説明

3次元センサ用光導波路およびそれを用いた3次元センサ

【課題】小型化が可能である3次元センサ用光導波路およびそれを用いた3次元センサを提供する。
【解決手段】下記(α)の光導波路単層体Vが、その厚み方向に同軸的に複数積層されることにより、その積層された枠状の光導波路単層体Vの内側空間を測定用空間Hにした3次元センサ用光導波路W1 が形成されている。
(α)コア3A,3Bと、このコア3A,3Bを被覆した状態で形成されたオーバークラッド層4とを備え、全体が枠状に形成され、光を出射するコア3Aの端部が上記枠状の内側の一側部に位置決めされ、上記出射された光を入射するコア3Bの端部が上記枠状の内側の他側部に位置決めされた光導波路単層体V。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元センサ用光導波路およびそれを用いた3次元センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
3次元センサは、通常、測定対象物に向けて光や電波を出射し、その測定対象物で反射した光や電波を受信してコンピュータ等で演算処理することにより、上記測定対象物の3次元形状,位置,速度等の情報を得るものとなっている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−163429号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の3次元センサは、大きな装置であった。そのため、例えば、金融機関のATM,駅の券売機,携帯ゲーム機等に用いられているタッチパネルに、指の触れ位置の検知手段として従来の3次元センサを取り付けることは、その3次元センサが本体(タッチパネル)よりも大きくなるおそれがあり、実用的でない。
【0004】
また、3次元センサとして、本発明のように光導波路を用いたものは、従来なかった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、小型化が可能である3次元センサ用光導波路およびそれを用いた3次元センサの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記(α)の光導波路単層体が、その厚み方向に同軸的に複数積層され、積層された枠状の光導波路単層体の内側空間が測定用空間になっている3次元センサ用光導波路を第1の要旨とする。
(α)コアと、このコアを被覆した状態で形成されたオーバークラッド層とを備え、全体が枠状に形成され、光を出射するコアの端部が上記枠状の内側の一側部に位置決めされ、上記出射された光を入射するコアの端部が上記枠状の内側の他側部に位置決めされた光導波路単層体。
【0007】
また、本発明は、上記3次元センサ用光導波路と制御手段とを備え、上記3次元センサ用光導波路において、光を出射するコアの端部に光伝播する発光素子が、枠状の光導波路単層体の外側部に設けられ、光を入射するコアの端部から光伝播される受光素子が、枠状の光導波路単層体の外側部に設けられ、上記制御手段が、上記発光素子と受光素子とに、電気的に接続され、上記発光素子の発光を制御し、かつ、上記受光素子からの信号を受けて演算処理する3次元センサを第2の要旨とする。
【0008】
すなわち、本発明の3次元センサ用光導波路は、上記枠状の光導波路単層体が厚み方向に同軸的に複数積層され、この積層された枠状の内側空間(枠で囲われた中空空間の、積層方向の連続からなる空間)が、測定対象物を配置したり通過させたりする測定用空間となっている。また、この3次元センサ用光導波路を用いた本発明の3次元センサは、上記枠状の光導波路単層体の外側部に上記発光素子,受光素子を設け、それら発光素子,受光素子を上記制御手段に電気的に接続したものとなっている。この3次元センサにおいて、枠状の光導波路単層体は薄形化および小形化が可能であり、発光素子,受光素子および制御手段も小型化が可能であるため、それらで構成される本発明の3次元センサは小形化が可能である。そして、本発明の3次元センサでは、上記枠状の光導波路単層体の、枠で囲われた中空空間において、上記制御手段からの信号に従って発光素子を発光させて光出射側のコアの端部から光を出射し、その光を光入射側のコアの端部に入射させる。この状態において、上記3次元センサ用光導波路の上記測定用空間に、測定対象物を配置したり通過させたりすると、その測定対象物が上記出射された光の一部を遮断するため、その遮断された部分を、上記受光素子で感知し、その信号を、上記発光素子への発光信号とともに、上記制御手段で演算処理することにより、上記測定用空間での上記測定対象物の3次元位置,傾き、速度,大きさ等の情報を得ることができる。
【0009】
なお、本発明において「枠状」とは、枠が連続しているものだけでなく、その枠の一部が離れて不連続になっているものも含む意味である。例えば、四角形の「枠状」の場合、2つのL字状部を対向させ、四角形の「枠状」に配置したものも含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の3次元センサ用光導波路は、光を出射するコアの端部と出射された光を入射するコアの端部とを備えた、枠状の光導波路単層体を、厚み方向に同軸的に複数積層したものであり、その積層された枠状の光導波路単層体の内側空間が、測定対象物を配置したり通過させたりする測定用空間になっている。また、上記光導波路単層体は薄形化および小形化が可能であるため、その光導波路単層体を積層してなる本発明の3次元センサ用光導波路は小形化が可能となり、その3次元センサ用光導波路を用いた3次元センサも小形化が可能となる。
