説明

2,3−ベンゾジアゼピンによる炎症性疾患の治療

式Iの化合物(但し、R1、R2、R3、R4、R5及びnは本発明で定義される。)を、炎症性疾患、好ましくはLTB4により伝達される炎症性疾患の治療用に投与する方法。
【化1】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の引用
本出願は、出願中の米国特許出願第10/309573号(2002年12月3日出願)の一部継続出願であり、その全ての開示をここで資料として使用する。
本発明の分野
本発明は、炎症性疾患の治療方法に関し、特にロイコトリエンB4により伝達される疾患の治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
I.ロイコトリエンB4(LTB4
ロイコトリエンB4は、免疫複合体、食作用又は他の刺激による活性化に際して、白血球、特にマクロファージ及び単球により生成される。このプロセス中、膜リン脂質はホスホリパーゼA2により分解されてアラキドン酸を放出し、それは2個の経路の一方を経由して更に代謝される。最初にシクロオキシゲナーゼを経由し、プロスタグランジンを生成する。第二にリポキシゲナーゼを経由しロイコトリエンA4(LTA4)を形成する。LTA4はLTB4又はLTC4へ転換される。LTB4は、好中球及びマクロファージの炎症部位への移動(化学走性)を刺激することのできる走化性剤である。LTB4の構造を下記に示す。
【化1】

【0003】
LTB4の公知の病理生理学的反応として:有効な好中球走化性活性の誘起、白血球(PMN)の多形核(白血)球脈管構造への付着促進、PMNの血管透過性の増加、リソソーム酵素の放出の刺激が挙げられる。LTB4のプロ炎症性作用がin vivoで、ヒト皮膚上の局所的LTB4は、PMN及び他の炎症性細胞の浸潤を促進することが示された。LTB4の皮内注入は、注入部位での好中球の蓄積を誘起する。LTB4の静脈注射は、急性であるが一過性の好中球減少症を引き起こす(Kingsburyら、J.Med.Chem.、1993、36、3308-3320;及びその中に記載された資料を参照)。
更に、炎症性腸疾患関連の結腸性粘膜中、活動性慢性関節リューマチ(RA)の患者の滑液中、又は再潅流障害中の炎症部位における生理学的LTB4濃度で存在すると、乾癬、喘息及び活動性痛風等の病状(の発現)に関連する。これら観察の全ては共に、ヒト炎症性疾患においてLTB4が関与している治験をサポートする(Kingsburyら及びGriffethsら、Proc.Natl.Acad.Sci.Vol.92、pp517-521、Jan.1995;及びその中に記載された資料を参照)。
【0004】
LTB4は、2個のレセプターサブグループ:高親和性レセプター及び低親和性レセプターと相互作用すると考えられる。研究により、高親和性レセプターは化学走性を伝達し、低親和性レセプターはLTB4誘起された分泌及びオキシダーゼ活性化反応を伝達することが示された(Yokomizoら、2000)。幾つかのLTB4アンタゴニストは、全てのLTB4が活性を伝達することを拮抗できることが観察された。他のLTB4アンタゴニストは、LTB4レセプターの1集団に関連する活性のみを制御し、他の小集団は制御しない。
【0005】
II.LTB4アンタゴニスト
LTB4のアンタゴニストとして働く化合物として例えば:LTB4−ジメチルアミド及び20−CF3−LTB4等のLTB4の構造的アナログ;SM−9064;U−75302;Ly−223982;SC−41930;ONO4057(プロスタグランジン、44(4):261−275、1992);RG−14893;(E)−3−[2−[6−[3−(3−ブトキシフェニル)−3−ヒドロキシプロペニル]ピリジン−2-イル]−1−ヒドロキシエチル]ベンゾエート−安息香酸リチウム塩(KingsburyJ.Med.Chem.、1993、36、3308-3320、及びその中に記載された資料を参照);天然生成物Leucettamine A及びその構造的アナログ、1−メチル−2−アミノ−4−[[4’−[4」−(ヒドロキシブチル)フェニル]メチル]−5−(フェニル−メチル)イミダゾール(BoehmらJ.Med.Chem.、1993、36、22、3333-3340);ピリジン−2−アクリル酸類(Kingsburyら、J.Med.Chem.、1993、36、22、3321-3332);SC−45694(TsaiらJ.Pharm.Exp.Ther.、268、3、1493-1498);必須脂肪酸の種類(Yagaloffら、「プロスタグランジン、ロイコトリエン及び必須脂肪酸」(1995)、52、293-297);並びにFPL55712及びFPL55231(Chengら、J.Pharm.Exp.Ther.、236(1)、1985)が挙げられる。これら化合物の構造は、LTB4の構造と多くの類似性を示す。
【0006】
III.2,3−ベンゾジアゼピン
ある種の2,3−ベンゾジアゼピンが、それらの有効なCNS調節活性のために大規模に研究された。トフィソパム(グランダキシン(登録商標))、ギリソパム(girisopam)、及びノリソパム(norisopam)等の化合物は、実質的な抗不安性及び抗精神病性活性を示した。
トフィソパムはヒト中で、広く使用されているジアゼパム(バリウム(Valium、登録商標))及びクロルジアゼペポキシド(chlordiazepepoxide)(リブリウム(登録商標))等の1,4−ベンゾジアゼピン(BZ)抗不安薬のそれとは非常に異なる活性プロファイルを有することを示した。1,4−ベンゾジアゼピンは、鎮痛性−催眠性活性に加えて又、筋肉弛緩性及び抗けいれん性を有し、幾つかの病状に治療的に有用であり、有効性があるにもかかわらず不適当な副作用を示した。従って、1,4−ベンゾジアゼピンは、単独投与された時は安全だがアルコールを含む他のCNS薬と組み合わせると危険な場合がある。
【0007】
その反対に、トフィソパムは、はっきりとした鎮痛性、筋肉弛緩性又は抗けいれん性を示さない非鎮痛性抗不安薬でもある(Horvathら、Progress in Neurobiology、60(2000)、309-342)。臨床研究において、トフィソパムは、損傷した精神運動能力をかなり改良し、エタノールと相互作用を示さない(Id.)。これら観察は、トフィソパムは中央BZレセプターと相互作用を示さず、末梢性BZレセプターと弱く結合するのみであることを示すデータに合致する。更なる研究は、トフィソパムはin vitroでのマイトジェン誘起されたリンパ球増殖及びIL−2生成を促進することを示した。
【0008】
構造的にトフィソパムと類似する他の2,3−ベンゾジアゼピンが研究され、様々な活性プロファイルを有することが示された。例えば、GYKI−52466及びGYKI−53655(構造を下記に示す)は、AMPA(α−アミノ−3−ヒドロキシ−5−メチル−4−イソオキサゾールプロピオン酸)部位において非競合的グルタメートアンタゴニストとして作用し、神経保護性、筋肉弛緩性及び抗けいれん剤活性(Id.)を示した。2,3−ベンゾジアゼピンの別の群として化合物GYKI−52895が研究され、抗うつ及び抗パーキンソン症候群治療で使用可能な、選択的ドーパミン摂取阻害剤としての活性を示した。
【0009】
トフィソパム(原子付番システムを表示した構造を下記に示す)は、(R)−及び(S)エナンチオマーのラセミ混合物である。これは、ベンゾジアゼピン環の5位の不斉炭素、即ち4種の異なる基が結合している炭素に起因する。
【化2】

