説明

DPPIV阻害剤と併用するSGLT2阻害剤を含む医薬組成物

本発明は、SGLT2阻害剤を含み、DPP IV阻害剤と併用する請求項1に記載の医薬組成物であって、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、及び、高血糖から選択される1つ以上の症状の治療又は予防に適した医薬組成物に関する。また、本発明は、代謝障害及び関連する症状の予防又は治療に適した方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下記のようなSGLT2阻害剤を含み、下記に規定されるようなDPP IV阻害剤と併用する医薬組成物であって、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、及び、高血糖から選択される1つ以上の症状の治療又は予防に適した医薬組成物に関する。
【0002】
さらに、本発明は、下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療する方法;
血糖コントロールを改善する方法、及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース、及び/又は、グリコシル化血色素HbA1cを減少する方法;
耐糖能異常、空腹時血糖異常、インスリン抵抗性から、及び/又は、メタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、又は、寛解する方法;
糖尿病の合併症からなる群から選択される症状、又は、障害を予防、その進行を緩徐、遅延、又は、治療する方法;
体重を減少する方法、又は、体重増加を抑える方法、又は、体重減少を促進する方法;
膵臓β細胞の変性を予防又は治療する方法、及び/又は、膵臓β細胞の機能を改善及び/又は回復する方法、及び/又は、膵臓インスリン分泌の機能を回復する方法;
肝脂肪の異常蓄積の原因となる疾患又は症状を予防、緩除、遅延、又は、治療する方法;
インスリン感受性を維持及び/又は改善する方法、及び/又は、高インスリン血症、及び/又は、インスリン抵抗性を治療又は予防する方法に関する。
【0003】
また、本発明は、上記又は下記のような方法における使用のための薬剤の製造のための下記に定義されるようなSGLT2阻害剤の使用に関する。
また、本発明は、上記又は下記のような方法における使用のための薬剤の製造のための下記に定義されるようなDPP IV阻害剤の使用に関する。
本発明は、上記又は下記のような方法における使用のための薬剤の製造のための本発明における医薬組成物の使用にも関する。
【背景技術】
【0004】
特許出願EP 1 329 456 A1、WO 03/099836、WO 2006/034489、EP 1783122 A1、及び、EP 1553094 A1には、新規の化合物が、ナトリウム依存性グルコース共輸送体SGLT2に対して阻害活性を有することが記載されている。従って、該化合物が、尿の糖排泄の誘導物質として、及び、糖尿病の治療における薬剤として、適していることが記載されている。
腎臓ろ過、及び、グルコースの再吸収は、いくつかあるメカニズムの中で、定常血漿グルコース濃度に寄与しており、従って、抗−糖尿病の対象として利用されうる。腎臓の上皮細胞を通ってろ過されたグルコースの再吸収は、細管における刷子縁膜に位置するナトリウム依存性グルコース共輸送体(SGLT)によって、ナトリウムグラジエントに従って生じる(1)。少なくとも3つのSGLT異性体が存在し、それらの発現パターン、及び、物理化学的特性は、異なる(2)。SGLT2は、もっぱら腎臓に発現する(3)。これに対して、SGLT1は、結腸、大腸、骨格筋、及び、心筋のような他の組織でも更に発現する(4;5)。SGLT3は、輸送機能が無い結腸の結腸細胞におけるグルコースセンサーであることが分かっている。遺伝子が、未だ特定されていない、関連する他のものも、更に腎臓フルコース再吸収に寄与しうる可能性がある(7,8,9)。正常血糖下で、グルコースは、腎臓でSGLTにより完全に再吸収されるが、一方で、腎臓の再吸収能は、10mMより高いグルコース濃度で飽和し、結果として糖尿(「糖尿病」)になる。この濃度の閾値は、SGLT2の阻害によって減少させることができる。SGLT阻害剤のフロリジンを用いた実験において、SGLTの阻害によって、糸球体ろ過液から血液へのグルコースの再吸収が部分的に阻害され、血中グルコース濃度が減少し、そして、糖尿が生じるという結果が明らかになっている(10;11)
【0005】
(1) Wright, E.M. (2001) Am. J. Renal Physiol. 280, F10-F18;
(2) Wright, E.M.ら (2004) Pflugers Arch. 447(5):510-8;
(3) You, G.ら (1995) J. Biol. Chem. 270 (49) 29365-29371;
(4) Pajor AM, Wright EM (1992) J Biol. Chem. 267(6):3557-3560;
(5) Zhou, L.ら (2003) J. Cell. Biochem. 90:339-346;
(6) Diez-Sampedro, A.ら (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100(20), 11753-11758;
(7) Tabatabai, N.M. (2003) Kidney Int. 64, 1320-1330;
(8) Curtis, R.A.J. (2003) US Patent Appl. 2003/0054453;
(9) Bruss,M. and Bonisch,H. (2001) Cloning and functional characterization of a new human sugar transporter in kidney (Genbank Acc. No. AJ305237);
(10) Rossetti, L.ら (987) J. Clin. Invest. 79, 1510-1515;
(11) Gouvea, W.L. (1989) Kidney Int. 35(4):1041-1048。
【0006】
化合物のダパグリフロジン、レモグリフロジン(レモグリフロジンエタボナートを含む)、及び、セルグリフロジン(セルグリフロジンエタボナートを含む)は、強力なSGLT2阻害剤として知られており、現在、2型糖尿病の治療のために開発中である。以下に該化合物、及び、SGLT2阻害剤として記載された更なる化合物の化学構造を表す。
【0007】
【化1】


この化合物は、例えば、WO 03/099836に記載されている。結晶形は、例えば、WO 2008/002824に記載されている。
【0008】
【化2】

及び、
【0009】
【化3】

該化合物は、例えば、EP 1354888 A1に記載されている。
【0010】
【化4】

及び、
【0011】
【化5】

該化合物は、EP 1 329 456 A1に記載され、セルグリフロジンエタボナートの結晶形は、EP 1 489 089 A1に記載されている。
【0012】
【化6】



該化合物は、WO 2006/034489に記載されている。
【0013】
【化7】

化合物の(4-(アズレン-2-イルメチル)-2-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-1-ヒドロキシ-ベンゼン)は、WO 2004/013118、及び、WO 2006/006496に記載されている。それらのコリン塩結晶は、WO 2007/007628に記載されている。
【0014】
【化8】

該化合物は、WO 2004/080990、及び、WO 2005/012326に記載されている。L-プロリンとの共結晶は、WO 2007/114475に記載されている。
【0015】
【化9】

式中、Rが、メトキシ、又は、トリフルオロメトキシを表す。該化合物及びそれらの製造方法は、WO 2004/007517、DE 102004063099、及び、WO 2006/072334に記載されている。
【0016】
【化10】

該化合物は、WO 2005/012326に記載されている。結晶性の半水化物は、WO 2008/069327に記載されている。
【0017】
【化11】

式中、Rが、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピル、又は、tert. ブチルを表す。該化合物は、WO 2007/140191、及び、WO 2008/013280に記載されている。
【0018】
DPP IV阻害剤は、2型の糖尿病を患う患者における血糖コントロールの治療又は改善のために開発中である薬剤の新規の種類に相当する。
例えば、DPP IV阻害剤、及び、それらの用途は、WO 2002/068420、WO 2004/018467、WO 2004/018468、WO 2004/018469、WO 2004/041820、WO 2004/046148、WO 2005/051950、WO 2005/082906、WO 2005/063750、WO 2005/085246、WO 2006/027204、WO 2006/029769、WO2007/014886; WO 2004/050658、WO 2004/111051、WO 2005/058901、WO 2005/097798; WO 2006/068163、WO 2007/071738、WO 2008/017670;WO 2007/054201、又は、WO 2007/128761に開示されている。
2型糖尿病は、次第に広まっている疾患であり、平均寿命を著しく低下させる合併症を高い頻度で生じさせる原因である。糖尿病関連の微小血管合併症のために、2型糖尿病が、現在、工業国における成人発症の失明、腎不全及び切断術の最も多い原因となっている。また、2型糖尿病の存在が、心臓血管疾患リスクの2〜5倍の増加に関連している。
【0019】
疾患に長期にわたって罹ると、2型の糖尿病患者のほとんどが、最終的に経口治療が効かなくなり、日常的な注射、及び、複数回の日常的なグルコース測定を必要とするインスリン依存性になる。
UKPDS(United Kingdom Prospective Diabetes Study)は、メトホルミン、スルホニルウレア、又は、インスリンを用いた集中治療が、限られた血糖コントロールの改善しかもたらさないことを示した(HbA1cで約0.9%の差異)。また、集中治療群にある患者でさえ、血糖コントロールが徐々に大きく悪化し、このことは、β細胞機能の低下に原因がある。重要なことには、集中治療は、大血管合併症、すなわち、心臓血管系イベントにおける有意な減少に関係しない。
従って、血糖コントロールに関して、疾患修飾性特性に関して、そして、心臓血管の疾病率、及び、死亡率の低下に関して良好な効果を有し、同時に、改善された安全性プロフィールを示す方法、薬剤、及び、医薬組成物に対して満たされていない医薬的ニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
発明の課題
本発明の課題は、代謝障害、特に2型糖尿病を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療するための医薬組成物及び方法を提供することである。
本発明の更なる課題は、それを必要とする患者における、血糖コントロールを改善するための医薬組成物及び方法を提供することである。
本発明の別の課題は、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性、及び/又は、メタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、又は、遅延するための医薬組成物及び方法を提供することである。
また、本発明の別の課題は、糖尿病の合併症からなる群から選択される症状、又は、障害を予防、その進行を緩徐、遅延、又は、治療するための医薬組成物及び方法を提供することである。
本発明の更なる課題は、体重の減少、又は、体重増加の抑制を必要とする患者における体重を減少するための、又は、体重増加を抑えるための医薬組成物を提供することである。
本発明の別の課題は、代謝障害、特に、糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、及び/又は、高血糖の治療に高い効果を有し、良いから非常に良い、薬理学的特性及び/又は、薬物速度論的特性、及び/又は、物理化学的特性を有する新規の医薬組成物を提供することである。
本発明の更なる課題は、上記及び下記のような記載、及び、実施例によって当業者にとって明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
発明の概要
本発明の範囲において、驚いたことに、糖尿病を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療するために、特に、患者における血糖コントロールを改善することにおいて、下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を含む医薬組成物が、下記に規定されるようなDPP IV阻害剤と有利に併用されうることが分かった。このことは、2型糖尿病、過体重、肥満、糖尿病の合併症、及び、似たような病態を治療及び予防することにおいて、新しい治療法の可能性を切り開く。
従って、第一の局面において、本発明は、以下からなる群から選択されるSGLT2阻害剤を含む医薬組成物であって、以下の化学式(I)〜(IV)のDPP IV阻害剤のいずれか、又は、その医薬的に許容可能な塩と併用する医薬組成物を提供する:
(1)ダパグリフロジン;
(2)レモグリフロジン、又は、レモグリフロジン エタボナート;
(3)セルグリフロジン、又は、セルグリフロジン エタボナート;
(4)1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(4-エチル-ベンジル)-ベンゼン;
(5)(1S)-1,5-アンヒドロ-1-[5-(アズレン-2-イルメチル)-2-ヒドロキシフェニル]-D-グルシトール;
(6)(1S)-1,5-アンヒドロ-1-[3-(1-ベンゾチエン-2-イルメチル)-4-フルオロフェニル]-D-グルシトール;
(7)化学式(7-1)のチオフェン誘導体:
【0022】
【化12】