【0011】
特に、上記光導波路単層体において、光を出射するコアの端部が第1レンズ部に形成され、その第1レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る平面視円弧状に形成され、上記オーバークラッド層の端部が上記第1レンズ部におけるレンズ面を被覆する状態に形成され、そのオーバークラッド層の端部が第2レンズ部に形成され、その第2レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る側断面視円弧状に形成されている場合には、オーバークラッド層を形成した時点で、コア端部の第1レンズ部とオーバークラッド層端部の第2レンズ部とを、自動的に位置合わせした状態にすることができる。このため、上記第1レンズ部と第2レンズ部との位置合わせ作業を不要にすることができ、生産性を向上させることができる。しかも、上記第1レンズ部と第2レンズ部の屈折作用により、出射する光の発散を抑制することができ、測定対象物に関して得られる情報の正確性を向上させることができる。
【0012】
さらに、上記出射された光を入射するコアの端部が第3レンズ部に形成され、その第3レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る平面視円弧状に形成され、上記オーバークラッド層の他の端部が上記第3レンズ部のレンズ面を被覆する状態に形成され、そのオーバークラッド層の端部が第4レンズ部に形成され、その第4レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る側断面視円弧状に形成されている場合には、光出射側の上記第1および第2レンズ部と同様、オーバークラッド層を形成した時点で、第3レンズ部と第4レンズ部とを、自動的に位置合わせした状態にすることができ、生産性を向上させることができる。しかも、上記第3レンズ部と第4レンズ部の屈折作用により、入射光を絞って集束させてコア内に導くことができ、測定対象物に関して得られる情報の正確性を向上させることができる。
【0013】
また、積層状態にある上側の枠状の光導波路単層体と下側の枠状の光導波路単層体とが、相互に枠をずらした状態に位置決めされている場合には、上側の光導波路単層体において出射される光の方向と下側の光導波路単層体において出射される光の方向とが、枠のずれによって相互に異なるようになる。このため、立体的な測定対象物を高さ位置によって、角度を変えて測定することができるようになる。これにより、測定対象物の形状の概略を得ることができる。すなわち、一つの光導波路単層体では、測定対象物に対して光が当たる部分の輪郭形状を得ることができる。その光導波路単層体が枠をずらさない状態(枠を揃えた状態)で複数積層されていると、全ての光導波路単層体において出射する光の方向が同じであるため、測定対象物に対してある一定の方向のみの、光が当たる部分の輪郭形状しか得られない。このため、、光が当たらない部分(影となる部分)等の形状は得ることはできない。これに対して、この発明のように、光導波路単層体が枠をずらした状態で複数積層されていると、測定対象物の高さ位置によって、異なる方向から光を当てることができるようになるため、測定対象物の高さ位置を変えて、異なる方向の輪郭形状を得ることができる。そして、それら複数の異なる方向の輪郭形状から測定対象物の形状の概略を得ることができる。
【0014】
本発明の3次元センサは、小形化が可能な上記3次元センサ用光導波路において、枠状の光導波路単層体の外側部に発光素子,受光素子を設け、それら発光素子,受光素子を制御手段に電気的に接続したものとなっている。このため、本発明の3次元センサは、小形化が実現できるようになる。また、上記3次元センサ用光導波路の測定用空間に、測定対象物を配置したり通過させたりすると、上記測定用空間での測定対象物の3次元位置,傾き、速度,大きさ等の情報を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0016】
図1は、本発明の3次元センサ用光導波路の第1の実施の形態を示している。この実施の形態の3次元センサ用光導波路W1 は、四角形の枠状(連続した枠)に形成されている光導波路単層体Vが、その枠を揃えて、その厚み方向に同軸的に複数(図1では3層)積層された構造となっている。そして、上記光導波路単層体Vの、枠で囲まれた中空空間の連続からなる空間が、測定対象物を配置したり通過させたりする測定用空間Hとなっている。この実施の形態では、実際は、積層状態にある上側の光導波路単層体Vと下側の光導波路単層体Vとは接触しているが、図1では、理解し易くするため、隙間をあけて図示している。なお、図1において、鎖線で示す符号3A,3Bは上記光導波路単層体V内において光の通路となるコアであり、その鎖線の太さがコア3A,3Bの太さを示しているとともに、コア3A,3Bの数を略して図示している。また、符号4は、上記コア3A,3Bを被覆するオーバークラッド層である。
【0017】
上記四角形の枠状の光導波路単層体Vは、図2(a)〔平面図〕で示すように、その四角形の枠状を構成する一方のL字形部分が、光出射側の光導波路部分Aに形成され、他方のL字形部分が、光入射側の光導波路部分Bに形成されている。上記四角形の枠状の光導波路単層体Vは、四角形の枠状に形成されたアンダークラッド層(基体)2〔図2(c)参照〕と、その表面に形成されたコア3A,3Bと、これを被覆した状態でアンダークラッド層2の全体に積層形成されたオーバークラッド層4とからなる。上記複数のコア3A,3Bは、光の通路となるものであり、上記各L字形部分の外側端縁部の所定部分a,bから、そのL字形部分の内側端縁部に、等間隔に並列状態で延びたパターンに形成されている。また、光出射側の光導波路部分Aに形成されたコア3Aの数と、光入射側の光導波路部分Bに形成されたコア3Bの数とは、同数になっている。さらに、光出射側のコア3Aの端面と、光入射側のコア3Bの端面とは、対面した状態になっている。なお、図2(a)では、コア3A,3Bを鎖線で示しており、その鎖線の太さがコア3A,3Bの太さを示しているとともに、コア3A,3Bの数を略して図示している。
