説明

AlxGa1−xN結晶基板

【課題】大型で転位密度の低いAlxGa1-xN結晶基板を提供する。
【解決手段】本AlxGa1-xN結晶基板は、気相法によるAlxGa1-xN結晶(0<x≦1)の成長方法で得られたAlxGa1-xN結晶10の表面13を加工することにより得られる平坦な主面31を有するAlxGa1-xN結晶基板30であって、結晶成長の際、その雰囲気中に不純物を含めることにより、AlxGa1-xN結晶10の主成長平面11に複数のファセット12を有するピット10pが少なくとも1つ存在している状態でAlxGa1-xN結晶10を成長させることにより、AlxGa1-xN結晶10の転位を低減し、ピット10p底部から主成長平面11に対して実質的に垂直方向に伸びる線状転位集中部10rの密度が105cm-2以下であり、結晶成長後において主成長平面11の総面積に対するピット10pの開口面10sの総面積の割合が30%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、電子素子、半導体センサなどの半導体デバイスに好適に用いられるAlxGa1-xN結晶基板に関する。
【背景技術】
【0002】
GaN結晶、AlN結晶などのIII族窒化物結晶は、発光素子、電子素子、半導体センサなどの半導体デバイスを形成するための材料として非常に有用なものである。半導体デバイスの特性を向上させるために、大型で転位密度の低いIII族窒化物結晶が求められている。
【0003】
ここで、AlN結晶は、一般的に、昇華法を用いて成長されており、下地基板を用いない結晶核の自然形成による成長法と、下地基板であるSiC基板などの異種基板(成長させる結晶と化学組成が異なる基板をいう、以下同じ)上に成長させる異種基板による成長法がある(たとえば、特許文献1〜3を参照)。
【0004】
しかし、結晶核の自然形成による成長法においては、転位密度が低い結晶性のよい結晶が得られるが、下地基板を用いていないため、結晶の成長方位の制御ができず安定した結晶成長を行なうことができず再現性が低い。また、一般に、高温(たとえば、2300℃以上)で結晶成長を行なうため、結晶成長の雰囲気中の熱分布が大きく、成長させるAlN結晶にクラックが入りやすく、大型のAlN結晶を得ることが困難である。
【0005】
一方、異種基板による成長法においては、大口径の異種基板(SiC基板など)を用いることにより、異種基板と同等の口径を有する大型のAlN結晶が得られ、結晶の成長方位の制御が容易となり安定した結晶成長を行なうことができる。しかし、異種基板とAlN結晶との間の格子定数の不整合により、転位密度が大きくなり、結晶性が低下したり、応力による結晶の歪みが生じたりする。
【0006】
したがって、従来の昇華法においては、大型でかつ転位密度の低いAlN結晶を成長させることが困難であった。
【0007】
一方、GaN結晶の成長においては、HVPE法などの気相法において、サファイア基板、SiC基板などの下地基板上に、窓付きのマスク層を設けた後、結晶成長条件を調節することにより、結晶の成長表面に複数のファセットを有するピットを形成し、そのピットを存在させた状態で結晶成長を行なうことにより、大型で転位密度の低いGaN結晶が得られることが報告されている(たとえば、特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,858,086号明細書
【特許文献2】米国特許第6,296,956号明細書
【特許文献3】米国特許第6,001,748号明細書
【特許文献4】特開2001−102307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、Alを構成元素として含むAlxGa1-xN結晶(0<x≦1)については、GaN結晶と異なり、下地基板上に窓付きのマスク層を形成して気相法による結晶成長を行なっても、マスク層上にもAlxGa1-xN多結晶が生成するため、複数のファセットを有するピットを形成することができず、大型で転位密度の低い結晶が得られない。
【0010】
本発明は、大型で転位密度の低いAlxGa1-xN結晶基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、気相法によるAlxGa1-xN結晶(0<x≦1)の成長方法で得られたAlxGa1-xN結晶の表面を加工することにより得られる平坦な主面を有するAlxGa1-xN結晶基板であって、成長方法は、AlxGa1-xN結晶の結晶成長の際、その雰囲気中に不純物を含めることにより、AlxGa1-xN結晶の主成長平面に複数のファセットを有するピットを少なくとも1つ形成し、ピットが少なくとも1つ存在している状態でAlxGa1-xN結晶を成長させることにより、AlxGa1-xN結晶の転位を低減することを特徴とし、ピットの底部から主成長平面に対して実質的に垂直方向に伸びる線状転位集中部が存在し、線状転位集中部の密度が105cm-2以下であり、結晶成長後において主成長平面の総面積に対するピットの開口面の総面積の割合が30%以上である、AlxGa1-xN結晶基板である。
【0012】
本発明にかかるAlxGa1-xN結晶基板において、成長方法は、結晶成長後における主成長平面の総面積に対するピットの開口面の総面積の割合が30%以上であるAlxGa1-xN結晶の結晶表面上に、第2のAlxGa1-xN結晶を成長させて、結晶成長後における第2のAlxGa1-xN結晶の主成長平面の総面積に対するピット開口面の総面積の割合を30%未満とすることができる。