(式中、Rが、メトキシ又はトリフルオロメトキシを表す);
(8)1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン;
(9)化学式(9-1)のスピロケタール誘導体:
【0023】
【化13】

(式中、Rがメトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピル、又は、tert.ブチルを表す);
及び、これらの医薬的に許容可能な塩、水和物、及び、溶媒和物。
【0024】
【化14】

【0025】
【化15】

【0026】
【化16】

【0027】
【化17】

式中R1が、([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル、(キナゾリン-2-イル)メチル、(キノキサリン-6-イル)メチル、(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル、2-シアノ-ベンジル、(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル、(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル、(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル、又は、(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチルを表し、R2が、3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル、(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ、又は、(2-(S)-アミノ-プロピル)-メチルアミノを表す。)
【0028】
本発明の他の局面において、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満、及び、メタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療する方法が提供される。
本発明の他の局面において、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、血糖コントロールを改善する方法、及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース、及び/又は、グリコシル化血色素HbA1cを減少する方法が提供される。
本発明の医薬組成物は、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性、及び/又は、メタボリックシンドロームに関連する疾患、又は、症状に関して、有益な疾患修飾性特性も有しうる。
【0029】
本発明の別の局面において、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性から、及び/又は、メタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、又は、寛解する方法が提供される。
本発明の医薬組成物の使用によって、血糖コントロールの改善を必要とする患者において、血糖コントロールを改善することができるので、また、増加した血中グルコースレベルに関連するか、又は、それによって引き起こされる症状及び/又は疾患を治療することもできる。
本発明の別の局面において、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、白内障、及び、微小血管疾患、及び、大血管疾患、例えば、腎症、網膜症、虚血性神経症、組織虚血、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、及び、末梢動脈閉塞性疾患のような糖尿病の合併症からなる群から選択される症状、又は、障害を予防、その進行を緩徐、遅延、又は、治療する方法が提供される。用語「組織虚血」は、糖尿病性大血管障害、糖尿病性微小血管障害、創傷治癒障害、及び、糖尿病性腫瘍を、特に含む。
本発明の医薬組成物の投与により、SGLT2阻害活性に起因して、過度のレベルの血中グルコースが、脂肪のような不溶性の貯蔵型に転換されず、患者の尿を通じて排泄される。従って、体重増加が起こらず、さらに結果として体重減少が起こる。
【0030】
本発明の他の局面において、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、体重を減少する、又は、体重増加を抑える、又は、体重減少を促進する方法が提供される。
本発明の医薬組成物におけるSGLT2阻害剤の薬理学的効果は、インスリンと無関係である。従って、膵臓β細胞に更に負荷を与えることなく、血糖コントロールの改善が可能である。本発明の医薬組成物の投与によって、β細胞変性、及び、β細胞機能の衰退、例えば、膵臓β細胞のアポトーシス又はネクローシスを遅延、又は、予防することができる。更に、膵臓細胞の機能を、改善又は回復することができ、膵臓β細胞の数を増加させ、かつ、該細胞を大きくすることができる。高血糖で妨げられる膵臓β細胞の分化状態及び過形成は、本発明の医薬組成物で治療することで、正常化できることは明らかである。
本発明の別の局面において、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、膵臓β細胞の変性、及び/又は、膵臓β細胞の機能の衰退を予防、緩除、遅延、又は、治療する方法、及び/又は、膵臓β細胞の機能を改善及び/又は回復する、及び/又は、膵臓インスリン分泌の機能を回復する方法が提供される。
【0031】
本発明の併用投与又は医薬組成物の投与によって、肝脂肪の異常蓄積を減少するか、又は、阻害することができる。従って、本発明の別の局面において、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、肝脂肪の異常蓄積の原因となる疾患又は症状を予防、緩除、遅延、又は、治療する方法が提供される。肝脂肪の異常蓄積の原因となる疾患又は症状は、一般の脂肪肝、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、過栄養−誘導性脂肪肝、糖尿病性脂肪肝、アルコール誘導性脂肪肝、及び、毒性脂肪肝からなる群から、特に、選択される。
これらの結果として、本発明の他の局面は、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、それを必要とする患者における、インスリン感受性を維持及び/又は改善する方法、及び/又は、高インスリン血症、及び/又は、インスリン抵抗性を治療又は予防する方法を提供する。
【0032】
本発明の別の局面に従うと、
SGLT2阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者において、
1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満、及び、メタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療するための;又は、
血糖コントロールを改善するための、及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース、及び/又は、グリコシル化血色素HbA1cを減少するための;又は、
耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性から、及び/又は、メタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、又は、寛解するための;又は、
白内障、及び、微小血管疾患、及び、大血管疾患、例えば、腎症、網膜症、虚血性神経症、組織虚血、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、及び、末梢動脈閉塞性疾患のような糖尿病の合併症からなる群から選択される症状、又は、障害を予防、その進行を緩徐、遅延、又は、治療するための;又は、
体重を減少するための、又は、体重増加を抑えるための、又は、体重減少を促進するための;又は、
膵臓β細胞の変性、及び/又は、膵臓β細胞の機能の衰退を予防、緩除、遅延、又は、治療するための、及び/又は、膵臓β細胞の機能を改善及び/又は回復するための、及び/又は、膵臓インスリン分泌の機能を回復するための;又は、
肝脂肪の異常蓄積の原因となる疾患又は症状を予防、緩除、遅延、又は、治療するための;又は、
インスリン感受性を維持及び/又は改善するための、及び/又は、高インスリン血症、及び/又は、インスリン抵抗性を治療又は予防するための;
薬剤の製造のための上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤の使用が提供される。
【0033】
本発明の別の局面に従うと、
DPP IV阻害剤を、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者において、
1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満、及び、メタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療するための;又は、
血糖コントロールを改善するための、及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース、及び/又は、グリコシル化血色素HbA1cを減少するための;又は、
耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性から、及び/又は、メタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、又は、寛解するための;又は、
白内障、及び、微小血管疾患、及び、大血管疾患、例えば、腎症、網膜症、虚血性神経症、組織虚血、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、及び、末梢動脈閉塞性疾患のような糖尿病の合併症からなる群から選択される症状、又は、障害を予防、その進行を緩徐、遅延、又は、治療するための;又は、
体重を減少するための、又は、体重増加を抑えるための、又は、体重減少を促進するための;又は、
膵臓β細胞の変性、及び/又は、膵臓β細胞の機能の衰退を予防、緩除、遅延、又は、治療するための、及び/又は、膵臓β細胞の機能を改善及び/又は回復するための、及び/又は、膵臓インスリン分泌の機能を回復するための;又は、
肝脂肪の異常蓄積の原因となる疾患又は症状を予防、緩除、遅延、又は、治療するための;又は、
インスリン感受性を維持及び/又は改善するための、及び/又は、高インスリン血症、及び/又は、インスリン抵抗性を治療又は予防するための;
薬剤の製造のための上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤の使用が提供される。
本発明の他の局面において、上記及び下記のような治療方法及び予防方法のための薬剤の製造のための本発明における医薬組成物の使用が提供される。
【0034】
[定義]
本発明の医薬組成物における用語「活性成分」は、本発明のSGLT2阻害剤及び/又はDPP IV阻害剤を意味する。
ヒト患者における用語「体格指数(body mass index)」又は「BMI」は、体重(キログラム)を身長(メートル)の二乗で除したものとして定義される。BMIの単位は、kg/m2である。
用語「過体重」は、個体のBMIが、25kg/m2以上かつ30kg/m2未満である状態として定義される。用語「過体重」と「前肥満(pre-obese)」とは、同じ意味で用いられる。
用語「肥満」は、個体のBMIが、30kg/m2以上である状態として定義される。WHOの定義に従って用語「肥満」を以下のように分類しうる:用語「クラスI肥満」は、BMIが、30kg/m2以上であるが、35kg/m2未満の状態であり;用語「クラスII肥満」は、BMIが、35kg/m2以上であるが、40kg/m2未満の状態であり;用語「クラスIII肥満」は、BMIが、40kg/m2以上の状態である。
用語「内臓肥満」は、測定されたウェスト対ヒップ比が、男性で1.0以上、女性で0.8以上である状態として定義される。これは、インスリン抵抗性の危険性、及び、前糖尿病の発症を明示する。
用語「腹部肥満」は、ウェスト周りが、男性で102cm(40インチ)超過、女性で94cm(35インチ)超過の状態として、通常、定義される。日本の民族性又は日本の患者に関しては、腹部肥満は、ウェスト周りが、男性で85cm以上、女性で90cm以上の状態として定義されうる(例えば、日本国のメタボリックシンドローム診断調査委員会参照)。
【0035】
用語「正常血糖」は、被検体の空腹時血中グルコース濃度が、正常範囲内、つまり70mg/dL(3.89mmol/L)より高く、110mg/dL(6.11mmol/L)より低い状態として定義される。用語「空腹時」は、医療用語として通常の意味を有する。
用語「高血糖」は、被検体の空腹時血中グルコース濃度が、正常範囲より高い、つまり110mg/dL(6.11mmol/L)より高い状態として定義される。用語「空腹時」は医療用語として通常の意味を有する。