【0010】
トフィソパムの分子構造及び立体配置特性は、NMR、CD及びX線結晶分析により決定された(Visyら、Chirality:271-275(1989))。2,3−ジアゼピン環は、2個の異なるコンフォーマーとして存在する。主要なトフィソパムコンフォーマー、(+)R及び(−)Sは、準エクアトリアル位中の5−エチル基を含有する。5−エチル基は、より少数のコンフォーマー(−)R及び(+)S中では準軸方向に位置する。従って、ラセミトフィソパムは、4個の分子種、即ちそれぞれに2個の配置が存在する2個のエナンチオマーとして存在できる。旋光度の符号は、一方のコンフォーマーから別のコンフォーマーへのジアゼピン環の反転により逆転する。結晶の状態では、トフィソパムは、主要な配置として(R)絶対配置を有する右旋回性トフィソパムのみで存在する(Tothら、J.Heterocyclic Chem.、20:709-713(1983);Fogassyら、Bioorganic Heterocycles、VanderPlas、H.C.、Otvos、L、Simongi、M編、ブダペスト、アムステルダム:Akademia;Kiado-Elsevier、229:233(1984))。
【0011】
トフィソパムの(+)及び(−)配置の結合性の差異は、ヒトアルブミンとの結合研究で調査されている(SimongiらBiochem.Pharm.、32(12)、1917-1920、1983)。2個の(+/−)コンフォーマーは又、平衡状態で存在すると報告されている(Zsilaら、Journal of Liquid Chromatography & Related Technologies、22(5)、713-719、1999;及びその中に記載された資料を参照)。
トフィソパム(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン)の光学的に純粋な(R)エナンチオマーが単離され、そのラセミ混合物の有する非鎮痛性、抗不安薬活性を有することが示された。米国特許第6080736号を参照し、その全てをここで資料として使用する。
【0012】
IV.炎症性疾患
A.炎症性腸疾患
クローン病(CD)及び潰瘍性大腸炎(UC)、及びより狭い範囲では病型不定型大腸炎及び伝染性大腸炎は、総称して炎症性腸疾患(IBD)と呼ばれる。炎症性腸疾患は、原因不明の慢性再発性炎症性疾患であり、小腸及び結腸を冒す。IBDは、小腸及び大腸のいずれか又は両方を含む。これら障害は、それらの病因が不明なため「突発性」IBDのカテゴリーに振り分けられる。
病理学的病状は、IBDの特別な態様を示す場合もあるが一般的に特定のものではない。「活動性」IBDは、急性炎症に特徴を有する。「慢性」IBDは、陰窩(crypt)変形及び瘢痕(scarring)の構造的変化に特徴を有する。「陰窩」は、小腸周囲を囲む結合組織内へ突出する深いくぼみを言う。陰窩膿瘍(陰窩内腔中の好中球の存在に特徴を有する活動性IBD)は、UCそのものではなくIBDの多くの種類で発生する。標準状態では、陰窩の基部の上皮は、幹細胞増殖部位であり、分化した細胞は上方へ移動し、3〜5日後に絨毛の先端で抜け落ちる。この通常のプロセスは適切な腸機能に必要であるが、IBDにより阻害される。
【0013】
UCは、遠位が圧倒的に多いびまん性粘膜病として、結腸を含む。直腸は事実上常に含まれ、結腸の付加的部分も連続的パターンで直腸から近位に伸びて含まれる。UCは、15〜40歳の若年層で最もしばしば発生する。UCは、結腸(大腸)又は直腸の内側上皮(lining)中でのみ発生する。直腸中に局在する場合、それは「直腸炎」と称される。
CDは、緩解期間(患者が良好に感じる期間)及び再発期間(患者が病気と感じる期間)を含む慢性炎症性疾患である。CDは、腸管壁の深い層中で発生する炎症及び潰瘍形成プロセスである。罹患する最も一般的な領域は、小腸のより下部であり、回腸と呼ばれ、結腸の最初の部分である。この種のCDは、回結腸炎と呼ばれる。CDは、まれに胃腸管の上部に発病する。単純疱疹に類似しているアフタ性潰瘍は、一般的である。潰瘍は又、食道、胃及び十二指腸中でも発生する。
【0014】
IBDの治療は、従来コルチコステロイドの投与を含んでいた。しかし長期間のコルチコステロイド治療の欠点は、腸管穿孔、骨壊死及び代謝性骨疾患の隠蔽(又は誘発)である。更なる問題は、コルチコステロイド依存性の進行に関する(Habnauer、New England Journal of Medicine、334(13)、p841-848、1996)。スルファサラジン(商標)及びメサラミン(商標)等のアミノサリチラートが、軽症又は中程度の活動性UC及びCDの治療、並びにその緩解の維持のために使用されてきた(Id、843)。アザチオプリン(商標)及びメルカプトプリン等の免疫調節性薬が、IBD患者への長期治療で使用されてきた。これら一般的な薬両方の組み合わせは、患者に3〜15%発生率で膵臓炎及び、骨髄(機能)抑制を引き起こし、定期健診が必要となる。更に有効性のあるシクロスポリン(商標)及びメトトレキサート等の免疫抑制剤が使用されたが、これら薬の毒性は、治療抵抗段階の特定の病状へのその使用を制限する。他の治療的取り組みとして、抗生物質性治療及び栄養補給治療が挙げられる。しばしば、治療では、上記記載の薬治療に加えて腸の外科的切除の組み合わせが行われる。
IBDの治療法はない。最終的に、IBDの慢性的及び進行性特徴は、局部的抗炎症性効果を最大限にする一方、免疫系への全体的な全身的効果を最小化する長期治療を必要とする。
【0015】
CD等の慢性炎症性疾患は、通常複数の炎症が、活発であり急性治療を必要とする期間の間に緩解期間を示す。これは、患者が炎症性疾患を発現するか発現しやすいと従来知られている症状の例である。
過敏腸症候群(IBS)は、IBDとは区別される腸障害である。IBSは、米国の大人の少なくとも10%〜20%が罹患している。IBSは、胃腸病専門医により診断される最も一般的な障害であり、米国内科医により診断される最多病状の10位以内である。
IBSは「機能性胃腸性障害」として分類され、腸機能に障害のあることを意味する。IBSは病気ではなく、症候群、即ち症状の集団として考えられている。症状として、通常慢性の腹部痛み/不快感、及び不規則な腸機能、例えば、下痢、便秘、又は下痢便秘交代症が挙げられる。
IBDとは異なり、IBSは炎症を引き起こさない。IBS患者は、結腸検査では病気又は異常の徴候も示さない。従って、IBD及びIBSは幾つかの類似する症状、特に筋けいれん及び下痢を有するが、内在的な病気プロセスは全く異なる。IBDでは腸壁の炎症又は破壊があり、腸の深い潰瘍形成及び狭窄へ導く。IBSは、明白な病因が発見できない胃腸(GI)管の障害である。患者は、IBS及びIBD等の炎症性疾患の両方を同時に有する場合がある。その場合、不明確な診断は不適切な医学的処置へ導く。
【0016】
B.炎症性皮膚障害:
1.乾癬
乾癬は、LTB4により伝達されると考えられる別の慢性炎症性症である。乾癬は、皮膚のどこにでも現れるが、ひじ、ひざ又は頭皮等の外傷領域の慢性、再発性、丘疹鱗屑性プラークである。乾癬は、幾人かの患者で紅斑性狼瘡と共に存在する。現在の治療としては、ソラレンの局所的投与である。「ソラレン」は、多くの異なる植物、特に(psoralea corylifolia)中に発見される物質群を言う。ソラレンは、核酸と相互作用し、又研究道具として使用される。乾癬は、長波紫外線放射線でも治療できる。これら処置はいずれも乾癬症状の再発の治療又は予防には効果がない。
【0017】
2.アトピー性皮膚炎/湿疹
アトピー性皮膚炎は、皮膚を冒す慢性病である。アトピー性皮膚炎では、皮膚は極度に痒くなる。引っ掻きは、赤み、膨潤、ひび割れ、透明な液体の分泌を引き起こし、最終的に、かさぶた及びスケーリングへ導く。多くの場合、病状の再発期間とそれに続く緩解期間がある。厳密に何人がアトピー性皮膚炎に罹患しているか特定することは困難であるが、20%の幼児及び年少者が、この病気の症状を経験していると見積もられる。約60%のこれらの幼児は、1以上の症状のアトピー性皮膚炎を大人になっても持ち続ける。従って、米国の1500万を超える人々がこの病気の症状を示す。
【0018】
3.接触皮膚炎
接触皮膚炎は、皮膚がアレルゲン、即ち体がアレルギーを示す物質と接触する時に引き起こされる反応である。アレルゲンは多くの人間には無害であるが、特定のアレルゲンに対し先天的又は後天的過敏性である人間ではアレルギー体質の反応を引き起こす。
【0019】
C.慢性関節リューマチ(RA)
LTB4により伝達されると考えられる別の慢性炎症性疾患はRAであり、関節の自己免疫病である。RAは、下記診断基準1〜7に特徴を有するが、診断基準1〜4は6週間を超える間存在するものである:(1)最大回復前に少なくとも1時間続く、関節内及び周囲の朝のこわばり;(2)内科医により観察される3以上の関節の軟組織膨潤(関節炎);(3)近位の指節骨間、中手骨指節骨、又は手首関節の膨潤(関節炎);(4)対称性膨潤;(5)慢性関節リューマチ小結節、即ち、単球の柵及びリンパ球の湿潤物の外部の被膜により周りを囲まれた中心壊死に特徴を有する肉芽腫性障害、これら障害は皮下結節、特にRA又は他のリューマチ様障害を有する患者のひじ等の圧力点、として存在する;(6)リューマチ様因子、即ちRA患者の血清中の自己抗体の存在;及び(7)X線撮影的侵食、即ちX線で確認できる関節障害。
RAは公知の治療法がない慢性障害である。RAの治療の主要な目標は、痛み及び不快感を減少させ、変形及び関節機能の喪失を予防すること、生産的及び活動的生活の維持である。炎症は抑制され、機械的及び構造的異常は、補助装置により補正され補填される必要がある。任意の治療として、関節ストレスの減少、物理的及び職業性治療、薬治療、及び外科的介入が挙げられる。
【0020】
RAの治療に通常使用される薬には、下記3種の一般的種類がある:非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)、コルチコステロイド、及び軽減剤又は疾患修飾性抗リューマチ薬(DMARD)。NSAID及びコルチコステロイドの作用発現時間は短い一方、DMARDが臨床的効果を示すには数週間又は数月必要である。DMARDとして、レフルノミド(商標)(アラバ(登録商標))、エタネルセプト(商標)(エンブレル(登録商標))、インフリキシマブ(商標)(レミケード(登録商標))、抗マラリア薬、メトトレキサート、金塩、スルファサラジン(商標)、d−ペニシラミン、シクロスポリンA(商標)、シクロホスファミド及びアザチオプリン(商標)が挙げられる。しばしば最初の2年以内に軟骨障害及び骨侵食が発生するため、リューマチ医はDMARD薬をより積極的に使用する。
【0021】
コルチコステロイド慢性投与によるRAの治療は、上記IBDに関して記載したのと同一の副作用プロファイルを示す。NSAIDの慢性投与も又、副作用を生じる。NSAIDの最も一般的な毒性は、胃腸性障害である。プロスタグランジンは腎臓の血流の調節及び糸球体のろ過の維持に作用するため、NSAIDは、ある患者では腎臓機能を損傷する場合がある。体重増加及びクッシング様外観は、しばしば問題となり患者の不満源になる。最近の研究は、プレドニゾン(商標)の低投与量、特に毎日10mg投与では、心臓血管のリスクを増加させ、骨粗鬆症を加速する事実を提起した。
【0022】
D.痛風
痛風は、LTB4により伝達されると考えられる別の炎症性疾患である。痛風は、主に男性に発生する尿酸代謝障害である。痛風は、血中尿酸濃度上昇及び関節周囲の尿酸塩結晶の存在の結果発生する、特に足及び手の関節の痛みを伴う炎症、並びに関節炎の発病の特徴を有する。この症状は慢性であり変形を引き起こすことがある。
痛風は、患者が炎症性疾患を発現又は発現しやすいことが公知の、別の環境でも発生する。例えば放射線療法又は化学療法を受ける患者では、患者は腫瘍塊の消散に関連して血清尿酸濃度の劇的増加を経験する。尿酸のこのような増加は、関節の滑液中に尿酸塩結晶を含ませ、炎症性疾患、痛風を引き起こす。このような血清尿酸濃度の上昇が起こりやすい場合には、LTB4アンタゴニストを用いた予防は、痛風の炎症性症状を予防する作用を示す。
【0023】
E.放射線性胃腸性炎症
放射線性胃腸性炎症は、LTB4により伝達されると考えられる別の炎症性疾患である。放射線は、癌細胞を損傷させる作用をするが、残念ながら病気でない組織も同様に損傷し、その応答で基本的な炎症性反応を引き起こす。従って治療的放射線は一般的に、対象体の体の異常増殖性組織を含む限定された領域に適用して、異常な組織に吸収される放射量を最大化し、近傍の正常な組織に吸収される放射量を最小化する。しかし、治療用電離(ionizing)放射線を異常な組織へ選択的に照射することは(不可能でない場合でも)困難である。従って、異常な組織に近接した正常な組織も又、治療の間中、電離放射線の破壊可能な照射に曝される。更に、幾つかの治療は、「全体照射」又は「TBI」と呼ばれる操作において、対象体の全部の体を放射線へ曝すことを必要とする。従って異常増殖性細胞の破壊中の放射線治療的技術の有効性は、必然的に近傍の正常な細胞に作用する関連する細胞毒性によりバランスされる。
放射線療法コース後又はその間、LTB4伝達される炎症性プロセスが誘発され、腸を損傷し、GI管の内側上皮の細胞の壊死を引き起こす。放射線性胃腸性炎症は、患者が炎症性疾患を発現するか発現しやすいと従来知られている別の症状例を提起する。炎症の放射線療法を受ける患者の場合、胃腸管の損傷及び壊死は放射線療法の予想できる副作用である。
【0024】
F.粘膜炎
粘膜炎として、粘膜の炎症として文字通り定義される粘膜上皮組織の潰瘍性損傷が挙げられる。化学療法により又は電離照射による粘膜への有毒な刺激に応答する粘膜炎の病理生理学は複雑であり、細胞、サイトカイン及び口内微生物フロラ間の相互作用のカスケードを含む。口腔咽頭部及び胃腸管の粘膜の、化学療法又は放射線損傷に対する感受性のための内在的な前提は、上皮幹細胞の急速なターンオーバーに関する。粘膜炎は下記フェースの特徴を有する:
1.細胞毒性剤により引き起こされた局部的組織損傷への反応中での炎症性サイトカインの放出に特徴付けられる早期炎症性フェース;
2.上皮の再成を阻害する基底細胞の死亡に特徴付けられる上皮性フェース、この再生不能は萎縮を導き、次に潰瘍が形成される。その潰瘍形成は、局部的微生物フロラ部位での重要な解剖学的バリアの喪失を示す;
3.局部的感染への炎症性反応を生じる微生物フロラの局部的侵入により特徴付けられる感染フェース。この炎症は付加的局部的組織損傷を引き起こし、びらん性潰瘍形成を生じる場合がある;並びに
4.感染の回復及び上皮再生に特徴付けられる治癒フェース。
【0025】
口腔粘膜炎は、下記細胞の損傷から生じる臨床的症状及び兆候を生じる:1)乾燥感;2)症的赤み及び紅斑;3)圧力接触に痛みを感じる、孤立した白色の盛り上がった剥離性パッチ;並びに4)嚥下障害及び経口摂取減少に関連する、大きく、痛みがあり、隣接する偽膜性障害。これら自発的な痛みのある障害は、基底膜までの組織病理学的上皮の細胞の喪失を示し、その関連する神経支配を有する結合組織支質を露出する。
口内粘膜と共に、胃腸性粘膜損傷は、細胞の有糸分裂の障害の結果であり、腸管陰窩の基底細胞のターンオーバー速度の減少を生じる。胃腸性粘膜炎の症状及び兆候として、しぶり(痛みのある無駄な便通での緊張)、痛み、出血、下痢、毛細管拡張症(新生血管形成)、並びに潰瘍形成への進行が挙げられる。下痢の早期兆候として、便通頻度の増加、軟状又は水状便、食物嫌悪、腸音の増加、腹部痛み、並びに脱水を示す皮膚トルゴールの幾つかの減少が挙げられる。下痢がひどい場合は、粘膜潰瘍形成、出血、腸管穿孔及び直腸炎が関係する可能性がある。検便検査で潜血および便中白血球が示される。
【0026】
G.壊死性腸炎
壊死性腸炎は、集中治療ユニットに入る全ての幼児の1〜5%の新生児、その多くは未熟児が感染する未知の病因の炎症性疾患である。兆候及び症状としては、腹部膨張、胃腸性出血、及び栄養過敏症が挙げられる。最も頻度の高い病気は、回腸及び結腸に関するもので、上皮の損失及び粘膜下層水腫、潰瘍形成、そして重篤な場合は全層性壊死の特徴を有する。
【0027】
H.アフタ性潰瘍(口内)
アフタ性潰瘍の原因が知られていないのにも拘らず、多くの内科医は、それらは自己免疫現象により引き起こされ、口内粘膜の孤立した領域の破壊を引き起こし、口内潰瘍が形成されると信じている。潰瘍形成のこれら活動性領域中に存在するサイトカイン中で、TNF−αは、有力な役割を果たすことが明らかになった。
【0028】
I.歯肉炎/歯周炎
大人の歯周炎は、Porphyromonas gingivalisによる感染に非常に関係する。この細菌により大量に生成される蛋白質分解性酵素は、重要な病原性剤として考えられる。歯肉滲出液(GCF)の生成及び流れの増加は、歯周膜(歯根)感染中歯肉組織中の重要な変化であり、歯肉炎症の臨床指数と相互に関連する。歯周炎患者の唾液蛋白質及びアルブミン濃度は血管透過性促進(VPE)によるプラズマ滲出の指標であり、健康対象体と比較して非常に増加する。GCFの生成は、歯周炎部位で誘起されたVPEに対応することが示されており、おそらくその生成(generation)中にP.gingivalisのプロテイナーゼを含むと推定される。
【0029】
J.食道炎
最も一般的な食道炎の原因は、胃の噴門括約筋の無能力のための胃からの塩酸の慢性還流である。食道下部に酸が慢性的に存在すると、食道粘膜の損傷が引き起される。最も劇症の場合、バレット食道と言われる症候群が発現し、しばしば食道癌となる。他の食道炎の原因として、胸腔中の癌への非経口化学療法及び放射線療法関連の電離放射線が挙げられる。
【0030】
K.咽頭炎
咽頭炎は、咽頭及び/又は扁桃腺の感染又は炎症として定義される。病因は、通常伝染性であり、40〜60%の事例はウィルス性原因であり、5〜40%の事例は細菌性原因である。他の原因として、アレルギー、外傷、毒素及び新形成が挙げられる。米国の児童は、1年に5回以上の上気道感染(URI)及び平均4年に1回の連鎖球菌性感染にかかると推定される。大人での罹患は、その割合の約二分の一である。大人及び児童の両方で咽頭炎を引き起こす最も顕著な細菌性剤は、GABHS感染(化膿連鎖球菌)であり、最も顕著なウィルスは、ライノウィルス及びアデノウィルスである。
【0031】
L.眼性病:
1.網膜炎
光感受性網膜の炎症である、網膜炎は、種々のウィルス性、細菌性又は自己免疫病因により発現する。その最終的結果は、網膜の破壊及び視覚喪失である。
2.ぶどう膜炎
目の前部及び/又はその関連する構造、即ち虹彩及び角膜の炎症が、自己免疫障害の患者で比較的高頻度に発生する。
3.結膜炎
結膜炎は、白目及びまぶたの内側を覆う粘膜である結膜の炎症である。主要な5種の結膜炎がある。(1)細菌性結膜炎は、細菌により起こされる感染である。(2)ウィルス性結膜炎は、「アデノウィルス」と言われるウィルスにより起こされる。(3)クラミジア性結膜炎は、トラコーマクラミジアと呼ばれる微生物により起こされる。(4)アレルギー体質の結膜炎は、花粉症、喘息及び湿疹等のアレルギー体質等の他の症状を示す人々に一般的である。(5)反応性結膜炎(化学的又は刺激性結膜炎)は、化学的刺激物、例えば水泳プール、煙又は溶媒蒸気中の化学物質により起こされる。
【0032】
M.消化性潰瘍障害
2−レセプターアンタゴニスト、及び最近は、H+、K+−ATPアーゼのブロッカー(プロトンポンプとして知られる)による胃酸分泌の抑制は、消化性潰瘍障害の治療の主力となっている。消化性潰瘍の病理生理学は、不明瞭のままである。胃粘膜生理学の複雑性の応用研究は、消化性潰瘍は攻撃的((胃)酸、ペプシン)及び防御的(粘液、炭酸水素塩、血流、プロスタグランジン等)因子の相対的重要度のバランスの乱れの結果であるという仮説へ導く。ヒト胃の空洞(gastric antrum)粘膜へのヘリコバクターピロリ菌感染は、活性な慢性B型胃炎の原因として広く知られている。更に、ヘリコバクターピロリ菌の根絶は、この胃炎から回復させ十二指腸潰瘍の再発を予防することを示す研究により、この型の胃炎は消化性潰瘍障害と直接的に関連していることが示された。
【0033】
V.炎症性疾患治療に有用である薬剤
多くの化学的物質について抗炎症剤としての生化学的活性の研究がなされた。研究された特別な種類の化合物として、アミノサリチラート、コルチコステロイド、代謝拮抗物質、免疫抑制剤、腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)阻害剤、5−リポキシゲナーゼ(5−LO)阻害剤等のロイコトリエン合成の阻害剤、及びロイコトリエンアンタゴニストが挙げられる。
炎症性疾患モデルで活性を有することが示された対象化合物の例を、検査された作用推定機構及び症状と共に表1に列記した。
【表1】