【0013】
また、本発明にかかるAlxGa1-xN結晶基板は、線状転位集中部を中心とする高転位密度部と、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部とを含み、主面における低転位密度部の面積は主面の総面積の30%以上とすることができる。また、本発明にかかるAlxGa1-xN結晶基板は、線状転位集中部を中心とする高転位密度部と、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部とを含み、高転位密度部は低転位密度部の第1部分および第2部分に挟まれ、第1部分の結晶方位と第2部分の結晶方位の最大のずれ角を50arcsec以下とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、大型で転位密度の低いAlxGa1-xN結晶基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかるAlxGa1-xN結晶の成長方法の一実施形態を示す概略斜視図である。
【図2】本発明にかかるAlxGa1-xN結晶の成長方法の一実施形態を示す概略平面図である。
【図3】図2のIIIにおける概略断面図である。
【図4】本発明にかかるAlxGa1-xN結晶の成長方法の他の実施形態を示す概略断面図である。
【図5】本発明においてAlxGa1-xN結晶の成長に用いられる昇華炉を示す概略図である。
【図6】本発明にかかるAlxGa1-xN結晶基板の一実施形態を示す概略図である。ここで、(a)はAlxGa1-xN結晶基板の概略平面図であり、(b)は(a)の線分VIB−VIBにおける概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施形態1)
図1〜3を参照して、本発明にかかるAlxGa1-xN結晶の成長方法は、気相法によるAlxGa1-xN結晶(0<x≦1)の成長方法であって、結晶成長の際、AlxGa1-xN結晶10の主成長平面11に複数のファセット12を有するピット10pを少なくとも1つ形成し、ピット10pが少なくとも1つ存在している状態でAlxGa1-xN結晶10を成長させることにより、AlxGa1-xN結晶10の転位を低減することを特徴とする。
【0017】
本実施形態によれば、AlxGa1-xN結晶の成長においても、結晶の成長条件を調整することにより、結晶成長の際、AlxGa1-xN結晶10の主成長平面11に複数のファセット12を有するピット10pを少なくとも1つ形成し、ピット10pが少なくとも1つ存在している状態でAlxGa1-xN結晶10を成長させることにより、AlxGa1-xN結晶10の転位を低減することができる。本実施形態の製造方法は、AlxGa1-xN結晶の中でも、AlN結晶の成長において特に好ましく用いることができる。以下に、具体的に説明する。
【0018】
図1および図2を参照して、本実施形態においては、結晶の成長条件を調整することにより、AlxGa1-xN結晶10の主成長平面11であるC面({0001}面をいう、以下同じ)に、C面以外の面指数をもつ複数のファセット12を有するピット10pを1つ以上形成する。なお、{0001}面とは、(0001)面と結晶学的に等価な面の総称であり、(0001)面の他、(000−1)面が含まれる。
【0019】
ここで、ピット10pの形状には、特に制限はないが、AlxGa1-xN結晶10が六方晶系であることから、P−ABCDEFの六角錘形状をとり易い。また、ピット10pを形成するファセット12には、特に制限はないが、S面({10−11}面をいう、以下同じ)となる場合が多い。なお、{10−11}面とは、(10−11)面と結晶学的に等価な面の総称である。すなわち、図1および図2に示すピット10pは、面指数の異なる複数のファセット12により形成されている。
【0020】
また、ファセット12内に、M面({10−10}面をいう、以下同じ)を含む場合がある。かかる場合には、ファセット12の面自体が三次元形状となる。なお、{10−10}面とは、(10−10)面と結晶学的に等価な面の総称である。
【0021】
また、本実施形態においては、上記ピット10pが少なくとも1つ存在している状態でAlxGa1-xN結晶10を成長させる。このとき、たとえば、図1および図2の三角形面PFAからなるファセット12においては、三角形面PFAに実質的に垂直な方向(図1における結晶成長方向12c)に結晶成長するとともに、結晶成長方向と実質的に平行な方向に転位も伝搬する。ここで、実質的に垂直な方向または平行な方向とは、実際の結晶において垂直または平行と認識される方向をいい、数学的な垂直または平行に限定されない。
【0022】
ここで、図2を参照して、三角形面PFAからなるファセット12(以下、PFAファセットという)における結晶成長方向12cおよび転位伝搬方向12dは、主成長平面に垂直な方向から見ると、いずれもピット10pの底部Pの方向に向かう。同様にして、三角形面PFAからなるファセット12に隣接する三角形面PABからなるファセット12(以下、PABファセットという)における結晶成長方向および転位伝搬方向もピット10pの底部Pの方向に向かう。