用語「低血糖」は、被検体の血中グルコース濃度が、正常範囲の60〜115mg/dL(3.3〜6.3mmol/L)より低い状態として定義される。
用語「食後高血糖」は、被検体の食2時間後の血中グルコース濃度又は血清グルコース濃度が、200mg/dL(11.11mmol/L)より高い状態として定義される。
【0036】
用語「空腹時血糖異常」又は「IFG」は、被検体の空腹時血中グルコース濃度又は空腹時血清グルコース濃度が、100〜125mg/dL(すなわち5.6〜6.9mmol/l)の範囲内、特に、110mg/dLより高く、126mg/dL(7.00mmol/L)未満である状態として定義される。「正常な空腹時グルコース」を保つ被検体の空腹時グルコース濃度は、100mg/dlより低く、すなわち、5.6mmol/lより低い。
用語「耐糖能異常」又は「IGT」は、被検体の食2時間後の血中グルコース濃度又は血清グルコース濃度が、140mg/dl(7.78mmol/L)より高く、200mg/dL(11.11mmol/L)より低い状態として定義される。異常な耐糖能、すなわち、食2時間後の血中グルコース濃度又は血清グルコース濃度は、絶食後の75gのグルコースの摂取2時間後において、血漿1dL当たりmgのグルコースの血糖レベルとして測定されうる。「正常な耐糖能」を保つ被検体の食2時間後の血中グルコース濃度又は血漿グルコース濃度は、140mg/dl(7.78mmol)より小さい。
【0037】
用語「高インスリン血症」は、インスリン抵抗性の被検体(正常血糖を有するか、又は、正常血糖値を有さない)の空腹時又は食後の血清若しくは血漿中インスリン濃度が、正常なウェスト対ヒップ比が1.0未満(男性)又は0.8未満(女性)であるインスリン抵抗性でない正常の痩せた個体より高い状態として定義される。
用語「インスリン-増感」、「インスリン抵抗性-改善」又は「インスリン抵抗性-低減」は同義であり、同じ意味で用いられる。
用語「インスリン抵抗性」は、正常血糖状態を維持するために、グルコース負荷に対する正常応答よりも過度な循環インスリンレベルを必要とする状態として定義される(Ford ES,ら JAMA. (2002) 287:356-9)。インスリン抵抗性の測定法は、正常血糖-高インスリン血症クランプテストである。グルコースに対するインスリンの比を、インスリン-糖混合注入法に従って測定する。グルコース吸収が、調査した背景人口の25パーセンタイル未満の場合、インスリン抵抗性であることが分かる(WHO定義)。いわゆる最小モデルは、クランプ試験より困難でなく、静脈内耐糖能試験中に、血中のインスリン濃度とグルコース濃度を固定時間間隔で測定し、これら測定値からインスリン抵抗性を計算する。この方法では、肝性インスリン抵抗性と末梢性インスリン抵抗性を区別できない。
【0038】
更に、インスリン抵抗性の信頼できる指標である「インスリン抵抗性に対するホメオスタシスモデル評価(homeostasis model assessment to insulin resistance)(HOMA-IR)」スコアを評価することによって、インスリン抵抗性、すなわちインスリン抵抗性の患者の療法に対する反応、インスリン感受性、及び、高インスリン血症を数量化することができる(Katsuki A,ら Diabetes Care 2001; 24: 362-5)。さらに、インスリン感受性のHOMA-指標(Matthewsら, Diabetologia 1985, 28: 412-19)、インスリンに対する完全なプロインスリンの比(Forstら, Diabetes 2003, 52(Suppl.1): A459)の決定法及び正常血糖クランプ試験を参照する。加えて、インスリン感受性の代わりとして用いることができる血漿アジポネクチンレベルを、モニターすることができる。ホメオスタシス評価モデル(HOMA)-IRスコアによるインスリン抵抗性の推定値は、下記式で計算される(Galvin P,ら Diabet Med 1992;9:921-8)。
HOMA-IR=[空腹時血清インスリン(μU/mL)]×[空腹時血漿グルコース(mmol/L/22.5)]
原則として、毎日の臨床実務ではインスリン抵抗性を評価するために、他のパラメーターを用いる。例えば、増加したトリグリセリドレベルは、インスリン抵抗性の存在と深く関係するので、患者のトリグリセリド濃度を使用することが好ましい。
IGT、又は、IFG、又は、2型糖尿病の発症の素因がある患者は、高インスリン血症で正常血糖を有する当該患者であり、定義ではインスリン抵抗性である。インスリン抵抗性の典型的な患者は、通常、過体重又は肥満である。インスリン抵抗性が検出される場合、これは前糖尿病の存在の特に強い指標である。従って、このようなヒトは、糖ホメオスタシスを維持するため、この病的兆候が生じていない健康なヒトの2〜3倍のインスリンを必要とするかもしれない。
【0039】
「膵臓β-細胞の機能」を調査するための方法は、インスリン感受性、高インスリン血症又はインスリン抵抗性に関する上記方法と同様である。例えば、β-細胞機能のHOMA-指標(Matthewsら, Diabetologia 1985, 28: 412-19)、インスリンに対する完全なプロインスリンの比(Forstら, Diabetes 2003, 52(Suppl.1): A459)、経口耐糖能試験又は耐食事能試験後のインスリン/C-ペプチド分泌を決定することによって、あるいは、高い頻度でサンプリングした静脈内耐糖能試験後に高血糖性クランプ試験及び/又は最小モデリングを採用することによって(Stumvollら, Eur J Clin Invest 2001, 31: 380-81)、β-細胞機能の改善を評価することができる。
用語「前糖尿病」は、個体が、2型糖尿病を発症しやすい状態である。前糖尿病は、耐糖能異常の定義を拡張して、空腹時血糖が、高い正常範囲(≧100mg/dL)内(J. B. Meigs,ら Diabetes 2003; 52:1475-1484)で、かつ、空腹時高インスリン血症(高い血漿インスリン濃度)である個体を包含する。前糖尿病を重大な健康の脅威として特定するための科学的及び医学的基準が、米国糖尿病協会と、糖尿病並びに消化疾患及び腎臓病の国立研究所によって共同で発行された表題「2型糖尿病の予防又は遅延」で見解報告書(Position Statement)に明示されている(Diabetes Care 2002; 25:742-749)。
【0040】
インスリン抵抗性であると思われる個体は、以下の性状を2以上有する当該個体である:1)過体重又は肥満、2)高血圧、3)高インスリン血症、4)IGT、又は、IFG、又は、2型糖尿病と診断された第一近親者が1人以上いる。これら個体のHOMA-IRスコアを計算することによって、インスリン抵抗性を確認できる。本発明の目的では、インスリン抵抗性は、個体のHOMA-IRスコアが、4.0より高いか、又は、個体のHOMA-IRスコアが、グルコース及びインスリンアッセイを行う研究室に定義される正常の上限を超える臨床状態として定義される。
用語「2型糖尿病」は、被検体の空腹時血中グルコース濃度又は血清グルコース濃度が、125mg/dL(6.94mmol/L)より高い状態として定義される。血糖値の測定は、日常的な医療分析の標準的な手順である。耐糖能試験を行うと、糖尿病の血糖レベルは、空の胃に75gのグルコースが摂取された2時間後において、血漿1dL当たり200mg(11.1mmol/l)のグルコースより高い。耐糖能試験では、絶食して10〜12時間後に、試験患者に75gのグルコースを経口投与し、グルコースを摂取直前と、グルコースを摂取して1及び2時間後とに、血糖レベルを記録する。健康な被検体では、グルコース摂取前の血糖レベルは、1dLの血漿当たり60〜110mgで、グルコース摂取1時間後で200mg/dL未満、グルコース摂取2時間後で140mg/dL未満である。2時間後の値が140〜200mg/dLであれば、これは耐糖性が異常であるとみなされる。
【0041】
用語「後期2型糖尿病」は、続発性薬物不全であり、インスリン療法適応、及び、例えば糖尿病性腎症、冠動脈心疾患(CHD)等の微小血管性及び大血管性合併症への進行がみられる患者を包含する。
用語「HbA1c」は、血色素B鎖の非酵素的糖化の産物を示す。この定量は当業者に周知である。糖尿病の治療のモニタリングでは、HbA1c値は特に重要な値である。その産生は本質的に血糖レベルと赤血球の寿命によって決まるので、HbA1cは、「血糖の記憶」という意味で、先行する4〜6週間の平均血糖レベルを反映する。集中糖尿病治療で、HbA1c値が一貫して良く調整されている(すなわち、該サンプル中、6.5%未満の総血色素)糖尿病患者は、糖尿病性微小血管疾患に対して有意に良く保護されている。例えばメトホルミンは、単独で1.0〜1.5%のオーダーの糖尿病患者におけるHbA1c値の平均値の改善できる。HbA1c値のこの減少は、すべての糖尿病患者で6.5%未満、好ましくは6%未満という所望の目標範囲を達成するには十分でない。
「X症候群」とも呼ばれる(代謝障害に関連して使用される場合)「メタボリックシンドローム」は、「代謝障害症候群」とも呼ばれ、インスリン抵抗性という基本的特徴を有する複合症候群である(Laaksonen DE,ら Am J Epidemiol 2002;156:1070-7)。ATP III/NCEPの指針(Executive Summary of the Third Report of the National Cholesterol Education Program (NCEP) Expert Panel on Detection, Evaluation, and Treatment of High Blood Cholesterol in Adults (Adult Treatment Panel III) JAMA: Journal of the American Medical Association (2001) 285:2486-2497)によれば、下記危険因子が3つ以上存在する場合、メタボリックシンドロームの診断が行われる:
【0042】
1.男性で102cm(40インチ)超過、女性で94cm(35インチ)超過のウェスト周り;又は日本民族性又は日本の患者については、男性で85cm以上、女性で90cm以上のウェスト周りと定義される腹部肥満;
2.トリグリセリド:≧150mg/dL
3.HDL-コレステロール<40mg/dL(男性で)
4.血圧≧130/85mmHg(SBP≧130又はDBP≧85)
5.空腹時血糖≧110mg/dL。
NCEP定義が、確証されている(Laaksonen DE,ら Am J Epidemiol. (2002) 156:1070-7)。医療分析の標準的方法で血液中のトリグリセリド及びHDLコレステロールを決定することもでき、例えばThomas L (Editor):“Labor und Diagnose”, TH-Books Verlagsgesellschaft mbH, Frankfurt/Main, 2000に記載されている。
【0043】
常用されている定義によれば、最高血圧(SBP)が値140mmHgを超え、かつ、最低血圧が値90mmHgを超えている場合、「高血圧」と診断される。患者が顕性の糖尿病を患っている場合、現在、最高血圧を130mmHg未満のレベルに低減し、最低血圧を80mmHg未満に下げることが推奨される。
用語「治療」及び「治療する」は、既に発症している上記症状、特に、顕性形態を有する患者の治療療法を含む。治療療法は、特異的な適応の兆候を明らかにするための対症療法、又は、兆候の症状を寛解又は部分的に寛解するための、又は、疾患の進行を止めるか、緩除にする原因治療であってもよい。従って、本発明の組成物及び方法は、例えば、長期にわたる治療療法として、また、慢性治療として利用することができる。
用語「予防的に治療する」及び「予防する」は、同じ意味で用いられ、上記の症状が、発症する危険性のある患者を治療し、該危険性を下げることも含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】経口耐糖能試験の結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
本発明の局面、特に医薬組成物、方法、及び、使用は、上記及び下記に定義されるようなSGLT2阻害剤に関連する。
本発明において、当然ながら、上記SGLT2阻害剤の定義は、それらの医薬的に許容可能な塩、それらの水和物、溶媒和物、及び多形相も含む。好適なSGLT2阻害剤は、ダパグリフロジン(WO 2008/002824に記載されたその結晶形も含む)であり、文献の全体を、参照によりここに組み入れる。他の好適なSGLT2阻害剤は、レモグリフロジン(レモグリフロジンエタボナートを含む)である。
本発明の局面、特に医薬組成物、方法、及び、使用は、上記及び下記に定義されるようなDPP IV阻害剤又はそれらのプロドラッグ、又は、それらの医薬的に許容可能な塩に関連する。
好適な、DPP IV阻害剤は、以下の化合物及びそれらの医薬的に許容可能な塩のいずれか、又は、全てである:
(A):1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2004/018468、実施例2(142)参照):
【0046】
【化18】