【0018】
ここで、図2(b)〔図2(a)の丸部Cの拡大平面図〕,図2(c)〔図2(b)のX−X断面図〕に示すように、この実施の形態では、上記光出射側のコア3Aの端部が、略扇形状の第1レンズ部31に形成され、光入射側のコア3Bの端部が、略扇形状の第3レンズ部(33)に形成され、両レンズ部31(33)は、対峙状態になっている。ただし、略扇形状等の形状は同一であるため、図2(b),(c)では、第1レンズ部31およびその周辺と、第3レンズ部(33)およびその周辺とを併せて記載している。すなわち、これら第1および第3レンズ部31(33)は、端面(図示の右側端面)に向かうにつれて徐々に拡幅して略扇形状をなし、その略扇形状における円弧面部が外側に向かって反る平面視円弧状のレンズ面31a(33a)に形成されている。上記第1および第3レンズ部31(33)を含むコア3A(3B)は、均一厚みに形成されている。また、上記オーバークラッド層4は、上記コア3A(3B)全体〔第1および第3レンズ部31(33)を含む〕を被覆した状態で、上記アンダークラッド層2の表面に、均一高さに形成されている。上記オーバークラッド層4も、アンダークラッド層2の上に、アンダークラッド層2と同じ四角形の枠状に形成され、その四角形の枠状の内側部分の枠に沿う端縁部が、光出射側では、第2レンズ部42に形成され、光入射側では、第4レンズ部(44)に形成されている。これら第2および第4レンズ部42(44)の端面は、図2(c)に示すように、外側に向かって反る側断面視円弧状のレンズ面42a(44a)に形成されている。
【0019】
つぎに、上記3次元センサ用光導波路W1 を用いた3次元センサについて説明する。この3次元センサは、図3に示すように、上記四角形の枠状の各光導波路単層体Vにおいて、光出射側の光導波路部分Aの外側端縁部の所定部分aに、発光素子5が接続され、光入射側の光導波路部分Bの外側端縁部の所定部分bに、受光素子6が接続されている。また、上記発光素子5および受光素子6は、ADC(Analog Digital Converter),マイクロプロセッサ等の制御手段7に電気的に接続されており、その制御手段により、上記発光素子5の発光が制御され、かつ、上記受光素子6からの信号が演算処理されるようになっている。なお、図3では、図2(a)同様、コア3A,3Bを実線および鎖線で示しており、その実線および鎖線の太さがコア3A,3Bの太さを示しているとともに、コア3A,3Bの数を略して図示している。また、図3では、理解し易くするため、多数の光のうちの一部の光Sのみを示している。
【0020】
上記3次元センサにより測定対象物を測定する際には、上記制御手段7から発光素子5に信号が送られ、その信号に従って発光素子5を発光させる。これにより、発光素子5から発光された光は、光導波路単層体Vにおける、光出射側の光導波路部分Aのコア3A内を、外側端縁部の所定部分aから、内側端縁部に伝播する。そして、その内側端縁部で、図4(a)〔平面図〕,図4(b)〔図4(a)のX−X断面図〕に示すように、光Sが出射される。このコア3Aの端部から出射される光Sは、その端部の第1レンズ部31の略扇形状の形状により、その略扇形状の拡幅部の形状に沿って、略均一に拡がる。さらに、その光Sは、第1レンズ部31の、レンズ面31a形状(平面視円弧状)に起因する屈折作用により、光Sの進行方向に対して横方向(左右方向)〔図4(a)参照〕の発散が抑制される。そして、その光Sは、上記レンズ面31aに対応する幅広の状態で、オーバークラッド層4の内側部分に出射される。つづいて、その光Sは、オーバークラッド層4の端縁部の第2レンズ部42の、レンズ面42a形状(側断面視円弧状)に起因する屈折作用により、光Sの進行方向に対して縦方向(上下方向)〔図4(b)参照〕の発散が抑制される。そして、その光Sは、第2レンズ部42のレンズ面42aから出射される(図3参照)。すなわち、光出射側では、上記2つのレンズ部(第1レンズ部31および第2レンズ部42)の屈折作用により、光Sが、光Sの進行方向に対して横方向ないし縦方向の発散が抑制された状態で、上記第2レンズ部42のレンズ面42aから出射する。そして、四角形の枠状の光導波路単層体Vの中空空間を進む。
【0021】
他方、光導波路単層体Vにおける、光入射側の光導波路部分Bでは、上記四角形の枠状の光導波路単層体Vの中空空間を進んできた光Sは、図4(a),(b)とは逆の順序で入射する。すなわち、光Sは、オーバークラッド層4の他の端部の第4レンズ部(44)のレンズ面(44a)から入射し、その第4レンズ部(44)の、レンズ面(44a)形状(側断面視円弧状)に起因する屈折作用により、光Sの進行方向に対して縦方向でさらに絞って集束される。そして、その光Sは、コア(3B)の端部の第3レンズ部(33)の略扇形状の形状により、幅広になっているレンズ面(33a)から、効率よく第3レンズ部(33)に入射する。そして、その光Sは、第3レンズ部(33)の、レンズ面(33a)形状(平面視円弧状)に起因する屈折作用により、光Sの進行方向に対して横方向でさらに絞って集束される。すなわち、光入射側では、上記2つのレンズ部〔第4レンズ部(44)および第3レンズ部(33)〕の屈折作用により、光Sの進行方向に対して縦方向ないし横方向で集束した状態で、光Sが、コア(3B)の奥方向に進む。そして、その光Sは、図3に示すように、光導波路単層体Vにおける、光入射側の光導波路部分Bのコア3B内を、外側端縁部の所定部分bまで伝播し、受光素子6で受光される。その受光素子6は、受光した情報を信号に変え、上記制御手段7に伝達する。
