説明

E1活性化酵素阻害剤の合成のためのプロセス

E1活性化酵素は、ユビキチン様分子(ubl)結合経路の第1のステップで機能する。したがって、E1活性化酵素を阻害すれば、ubl修飾に伴う下流の生物学的作用を特異的に調節すると思われる。本発明は、E1活性化酵素阻害剤であり、細胞増殖の障害、特にE1活性に関連する癌および他の障害の処置に有用な4−置換((1S,2S,4R)−2−ヒドロキシ−4−{7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}シクロペンチル)メチルスルファマートを合成するためのプロセスおよび合成中間体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2007年8月2日に出願された米国仮特許出願第60/963,008号および2008年1月25日に出願された米国仮特許出願第61/062,378号からの優先権を主張する。米国仮特許出願第60/963,008号および米国仮特許出願第61/062,378号の両方は、その全体が参考として本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、E1活性化酵素阻害剤の合成プロセスおよびそうしたプロセスに有用な中間体に関する。
【背景技術】
【0003】
ユビキチン様分子(ubl)によるタンパク質の翻訳後修飾は、細胞内の重要な制御プロセスであり、細胞分裂、細胞シグナル伝達および免疫応答など多くの生物学的プロセスをコントロールする中心的な役割を果たしている。ublは、イソペプチド結合を介してublのC末端グリシンと標的タンパク質のリジンとが共有結合した小さいタンパク質である。ユビキチン様分子は、標的タンパク質の分子表面を変化させ、その標的のタンパク質間相互作用、酵素活性、安定性および細胞局在などの特性に作用することがある。
【0004】
ユビキチンおよび他のublは、ublのC末端グリシンとのアシル−アデニラート中間体の形成を触媒する特定のE1酵素により活性化される。次いで活性化されたubl分子は、チオエステル結合中間体の形成を介してE1酵素内の触媒システイン残基に移される。E1−ubl中間体とE2とが結合すると、チオエステル交換が起こり、ublはE2の活性部位システインに移される。その後、ublは、標的タンパク質のリジン側鎖のアミノ基とイソペプチド結合を形成して直接、あるいは、E3リガーゼと一緒に標的タンパク質に結合する。
【0005】
E1活性化酵素を標的にすれば、細胞分裂および細胞シグナル伝達のバランスに重要な様々な生化学的経路に干渉することができる。E1活性化酵素は、ubl結合経路の第1のステップで機能する。したがって、E1活性化酵素を阻害すれば、ubl修飾に伴う下流の生物学的作用を特異的に調節すると思われる。このため、こうした活性化酵素を阻害し、それによりubl結合による下流への影響を阻害することは、細胞分裂、細胞シグナル伝達、および疾患のメカニズムにとって重要な複数の細胞の生理状態のバランスに干渉する方法となる。したがって、UAE、NAEおよびSAEなどのE1酵素は、多様な細胞機能の制御因子として、疾患および障害の処置の新規なアプローチを特定するための重要な治療標的であると期待される。
【0006】
参照によってその全体を本明細書に援用するLangston S.et al.米国特許出願第11/700,614号には、E1活性化酵素、特にNAEの有効な阻害剤である化合物が開示されている。この化合物は、インビトロ(in vtiro)およびインビボでE1活性の阻害に有用であり、細胞増殖の障害、とりわけE1活性に関連する癌および他の障害の処置に有用である。Langston et al.に記載された化合物の一クラスは、4−置換((1S,2S,4R)−2−ヒドロキシ−4−{7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}シクロペンチル)メチルスルファマートである。こうした化合物にはステレオジェニック中心が複数あるため、効率的(efficent)に化学合成することが困難な場合がある。このため、4−置換((1S,2S,4R)−2−ヒドロキシ−4−{7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}シクロペンチル)メチルスルファマートを調製する新たなプロセスが求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、E1活性化酵素阻害剤として有用な4−置換((1S,2S,4R)−2−ヒドロキシ−4−{7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル}シクロペンチル)メチルスルファマートを合成するプロセスおよび中間体を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
一態様では、本発明は、下記式(I)の化合物またはその塩を合成するプロセスであって;
【0009】
【化1】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、クロロ、フルオロ、ヨードまたはブロモであり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
前記プロセスは、下記式(II)の化合物またはその塩を下記式(III)の化合物と組み合わせて式(I)の化合物を得るステップを含み;
【0010】
【化2】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
式(II)および(III)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々、式(I)に定義する通りであり;
は、−CHCHOまたは−CHCH(ORl’であり;および
l’は各々独立にC1〜6脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている5または6員の環状アセタール部分を形成している、
プロセスに関する。
【0011】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、下記ステップ:
c) 式(I)の化合物を式HNRのアミンで処理して下記式(V)の化合物またはその塩を形成するステップ;
をさらに含む。
【0012】
【化3】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
式(V)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々、式(I)に定義する通りであり;
は、HまたはC1〜4脂肪族であり;および
は、任意に置換されているC1〜10脂肪族、アリール、ヘテロアリールまたは複素環である。
【0013】
いくつかの実施形態では、このプロセスは、下記ステップ:
d) Rが水素である式(V)の化合物をスルファモイル化して下記式(VI)の化合物またはその塩を形成するステップ;
をさらに含む。
【0014】
【化4】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
式(VI)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、R、RおよびRは各々、式(V)に定義する通りである。
【0015】
本発明の別の態様は、下記式(I)の化合物またはその塩を形成する別のプロセスであって:
【0016】
【化5】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、クロロ、フルオロ、ヨードまたはブロモであり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
前記プロセスは、下記式(IV)の化合物を酸で処理して式(I)の化合物を形成することを含み:
【0017】
【化6】

式中:
式(IV)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々、式(I)に定義する通りであり;
は−CHCH(ORl’であり;および
l’は各々独立にC1〜6脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている5または6員の環状アセタール部分を形成している
プロセスに関する。
【0018】
本発明の別の態様は、下記式(V)の化合物またはその塩を形成するプロセスであって:
【0019】
【化7】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し。
は、HまたはC1〜4脂肪族であり;
は、任意に置換されているC1〜10脂肪族、アリール、ヘテロアリールまたは複素環であり;
前記プロセスは、下記式(Ia)の化合物を式HNRのアミンで処理することを含み:
【0020】
【化8】

式中:
式(Ia)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々、式(V)に定義する通りであり;
g’は脱離基である,
プロセスに関する。
【0021】
本発明の別の態様は、下記式(Ia)の化合物またはその塩に関する。
【0022】
【化9】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
g’は脱離基であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;および
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成している。
【0023】
本発明の別の態様は、下記(IIa)の化合物またはその塩に関する。
【0024】
【化10】