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0034】
IBD、RA、痛風、乾癬及び放射線性胃腸性炎症等の炎症性疾患の治療に有用な新しい抗炎症剤が求められている。特に、治療で連続して長期間使用できる適切な薬剤が求められている。更に、炎症性疾患、特に電離放射線療法等の観測可能な事象の次に発生するLTB4伝達される炎症性疾患の予防に有用である薬剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0035】
本発明のまとめ
本発明の一例では、患者の炎症性疾患、好ましくはLTB4により伝達される炎症性疾患、更に好ましくはCD及びUCを含むIBD;乾癬;慢性関節リューマチ;痛風;及び放射線誘起性胃腸性炎症の治療又は予防方法を提供する。
【0036】
本発明の方法は、患者へ有効量の少なくとも1の式Iの化合物を投与することを含む:
【化3】

但し:R1は−(C1−C7)ヒドロカルビル又は−(C2−C6)ヘテロアルキルであり;
2は−H及び−(C1−C7)ヒドロカルビルの群から選ばれ、R1及びR2は結合して炭素環状又は複素環状5又は6員環を形成してもよく;
3は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、−O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、−NH(C1−C6)アルキル、−N((C1−C6)アルキル)2、−NH−アシル、−NO2及びハロゲンの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
4及びR5は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、NH−アシル及びハロゲンの群から選ばれ、R4及びR5は結合して5、6又は7員の複素環を形成してもよい化合物;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩。
【0037】
本発明の別の例では、炎症性疾患、特にLTB4により伝達される炎症性疾患の治療又は予防方法を提供し、上記炎症性疾患は過敏腸症候群に罹患している患者で発現し、上記方法は、患者へ、有効量の少なくとも1の上記定義された式Iの化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩を投与することを含む。
本発明の一例では、投与される上記式Iの化合物は、ベンゾジアゼピン環の5位での絶対配置に関してラセミ混合物を含有する。
本発明の好ましい例では、投与される上記式Iの化合物は、ベンゾジアゼピン環の5位での絶対配置で(R)エナンチオマー、同一の化合物の対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない)を含有する。
【0038】
好ましくは、(R)エナンチオマーを含有する、投与される上記式Iの化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩は、85重量%以上の(R)エナンチオマーを含有する。更に好ましくは、(R)エナンチオマーを含有する、投与される式Iの化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩は、90重量%以上の(R)エナンチオマーを含有する。特に好ましくは、(R)エナンチオマーを含有する、投与される式Iの化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩は、95重量%以上の(R)エナンチオマーを含有する。最も好ましくは、(R)エナンチオマーを含有する、投与される式Iの化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩は、99重量%以上の(R)エナンチオマーを含有する。
【0039】
本発明では例えば:R1は−(C1−C6)アルキルであり;
2は−H及び−(C1−C6)アルキルの群から選ばれ;
3は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−O−アシル及び−OHの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;並びに
4及びR5は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−O−アシル及び−OHの群から選ばれ、R4及びR5は結合5、6又は7員の複素環を形成してもよい化合物;又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩である。
本発明の好ましい例では:R1は−CH2CH3であり;
2は−(C1−C6)アルキルであり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−OCH3の群から選ばれ;
nは1、2又は3である化合物;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩である。
【0040】
更に好ましい本発明の例では:R1は−CH2CH3であり;
2は−CH3であり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−OCH3の群から選ばれ;
nは1、2又は3である化合物;又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩である。
更に好ましい本発明の例では:R1は−CH2CH3であり;
2は−CH3であり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−OCH3の群から選ばれ;
nは2である化合物;又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩である。
更に好ましい本発明の例では:R1は−CH2CH3であり;
2は−CH3であり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−OCH3の群から選ばれ;
nは2であり;R3はフェニル環の3−及び4−位の置換基を含む化合物;又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩である。
【0041】
投与される式Iのラセミ化合物は好ましくは下記群から選ばれる:
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;及び
これら化合物の医薬的に適用可能な塩。
更に好ましい、投与される式Iの化合物は、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン又はその医薬的に適用可能な塩である。
【0042】
好ましい化合物は、下記群から選ばれる投与される式Iの(R)エナンチオマーを含有する化合物である:
(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;及び
(R)−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
但し、対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない化合物;
及びこれら化合物の医薬的に適用可能な塩。
最も好ましくは、投与される式Iの化合物は、(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンであり、但し、対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない;又はそれらの医薬的に適用可能な塩である。
【0043】
化合物、(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンはトフィソパムの(R)エナンチオマーであり、下記構造式に示される。
【化4】

本発明の別の例では、上記化合物は炎症性疾患の治療又は予防用薬物の調製に使用される。
本発明の別の例では、患者の炎症性疾患、特にLTB4により伝達される炎症性疾患の治療又は予防方法を提供し、患者へ有効量の少なくとも1のここで規定する式Iの化合物を少なくとも1の付加的治療薬と組み合わせて投与することを含む。好ましくは付加的治療薬は、アミノサリチラート、コルチコステロイド、代謝拮抗物質、免疫抑制剤、TNF−α阻害剤、5−LO阻害剤及びロイコトリエンアンタゴニストの群から選ばれるが、ロイコトリエンアンタゴニストは式Iの化合物ではない。
【0044】
定義
「炎症」又は「炎症性反応」は、傷害への生物組織の防御反応を言う。反応は障害を包含し修復するように働く。プラズマ又は細胞のいずれかに由来する炎症の複数の化学的メディエイタが、観察されている。プロスタグランジン及びロイコトリエン等の、アラキドン酸の代謝で生成される化合物も同様に本質的に急性炎症の全ての様相をロイコトリエンが伝達し、炎症を起こる。
「LTB4により伝達される炎症性疾患」又は「LTB4伝達される障害」は、LTB4伝達が炎症部位でLTB4存在が観察されることにより、因子として関係するものとされる、炎症性反応に起因する障害を言う。
【0045】
「レセプター」は、ホルモン、抗原、薬、又は神経伝達物質等の物質と結合する細胞の表面又は内部の分子構造又は部位を言う。レセプターでの「アゴニスト」は、レセプターと結合して天然生成物質に特有の生理学的反応を引き起こすことのできる薬又は他の化学薬品を言う。「アンタゴニスト」は、天然、内因性レセプター結合体又は天然リガンドにより引き起こされる作用以外のものである生理学的反応を引き起こす、レセプターで働く化学的物質を言う。これらアンタゴニスト活性が示されるのは、薬又は化学的物質が天然リガンドよりかなり低い濃度でレセプターへ結合し、その結果天然リガンドと置き換わり、天然リガンドへ結合するレセプター量を抑制又は減少させる場合である。
「LTB4アンタゴニスト」は、LTB4レセプターへ下記のように競合的に結合する化学的物質を言う:(a)天然リガンド(LTB4)の結合がLTB4アンタゴニストによるLTB4レセプターの占有により阻害され、(b)LTB4レセプターへ結合したLTB4アンタゴニストはLTB4レセプターへ結合した天然LTB4により引き起こされるのと同一の生理学反応を発生しない。
【0046】
「アシル」は一般式−C(=O)−Rの基を意味し、−Rは水素、ヒドロカルビル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノヒドロキシ又はアルコキシである。例えば、アセチル(−C(=O)CH3)、プロピオニル(−C(=O)CH2CH3)、ベンゾイル(−C(=O)C65)、フェニルアセチル(−C(=O)CH265)、カルボエトキシ(−CO2CH2CH3)、及びジメチルカルバモイル(−C(=O)N(CH32)が挙げられる。アセチル基中のR基がアルコキシ、アルキルアミノ又はジアルキルアミノである場合、アルキル部は、好ましくは(C1−C6)アルキル、更に好ましくは(C1−C3)アルキルである。Rがヒドロカルビルの場合、それは好ましくは(C1−C7)ヒドロカルビルである。Rがヒドロカルビルの場合、それは好ましくはアルキル、更に好ましくは(C1−C6)アルキルである。
【0047】
「アルキル」は、それ自身又は別の置換基の一部として、特記しない限り、直鎖状、分岐状又は環状鎖炭化水素基を意味し、表示された炭素原子数(即ちC1−C6は1〜6炭素原子を意味する。)を有するジ又は多価基が挙げられる。アルキル基として直鎖状鎖、分岐状鎖又は環状基が挙げられ、直鎖状が好ましい。例えば:メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル及びシクロプロピルメチルが挙げられる。(C1−C6)アルキルが好ましい。最も好ましくは、(C1−C3)アルキル、特にエチル、メチル及びイソプロピルである。
【0048】
単独又は他の用語と組み合わせて使用される「アルコキシ」は、特記しない限り、酸素原子を通して分子の残りと結合する、上記で定義されたように表示された炭素原子数を有するアルキル基を言い、例えばメトキシ、エトキシ、1−プロポキシ、2−プロポキシ(イソプロポキシ)及びそれらの炭素数の大きい(高級)ホモログ及び異性体が挙げられる。好ましくは(C1−C6)アルコキシである。更に好ましくは(C1−C3)アルコキシ、特にエトキシ及びメトキシである。
【0049】
「アミン」又は「アミノ」は一般式−NRR’の基を意味し、R及びR’は独立して水素又はヒドロカルビル基から選ばれるか、R及びR’は結合して複素環を形成する。アミノ基の例として下記が挙げられる:−NH2、メチルアミノ、ジエチルアミノ、アニリノ、ベンジルアミノ、ピペリジニル、ピペラジニル及びインドリニル。好ましいヒドロカルビル基は(C1−C7)ヒドロカルビル基である。好ましくはアルキル基であるヒドロカルビル基である。更に好ましくは(C1−C6)アルキルである。
【0050】
「芳香族」は、芳香族性(4n+2)非局性π(パイ)電子を有する1以上のポリ不飽和環を含有する炭素環又は複素環を言う。
単独又は他の用語と組み合わせて使用される「アリール」は、特記しない限り、1以上の環(通常1、2又は3環)を含む炭素環状芳香族系を意味し、それら環は、ビフェニル等の様につり下がって結合しても、ナフタレン等の様に縮合していてもよい。例えば、フェニル;アントラシル;及びナフチルが挙げられる。
【0051】
「ヒドロカルビル」は、水素及び炭素原子のみを含むいずれかの成分を言う。この定義として例えばアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール及びベンジル基が挙げられる。好ましくは(C1−C7)ヒドロカルビルである。
単独又は他の用語と組み合わせて使用される「ヘテロアルキル」は、特記しない限り、表示された炭素原子数並びにO、N及びSの群から選ばれる1又は2個のヘテロ原子からなる安定した直鎖状又は分岐状鎖基を意味する。窒素及びイオウ原子は任意で酸化されて、それぞれN−オキシド及びスルホキシド又はスルホンとさせてもよい。更に、窒素ヘテロ原子は任意で四級化されてもよい。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の残りの部分及びそれが結合したフラグメントとの間等のヘテロアルキル基のいずれの位置にあってもよく、ヘテロアルキル基中の最も遠位の炭素原子に結合していてもよい。好ましくは(C2−C6)ヘテロアルキルである。更に好ましくは(C2−C4)ヘテロアルキルである。例えば:−O−CH2−CH2−CH3、−CH2−CH2CH2−OH、−CH2−CH2−NH−CH3、−CH2−C(=O)−CH3、−CH2−N=N−CH2−CH3、−CH2−S−CH2−CH3、−CH2CH2−S(=O)−CH3及び−CH2−CH2−NH−SO2−CH3が挙げられる。例えば、−CH2−NH−OCH3、又は−CH2−CH2−S−S−CH3のように、2個以下のヘテロ原子が連続してもよい。更に好ましくはヘテロアルキル基は、1又は2個の酸素原子を含有する。
【0052】
2個の基が「結合して炭素環状又は複素環状5又は6員環を形成し」た場合、炭素環状環は好ましくは飽和されている。好ましい複素環は、N、O及びSから選ばれる1又は2のヘテロ原子含有飽和環である。このようにベンゾジアゼピン7員環へ環化される複素環として、例えば、フラン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、テトラヒドロチオフェン、ピロール、ジヒドロピロール、ピロリジン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン及びピペリジンが挙げられる。
【0053】
2個の基が「結合して5、6又は7員の複素環を形成し」た場合、好ましい複素環は、N、O及びSから選ばれる1又は2のヘテロ原子含有5又は6員環である。更に好ましくはN、O及びSから選ばれる1のヘテロ原子を含有する複素環である。このようにベンゾジアゼピンフェニル環へ環化される複素環として、例えば、フラン、ジヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン、ピラン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、チオフェン、ジヒドロチオフェン、ピリジン、ジヒドロピリジン、テトラヒドロピリジン、ピペリジン、ピロール、ジヒドロピロール、イミダゾール、ジヒドロイミダゾール、チアゾール、ジヒドロチアゾール、オキサゾール、及びジヒドロオキサゾールが挙げられる。
【0054】
「置換された」とは、1又は複数の原子が、その水素を別の基へ結合された置換基と置換したことを意味する。アリール及びヘテロアリール基では、「置換された」とは、これら置換が可能な場合、モノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、又はペンタ置換のいずれの程度の置換を意味する。置換基は、独立して選択されてもよく、置換は、化学的に接近可能な位置でもよい。
【0055】
「光学活性」は、物質が平面偏光面を回転させるような性質を意味する。光学活性な化合物は、その鏡像とは重ならない。物質のその鏡像とは重ならない性質を、キラリティと言う。
分子中の「キラリティ」性は、その鏡像とは重ならない分子を形成する構造的形態から生じる。キラリティを生成する最も一般的な構造的形態は、不斉炭素原子、即ちそこへ結合した4個の互いに異なる基を有する炭素原子である。
「エナンチオマー」は、光学活性である純粋な化合物の2個の重ならないそれぞれの異性体を意味する。単一のエナンチオマーは、Cahn-Ingold-Prelogシステム、不斉炭素へ結合している4個の基の優先順位を決定する規則に従って表される。March、Advanced Organic Chemistry、4thEd.、(1992)、p.109参照。4個の基の優先順位が決定されたら、分子は観察者から最も低い優先順位の基が観察者から離れるように(紙面の裏側を向くように)配置される。次に、他の基の優先順位の下がる順番が時計回りになる場合、分子は(R)で表示され、他の基の優先順位の下がる順番が反時計回りになる場合、分子は(S)で表示される。下記例では、Cahn-Ingold-Prelog優先順位はA>B>C>Dである。最も低い順位の原子Dは、観察者から離れて配置される。
【化5】