【0023】
ここで、PFAファセットとPABファセットとの境界近くの転位は、境界線AP上に集中する。境界線AP上において、互いにバーガーズベクトルの符号が反対で大きさが等しい転位は相互作用により消滅する。残った転位は、境界線AP上をピット10pの底部Pの方向に伝搬する。このようにして、ピット10pが形成されている領域内の転位は、各々のファセット12の境界線AP、BP、CP、DP、EPおよびFPを介してまたは直接にピット10pの底部Pに集中する。ここで、ピット10pの底部Pにおいて、互いにバーガーズベクトルの符号が反対で大きさが等しい転位は相互作用により消滅する。残った転位は、ピット10pの底部Pに残存する。
【0024】
上記図2による説明は、主成長平面11に垂直な方向から見たものであり、実際には、各々のファセット12は、主成長平面11に実質的に垂直な方向(図1における主成長平面の結晶成長方向11c)にも成長していくため、ピット10pが形成されている領域内の転位は、図1および図3を参照して、各々のファセット12の境界線のそれぞれを含み主成長平面11に対して実質的に垂直なそれぞれの面(この面を、面状転位集中部10qという)、およびピット10pの底部Pから主成長平面11に対して実質的に垂直方向に伸びる線(この線を、線状転位集中部10rという)上に転位が集中し、かかる部分で、互いにバーガーズベクトルの符号が反対で大きさが等しい転位は相互作用により消滅するため、AlxGa1-xN結晶10の転位を低減することができる。
【0025】
本実施形態においては、線状転位集中部10rの密度は、105cm-2以下であることが好ましく、104cm-2以下であることがより好ましく、103cm-2以下であることがさらに好ましい。線状転位集中部10rの密度が105cm-2より高いと、AlxGa1-xN結晶10の転位の低減効果が低くなる。
【0026】
本実施形態においては、上記ピット10pを形成するために、結晶成長の雰囲気中に不純物を含めることが好ましい。結晶成長の雰囲気中に不純物を含めることにより、主成長平面11となるC面以外にも安定な結晶成長面として複数のファセット12を形成することができ、かかる複数のファセット12を有するピット10pを形成することができる。
【0027】
本実施形態において、ピット10pが消滅することなくAlxGa1-xN結晶10が成長するのは、ピット10pの開口部が広がろうとするからである。図1および図3を参照して、主成長平面11に実質的に垂直な方向(主成長平面11の結晶成長方向11c)の結晶成長速度をV、主成長平面11とファセット12とのなす角度をθとすると、ファセットの結晶成長速度VFがVsinθであるとき、ピット10pの大きさは不変で、主成長平面11に実質的に垂直な方向にVの速度で成長することになる。
【0028】
結晶成長の雰囲気中に不純物を含める方法には、特に制限はなく、結晶を成長させる容器内に、キャリアガスとともに不純物含有ガスを導入する方法、または、結晶の原料とともに不純物を配置する方法などが好ましく用いられる。
【0029】
ここで、不純物としては、結晶成長の際の安定な結晶成長面を変化させる観点から、IVb族元素の少なくとも1つが含まれていることが好ましい。特に、不純物としては、C(炭素)が含まれていることが好ましい。不純物としてのCは、Cを含むガス(たとえば、CO2ガスなどの酸化物ガス、CCl4ガスなどの塩化物ガス、HCNガスなどの窒化物ガス、CH4ガスなどの水素化物ガスなど)をキャリアガスとともに結晶成長容器内に導入する方法、または、Cを含む不純物(たとえば、固体カーボンなどの単体、Al43などの金属炭化物など)を結晶原料とともに結晶成長容器内に配置する方法などにより、結晶成長の雰囲気中に含めることができる。ここで、結晶成長の雰囲気中の不純物の濃度は、Cを含むガスで導入する場合はガス中の流量比により、原料中に不純物を含ませる場合はその質量比により示される。
【0030】
また、結晶成長の雰囲気中に含める不純物の濃度は、少なくとも結晶成長の前期においては、1ppm以上15質量%以下であることが好ましい。ここで、結晶成長の前期とは、その結晶成長の開始時から結晶成長時間の前半の経過時までの期間をいう。不純物の濃度が、1ppmより低いと上記の目的とするピットが形成されにくいか、あるいはピットを維持しながら厚く結晶成長させることが難しく、15質量%より高いと結晶成長が阻害される場合がある。かかる観点から、結晶成長の雰囲気中に含める不純物の濃度は、100ppm以上3質量%以下であることが好ましい。ここで、結晶成長の雰囲気中の不純物の濃度は、キャリアガスとともに不純物含有ガスを導入する場合はキャリアガスに対する不純物含有ガスの流量比により、原料中に不純物を配置する場合は原料中の不純物含有量(質量%)により測定することができる。
【0031】
さらに、ピット10pを容易に成形するために、結晶成長の雰囲気中の不純物の制御の他、結晶成長温度の制御、およびこれらの経時的な制御を行なうことが好ましい。結晶成長温度は、気相法の種類によっても異なるが、昇華法の場合は1600℃以上2500℃以下が好ましい。1600℃より低いと結晶品質が低下したり結晶成長速度が低くなり、2500℃より高いと安定した結晶成長が難しくなる。
【0032】