【0022】
このような状態において、図5に示すように、上記四角形の枠状の光導波路単層体Vの中空空間の連続からなる空間(3次元センサ用光導波路W1 の測定用空間H)に、測定対象物M1 を配置したり通過させたりすると、上記測定用空間Hにおいて、その測定対象物M1 が光Sの一部を遮断する。このため、その遮断された部分を、上記受光素子6(図3参照)で感知し、その信号を、上記発光素子5(図3参照)への発光信号とともに、上記制御手段7(図3参照)で演算処理することにより、上記測定用空間Hでの上記測定対象物M1 の3次元位置,傾き、速度,大きさ等の情報を得ることができる。
【0023】
この3次元センサは、光導波路(光導波路単層体V)を用いていることにより、小形化することができるため、例えば、タッチパネルにおける指の触れ位置の検知手段として用いることができる。この場合、上記四角形の枠状の3次元センサ用光導波路W1 を、タッチパネルの四角形のディスプレイの画面を囲むようにして、その画面周縁部の四角形に沿って設置する。そして、指でディスプレイの画面に触れると、図6に示すように、上記指(測定対象物)M2 の先端は上記3次元センサ用光導波路W1 の測定用空間Hの上端開口から下端開口まで通過し、しかも、その指M2 は長いものであるため、上記3次元センサ用光導波路W1 における全層の光導波路単層体Vで、出射した光Sの一部を遮断する。この場合、上記3次元センサは、ディスプレイの画面に触れたものが指M2 であると判断し、その触れ位置に表示された操作等を行えるようにする。他方、ディスプレイの画面に、塵埃,水滴等がある場合は、図5に示すように、その塵埃,水滴等(図5に示す測定対象物M1 に相当)により、上記3次元センサ用光導波路W1 における下側の層の光導波路単層体Vのみで、出射した光Sの一部が遮断される。このような場合は、上記3次元センサは、指M2 (図6参照)がディスプレイの画面に触れていないと判断し、操作等を行えないようにすることができる。すなわち、上記塵埃,水滴等による誤作動を防止することができる。
【0024】
特に、この実施の形態では、光出射側に、第1および第2レンズ部31,42が形成されているため、3次元センサ用光導波路W1 の測定用空間Hにおいて、光Sが進行方向に対して横方向ないし縦方向の発散を抑制された状態で格子状に走った状態となる。このため、測定対象物M1 に関して得られる情報の正確性を向上させることができる。
【0025】
また、この実施の形態では、光入射側に、光S絞って集束させる上記第3および第4レンズ部(33),(44)が形成されているため、光出射側の第1および第2レンズ部31,42において光Sを絞った状態で出射しなくても、光伝送効率を向上させることができ、測定対象物M1 に関して得られる情報の正確性を向上させることができる。
【0026】
つぎに、上記3次元センサに用いる3次元センサ用光導波路W1 の製造方法の一例について説明する。なお、この説明において参照する図7(a)〜(d)ないし図8(a)〜(d)は、図2(a)〜(c)に示す、第1〜第4レンズ部31,42,33,44およびその周辺部分を中心にその製造方法を図示している。また、これらの形状等は、光出射側と光入射側とで同一であるため、それらを併せて記載している。
【0027】
まず、上記3次元センサ用光導波路W1 における光導波路単層体Vを製造する際に用いる平板状の基台1〔図7(a)参照〕を準備する。この基台1の形成材料としては、例えば、ガラス,石英,シリコン,樹脂,金属等があげられる。また、基台1の厚みは、例えば、20μm〜5mmの範囲内に設定される。
【0028】
ついで、図7(a)に示すように、上記基台1上の所定領域に、アンダークラッド層2の形成材料である、感光性樹脂が溶媒に溶解しているワニスを塗布する。上記感光性樹脂としては、例えば、感光性エポキシ樹脂等があげられる。上記ワニスの塗布は、例えば、スピンコート法,ディッピング法,キャスティング法,インジェクション法,インクジェット法等により行われる。そして、それを50〜120℃×10〜30分間の加熱処理により乾燥させる。これにより、アンダークラッド層2に形成される感光性樹脂層2aを形成する。
【0029】
つぎに、上記感光性樹脂層2aを照射線により露光する。上記露光用の照射線としては、例えば、可視光,紫外線,赤外線,X線,α線,β線,γ線等が用いられる。好適には、紫外線が用いられる。紫外線を用いると、大きなエネルギーを照射して、大きな硬化速度を得ることができ、しかも、照射装置も小型かつ安価であり、生産コストの低減化を図ることができるからである。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯,高圧水銀灯,超高圧水銀灯等があげられ、紫外線の照射量は、通常、10〜10000mJ/cm2 の範囲内に設定される。
【0030】
上記露光後、光反応を完結させるために、加熱処理を行う。この加熱処理は、通常、80〜250℃×10秒〜2時間の範囲内で行う。これにより、上記感光性樹脂層2aをアンダークラッド層2に形成する。アンダークラッド層2(感光性樹脂層2a)の厚みは、通常、1〜50μmの範囲内に設定される。