式中:アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
d’は、水素、フルオロ、ブロモ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する炭素原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;および
は、水素またはアミン保護基である。
【0025】
本発明の化合物およびプロセスは、全体として上述した化合物およびプロセスを含むが、以下に記載するプロセス(proceeses)および化合物に関する詳細な説明によりさらに明らかになる。本明細書に使用する用語は、他に記載がない限り、以下に定義した意味に従うものとする。
【0026】
本明細書で使用する場合、「E1」、「E1酵素」または「E1活性化酵素」という語は、標的分子に対するユビキチンまたはユビキチン様(まとめて「ubl」)結合の活性化または促進の関与に関係するATP依存性の活性化酵素のファミリーのいずれか1つをいう。E1活性化酵素は、アデニル化/チオエステル中間体の形成により、トランスチオール化反応を介して適当なublを対応するE2結合酵素に移す働きをする。形成された活性化ubl−E2は、標的タンパク質に対するublの最終的な結合を促進する。細胞シグナル伝達、細胞周期およびタンパク質の代謝回転に関わっている様々な細胞タンパク質は、E1活性化酵素(たとえば、NAE、UAE、SAE)により制御されるubl結合の基質である。文脈上他の意味に解すべき場合を除き、「E1酵素」という語は、以下に限定されるものではないが、nedd8活性化酵素(NAE(APPBP1/Uba3))、ユビキチン活性化酵素(UAE(Uba1))、sumo活性化酵素(SAE(Aos1/Uba2))またはISG15活性化酵素(Ube1L)、好ましくはヒトNAE、SAEまたはUAE、一層好ましくはNAEなど、任意のE1活性化酵素タンパク質をいうものとする。
【0027】
「E1酵素阻害剤」または「E1酵素の阻害剤」という語は、E1酵素と相互作用して、その酵素活性を阻害することができる、本明細書に定義するような構造を持つ化合物の意味で使用される。E1酵素活性を阻害するとは、基質ペプチドまたはタンパク質に対するユビキチン様(ubl)結合を活性化(たとえば、ユビキチン化、NEDD化、SUMO化)するE1酵素の能力を低下させること意味する。
【0028】
「脂肪族」または「脂肪族基」という語は、本明細書で使用する場合、完全に飽和しているか、または1つまたは複数の不飽和単位を含むが、芳香族ではない置換または非置換、直鎖、分枝または環状C1〜12炭化水素を意味する。たとえば、好適な脂肪族基は、置換または非置換、直鎖、分枝または環状アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、および(シルコアルキル(cylcoalkyl))アルキル、(シクロアルケニル)アルキルまたは(シクロアルキル)アルケニルなどのこれらのハイブリッドを含む。種々の実施形態では、脂肪族基は、1〜12個、1〜8個、1〜6個、1〜4個または1〜3個の炭素を持つ。
【0029】
「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」という語は、単独またはより大きな部分の一部として使用され、1〜12個の炭素原子を持つ直鎖および分枝鎖脂肪族基をいう。本発明では、「アルキル」という語は、脂肪族基を分子の残りの部分に結合する炭素原子が飽和炭素原子であるときに使用する。しかしながら、アルキル基は、他の炭素原子で不飽和を含んでもよい。したがって、アルキル基は、メチル、エチル、プロピル、アリル、プロパルギル、ブチル、ペンチルおよびヘキシルを含むが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明の目的のため、「アルケニル」という語は、脂肪族基を分子の残りの部分に結合する炭素原子が炭素−炭素二重結合の一部を形成しているときに使用する。アルケニル基は、ビニル、1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニルおよび1−ヘキセニルを含むが、これに限定されるものではない。
【0031】
本発明の目的のため、「アルキニル」という語は、脂肪族基を分子の残りの部分に結合する炭素原子が炭素−炭素三重結合の一部を形成しているときに使用する。アルキニル基は、エチニル、1−プロピニル、1−ブチニル、1−ペンチニルおよび1−ヘキシニルを含むが、これに限定されるものではない。
【0032】
「脂環式」という語は、単独またはより大きな部分の一部として使用され、3〜約14員の飽和または部分的に不飽和の環状脂肪族環系をいい、その脂肪族環系は、任意に置換されている。いくつかの実施形態では、脂環式は、3〜8個または3〜6個の環炭素原子を持つ単環式炭化水素である。非限定的な例として、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニルおよびシクロオクタジエニルが挙げられる。いくつかの実施形態では、脂環式は、6〜12個、6〜10個または6〜8個の環炭素原子を持つ架橋または縮合二環式炭化水素であり、二環式環系の任意の環は各々3〜8員である。
【0033】
いくつかの実施形態では、脂環式環の隣接する2つの置換基は、介在する環原子と一緒になって、任意に置換されている5〜6員の縮合芳香環または3〜8員の非芳香環を形成し、O、NおよびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を持つ。したがって、「脂環式」という語は、は、1つまたは複数のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環に縮合している脂肪族環を含む。非限定的な例として、ラジカルまたは結合点が脂肪族環上にある、インダニル、5,6,7,8−テトラヒドロキノキサリニル、デカヒドロナフチルまたはテトラヒドロナフチルが挙げられる。「脂環式」という語は、「炭素環」、「カルボシクリル」、「カルボシクロ」または「炭素環式」という語と同義で使われることがある。
【0034】
「アリール」および「ar−」という語は、単独またはより大きな部分の一部として使用され、たとえば、「アラルキル」、「アラルコキシ」または「アリールオキシアルキル」とは、各々が任意に置換されている1〜3個の環を含むC〜C14芳香族炭化水素をいう。好ましくは、アリール基は、C6〜10アリール基である。アリール基は、フェニル、ナフチルおよびアントラセニルを含むが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、アリール環上の隣接する2つの置換基は、介在する環原子と一緒になって、任意に置換されている5〜6員の縮合芳香族または4〜8員の非芳香環を形成し、O、NおよびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を持つ。したがって、「アリール」という語は、本明細書で使用する場合、芳香環が1つまたは複数のヘテロアリール環、脂環式環またはヘテロシクリル環に縮合し、芳香環上にラジカルまたは結合点がある基を含む。そうした縮合環系の非限定的な例として、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、フルオレニル、インダニル、フェナントリジニル、テトラヒドロナフチル、インドリニル、フェノキサジニル、ベンゾジオキサニルおよびベンゾジオキソリルが挙げられる。アリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式であってもよく、好ましくは単環式、二環式または三環式であり、一層好ましくは単環式または二環式である。「アリール」という語は、「アリール基」、「アリール部分」および「アリール環」という語と同義で使われることがある。
【0035】
「アラルキル」または「アリールアルキル」基は、どちらも任意に置換されている、アルキル基に共有結合したアリール基を含む。好ましくは、アラルキル基は、C6〜10アリール(C1〜6)アルキル、C6〜10アリール(C1〜4)アルキルまたはC6〜10アリール(C1〜3)アルキルであり、以下に限定されるものではないが、ベンジル、フェネチルおよびナフチルメチルがある。
【0036】
「ヘテロアリール」および「ヘテロar−」という語は、単独またはより大きな部分の一部として使用され、たとえば、ヘテロアラルキルまたは「ヘテロアラルコキシ」とは、5〜14個の環原子、好ましくは5、6、9または10個の環原子を持ち;環全体で6、10または14個のπ電子を共有し;炭素原子以外に1〜4個のヘテロ原子を持つ基をいう。「ヘテロ原子」という語は、窒素、酸素または硫黄をいい、窒素または硫黄の任意の酸化物および塩基性窒素の任意の四級化物を含む。ヘテロアリール基は、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、インドリジニル、プリニル、ナフチリジニルおよびプテリジニルを含むが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ヘテロアリールの隣接する2つの置換基は、介在する環原子と一緒になって、任意に置換されている5〜6員の縮合芳香族または4〜8員の非芳香環を形成し、O、NおよびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を持つ。したがって、「ヘテロアリール」および「ヘテロar−」という語は、本明細書で使用する場合、芳香族複素環が、1つまたは複数のアリール環、脂環式環またはヘテロシクリル環に縮合し、芳香族複素環上にラジカルまたは結合点がある基も含む。非限定的な例として、インドリル、イソインドリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、ジベンゾフラニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、4H−キノリジニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニルおよびピリド[2,3−b]−1,4−オキサジン−3(4H)−オンが挙げられる。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式または多環式であってもよく、好ましくは単環式、二環式または三環式であり、一層好ましくは単環式または二環式である。「ヘテロアリール」という語は、「ヘテロアリール環」、「ヘテロアリール基」または「複素環式芳香族化合物」という語と同義で使われることがあり、いずれの語も、任意に置換されている環を含む。「ヘテロアラルキル」という語は、ヘテロアリールで置換されているアルキル基をいい、アルキル部分およびヘテロアリール部分は独立に任意に置換されている。
【0037】
本明細書で使用する場合、「複素環」、「複素環式」、「複素環式ラジカル」および「複素環式環」という語は同義で使われ、飽和あるいは部分的に不飽和で、炭素原子以外に上記で定義した1個または複数個の、好ましくは1〜4個のヘテロ原子を持つ、安定な3〜7員の単環式部分または7〜10員の縮合もしくは6〜10員の架橋二環式複素環式部分をいう。複素環の環原子について使用する場合、「窒素」という語は、置換窒素を含む。一例を挙げると、酸素、硫黄または窒素から選択される1〜3個のヘテロ原子を持つヘテロシクリル環では、窒素は、N(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルなど)、NH(ピロリジニルなど)またはNR(N−置換ピロリジニルなど)であってもよい。複素環式環は、そのペンダント基に任意のヘテロ原子または炭素原子が結合して安定な構造をとっていてもよく、環原子のいずれかが任意に置換されていてもよい。そうした飽和または部分的に不飽和の複素環式ラジカルの例として、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニルおよびキヌクリジニルがあるが、これに限定されるものではない。
【0038】
いくつかの実施形態では、複素環式環上の隣接する2つの置換基は、介在する環原子と一緒になって、任意に置換されている5〜6員の縮合芳香環または3〜8員の非芳香環を形成し、O、NおよびSからなる群から選択される0〜3個の環ヘテロ原子を持つ。したがって、本明細書において「複素環」、「ヘテロシクリル」、「ヘテロシクリル環」、「複素環式基」、「複素環式部分」および「複素環式ラジカル」という語は同義で使われ、ヘテロシクリル環が1つまたは複数のアリール環、ヘテロアリール環または脂環式環に縮合している基を含み、ヘテロシクリル環上にラジカルまたは結合点があるインドリニル、3H−インドリル、クロマニル、フェナントリジニルまたはテトラヒドロキノリニルなどが挙げられる。ヘテロシクリル基は、単環式、二環式、三環式または多環式であってもよく、好ましくは単環式、二環式または三環式であり、一層好ましくは単環式または二環式である。「ヘテロシクリルアルキル」という語は、ヘテロシクリルで置換されているアルキル基をいい、アルキルおよびヘテロシクリル部分は独立に任意に置換されている。
【0039】
本明細書で使用する場合、「部分的に不飽和の」という語は、環原子間に少なくとも1個の二重または三重結合を含む環部分をいう。「部分的に不飽和の」という語は、複数の不飽和部位を持つ環を包含するものであるが、本明細書で定義したようなアリール部分またはヘテロアリール部分を含むことを意図してない。
【0040】
「ハロ脂肪族」、「ハロアルキル」、「ハロアルケニル」および「ハロアルコキシ」という語は、1個または複数個のハロゲン原子で置換されている場合がある、脂肪族基、アルキル基、アルケニル基またはアルコキシ基をいう。本明細書で使用する場合、「ハロゲン」または「ハロ」という語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。「フルオロ脂肪族」という語は、ハロゲンがフルオロであるハロ脂肪族をいう。フルオロ脂肪族の非限定的な例として、−CHF、−CHF、−CF、−CHCF、−CFCHおよび−CFCFが挙げられる。
【0041】
「リンカー基」または「リンカー」という語は、化合物の2つの部分を連結する有機部分を意味する。リンカーは一般に、酸素もしくは硫黄などの原子、−NH−、−CH−、−C(O)−、−C(O)NH−などのユニットまたはアルキレン鎖などの原子鎖を含む。リンカーの分子量は一般に、約14〜200の範囲、好ましくは14〜96の範囲であり、最大で原子約6個の長さである。いくつかの実施形態では、リンカーは、C1〜6アルキレン鎖である。
【0042】
「アルキレン」という語は、二価のアルキル基をいう。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、−(CH−であり、式中、nは正の整数、好ましくは1〜6、1〜4、1〜3、1〜2または2〜3である。置換アルキレン鎖は、1個または複数個のメチレン水素原子が置換基で交換されたポリメチレン基である。好適な置換基として、置換脂肪族基を対象に以下に記載する置換基が挙げられる。また、アルキレン鎖は、1つまたは複数の位置が脂肪族基または置換脂肪族基で置換されていてもよい。
【0043】
アルキレン鎖はまた、任意に官能基によって割り込まれ得る。アルキレン鎖は、内部のメチレン単位が官能基で交換されると、官能基によって「割り込まれる」。好適な「割り込む官能基」の例として、−C(R)=C(R)−、−C≡C−、−O−、−S−、−S(O)−、−S(O)−、−S(O)N(R)−、−N(R)−、−N(R)CO−、−N(R)C(O)N(R)−、−N(R)CO−、−C(O)N(R)−、−C(O)−、−C(O)−C(O)−、−CO−、−OC(O)−、−OC(O)O−、−OC(O)N(R)−、−C(NR)=N、−C(OR)=N−、−N(R)−N(R)−または−N(R)S(O)−が挙げられる。Rは各々独立に、水素または任意に置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基もしくはヘテロシクリル基であるか、または同一窒素原子上の2個のRは、窒素原子と一緒になって5〜8員の芳香環または非芳香環を形成し、その窒素原子以外にN、OおよびSから選択される0〜2個の環ヘテロ原子を持つ。Rは各々独立に水素であるか、または任意に置換されている脂肪族基、アリール基、ヘテロアリール基またはヘテロシクリル基である。
【0044】
−O−で「割り込まれる」C3〜6アルキレン鎖の例として、−CHOCH−、−CHO(CH−、−CHO(CH−、−CHO(CH−、−(CHOCH−、−(CHO(CH−、−(CHO(CH−、−(CHO(CH)−、−(CHO(CH−および−(CHO(CH)−が挙げられる。官能基で「割り込まれる」アルキレン鎖の他の例として、−CHZCH−、−CHZ(CH−、−CHZ(CH−、−CHZ(CH−、−(CHZCH−、−(CHZ(CH−、−(CHZ(CH−、−(CHZ(CH)−、−(CHZ(CH−および−(CHZ(CH)−が挙げられ、Zは上述の「割り込む」官能基の1つである。
【0045】
当業者であれば、割り込みのあるアルキレン鎖が官能基に結合している場合、ある種の組み合わせは、医薬品として使用するには安定性が不十分であることが分かるであろう。安定な化合物または化学的に実現可能な化合物のみが本発明の範囲内である。安定な化合物または化学的に実現可能な化合物とは、水分または他の化学反応条件の非存在下、約−80℃〜約+40℃の温度で少なくとも1週間保管した場合、化学構造が実質的に変化しない化合物、またはその状態が長時間維持されるため、患者への治療的または予防的投与に有用な化合物である。
【0046】
「置換された」という語は、本明細書で使用する場合、指定部分の水素ラジカルが特定の置換基のラジカルで交換されていることを意味する。ただし、置換の結果、安定な化合物または化学的に実現可能な化合物が得られる。「1つまたは複数の置換基」という語句は、本明細書で使用する場合、1から、結合可能な部位の数に基づき予想される最大の置換基数に相当するいくつかの置換基をいう。ただし、上述の安定性および化学的な実現可能性の条件を満たすものとする。他に記載がない限り、任意に置換されている基は、その基の置換可能な各位置に置換基を持っていてもよく、置換基は同一でも異なっていても構わない。
【0047】
本明細書で使用する場合、「独立に選択される」という語は、単一の化合物において、ある可変要素の複数の候補から、同じ要素が選択されても、異なる要素が選択されてもよいことを意味する。
【0048】
アリール基(アラルキル、アラルコキシ、アリールオキシアルキルおよび同種のもののアリール部分を含む)またはヘテロアリール基(ヘテロアラルキルおよびヘテロアラルコキシおよび同種のもののヘテロアリール部分を含む)は、1つまたは複数の置換基を含んでもよい。アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素原子の好適な置換基の例として、−ハロ、−NO、−CN、−R、−C(R)=C(R、−C≡C−R、−OR、−SR、−S(O)R、−SO、−SO、−SON(R、−N(R、−NRC(O)R、−NRC(O)N(R、−NRCO、−O−CO、−OC(O)N(R、−O−C(O)R、−CO、−C(O)−C(O)R、−C(O)R、−C(O)N(R、−C(O)N(R)C(=NR)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R)−C(O)R、−C(=NR)−N(R、−C(=NR)−OR、−N(R)−N(R、−N(R)C(=NR)−N(R、−NRSO、−NRSON(R、−P(O)(R、−P(O)(OR、−O−P(O)−ORおよび−P(O)(NR)−N(Rが挙げられ、式中、Rは、任意に置換されている脂肪族またはアリール基であり、RおよびRは上記で定義した通りであるか、または隣接する2つの置換基は、介在する原子と一緒になって、5〜6員の不飽和または部分的に不飽和の環を形成し、N、OおよびSからなる群から選択される0〜3個の環原子を持つ。
【0049】
脂肪族基または非芳香族複素環式環は、1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。脂肪族基または非芳香族複素環式環の飽和炭素の好適な置換基の例として、以下に限定されるものではないが、アリール基またはヘテロアリール基の不飽和炭素に関連して上述した置換基、および=O、=S、=C(R、=N−N(R、=N−OR、=N−NHC(O)R、=N−NHCO、=N−NHSOまたは=N−Rが挙げられ、RおよびRは各々、上記で定義した通りである。
【0050】
非芳香族複素環式環の窒素原子の好適な置換基として、−R、−N(R、−C(O)R、−CO、−C(O)−C(O)R−C(O)CHC(O)R、−SO、−SON(R、−C(=S)N(R、−C(=NH)−N(Rおよび−NRSOがあり、Rは各々、上記で定義した通りである。
【0051】
本明細書において「約(about)」という語は、およそ、の領域で、ほぼまたは前後という意味で使用される。「約」という語を数値範囲と共に使用する場合、その範囲を修飾して、記載した数値の範囲を大小に広げる。一般に、本明細書における「約」という語は、ある数値を修飾してその値を大小10%変化させるために使用する。
【0052】
本明細書で使用する場合、「を含む(comprises)」という語は、「を含む(includes)が、これに限定されるものではない」を意味する。
【0053】
他に記載がない限り、本明細書に記載する構造は、1個または複数個の同位体濃縮原子が存在する点だけが異なる化合物を含むことも意図している。たとえば、水素原子がジュウテリウムまたはトリチウムで、または炭素原子が13C−または14C−濃縮炭素で置換されていることを除いて、本構造を持つ化合物は、本発明の範囲内である。
【0054】
また、本発明のある種の化合物には互変異性体が存在する場合があることも当業者には明らかであり、化合物のそうした互変異性体はすべて本発明の範囲内である。立体化学的配置を明示的に規定しない限り、本明細書に記載する構造は、その構造の立体化学形態、すなわち、各不斉中心のR配置およびS配置をすべて含むことを意図している。したがって、他に記載がない限り、本化合物の単一の立体化学異性体のほか、エナンチオマー混合物およびジアステレオマー混合物も本発明の範囲内である。例として、Rが−OHである式(VI)の化合物には、Rを持つ炭素原子のR配置またはS配置があり得る。RおよびS立体化学異性体およびその混合物はすべて本発明の範囲内に含まれる。
【0055】
ある不斉中心の立体化学的配置が構造によって定義される場合、他に記載がない限り、表示の立体配置は分子内の他の不斉中心との相対的な立体化学を示す。立体化学的配置が化学名によって定義される場合、記号(rel)、(R)および(S)は相対立体化学を示すのに対し、記号(R)、(S)、(+)、(−)および(abs)は絶対立体化学を示す。
【0056】
式(I)〜(VI)の化合物の場合、絶対立体化学を示す明示的な記載がない限り、アスタリスクが付いた位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を示す。好ましくは、化合物のジアステレオマー純度は少なくとも80%、一層好ましくは少なくとも90%、なお一層好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%である。本明細書で使用する場合、「ジアステレオマー純度」という語は、表示の相対立体化学を持つ化合物の量をいい、存在する全ジアステレオマーの総量に対する比率で表す。
【0057】
いくつかの実施形態では、アスタリスクが付いた位置で示す立体化学的配置は、絶対および相対立体化学を示す。好ましくは、化合物のエナンチオマー純度は少なくとも80%、一層好ましくは少なくとも90%、なお一層好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも99%である。本明細書で使用する場合、「エナンチオマー純度」という語は、表示の絶対立体化学を持つ化合物の量をいい、表示の化合物およびそのエナンチオマーの総量に対する比率で表す。
【0058】
ジアステレオマーおよびエナンチオマーの純度の判定方法は、当該技術分野において公知である。ジアステレオマー純度は、化合物とそのジアステレオマーとを定量的に区別できる任意の分析方法により判定すればよい。好適な分析方法の例として、核磁気共鳴分光法(NMR:nuclear magnetic resonance spectroscopy)、ガスクロマトグラフィー(GC:gas chromatography)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC:high performance liquid chromatography)があるが、これに限定されるものではない。同様に、エナンチオマー純度も、化合物とそのエナンチオマーとを定量的に区別できる任意の分析方法により判定すればよい。好適な分析方法の例として、キラルカラムの充填剤を用いたGCまたはHPLCがあるが、これに限定されるものではない。また、エナンチオマーについては、任意に濃縮された誘導体化剤、たとえば、モッシャー酸で最初に誘導体化すれば、アキラルカラムの充填剤を用いたGCまたはHPLCでも識別可能である。同様に、エナンチオマーは、任意に濃縮された誘導体化剤で最初に誘導体化すれば、NMRでも識別可能である。
【0059】
本明細書で使用する場合、「ヒドロキシル保護基」という語は、i)基質のヒドロキシル官能基と反応して被保護基質を形成する;ii)被保護基質が受ける反応条件に安定である;iii)基質に存在する他の官能基に適合する条件下で、被保護基質から除去してヒドロキシル官能基を遊離できる化学基をいう。本明細書で使用する場合、「環状ジオール保護基」という語は、i)基質のジオール官能基と反応して被保護基質を形成する;ii)被保護基質が受ける反応条件に安定である;iii)基質に存在する他の官能基に適合する条件下で、被保護基質から除去してジオール官能基を遊離できる化学基をいう。1,2−および1,3−ジオールのヒドロキシル基については、ヒドロキシル保護基で別々に保護してもよいし、または環状ジオール保護基で一緒に保護してもよい。
【0060】
本明細書で使用する場合、「酸に不安定な保護基」という語は、i)基質の官能基と反応して被保護基質を形成する;ii)被保護基質が受ける反応条件に安定である、およびiii)基質に存在する他の官能基に適合する酸性条件下で、被保護基質から除去して官能基を遊離できる化学基をいう。アミン基およびヒドロキシル基は、酸に不安定な保護基で保護してもよい官能基に含まれる。
【0061】
本明細書で使用する場合、「アミン保護基」という語は、i)基質のアミン官能基と反応して被保護基質を形成する;ii)被保護基質が受ける反応条件に安定である;iii)基質に存在する他の官能基に適合する条件下で、被保護基質から除去してアミンを遊離できる化学基をいう。
【0062】
本発明のプロセスおよび化合物に用いるのに好適なヒドロキシル保護基、環状ジオール保護基、酸に不安定な保護基およびアミン保護基は、当業者に知られている。そうした保護基の化学的性質、その導入方法および除去方法は、たとえば、P.G.M.Wuts and T.W.Greene,Greenes Protective Groups in Organic Synthesis(4th ed.),John Wiley & Sons,NJ(2007)で確認できる。
【0063】