また、本実施形態の成長方法は、異種基板上にAlxGa1-xN結晶を成長させる際の格子定数のミスマッチなどに起因した結晶中の内部応力やクラックを低減する効果がある。特に、結晶成長後5mmの厚さまでにおける結晶厚さxと転位密度yの関係を示す式(1)
y=A・exp(k・x) (1)
において傾き係数kが−20<k<−4であるとき、より好ましく転位密度の低減とクラックおよび内部応力の低減とが行なわれた。ここで、式(1)においてAは切片係数を示す。
【0033】
本実施形態のAlxGa1-xN結晶の成長方法は、本発明の目的に反しない限り、気相法であれば、昇華法、HVPE法など各種の気相法に適用できる。AlxGa1-xN結晶(0<x≦1)は、高温領域で良好な結晶性が得られやすいと考えられることから、昇華法が好ましい。
【0034】
ここで、昇華法とは、図5を参照して、AlyGa1-yN粉末(0<y≦1)などのAlyGa1-yN原料1を昇華または気化させた後、下地基板9などの上に再度固化させて、AlxGa1-xN結晶10を成長させる方法をいう。昇華法による結晶成長においては、たとえば、図5に示すような高周波加熱方式の縦型の昇華炉50を用いる。この縦型の昇華炉50における反応容器51の中央部には、結晶成長容器として排気口52cを有するWC(炭化タングステン)製の坩堝52(この坩堝52は坩堝本体52aおよび坩堝蓋52bにより構成されている)が設けられ、坩堝52の周りに坩堝の内部から外部への通気を確保するように加熱体54が設けられている。また、反応容器51の外側中央部には、坩堝52を加熱する加熱体54を加熱するための高周波加熱コイル55が設けられている。さらに、反応容器51の端部には、反応容器51の坩堝52の外側にN2ガスを流すためのN2ガス導入口51aおよびN2ガス排気口51cと、坩堝52の下面および上面の温度を測定するための放射温度計56が設けられている。
【0035】
図4を参照して、上記縦型の昇華炉50を用いて、たとえば、以下のようにしてAlxGa1-xN結晶10を作製することができる。坩堝52の上部に下地基板9を、坩堝52の下部にAlyGa1-yN粉末などのAlyGa1-yN原料1を収納し、反応容器51内にN2ガスを流しながら、高周波加熱コイル55を用いて坩堝52内の温度を上昇させて、坩堝52のAlyGa1-yN原料1側の温度を、下地基板9側の温度よりも高く保持することによって、AlyGa1-yN原料1からAlxGa1-xNを昇華させて、坩堝52の上部に配置された下地基板9上で、AlxGa1-xNを再度固化させてAlxGa1-xN結晶10を成長させる。
【0036】
ここで、AlxGa1-xN結晶10の成長中は、結晶成長容器としての坩堝52のAlyGa1-yN原料1側の温度は1600℃〜2400℃程度とし、坩堝52の上部の下地基板9側の温度をAlyGa1-yN原料1側の温度より10℃〜300℃程度低くすることにより、AlxGa1-xN結晶10が効率よく得られる。ここで、結晶成長中に、反応容器51内の坩堝52の外側に、キャリアガスとして、ガス分圧が101.3hPa〜5000hPa程度、流量5sccm〜5000sccm程度(1sccmとは、標準状態(1013hPa、0℃)におけるガスの1分間当たり1cm3の流量をいう)のN2ガスとともに、不純物含有ガスとして、ガス分圧が50hPa〜2500hPa程度、流量0.005sccm〜250sccm程度の不純物含有ガスを流すことにより、結晶成長容器である坩堝52内の結晶成長の雰囲気中に1ppm〜5質量%程度の不純物を導入することができる。また、坩堝52内への不純物の導入は、不純物含有ガスを導入する替わりに、坩堝52内に、AlyGa1-yN原料1とともに不純物含有物を配置してもよい。
【0037】
図3を参照して、本実施形態のAlxGa1-xN結晶の成長方法は、結晶成長後において、主成長平面11の総面積に対するピット10pの開口面10sの総面積の割合が30%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。ピット10pの開口面10sの総面積の割合が大きくなるほど、主成長平面11におけるピット形成領域が大きくなり、より大きな領域においてAlxGa1-xN結晶の転位を低減することができる。主成長平面11の総面積に対するピット10pの開口面10sの総面積の割合が30%以上とすることにより、AlxGa1-xN結晶の転位を低減効果が高くなり、より結晶性の高いAlxGa1-xN結晶が得られる。
【0038】
ここで、結晶成長後の主成長平面11の総面積に対するピット10pの開口面10sの総面積の割合が30%以上となるようにAlxGa1-xN結晶10を成長させるための結晶成長条件には、特に制限は無いが、不純物の濃度を1ppm以上3質量%以下、基板温度を1600℃以上2000℃未満とすることが好ましい。
【0039】
図4を参照して、本実施形態のAlxGa1-xN結晶の成長方法において、上記の結晶成長後における主成長平面11の総面積に対するピットの開口面10sの総面積の割合が30%以上であるAlxGa1-xN結晶10の結晶表面上に、第2のAlxGa1-xN結晶20を成長させて、結晶成長後における第2のAlxGa1-xN結晶20の主成長平面21の総面積に対するピット開口面20sの総面積の割合を30%未満とすることもできる。ここで、図4においては、AlxGa1-xN結晶10の主成長平面11には複数のファセット12を有するピット10pが形成され、第2のAlxGa1-xN結晶20の主成長平面21には複数のファセット22を有するピット20pが形成されている。かかる成長方法により、AlxGa1-xN結晶10の少なくとも一部のピット10pが縮小および/または消滅するため、線状転位集中部が減少して、低転位密度でかつ転位の集中が緩和された第2のAlxGa1-xN結晶20が得られる。