【0031】
ついで、図7(b)に示すように、上記アンダークラッド層2の表面に、コア3A(3B)に形成される感光性樹脂層3aを形成する。この感光性樹脂層3aの形成は、図7(a)で説明した、アンダークラッド層2に形成される感光性樹脂層2aの形成方法と同様にして行われる。なお、このコア3A(3B)の形成材料は、上記アンダークラッド層2および後記のオーバークラッド層4〔図2(c)参照〕の形成材料よりも屈折率が大きい材料が用いられる。この屈折率の調整は、例えば、上記アンダークラッド層2,コア3A(3B),オーバークラッド層4の各形成材料の種類の選択や組成比率を調整して行うことができる。
【0032】
つぎに、上記感光性樹脂層3aの上方に、コア3A(3B)のパターン〔第1および第3レンズ部31(33)を含む〕に対応する開口パターンが形成されている露光マスクを配置し、この露光マスクを介して上記感光性樹脂層3aを照射線により露光した後、加熱処理を行う。この露光および加熱処理は、図7(a)で説明したアンダークラッド層2の形成方法と同様にして行われる。
【0033】
つづいて、現像液を用いて現像を行うことにより、図7(c)に示すように、上記感光性樹脂層3a〔図7(b)参照〕における未露光部分を溶解させて除去し、アンダークラッド層2上に残存した感光性樹脂層3aをコア3A(3B)のパターンに形成する。上記現像は、例えば、浸漬法,スプレー法,パドル法等が用いられる。また、現像液としては、例えば、有機系の溶媒,アルカリ系水溶液を含有する有機系の溶媒等が用いられる。このような現像液および現像条件は、感光性樹脂組成物の組成によって、適宜選択される。
【0034】
上記現像後、コア3A(3B)のパターンに形成された残存感光性樹脂層3aの表面等に残存する現像液を加熱処理により除去する。この加熱処理は、通常、80〜120℃×10〜30分間の範囲内で行われる。これにより、上記コア3A(3B)のパターンに形成された残存感光性樹脂層3aを、コア3A(3B)〔第1および第3レンズ部31(33)を含む〕に形成する。コア3A(3B)(感光性樹脂層3a)の厚みは、通常、10〜100μmの範囲内に設定され、コア3A(3B)の幅〔第1および第3レンズ部31(33)の略扇形状の拡幅部以外〕は、通常、8〜50μmの範囲内に設定される。また、第1および第3レンズ部31(33)の略扇形状の拡幅部の中心角度(テーパ角度)は、通常、5°〜50°の範囲内に設定され、上記第1および第3レンズ部31(33)のレンズ面31a(33a)の曲率半径が50μmを超え6000μm未満に設定される。
【0035】
そして、図7(d)に示すように、そのコア3A(3B)を被覆するように、上記アンダークラッド層2の表面に、オーバークラッド層4に形成される感光性樹脂を塗布し、感光性樹脂層(未硬化)4aを形成する。このオーバークラッド層4に形成される感光性樹脂としては、例えば、上記アンダークラッド層2と同様の感光性樹脂があげられる。
【0036】
ついで、図8(a)に示すように、オーバークラッド層4を四角形の枠状にプレス成形するための成形型20を準備する。この成形型20は、紫外線等の照射線を透過させる材料(例えば石英)からなり、上記第2および第4レンズ部42(44)を含むオーバークラッド層4の表面形状と同形状の型面21からなる凹部が形成されている。そして、図8(b)に示すように、上記成形型20の型面(凹部)21が上記コア3A(3B)に対して所定位置に位置決めされるよう、上記感光性樹脂層4aに対して成形型20をプレスし、その感光性樹脂層4aをオーバークラッド層4の形状に成形する。つぎに、その状態で、上記成形型20を通して紫外線等の照射線を露光した後に加熱処理を行う。この露光および加熱処理は、図7(a)で説明したアンダークラッド層2の形成方法と同様にして行われる。その後、図8(c)に示すように、脱型する。これにより、第2および第4レンズ部42(44)が形成された、四角形の枠状のオーバークラッド層4を得る。オーバークラッド層4の高さは、通常、50〜2000μmの範囲内に設定される。また、上記第1レンズ部31のレンズ面31aの曲率中心から上記第2レンズ部42のレンズ面42aの曲率中心までの距離および上記第3レンズ部33のレンズ面33aの曲率中心から上記第4レンズ部44のレンズ面44aの曲率中心までの距離は、400μmを超え10000μm未満に設定される。また、上記第2および第4レンズ部42(44)のレンズ面42a(44a)の曲率半径は、300μmを超え10000μm未満に設定される。
【0037】
このようにして、オーバークラッド層4の延長部として第2および第4レンズ部42(44)が形成されるため、オーバークラッド層4が形成された時点で、コア3A(3B)端部の第1および第3レンズ部31(33)と、オーバークラッド層4の延長部からなる第2および第4レンズ部42(44)とが、位置決めされた状態となる。また、アンダークラッド層2とオーバークラッド層4とが同じ形成材料の場合は、アンダークラッド層2とオーバークラッド層4とは、その接触部分で同化する。
【0038】
その後、図8(d)に示すように、刃型を用いた打ち抜き等により、基台1とともにアンダークラッド層2等を四角形の枠状に切断する。これにより、基台1の表面に、上記アンダークラッド層2,コア3A(3B)およびオーバークラッド層4〔第2および第4レンズ部42(44)を含む〕からなる、四角形の枠状の光導波路単層体Vが製造される。この光導波路単層体Vの厚みは、通常、500〜5000μmの範囲内に設定される。そして、この光導波路単層体Vを、上記基台1から剥離する〔図2(c)参照〕。
【0039】