【0056】
「ラセミ体」又は「ラセミ混合物」は、混合物が平面偏光を回転させないような、化合物の(R)−及び(S)エナンチオマーの50/50混合物を言う。
文言として、他のエナンチオマーから「実質的に単離された」若しくは「(それらが)実質的に存在しない」又は、対応する(S)エナンチオマーから「光学分割される」若しくは「(それらが)実質的に存在しない」が、光学活性な式Iの化合物に関して使用された場合、それは組成物が80重量%以上の単一のエナンチオマーとなるように、化合物の(R)及び(S)エナンチオマーが分割されたことを意味する。
従って、「(R)−2,3−ベンゾジアゼピン(S)エナンチオマーが実質的に存在しない」とは、80重量%以上の(R)エナンチオマーを含有し、同様に20%以下の(S)エナンチオマーを不純物(重量基準)として含有する2,3−ベンゾジアゼピン化合物を意味する。
【0057】
「有効量」は、炎症性疾患、特にLTB4伝達される炎症性疾患の患者への治療に関して使用される場合、炎症性プロセスを阻害する式Iの化合物の量、又は式Iの化合物と1以上の付加的剤、例えばアミノサリチラート、コルチコステロイド、代謝拮抗物質、免疫抑制剤、TNF−α阻害剤、ロイコトリエン合成の阻害剤、又はロイコトリエンアンタゴニスト、の組み合わせの量を意味する。慢性又は急性炎症、特に生理学的に影響する濃度のLTB4に関連する炎症を発現する障害に悩まされる患者へ投与された場合、炎症性プロセスの阻害は、炎症の症状における治療的に有用で選択的な回復を生じる。炎症性疾患、特にLTB4伝達される炎症性疾患を予防する、式Iの化合物、又は式Iの化合物と1以上の付加的剤、例えばアミノサリチラート、コルチコステロイド、代謝拮抗物質、免疫抑制剤、TNF−α阻害剤、ロイコトリエン合成の阻害剤、又はロイコトリエンアンタゴニスト、との組み合わせの有効量とは、炎症性疾患のリスクの増加と対応する一定時間間隔中の患者の炎症性疾患の症状の発現を予防又は遅延するような量である。「患者」又は「対象体」としてヒト及び非ヒト動物が挙げられる。炎症性疾患、特にLTB4伝達される炎症性疾患の開示された治療方法に関して、これら用語は、特記しない限り、炎症性疾患等に罹患している有機体を意味する。
【0058】
炎症性疾患の予防、特にLTB4伝達される炎症性疾患の予防の開示された方法に関して、これら用語は、特記しない限り、炎症性疾患等に罹患しているらしい有機体を意味する。炎症性疾患等に罹患しやすい患者の選択には、高い再発発生率を有することが従来公知の、IBD等の炎症性症状の存在を考慮する。炎症性疾患等の罹患可能性は又、外科的処置等の従来公知の組織障害にも起因する。将来の炎症性疾患は又、最初の組織障害の二次的結果に起因する。この例として、細胞毒性化学療法又は治療的放射線治療の投与の結果、腫瘍塊の消散の次に続く上昇した尿酸濃度に起因する痛風に由来する炎症が挙げられる。本発明の「予防」は又、炎症又はその症状の発病の遅延又は、炎症性疾患に罹患している患者の緩解期間の延長を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明の詳細な記載
本発明の化合物は、式Iの2,3−ベンゾジアゼピン、及びそれらの医薬的に適用可能な塩は、ロイコトリエンB4のアンタゴニストである。本発明の化合物は、炎症性疾患、好ましくはロイコトリエンB4により伝達される炎症性疾患の治療又は予防方法に有用である。
本発明の方法により治療可能又は予防可能であると考えられる炎症性疾患として、例えば下記が挙げられる:炎症性腸疾患(例えば、CD、UC、病型不定型大腸炎、及び伝染性大腸炎);RA;痛風;粘膜炎(例えば、口腔粘膜炎、胃腸性粘膜炎、鼻粘膜炎、及び直腸炎);壊死性腸炎;炎症性皮膚障害(例えば、乾癬、アトピー性皮膚炎、及び接触過敏症);アフタ性潰瘍;咽頭炎;食道炎;消化性潰瘍;歯肉炎;歯周炎;眼性病(例えば、結膜炎、網膜炎、及びぶどう膜炎);及び放射線性胃腸性炎症。
更に、式Iの化合物は、IBSに同様に悩む患者の上記炎症性疾患の治療に有用であると考えられる。
【0060】
式Iの2,3−ベンゾジアゼピンの調製
本発明で使用できる式Iの(R)−2,3−ベンゾジアゼピンは、いくつかの方法の一つで調製できる。これらの方法は一般的に、トフィソパム及びトフィソパムアナログ等の式Iのラセミ2,3−ベンゾジアゼピンの合成で使用される合成方法及び手順に従って行われる。米国特許第3736315及び4423044号(トフィソパム合成)並びにHorvathら、Progressin Neurobiology 60(2000)p.309-342、並びにその中に記載された資料(トフィソパム及びそれらのアナログの調製)を参照し、それらの全ての開示をここで資料として使用する。下記合成方法中で、化学的合成の生成物は、式Iの(R)−及び(S)−2,3−ベンゾジアゼピンのラセミ混合物である。次にこれらラセミ混合物を公知の分割方法を使用して分離し、(S)エナンチオマーが実質的に存在しない式Iの(R)−2,3−ベンゾジアゼピンを調製する。「(R)−2,3−ベンゾジアゼピン」とは、5位に(光学)分割可能な不斉炭素を得るような、ベンゾジアゼピン環の5位での置換による(R)絶対配置を有する2,3−ベンゾジアゼピンを意味する。「(S)エナンチオマーが実質的に存在しない(R)−2,3−ベンゾジアゼピン」又は「対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない式Iの化合物の(R)エナンチオマー」とは、80重量%以上の目的の(R)エナンチオマーを含有し、同様に20%(重量基準)以下の(S)エナンチオマーを不純物として含有する化合物を意味する。好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、85重量%以上の(R)エナンチオマー、及び15重量%以下の(S)エナンチオマーである組成物を有する。更に好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、90重量%以上の(R)エナンチオマー及び10重量%以下の(S)エナンチオマーである組成物を有する。特に好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、95重量%以上の(R)エナンチオマー及び5重量%以下の(S)エナンチオマーである組成物を有する。最も好ましくは、本発明の方法で使用される化合物は、99重量%以上の(R)エナンチオマー及び1重量%以下の(S)エナンチオマーである組成物を有する。
【0061】
式Iのラセミ2,3−ベンゾジアゼピンは、スキーム1中に示すように、対応する2−ベンゾピリリウム(pyrilium)塩Hからヒドラジン水和物との反応により合成できる。但しX-はパークロレート(過塩素酸塩)等の対イオンである:
【化6】

上記のように、ヒドラジン水和物(98%、2−ベンゾピリリウム(pyrylium)塩に対し約3当量)を撹拌した2−ベンゾピリリウム(pyrylium)塩Hの氷酢酸(約1mL/3mmolの2−ベンゾピリリウム(pyrylium)塩)溶液へ滴下する。この操作中、溶液を高温、好ましくは80〜100℃に維持する。次に溶液を更に高い温度、好ましくは95〜100℃で約1時間維持する。次に反応混合物を2%水酸化ナトリウム水溶液(2−ベンゾピリリウム(pyrylium)塩に対し約3当量)で希釈し、冷却する。生成物2,3−ベンゾジアゼピンを固体として分離し、ろ過により除去し、水で洗浄して乾燥する。粗生成物を、高温、好ましくは100〜130℃で、ジメチルホルムアミド(DMF)等の非プロトン性極性溶媒中に溶かして精製し、活性炭で溶液を脱色する。活性炭をろ過により除去し、ろ過した溶液を水で希釈する。精製した生成物は、溶液から沈殿しろ過により採取される。
Korosiらの米国特許第4322346号(その全てをここで資料として使用する)では、ベンゾピリリウム(pyrilium)塩前駆体からの置換2,3−ベンゾジアゼピンを調製するための反応プロトコルの3種のバリエーションを開示している。
レトロ合成的に、中間体ベンゾピリリウム(pyrilium)塩Hは、いくつかの出発材料の1つから調製できる。スキーム2で示されるこれらの1つの方法では、中間体Hは、対応するアリールエタノール誘導体Dからイソクロマン中間体Fを経由して調製できる。
2,3−ベンゾジアゼピンの調製の別の例は、スキーム3及び4(実施例2及び3)中に示される。そこでの合成は、中間体Gから中間体ベンゾピリリウム(pyrilium)塩Hの単離無しに行われる。
2−ベンゾピリリウム(pyrylium)塩Hは、中間体、2−置換フェニルエタノール誘導体Dからイソクロマン中間体Fを経由して合成される。但し、X-は、パークロレート等の対イオンである:
【化7】

