート製造装置が複数セット設置されており、その1のゴムシート製造装置に供給されてきた前記ゴム被覆コードが切断された後、連続して供給されてくる該ゴム被覆コードを他のゴムシート製造装置に供給し、ゴムシート製造装置を切り替えつつ前記円筒状ゴムシートを連続的に製造されるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項8】
請求項1における前記コード供給ガイドが把持具を有し、該把持具は、前記ゴム被覆コードの端部を前記第二円筒のコンベア表面に接合する際、または前記第一円筒に該ゴム被覆コードが一定量巻かれた後で前記ゴム被覆コード切断具によって切断する前後、または複数の前記ゴムシート製造装置を切り替えて使用する際の切り替え作業を行う際において、前記コード供給ガイドへ供給されてくる該ゴム被覆コードを該把持具で把持しておくように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項9】
請求項1における前記第二円筒が、その外径を変化させる機構を有するにより、前記円筒状ゴムシートの径を変化させるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項10】
リールから繰り出されたゴムに対する接着処理が施されているコードが、ゴム被覆ダイを通過することによりゴムが被覆されるゴム被覆装置が設けられており、ゴム被覆コードを連続的に作成しつつ請求項1の前記コード供給ガイドに導かれるように構成されている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項11】
請求項10における前記ゴム被覆装置と前記コード供給ガイドとの間に、コードの張力調整装置が設けられている、コードで補強されたゴムシートの製造装置。
【請求項12】
(a)ゴム被覆コードをコード供給ガイドへ導く工程と、
(b)円筒の軸を中心に回転可能に構成されている第一円筒と、該第一円筒の円筒軸方向に円筒軸方向を揃えて並設されている該第一円筒円筒径より円筒径が小さい第二円筒とが備えられており、該コード供給ガイドへ導かれてきた該ゴム被覆コードを、まず該第二円筒の表面に接合される工程と、
(c)該コード供給ガイドが該第二円筒サイドより該第一円筒サイドに移行し、該第一円筒の円筒軸を中心にした回転により該第一円筒の表面に該ゴム被覆コードが巻き付けられていく工程と、
(d)該第二円筒の円筒表面が円筒軸方向に移動するコンベアを形成しており、該第一円筒の表面に巻き付いている該ゴム被覆コードの最初の端部が該第二円筒の表面に接合されているため、該第一円筒の回転により該第一円筒表面に巻き付けられていることで該ゴム被覆コードが第二円筒の表面に巻き付けられていく工程と、
(e)該第二円筒の表面が円筒軸方向に移動するコンベア作用で、該第二円筒表面上に巻き付けられていく該ゴム被覆コードが互いに接触しながら連続的に螺旋巻きされて円筒状ゴムシートが形成されていく工程と、
を含む、コードで補強されたゴムシートの製造方法。
【請求項13】
請求項12における前記ゴム被覆コードの複数本が並列して密着しているリボンであることを特徴とするコードで補強されたゴムシートの製造方法。
【請求項14】
請求項12における前記第一円筒の外面を螺旋状に循環している螺旋状循環ベルトにより、前記第一円筒に巻かれている前記ゴム被覆コードが該螺旋状循環ベルトの表面に載せられて該第一円筒から第二円筒上に移行させられる、コードで補強されたゴムシートの製造方法。
【請求項15】
請求項12における前記第二円筒が、該第二円筒の円筒軸を中心に回転することにより、該第二円筒上の該円筒状ゴムシートが切り開かれて螺旋状に切り出され、切り出されたシートの長手方向に対して所定の角度αにコードが配列されたゴムシートの連続体とする、コードで補強されたゴムシートの製造方法。
【請求項16】
請求項12における前記ゴムシート製造方法において、前記コードで補強されたゴムシートの製造手段が複数セット設置されており、その1のゴムシート製造装置に供給されてきた前記ゴム被覆コードが切断された後、連続して供給されてくる該ゴム被覆コードを把持具で把持しつつ他のゴムシート製造装置に供給されて、ゴムシート製造手段を切り替えつつ前記円筒状ゴムシートの一定長の製品を次々と製造されていく、コードで補強されたゴムシートの製造方法。
【請求項17】
リールから繰り出されたゴムに対する接着処理が施されているコードが、ゴム押出機から押し出されたゴムを被覆するゴム被覆ダイを通過することによりゴムを被覆され、前記ゴム被覆コードが連続的に作成されつつ請求項12の前記コード供給ガイドに導かれる、コードで補強されたゴムシートの製造方法。


【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−218777(P2006−218777A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−35271(P2005−35271)
【出願日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(591032356)不二精工株式会社 (9)
【出願人】(594029333)不二商事株式会社 (11)
【Fターム(参考)】