そして、図1に示すように、上記光導波路単層体Vを、その厚み方向に同軸的に複数積層する。この実施の形態では、上記光導波路単層体Vの枠を揃えて積層する。また、積層する際には、上側の枠状の光導波路単層体Vの下面または下側の枠状の光導波路単層体Vの上面に、接着剤を塗布する。このようにして、上記3次元センサ用光導波路W1 を製造する。
【0040】
つぎに、上記3次元センサ用光導波路W1 を用いての3次元センサの製造方法について説明する。すなわち、図3に示すように、上記四角形の枠状の各光導波路単層体Vにおいて、光出射側の光導波路部分Aの外側端縁部の所定部分aに、発光素子5を接続し、光入射側の光導波路部分Bの外側端縁部の所定部分bに、受光素子6を接続する。また、上記発光素子5および受光素子6を、制御手段7に電気的に接続する。このようにして、上記3次元センサを製造する。
【0041】
図9は、本発明の3次元センサ用光導波路の第2の実施の形態を示す平面図である。この実施の形態の3次元センサ用光導波路W2 は、上記第1の実施の形態の3次元センサ用光導波路W1 (図1参照)において、積層状態にある上側の枠状の光導波路単層体Vと下側の枠状の光導波路単層体Vとが、相互に枠をずらした状態に位置決めされている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、同様の部分には、同じ符号を付している。
【0042】
この実施の形態の3次元センサ用光導波路W2 を用いた3次元センサでは、光導波路単層体Vの積層位置(高さ位置)によって、出射する光の方向が異なる。このため、測定対象物を高さ位置によって、角度を変えて測定することができる。これにより、測定対象物の形状の概略を得ることができる。
【0043】
上記各実施の形態において、3次元センサ用光導波路W1 ,W2 の大きさは、それ自体に光導波路を用いるため、小形化することができる。また、光出射側と光入射側とで光伝送ができれば、その大きさに上限はない。測定対象物M1 の大きさ,その移動範囲等に対応して適宜設定すればよい。例えば、上記第1の実施の形態のように、3次元センサ用光導波路W1 をタッチパネルのディスプレイに設置する場合、四角形の枠状の光導波路単層体Vの縦と横の長さは、それぞれ30〜300mm程度、枠幅は、1mm〜30mm程度に設定され、また、上記光導波路単層体Vの積層数は、2層以上、3次元センサ用光導波路W1 の総厚みは、1mm以上に設定される。
【0044】
また、光Sを出射するコア3A(光Sを入射するコア3B)の数も、測定対象物M1 の大きさ,その移動範囲等に対応して適宜設定すればよい。例えば、上記第1の実施の形態のように、3次元センサ用光導波路W1 をタッチパネルのディスプレイに設置する場合、光Sを出射するコア3Aの数は、1層の光導波路単層に20〜100本程度に設定される。
【0045】
なお、上記各実施の形態では、積層状態にある上側の光導波路単層体Vと下側の光導波路単層体Vとは接触させたが、スペーサーを介する等して、間隔をあけて積層してもよい。その間隔も、測定対象物M1 の大きさ,その移動範囲等に対応して適宜設定すればよい。
【0046】
また、上記各実施の形態では、光導波路単層体Vを四角形の枠状としたが、その四角形の枠状の光導波路単層体Vを構成する2つのL字形の光導波路部分A,Bを別体にしてもよい。その製造方法としては、上記四角形の枠状に切断するのに代えて、2つのL字形に切断すればよい。また、上記光導波路単層体Vの枠状の形状は、四角形だけでなく、他の多角形でもよいし、円形でもよい。
【0047】
そして、上記各実施の形態では、コア3A,3B端部の第1および第3レンズ部31,33を略扇形状に形成したが、3次元センサとして光出射側と光入射側との間で適正に光伝送を行うことができれば、上記第1および第3レンズ部31,33を均一幅で形成してもよい。
【0048】
また、光入射側では、上記第3および第4レンズ部33,44〔図2(a)〜(c)参照〕を形成せず、光入射側のコア3Bの端面をオーバークラッド層4の端面から露出させてもよい。この場合、光伝送効率を向上させる観点から、光入射側のコア3Bの端面に光が集束した状態で入射するよう、光出射側の第1および第2レンズ部31,42において光を絞って出射させることが好ましい。逆に、光出射側の上記第1および第2レンズ部31,42を形成せず、光入射側の上記第3および第4レンズ部33,44を形成した状態にしてもよい。この場合、光出射側のコア3Aの端面をオーバークラッド層4の端面から露出させる。
【0049】
さらに、3次元センサとして光出射側と光入射側との間で適正に光伝送を行うことができれば、上記第1〜第4レンズ部31,42,33,44は形成しなくてもよい。この場合、光出射側のコア3Aの端面および光入射側のコア3Bの端面をオーバークラッド層4の端面から露出させる。
【0050】
また、上記各実施の形態では、感光性樹脂を用いてアンダークラッド層2を形成したが、これに代えて、アンダークラッド層2として作用する樹脂フィルムを準備し、それをそのままアンダークラッド層2として用いてもよい。また、アンダークラッド層2に代えて、金属フィルム(金属材),金属薄膜(金属材)が表面に形成された基板等を、コア3A,3Bがその表面に形成される基体として用いてもよい。
【0051】
また、上記各実施の形態では、上記基台1から光導波路単層体Vを剥離して積層したが、剥離することなく、基台1の表面に形成された状態で積層してもよい。
【0052】
つぎに、実施例について説明する。但し、本発明は、これに限定されるわけではない。
【実施例】
【0053】