【0062】
上記のように、置換された安息香酸エステルAを適切な溶媒、好ましくはエーテル中に溶解し、0℃まで冷却する。2当量の適切なグリニャール試薬を滴下する。反応物を放置して室温まで温め、出発材料の消滅をモニターする。反応が終了した時、酢酸等のプロトン源でクエンチされてもよい。揮発成分を真空(減圧)下で除去し、生成物Bを精製せずに次のステップに使用する。
α、α−置換されたベンジルアルコールBをトルエン等の高沸点溶媒及び触媒量のパラトルエンスルホン酸(p−TsOH)中に加えた。混合物を加温して還流し、出発材料の消滅をモニターする。反応が終了した時、揮発成分を真空(減圧)下で除去し、粗生成物Cをカラムクロマトグラフィーで精製する。
置換されたスチレンCを反マルコフニコフ条件下でヒドロキシル化し、中間体フェニルエチルアルコールDを得る。D及び適切に置換されたベンズアルデヒドE(1.2eq)の溶液を無水ジオキサンへ添加する。得られた溶液を、次にガス状HClで飽和し、好ましくは還流温度まで約1時間加温する。混合物を次に、室温まで冷却し、水中へ注ぎ、(好ましくは水酸化ナトリウム水溶液で)塩基性にし、有機溶媒(好ましくは酢酸エチル)で抽出する。抽出物を乾燥し、ろ過して真空(減圧)下で濃縮する。残った残渣を、好ましくは結晶化で精製し、Fを得る。
【0063】
撹拌中の、(好ましくは0〜5℃まで)冷却されたF(2g)のアセトン(30mL)溶液へ、クロムトリオキシド(2g)の35%硫酸(20mL)溶液を滴下する。後者の溶液を、反応温度が5℃より下になるように添加する。添加完了後、反応混合物を室温まで上昇させ、室温で2時間撹拌する。次に反応混合物を水中へ注ぎ、有機溶媒、好ましくは酢酸エチルで抽出する。有機性抽出物を水で、次に氷冷10%水酸化ナトリウム水溶液で洗浄する。次にアルカリ性水溶液フラクションを、好ましくは希塩酸で酸性化し、有機溶媒、好ましくはクロロホルムで抽出する。クロロホルム抽出物を乾燥し、(乾燥剤を)ろ過して真空(減圧)下で濃縮し、Gを得る。粗残渣は更に、カラムクロマトグラフィーで精製する。
2−α−アシルヒドロカルビルベンゾフェノンG(5g)を氷酢酸(15mL)に溶解する。この混合物へ60%過塩素酸(7.5mL)を添加する。得られた混合物を、100℃(スチームバス)で3分間加温する。混合物を放置して室温まで冷却する。粗生成物の結晶化は、この時点で自発的に発生するか、エーテル又は酢酸エチルの添加により誘起された。生成物2−ベンゾピリリウム(pyrylium)塩Hをろ過により除去し、好ましくはエタノール又は氷酢酸/酢酸エチルからの再結晶により精製する。
【0064】
2,3−ベンゾジアゼピンの調製の類似する合成手順は、米国特許第3736315号に記載され、その全てをここで資料として使用する。2,3−ベンゾジアゼピンの調製の合成方針も又Horvathら、Progress in Neurobiology60(2000)p309-342及びその中に記載された資料に記載され、それらの全ての開示をここで資料として使用する。
中間体Hの調製の別の方法は、アリールアセトニド又はインダノン出発材料で開始される。Kunnetsov、E.V.、及びDorofeenko、G.N.、Zh.Org.Khim.、6、578-581.及びM.Vajda、Acta Chem.Acad.Sci.Hung.40,p.295-307、1964を参照し、それぞれ、それらの全ての開示をここで資料として使用する。
【0065】
アミン置換基を有する式Iの2,3−ベンゾジアゼピン誘導体を合成するために、芳香族アミン成分出発物質は、保護基で保護され、又は、アミンを上記提示され引用された反応スキームで使用される反応条件に安定させるために非反応性にされる。保護基の必要を避ける手段として、目的の芳香族アミノ基の位置に芳香族ニトロ基を含有する出発材料を使用してもよい。ニトロ基は、この合成中アミン保護基として同一の作用を示し、それはアミン置換基では不可能な下記合成ステップを経てアミンへと還元される。芳香族ニトロ基の還元は、例えば触媒水素化を経由して行われる。触媒水素化は、中間体中の芳香族ニトロ基を選択的に還元しオレフィン又は他の官能基を還元しないことができる。この合成手法は、米国特許第4614740号に記載され、ラセミ2,3−ベンゾジアゼピンが本発明の式IのR3に対応する位置にあるアミノ基を有するように調製される。米国特許第4614740号の完全な開示をここで資料として使用する。
【0066】
(R)−式Iの2,3−ベンゾジアゼピンの分割
上記に示された又は引用された合成手順は、本発明の方法に有用である式Iの2,3−ベンゾジアゼピンのラセミ混合物を生成する。本発明の方法に有用である好ましい(R)−式Iの2,3−ベンゾジアゼピンを生成するために、ラセミ混合物は光学分割しなければいけない。
式Iのラセミ2,3−ベンゾジアゼピンは、例えばSS及びRS配置のジアステレオマー性混合物である(S)−ジベンゾイル酒石酸塩へ転換される。1対のジアステレオマー(R,S)及び(S、S)は、異なる溶解性等の異なる物性を有し、従来の分割方法の使用が可能となる。適切な溶媒からのジアステレオマー性塩のフラクショナル結晶化は、このような分割方法の一つである。この分割は、ラセミトフィソパムの分割に有功に適用できる。ハンガリー国特許第178516号及び、Tothら、J.Heterocyclic.Chem.、20:09-713(1983)を参照し、それらの全ての開示をここで資料として使用する。
【0067】
又、式Iのラセミ2,3−ベンゾジアゼピンは、例えば(S)マンデル酸等のキラルアシル化剤を使用したアリールヒドロキシ成分のアシル化により誘導体化してもよい。得られたエステルは第二のキラル中心を有し、そのため結晶化又はクロマトグラフィー等の従来の方法を使用して分離可能なジアステレオマー対となる。分割の後に、ラセミ2,3−ベンゾジアゼピンを誘導体化したキラル成分は除去される。
【0068】
式Iのラセミ2,3−ベンゾジアゼピンは、クロマトグラフィーカラム、好ましくは分取用(preparative)HPLCカラム上のキラル固定化相での分離吸着によりジアステレオマー形成なしに分離できる。キラルHPLCカラムは、広い範囲の分割用途に適合する種々の充填材料と共に市販されている。式Iのラセミ2,3−ベンゾジアゼピンを光学分割するために適切な固定化相の例として下記が挙げられる:
(i)3個のポケット又は空孔を囲む18個のキラル中心を含有するシリカ−結合したバンコマイシン等の大環状グリコプロテイン;
(ii)キラルα1−酸グリコプロテイン;
(iii)ヒト血清アルブミン;及び
(iv)セロビオヒドロラーゼ(CBH)。
【0069】
キラルα1−酸グリコプロテインは、球状シリカ粒子上に固定化された非常に安定した蛋白質であり、高濃度の有機溶媒、高pH又は低pH、及び高温に耐える。ヒト血清アルブミンは、弱酸及び強酸、両性イオン性及び非プロトン性化合物の分割に特に適しているため、基礎化合物を光学分割するために使用されてきた。CBHは非常に安定した酵素であり、球状シリカ粒子上に固定化されており、多くの化合物種からの基礎的薬のエナンチオマーの分割に好ましく使用されている。
【0070】
キラルクロマトグラフィーにより大環状グリコプロテインをChirobiotic V(登録商標)カラム(ASTEAC、Whippany、NJ)上の固定化相として使用したトフィソパムの分割は、米国特許第6080736号に記載されている。Fitosら(J.Chromatogr.、709265(1995))は、キラルクロマトグラフィーにより、キラルα1−酸グリコプロテインをキラル−AGP(登録商標)カラム(ChromTech、Cheshire、UK)上の固定化相として使用して、ラセミトフィソパムを光学分割する別の方法を開示している。後者の方法は(R)−及び(S)−エナンチオマーを分割し、同様にそれぞれのエナンチオマーの2個のコンフォーマー(下記に記載する)を光学分割する。これらクロマトグラフィー法は通常、式Iのラセミ2,3−ベンゾジアゼピンを(R)及び(S)エナンチオマーそれぞれへ分割するために使用される。Chirobiotic V(登録商標)カラムは、上記分割用に使用できる準分取用サイズ(500mm×10mm)で入手できる。Chirobiotic V(登録商標)カラムの固定化相は、より大きいサンプル容量の分取用クロマトグラフィーカラムの充填用にバルクで市販されている。
【0071】
2,3−ベンゾジアゼピンの(R)−及び(S)エナンチオマーも又、一般的に下記で表されるベンゾジアゼピン環により推定できる2個の安定した配置で存在する:
【化8】