【0040】
ここで、結晶成長後における第2のAlxGa1-xN結晶20の主成長平面11の総面積に対するピット20pの開口面20sの総面積の割合が30%未満となるように第2のAlxGa1-xN結晶20を成長させるための結晶成長条件には、特に制限は無いが、不純物の濃度を15質量%以下、基板温度を2000℃以上2500℃未満とすることが好ましい。
【0041】
(実施形態2)
本実施形態にかかるAlxGa1-xN結晶基板(0<x≦1)は、図3および図4を参照して、実施形態1の成長方法で得られたAlxGa1-xN結晶10,20の表面13,23を加工することにより得られるものであり、平坦な主面31を有する。かかるAlxGa1-xN結晶基板30は、実施形態1の成長方法により得られた転位が著しく低減された結晶性の高いAlxGa1-xN結晶10,20から得られるものであり、半導体デバイスの基板として好ましく用いることができる。
【0042】
ここで、AlxGa1-xN結晶10,20の表面13,23を加工するとは、得られたAlxGa1-xN結晶10,20の表面313,23を切削、研削および/または研磨することにより平坦な主面31とすることをいう。ここで、切削、研削および研磨は、公知の方法を用いることができる。
【0043】
また、本実施形態にかかるAlxGa1-xN結晶基板(0<x≦1)は、図6を参照して、線状転位集中部30rを中心とする高転位密度部30hと、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部30kとを含み、主面31における低転位密度部30kの面積は、主面31の総面積の30%以上である。低転位密度部30kの転位密度を2×106cm-2未満、好ましくは2×105cm-2未満とすることにより、半導体デバイスの基板としてより好ましく用いることができる。また、主面31における低転位密度部30kの面積を主面31の総面積の30%以上、好ましくは主面31の総面積の50%以上とすることにより、半導体デバイスの基板としてより好ましく用いることができる。ここで、AlxGa1-xN結晶基板の転位密度は、エッチピット法、CL(カソードルミネッセンス)法、蛍光顕微鏡観察法などによって測定することができる。
【0044】
本実施形態のAlxGa1-xN結晶基板30においては、転位密度の変化が連続的であり、高転位密度部30hと低転位密度部30kとの境界は必ずしも明らかではない。このため、主面の総面積に対する2×106cm-2未満の低転位密度部30kの面積の割合は、主面上の等間隔に配置される複数の測定区域における転位密度を測定し、転位密度が2×106cm-2未満となる測定区域の数を、主面上の総測定区域数で除することにより算出される。
【0045】
また、本実施形態にかかるAlxGa1-xN結晶基板(0<x≦1)は、図6を参照して、線状転位集中部30rを中心とする高転位密度部30hと、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部30kとを含み、高転位密度部30hは低転位密度部30kの第1部分30kaおよび第2部分30kbに挟まれ、第1部分30kaの結晶方位と第2部分30kbの結晶方位の最大のずれ角が50arcsec以下である。本実施形態のAlxGa1-xN結晶基板30は、線状転位集中部30rを中心とする高転位密度部30hが存在するにもかかわらず、高転位密度部30hを挟む第1部分30kaと第2部分30kbとの間の結晶方位の最大ずれ角が50srcsecと小さいため、半導体デバイスの基板としてより好ましく用いることができる。
【0046】
ここで、高転位密度部30hを挟む第1部分30kaと第2部分30kbとの間の結晶方位の最大ずれ角は、たとえば以下のようにして求められる。X線回折により、第1部分および第2部分それぞれの結晶方位(たとえば、a1軸、a2軸、a3軸およびc軸の方向)が求められる。このとき、第1部分と第2部分との間で結晶方位のずれ角が最も大きいものを最大ずれ角とする。
【実施例】
【0047】
(実施例1)
図5を参照して、WC製の坩堝52の上部に下地基板9として1インチ(2.54cm)径のSiC基板を配置し、下部にAlyGa1-yN原料1としてAlN粉末を配置した。次いで、反応容器51に、ガス分圧900hPa、流量200sccmのN2ガスを流しながら、坩堝52のAlyGa1-yN原料1(AlN粉末)側の温度を2100℃、下地基板9(SiC基板)側の温度が2000℃になるように高周波加熱コイル55を用いて坩堝52を加熱して、30時間AlN結晶を成長させた。反応容器51内の坩堝52に、不純物含有ガスとしてCO2ガスを、結晶成長開始から1時間後までは5sccm、1時間後から20時間後までにかけて流量を徐々に減少させて、20時間後以降は0.05sccm流した。
【0048】