〔アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料〕
下記の一般式(1)で示されるビスフェノキシエタノールフルオレングリシジルエーテル(成分A)35重量部、脂環式エポキシ樹脂である3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(ダイセル化学社製、セロキサイド2021P)(成分B)40重量部、(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシル−カルボキシレート(ダイセル化学社製、セロキサイド2081)(成分C)25重量部、4,4’−ビス〔ジ(βヒドロキシエトキシ)フェニルスルフィニオ〕フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネートの50%プロピオンカーボネート溶液(成分D)2重量部とを混合することにより、アンダークラッド層およびオーバークラッド層の形成材料を調製した。
【0054】
【化1】

【0055】
〔コアの形成材料〕
上記成分A:70重量部、1,3,3−トリス{4−〔2−(3−オキセタニル)〕ブトキシフェニル}ブタン:30重量部、上記成分D:1重量部を乳酸エチル28重量部に溶解することにより、コアの形成材料を調製した。
【0056】
〔3次元センサ用光導波路の作製〕
ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム〔160mm×160mm×188μm(厚み)〕の表面に、上記アンダークラッド層の形成材料をアプリケーターにより塗布した後、2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った。つづいて、100℃×15分間の加熱処理を行うことにより、アンダークラッド層を形成した。このアンダークラッド層の厚みを接触式膜厚計で測定すると20μmであった。また、このアンダークラッド層の、波長830nmにおける屈折率は、1.502であった。
【0057】
ついで、上記アンダークラッド層の表面に、上記コアの形成材料をアプリケーターにより塗布した後、100℃×15分間の乾燥処理を行った。つぎに、その上方に、コアのパターン(第1および第3レンズ部を含む)と同形状の開口パターンが形成された合成石英系のクロムマスク(露光マスク)を介して、プロキシミティ露光法にて4000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った後、80℃×15分間の加熱処理を行った。つぎに、γ−ブチロラクトン水溶液を用いて現像することにより、未露光部分を溶解除去した後、120℃×30分間の加熱処理を行うことにより、コアを形成した。コア端部の第1および第3レンズ部は、略扇形状とし、中心角度7°、レンズ面の曲率半径160μm、長さ2460μmであった。また、コアの厚みは50μm、幅(第1および第3レンズ部の略扇形状の拡幅部以外)は15μmであった。上記各寸法は、SEM(電子顕微鏡)で測定した。また、このコアの、波長830nmにおける屈折率は、1.588であった。
【0058】
そして、コアを被覆するように、上記アンダークラッド層の表面に、オーバークラッド層の形成材料をアプリケーターにより塗布した。つぎに、オーバークラッド層形成用の石英製成形型を、第2および第4レンズ部のレンズ面の曲率半径(1500μm)に対応して準備した。これら成形型には、オーバークラッド層の表面形状(第2および第4レンズ部を含む)と同形状の型面からなる凹部が形成されている。そして、第1レンズ部のレンズ面の曲率中心から第2レンズ部のレンズ面の曲率中心までの距離および第3レンズ部のレンズ面の曲率中心から第4レンズ部のレンズ面の曲率中心までの距離を2800μmに設定し、上記成形型をプレスした。つぎに、上記成形型を通して、2000mJ/cm2 の紫外線照射による露光を行った後、120℃×15分間の加熱処理を行った。その後、脱型した。これにより、第2および第4レンズ部を含むオーバークラッド層を得た。このオーバークラッド層の高さをマイクロスコープ(キーエンス社製)で測定すると、その高さは1.5mmであった。また、このオーバークラッド層の、波長830nmにおける屈折率は、1.502であった。
【0059】
そして、刃型を用いた打ち抜きにより、上記PENフィルムとともに、2つのL字形の光導波路部分に切断し、PENフィルム付きL字形光導波路部分(外形寸法:66.3mm×70.0mm、L字形の線幅:10mm)を2つ(四角形の枠状のPENフィルム付き光導波路単層体)得た。
【0060】
得られた2つのPENフィルム付きL字形光導波路部分を、ガラスエポキシ基板の表面に対向させ、四角形の枠状になるよう配置した。そして、対峙する光出射側のコアと光入射側のコアの光軸が一致するよう、マイクロスコープを用いて位置合わせを行った。同様にして、上記PENフィルム付きL字形光導波路部分を、接着剤を介して、3層積層した。この状態で、紫外線硬化型接着剤を用いてガラスエポキシ基板の表面に接着固定した。その接触面は、上記PENフィルムとした。このようにして、3層構造の3次元センサ用光導波路を作製した。
【0061】
〔3次元センサの作製〕
そして、上記3次元センサ用光導波路の各層において、光を出射する側のL字形光導波路部分の外側端縁部の所定部分に発光素子(VCSEL)を接続し、光を入射させる側のL字形光導波路部分の外側端縁部の所定部分に受光素子(CMOSリニアセンサアレイ)を接続した。さらに、上記発光素子および受光素子をマイクロプロセッサに電気的に接続した。このようにして、3次元センサを作製した。