本発明のプロセスおよび化合物については、以下に記載する詳細な説明および説明に役立つ実施例でさらに明らかになる。
【0064】
第1の態様では、本発明は、式(II)の化合物を式(III)の化合物と組み合わせて式(I)の化合物を形成するプロセスに関する。一実施形態では、Rが−CHCH(ORl’であり、Rl’は各々独立にC1〜6脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている5または6員の環状アセタール部分を形成しており、このプロセスは、下記ステップ:
a) 塩基の存在下で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物で処理して式(IV)の化合物を得るステップ;および
b) 式(IV)の化合物を含む反応混合物を酸で処理して式(I)の化合物を形成するステップ
を含む。
【0065】
ステップa)では、式(II)の化合物と式(III)の化合物との間で求核置換反応を行い式(IV)の化合物を形成する。次に式(IV)の化合物は、ステップb)の条件により単離せずに式(I)の化合物に変換することができる。あるいは、式(IV)の化合物は、当業者に公知の方法により単離および/または精製し、別の反応で式(I)の化合物に変換してもよい。(J.A.Secrist et al.J.Med.Chem.,1984,27,534−536;R.B.Talekar and R.H.Wightman Tetrahedron,1997,53,3831−3842を参照されたい)。ステップb)では、酸による処理を行い、環化と共にアセタール基を酸性触媒により除去して7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル環系を形成する。
【0066】
ステップa)は、アルカリ土類金属塩基または有機アミン塩基などの塩基の存在下で行うと都合がよい場合がある。アルカリ土類金属塩基の例として、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸水素リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水素化リチウム、水素化カリウム、水素化ナトリウム、リチウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシドおよびナトリウムtert−ブトキシドがあるが、これに限定されるものではない。他のアルカリ土類金属塩基として、炭酸セシウムおよび水酸化セシウムがあるが、これに限定されるものではない。有機アミン塩基として、トリアルキルアミン、環状アミン、ピリジンおよび置換ピリジンがあるが、これに限定されるものではない。その例としては、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、ジ−tertブチルピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルピペリジン、テトラメチルグアニジン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクル[4.3.0]ノン−5−エンおよびN,N’ジイソプロピルエチルアミンがあるが、これに限定されるものではない。他の有機アミン塩基には、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミンおよびトリプロピルアミンがあるが、これに限定されるものではない。好ましくは、ステップa)で使用する塩基は、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよび2,6−ルチジンから選択される。
【0067】
ステップa)の処理は周囲反応温度で行っても、高い反応温度で行ってもよいが、高温であれば反応時間が短くなることがある。どの反応温度および反応時間を選択するのがよいかは主に、使用する塩基および溶媒よって異なる。当業者であれば、使用している反応条件に応じて好適な反応温度および反応時間を選択することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、ステップa)を少なくとも約20℃、45℃または60℃の反応温度で行ってもよい。いくつかの実施形態では、ステップa)を120℃以下、105℃以下または90℃以下の反応温度で行ってもよい。こうした高温および低温を包含する範囲はいずれも、本発明の範囲内に含まれる。ステップa)は、好ましくは約20℃〜約120℃、約45℃〜約105℃または約60℃〜約90℃の範囲の反応温度で行う。
【0069】
ステップb)で使用する酸は、鉱酸または有機酸である。鉱酸の例として、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸およびリン酸があるが、これに限定されるものではない。有機酸の例として、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ギ酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸があるが、これに限定されるものではない。好ましくは、ステップb)の酸は、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、p−トルエンスルホン酸、トリクロロ酢酸、酢酸およびギ酸からなる群から選択される。
【0070】
ステップb)の処理は、好ましくは周囲反応温度または高い反応温度で行うが、高温であれば反応時間が短くなることがある。どの反応温度および反応時間を選択するのがよいかは主に、使用する酸および溶媒よって異なる。当業者であれば、使用している反応条件に応じて好適な反応温度および反応時間を選択することができる。
【0071】
いくつかの実施形態では、ステップb)を少なくとも約20℃、40℃または50℃の反応温度で行ってもよい。いくつかの実施形態では、ステップb)を約90℃以下、70℃以下、60℃以下または50℃以下の反応温度で行ってもよい。こうした高温および低温を包含する範囲はいずれも、本発明の範囲内に含まれる。ステップb)は、好ましくは約20℃〜約90℃、約40℃〜約60℃または約50℃〜約60℃の範囲の反応温度で行う。いくつかの他の実施形態では、ステップb)を好ましくは約45℃〜約60℃の範囲の反応温度で行う。
【0072】
いくつかの実施形態では、ステップa)およびステップb)を独立に、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、トルエン、アニソール、アセトニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合物の1つまたは複数を含む溶媒または希釈液中で行う。ある実施形態では、ステップa)およびステップb)をそれぞれ、水性エタノール、水性イソプロパノール、水性sec−ブタノール、水性テトラヒドロフラン、水性1,4−ジオキサンまたはこれらの混合物を含む溶媒中で行う。いくつかの実施形態では、ステップa)およびステップb)をそれぞれ、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、テトラヒドロフランまたは1,4−ジオキサンまたはこれらの混合物を含む溶媒中で行う。
【0073】
いくつかの実施形態では、反応終了後、反応混合物を周囲温度まで放冷し、濃縮し、次いで水溶液に加え、続いて得られた生成物を濾過により集めて乾燥させる。いくつかの実施形態では、この濃縮した反応混合物を水に加える。いくつかの他の実施形態では、濃縮した反応混合物を塩化ナトリウム水溶液に加える。さらに他のいくつかの実施形態では、濃縮した反応混合物を塩基性水溶液に加えてステップb)で導入した酸を中和する。塩基性水溶液の例として、水性炭酸ナトリウム、水性炭酸カリウムおよび水性重炭酸ナトリウムがあるが、これに限定されるものではない。
【0074】
好ましくは、Rが−CHCH(ORl’である式(I)の化合物を形成するためのステップa)およびb)を含むプロセスは、以下の特徴:
(i) ステップa)の塩基がトリエチルアミンであること;
(ii) ステップa)の処理を水性イソプロパノール中で行うこと;
(iii) ステップb)の処理を水性イソプロパノール中で行うこと;
(iv) ステップb)の酸が塩酸であること;
(v) ステップa)の処理を約60℃〜約90℃の範囲の反応温度で行うこと;および
(vi) ステップb)の処理を約40℃〜約60℃の範囲の反応温度で行うこと
の少なくとも1つを特徴とする。
【0075】
いくつかの実施形態では、Rl’が−CHCH(ORl’の場合、式(IV)の化合物を当業者に公知の方法により単離および任意に精製し、別の反応で式(I)の化合物に変換してもよい。そうした実施形態の条件は、ステップb)に関連して上述した通りである。好ましくは、Rが−CHCH(ORl’である式(IV)の化合物から式(I)の化合物を形成するプロセスは、以下の特徴:
(i) 処理を水性イソプロパノール中で行うこと;
(ii) 酸が塩酸であること;および
(iii) 処理を約50℃〜約60℃の範囲の反応温度で行うこと
の少なくとも1つを特徴とする。
【0076】
別の実施形態では、式(I)の化合物を形成するプロセスは、塩基の存在下で、Rが−CHCHOである式(III)の化合物で式(II)の化合物を処理することを含む。この実施形態では、式(I)の化合物を形成するための式(II)の化合物と式(III)の化合物との組み合わせを単一のステップ、ステップaa):
aa) 塩基の存在下で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物により処理するステップ
で行う。
【0077】
ステップaa)に好適で好ましい塩基、溶媒および反応温度は、ステップa)に関連して上述した通りである。
【0078】
好ましくは、塩基の存在下で、式(I)の化合物を形成するプロセスは、Rが−CHCHOである式(III)の化合物により式(II)の化合物を処理することを含み、以下の特徴:
(i) ステップaa)の塩基がトリエチルアミンであること;
(ii) ステップaa)の処理をイソプロパノール中で行うこと;および
(iii) ステップaa)の処理を約60℃〜約90℃の範囲の反応温度で行うこと
の少なくとも1つを特徴とする。
【0079】
いくつかの実施形態では、反応終了後、反応混合物を周囲温度まで放冷し、濃縮し、次いで水溶液に加え、続いて得られた生成物を濾過により集めて乾燥させる。いくつかの実施形態では、この濃縮した反応混合物を水に加える。いくつかの他の実施形態では、濃縮した反応混合物を塩化ナトリウム水溶液に加える。さらに他のいくつかの実施形態では、濃縮した反応混合物を塩基性水溶液に加える。塩基性水溶液の例として、水性炭酸ナトリウム、水性炭酸カリウムおよび水性重炭酸ナトリウムがあるが、これに限定されるものではない。
【0080】
いくつかの実施形態では、上記のプロセスは、
c) 式(I)の化合物を式HNRのアミンで処理して式(V)の化合物またはその塩を形成するステップ
をさらに含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、ステップc)を酸または塩基の存在下で行うと都合がよい場合がある。いくつかの実施形態では、その塩基は、アルカリ土類金属塩基または有機アミン塩基である。そうした塩基の例は、ステップa)に関連して上述してある。好ましくは、ステップc)の塩基は、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジンおよび2,6−ルチジンから選択される。塩基は、等モル量で使用しても、過剰量で使用しても、あるいは、適切な場合には反応の溶媒として使用してもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、ステップc)の処理を、エタノール、イソプロパノール、sec−ブタノール、n−ブタノール、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、トルエン、アニソール、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシド、ジグリムまたはこれらの混合物の1つまたは複数を含む溶媒または希釈液中で行う。いくつかの実施形態では、ステップc)を、水中、または上記の溶媒の1つまたは複数(one of more)を含む水性溶媒混合物中で行ってもよい。いくつかの実施形態では、ステップc)を、溶媒または希釈液を用いずに過剰量のアミンHNRを用いて行ってもよい。いくつかの実施形態では、ステップc)の処理を、トルエン、アニソール、N,N’−ジメチルホルムアミド、sec−ブタノール、ジグリム、ジメチルアセトアミドまたはN−メチルピロリジノンの1つまたは複数を含む(compromising)溶媒または希釈液中で行う。
【0083】
ステップc)の処理は、好ましくは周囲反応温度または高い反応温度で行う。いくつかの実施形態では、ステップc)の処理をマイクロ波照射条件下で行う。どの反応温度および反応時間を選択するのがよいかは主に、使用する塩基および溶媒よって異なる。当業者であれば、使用している反応条件に応じて好適な反応温度および反応時間を選択することができる。
【0084】
いくつかの実施形態では、ステップc)を、少なくとも約50℃、90℃または130℃の反応温度で行ってもよい。いくつかの実施形態では、ステップc)を、反応温度約160℃以下または145℃以下で行ってもよい。こうした高温および低温の反応温度を包含する範囲はいずれも、本発明の範囲内に含まれる。ステップc)は、好ましくは約50℃〜約160℃、約90℃〜約145℃または約130℃〜約145℃の範囲の反応温度で行う。
【0085】
ステップc)の処理は任意に、高い反応圧力下で行ってもよい。当業者であれば、使用している反応条件に応じて好適な反応圧力を選択することができる。いくつかの実施形態では、ステップc)を、少なくとも約50psiまたは70psiの反応圧力で行ってもよい。いくつかの実施形態では、ステップc)を、約120psi以下または110psi以下の反応圧力で行ってもよい。こうした高いおよび低い反応圧力を包含する範囲はいずれも、本発明の範囲内に含まれる。ステップc)で高い反応圧力を使用する場合、約50psi〜約120psiまたは約70psi〜約110psiの範囲の反応圧力で行うのが好ましい。いくつかの他の実施形態では、ステップc)で高い反応圧力を使用する場合、約70psi〜約100psiの範囲の反応圧力で行うのが好ましい。
【0086】
いくつかの実施形態では、ステップc)の終了後、反応混合物を周囲温度および圧力まで冷却し、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエンまたはtert−ブチルメチルエーテルなどの溶媒で抽出する。いくつかの他の実施形態では、ステップc)の終了後、反応混合物を周囲温度および圧力まで冷却し、濃縮し、水、または酢酸エチル、塩化メチレン、アセトン、酢酸イソプロピル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、トルエン、tert−ブチルメチルエーテル、ジエチルエーテルもしくはアセトニトリルなどの溶媒に直接加えて生成物の沈殿を行う。その後、生成物を濾過により集めて乾燥させる。
【0087】
好ましくは、式(I)の化合物から式(V)の化合物を形成する、ステップc)を含むプロセスは、以下の特徴:
(i) ステップc)の前記塩基がN,N’−ジイソプロピルエチルアミンであること;
(ii) ステップc)の処理をsec−ブタノール中で行うこと;
(iii) ステップc)の処理を約130℃〜約145℃の範囲の反応温度で行うこと;および
(iv) ステップc)の処理を約70psi〜約100psiの範囲の反応圧力で行うこと
の少なくとも1つを特徴とする。
【0088】
本発明はさらに、上記で定義したような式(V)の化合物を形成するプロセスであって、上記で定義したような式(Ia)の化合物を式HNRのアミンで処理することを含む、プロセスに関する。いくつかの実施形態では、Rg’は、ハロ、−O−R、−S−R、−S(O)Rまたは−S(O)であり;式中、Rは、C1〜4脂肪族、アルキルスルフォニル、フルオロアルキルスルホニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているアリールスルホニルであり、Rは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである。
【0089】
g’が−O−R、−S−R、−S(O)Rまたは−S(O)である式(Ia)の化合物は、当業者に公知の方法により式(I)の化合物から調製してもよい。たとえば、式(I)の化合物のRをアルコキシドまたはチオールで置換して式(Ia)の化合物を生成してもよい。この式(Ia)の化合物の場合、Rg’は、−O−R、−S−Rであり、Rは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであるか、またはRは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである。Rg’が−S−Rである化合物をさらに酸化して、Rg’が−S(O)Rまたは−S(O)である化合物を生成してもよい。
【0090】
がアルキルスルホニル、フルオロアルキルスルホニルまたは任意に置換されているアリールスルホニルであるとき、Rg’が−O−Rである式(Ia)の化合物を生成するには、最初に式(I)の化合物のRをヒドロキシル基に変換し、続いて適切なスルホニルクロリドまたは無水物で処理しなければならない。Rのヒドロキシル基への変換は、NaOHなどの塩基性条件下での処理により直接行ってもよいし、あるいはその代わりにRg’が−OCHである式(Ia)の化合物を、水性NaOHまたはトリメチルシリルクロリド/ヨウ化ナトリウムによる処理で対応するアルコールに加水分解して行ってもよい。
【0091】
式(Ia)の化合物のRg’とHNRとの置換は、アルカリ土類金属塩基または有機アミン塩基などの塩基の存在下で行うと都合がよい場合がある。好適な塩基の例は、ステップc)に関連して上述してある。塩基は、等モル量で使用しても、過剰量で使用しても、あるいは、適切な場合には反応の溶媒として使用してもよい。
【0092】
式(Ia)の化合物のRg’とHNRとの置換は、好適な溶媒または希釈液の存在下で行うと都合がよい場合がある。好適な溶媒の例は、ステップc)に関連して上述してある。いくつかの実施形態では、Rg’の置換を、溶媒または希釈液を用いずに過剰量のアミンHNRを用いて行ってもよい。
【0093】
式(Ia)の化合物のRg’とHNRとの置換は、好ましくは周囲反応温度または高い反応温度で行う。好適な温度および温度の範囲は、ステップc)に関連して上述した通りである。
【0094】
式(Ia)の化合物のRg’とHNRとの置換は、任意に高い反応圧力下で行ってもよい。好適な圧力および圧力の範囲は、ステップc)に関連して上述した通りである。
【0095】
いくつかの実施形態では、式(Ia)の化合物のRg’とHNRとの置換をパラジウム触媒/配位子系の存在下で行ってもよい。好適な金属触媒系は、Prim D.et al.Tetrahedron,2002,58,20412 and Gunda P.et al.Angew.Chem.Intl.Ed.,2004,43,6372に記載されているものなどである。好適な塩基として、ナトリウムtert−ブトキシド、炭酸セシウムおよびKPOがあるが、これに限定されるものではない。好適な溶媒として、トルエン、1,4−ジオキサン、tert−ブタノールおよびこれらの混合物があるが、これに限定されるものではない。
【0096】
いくつかの実施形態では、パラジウム触媒/配位子系を用いる場合、Rg’は、クロリド、ブロミド、ヨージド、トリフラート、またはRが、任意に置換されているアリールスルホニルである−O−Rである。そうしたある種の実施形態では、Rg’は、クロリド、ブロミドまたはトリフラートである。
【0097】
いくつかの実施形態では、本発明のプロセスは、下記ステップ:
d)Rが水素である式(V)の化合物をスルファモイル化して下記式(VI)の化合物またはその塩を形成するステップ
をさらに含む。
【0098】
【化11】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;および
式(VI)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、R、RおよびRは各々、式(V)に定義する通りである。
【0099】
式(VI)の化合物は、E1活性化酵素、特にNAEの有効な阻害剤であり、Langston S.et al.米国特許出願第11/700,614号に開示されている。この特許出願については、開示されているすべての式ならびにすべての化学種およびサブ化学種の説明を含め、参照によってその全体を本明細書に援用する。
【0100】
式(V)の化合物のRが水素以外である場合、すなわち、Rがヒドロキシル保護基である場合、これを式(VI)の化合物へ変換する前に除去しなければならない。当業者に公知の方法により脱保護ステップを行ってもよい。
【0101】
いくつかの実施形態では、スルファモイル化のステップd)は、下記ステップ:
I−A) Rが水素または酸に不安定な保護基であるRNHS(O)Cl溶液で溶媒中の塩基を処理するステップ;
II−A) I−A)で形成した反応混合物を式(V)の化合物で処理するステップ;および
III−A) 任意に、II−A)で形成した反応混合物を酸で処理するステップ
を含む。
【0102】
ステップd)のI−A)、II−A)およびIII−A)は、好適な溶媒または希釈液の存在下で行うと都合がよい場合がある。好適な溶媒または希釈液は、ステップd)のI−A)、II−A)およびIII−A)でそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好適な溶媒の例として、酢酸エチル、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン、トルエン、アニソール、アセトニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシドおよびこれらの混合物があるが、これに限定されるものではない。いくつかの実施形態では、ステップd)のI−A)、II−A)およびIII−A)をそれぞれ、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、アセトニトリル、N,N’−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、DMEまたはこれらの混合物を含む溶媒中で行う。
【0103】
ステップd)のI−A)の塩基は、有機アミン塩基である。有機アミン塩基の例として、トリアルキルアミン、ピリジンおよび置換ピリジンがあるが、これに限定されるものではない。これらの例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジン、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクル[4.3.0]ノン−5−エン、スパルテインおよびN,N’ジイソプロピルエチルアミンがあるが、これに限定されるものではない。
【0104】
いくつかの実施形態では、ステップd)のI−A)において、反応の温度を約15℃未満に維持できる十分な速度でRNHS(O)Clを溶媒に加え;ステップd)のII−A)において、反応混合物を、好ましくは約−10℃〜0℃まで冷却し、次いで式(V)の化合物を未希釈で、または溶媒中の溶液として加える。他の実施形態では、ステップd)のI−A)を周囲温度で行い、ステップd)のII−A)において、反応混合物を、好ましくは約−10℃〜0℃まで冷却し、次いで式(V)の化合物を未希釈で、または溶媒中の溶液として加える。いくつかの実施形態では、ステップd)のI−A)を周囲温度で行い、次いでステップd)のII−A)において、式(V)の化合物を周囲温度にて未希釈で、または溶媒中の溶液として加える。いくつかの実施形態では、式(V)の化合物の添加後、反応混合物を周囲温度まで昇温する。
【0105】
いくつかの他の実施形態では、スルファモイル化のステップd)は、下記ステップ:
I−B) 式(V)の化合物を塩基で処理するステップ;
II−B) ステップI−B)で形成した反応混合物を、Rが水素または酸に不安定な保護基であるRNHS(O)Clの溶液で処理するステップ;および
III−B) 任意に、ステップIII−B)で形成した反応混合物を酸で処理するステップ
を含む。
【0106】
ステップd)のI−B)、II−B)およびIII−B)は、好適な溶媒または希釈液の存在下で行うと都合がよい場合がある。好適な溶媒または希釈液は、ステップd)のI−B)、II−B)およびIII−B)でそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好適な溶媒の例は、ステップd)のI−A)、II−A)およびIII−A)に関連して上述した通りである。
【0107】
ステップd)のI−B)の塩基は強塩基である。強塩基の例として、n−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、カリウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザン、カリウムヘキサメチルジシラザン、ナトリウムヘキサメチルジシラザンおよびカリウムtert−ブトキシドがあるが、これに限定されるものではない。
【0108】
式RNHS(O)Clの化合物の場合、Rは、水素またはアミン保護基である。いくつかの実施形態では、Rは水素である。他の実施形態では、Rは酸に不安定な保護基である。ある特定の実施形態では、Rは−C(O)N(Ph)である。他の特定の実施形態では、Rは、−C(O)OC(R(R)であり、式中、Rは各々独立に、任意に置換されているC1〜10脂肪族または任意に置換されているアリールから選択され、Rは、任意に置換されているC1〜10脂肪族または任意に置換されているアリールである。他のいくつかの特定の実施形態では、Rは、−C(O)OC(R(R)であり、式中、Rは各々独立に、水素または任意に置換されているC1〜10脂肪族から選択され、Rは、任意に置換されているC1〜10脂肪族または任意に置換されているアリールである。さらに他のいくつかの特定の実施形態では、Rは、−C(O)OC(R(R)であり、式中、1個のRは、任意に置換されているC1〜10脂肪族であり、もう1個のRは、Rと一緒になって、任意に置換されているC3〜6脂環式環を形成している。
【0109】
いくつかの実施形態では、Rはメチルまたはフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは各々独立にメチル、エチル、ブチル、ヘキシル、オクチルまたはフェニルである。いくつかの他の実施形態では、Rは各々独立に水素、メチルまたはエチルである。いくつかの他の実施形態では、1個のRは、Rと一緒になってシクロプロピルまたはシクロヘキシルになっている。好ましい実施形態では、Rは−C(O)OCMe、−C(O)OC(Me)Ph、−C(O)OC(Et)Phまたは−C(O)OC(オクチル)Phである。他の好ましい実施形態では、Rは−C(O)OCHPhまたは−C(O)OCH(Me)Phである。さらに他の好ましい実施形態では、Rは、C(O)OC(Me)Etまたは下記式である。
【0110】
【化12】