こうして成長させたAlN結晶は、1インチ径(2.54cm径)×厚さ10mmと大型であり、XRD(X線回折、以下同じ)法により単結晶であることが確認された。このAlN単結晶の主成長平面には、複数の六角錘状のピットが形成されていた。これを、主成長平面に垂直な方向から実体顕微鏡を用いて写真撮影し、その写真から算出した主成長平面の総面積に対するピットの開口面の総面積の割合は90%であった。また、上記写真から算出されたピット底部Pの線状転位集中部の面密度は30cm-2であった。
【0049】
このAlN単結晶の表面を研磨により平坦な主面を形成した後、250℃のKOH融液中に浸漬してエッチングピットを形成した。主面上に等間隔に配置された20個の測定区域(100μm×100μm)についてその区域の転位密度を測定した。転位密度が2×106cm-2未満である測定区域は18個であった。こうして、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部の面積は主面の総面積の90%であった。また、平均の転位密度は、3×104cm-2と非常に低かった。また、低転位密度部において高転位密度部を挟んで互いに180°反対の位置にある第1部分と第2部分との結晶方位のずれ角をX線回折により測定したところ、各部分のc軸([0002]方向)間において最大のずれ角20arcsecであった。
【0050】
(比較例1)
坩堝52のAlyGa1-yN原料1(AlN粉末)側の温度を2100℃、下地基板9(SiC基板)側の温度が2000℃とし、反応容器51内の坩堝52に不純物含有ガスであるCO2ガスを流さなかったこと以外は、実施例1と同様にして、AlN結晶を成長させた。得られたAlN結晶は、1インチ径(2.54cm径)×厚さ5mmであり、XRD法により単結晶であることが確認された。
【0051】
このAlN単結晶の表面を研磨により平坦な主面を形成した後、250℃のKOH融液中に浸漬してエッチングピットを形成した。主面上に等間隔に配置された20個の測定区域(100μm×100μm)についてその区域の転位密度を測定した。転位密度が2×106cm-2未満である測定区域は1個であった。こうして、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部の面積は主面の総面積の5%であった。また、平均の転位密度は、5×108cm-2とであった。また、低転位密度部において高転位密度部を挟んで互いに180°反対の位置にある第1部分と第2部分との結晶方位のずれ角をX線回折により測定したところ、各部分のc軸([0002]方向)間において最大のずれ角150arcsecであった。
【0052】
(実施例2)
図5を参照して、WC製の坩堝52の上部に下地基板9として実施例1で得られた1インチ径(2.54cm径)のAlN結晶を研磨後配置し、下部にAlyGa1-yN原料1としてAlN粉末を配置した。ここで、AlN結晶は、複数の六角錘状のピットが形成されている主成長面上に第2のAlN結晶が成長するように配置した。次いで、反応容器51に、ガス分圧2000hPa、流量200sccmのN2ガスを流しながら、坩堝52のAlyGa1-yN原料1(AlN粉末)側の温度を2100℃、下地基板9(AlN結晶)側の温度が2000℃になるように高周波加熱コイル55を用いて坩堝52を加熱して、15時間第2のAlN結晶を成長させた。反応容器51内の坩堝52に、不純物含有ガスとしてCO2ガスを、結晶成長開始から終了まで0.01sccm流した。
【0053】
こうして成長させた第2のAlN結晶は、1インチ径(2.54cm径)×厚さ3mmと大型であり、XRD法により単結晶であることが確認された。この第2のAlN単結晶の主成長平面にも、複数の六角錘状のピットが形成されていた。これを、主成長平面に垂直な方向から実体顕微鏡を用いて写真撮影し、その写真から算出した主成長平面の総面積に対するピットの開口面の総面積の割合は5%であった。また、上記写真から算出されたピット底部Pの線状転位集中部の面密度は1cm-2であった。
【0054】
また、この第2のAlN単結晶の表面を研磨により平坦な主面を形成した後、250℃のKOH融液中に浸漬してエッチングピットを形成した。主面上に等間隔に配置された20個の測定区域(100μm×100μm)についてその区域の転位密度を測定した。転位密度が2×106cm-2未満である測定区域は19個であった。こうして、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部の面積は主面の総面積の95%であった。また、平均の転位密度は、2×104cm-2と非常に低かった。また、低転位密度部において高転位密度部を挟んで互いに180°反対の位置にある第1部分と第2部分との結晶方位のずれ角をX線回折により測定したところ、各部分のc軸([0002]方向)間において最大のずれ角15arcsecであった。
【0055】
(実施例3)
図5を参照して、WC製の坩堝52の上部に下地基板9として1インチ(2.54cm)径のSiC基板を配置し、下部にAlyGa1-yN原料1としてAlN粉末とGaN粉末とを7:3のmol比で混合した状態で配置した。次いで、反応容器51に、ガス分圧900hPa、流量200sccmのN2ガスを流しながら、坩堝52のAlyGa1-yN原料1(AlN粉末およびGaN粉末)側の温度を2100℃、下地基板9(SiC基板)側の温度が2000℃になるように高周波加熱コイル55を用いて坩堝52を加熱して、30時間AlxGa1-xN結晶を成長させた。反応容器51内の坩堝52に、不純物含有ガスとしてCO2ガスを、結晶成長開始から1時間後までは3.5sccm、1時間後から20時間後までにかけて流量を徐々に減少させて、20時間後以降は0.035sccm流した。