(B):1-[([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2004/018468、実施例2(252)参照):
【0047】
【化19】


(C):1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2004/018468、実施例2(80)参照):
【0048】
【化20】


(D):2-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-(ブト-2-イニル)-5-(4-メチル-キナゾリン-2-イルメチル)-3.5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-d]ピリダジン-4-オン (WO 2004/050658、実施例136参照):
【0049】
【化21】


(E):1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン (WO 2006/029769、実施例2(1)参照):
【0050】
【化22】


(F):1-[(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(30)参照):
【0051】
【化23】


(G):1-(2-シアノ-ベンジル)-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(39)参照):
【0052】
【化24】


(H):1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(S)-(2-アミノ-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン (WO 2006/029769、実施例2(4)参照):
【0053】
【化25】


(I):1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(52)参照):
【0054】
【化26】


(J):1-[(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(81)参照):
【0055】
【化27】


(K):1-[(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(82)参照):
【0056】
【化28】


(L):1-[(キノキサリン-6-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン (WO 2005/085246、実施例1(83)参照):
【0057】
【化29】


これらのDPP IV阻害剤は、構造的に類似するDPP IV阻害剤と区別される。なぜなら、それらは、他の医薬的な活性物質と併用した場合に、非常に優れた効能、及び、長時間持続効果を、好適な薬理学的特性、受容体選択性、及び、好適な副作用プロフィールと結びつけ、又は、予測しない治療の効果又は改善をもたらすためである。これらの調製物は、記載された文献に開示されている。
本発明において、当然ながら、上記DPP IV阻害剤の定義は、医薬的に許容可能な塩、並びに、それらの水和物、溶媒和物、及び、多形相も含む。
本発明における医薬組成物、方法、及び、使用は、最も好適には、表1から選択された併用に関連する。
【0058】
表1