ある好ましい実施形態では、Rは、−C(O)OCMe、−C(O)OCHPh、−C(O)OCH(Me)Ph、C(O)OC(Me)Etおよび下記式からなる群から選択される。
【0111】
【化13】

いくつかの他の実施形態では、スルファモイル化のステップd)は、下記ステップ:
I−C) 式(V)の化合物をスルファモイル化試薬R−S(O)および酸で処理するステップ;および
II−C) 任意に、I−C)で形成した反応混合物を酸で処理するステップ
を含み、
式中、Rは上記のような要素および好ましい要素を持つ。
【0112】
式R−S(O)の化合物の場合、Xは、第三級アミンまたは窒素含有ヘテロアリールである。いくつかの実施形態では、Xは第三級アミンである。好適な第三級アミンの例として、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(DBU)、1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、1,5−ジアザビシクル[4.3.0]ノン−5−エン、スパルテインおよびN,N’ジイソプロピルエチルアミンがあるが、これに限定されるものではない。好適な第三級アミンの他の例として、トリブチルアミン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−エチルモルホリンおよびトリプロピルアミンがあるが、これに限定されるものではない。
【0113】
いくつかの他の実施形態では、Xは窒素含有ヘテロアリールである。好適な窒素含有ヘテロアリールの例として、非置換または置換ピリジン、非置換(unsubsituted)または置換イミダゾールおよび非置換または置換ピロールがあるが、これに限定されるものではない。
【0114】
いくつかの他の実施形態では、Xはピリジンまたは置換ピリジンである。ピリジンまたは置換ピリジンの例として、ピリジン、コリジン、2,6−ルチジン、4−ジメチルアミノピリジン、2,6−ジ−tert−ブチルピリジンおよび2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルピリジンがあるが、これに限定されるものではない。
【0115】
好ましい実施形態では、Xは、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1−アザビシクロ[2.2.2]オクタン、N,N’−ジメチルピペラジン、N−エチルモルホリンおよびピリジンからなる群から選択される。ある好ましい実施形態では、Xはトリエチレンジアミンである。
【0116】
ステップd)のI−C)およびII−C)は、好適な溶媒または希釈液の存在下で行うと都合がよい場合がある。好適な溶媒の例は、ステップd)のI−A)、II−A)およびIII−A)に関連して上述した通りである。
【0117】
ステップd)のI−C)で使用する酸は、鉱酸でも有機酸でもよい。鉱酸の例として、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸およびリン酸があるが、これに限定されるものではない。有機酸の例として、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、安息香酸、ギ酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸があるが、これに限定されるものではない。
【0118】
いくつかの実施形態では、ステップd)のI−C)の処理を、反応温度を約10℃未満に維持するような速度で行う。いくつかの実施形態では、ステップd)のI−C)の処理を周囲温度で行う。いくつかの他の実施形態では、ステップd)のI−C)において、反応が終了するまでスルファモイル化試薬および酸を追加して反応混合物を処理する。いくつかのそうした実施形態では、追加による処理を室温で行う。他のそうした実施形態では、追加による処理を約10℃未満の反応温度で行う。
【0119】
いくつかの実施形態では、スルファモイル化のステップd)は、下記ステップ:
I−D) 式(V)の化合物をスルファモイル化試薬R−S(O)で処理するステップ;および
II−D) 任意に、ステップd)のI−D)で形成した反応混合物を酸で処理するステップ;
を含み、
式中、RおよびXは、上記のような要素および好ましい要素を持つ。
【0120】
いくつかの実施形態では、式(V)の化合物および式R−S(O)の化合物を混ぜ合わせてから好適な溶媒または希釈液を加えると、ステップd)のI−D)の処理が起こる。いくつかの他の実施形態では、式R−S(O)の化合物を、好適な溶媒または希釈液に溶かした式(V)の化合物に加えると、ステップd)のI−D)の処理が起こる。さらに他のいくつかの実施形態では、式(V)の化合物を、好適な溶媒または希釈液に溶かした式R−S(O)の化合物に加えると、ステップd)のI−D)の処理が起こる。
【0121】
ステップd)のI−D)およびII−D)は、好適な溶媒または希釈液の存在下で行うと都合がよい場合がある。好適な溶媒または希釈液は、ステップd)のI−D)およびII−D)でそれぞれ同一でも異なっていてもよい。好適な溶媒の例は、ステップd)のI−A)、II−A)およびIII−A)に関連して上述した通りである。いくつかの実施形態では、ステップd)のI−D)およびII−D)を、アセトニトリル、N,N’−ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチルホルマムド(dimethylformamde)、N−メチルピロリジノン、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合物を含む溶媒中で行う。
【0122】
ステップd)のI−D)の処理は、好ましくは周囲反応温度または高い反応温度で行う。当業者であれば、使用している反応条件に応じて好適な反応温度および反応時間を選択することができる。
【0123】
いくつかの実施形態では、ステップd)のI−D)を少なくとも約0℃、25℃または40℃の反応温度で行ってもよい。いくつかの実施形態では、ステップd)のI−D)を反応温度55℃以下、65℃以下または95℃以下で行ってもよい。こうした高温および低温の反応温度を包含する範囲はいずれも、本発明の範囲内に含まれる。ステップd)のI−D)は、好ましくは約0℃〜約95℃、約25℃〜約65℃または約40℃〜約55℃の範囲の反応温度で行う。
【0124】
好ましくは、ステップd)のI−D)およびII−Dを含む、式(V)の化合物から式(VI)の化合物を形成するプロセスは、以下の特徴:
(i) ステップd)のI−D)の処理をアセトニトリル中で行うこと;および
(ii) d)のI−D)の処理を約40℃〜約55℃の範囲の反応温度で行うこと
の少なくとも1つを特徴とする。
【0125】
いくつかの実施形態では、ステップd)のI−C)またはステップd)のI−D)を処理する前に式R−S(O)の化合物をin situで形成する。
【0126】
いくつかの他の実施形態では、式R−S(O)の化合物を、ステップd)のI−C)またはステップd)のI−D)に使用する前に単離する。そうしたいくつかの実施形態では、Rが−C(O)OC(R(R)である式R−S(O)の化合物の形成は、下記ステップ:
I−E) (R)(RC−OHをクロロスルホニルイソシアナートで処理するステップ;
II−E) ステップI−E)で形成した反応混合物をXで処理するステップ;および
III−E) スルファモイル化試薬RNS(O)−Xを単離するステップ;
を含み、
式中、R、RおよびXは、上記のような要素および好ましい要素を持つ。
【0127】
ステップI−E)、II−E)およびIII−E)は、好適な溶媒または希釈液の存在下で行うと都合がよい場合がある。好適な溶媒の例は、ステップd)のI−A)、II−A)およびIII−A)に関連して上述した通りである。
【0128】
いくつかの実施形態では、ステップI−E)において、温度を約10℃未満に維持するような速度で、(R)(RC−OHを好適な溶媒に溶かし冷却した溶液にクロロスルホニルイソシアナートを加える。いくつかの実施形態では、ステップI−E)において、温度を約15℃未満に維持するような速度で、クロロスルホニルイソシアナートを好適な溶媒に溶かし冷却した溶液に(R)(RC−OHを加える。いくつかの実施形態では、ステップII−E)において、温度を約15℃未満に維持するような速度で、ステップI−E)で形成した反応混合物にXを加える。いくつかの実施形態では、反応混合物を濃縮してスルファモイル化試薬を単離する。いくつかの他の実施形態では、ステップIII−E)の反応混合物を濃縮してスルファモイル化試薬を単離し、次いで残渣を別の溶媒中で撹拌し、固体沈殿物を形成し、濾過により集めて乾燥させてもよい。いくつかの実施形態では、ステップIII−E)において、ステップII−E)の反応混合物から濾過によりスルファモイル化試薬を直接単離する。
【0129】
いくつかの実施形態では、式R−S(O)の化合物を、Xのヒドロクロリド塩をさらに含む錯体として単離する。いくつかの実施形態では、錯体中の式R−S(O)の化合物とXのヒドロクロリド塩との比は、1未満である。いくつかの他の実施形態では、錯体中の式R−S(O)の化合物とXのヒドロクロリド塩との比は、約1である。いくつかの他の実施形態では、錯体中の式R−S(O)の化合物とXのヒドロクロリド塩との比は、1を上回る。
【0130】
いくつかの実施形態では、Rが水素である場合、ステップd)のII−A)またはステップd)のII−B)の後に当業者に公知の方法により式(VI)の化合物を直接単離し、任意に精製してもよい。
【0131】
他の実施形態では、Rが酸に不安定な保護基である場合、ステップd)のIII−A)またはステップd)のIII−B)またはステップd)のII−C)またはステップd)のII−D)において反応混合物を酸で処理する。鉱酸、ルイス酸および有機酸はどれも、この反応に用いるのに好適である。鉱酸の例として、塩酸、硫酸、臭化水素酸、硝酸およびリン酸があるが、これに限定されるものではない。好適なルイス酸の例として、SnCl、(CHSiI、Mg(ClO、BF、ZnBr、Sn(OTf)およびTi(OizPr)があるが、これに限定されるものではない。有機酸の例として、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ギ酸、シュウ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸およびトリフルオロメタンスルホン酸があるが、これに限定されるものではない。
【0132】
いくつかの他の実施形態では、Rが酸に不安定な保護基である場合、ステップd)のII−A)またはステップd)のII−B)またはステップd)のI−C)またはステップd)のI−D)後に、当業者に公知の方法により式(VIa)を特徴とする化合物を直接単離し、任意に精製してもよい。式(VIa)中の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、R、RおよびRは各々、式(VI)において上記で定義した通りである。次いで、ステップd)のIII−A)またはステップd)のIII−B)またはステップd)のII−C)またはステップd)のII−D)に関連して本明細書に記載したのと同じ反応条件を用いて、下記式(VIa)の化合物を、酸を用いた別の反応で処理し、保護基Rを除去し、式(VI)の化合物を得てもよい。当業者であれば、式(VIa)の化合物のRが酸に不安定な保護基である場合、R基を除去して式(VI)の化合物を生成する別の脱保護条件があり得ることを理解するであろう。
【0133】
【化14】

いくつかの実施形態では、Rが酸に不安定な保護基である場合、酸による処理によって酸に不安定な保護基を除去した後、ワークアップの間に反応混合物を中和し、式(VI)の化合物を遊離塩基として単離する。そうした実施形態では、式(VI)の化合物を、溶媒または希釈液を濃縮し、塩化メチレン、トリフルオロトルエンまたはこれらの混合物で処理することによりワークアップ後に固体として単離してもよい。得られた固体については、濾過により単離することができる。いくつかの他の実施形態では、式(VI)の化合物を塩として単離してもよい。
【0134】
いくつかの他の実施形態では、Rがアミン保護基である場合、ステップd)のII−A)またはステップd)のII−B)またはステップd)のI−C)またはステップd)のI−D)後に、当業者に公知の方法により式(VIa)を特徴とする化合物を直接単離し、任意に精製してもよい。式(VIa)中の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、R、RおよびRは各々、式(VI)において上記で定義した通りである。次いで、当業者に公知の方法でアミン保護基Rを除去することにより、式(VIa)の化合物を式(VI)の化合物に変換することができる。
【0135】
本明細書に記載の化合物およびプロセスでは、以下の好ましい要素が適用可能である。
【0136】
式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(IV)、(V)および(VI)において、R、RおよびRh’は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族である。いくつかの実施形態では、R、RおよびRh’は各々独立に水素、フルオロ、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。好ましい実施形態では、R、RおよびRh’は各々水素である。
【0137】
式(I)、(Ia)、(II)、(IV)、(V)および(VI)において、Rは、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rは、水素、フルオロ、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。好ましい実施形態では、Rは水素である。
【0138】
式(IIa)において、Rd’は、水素、フルオロ、ブロモ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rd’は、水素、フルオロ、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。他の実施形態では、Rd’は、水素またはブロモである。いくつかの好ましい実施形態では、Rd’は水素である。他のいくつかの好ましい実施形態では、Rd’はブロモである。
【0139】
式(I)、(Ia)、(II)、(IV)、(V)および(VI)において、Rは各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rは各々独立に水素、フルオロ、メチル、エチルまたはトリフルオロメチルである。好ましい実施形態では、Rは各々水素である。
【0140】
式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(IV)、(V)、(VI)において、RおよびRe’は各々独立に水素またはC1〜4脂肪族である。いくつかの実施形態では、RおよびRe’は各々独立に水素、メチルまたはエチルである。好ましい実施形態では、RおよびRe’は各々水素である。
【0141】
式(I)、(Ia)、(III)、(IV)、(V)および(VI)において、Rは、水素またはC1〜4脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rは、水素、メチルまたはエチルである。好ましい実施形態では、Rは水素である。
【0142】
式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(IV)、(V)および(VI)において、Rは、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rは、水素、−OH、フルオロまたはメチルである。好ましい実施形態では、Rは、水素、−OHまたは−O−Rである。より好ましい実施形態では、Rは、水素または−OHである。より好ましい他の実施形態では、Rは水素である。
【0143】
式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(IV)、(V)および(VI)において、RおよびRは各々独立に水素またはヒドロキシル保護基であり、Rは、ヒドロキシル保護基である。Rは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成していてもよいし、Rは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成していてもよいし、あるいはRは、Rと一緒になって環状ジオール保護基を形成していてもよい。ヒドロキシル保護基および環状ジオール保護基の好ましい要素については以下に記載する。
【0144】
いくつかの実施形態では、Rは水素である。いくつかの実施形態ではRは水素である。ある特定の実施形態では、RおよびRは共に水素である。
【0145】
いくつかの実施形態では、ヒドロキシル保護基は、シリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択される。式中、Raaは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである。
【0146】
いくつかの実施形態では、シリル保護基は、トリメチルシリル(TMS:trimethylsilyl)、トリエチルシリル(TES:triethylsilyl)、トリイソプロピルシリル(TIPS:triisopropylsilyl)、tert−ブチルジメチルシリル(TBDMS:tert−butyldimethylsilyl)およびtert−ブチルジフェニルシリル(TBDPS:tert−butyldiphenylsilyl)から選択される。いくつかの実施形態では、任意に置換されているC1〜4脂肪族保護基は、メトキシメチル、ベンジル(Bn:benzyl)、p−メトキシベンジル(PMB:p−methoxybenzyl)、9−フルオレニルメチル(Fm:9−fluorenylmethyl)、ジフェニルメチル(ベンズヒドリル、DPM:diphenylmethyl)および同種のものから選択される。いくつかの実施形態では、−C(O)−Raa保護基は、アセチル、ホルミル、ピバロイル、ベンゾイルおよび同種のものから選択される。いくつかの実施形態では、−C(O)−O−Raa保護基は、ベンジルオキシカルボニル(Cbz:benzyloxycarbonyl)、メトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル(t−Boc:tert−butoxycarbonyl)、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc:fluorenylmethoxycarbonyl)および同種のものから選択される。
【0147】
いくつかの実施形態では、環状ジオール保護基は、1,2−環状ジオール保護基である。いくつかの実施形態では、環状ジオール保護基は、1,3−環状ジオール保護基である。いくつかの他の実施形態では、環状ジオール保護基は、−C(Raa)(Rbb)−であり、式中、Raaは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり、Rbbは、水素または任意に置換されているC1〜4脂肪族である。いくつかの好ましい実施形態では、Raaは、水素またはメチルである。いくつかの好ましい実施形態では、Rbbは、メチル、フェニルまたは4−メトキシフェニルである。
【0148】
式(I)、(III)および(IV)において、Rは、クロロ、フルオロ、ヨードまたはブロモである。いくつかの好ましい実施形態では、Rはクロロまたはフルオロである。ある好ましい実施形態では、Rはクロロである。
【0149】
式(Ia)において、Rg’は、ハロゲン、−O−R、−S−R、−S(O)Rまたは−S(O)であり、式中、Rは、C1〜4脂肪族、アルキルスルフォニル、フルオロアルキルスルホニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているアリールスルホニルであり、Rは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである。いくつかの実施形態では、Rg’は、クロロ、フルオロ、ヨード、メトキシ、エトキシ、置換または非置換フェノキシ、メシラート(−OSOCH)、トシラート(−OSOCH)、トリフラート(−OSOCF)、メチルスルホニルおよびベンジルスルホニルである。好ましい実施形態では、Rg’は、クロロ、フルオロ、ブロモ、メシラート、トシラートまたはトリフラートである。
【0150】
式(III)および(IV)において、Rは、−CH−CHOまたは−CHCH(ORl’であり、式中、Rl’は各々独立にC1〜6脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている5または6員の環状アセタール部分を形成している。いくつかの実施形態では、2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている5または6員の環状アセタール部分を形成している。そうしたいくつかの実施形態では、2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている1,3−ジオキサン部分または1,3−ジオキソラン部分を形成している。いくつかの他の実施形態では、Rl’は各々独立にC1〜3脂肪族である。ある特定の実施形態では、Rl’は各々メチルまたはエチルである。
【0151】
式HNRのアミンと、式(V)および(VI)の化合物との場合、Rは、水素またはC1〜4脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rは、水素、メチルまたはエチルである。好ましい実施形態では、Rは水素である。
【0152】
式HNRのアミンと、式(V)および(VI)との場合、Rは、任意に置換されているC1〜10脂肪族、アリール、ヘテロアリールまたは複素環である。いくつかの実施形態では、Rは、任意に置換されているC1〜10脂肪族である。いくつかの実施形態では、Rは、任意に置換されている脂環式環または複素環式環である。他の実施形態では、Rは、アリールまたはヘテロアリール環である。ある実施形態では、Rは、単環式、二環式または三環式環系である。他のある種の実施形態では、Rは、単環式または二環式環系である。
【0153】
そうしたいくつかの実施形態では、Rで表される環は、フラニル、チエニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、フェニル、ナフチル、ピラニル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ベンズチアゾリル、ベンゾチエニル、ベンゾフラニル、プリニル、キノリル、イソキノリル、シンノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ピロリジニル、ピロリドニル、ピペリジニル、ピロリニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、デカヒドロキノリニル、オキサゾリジニル、ピペラジニル、ジオキサニル、ジオキソラニル、ジアゼピニル、オキサゼピニル、チアゼピニル、モルホリニル、キヌクリジニル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、インダニル、フェナントリジニル、テトラヒドロナフチル、インドリニル、ベンゾジオキサニル、ベンゾジオキソリル、クロマニル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニル、シクロオクチル、シクロオクテニル、シクロオクタジエニル、ビシクロヘプタニルおよびビシクロオクタニルからなる群から選択される。ある実施形態では、Rで表される環は、任意に置換されているインダニル、テトラヒドロナフチルまたはクロマニルである。
【0154】
そうした実施形態では、Rで表される環または環系は、その構成環上の一方あるいは両方で任意に置換されていてもよく、その置換基(substitutents)は、同一でも異なっていてもよい。特に、置換可能な不飽和の環炭素は各々、非置換、あるいは、0〜2個のRで置換されており、置換可能な飽和の環炭素は各々、非置換、あるいは、0〜2個のRで置換されている。可変要素RおよびRは、以下に記載する要素を持つ。
【0155】
は各々独立にフルオロ、−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)、または−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)で任意に置換されているC1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族からなる群から選択される。
【0156】
は各々独立にフルオロ、−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)、または−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)で任意に置換されているC1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族からなる群から選択される。ただし、2個のRが同一炭素原子に結合している場合、1個は、フルオロ、−CO5x、−C(O)N(R4x)(R4y)、および−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)で任意に置換されているC1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族からなる群から選択されなければならず;同一炭素原子上の2個のRは一緒に=Oまたは=C(R5xを形成しているものとする。
【0157】
4xは、水素、C1〜4アルキル、C1〜4フルオロアルキルまたはC6〜10ar(C1〜4)アルキルであり、そのアリール部分は、任意に置換されていてもよく、R4yは、水素、C1〜4アルキル、C1〜4フルオロアルキル、C6〜10ar(C1〜4)アルキルであり、そのアリール部分は、任意に置換されていてもよいし、または任意に置換されている5または6員のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環であってもよく;またはR4xおよびR4yは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されている4〜8員のヘテロシクリル環を形成し、窒素原子以外にN、OおよびSから独立に選択される0〜2個の環ヘテロ原子を持つ。R5xは各々独立に水素、C1〜4アルキル、C1〜4フルオロアルキルまたは任意に置換されているC6〜10アリールもしくはC6〜10ar(C1〜4)アルキルである。
【0158】
いくつかの実施形態では、式HNRのアミンと、式(V)、(VI)、(VIa)および(VIb)との場合、Rで表される環または環系は下記式(VII)で表される。
【0159】
【化15】