【0056】
こうして成長させたAlxGa1-xN結晶は、1インチ径(2.54cm径)×厚さ7mmと大型であり、XRD法により単結晶であることが確認され、XPS(X線光電子分光、以下同じ)法により化学組成がAl0.8Ga0.2Nであることが確認された。このAl0.8Ga0.2N単結晶の主成長平面には、複数の六角錘状のピットが形成されていた。これを、主成長平面に垂直な方向から実体顕微鏡を用いて写真撮影し、その写真から算出した主成長平面の総面積に対するピットの開口面の総面積の割合は80%であった。また、上記写真から算出されたピット底部Pの線状転位集中部の面密度は200cm-2であった。
【0057】
このAl0.8Ga0.2N単結晶の表面を研磨により平坦な主面を形成した後、250℃のKOH融液中に浸漬してエッチングピットを形成した。主面上に等間隔に配置された20個の測定区域(100μm×100μm)についてその区域の転位密度を測定した。転位密度が2×106cm-2未満である測定区域は15個であった。こうして、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部の面積は主面の総面積の75%であった。また、平均の転位密度は、6×105cm-2と非常に低かった。また、低転位密度部において高転位密度部を挟んで互いに180°反対の位置にある第1部分と第2部分との結晶方位のずれ角をX線回折により測定したところ、各部分のc軸([0002]方向)間において最大のずれ角25arcsecであった。
【0058】
(比較例2)
坩堝52のAlyGa1-yN原料1(AlN粉末およびGaN粉末)側の温度を2100℃、下地基板9(SiC基板)側の温度が2000℃とし、反応容器51内の坩堝52に不純物含有ガスであるCO2ガスを流さなかったこと以外は、実施例2と同様にして、AlxGa1-xN結晶を成長させた。得られたAlN結晶は、1インチ径(2.54cm径)×厚さ3mmであり、XRD法により単結晶であることが確認され、XPS法により化学組成がAl0.8Ga0.2Nであることが確認された。
【0059】
このAl0.8Ga0.2N単結晶の表面を研磨により平坦な主面を形成した後、250℃のKOH融液中に浸漬してエッチングピットを形成した。主面上に等間隔に配置された20個の測定区域(100μm×100μm)についてその区域の転位密度を測定した。転位密度が2×106cm-2未満である測定区域は0個であった。こうして、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部の面積は主面の総面積の0%であった。また、平均の転位密度は、1×109cm-2であった。また、低転位密度部において高転位密度部を挟んで互いに180°反対の位置にある第1部分と第2部分との結晶方位のずれ角をX線回折により測定したところ、各部分のc軸([0002]方向)間において最大のずれ角2000arcsecであった。
【0060】
(実施例4)
図5を参照して、WC製の坩堝52の上部に下地基板9として実施例3で得られた1インチ径(2.54cm径)のAl0.8Ga0.2N結晶を配置し、下部にAlyGa1-yN原料1としてAlN粉末とGaN粉末とを7:3のmol比で混合した状態で配置した。ここで、Al0.8Ga0.2N結晶は、複数の六角錘状のピットが形成されている主成長面上に第2のAlxGa1-xN結晶が成長するように配置した。次いで、反応容器51に、ガス分圧2000hPa、流量200sccmのN2ガスを流しながら、坩堝52のAlyGa1-yN原料1(AlN粉末およびGaN粉末)側の温度を2200℃、下地基板9(Al0.8Ga0.2N結晶)側の温度が2100℃になるように高周波加熱コイル55を用いて坩堝52を加熱して、15時間第2のAlxGa1-xN結晶を成長させた。反応容器51内の坩堝52に、不純物含有ガスとしてCO2ガスを、結晶成長開始から終了まで0.01sccm流した。
【0061】
こうして成長させた第2のAlxGa1-xN結晶は、1インチ径(2.54cm径)×厚さ7mmと大型であり、XRD法により単結晶であることが確認され、XPS法により化学組成がAl0.8Ga0.2Nであることが確認された。このAl0.8Ga0.2N単結晶の主成長平面には、複数の六角錘状のピットが形成されていた。これを、主成長平面に垂直な方向から実体顕微鏡を用いて写真撮影し、その写真から算出した主成長平面の総面積に対するピットの開口面の総面積の割合は1%であった。また、上記写真から算出されたピット底部Pの線状転位集中部の面密度は0.5cm-2であった。
【0062】