【0059】
表1に記載された本発明の併用番号1〜108の中で、併用番号1、13、25、37、49、61、73、85、及び、97、特に、併用番号1及び13が、重要である。
本発明におけるSGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤の併用は、SGLT2阻害剤、又は、DPP IV阻害剤を用いた単剤治療と比較して、特に、後述する患者において、血糖コントロールを著しく改善する。患者における単剤治療で、特に、後述する患者において、特定の最高用量を超える薬剤の投与によって、血糖コントロールは、通常、更に著しく改善されるわけではない。また、最高用量で長期間治療をすることは、副作用が生じる可能性から望ましくない場合がある。従って、SGLT2阻害剤又はDPP IV阻害剤を用いた単剤治療によって、十分な血糖コントロールを、全ての患者で達成できるわけではない。このような患者において、糖尿病が進行しつづけうるし、糖尿病と関連する合併症、例えば、大血管合併症が生じうる。本発明における医薬組成物及び方法は、対応する単剤治療と比較して、より多くの患者で、HbAlc値を好適な目標範囲、例えば7%未満、好ましくは6.5%未満まで、減少することができる。
また、本発明におけるSGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤の併用によって、SGLT2阻害剤、又は、DPP IV阻害剤、又は、双方の活性物質の用量を減少することができる。用量の減少は、別の点では、SGLT2阻害剤、又は、DPP IV阻害剤の最も高い用量を用いた単剤治療における副作用を被る可能性がある患者にとって有益である。従って、本発明の医薬組成物及び方法は、副作用がより少なく、それにより、治療をより許容可能にし、かつ、患者の治療のコンプライアンスを改善する。
【0060】
本発明のDPP IV阻害剤での単剤治療は、患者のインスリン分泌能、又は、インスリン感受性と無関係ではない。一方、本発明のSGLT2阻害剤の投与での治療は、患者のインスリン分泌能又はインスリン感受性に無関係である。従って、一般的なインスリンレベル、又は、インスリン抵抗性、及び/又は、高インスリン血症に無関係な患者は、本発明におけるSGLT2阻害剤、及び、DPP IV阻害剤の併用治療の利益を受けることができる。SGLT2阻害剤を併用投与、又は、交互に投与するために、彼らの一般的なインスリンレベル、又は、彼らのインスリン抵抗性、又は、高インスリン血症に無関係な状態で、これらの患者をDPP IV阻害剤で、さらに治療できる。
本発明におけるDPP IV阻害剤は、活性化GLP-1レベルを増加して、患者におけるグルカゴン分泌を減少することができる。従って、このことは、肝糖生成を制限する。更に、DPP IV阻害剤によって生まれる上昇した活性GLP-1レベルは、β細胞の再生及び新生に有益な影響を及ぼす。これら全てのDPP IV阻害剤の特徴によって、SGLT2阻害剤との併用が、非常に効果的かつ治療的に関連付けられる。
本発明は、治療を必要又は予防を必要とする患者について言及する場合には、第一にヒトにおける治療及び予防に関係するが、該医薬組成物は、哺乳類における獣医学に従って用いることもできる。
上述したように、本発明における医薬組成物の投与によって、特に、その中のSGLT2阻害剤の高いSGLT2阻害活性を考慮すると、過剰な血中グルコースは、患者の尿を通して排出されるので、体重増加せず、寧ろ体重減少が、起こりうる。従って、本発明における治療又は予防は、体重過剰、クラスI肥満、クラスII肥満、クラスIII肥満、内蔵肥満、及び、腹部肥満からなる群から選択される1つ以上の状態であると診断された該治療及び予防を必要とする患者において、又は、体重増加が禁忌であるとされた個体のために都合よく適している。
【0061】
本発明の医薬組成物、特に、その中のSGLT2阻害剤は、血糖コントロールに関して、特に空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース及び/又はグリコシル化血色素(HbAlc)の減少を考慮すると、非常に優れた薬効を示す。本発明における医薬組成物を投与することによって、HbAlcを、好ましくは0.5%以上、その上、更に好ましくは1.0%以上減少することができ、特に1.0%〜1.5%の範囲で減少する。
その上、本発明の方法、及び/又は、使用は、下記の1つ、2つ、又は、それより多くの状態を示す患者で、有利に適用可能である:
(a)空腹時血中グルコース又は血清グルコース濃度が、110 mg/dLより高く、特に、125 mg/dLより高い;
(b)食後の血漿グルコースが、140 mg/dL以上である;
(c)HbA1c値が、6.5%以上であり、特に、8.0%以上である。
【0062】
本発明は、2型糖尿病に罹患した患者か、又は、前糖尿病の初発兆候を示す患者の血糖コントロールを改善するための医薬組成物の使用についても開示する。従って、本発明は、糖尿病の予防も含む。そこで、前糖尿病の上記兆候の1つがみられたら、即座に本発明の医薬組成物を用いて血糖コントロールを改善させたならば、顕性の2型糖尿病の発症を、遅延又は予防することができる。
更に、本発明の医薬組成物は、インスリン依存性の患者、すなわち、インスリン又はその誘導体若しくは代用物、又は、インスリン又はその誘導体若しくは代用物を含む製剤で治療している患者、又は、そうでなくても治療するであろう患者、又は、治療が必要な患者の治療に、特に好適である。これら患者には、2型糖尿病の患者及び1型糖尿病の患者が含まれる。
【0063】
本発明の医薬組成物を用いることによって、特に、抗糖尿病薬で治療しているにも関わらず、例えば、メトホルミン、又は、SGLT2阻害剤、特に本発明のSGLT2阻害剤、又は、DPP IV阻害剤、特に、本発明のDPP IV阻害剤を、最大耐性用量で経口単剤治療しているにも関わらず、血糖コントロールが不十分な患者においてですら、血糖コントロールを改善することができると理解できる。メトホルミンに関する最大耐性用量は、例えば、850mgを、1日に3回か、それと同等のものである。本発明のDPP IV阻害剤、特に、化合物(A)(1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン)に関する最大耐性用量は、例えば、10mgを、1日1回か、それと同等のものである。
本発明の範囲において、用語「血糖コントロールが不十分」とは、患者のHbAlc値が、6.5%超過、特に8%超過である状態を意味する。
【0064】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、上記又は下記に定義されるようなSGLT2阻害剤を、上記又は下記に定義されるようなDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性、メタボリックシンドローム、及び/又は、2型若しくは1型糖尿病と診断され、それを必要とする患者において、血糖コントロールを改善する方法、及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース、及び/又は、グリコシル化血色素HbA1cを減少する方法が提供される。
【0065】
本発明のSGLT2阻害剤の投与による血中グルコースレベルの低減は、インスリン-非依存性である。従って、本発明の医薬組成物は、下記の1つ以上の状態であると診断された患者の治療に特に好適である:
−インスリン抵抗性、
−高インスリン血症、
−前糖尿病、
−2型糖尿病、特に後期2型糖尿病、
−1型糖尿病。
更に、本発明の医薬組成物は、下記の1つ以上の状態であると診断された患者の治療に特に好適である:
(a)肥満(クラスI、II及び/又はIII肥満を含む)、内臓肥満及び/又は腹部肥満、
(b)トリグリセリド血中レベル≧150mg/dL、
(c)HDL-コレステロール血中レベル<40mg/dL(女性)、及び、<50mg/dL(男性)、
(d)最高血圧≧130mmHg、かつ、最低血圧≧85mmHg、
(e)空腹時血中グルコースレベル≧110mg/dL。
【0066】
耐糖能異常(IGT)、空腹時血糖異常(IFG)、インスリン抵抗性及び/又はメタボリックシンドロームと診断された患者は、例えば心筋梗塞、冠動脈心疾患、心不全、血栓塞栓性事象のような心臓血管疾患を発症する高い危険性を被ると考えられる。本発明による血糖コントロールは、心臓血管の危険性を低減することができる。
本発明の医薬組成物は、特に、その中のSGLT2阻害剤のために、良好な安全プロフィールを示す。従って、本発明の治療又は予防は、例えばメトホルミンのような他の抗糖尿病薬で単剤治療することが禁忌である当該患者、及び/又は、治療用量で該薬物に対して不耐性である当該患者で有利に行われうる。特に、本発明の治療又は予防は、下記の1つ以上の障害があるか、その危険性が増加している患者において有利に行われうる:腎不全又は腎疾患、心疾患、心不全、肝疾患、肺疾患、異化状態及び/又は乳酸血症の危険性、又は、妊娠しているか若しくは授乳中の女性患者。
【0067】
更に、本発明の医薬組成物の投与は、低血糖の危険性を生じない、又は、危険性が低いことが理解されうる。従って、本発明の治療又は予防は、低血糖の危険性があるか、又は、その危険性が高い当該患者おいても、有利に行われうる。
本発明の医薬組成物は、上記又は下記のような疾患及び/又は症状の長期治療又は予防に、特に好適であり、2型糖尿病の患者の長期血糖コントロールに、特に好適である。
上記又は下記に使用される用語「長期」は、12週間より長い、好ましくは25週間より長い、さらに好ましくは1年より長い期間内での患者の治療又は投与を示す。
従って、本発明の特に好ましい実施形態は、2型糖尿病の患者、特に、後期2型糖尿病の患者で、特に、過体重、肥満(クラスI肥満、クラスII肥満及び/又はクラスIII肥満を含む)、内臓肥満及び/又は腹部肥満とさらに診断された患者における血糖コントロールの改善、特に長期改善のための、治療方法、好ましくは、経口治療方法を提供する。
【0068】
上記の効果は、SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤が併用投与された場合(例えば、同時に投与)、及び、それらが交互に投与された場合(例えば、別々の製剤で連続して投与)の双方で確認される。
患者に投与すべき、また、本発明の治療又は予防で使うために必要とされる本発明の医薬組成物の量は、投与経路、治療又は予防が必要な症状の性質と重症度、患者の年齢、体重及び状態、併用薬物によって変化し、最終的には主治医の裁量によることは明らかである。しかし、一般的に、本発明のSGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤は、それらを併用投与すること、又は、交互に投与することによって、治療すべき患者の血糖コントロールを改善するために十分な量で、医薬組成物又は剤形に含まれる。
以下のように、本発明の医薬組成物及び方法及び使用に用いられるSGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤の量について、好ましい範囲を記載する。これらの範囲は、大人の患者に関して1日に投与される量を表し、これに応じて、1日に2、3、4回又はそれ以上の回数の投与に関して、他の投与経路に関して、及び、患者に年齢に関して、適合させてもよい。
【0069】
本発明の範囲において、医薬組成物は、経口投与されることが好ましい。他の投与形態も可能であり、以下に記載する。SGLT2阻害剤を含む剤形は、経口投与が好ましい。DPP IV阻害剤の投与経路は、経口であるか、又は、一般的に公知なものである。
一般的に、本発明の医薬組成物及び方法におけるSGLT2阻害剤の量は、SGLT2阻害剤を用いる単剤治療で通常推奨されている量の1/5〜1/1の範囲であることが好ましい。本発明の併用治療は、単剤治療で用いられる、又は、従来の治療で用いられる個々のSGLT2阻害剤又は個々のDPP IV阻害剤を低用量で都合よく利用し、これによって、それらの薬剤が、単剤治療で用いられる場合に被る可能性のある毒性及び副作用を、回避できる。