式中、可変要素RおよびRは上述の要素を持つ。
【0160】
いくつかの他の実施形態では、式HNRのアミンならびに式(V)、(Va)、(VI)、(VIa)、(VIb)、(VIc)および(VId)において、Rで表される環または環系は、以下からなる群から選択される。
【0161】
【化16】

【0162】
【化17】

ある特定の実施形態では、式HNRのアミンと、式(V)、(Va)、(VI)、(VIa)、(VIb)、(VIc)および(VId)との場合、Rで表される環または環系は、以下からなる群から選択される。
【0163】
【化18】

【0164】
【化19】

特定の実施形態では、本発明は、下記式(VIb)を特徴とする式(VI)の化合物のサブ化学種
またはその薬学的に許容される塩を形成するプロセスであって:
【0165】
【化20】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
可変要素R、R、R、R、RおよびRは、式(I)〜(VII)に関連して上述した要素および好ましい要素を持ち;および
このプロセスは、式(VI)の化合物の形成に関連して上述したようなステップ(a)〜(d)を含む、プロセスに関する。ステップ(a)〜(d)それぞれの好ましい条件は、式(I)〜(VI)の化合物の形成に関連して上述した通りである。
【0166】
他の特定の実施形態では、本発明は、下記式(VIc)を特徴とする式(VI)の化合物のサブ化学種
またはその薬学的に許容される塩を形成するプロセスであって:
【0167】
【化21】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
可変要素R、R、R、R、RおよびRは、式(I)〜(VII)に関連して上述した要素および好ましい要素を持ち;および
このプロセスは、式(VI)の化合物の形成に関連して上述したようなステップa)〜d)を含む、プロセスに関する。ステップa)〜d)それぞれの好ましい条件は、式(I)〜(VI)の化合物の形成に関連して上述した通りである。
【0168】
他の特定の実施形態では、本発明は、下記式(VId)を特徴とする式(VI)の化合物のサブ化学種
またはその薬学的に許容される塩を形成するプロセスであって:
【0169】
【化22】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、RおよびRは、式(I)〜(VII)に関連して上述した要素および好ましい要素を持ち;および
このプロセスは、式(VI)の化合物の形成に関連して上述したようなステップa)〜d)を含む、プロセスに関する。ステップa)〜d)それぞれの好ましい条件は、式(I)〜(VI)の化合物の形成に関連して上述した通りである。
【0170】
本発明の別の態様は、式(Ia)および式(IIa)の化合物など、上述のプロセスにおいて有用な中間体である化合物に関する。
【0171】
一実施形態は、下記式(Ia)の化合物
またはその塩に関する。
【0172】
【化23】

式中、アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
g’は脱離基であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;および
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成している。
【0173】
いくつかの実施形態では、式(Ia)の化合物は、下記式(Iaa)を特徴とする。
【0174】
【化24】

式中、アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;
g’は、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、−O−R、−S−R、−S(O)Rまたは−S(O)であり;
式中、Rは、C1〜4脂肪族、アルキルスルフォニル、フルオロアルキルスルホニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているアリールスルホニルであり;および
は、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである。
【0175】
ある実施形態では、式(Ia)の化合物は、Rが水素、−OHまたは−O−Rである式(Iaa)を特徴とし;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であるか、またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、シリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
aaは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり;および
bbは、水素または任意に置換されているC1〜4脂肪族である。
【0176】
他のある好ましい実施形態では、式(Ia)の化合物は、式(Iaa)を特徴とし、R、R、R、RおよびRg’の要素および好ましい要素は、上述の通りである。
【0177】
本発明の他の態様は、下記式(IIa)の化合物
またはその塩に関する。
【0178】
【化25】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
d’は、水素、フルオロ、ブロモ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する炭素原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;および
は、水素またはアミン保護基である。
【0179】
いくつかの実施形態では、式(IIa)の化合物は、下記式(IIaa)を特徴とする。
【0180】
【化26】

式中、アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;および
は、水素、−OHまたは−O−Rであり;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であるか、またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、シリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
aaは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり;
bbは、水素または任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;および
は、水素またはアミン保護基である。
【0181】
いくつかの他の実施形態では、式(IIa)の化合物は、下記式(IIbb)を特徴とする。
【0182】
【化27】

式中、アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;および
d’はブロモであり;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であるか、またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、シリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
aaは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり;
bbは、水素または任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;および
は、水素またはアミン保護基である。
【0183】
ある好ましい実施形態では、式(IIa)の化合物は、式(IIaa)および(IIbb)を特徴とし、R、R、R、RおよびRd’の要素および好ましい要素は、上述の通りである。
【0184】
式(IIa)、(IIaa)および(IIbb)において、Rは、水素またはアミン保護基である。いくつかの実施形態では、Rは水素である。他の実施形態では、Rは、−C(O)Rcc、−C(O)−ORcc、−CHccおよび−C(Rccから選択されるアミン保護基であり、式中、Rccは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである。好ましい実施形態では、Rは、水素、ベンジル、4−メトキシベンジル、tert−ブトキシカルボニル、トリフェニルメチルまたは(4−メトキシフェニル)ジフェニルメチルである。ある好ましい実施形態では、Rは、tert−ブトキシカルボニルまたはトリフェニルメチルである。
【0185】
特定の実施形態では、本発明は、以下からなる群から選択される化合物に関する。
【0186】
【化28】

式中、アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;および
は、−C(O)Rcc、−C(O)−ORcc、−CHccまたは−C(Rccであり、式中、Rccは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである。
【0187】
いくつかの実施形態では、式(IIa)の化合物のジアステレオ異性体純度は、少なくとも80%、90%、95%または99%である。いくつかの他の実施形態では、式(IIa)の化合物のエナンチオマー純度は、少なくとも80%、90%、95%または99%である。
【0188】
いくつかの実施形態では、前述の任意の式においてアスタリスクが付いた位置で示す立体化学的配置は、相対立体化学を示す。他の実施形態では、アスタリスクが付いた位置で示す立体化学的配置は、絶対立体化学を示す。ある特定の実施形態では、本発明は、アスタリスクが付いた位置で示す立体化学的配置が絶対立体化学を示す式の化合物に関する。
【0189】
一般的な合成方法
式(II)、(IIa)、(III)およびRNHS(O)Clの化合物は、当業者に公知の方法により、および/または以下に示すスキームおよびそれに続く合成例を参照して調製することができる。例示的合成経路を以下のスキーム1、2および3および実施例に示す。
【0190】
スキーム1:(1S,2S,4R)−4−アミノ−2−ヒドロキシルメチル)シクロペンタノールの一般的な合成経路
【0191】
【化29】

スキーム1および2は、式(IIa)の化合物の一般的な調製経路を示し、式中、R、R、R、Re’、RおよびRh’は各々水素である。R、R、R、Re’、RおよびRh’の1つまたは複数が水素以外である場合も、iと類似した適切な出発材料から始まる同じ一般的な経路により式(IIa)の化合物を調製できることを、当業者であれば理解するであろう。
【0192】
(−)−iなどのラクタムは市販されており、式iの化合物の式iiiの化合物への変換は、スキーム1に詳述するような方法により行う(Smith et al.Tetrahedron.Lett.,2001,42,1347を参照されたい)。メタノール中でラクタムiをチオニルクロリドで処理するとiiが得られ、次いでこれを好適なアミノ保護基Rで保護して式iiiの化合物を得る(方法A)。あるいは、最初にアミノ基の保護を行い、続いて塩酸メタノールなどの好適な酸による酸触媒開環反応を行い、式iiiの化合物を得てもよい(方法B;Bray et al.Tetrahedron Lett.,1995,36,4483を参照されたい)。また、式iiiの化合物は、スキーム2に詳述する式(IIa)の化合物の別の一般的合成における出発材料にもなる。
【0193】
式iiiの化合物のエステルを塩基で加水分解すると、エピマー化した式ivの化合物が形成される。この変換については、テトラヒドロフランおよびメタノールなどの適当な溶媒に溶かした水酸化ナトリウムのような適切な塩基を用いて行うことができる(方法C)。式vの化合物を生成するための臭素化およびラクトン化(方法D)は、式ivの化合物を水酸化テトラブチルアンモニウムで処理し、続いて塩化メチレンまたはテトラヒドロフランなどの適当な溶媒に溶かした臭素で処理することで行うことができる。臭素で処理する前に、約0℃〜−70℃の範囲の適切な温度まで反応混合物を冷却する。反応の間は、反応混合物を約20℃未満に保つ。臭素添加前の水酸化テトラブチルアンモニウムの代わりに使用してもよい他の試薬として、炭酸水素ナトリウム、リン酸カリウム、ピリジンまたはこれらの混合物があるが、これに限定されるものではない。この変換に好適な他の溶媒としては、酢酸エチル、メタノール、水、ジメトキシエタンまたはこれらの混合物があるが、これに限定されるものではない。
【0194】
式vの化合物のラクトンを還元剤で還元すると、式viの化合物が得られる(方法E)。この変換に好適な還元剤として、リチウムテトラヒドロボラートが挙げられる。この変換に適当な溶媒としては、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルおよび同種のものが挙げられる。通常、式vの化合物の溶液は、好ましくは還元剤の添加前に約−20℃〜0℃の範囲に冷却する。リチウムテトラヒドロボラートに加えて、以下に限定されるものではないが、塩化銅または塩化パラジウムなどの第2の試薬を用いてもよい。式vの化合物の式viの化合物への変換に好適な他の試薬としては、リチウムアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリドおよび水素化ホウ素ナトリウムが挙げられる。この変換に好適な他の溶媒として、水を最大約10%含んでもよいイソプロパノール、メタノールおよびジメチルスルホキシドが挙げられる。この変換に好適な他の温度範囲は、約0℃〜約40℃の範囲である。
【0195】
次いで、保護基Rを除去し、式viの化合物を脱臭素化する(方法F)と、化合物viiが得られる。この変換は、使用する保護基Rに応じて当業者に公知の多くのやり方で行うことができる。いくつかの実施形態では、Rは、水素に不安定な保護基である。そうした実施形態では、脱保護および脱臭素化を単一のステップで行う。このステップは、メタノールなどの適当な溶媒中のパラジウム触媒の存在下、水素ガスによる処理を含んでもよい。この変換を行うと、ヒドロブロミド塩として式viiの化合物が得られる。他の実施形態では、保護基Rの除去および脱臭素化を別のステップで行ってもよい。いくつかの実施形態では、式viiの化合物のヒドロクロリド塩を生成してもよい。
【0196】
保護基Rが酸に不安定な場合、HBrまたはHClで除去してから、RがHである式viの化合物のヒドロブロミド塩またはヒドロクロリド塩を生成する。次いでこの化合物を水素で処理し、脱臭素化を行うと、式viiの化合物が得られる。脱臭素化については、好適なパラジウム触媒、好適な塩基および好適な溶媒を用いて行えばよい。好適な触媒は、Pd/Cを含む。好適な塩基として、トリエチルアミン、N,N’−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、水酸化テトラブチルアンモニウムおよび炭酸水素ナトリウムがあるが、これに限定されるものではない。好適な溶媒としては、イソプロピルアルコールおよびメタノールがあるが、これに限定されるものではない。
【0197】
スキーム2:(1S,2S,4R)−4−アミノ−2−ヒドロキシルメチル)シクロペンタノールの別の一般的な合成経路
【0198】
【化30】

スキーム2は、R、R、R、Re’、RおよびRh’が各々水素である一般式(IIa)の化合物の別の一般的な合成経路を詳述する。出発材料iiiについては、上記スキーム1で詳述したように調製すればよい。式iiiの化合物の式viiiの化合物への変換は、塩化メチレンなどの適当な溶媒中でジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エンにより処理することで行うことができる(方法G)(Bray et al.Tetrahedron Lett.,1995,36,4483を参照されたい)。
【0199】
式ixの化合物を得るには、式viiiの化合物のエステル基を還元する。これは、トルエンまたはテトラヒドロフランなどの適当な溶媒に溶かしたジイソブチルアルミニウムヒドリドまたは同種のものなどの好適な還元剤により処理して行う(方法H)。通常、式viiiの化合物の溶液は、還元剤の添加前に好ましくは約−20℃〜約0℃の範囲に冷却する。
【0200】
式xの化合物を生成するには、式ixの化合物の二重結合をエポキシ化する。これは、既知の方法により行う(方法J)(Gao et al.J.Am.Chem.Soc.,1987,5765)。式ixの化合物の溶液を、塩化メチレンに溶かした(+)−ジエチル−L−タルトラートとチタン(IV)イソプロポキシドとの冷却した混合物にゆっくりと加える。式ixの化合物の添加速度は、反応温度を約−25℃〜約−45℃の範囲に維持するような速度である。このため、反応温度を約−25℃〜約−45℃の範囲に維持するように、tert−ブチルヒドロペルオキシドをゆっくりと加える。
【0201】
式xiの化合物を得るには、式xの化合物のエポキシドを位置特異的に開環させる。これには、式xの化合物の溶液を、塩化メチレンなどの適当な溶媒に溶かした水素化ホウ素ナトリウムおよびボラン−THF錯体で処理すればよい(Brown and Yoon J.Am.Chem.Soc.,1968,90,2686を参照されたい)(方法K)。
【0202】
式xiの化合物を生成する反応では、微量の生成物として式xiiの化合物を生成されることができる。式xiの化合物の第一級アルコールを、トリイソプロピルシリルまたはtert−ブチルジフェニルシリルなどのかさ高い保護基(R)で選択的に保護すると、式xiiiの化合物を得ることができる。式xiiiの化合物は、カラムクロマトグラフィーなどの当業者に公知の精製方法により、式xiiの化合物から分離すればよい。シリル保護基の導入に関しては、塩化メチレンなどの溶媒に溶かしたトリエチルアミンまたはN,N’−ジイソプロピルエチルアミンのような塩基の存在下、適切なシリルクロリドによる処理など、公知の方法により行うことができる(方法L)。
【0203】
精製後、式xiiiの化合物からシリル保護基を選択的に除去すれば、式xivの化合物を得ることができる。この変換については、式xiiiの化合物の冷却した溶液を、テトラヒドロフランなどの適当な溶媒に溶かしたテトラブチルアンモニウムフルオリド(TBAF:tetrabutylammonium fluoride)溶液で処理して行えばよい(方法M)。
【0204】
保護基Rを除去すると、式viiの化合物が得られる(方法F)。この変換は、使用する保護基Rに応じて、当業者に公知の多くのやり方で行うことができる。たとえば、いくつかの実施形態では、保護基Rに水素化分解を施し、メタノールなどの適当な溶媒に溶かしたパラジウム触媒の存在下、水素ガスにより処理して脱保護を行ってもよい(方法F)。いくつかの他の実施形態では、保護基Rは酸に不安定であり、酸により脱保護を行ってもよい。
【0205】
スキーム1または2における式vi、viiまたはxivの化合物のヒドロキシル基の一方または両方については、当業者に公知の方法によりヒドロキシル保護基で保護しても、環状ジオール保護基で保護してもよい。
【0206】
式(III)の化合物は、J.A.Montgomery and K.Hewson,J.Med.Chem.,1967,10,665に記載されているような方法により調製してもよい。
【0207】
スキーム3:置換−(クロロスルホニル)カルバマートRNHS(O)Clの一般的な合成経路
【0208】
【化31】