また、この第2のAl0.8Ga0.2N単結晶の表面を研磨により平坦な主面を形成した後、250℃のKOH融液中に浸漬してエッチングピットを形成した。主面上に等間隔に配置された20個の測定区域(100μm×100μm)についてその区域の転位密度を測定した。転位密度が2×106cm-2未満である測定区域は18個であった。こうして、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部の面積は主面の総面積の90%であった。また、平均の転位密度は、4×105cm-2と非常に低かった。また、低転位密度部において高転位密度部を挟んで互いに180°反対の位置にある第1部分と第2部分との結晶方位のずれ角をX線回折により測定したところ、各部分のc軸([0002]方向)間において最大のずれ角20arcsecであった。
【0063】
比較例1と実施例1との対比および比較例2と実施例3との対比から明らかなように、気相法によるAlxGa1-xN結晶(0<x≦1)の成長方法において、結晶成長の際、AlxGa1-xN結晶の主成長平面に複数のファセットを有するピットを少なくとも1つ形成し、ピットが少なくとも1つ存在している状態でAlxGa1-xN結晶を成長させることにより、AlxGa1-xN結晶の転位を低減することができた。
【0064】
また、実施例1と実施例2との対比および実施例3と実施例4との対比から明らかなように、結晶成長後の主成長平面の総面積に対するピットの開口面の総面積の割合が30%以上となるようにAlxGa1-xN結晶を成長させ、このAlxGa1-xN結晶上に、結晶成長後の主成長平面の総面積に対するピット開口面の総面積の割合を30%未満となるように第2のAlxGa1-xN結晶を成長させることにより、AlxGa1-xN結晶に比べて転位密度が低く転位の集中が緩和された第2のAlxGa1-xN結晶が得られた。
【0065】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明でなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内のすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0066】
1 AlyGa1-yN原料、9 下地基板、10,20 AlxGa1-xN結晶、10p,20p ピット、10q 面状転位集中部、10r,20r,30r 線状転位集中部、10s,20s 開口面、11,21 主成長平面、11c,12c 結晶成長方向、12,22 ファセット、12d 転位伝搬方向、13 表面、30 AlxGa1-xN結晶基板、30h 高転位密度部、30k 低転位密度部、30ka 第1部分、30kb 第2部分、31 主面、50 昇華炉、51 反応容器、51a N2ガス導入口、51c N2ガス排気口、52 坩堝、52a 坩堝本体、52b 坩堝蓋、52c 排気口、54 加熱体、55 高周波加熱コイル、56 放射温度計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相法によるAlxGa1-xN結晶(0<x≦1)の成長方法で得られたAlxGa1-xN結晶の表面を加工することにより得られる平坦な主面を有するAlxGa1-xN結晶基板であって、
前記成長方法は、前記AlxGa1-xN結晶の結晶成長の際、その雰囲気中に不純物を含めることにより、前記AlxGa1-xN結晶の主成長平面に複数のファセットを有するピットを少なくとも1つ形成し、前記ピットが少なくとも1つ存在している状態で前記AlxGa1-xN結晶を成長させることにより、前記AlxGa1-xN結晶の転位を低減することを特徴とし、前記ピットの底部から前記主成長平面に対して実質的に垂直方向に伸びる線状転位集中部が存在し、前記線状転位集中部の密度が105cm-2以下であり、結晶成長後において前記主成長平面の総面積に対する前記ピットの開口面の総面積の割合が30%以上である、AlxGa1-xN結晶基板。
【請求項2】
前記成長方法は、前記結晶成長後における前記主成長平面の総面積に対する前記ピットの開口面の総面積の割合が30%以上である前記AlxGa1-xN結晶の結晶表面上に、第2のAlxGa1-xN結晶を成長させて、結晶成長後における前記第2のAlxGa1-xN結晶の主成長平面の総面積に対するピット開口面の総面積の割合を30%未満とする、請求項1に記載のAlxGa1-xN結晶基板。
【請求項3】
線状転位集中部を中心とする高転位密度部と、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部とを含み、主面における前記低転位密度部の面積は前記主面の総面積の30%以上であるAlxGa1-xN結晶基板。
【請求項4】
線状転位集中部を中心とする高転位密度部と、転位密度が2×106cm-2未満の低転位密度部とを含み、前記高転位密度部は前記低転位密度部の第1部分および第2部分に挟まれ、前記第1部分の結晶方位と前記第2部分の結晶方位の最大のずれ角が50arcsec以下であるAlxGa1-xN結晶基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−140328(P2012−140328A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−92147(P2012−92147)
【出願日】平成24年4月13日(2012.4.13)
【分割の表示】特願2007−130383(P2007−130383)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】