SGLT2阻害剤の量の範囲は、0.5 mg〜1000 mgが好ましく、例えば、おおよそ70kgの体重のヒトに対して1日当たり5〜500 mgであることが更に好ましい。ダパグリフロジンに関しては、1 mg〜50 mgの範囲が好ましく、2 mg〜30 mgの範囲が更に好ましく、1 mg〜10 mg、又は、5 mg〜20 mgの範囲が更に好ましい。従って、特定の用量強度(例えば、錠剤又はカプセル剤)は、例えば、2.5、5、10 mg、又は、20 mgを1日に1回である。セルグリフロジン及びセルグリフロジンエタボナートに関しては、10 mg〜500 mgの範囲が好ましい。従って、特定の用量強度(例えば、錠剤又はカプセル剤)は、例えば、50、125、250、又は、500 mgを1日に1、2、又は、3回である。レモグリフロジン及びレモグリフロジンエタボナートに関して、10 mg〜500 mgの範囲が好ましく、50 mg〜200 mg、又は、100 mg〜400 mgの範囲が更に好ましい。従って、特定の用量強度(例えば、錠剤又はカプセル剤)は、例えば、50、125、200、250、400、又は、500 mgを1日に1、2、又は、3回である。経口投与が好ましい。その結果、医薬組成物は、上記の量を含みうる。
【0070】
一般的に、本発明の医薬組成物及び方法におけるDPP IV阻害剤の量は、DPP IV阻害剤を用いる単剤治療で通常推奨されている量の1/5〜1/1の範囲であることが好ましい。
典型的に、ここに記載されるDPP IV阻害剤の必要な用量は、静脈投与の場合には、0.1 mg〜10 mgであり、好ましくは0.25 mg〜5 mgであり、経口投与の場合には、0.5 mg〜100 mg、好ましくは、2.5 mg〜50 mg、又は、0.5 mg〜10 mg、更に好ましくは、2.5 mg〜10 mg、又は、1 mg〜5 mgであり、それぞれの場合において、1日に1〜4回投与する。従って、化合物(A)の(1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン)の必要とする用量は、経口投与の場合に、患者当たり1日あたり0.5 mg〜10 mgであり、好ましくは患者当たり1日当たり2.5 mg〜10 mg(更に好ましくは患者当たり1日当たり5mg〜10mg)、又は、患者あたり1日当たり1mg〜5mgである。
ここに記載されるDPP IV阻害剤を含む医薬組成物で調製される剤形は、用量範囲0.1〜100mgの活性成分を含む。特定の用量は、0.5 mg、1 mg、2.5 mg、5 mg、及び、10 mgである。従って、化合物(A)の(1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン)の特定の用量強度は、0.5 mg、1 mg、2.5 mg、5 mg、及び、10 mgであり、それらのさらに好ましい特定の用量強度は、1 mg、2.5 mg、及び、5 mgである。
【0071】
本発明の医薬組成物におけるSGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤の量は、それぞれ上記に記載した用量範囲に対応する。例えば、医薬組成物は、1〜50mgの、好ましくは、2〜10mgの量の化合物(1)、及び、0.5mg〜10mgの量の化合物(A)の(1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン)を含む。
本発明の方法及び使用において、SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤を、併用投与するか、又は、交互に投与する。用語「併用投与」は、双方の活性成分が、同じ時に、すなわち同時に、又は、本質的に同じときに投与されることを意味する。用語「交互に投与」は、まず、第一の活性成分が投与されてから、一定期間後、第二の活性成分が投与されること、すなわち、双方の活性成分が、逐次投与されることを意味する。該一定期間は、30分〜12時間の範囲にすることができる。併用投与又は交互の投与は、1日に1回、2回、3回又は4回行うことができる。
DPP IV阻害剤と併用したSGLT2阻害剤の投与に関して、双方の活性成分は、単独剤形、例えば、錠剤又はカプセル剤の中に存在してもよく、又は、それぞれの活性成分は、別々の剤形、例えば2つの異なる、又は、同一の剤形の中に存在してもよい。
交互に投与することに関して、それぞれの活性成分は、別々の剤形、例えば、2つの異なる、又は、同一の剤形中に存在する。
従って、本発明の薬剤組成物は、SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤の双方を含む単独剤形として存在するだけでなく、1つの剤形がSGLT2阻害剤を含み、他の剤形がDPP IV阻害剤を含む別々の剤形で存在してもよい。
【0072】
一方の活性成分(例えば、1日に1回の投与が必要)よりも、もう一方の活性成分をより頻繁(例えば、1日に2回の投与)に、投与しなければならない場合がある。従って、用語「併用投与、又は、交互に投与」は、まず、双方の活性成分が、併用投与、又は、交互に投与され、次に、しばらくしてから一つの活性成分のみが、再び投与される投与スキームも含み、また、逆のスキームもまた同様に含む。
従って、本発明は、一方の剤形が、SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤を含み、そして、別の剤形が、SGLT2阻害剤又はDPP IV阻害剤を含む、別々の剤形で存在する医薬組成物も含む。
別々の剤形、又は、複数の剤形として、好ましくは構成要素のキットとして存在する医薬組成物は、併用療法において、個々の患者の治療要求に柔軟に合わせるために、有用である。
【0073】
好適な構成要素のキットは、以下のものを含む:
(a)SGLT2阻害剤及び少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体を含む剤形を含む第一の格納容器、
(b)DPP IV阻害剤及び少なくとも1つの医薬的に許容可能な担体を含む剤形を含む第二の格納容器。
本発明の更なる局面は、本発明の別々の剤形として存在する医薬組成物、及び、該別々の剤形が、併用投与、又は、交互に投与されるべきという説明を含むラベル又は添付書面を含む医薬品である。
また、本発明の更なる局面は、本発明のSGLT2阻害剤を含む薬剤、及び、該薬剤が、本発明のDPP IV阻害剤を含む薬剤と併用投与、又は、交互に投与されうるという説明、または、されるべきという説明を含むラベル又は添付文書を含む医薬品である。
本発明の別の更なる局面は、本発明のDPP IV阻害剤を含む薬剤、及び、該薬剤が、本発明のSGLT2阻害剤を含む薬剤と併用投与、又は、交互に投与されうるという説明、または、されるべきという説明を含むラベル又は添付文書を含む医薬品である。
【0074】
本発明の医薬組成物の所望用量は、適宜、1日1回で示されてもよいし、適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日2、3回、又は、それ以上の回数の用量として示されてもよい。
医薬組成物は、経口、経直腸、経鼻、局所(頬及び舌下を含む)、経皮、経膣、又は、非経口(筋肉内、皮下及び静脈内)投与のため、液体若しくは固体形態で、又は、吸入若しくは通気による投与に適した形態で製剤化されうる。経口投与が、好ましい。該製剤は、必要に応じ、個別投与単位で提供されることが望ましく、薬学の分野で公知のいずれの方法で調製されてもよい。すべての方法が、液状担体若しくは微細固形担体又はその両者のような1つ以上の医薬的に許容可能な担体と、活性成分を混合させる工程、次いで、必要に応じ、得られた産物を所望の製剤に成形する工程を含む。
医薬組成物は、錠剤、顆粒剤、細顆粒剤、散剤、カプセル剤、カプレット剤(caplet)、軟カプセル剤、丸剤、経口液剤、シロップ剤、乾燥シロップ剤、咀嚼錠、トローチ剤、発泡錠、点滴薬、懸濁液剤、高速溶解錠、経口高速分散錠などの形態で製剤化されうる。
医薬組成物及び剤形は、好ましくは、製剤の他の成分と適合性があり、かつ、そのレシピエントに有害であってはならないという意味で「許容可能」でなければならない1以上の医薬的に許容可能な担体を含む。
【0075】
経口投与に好適な医薬組成物は、都合のよいことに、それぞれ所定量の活性成分を含有するカプセル剤(軟ゼラチンカプセル剤を含む)、カシェ剤、又は、錠剤などの個別単位として;散剤又は顆粒剤として;液剤、懸濁液剤、又は、エマルジョン、例えばシロップ剤、エリキシル剤又は自己乳化送達系(self-emulsifying delivery systems(SEDDS))として提供されうることが望ましい。活性成分をボーラス、舐剤又はペーストとして提供できる。経口投与用の錠剤及びカプセル剤は、結合剤、充填剤、潤沢剤、崩壊剤、又は、湿潤剤等の通常の賦形剤を含有しうる。錠剤を周知の方法でコーティングしうる。経口液体製剤は、例えば、水性若しくは油性懸濁液剤、液剤、エマルジョン、シロップ剤、又は、エリキシル剤の形態でよく、あるいは、使用前に水、又は、他の適切なビヒクルで構成するための乾燥生成物として提供される。このような液体製剤は、懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含みうる)、又は保存剤等の通常の添加剤を含有しうる。
本発明の医薬組成物を非経口投与(例えば、注射、例えばボーラス注射又は連続注入)用に製剤化することもでき、アンプル、予充填注射器、小量注入の単位剤形で、あるいは、保存剤を加えて複数回用量容器で提供しうる。本組成物は、油性若しくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、又はエマルジョンのような形態を取ることができ、懸濁化剤、安定剤及び/又は分散剤等の処方剤を含みうる。これとは別に、活性成分は使用前に適切なビヒクル、例えば発熱性物質を含まない滅菌水で構成するための散剤形態でよく、散剤形態は、滅菌固体の無菌単離、又は、溶液からの凍結乾燥によって得られる。
【0076】
直腸投与に適しており、固体の担体を含む医薬組成物は、単位用量座剤として提供されることが最も好ましい。好適な担体として、ココアバター及び常用される他の材料が挙げられ、軟化担体若しくは溶融担体と活性化合物を混合後、型内で冷却し、かつ、成型することによって、簡便に座剤を形成しうる。
本発明の医薬組成物及び方法は、双方の活性成分の一つのみを含む医薬組成物及び方法と比較して、上述されるような疾患及び症状の治療及び予防に有益な効果を示す。有益な効果は、例えば、効き目、用量強度、用量頻度、薬理学的特性、薬物速度論的特性、少ない副作用などに関して、確認することができる。
【0077】
医薬的に許容可能な担体の例は、当業者の間で公知である。
本発明のSGLT2阻害剤の製造方法は、当業者の間で公知である。好ましい方法は、例えば、文献及び「発明の背景」の項で引用した特許出願に開示されている。
本発明のDPP IV阻害剤の合成方法は、当業者の間で公知である。本発明のDPP IV阻害剤は、文献に開示されるような合成方法を用いて、適宜、調製できる。従って、例えば、化学式(I)のプリン誘導体は、WO 2002/068420、WO 2004/018468、WO 2005/085246、WO 2006/029769、又は、WO 2006/048427に記載されたように得ることができ、これらの開示はここに組み込まれる。化学式(II)のプリン誘導体は、例えば、WO 2004/050658、又は、WO 2005/110999に記載されたように得ることができ、これらの開示はここに組み込まれる。化学式(III)及び(IV)のプリン誘導体は、例えば、WO 2006/068163、WO 2007/071738、及び、WO 2008/017670に記載されたように得ることができ、これらの開示はここに組み込まれる。これらのDPP IV阻害剤の調製は、上記で具体的に記載したように、この中で関連して記載される文献において開示される。特定のDPP IV阻害剤の多形結晶修飾及び製剤は、それぞれ、WO 2007/054201、及び、WO 2007/128724に記載されている。これらの開示は、全体としてここに組み込まれる。