スキーム3は、式RNHS(O)Clの化合物の一般的な調製経路を示す。式中、Rは−C(O)OC(R(R)であり、Rはフェニルである。Rがフェニル以外である場合も、xvと類似した適切な出発材料から始まる同じ一般的な経路により式RNHS(O)Clの化合物を調製できることを、当業者であれば理解するであろう。
【0209】
市販されているメチルベンゾアートxvを出発物質として、テトラヒドロフランなどの適当な溶媒に溶かしたグリニャール試薬RMgClで処理すると、式xviの化合物が得られる(方法N)。式xvの化合物の溶液を約0℃まで冷却してから、グリニャール試薬を添加する。グリニャール試薬は、反応混合物の温度を約10℃未満に維持するのに十分な速度で加える。次いでxviの溶液を、テトラヒドロフランなどの適当な溶媒に溶かしたクロロスルホニルイソシアナートの冷却した溶液に加えて式xviiの化合物を得る。式xviの化合物の溶液の添加は、反応混合物の温度を約10℃未満に維持するのに十分な速度で添加する(方法O)。その後、得られた置換−(クロロスルホニル)カルバマート試薬xviiを、テトラヒドロフランなどの適当な溶媒に溶かした溶液として使用時まで保存する。
【0210】
が−C(O)OC(CHである式RNHS(O)Clの化合物は、Hirayama et al.Bioorg.Med.Chem.,2002,10,1509−1523に記載されているような方法により調製すればよい。Rが−C(O)N(Ph)である式RNHS(O)Clの化合物は、米国特許出願公開第2005282797A1号における記載と同様のやり方で調製すればよい。
【0211】
実施例18で使用するアミンは、参照によってその全体を本明細書に援用するLangston S.et al.米国特許出願第11/700,614号に開示された方法により製造してもよい。
【0212】
本発明の理解を十分に深めるため、以下に調製例および試験例を示す。こうした例は、特定の化合物の製造方法および試験方法を説明するのもであり、いかなる意味においても本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【実施例】
【0213】
略語
AcOH 酢酸
BINAP 2,2’−ビス(ジフェニルホスフィノ)−1,1’−ビナフチル
Boc tert−ブトキシカルボニル
DCM 塩化メチレン
DI 脱イオン化
DMAP 4−ジメチルアミノピリジン
DMF ジメチルホルムアミド
DMF−DMA ジメチルホルムアミドジメチルアセタール
DMSO ジメチルスルホキシド
EtOAc 酢酸エチル
EtOH エタノール
iPrOAc 酢酸イソプロピル
MCPBA メタ−クロロ過安息香酸
MeOH メタノール
MTBE メチルtert−ブチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
h 時間
HRMS 高分解能質量スペクトル
min 分
m/z 質量電荷比
MS 質量スペクトル
RPLC−MS 逆相液体クロマトグラフィー−質量分析法
TLC 薄層クロマトグラフィー
プロトン核磁気共鳴スペクトルを、Varian Mercury300型300MHzスペクトロメーター、Bruker AVANCE300型300MHzスペクトロメーターまたはBruker AVANCE500型500MHzスペクトロメーターにより得た。
【0214】
LCMS条件:スペクトルは、以下のグラジエントで20分間流し、1ml/minにてPhenomenex Luna5μ C18(2)150×4.6mmカラムを接続したAgilent1100series装置により測定した。
【0215】
ギ酸(FA:Formic Acid)法:移動相Aは、99%v/v水、1%v/vアセトニトリル、0.1%v/vギ酸とする。移動相Bは、95%v/vアセトニトリル、5%v/v水、0.1%v/vギ酸とする。この方法のグラジエントは、12分かけて5%Bから100%Bにし、100%Bで3分間保持し、1分かけて5%Bに戻して最後まで保持する。
【0216】
酢酸アンモニウム(AA:Ammonium Acetate)法:移動相Aは、100%水(10mMの酢酸アンモニウム、pH=4.5を含む)とする。移動相Bは、95%v/vアセトニトリル、5%v/v水(10mMの酢酸アンモニウム、pH=4.5を含む)とする。この方法のグラジエントは、12分かけて5%Bから100%Bにし、100%Bで3分間保持し、1分かけて5%Bに戻して5%Bを保持して最後まで流す。
【0217】
EMDシリカ−ゲル60プレートを用いて薄層クロマトグラフィー(TLC:thin−layer chromatography)を行い、紫外(UV:ultraviolet)線で可視化した。
【0218】
HPLC解析については、以下のグラジエントで30分間流し、1.0ml/minにてPhenomenex Luna5μ C18(2)150×4.6mmカラムを接続したAgilent1100series装置を用いて行った:
酢酸アンモニウム法(AA2):移動相Aは、100%水(10mMの酢酸アンモニウム、pH=4.5を含む)とする。移動相Bは、95%v/vアセトニトリル、5%v/v水(10mMの酢酸アンモニウム、pH=4.5を含む)とする。この方法のグラジエントは、12分かけて30%Bから70%Bにし、5分かけて70%Bから100%Bとし、100%Bで3分間保持し、5分かけて30%Bに戻し、最後まで30%Bを保持して流す。
【0219】
(実施例1)
メチル−(1S,4R)−4−アミノシクロペンタ−2−エン−1−カルボキシラートヒドロクロリド
(−)−2−アザビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−3−オン(20.00g、0.1833mmol)をMeOH(140mL)に溶解させ、この混合物を0℃まで冷却した。次いでチオニルクロリド(29.4mL、0.403mol)を滴下して加え、温度を15℃未満に維持した。添加が終了したら、混合物を5℃で2時間撹拌させた。溶媒を減圧下で除去して油を得て、この油をさらに高真空下、35℃で一晩乾燥させて表題化合物を白色の固体(33g)として得た。これをさらに(futher)精製することなく使用した。H NMR(300MHz,DMSO,δ):8.45(s,3H),6.03(m,1H),5.87(m,1H),4.13(m,1H),3.60(m,4H),2.53(m,1H)and 1.89(m,1H)。
【0220】
(実施例2)
メチル(1S,4R)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−2−エン−1−カルボキシラート
メチル−(1S,4R)−4−アミノシクロペンタ−2−エン−1−カルボキシラートヒドロクロリド(5.50g)を塩化メチレン(60mL)に懸濁し、これにトリフェニルメチルクロリド(9.06g、0.0325mol)を加えた。次いでこの混合物を0℃まで冷却した。次いでトリエチルアミン(10.8mL、0.0774mol)を滴下して加え、温度を10℃未満に維持した。添加が終了したら、混合物を20〜25℃まで昇温した。混合物を20〜25℃で17時間撹拌させた。次いで混合物を水(3×50mL)で洗浄した。この水性洗浄液を合わせてDCM(50mL)で抽出した。この有機物を合わせてブライン(20mL)で洗浄し、溶媒を減圧下で除去して表題化合物を褐色油(12.5g)として得た。これをさらに精製することなく使用した。H NMR(300MHz,CDCl,δ):7.58(m,6H),7.27(m,6H),7.18(m,3H),5.57(m,1H),4.93(m,1H),3.76(m,1H),3.65(s,3H),3.18(m,1H),2.11(m,1H),1.90(m,1H)and 1.53(m,1H)。
【0221】
(実施例3)
(1R,4R)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−2−エン−1−カルボン酸
メチル(1S,4R)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−2−エン−1−カルボキシラート(11.00g、0.02868mol)をテトラヒドロフラン(50mL)およびメタノール(50mL)に溶解させた。水(60mL)に溶かした水酸化ナトリウム(2.06g、0.0516mol)を加え、この混合物を周囲温度で18時間撹拌した。TLC(20%EtOAc/ヘキサン)では出発材料が確認されなかった。混合物がpH6になるまで、20%w/vクエン酸水溶液を周囲温度で滴下して加えた。次いで混合物を塩化メチレン(3×100mL)で抽出した。この有機層を合わせてNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して白色の泡沫(10g)を得た。TLC(50%EtOAc/ヘキサン)では2種のジアステレオマーが確認される。この混合物をカラムクロマトグラフィーを用いて精製し、50%EtOAc/ヘキサンで溶出して表題化合物(1.3g)を白色の固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO,δ):7.47(m,6H),7.30(m,6H),7.17(m,3H),5.49(m,1H),4.88(m,1H),3.70(m,1H),3.35(m,1H),1.84(m,1H)and 1.43(m,1H).LCMS:R=12.95 mins,ES=370(AA)。
【0222】
(実施例4)
(1R,3R,4R,5R)−4−ブロモ−3−(トリチルアミノ)−6−オキサビシクロ[3.2.0]ヘプタン−7−オン
塩化メチレン(20mL)に溶解させた(1R,4R)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−2−エン−1−カルボン酸(0.9g、0.0024360mol)に、MeOH(2.579mL)に溶かした31%水酸化テトラブチルアンモニウムを加え、この混合物を周囲温度で30分間撹拌した。混合物を減圧下で濃縮した。次いで得られた残渣を塩化メチレン(20mL、0.3mol)に溶解させ、Nでガスシールしながら−70℃まで冷却した。次いで5mlの塩化メチレンに溶かした臭素(251uL、0.00487mol)を滴下して加え、この混合を−70℃で1時間撹拌してから、0℃まで加温した。0℃になったら、20mLの5%w/v NaSO水溶液を滴下して加え、この混合物を周囲温度まで昇温した。反応混合物を塩化メチレン(3×10mL)で抽出し、有機層を合わせてNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮して赤色の残渣を得た。この残渣をシリカゲルプラグで濾過し、0〜30%EtOAc/ヘキサンで溶出して無機物および不純物を除去して表題化合物(0.73g)を白色の固体として得た。H NMR(300MHz,DMSO,δ):7.49(m,6H),7.24(m,9H),4.95(d,1H),3.91(m,1H),3.65(m,1H),2.97(m,1H),2.66(m,1H),1.62(m,1H)and 1.20(m,1H).LCMS:R=14.40 mins,ESNa=470(AA)。
【0223】
(実施例5)
(1R,2R,3R,5S)−2−ブロモ−5−(ヒドロキシメチル)−3−(トリチルアミノ)シクロペンタノール
(1R,3R,4R,5R)−4−ブロモ−3−(トリチルアミノ)−6−オキサビシクロ[3.2.0]ヘプタン−7−オン(0.6g、0.0013382mol)をジエチルエーテル(20mL)に溶解させ、この混合物を0℃まで冷却した。リチウムテトラヒドロボラート(0.087g、0.004015mol)を一度に加え、この混合物を0℃で1時間撹拌し、次いで周囲温度まで昇温し、さらに1時間撹拌した。TLC(20%EtOAc/ヘキサン)では出発材料が確認されなかった。この反応混合物を0℃まで冷却し、この温度で飽和NHCl水溶液(20mL)を滴下して加え、温度を5℃未満に維持した。混合物を周囲温度まで昇温し、塩化メチレン(3×20mL)で抽出した。この有機物を合わせてNaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮し、表題化合物(0.61g)を白色の固体として得た。これをさらに精製することなく使用した。H NMR(300MHz,CDOD,δ):7.56(m,6H),7.25(m,9H),4.15(m,1H),3.55(m,1H),3.40(m,2H),2.90(m,1H),2.53(m,1H)and 1.63(m,2H).LCMS:R=13.30 mins,ESNa=474(AA)。
【0224】
(実施例6)
(1S,2S,4R)−4−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール.HBr
(1R,2R,3R,5S)−2−ブロモ−5−(ヒドロキシメチル)−3−(トリチルアミノ)シクロペンタノール(0.4g、0.0008842mol)をMeOH(10.0mL)に溶解させた。この混合物に5%パラジウムチャコール(0.28g)を加えた。水素雰囲気下、得られた混合物(1000mL、0.04mol)を40℃で18時間撹拌した。アリコートをシリンジで濾過し、濃縮した。H NMRにより反応が終了したことが確認されたため、全反応混合物をセライトのパッドで濾過し、濾液を濃縮した。この粘着性固体を5mLのTHFでよく洗浄し、濾過し、このベッドをtert−ブチルメチルエーテルで洗浄した。得られた固体を真空下、周囲温度で乾燥させて表題化合物(0.125g)を白色の固体として得た。これをさらに精製することなく使用した。H NMR(300MHz,CDOD,δ):4.38(t,J=4.08Hz,1H),3.82(m,1H),3.72(m,1H),3.60(m,1H),2.31(m,1H),2.22(m,1H),2.03(m,1H)and 1.78(m,2H)。
【0225】
(実施例7)
メチル(4S)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−カルボキシラート
メチル(1S,4R)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−2−エン−1−カルボキシラート(4.75kg、12.4mol)を塩化メチレンに溶かした溶液を反応器に仕込んだ。この反応器に塩化メチレン(15L)をさらに仕込み、総容量を23.8Lとした。この撹拌溶液に、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデク−7−エン(4.82L、32.2mol)を加えた。この反応混合物を40℃まで加温し、16〜22時間撹拌した。反応混合物の小サンプルのH NMR(CDCl)解析により生成物の形成が確認された。この反応物を10%クエン酸水溶液(2×7L)で洗浄した。この有機相を減圧下で濃縮して表題化合物を油として得た。この油を無水トルエンで希釈し、濃縮して残留水を除去し、さらに精製することなく用いた。H NMR(300MHz,CDCl,δ):7.60−7.54(m,5H),7.34−7.17(m,10H),6.53−6.50(m,1H),3.70(s,3H),3.50−3.40(m,1H),2.60−2.52(dd,J=16.6,8.3Hz,1H),2.24−2.20(m,1H),2.16−2.05(m,1H)and 1.91−1.80(m,1H)。
【0226】
(実施例8)
[(4S)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル]メタノール
メチル(4S)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−カルボキシラート(4.75kg、12.4mol)を反応器に仕込んだ。この反応器に無水トルエン(9.5L)を仕込み、−5〜−10℃まで冷却し、撹拌を始めた。温度を−10℃〜+10℃に維持しながら、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(トルエンに溶かした1M溶液、23.4kg、27.3mol)を加えた。添加の終了時にこの反応混合物をHPLCで解析したところ、出発材料の生成物への完全な変換が確認された。この反応混合物を、内部の温度を20℃未満に維持する速度で冷たい2NのNaOH溶液(−5〜−10℃)中にクエンチした。この有機相を分離し、珪藻土のパッドで濾過した。パッドをトルエン(2×1L)で洗浄し、濾液を減圧下で濃縮して表題化合物を粘性油(5.15kg)として得た。この生成物を塩化メチレンで希釈し、0〜5℃で溶液として保存した。H NMR(300MHz,CDCl,δ):7.60−7.56(m,5H),7.35−7.17(m,10H),5.38(bs,1H),4.03−4.02(d,J=3.7Hz,2H),3.49−3.36(m,1H),2.40(s,2H),2.19−1.79(m,4H),1.32−1.29(t,J=5.8Hz,1H)。
【0227】
(実施例9)
[(1S,3S,5S)−3−(トリチルアミノ)−6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキス−1−イル]メタノール