【0072】
本発明として、ここに記載されるように、式Iの化合物の任意の又は全ての観察可能な配置を使用する方法が挙げられ、上記化合物は、好ましくはベンゾジアゼピン環の5位の炭素原子に(R)−絶対配置を有し、炎症性疾患、好ましくはLTB4により伝達される炎症性疾患の治療又は予防に生化学活性である化合物である。
本発明の方法に有用である式Iの化合物は、式Iの化合物のベンゾジアゼピン環の5位のキラル中心に加えて1以上のキラル中心を含有してもよいことが理解できる。これら化合物は、純粋な鏡像的又はジアステレオマー性形態として又はラセミ混合物として存在し、単離できる。従って本発明には、式Iの任意の可能なエナンチオマー、ジアステレオマー、ラセミ体又はそれらの混合物(ベンゾジアゼピン環の5位以外のキラル中心により表される)であり、炎症性疾患症状、好ましくはLTB4により伝達される炎症性疾患症状の治療又は予防に生化学活性である化合物を使用する方法も含まれる。
【0073】
式Iの化合物の塩
本発明の方法に使用される化合物は、医薬的に適用可能な塩の形を有する。「塩」とは、通常アルカリ金属塩を形成するか遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために使用される塩を含む。「医薬的に適用可能な塩」とは、医薬用途に使用するための範囲内の毒性プロファイルを有する塩を言う。医薬的に適用不能な塩もやはり、例えば合成プロセス中に使用するか、ラセミ混合物からエナンチオマーを光学分割するプロセス中に使用するような本発明の実施で出来る、高い結晶性等の物性を有することがある。適切な医薬的に適用可能な酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製できる。これら無機酸の例として塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸が挙げられる。適切な有機酸は、脂肪族、シクロ脂肪族、芳香族、芳香脂肪族(araliphatic)、複素環状、カルボン酸及び有機酸のスルホン酸の種から選ばれ、それらの例としてギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、メシル酸、サリチル酸(salicyclic)、4−ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、embonic(パモ)酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸(algenic)、β−ヒドロキシ酪酸、ガラクタル酸及びガラクツロン酸が挙げられる。
【0074】
本発明の方法に有用である適切な医薬的に適用可能な式Iの化合物の塩基付加塩として、例えばカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から構成される金属塩、又は、N、N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N−メチルグルカミン)及びプロカインから構成される有機的塩が挙げられる。これら塩の全ては、例えば、適切な酸又は塩基を式Iの化合物と反応させることにより、従来法により対応する式Iの化合物から調製できる。
【0075】
式Iの化合物の投与
本発明の方法に有用である化合物は、炎症性疾患に罹患している患者(動物及びヒトを含む哺乳類)、好ましくはLTB4伝達される炎症性疾患に罹患している患者へ投与される。
炎症性疾患、好ましくはLTB4により伝達される障害の治療又は予防のために、治療的効果を得るための本発明の化合物の所定の投与は、当然に、患者のサイズ、体重、年齢及び性別等の患者の具体的環境により決定される。同様に決定因子となるのは、病気の性質及び段階並びに投与経路である。例えば、一日投薬量約100〜1500mg/kg/日が使用できる。好ましくは、一日投薬量約100〜1000mg/kg/日も使用できる。更に好ましくは、一日投薬量約100〜500mg/kg/日も使用できる。より大量又は少量の投薬量も、同様に可能である。
【0076】
予防的投与としては、本発明の方法の実施に有用な化合物は、炎症性疾患、好ましくはLTB4により伝達される炎症性疾患の発生の機会を増加させることが知られている状況の充分前に投与され、化合物(LTB4等)が作用部位へ効果を発現するのに充分な濃度で到達することを可能とする。特定の化合物の薬物動力学(薬物投与方法)は、公知の手段により決定され、特定の患者中の化合物の組織濃度は従来の分析方法により決定される。
治療又は予防治療中に、本発明の実施に有用な1以上の化合物が同時に投与されてもよく、本発明の実施に有用な、異なる化合物が異なる時に投与されてもよい。
【0077】
更に、式Iの化合物は、1以上の付加的治療薬と組み合わせて炎症性疾患の治療用に投与されてもよい。これら付加的剤として、アミノサリチラート、コルチコステロイド、代謝拮抗物質、免疫抑制剤、TNF−α阻害剤、ロイコトリエン合成の阻害剤、及びロイコトリエンアンタゴニストが挙げられ;付加的治療薬がロイコトリエンアンタゴニストである場合、それらは式Iの化合物以外のものである。
本発明の方法中で式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられるアミノサリチラートとして、例えば、スルファサラジン(商標)及びメサラミン(商標)が挙げられる。
本発明の方法中で式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられるコルチコステロイドとして、例えば、プレドニゾン(商標)及びブデソニド(商標)が挙げられる。
本発明の方法中で式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられる代謝拮抗物質として、例えばアザチオプリン(商標)が挙げられる。
本発明の方法中で式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられる免疫抑制剤として、例えばシクロスポリン(商標)及びタクロリムス(商標)が挙げられる。
本発明の方法中で式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられるTNF−α阻害剤として、例えばインフリキシマブ(商標)、エタネルセプト(商標)、及びアダリムマブ(商標)が挙げられる。
【0078】
本発明の方法中で式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられるロイコトリエン合成の阻害剤として、例えば5−LO阻害剤、例えば、ETH615、リネタスチン(商標)、ロナパレン(商標)(RS43179)、MK886、及びジロートン(商標)が挙げられる。式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられる他のロイコトリエン合成の阻害剤として、例えば15−HETE及びレフルノミド(商標)が挙げられる。
本発明の方法中で式Iの化合物と組み合わせることが有用であると考えられるロイコトリエンアンタゴニストとして、例えばSC41930、SC53228、CGS−25019C、ONO−4057、SB−202247、VML295(LY293111)、CP−105696、CP−195543、及びU−75302が挙げられる。
【0079】
投与経路
本発明の方法に有用である化合物は、例えば経腸(例えば、経口、直腸投与、鼻腔内、等)及び非経口投与のいずれかの経路により治療的効果のため投与される。非経口投与として、例えば静脈内、筋肉内、動脈内、腹腔内、膣内、膀胱腔内(例えば膀胱中)、皮内、局所的又は皮下投与が挙げられる。同様に本発明の範囲内と考えられるのは、患者の体内へ、その後に薬の全身的又は局部的放出を起こすように制御した配合組成で薬を点滴注入することである。抗炎症性使用のために、薬はデポ中に局在化され、循環系への制御放出又は炎症の局部的部位へ制御放出がなされてもよい。
【0080】
医薬組成物
本発明の方法は、医薬組成物の形の2,3−ベンゾジアゼピン、好ましくは(R)−2,3−ベンゾジアゼピンを医薬的に適用可能なキャリアと組み合わせて投与してもよい。これら配合組成に活性成分は、0.1〜99.99重量%含まれる。「医薬的に適用可能なキャリア」とは、組成の他の成分と親和性があり及びレシピエントに有毒でないキャリア、希釈剤又は賦形剤を意味する。
活性薬は、好ましくは選択された投与経路及び標準的医薬手法を基礎に選択された、医薬的に適用可能なキャリアと共に投与される。活性薬は、医薬製造分野の標準的手法に従って剤形に配合調製できる。Alphonso Gennaro編、Remington's Pharmaceutical Sciences、18thEd.、(1990)Mack Publishing Co.、Easton、PA参照。適切な剤形として、例えば錠剤、カプセル、溶液、非経口液、トローチ、座薬又は懸濁液が挙げられる。
【0081】
非経口投与として、活性薬は、水、油(好ましくは植物油)、エタノール、生理食塩水、水溶液デキストロース(グルコース)及び関連する糖質輸液剤、グリセロール、又はプロピレングリコール又はポリエチレングリコール等のグリコール等の適切なキャリア又は希釈剤と混合することができる。非経口投与用溶液は、好ましくは活性薬の水溶性塩を含有する。安定化剤、抗酸化剤及び保存剤も又添加できる。適切な抗酸化剤として、亜硫酸塩、アスコルビン酸、クエン酸及びその塩、及びナトリウムEDTAが挙げられる。適切な保存剤として、塩化ベンズアルコニウム、メチル−又はプロピル−パラベン、及びクロロブタノールが挙げられる。非経口投与用組成物は、水溶性又は非水溶性溶液、分散液、懸濁液又はエマルジョンの形状をとることができる。
【0082】
経口投与用には、活性薬は、錠剤、カプセル、丸剤、粉剤、顆粒剤又は他の適切な経口剤形調製のために1以上の固体不活性成分と組み合わせてもよい。例えば、活性薬は、充填剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、溶解遅延剤、吸収強化剤、加湿剤吸着剤又は潤滑剤等の少なくとも1の賦形剤と組み合わせることができる。1の錠剤例として、活性薬はカルボキシメチルセルロースカルシウム、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール及びスターチと組み合わされ、次に従来の錠剤製造法により錠剤へ形成される。
【0083】
本発明の組成物は又、その中の活性成分の徐放又は制御放出を達成するために配合できる。一般的に、制御放出医薬品は、活性成分を目的の速度割合で放出して目的の期間一定の薬理学的活性を保持することのできる組成物である。このような剤形は予定された期間中体内へ薬を供給できるため、非(放出)制御の配合組成よりも長期間治療的範囲内の薬濃度を維持できる。
例えば、米国特許第5674533号は、有効性のある末梢性鎮咳薬投与用の液体剤形の制御放出組成物、モグイステイン(商標)を開示している。米国特許第5059595号には、器質性精神障害治療用の胃(液)耐性錠剤の使用による活性薬の制御放出が記載されている。米国特許第5591767号には、有効性のある鎮痛性性質を有する非ステロイド性抗炎症剤であるケトロラクの制御投与用の液体貯蔵経皮性パッチが記載されている。米国特許第5120548号には、膨潤可能なポリマーからなる制御放出薬デリバリー装置が記載されている。米国特許第5073543号には、ガングリオシド−リポソーム賦形剤(vehicle)により捕捉されている栄養因子を含有する制御放出配合組成が記載されている。米国特許第5639476号には、疎水性アクリル系ポリマーの水溶性分散液から得られる被膜を有する安定した固体制御放出配合組成が記載されている。上記特許明細書をここで資料として使用する。
生物分解性マイクロ粒子も本発明の制御放出配合組成中に使用できる。例えば、米国特許第5354566号には、活性成分を含有する制御放出粉剤が記載されている。米国特許第5733566号には、抗寄生虫性組成物を放出するポリマー性マイクロ粒子の使用が記載されている。これら特許明細書をここで資料として使用する。
【0084】
活性成分の制御放出は、種々の誘導因子、例えばpH、温度、酵素、水、又は他の生理学条件又は化合物により刺激できる。薬放出には種々の機構が存在する。例えば、制御放出成分は、膨潤し、患者へ投与後に活性成分を放出するのに充分な大きさの多孔質開口部を形成できる。本発明の記載では「制御放出成分」は、ここでポリマー、ポリマーマトリックス、ゲル、透過性膜、リポソーム及び/又はミクロスフェア等の1又は複数の化合物であり、医薬組成物中の活性成分(例えば、(R)トフィソパム又はそれらの医薬的に適用可能な塩)の制御放出を促進するものと定義される。別の例では、制御放出成分は生物分解性であり、その生物分解性は、体内の水溶性環境、pH、温度、又は酵素へ曝されることにより誘起される。又別の例では、ゾル−ゲルが使用でき、活性成分が室温で固体のゾル−ゲルマトリックスと組み込まれる。このマトリックスは、ゾル−ゲルマトリックスのゲル形成を誘起するために充分高い体温を有する患者、好ましくは哺乳類の中に埋め込まれ、その結果患者内へ活性成分を放出する。
本発明の実施を下記に具体的に示すが本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0085】
実施例1:1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの合成
4.41g(10mmol)の1−(3,4−ジメトキシフェニル)−3−メチル−4−エチル−6、7−ジメトキシイソベンゾピリリウム(pyrilium)クロライド・塩酸をメタノール(35mL)に温度40℃で溶解した。20〜25℃まで冷却後、ヒドラジン水和物(0.75g、15mmol、5mLメタノール中に溶解)を添加した。反応をHPLCでモニターし終了した時点で、エバポレートして乾燥した。残渣を冷水(3mL)で粉砕し、ろ過して乾燥し、粗(R,S)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾ−ジアゼピンを得て、次に熱い酢酸エチルで粉砕し、精製生成物を得た。
【0086】
実施例2:1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを分割し、(R)−1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを得た。
(R,S)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン(43mg、アセトニトリル中に溶解)をChirobiotic Vカラム(ASTEAC、Whippany、NJ)中に注入した。ラセミ体のメチル−tert−ブチルエーテル/アセトニトリル90/10(v/v)による、40mL/分、310nm、2mmパスでの溶出をモニターした。
R(+)エナンチオマーは、溶出する最初の化合物であり、採取して乾燥した。R(−)、S(+)、S(−)エナンチオマー、及びいくらかの残ったR(+)エナンチオマー共溶出を次のフラクション中に収集した。24時間の溶出物中に残っている場合、約20%のR(+)異性体をR(−)異性体へ転換した。安定した80/20平衡(R(+)対R(−))が、溶出物溶液中のコンフォーマー間で観察された。
【0087】
実施例3:ラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの合成
ラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンをスキーム3のルートに従い合成した。
【化9】

【0088】
A.3,4−ジメトキシ安息香酸をエステル化して、エチル−3,4−ジメトキシベンゾエート([3943−77−9])を得た。
200gの3,4−ジメトキシ安息香酸及び35gの濃硫酸を含む、600mLの無水エタノール溶液を一晩還流加熱した。混合物を濃縮し、残渣を水中へ注いだ。塩化メチレンを添加し、溶液を、水、希重炭酸ナトリウム水溶液、及び水の順で洗浄し、次に乾燥して濃縮した。残渣をアセトン/ヘキサンから再結晶した。
【0089】
B.エチルマグネシウムヨウ化物をエチル−3,4−ジメトキシベンゾエート酸へ付加し、3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−3−オールを得た。
4.8mLのヨードエタンの20mLエーテル溶液を、1.5gのマグネシウム削りくずの10mLエーテル懸濁液中へ滴下した。5mLのヨードエタン溶液を添加した後、数粒のヨウ素を添加し、混合物を加熱してグリニャール試薬の形成を行った。次に、残りのヨードエタン溶液を添加した。グリニャール形成が終了した後、5gのエチル3,4−ジメトキシベンゾエートのエーテル溶液を添加し、混合物を室温で一晩攪拌した。反応物を飽和塩化アンモニウムを添加してクエンチした。混合物をエーテルで(数回)抽出した。エーテル抽出物を集めて乾燥し、濃縮して油性残渣を得た。収量:5g。
【0090】
C.3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−3−オールからH2Oを脱離して、4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1,2−ジメトキシベンゼンを得た。
5gの粗3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−3−オール及び0.25gのp−トルエンスルホン酸の80mLベンゼン溶液を、水を共沸除去しながら1時間還流した。次に混合物を重炭酸ナトリウムのパッドを通してろ過し、ろ液を濃縮した。残渣を減圧下蒸留により精製した。収量:2.9g。
【0091】
D.4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1,2−ジメトキシベンゼンへH2Oを付加して、3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−2−オールを得た。
26gの4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1,2−ジメトキシベンゼンのテトラヒドロフラン(THF)溶液へ、ボラン−THF錯体のTHF1.0M溶液189mLを0℃で添加した。混合物を3時間、0℃で撹拌し、次に35.6mLの50%過酸化水素を添加し、同時に5M水酸化ナトリウム水溶液を添加して混合物をpH8に維持した。混合物をエーテルで(数回)抽出した。エーテル抽出物を集めて乾燥し、濃縮した。
【0092】
E.3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒドをベンジル化して、4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)ベンズアルデヒド([6346−05−0])を得た。
100gの3−ヒドロキシ−4−メトキシベンズアルデヒド及び135gのベンジルブロマイドの、137gの炭酸カリウム懸濁物を含有する500mLアセトン溶液を一晩還流加熱した。混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、残渣をトルエン/ヘキサンから再結晶した。収量:65g。
【0093】
F.3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−2−オールを4−メトキシ−3−(フェニル−メトキシ)ベンズアルデヒドと反応させ、4−(4−エチル−6、7−ジメトキシ−3−メチル−iso−クロマニル)−1−メトキシ−2−(フェニルメトキシ)ベンゼンを得た。
14gの4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)ベンズアルデヒド及び15gの3−(3,4−ジメトキシフェニル)ペンタン−2−オールの0.3Lのジオキサン溶液を塩化水素ガスで飽和した。混合物を3時間還流加熱し、再度塩化水素ガスで飽和し、室温で一晩攪拌した。次にそれを水中へ注ぎ、希水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にし、塩化メチレンで(数回)抽出した。塩化メチレン抽出物を集めて乾燥し、濃縮した。
【0094】
G.4−(4−エチル−6、7−ジメトキシ−3−メチル−iso−クロマニル)−1−メトキシ−2−(フェニルメトキシ)ベンゼンを開環して、3−(4、5−ジメトキシ−2−{[4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンを得た。
30gの粗4−(4−エチル−6、7−ジメトキシ−3−メチル−iso−クロマニル)−1−メトキシ−2−(フェニルメトキシ)ベンゼンの450mLアセトン溶液へ、5℃で、30gの酸化クロムの300mLの35%硫酸溶液を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、冷10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和し、濃縮してアセトンを除去した。次に、水を添加し、混合物を塩化メチレンで(数回)抽出した。塩化メチレン抽出物を集めて乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で精製した。収量:10g。
【0095】
H.3−(4、5−ジメトキシ−2−{[4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)−フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンを脱ベンジル化して、3−{2−[(3−ヒドロキシ−4−メトキシ−フェニル)カルボニル]−4、5−ジメトキシフェニル}ペンタン−2−オンを得た。
10gの3−(4、5−ジメトキシ−2−{[4−メトキシ−3−(フェニルメトキシ)−フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンの、0.9gの10%パラジウム(炭素上担持)懸濁物を含有する塩化メチレン溶液を、80psi(56250kgf/m2)で1時間水素化した。混合物を珪藻土を通してろ過し、ろ液を濃縮した。収量:6.5g。
【0096】
I.3−{2−[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)カルボニル]−4、5−ジメトキシフェニル}ペンタン−2−オンをヒドラジンとの反応により環化して、1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを得た。
6.5gの3−{2−[(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)カルボニル]−4、5−ジメトキシフェニル}ペンタン−2−オン及び2.2mLのヒドラジンの130mLエタノール溶液を、0.5時間還流加熱した。溶液を室温まで放置冷却し、HClガスで飽和した。次に混合物を体積約5mlまで濃縮し、濃水酸化アンモニウム水溶液で塩基性にし、塩化メチレンで(数回)抽出した。塩化メチレン抽出物を集めて乾燥し、濃縮し、残渣を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。収量0.97g。
生成物1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを、HPLC、元素分析、GC/MS、プロトンNMR及び示差走査熱量測定(DSC)により分析した。測定結果は下記の通り:
純度:99.29%、HPLC(面積%)による。カラム:Betasil(商標)フェニル4.6×150mm。移動相:アセトニトリル::0.01Mリン酸バッファ(70::30)。流速:0.5mL/min。波長:254nm。
GC−MS;M/e=358;得られたフラグメントパターンは目的の構造と一致した。
DSC:温度プログラムは5℃/分で100℃〜300℃、モル純度測定値=99.75%及び融点158.6℃。
元素分析(計算値/実測値):%C−68.09/68.08;%H−6.61/6.57;N−7.53/7.35。計算では、残存する0.02当量の酢酸エチル及び0.09当量の水を含む。
NMR(DCCl3)(GEQE300で実施):1.08ppm(t、3H);1.99(s、3H);2.11(m、2H);2.75(m、1H);3.75(s、3H);3.93(s、3H);3.97(s、3H);6.46(bs、1H);6.72(s、1H);6.86(m、2H);7.18(d、1H);7.48(s、1H)。
【0097】
実施例4:1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの合成
ラセミ1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンをスキーム4の経路に従い合成した。
【化10】