【0078】
DPP IV阻害剤は、医薬的に許容可能な塩の形態であってもよい。医薬的に許容可能な塩として、塩酸、硫酸及びリン酸のような無機酸の塩;シュウ酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、安息香酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸及びグルタミン酸のような有機カルボン酸の塩、並びに、メタンスルホン酸及びp-トルエンスルホン酸のような有機スルホン酸の塩が挙げられる。溶媒及び分解剤(decomposer)の中で、適切な量と比で該化合物と酸を混合することによって塩を形成できる。これらは、他の塩形態からカチオン又はアニオン変換することによって得ることもできる。
SGLT阻害剤及び/又はDPP IV阻害剤、又は、それらの医薬的に許容可能な塩は、水和物及びアルコール付加物のような溶媒和物の形態であってもよい。
【0079】
本発明の範囲内の上述の併用及び方法を、公知の動物モデルを用いて試験することができる。以下に、本発明の医薬組成物、及び、方法の薬理学的に関連する特性を評価するのに適切なインビボ実験について記載する:
本発明の医薬組成物及び方法は、一般的な高インスリン血症の動物、又は、糖尿病の動物、例えば、db/dbマウス、ob/obマウス、Zucker Fatty(fa/fa)ラット、又は、Zucker Diabetic Fatty(ZDF)ラットにおいて試験することができる。また、それらは、ストレプトゾトシンで前処置されたHanWistar又はSprague Dawleyラットのように、実験的に誘発した糖尿病を患う動物で試験することもできる。
本発明の併用による血糖コントロールの効果は、SGLT2阻害剤のみを用いて、又は、DPP IV阻害剤のみを用いて、又は、SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤を併用して、単回投与した後における上述した動物モデルにおける経口グルコース耐性試験をすることで試験することができる。血中グルコースの経時変化は、一晩絶食した動物に経口グルコース投与の後から観察した。ピークグルコース濃度の減少、又は、グルコースAUCの減少によって評価されるように、本発明の併用は、それぞれの単剤治療と比較して、有意にグルコース変動(glucose excursion)を改善する。また、上述した動物モデルに、SGLT2阻害剤のみを用いて、又は、DPP IV阻害剤のみを用いて、又は、SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤を併用して、複数回投与した後における血糖コントロールの効果を、血液中のHbAlc値を測定することで決定することができる。本発明の併用は、それぞれの単剤治療と比較して、HbAlcを有意に減少する。
【0080】
SGLT2阻害剤若しくはDPP-IV阻害剤、又は、双方の活性成分の減らしうる用量を、上述の動物モデルにおける低用量の併用及び単剤治療での血糖コントロールにおける効果により、試験することができる。本発明の併用は、低用量で、プラセボ治療と比較して、有意に血糖コントロールを改善したのに対し、単剤治療では、低用量で、改善しなかった。
本発明の治療によって改善されたインスリン非依存性は、上述の動物モデルにおける経口耐糖能試験における単回投与後に明らかになる。血漿インスリンの経時変化を、一晩絶食した動物における糖付与の後に観察する。DPP IV阻害剤と併用されるSGLT2阻害剤は、DPP IV阻害剤のみよりも低い血中グルコース変動で、より低いインスリンピーク濃度、又は、インスリンAUCを示す。
【0081】
単回投与又は複数回投与した後の本発明の治療による活性GLP-1レベルの増加は、空腹、又は、食後の状態にある上述の動物モデルにおける血漿中の該レベルを測定することで決定されうる。同様に、血漿中のグルカゴンレベルの減少は、同じ条件下で測定することができる。DPP IV阻害剤と併用するSGLT2阻害剤は、SGLT2阻害剤のみよりも、高い活性GLP-1濃度と、低いグルカゴン濃度とを示す。
β細胞再生及び新生において、SGLT2阻害剤のみの効果よりも、本発明のSGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤の併用の優れた効果は、上述の動物モデルに複数回投与後に、増加した膵臓インスリン含量を測定することによって、又は、脾臓領域の免疫組織化学的染色後の形態計測による増加β細胞質量の測定によって、又は、単離された膵島で増加したグルコース刺激インスリン分泌の測定によって、決定することができる。
以下の実施例は、本発明を限定せずに説明することを意図している。
【実施例】
【0082】
[薬理学的な実施例]
以下の例は、本発明のSGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤の併用が、それぞれの単剤治療と対比して、血糖コントロールにおいて、有益な効果を有することを示す。実験室の動物の使用に関する全て実験的なプロトコールは、連邦倫理委員会(federal Ethics Committee)によってレビューされ、政府当局に承認された。この実施例において、経口耐糖能試験は、体重約200gの一晩絶食したメスのSprague Dawleyラット(Crl:CD(SD))で行われた。前投与血液サンプルは、尾から出血させて得た。血中グルコースは、グルコメータで測定され、動物は、血中グルコースのために無作為に抽出された(n=5/群)。次に、各群は、ビヒクルのみ(0.015% Polysorbat 80を含む0.5%の水性ヒドロキシエチルセルロース)、又は、SGLT2阻害剤、又は、DPP IV阻害剤、又は、DPP IV阻害剤とSGLT2阻害剤との組合せを含むビヒクルの単回経口投与を受けた。動物は、化合物投与の30分後に経口グルコース付与(2g/kg)を受けた。血中グルコースは、グルコース投与の30分後、60分後、90分後、及び、120分後に尾の血液で測定した。グルコース変動を、反応グルコースAUCを計算することによって、定量化した。データは、平均± S.E.M.として表した。統計比較は、スチューデントt検定で行われた。
【0083】
結果を図1に示す。「Cpd. A」は、DPP IV阻害剤の1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチンであり、1 mg/kgの用量で投与された。ダパグリフロジンは、SGLT2阻害剤であり、0.3mg/kgの用量で投与された。併用において、DPP IV阻害剤及びダパグリフロジンは、それぞれの単剤治療の量と、同じ用量で、一緒に投与された。コントロールに対するP値は、バーの上のしるしで表される。単剤治療に対する併用のP値は、図の下に示される(*,p<0.05;**,p<0.01;***,p<0.001)。これらの非糖尿病動物において、DPP IV阻害剤は、グルコース変動を25%減少させ、ダパグリフロジンは、グルコース変動を31%減少させた。併用は、経口耐糖能試験において、グルコース変動を44%減少させ、グルコースAUCにおけるこの減少は、それぞれの単剤治療に対して統計的に有意だった。
【0084】
[製剤の実施例]
製剤(本分野で公知の方法と同様にして得られうる)の下記の例は、本発明をより十分説明するために用いられ、それをこれらの実施例の内容に限定するものではない。用語「活性物質」は、本発明の1つ以上の化合物を表し、すなわち、本発明のSGLT2阻害剤、又は、本発明のDPP IV阻害剤、又は、該SGLT2阻害剤と該DPP IV阻害剤との併用を表し、例えば、表1で記載された併用1〜108から選択される。また、DPP IV阻害剤に好適な製剤は、出願WO 2007/128724において開示されている製剤であってもよく、この開示は、全体として、ここに組み込まれる。
【0085】
<実施例1>10ml当たり75mgの活性物質を含有する乾燥アンプル
組成物:
活性物質 75.0 mg
マンニトール 50.0 mg
注入用水 10.0 ml添加
調製:
活性物質、及び、マンニトールを水に溶解する。封入した後、溶液を凍結乾燥する。使用できる状態の溶液をつくるために、生成物を注入用水に溶解する。
<実施例2>2ml当たり35mgの活性物質を含有する乾燥アンプル
組成物:
活性物質 35.0 mg
マンニトール 100.0 mg
注入用水 2.0 ml添加
調製:
活性物質、及び、マンニトールを水に溶解する。封入した後に、溶液を凍結乾燥する。使用できる状態の溶液をつくるために、生成物を注入用水に溶解する。
【0086】
<実施例3>50mgの活性物質を含有する錠剤
組成物:
(1)活性物質 50.0 mg
(2)ラクトース 98.0 mg
(3)トウモロコシデンプン 50.0 mg
(4)ポリビニルピロリドン 15.0 mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 2.0 mg
215.0 mg
調製:
(1)、(2)及び(3)を一緒に混合し、(4)の水溶液で粉状化する。(5)を乾燥した粉状材料に添加する。この混合物を、圧縮し、両側面を持ち、一側面に分割用のV字型の刻み目を有する二平面の錠剤とする。
錠剤の直径:9mm
<実施例4>350mgの活性物質を含有する錠剤
調製:
(1)活性物質 350.0 mg
(2)ラクトース 136.0 mg
(3)トウモロコシデンプン 80.0 mg
(4)ポリビニルピロリドン 30.0 mg
(5)ステアリン酸マグネシウム 4.0 mg
600.0 mg
(1)、(2)及び(3)を一緒に混合し、(4)の水溶液で粉状化する。(5)を乾燥した粉状材料に添加する。この混合物を、圧縮し、両側面を持ち、一側面に分割用のV字型の刻み目を有する二平面の錠剤とする。
錠剤の直径:12mm
【0087】
<実施例5>50mgの活性物質を含有するカプセル
組成物:
(1)活性物質 50.0 mg
(2)乾燥トウモロコシデンプン 58.0 mg
(3)粉末ラクトース 50.0 mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 2.0 mg
160.0 mg
調製:
(1)を(3)と一緒に粉末状にする。この粉末を、(2)及び(4)の混合物に添加し、激しく混合する。この粉末混合物を、カプセル充填機で、サイズ3のハードゼラチンカプセルに封入する。
<実施例6>350mgの活性物質を含有するカプセル
組成物:
(1)活性物質 350.0 mg
(2)乾燥トウモロコシデンプン 46.0 mg
(3)粉末ラクトース 30.0 mg
(4)ステアリン酸マグネシウム 4.0 mg
430.0 mg
調製:
(1)を(3)と一緒に粉末状にする。この粉末を、(2)及び(4)の混合物に添加し、激しく混合する。この粉末混合物を、カプセル充填機で、サイズ0のハードゼラチンカプセルに封入する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬組成物であって、
(1)ダパグリフロジン;
(2)レモグリフロジン、又は、レモグリフロジン エタボナート;
(3)セルグリフロジン、又は、セルグリフロジン エタボナート;
(4)1-クロロ-4-(β-D-グルコピラノース-1-イル)-2-(4-エチル-ベンジル)-ベンゼン;
(5)(1S)-1,5-アンヒドロ-1-[5-(アズレン-2-イルメチル)-2-ヒドロキシフェニル]-D-グルシトール;
(6)(1S)-1,5-アンヒドロ-1-[3-(1-ベンゾチエン-2-イルメチル)-4-フルオロフェニル]-D-グルシトール;
(7)化学式(7-1)のチオフェン誘導体:
【化1】