(+)−ジエチル−L−タルトラート(2.23L、13.0mol)および塩化メチレン(10.5L)を反応器に仕込んだ。撹拌を始め、この混合物を−30〜−40℃まで冷却した。内部の温度を−30〜−40℃に維持しながら、チタン(IV)イソプロポキシド(3.93L、13.4mol)をゆっくりと加えた。この反応混合物に、温度を−30〜−40℃に維持しながら、[(4S)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタ−1−エン−1−イル]メタノール(4.2kg、11.8mol)塩化メチレン(19L)に溶かした溶液をゆっくりと加えた。20分間の撹拌後、温度を−30〜−40℃に維持しながら、t−ブチルヒドロペルオキシド(デカンに溶かした5〜6M溶液、3.3L、16.3mol)をゆっくりと加えた。添加の終了時にこの反応混合物をHPLCで解析したところ、生成物の形成および3%(AUC)の出発材料の存在が確認された。反応混合物を、DI水(42L)に溶かした硫酸鉄(II)七水和物(10.5kg)および酒石酸(6.3kg)の冷たい水溶液(0〜5℃)を含む100Lの反応器内で慎重にクエンチした。15分の間の撹拌後、この有機相を分離し、珪藻土のパッドで濾過した。パッドを塩化メチレン(2×2L)で洗浄し、濾液を100Lの反応器に移した。穏やかに撹拌した反応混合物に、固体水酸化ナトリウム(3.36kg)をブライン(42L)に溶かした冷たい溶液(0〜5℃)をゆっくりと加えた。1時間後、有機相を分離し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させ、珪藻土のパッドで濾過し、減圧下で濃縮して褐色油を得た。これを、5つのカラムを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。各カラムは、以下の通り用いた。直径20cmのガラスカラムに、0.5%トリエチルアミンを加えた30%酢酸エチル/ヘプタンに加えたシリカゲル(5kg)のスラリーを充填した。粗生成物(約1.2kg)をシリカゲル(1.5kg)に吸着させ、カラムに充填した。極性は、0.5%トリエチルアミンを含む30%酢酸エチル/ヘプタンから40%酢酸エチル/ヘプタンに徐々に高めていった。すべてのカラムで精製された材料を合わせて、表題化合物(3.93kg、89%収率)を琥珀色の油として得た。H NMR(300MHz,CDCl,δ)7.54−7.50(m,5H),7.32−7.18(m,10H),3.80−3.76(d,J=12.5Hz,1H),3.65−3.61(d,J=12.5Hz,1H),3.31(s,1H),3.03−2.92(m,1H),1.77−1.69(m,2H)and 1.37−1.13(m,2H)。
【0228】
(実施例10)
(1S,2S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノールおよび(1S,3S)−1−(ヒドロキシメチル)−3−(トリチルアミノ)シクロペンタノール
[(1S,3S,5S)−3−(トリチルアミノ)−6−オキサビシクロ[3.1.0]ヘキス−1−イル]メタノール(2.76kg、7.4mol)の塩化メチレン溶液を反応器に仕込んだ。さらに、塩化メチレン(5L)を反応器に仕込み、合計で13.8Lとした。撹拌した反応混合物を35℃〜40℃まで加熱した。温度を35℃〜45℃に維持しながら、固体添加系を用いて水素化ホウ素ナトリウム(281g、7.4mol)を少しずつ加えた。温度を35〜45℃に維持しながら、ボラン−THF錯体(THFに溶かした1M溶液、6.7kg、7.4mol)をゆっくりと加えた。温度を35〜40℃で1時間維持し、その後、反応混合物をHPLCで解析した。出発材料の量が2%未満になったとき、反応が終了したと判断された。反応混合物を30℃未満まで冷却し、次いで冷たいDI水(28L)を含む100Lの反応器内で慎重にクエンチした。3時間間の撹拌後、この有機相を分離し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、珪藻土のパッドで濾過し、減圧下で濃縮して(1S,2S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノールと(1S,3S)−1−(ヒドロキシメチル)−3−(トリチルアミノ)シクロペンタノールとの混合物(2.74kg)を褐色油として得た。これをさらに精製することなく使用した。
【0229】
(実施例11)
(1S,2S,4R)−2−{[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル}−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノール
(1S,2S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノールと(1S,3S)−1−(ヒドロキシメチル)−3−(トリチルアミノ)シクロペンタノールとの混合物(合計1.87kg、(1S,2S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノール約280g、0.75mol)を反応器に仕込んだ。この反応器に塩化メチレン(7.4L)を仕込み、撹拌を始めた。温度を25℃未満に維持しながら、トリエチルアミン(210mL、1.5mol)を加えた。温度を25℃未満に維持しながら、トリイソプロピルシリルクロリド(402mL、1.9mol)をゆっくりと加えた。この反応混合物を20℃〜22℃で約48時間撹拌させた。反応混合物をTLC(50%酢酸エチル/ヘプタン、UV可視化)で解析したところ、生成物の形成(R0.70)および未反応(1S,3S)−1−(ヒドロキシメチル)−3−(トリチルアミノ)シクロペンタノール(R0.15)が確認された。この透明な淡黄色溶液を5〜10℃まで冷却し、DI水(7.5L)でゆっくりと反応をクエンチし、得られた層を分離した。この水相を塩化メチレン(3L)で抽出し、合わせた有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、珪藻土のパッドで濾過し、減圧下で濃縮して褐色油(4.06kg)を得た。これを、複数のカラムを用いてシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。各カラムは、以下の通り用いた。直径20cmのガラスカラムに、10%酢酸エチル/ヘプタンに加えたシリカゲル(4.5kg)のスラリーを充填した。上記の油(約1.2kg)をカラムに充填した。すべてのカラムで精製された材料を合わせて、表題化合物(2.94kg)を透明な油として得た。これをさらに精製することなく使用した。H NMR(300MHz,CDCl,δ):7.56−7.54(m,5H),7.34−7.13(m,10H),4.26(bs,1H),3.86−3.81(dd,J=10.0,4.5Hz,1H),3.65−3.60(dd,J=10.1,7.2Hz,1H),3.41−3.37(m,1H),3.07(bs,1H),2.16−2.07(m,1H),1.69−1.63(m,3H),1.47−1.20(m,4H)and 1.08−1.03(2s,18H)。
【0230】
(実施例12)
(1S,2S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノール
(1S,2S,4R)−2−{[(トリイソプロピルシリル)オキシ]メチル}−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノール(合計2.94kg、純粋と思われる材料約1.6kg、3.02mol)を反応器に仕込んだ。この反応器に、THF(6L)を仕込み、撹拌を始めた。温度を25℃未満に維持しながら、テトラブチルアンモニウムフルオリド(THFに溶かした1M溶液、3.02L、3.0mol)を加えた。この反応混合物を20℃〜22℃で3時間撹拌させた。TLC(50%酢酸エチル/ヘプタン、UV可視化)により出発材料の生成物への完全な変換が確認された。反応混合物を減圧下で約2L容量まで濃縮し、第2の反応器に移した。この濃縮物を塩化メチレン(16L)で希釈し、飽和アンモニウムクロリド水(8L)およびDI水(8L)で洗浄した。この有機相を無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、珪藻土のパッドで濾過し、減圧下で濃縮して琥珀色の油(3.88kg)を得た。これをシリカゲルクロマトグラフィーで精製した。2つのカラムを以下の通り用いた。直径20cmのガラスカラムに、10%酢酸エチル/ヘプタンに加えたシリカゲル(5kg)のスラリーを充填した。上記の油約1.9kgをシリカゲル(1.5kg)に吸着させ、カラムに充填した。極性は、10%酢酸エチル/ヘプタンから50%酢酸エチル/ヘプタンに徐々に高めていった。純粋な画分を合わせて、減圧下で濃縮して表題化合物(800g)を白色の固体として得た。H NMR(300MHz,CDCl,δ):7.57−7.53(m,5H),7.32−7.18(m,10H),4.26−4.23(m,1H),3.65−3.46(m,2H),3.36−3.29(m,1H),2.17−2.07(m,2H),1.65−1.62(d,1H),1.51−1.39(m,2H),1.37−1.26(m,1H)and 1.2−1.17−1.11(m,1H)。
【0231】
(実施例13)
(1S,2S,4R)−4−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール
水素化反応器をアルゴンでパージし、5%パラジウム炭素(水分50%、80g、20mol%)を仕込み、反応器をシールした。真空を用いてこの反応器に、(1S,2S,4R)−2−(ヒドロキシメチル)−4−(トリチルアミノ)シクロペンタノール(400g、1.07mol)をメタノール(2.7L)に溶かした溶液を加えた。この反応器をアルゴンでパージし、35〜45psiの水素を仕込み、72時間35℃まで加熱した。この反応混合物を珪藻土のパッドで濾過し、メタノール(32L)で洗浄し、減圧下で約1L容量まで濃縮した。沈殿したトリフェニルメタンをこの混合物から濾過し、濾液をさらに濃縮して琥珀色の油を得た。この粗材料をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。カラムは、以下の通り用いた。直径15cmのガラスカラムに、塩化メチレンに加えたシリカゲル(1.6kg)のスラリーを充填した。上記の琥珀色の油をシリカゲル(200g)に吸着させ、カラムに充填した。極性は、100%塩化メチレンから50%塩化メチレン/メタノールに徐々に高めていった。純粋な画分を合わせて、減圧下で濃縮して表題化合物(118g)を黄色の蝋様固体として得た。H NMR(300MHz,CDOD,δ):4.35−4.32(m,1H),3.76−3.70(m,1H),3.64−3.56(m,2H),2.34−2.26(m,1H),2.10−2.03(m,1H),1.93−1.82(m,1H)and 1.63−1.46(m,2H)。
【0232】
(実施例14)
(1S,2S,4R)−4−(4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル)−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール
イソプロピルアルコール(82mL、1.1mol)および水(11mL、0.59mol)に加えた4,6−ジクロロ−5−(2,2−ジエトキシエチル)ピリミジン(10.0g、0.0377mol)および(1S,2,4R)−4−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール.HBr(8.00g)のスラリーに、トリエチルアミン(13mL、0.094mol)を加えた。次いでこの混合物を85℃まで23時間加熱した。混合物を50℃まで冷却し、この温度で4Mの塩酸水溶液(20mL)をゆっくりと加えた。次いで得られた混合物を50℃で3時間撹拌した。HPLCにより反応が終了していること確認した。反応混合物を周囲温度まで冷却し、重炭酸ナトリウム(10g、0.1mol)を少しずつ加えた。余分な固体を濾過し、そのベッドをイソプロピルアルコール(20mL)で洗浄し、濾液を約70mLまで濃縮した。酢酸エチル(150mL)、続いて飽和NaHCO水溶液(35mL)と水(35mL)との混合物を加えた。この層を分離し、水相を酢酸エチル(2×50mL)で抽出し、濾過した。有機層を合わせて、飽和NaCl水溶液(50mL)で洗浄してから、濃縮して表題化合物(9.3g)を褐色の固体として得た。H NMR(300MHz,CDOD,δ):8.56(s,1H),7.67(d,1H),6.65(d,1H),5.52(m,1H),4.50(m,1H),3.79(m,1H),3.66(m,1H),2.63(m,1H),2.25(m,3H)and 2.02(m,1H)。
【0233】
(実施例15)
(1S,2S,4R)−4−(4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル)−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール
(1S,2S,4R)−4−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール(250mg、1.90mmol)およびトリエチルアミン(380mg、3.80mmol)を2−プロパノール(30mL)に溶かした溶液を、2−(4,6−ジクロロピリミジン−5−イル)アセトアルデヒド(330mg、1.71mmol)で80℃にて処理した。この反応をHPLCによりモニターし、19時間後にすべてのアルデヒドが消費されたことが確認された。この反応混合物を周囲温度まで冷却した。溶媒の約80%を減圧下で除去し、得られた褐色溶液を撹拌しながら水(30mL)に加えた。得られた透明な溶液を氷水浴で冷却し、生成物を結晶化させた。得られたスラリーを5℃未満で30分間撹拌し、濾過した。濾過ケークを冷水(10mL)で洗浄し、真空オーブン内で40℃にて14時間乾燥させて表題化合物を褐色の固体(311mg、68%収率)として得た。H NMR(500MHz,CDCl)δ 8.54(s,1H),7.68(d,J=3.7Hz,1H),6.66(d,J=3.6Hz,1H),5.54(m,1H),4.52(m,1H),3.82(dd,J=10.7,7.2Hz,1H),3.68(dd,J=10.8,6.5Hz,1H),2.64(m,1H),2.32(m,2H),2.24(m,1H),2.05(m,1H)。
【0234】
(実施例16)
9−フェニルヘプタデカン−9−オール
安息香酸メチル(14.34g、105.3mmol)を無水THF(43mL)に溶解させ、この混合物を0℃まで冷却した。次いでn−オクチルマグネシウムクロリドをTHF(200.0mL、2.0M、400mmol)に溶かした溶液を滴下して加え、温度を10℃未満に維持した。添加が終了したら、混合物を0℃で2時間撹拌させた。次いで塩酸水溶液(400mL、1.0M)を滴下して加え、温度を25℃未満に維持した。この混合物をiPrOAc(420mL)で希釈し、得られた有機層を1.0MのHCl(1×70mL)で洗浄し、ブライン(1×70mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、蒸発させて無色の液体を得た。この粗材料をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して無色透明の液体(21.0g)を得た。H NMR(300MHz,CDCl,δ):7.41−7.30(m,4H),7.28−7.20(m,1H),1.90−1.70(m,4H),1.35−1.20(m,23H),1.11−0.96(m,2H)and 0.92−0.83(m,6H)。
【0235】
(実施例17)
1−オクチル−1−フェニルノニル(クロロスルホニル)カルバマート
クロロスルホニルイソシアナート(1.30mL、14.95mmol)を無水THF(10mL)に溶解させ、この混合物を0℃まで冷却した。9−フェニルヘプタデカン−9−オール(4.972g、14.95mmol)を無水THF(18.5mL)に溶かした溶液を滴下して加え、温度を10℃未満に維持した。添加が終了したら、混合物を0℃で1時間撹拌させた。得られた約0.5Mの1−オクチル−1−フェニルノニル(クロロスルホニル)カルバマート溶液を使用時まで0℃で保存した。
【0236】
(実施例18)
4−アミノ置換(1S,2S,4R)−(7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル)−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノールの一般的な調製
(1S,2S,4R)−4−(4−クロロ−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジン−7−イル)−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール(1当量)、以下の表1に示すようなアミン(1.1当量)およびN,N’−ジイソプロピルエチルアミン(1.3当量)を2−ブタノール(約6容)で混合する。反応槽を窒素でパージし、次いで加圧下(80psi)で135℃にて約40時間、またはHPLCにより出発材料がほとんどあるいはまったく残っていないことが確認されるまで加熱する。この混合物を周囲温度および圧力まで冷却する。反応混合物に酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水で洗浄する。水層を分離し、酢酸エチルで洗浄する。合わせた有機層を飽和NaCl溶液で洗浄し、NaSO上で乾燥させ、濾過し、濃縮する。この混合物に塩化メチレンを加え、約1時間0℃まで冷却する。得られた固体を濾過し、冷たい塩化メチレンで洗浄する。この固体を真空下、周囲温度で乾燥させる。
【0237】
【表1−1】