【0098】
A.3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸をエステル化して、エチル−3−メトキシ−4−ヒドロキシベンゾエートを得た。
100gの3−メトキシ−4−ヒドロキシ安息香酸及び17gの濃硫酸を含む、300mLの無水エタノール溶液を一晩還流加熱した。混合物を濃縮し、残渣を水中へ注いだ。塩化メチレンを添加し、溶液を、水、希重炭酸ナトリウム水溶液、及び水の順で洗浄し、次に乾燥して濃縮した。収量:118g。
【0099】
B.エチル−3−メトキシ−4−ヒドロキシベンゾエートをベンジル化して、エチル−3−メトキシ−4−ベンジルオキシベンゾエートを得た。
118gのエチル−3−メトキシ−4−ヒドロキシベンゾエート及び86mLのベンジルブロマイドの、124gの炭酸カリウム懸濁物を含有する600mLアセトン溶液を一晩還流加熱した。混合物をろ過し、ろ液を濃縮し、残渣をアセトンから再結晶した。
【0100】
C.エチルマグネシウムヨウ化物をエチル−3−メトキシ−4−ベンジルオキシベンゾエートへ付加し3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−3−オールを得た。
ヨードエタン(112mL)を、35gのマグネシウム削りくずの160mLエーテル懸濁液中へ滴下した。エチルマグネシウムヨウ化物の形成が完了した後、142gのエチル3−メトキシ−4−ベンジルオキシベンゾエートのエーテル溶液を添加し、混合物を室温で3日間攪拌した。反応物を飽和塩化アンモニウムを添加してクエンチした。相を分離し、エーテル相を乾燥し、濃縮して油性残渣を得た。収量:110g。
【0101】
D.3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−3−オールからH2Oを脱離して、4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1−ベンジルオキシ−2−メトキシベンゼンを得た。
110gの粗3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−3−オール及び7gのp−トルエンスルホン酸の2Lのベンゼン
溶液を、水を共沸除去しながら4時間還流した。次に混合物を重炭酸ナトリウムのパッドを通してろ過し、ろ液を濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーにより中性アルミナ上で精製した。
【0102】
E.4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1−ベンジルオキシ−2−メトキシベンゼンへH2Oを付加して、3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−2−オールを得た。
96gの4−((1Z)−1−エチル−1−プロペニル)−1−ベンジルオキシ−2−メトキシベンゼンのTHF
溶液へ、ボラン−THF錯体のTHF1.0M溶液510mLを0℃で添加した。混合物を3時間、0℃で撹拌し、次に204mLの25%過酸化水素を添加した。混合物は5M水酸化ナトリウム水溶液を添加して混合物をpH8に維持し、エーテルで(数回)抽出した。エーテル抽出物を集めて乾燥し、濃縮した。収量:102g。
【0103】
F.3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−2−オールを、3,4−ジメトキシベンズアルデヒドを反応させ、4−(4−エチル−6−メトキシ−7−ベンジルオキシ−3−メチル−iso−クロマニル)−1,2−ジメトキシベンゼンを得た。
46gの3,4−ジメトキシベンズアルデヒド及び100gの粗3−(3−メトキシ−4−ベンジルオキシフェニル)ペンタン−2−オールの0.3Lのジオキサン溶液を塩化水素ガスで飽和した。混合物を3時間還流加熱し、次に水中へ注ぎ、希水酸化ナトリウム水溶液で塩基性にし、塩化メチレンで(数回)抽出した。塩化メチレン抽出物を集めて乾燥し、濃縮した。
【0104】
G.4−(4−エチル−6−メトキシ−7−ベンジルオキシ−3−メチル−iso−クロマニル)−1,2−ジメトキシベンゼンを開環して、3−(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−{[3,4−ジメトキシフェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンを得た。
50gの粗4−(4−エチル−6−メトキシ−7−ベンジルオキシ−3−メチル−iso−クロマニル)−1,2−ジメトキシベンゼンのアセトン溶液へ、5℃で、50gの酸化クロムの500mLの35%硫酸溶液を添加した。混合物を室温で2時間撹拌し、冷10%水酸化ナトリウム水溶液を添加して中和し、濃縮してアセトンを除去した。次に、水を添加し、混合物を塩化メチレンで(数回)抽出した。塩化メチレン抽出物を集めて乾燥し、濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィーによりシリカゲル上で精製した。収量:18g。
【0105】
H.3−(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−{[3,4−ジメトキシ−フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オンを脱ベンジル化して、3−{2−[(3,4−ジメトキシ−フェニル)カルボニル]−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル}ペンタン−2−オンを得た。
18gの3−(4−ベンジルオキシ−5−メトキシ−2−{[3,4−ジメトキシ−フェニル]カルボニル}フェニル)ペンタン−2−オン
の、2gの10%パラジウム(炭素上担持)懸濁物を含有する塩化メチレン溶液を、80psi(56250kgf/m2)で1時間水素化した。混合物を珪藻土を通してろ過し、ろ液を濃縮した。収量:15g。
【0106】
I.3−{2−[(3,4−ジメトキシ−フェニル)カルボニル]−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル}ペンタン−2−オンをヒドラジンとの反応により環化して、1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを得た。
14gの3−{2−[(3,4−ジメトキシ−フェニル)カルボニル]−4−ヒドロキシ−5−メトキシフェニル}ペンタン−2−オン及び4.7mLのヒドラジンの280mLエタノール
溶液を、0.5時間還流加熱した。溶液を室温まで放置冷却し、HClガスで飽和した。次に混合物を体積約5mlまで濃縮し、濃水酸化アンモニウム水溶液で塩基性にし、塩化メチレンで(数回)抽出した。塩化メチレン抽出物を集めて乾燥し、濃縮し、残渣を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶した。収量:1.5g。
【0107】
生成物1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを、HPLC、元素分析、GC/MS、プロトンNMR及び示差走査熱量測定(DSC)により分析した。測定結果は下記の通り:
純度:98.36%、HPLC(面積%)による。カラム:Betasil(商標)フェニル4.6×150mm。移動相:アセトニトリル::0.01Mリン酸バッファ(70::30)。流速:0.5mL/min。波長:254nm。
GC−MS;M/e=358;得られたフラグメントパターンは目的の構造と一致した。
示差走査熱量測定(DSC):温度プログラムは5℃/分で100℃−300℃、モル純度測定値=99.14%及び融点146.2℃。
元素分析(計算値/実測値):%C−68.14/68.12;%H−6.63/6.63;N−7.43/7.20。計算では、残存する0.1Mの酢酸エチルを含む。
NMR(DCCl3)(GEQE300で行った。):1.08ppm(t、3H);1.96(s、3H);2.10(m、2H);2.77(m、1H);3.91(s、3H);3.93(s、3H);3.98(s、3H);5.73(bs、1H);6.70(s、1H);6.80(d、1H);6.95(s、1H);7.00(d、1H);7.58(s、1H)。
【0108】
実施例5:1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンの分割
ラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンのエナンチオマーを、キラルクロマトグラフィーにより下記の通り光学分割した。
ラセミ−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンを準分取用(500mm×10mm)Chirobiotic Vカラム(ASTEC、Whippany、NJ)にかけた。鏡像的混合物のメチル−tert−ブチルエーテル/アセトニトリル(90/10V/V)による流速40mL/minでの溶出を、310nmでモニターした。フラクションサイズは10〜20mLであり、フラクションを、同一の溶媒組成物を使用して分析用(150×4.6mm)Chirobiotic Vカラム上で、分析用クロマトグラフィーにかけた。それぞれ単離されたエナンチオマーを含有するフラクションを、真空(減圧)下で溶出溶媒を除去して処理した。
【0109】
実施例6:LTB4結合アッセイ:
ラセミトフィソパム並びに光学的に純粋な(R)−及び(S)トフィソパムのLTB4レセプター結合活性を、Chengら、J.Pharmacol.Exp.Ther.、236(1)、126-132、1986に記載されているギニアブタ脾臓膜アッセイを使用して決定した。
反応は、NaCl、MgCl2、EDTA、及びバシトラシンを含有するリン酸バッファ(pH7.4)中で行った。1.0mg/mLのギニアブタ脾臓膜調製及び1nM[3H]LTB4(競合物質と共に又は又は含まないで)を含有する反応体積150μLを、0〜4℃で2時間インキュベートした。競合物は2,3−ベンゾジアゼピン、及びコントロールとしてのLTB4を含有した。反応を、グラス(ファイバー)フィルター上への急速減圧(吸引)ろ過により終了した。フィルターを冷バッファで洗浄し、乾燥してシンチレーションバイアル中に配置し、フィルター上に捕捉された放射能活性を測定し、コントロール値と比較して試験化合物のLTB4結合部位との相互作用を確認した。試験化合物及び標準の結合実験中に得られたデータを、図1、図2及び図3に図示し、下記表2にまとめた。
【0110】
【表2】

【0111】
結合データの結果は、ラセミ1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピンのLTB4レセプターへの結合は、主に(R)エナンチオマーによるものであり、(R)エナンチオマーは(S)エナンチオマーのそれの150倍を超えるKiで結合することを示した。
【0112】
実施例7:ウサギモデル中のLTB4誘起された皮膚炎のトフィソパムの効果
A.試験動物及び試験化合物
10匹のメスニュージーランド白色ウサギを、下記表3にまとめた投薬群に帰属させた。
【表3】

【0113】
試験化合物を下記の通り調製した。賦形剤を最初に100mgのヒドロキシプロピルメチルセルロース2910(HPMC)(Sigma Chemicals、St.Louis、MO)を含む50mLの0.9%食塩水中に溶解させ、濃度の2%HPMCを得た。3種の試験物質、(R)、(S)及びラセミトフィソパムを、それぞれの試験物質1gを10mLの賦形剤へ添加して配合した。
【0114】
B.投与及び皮内注射
第0日に、ウサギへケタミン/キシラジン(35/5mg/kg、s.c.)鎮痛剤を与え、背中面積約8×14cmを密接して注意深く刈り込み皮膚を露出したが、上皮を傷つけたり損傷したりはしなかった。それぞれ約2.5×2.5cm平方のグリッドを消えないマーカーでそれぞれの動物の背中に描いた。次に群へ対応する適切な試験物質を、動物へ腹腔内投与した。試験又はコントロール物質投与30分後、動物へLTB4又はLTB4−アミノプロパミド(LTB4−AP、合成LTB4アゴニスト)を表4中に示す適切な部位で皮内注射(チャレンジ)した。それぞれの注入部位を消えないマーカーでマークし、皮内注入部位の実際の位置を特定した。注射60分後、動物を再度トフィソパム又はコントロール物質で処理した。動物を注射4時間後に犠牲にし、皮内注入部位を切除し、10%中性バッファホルマリン(NBF)中で固定化して組織病理を調査した。H&E染色部位を、光学顕微鏡を使用して正式な獣医病理専門家が観察した。
【0115】
【表4】