【0062】
〔評価〕
そして、各発光素子から強度1.5mWの光(波長850nm)を発光させたところ、各受光素子で光を検知できることを確認した。さらに、上記3層構造の3次元センサ用光導波路の測定用空間の上端開口から指先を入れ、上記ガラスエポキシ基板の表面まで到達させると、3層全ての光導波路単層体において、出射した光の一部が遮断された。また、上記ガラスエポキシ基板の表面に水滴を滴下すると、最下層の光導波路単層体において、出射した光の一部が遮断された。また、上記ガラスエポキシ基板の表面に発泡スチロール片(直径3mm)を置くと、最下2層の光導波路単層体において、出射した光の一部が遮断された。
【0063】
上記結果から、上記3次元センサを、タッチパネルにおける指の触れ位置の検知手段として用いると、実施に指で触れたか否かを判断することができ、水滴,塵埃(発泡スチロール片)等による誤作動を防止することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の3次元センサ用光導波路の第1の実施の形態を模式的に示す斜視図である。
【図2】上記3次元センサ用光導波路を構成する光導波路単層体を模式的に示し、(a)はその平面図であり、(b)は(a)の丸部Cで囲ったコアの端部の拡大平面図であり、(c)は(b)のX−X断面図である。
【図3】上記3次元センサ用光導波路を用いた3次元センサを模式的に示す斜視図である。
【図4】上記光導波路単層体における光の出射状態を模式的に示し、(a)はその平面図であり、(b)は(a)のX−X断面図である。
【図5】上記3次元センサによる測定対象物の測定方法を模式的に示す説明図である。
【図6】上記3次元センサをタッチパネルにおける指の触れ位置の検知手段として用いた場合を模式的に示す説明図である。
【図7】(a)〜(d)は、上記3次元センサ用光導波路の製造方法を模式的に示す説明図である。
【図8】(a)〜(d)は、上記3次元センサ用光導波路の製造方法の続きを模式的に示す説明図である。
【図9】本発明の3次元センサ用光導波路の第2の実施の形態を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0065】
V 光導波路単層体
1 3次元センサ用光導波路
H 測定用空間
3A,3B コア
4 オーバークラッド層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(α)の光導波路単層体が、その厚み方向に同軸的に複数積層され、積層された枠状の光導波路単層体の内側空間が測定用空間になっていることを特徴とする3次元センサ用光導波路。
(α)コアと、このコアを被覆した状態で形成されたオーバークラッド層とを備え、全体が枠状に形成され、光を出射するコアの端部が上記枠状の内側の一側部に位置決めされ、上記出射された光を入射するコアの端部が上記枠状の内側の他側部に位置決めされた光導波路単層体。
【請求項2】
上記光導波路単層体において、光を出射するコアの端部が第1レンズ部に形成され、その第1レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る平面視円弧状に形成され、上記オーバークラッド層の端部が上記第1レンズ部におけるレンズ面を被覆する状態に形成され、そのオーバークラッド層の端部が第2レンズ部に形成され、その第2レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る側断面視円弧状に形成されている請求項1記載の3次元センサ用光導波路。
【請求項3】
上記光導波路単層体において、出射された光を入射するコアの端部が第3レンズ部に形成され、その第3レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る平面視円弧状に形成され、上記オーバークラッド層の他の端部が上記第3レンズ部のレンズ面を被覆する状態に形成され、そのオーバークラッド層の端部が第4レンズ部に形成され、その第4レンズ部におけるレンズ面が外側に向かって反る側断面視円弧状に形成されている請求項1または2記載の3次元センサ用光導波路。
【請求項4】
積層状態にある上側の枠状の光導波路単層体と下側の枠状の光導波路単層体とが、相互に枠をずらした状態に位置決めされている請求項1〜3のいずれか一項に記載の3次元センサ用光導波路。
【請求項5】
上記コアが、アンダークラッド材または金属材からなる基体の表面の所定部分に形成され、上記オーバークラッド層が、上記コアを被覆した状態で上記基体の表面に形成されている請求項1〜4のいずれか一項に記載の3次元センサ用光導波路。
【請求項6】
上記請求項1〜5のいずれか一項に記載の3次元センサ用光導波路と制御手段とを備え、上記3次元センサ用光導波路において、光を出射するコアの端部に光伝播する発光素子が、枠状の光導波路単層体の外側部に設けられ、光を入射するコアの端部から光伝播される受光素子が、枠状の光導波路単層体の外側部に設けられ、上記制御手段が、上記発光素子と受光素子とに、電気的に接続され、上記発光素子の発光を制御し、かつ、上記受光素子からの信号を受けて演算処理することを特徴とする3次元センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−32378(P2010−32378A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195145(P2008−195145)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】