【0238】
【表1−2】

【0239】
【表1−3】

(実施例19)
スルファモイル化の一般的な条件1
反応槽に、トリエチレンジアミン(実施例18の生成物の投入量に対して約4当量)およびテトラヒドロフラン(実施例18の生成物の投入量に対して約12容)を加える。この混合物を0℃まで冷却し、内部の温度が15℃以下に維持されるような速度で冷却しながら、テトラヒドロフラン(実施例18の生成物の投入量に対して約3当量)に溶かした0.866Mのtert−ブチル(クロロスルホニル)カルバマート(適切な量の無水THFに溶かしたモル当量のクロロスルホニルイソシアナートにtertブチルアルコールを加え、温度を約15℃未満に維持しながら、約1時間撹拌して(stiring)調製)を加える。この懸濁液を周囲温度まで加温し、約30分間撹拌してから、−20℃まで冷却する。実施例18の生成物を一度に加え、続いてテトラヒドロフラン(実施例18の生成物の投入量に対して約3容)をさらに加える。この反応混合物を0℃まで加温し、HPLCにより、存在する出発材料の面積が1%未満であることが認められるまで撹拌させる。反応混合物を0℃まで冷却し、9Mの塩酸水溶液(実施例18の生成物の投入量に対して約25容)をゆっくりと加え、温度を25℃未満にする。次いで得られた混合物を周囲温度まで昇温し、約4時間、またはHPLCによりBOCの完全な脱保護が確認される時間まで撹拌する。脱保護の終了時、pH約8になるまで重炭酸ナトリウムを少しずつ加える。二相混合物が認められる場合、余分な固体を濾過し、ベッドを酢酸エチルで洗浄する。この有機層を分離する。水層を酢酸エチルで抽出し、有機物をすべて合わせて、飽和NaCl水溶液で洗浄し、濃縮して粗生成物を得る。これをカラムクロマトグラフィーにより精製する。この生成物を適当な溶媒から結晶化させてさらに精製してもよい。
【0240】
(実施例20)
スルファモイル化試薬の一般的な調製1
反応槽に、式(R)(RC−OHのアルコール(1.1当量)および無水塩化メチレン(約20容)を加え、この混合物を約0℃〜10℃まで冷却する。温度を約10℃未満に維持する速度でクロロスルホニルイソシアナート(1当量)を加え、この混合物を約1時間撹拌する。温度を約15℃未満に維持しながら、塩基(2.6当量)を少しずつ加え、次いで混合物を約0℃〜15℃で約1時間撹拌する。固体を濾過により除去し、ベッドを塩化メチレン(約5容)で洗浄する。溶媒を減圧下で除去し、残渣にアセトニトリル(約5容)を加え、得られた懸濁液を室温で約3時間撹拌する。このスルファモイル化試薬を濾過により集めて、アセトニトリル(1容)で洗浄し、真空下で乾燥させる
(実施例21)
スルファモイル化の一般的な条件2
反応槽に、実施例18の生成物(1当量)およびNMP(実施例18の生成物の投入量に対して約9容)を加える。この混合物を約0℃〜10℃に冷却し、約15分間撹拌する。実施例20で生成したスルファモイル化試薬(実施例18の生成物の投入量に対して1当量)および酸(実施例18の生成物の投入量に対して1当量)を加え、この混合物を約0℃〜10℃の温度で撹拌する。反応後、HPLCにかける。反応が終了するまで、さらに1当量の実施例20で生成したスルファモイル化試薬および酸をほぼ1時間ごとに加える。水(実施例18の生成物の投入量に対して約2.5容)を加え、この混合物を約15℃で約16時間撹拌する。酢酸エチル(実施例18の生成物の投入量に対して約15容)および水(実施例18の生成物の投入量に対して10容)を加え、得られた混合物を約10分間撹拌し、得られた層を分離する。次いでこの有機相を水(実施例18の生成物の投入量に対して3×15容)で洗浄する。次いで有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で除去する。
【0241】
この粗生成物を真空下で乾燥させてから、アセトニトリル(実施例18の生成物の投入量に対して6.5容)に再溶解する。反応温度を約20℃未満に維持しながら、塩酸(実施例18の生成物の投入量に対して2.4容)を加える。反応後、保護基の除去が終了するまでHPLCにかける。水(実施例18の生成物の投入量に対して約14容)を加え、続いてpHが7〜8になるまで重炭酸ナトリウムを加える。酢酸エチル(実施例18の生成物の投入量に対して約15容)を加え、約10分間の撹拌後、層を分離する。有機層を水(実施例18の投入に対して約3×15容)で洗浄し、無水硫酸ナトリウム上で乾燥させる。溶媒を除去し、残渣を、塩化メチレン(methylene choride)(実施例18の生成物の投入量に対して約11容)に溶かした7%アセトニトリルに溶解させ、約18時間撹拌する。生成物を濾過により回収し、真空下、30℃〜35℃で乾燥させる。
【0242】
(実施例22)
スルファモイル化試薬の一般的な調製2
反応槽に、クロロスルホニルイソシアナート(1当量)および無水トルエン(約20容)を加え、この混合物を約0〜10℃まで冷却する。反応温度を約10℃未満に維持する速度でtert−ブチルアルコール(1当量)を加え、この混合物を約1時間撹拌する。温度を約15℃未満に維持しながら、トリエチレンジアミン(2当量)を少しずつ加えてから、混合物を約15℃〜約25℃の温度で約2時間撹拌する。このスルファモイル化試薬を窒素保護下で濾過により集めて、真空下で乾燥させる。
【0243】
(実施例23)
スルファモイル化の一般的な条件3
反応槽に、実施例18の生成物(1当量)およびアセトニトリル(実施例18の生成物の投入量に対して約7容)を加える。実施例22で生成したスルファモイル化試薬(実施例18の生成物の投入量に対して2当量)を加え、この混合物を約50℃の温度で撹拌する。反応後、HPLCにかける。反応が終了するまで加熱を続ける。室温まで冷却後、0.5N HCl(実施例18の生成物の投入量に対して約5.5容)を加え、混合物を約23℃で約5〜6時間撹拌する。得られた二相溶液から水相を分離し、MTBE(実施例18の生成物の投入量に対して約5容)で抽出する。MTBE抽出物を、前に分離した有機相と合わせて、MTBE(実施例18の生成物の投入量に対して約2容)をさらに加える。得られた混合物を10分間水(実施例18の生成物の投入量に対して約10容)で撹拌する。この有機相を分離する。有機相にアセトニトリル(実施例18の生成物の投入量に対して約10容)を加え、この溶液を減圧下で実施例18の生成物の投入量に対して10容に希釈する。アセトニトリル(実施例18の生成物の投入量に対して約8容)をさらに加え、再び溶液を減圧下で実施例18の生成物の投入量に対して10容に希釈する。
【0244】
この粗生成物アセトニトリル溶液に、反応温度を約5℃に維持しながら濃塩酸(実施例18の生成物の投入量に対して3容)をゆっくりと加える。反応後、保護基の除去が終了するまでHPLCにかける。水(実施例18の生成物の投入量に対して約10容)を加え、続いてpHが7〜8になるまで重炭酸ナトリウムを加える。酢酸エチル(実施例18の生成物の投入量に対して約10容)を加え、約10分間の撹拌後、層を分離する。その有機層を水(実施例18の投入量に対して約3×10容)で洗浄する。2回目および3回目の洗浄において、ブライン(約5%v/v)を任意に加えて相分離しやすくする。この粗生成物溶液を任意に活性炭プラグまたはシリカゲルプラグ(実施例18の生成物の投入量に対して約250%〜25%w/w)に通す。活性炭プラグまたはシリカゲルプラグをEtOAc(実施例18の生成物の投入量に対して約2〜10容)で洗い流す。得られた溶液を実施例18の生成物の投入量に対して約3容に濃縮し、次いで35〜40℃で加熱する。内部の温度を35〜40℃に維持しながら、ジクロロメタン(実施例18の生成物の投入量に対して20容)をゆっくりと加える。DCMの添加終了後、この懸濁液を35〜40℃で1時間撹拌し、室温まで放冷し、その後、室温で約18時間撹拌する。得られた固体を濾過により集めて、真空下、30〜35℃で恒量まで乾燥させる。
【0245】
(実施例24)
tert−ブチル[(1R,3R,4R,5R)−4−ブロモ−7−オキソ−6−オキサビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル]カルバマート
塩化メチレン(6L)に溶解させた(1R,4R)−4−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]シクロペンタ−2−エン−1−カルボン酸(400.00g、1.7601mol;上記の実施例1〜3に記載したのと類似の手順で調製)に、メタノール(1.0M、1800ml)に溶かした水酸化テトラブチルアンモニウムを加え、この混合物を周囲温度で60分間撹拌した。次いでこの反応混合物を、窒素でガスシールしながら−25℃まで冷却した。次いで内部の温度を−20℃未満に維持しながら、塩化メチレン(2L)に溶かした臭素(181ml、3.52mol)を60分かけてゆっくりと加えた。臭素の添加終了後、混合物を−25℃で30分間さらに撹拌し、次いで30分かけて0℃までゆっくりと加温した。その後、この混合物を0℃で1時間撹拌させた。内部の温度を10℃未満に維持しながら、水(3L)に溶かしたL−アスコルビン酸ナトリウム塩(523.0g、2.640mol)と水(3L)に溶かした飽和重炭酸ナトリウムとの混合物を0℃で30分かけてゆっくりと加えた。得られた二相混合物を撹拌し、1時間かけて周囲温度まで昇温した。この塩化メチレン層を分離し、水層を塩化メチレン(2L)で抽出した。塩化メチレン層を合わせて、約4L容量まで濃縮した。酢酸エチル(8L)を加え、この混合物を約5L容量まで濃縮した。酢酸エチル(5L)を加え、得られた混合物を水(4L)で3回洗浄した。次いでこの有機層を、水(2L)に溶かした飽和塩化ナトリウムで洗浄し、濃縮して表題化合物(460g、85%)を白色の固体として得た。H NMR(300MHz,CDCl3):δ 5.09(d,1H),4.80(m,1H),4.71(m,1H),4.47(m,1H),4.04(m,1H),2.39(m,1H),1.89(m,1H)and 1.46(bs,9H)。
【0246】
(実施例25)
tert−ブチル[(1R,2R,3R,4S)−2−ブロモ−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]カルバマート
tert−ブチル[(1R,3R,4R,5R)−4−ブロモ−7−オキソ−6−オキサビシクロ[3.2.0]ヘプト−3−イル]カルバマート(450.0g、1.470mol)をTHF(6L)に溶解させ、この混合物を0℃まで冷却した。内部の温度を10℃未満に維持しながら、THF(730ml)に溶かした2.0Mのリチウムテトラヒドロボラートをゆっくりと加えた。次いでこの混合物を0℃で30分間撹拌した後、HPLCにより出発材料が消費されたことを確認した。内部の温度を10℃未満に維持しながら、水(2.5L)に溶かした飽和アンモニウムクロリドと水(2.5L)との混合物をゆっくりと0℃で加えた。次いでこの混合物を周囲温度まで昇温し、この温度でTHF層を分離した。THF層を約2Lまで濃縮し、この水層を酢酸エチル(4L)で2回抽出した。この有機層を合わせて、水(4L)で2回洗浄した。次いでこの有機層を、水(4L)に溶かした飽和塩化ナトリウムで洗浄し、濃縮して表題化合物(452g、99%)を黄色の残渣として得た。H NMR(300MHz,CDCl3):δ 4.83(m,1H),4.54(m,1H),4.43(m,1H),4.31(m,1H),3.87(m,1H),3.74(m,1H),2.71(m,1H),2.02(m,1H),1.70(m,1H)and 1.41(bs,9H)。
【0247】
(実施例26)
(1S,2S,4R)−4−アミノ−2−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール.HBr
tert−ブチル[(1R,2R,3R,4S)−2−ブロモ−3−ヒドロキシ−4−(ヒドロキシメチル)シクロペンチル]カルバマート(444.0g、1.431mol)をイソプロピルアルコール(2000ml)に溶解させた。この溶液に、1,4−ジオキサン(2000ml)に溶かした4.0Mの塩酸を加え、この混合物を周囲温度で3時間撹拌した。アリコートを濃縮し、H NMRで解析したところ、出発材料が消費されたことが確認された。残りの反応混合物を減圧下、35℃で濃縮して透明な残渣を得た。この残渣を、メタノール(2000ml)とイソプロピルアルコール(2000ml)との混合物に溶解させ、これに10重量%Pd/C(76g、2.5mol%)、続いて重炭酸ナトリウム(360g、4.3mol)を加えた。得られた不均一な混合物を周囲温度で18時間水素(20psi)に曝した。この反応混合物のアリコートをシリンジで濾過し、濃縮し、H NMRによる解析で出発材料の完全な消費を確認した。残りの反応混合物をセライトのパッド(250g)で濾過した。濾過床をメタノール(2000ml)で洗浄し、濾液を減圧下35℃で濃縮して表題化合物(310g、定量的)をオレンジ色の固体として得た。H NMR(300MHz,CD3OD):δ 4.17(t,1H),3.83(m,1H),3.72(m,1H),3.60(m,1H),2.33(m,1H),2.21(m,1H),2.03(m,1H)and 1.79(m,2H)。
【0248】
前述の発明について理解しやすいようにある程度詳細に記載してきたが、こうした特定の実施形態は、例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本開示を読めば、本発明の真の範囲を逸脱しない範囲で形式および細部に関する様々な変更が可能であることを、当業者であれば理解するであろう。本発明の真の範囲は、特定の実施形態ではなく添付の特許請求の範囲によって示される。
【0249】
本明細書に記載する特許および科学文献は、当業者に入手可能な知識を示す。他に定義しない限り、本明細書に使用する技術用語および科学用語はすべて、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているのと同じ意味を持つ。本明細書に引用する発行された特許、出願および参考文献については、参照によって援用するために各々を具体的に個々に示してあるのと同じ程度に参照によって本明細書に援用する。矛盾が生じた場合は、定義を含めて本開示を優先するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)の化合物またはその塩を形成するプロセスであって:
【化32】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、クロロ、フルオロ、ヨードまたはブロモであり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
前記プロセスは、下記式(II)の化合物またはその塩を下記式(III)の化合物と組み合わせて式(I)の化合物を得るステップを含み;
【化33】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
式(II)および(III)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々式(I)に定義する通りであり;
は、−CHCHOまたは−CHCH(ORl’であり;および
l’は各々独立にC1〜6脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている5または6員の環状アセタール部分を形成している
プロセス。
【請求項2】
、R、R、Re’、R、R、Rh’およびRは各々水素である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記組み合わせステップは、下記ステップ:
a)塩基の存在下で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物で処理して下記式(IV)の化合物を得るステップ:
【化34】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
式(IV)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々式(I)に定義する通りであり;
は、−CHCH(ORl’である;および
b)式(IV)の前記化合物を含む反応混合物を酸で処理して式(I)の前記化合物を形成するステップ
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
はクロロまたはフルオロであり;
l’は各々独立にC1〜3脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている1,3−ジオキサン部分または1,3−ジオキソラン部分を形成し;および
、R、R、Re’、R、R、Rh’およびRは各々水素である
請求項3に記載のプロセス。
【請求項5】
は、−CHCHOであり;および
前記組み合わせステップは、下記ステップ:
aa)塩基の存在下で式(II)の化合物またはその塩を式(III)の化合物で処理するステップ
を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
はクロロまたはフルオロであり;および
、R、R、Re’、R、R、Rh’およびRは各々水素である
請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
下記ステップ:
c)式(I)の前記化合物を式HNRのアミンで処理して下記式(V)の化合物またはその塩を形成するステップ;
をさらに含み、
【化35】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
式(V)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々式(I)に定義する通りであり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;および
は、任意に置換されているC1〜10脂肪族、アリール、ヘテロアリールまたは複素環である
請求項2に記載のプロセス。
【請求項8】
下記ステップ:
d)Rが水素である式(V)の化合物をスルファモイル化して下記式(VI)の化合物またはその塩を形成するステップ;
をさらに含み、
【化36】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;および
式(VI)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、R、RおよびRは各々式(V)に定義する通りである
請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
ステップd)は、下記ステップ:
I−D)式(V)の前記化合物をスルファモイル化試薬R−S(O)で処理するステップ;
II−D)任意に、ステップI−D)で形成した反応混合物を酸で処理するステップ;
を含み、
式中:
は−C(O)OC(R(R)であり;
は各々独立に水素、任意に置換されているC1〜10脂肪族または任意に置換されているアリールから選択され;
は、任意に置換されているC1〜10脂肪族または任意に置換されているアリールであり;
または1個のRは、任意に置換されているC1〜10脂肪族であり;もう1個のRは、Rと一緒になって、任意に置換されているC3〜6脂環式環を形成し;および
Xは、第三級アミンまたは窒素含有ヘテロアリールである
請求項8に記載のプロセス。
【請求項10】
HNRは、下記式(VIIa)の化合物で表され、下記式(Va)の化合物を形成し;
【化37】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
式(Va)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々式(V)に定義する通りであり;
は各々独立にフルオロ、−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)、または−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)で任意に置換されているC1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族からなる群から選択され;
は各々独立にフルオロ、−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)、または−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)で任意に置換されているC1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族からなる群から選択され、ただし、2個のRが同一炭素原子に結合している場合、1個は、フルオロ、−CO5x、−C(O)N(R4x)(R4y)、および−OR5x、−N(R4x)(R4y)、−CO5xもしくは−C(O)N(R4x)(R4y)で任意に置換されているC1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族からなる群から選択されなければならず;同一炭素原子上の2個のRは一緒に=Oまたは=C(R5xを形成し;
4xは、水素、C1〜4アルキル、C1〜4フルオロアルキルまたはC6〜10ar(C1〜4)アルキルであり、そのアリール部分は、任意に置換されていてもよく;
4yは、水素、C1〜4アルキル、C1〜4フルオロアルキル、C6〜10ar(C1〜4)アルキルであり、そのアリール部分は、任意に置換されていてもよいし、または任意に置換されている5または6員のアリール環、ヘテロアリール環またはヘテロシクリル環であってもよく;または
4xおよびR4yは、それらが結合している窒素原子と一緒になって、任意に置換されている4〜8員のヘテロシクリル環を形成し、窒素原子のみならずN、OおよびSから独立に選択される0〜2個の環ヘテロ原子を持ち;および
5xは各々独立に水素、C1〜4アルキル、C1〜4フルオロアルキルまたは任意に置換されているC6〜10アリールもしくはC6〜10ar(C1〜4)アルキルである
請求項7に記載のプロセス。
【請求項11】
下記ステップ:
d)Rが水素である式(Va)の化合物をスルファモイル化して下記式(VId)の化合物を形成するステップ;
をさらに含み、
【化38】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;および
式(VId)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、R、RおよびRは各々式(Va)に定義する通りである
請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
ステップd)は、下記ステップ:
I−D)式(V)の前記化合物をスルファモイル化試薬R−S(O)で処理するステップ;
II−D)任意に、ステップI−D)で形成した反応混合物を酸で処理するステップ;
を含み、
式中:
は−C(O)OC(R(R)であり;
は各々独立に水素、任意に置換されているC1〜10脂肪族または任意に置換されているアリールから選択され;
は、任意に置換されているC1〜10脂肪族または任意に置換されているアリールであり;
または1個のRは、任意に置換されているC1〜10脂肪族であり;もう1個のRは、Rと一緒になって、任意に置換されているC3〜6脂環式環を形成し;および
Xは、第三級アミンまたは窒素含有ヘテロアリールである
請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
下記式(I)の化合物またはその塩を形成するプロセスであって:
【化39】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、クロロ、フルオロ、ヨードまたはブロモであり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
前記プロセスは、下記式(IV)の化合物を酸で処理して式(I)の前記化合物を形成することを含み;
【化40】

式中:
式(IV)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々式(I)に定義する通りであり;
は−CHCH(ORl’であり;および
l’は各々独立にC1〜6脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている5または6員の環状アセタール部分を形成している
プロセス。
【請求項14】
はクロロまたはフルオロであり;
l’は各々C1〜3脂肪族であるか、または2個のRl’は、介在する酸素原子および炭素原子と一緒になって、任意に置換されている1,3−ジオキサン部分または1,3−ジオキソラン部分を形成し;および
、R、R、Re’、R、R、Rh’およびRは各々水素である
請求項13に記載のプロセス。
【請求項15】
下記式(V)の化合物またはその塩を形成するプロセスであって:
【化41】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は相対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し。
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は、任意に置換されているC1〜10脂肪族、アリール、ヘテロアリールまたは複素環であり;
前記プロセスは、下記式(Ia)の化合物を式HNRのアミンで処理することを含み:
【化42】

式中:
式(Ia)の可変要素R、R、R、R、R、Re’、R、R、Rh’、R、RおよびRは各々式(V)に定義する通りであり;および
g’は脱離基である
プロセス。
【請求項16】
g’は、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、−O−R、−S−R、−S(O)Rまたは−S(O)であり;
式中、Rは、C1〜4脂肪族、アルキルスルフォニル、フルオロアルキルスルホニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているアリールスルホニルであり;
は、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり;および
、R、R、Re’、R、R、Rh’、RおよびRは各々水素である
請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
は、水素、−OHまたは−O−Rであり;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であるか、またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、シリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
aaは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり;および
bbは、水素または任意に置換されているC1〜4脂肪族である
請求項2、4、6、7、9、10、12、14または16のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項18】
下記式(Ia)の化合物であって:
【化43】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は各々独立に水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
g’は脱離基であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;および
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成している
化合物またはその塩。
【請求項19】
g’は、クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード、−O−R、−S−R、−S(O)Rまたは−S(O)であり;
式中、Rは、C1〜4脂肪族、アルキルスルフォニル、フルオロアルキルスルホニル、任意に置換されているアリールまたは任意に置換されているアリールスルホニルであり;
は、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり;および
、R、R、Re’、R、R、Rh’およびRは各々水素である
請求項18に記載の化合物。
【請求項20】
下記式(IIa)の化合物であって:
【化44】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;
は、水素または保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、クロロ、−OH、−O−Rまたは任意に置換されているC1〜4脂肪族であり;
d’は、水素、フルオロ、ブロモ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
e’は、水素またはC1〜4脂肪族であり;
は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
h’は、水素、フルオロ、C1〜4脂肪族またはC1〜4フルオロ脂肪族であり;
は、水素またはヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;
はヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する炭素原子と一緒になって環状ジオール保護基を形成し;および
は、水素またはアミン保護基である
化合物またはその塩。
【請求項21】
、R、Re’、RおよびRh’は各々水素であり;
d’は、水素またはブロモであり;および
は、水素、−OHまたは−O−Rである
請求項20に記載の化合物。
【請求項22】
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であるか、またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、水素、またはシリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
は、シリル保護基、任意に置換されている脂肪族、−C(O)−Raaおよび−C(O)−O−Raaからなる群から選択されるヒドロキシル保護基であり;またはRは、Rおよび介在する原子と一緒になって環状ジオール保護基−C(Raa)(Rbb)−を形成し;
aaは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールであり;および
bbは、水素または任意に置換されているC1〜4脂肪族である
請求項19または請求項21に記載の化合物。
【請求項23】
下記群から選択される化合物であって:
【化45】

式中:
アスタリスクの位置で示す立体化学的配置は絶対立体化学を表し;および
は、−C(O)Rcc、−C(O)−ORcc、−CHccまたは−C(Rccであり、式中、Rccは、任意に置換されているC1〜4脂肪族または任意に置換されているアリールである
化合物またはその塩。

【公表番号】特表2010−535217(P2010−535217A)
【公表日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−519947(P2010−519947)
【出願日】平成20年8月1日(2008.8.1)
【国際出願番号】PCT/US2008/009338
【国際公開番号】WO2009/042013
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(500287639)ミレニアム・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド (98)
【氏名又は名称原語表記】MILLENNIUM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】