【0116】
C.検死
全ての動物を、注射4時間後に犠牲にした。皮内注入部位を切除し、特定の四角い厚紙上に配置し、10%NBF中で固定化し、組織病理を調査した。皮膚部位は、外皮及び背中筋肉組織までの皮下組織を含んでいた。
【0117】
D.組織病理学
マークされた皮膚部位を、少なくとも48時間に小さな四角い厚紙上に固定した。大まかなトリミングでは、マークされた皮膚領域を通る3本の水平線で切断し、注入部位が部位の平面にあることを確認した。皮膚を大まかにトリミングし、脱水処理し、パラフィン中に包埋し、3〜5μm厚に切断してマトキシリン及びエオシン(H&E)染色した。
組織を、光学顕微鏡を使用して正式な獣医病理専門家が組織病理学的に評価した。最初にスライドの帰属をマスクして初期評価を行い、スライドをランク付けした。次にスライドのマスクをはずし、障害を注意深く評価し、トフィソパム処理部位と賦形剤及び正のコントロール組織とを注意深く比較した。障害を、炎症の程度及び水腫の程度に従って段階評価した。炎症及び水腫の重篤度は、下記の通り段階付けた:0=正常;T=痕跡あり;1=最小;2=軽症の;3=中程度;4=著しい。
【0118】
E.組織病理学
組織病理学の結果を下記表5にまとめた。LTB4及びLTB4−apの両方は、皮下水腫及び、活発な好中球の投与依存性流入に特徴を有する局所性皮膚膨疹を生じる。炎症は、微少血管、血管周囲の炎症性袖口様白血球集合、に付着し若しくは縁取り、真皮中に分散される多くの好中球から構成される。更に、幾つかの炎症及び水腫は、表面の真皮中に存在する。(R)−トフィソパムの投与は、炎症性細胞浸潤の重篤度をかなり回復させ、水腫を減少させた。賦形剤処置、(S)トフィソパム処置、ラセミトフィソパム処置、又はデキサメタゾン処置した動物中では、いずれも炎症及び水腫の有効な回復は起こらなかった。
【0119】
【表5−1】

【表5−2】

【0120】
実施例8:デキストラン硫酸ナトリウム誘起された大腸炎:IBDのマウスモデル:
この大腸炎モデルでは、結腸の急性炎症をデキストラン硫酸ナトリウム(DSS)を5%水道水溶液として投与して生成させた。この大腸炎は、ヒト炎症性腸疾患で観察されるものと類似する、組織学的事象並びに、好中球、マクロファージ及び炎症のメディエイタの流入に特徴を有した。IBD治療に効果があることが知られているコルチコステロイド及び5−ASA等のいくつかの薬が、このモデルで活性を有することを示した。下記実験研究を、Okayasuら、Gastroenterology、98:694-702、1990のプロトコルに従い行った。
【0121】
110匹の試験動物(メス、6週齢Swiss Websterマウス、18〜30g)を10群に分け、平均グループ体重の統計的相違を排除するように選択した。
それぞれの動物へ、一日当り(IP)試験物質又は賦形剤のいずれかを投与することを第0日に開始した。第1日から、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)の5%水道水溶液(10mL/マウス/日、5〜6日間)を飲料水として無制限に与えて、実験用DSSアーム中の動物用液体源以外はなにも与えずに、急性結腸炎症を誘起した。液体の単一源として5%DSSを投与された動物以外は、ろ過した水道水を無制限に与えた。4日後、急性の病気の兆候が、体重減少、下痢及び血便として発現した。組織学的変化としては、初めに陰窩の短縮化、次に陰窩の分離領域及び、破壊的炎症性ろ液の存在しない粘膜筋板が挙げられる。5日後、病理学的変化は、びらん外観及び早期過形成上皮との融合となる。炎症スコアは固有層中の好中球、リンパ球及びプラズマ細胞では高いが、上皮では低い。
【0122】
試験化合物を腹腔内投与した(IP)。この期間中投与された試験化合物の予防的活性を評価し、病状後に投与された試験化合物の治療的活性を評価した。10頭の試験動物を、下記表6中に列挙されたそれぞれの投与グループに帰属させた。
【0123】
【表6】

【0124】
試験動物の体重を、第0〜8日又は実験の終了まで毎日測定した。実験用DSSアームを用いた実験の合計継続時間は、大腸炎の時間進行に応じて変化させた。試験動物の症状及び便の粘度を記録した。
実験の終了において、試験動物を安楽死させ(CO2)、正中切開を行い、便サンプルを得た。サンプルをスライド上に配置し、潜血検査した(Quic-Cult(登録商標)、Laboratory Diagnostics Co.社、Morganville、NJ)。2滴の試薬をサンプル上にたらし、色変化を観察して潜血を決定した。潜血の存在を下記スコアで評価するスコア決定手順プロトコルを使用して段階付けた;0は無色;1は30秒未満非常に明るい青色を示す(+/−);2は30秒以上青色を発色する(+);3は30秒未満で色彩変化が起こる(++);及び4はスライド上に観察できる肉眼的血液。結腸を優しく延ばし、結腸盲腸接合部から遠位の直腸の終了部までの長さを、ほとんど0.1cmまで測定した。病気活性指標(DAI)を下記表7にまとめた診断基準を使用して決定した。
【0125】
【表7】

【0126】
それぞれの試験動物のスコアを加算し、次に3つに分けてそれぞれの動物用DAIスコアを得た。11群のデータを下記表8、9及び10にまとめた。
【表8】

【0127】
【表9】

【0128】
【表10】

【0129】
上記データは、64mg/体重kgの(R)トフィソパム投与で、LTB4伝達される炎症性反応からDSS誘起された大腸炎からの顕著な保護を示したことを示した。この評価は、体重減少、便粘度及び検出された便の潜血量を含む、大腸炎進行の指数のスコアを組みいれた、結腸長さ評価及び合計病気活性指標(DAI)に対応する。
【0130】
全ての上記文献をここで資料として使用する。本発明は、本発明の範囲内において他の特定の態様でも表され、本発明の範囲内で上記資料は従属項、明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】LTB4レセプターからの(R)トフィソパムによる[3H]LTB4の置換の競合的結合実験で得られたデータのプロットである。[3H]LTB4の(R)トフィソパム置換のIC50及びKi値を測定した。
【図2】LTB4レセプターからのラセミトフィソパムによる[3H]LTB4の置換の競合的結合実験で得られたデータのプロットである。[3H]LTB4のラセミトフィソパム置換のIC50及びKi値を測定した。
【図3】LTB4レセプターからの(S)トフィソパムによる[3H]LTB4の置換の競合的結合実験で得られたデータのプロットである。[3H]LTB4の(S)トフィソパム置換のIC50及びKi値を測定した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者への少なくとも1の式Iの化合物の有効量投与を含む炎症性疾患患者の治療方法:
【化1】

但し:
1は−(C1−C7)ヒドロカルビル又は−(C2−C6)ヘテロアルキルであり;
2は−H及び−(C1−C7)ヒドロカルビルの群から選ばれ;
1及びR2は結合して炭素環又は複素環5又は6員環を形成してもよく;
3は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、−O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、−NH(C1−C6)アルキル、−N((C1−C6)アルキル)2、−NH−アシル、−NO2及びハロゲンの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり
4及びR5は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、NH−アシル及びハロゲンの群から選ばれ;
4及びR5は結合して5、6又は7員の複素環を形成してもよい化合物;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩。
【請求項2】
上記炎症性疾患はLTB4により伝達される請求項1の方法。
【請求項3】
上記式Iの化合物はベンゾジアゼピン環の5位での絶対配置で(R)−及び(S)エナンチオマーのラセミ混合物を含有する請求項1の方法。
【請求項4】
上記式Iに関して
1は−(C1−C6)アルキルであり;
2は−H及び−(C1−C6)アルキルの群から選ばれ;
3は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−O−アシル及び−OHの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
4及びR5は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−O−アシル及び−OHの群から選ばれ、R4及びR5は結合して5、6又は7員の複素環を形成してもよく;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩を含む、請求項3の方法。
【請求項5】
上記式Iに関して
1は−CH2CH3であり;
2は−CH3であり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−O(C1−C6)アルキルの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩を含む、請求項4の方法。
【請求項6】
上記式Iに関して
1は−CH2CH3であり;
2は−CH3であり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−OCH3の群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩を含む、請求項5の方法。
【請求項7】
化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩化合物は下記群から選ばれる請求項6の方法:
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
及びそれらの医薬的に適用可能な塩。
【請求項8】
化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩は、1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン又はその医薬的に適用可能な塩である請求項7の方法。
【請求項9】
上記式Iの化合物は、ベンゾジアゼピン環の5位での絶対配置に関して対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない(R)エナンチオマーである請求項1の方法。
【請求項10】
上記式Iに関して
1は−(C1−C6)アルキルであり;
2は−H及び−(C1−C6)アルキルの群から選ばれ;
3は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−O−アシル及び−OHの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
4及びR5は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−O−アシル及び−OHの群から選ばれ、R4及びR5は結合して5、6又は7員の複素環を形成してもよく;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩を含む、請求項9の方法。
【請求項11】
上記式Iに関して
1は−CH2CH3であり;
2は−CH3であり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−O(C1−C6)アルキルの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩を含む、請求項10の方法。
【請求項12】
上記式Iに関して
1は−CH2CH3であり;
2は−CH3であり;
3、R4及びR5は独立して、−OH及び−OCH3の群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩を含む、請求項11の方法。
【請求項13】
化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩化合物は下記群から選ばれる請求項12の方法:
(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3,4−ジメトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−メトキシ−8−ヒドロキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
(R)−1−(3−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−4−メチル−5−エチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;
但し、対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない化合物;
及びそれらの医薬的に適用可能な塩。
【請求項14】
化合物又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩は、対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない、(R)−1−(3,4−ジメトキシ−フェニル)−4−メチル−5−エチル−7,8−ジメトキシ−5H−2,3−ベンゾジアゼピン;又はそれらの医薬的に適用可能な塩である請求項13の方法。
【請求項15】
患者へ、少なくとも1の式Iの化合物及び又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩の有効量;並びに、アミノサリチラート、コルチコステロイド、抗代謝物質、免疫抑制剤、腫瘍壊死因子アルファ阻害剤、ロイコトリエン合成の阻害剤、及びロイコトリエンアンタゴニストの群から選ばれる1以上の付加的治療薬(但し、ロイコトリエンアンタゴニストである付加的治療薬は、式Iの化合物以外である)の組み合わせを投与する炎症性疾患患者の治療方法:
【化2】

但し:R1は−(C1−C7)ヒドロカルビル又は−(C2−C6)ヘテロアルキルであり;
2は−H及び−(C1−C7)ヒドロカルビルの群から選ばれ;
1及びR2は結合して炭素環状又は複素環状5又は6員環を形成してもよく;
3は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、−O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、−NH(C1−C6)アルキル、−N((C1−C6)アルキル)2、−NH−アシル、−NO2及びハロゲンの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
4及びR5は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、NH−アシル及びハロゲンの群から選ばれ;
4及びR5は結合して5、6又は7員の複素環を形成してもよい。
【請求項16】
アミノサリチラートは、スルファサラジン(商標)及びメサラミン(商標)の群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項17】
コルチコステロイドは、プレドニゾン(商標)及びブデソニド(商標)の群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項18】
代謝拮抗物質はアザチオプリン(商標)である請求項15の方法。
【請求項19】
免疫抑制剤は、シクロスポリン(商標)及びタクロリムス(商標)の群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項20】
腫瘍壊死因子アルファ阻害剤は、インフリキシマブ(商標)、エタネルセプト(商標)、及びアダリムマブ(商標)の群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項21】
上記ロイコトリエン合成の阻害剤は、5−リポキシゲナーゼ阻害剤である請求項15の方法。
【請求項22】
上記5−リポキシゲナーゼ阻害剤は、ETH615、リネタスチン(商標)、ロナパレン(商標)、MK886及びジロートン(商標)の群から選ばれる請求項21の方法。
【請求項23】
ロイコトリエン合成の阻害剤は、15−HETE及びレフルノミド(商標)の群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項24】
ロイコトリエンアンタゴニストは、SC41930、SC53228、CGS−25019C、ONO−4057、SB−202247、VML295、CP−105696、CP−195543、及びU−75302の群から選ばれる請求項15の方法。
【請求項25】
上記炎症性疾患は、炎症性腸疾患である請求項1の方法。
【請求項26】
炎症性腸疾患は過敏腸症候群の患者で発生する請求項25の方法。
【請求項27】
炎症性疾患は、乾癬、慢性関節リューマチ、及び放射線性胃腸性炎症の群から選ばれる請求項2の方法。
【請求項28】
上記炎症性疾患は過敏腸症候群の患者に発生する請求項27の方法。
【請求項29】
炎症性疾患症状の進行のおそれのある患者での炎症性疾患の発病の予防又は遅延方法であり、上記患者へ、請求項1に記載された少なくとも1の式Iの化合物の有効量を投与することを含む方法:
【化3】

但し:
1は−(C1−C7)ヒドロカルビル又は−(C2−C6)ヘテロアルキルであり;
2は−H及び−(C1−C7)ヒドロカルビルの群から選ばれ;
1及びR2は結合して炭素環状又は複素環状5又は6員環を形成してもよく;
3は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、−O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、−NH(C1−C6)アルキル、−N((C1−C6)アルキル)2、−NH−アシル、−NO2及びハロゲンの群から選ばれ;
nは1、2又は3であり;
4及びR5は独立して、−O(C1−C6)アルキル、−OH、O−アシル、−SH、−S(C1−C3)アルキル、−NH2、NH−アシル及びハロゲンの群から選ばれ;
4及びR5は結合して5、6又は7員の複素環を形成してもよい化合物;
又はこれら化合物の医薬的に適用可能な塩。
【請求項30】
上記炎症性疾患はLTB4により伝達される請求項29の方法。
【請求項31】
上記式Iの化合物はベンゾジアゼピン環の5位での絶対配置に関して対応する(S)エナンチオマーが実質的に存在しない(R)エナンチオマーである請求項29の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2006−510635(P2006−510635A)
【公表日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557607(P2004−557607)
【出願日】平成15年12月3日(2003.12.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/038643
【国際公開番号】WO2004/050080
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505205384)ヴェラ ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】