(式中、Rが、メトキシ又はトリフルオロメトキシを表す);
(8)1-(β-D-グルコピラノシル)-4-メチル-3-[5-(4-フルオロフェニル)-2-チエニルメチル]ベンゼン;
(9)化学式(9-1)のスピロケタール誘導体:
【化2】

(式中、Rが、メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、エチル、イソプロピル、又は、tert.ブチルを表す);
及び、これらの医薬的に許容可能な塩、水和物、及び、溶媒和物;
からなる群から選択されるSGLT2阻害剤を含み、
化学式(I)のDPP IV阻害剤と併用する、
【化3】

又は、化学式(II)のDPP IV阻害剤と併用する、
【化4】

又は、化学式(III)のDPP IV阻害剤と併用する、
【化5】

又は、化学式(IV)のDPP IV阻害剤と併用する、
【化6】

(式中、R1が、([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル、(キナゾリン-2-イル)メチル、(キノキサリン-6-イル)メチル、(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル、2-シアノ-ベンジル、(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル、(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル、(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル、又は、(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチルを表し、R2が、3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル、(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ、又は、(2-(S)-アミノ-プロピル)-メチルアミノを表す)、
又は、その医薬的に許容可能な塩と併用する、
医薬組成物。
【請求項2】
DPP IV阻害剤が、
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-(3-(R)-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[([1,5]ナフチリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
2-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-3-(ブト-2-イニル)-5-(4-メチル-キナゾリン-2-イルメチル)-3.5-ジヒドロ-イミダゾ[4,5-d]ピリダジン-4-オン、
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(2-アミノ-2-メチル-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン、
1-[(3-シアノ-キノリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-(2-シアノ-ベンジル)-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(4-メチル-キナゾリン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-[(S)-(2-アミノ-プロピル)-メチルアミノ]-キサンチン、
1-[(3-シアノ-ピリジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(4-メチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
1-[(4,6-ジメチル-ピリミジン-2-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、及び、
1-[(キノキサリン-6-イル)メチル]-3-メチル-7-(2-ブチン-1-イル)-8-((R)-3-アミノ-ピペリジン-1-イル)-キサンチン、
及び、それらの医薬的に許容可能な塩、
からなる群から選択される、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤を、併用、又は、同時使用、又は、逐次使用することに適している、請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤が、単一の剤形に存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
SGLT2阻害剤及びDPP IV阻害剤が、別々の剤形にそれぞれ存在する、請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満、及び、メタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療する方法。
【請求項7】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
血糖コントロールを改善する方法、及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース、及び/又は、グリコシル化血色素HbA1cを減少する方法。
【請求項8】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
耐糖能異常、空腹時血糖異常、インスリン抵抗性から、及び/又は、メタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、又は、寛解する方法。
【請求項9】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
白内障、及び、微小血管疾患、及び、大血管疾患、例えば、腎症、網膜症、虚血性神経症、組織虚血、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、及び、末梢動脈閉塞性疾患のような糖尿病の合併症からなる群から選択される症状、又は、障害を予防、その進行を緩徐、遅延、又は、治療する方法。
【請求項10】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
体重を減少する、又は、体重増加を抑える、又は、体重減少を促進する方法。
【請求項11】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
膵臓β細胞の変性、及び/又は、膵臓β細胞の機能の衰退を予防、緩除、遅延、又は、治療する方法、及び/又は、
膵臓β細胞の機能を改善及び/又は回復する、及び/又は、膵臓インスリン分泌の機能を回復する方法。
【請求項12】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
肝脂肪の異常蓄積の原因となる疾患又は症状を予防、緩除、遅延、又は、治療する方法。
【請求項13】
請求項1に記載のSGLT2阻害剤を、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤と、併用投与すること、又は、交互に投与することを特徴とする、
それを必要とする患者における、
インスリン感受性を維持及び/又は改善する方法、及び/又は、高インスリン血症、及び/又は、インスリン抵抗性を治療又は予防する方法。
【請求項14】
請求項6、7、8、9、10、11、12、又は、13に記載の方法における使用のための薬剤の製造のための請求項1に記載のSGLT2阻害剤の使用。
【請求項15】
請求項6、7、8、9、10、11、12、又は、13に記載の方法における使用のための薬剤の製造のための請求項1又は2に記載のDPP VI阻害剤の使用。
【請求項16】
請求項1〜5のいずれかに記載の医薬組成物の使用であって、
それを必要とする患者において、
1型糖尿病、2型糖尿病、耐糖能異常、空腹時血糖異常、高血糖、食後高血糖、過体重、肥満、及び、メタボリックシンドロームからなる群から選択される代謝障害を予防、その進行を緩除、遅延、又は、治療するための;又は、
血糖コントロールを改善するための、及び/又は、空腹時血漿グルコース、食後の血漿グルコース、及び/又は、グリコシル化血色素HbA1cを減少するための;又は、
耐糖能異常、インスリン抵抗性から、及び/又は、メタボリックシンドロームから、2型糖尿病への進行を予防、緩除、遅延、又は、寛解するための;又は、
白内障、及び、微小血管疾患、及び、大血管疾患、例えば、腎症、網膜症、虚血性神経症、組織虚血、動脈硬化、心筋梗塞、脳卒中、及び、末梢動脈閉塞性疾患のような糖尿病の合併症からなる群から選択される症状、又は、障害を予防、その進行を緩徐、遅延、又は、治療するための;又は、
体重を減少するための、又は、体重増加を抑えるための、又は、体重減少を促進するための;又は、
膵臓β細胞の変性、及び/又は、膵臓β細胞の機能の衰退を予防、緩除、遅延、又は、治療するための、及び/又は、膵臓β細胞の機能を改善及び/又は回復するための、及び/又は、膵臓インスリン分泌の機能を回復するための;又は、
肝脂肪の異常蓄積の原因となる疾患又は症状を予防、緩除、遅延、又は、治療するための;又は、
インスリン感受性を維持及び/又は改善するための、及び/又は、高インスリン血症、及び/又は、インスリン抵抗性を治療又は予防するための;
薬剤の製造のための使用。
【請求項17】
患者が、過体重、肥満、内臓肥満、及び、腹部肥満からなる群から選択される1つ以上の状態であると診断された個体である、請求項6〜13のいずれかに記載の方法、又は、請求項14、15、又は16に記載の使用。
【請求項18】
患者が、以下から選択される1つ、2つ、又は、それより多く症状を示す個体である、
(a)空腹時血中グルコース又は血清グルコース濃度が、110 mg/dLより高く、特に、125 mg/dLより高い;
(b)食後の血漿グルコースが、140 mg/dL以上である;
(c)HbA1c値が、6.5%以上であり、特に、8.0 %以上である;
請求項6〜13のいずれかに記載の方法、又は、請求項14、15又は16に記載の使用。
【請求項19】
患者が、以下から選択される1つ、2つ、又は、それより多く症状を示す個体である、
(a)肥満、内蔵肥満、及び/又は、腹部肥満である;
(b)トリグリセリド血中レベルが、150 mg/dL以上である;
(c)HDL-コレステロール血中レベルが、女性の患者において40 mg/dL未満であり、男性の患者において50 mg/dL未満である;
(d)最高血圧が130 mm Hg以上であり、最低血圧が85 mm Hg以上である;
(e)空腹時血中グルコースレベルが110 mg/dL以上である;
請求項6〜13のいずれかに記載の方法、又は、請求項14、15又は16に記載の使用。
【請求項20】
患者が、メトホルミンで単剤治療することが禁忌である個体である、及び/又は、治療用量でメトホルミンに対して不耐性である個体である、請求項6〜13のいずれかに記載の方法、又は、請求項14、15、又は16に記載の使用。
【請求項21】
患者が、SGLT2阻害剤、特に、請求項1に記載のSGLT2阻害剤を用いた単剤治療にも関わらず血糖コントロールが不十分な個体である、請求項6〜13のいずれかに記載の方法、又は、請求項14、15又は16に記載の使用。
【請求項22】
患者が、DPP IV阻害剤、特に、請求項1又は2に記載のDPP IV阻害剤を用いた単剤治療にも関わらず血糖コントロールが不十分な個体である、請求項6〜13のいずれかに記載の方法、又は、請求項14、15又は16に記載の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2010−536734(P2010−536734A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520595(P2010−520595)
【出願日】平成20年8月15日(2008.8.15)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060744
【国際公開番号】WO2009/022010
【国際公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】